菅内閣総理大臣記者会見
【菅総理冒頭発言】
新年に当たり、一言御挨拶をさせていただきます。
例年であれば、五穀豊穣(ほうじょう)と人々の幸せを祈る伊勢神宮(いせじんぐう)へ参拝した後に年頭の記者会見を行っておりましたが、今年は現在の新型コロナウイルスの状況を踏まえ、参拝をしかるべき時期まで延期し、ここ官邸において会見を行うことになりました。
新型コロナウイルスについては、引き続き1日の感染者数が3,000人を超え、重症者数も高い水準で推移しており、非常に厳しい状況だと認識いたしております。
まずは、年末年始も最前線で闘っておられる医療、介護を始めとする関係の方々、そして外出や帰省を控えていただいている国民の皆様に、心から感謝を申し上げる次第です。
政府としては、こうした厳しい状況を踏まえ、改めてコロナ対策の強化を図っていきたいと思います。まずは感染対策、さらに水際対策、医療体制、ワクチンの早期接種、この4点で強力な対策を講じることにいたしました。
第1に感染対策です。12月の人出は多くの場所で減少しましたが、特に東京と近県の繁華街の夜の人出はあまり減っておりませんでした。昨年以来、対策に取り組む中で判明したことは、経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘いたしております。したがって、飲食でのリスクを抑えることが重要です。そのため、夜の会合を控え、飲食店の時間短縮に御協力いただくことが最も有効ということであります。1都3県について、改めて先般、時間短縮の20時までの前倒しを要請いたしました。そして、国として緊急事態宣言の検討に入ります。飲食の感染リスクの軽減を実効的なものにするために、内容を早急に詰めます。さらに給付金と罰則をセットにして、より実効的な対策を採るために、特措法を通常国会に提出いたします。
第2に水際対策です。年末にウイルスの変異種が帰国者から見つかり、外国人の新規入国を原則として拒否することにし、入国規制を強化しています。また、いわゆるビジネストラックについても、相手国の国内で変異種が発見された際には、即時停止とすることにいたします。
第3に医療体制です。特に東京を始めとする幾つかの都市でひっ迫する状況が続いております。各地域において新型コロナウイルス感染者を受け入れる病院、病床の数を増やしていただく必要があります。国として、看護師などスタッフの確保、財政支援を徹底して行うとともに、各自治体と一体となって病床確保を進めてまいります。必要ならば、自衛隊の医療チームの投入も躊躇(ちゅうちょ)いたしません。医療崩壊を絶対に防ぎ、必要な方に必要な医療を提供いたします。
第4にワクチンです。感染対策の決め手となるワクチンについては、当初、2月中に製薬会社の治験データがまとまるということでしたが、日本政府から米国本社に対して強く要請し、今月中にまとまる予定であります。その上で、安全性、有効性の審査を進めて、承認されたワクチンを、できる限り2月下旬までには接種開始できるように、政府一体となって準備を進めております。まずは医療従事者、高齢者、高齢者施設の従事者の皆さんから順次開始したいと思います。私も率先してワクチンを接種いたします。
それまでの間、国、自治体、そして国民の皆様が感染拡大を減少に転じさせるために、同じ方向に向かって行動することが大事です。これから新年会のシーズンを迎えます。引き続き不要不急の外出などは控えていただきたいと思います。
従来のウイルスも変異種も対策は同じです。マスク、手洗い、3密の回避を是非お願いをいたします。今こそ、国民の皆様と共に、この危機を乗り越えていきたいと思います。是非とも皆様方の御協力をよろしくお願い申し上げます。
まずは、新型コロナウイルスの感染を収束させ、その上で新たな時代において我が国経済が再び成長し、世界をリードしていくことができるように、就任以来100日余り、これまでの発想にとらわれない改革を続けてまいりました。できるものから実現し、国民の皆さんに成果をお届けする。私は、令和3年をそんな年にしたいと思います。
携帯電話料金については、大手が相次いで現在の半分程度となる大容量プランを実現すると発表し、本格的な競争に向けて大きな節目を迎えました。
また、地方の活性化については1兆5,000億円の交付金を用意し、地域社会の立て直しを進めていただきたいと思います。また、5年間で15兆円規模の国土強靱(きょうじん)化にも取り組んでいきます。農産物の輸出については、新たな野心的な計画の下で、米や牛肉などの重点品目の産地をしっかり支援していきます。
