令和3年9月9日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答
(質問)
コロナ病床の確保がなかなか進まない要因は何なのか、国民は疑問に思っています。総理として、号令をかけながらも進まず、この一年はさまざまな障壁を実感されたと思います。病床確保の壁はなんだったのか、純粋に人員不足なのか、病院経営というコスト面の問題なのか、医師会の存在といった政治的な理由なのか。この後の政権のためにも、ぜひ感じられたところを率直にお答えいただければと思います。【テレビ東京】
(回答)
国民の命を守るためにも、必要な医療が受けられる体制を作っていくことは、最も重要な対策であり、私自身、常にそうした思いで、対応してきたところであります。
しかしながら、なかなか病床の確保が進まず、その原因として、現場からは、「新型コロナの治療には通常以上に人手がかかり、医師や看護師が不足している」、あるいは、「通常の診療に手いっぱいで、新型コロナに対応できない」といった指摘を受けました。
そうした中でも、今年になってからだけでも、病床を約1万3千床、ホテル療養施設を約2万3千室確保しました。また、今回の感染拡大に際して、国自らができる限りの病床確保を図るため、国立病院機構では、新型コロナ対応の病床を東京全体で200床まで拡大し、全国の新型コロナ対策センターとしての役割を果たしてまいります。地域医療機能推進機構(JCHO)では、都内の1病院をコロナ専門病院といたします。さらに、改正した感染症法の規定に基づき、東京都とともに、医療関係者に対して協力要請を行いました。
それでも、依然として病床は十分ではなく、今後、有事にふさわしいスピード感で体制を確保するためには、医療機関の経営や他の診療との関係、人材の確保など様々な観点からの検討を深め、実効性のある新たな法整備も視野に検討してく必要があると考えております。
(質問)
総理は、会見を何回も開き、緊急事態宣言やコロナ対策について説明してこられましたが、「総理の言葉が響かない」、「質問と答えが嚙み合ってない」という声が多く聞かれました。小泉環境大臣も「もっと自分の言葉で総理に語って頂きたかった」と発言しています。総理は冒頭発言で様々な政策の成果を上げられましたが、国民とのコミュニケーションはきちんと取れていたとお考えですか?「国民のために働く」内閣の総理大臣として、少しでも国民の共感を得ようと努力はなさったのでしょうか?【ジャパンタイムズ】
(回答)
毎回、記者会見が終わるたびに、多くの方から様々なご意見を頂いております。
その中で、様々なご指摘・ご批判があったことについては、総理の立場にある者として、謙虚に受け止めたいと思います。
その上で申し上げれば、記者会見に臨むに当たっては、どのようにメッセージを発信すれば国民の皆さんに共感をもって受け止めて頂けるか、毎回、試行錯誤しながら、真摯に取り組んできたところです。
(質問)
菅総理が調整している9月下旬の米国訪問の目的は何か。退任直前の総理大臣の外国訪問に対し、与野党から「辞める人が行っても何も成果は出せない」「退陣表明した首相が何しに行くのか」との厳しい意見もあるが、どう受け止めるか。「コロナ対策に専念する」としたご自身の発言と矛盾しないのか。野党が求める臨時国会の召集になぜ応じないのか。【時事通信】
(回答)
今般、米国政府は、24日(現地時間)にワシントンDCで対面での日米豪印首脳会合を開催する旨発表しました。米国からは、是非ともこの時期に当該会合を開催したいとして、私も招待されました。
日米豪印による協力の推進の重要性に鑑み、諸般の事情が許せば、私は、ワシントンDCを訪問し、同会合に出席する方向で調整を開始したところです。
今回の会合は、日米豪印の4か国が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に強くコミットしていることを確認すると共に、ワクチン協力をはじめとする新型コロナ対策等を始めとした国際社会の重要議題につき首脳間で話し合う、極めて重要な機会になると考えています。
米国訪問を実施する場合も、関係閣僚としっかりと連絡を取れる体制を維持し、新型コロナ対策に万全を期してまいります。
臨時会の召集については、新型コロナ対策をはじめ、現在も与野党と国会において閉会中審査での議論を行っているところであり、国会のことでもあるので、与党とも相談しながら、対応しているところです。
(質問)
