石破内閣総理大臣記者会見

更新日:令和6年10月9日 総理の演説・記者会見など

【石破総理冒頭発言】

 お待たせいたしました。
 本日、衆議院を解散いたしました。国民の皆様の御納得、そして共感。これなくして、政治を前に進めることはできません。国民の皆様方に信を問い、その御信任を得て、新政権の掲げる政策に力強い後押しをお願いしたいと、このように考えております。
 今回の総選挙に臨むに当たりまして、党総裁として、政治への信頼を回復するための取組として、公認、比例名簿への登載について、新たな方針を示させていただきました。自民党則における「選挙における非公認」よりも重い処分を受けた者などは、非公認といたします。また、その他の不記載があった議員につきましても、比例名簿には登載しないとの方針といたします。所属議員が一人一人の有権者に真摯に向き合い、説明を尽くし、理解を得なければ、国民の皆様方の信頼を取り戻すことはできません。したがいまして、一部の議員の重複立候補を行わないことといたしました。私も含め、党四役も重複立候補は行わないと、このようにいたしました。
 私は、内閣総理大臣に就任して、直ちに能登半島の被災地へ向かいました。地震と豪雨の二重災害に苦しんでおられる方々の「何で自分たちだけがこんな目に遭わなければならないのだ」と、そのような悲痛な叫びが今も耳に強く残っております。
 政治は、こうした声に応えていかなければなりません。国として、こうした声に最大限応えるべく、能登の9月の豪雨を激甚災害に指定することを決断いたしました。あわせて、早急な対応を可能とするため、予備費措置を講ずることといたします。施設・設備を復旧する「なりわい補助金」や農業用機械・施設を復旧する「農地利用効率化等支援交付金」などについて、地震による被害を受けた方々が、再度、今度の豪雨で被害を受けた場合につきましても支援の対象として追加することといたします。
 平時からの備えであります事前防災を強化していかなければなりません。災害が起きてからでは遅い。被災して、絶望のふちにおられる方々が不自由な生活を強いられることのないよう、多くの先進国で見られるような、数時間のうちにコンテナトイレ、キッチンカー、プライバシーが確保されたテントがやってくる、このような体制を早急に整えてまいります。
 1995年のことかと思います。阪神・淡路大震災がございました。そのときに、危機管理のエキスパートであります後藤田正晴先生がこのようなことをおっしゃいました。「天災は防ぐことはできない。しかし、その後に起こることは全て人災である。」このように後藤田先生がおっしゃったことを私はよく覚えておるのであります。
 専任の大臣を置き、そして、災害対応のエキスパートをそろえた防災庁の設置に向け、まずは内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面におきまして抜本的に強化すべく、担当大臣に検討の加速を指示いたしました。
 世界有数の災害発生国である我が日本において、国民の皆様を災害から守らなければなりません。それができるのは誰なのか。国民の皆様方にぜひとも御判断いただきたいと思っております。
 この政権は、「地方を守る」政権であります。今や全国の地方におきましては、地域そのものが消滅する、言わば「静かな有事」が起きております。私は、10年前、初代の地方創生大臣を務め、地方の皆様方に勇気づけられ、そして、自らの情熱を燃やしてまいりました。しかし、当初の目的が達成されたとは到底言い難い状況にあります。この10年間の成果、そして反省を踏まえ「地方創生2.0」として、次の10年を期間として、地方創生を再起動いたします。
 地方創生は、都市対地方という二項対立では決してありません。日本全体に安心と安全を取り戻し、持てる潜在力を最大限に引き出し、日本全体を創生させるべく、この取組は必ず成功させます。
 地方創生に向けた新しい本部を今週にも設置し、年末に向け、基本的な考え方を取りまとめてまいります。
 地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増させ、地域の独自の取組を強力に後押しいたしてまいります。地方の成長の根幹であります農林水産業の持てる力、これを最大限に引き出し、観光業を始めとするサービス産業の高付加価値化、AI(人工知能)・半導体に対する民間企業の投資を引き出す計画的な支援などを進めてまいります。
 長い地道な取組により、デフレからの脱却に向けた歩みは、確かなものとなりつつあります。その一方、国民の皆様方が約30年ぶりの物価上昇に直面しておられることも事実であり、当面の物価高対策とともに、実質賃金の上昇を実現していかなければなりません。
