TICAD7全体会合3 官民ビジネス対話 安倍総理スピーチ
皆様、御参集いただきまして、ありがとうございます。
ナイロビでのTICAD VI(第6回アフリカ開発会議)から3年で、最大の進歩は、アフリカビジネス協議会の発足です。
TICADは、生まれ変わりました。私たちのNew TICADは、ダブルEダブルI、すなわちアントレプレナーシップとエンタープライズ、インベストメントとイノベーションを高みへ持ち上げます。
タンザニアの、電気のない家々が、夜の灯を手に入れつつあります。この国に何千とある小店舗、キオスクに行くと、ソーラーランタンを借り出せます。昼間貯めた電気で灯るLEDの灯りは明るくて、煤煙(ばいえん)を出すケロシンランプと大違いです。
1,100を超えるタンザニアのキオスクでソーラーランタンのレンタルを実施し、連日、数万人が借りにくるまでに育てた会社。それが東京のWASSHAです。創業CEOは、この方、秋田智司さんです。秋田さん、いらっしゃいますか。秋田さんに着目したのが、日本で有数のユーティリティ会社、関西電力です。京都や大阪の、発電とグリッドを賄う巨大企業が、今度WASSHAと組みます。関電はWASSHAに、大量のランタンを提供し、WASSHAはそれを配って、ランタン・レンタルを手がけるキオスクを1万店に増やします。関電には、レンタル料の一部が還流するモデルです。夜が明るくなって、本が読めると喜ぶ子供たちの笑顔を想像しましょう。10万単位のユーザーと、1万店舗のアウトレットは、ビッグデータを生み、それがまた未知のビジネスを生んでいくでしょう。
秋田さんのような起業家に腕を振るってもらうため、政府は何をすべきか。日本政府が問うこの問いは、この一点に集約されます。
ひとつには、人づくり。また、質の高いインフラの提供。そして資金を手に入れやすくすることでしょう。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、貿易保険のNEXI、それにJICA(国際協力機構)も、現地の力を借りながら、使い勝手のいいファイナンスを提供します。相手国が借金漬けになっては、皆様の進出を妨げます。重点国を毎年10か国選び、向こう3年の延べ30か国の担当者に公的債務やリスク管理の研修をします。
ガーナとザンビアには、債務管理とマクロ経済運営のアドバイザーを送ります。
アフリカにとって重要な農業の競争力をつけるにも、日本政府の出番はあります。
日本の地方自治体で活躍した農業専門家には、アフリカのためならと、腕を撫(ぶ)す人が少なくありません。そんな方々に、これから現地へ行っていただきます。
2030年までに、各国と協力しつつ、アフリカ全土における米の生産量を今の倍、5,600万トンにしたいと思います。
私には、3回目のTICADです。皆様が主役となった様子を見て、勇気づけられました。
アフリカには、仕事のしやすさで、世界有数の地位に躍り出た国がありますし、市場規模は拡大の一途。大陸全土が巨大経済圏になる日が見えています。
AU(アフリカ連合)には、野心に満ちた長期計画があります。目標年は2063年。今、20歳代の方には、御自身の目標にできる未来です。
さあアフリカへ、可能性の大地へ、皆様の勇躍を強く念じてやみません。ありがとうございました。