知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会
知財人財育成プラン検討ワーキンググループ(第5回)



  1. 日時 : 平成23年12月7日(水)10:00~12:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾座長、青山委員、荒井委員、佐々木委員、澤井委員、末吉委員、杉光委員、
    住川委員、高倉委員、中島委員、本田委員、八島本委員
    【事務局】近藤事務局長、上田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)知財人財の育成・確保について
      (3)「知財人財育成プラン」骨子(案)について
      (4)閉  会


○近藤局長
 おはようございます。妹尾先生に今連絡を取っておりますが、間もなく到着されると思います。若干遅れておりますので、冒頭のところだけ、私が妹尾座長の代理でお話をしたいと思います。
 ただいまから、「知財人財育成プラン検討ワーキンググループ」の第5回会合を開催いたします。御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、まず、特許庁から知財人財の育成・確保に関する検討結果について説明していただきます。その後に、知的財産人材育成推進協議会からの御提言をいただきます。その後、「知財人財育成プラン」骨子(案)について議論を進めたいと考えております。
 今日は関係府省といたしまして、特許庁総務部総務課から中尾総務課長、同じく総務部企画調査課から中村知的財産活用企画調整官に御参加いただいております。
(妹尾座長到着)
 次に私からごあいさつをという段取りですので、その後に座長にマイクを渡したいと思います。

○妹尾座長
 近藤局長、どうぞよろしくお願いいたします。

○近藤局長
 わかりました。ありがとうございます。
 おはようございます。今日も早朝からありがとうございます。
 このワーキンググループは、もう既に5回目の会合になります。お忙しい中、本当に皆様に御協力をいただいて、ありがとうございます。
 私ども、今、この議論を真剣にしておるわけですが、たまたま先日、ベトナムからハイレベルの政府調査団が来まして、ベトナムの特許制度をどうしていくのか、あるいは人財育成も含めてどういうふうにしていくのかということを議論しました。調べてみますと、ベトナムの特許出願件数というものは3,500件だそうでありまして、ちょうど日本の100分の1ぐらいでしょうか。ベトナムのGDPがどの程度か、私はよく知りませんが、これも100分の1ぐらいかもしれません。そういう中ではありますが、ベトナムも知財戦略に対して強い意志を持っていると感じました。
 最初は表敬訪問ということでしたが、1時間半も話をいたしました。本当に真剣にメモを取って書いていたのが印象的でございました。この知財本部あるいは知財戦略についても議論をいたしましたが、改めて我々のやっていることの重要性を、むしろベトナム側から教えられたような気がしたところでございます。
 今日は、このような案でどうかというものを提示いたします。我々も相当議論をしておりますが、正直申し上げて、もう一つ頭が整理し切れていないところもあります。今日は相当突っ込んだ議論をいただいて、それをもとに、次回にはもっと練り上げて、仕上げていきたいと思います。
かなり思い切って書いてみましたが、正直言って、若干、まだ自信はありません。とりわけ、前回、荒井委員、妹尾先生が一緒におつくりになった「知的財産人材育成総合戦略」と何がどう違うのかというところの考え方を大分整理したつもりでありますので、その辺をお聞きいただければと思う次第であります。
 年末お忙しい中にまだ御審議をお願いすることが続きますけれども、皆様方の御協力を得て、何とかしっかりとまとめたいと思いますので、本日もよろしく御検討のほどをお願いいたします。
 ありがとうございました。
 それでは、座長にマイクをお返しいたします。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 済みません、マスクをしている状態ですので、ちょっとお聞き苦しいかもしれませんけれども、御勘弁ください。
 それでは、早速始めたいと思いますが、最初に事務局から資料の確認をしていただこうと思います。髙原参事官、よろしくお願いいたします。

○髙原参事官
 おはようございます。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第の下に資料を並べております。
 まず資料1が、特許庁から提出いただいたプレゼンテーション資料です。
 資料2が、「知的財産人材育成推進協議会」からいただきました御提言の資料です。
 資料3が、事務局作成の本日御議論いただく主な資料でございますが、各関係府省と調整中の部分もございますので、席上配布(委員限り)とさせていただいております。
 資料4が、今後の進め方についてという1枚紙です。
 以上が本体資料でございまして、参考資料1として、前回第4回会合でいただきました主な意見をまとめた1枚紙がございます。
 最後に、これも席上配布ですが、資料3を御説明する際に使用いたします補足資料、「知財人財育成の方向性」というタイトルのプレゼンテーション資料を机上に配布させていただいております。
 資料の不足などはございませんでしょうか。もしありましたら、事務局までお申し付けください。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 それでは、早速1つ目です。特許庁における検討結果についてということで、知財人財の育成・確保に関する検討の結果をしていただきたいと思います。それについて説明を伺うということであります。それでは、中尾総務課長よろしくお願いいたします。