 「経済あっての財政」との大方針の下、「賃上げと投資が牽引(けんいん)する成長型経済」を実現するため、「物価高の克服」、「日本経済・地方経済の成長」、「国民の安心・安全の確保」を柱とする経済対策を実行するように全閣僚に指示いたしました。2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向けて、最低賃金を着実に引き上げるための支援を強化いたしてまいります。
 企業数の99パーセント、雇用者数・労働者数の約7割を占める中小企業を強力に支援するため、生産性の向上の促進と価格転嫁を確実に定着させる下請法の改正等による取引適正化を徹底いたします。
 何よりも国民の皆様方の目線に立って、「生活が良くなった」、「安心して暮らせるようになった」、そのように実感していただけるように、政策パッケージを速やかに練り上げ、実現してまいります。
 中国やロシアの領空侵犯、北朝鮮の度重なるミサイル発射など、今、日本は戦後最も厳しく、複雑な安全保障環境に直面しております。
 平穏な日々が一瞬で失われてしまうような光景を我々は何度も目にするようになりました。それは決してテレビの画面の中だけではない。明日、アジアで起きてもおかしくない時代を迎えております。「日本を守る」ことができるのは誰なのか。安全保障の世界に長く身を置いた者として、私は、今こそこの国のために、日本国のために、持てる力の全てを使ってまいります。
 この政権では、国民の皆様のため、外交力と防衛力の両輪をバランスよく強化し、我が国の平和、地域の安定を実現いたします。
 私は、就任早々、バイデン合衆国大統領と電話会談を行い、日米同盟を更に力強く発展させていくことを確認いたしました。北朝鮮の拉致問題につきましても連携していくことを確認いたしました。
 「自由で開かれたインド太平洋」を守り抜くため、韓国の尹(ユン)大統領、そして、オーストラリアのアルバニージー首相との電話会談も行い、連携の強化を確認いたしました。中東情勢の緊迫化を受け、G7(主要7か国)の首脳とも電話協議を行いました。
 本日深夜からASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議に向け出発し、ASEAN諸国並びに中国、インドなどと首脳同士の関係を構築してまいります。
 引き続き地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導いたしてまいります。このため、「アジアにおける安全保障の在り方」について検討するよう、本日、自由民主党に指示いたしました。
 防衛力の最大の基盤である自衛官の処遇改善、勤務環境の改善のほか、若くして定年退職を迎える自衛官が現役時代の知見や技能をいかしつつ、退職後も社会で存分に活躍できる生涯設計を描けるよう、私が議長を務める関係閣僚会議を、本日設置いたしました。関係省庁が連携して取り組むべき方策の方向性と令和7年度予算に計上すべき項目を年内に取りまとめてまいります。
 平成24年に政権に復帰して以来、安倍総理、菅総理、岸田総理の3人の総理・政権の下で経済再生に向けた努力が重ねられてまいりました。この結果、雇用環境の改善、賃金、株価ともに大いに上昇してきており、30年続いたデフレ経済からの脱却も目前に迫りつつあります。この流れを引き継ぎ、更なる成長と国民所得の拡大を図るため、そして、国民の暮らしを経済と心の両面で豊かにしていくための新たな道筋として、「地方創生」を進めてまいります。
 地方へ人・モノの流れを拡大し、デジタル化を進めるなどによりまして、どこに住んでいても仕事や勉強ができ、必要な医療や福祉が受けられる、そのような豊かな社会を実現いたします。そして、元気になり、豊かになった地方と都市が結びつくことにより、都市部の人々にとっても仕事や学び、余暇を含めた暮らし、人生の選択の幅が広がることになります。
 “新たな地方創生”は、いわゆる“まちおこし”の延長ではございません。日本の社会の在り方を大きく変える、日本創生の試みであります。この大変革を思い切って実行するためには、国民の皆様方からの信任が必要です。
 この解散は「日本創生解散」です。我々の政権は日本を守ります。国民を守ります。都市の安全安心を確保し、地方の暮らしを守ります。若者・女性の機会を守ります。 どうぞ我々に政権を託してください。心よりお願いを申し上げます。ありがとうございました。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これから皆様より御質問をいただきます。指名を受けられました方は、お近くのスタンドマイクに進み、社名とお名前をおっしゃった上で1人1問、御質問願います。
 この後の日程がございますので、進行に当たりまして御協力をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問をいただきます。
 テレビ朝日、千々岩さん。

