2.1 内閣の組織

 憲法は内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する(第66条第1項)と定めている。内閣は合議制の行政機関であり、その運営を主宰するのは内閣総理大臣である。内閣を構成する内閣総理大臣以外の国務大臣の定数は、内閣法により、現在、14人(復興庁及び東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は16人)以内とされている。ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、17人(復興庁及び東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は19人)以内とすることができる。

内閣の成立

(1) 内閣総理大臣の指名から新内閣発足まで

 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。
 指名は単記記名投票で行われ、投票の過半数を得た者が指名された者となる。なお、1回の投票で過半数を得た者がいないときは、上位2人の決選投票を行い、多数を得た者が指名された者となる。
 また、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、両議院の協議会を開き、そこにおいても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後10日以内(国会休会中の期間を除く。)に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。

 国会の議決により、内閣総理大臣の指名を受けた者は、直ちに総理官邸において、国務大臣の選考(これを「組閣」という。)を行う。
 国務大臣の選考が完了すると、宮中において内閣総理大臣を任命する親任式が行われ、引き続き、国務大臣任命の認証式が行われる。
 宮中において、内閣総理大臣任命の親任式及び国務大臣任命の認証式を終えた後、総理官邸において、内閣総理大臣から、各省大臣、各庁長官等の辞令(これを「補職辞令」という。)が交付される。
 辞令交付後、直ちに初閣議を開催し、内閣発足に際しての内閣総理大臣談話、閣議陪席者の人事の決定や国務大臣の兼職禁止等についての申合せなどを行っている。

(2) 内閣改造

 内閣改造とは、人事刷新を図るなどのために、内閣総理大臣は代わることなく、他の国務大臣の全部又は一部が代わることをいい、内閣総理大臣の国務大臣任免権により行われる。このため改造に先立ち、閣議において国務大臣の辞表の提出(一般に「辞表の取りまとめ」といわれる。)を求めることとしている。
 この改造による新国務大臣の任命についても国務大臣の選考の方法、その後の認証式などの一連の流れは、組閣の際の流れと同様である。

(3) 内閣総辞職

 内閣総辞職とは、内閣総理大臣が単独に辞職するのではなく、内閣を構成する国務大臣も一体となって、その地位を失うことをいう。
 内閣総辞職は、内閣の一方的意思で行われ、その結果を国会に通知しなければならない。内閣総辞職が行われる場合としては、次の場合がある。

  • 衆議院で内閣不信任決議案が可決又は信任決議案が否決された場合

      内閣は、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない(憲法第69条)。

  • 衆議院議員の総選挙後初めて国会の召集があった場合

      先に内閣総理大臣を指名した衆議院の構成員が改選され、内閣はその存立の根拠を失ったことになるから、新しい国会の信任を改めて仰ぐ趣旨によるものである。
     総選挙の結果、政府与党が多数を占め、再び同一人が指名されることが予想されるときでも、信任の基礎を新たにするため、内閣は総辞職しなければならない(憲法第70条)。

  • 内閣総理大臣が欠けた場合

      内閣総理大臣が、死亡又は失格(議員の議席を失う)などの理由によって欠けたときは、内閣は総辞職しなければならない(憲法第70条)。

  • 内閣総理大臣が辞意を表明した場合

      内閣総理大臣が、病気等の事由により自ら辞意を表明する場合がある。この場合も内閣の総辞職が行われている。

(4) 総辞職後の内閣(いわゆる「職務執行内閣」)

 総辞職した内閣は、憲法第71条により、新たに内閣総理大臣が任命されるまでは引き続きその職務を行わなければならないとされている。これは一時的にせよ行政が停滞することを防ぐためである。総辞職後の内閣は、新たな内閣総理大臣の任命とともに消滅するものであり、専ら行政の継続性を確保するために必要な事務処理を行うにとどまるべきものであって、それを超えて新規政策の実現に積極的に取り組むようなことは差し控えるべきもの、とされている。

