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2006年度 有識者本部員会合(第3回)議事要旨


日 時:2006年5月31日(水)10:00〜12:00
場 所:知的財産戦略推進事務局大会議室
出席者:阿部本部員、安西本部員、角川本部員、川合本部員、下坂本部員、中山本部員、野間口本部員、森下本部員、田中キヤノン専務取締役(御手洗本部員代理)


1.総合科学技術会議からの報告
知的財産に関する各方面の動向として、総合科学技術会議より5月23日に決定された「知的財産戦略について」の概略説明がなされた。
「知的財産戦略について」は大学の知的財産管理の充実、優れた知的財産創出のための特許情報等の整備、大学等の知的財産の活用の促進、知的財産関連人材の育成・確保が挙げられており、昨年同様、大学に関連する事項については知的財産推進計画2006に取り入れられることとなった。
2.自由民主党からの提言の説明
自由民主党知的財産戦略調査会から知的財産戦略本部へ提出された、「知的財産推進計画2006」の策定にあたっての提言について、事務局より概略説明がなされた。
提言は模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現や、世界特許の早期実現、特許審査の迅速化などを含む、合計11項目。
3.知的財産推進計画2006の草案審議
過去の有識者本部員会合の議論や、各有識者本部員からの意見を踏まえ、事務局でまとめた知的財産推進計画2006の草案の審議がなされた。主な議論は次の通り。
(1)創造分野
今回、特許と論文の統合検索システムについて取り上げた。これに関連するが、大学における論文検索システムの費用が非常に高額となってきており、いずれ国の支援が必要になるだろう。特に、デジタル論文情報について学会誌は入手できるが、プライベートな出版社の発行するものの入手が厳しくなってきている。
ポイントは、各大学が個別に出版社からデジタル化された論文を購入していること。複数の大学間でサーバを共有し、費用削減することが考えられるが、セキュリティやデータ紛失時の対応など、大きな問題となっている。
情報がウェブベースになったので、著作権問題がより絡むようになる。
これは非常に大きな問題である。知的財産戦略本部、或いは総合科学技術会議で取り上げることも考えられるが、今後の課題とする。
(2)保護分野
草案では世界特許システムの構築に向けた取組において、「日米欧三極特許庁会合の場において、ワーキンググループを設置し、試験的に他の特許庁の審査結果の受入れを実施するなど、特許相互承認制度の実現に向けた具体的な議論を開始することを提案する」と記載されている。世界特許システムに向けた取組を進めることは賛成だが、2006年度において他の特許庁の審査結果の受入れの実施となると、先行技術文献の偏在など、技術分野によって様々な問題が生じかねない。表現を工夫すべき。
試験的な受入れは、日本だけの一方的な受入れか、或いは相互受入れか。
模倣品・海賊版について水際対策が強化されているのは良いことである。他方、企業において海外から模倣品・海賊版のサンプルを日本へ送付させ、権利侵害の判定を行い、送り返す、という作業を行っているが、これに支障が出ないよう配慮すべき。
草案中に、企業の海外出願比率の具体的数字が明記されている。数字を明記するのは良いことだが、その定義も明確にしないと、数字だけが都合良く利用されてしまいかねない。例えば、日本出願をベースにせず、初めからPCT出願されるものをどう扱うかによっても数字は変化する。
海外出願比率を載せるなら、詳しい定義を載せるべき。欧州から米国と、日本から米国になされる出願数は実は大差ない。それにも関わらず、比率が異なるのは、日本は分母(国内出願数)が大きいためである。分母を減らせば海外出願比率は上がる。
(3)活用分野
(中小・ベンチャー企業の技術が大企業により取り上げられないよう、中小・ベンチャー企業の技術の活用を奨励した項目に関連し)大企業側の言い訳ではないが、相手先のノウハウを吸収するのも企業提携の重要な成果である。中小・ベンチャー企業が、しっかりした契約より仕事の受注を優先させることも、もめる原因となっている。企業の契約や知財に対する意識の向上により、状況は大きく改善するのではないか。
国際標準について、草案では取り上げられていないが、中国が独自の標準を策定し、それが他国に対する障壁となる、そのような戦略があると聞いた。日本として国際標準化活動にしっかり取り組むのは良いが、加えて諸外国の標準化戦略を研究すると良い。
技術標準に関する知的財産の取扱いルールの整備につき、RAND条件とパテントプールについて取り上げられているが、これらは国際標準と知的財産に関する大きな問題の一部でしかない。今後とも国際標準と知的財産に関する問題に取り組むべく、「また、2006年度も引き続き、国際標準化機関における知的財産権の取扱いルールの検討に積極的に取り組む」と追加すべき。
(4)コンテンツ分野
IPマルチキャスト放送の積極的活用が項目として取り上げられたが、その前提として現在の地上波放送事業者がIPマルチキャスト放送で流すことが念頭におかれている。今からはユーザーがクリエーターになり得る時代が来ており、地域コミュニティなどの自主放送が始まると思うが、このような自主放送も念頭においてほしい。
自主放送も念頭に置かれている。項目中に「…クリエーターに新たな創作チャンスを与えるよう促す」と一文記されており、これは自主放送を考慮したものである。更に、文化審議会著作権分科会においても自主放送は今後の課題として認識されている。
デジタル時代は、ユーザーであり、更にクリエーターでもある人々が増えるだろう。放送事業者、クリエーター、制作会社といった用語は、草案では伝統的な定義で記載されているが、今後、これらの定義は変化する可能性がある。このことを念頭に置いておいて欲しい。
コンテンツのプロテクションシステムに関する項目において、「コピーワンス」の見直しについて記されている。これは、プロテクションシステムの根本に立ち返って検討を行うことか。
ストリートファッションが項目として取り上げられているが、その定義は何か。通りで着るのは全てストリートファッションでは。
映画撮影のため来日する外国人から、日本の若者のファッションはバラエティーが豊かで、高く評価されている。韓国や台湾の若者は、雑誌を切り抜いたようなファッションばかりであるが、日本はオリジナリティーに富んでいる。
(5)人材育成分野
知財人材の育成について、日本の知財専門家を育てる、海外の教育を取り入れる(海外派遣など)、が取り上げられているが、これだけではアンバランス。海外から学生を呼び、日本で教育し、帰国させる、という知財教育の輸出も重要。日本への留学生は増えているが、(経済的)状況は厳しい。
法科大学院に関する項目において、その自主的な取組を促すとある。法科大学院の理系出身入学者の減少への対策と思うが、基本的には理系出身者が法科大学院に入学しただけでは司法試験の合格が困難なことが原因にある。このような状況で、自主的取組を促されても、どうしようもない。
知財教育の推進として、今回初めて学習指導要領の見直しが取り上げられた。著作権は学校では適用されないため、書物や映画などが限度を超えて生徒達に配られることがあるが、ここは今まで聖域のような領域であった。学習指導要領の見直しは非常に重いため、きちんとロードマップで裏付けられているべき。
知的財産推進計画2006の草案については、会合で出た意見を踏まえ必要な修正を行うこととし、最終的なとりまとめと知的財産戦略本部会合での報告について阿部本部員に一任されることとなった。
以 上