さらに、次の時代の成長の原動力となるのがデジタルとグリーンです。今年の9月にはデジタル庁をスタートさせ、いよいよ改革を本格化させます。有能なデジタル人材が国や地方の現場で、また民間でも活躍し、同時に全ての国民の方々が恩恵を実感することができるデジタル社会を目指してまいります。また、2050年カーボンニュートラル、ここを目指して年末に取りまとめましたグリーン成長戦略を更に具体化し、できるものから実行に移していきます。2兆円の基金、税制を活用して、再生可能エネルギーの鍵となる蓄電池を筆頭に、大規模な設備投資や研究開発投資を実現します。このような成長志向型の政策をこれからも展開していきます。
長年にわたり最大の課題とされる少子化問題についても大きく歩みを進め、これからの世代が希望を持てる年にしたいと思います。不妊治療の保険適用を来年4月から開始します。現行の助成制度も、所得制限を撤廃して2回目以降の助成額を倍にした上で、予算成立後、1月1日に遡って適用いたします。さらに、今後4年間かけて14万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童問題の最終的な解決を図ります。加えて、40年ぶりの大改革として、長年の課題でありました35人学級を本年から実現し、生徒一人一人に行き届いた教育を進めてまいります。このような少子化対策、若者の皆さんのための政策をこれからも続けていきたいと思っています。
コロナが世界の対立を生み出し、修復の兆しがいまだ見えない中だからこそ、私は多国間主義を重視し、ポストコロナの秩序づくりにリーダーシップを発揮していきたいと思います。その上で最も重要なパートナーが米国です。バイデン次期大統領が就任されたのち、できる限り早くお会いして、日米同盟の絆(きずな)をより強固なものにしたいと思います。そして、最も重要な拉致問題や国際社会が直面する課題の解決に緊密に協力をしていく関係を築き上げていきたい、このように思います。この日米同盟を基軸にしながら、豪州、インド、欧州、ASEAN(東南アジア諸国連合)など、様々な国、地域と連携を深め、自由で開かれたインド太平洋の実現に取り組みます。また同時に、中国、ロシア、近隣諸国との安定的な関係を築いていきたいと思います。
当面は、新型コロナウイルス、その克服に全力を尽くします。一日も早くこれまでの日常を取り戻し、皆さんに安心と希望をお届けしたいと思います。
夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けするこの大会を実現するとの決意の下、準備を進めてまいります。
今年は、改革の芽を大きく育て、国民の皆さんにその果実を実感していただきたいと思っています。そして、後に令和3年を振り返ったとき、その年が新たな成長に向かう転機となった変革の年であった、こう言われる年にしたいと思います。そうした思いで、国民のために働く内閣として、今年も全力で取り組んでまいります。
私からは以上です。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これから皆様から御質問を頂きます。
指名を受けられました方は、私から指名させていただきますので、近くのスタンドマイクにお進みいただきまして、所属とお名前を明らかにしていただいた上で質問をお願いいたします。質問が終わりましたら、マスクを着用の上、自席までお戻りください。なお、自席からの追加質問はお控えいただきたいと存じます。
最初は、慣例に従いまして、幹事社2社から1問ずつ質問を頂きます。
それでは、幹事社の方、どうぞ。
テレ東の篠原(しのはら)さん、お願いします。
(記者)
テレビ東京の篠原です。幹事社質問をさせていただきます。
緊急事態宣言について、1都3県について発令を検討されるというお話がございました。報道では週内にも発令を検討されているという報道が相次いでおりますが、具体的なスケジュール感について教えていただければと思います。また、発令する場合というのは、一定の周知期間は設けるお考えでしょうか。また、昨年末の会見では、この緊急事態宣言には慎重な姿勢を表明されていましたが、ここに来て一転してこの発令の検討に至った、その一番のポイントというのはどういったところでしょうか。また、GoToトラベルが11日に全国停止の期限を迎えます。今回の緊急事態宣言の対象になるであろう1都3県を除いて解除を行うのか、それとも引き続き全国の一斉停止を続けるのか、現状のお考えをお聞かせいただければと思います。
(菅総理)
まず冒頭の挨拶の中で申し上げましたとおり、国として緊急事態宣言の検討に入りたいと思います。特に飲食の感染リスク、この軽減を実効的なものにするために内容を詰めていきたい、このように思います。
この考え方でありますけれども、北海道、大阪など、時間短縮を行った県は結果が出ています。東京といわゆる首都3県においては、三が日も感染者数は減少せずに、極めて高い水準であります。1都3県で全国の新規感染者数の半分という結果が出ております。こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージが必要である、このように考えました。
