石破内閣総理大臣記者会見
【石破総理冒頭発言】
遅い時間に恐縮です。よろしくお願いを申し上げます。
本日の特別国会におきまして、第103代内閣総理大臣に御指名をいただきました。この重みを厳粛に受け止めております。
我々自由民主党は、野党であった平成22年に新しい党の綱領を策定いたしました。そこにはこのようにあります。我々自由民主党は、「勇気を持って自由闊達(かったつ)に真実を語り、協議し、決断する」、「多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる」、このように野党のときに誓ったのであります。
このように誓って、我々は政権に復帰をさせていただきました。それから12年がたちました。私は、今一度この思いに立ち返らなければならないと思っておるところであります。
今般の実に厳しい選挙の結果を受けまして、我々自由民主党は、今度こそあるべき国民政党として生まれ変わらなければならないと考えております。国民お一人お一人が、何に苦しみ、何に悲しみ、何に怒っておられるかと。それを我が事として受け止められる、そういう政党に、当たり前のことなのですが、今一度立ち返らなければなりません。
とりわけ、政治資金は非課税とされておるわけでありますが、この政治資金に対して厳しい国民の皆様方の目が向けられているということを強く認識をし、「政治は国民のもの」であると、そういう原点に立ち返って、政治改革と党改革に取り組んでまいります。
今後、主として国会で御議論をいただきます中でも、いわゆる旧文通費、調査研究広報滞在費と今は言っておりますが、旧文通費の使途の公開及び残金の返還につきましては、歳費法などへの手当を含めまして、早急に国民の皆様方に結論をお示しいたしてまいります。
政党から議員に対して党勢拡大等のために支出されております政策活動費。これは、政党の活動に関わりを持たれる個人・法人のプライバシーあるいは営業上の秘密を保護するなどの理由で使途の公開を不要といたしてまいりました。しかし、これはもはや国民の御理解を得ることが難しくなったと考えております。我が党といたしましても、この廃止を含めて、白紙的な議論をすることを決断いたしたところでありますが、このことにつきましては、各党各会派におきまして御議論いただき、早期に結論を得るべく、私自身、誠心誠意尽力をいたしてまいります。
いわゆる「政治とカネ」の問題というのは、これは、民主主義のコスト、この負担はどうあるべきかということに帰結をいたします。私どもが30年以上前に政治改革の議論、これに邁進(まいしん)をし、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を行っておったのでありますが、このときから、いわゆる政党助成金、こういう公的な資金を入れるに当たって、その公的資金の割合が余りに高くなると、政党であるとか、政治というものが、過度に国家権力に依存することになりかねないと、こういうお話は三十数年前からあったところであります。古くて新しい議論なのですが、政党助成金のウエートを上げていけばいいじゃないかという議論は常にあるのですが、それをやることによって政党が国家に依存するということは本当にいいことなのだろうかという話でございます。
したがいまして、企業・団体献金も国民の皆様方からの浄財の一種と、こういう捉え方をして今日に至っておるわけでありますし、昭和45年の最高裁の判決におきましても、憲法上、企業が政党に対して政治資金を寄附する自由を有することが認められておるわけであります。
であればこそ、政治資金は「どこからどこに、どれだけの支援が行われ、それがどのように使われたのか」という点について、高い透明性を確保し、これをもって有権者の皆様方に御判断いただく必要があるということであります。
平たい言葉を使えば、ガラス張りにするということであります。この透明性を飛躍的に向上させ、政治資金を本当のガラス張りにするためには、更なる工夫が必要だというふうに考えております。政治資金収支報告のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を更に推し進め、収支報告書等の内容を誰でも容易に確認ができるデータベースを構築をするということは、喫緊に行うべき改革であると考えております。これは、政治資金規正法の第1条にこのように定められているわけであります。つまり、政治資金というものは国民の不断の監視の下にあるべきだということが政治資金規正法の第1条に定められておるわけでありまして、これに資することになると考えております。
これと同時に、党内におきます政治資金を含めました意思決定プロセスの透明化、コンプライアンスの強化、これも必要なことであります。我が党は、他党に先駆けてガバナンスコードを導入しておるわけでありますが、そうであればこそ、自由民主党こそが、最も透明性の高い党運営を実現しなければならないと考えておるところであります。
