岸田内閣総理大臣記者会見
【岸田総理冒頭発言】
本日、こども未来戦略方針を閣議決定いたしましたので、そのポイントと、皆様にお届けする支援策の内容を中心にお話いたします。
私は、少子化は我が国の社会経済全体に関わる問題であり、先送りのできない、待ったなしの課題であるとの思いから、不退転の決意で取り組んでまいりました。
2022年の出生数は過去最少の77万人。今の50歳前後に当たる第2次ベビーブーム世代と比べて4割以下となりました。急速に進む少子化、人口減少に歯止めをかけなければ、我が国の経済社会は縮小し、地域社会、年金、医療、介護などの社会保障制度を維持することは難しくなります。若年人口が急減する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスです。
未婚率の上昇、出生率低下の大きな要因は、若い世代の所得の問題です。若者・子育て世代の所得を伸ばし、若い世代の誰もが、結婚や、子供を産み育てたいとの希望がかなえられるよう、将来に明るい希望を持てる社会をつくらない限り、少子化トレンドを反転することはかないません。
また、社会全体の構造や意識を変えて、家庭内において育児負担が女性に集中している実態を改め、子育て世帯を職場が応援し、地域社会全体で支援する社会をつくらなければなりません。
今回、次元の異なる少子化対策を実現するに当たって、私は、3つのポイントを重視し、この戦略方針を決定いたしました。
第1のポイントは、経済成長実現と少子化対策を車の両輪とした大きなパッケージをお示しし、実行することです。
新しい資本主義の下、30年ぶりとなる高い水準の賃上げが実現し、企業部門には高い投資意欲が醸成されています。30年間続いたデフレ経済、コストカット経済の悪循環を断ち切る挑戦が、確実に動き始めています。こうした流れを確実なものとし、持続的で構造的な賃上げと人への投資、民間投資増加の流れを加速化することで、安定的な経済成長の実現に先行して取り組んでまいります。
あわせて、少子化対策の強化に当たっても、経済的支援の充実を第1の柱に据え、児童手当の大幅な拡充、高等教育費の負担軽減、出産費用の保険適用、「106万円・130万円の壁」の見直しなど、これまで長年指摘されながら実現できなかった経済的な支援策の拡充を思い切って実現いたします。
このように、経済成長の実現と少子化対策の強化、この両輪を通じて、若者・子育て世代の所得を伸ばすことに全力を傾注していきます。
財源確保に当たっても、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、言わばアクセルとブレーキを同時に踏むことがないよう、まずは徹底した歳出改革等によって確保することを原則とします。このため、全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革の取組を徹底するほか、既存予算を最大限活用いたします。
経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤及び財政基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果と社会保険負担軽減等の効果を活用する中で、国民の実質的な追加負担を求めることなく、新たな支援金の枠組みを構築し、少子化対策を進めてまいります。
第2のポイントは、2030年代までがラストチャンスであることを踏まえた規模の確保です。
まず、加速化プランの規模は、3兆円半ばといたします。これにより、我が国のこども・子育て予算は、子供1人当たりの家族関係支出で見て、OECD(経済協力開発機構)トップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進することとなります。また、今回の措置で、こども家庭庁予算は5割以上増加することとなり、こども予算倍増が現実のものとして視野に入ってきます。今後、加速化プランの効果も見極めながら、更に検討を進め、2030年代初頭までに、こども家庭庁予算の倍増を目指していきます。
第3のポイントは、同じく2030年代がラストチャンスであることを踏まえたスピード感の重視です。先ほど申し上げたとおり、財源は徹底した歳出改革等を複数年にわたって積み上げて確保する一方、2030年の節目に遅れることがないよう、加速化プランの大宗は、今後3年間で着実に実施に移します。出産育児一時金の引上げや0歳から2歳の伴走型支援は今年度から、児童手当や「こども誰でも通園制度」の取組を始め、必要な政策は来年度から速やかに実施していきます。
