令和5年沖縄全戦没者追悼式における内閣総理大臣挨拶

更新日:令和5年6月23日 総理の演説・記者会見など

 令和5年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れられた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
 先の大戦において、ここ沖縄は、凄惨な地上戦の場となりました。老若男女約20万人もの尊い命が失われ、沖縄の誇る美しい海や森、首里城を始めとした豊かな文化は容赦なく破壊されました。
 平和の礎(いしじ)には、今年も365人のお名前が新たに刻印されました。平和の礎に刻まれた一人一人の戦没者の無念、残された御遺族の方々の悲しみや喪失感を思うとき、胸塞がる思いを禁じることができません。
 私たちが享受している平和と繁栄は、命を落とされた方々の尊い犠牲と、沖縄の歩んだ苦難の歴史の上にあります。
 沖縄戦から78年たった今、そのことを改めて深く胸に刻み、戦争の惨禍を二度と繰り返さないという強い決意の下、静かに頭(こうべ)を垂れたいと思います。
 昨年、沖縄復帰から50年の節目を迎え、改正沖縄振興特別措置法に基づく新たな沖縄振興がスタートしました。
 これまで、県民の皆様のたゆまぬ努力もあり、沖縄経済は着実に成長し、県民生活も大いに向上しました。しかしながら、一人当たり県民所得の向上、子供の貧困の解消などの課題がなお存在しているほか、コロナ禍からの観光業の復興や物価高騰への対応など、新たな課題にも直面をしています。
 沖縄には、亜熱帯の豊かな自然、国際色豊かな文化や伝統を始め、独自の魅力や優位性があります。これらを最大限に活(い)かし、一つ一つの課題を確実に解決し強い沖縄経済が実現されるよう、引き続き国家戦略としての沖縄振興にしっかりと取り組んでまいります。
 そして、今もなお、沖縄の皆様には、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいています。政府として、このことを重く受け止めています。
 引き続き、在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小を進め、西普天間住宅地区の跡地など、目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げ、基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。
 戦後、我が国は一貫して、平和国家として、その歩みを進め、世界の平和と繁栄のため、力を尽くしてまいりました。今、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく、複雑な状況にありますが、世界の誰もが平和で心豊かに暮らせる世の中を実現するため、これまでの歩みを貫き、不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓いをいたします。
 結びに、この地に眠る御霊の安らかならんことを、そして御遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。

令和五年六月二十三日
内閣総理大臣 岸田文雄

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