その上で、プライバシーや秘密の保護などのため、公開が困難な部分については、独立した第三者機関の監視の下に置くと、このような仕組みも必要であると考えております。
これらのことにつきましては、先週から自由民主党の政治改革本部で議論を開始いたしております。速やかに自由民主党としての案を取りまとめ、年内にも必要な法制上の措置を可能とするべく、多くの党の御協力を得られるように努力をいたしてまいります。
不記載問題につき、各々が説明責任を果たすため、政倫審(政治倫理審査会)の場を含めまして、あらゆる場を積極的に活用するように促してまいります。
私どもの内閣で、一人でも多くの国民の皆様方の幸せを実現するために、私は、3つの課題を優先したいと考えております。
第一は、当然のことでありますが、厳しさを増しております我が国の安全保障環境への対応。二つ目は、治安・防災への更なる対応。三番目は、日本全体に活力を取り戻すこと。以上の3点でございます。
(まず第一に)厳しさを増す安全保障環境への対応についてであります。
多く報道されておりますように、中国、ロシアは、我が国の領空の侵犯、これを軍用機によって相次いで行うなど、我が国周辺における軍事活動を拡大・活発化させ続けておるところであります。
北朝鮮も、非常に高い頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しており、先日発射をいたしましたICBM(大陸間弾道ミサイル)級弾道ミサイルは1万5,000キロメートルを超える射程となり得るとみられており、こうなりますと、米国全土が射程に含まれることになります。その北朝鮮とロシアの軍事協力も拡大をし、北朝鮮の兵士がロシアに派遣をされ、ウクライナ軍と戦闘を行っていることも報道のとおりであります。
このような中において、抑止力としての我が国の防衛力の抜本的な強化が必要であることは論を俟(ま)たないところでありますが、どのような装備を導入いたしましても、防衛力の根幹は自衛官という人材にこそあるのでございます。
常に申し上げることでありますが、定員の90パーセントしか自衛官は充足をされておりません。これは極めて憂慮すべき事態であります。防衛力の人的基盤の強化につきまして、私を議長といたします関係閣僚会議を既に2回開催し、精力的な議論を行っております。今後取りまとめます経済対策におきましても、早急に実現可能な方策を盛り込み、年内には省庁が連携して取り組むべき方策の方向性を令和7年度予算に計上すべき項目として取りまとめ、併せて、実現をいたしてまいります。
サイバー攻撃の脅威は差し迫った脅威であります。サイバー安全保障分野での対応能力を更に向上させるための法案は、可能な限り早期に国会に提出をすべく、検討を加速させてまいります。
このような防衛力・抑止力の強化と併せて、外交力の強化が必要なことも当然であります。自由で開かれたインド太平洋というビジョン、法の支配に基づく国際秩序の堅持など、共有する価値観や重なり合う国益を実現し、同盟国・同志国との連携を相乗的に深めてまいります。
この方策の一つといたしまして、諸般の事情が許せばでございますが、今月の14日、木曜日からになりますか、APEC(アジア太平洋経済協力)、G20に出席をいたしますため南米を訪問いたし、グローバルサウス、アジア太平洋諸国との連携を一層強化する機会といたしたいと考えております。その際、バイデン大統領、尹(ユン)大統領を始めとする各国首脳との会談を行い、現下の国際情勢について胸襟を開いて議論する機会を持ちたいと考えております。
同盟国であります合衆国の次期大統領でありますトランプ氏とも、先週、電話で会談をし、お祝いの気持ちをお伝えしたところであります。現在の極めて良好な日米関係を維持し、これを新たな高みに引き上げていくために、なるべく早いタイミングで直接会談する機会を持ちたいと考えておるところでございます。
拉致問題について申し上げます。先日、拉致被害者の御家族の皆様方にお目にかかり、その思いを直接承りました。拉致問題は誘拐事件にとどまるものではございません。この本質は国家主権の侵害であるという認識を、私は強く持っておるところであります。全ての拉致被害者の方々の一日も早い御帰国を実現するために、必要な手段は全て講ずるという強い決意の下で、この問題に総力を挙げて取り組みたいと考えております。
第二に、治安・防災への更なる対応についてであります。
いわゆる「闇バイト」によります強盗・詐欺の被害が相次ぐ中、国民の皆様方の安全と安心の確保は急務であります。防犯カメラや防犯性能の高いドアの整備、青パト(青色防犯パトロール)によるボランティアのパトロール活動の支援など、防犯対策を更に促進いたしますとともに、いわゆる匿名・流動型犯罪グループの検挙を徹底するための取組を一層推進いたしてまいります。