また、スピード感を重視する観点から、3月に小倉大臣がまとめた試案には盛り込まれず、第2弾で行うとしていた高等教育の更なる支援拡充と、貧困、虐待防止、障害児、医療的ケア児に関する支援策を、私の指示で前倒しして実施することにいたしました。
なお、支援策をスピード感を持って実施する一方で、歳出改革等の完了に複数年を要することで生じる財源不足については、「こども特例公債」を活用してまいります。
次に、国民の皆様にお届けする支援強化の内容についてお話いたします。
これまで4回のこども政策対話、6回のこども未来戦略会議の議論などを通じて、子育て当事者の方々、独身の方々、子育てOB・OGの皆様、現場や有識者、専門家の方々から、多くの意見を伺ってきました。
加速化プランは3つの基本理念、すなわち、第1に、若い世代の所得を増やすこと。第2に、社会全体の構造や意識を変えるということ。第3に、全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること、この3つを柱として、抜本的に政策内容を強化します。
第1に若い世代の所得を増やすについてです。
構造的な賃上げや労働市場改革とセットで、少子化対策の中においても、経済的支援に重点を置いて抜本的に強化いたします。児童手当については所得制限を撤廃するとともに、高校生の年代まで支給期間を3年間延長し、そして第3子以降は3万円に倍増します。これらは来年10月分から実施したいと考えています。これにより、3人のお子さんがいる御家庭では、お子さんたちが高校を卒業するまでの児童手当の総額は、最大で約400万円増の1,100万円となります。
さらに、大学に進んだ場合の高等教育について、授業料減免の対象を年収600万円までの多子世帯等に拡大するとともに、私の指示で、更なる支援拡充を加速化プランに前倒しして実施することといたしました。
このほか、子育て期の家庭の経済的負担に配慮した貸与型奨学金の返済負担の緩和、授業料後払い制度の抜本拡充などに取り組みます。
また、出産費用については先行して、今年度から42万円の出産育児一時金を50万円に大幅に引き上げました。費用の見える化を進め、多様なサービスを皆様が選べる環境を整えながら、第2ステップとして、2026年度からの出産費用の保険適用などを進めます。
働く子育て世帯の収入増を後押しします。「106万円、130万円の壁」による就労制限は、長く指摘されてきた課題でした。共働き世帯を支援するため、「106万円の壁」を超しても手取り収入が逆転しないよう、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを本年中に決定し、実行に移します。
また、週20時間未満のパートの方々に雇用保険の適用を拡大し、育児休業給付が受け取れるようにするとともに、育児中の自営業やフリーランスの方々に対する国民年金保険料免除措置を創設します。
住宅が課題であるとの指摘も多く頂きました。子育て世帯が優先的に入居できる住宅を今後10年間で計30万戸用意いたします。フラット35の金利を子供の数に応じて優遇することとし、2024年度までのできるだけ早い時期に導入いたします。
次に、第2の基本理念、社会全体の構造や意識を変えることに関して、具体策を申し上げます。
これまでも申し上げているように、少子化には、我が国のこれまでの社会構造や人々の意識に根差した要因が関わっています。個々の政策の強化はもちろんですが、個々の政策をいかすためにも社会を変えることが必要です。
企業においても職場の文化、雰囲気を抜本的に変え、男女ともに希望どおり、気兼ねなく育休が取れるようにしていく必要があります。時間はありません。職場が思い切って変わっていくように育休取得率目標(注)を大幅に引き上げて、2030年には85パーセントの男性が育休を取得することを目標とし、育休が当たり前になるようにいたします。
各企業の取組は、有価証券報告書などを通じて見える化します。中小企業の御負担には十分に配慮し、育休を取った職員に代わる応援手当など助成措置を大幅に拡充し、育休取得に熱心な企業ほど多く支援が行くように傾斜をつけた仕組みにいたします。
こうした職場文化の変革とセットで育児休業制度を抜本的に拡充いたします。利用者の方々の声を踏まえて、キャリア形成との両立を可能にし、多様な働き方に対応した、自由度の高い制度へと強化いたします。
具体的には、時短勤務やテレワークなど多様な働き方を選べる環境を整備して、子供と過ごせる時間をつくれるようにするとともに、育児期間中に完全に休業した場合だけでなく、時短勤務を選んだ場合にも給付をもらえるようにいたします。また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を、手取り10割相当に引き上げます。これらにより、夫婦で育児、家事を分担し、キャリア形成や所得の減少への影響を少なくできるようにします。
