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2006年度 有識者本部員会合(第2回)議事要旨


日 時:2006年4月27日(水)16:00〜18:00
場 所:事務局大会議室
出席者:阿部本部員、安西本部員、角川本部員、川合本部員、久保利本部員、下坂本部員、中山本部員、野間口本部員、森下本部員、田中キヤノン(株)専務取締役(御手洗本部員代理)


1.有識者本部員提出の意見書
ハイテク製剤の特許保護の強化を求めた意見書について、提出した本部員より説明がなされた。
2.知的財産推進計画2006の策定に向けた検討項目について
事務局より、創造分野、保護分野、活用分野、人材育成に係る検討項目について説明がなされた後、自由討議を行った。討議の論点及び本部員からの意見は次の通り。
(1)保護分野
模倣品・海賊版の個人輸入の抑制に関連して、内閣府の知的財産に関する特別世論調査において、ニセモノの購入を容認する人々が約47%も占めるのは衝撃的。中国におけるニセモノ対策に全力を挙げているところで、日本人の意識がこのような状態では困る。法律で模倣品・海賊版の個人輸入を明確に禁止すべき。但し、特許侵害品と模倣品・海賊版は明確に区別すべき。
日本はまねをすることに対しそれほど敏感ではない。
法律で縛るというのもあるが、日本国民の品格を向上させる為にどうすべきか、長期的視点で取り組むべき。
数百万円の高級腕時計と、千円のそのニセモノとでは、購入層が異なり、混同される恐れもないため、真正品のビジネスに影響は無い。このようなケースは、ニセモノが真性品をリプレースするインクカートリッジのようなケースとは次元が異なるため、両者は切り分けて考えるべき。
数百万円のものと、千円のニセモノを間違える人はいないが、ニセモノが氾濫することによりブランドの希釈化が生じるため、単なる商標権侵害とは異なる。
最も取り締まるべきは、個人を偽装した業者によるニセモノの輸入であり、まずこれを検討すべき。偽装ではない個人による輸入の抑制まで含めた法律改正の議論はその後である。
国内だけで議論するより、国際ルールを参考にそれに倣うという選択肢もある。個人による映画館の盗撮は現在日本では禁止されていないが、被害が深刻な米国では禁止されている。日本は被害が大きくないから禁止しないというのは変な話であり、対策を講ずるべき。それが国際ルールに倣うということ。
北風と太陽ではないが、罰則を設ける手段以外に、消費者啓蒙も重要。啓蒙により、ニセモノ容認派が約47%から10%程度に減るよう努力することが先ではないか。
戦後の貧しい時代では、生活の為やむなくニセモノ作りが行われているケースもあり、同情の余地もあった。しかし、豊かになった現在では事情が異なる。罰則を設けるなど、ショック療法も必要ではないか。
インターネット・オークションにおける模倣品・海賊版対策については、権利者及びオークション事業者による「インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会」が発足し、効果を挙げている。ただ、事業者により熱意にバラツキがある。最近は、携帯電話を利用したオークションサービスが提供する事業者が現れたが、これら事業者は上記協議会には加わっておらず、今後はこれらに対する対策が必要。
オークション事業者による自主的な取組が重要であり、国が事業者の取組についての管理・評価にあまり介入するのは好ましくない。
インターネット・オークションにおける知的財産権の侵害は問題の一部に過ぎず、本質的には模倣品・海賊版以外にも模造拳銃や薬物などを含めてインターネット・オークションにおける違法取引をどうすべきか、ということ。
(2)活用分野
知的財産報告書について、その更なる周知徹底をすべき。
知的財産報告書を広める一案として、例えば投資家向け情報として知的財産報告書の内容を盛り込むよう、証券取引所が指導することが考えられる。どの企業も一律で情報を開示させるようにすれば、相対的な比較が可能となる。比較されるようになると、企業は競い合いより良い情報を開示するようになる。
国際標準化活動について、これは大学や行政法人のみで完結する活動ではなく、企業との連携や、総務省や経済産業省の担当部局など官との連携が必要。
研究開発型の独立行政法人で国際標準についてもっと認知して頂く必要がある。理事長の国際標準に対する理解が乏しく、研究者からすると、国際標準についてどのような活動を行うと上から評価されるかがわからない。
国際標準を取得するための具体的なモデルを示すことが必要。
既にITU(国際電気通信連合)には多くの日本人がいる。現在どのような分野でどのような取組が行われているかを整理し、それらを連携させ、ネットワーク化するだけでも効果がある。
中小・ベンチャー企業と地域の振興について、中小・ベンチャー企業は地方に多いので、地域振興としての支援を強めるべき。
(3)人材育成分野
企業ではいわゆる2007年問題で大量の退職者が生じる見込み。退職予定者の中には定年を延長せず、故郷に帰りのんびり過ごすことを希望する人々も多い。このような人々の中にはのんびり過ごすことを望む一方、自己の知識・経験等を活かして社会貢献を希望するものも大勢いる。知財をキーワードにこれらの人々を全国の地域知財本部と連携させる人材データベースを作成すれば、全国知財人材マップができるのでは。
弁護士、弁理士、実務家、エンジニアのネットワークが揃うと、地域振興、中小・ベンチャー企業支援に非常に役立つ。
医薬系の大学院では、知財が全く取り入れられていない。大学院ベースで知財教育を行わないと、同分野において知財が根付かない。
法科大学院へ入学する理系出身者が減少している。特に、企業を辞めて入学する理系出身者が学費や生活費の工面等、経済的な理由により減っている。
弁理士の試験制度に関して、現在の試験制度は知的財産人材育成総合戦略の方針に沿わない部分がある。具体的には、知的財産人材育成総合戦略で国際的に活躍できる人材の育成を挙げており、弁理士には国際性が求められているものの、試験の出題範囲に国際条約が含まれていない。また、選択科目免除者の大幅増などもある。理工系に対する選択科目免除など人材育成の方針に沿った免除であれば納得いくが、そうでないものもあり、試験制度が人材育成の方針に沿っていないのでは。
(知的財産推進計画全体について)国の支援はおおよそ3年ごとに見直すと聞くが、知的財産推進計画は4年目に入っており、過去に議論された問題や、長期的な課題が忘れられないように留意すべき。
以 上