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世界経済フォーラムグローバルリスク会議への
枝野官房長官メッセージ


平成23年4月7日

  政府インターネットテレビ


  1. 冒頭挨拶
     第一回グローバルリスク会議に参加しておられる、世界を代表する官民リスク責任者の皆さん。皆さんの日々の危機管理に向けたご努力にこの場を借りて改めて敬意を表します。
     ご承知のとおり、3月11日、我が国は未曾有の災害に見舞われました。国境を越え、官と民の垣根を越えたリスクに関する専門家の集合体が今ほど必要になったことはありません。この会議を構想された世界経済フォーラム、その創設者クラウス・シュワブ会長に日本政府を代表して敬意を表します。
     マグニチュード9の東日本大震災は、津波と原子力発電所事故を同時に発生させる戦後最大の災害となりました。現在のところ、死者行方不明者は合計27,000 人を超え、避難者も165,000 人を超えています。
     130 以上の国々、30 以上の国際機関、1500 以上のNGO 等が支援の意思を表明してくれました。日本国内分とあわせて700 億円近い義援金が集まっています。国際社会に広がる連帯の輪を感じるとともに、世界中からの温かい支援に心から感謝いたします。

  2. 原発の現状と見通し
     福島第一原子力発電所における事故については大変遺憾に思っております。今、一日も早い事態の収束に向け最優先で取り組んでいます。だからこそ、原子力発電所事故がもたらす危険と戦うべく、国内のみならず各国政府、国際機関、企業、専門家の助言と協力を得て、総力を挙げて対処しています。
     現在、淡水の注入や電源復旧作業など安定化に向けた努力が続けられているところです。しかし、タービン建屋等で高いレベルの放射性物質を含む水が検出され、海水への流出が確認されるなどしています。高レベルの放射性物質を含む水の海水への流出については、6日朝に止めることが出来たものの、依然予断を許さない状況です。引き続き、放射性物質の拡散防止のために、全力で取り組んでいきます。
     その際、日本政府としては、(1)周辺住民・人々の健康と安全を最優先に考え、(2)専門家の助言を受けつつ、起こりうるあらゆる事態を想定し、(3)それぞれの事態に応じたリスクの最小化を目指し、(4)最終的な事態の収束を目指す方針です。また、こうした過程で、国内はもちろん、周辺諸国を含めた国際社会に対する適切な情報の開示を行って参ります。
     今回の知見と経験を国際社会と共有し、原子力に関する安全の強化に貢献したいと思っています。

  3. 経済及びサプライ・チェーンへの影響と現状
     今回の災害は経済にも大きく影響を与えました。東北や北関東地域を中心に大規模な資本ストックが喪失しました。16〜25 兆円規模の毀損額です。フロー面では、マイナス影響がありますが、ストック再建のための生産の増加も見込まれます。
     東北・北関東地域には部品や素材のメーカーが多く立地し、震災により生産が一時的にストップしました。国内外のサプライ・チェーンへ影響が波及し、欧米やアジアの生産活動や貿易活動の一部に影響を及ぼしています。
     しかし、津波の影響を受けた地域の鉱工業生産は日本全国の2%程度、西日本や中部日本の生産拠点は無傷です。また、被災地の生産活動は回復に向けて着実に動き出しています。
     世界に対して、部品、素材や工業製品を提供することは日本の責務だと考えています。国内外のサプライ・チェーンへの影響が最小限となるよう、影響の大小、代替性の有無などをきめ細かく把握し、インフラ復旧、電力供給、金融分野等様々な支援策を早急に実施していきます。

  4. 安全性の担保
     このような状況下では風評被害への対応も重要です。我が国は、住民の安全確保に十分意を用い、また、国際社会に対し引き続き最大限の透明性をもって迅速かつ正確な情報提供に努めていきます。
     一部の国や地域において、放射線関連の検査等、規制を強化する措置等がとられていますが、例えば、食品安全においては、飲食物に関する基準値を設定し、摂取制限や出荷制限の指示等、安全な食品の流通の確保に向けて取り組んでいます。
     工業製品も厳重な品質管理下にあり、現時点で、日本の工業製品への放射線量は人体に影響を及ぼす水準にはありません。国際物流の拠点となる港湾や空港の安全性についても国際的に認められています。
     現状を正確に伝達すべく、在京外交団や外国プレス、ビジネスマンにブリーフィングを行い、各地の放射線測定値についても正確な情報提供を行っています。風評被害を回避し、日本の経済活動の円滑な実施を確保するべく、引き続き迅速かつ正確な情報提供に努めていきます。関係者におかれては、科学的事実に基づいた冷静な対応をお願いしたいと思います。

  5. 世界最先端の復興計画への世界企業参画の呼びかけ
     今回の災害はまさに日本の危機です。しかし戦後の奇跡的な復興に見られるように、日本は困難な状況にあたっても、国民一人一人の力で国を築き上げてきました。
     今後、長期的な視野で国民と共に「日本を改めて創る」という気持ちをもって、被災した地域の一日も早い復旧・復興、そして災害に強いまちづくりを進めたいと決意しています。
     例えば津波に備え、山を削って高台に住居を置き、海岸沿いの漁港などまで通勤する。植物、バイオマスを使った地域暖房を完備したエコタウンをつくり、福祉都市としての性格を持たせるなどです。従来に戻すという復旧を超えて、素晴らしい東北を、素晴らしい日本を創っていく、そういう大きな夢を持った世界最先端の復興計画を進めて参りたいと思っています。
     復興計画を目指していくうえで、我が国のみならず、世界中の企業の知恵や技術を大いに活用させて頂きたいと思っています。ぜひ多くの関係者のご協力・ご参画が頂ければ幸いです。
     こうした内容について、官邸スタッフと議論して頂き、是非知見をお借りしたいと思います。
     最後に、グローバルリスク会議が実りある意見交換、知識の共有化、そして何よりも具体的な行動の場として今後発展していくことをお祈りし、私からのメッセージとさせて頂きます。
    (了)