○中尾総務課長
 御紹介いただきました、特許庁総務課長の中尾でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。座って御説明いたします。
 お手元の資料1のパワーポイント資料のご説明をさせていただきます。先生方が御存じのことも非常に多いと存じますので、最初の方は駆け足でご説明させていただきます。人財分野について、特許庁としては、皆様方に、御検討をお願いところを中心に御説明させていただきます。
 最初の数ページは、特許庁を取り巻く状況がについての資料であり、企業の国際展開・世界展開との関係で新しい要請を迫られているという内容でございます。
 2ページ目をごらんください。言わずもがなですが、日本企業は、ますます国際展開を行っており、特に中国やASEAN地域に国際展開を積極的にしております。この点について、中小企業の国際展開も踏まえた知的財産権の保護の在り方を、特許庁は対応していくのかという課題を背負っているわけでございます。
 3ページをごらんください。今までは日米欧の三極を中心とした特許の出願が、日本の大手企業中心とした国際展開する日本企業の出願構造の中核をなしていたわけでございます。しかし、現在では、中国・韓国に対する出願が年々増えてきており、日米欧中韓の五庁の時代になってきたという認識でございます。
 このような中、先般よく知られていることですが、日本はずっと世界で特許出願件数1位をでしたが、2000年代に入って、米国と逆転し、世界第2位となりました。更に、昨年は中国とも逆転して、中国が世界第2位の特許出願大国になっております。それで、中国は、第8次5か年計画においては、2015年までに年間75万件の特許出願を目指すとことになっております。名実ともに今後、中国が世界第1位の特許大国になっていくことを想定できます。その事を踏まえ、日本国特許庁の知財制度・戦略がどうあるべきかという課題を背負っているわけでございます。
 4ページをごらんください。特許庁の者が色々な場で、御説明している資料ですが、審査官の数が米国や欧州と比較して少ないという状況の中においても、スピーディーに特許権を皆様方にお出ししてほしいという要請は昔から変わっておりません。そのため、日本国特許庁では、審査結果の最初のアクション、いわゆるファーストアクションが28~29か月というところまで来ております。
 ただし、幸か不幸か、近年、国内の特許出願が頭打ち傾向にございます。その結果として、今年はファーストアクションが22~23か月ぐらいまで下がる予定でおります。この予定ですと、2013年までにファーストアクションを11か月で行うという目標を私どもは掲げておりますが、純粋に出願件数が減少しているという理由で、11か月の目標を達成できるのではないかという見通しを持ちつつございます。
 しかしながら、これもどちらかといえば、国内の出願が最近の景気動向を踏まえて頭打ちになったということなので、引き続き、最終的に権利を、いつ、どういう形でお出しするかということまで含めたトータルのライフサイクルで見たときに、まだ依然として、審査の早期処理に対する要望は非常に高いものだと思っております。
 右側には三極の特許審査官の数の推移がございます、知財本部の力強い御支援をいただきまして、任期付審査官を入れていただいた結果、我が特許庁は490名の任期付審査官を含めて実質約1700名という規模の審査体制になっております。しかし、米国も欧州もすごい勢いで特許審査官を増やしております。また中国は75万件の特許出願に大成するということで、数千人規模での特許審査官の増員を図っているという状況もございます。いずれにしても、量だけがすべてではございませんが、審査について、早期、かつ、確実に処理するための体制構築につきましては、依然として私どもの課題だと思っております。
 次のページは飛ばしまして、その次の6ページをごらんください。そういう中でPCT出願件数が圧倒的な勢いで世界的に増えております。日本国内の出願は、さきに申し上げたとおり、頭打ち傾向でございますが、PCTを経由した世界への出願は、近年、この景気情勢の中でも対前年比2割増ぐらいのペースで、常に増え続けております。PCT出願を活用して海外に日本の企業が出ていくということを前提とした審査の在り方を考えていく必要がございます。
 従来では、PCT出願の審査は英語であり、米国もしくは欧州で出されている特許文献を見ておけば、世界の技術水準をキャッチアップすることができましたが、右側に書いてございますとおり、当然、中国・韓国の特許出願数が増えてくるということで、今後は、中国語・韓国語の文献まで幅広く調査を行わないと、その技術が世界で1番かがわからないという状況になりつつございます。こういった中国語や韓国語のように、新しい言語に対して、どう対応していくのかという点についても、特許庁が背負っている課題でございます。
 恐縮でございますが、前のページに戻っていただきまして、5ページの下の方に日本が国際調査したPCT出願と米国が国際調査したPCT出願の絵がございます。これはPCT出願をした出願人が、特許庁に対して、この特許出願が世界において、新規性があるか、進歩性があるかということの調査を依頼し、その調査レポートを付けて、世界各国に回付されるというPCT出願の仕組みでございます。
 日本国特許庁が国際調査を担当したPCT出願がについて、日本の特許庁では国際調査の結果を特許性ありと判断したものを、米国特許庁や欧州特許庁に渡すと、新規文献で拒絶理由と記載してある赤い部分のとおり、米国特許庁が66%、欧州特許庁が62%と書いてある部分は、日本の特許庁は特許性ありと判断したにもかかわらず、約3分の2は拒絶理由があるという判断を行っているというデータでございます。
 この数値について、日本国特許庁が国際調査を担当したPCT出願だけではなく、右側に記載してある米国も同様に、米国特許庁が特許性ありと判断した国際調査レポートを付けたPCT出願に対して、日本国特許庁は約73%が新規性無し、もしくは進歩性無しということで拒絶しております。米国特許庁が特許性ありと判断した国際調査レポートを付けたPCT出願に対して、欧州特許庁でも、57%の拒絶判断ということで、約半分が拒絶されているという事実がございます。これに対して、現在、三極間で審査基準のすり合わせを行い、数々の研修等を通じて新規性・進歩性のスタンダードを合わせてきているといった自覚はあるものの、各国の調査結果がまちまちに受け止められているということで、引き続き、日米欧間だけでもいろいろな協議・調整の必要であると考えております。更に今度は、中国・韓国の文献調査についても対応の必要性があるという構造にどう応えていくかという問題があるわけでございますので、その点も特許庁が背負っている課題でございます。
 それから、7ページにまいります。技術の中身についての知財の取扱いが、昔と違って今はどうなっているかについてですが、産業界の方も大勢おられますので、釈迦に説法かもしれません。ハイブリッド自動車の絵をたまたま引用してございますけれども、従来は、特許の出願の中身と技術の中身がそれなりに一つ一つ区分されており、かつ大学における研究開発の延長線上で、学際的な技術というよりは、ある特定の技術を深掘りしていくような技術の特許出願というものが比較的多かったのかもしれません。しかし、最近、システムが輻輳化していく中で、1人の審査官が審査するには技術分野を多岐にカバーしなければならないという案件が増えてきているわけでございます。
 自動車の技術は、これも釈迦に説法でございますけれども、従来型のエンジン、カムがあって、ピストンがあり、そこにシリンダーを回してという基本型のようなところでした。しかしそこから、自動車の技術は、電池やエネルギー等の技術の話になり、あるいは材料の話になり、ここには書いてございませんが、世界に日本の水の技術を売り出そうということで一生懸命やっている膜処理の技術であったり、バイオ技術であったり、装置としての機械の技術であったり、制御するためのソフトウェアの技術だったりと多岐に渡ります。このようなことについて、水の技術を審査している審査官いうことで、1人の審査官が自動車の技術すべてカバーをするというのは大変難しくなってきているということがございます。産業界のニーズに応えていくような形で、技術の中身もできるだけシステム化できるような、特許庁審査官のキャパシティーの増大を求められているところでございます。
 8~9ページをごらんください。ここは、中国やASEAN地域との連携について、一生懸命取り組んでいるということでございます。詳細は省略させていただきます。
 その次の10~11ページをごらんください。こちらは既にこの知財本部でも議論をいただいているところでございます。また、10ページには、妹尾先生の御著書の一部も記載させていただいておりますけれども、イノベーションの在り方が変化していることや、技術をどう事業に結び付けていくかといった内容でございます。そこから、複数の技術を組み合わせてどう比較優位を出していくか。更には、複数のプレーヤーがお互いにどう技術を活用していけるかという観点から、特許庁は何ができるかということでございます。
 先ほど申しましたとおり、日本の特許庁への出願が頭打ちになっているという一つの理由でもあるかと思いますが、やはり日本で特許を取るということの価値を高めていくということに日本国特許庁もできるだけ一生懸命お手伝いを行わなければなりません。先ほど申しました、組み合わせ型の技術について、まとめて、しかも産業界ニーズに対応する形で、パッケージで審査をするなどということも含めて、良い技術だから特許にするのだということを超えた取組みを特許庁としても行っていきたいと思っているところでございます。
 そして、10ページの下の方に記載されていますが、純粋に知財で稼ぐというだけではなくして、知財を所有していることによる、技術開発、研究開発、そして事業化のプレーヤーとして、ビジネスの世界における立ち位置をよく理解し、かつ、特許の審査の在り方についてもクレームの書き方を厳格に尊ぶというのはサイエンティフィックメリットを勿論議論しなければいけません。一方、どういう権利化支援を行えば産業界のニーズに一番応え得るかということを踏まえた特許審査の在り方について、取り組んでまいりたいと思っている次第でございます。
 以上をまとめますと、12ページのオレンジ色の枠囲みのところに11項目記載されておりますが、私どもからのお願いは、このような11項目について、御審議賜れればということでございます。
 最初に、先ほど申しましたとおり、スピードは何より大事だと考えております。それから、日本で特許を取る価値があり、その特許は、強い権利の確保がされなければいけません。そして、何よりも新しいビジネスが出ていくということを踏まえた形で、技術は大きく変わっていくことについて、それを権利化で支援できるような体制をつくらなければいけません。あとは中国・韓国の出願件数が増加してくる中で、日本の特許庁が各国特許庁に負けない体制をつくることを頑張っていきたいということでございます。
 まず第1番目は、国際出願が増えている中、中国やASEAN地域に対しても出来る限り日本の特許審査の結果が、そのまま活用されるように、日本でも積極的に国際調査機関の活動を行うことや、審査処理を一層スピードアップの要請に対応する体制をきちんとつくり込んでいくことが重要だと思っております。
 次に、中国語・韓国語での審査をする人財を育成するには時間がかかろうと思いますけれども、少なくとも英語での審査が、当たり前に行われていくような体制に向け、庁全体の英語力の向上について、抜本的に取り組んでまいりたい次第でございます。
 3番目は、中国や韓国に、特に中国に対して、日本の制度なり、日本の審査基準なり、あるいは更には具体的な新規性や進歩性の判断について、できる限りネットワークを張り、コミュニケートしていくことで、日本で取った特許が、中国においても特許になるということを担保していきたいといった意味で、審査官の各国派遣を拡大してまいりたいと思っております。
 4番目、5番目は、技術の進歩・技術の変化に審査官が柔軟に対応していけるようにということでございます。当然のことながら、特許庁に入って何十年と審査を行っていく人の技術の感性というものは鈍ってまいりますので、技術へのエクスポージャーを広げる。それから、もともと有機化学で入った人がバイオの分野、更には医療の分野にどんどん審査を伸ばしていく形で、できるだけ審査官の技術の専門性を広げていく方向で、幅の広い技術対応ができるようにしていく。それから、任期付審査官を取らせていただいた大きなメリットは、審査官の数を増やすということだけに留まらなく、民間企業でいろいろな知財の運営管理の経験というものを特許庁に持ち込んでいただいたという部分がございます。また、新しい技術分野に対して、特許庁の学卒・修士卒で入庁してきた審査官ではカバーし切れないようなところも、産業界の方にカバーしていただけるというメリットもあります。この任期付審査官のメリットは、今後、これは引き続き、いろんな形で何かに生かせていただければと思っている次第でございます。
 この任期付審査官というものは、一方で形を変えた民間の能力の活用、あるいはワークシェアリングでございます、当然のことながら、膨大化する審査の負担に対応して、IPCCなどを通じて検索やサーチを外部に出すということで、いろんな意味で徹底的なワークシェアリングを進めてまいりました。これについても引き続き、進めてまいりたいと思っている次第でございます。
 そうした中、民間の能力も借りる、任期付審査官も入れるということになりますと、一方では、今後、従来の特許庁の審査官がずっと、教育研修制度等で多くの方の力を借りるということになり、クオリティーの維持というものが大変な問題になってまいります。そういう意味では、欧米の各国特許庁では、審査官の審査の品質を管理する体制にかなり強力な、手厚い体制が敷かれておりまして、特許庁も少し品質の管理について本格的に取り組んでまいりたいというのが8番目の項目でございます。
 9番目は、官民交流と申しましてもいろいろと制約がございまして、自分の技術分野に近いところの企業にお邪魔するというのは難しい制約がございます。できるだけ民間の経験も積んで、その中で、どういう形で権利化を支援すれば審査官にとっても、より産業界のニーズに応えられていくかということについて、少し取り組んでまいりたいと思っている次第でございます。
 あと、「強い権利」をつくっていくことについて、知財高裁ができ、裁判所の中にも相当量のノウハウが蓄積される中で、幸か不幸か、審判で出た結果が知財高裁とで異なる判断が下されるという事例も増えてきております。また、いろんな形で、とにかく早く「強い権利」に確定してもらいたいというニーズに応えるためにも、特に審判の段階で法律的に間違いのない「強い権利」をつくり込んでいくことをどう考えていくかという話でございます。
 最後になりましたけれども、先ほど申しました多岐に渡るイノベーションモデルに即した事業化の支援となりますと、審査官と応答しながら企業の権利化・事業化を支援していくようなコンサルティング機能の強化というものが非常に大きな問題になっています。、そこで、INPIT等を通じて、引き続き弁理士会等々とも提携しながら、いろんな形で教育研修機会を拡大してまいる次第でございます。
 以上、私どもが考えている内容でございます。
 雑駁でございますが、ありがとうございました。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今の御説明、熱心にしていただいたんですが、御質問その他、あるいは御意見、委員の先生方からいかがでしょうか。
 高倉委員、お願いします。

○高倉委員
 高倉でございます。
 どうもありがとうございました。日本で特許を取ることの価値を高めるという方向での御提言だったと思います。
 1つ質問と、1つ感想です。
 質問は、4ページの絵ですが、ヨーロッパ特許庁が作成したサーチレポートが他の2庁、EPOを含めて3庁においてどのようになっているのでしょうか。調べていないのであれば、今後機会を見つけて調べていただけるといいかなと思っております。よろしくお願いします。非常に興味深いデータだと思います。
 あと、意見ですが、最後の「3.課題のまとめ」の(1)のところで「国際調査機関としての活動拡大」というものがあります。活動拡大の一つの在り方として、例えば2013年以降FA11が達成できそうな見込みもあるという状況の中で、審査官のより有効な活用という観点から、例えばアメリカ特許庁が受理した国際出願の国際調査報告作成を(英語のままで)日本が協力するというのはいかがでしょうか。
 特に日本がサーチ能力の高い分野にニーズがあると思います。例えば100人の審査官が1年間50件受ければ5,000件ぐらいの協力ができます。それは決してアメリカ特許庁を助けるというだけではなくて、我が国特許庁自身が国際化する一環としての意味もあると思いますし、アメリカにおいて無駄な、本来特許になるべきものでないものが特許になるということを避けられるという点で国益に資することでもあると思いま。そういう点も含めて検討されると、人財育成という観点からもいいのではないかと思いま。是非検討を進めてほしいと思いました。