(記者)
 幹事社、テレビ朝日の千々岩です。
 今、総理はこの解散を「日本創生解散」と名付けられましたけれども、この解散に当たって勝敗ラインは何議席でしょうか。総理のお考えを教えてください。また、その勝敗ラインを上回る自信、また、めどはどのようにお考えでしょうか。一方で、仮に勝敗ラインを下回った場合はどのような責任をお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(石破総理)
 先ほど申し上げましたとおり、この解散は「日本創生解散」であります。日本の社会の在り方を根本から変えていく、そのための取組に対して国民の皆様方の御信任を賜りたい、そういう意味で「日本創生解散」というふうに私は申し上げた次第であります。
 今回の選挙が非常に厳しいということは、私自身、よく承知いたしております。勝敗ラインにつきましては、自民党(自由民主党)・公明党で過半数を目指したいと、このように考えております。全ての同志が当選できますよう、そして、何とか私ども自民党(自由民主党)・公明党で過半数を確保できますよう、全身全霊を尽くしてまいります。
 仮にこの勝敗ラインを割り込みました場合はどうするかということでございますが、現段階では、先ほど申し上げましたように、自公で過半数を頂くべく、全身全霊を尽くしてまいりますので、そういう場合についての対応につきましては、ただ今コメントをすることは差し控えさせていただきます。

(内閣広報官)
 続きまして、幹事社から、朝日新聞、石井さん、お願いします。

(記者)
 朝日新聞の石井と申します。
 今回の衆院選は新政権ができて、発足直後に行われることになりました。ただ、この間の国会論争を見ると、今日、党首討論がありましたが、予算委員会も開かれず、十分な審議が行われたとは言えない状況にあると思います。こうした中で、衆院選に向けて、有権者の投票行動を決める判断材料を提示できたというふうにお考えでしょうか。
 また、もう一点、今日、公認の発表があったと思いますが、総理はこれまでもやはり裏金事件には厳しく臨む姿勢を示されてきたと思います。であれば、今回の裏金事件の処分議員を一律に非公認にすることで、有権者の判断を仰ぐ手もあったかと思いますが、その選択を下げたのはなぜでしょうか。以上2点をお聞かせください。

(石破総理)
 私は、総裁選挙の間から、新政権が発足をすれば、国民の信任を仰がねばならないということは申し上げてまいりました。そして、そのために、主権者である国民の皆様に御判断を頂く、そのような言わば材料というものを可能な限り提供いたしたい。この2つの命題の相克の下に、日々、いろいろな考え方を懊悩(おうのう)の下に進めてまいりました。
 私は、代表質問におきましても可能な限り自分の言葉でお答えをしたつもりであります。所信表明におきましても可能な限り自分の言葉で国民の皆様方に御理解いただけるように語ってまいりました。そして、本日は参議院の格段の御配慮、今日は、いわゆる党首討論、参議院の番でございましたので、これは通常45分でございましたが、ほぼ倍に近い80分という時間を取って、党首の皆様方と議論いたしてまいりました。新しい政権ができて、国民の皆様方の御信任を賜りたい。新政権ができましたので、国民の皆様方の御信任を賜りたい。それは先ほどの(冒頭)発言で申し述べました。そういうような我々がやらんとしておること、そういうことに信任を頂きたいと思ったからであります。そしてまた、私として、判断に足る材料を提供いたしてまいりました。これから選挙に入ってまいります。あちらこちらで党首間の議論も行われます。そういう機会をまた皆様方に御提供いただくことになります。そして、全国津々浦々におきまして、私なりの考え方を誠心誠意申し述べて、御信任を得たい、御審判を賜りたいと思っておる次第でございます。
 いわゆる裏金。不記載でございますね、これは、正式には不記載と申し上げます。これは、今日の野田代表との議論の間でも確認をされたことでございます。そういうことに対しまして、私どもとして、党の選挙対策委員会、本当に長い時間、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を重ねながら、公認、そしてまた公認できない、そういう判断を行ってまいりました。そこは党においていかなる処分を受けたか、あるいはどのような金額であったか、そしてまたそれぞれの選挙区においてどれだけの信任を頂いているかというようなことを総合的に判断いたしたものでございます。重複立候補をするかしないか、このこともそのような判断基準に基づいて決したものでございます。有権者の皆様方にそれぞれの選挙区において御信任を頂くことができるよう、最大限の努力をするということでございまして、そこの判断におきましては、精緻に、そして誠心誠意議論を重ね決したものでございます。

