G20大阪サミット 第1セッション 安倍総理スピーチ
ただ今から、G20大阪サミットを開会いたします。
皆様を大阪に歓迎いたします。本年、日本では天皇陛下が御即位され、令和の新しい時代を迎えました。この記念すべき年に、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)サミットを日本で開催でき、大変うれしく思います。
令和の意味は、美しい調和、ビューティフル・ハーモニー。お集まりの首脳の協力を得て、大阪サミットでも美しい調和を実現したいと思います。
ここ大阪は、古くから交易によって栄えた商人の町であり、自由を尊び、イノベーションを生み出す進取の気風に富む。我々も、大阪のやってみなはれ精神をもって、大阪から世界に新しいメッセージを発信していきましょう。今回のG20大阪サミットでは、対立を際立たせるのではなく、互いの共通点を見いだし、ウィンウィンで持続可能な世界を実現するサミットとしたいと思います。
そのため、第一に、自由貿易やイノベーションなどを通じ、世界経済の力強い成長をけん引していく。同時に、格差への対処を通じて成長と分配の好循環を創出し、あらゆる主体が活躍できる社会を実現していく。
第二に、G20域内に留まらず、開発・地球規模課題への貢献を通じ、包括的かつ持続可能な世界を目指したいと思います。
それでは、第1セッションでは、世界経済及び貿易・投資について議論したいと思います。まずは、G20の中核アジェンダである世界経済について申し上げます。
世界経済のリスクをモニターし、持続的な成長を実現するのが、我々G20の最重要の責務であります。世界経済の現状を見れば、足元で安定化の兆しが見られ、本年後半から来年に向けて緩やかに上向く見通しでありますが、下振れリスクの方が大きい。何よりも、貿易と地政学をめぐる緊張は増大しています。これらの下方リスクに対処し、必要な行動を取るのがG20の責務であります。全ての政策手段を用いて、成長を実現していくという決意を共有したいと思います。
さらに、中・長期的に持続的な成長を実現する観点から、現在の世界経済が直面している構造的なチャレンジを3つ指摘したいと思います。グローバル化、高齢化、デジタル化であります。これらの課題に対処するために、過度な経常収支不均衡への対処、高齢化への政策対応、国際租税・金融分野での制度面での対応について、本セッションで議論したいと思います。特に、経済電子化に伴う課税上の課題には、早急に協調して対応することが必要です。福岡G20会合で合意された野心的な作業計画を承認したいと思います。2020年までに解決策を得るべく、政治的なリーダーシップを期待しています。
経済成長の主要なエンジンとして、特に貿易とイノベーションが重要であります。イノベーションは第2セッションで扱うこととし、第1セッションでは貿易について議論いたします。自由で開かれた経済は、平和と繁栄の礎です。グローバル化による急速な変化への不安や不満が、ときに保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立も生み出していますが、貿易制限措置の応酬は、どの国の利益にもなりません。いかなる貿易上の措置も、WTO協定(WTO設立協定及び附属協定) と整合的であるべきです。現下の世界貿易をめぐる状況には、深く憂慮しています。世界が我々G20リーダーの示す方向性に注目しています。
今こそ、自由・公正・無差別な貿易体制を維持・強化するための強いメッセージを打ち出さなければなりません。その観点から、議長として2点問題提起をした上で、議論に移りたいと思います。
第一に、WTO(世界貿易機関)は時代の変化を反映しておらず、多角的貿易体制の維持のため、改革が急務です。昨年のブエノスアイレスサミットで、必要なWTO改革を支持したことを受け、これまで閣僚レベルで上級委を含む紛争解決制度、電子商取引を含む新しい時代のルールづくり等の議論が進展したと承知しています。本日は、首脳間でもWTO改革に向けたモメンタムを更に高める方策について議論したいと思います。加えて、多角的貿易体制を補完するものとして、経済連携協定も重要です。巨大な経済圏を構築する経済連携協定が、世界で幅広く発効・交渉進展していることを歓迎します。引き続き日本は自由貿易の旗手として多角的貿易体制の改善や、経済連携協定交渉を力強く推進していきます。
第二に、杭州(こうしゅう)及びハンブルクサミットを始め、これまでG20で議論を積み重ねてきた国際貿易投資の基盤となる公平な競争条件の確保についても議論を深めたく、皆さんの意見を拝聴したいと思います。