○妹尾座長
 八島委員、お願いします。

○八島委員
 産業界の立場からは、先ほどおっしゃったように、日本の特許出願が少なくなってきているということを、やはり日本の市場ということで考えますと、そこに出す価値がなくなってきているというのは多分事実だと私は思います。それをまた多くすることがあるかといいますと、基本的にはないという前提で特許庁の施策は考えるべきであると思います。
 それで、日本の出願を、質を高くするというのも大事ですし、そういうものは非常に大事だと思いますが、それ以上に大事なことは、日本の企業が海外でやっていくためのベースをどうやってつくっていくかというような観点で、これは非常に国の機関としてボーダーを超えていくというのは難しいというのは重々承知していますけれども、そこのところの発想を変えない限りは、日本の特許出願を増やすとか、日本の特許の質を上げるというのは非常に大事なことだと私は思いますが、多分、そういう方向に行かないのではないかと思っています。
 そこのところの視点をやはりもう少し取っていただかないと、特許庁としても任期付審査官の活用等も含め非常に大事だと私は思っていますし、早く、強く、安くという部分があると思うんですけれども、日本の出願数を増やしていくということにはならないと思います。多分、出願数は増えていくかもしれません。一番日本の中の出願件数が多い企業というのは、どちらかというと、電気・電子ですね。電気・電子の会社の方々が前と同じような形でどんどん出していくかといいますと、そういう方向に行くのかというのはやはり方向性としては違うのではないかと思っておりまして、この今の数は維持されるかもしれませんけれども、これがまたどんどん上がっていくということを想定すること自体が私は前提としては違った考え方ではないか、ここ10年とか先は違ってくるだろうと思います。 そのときに、日本の特許庁という立場から日本の特許権という、日本の特許権というのは変なんですけれども、勿論、属国主義ですから非常に難しいのは重々承知はしていますが、日本の企業の持っている発明をどういう形でグローバルで活用もしくは保護していくかという観点が必要だと思っています。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今の八島委員もスタンスを変えるべきであるということで、何かお答えはありますか。

○中尾総務課長
 ありがとうございます。
 まず、高倉先生の欧州の御質問について、データは欧州特許庁で有しているのですが、欧州特許庁がデータの公表を認めていないため、記載しておりません。日本国特許庁や米国特許庁と類似するデータになっていると推測いたしますが、手元にデータがございません。お許しいただければと思います。
 また、高倉先生のおっしゃった2つ目の御質問と、八島先生からの御指摘について、日本国特許庁への日本国内向けの出願が頭打ちになっていることについて、国内からの出願を増加させる背策を検討しているのでなく、むしろPCTやPPHを活用して我が国企業が世界で活躍できる知財の環境整備を進めるという認識は一緒でございます。
 そういう意味では、例えば、先ほどのPCTのお話などで、米国のサーチレポートなどを日本が受けるというものがあってもいいではないかという御指摘を高倉先生からいただいています。韓国特許庁は、米国特許庁のサーチレポートの仕事を引き受けております。そこで、私どもも、米国とのワークシェアリングという議論もあるかもしれませんが、それと同時に、日本企業が営業活動を進める中国やASEAN地域で、しっかりとした権利を取れるようにするために、日本国特許庁ができる限り応援してあげるということが大事かと思っております。
 その意味では、今日の御説明はむしろ中国やASEAN地域などに対して、例えば国際調査のデータ提供やPPHといった、審査結果をできるだけ全部取りそろえて、各国の審査庁に対してその審査結果を送ることで、日本国の特許審査の結果を事実上尊重してくださいという施策で、日本での権利範囲と同等の権利を取れるように進めていくべきと考え、説明させていただきました。ただし、繰り返しになりますが、韓国が米国と一緒に取り組んでいることも踏まえ、グローバルなワークシェアリングという議論は当然あって然るべきだと思っております。
 また、八島先生のお話で、世界で権利保護を的確にされたい企業の方々が、手近な日本国特許庁で権利を出してもらうと、早く・安く・質の高い、世界的にも通用する特許権を取得することができるという体制を整備することにより、企業の海外展開を支援したいと思っております。
 したがって、そのためには当然のように英語での審査を庁内で行っていかなければならないことや、当然、日本国の審査結果が世界で通用するような、力を持たなければならないということを御説明させていただいたつもりでございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 八島委員、よろしいですか。

○八島委員
 はい。

○妹尾座長
 ほかにいかがでしょうか。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 ちょっと質問なんですが、この5ページのPCT、今の国際化の関係があると思うんですけれども、PCTで出して、それぞれが調査して、日本の場合には日本国内で24%が拒絶される。アメリカの場合には、アメリカで39%が拒絶されるというのは、どこか構造的な問題があるんですか。本来ならPCTでサーチをして特許審査と同じようにやれば日本ではそのまま認められるということだと思うんですが、日米でそれぞれこういう結果が出ているのは、何かこのサーチというものは粗い調査で、予備調査みたいなもので、本調査ではないんだということだと意味がないような気がするので、何か構造的な問題があるのかどうか、ちょっと教えてください。

○中尾総務課長
 私どもがこの数字を厳粛に受け止めなければならないと思っております。検索をかけるときに、これは審査される方、サーチされる方が、ある特定の技術出願を見て、どういう検索キーを入れ込んで検索していくかということで、文献がヒットするもの、ヒットしないものが当然あるわけでございます。それは、どの審査官やどのサーチャーがやっても、同じ検索キーや同じ審査のコードを使ってやるということになっていないものですから、目の前の技術を見たときに、どう技術をとらえるかという観点で、別の審査官が見ると、違う観点から新しい文献が見つかったということでございます。
 そういう意味では、これに限らず、三極の審査結果がそろわないという結局のところ、ますます技術が難しくなってきていることから、1つの特許出願の中に、特許分類上、7つや8つの特許分類を含む技術が包摂されており、他方で1人の審査官がカバーする技術分野というものは恐らく、ある特定の分野であるということもあり、あらゆる技術分野の審査について、全部網羅的に文献サーチをかけて、かつ、すべての検索の可能性をやっていくということで、時間をかけるだけの物理的な余裕がございません。こういうことが日本でも米国でも、恐らく欧州でも起きているのだろうと思います。
 なので、ある特定の新しい技術に対して、どういう審査をしていくのかということについて、各国当局の間ですり合わせをしながら、知恵を共有し合いをやらせていただいているところでございます。

○妹尾座長
 どうぞ。

○近藤局長
 中尾課長の説明にあった24%という数字は私も非常に意外な気がしますし、アメリカでも39%あるというのを見ていささかびっくりしていますが、審査官が発明の中身をどう位置づけるか、どう検索するかによって変わってくるものだとすると、これはPCTであろうとなかろうと、中尾審査官が審査した場合と、近藤審査官が審査した場合と、妹尾審査官が審査した場合で、特許になるかどうかについて24%ぐらいの差がありますと言っていることになります。
 日本特許庁の審査が審査官によって24%も差があるとは私は思いません。一つの特許出願の中に発明の中身が3種類ぐらいあって、そのうちの一番典型的なものだけを見ているとか、何か構造的な理由がなければ、審査官によってこれだけの差があるとしたら大問題ですし、高倉委員はきっと、日本ではそんな審査はしていないと必ず言われると私は思います。
 それから、違うことにも1つだけコメントさせてください。
 先ほどから海外に出ていく話をずっとされていましたが、海外から呼び込むというのももうちょっと話をしてほしい。八島先生の御発言もそうだと思いますが、やはりASEANの国々が一旦日本に行こうではないか。まず日本に行って、そこから展開するといろいろうまくいくと思ってくれると、技術も情報も人財も資金も入ってくる。まず日本に1回行こうではないかということにすると全体のマーケットが広がりますから、たとえ日本国内の純粋な国内向けは減るとしても、海外からのものが呼び込めるようになって、より活性化されるという、多分そういう御指摘だと思います。説明を、海外へ出ていくだけではなくて、国内にも呼び込むと言っていただけたらと私は思います。この部分は言いっ放しで結構です。
 1点目についてはどうでしょう、高倉先生、違いますか。

○高倉委員
 アメリカも39%、日本も24%、確かに高いなという気はするのですが、調査レポートをつくるとき決して手を抜いているということはないと思うんです。それなりの時間をかけて、むしろ国外出願よりも高い品質になるように時間をかけて丁寧にやっていると思います。
 そういう意味では、私もこのデータの統計の取り方がよくわからないのですが、出願人の意見も聞いてみようということでとりあえず多めに文献を引用して拒絶理由を打つというケースもあると思うのです。ですから、24%というのは相手の反応を見るために何らかのアクションをしたケースだと思えば、やや高いなという気はするのですが、これがゼロである必要は必ずしもないのではないかなという気はします。
 詳細はわかりませんけれども、とりあえず出願人の意見を聞いてたというケースが反映されたのかなという気はします。

○中尾総務課長
 数字の中身につきまして精査して、また御報告したいと思います。国内段階では類似する先行技術文献があった際、一旦、拒絶理由通知を出して出願人の見解を問うてみるという場合、とりあえず拒絶理由通知を打ち、その後、最終的に特許査定になったものは、88%である。しかし、最終的に拒絶査定となったものは12%ある。
 それでも、12%については、なぜそういうことが起きているかということについて、私どもの中では審査体制の在り方も含めて再検討いたします。

○妹尾座長
 八島委員、お願いします。

○八島委員
 この表に関連してお聞きしたいのですけれども、これは赤い印が新規文献に基づいてということですね。これがちょっと気になっていて、それが先ほど近藤局長がおっしゃるように、新規文献に基づいてやるということは新たな文献が出てきたということですね。そこのところがこの辺はどういうふうに読むのかというのが多分必要なのではないかと思うのです。
 当然、アメリカの調査で日本が73%、新規文献で、これは多分、日本語文献が読めていないというのはある程度わかるのですけれども、日本の特許庁がいわゆる24%、66%なのかはわかりませんが、例えばUSで66%でもいいんですが、そこが読めていないということがあるのかといいますと、私どもが審査を受けさせていただいている感覚から言いますと、そこはちょっと違うかなと思うので、この根拠の赤の部分のベースが何なのかというのは観点として是非入れていただきたいなと思っています。

○妹尾座長
 どうぞ。

○中尾総務課長
 データについての説明が不十分で申し訳ございません。
 恐らくはという答えになってしまいますが、日本国特許庁が審査するときに、米国特許庁の文献も欧州特許庁の文献もすべて包括的に、検索し、文献調査をしています。しかし、各国とも傾向としては、米国特許庁は米国の特許データベースを最初に検索し、欧州特許庁もまたは、欧州の特許文献を最初に検索しているということなので、各国とも、自国の文献を中心的に調査してから海外の文献を調査しております。したがって、調査範囲に自ずと差が出るわけでございます。今後は、各国で用いている先行技術文献調査のデータベースの共有を一層進めていけるようにできればと考えております。まさに、このようなサーチをする特許文献のデータベースが完全に一体共有化されていかない限りは、こういう問題はずっと続いていくのだろうと思っております。