(内閣広報官)
 ここからは、幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。
 御質問を希望される方は、挙手をお願いいたします。
 こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
 それでは、新日本海新聞、西山さん、お願いします。

(記者)
 新日本海新聞の西山です。
 先ほどお話があったのですけれども、地方創生について改めてお伺いします。地方創生政策が始まって10年が経ちましたが、石破総理の地元、鳥取でも人口減少は止まらず、人口流出、都市部への流出は止まっていないというのが現状だと思います。その中で、今年7月に本紙が実施したインタビューの中で、石破総理はここから更に地方創生にねじを巻き直していくには何が必要かというところで、「時の総理の熱情が大事だ」というお話がありました。今、正に総理になられたわけですけれども、今日から事実上の選挙戦が始まるということで、ここからの地方創生には改めて何が必要か、お考えをお聞かせください。

(石破総理)
 それは、政府と47都道府県、1,718市町村、あるいは23東京特別区、そういうような自治体がもう一度、心を一つにすることだと思っております。先ほど関係の予算を倍増するということを申し上げました。私が10年前、地方創生担当大臣を拝命いたしましたときに、それは1,000億(円)でございました。もちろん1,000億(円)というのは大変なお金でございます。ただ、それを1,718市町村に配分をいたした場合、本当にそこにおいてやりたいことがやれたのかということは確かにございました。あのときの一体感を私はもう一度取り戻したいと思っております。一人一人の市町村長の皆様方、そして、そこにおられる住民の皆様方が一緒にやろうと、そういう思いをもう一度取り戻したいと思っております。
 それは行政だけがやるものではございません。10年前に申し上げましたように、「産官学金労言」と申します。それぞれの商工会議所であり、商工会であり、いろいろな経済団体であり、産業界の方。市役所あるいは町役場という「官」。大学だけではない、高等学校であり、中学校であり、そういうような方々が一緒になって地方創生に取り組んできた、そういう例を私は全国でたくさん見ました。「産官学」。「金」というのは、金融機関であって、地方銀行であり、そしてまた信用金庫であり、信用組合であり、そういう金融のネットワークを持った方々が地域の経済というものをよく知っておられます。「労」は労働組合、労働者の皆様方。「産官学金労」。「言」というのは、まさしく御紙のように地方の新聞社、地方のテレビ、地方のラジオ、地域のことを一番よく知っておられる方。そういう方々が一体となって、どうすればこの地域が良くなっていくのかということを考えることだと思っております。そこに必要なものは一体感だと思っています。
 私は、2年間、地方創生担当大臣を務めて、全国のいろいろな、これはいいな、素敵だなと思えるような事例を見てまいりました。例えば、地方のバスであれば、帯広の十勝バスというものがございますね。あるいは地方鉄道であれば、いすみ鉄道であり、えちぜん鉄道である。あるいは旅館であればというように、本当にこうすれば生産性が上がるよね、付加価値が上がってお客さんが来てくれるよね、そういうものを普遍化していくことによって、どうせできないやではない、一緒になってやろう、そういう一体感を取り戻していくことが大事だと思っております。
 鳥取県の例を挙げられましたが、出生率も高い、移住される方も多い、だけれども、出て行く人が多い。特に18歳、22歳、どうしたらそういう方々がとどまっていただけるか。あるいは都市部におられる40代、50代の方がもう一度人生を地方でやってみよう、そういう思いになっていただけるか。あらゆるできることを総動員して、もう一度、地方創生は日本創生、そういう思いで取り組んでまいります。