そして、こうした考え方の下に、政府として諮問委員会にかけさせていただいて、そこで考え方を伺うわけであります。ですから、具体的にいつということよりも、まずは飲食の感染リスクを軽減する実効的なもの、そのことをこれから詰めて、そこの中で表明したいと、このように思っています。
それと、緊急事態宣言となれば、いわゆるGoToトラベル、これについての再開はなかなか難しいのではないかと、このように考えています。
今申し上げたとおり、難しいので、緊急事態宣言になれば、そこは難しいということです。
(内閣広報官)
すみません。追加質問はお控えください。
それでは、幹事社の方、もう一社どうぞ。時事の大塚さん、お願いします。
(記者)
幹事社時事通信の大塚です。
今後の政治日程についてお伺いします。通常国会が今月召集されます。どのような成果を目指すのか。また、その成果を踏まえ、9月に任期を迎える自民党総裁への御自身の再選、10月に任期を迎える衆議院の解散への対応、それぞれについてお考えをお聞かせください。
(菅総理)
まずは、国会においては補正予算と来年度予算の早期成立を図りたいと思います。そして、コロナの特措法改正議論を急ぎ、早期に法案を提出します。さらに、デジタル庁の設置や35人学級のための法案などがあります。また、行政手続のはんこの廃止のための法案、こうした多くの法案を提出し、そういう中で国会にしっかり説明していきたいと思っています。
総裁選、衆議院解散でありますけれども、当面は新型コロナウイルスの感染対策、これを最優先して取り組んでいきたいと思います。そして、日本の経済全体を見渡しながら、再生に向けても、これは取り組む必要があると思っています。
こうしたことに全力で取り組んでいく中で、いずれにしろ秋までのどこかでは衆議院選挙を行わなければならないわけであります。もう任期も決まっていますから。そうした時間の制約も前提にしながら、そこはよくよく考えた上で判断したいと思います。まだ総裁選挙は先の話だと思っています。まずは目の前のこうした課題に一つ一つしっかり取り組んでいくことが大事だと、このように思います。
(内閣広報官)
それでは、幹事社以外の皆様から御質問を頂きます。
質問を希望される方は挙手してください。私が指名いたしますので、所属とお名前を明らかにした上で質問をお願いします。質問が終わりましたら、マスクを着用の上、自席までお戻りいただきたいと思います。なるべく多くの方に御質問いただけるよう、質問はお一人1問としていただくようお願いします。
それでは、挙手をお願いします。では、読売の黒見さん。
(記者)
総理、読売新聞の黒見です。
緊急事態宣言についてお伺いいたします。総理はかねて緊急事態宣言については、経済への打撃が大きいということで慎重な立場でいらっしゃったと思うのですけれども、今回検討するに当たっては、その経済への打撃を和らげるための対策としてはどういったものを考えていらっしゃるでしょうか。
(菅総理)
まず、この1年間、コロナ対策、コロナ問題に対応してくる中で学んできたことが、ここは明快になっているのです。専門家の委員の方も言っていますけれども、やはり例えば東京ですけれども、6割この発生源を特定できない方々がおります。その中で大部分は飲食に関係することだろう、専門委員の方はこう言っております。そうした中で、飲食の感染リスクの軽減、ここをやはり実効的にするために、ここは早急に検討したいというのが今の考え方です。
そして、このことについて北海道、大阪など、これは時間短縮、こうしたことを行った県では効果が出て、陽性者が下降してきております。ただ、東京とその近県3県が感染者が減少せずに高い水準になっているということもこれは事実であります。こうしたことをやはり深刻に考えて、より強いメッセージ、ここが必要だというふうに思いました。
そうしたことを考える中で、まずは最優先として行うべきというのは、そうしたリスクの発生源がかなり多いと言われる飲食、そうしたことを中心にしっかり対応すべきかなと思っています。
(内閣広報官)
それでは、次の御質問を受けたいと思います。
では、フリーランスの江川さん。
(記者)
フリーランスの江川紹子と申します。よろしくお願いします。
質問の前に今のちょっと確認なのですけれども、つまり、飲食に集中するということは、前回、昨年4月の緊急事態宣言のように、教育、文化、スポーツ、いろいろな経済活動全てを止めてしまったような緊急事態宣言とは違うものをイメージされているということでいいのかという確認を1つしたいと思います。
