インターネット・ガバナンス・フォーラム2023 AI特別セッション
令和5年10月9日、岸田総理は、京都市で開催されたインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)2023 AI(人工知能)特別セッションに出席しました。
総理は、挨拶で次のように述べました。
「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023におけるAI特別セッションの開催に当たり、ホスト国を代表して、御挨拶申し上げます。
急速に発展している生成AIのポテンシャルやリスクについて、世界中で議論が巻き起こっている中、本日、各界を代表する方々と共に、生成AIに関する国際的なガバナンスの在り方について、ここ日本で議論できることを誇りに思うとともに、御多忙の中、御参加いただいた皆様に、心から御礼申し上げます。
生成AIは、インターネットに匹敵する技術革新とも言われています。インターネットの登場によって、時間や空間の制約を超えて人類がつながるようになり、民主主義と経済社会に目覚ましい発展をもたらしてきたように、生成AIによって、人類の歴史に大きな変化がもたらされようとしています。
私自身、今年に入って、若手研究者や、AI開発企業などと直接議論を重ねる中で、生成AIが秘める無限の可能性を感じてきました。生成AIは、単に業務を効率化するだけでなく、新薬の創出や新たな医療手法の開発など、様々な分野でイノベーションを加速させ、世界に劇的な変化をもたらすことが期待されています。
日本政府として、今月中に経済対策をまとめることを予定していますが、計算資源の整備や基盤モデル開発に対する支援など、AI開発力の強化や、中小企業や医療分野等における、AI導入の推進など、AI開発・利用の両面に強力に取り組み、しっかりと経済対策に盛り込んでいきたいと考えています。
一方で、生成AIを巡っては、精緻な偽画像や、偽情報による社会の混乱など、経済社会を脅かすようなリスクや課題も指摘されており、幅広い関係者が役割を果たす必要があります。例えば、信頼できる情報の流通を促進するために、情報の発信者を証明・確認できる技術の開発や普及を進めることも有効だと思います。このような理解を国際社会全体で正しく共有し、連帯して対処していかなければなりません。
生成AIの持つ可能性とリスクを踏まえながら、推進と規制のバランスを図り、生成AIが経済社会に与えるリスクを軽減しつつ、人類に対する恩恵を最大化していくために、今こそ、人類の英知を結集することが重要です。
このような考えの下、G7広島サミットにおいて、信頼できるAIの実現に向けた国際的な議論促進のために、私から広島AIプロセスの創設を提案して、合意を取り付け、G7首脳は、担当閣僚に対し年内に成果を出すことを指示いたしました。
広島AIプロセスでは、信頼できるAIの実現に不可欠な共通原則として、全てのAI関係者向けの国際的な指針を年末までに策定することといたしました。特に、喫緊の課題として、生成AIを含む高度なAIシステムの開発者向けの国際的な指針や行動規範を、この秋にも開催される予定のG7首脳オンライン会議に向けて策定を進めています。
生成AIは、国境を越えてサービス提供され、世界中の人々に関係します。このため、広島AIプロセスでは、このIGFの機会も活用し、本セッションのような政府、学術界、市民社会及び民間セクターを含むマルチステークホルダーの議論を通じて、幅広い意見を取り入れていくつもりです。
本日御参加の、G7を超えた幅広い皆様の御意見をお聞きすることで、グローバルサウスを含む国際社会全体が、安心・安全・信頼できる生成AIの恩恵を享受し、更なる経済成長や生活環境の改善を実現できるような国際的なルール作りを牽引(けんいん)してまいります。
最後に、このAI特別セッションにおいて、国際機関、各国政府、AI開発企業、研究者、市民社会を代表する方々の間で有意義な議論が行われ、後に、生成AIに関する議論の転機となったと評価されるような、歴史的な会議となることを祈念いたしまして、私の御挨拶とさせていただきます。
御静聴、誠にありがとうございました。」