岸田総理大臣のNATO首脳会合出席(結果)
現地時間6月29日午後、スペインを訪問中の岸田文雄内閣総理大臣は、NATO(北大西洋条約機構)首脳会合に出席したところ、概要は以下のとおりです。
- 今回のNATO首脳会合への出席は、NATOからの招待を受けたものであり、日本の総理大臣による出席は史上初めてです。岸田総理大臣が出席したNATOパートナー・セッションには、NATO加盟国30か国、NATOの主要パートナー国・機関として日本、豪州、ニュージーランド、韓国、スウェーデン、フィンランド、ジョージア、EU(欧州連合)の首脳等が出席しました。同会合では、ロシアのウクライナ侵略や厳しさを増すインド太平洋地域の安全保障情勢を踏まえ、NATOとパートナー国・機関との間での今後の協力等について議論が行われました。
- ストルテンベルグ事務総長の冒頭発言に続き、最初に岸田総理大臣から概要以下のとおり述べました。
- (1)国際社会が歴史の岐路に立つ中、NATO首脳会合に、我が国を含むアジア太平洋のパートナーが参加していることは、欧州とインド太平洋の安全保障が切り離せないとの認識の表れである。ロシアによるウクライナ侵略は、欧州だけの問題ではなく、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙。日本は、G7を始め同志国と足並みをそろえて前例のない強力な制裁措置を講じてきており、同時に、ウクライナの人々に寄り添う人道支援、財政支援、防衛装備品支援、避難民受入れを行っている。加えて、周辺国に対する人道支援やグローバルな食料危機への対応も含め、総額11億ドルの支援を実施していく。
- (2)ロシアによるウクライナ侵略は、ポスト冷戦期の終わりを明確に告げた。東シナ海・南シナ海で力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続されている。ウクライナは明日の東アジアかもしれないという強い危機感を抱いている。力による一方的な現状変更の試みは、決して成功しないことを、国際社会は結束して示していかねばならない。
- (3)また、今次侵略に際するロシアによる核兵器使用の脅しは、核不拡散体制に深刻なダメージを与えたのではないかと危惧。日本の周辺では、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展や核戦力を含む軍事力の不透明な形での増強が見られる。
- (4)現下の国際情勢を踏まえ、日本は、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定する。また、日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意。日米同盟を新たな高みに引き上げながら、有志国・パートナーとの安全保障協力も強化していく。
- (5)NATOは日本の重要なパートナーであり、協力の一層の強化に取り組んでいく。新時代の日NATO協力の地平を開くため、日NATO間での協力文書である「日・NATO国別パートナーシップ協力計画(IPCP)」を大幅にアップグレードする作業を加速化し、サイバー、新興技術、海洋安全保障といった分野での協力を進展させる。防衛当局間の連携も重要。NATO本部への自衛官派遣等を通じて協力を深化するとともに、日NATO相互の演習へのオブザーバー参加を拡充していく。
- (6)NATOが、インド太平洋地域への関与を強めていることを歓迎。ストルテンベルグ事務総長の早期の訪日を期待。また、NATOのアジア太平洋パートナー(AP4)である日本、豪州、ニュージーランド及び韓国のNATO理事会会合への定期的な参加を進めていくべき。
- (7)日本は、現実的な核軍縮の取組においてもNATO諸国と協力していきたい。特に、国際的な核軍縮・不拡散の礎石であるNPT(核兵器不拡散条約)体制の維持・強化がこれまで以上に求められている。本年8月の運用検討会議における意義ある成果に向けて共に取り組んでいく必要がある。
- (8)本日、NATOとパートナーがグローバルな安全保障認識を共有する機会を得たことは、今後への道しるべとなる。法の支配に基づく国際秩序の確立と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて、この場の出席者達との連携を強化していきたい。