令和3年3月18日新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問と回答
(質問)
想定される第4波について、専門家からは「変異ウイルスの影響で第3波よりも大きなものになる可能性がある」との見方もある。政府として現在、どのような見通し、認識を持っているか。また、若者がなかなかPCRなどの検査を受けたがらない傾向があるとの指摘がある中、若者がこうした検査を受けるように何らかのインセンティヴを付与すべきとの考えもある。総理はどのように考えているか。【テレビ東京】
(回答)
変異株については、クラスターが複数報告されるとともに、海外とのつながりのない事例が継続的に確認されている状況にあり、政府としても強い危機感を持って対処してきました。また、新規感染者数は横ばい又は微増となっており、人出が増加している地域もあることもあり、感染の再拡大が懸念されるとの指摘があると承知しています。
政府としては、宣言解除後も、感染の再拡大の阻止等に向けて、飲食の感染対策、変異株の対応、感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、安全・迅速なワクチン接種、次の感染拡大に備えた医療体制の強化という5本の柱からなる総合的な対策を講じてまいります。
加えて、国民の皆さんに、引き続き、緊張感を持って対応していただくことが極めて重要であります。政府のメッセージが広い世代の方々に届くよう、テレビCMのほか、SNSやネット動画などありとあらゆる媒体を活用し、これまでにない規模で、集中的な情報発信に取り組んでまいります。
(質問)
今国会に提出しているデジタル改革関連法案についてお伺いします。個人情報保護に関しては、地方自治体の個人情報保護条例を事実上、国基準に合わせることになります。個人情報保護については、1980年代から地方が国に先駆けて保護条例を作ってきた歴史がありますが、今回、国基準に合わせることで、自治体の取組がないがしろにされるのではないか、という指摘があります。地方議会からは慎重審議を求める決議も出されています。総理は地方議員出身であり、こうした経過も御存知かと思いますが、どのようにお考えですか。
また自分の情報を国がどのように収集しているかを国民は知ることができません。欧州では国の情報収集について第三者性の高い機関がチェックできるようになっています。欧州並みの情報の利活用を目指すのであれば、情報開示も欧州レベルにする必要があるのではないでしょうか。考えをお聞かせください。【京都新聞】
(回答)
今般、地方公共団体ごとの条例の規定等が異なるために、新型コロナウイルス感染症の流行への対応等の全国的課題をめぐり、地方公共団体によって個人情報の取扱いに関する対応が分かれたことが指摘されています。
デジタル改革関連法案による改正後の個人情報保護法では、地方公共団体における個人情報の取扱いに関する全国的な共通ルールを規定することとする一方、地域の特性に応じ必要な場合には、条例による独自の保護措置の規定も可能としています。
法案が成立した場合は、施行に向けて、地方公共団体に対して、改正内容を丁寧に説明していきたいと考えています。
また、行政機関は、その保有する個人情報ファイルの概要を記載した個人情報ファイル簿を作成し、公表しなければならないこととしており、透明性が確保されているものと考えています。
(質問)
昨年来、日本は要請と自粛がベースの「日本モデル」で外国よりも感染を抑え込んできましたが、今回の緊急事態宣言では、ここに来て感染者数の下げ止まり、再び感染者の増加が見られ「日本モデル」は限界にあるとの指摘もあります。変異株の脅威がある中、今後も日本のコロナ対策は原則「日本モデル」でいくのでしょうか。それとも、変異株など感染状況によっては転換もあり得るのでしょうか。【西日本新聞】
(回答)
これまで欧米諸国ではロックダウンなどの措置が講じられてきましたが、我が国では、これまで学んできた経験を踏まえ、専門家が感染リスクと指摘する飲食の場面を中心に感染対策を実施し、新規感染者数が8割以上減少するなど、はっきりとした効果を上げてきました。
一方で、感染再拡大が懸念されるとの指摘があることは承知しており、宣言解除後も、感染再拡大の阻止等に向けて、飲食の感染対策、変異株の対応、感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、安全・迅速なワクチン接種、次の感染拡大に備えた医療体制の強化という5本の柱からなる総合的な対策を講じてまいります。
加えて、国民の皆さんに、引き続き、緊張感を持って対応していただくことが極めて重要であります。政府のメッセージが広い世代の方々に届くよう、テレビCMのほか、SNSやネット動画などありとあらゆる媒体を活用し、これまでにない規模で、集中的な情報発信に取り組んでまいります。
(質問)
菅義偉首相は18日の記者会見で、東京五輪・パラリンピックについて「開催をしっかり応援していきたい」と発言しました。これまでは「人類が新型コロナに打ち勝った証」として開催する考えを繰り返してきましたが、政府の方針に変化があったのでしょうか。また、25日の聖火リレー出発式に参加されない理由もお聞かせください。【時事通信】
(回答)
東京大会については、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会として、
安全・安心な大会を実現するという決意は変わっておりません。
聖火リレーのグランドスタートについては、国会の日程などを総合的に勘案して、今回は出席を見合わせることとしました。
広く日本中の皆様に大会が近づいていることを実感していただく貴重な機会として、聖火が全国を巡ることを期待しています。
(質問)
今回の緊急事態宣言解除の決定に関連して伺いします。緊急事態宣言をめぐっては、これまで地元の知事の意向や要請を踏まえて判断されてきたかと思います。首都圏についても年明けに1都3県の知事が再発令の検討を要請する動きがありました。しかし宣言の再延長、そして今回の解除については1都3県の知事の要請などを受けない形で総理御自身が判断されているかと見受けられます。その理由とともに、地元の意向をどのように酌み取ったのかについて伺いします。また、宣言から解除までどのような心境でおられたのかも伺います。【神奈川新聞】