これらの拡充策によって、育児休業給付に関連する予算額は2倍に増加します。支援策の内容は世界トップレベルです。是非、育児休業給付を取りやすい職場づくり、働き方改革を進め、子供と過ごせる時間をつくっていただきたいと願っています。
3月の記者会見でも申し上げましたが、日本の社会は子育てに必ずしも温かくないと言われます。社会の意識を改革し、社会全体で子育て世帯を応援する社会を皆様と共につくっていきたいと思っています。
その先駆けとして、新宿御苑(ぎょえん)や科学博物館などの国の施設における専用レーン、公共交通機関等におけるベビーカー使用者のためのフリースペースといった取組から始め、こども・子育てに優しい社会づくりのための意識改革を広げていきます。このように、職場、そして社会全体の意識と構造を変える。これを国民運動として展開していきます。
最後に、第3の基本理念、全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援することに関する支援策を御紹介します。
これまでも、保育所の整備、幼児教育・保育の無償化など、こども・子育て政策を強化してきました。しかし、この10年間で取り組むべき政策は更に多様に変化してきています。親の就業形態にかかわらず、どのような家庭状況にあっても分け隔てなく、ライフステージに沿って切れ目なく支援を行うことが必要です。
こうした観点から、これまで支援が比較的手薄だった、妊娠・出産時から0歳から2歳の支援を強化していきます。この時期の子育て家庭に対して、10万円の経済的支援と併せて、様々な困難、悩みに応えられる伴走型支援を強化していきます。
また、これまでの保育所のコンセプトを変え、働いているかどうかを問わず、時間単位で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」を創設いたします。既に先駆的に取り組まれている松戸市の「ほっとるーむ八柱」を先日訪問しました。父親同士のつながりのきっかけとなった、産後のつらい時期に専門スタッフのサポートが得られたなど、様々な声を聴かせていただきました。速やかに全国的な制度とすべく、来年度から制度化の取組を始めたいと考えています。
そして、保育所については、長年の保育基盤拡大の努力により、待機児童問題については一定の成果が得られました。これからは量の拡大から質の向上へと政策の重点を移し、75年ぶりに保育士の配置基準を改善し、保育士さん1人が見る1歳児を6人から5人にするほか、保育士の処遇改善に取り組んでまいります。
さらに、貧困、虐待防止、障害児や医療的ケア児など、特に支援強化が必要な課題については、多様な支援ニーズにきめ細かい対応をしていくことが重要です。この点については、先日、私からこども大綱の策定過程で具体化を図りながら、前倒しで支援強化を進めることを指示したところです。これらを通じて、全てのこども・子育て世帯について、親の働き方やライフスタイル、子供の年齢に応じて、切れ目なく必要な支援が包括的に提供される、総合的な制度体系を構築してまいります。
以上、少子化対策でのポイントと皆様にお届けする支援策の内容を中心にお話しいたしました。今後、このこども未来戦略方針の具体化を進め、戦略を策定するとともに、必要な制度改革の法案を提出してまいります。
その関連で、財源について年末に先送りとの報道があります。歳出改革等を通じて財源を確保するに当たり、歳出改革の内容は毎年の予算編成を通じて具体化していくこととなりますが、こども未来戦略方針で決定した、全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革等の取組を徹底する、このことによって、実質的に追加負担を生じさせないことを目指すとの方針は揺るぎないものであり、先送りとの指摘は適切ではないということを申し上げておきます。
2030年までがラストチャンスです。不退転の決意を持って、経済成長と少子化対策を車の両輪として、スピード感を持って実行してまいります。
皆様の御理解と御協力を心からお願いいたします。
【質疑応答】
(内閣広報官)
それでは、これからプレスの皆様に御質問いただきます。
質問される方は挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で、1人1問、御質問をお願いいたします。
まず、幹事社から御質問いただきます。
では、秋山さん。
(記者)
日経新聞の秋山です。よろしくお願いします。