我が日本国は、世界有数の災害発生国であります。世界中に発生いたしておりますマグニチュード6以上の地震の2割近くは日本で発生をされていると言われておるところでありますが、近い将来には首都直下型地震あるいは南海トラフ地震の発生も懸念をされておるところであります。先週末から奄美・沖縄でも記録的な大雨が降りました。近年、風水害も頻発化・激甚化しておるところであります。
私は、就任直後、能登の被災地を訪れ、今なお厳しい環境下で過ごしておられる被災者の方々の姿を目の当たりにし、そのお声を直接聞いてまいりました。地理的な条件が不利であるとか、財政的には潤沢とは言えないとか、そういう地域で災害が発生したとしても、そうであるからして、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということは、国家としてあるべき姿であるとは私は全く思っておりません。全国いずれの地域で災害が発生したとしても、避難所で同じように安心していただける環境を提供するということは国家の責務であります。このような観点から、避難所の満たすべき基準を定めましたスフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)、これは、今年の予算委員会で私は岸田総理にお尋ねをしたことでもございますから、議事録を御覧いただければ幸いでありますが、このスフィア基準を能登の全ての避難所に適用するように指示をいたしたところであります。
被災者の方々のお声を必ず施策に反映させるとの強い思いを持っておるわけでありますが、この思いの下に、11月1日に「防災庁設置準備室」を立ち上げたところであります。能登半島地震の際には発災直後から水、食料、毛布、段ボールベッド、簡易トイレあるいはコンテナ型トイレなどを迅速に避難所に送り込んだところであります。また、被災者の皆様方に温かい食事をお届けするため、民間事業者とも連携して、キッチンカーの派遣にも取り組んでおります。被災者の方々の切実な悩み事、お困り事にできる限り迅速に対応するように努めました。この経験を蓄積・伝承し、避難者の生活環境の改善、トイレカー、キッチンカーなどの迅速な配備体系の構築、被災情報の集約のための防災DXなどの飛躍的な前進、これらを実現するため、令和8年度中の防災庁の設置に向け、着実に準備を進めてまいります。
第三の課題について申し上げます。日本全体の活力を取り戻していかねばなりません。
我々の内閣が着目をしておるのは、地方に眠っておる潜在力であります。日本の停滞しておりますこの経済、これを打ち破る起爆剤は中央だけにあるのではございません。農林水産業、製造業、サービス産業、それらの持てる潜在力、ポテンシャルを眠ったままにしてきた地方の産業こそがこの起爆剤になり得るということはかねてから申し上げておるところであります。
「地方創生2.0」というのは、単なる地方の活性化策ではございません。これは、国全体の経済政策であり、多様化の時代の国民の多様な幸せを実現するための社会政策と位置づけておるところであります。
そのためには、中央の行政の一律の指導では実効が上がるものではございません。地方自治体1,718の市町村が主役となって、その地方の生産性をどのように向上させるかを、それぞれの地域のステークホルダーが今一度真剣に考え、多様な価値観に合った個性的な地域を創造していくことが必要であります。
先週8日に新たな地方創生本部の第1回となります会合を開催いたしました。これに加えて、有識者会議を立ち上げるものであります。この有識者会議には、多くの女性の委員、30代の委員にも参加をいただき、女性や若者にも選ばれる地域、自治体とは何かということを徹底的に考え、結論を出していただきたいと思っております。
有識者の方々が関係閣僚と共に各地の現場を訪ね、地域の皆様方と共にこの国の在り方、文化、教育、社会を変革する大きなムーブメントを作り出していくことが重要であります。蔓延(まんえん)した閉塞感を、老壮青の知見を集めて打ち破るため、年末には「基本的な考え方」を決定いたします。
ボトムアップの地方のアイデアを後押しするために、地方創生の交付金は当初予算ベースで倍増しつつも、補正予算におきましても前倒しで措置し、できるだけ早く、「こんなことをやりたい」、「こんなまちを創りたい」と思っておられる地域の方々、自治体の皆様にお届けをしてまいります。デジタル技術の活用や地方の課題を起点とする規制制度改革は大胆に進めてまいります。経済全体の活性化につきましても、きめ細かい施策を一つ一つ実現をしてまいります。
賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向けて、経済対策・補正予算を編成し、令和7年度予算へと切れ目なく対処していかなければなりません。
約30年ぶりの賃上げ水準を持続的なものとし、その実感を地方や中小企業の皆様に広げていかなければなりません。「103万円の壁」といった課題も指摘をされております。
人手不足、エネルギー高騰に対応し、生産性を向上させる投資の支援など、中堅・中小企業の皆様方が確かにもうかる環境を応援してまいります。
労務費の価格転嫁を徹底するため、不適切な事案について、独占禁止法と下請代金法に基づき厳正に対処をし、下請代金法の改正につきましても、早期の実現を目指してまいります。また、次期春季労使交渉における賃上げと最低賃金の今後の中期的引上げ方針につきまして、今月にも政労使の意見交換を開催し、議論を加速いたしてまいります。
これらの施策と同時に、国民の皆様方に安心して消費をしていただける環境も作っていかなければなりません。医療、年金など、社会保障全般を今の時代に合ったものへと転換していくことで、全ての世代の皆様にとって将来不安を減らしてまいります。
マイナ保険証につきましては、利用を促進しつつ、このマイナ保険証をお持ちでない方には、資格確認書を速やかにお届けすることで、これまでどおり診療が受けられるようにしております。この周知にも努めてまいります。国民の皆様方の御不安に迅速にお応えし、丁寧に対応するというのが我々の考え方であります。
世界から投資される日本経済を目指していかなければなりません。イノベーションとスタートアップの支援、スキル向上などの人への投資を進め、新しいビジネスシーズが育ちやすい環境を作るべく、あらゆる施策を導入いたしてまいります。
熊本におきますTSMC(台湾積体電路製造)誘致のような地方創生の好事例も全国で増やしてまいります。今後2030年度までにAI(人工知能)・半導体分野に10兆円以上の公的支援を行い、今後10年間で50兆円を超えます官民投資を引き出すための新たな支援フレームを策定いたしてまいります。
このように地方からの活性化と経済全体の活性化の二つの取組を同時並行で進めることで、日本の活力を取り戻し、多様な幸せを実現できる個性的な地方と、国際競争力にあふれた都市を創ってまいりたいと考えております。これが私どもの描く近未来の姿であります。
民主主義のあるべき姿とは、多様な国民の皆様方のお声を反映した各党派が丁寧に政策を協議し、より良い成案を得ることだと考えております。
今後の政権運営に当たりましては、引き続き自由民主党・公明党の連携を基盤としつつ、できるだけ多くの党の御理解を得て、丁寧に、そして、謙虚に国民の皆様方の安心と安全を守るべく取り組んでまいります。
本日、公明党の岡本政調会長にも御同席いただきました席で、自民党の小野寺政調会長に対しまして、国会への法案や予算の提出など、今後の政策の取りまとめに当たりましては、先般の選挙で示された国民の声を踏まえ、他党にも丁寧に意見を聴き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、指示をいたしたところであります。
内外の諸課題が山積する中、より多くの方々の知恵と力が必要であります。既存の考え方にとらわれることなく、全ては国民の幸せのためとの思いで、改めて皆様方のお知恵とお力をお貸しいただきたいと思っております。
外交におきましても、内政におきましても、国民の皆様方の御理解に基づく後押しほど大きな力はございません。国民の皆様方の御信頼を頂きますよう、今後一層誠心誠意取り組んでまいる所存であります。
どうか今一度、私どもに機会をお与えいただき、共にこの国の未来を明るいものとするため、お力を賜ることができますよう心よりお願いいたしまして、私の御挨拶を終わります。
以上であります。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、皆様より御質問をいただきます。指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクに進み、社名とお名前をおっしゃった上で1人1問、御質問願います。
この後の日程がございますので、進行に当たりましては、御協力をお願いいたします。
まず幹事社から御質問をいただきます。
東京新聞、坂田さん。
(記者)
東京中日新聞の坂田といいます。よろしくお願いします。
少数与党という状況下で、今後の国会運営は野党の協力が不可欠になります。臨時国会に向けて、野党は政治資金規正法の再改正を訴えており、首相御自身も、今日、党の両院議員総会で政治改革に関して、年内に決着を図りたいと言及されました。改めて、年内再改正に向けた決意と、また、複数の野党が訴えている企業・団体献金の廃止に対する現状のお考えを伺います。