○妹尾座長
 この問題は、今、これで精査してくださるということなので、是非その結果を待ちたいんですけれども、今のおっしゃる話ですと、制度構造的あるいは審査体制の話として受け止められるかもしれませんが、人財育成として、なぜこのデータを見るかという話はどこにあるんですか。

○中尾総務課長
 大変重要な御指摘でございます。先ほど中国・韓国の文献もと申しましたけれども、当然のことながら英語の文献はもとより、中国語・韓国語の文献を直ちに原語で読めるかについては、かなり高いハードルがございます。しかし、日本語の文献だけではなくて、まずは英語による審査を確実にできる人財育成を図っていきたいと考えております。
 もう一つは、特許出願が技術的に高度化していることを踏まえ、ある程度広い分野の知見の技術について知らないと判断がぶれるということもあろうかと思います。そこで、審査官がカバーすることのできる技術分野を増やしていき、多種の技術分類に対応できる人財育成を図っていきたいと考えております。

○妹尾座長
 ということは、この数字が出てくるというのは、ある程度、人財育成をやらないことには減らない数字だという認識というふうに考えてよろしいわけですね。
 いずれにせよ、今の御指摘のところの調査の部分は少しはっきりさせていただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 FA11を13年ほぼ達成ということは、大変すばらしい成果だと思うんですけれども、知財の世界というものは、息の長さもともかく、私はこれは世界で共通しているので、日本だけというわけではないんですけれども、非常に時の流れというものが世間の常識と大分ずれているぐらい遅い世界だと思っています。
 そういう意味で、日本の国に特許を出す意義というものは2つぐらいあって、1つは実質的に日本の市場でいろいろなことをやりたい。それで、それを守りたいというのは一番本筋で、これは海外からも日本からもというところなんですけれども、それでは縮小していく市場でそれをもうちょっと活性化するにはということで、もう一つは、今、幾つか議論が出てきましたけれども、日本の特許庁に審査してもらうことの、日本で特許を取れば、日本の特許を引っ提げて、どこの国でもすぐに特許になるという、そういうものが一番望ましいと思うんですよ。
 そのときに、これは何か月単位なので、例えば我々ですと、どこかの国は2年半で特許になります、どこかの国は2年でなりますといったときに、わざわざ困難を押して2年のところを選ぶかといいますと、多分選ばない。ところが、どこかの国は2年半で特許になります、日本は2か月でなりますと言われれば、万難を排しても日本の特許庁を多分使うと思うんです。そういう意味で、私はその11か月を、これからは11か月で一応終わりということではなくて、何か月を何十日単位ぐらいの、本当にドラスティックな方向を目指すべきだと思いますし、そのためにはきっとスーパーマンみたいな人財が多分審査官に必要になるんですね。
 それで、私はそのくらいのことを掲げてやった方がわかりやすくていいのではないか。それのタイムスケジュールなり何なりを書いて、それを目指していった方が非常にわかりやすいと思いますので、是非その辺ももうちょっとスピードアップというものを検討していただければと思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今の話は、要するに世界の中での日本の特許庁の競争力は何かという根本的なお話だと思います。そうでないと、日本の特許庁の価値が認識されないと、幾ら理屈で、こちらはちょっと早いねみたいに言っていてもしようがないねという抜本的なことだと思います。
 中島委員、お願いします。

○中島委員
 今の話にも関連するんですけれども、最後のページの英語の出願に関連した(2)の部分ですが、人財育成の観点からは両方のアプローチがあろうと思いますけれども、私は現状では英語で実務ができる審査官・事務官を育成・配置するというよりも、先に英語での審査体制をつくる方が人財育成は速いのではないのかなと思います。制度が変わればそれに従わざるを得ませんし、審査官もやらざるを得ない、出願人もやらざるを得ない、代理人もやらざるを得ないということです。実力レベルがゼロだったら別ですけれども、もう既にかなり三者ともレベルは高いわけですから、進んだ方がいいと思います。
 したがって、そのスケジュールを明確に、いつからやる。いきなり全部やる必要はないんですけれども、内容的にも、数量的にも、段階的に、いつからいつまでで完璧になるというふうなスケジュールづくりが大切かなと思います。
 それから、それがすべてに影響してきますのは日本特許庁の魅力づくりということです。出願件数が減っているのは、景気後退ということもさることながら、やはり使いやすい、魅力のある特許制度であれば出願というものはそんなに減らない。特に外国から日本への出願については、スピードの問題と、それから、やはりそれは全部関連してくるわけですけれども、制度の問題。つまるところ、マーケットが縮小しても、それなりに価値のある費用対効果であれば必ず出願は維持するし、かえって増えるかもしれない。それが日本へ出すよりもほかの国へ出した方が特許になりやすい、スピードがあるとか、それから、翻訳代も安い、ほかの国は英語でそのまま出せる、日本では日本語に翻訳しなければいけないというふうなことになると、やはり競争力としては落ちると思うんです。
 そういう意味では、繰り返しですけれども、日本の例えば大学のランキングも世界の中で低いというのは、外国人を受け入れられる教員とか施設の問題よりも、受け入れないから国際性が上がらないということだと思うんです。
 そういう意味で、どんどん制度をつくるということで魅力が出て、しかもコストパフォーマンスも上がって、人財もレベルが上がっていくということになって、どんどん日本特許庁も審査のサービスを輸出して、韓国に負けるどころか、アジアからどんどん審査を受け入れるというようなことのすべてにつながってくると思いますので、是非それを積極的にお願いいたします。

○妹尾座長 ありがとうございます。
 本田委員、お願いします。

○本田委員
 中島先生から、こういうことを言い出していいのかどうかというところをおっしゃっていただけたので、私もあえて申し上げたいんですけれども、やはり日本の特許庁さんが、例えば英語での特許出願を受け入れていただいて、その審査をしていただけるようになると、多分、特許事務所の弁理士さんたちも英語で出願をするということに是非どんどん積極的に関わっていかなければならないということでありますし、大学としては、先生方は論文はすべて英語で書いておられて、それを残念ながら日本語に直してから日本語の出願をするというような、すごく無駄な手続を大学の中ではしている部分があります。
 ですので、そういう日本語でなくて英語での出願というものを受け入れてくださるようになれば、当然、英語で審査をしなければならない、英語で出願しなければならないということで、特許庁の審査官のレベルであったり、弁理士さんのレベルというものがどんどん上がっていくのではないか。やはりハードルを一旦ばんと上げてみないと、みんなそこを超えていこうという力が出てこないと思いますので、そういうドラスティックな変化が必要なのではないかと思います。
 私たちの大学の技術としては、勿論、日本の企業さんにいろいろ導入していただきたいものの、やはりグローバルに技術移転活動をしなければならないというところで、やはり日本語の明細書しかないというのはすごく活動しにくい部分があって、そういうときに英語の明細書、英語のクレーム、英語の要約というものがあれば非常に私たちとしても活動しやすい環境にはなります。当然、私たち自身も英語を取り扱った技術の、私たち自身も英語を通常取り扱うという環境になりますので、大学の知財人財としてもそこのレベルアップが図れると思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 それでは、中島委員お願いします。

○中島委員
 ちょっと言い忘れまして、追加ですけれども、民間の方では既に日本の各企業さんも日本の特許件数よりも海外の特許件数の方が多いわけですし、それから、弁理士の統計でも弁理士の業務の出願業務の中の35%は海外関係の業務です。ということは、もう出願人も代理人も海外の、英語で処理をするということについては、クレームの作成も解釈も含めて慣れているということです。特許庁さんも審査では各国のリファレンスを持ってくるわけですので、もう既に土壌はできているのではないか。あとはいかに踏み込むかということだけのような気がいたします。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 杉光委員、お願いします。

○杉光委員
 先ほどから出ている話で、日本の国内市場がどんどん縮小する傾向にあるという前提で、グローバル市場にみんな行くんだというお話で来ていると思うんですけれども、大手企業の場合は特にそういう傾向が最近強いのかなと思っていますが、逆にまだまだ国内市場で頑張っている企業がたくさんあるという意味では、一番典型的には、やはり国内市場を中心として頑張っている中小企業も勿論多数ある点をもう少し考えてもいいのではないかなというのが私の個人的な見解です。
 ここ3年間ぐらい、中小企業のための知財というものの委員会、特許庁さんの委員会に私も委員として3年か4年ほど参加させていただいていたんですけれども、そこで聞いている話は非常に、例えば特許など取れないと思っていたが、たまたまコンサルティングを受けて、特許が1件取れたときに社内の士気が一気に高まったとか、そういうような非常に、大企業では今からでは考えられないような状態の企業がまだまだたくさんあるという点にかんがみれば、ある意味、中小企業にとってみると、潜在的な出願ニーズというものは実は物すごくあるのではないかというふうにも思っています。
 最近ですと『下町ロケット』という小説も出ましたけれども、そういう意味では、今、機運も少し高まりつつあるところですから、もう少し、今までのグローバル化に向けて云々というのは、勿論、それも重要なことではあるんですが、国内市場で頑張っているそういう中小企業を含めて、そういったところにもっと特許庁としても目を向けて政策を考えるというのがあってもいいのではないかなと、前々から大企業が一番出願件数が多いですから、そこの話を聞きながら、そこに向けて一生懸命制度を変えていくというのはわかることはわかるんですけれども、潜在的な出願ニーズという意味では中小企業はまだまだたくさんあるというふうに委員会に出ていて感じましたので、その辺も是非御検討いただければと思っております。
 失礼しました。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。大分予定の時間を大幅に、これは特許庁への期待の表れであると思いますけれども、済みません、私から質問とコメントをさせてください。
 11ページですが、ここでのイノベーション創出で「交換財としての『知財』」という書き方がしてありますが、これは一体どういう意味なのか、もうちょっと説明していただけませんか。簡単で結構です。

○中尾総務課長
 申し上げたかったことは、恐らくは製品開発において、いろんなクロスライセンシングという形で特許権の価値を何倍にもふくらませていくということで、自前主義の時代が終わり、クロスライセンス等により、幅広い製品化を進めていく、そういう意味でのある種ツールになり得るという趣旨でございます。

○妹尾座長
 それはイノベーション上、好ましいことなんでしょうか。イノベーション論から言いますと、これは逆に、弱者がどうやってキャッチアップするかというときにクロスライセンスを積み重ねる、はっきり申し上げればサムスンの戦略ですね。ですから、クロスライセンシングに持ち込めれば、参入障壁が引けるのではなくて、他者の領土を使えるというスタイルに持っていく。それを特許庁はよしとされているんですか。