(内閣広報官)
 よろしいでしょうか。
 テレビ東京、横堀さん。

(記者)
 テレビ東京の横堀です。よろしくお願いします。
 冒頭の御発言でも、経済政策について様々な御言及がありましたけれども、この後の選挙戦、今回の選挙で経済政策の中で、特にこれを一番に有権者に伝えたい、訴えたいという内容は何でしょうか。また、どのように訴えて理解を得ていきたいか、お考えをお願いします。

(石破総理)
 それは所信表明でも申し上げました。あるいは代表質問にもお答えをいたしましたが、コストカット型の経済をやめようと思っております。いかにして賃金を下げるかとか、いかにして下請の方々にいろいろな御負担をいただくかとか、いかにして設備投資というものについてそのコストを下げるかとか、そういうようなコストカット型の経済というのはやめたい、やめなければいけないと思っております。
 では、それに代わって何なんだということですが、面倒くさい言葉で恐縮でございますけれども、「高付加価値創出型経済」、そういうものに変えていかなければならないと思っております。高付加価値というのは、このお金を出してもこの商品が買いたい、このお金を出してもこのサービスを受けたい、こういうものを付加価値と申しております。付加価値の総和がGDP(国内総生産)でございますので。そして、労働者の方々が賃上げによって実質賃金が物価上昇を上回るということ。そして欲しい商品があるということ、受けたいサービスがあるということ。GDPの54パーセントは個人消費が占めております。個人消費が上がっていかなければ、デフレの脱却はございません。コストカットではない、付加価値を上げる、そして労働者の賃金を上げる、賃金をカットしたり、設備投資をカットしたり、そういう経済からは脱却することが必要だと、私はかように考えておる次第でございます。

(内閣広報官)
 ビデオニュース、神保さん。

(記者)
 ビデオニュースの神保です。
 めったに質問する機会がありませんので、ちょっと記者クラブ的な質問ではないものをお許しいただきたいのですけれども、総理が、石破さんが総裁になられて、総理になられたとき、多くの国民が、我々もそうですけれども、これまでとは違う総理になってくれるのではないか、あるいは日本の政治を変えてくれるのではないかという非常に高い期待感があったと思います。まだ日は浅いですけれども、ここまでは多くの国民から見て、前言を撤回したり、あるいはかねてからの主張を封印したりして、やや期待外れと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、期待感が高かっただけにどうなっているのだろうという思いを持っている方も多いと思うのです。そこで、ぜひ総理の口から直接聞きたいのは、いわゆる石破らしさというものを阻んでいるものというのは何なのか。なぜ、そもそもまず石破さんは本当に自分のやりたいようにできているのかどうか、できていないとすればその阻んでいるものは何なのか、そしてそれはまだなったばかりなのでなかなかそんなに何でも思うようにいかないけれども、もう少し時間があればそういうものをこれから出していただけると期待していいのかどうか、その辺を総理の本当に忌憚(きたん)のない御意見を伺えればと思います。

(石破総理)
 それは御期待に応えるべく、私自身、持てる力全てを出していかなければならないと思っております。我が党は強権独裁政党ではございません。大勢の方々の御理解を得ながら党をまとめていくということも、党総裁たる私の仕事でございます。
 政策で申し上げれば、例えばアジアにおける集団安全保障であるとか、NATO(北大西洋条約機構)的なシステムであるとか、あるいは日米地位協定でありますとか、そういうことはどうなったのだということの御指摘を頂きます。それは総裁選挙において、私自身、こうあるべきだということを申し上げました。ただ、それはこれから先、自由民主党の中できちんと議論をし、コンセンサスを得ていかなければなりません。自分は総裁になったのだから総裁選挙で言ったことを全て実現する。それは民主主義政党のやることではございません。私は党内において幅広い議論が行われ、今までその問題すら提起されなかった、地位協定の改定にしても、アジアにおける集団安全保障、あるいは集団的自衛権の仕組み、そういうものの創設についても、今まで議論すら行われなかったことがたくさんあるのです。そういうことをきちんと地道に党内で議論をしながら、それが党の考え方になったと、そういうときに、公明党との協議も経ながら政府の政策として提案をする。そういう丁寧なプロセスを踏んでいきたいというふうに思っております。民主主義政党であれば当然のことであります。
 そして、党内融和を私は優先するつもりはございません。党内融和よりも国民の皆様方の共感を得るということが大事だと思っております。しかし、私も38年国会議員をやっておって、党内にいろいろな考え方がある。政策についてもそう、党の在り方についてもそう、そういう人たち一人一人の御意見をきちんと聴きながら、何で自分の意見を分かってくれないのだという方がないように丁寧に丁寧にやっていきたいと思っております。その上で、国民の御信任を得て、一つ一つ、総裁選挙において申し述べましたことを実行してまいります。御期待に背くようなことがあってはならないということは、私自身、よく承知をいたしております。

