平成23年6月20日
最近では、個人で線量計をお持ちの方も増えていますが、何を知りたいかによって、それぞれ適切な測定法があります。
一般的に地表に近づくにつれて線量率は高くなる傾向があります。これは地表に沈着した放射性物質のより近くで測定することになるからです。人間が体全体で受ける放射線量の代表的な測定位置としては、地表から1メートルが選ばれています。また、大人より身長の低い、子供たちが幼稚園や学校で受ける線量の目安としては、地表から50センチメートル選ばれています。したがって、線量計を地表にくっつけて、測定すると実際に人体が受ける線量よりも過大な値が出ることになってしまいます。
逆に、地表から遠くなるにつれて放射線レベルは低くなる傾向にあります。自分の線量計の測定値と新聞などに公表される自治体のモニタリングポストの値が異なる(自分の線量計の測定値の方が高い)ため心配しておられる方も少なくないと聞きますが、これは、モニタリングポストが、地表から高い位置に設置されることが多いからです。
モニタリングポストは上空からの放射性降下物を効率的に検出することを目的としているため、地表からの放射線の影響を受けにくい高い位置に設置されます。このため、空気中の放射性降下物の量が減っている状況では、地表近くの測定よりも低い値が観測されることになります。
このように、放射線に関する測定値は、どのようにして(どこで)、どんな方法で得られた情報であるかを把握し、正しく理解することが大事です。
(酒井 一夫・(独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻客員教授)