こども未来戦略方針では、若者・子育て世代の所得向上を特に重視するという説明をされてきました。先ほど経済成長と少子化対策は車の両輪というお話もありましたが、この30年間、実質的に賃金が上がっていないという状況が続いている中で、少子化対策のラストチャンスと言われる2030年までに、どれくらいの給料を上げていくおつもりなのでしょうか。その目標と道筋を教えてください。
また、財源をめぐっては、新設の支援金制度をつくったとしても、実質的に追加負担が生じないようにすると、今、御説明がありましたが、既に高齢化で保険料率は上昇している、上昇の傾向にある、そういう中で保険料が上がらないようにするという意味なのか、高齢化の伸びの範囲で収めるということなのか、その辺りの意味を教えてください。
(岸田総理)
まず賃上げの目標についてお尋ねがありました。賃上げの数字自体は、個別の民間企業の労使が交渉し、合意されるものでありますが、足元では、今年の春闘において、全体で3.66パーセント、中小企業でも3.36パーセント、30年ぶりの賃上げが実現しています。そして企業部門には国内投資への強い意欲が醸成されています。岸田政権はこうした流れを確実なものとし、持続的で構造的な賃上げと人への投資、そして民間投資増加の流れを加速化することで、安定的な経済成長の実現に、先行して取り組んでまいります。最低賃金についても、今年は全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使、三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論いただきたいと考えております。そして今年の夏以降は1,000円達成後の更新についても議論を行っていきたいと考えています。
こうした賃上げを進めていくことを考えておりますが、あわせて、少子化対策の財源についても御質問がありました。少子化対策の財源については、歳出改革等を通じて公費を節減するとともに、国民の社会保険負担を軽減し、それらの効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進めてまいります。
御指摘のとおり、高齢化によって、医療・介護の保険料率は上昇していきます。しかし、少子化対策の実施に当たって経済成長を阻害し、若者・子育て世帯の所得を減らすことがないように、徹底した歳出改革等によって、公費の節減や、あるいは保険料の上昇を抑制し、その中で支援金を構築することによって、少子化対策の財源確保に当たって実質的な追加負担とならない、こうしたことを目指していきたいと考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、続きまして、幹事社の篠原さん。
(記者)
テレビ東京の篠原です。
政権の政策推進力に関係することですので、解散についてお伺いします。与野党の間では、岸田総理が今の国会で解散に踏み切るのではないかという見方が浮上しています。自民党の森山選対委員長や萩生田政調会長などは、野党が内閣不信任案を提出した場合には、これは解散の大義になるというふうな認識を示していますが、岸田総理は野党提出の内閣不信任案は解散の大義になるとお考えでしょうか。あわせて、単刀直入にお伺いしますが、今の国会で衆議院を解散するお考えはありますでしょうか。
(岸田総理)
まず、岸田政権は外交・内政の両面において、これまで先送りされてきた困難な課題の一つ一つに答えを出していくことが使命だと覚悟して、政権運営をしてきました。御質問の解散・総選挙についても、基本姿勢に照らしていつが適切なのか、諸般の情勢を総合して判断していく、こうした考え方にあります。そして、こうした基本姿勢に照らして判断していくわけですが、今の通常国会、会期末間近になっていろいろな動きがあることが見込まれます。よって、情勢をよく見極めたいと考えております。そして、現時点ではそれ以上のことについてお答えすることは控えたいと考えます。
以上です。
(記者)
不信任案は大義になるとお考えですか。
(岸田総理)
それについて、現時点ではお答えすることは控えます。
(内閣広報官)
ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けいたします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。
それでは、フジテレビの瀬島さん。
(記者)
フジテレビの瀬島です。
マイナンバーカードをめぐる問題についてお伺いします。マイナ保険証に別人の情報が誤って紐(ひも)づけられるなどトラブルやミスが相次いでいて、国民の中には不安が広がっている状況だと思います。この問題に政府として今後どのように対処していくのか、総理のお考えがあれば教えてください。
