1 内閣の組織
憲法は「内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する」(第66条第1項)と定めている。内閣は合議制の行政機関であり、その運営を主宰するのは内閣総理大臣である。内閣を構成する内閣総理大臣以外の国務大臣の定数は、内閣法により、現在、14人(復興庁及び東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は16人)以内とされている。ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、17人(復興庁及び東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は19人)以内とすることができる。
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衆議院本会議における内閣総理大臣の指名の記名投票 |
内閣の成立
(1) 内閣総理大臣の指名から新内閣発足まで
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。
指名は単記記名投票で行われ、投票の過半数を得た者が指名された者となる。なお、1回の投票で過半数を得た者がいないときは、上位2人の決選投票を行い、多数を得た者が指名された者となる。
また、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、両議院の協議会を開き、そこにおいても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後10日以内(国会休会中の期間を除く。)に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。
国会の議決により、内閣総理大臣の指名を受けた者は、直ちに総理官邸において、国務大臣の選考(これを「組閣」という。)を行う。
国務大臣の選考が完了すると、宮中において内閣総理大臣を任命する親任式が行われ、引き続き、国務大臣任命の認証式が行われる。
宮中において、内閣総理大臣任命の親任式及び国務大臣任命の認証式を終えた後、総理官邸において、内閣総理大臣から、各省大臣、各庁長官等の辞令(これを「補職辞令」という。)が交付される。
辞令交付後、直ちに初閣議を開催し、内閣発足に際しての内閣総理大臣談話、閣議陪席者の人事の決定や国務大臣の兼職禁止等についての申合せなどを行っている。
閣議構成メンバーの推移
内閣制度創設当時の閣議は、内閣総理大臣及び各省大臣の10人で構成されていた。その後、各省大臣の数については、省の統廃合・新設等によって変遷があった。これとは別に、内閣官制第10条の規定に基づき「特旨ニ依リ」国務大臣として内閣員に列せられる者がいた。いわゆる無任所大臣である。その無任所大臣については特段の定めはなかったが、昭和15年12月、勅令により「3人以内」と定められ、その後3回の改定を経て、内閣法施行時には「6人以内」となっていた。
昭和22年の内閣法施行により、内閣は、首長たる内閣総理大臣及び国務大臣16人以内を以て組織されることとなったが、その後、7回にわたる内閣法の改正により、現在は16人以内の国務大臣(ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、19人以内とすることができる。)を以て、これを組織するとなっている。
(推移)
明治18.12.22 |
10人 |
内閣総理大臣を含む。宮内大臣は内閣の組織外 |
昭和22.5.3 |
16人以内 |
内閣法施行、内閣総理大臣を除く |
昭和40.5.19 |
17人以内 |
内閣法改正、総理府総務長官は国務大臣となる |
昭和41.6.28 |
18人以内 |
内閣法改正、内閣官房長官は国務大臣となる |
昭和46.7.9 |
19人以内 |
内閣法改正、環境庁長官を追加 |
昭和49.6.24 |
20人以内 |
内閣法改正、国土庁長官を追加 |
平成13.1.6 |
14人以内(ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、17人以内とすることができる。) |
内閣法改正、中央省庁等改革 |
平成24.2.20 |
復興庁が廃止されるまでの間、15人以内(ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、18人以内とすることができる。) |
復興庁設置法附則による内閣法改正 |
平成27.6.25 |
東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間は16人以内(ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し19人以内とすることができる。) |
平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法の附則による内閣法改正 |
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(2) 内閣改造
内閣改造とは、人事刷新を図るなどのために、内閣総理大臣は代わることなく、他の国務大臣の全部又は一部が代わることをいい、内閣総理大臣の国務大臣任免権により行われる。このため改造に先立ち、閣議において国務大臣の辞表の提出(一般に「辞表の取りまとめ」といわれる。)を求めることとしている。
この改造による新国務大臣の任命についても国務大臣の選考の方法、その後の認証式などの一連の流れは、組閣の際の流れと同様である。
(3) 内閣総辞職
内閣総辞職とは、内閣総理大臣が単独に辞職するのではなく、内閣を構成する国務大臣も一体となって、その地位を失うことをいう。
内閣総辞職は、内閣の一方的意思で行われ、その結果を国会に通知しなければならない。内閣総辞職が行われる場合としては、次の場合がある。
- ●衆議院で内閣不信任決議案が可決又は信任決議案が否決された場合
- 内閣は、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない(憲法第69条)。
- ●衆議院議員の総選挙後初めて国会の召集があった場合
- 先に内閣総理大臣を指名した衆議院の構成員が改選され、内閣はその存立の根拠を失ったことになるから、新しい国会の信任を改めて仰ぐ趣旨によるものである。
総選挙の結果、政府与党が多数を占め、再び同一人が指名されることが予想されるときでも、信任の基礎を新たにするため、内閣は総辞職しなければならない(憲法第70条)。
- ●内閣総理大臣が欠けた場合
- 内閣総理大臣が、死亡又は失格(議員の議席を失う)などの理由によって欠けたときは、内閣は総辞職しなければならない(憲法第70条)。
- ●内閣総理大臣が辞意を表明した場合
- 内閣総理大臣が、病気等の事由により自ら辞意を表明する場合がある。この場合も内閣の総辞職が行われている。
(4) 総辞職後の内閣(いわゆる「職務執行内閣」)
総辞職した内閣は、憲法第71条により、新たに内閣総理大臣が任命されるまでは引き続きその職務を行わなければならないとされている。これは一時的にせよ行政が停滞することを防ぐためである。総辞職後の内閣は、新たな内閣総理大臣の任命とともに消滅するものであり、専ら行政の継続性を確保するために必要な事務処理を行うにとどまるべきものであって、それを超えて新規政策の実現に積極的に取り組むようなことは差し控えるべきもの、とされている。
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