○中尾総務課長
 企業の方々がどういう形で知財をお使いになるかという点については、企業の御判断だと思います。しかしその点について、特許庁として是とするかどうかということではなくして、特許権の価値をできるだけ高くする方向のお手伝いをしたいという思いでございます。仮に1つの特許を持つことでほかのいろんな技術が手に入る手がかりになるといったニーズがあるならば、それについても応えていかなければいけないということで書かせていただいたところでございます。
 ただ、産業技術政策として、技術をどこまでオープンにして囲い込むのかというようなことについての戦略的な御判断というのは、また別の観点から議論はあるのだろうと思います。

○妹尾座長
 通常、我々がイノベーションで知財マネージメントをいろいろ学んでいただくことをちょうど昨日も弁理士会でやっていましたけれども、ライセンス戦略とかクロスライセンス戦略をごっちゃにされる方が結構多いんです。ライセンス戦略というものはどういうことかといいますと、一番優位なのは、優位に立っているときに他者に使わせることによって市場形成を加速化するという意味での強者の戦略なんです。ところが、クロスライセンスというものは逆に、下手に持ち込まれたら弱者に全部自分の領土をやられるという、やられては実はまずいという側面を持っているんです。勿論、それだけではない。それが典型的になるのはパテントプールですね。ですから、ここで特許庁がどういうふうにイノベーションにおける知財マネージメントを御理解されているかというのは、ちょっと私は不安になったんです。
 近藤局長、どうぞ。

○近藤局長
 この11ページのところは、私は黙っていようかと思ったんですけれども、妹尾先生から口火を切っていただいたので、この絵が古いんです。基礎研究から実用化して、事業化して、投資回収するというのは、オールドトラディショナル発明で、イノベーションという、中国語で言う創新ということではないような気がするんですよ。
 ですから、この絵がそもそもコンセプトが古いんですよ。多分、この矢印が一方向を向いていないんです。勿論、こういうものもあります。だけれども、逆に向いているものもあったり、くるくる小川のように大きな流れの中で渦巻いているのかもしれませんし、しかもぐっと右肩下がりですと元気が出ないので、もうちょっと工夫して、頭の整理と工夫を両方していただければと思います。

○妹尾座長
 まさに私は、最後はそこに行こうと思っていたんです。

○近藤局長
 済みません、よけいなことを言いました。

○妹尾座長
 実用化が事業化になるというのは、サプライチェーンとバリューチェーンが既存の場合の発想なんです。それはイノベーションとは呼ばないんですよ。といいますのは、新製品という名前の改良品を既存のサプライチェーンに乗せたらバリューチェーン上動くということを前提にするわけですね。だから、今、日本の霞が関がいろいろ競争的資金を出しているときに、これをやるから全部実用化ができるけれども、事業化に成功しないという、あそこに陥る典型的な例をここで書かれているので、局長ほど強くは言いませんけれども、イノベーションのことをもう一回整理し直された方がよろしいのではないか。もし特許庁がこの認識でイノベーションを考えておられたら、私どもははっきり言って後ろ寒い感じがします。

○中尾総務課長
 おしかりを厳しく受け止めます。
 それで、実は恥ずかしながら、かつ、そんな言い逃れをするなと怒られることを承知で申し上げますと、まさにこのイノベーションモデルが古いのではないかと考えております。例えば、もっとスパイラル状ではないかとか、いろんなことがあり得るだろうと思いますし、まさにこの辺りの技術の使われ方が一体、実用化と事業化とどう結び付いていくかということ自体が余り従来の特許庁の、審査官のマインドの中に必ずしもなかったのではないかという反省もございます。できるだけ、ビジネスのリアリティーと特許の権利の付与というものがきちんとタンデムしていくような形での問題意識を私どもも持ちたいという決意表明の表れであるということです。

○妹尾座長
 わかりました。
 それでは、今度は質問ではなくてコメントなんですけれども、今、先生方のお話と御指摘を聞きますと、これはやはり基本的に特許庁の人財育成、特許庁の基本的なスタンスを何をデフォルトにするかという問いかけだと思うんです。すなわち、従来、内々特許を前提に、それをデフォルトにしておいて組まれていた体制ないしは人財育成、これが内々だけではないね。内外もあるね、外々もあるね、基本的にグローバルだねといったときに、もうグローバル対応をデフォルトにしてくださいということが皆さんの御意見ではないかと思います。
 そうすると、これは幾つかの、私は3つのマルチだなという感じがしました。1つは、マルチリンガルということですね。2つ目は、マルチテクノロジーであるということですよ。すなわち、多言語に対応しなくてはいけないし、多技術に対応しなくてはいけない。3つ目は、その結果、マルチタスクになってくるということですね。そうすると、この3つのマルチをやってのける人財をどう育成するかですけれども、そのときには、先ほどから皆さんが言っているように、もうデフォルトをグローバルにしてしまえ。勿論、国内とか、日本語とか、中小企業への対応とかということはやるんですが、これはどういうことかといいますと、デフォルトを変えるというのは、要するに全車禁煙で喫煙車があるということと、全車喫煙で禁煙車があるという、それなんです。もう、そこを全部ひっくり返すという話ではないですかというふうに言われているわけですから、デフォルトを変える。特許庁の基本的なスタンスをグローバルデフォルトにするということではないかなと思います。霞が関でデフォルトと言いますと金融庁がびっくりするような話なので、これは別の言葉を使わなければいけないかもしれませんけれども、これが第1点です。
 第2点が、最後の12ページで、これは「3.課題のまとめ」と書いてあるんですが、これはまとめる前に一度整理をされてはいかがでしょうか。といいますのは、これがWhatとHowがごっちゃに書かれている感じがするんです。Howの部分がありますね。何をやるのかというものと、そのための方策としてのHow、例えばこの場合では(6)とか(7)とか(9)とか(11)は全部Howの話ですね。ですから、Why、なぜ人財育成をここで抜本的に変えなければいけないのか。今のお話のように、基本的にグローバル対応でマルチリンガル、マルチテクノロジー、マルチタスクなんだということをやる。それでは、何をやるのか、Whatで、これこれがあります。それでは、どうやるのか、Howがあるという整理の仕方をしていただくと、我々も応援しやすくなるのではないかと思います。
 それから、先ほどのもう一つの観点は何かといったら、日本の特許庁の価値は何ですかという問いかけの時期にやはり入ってきた。日本の特許庁がほかの国の特許庁に比べて、何をもって競争力というんですかということだと思います。これは、例えば荒井先生がおっしゃるように、これはサービス業なんだというふうに考えれば、サービスとしての人財を育成するというのはどういうことなのかということです。それで、サービス人財の育成について、私もサービスイノベーションの事業を持っている身ですから申し上げますと、1つは当然、よいサービスの質があるということがあります。2つ目は何かと言いますと、よい施設がある。3つ目に、よい従業員がいる。この場合は審査官とします。だけれども、4番目に、これはマーケティングの大先生が言った名言と言われていることなんですが、よい顧客がいるということが魅力なんです。ということは、日本はどれだけよい顧客があるんだろうか。国内の顧客も逃げ出したという状況では、これは魅力が半減である。どうやってよい顧客を持ってサービスの価値を上げるかということです。そういうところで、是非サービス業としての、従業員と言うと審査官の方はある意味で誤解されて怒られるかもしれないですけれども、これはプロフェッショナルサービスですから、是非そこのところを考えていただければと思います。
 以上、私としての、今の先生方のポイントを私なりに整理するとそういうことだと思います。
 それでは、続きまして、知的財産人材育成推進協議会の提言というものがあります。これについて説明をお願いしたいと思います。知的財産人材育成推進協議会作業部会の幹事でありますのは特許庁の後谷企画調査課長ですが、御出張のために、今日は代わりに中村知的財産活用企画調整官から御説明を賜るということになります。それでは、よろしくお願いいたします。