(岸田総理)
まず、マイナンバーカード、これは我が国が21世紀、デジタル社会に変革していく上で、国民一人一人のパスポートの役割を果たすものです。この趣旨を御理解いただき、国民の皆様には普及のための協力を頂いています。その結果として、この1年間で5,700万枚から9,200万枚まで普及が進みました。まずは国民の皆様の御協力に深く感謝を申し上げたいと思います。
そして、御指摘がありましたように、普及が進む中にあって、マイナンバーカードに関する誤り事案が指摘されています。例えば健康保険証で7,372件、年金情報で1件、そして申請段階で、子供やお年寄りのケースにおいて家族名義などの公金受取口座の登録があった、こういったものも13万件明らかになっています。政府としては、全ての事案を重く受け止め、個人情報の保護と国民の信頼確保、これがマイナンバーカード普及の大前提であることを今一度肝に銘じて、3つの基本方針の下で対応してまいります。
まず、第1に、関連するデータやシステムの総点検です。他人の証明書のコンビニ誤交付に関わるシステム不具合については、改修が今週中に終わる見込みであります。関連データについても、先週から私の指示を受けた河野デジタル大臣が、全力を挙げて総点検の陣頭指揮を執っています。誤り事案の情報を迅速に共有する体制を整え、関連する既存のデータの総点検、これは本年秋までに行うこととしております。
そして、第2は、今後新たな誤り事案が生じないようにするための仕組みづくりです。人が介在することで一定の確率で生じる入力ミスが入り込む余地がないように、自動化を徹底したり、現場の実態に合わせて何重にもチェックしたりする仕組みを整えていきます。システム改修を伴うものを除き、こちらも本年秋までに実行してまいります。
そして、第3に、国民の不安払拭のための丁寧な対応です。例えば健康保険証について、現行の保険証の来年秋の廃止に対する不安が指摘されています。この点、発行済みの保険証は来年秋の廃止後、最大1年間有効とみなす経過措置が設けられております。再来年秋まで使用可能であることを丁寧に説明し、国民の皆様が安心して医療を受けられるよう、この間に万全の対策を採り、円滑な移行に取り組んでいきたいと考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
田村さん。
(記者)
産経新聞の田村です。よろしくお願いします。
北朝鮮による拉致問題についてお伺いします。総理は日朝首脳会談の実現に向けて、直轄のハイレベル協議を行っていきたいというふうに述べられました。具体的にどのように進めていくお考えなのかをお聞かせください。また、家族会は運動方針で、全拉致被害者の即時一括帰国が実現すれば、政府が北朝鮮に人道支援をすることも反対しないという方針を打ち出していますが、これをどう受け止め、政府として対応していくお考えなのか、お聞かせください。
(岸田総理)
まず、今年3月に家族会・救う会の新たな運動方針、これを直接受け取らせていただきました。2002年以来、一人の拉致被害者の帰国も実現していないこと、これは痛恨の極みであり、政府として改めて重く受け止めています。
我が国の北朝鮮への対応に関しては、先月27日に開催された国民大集会において、私から考えを述べさせていただいたところです。すなわち、日朝平壌宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すということでありますが、とりわけ拉致被害者御家族も御高齢となる中、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人権問題です。引き続き全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果敢に取り組んでまいります。
そして、その上で、日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り拓(ひら)いていく観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず金正恩(キム・ジョンウン)委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現するべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたいと、このように考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、清水さん。
(記者)
NHKの清水です。お願いします。