(回答)
緊急事態宣言の発出後、飲食を中心としたメリハリのある対策を講じた結果、1都3県の新規感染者数は8割以上減少し、病床使用率も大幅に低下しました。医療、介護などの関係者の皆様の御尽力、国民や事業者の方の御協力に心から感謝申し上げます。宣言の解除に当たり、感染拡大を二度と起こしてはいけない、その決意を、改めて私自身、自らにも言い聞かせております。
新型コロナへの対応においては、国が基本的対処方針で大きな方針を示し、各知事は、地域の実情に応じて措置を判断するとの役割分担により、これまで緊密に連携しながら、対策に取り組んできました。
今回の解除に当たっても、1都3県から要請書は出されておりませんが、新型コロナ対策室の方で、適宜必要な情報交換等を行ってきたものであります。
宣言が解除された今が大事な時期であり、感染の再拡大を阻止するため、それぞれの地域の状況を踏まえ、国と自治体が、一層協力しながら、しっかりと対策を講じてまいります。
(質問)
原発再稼働について伺います。本日、水戸地裁は、東海第二原発について、再稼働を認めない判決を言い渡しました。東海第二原発は再稼働の条件である新規制基準を満たしていますが、司法は再稼働を認めませんでした。また、今週、東電の柏崎刈羽原発で、テロ対策で最悪レベルの不備が明らかになり、早期再稼働は不可能となりました。こうした、様々な問題にもかかわらず、原発再稼働を目指しますか。多くの問題を抱える原発に依存してカーボンニュートラルを進めるより、他の方法を考えるべきではありませんか。【東京新聞】
(回答)
安全対策をしっかりと実行しなければならない東京電力が、柏崎刈羽原発において、この度、重大で不適切な事案を起こしたことは大変遺憾であり、深刻に受け止めています。東京電力においては、高い緊張感を持って、責任感を持って、まずは規制委員会の検査に真摯に対応すべきだと考えており、東京電力を監督する立場の経済産業省から厳しく指導していきます。
一方で、原発については、依存度を低減させつつ、安全最優先、すなわち、原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準に適合すると認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていくという方針に変わりはありません。
また、2050年カーボンニュートラルを実現するには、電源の脱炭素化は大前提です。省エネ、再エネに加えて、原子力も含めてあらゆる選択肢について議論を進め、11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)までに結論を出していきます。
なお、御指摘の判決や同日の広島高裁の伊方原発に関する判決は民事訴訟であり、国は訴訟の当事者ではありません。
(質問)
東北新社の外資規制違反で、総務省は衛星放送事業の認定を取り消すとしています。ただ東北新社側は外資規制違反を子会社への継承で解消したいと事前に提案したと、日付なども詳細に説明しています。当時の課長は記憶にないと繰り返していますが、総理はこの説明で納得されますか。東北新社側の説明が事実だった場合はどう対処されるでしょうか。また武田大臣始め、NTTからの総務大臣や政務三役だった政治家との接待が明らかになりました。官僚は利害関係者から接待が判明すると処分されますが、政務三役はその省の利害関係者から接待を受けても大臣規範にある「国民の疑惑を招くような接待」ではなかったと自己申告すれば処分を免れます。大臣規範を厳格化、あるいは国家公務員倫理規程に政務三役を適用するなど、改善のお考えはないでしょうか。【北海道新聞】
(回答)
外資規制違反の件については、現在、総務省において認定の取消しに向けて手続を進めていると聞いています。
また、総務省においては、第三者による検証委員会が検証を行っていると承知しており、その中で、総務省から外資規制違反についても報告がなされたと聞いています。
引き続き、総務省において法令にのっとって、必要な対応がなされるものと承知しています。
各府省の政務三役を含め、我々政治家は、日々その見識を深めるため、様々な方々との意見交換を始め、政治家としての良識と判断に基づき、政治活動を行っています。
その上で、特別職である政務三役については、公職にある者としての清廉さを保持し、政治と行政への国民の信頼を確保する観点から、自ら律すべき規範として、大臣等規範が定められており、その趣旨を踏まえ、自ら適切に判断し、対処すべきものであると考えます。
いずれにしても、政務三役については、引き続き、大臣等規範等の遵守を徹底し、自らを律することにより、厳正な職務規律の確保に取り組んでまいりたいと思います。
(質問)
国産ワクチン、治療薬の開発に対する国からの支援、開発状況について、総理のお考えをお聞かせください。【ラジオ日本】
(回答)
新型コロナウイルスを始めとした予期せぬ感染症に対するワクチンについて、国内で開発・生産ができる体制を確立しておくことは危機管理上も極めて重要であると考えております。国内の主な新型コロナワクチン開発の進捗については、複数の会社で臨床試験が開始されたほか、年度内に臨床試験を開始する意向を持つ企業もあると承知しています。
いつまでに開発できるのかについて予断を持ってお答えすることは困難ですが、政府としては、研究開発や生産体制の整備への補助を行っていることに加え、国産ワクチン開発企業について発症予防効果を評価する試験の実施費用の補助を行うこととしており、引き続き、国内での開発の基盤整備を後押ししてまいります。
また、治療薬の開発については、既存の薬が使えないかどうかを確認する研究、抗体を活用した治療薬や治療方法に関する研究、新しい治療薬を作るために必要な候補物質を探す研究等が、多くの機関によって行われており、日本医療研究開発機構(AMED)における事業等により研究開発費等の支援を行っているところです。