○中村知的財産活用企画調整官
 今、御紹介いただきました中村です。今日は特許庁という立場ではなくて、この知的財産人材育成推進協議会の幹事の代理ということで発表させていただきます。お手元にあります資料2に沿って説明させていただきます。
 こちらは、ペーパーのつくりは大きく分けて、最初に背景等を書かせていただき、1.のところで、今後、知財人財に求められる具体的な能力をかみ砕いて書いております。2.が、今回の協議会における提言として4つほど挙げさせていただいております。また、3.に、この知財人財育成プランへの期待ということで2点ほど挙げさせていただいております。
 それでは、発表させていただきます。
 こちらですが、2006年に策定された知的財産人材育成総合戦略における重点施策に基づいて創設された知的財産人材育成推進協議会及び同協議会に参加する研修機関等は、同戦略に示された知的財産人材育成に関する施策、とりわけ「民間等に呼びかける行動」として示された具体策に基づき、協議会として研修機関等の相互の情報交換、人財育成についての普及・広報を実施するとともに、それぞれの研修機関等は知的財産に関する多様かつ体系的な研修の構築、知的財産に関する研究の促進、資格制度の充実等について取り組んできました。
 一方、2006年以降、グローバルネットワーク時代が到来し、デジタルネットワークで連結されたグローバル市場における多様な事業モデルによる競争の激化が本格化してきたことに伴い、産業競争力の強化に向けて、これまでに培ってきた従来型の事業モデルに加え、新たな展開を見せる事業モデルに対応できる知財人財が求められています。
 協議会としては、新たに策定される知財人財育成プランに対して、知財人財育成に関する各府省の取組みを先導することにより国全体として相乗的な効果を発揮するような役割を期待するとともに、協議会に参加する研修機関等のこれまでの取組みの総括を踏まえ、知財人財に求められる能力、知財人財の育成・確保の方法、知財人財の活用の観点から、以下の提言を行います。
 1.として、「新たな事業モデルに対応できる知財人財に求められる具体的な能力」を挙げさせていただきました。2つに分けてございます。
 (1)として、まず、事業に係る知的財産のどの部分をオープンとし、どの部分をクローズとするか、国際標準化を進めるのか、知的財産を権利化するのかどうか、権利化の際には特許権・意匠権・著作権等をいかに組み合わせるのかの観点から、事業モデルを展開するために知的財産を戦略的に活用できる能力。
 もう一つとしまして(2)ですが、グローバルネットワーク時代に対応して、グローバルな市場動向・産業動向に関する情報や事業を展開しようとする地域における知的財産に関する情報等を収集・分析し、企業のグローバルな事業活動に知的財産の観点から貢献できる能力。
 この2つをまとめさせていただいています。
 このような2つの能力を有する人財の育成・確保及び活用のための具体的な提言として、以下、2.に4つ挙げさせていただいております。
 (1)として、まず新たな事業モデルにおける知財マネージメントの在り方の実態、内外の企業における事業戦略や研究開発戦略と一体化した知財マネージメントの在り方の実態及びかかる知財マネージメントへの知財人財の関わり方の実態について、知的財産の戦略的な活用の知見を有する専門家グループによる分析を行い、分析結果を広く均霑することにより、研修機関等による研修内容に反映するとともに、研修指導者を含めた研修対象ごとの細やかな研修を確立すべきであるというのが1つ目の提言です。まずは、この活用等の実態をきちんと専門家グループによる分析を行っていただき、それを研修にきちんと反映することが必要ではないかということが(1)の提言です。
 (2)で、企業が事業を展開しようとする地域における弁護士・弁理士等の人的情報を含めた知的財産に関する情報を効率的に収集できるような各国における人的ネットワークを含めた仕組みを構築するとともに、更に、こうして得られた知財戦略上の有益な情報を、例えば、協議会の取組みによって構築された知財人財育成の人的ネットワークの活用等により、我が国全体で共有できるようにすべきであるということを掲げさせていただいています。
 (3)ですが、経営層への知的財産に関する啓発・教育については毎年度知的財産推進計画に盛り込まれており、その活動には改善の余地が十分あると考えられる。今後は、経営層に対して、最新の知財戦略に係る情報をタイムリーに提供することで、経営層に従来型の事業モデルに加え、新たな展開を見せる事業モデルに対応する知財戦略の重要性を喚起し、企業における知財戦略策定環境の整備・充実を図るべきである。
 また、(4)としまして、今度は中堅・中小企業ですが、中堅・中小企業は、大企業と比較して人的資源が十分でない場合があり、自社による研修が実施しにくい状況にあることから、中堅・中小企業の経営層に向けた知財マインドの形成に寄与する研修を行うとともに、中堅・中小企業の知的財産の観点からサポートできる人財の育成、例えばということで、「知的財産管理技能検定」の活用や、中堅・中小企業に対する知財戦略支援の実践的研修の場の提供を行うべきであるという形で、今のような4つの提言をまとめさせていただきました。
 また、3.では、この知財人財育成プランへの大きな意味での期待ということを書かせていただいております。
 (1)としましては、知的財産を取り巻く環境の変化に迅速に対応できるよう、新たに作成される知財人財育成プランについては、随時、見直しを行うことを期待いたします。これは今回5年目ということで改定されていますが、タイムリーな改定をお願いいたしますということです。
 また、(2)として、知財人財育成プランの実施に当たり、各府省の人財育成に関する取組みが相乗的な効果を発揮するよう関係機関が協力することを期待するということで、いろんな省庁が関わってくるかと思いますので、是非、この相乗効果が期待されるようなものを期待しておりますということを述べさせていただいております。
 以上になります。

○妹尾座長
 どうもありがとうございます。
 知的財産人材育成推進協議会、これは人財育成推進計画が2005で生まれたときの最初の10の提言のうちの第1番目の提言の中でそれが達成した協議会ですから、そこからの御提言ということで、我々も真摯に受け止めたいと思います。
 これについて、まず質問、その他、御意見等がありましたら、いかがでしょうか。
 どうぞ。

○澤井委員
 多分、今回のこの人財育成に関する議論の全部を通じてなんですけれども、事業を起点にという話が最初にあって、この中で事業モデルという言葉がいろいろ使われてます。しかし、「従来型事業モデル」と「新たな展開を見せる事業モデル」というものは本質的に何が違って、それをどうやって教えていくのかという辺りはどういうふうになっているのかがイマイチよくわかりません。その点をこの資料をつくる上で、どう明確にするのかということを教えて欲しいと思います。
 多分、事業モデルの話になってきますと、知的財産という話よりもっと事業のところをどういうふうに構築するかというのが大切になってくるので、ますます関連性の持たせ方が難しくなってくると思います。先ほどの特許庁さんの資料を見ても、知的財産の窓から見た視点あるいは考えですべての物事が書いてあります。その視点は先ほど妹尾先生がおっしゃった資料1の11ページのイノベーションのところは違うのではないのかという気がします。やはり事業起点で物を見切れていないので、ああいう資料になってしまうのではないかという感想をもっています。そういう意味で、ここに書いてある「従来の事業モデル」と「新たな展開を見せる事業モデル」で何が本質的に今の状況の中で違うと思っておられるのかという事をお聞きしたいです。

○妹尾座長
 これについては、後で知財人財育成プランのところでこれとの関連が出てくるので、そのときに事務局案ということは、今の御指摘は確かにこれははっきりさせなければいけないので、おっしゃるとおりだと思いますが、後ほどの説明ということで、中村さんよろしいですね。

○中村知的財産活用企画調整官
 はい。

○妹尾座長
 ほかに御指摘・御質問がありましたら、いかがでしょうか。
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 1.の(2)と、それに関連しての2.の(3)なんですけれども、ここは非常に難しいところで、教育とか人財育成とかではなくて、私は圧倒的にこれは意志の問題だと思っていて、詳しいところまでは申し上げられませんけれども、私も随分若いころから、いわゆる知財を使ったインテリジェンスができないかというふうにずっと思っていて、ただ、自分の上司がいるうちはといいますか、自分が最終的な意思決定はできないうちはそんなものは労多くして実りなしだとか、いろいろあって、何回も挫折してきて、今は何でもできる立場になったので、強い意志を持ってやっていて、それくらいわかっているとか、首をかしげられながらも、何回も情報発信していくことによって知財で何か見えてくるのではないかというふうなものが返ってくるということなので、ここは育成というより意志なので、余りこういう人財を育成するというところはちょっとテクニカルなところと違うところにあるような気がするんです。ですから、その点は、こう並べるときれいに読めるんですけれども、どうやるのかなというところは非常に難しいところだと思います。

○妹尾座長
 これは、中村さん、返事がしにくいところですね。

○中村知的財産活用企画調整官
 意味はよくわかりました。確かに、この協議会でも議論がありまして、協議会の中でも、これを書くところまではできましたが、それでは、これを具体的にどうやっていくのかというときに非常に悩みまして、それなので、まず2.の(1)の、まずどういうものがあるのか。もしかしたら、本当は実態がよくわかっていないのではないのかというところがあり、それも協議会の中だけではなかなかわからないところがあるので、有識者であり、かつ実践的なことがわかっている方の専門家グループに分析していただき、その中で何かパターンなり何なりが見出せるのか。それができれば、それを研修に反映していくような形ができないのかという、ある意味、まだ試行錯誤的な提言になっていますが、でも、こういうことをやらないとなかなか次に進めないのではないかということで、このような書き方にさせていただいております。

○妹尾座長
 佐々木委員の御指摘、私ももっともだと思うんですけれども、2つありまして、1つは、そういう意志を持つ人間をどうやって育成するかという話だと思います。もう一つは、それを掲げるだけで人財がそういうふうになろうかというフラッグになってくれればいいなという側面もあろうかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 青山委員、どうぞ。

○青山委員
 ありがとうございます。
 中堅・中小企業のところも大分書き込んでいただいております。大変ありがとうございます。
 今のお話で、基本的に意志とかという話がありましたけれども、前々からお話が出ていたと思うんですが、どうも中小の場合は気づきというところが非常に大きなポイントになってきていると我々は認識しております。先ほどWhyとWhatとHowの話が出ましたが、それでは、中小というものは一体、経営者の方々はどうすればいいんだというような質問が端的に来るんです。
 それで、どうすればいいんだというところまで来れば、もう大体、半分達成みたいなところがありまして、そこの引上げをどうするかというところが非常に悩んでいるところです。恐らく協議会でも大分御議論いただいたと思うんですけれども、是非とも、先ほどの分析というお話でございましたので、この辺ももう少し深掘りしたような分析が、結果が出れば是非とも御披露していただきたいというお願いでございますのと同時に、どういう施策が考えられるか、御提案・御提示いただければ大変ありがたいなというお願いでございます。

○妹尾座長
 青山委員、済みません、1つ逆に質問させていただきます。
 そういう方は、例えば放送大学でいい講座があるなどと言うと見てくださるものですか。

○青山委員
 それも一つだと思います。中小企業大学校という、全国に幾つかございますので、そういうところには結構行かれている経営者もございます。それから、私ども商工会議所でもやっておりますけれども、様々な団体さんでやっているところ、それから、行政で、自治体でやっているところ、いろんなところがありますけれども、中小企業の数、前回もお示ししましたが、大変な数がありますので、結局、底上げを図るといっても大変な力仕事になるわけです。
 それで、どういう層をねらうか、前回申し上げたと思いますけれども、そういうような、ある一定の層にまずターゲットを絞っていくというようなやり方も一つの手ではないかなと思っております。
○妹尾座長 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 よろしければ、済みません、時間の関係もありますので、知的財産人材育成推進協議会が熱心に御議論くださったことを提言としていただいて、私としてもかなり先へ進むものという意志の表れである、御提言であると思います。これは大変すばらしいと思いますので、是非、我々もこの考え方を取り入れたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次に、先ほど近藤局長も言われた、大いに議論してくださいという「知財人財育成プラン」の骨子(案)を皆さんで討議したいと思います。最初に事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。髙原参事官、よろしくお願いします。

