Gゼロサミットに関する岸田総理メッセージ
内閣総理大臣の岸田文雄です。Gゼロサミットが、2年ぶりに対面で開催されることを嬉しく思います。私自身は、海外から数多くの首脳が現在訪日されており、本会議に直接足を運ぶことはできませんが、今後の世界の展望を開く、活発な議論が交わされることを期待します。
パンデミック、ウクライナ危機、そして、国際的なエネルギー・食料危機。歴史を画するような数十年に一度あるかどうかの事態に次々と直面しています。特に、ウクライナ危機で、Dr.ブレマーのおっしゃるGゼロの世界が、正に文字どおり現実のものとして現れた。このように思います。力を背景とした一方的な現状変更の試みは世界のいずれの地域においても認められてはなりません。また、不透明な開発支援、経済的威圧などにより、自由で開かれた経済秩序も大きな挑戦を受けています。
Gゼロの世界において、日本に今求められるのは、ポスト冷戦期の次の時代の新しい国際秩序の構築をリードし、先進国と途上国の橋渡しをすることです。
例えば、今月初めのIPEF(インド太平洋経済枠組み)の交渉開始の宣言。サプライチェーンの強靱(きょうじん)化等の21世紀型の課題に対応した枠組み構築に向けた大きな一歩です。IPEFがインド太平洋地域における包摂的で持続的な成長プラットフォームとなるよう、我が国は、最大限の貢献をしていきます。
また、来年、日本は議長国としてG7広島サミットを開催します。なぜ、広島でG7を開催するか。自由、民主主義、法の支配等の普遍的価値と国際ルールに基づく、新たな時代の秩序作りをG7が主導していく意思を、広島の平和のモニュメントの前で、歴史の重みをもって示したいと考えているからです。その際、アジアにおける唯一のG7国である我が国は、G7とアジアの架け橋として、歴史的な使命を担っていることを前提に臨みたいと考えています。
さて、今回のGゼロサミットでは、強靱なサプライチェーンの構築やESG投資などについて議論されると伺っています。
私は、これまでの資本主義により生じてきた外部不経済を、成長のエンジンと捉え、官民連携で、課題解決をしつつ、成長を目指す、新しい資本主義を提唱しています。今回のGゼロサミットのテーマは、いずれも、新しい資本主義の中核的なテーマでもあります。
新型コロナウイルスの拡大や、軍事面を含む地政学的緊張は、これまでの安定した経済・金融システムと資本主義の中で発達してきた世界のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしました。
5月の日米首脳会談においても、次世代半導体の実用化に向けた、共同タスクフォースの設置に合意したように、日本は、有志国と連携することを通じて、サプライチェーン強靱化に取り組みます。
また、ESG投資が6年で約2千兆円増加する中、特に、カーボンニュートラルは、大きな成長機会となっています。
日本は、カーボンニュートラル実現に向け、グリーン・トランスフォーメーション、すなわち、エネルギー、全産業、ひいては経済社会の大変革に挑戦し、その技術とノウハウをアジアと共有していきたいと考えています。
こうした大変革には、膨大な投資が必要となります。日本は、国内において今後10年間150兆円の投資の実現を目指すとともに、アジア・ゼロエミッション共同体構想などを通じ、世界のカーボンニュートラル化に向けた投資の拡大に貢献していきます。
最後になりましたが、ここにお集まりの皆様が、Gゼロの世界における課題と進むべき道について、活発に議論されることを期待し、そして、ここでの議論が世界の羅針盤となることを確信申し上げ、開会に当たっての私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。