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2008年度 有識者本部員会合(第2回)議事要旨


日 時:平成20年5月22日(木)14:00〜15:45
場 所:知的財産戦略推進事務局会議室
出席者:相澤本部員、梶山本部員、角川本部員、佐藤本部員、里中本部員、中山本部員、長谷川本部員、三尾本部員、山本本部員


事務局から「知的財産推進計画2008案」について説明が行われた。
iPS細胞研究に関する支援策について、内閣府及び文部科学省から説明が行われた。
本部員からの主な意見は次のとおりであった。
 
 (iPS細胞研究成果の事業化支援)
  RNA干渉というプラットフォームテクノロジーに関する特許は米国の数社のベンチャーが押さえているため、我が国企業は多額のライセンス料等を支払わなければ使えなくなっている。iPS細胞研究については、欧米と競争していかに実用化を早く進め、それをいかに特許でカバーするかということが日本の国益にとって重要。そのためには、オールジャパンのコンソーシアムを形成して、特許取得競争の経験を有する民間の知財人材の知見を活用していただきたい。
  iPS細胞研究の事業化は知財でプロテクトできるかどうかで決まる。このため、権利取得が後手に回ってはいけない。弁理士会としても支援を行っていきたいが、体制がバラバラでないことが重要である。コンソーシアムが形成できるような体制に持っていってほしい。
 
 (コンテンツ)
  デジタル時代あるいはネット時代においては、コンテンツが大量に必要であり、その創作を奨励することは最も大事だが、流通を促進させることもこれに劣らず重要。特に、ネットの発展により放送番組の二次利用等が重要になっており、そのためには権利処理が容易であることが必要。そのための方策としては、法律による強制的な権利集中、権利の集中管理、契約慣行、データベースの実施等やそれらの組み合わせが考えられる。特に物権的権利が重畳的に併存しており、共有の場合が多い著作物については、中世の土地制度のような様相を呈しており、流通促進のためには、絡まった糸を解きほぐす必要がある。その他にも、研究開発目的の複製等課題は山積しており、フェアユースというような一般的な規定を設けるかという議論も必要になってくる。
  著作権は絶対的な権利を持った物権であり、あるいは非常に強い人格的な権利を持っている自然権的なものであり、侵すべからずものという意識がかなり強いが、大きな目で見ると、そのようなそのような考え方では、流通が阻害され、利用が減り、結果的には権利者の利益にもならないということになりかねない。著作権は、他の知的財産権と同様にかなり人工的権利であり、これからはどういう方策が最もウィン・ウィンの関係になるのかという観点から、聖域を設けることなく議論していくことが必要。
  私見だが、デジタル技術の時代になって、集中管理によって実際に利用料を配分するシステムができれば、私的録音録画補償金制度は要らなくなるのではないかと思う。このことが動画投稿サイトの著作権クリアの希望につなげられるのではないかというイメージがあるので、民間の権利の集中管理の取組を支援するという項目が入っていた方がよい。
  コンテンツは市場が世界とつながっているため、日本で権利が強くて認められない場合には、海外でそれが花開いて儲かっていくという形になるだけ。このような観点から、必要なものと必要でないものを分けた上で権利について検討していただきたい。
  著作権法の見直しに当たっては、情報大航海プロジェクトがスムーズに動くよう、事務局でよく検討してもらいたい。
 
 (中小企業支援)
  これまでの中小企業対策は意外と効果が出ていないと感じている。今回、専門家を直接派遣するという方向になっているのは結構だが、集中と選択を行った上で本当の成功モデルを作ることが必要。
 
 (大学発ベンチャー支援)
  大学におけるストックオプションの権利行使については、TLOを使えばよいという議論もあるようだが、それでは、TLOを学内に戻しているような大学においては権利行使を行うことができず、解決策にはならない。きちんと措置を講じてもらいたい。
 
 (知財人材の育成)
  大学における知財教育については、これまで、広い目で見た教育が十分でなかったため、知財の重要性が見過ごされ、損している面があると思われるので、自然科学や医学なども含め全般的に行うことが必要である。
  知財人材は裏方的存在であるため、顕彰等の仕組みを設けることにより、インセンティブを高めることが必要。
  これまで会社は知財で守ることばかりに注力してきたが、資産として知財を評価するシステムができれば、会社が知財をより活用できるようになるはず。
  日本の企業で知財部門経験者がなかなか出世しないのは、企業経営の柱に知財がないからではないかと思う。知財人材の育成には、社内での知財人材の地位を向上させることが最も効果的であるはず。
 

 「知的財産推進計画2008案」の草案については、会合等で出た意見を踏まえ修正を行うこととし、取りまとめは相澤本部員に一任された。

(以上)