今の質問に関連するのですけれども、今、御紹介あった総理の発言に対して、北朝鮮側が、呼応したとも読み取れる談話を発表しています。この北朝鮮側の談話について、前向きな兆しと受け止めていますでしょうか。また、例えば年内に首脳会談を実現することを目指すなど、期限を区切って対応していく考えはあるのでしょうか。
また、日中関係についてもお聞きします。アメリカのブリンケン国務長官が近く中国を訪問することも報じられていて、米中関係の対話の動きが出ることも予想されます。4月には林外務大臣も訪中されていますが、総理は自ら訪中したいという考えはありますでしょうか。いつ頃までにというめどがあったら教えてください。お願いします。
(岸田総理)
まず、日朝関係の方ですが、御指摘の報道、これは承知しております。従来から申し上げているとおり、我が国としても対話の重要性を強調し、北朝鮮に対して働きかけてきているところです。今後更に北朝鮮への働きかけを行ってまいりたいと考えています。そして、我が国の北朝鮮への対応、先月27日に開催された国民大集会において述べさせていただきました。先ほどの御質問でお答えしたとおりであります。
御指摘の期限を区切るかどうかということについて、今の時点で予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますが、日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り拓いていくという観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず金正恩委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現するべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい、このように考えている次第です。
そして、もう一つ、日中関係についても御質問がありました。私自身の訪中等について現時点で決まったことはありませんが、中国とは主張すべきことは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかり行い、共通の課題については協力する、こうした建設的かつ安定的な日中関係を日中双方の努力で構築していく、これが重要であるということを従来から申し上げてきました。この基本的なスタンスをこれからも維持しながら、引き続きあらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていきたいと考えております。こうした姿勢で日中関係についても取り組んでいきたい、このように思っています。
(内閣広報官)
それでは、次の山本さん。文化放送。
(記者)
文化放送の山本です。
総理に少子化対策についてお伺いします。出生率の改善ができるかどうかというのが極めて大きな課題になっているかと思いますが、3兆円台半ばの予算ということですけれども、この巨額の費用でどれぐらいの効果があると見込んでいらっしゃるのか。また、岸田総理、出生率改善、どれぐらいできるのか、目標などがありましたら教えてください。具体的な数値などあれば。
(岸田総理)
ありがとうございます。出生率のどれだけの効果があるか等についての御質問でありますが、これまで自公政権においては、その時々のニーズを踏まえつつ、様々な政策を講じてきました。保育の受け皿整備、あるいは幼児教育・保育の無償化など様々な政策を進めてきました。その結果として、少子化対策関係の予算額は大きく増加し、例えば保育所待機児童は平成29年の約2.6万人から昨年は3,000人まで減少するなど、一定の効果があったと考えています。
しかし、一方で、少子化、人口減少には歯止めはかかっていません。少子化の背景には、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合っています。そして、社会経済情勢が大きく変化する中で取り組むべき子育て政策の内容、これも変化しています。よって、現在の状況において、効果のある少子化対策が求められているということで、小倉大臣の下で試案を取りまとめる、こういった過程において議論を行い、また、こども未来戦略会議において議論を重ねてきましたし、また、私自身も各地でこども政策対話を通じて、当事者の方々から様々な意見をお聞きしてきました。