その上で質問ですが、外交関係になるのですけれども、中国の問題です。リンゴ日報の創業者の方がまた勾留されたり、あるいは周庭さんが重大犯罪を収容する刑務所に移送されたというような報道がありました。天安門事件のときの日本政府の融和的な方針が明らかになって議論も招いているところであります。菅首相はこの一連の問題についてどのように考えるのか、お聞かせください。
(菅総理)
まず、全体としてのこの緊急事態宣言ですけれども、この約1年の中で学んできた、どこが問題かということ、これはかなり明確になっていますので、そうしたことを踏まえて、諮問委員会の先生方に諮った上で決定をさせていただきたいと、このようになります。そういう考え方からすれば、やはり限定的に行うことが効果的。限定的に、集中的に行うことが効果的だというふうに思っています。
(記者)
限定的、集中的と。
(菅総理)
はい。
中国問題については、これは多くの日本国民が同じ思いだと思っています。民主国家であってほしい。そうしたことについて、日本政府としても折あるところに、そこはしっかり発信していきたいと、このように思っています。
(内閣広報官)
それでは、次の御質問に行きたいと思います。質問のある方、いかがでしょうか。
では、産経の杉本さん。
(記者)
産経新聞の杉本と申します。よろしくお願いします。
政府はこれまで緊急事態宣言に至らないように感染をコントロールするといった努力を続けてきたと思います。しかしながら、緊急事態宣言をしなければならないという今の状況に至った原因について、総理はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
例えば、先ほどから言及がありましたけれども、政府は東京都に20時までの飲食店の営業時間短縮を求めていましたけれども、東京都等は応じておりませんでした。仮にこういった政府の要請に東京都等が応じていた場合、緊急事態宣言、今のような状態を回避することができたというふうに総理はお考えでしょうか。よろしくお願いします。
(菅総理)
まず、東京都とその近県で12月の人出があまり減らなかったということです。また、三が日も感染者数は減少しないで、極めて高い水準になっている。こうした状況を深刻に捉えて、より強いメッセージを発出することが必要だと判断いたしました。
感染状況全体として先ほど申し上げましたけれども、全国でこの2週間、1都3県だけで約半分になっています。こうした状況を見て、政府として、4人の知事の要望も判断の一つの要素でありますけれども、全体として見れば、やはり首都圏だけが抜きん出て感染者が多くなってきている。ここについて危惧する中で行っていきたい。それで判断をしたということであります。仮定のことについては、ウイルスのことについて断定することは控えさせていただきたいと思います。
(内閣広報官)
それでは、あと1、2問で終わらせていただきたいと思いますが、それではフリーランスの大川さん。質問は簡潔にお願いいたします。
(記者)
明けましておめでとうございます。フリーランスの大川豊でございます。よろしくお願いします。
私は知的障害、発達障害の精神疾患を持った方の現場に行っております。今回また緊急事態宣言になると、強度行動障害という暴れてしまうお子様とか方々の、例えば軽症者のホテル、病院での入院というのがかなり厳しい状況でございまして、医療従事者にも負担をかけるために、病院から出されるという現実がございます。
施設の方では、そういった医療従事者の方に負担をかけないためにゾーニングなどの努力を行っておりますが、この前、厚生省との勉強会で、クラスターが起きて初めてDMAT(災害派遣医療チーム)が行くという現状でございます。日頃から医療・福祉の連携で、医療関係者が福祉施設に来てゾーニングをする、感染防止指導をする。各自治体によって全部対応がばらばらです。ですので、例えば奈良県は20人受け入れますが、他の都道府県から移動して受け入れるということが大変厳しいというのがあります。ですので、国としての行動指針がすごく大切な状況です。菅総理の考えをお聞かせください。
(菅総理)
私自身も横浜市会議員時代、手をつなぐ育成会という会の会長を務めたことがありまして、現状については、詳細についてよく理解していると、このように思っています。
今、お話を頂きました、それぞれの場所によって対応も違うわけでありますから、そうしたことは国としてもしっかりと指導して、そうした障害者の方が安心できる、そうしたことを支援していきたい、このように思います。
(内閣広報官)
それでは、大変申し訳ございません。次の日程がございますので、これで会見を終了させていただきます。
大変申し訳ありません。質問を希望して挙手されている方、各1問をメールなどでお送りください。後ほど総理からのお答えを書面で返させていただきます。御理解いただきますようにお願いをいたします。
以上をもちまして、本日の総理記者会見を結ばせていただきます。
皆様の御協力に感謝を申し上げます。ありがとうございました。