東京電力福島第1原発事故に伴うALPS処理水の海洋放出に関する質問です。処理水の処分を巡っては前安倍政権下で結論が先送りされ、菅首相がこの1年間の在任期間中に賛否はありながらも一定の方向性を出されました。処理水は総裁選でもテーマの一つに浮上しています。8日に立候補した高市早苗議員は「風評被害などのリスクがあるかぎり、放出の決断はしない」と政府決定を覆すような発言をされています。総裁選は候補者それぞれが主義主張を唱える性質のものではありますが、一度下した「2年後をめどに海洋放出」という政府方針を変更する、見直しするということはあり得るのでしょうか。【河北新報】
(回答)
アルプス処理水の取扱いについては、先送りが許されない状況の中で、安全性を確実に担保することや、徹底した風評対策を行うことを前提に、本年4月に政府として海洋放出を行う基本方針を決定しました。
その後も漁業者を始め様々な方から風評を懸念する声などを伺った上で、先月24日には、風評を生じさせないための対策を多く盛り込んだ「当面の対策」を取りまとめました。今回、盛り込んだ対策を着実に実施していきます。
なお、自民党総裁選に関係する個別の御主張について、政府としてコメントすることは控えさせていただきます。
(質問)
「説明しない政治」と国民の信頼についてうかがいます。安倍政権と菅政権の8年8カ月の「説明しない政治」が問われています。森友・加計問題、桜を見る会の問題に象徴されるように、国民の疑問・疑念に対して、説明を尽くさない姿勢のことです。総理も官房長官時代から、「説明しない政治」を行ってきました。そして、国民に協力を求めなければならない新型コロナウイルス対策で、説明を尽くさず、国民の信頼を失い、退陣に至りました。総理は、国民の信頼を失った理由についてどう考えていますか。安倍政権以来の「説明しない政治」が国民の信頼失墜を招いたのではないでしょうか。総理の考えをお聞かせください。【東京新聞】
(回答)
例えば、新型コロナ対策を進めるためには国民の皆さんのご協力が必要であることは言うまでもなく、会見室での会見のみならず、いわゆる「ぶら下がり会見」など、様々な機会を通じて、政府の方針や政策について、できるだけ丁寧かつ真摯に説明するよう努めてきました。
そうした説明のあり方について、様々なご指摘・ご批判があったことについては、総理の立場にある者として、謙虚に受け止めたいと思います。
(質問)
本日の記者会見で、総理、尾身会長ともに言及された、ワクチン接種がより進んだ局面でのワクチン・検査パッケージの導入の考え方に関連してお伺いします。ワクチン接種歴やPCR等の検査結果を基に、個人が他者に二次感染させるリスクが低いことを示すワクチン・検査パッケージの考え方は、去る9月3日に取りまとめられた新型コロナウイルス感染症対策分科会の考え方がベースになっていると理解しています。その中で、県境を越える出張や旅行、全国から人が集まるような大規模イベントでのワクチン・検査パッケージの適用が例示されています。それと同時に、その前提として、マスク着用などの基本的な感染症対策を当分継続するとされています。先月、緊急事態宣言下の愛知県で、マスク着用等の対策が不徹底で、酒類も販売される野外イベントが開催され、新型コロナ感染症のクラスターとなってしまう事例がありました。ワクチン接種の進展によるワクチン・検査パッケージの導入は、ウイズコロナの中での行動規制の緩和に向かう明るい面があると考えますが、一方で、上記事例の経験も踏まえると、行動規制の緩和が、事業者、個人とも双方に誤ったメッセージとなって伝わり、イベント等で必要な基本的な対策が、さらにおろそかになってしまうのではないかとの不安の声も地元では聞かれます。こうした不安の声に、どのようにお答えになりますか。行動規制の緩和と必要な感染症対策の徹底の両立についてどのようにお考えか教えてください。【CBCテレビ】
(回答)
ワクチン接種が進むことで、新型コロナとの闘いは全く異なる状況を呈しています。デルタ株による感染拡大の中でも、2回接種を済ませた方の感染は、接種していない方の13分の1でした。また、今回の感染拡大を前回と比較すると、感染者は2.9倍に増えたのに対し、重症者は1.6倍にとどまり、死亡者は6割減少しています。
ワクチン接種が進捗し、こうした効果が明らかになる中で、繰り返される新たな感染拡大への備えを固めつつ、同時に、いわゆる「ウィズ・コロナ」の社会経済活動を進めていく必要があると考えております。
そのための手法として、「ワクチン・検査パッケージ」を活用することとしておりますが、その実施に際しては、飲食については第三者認証を活用するなど、基本的な感染対策をしっかりと行っていただくことが前提となっております。今後、国民的な議論も踏まえ、制限緩和の具体化を進めてまいります。
(質問)