このように、今の時代において、今のこの社会において求められている政策について、改めて洗い出し、整理を行った、こういったことであります。そして、その上で、今回のこども未来戦略方針において3つの理念、すなわち、第1に、構造的賃上げと併せて経済的支援を充実させ、若い世代の所得を増やすこと。第2に、社会全体の構造や意識を変えること。そして第3に、全てのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること。この3つを柱として、抜本的な政策内容を強化することを明らかにした、こういったことであります。これらの今必要とされる政策を積み上げた結果、加速化プランの規模は3兆円半ばとなった、こういったことであります。
そして、この予算については、先ほども申し上げましたが、我が国のこども・子育て予算、子供1人当たりの家庭関係支出で見て、OECDトップのスウェーデンに達する水準となる、こうしたことであります。少子化対策は画期的に前進すると考えています。
また、加速化プランの効果の検証を行いながら、政策の内容、予算を更に検討し、2030年代初頭までにこども家庭庁予算で見て、国の予算の倍増を目指してまいります。2030年代までがラストチャンスであり、こども未来戦略を前進させ、少子化トレンドを反転させていきたいと考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、次に、AP、山口さん。
(記者)
AP通信の山口と申します。よろしくお願いします。
私は、本日、衆議院の本会議で可決されましたLGBTQ+の理解増進法についてお尋ねいたします。審議入り直前の修正案では、「全ての国民が安心して生活できるように留意する」とか、教育に関しては「家庭及び地域住民などの協力を得る」など、文言がいろいろ追加され、また、国会での質疑でも、多数派の不安を持たれる方々への配慮の必要性が繰り返し説明されていました。当事者の方々は、そもそも差別禁止法制定を求めていたのであり、この法案は、これまでの自治体や民間の進んだ自発的な取組を抑制するのではないか、全く当事者の側を向いておらず、むしろ裏切るものだとして成立に反対しておられます。これに対して総理はどのようにお答えになられますでしょうか。
もう一つ、一方で、同性婚訴訟は地裁判決5つのうち4つで、現状が違憲又は違憲状態という判断が出ておりますが、そもそも同性婚の法制化について総理はいかがお考えでしょうか。よろしくお願いします。
(岸田総理)
まず、最初のLGBT理解増進法案についてですが、9日金曜日の衆議院内閣委員会において、与党案の修正案が自民、公明、維新、国民、有志の会、5会派の賛成によって可決され、本日、衆議院本会議を通過したと承知しています。この法案について、私の立場からどう思うかという御質問でありますが、これは法案自体が議員立法であります。そして、今、衆議院は通ったと言いながら、これは参議院の議論が続いているわけですから、こうした議員立法が国会で議論されているさなかに、政府の立場からこの内容について評価するとか何か申し上げること、これは控えなければならないと思います。
引き続き国会において議論が進み、できるだけ幅広い合意が得られること、これは期待したいと思っています。政府としては、多様性が尊重され、そして、全ての人々がお互いの人権や、あるいは尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、引き続き様々な国民の声を受け止め、しっかり取り組んでいきたいと思います。
そして、御指摘の同性婚の訴訟についての御質問でありますが、こうした同性婚についても様々な意見がある中、是非広く国民の皆様の理解を得られるべく議論を深めていく、こうした姿勢は重要だと考えております。まずはこうした制度について国民の中で議論が深まっていく、そうした声を受けて、政治の場でも議論を行っていくことが重要であると認識しております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、大変恐縮ですが、あと2問とさせていただきます。
では、江川さん。
(記者)
今、2つの質問があったのに関連してお伺いします。江川と申します。フリーのジャーナリストです。
先ほどこちらの方から少子化問題で出生率の目標など、効果についての具体的な目標を問われたのですけれども、それについてはお答えにならなかったので、それについて私も聞きたいというふうに思います。