○髙原参事官
 それでは、席上配布のみですが、資料3と、最後に付けました「知財人財育成の方向性」という資料パワーポイントをお手元に御準備いただければと思います。
 資料3は全体で4章構成になっております。第1章が状況変化と情勢認識で5ページほど続いております。第2章が知財人財育成の現状と問題点です。それから、7ページ、8ページが第3章、知財をめぐる将来の姿と知財人財育成の関係について、そして、9ページ以降が第4章、知財人財育成の方策と、このような構成になっております。
 それでは、この骨子(案)の1ページ目から御説明いたします。
 骨子(案)の1ページ、第1章で、世界で「知を使う知」の競争が熾烈を極めている中で、技術力で勝って事業でも勝っていくためには、総合的な知財マネジメントが必要になっているというところから始めております。
 グローバル・ネットワーク時代の到来を受け、企業経営において知財マネジメントを重視する動きが加速しておりまして、スマートフォンをめぐる米国と韓国の大手電子機器メーカーの争いでは、一方が意匠で提訴すれば、他方が特許で応訴するというようなところも含めて書いております。それに続きまして、経営破綻したカナダの大手通信機器メーカーの特許の競売に係る話も書いております。
 各国の知財システム間の競争に目を転じますと、特に米国が「先発明主義」から「先願主義」に移行するという歴史的な決断に触れ、1ページの最後ですが、先ほど中尾課長からの御説明にもありましたように、新興国、特に中国の動きが活発であるとしております。  2ページにまいりまして、このように、知財をめぐり世界は大きく動いておりますけれども、知財システムを支えるのは何といっても人ですので、人財の充実がなければ幾ら制度整備をしたところでそれを生かしていくことはできないということです。
 続きまして、「(「知的財産人材育成総合戦略」の経緯)」のところですが、知財本部では、2003年以降、毎年知財計画を策定し、その中で人財育成の重要性を強調してまいりましたが、2006年1月、本部の下の専門調査会での検討を経て「知的財産人材育成総合戦略」を取りまとめて、育成の方向性を示したということです。
 総合戦略ですが、特に知財専門人財の量を倍加する、それから、質を高度化するということを目標に掲げました。例えば、特許庁では技術的知見の深い任期付審査官も採用し、審査官の総数を2005年からの5年間で約300名増やした。それから、弁理士の世界でも、2005年以降、登録弁理士の数が2,000名以上増加するととともに、継続研修の充実が図られてきております。
 この総合戦略の検討の背景には、知財の創造、保護、活用という、知的創造サイクルを回す人財をどのようにして育成していくかという問題意識があった。言い換えますと、総合戦略は「技術起点型サイクルモデル」を基本としまして、知財の保護・権利化を主軸とし、そして、どちらかと言えば国内市場を重視したコンセプトに基づくものであった、このようなことを書いております。
 今、申し上げました「技術起点型サイクルモデル」を3ページの真ん中左ほどに図示しております。
 その後、世界は大きく、ダイナミックに変化しまして、ボーダーレス化が本格的に進みました。グローバル・ネットワーク時代と呼んでおりますけれども、このような時代の変化に伴い、知財マネジメントの在り方も大きく変容した。従来のような研究開発成果の事後的な特許化にとどまらず、戦略的な国際標準化、それから、テクノロジー・デザイン・ブランドといったものを複合的に保護していく、あるいはあえて権利化をしないノウハウ秘匿といったことを含め、高度で総合的・戦略的な知財マネジメントが求められるようになった、こういう状況になってきております。
 3ページの中段以降、一番下のパラグラフを、中ほどの図を見ながらごらんいただきますと、こうしたグローバル・ネットワーク時代にあっては、総合戦略がよりどころとしていた「技術起点型サイクルモデル」を踏まえながらも、むしろ、知財の創造、保護、活用という流れとは逆回りに、まず事業戦略を出発点として、そのような戦略の実行を可能とする知財群の設計をどうすればいいかといったことを含めた知財マネジメントによる競争力のデザイン、さらに、そうした知財資源をどのように調達していくか、例えば、自らそれを創造するのか、あるいは他社から調達するのかといったこと、こうした3つの段階から構成される「事業起点型サイクルモデル」に基づくことが大切になってきているということです。そして、事業戦略・イノベーション戦略を主軸とし、ドメスティックというよりはグローバル市場を重視した新たなコンセプトを導入して、こちらの新たなコンセプトに移行・重点化していくことが不可欠になっているのではないか、このようなことを書いております。
 4ページ以降で、グローバル・ネットワーク時代に求められる知財人財育成の方向性はどうなのかということを書いております。4ページと5ページにつきましては、別途お手元にお配りしておりますプレゼンテーション資料でご説明いたします。
 まず、2006年1月の「知的財産人材育成総合戦略」策定前の状況ですけれども、従来から、知財の世界でも、専門家の育成という観点で、例えば知財法の知識について更に理解を深めるような研修を行って、その専門性を高め、ハイグレードな人財を育成していくという取組は行われておりました。
 2枚目のスライドにもありますように2006年、「知的創造サイクル」を早く大きく回すという流れの中で、知財活用の場面の拡大を踏まえて、幅広い領域で活躍できる知財人財を育成することが急務になってきました。そこで、総合戦略では、知財法に関する知識だけではなくて、知財以外の、技術、企業経営、あるいは税務といった知財以外の領域にも通じた人財、この2枚目のスライドで点線で囲った部分ですけれども、この領域の人財育成を図るということが掲げられました。
 2006年以降、産業モデルに変化が生じたという話は、資料3本体の3ページでも御説明しました。このような「事業起点型サイクルモデル」を回していくためには、従来型の「技術起点型サイクルモデル」と同じような人財育成でいいのかどうかを検討する必要がありますが、この点につきまして、我々事務局でも議論をし、妹尾先生にも相談させていただきまして、今、考えております概念的なところを4枚目のスライドに示しております。
 これまでは専門性を高める軸、及び、領域性を広げる軸という、2次元の形でとらえていたということですけれども、今後、事業戦略、それから、イノベーション戦略に基づいてグローバルにイノベーションをつくり出し、国際競争力を高めていくために必要な「事業戦略性」という新たな軸を赤で示しております。縦方向のこの第3の軸を加えて、3次元的な、多次元的な人財育成に取り組んでいくことが必要ではないかというふうに整理をしております。
 そして、もちろん、このようなマルチ人財が求められますが、最後の5枚目のスライドにもありますが、こういった人財を数多く育てるというところにはなかなか難しいという部分がありますので、そのようなマルチ人財の前段階と申しますか、例えば、ワイドな知財人財、あるいは、ハイグレードな知財人財の事業戦略性を高め、マルチ人財も含めて、この三種の人財の間の連携をうまく図っていくことによって、我が国の競争力を強化できないか、こんなことを最後にまとめとして書かせていただいております。
 このような方向で人財育成を進めていけないかということを、資料3の4ページ、5ページに書いております。
 資料3に戻りまして、6ページ、第2章は人財育成の現状・問題点ですが、これはまだ特許庁の方で委託調査を正に継続していただいておりますので、その結果を受けて、こちらの方を書き込んでいきたいと考えております。
 それから、第3章、7ページですけれども、一般に知財人財も含めて人財育成は一朝一夕というわけにはまいりません。グローバル・ネットワーク時代において、知財をめぐって世界が大きく動いている、こういう中で人財育成に取り組んでいくためには、しっかりと将来を見据えて、中長期的な視点に立って戦略を策定し、着実に実施していくことが不可欠です。
 このあたり、今までのワーキンググループでも問題意識を伝えさせていただいておりますが、10年後、あるいは更にその先の状況を想定して、それを踏まえて、中長期的な育成に取り組む必要があります。
 その10年後の状況として想起されるものとして、これまで、例えば、このページの下にある4つの状況を示しておりました。「①英語によるグローバル特許出願」から始まりまして「④中小企業を含むあらゆる企業が時代に応じた知財戦略を策定・実行」という項目までですが、あくまでも我々で検討しました例示ということです。
 8ページの余白の部分を埋めるためにも、委員の方々から、今後の10年後の将来像についてどういうお考えがおありか、御意見をちょうだいできれば幸いです。
 9ページ以降が、「第4章 知財人財育成策」です。
 最初のパラグラフは、第1章を受けて書き込んだ部分です。求められる人財の変容、そして、事業戦略性という軸を加えた3次元的な人財育成に取り組む必要性に触れております。
 そして、第3パラグラフです。事業起点型サイクルを支える知財人財の育成・確保が必要ですが、その際には単にサイクルを支える人財育成の確保だけを目指すのではなく、知財人財のすそ野の一層の拡大ということが欠かせないということを書いております。優れた事業戦略性を有する言わば軍師的な知財人財も、その基礎となる知財人財なくしてはつくり出すことが不可能です。知財人財のすそ野の拡大と、産業競争力の源泉となるような事業起点型サイクルを支える知財人財の育成とを同時に進めていく必要があるのではないか、こんなことを書かせていただいております。
 第4パラグラフ以降は、11ページに図を描いておりますので、こちらを参照していただきながらお聞きください。各論の部分に提示している項目の間の関係を整理しております。
 まず、事業起点型サイクルを支える人財の育成・確保に当たり、「事業戦略的な知財マネジメント人財を養成するための場」を形成していくことが不可欠です。事業起点型サイクルを支える知財人財の育成・確保には、事業戦略やイノベーション戦略という観点から、研修機関を始めとした機関の機能強化を図り、事業戦略的な知財マネジメント人財の育成を行う場を形成することがまずは不可欠ではないかということです。
 それから、国内外の最新の事業戦略などを調査・分析して、事業戦略に資する最先端の知財マネジメント戦略の研究拠点を整備していく、これと同時に、先ほどの人財育成の場に向けた教育者の養成及び教材開発に貢献していくことが重要ではないかということです。
 そして、企業、弁理士・弁護士事務所、あるいは行政機関などのセクターが、先ほどの人財育成の場、それから、知財マネジメントの戦略の研究拠点を活用して、知財人財の育成・確保に努めていくことに加えて、各セクターが、講師やプロジェクトリーダーなど、指導者の派遣を通じて積極的に参画していくいう双方向・多面的な関係の構築も必要ではないかということです。
 それから、知財人財のすそ野の一層の拡大が必要という部分、この11ページの図の一番下の部分ですけれども、小中高大学の教育課程における知財人財の教育の充実、あるいは中小企業・ベンチャー企業における知財人財の育成・確保に向けた取組みが必要です。
 また、総合戦略に基づいて「知的財産人材育成推進協議会」が設立されておりますけれども、このような協議会を活用しながら、グローバル・ネットワーク時代にふさわしい人財育成の仕組みづくりをしていくことが必要ではないか、この大枠を描いたのが11ページです。
 最後、12ページ以降の各論ですが、こちらは3つの柱で整理しております。1.が新たな事業起点型サイクルを支える知財人財の育成、2.が知財人財のすそ野の拡大、最後に3.知財人財育成プランの推進体制の整備ということで、おおむね総論で申し上げた内容です。
 1つ目の柱の(1)と(2)は、11ページの図の中にも具体的に書き込んでおります。
 柱の下の各項目例は、まだ関係府省とも議論していく必要がありますが、今後調整を進めまして、また、本日の御議論も踏まえまして、次回会合までにもう少し具体的なものを提示させていただきたいというふうに考えております。
 以上、少し長めにお時間をちょうだいしましたが、資料3の説明でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 この提言、事務局からの説明を踏まえて、全体討議でもんでいきたいと思います。先ほど、最初に近藤局長のお話もありましたとおり、事務局案は、かなり頑張っていただいているとはいえ、まだまだ議論でもんでよりよくできるネタという段階ですので、是非議論していただきたいと思います。
 済みません、私の時間配分が悪くて、残っている時間が少ないので、済みません、委員の先生方、手短な御指摘・御質問等をお願いできればと思います。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 いろいろこうやってまとめていただいて、プランのイメージがはっきりしてきたので、更にいいものにしていただきたいという観点から申し上げたいんです。
 1つは、今回つくる育成プランのフレームワークです。途中、10年後とか書いてあるんですけれども、10年計画みたいなものをつくるのか、5年なのか、10年なのか、はっきりすると、このアクションの内容がはっきりしてくると思いますので、フレームワークとして期間はどうするのか。
 それから、人財の分野、いろいろ定義によって非常に広くもなりますし、かなり狭くもなるんですが、どういうカテゴリーを対象にしたプランにするか、もう少し整理をしていただく必要があると思います。
 3点目は、数値的にどんなシナリオを描くのか。経済見通しとか国際化見通し、いろいろあると思いますが、どういうふうに人財育成が更に必要なのか、今の人を増やせば足りるのか、それによって手段も変わってくるのではないかと思うんですよ。ですからかなりの、シナリオ1、シナリオ2、シナリオ3かもしれませんけれども、イメージとしてそれぞれの人財がどういう状況の人をどのぐらいになるか。前回は、実は倍増ぐらいにしないと日本が本当の知財立国にならないのではないかということで考えたわけですが、そういうことを踏まえてどうかという、フレームワークに関するものが1点目。手短で済みません。
 2点目は、対象として、どちらかというと、これは特許人財が書いてあると思うんですが、商標とか、多分、企業の戦略でも意匠とか不正競争防止法的な、ああいうブラックボックス的なものとか、あるいは著作権的なものとか、非常にいろいろ関係してきますのでそういう、ちょっとこの特許人財に絞られていないか、あるいはコンテンツ的なものも一緒に、今のインターネット時代のビジネスでどんどんそちらと一緒に組まないと、新しいビジネスモデルはでき上がらないというような、iPhone的なもの、iTunes的なものとか、そういうときにちょっとこれがその辺をどこまでやるのか。
 もう一点は、エンフォースメントです。一番問題は、やはり国内もそうですし、海外でのエンフォースメントで、取った意味があるのかということについての、税関、警察、裁判所、同じものの国際的なもの、それをやれるだけの、アメリカですとFBIのOBとか、CIAのOBみたいな者がやったりしている、あるいは弁護士事務所が大変国際的にやってくれるというようなことで、これは中小企業にとっても同じわけですが、エンフォースメントがちょっとないではないかという点です。
 3点目は、前回は2006年に10年計画というイメージでつくって、5年目まで来て、今度新しくつくることはいいと思うんですが、ただ、今までのものは現在も生きていることになっていますので、それと今度つくるものの新旧対照表的なものをつくってみると、どこが弱くて、どこが強くしているのか、あるいはどこが結局だめだったのかがはっきりすると思いますので、そうではないと、一生懸命議論してみたら2006年と同じことを結局書いていたということになりかねないので、あのときにも妹尾先生のもとでいろんな分野の人が英知を集めてやったわけですから、その2006年の現行の戦略と、それを今度はどういうふうに変えていくかという新旧対照表的にやると、非常に今度の新しくできることのポイントといいますか、セールスポイントというものがはっきりするのではないかと思います。そういう意味で内容も充実するのではないかと思います。
 そういう意味で、今の資料3でちょっとだけコメントをさせていただくと、1ページ目で、マイナーな点で済みませんが、第3パラグラフの「2011年9月に米国が行った、建国以来堅持してきた『先発明主義』を改め」というのは、特許庁に聞いたら、100年前までは「先願主義」だったということを別の特許庁の人が言っていましたので、ちょっと調べてもらった方が事実問題として、「先発明主義」で来て、途中で「先願主義」に変わって、また「先発明主義」に変わって、今度また「先願主義」になって、ですから、100年ぶりの改正だと言う人もいましたので、済みません、そこはプロにお任せします。  それから、2ページ目は、最後のパラグラフで、つまり「どちらかといえば国内市場を重視したコンセプト」というのは、実は前回の議論のときにも、これからは国際化時代だということで5つの人財像をつくった第1は、国際的に闘える人財というもので、国際性を前へ出したんですよ。ですから、お願いは、戦略は国際化を目指したんですけれども、実行は国内的だったということなので、戦略は決して国内市場重視ではなかったんです。それにもかかわらず、やっていることは結局国内的にとどまってしまったというふうにしないと、今度やるときも同じ誤りになりかねない。
 この辺の認識が、あのときも非常に国際化を闘える人間とかでやろうということで、同じように、これは当時から妹尾先生がおっしゃっていたマネージメント人財を随分前に出したんです。それにもかかわらず、どうして変わらなかったのかということだと思いますので、そこのところが現行でやっているもので打ち出しているけれども、結局うまくいかない。しかし、今度はそれを更にやらなければいかぬというのなら、そういう表現の方がいいと思うんです。そうすると、今度こそ本物ということになると思います。
 それと同じことが、資料2に戻って済みませんが、第2パラグラフで「2006年以降、グローバル・ネットワーク時代が到来し」という、これは事実問題として、当時はグローバル時代が来ていると思っていましたし、ネットワーク時代も来ていると思っていたので、これも先ほどの席上配付の新しい方の3枚目のことで、知財戦略をつくった後、グローバルネットワーク時代が到来したと書いてあるんです。その後ではなくて、ずっと来ていたんです。ですから、この認識が、あのときに対応しようと思ったけれども不十分であった、あるいは結局根づかなかったというふうにしないと、決して2006年からグローバルネットワーク時代が来たのではないので、ここのところは認識を変えておいてもらった方が世間に対してはっきりすると思うんです。
 そういうことでございます。
 あとは、6ページとか12ページからいろいろ各論のところで、これはまた同時に大事になると思いますので、是非ここを充実して、従来やっていて、提案はしたけれどもだめだったものと、新しく提案しなければいかぬものとの両方に分けて、今回これだけのエネルギーをかけてつくる計画ですから、効果が出るようにやっていただくということで、そこのところは非常に期待していますし、お願いしたいと思います。

