新しい資本主義実現会議
令和3年11月26日、岸田総理は、総理大臣官邸で第3回新しい資本主義実現会議を開催しました。
会議では、賃金・人的資本について議論が行われました。
総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。
「第3回目の新しい資本主義実現会議を開催させていただきました。本日も、委員の皆様方には、大変有意義な、そして熱心な御議論を頂きました。心から御協力に感謝を申し上げます。
国民総所得に対する雇用者報酬の割合を示す労働分配率は、米国等の先進国で趨勢的(すうせいてき)に低下傾向にあります。この点が背景の一つとなって、各国において、資本主義の見直しといった議論が起きています。
成長の果実を国民一人一人が実感できる新しい資本主義を実現する鍵は、人への投資にあります。人への投資が、生産性向上や消費の増加をもたらすことで、経済の付加価値を示す国民総所得を引き上げ、それが更なる人への投資につながる好循環を、官と民が協力して実現していく必要があります。
他方で、コロナの影響を受け、製造業などはコロナ前の水準又はそれ以上に回復する一方、悪影響が続いている業種もあり、業績回復に差が生じています。私も先頭に立って、中小企業が原材料費、エネルギーコスト、労務費の上昇分を適切に転嫁できるよう、働き掛けを行っていきます。その上で、来春の労使交渉では、自社の支払能力を踏まえ、最大限の賃上げが期待されます。
政府としては、民間部門における春闘に向けた賃上げ議論に先んじて、保育士等、また幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、収入を継続的に3パーセント程度引き上げるための措置を、来年2月から前倒しで実施いたします。また、地域でコロナ医療など一定の役割を担う看護職員を対象に、段階的に収入を3パーセント程度引き上げていくこととし、今年末の予算編成過程において必要な措置を講じます。
民間側においても、来年の春闘において、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい、3パーセントを超える賃上げを期待いたします。
政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組みます。
第1に、従業員お一人お一人の給与を引き上げる企業への支援を強化するため、企業の税額控除率を抜本的に強化することを検討し、今年末の税制改正大綱で決定いたします。
第2に、税制の効果が出にくい、赤字の中小企業の賃上げを支援するため、ものづくり補助金や持続化補助金において、赤字でも賃上げした中小企業への補助率を引き上げる特別枠を設けます。
第3に、人的資本への投資を抜本的に強化するため、3年間で4,000億円規模の施策パッケージを、新たに創設し、非正規雇用の方を含め、職業訓練、再就職、ステップアップを強力に支援することとし、一般の方からアイデアを募集し、良いものに仕上げてまいります。
第4に、中小企業の賃上げの環境を整備するため、下請Gメンの倍増を図り、取引適正化のための監督を強化いたします。
第5に、政府調達において、賃上げを行う企業に対して、加点を行うなど、調達方法の見直しを行います。
経済界におかれましては、来年の春闘においては、2019年2.18パーセント、2020年2パーセント、そして2021年1.86パーセントと低下する賃上げの水準を、思い切って、一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい、賃上げが実現することを期待いたします。
なお、人への投資とともに、経済全体の付加価値を持続的に引き上げるため、今後、スタートアップエコシステムの抜本的強化、競争政策の強化、半導体・蓄電池等の戦略物資における官民連携の強化、地方におけるデジタル技術の実装など、成長戦略の議論を加速してまいります。引き続き、委員の皆さんの御協力をよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。」