(内閣広報官)
 北國新聞の定木さん。

(記者)
 北國新聞の定木と申します。
 衆院選に関連してお伺いします。今、地震と大雨の被害があった能登では、選挙どころではないという声も一部では上がっています。こうした被災者の声にどのようにこの選挙期間中訴えていきたいか、お聞かせください。
 また、選挙期間中、総理は再び視察ですとか、選挙の応援で能登に入るお考えはあるのか、お聞かせください。お願いします。

(石破総理)
 被災地を私は震災後、自由民主党の水産総合調査会長として漁港、漁村を中心に回ってまいりました。多くのところでいろいろな切実なお声を耳にしてまいりました。そして、総理に就任しまして一番最初に伺いましたのは、豪雨の被災地である同じ能登半島でございました。そこにおいて、「どうして分かってくれないのだ」と、「どうして政治は我々の思いを受け止めてくれないのだ」と、そういうお声を随分と耳にいたしました。私はそういうお声に応えなければいけないと思っています。そういう方々の思いに応えるためにも、先ほど申し上げましたように防災庁、そういうものを設立する。そこに行って、はっきり申し上げれば、101年前の関東大震災のときと同じ対応、そんなことがあっていいと私は思いません。そういう絶望のふちにある方々に、本当に一番勇気づけてさしあげられるような体制をつくるということは、まさしく今、そこの有権者の方々に御判断を頂くべきことだというふうに考えております。
 被災地も随分回りました。専門のアドバイザーも現地に派遣して、そういう主権者の方々の投票行動というものが円滑に行くように、そういうことはきちんと確認の上で、今回の解散・総選挙に臨んでおります。今後もそういう地域の方々がきちんと主権者としての権利が行使できますように、万全を期してまいりたいと思っております。
 また、選挙においてどこに応援に行くかということは、これから党全体で決めてまいることでございます。一番絶望のふちにおられる方々が、「政治は分かってくれたのだね」、そういう思いを持っていただくために、党として持てる力を尽くしてまいりたいと存じます。

(内閣広報官)
 時間の都合もございますので、残りあと2問とさせていただきます。時間が限られておりますので、端的に質問をお願いいたします。
 中国新聞、樋口さん。

(記者)
 中国新聞の樋口です。よろしくお願いします。
 政策活動費について伺います。石破総理、就任前の総裁選期間中の地方紙11社でつくる国会11社連合のインタビューで、政策活動費をやめるのも一つの考え方だと、うやむやにしていいものではないというふうにおっしゃいました。ただ、今日の党首討論では、今回の衆院選で使う可能性があるというふうにおっしゃっています。正に今、その使い方というのが、明かす必要がないという状況で、非常にうやむやなものだというふうに私は思っていますけれども、広島を舞台にした買収事件でも原資になった疑いがあります。以前、幹事長もやられていたので、その辺の実態にも詳しいかと私は思うんですけれども、そのうやむやなまま今使うということに対して、なぜそういう発言をされたのか。ちょっと戻って、そのインタビューのときには、やめるのも選択肢の一つだとおっしゃった、それはなぜそういうふうにおっしゃったのに、今回ちょっと変わってしまったのか。その考え方というか、その点をお聞かせください。