1年で退陣することになりましたが、何ができて何ができなかったか、首相としてどのような自己評価をされますか。また、この1年間、菅首相の発信力不足が度々指摘されてきました。新型コロナ対策など国民にお願いをする場面が多かった中、改めて自身の発信の仕方をどう評価しますか。【神戸新聞】
(回答)
この1年、新型コロナをはじめ、この国が直面する諸課題に全力で取り組んでまいりました。
新型コロナ対策は、常に、最優先で取り組み、その中でも、切り札であるワクチンに全力をあげてきました。変異株にも高い効果をあげており、今回の感染拡大の中でも、多くの方々の感染や重症化を防ぐことができていると思います。
しかしながら、いまだ、新型コロナは収束に至っていません。内閣総理大臣として、最後の日まで、対策に専念し、医療体制の確保とワクチン接種に全力をあげ、安心の日常への道筋をつけられるようにしたいと思います。
ほかの政策についても、必要な政策は先送りせず、私の政権の間に基本的な考え方は示していきたいと思い、取り組んできました。
すべてをやり切るには短い時間でしたが、その中でも、記者会見でもご紹介させていただいた様々な課題について、前に進めることはできたのではないかと思っています。
また、私の発信について、様々なご指摘・ご批判があったことについては、謙虚に受け止めたいと思います。
(質問)
官房長官時代には定評があった危機管理ですが、この1年間、総理は国民とのリスクコミュニケーションはうまくいったとお考えでしょうか。仮に反省点があるとすればどこに問題点があったのでしょうか。よろしくお願い致します。【西日本新聞】
(回答)
大規模災害や我が国の安全保障に関わる事態、また、新型コロナへの対応にあたっては、私自身、国民の皆さんに対する正確で時宜を得た発信と説明を心がけてきました。
様々なご指摘・ご批判があったことについては、謙虚に受け止めますが、総理の立場にある者として、できる限りの最善を尽くしてきたと考えています。
(質問)
本日の会見で配布された資料の3枚目には、4月1日~5月31日(61日間)と7月10日~9月8日(61日間)を比較し、死亡者数(累積)が3886人から1590人へと「60パーセント減」とあります。会見でも菅首相が言及しました。今、国民が知りたいのは、ワクチン接種により死者数が60パーセント減ったことではありません。入院できずに十分な治療が受けられない自宅療養者の無念の死が相次いでいます。その現実に対して、菅首相がどう向き合い、どんな策を講じているかです。そこで、4月1日~5月31日(61日間)と7月10日~9月8日(61日間)について、それぞれの全国の自宅療養者の死者数(累積)と、増減率を教えてください。その上で、見解を述べてください。自宅療養者の死が相次ぐのは十分な医療を提供できていないからです。救えた命も少なくないと思われます。それは政治の責任だと思いますが、菅首相はどう思いますか。菅首相はきょうの会見で、「国民の命と暮らしを守る、この一心で走り続けてきました」と言いましたが、自宅療養者の死が示すように国民の命を守れていません。その責任をどうお感じか。杉並区の田中区長や埼玉県の大野知事は行政に落ち度があったコロナ患者の死亡について謝罪しています。菅首相は国民の命を守れなかったことについて謝罪するつもりはありますか。【日刊現代】
(回答)
警察庁のデータによれば、令和3年に警察が取り扱った新型コロナ陽性のご遺体のうち、自宅等(入所施設や宿泊施設等を含む。)で亡くなられ、生前にPCR等の検査が実施され、かつ、死因が新型コロナウイルス感染症であった方は、4月は26人、5月は24人であったのに対し、7月は10人、8月は93人であったと承知しています。
今回の感染拡大において、感染者数の急激な増加に伴い重症者数が過去最大の規模となり、自宅で亡くなられるケースも増えていると承知しており、大変重く受け止めています。
自宅で療養する方々には、しっかりと状況を把握し、必ず連絡をとれる体制をつくることが極めて重要と考えております。
このため、パルスオキシメーターを配布するとともに、身近な診療所による健康観察、症状が悪化した方への往診やオンライン診療等を行える体制の整備などに取り組んでおります。併せて、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備するため、病床やホテルに加え、全国で酸素ステーション、臨時の医療施設などの増設にも取り組んでおります。
こうした中、今、私がやるべきことは、この危機を乗り越え、安心と賑わいのある日常への道筋をつけることであり、そのことが総理大臣としての責任であると考えています。引き続き、国民の命と暮らしを守るという決意の下、各都道府県とも緊密に連携をしながら、必要な対策を進めてまいります。
(質問)
