平成23年4月18日
「被ばく」と「汚染」の違いを正しく理解しましょう。また、被ばくには「外部被ばく」と「内部被ばく」とがあります。
- 外部被ばく
放射線を出す物質(放射性物質、線源とも言います)が身体の外にある場合、この線源から出た放射線を浴びることを「外部被ばく」と言います。病院でレントゲン写真を撮ってもらうのは「外部被ばく」です。通常は被ばくを受けた人が放射線を出すことはありませんので、周りの人に健康被害を及ぼす危険性は全くありません。従って周りの人が自らを守るための放射線防護策は全く不要です。 - 表面汚染
一方、放射性物質が衣服や身体の表面に付着することを「表面汚染」と言います。この放射性物質は、そこにある限り放射線を出し続けますから、表面汚染を持つ人も周りの人も放射線を浴びることになります。周りの人は、自らを守るために放射線防護策が必要です。また、この汚染が他人や環境中に拡がらないように、汚染拡大防止策を講じなければなりません。 - 内部被ばく
放射性物質を吸ったり、飲んだりして放射性物質が身体の中に入った場合、放射性物質が身体の内部にありますので「内部汚染」といいます。内部汚染の結果として身体の内部構造が放射線の被ばくを受けることになりますので、これを「内部被ばく」と言います。この場合、極めて僅かですが周りの人が放射線を浴びることもあります。 - 今回の場合
東電福島原発の周辺から避難された方々は、もし外部被ばくをされているとしても極めて僅かな線量であり、なんらかの問題があるとすれば衣服の表面や身体の露出部(頭、顔、手など)の放射性物質による「表面汚染」です。避難される時に放射線検出器で汚染がないことが確認されていますので、避難された方々には、周りの人に影響を及ぼすものは何もないことになります。
前川和彦 東京大学名誉教授
((独)放射線医学総合研究所緊急被ばく医療ネットワーク会議委員長、
放射線事故医療研究会代表幹事))