内閣感染症危機管理統括庁の発足等についての会見
【岸田総理冒頭発言】
本日は防災の日の訓練に参加するとともに、その後、内閣感染症危機管理統括庁の発足式に臨みました。災害や、感染症危機、これはいつ起こるかわからない、予測することができないものでありますが、だからこそ、常に万全の備えをしていかなければならない。こうしたことを感じ、また覚悟を新たにする1日にもなったと感じています。
本日は関東大震災100年ですが、新型コロナ禍もまた、スペイン風邪の発生から100年後に直面した歴史的な災禍です。新型コロナとの戦い、これは3年半に及ぶわけですが、本年5月には、新型コロナが5類感染症に移行しました。そして、足元ではGDP(国内総生産)が、名目、実質共に、新型コロナ前の水準を超え過去最高となっています。このグラフのとおりであります。この真夏には行動制限もマスクもない夏祭り、あるいは花火大会を楽しんだという国民の皆様の声も聞いています。そして先ほど内閣府からGDPギャップが15四半期ぶりのプラス、具体的にはプラス0.4パーセント、2兆円となったとの推計が発表されました。このグラフのとおりであります。プラスについては小幅であり、このプラスが今後継続するかどうか、安定して続くかどうか、これが重要であるとは思いますが、振り返りますと私が自民党の政調会長を務めていた時代、3年ほど前でありますが、その当時はGDPギャップ50兆円を超えておりました。50兆円を超える大幅なマイナスであった時代を振り返りますときに、この変化は画期的なものであると感じています。
こうした経済社会活動を取り戻すということについては、ゴールが見えつつあると思います。しかしながら、日本経済がコロナ禍を乗り越えて、新しいステージに移れるかということについては、まだまだ正念場であると感じています。是非、物価高から国民生活を守り、構造的な賃上げと投資の拡大を図るための経済対策について検討を加速したいと思っています。
国民の皆様、そして現場で働く医師・看護師、介護士などエッセンシャルワーカーの皆様の御協力によって、幾度の感染の波、乗り越えてきました。改めて国民の皆様の御理解、御協力に感謝を申し上げるところですが、私は新型コロナとの戦いを通じて、常に最悪の事態を想定した対策の必要性、そして将来の感染症危機に備えた司令塔機能の強化の必要性、これを訴えて自民党の総裁選挙も戦いました。そして、その後、内閣総理大臣の指名もいただきました。こうした、経緯を経て、政権発足直後には、医療提供体制の取組を強化する全体像を取りまとめました。そして、次の感染症危機に備えた対応として、昨年の有識者会議の議論、その議論を踏まえた感染症法の改正、これを経て、本年の通常国会では内閣法を改正して、本日の統括庁発足、これに至ったところです。
統括庁は各省庁を強力に束ねる扇の要であり、統括庁の創設が、新たな歴史の起点になること、これを願ってやみません。これまでの戦いを振り返りつつ、万全の備えを期す、こういった決意をかみ締めながら、今日の発足式にも臨んだ次第です。そして今後を考えますと、一つは、新型コロナとの戦い、これは引き続き続いています。新型コロナへの対応に万全を期すということと、そしてもう一つ、次の感染症への備えに万全を期す、この二つをしっかりと念頭に置きながら取組を進めていかなければなりません。
一つ目の新型コロナへの対応に万全を期すということについては、ここにありますように医療提供体制について、今までは限られた医療機関による特別な対応でありましたが、今後は幅広い医療機関による自律的な通常の対応への移行、これを進めていかなければなりません。ここにありますように、この外来の対応医療機関、これは2月時点で約4.2万でありましたが、今、約2割増しと着実に増えている、こうしたことであります。もとより感染の再拡大については注視する必要があります。感染拡大が生じても、必要な医療が提供できるようにということで、こうした取組も、引き続き続けてまいります。
そして一方、次の感染症の危機に備えるということについては、統括庁において、政府の行動計画の見直し、これに取り掛かります。平時からの医療提供体制の整備として、第8次医療計画による感染症医療と通常医療の両立確保、あるいは、掛かりつけ医機能が発揮される制度整備、これに向けて検討を進めてまいりたいと思います。
引き続き、国民の皆様の御理解をいただきながら、今の新型コロナへの対応、引き続き緊張感を持って続けるとともに、次の感染症への備え、万全を期してまいりたいと考えております。冒頭以上です。
(新型コロナへの対応についての現状の課題と新型インフルエンザ等対策政府行動計画の検証について)
まず、先ほども申し上げましたが、私は常に最悪の事態を想定して対策を用意しなければならないということ、そして一方、この将来の感染症危機に備えた司令塔機能の強化が必要であるということ、こうしたことを訴えて、自民党総裁選挙で勝利を得て、そして、内閣総理大臣に指名されました。そして、その後、先ほども触れた「全体像」の強化ですとか、有識者会議の議論を経て、感染症法の改正に取り組み、そして内閣法を改正して本日の統括庁設置に至りました。
このように、私自身も一つ一つ課題に対処し、その積み重ねの下に次のステップを考えてきた、こうしたことであります。引き続き、感染動向を重層的に把握しながら、通常の対応への円滑な移行と、平時からの医療提供体制の整備、これを進めてまいりたいと思います。
そして、御指摘の政府の行動計画についてですが、次なる感染症危機に備える上で、正に礎となる、基礎となるものであると思っています。感染症法改正等の直近の制度改正の内容、これをまず反映させなければなりませんし、繰り返し感染の波が来るといった場合に備えた幅広い対応を織り込むなど、これまでの様々な新型コロナの経験、これを踏まえて見直しを行い、その内容をこの行動計画にしっかり盛り込んでいきたいと思っています。是非、3年半学んだ多くのことを、新たな行動計画に生かして感染症に強い社会を作っていく、こうした道のりを進めていきたいと考えています。以上です。
(総理自身からの情報発信の機会が増えていることについて)
御質問のですね、まず発信の形ということで申し上げるならば、国民の皆様に高い透明性を持ってわかりやすく、そしてスピーディーに発信していく、これは総理大臣として大変重要な仕事だと思っています。そして、いかにすれば分かりやすいか、いかにすれば迅速に伝えられるか。こういったことについて、官邸の広報スタッフも日々工夫してきてくれました。ですから、こういうパネルを使う等の形については、そういった考えに基づいて、いろいろ工夫している、こうしたことの表れであると御理解いただければと思います。
そして、先週から今週については、正にALPS(多核種除去設備)処理水の放出ですとか、物価高対策ですとか、本日の内閣感染症危機管理統括庁の発足ですとか、国民の皆様に特に分かりやすく、そして、迅速にお伝えしなければいけない課題が続いたものですから、頻繁にこうした発信を行っているということです。今後とも、必要に応じて、先ほど言いました、分かりやすい、スピーディーな形での発信を続けていきたいと思っています。以上です。
(野村農林水産大臣の続投について)
御指摘の、昨日の野村大臣の発言については、言い間違いとはいえ、これはもう不適切であり、極めて遺憾であると思っています。昨晩、野村大臣も全面的に謝罪し、撤回したと承知しています。昨日も私が申し上げましたが、対策のスピード感、これが大事であると考えています。よって、早急に対策を取りまとめてもらい、そして全力を尽くすことで、信頼をしっかりと挽回してもらうことが重要であると思います。是非、こうした考え方に基づいて、大臣にも努力してもらいたいと思いますし、政府全体としても、取組を迅速に進めていきたい、このように思っています。以上です。