「ふるさとづくりの推進」を担当する秋葉内閣総理大臣補佐官は、「ふるさとづくり」に取り組む現場の声を直接聞くために、令和2年9月2日(水)に島根県雲南市を訪問しました。
全国的に新型コロナウイルス感染症の発生が続く中、視察先の皆様と共に、人との間隔の確保、マスクの着用、手指消毒、換気などの感染症対策に努めながらの視察となりました。
平成16年に合併により誕生した雲南市では、中山間地域に散在する集落への行政サービス提供の困難さ、高い高齢化率等の課題の克服にむけて、これまで人材育成による地域づくりを実施してきました。変化が激しく、複雑化された社会課題に対応するため、子ども・若者・大人・企業による4つのチャレンジを連鎖させ、地域全体で社会問題を解決する「ソーシャルチャレンジ」を推進しています。
雲南市到着後、速水雲南市長から雲南市の取組についての紹介と、地域づくりに込めた想いをお話しいただきました。秋葉内閣総理大臣補佐官からは、ふるさとづくり事例集のとりまとめに際し、雲南市を拠点として活動するNPO法人「おっちラボ」の取組を掲載させていただいたこと、今回の視察を通じて、雲南市におけるふるさとづくりに資する独自の取組についてしっかりと学ばせていただきたいとのお話がありました。
また、秋葉内閣総理大臣補佐官から速水雲南市長に対し、ふるさとづくり事例集の手交を行いました。
速水雲南市長(写真左)へのふるさとづくり事例集手交の様子
雲南市は、市民全員で支え合う魅力あるまちづくりを目指す一環で、若手の課題解決人材を育成する「幸雲南塾」を平成23年に開講しました。「おっちラボ」は幸雲南塾の卒業生の相互フォロー・ネットワーク化を図る場として平成25年に設立され、地域で若者のチャレンジを支援する中間支援組織として平成26年にNPO法人化しました。
おっちラボの活動拠点である「三日市ラボ」は、空き家をリノベーションしたコワーキングスペース・シェアオフィスです。今回の視察では、この三日市ラボにて、未来をつくる意志と力を育む「子どもチャレンジ」、地域と自分の未来を切り拓く「若者チャレンジ」、地域と共に社会課題に挑む「企業チャレンジ」についてご説明いただきました。
「子どもチャレンジ」では、子どもたちの主体性を引き出す地域でのプログラムやチャレンジする大人との出会いをつくり、探求的な学びの機会の創出や、積極的な学び舎プロジェクトに取り組む、意欲ある高校生のチャレンジに要する費用の支援等を行っています。その結果、将来雲南市で働きたいと思う学生の増加や、雲南市内の高校の卒業生の意識に変化が見られることを、雲南市職員の方からご説明いただきました。
「若者チャレンジ」の取組の1つでもある幸雲南塾は、これまでに150名の卒業生を輩出しています。幸雲南塾の卒業生の手により51名の新規雇用と2.8億円の経済効果を創出していることや、卒業生の活動例等について、おっちラボの小俣代表からご説明いただきました。また、幸雲南塾の卒業生による起業事例として、株式会社Community Careの中澤代表取締役より、雲南市の地域医療課題を解決するため、訪問看護や地域住民と一緒に取り組む健康なまちづくり、若手医療ネットワーク構築を行っていることをお話しいただきました。その後、起業後の事業継続に関する課題点等について意見交換を行いました。
また、秋葉内閣総理大臣補佐官から小俣代表に対し、ふるさとづくり事例集の手交を行いました。
意見交換の様子
ふるさとづくり事例集の手交の様子(左から2番目が小俣代表)
「企業チャレンジ」は、企業が雲南市を活動フィールドとして、地域と協働しながら社会課題解決・新たな価値創造を目指した様々なチャレンジを行い、社会実装まで目指す仕組みです。ヤマハ発動機による低速モビリティを活用した街づくりや、竹中工務店による、IoT技術を活用した笑顔評価等の健康なコミュニティを支える取組についてご紹介いただきました。
また、三日市ラボが位置する木次商店街では、「企業チャレンジ」の取組の1つとして、空き家のリノベーションによるサテライトオフィスの構築が進められています。改装工事中の空き家を実際に見ながら、事業を実施している株式会社ヒトカラメディアより、今後の活用予定等についてご説明いただきました。
リノベーション中の空き家の視察
雲南市三刀屋町に位置するみとや世代間交流施設「ほほ笑み」は、地域の方々が気軽に立ち寄ることができる世代間交流拠点として、平成27年11月に開設されました。地域自主組織「三刀屋地区まちづくり協議会」を含む異業種の二者が共同運営しており、1階の共同スペースは、交流サロンや中学生・高校生の学習等の場として活用されています。
令和2年1月23日に開催された「ママの新しい働き方セミナーin雲南」で実施されたアンケート結果では、雲南市に子ども連れで出勤できるオフィスができたら働きたいと思う方が全体の67%を占めていました。そこで雲南市は、ママが子ども連れで出勤できるオフィスで仕事をしながらスキルアップできる「ママの就労支援事業」を運営している株式会社LIFULL FaMおよび三刀屋地区まちづくり協議会と、令和2年3月25日に連携協定を締結しました。これにより、LIFULL FaMと三刀屋地区まちづくり協議会は、ママが「働く」「学べる」「つながる」「挑戦」できる複合的な場所「子連れオフィス」の実現へ向け、みとや世代間交流施設「ほほ笑み」を活用した試験的な事務所等の整備を行っています。今後の施設の活用イメージについて、みとや世代間交流施設「ほほ笑み」1階の共同スペースにてご説明いただきました。
みとや世代間交流施設「ほほ笑み」での説明の様子
「大人チャレンジ」の取組の1つである地域自主組織は、概ね小学校区単位で編成されている住民組織です。自治会・消防団・PTA・老人クラブといった各種団体で構成されており、交流センターを活動拠点として、地域づくり・地域福祉・生涯学習(社会教育)の3本柱の分野を中心に、様々な活動を展開しています。雲南市内全域に30組織が存在しているなか、今回の視察ではそのうちの1つである「躍動と安らぎの里づくり鍋山」の活動拠点「鍋山交流センター」を訪問しました。
躍動と安らぎの里づくり鍋山では、災害時要援護者支援体制整備事業や交通弱者支援事業等、多岐にわたる事業を実施しています。組織運営や事業実施のなかで明らかとなった課題点や、今後の展望について意見交換を行いました。
鍋山交流センターでの説明の様子
「コミュニティナース」とは、職業や資格ではなく実践のあり方であり、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプトです。地域の人の暮らしの身近な存在として、「毎日の嬉しいや楽しい」を一緒につくり、「心と身体の健康と安心」を実現する存在です。Community Nurse Company株式会社は、このコミュニティナースの普及を行うことにより、まちや日常の暮らしのなかで誰もが誰かの心と身体の健康を応援できる社会を目指しています。雲南市における取組の1つとして、Community Nurse Company株式会社の本社であり、様々な人が「元気になるおせっかい」を学び合う拠点でもある雲南ラーニングセンター「みんなのお家」の運営を行っています。また、「おせっかい」したい人が多少の個別ニーズを持ち寄り、できることを相談・考案する場である「地域おせっかい会議」の企画運営も行っています。全国に広がるコミュニティナースの取組や、地域おせっかい会議の今後の構想等について、Community Nurse Company株式会社の矢田代表取締役よりご説明いただきました。
意見交換の様子
「みんなのお家」での意見交換会に参加した方々