(石破総理)
 私は、所信に対する代表質問に対します答弁でも申し上げましたが、政策活動費は、廃止も含めて、これから我が党の中で検討いたしてまいります。そういうものが無いということは、それは、私はあってしかるべきことだというふうに思っております。ましてや今、御指摘のように、政策活動費が事もあろうに買収に使われるなどということは言語道断であって、あっていいことだと思っておりません。
 この政策活動費というものを全部公開すべきだという御意見もございます。そうしますと、個人のプライバシー、あるいは企業・団体の営業秘密、そういうものの侵害につながるのではないかという御懸念もございます。だとしたら全部やめちゃえばいいだろう、こういう選択もあるんだと思っております。
 いずれにしても、現在、政策活動費というものは合法でございます。その使い方は、当然抑制的でなければならないと思っております。それがましてや法に触れるような使われ方というのをしていいはずはございません。それを抑制的に使いながら、これから先、廃止も含めて我が党として検討いたしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。あるいは、ほかの外国との関係というものにも触れる場合もございましょう。そういうこともよく勘案をしながら、国民の皆様方の御不信を招くことがないよう努めてまいります。

(内閣広報官)
 最後です。ブルームバーグ、萩原さん。

(記者)
 ブルームバーグの萩原です。
 選挙後を見据えた外交面についてお伺いいたします。アメリカでは11月にも新たな政権が発足いたします。総理はかねて日米同盟強化の必要性を強調していらっしゃいます。また、日米地位協定も含めた対等な日米関係にも言及していらっしゃいます。改めて、アメリカの新政権とどのように対峙(たいじ)していくのか、方針をお聞かせください。

(石破総理)
 合衆国の政権がどのような政権になるかということは、合衆国の有権者の方々が判断をなさることは当然でございます。どのような政権になりましょうとも、我が国の安全保障政策が日米同盟を基軸とするということは今後も変わるものではございません。
 ただ、私が防衛庁長官を務めておりますときに、沖縄国際大学でヘリが墜落するという事故がございました。お盆の頃であったかと思います。そこにおいて、日本の警察は全く近づくことができなかったということがありました。私は、そういうことであっていいと思っておりません。我が日本国が主権国家として対等な日米同盟というものを法的地位という観点において実現していくために、そういう努力はしていかなければならないと思っております。
 対等な地位協定って何なんだろうかということをいったときに、じゃあ、イタリアと比べてどうなんだ、ドイツと比べてどうなんだ、韓国と比べてどうなんだということもございますが、日本に駐留します合衆国軍隊に対する法的な地位というものと対応するとするならば、合衆国における日本自衛隊の地位と対等でなければ、それは対等な関係とは言わないと思っております。そういうことが可能であるのかどうなのか。それが日米同盟の強化に資するものであるのかどうなのか。そういうことも含めて議論を現実的にやっていきませんと、これは前に進まないと思っております。そういうことも含めまして、我が自由民主党の中で、そういう検討をするようにというふうに指示いたしたところでございます。
 ここにおいて大切なのは、我が国が主権独立国家として合衆国とどのようなパートナーとしてやっていくべきかということだと思いますし、同時に、私が防衛庁長官をやっておりましたのはもう22年も前のことでございますが、そのときからハブ・アンド・スポークという形ではなくて、ネットワーク的な同盟というものを目指すべきだということは合衆国とも随分と議論をしてまいったところでございます。
 先ほど申し上げましたように、我が国を取り巻く安全保障環境は極めて厳しいということを考えれば、そういう検討は加速していくべきだと思います。今から予断を持って結論を申し述べることはいたしませんが、我が国として合衆国との同盟を大切なものだと思うからこそ、そういう議論はしていくべきだというふうに思っておる次第でございます。

(内閣広報官)
 申し訳ございません。この後、総理は予定がございますので、これをもって会見は終了とさせていただきます。
 今、挙手をいただいている記者の方々は、追って書面で御質問を御提出いただければと思います。本日中に1問、担当宛てにメールでお送りいただければ、後日、書面にて回答させていただきます。御理解、御協力ありがとうございます。
 申し訳ございません。実は時間が既に押しておりまして、申し訳ございませんが、御理解と御協力をお願いいたします。
 ありがとうございました。

関連リンク

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