また、裏金事件をめぐっては、政治資金収支報告書に不記載がありながら、政倫審に出席していない議員を念頭に、党内外から政倫審の開催を求める声が上がっております。来年の参院選を見据え、国民に対してどうけじめをつけるのか、衆参で政倫審を開くお考えがあるか伺います。
(石破総理)
政治資金規正法等について、先ほど申し述べたとおりでありますが、所要の手当てを行いたいと思っております。特に旧文通費、今は調査研究広報滞在費というものでありますが、これをどうするか。これは歳費法の改正を伴うものであります。当然、議会において御議論いただくことになります。
あるいは政策活動費も先ほど申し上げたとおりでありまして、これが今のままというのは、なかなかというか、到底国民の御理解を得られるものではございません。これは我が党としても、廃止を含めて議論するという方針を打ち出しておるところであります。
あるいは、第三者機関も早期に設置をしていかねばならないと考えておりまして、こういう問題は党内の意見を早急に取りまとめて、各党各会派との調整を精力的に進めていきたいと考えておるところでございます。
また、いわゆる企業・団体献金も、先ほど申し述べたとおりでありまして、企業・団体もそれが社会的な構成員である以上、政治的な考え方を同じくする主体に対して寄附をすることは禁ぜられていない。というよりも、むしろ最高裁の判決においても認められておる。それは憲法上もしかりということなのでありますが、じゃあそれでいいかというと、これは様々な御議論があるのだろうと思っております。企業・団体のウエートを減らして個人のウエートを増やしていくためには、控除の在り方というのを考えていかなければなりません。あるいは上限を設けるということも必要なのでありましょう。そしてまた、データベース化、DX化ということで、政治資金規正法にありますように、国民の不断の監視ということを容易にしていかねばならないと思っております。ですから、企業・団体献金につきましても、それぞれの党がいろいろな考え方を持っておりますので、それが国民の皆様方に分かる形で議論をし、早急に結論を出すことが必要だと思っておるところでございます。
また、政倫審も含めまして、それぞれの責任の疎明というのか、弁明というのか、どうすればいいかというのは、それは政倫審を含むあらゆる場所で説明の機会を設けるように、これは促していかねばならないという、持って回った言い方をなぜするかというと、政倫審の出席自体は個々の議員の判断によるものでございますので、党の総裁として指示命令という形にはそぐわないものでございます。しかしながら、国民の皆様方にそれを御説明する場というのは、あらゆる場を積極的に活用したい、するべきだということは当然促してまいりたいと思っております。
以上申し述べましたように、法改正、あるいは国民の皆様方がアクセスをする機会を容易にするような努力をする。そして、常に国民の不断の監視の下に政治資金というのはあるべきだということを透徹してまいりたいと思っているところでございます。
(内閣広報官)
次に、同じく幹事社、共同通信の下山さん、お願いします。
(記者)
共同通信の下山です。総理、お疲れさまです。
同じく、少数与党の一側面についてちょっと伺いたいと思います。時の衆院議長に苦言を呈されることもあった第2次安倍政権以降の国会運営が、今回の衆院選の結果を受けて変わるのではないかという声があります。具体的には、野党を巻き込まざるを得ずに、必然的に丁寧な国会運営を求められると。そうなると、合意形成過程における与野党間の熟議、それが緊張感の醸成につながるのではないかという期待です。もちろんここには野党の姿勢に帰する部分もあるとは思うのですけれども。
総理は、予算委員として長く予算審議を見てきた中で、国会議論の形骸化を嘆く場面が多々あったように思います。今回の結果、災い転じて福となすではありませんけれども、予想される「数は力」からの変化に、今後の国会展望を含めて、御自身が思うところがあれば、その展望を伺えればと考えています。
(石破総理)
ある意味で、こういう状況というのは、民主主義にとって望ましいことなのかもしれません。望ましいというのは、これは誤解をしていただきたくないのですが、与党が過半数を割ったことは望ましいと申し上げているのではなくて、より議論が精緻になるということだと思っております。