それから、今のAPの方の質問で、同性婚の話がありました。先ほど総理は少子化に関して、社会を変えることが必要だということをおっしゃって、それに関して法制度などを整備するのだということをおっしゃいました。なぜ、少子化でやっぱり社会を変えることをやろうとされている総理が、人権の問題である同性婚の問題について、社会が変わってしまうというようなことで尻込みをされているのかということを非常に疑問に思うわけです。同性婚を認めても誰も困らないわけでありまして、家族としての保護が全く受けられない状態は人権侵害であるというような指摘は、非常に重いと思います。最高裁が違憲判決を出すまで法制化しないつもりなのか、それとも、むしろ総理がリーダーシップを取って社会を変えていく。社会の方はもう変わっているわけですね。世論調査をやれば7割ぐらいが認めているというような状況です。そういう中で求められているのは法制度だと思うのですけれども、それについての御見解をお伺いしたいと思います。ありがとうございます。
(岸田総理)
まず、少子化対策、出生率の数字と目標について聞きたいということでありましたが、今回のこども・子育て政策、少子化がどんどん進んでいく、このトレンドを是非逆転させたいということで政策を用意いたしました。まずは、子供の出生数が77万人になってしまった、どんどん減少していってしまった、このトレンドを反転させる、そのために様々な政策を用意しなければならない、社会や意識も変わらなければならない、さらには経済政策とセットで進めなければならない、こうしたことを申し上げています。ですから、出生率の数字の目標という御質問ではありますが、今、言った少子化のトレンドを反転させるためにこの政策を用意した、このように説明をさせていただいております。
そして、もう一つは、同性婚の裁判について御指摘がありました。消極的ではないかという御指摘でありますが、決して消極的だということを申し上げたことはないと思います。しかし、こうした制度、そしてなおかつ、これを法律的に制度としてつくるということになりますと、これは幅広い国民の皆様に様々な影響が出てくる、こうした課題でもあります。よって、幅広い議論が必要であると、そして幅広い理解が進むことが重要であると、そういうことを申し上げている次第です。是非こうした司法での動き等を踏まえて、国民の中で、また政治の中でどういった議論が進むのか、これを注視しながら、多くの国民の皆様の声を聴きながら、政府としてもその責任を果たしていきたいと考えております。
以上です。
(内閣広報官)
それでは、最後の質問、岡田さん。
(記者)
京都新聞の岡田と申します。
地方創生についてお尋ねします。安倍政権時代に地方創生の目玉として決定した文化庁の京都移転が先月完了したわけですが、現状として、職員の3割は霞が関に残り、旧統一教会問題に対応する宗務課も当面は東京に残るという現状なのですが、これで移転の趣旨である東京一極集中の是正、あるいは地方創生というのは進むとお考えでしょうか。お考えをお聞かせください。
また、総理は地方活性化策としてデジタル田園都市国家構想を掲げておられますが、今後、文化庁以外の省庁移転というのはお考えにあるでしょうか。お聞かせください。
(岸田総理)
まず、文化庁、移転したけれども、職員3割が東京に残っている、こういった御指摘がありました。文化庁移転については地方自治体も参加する移転協議会において、職員数は全体の7割を前提として進めることとされていた課題でありました。これに基づき、デジタル技術を活用しながら、時々の政策課題に対応しつつ、本拠地を京都に移転した、こういった次第であります。人数についても、これは重要なことではありますが、いわゆる文化庁が移転することによって、歴史上、文化の栄えた京都の地から、日本全国の文化の発展に貢献できる、新たな文化行政を進めていく、こうした期待は高まっていると認識しています。
そして、今後、他の省庁の移転も進むのかという御指摘ですが、2023年度には文化庁を含め、政府関係機関の移転の地方創生上の効果、国の機関としての機能の発揮等について総合的な評価を行うこととしています。2023年度中に行われるその評価に基づいて、今後の対応について検討を進めていくことになると考えております。
なお、御指摘のデジタル田園都市国家構想、こうした政府関係機関の移転も大変重要な課題でありますが、それ以外にも、テレワークや移住、地方大学・高等学校の魅力向上、デジタルインフラの整備、地方における投資の促進、この地方創生という観点においても、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会の実現という面においても、これは大きな取組であると思います。こうした大きな取組の中で、御指摘の政府関係機関の移転についても考えていきたい、このように思っています。
以上です。
(内閣広報官)
以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。
御協力ありがとうございました。
(注)冒頭発言では「育児取得率目標」と発言しましたが、正しくは「育休取得率目標」です。