内閣総理大臣

(1) 基本的地位

 内閣総理大臣は、「内閣の首長」として、内閣を代表する地位にあると同時に、内閣全体の統一性及び一体性を確保する役割を有している。
 内閣総理大臣は、衆議院の解散や衆議院議員の任期満了により国会議員の地位を失っても、次の内閣総理大臣が任命されるまでの間は、その地位を失うことはない(憲法第71条)。

(2) 権限

 合議体である内閣が、行政権の担当者として統一ある行動を執り、国会に対して連帯責任を果たすためには、内閣総理大臣に強固な統率力が必要とされる。その内閣総理大臣が内閣の外に向かって、内閣を代表して行動する必要があることから、内閣総理大臣には、憲法上、国務大臣の任免権のほか、内閣を代表して議案を国会に提出すること、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督することなどの権限が、また、内閣法上、閣議の主宰権のほか、主任の大臣の間で権限の疑義がある場合は、閣議にかけてこれを裁定することなど、様々な権限が認められている。

(3) 内閣総理大臣の臨時代理

 内閣法は、内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う (第9条)と定めている。この規定による指定を受けた国務大臣が、内閣総理大臣が海外出張や病気等により職務遂行ができない場合の職務代行者となる。
 内閣総理大臣の職務代行者として予め指定を受けた国務大臣は、一般に、「内閣総理大臣臨時代理」と呼ばれているが、特に、内閣の発足時などに指定された者は、俗称として「副総理」と呼ばれている。

(4) 主任の大臣としての内閣総理大臣

 内閣府設置法では内閣府の長は、内閣総理大臣とする。内閣総理大臣は、内閣府に係る事項についての内閣法にいう主任の大臣とし、第4条第3項に規定する事務を分担管理する (第6条)と定め、また復興庁設置法では復興庁の長は、内閣総理大臣とする。内閣総理大臣は、復興庁に係る事項についての内閣法にいう主任の大臣とし、第四条第二項に規定する事務を分担管理する(第6条)と定めており、内閣総理大臣は、行政機関の一つである内閣府及び復興庁の長であり、主任の大臣としての地位を有している。

国務大臣

(1) 任免

 国務大臣は、内閣総理大臣によって任命され、また、任意に罷免される(憲法第68条第2項) 。この任免は、天皇が認証する(憲法第7条第5号)。

(2) 主任の大臣

 行政事務を分担管理する内閣府及び復興庁の長としての内閣総理大臣及び各省の長としての各省大臣を内閣法、内閣府設置法、復興庁設置法及び国家行政組織法で主任の大臣と規定している。すべての国務大臣が必ず、いずれかの行政事務を分担管理しなければならないというわけではなく、いわゆる「無任所大臣」が存在することを妨げるものではない。

(3) 権限

 国務大臣が主任の大臣としてその事務を分担管理することとされている行政機関は、内閣府及び復興庁のほか、総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境及び防衛の11省である。
 これらの行政機関の長としての各大臣は、その府・庁・省の事務を統括し、職員の服務を統督する権限のほか、その府・庁・省に係る主任の行政事務について法律及び政令の制定又は改廃の案についての閣議請議の権限、法律の委任に基づいた命令(府令・庁令・省令)、告示、訓令及び通達の発出の権限等を有している。

(4) 国務大臣の臨時代理

 主任の国務大臣が海外出張や病気等により職務遂行ができない場合に職務代行者(臨時代理)を置く規定として、内閣法第10条は主任の国務大臣に事故のあるとき、又は主任の国務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う。と定めている。

無任所大臣

 「無任所大臣」という用語は、法令上のものではなく、広義では、国務大臣のうち「主任の大臣」以外の国務大臣、つまり内閣総理大臣及び各省大臣以外の国務大臣を指し、狭義では、これから更に国家公安委員長など特定の行政機関の長や内閣官房長官を除き、いずれの行政機関にも属さない国務大臣をいう。
 一般に、後者を無任所大臣ということが多い。