それから、私は幹事長のときも、大臣のときも、あるいは一予算委員のときも申し上げてきたのでありますが、野党の方から御質問を頂く、あるいは御提案を頂く、それに政府としてお答えするときは、その相手の議員さんにお答えするのみならず、その背景におられる多くの支持者の方々、そういう方々に向けてお答えをするのだというふうに思ってまいりました。それは今も全く変わるものではございません。そこにおいて、どういう提案にどのようにお答えするのかということは、これ以上ないほど丁寧でなければいけないし、議論がかみ合うものでなければいけないと思っております。議会というのは合意形成の場でございますので、政府・与党と野党の方々の意見が違いました場合に、どこかに合意できる点はないだろうかということ。それは常に常に法案の修正、予算修正を行っているわけにはまいりませんが、なぜそれが受け入れられるのか、受け入れられないのかということが、見ておられる方々によく理解いただけるようにしていくというのは、民主主義の発展にとって極めて重要なことだと思っているところでございます。
したがいまして、丁寧にやっていきたい。しかしながら、やたらめったら時間がかかるというわけにもいきませんので、丁寧にやりながら、なおかつ迅速に結論が出るという、そういう二律背反みたいなことを満足させるためには、かなりの工夫が必要だというふうに私自身認識をしておるところでございます。
(内閣広報官)
それでは、幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。
読売新聞、海谷さん。
(記者)
読売新聞の海谷です。よろしくお願いします。
外交関係についてお伺いします。米国のトランプ大統領の返り咲きが決まりまして、関係国の間では、同盟関係やG7の結束が揺らぎかねないとの懸念が広がっています。総理としては、個人的関係やディールを重視するトランプ氏とどのように向き合い、日米関係の安定化を図り、国際社会への関与を引き出していきたいとお考えでしょうか。
また、トランプ氏を含め、各国首脳と関係を築く上では、国内の政治基盤が安定していることが極めて重要になりますが、総理は現在、少数与党という厳しい状況に置かれています。その国内の政治情勢が外交関係にマイナスの影響を及ぼさないためにどのような対応を取っていく必要があるとお考えでしょうか。あわせて見解をお聞かせください。
(石破総理)
後段からお答えすれば、外交・安全保障について決定的に意見が違わない、そういうような政党が与党、野党に分かれるというのは、私どもはあるべき姿だと思ってまいりました。外交・安全保障について全然考え方が違う、そういうことが与野党で現出するということは、決して国益にそぐうものだと思っておりません。
国民民主党の皆様、あるいは立憲民主党の皆様、あるいは(日本)維新の会の皆様方。私は随分長い間いろいろな議論を、外交、安全保障、あるいは憲法でいたしてまいりましたが、決定的に違っており、それが違うことによって日本の対外的な交渉力、そういうものがマイナスになると思ったことは一度もございません。そこにおいては意見の一致というものはみることは十分に可能であるし、そこは予算委員会、あるいは安保(安全保障)委員会、外務委員会においても詰めた議論をしていくことは必要だというふうに考えております。
トランプ次期大統領が選挙中もいろいろな御主張をなさっておられました。ウクライナについてしかり、あるいはガザについてしかり、あるいは同盟関係についてしかりであります。これから大統領に就任されてから、その中でどのような政策を打ち出していかれるか、それは現在予測のつくところではございません。今まで選挙中にどういう発言をされたかということをよく詳細に分析をしながら、私どもとして、日本国の国益は何なのか、それは合衆国には合衆国の国益があり、日本国には日本国の国益があるわけですが、それが正面からぶつかってもどうにもならないということだと思っております。それが相乗的にお互いの利益に資するものであり、アジア太平洋地域の平和と安定に資するものだということを我々としてどれだけ提案するかということなのであって、これはもうどれだけ譲るとか譲らないとか、そういうようなディールの世界に尽きるものだと私自身は思っておりません。
(内閣広報官)
次は、NHK、岩澤さん。
(記者)
NHKの岩澤です。よろしくお願いします。
年収の壁の見直しについて伺います。少数与党となる中で、与党と国民民主党との間で政党間の協議が始まっています。国民民主党は、いわゆる「年収103万円の壁」の見直しを求め、公明党も前向きな立場です。政策実現のため、国民民主党の協力が不可欠となる状況の中、年収の壁の見直しにどう対応するか、お考えをお願いします。
(石破総理)
国民民主党の御提言につきましては、これに対しまして我々与党として真摯に検討させていただくというふうにお伝えをいたしておるところでございます。まずは政調会長、税調会長間で丁寧に協議を進めていきたいというふうに考えております。