安倍・菅政権の約9年間、首相は政権の中枢を長く担ってきました。この間、両政権は様々な改革を取り組む一方、数々の問題もありました。森友・加計学園問題や「桜を見る会」の問題、参院選広島選挙区での大規模な選挙違反事件のほか、秋田フーズ事件、IR汚職事件など政治とカネの問題も相次ぎました。厚労省の統計不正問題や総務省の接待問題もありました。この9年間、政権中枢を担った首相は、なぜこうした不祥事が相次いだと総括されていますか。これらの要因の一つとして、内閣人事局の弊害が指摘されています。各省庁の現場が萎縮、あるいは政治家への忖度が働くようになってしまったとの指摘ですが、こうした指摘についてはどのようにお考えになっていますか。【朝日新聞】
(回答)
御指摘のような事案について、国民の信頼を大きく損なったとの批判があることは、党として、また、政府として、重く受け止めています。
いずれにせよ、政治家は、その責任を自覚し、国民から疑念を持たれないよう、常に襟を正していかなければならず、また、国家公務員も、自らを省み、ルールの遵守を徹底して国民の信頼を回復し、期待に応えられるよう努めていかなければならないと考えています。
また、内閣人事局の下での幹部人事の一元管理制度は、能力・実績主義に基づく公正・中立な人事配置を行う仕組みとなっており、御指摘のようなことがないよう、今後とも、人事を適材適所で行い、職員が、適正な業務遂行はもとより、士気高く、職務に邁進(まいしん)できるよう努めていかなければならないと考えています。
(質問)
総理は9月3日に総裁選不出馬を表明されましたが、その日の官邸でのぶら下がりは2分ほどで終わりました。3日の首相動静を見ていますと、午後6時48分に議員宿舎に戻られています。なぜ、その日の夜に正式な形で記者会見を開いて、国民にしっかりと説明をされなかったのでしょうか。9日の記者会見は、緊急事態宣言などの延長が決まり、宣言解除の新たな基準も示されましたが、退陣に関する質問が多く出ました。3日にしっかりと自身の不出馬について説明する会見をしていれば、国民はもっとコロナ対策について政府が何を考えているかを知ることができ、政府もまた国民に注意喚起ができたのではないでしょうか。これまでの流れであれば、宣言を延長した9月30日の前に、記者会見が開かれることになると思います。今回のように途中で質問を打ち切らず、最後まで記者の質問に答えていただく考えはありませんでしょうか。【京都新聞】
(回答)
新型コロナ対策に専念したいとの思いから、総裁選に出馬しない判断をしました。
この詳細については、記者会見において今後の新型コロナ対策についてご説明させていただく際にあわせてお話させていただくことにしました。
なお、可能な限り、記者の皆さんの御質問にお答えしておりますが、総理として多くの公務がある中で、時間制限を設けずに質問をお受けすることは現実的ではないと考えます。
(質問)
総理は総裁選不出馬の理由について「とてつもないエネルギーが必要」と述べ、ご自身の1年間の取り組みを説明されました。総裁選に大きなエネルギーが必要になったのは、国民の支持を失い、党内の求心力が低下したことが要因ではないでしょうか。内閣支持率が下落した理由についておうかがいします。総理のメッセージ、言葉が届かず、国民が総理から寄り添う姿勢を感じられなかったことが大きいのではないのでしょうか。こうした指摘にどうお答えになりますか。また次の首相に求める資質をおうかがいします。【北海道新聞】
(回答)
総裁選については、新型コロナ対策と総裁選を両立するには、とてつもないエネルギーが必要であり、12日の緊急事態宣言の解除が難しいことが分かってきた中で、新型コロナ対策に専念すべきだと考え、最終的に出馬しない判断をしました。それに尽きます。
支持率の低下については、真摯に受け止めたいと思います。私の発信について、様々なご指摘・ご批判があったことについても謙虚に受け止めたいと思います。
次の首相には、この新型コロナの危機を乗り越え、経済、外交、安全保障、山積する課題に果敢に取り組み、国を前に進めていただきたいと思います。
(質問)
昨秋の総裁選で「責任を持って対応する」と約束された、河井事件の1億5千万円の実態解明が果たされていません。残る任期でどう対応しますか。安倍前総裁が支出に関与したと二階幹事長も認めています。国民の税金が充てられている以上、新総裁も安倍氏への聞き取りなど、実態解明の責任を負う必要があると思います。総理はどのようにお考えで、新総裁にこの問題をどう引き継ぎますか。【中国新聞】
(回答)
御指摘の資金については、党の公認会計士が内規に照らして監査を行い、しっかりとチェックし、その結果を踏まえ、法令にのっとって適切に対応することとしています。