国民民主党の「103万円の壁」に限って申し上げれば、そのことによってどれだけ手取りというものを増やすことができるか、どれだけ労働市場に多くの労働力というものが供給されるということが実現をするかということ、それによって手取りが増えるが、じゃあ税収全体としてどうなっていきますかねというようないろいろな問題がございます。そこにおいて乗数効果をどれだけみるか、それによって税収がどれだけ、消費税でありますとかそういうものが増えていくか等々、そういう精密な計算をしていかねばなりませんが、もちろん国民民主党の方々がそういう御主張をなさり、多くの支持を得たということは極めて重要なことだと思っておりますので、冒頭申し述べましたように、政調会長、税調会長間できちんと討議をしていきたい、議論していきたいと考えておるところでございます。
(内閣広報官)
それでは、時間の都合もありますので、残りあと2問とさせていただきます。
日本テレビ、平本さん。
(記者)
総理、日本テレビの平本と申します。
先ほど冒頭の発言、政治改革で、何に国民が怒っているのか受け止めなくてはいけないという言葉がありました。この言葉すごいポイントだなと思ったのですけれども、以前はやはり多くの国民が、私たちが取材活動していても、石破茂総理というのは、怒りを受け止めて、それを言葉に発してくれた政治家だと思っていたのが、今はその怒りを感じているのかな、どうかなと思っている国民が増えているのではないかな、と私は感じるのです。国民の怒りを受け止めなければいけないとおっしゃいましたが、では、その怒りというのは、石破総理自身は一体どういった怒りというふうに分析しているのか。あと、その怒りを払拭するために、具体策が先ほどありましたけれども、どういう思いでこの怒りを収めていこうというふうに思っているのか、総理の考えをお聞かせください。
(石破総理)
それは政治資金が非課税ということになっているのはなぜなんだということを考えましたときに、これは政治というものが公の営みなのであって、それが個人の幸せに資するものではないと。政治自体が公のために機能するものである以上、そのためにかかるお金は非課税ということなのだという考え方でございます。そのはずなのだが、それによって「カネ」のための政治みたいなことになっていないかと。非課税であることをいいことに、そういう本来の目的以外の使い方をしているのではないかということが怒りの第一だと思っております。
そして、その第二は、仮にそういうことがあったとしても、それをきちんと解明する手だてがないと。今回の問題も、大学の先生が政治資金収支報告書をずっと一つ一つ見て、丁寧に丁寧に、ものすごい労力と時間をかけて初めてああいうことが出てくるわけであってですね、それは政治資金規正法の趣旨である国民の不断の監視ということがちっとも実効たらしめられていないのではないかということです。おかしなことがあると、しかしながら、それをきちんと解明する手だてがないと、それをいいことに政治家というのがそういうことについてきちんと向き合っていないということが国民のお怒りの本質ではないかというふうに考えております。
要は、お金のある者が得をするのだと。そして、政治家が「カネ」のための政治みたいなことをやりかねないということ、そういうような怒りというものがあることを我々はもっと率直に意識をしなければいけないと考えておるところでございます。
(内閣広報官)
それでは、日経新聞、黒沼さん。
(記者)
日経新聞の黒沼と申します。よろしくお願いいたします。
半導体支援のことについてお伺いします。先ほど冒頭、総理からの御発言でAI・半導体分野に2030年度までに10兆円以上の公的支援を行うというお話がございました。改めて、その支援の狙いと、それからこの10兆円の原資をどのように考えるのか、この2点をお願いします。
(石破総理)
それは先ほど申し述べたとおりでございますが、2030年度までに10兆円以上の公的支援を呼び水として行うための新たな支援フレームを策定したいと考えております。これによって民間事業者の方々の予見可能性を高めていく、要するに何が起こるかなということについての予見できる、そういう状況を整えてまいりまして、50兆円を超える官民投資を引き出したいということであります。
支援の原資につきましてはこれから各省庁間で議論することになりますが、一つだけ申し上げておきたいのは、この支援の原資について赤字国債は発行しないということでございます。この大前提の下に、この詳細につきまして関係大臣から後日、説明させる機会を持ちたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
(内閣広報官)
この後の予定がございますので、これをもって会見を終了させていただきます。
今、挙手をいただいている社は、追って書面で御質問を御提出いただければと思います。本日中に1問、担当宛てにメールでお送りいただければ、後日、書面にて回答させていただきます。
御協力ありがとうございました。
(石破総理)
ありがとうございました。