○妹尾座長
 どうもありがとうございました。
 御提案と御指摘をいただきましたので、是非、事務局にも取り込んでいただきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 配付資料といいますか、席上配付のみの4ページの三角形のコーン型のところですけれども、これは非常にそういうことだなというふうにはわかるんですが、ちょっと逆説的なことを申し上げると、きっとこうなる人は何の仕掛けもなくてもなるんだろうなと思うんですよ。ですから、先ほども申し上げましたけれども、こういうふうになりたいという、動機は勝手に持てというわけにもいかないので、そこをどうするか。
 やはり、こういうとんがったといいますか、とんがりコーンのような人になりたい、こういう専門性を持ちたい、事業も見られるようになりたいという、そこは長いことかけて醸成していくしかないのか、ちょっとその辺がどこかに何らかの仕掛けができればいいなと思っていて、アイデアはないんですけれども、その辺の項目を、もしここは即効性はありませんだったらありませんというふうに明記してしまった方がいいのではないかと思いながら、これを見させてもらいました。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 八島委員、お願いします。

○八島委員
 この資料3の11ページと言った方がいいのでしょうか、要は今回の人財の目的というのは、日本の国際競争力を高める、そのためにどうやって知財を使うかということだと思うのです。それが多分、その中でどういう人財をつくっていくかということですから、そういう意味で言いますと、先ほどの11ページの最後の「事業起点型サイクルを支える知財人財の育成」というよりは、はっきり日本の国際競争力を高めるための知財をどうつくっていくか、そのためのということがもう少しきれいに出ないと、事業起点型のサイクルだけが本当にいいのかどうかというポイントが抜けているのではないかと思います。ですから、勿論、おっしゃるように、技術起点型が事業起点型になるのは正しいかもしれませんし、そうなるのが一つの手段かもしれませんけれども、それだけのワン・オブ・ゼムだと私は思いますので、やはり目的は日本の国際競争力をどう高めていくのだということが1つなんです。
 先ほど荒井先生がおっしゃったように、エンフォースメントは絶対に触れるべきですし、もう一つはいわゆる、これはRDになるのだと思うのですけれども、企業収益が必ず日本に戻ってくるようなシステムをつくらなければだめなんです。そういうところまで是非触れていただければありがたい。それは知財人財ではないと言えばないかもしれませんけれども、そういうようなシステムをつくらない限りは、要は外に行って、ちゃんと戻ってきて、なおかつ戻ってきたお金を使って、日本のRDなり何なり、また新しい産業をつくって、いわゆる産業構造なり、従業員を増やしていく、そういうものをやっていかなければいけない。たまたま、そういうようなことをするために知財をどう使うかという議論で、何回も私は思っているのは、知財は本当に手段でしかないので、どういうふうに使っていくかというだけだと思っています。
 今回も、妹尾先生もおっしゃるように、要は活用なのです。活用とは何だといいますと、結果的には事業収益の最大化なのです。企業では事業収益の最大化ですし、国家で言えば、税収の最大化だと思うのですよ。そこのところをもう少し明確に書かれた方がいいのではないかと思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 澤井委員、お願いします。

○澤井委員
 席上配付のパワーポイントのものを見ると、事務局が相当に御苦労されたんだろうなというのがしみじみわかるような資料なので、ちょっとコメントをしたいと思います。このパワーポイントをめくった上の方にある図は、荒井先生などがやられた当時の話の中で、領域性と専門性を縦と横にとってあります。それで多分、この領域性の中に、当然ながら事業の話が入っているのだと思うんですよ。
 それでいながら、この資料の下の方の図には「事業戦略・イノベーション戦略を主軸」にしてグローバル市場重視と書いてありますでしょう。ということは、多分、縦軸のキーワードについての考えがキチンとまとまっていない事を想像させます。この“事業戦略”と“イノベーション戦略”という2つが縦軸になる話ではなくて、どちらかに絞った形の縦軸にする必要があると思います。例えば、この縦軸は“イノベーション戦略”であるというふうに言い切って物を考えた方がいいと思います。そのときに何が変わるかといいますと、5~6年前に考えていた時点では、ここで書いてあるマネージメントなどの能力というものは、一企業にとってのマネージメントというものを頭に置いてあったのではないかなと思うんですけれども、現時点では、いろんなことをやろうとすると、即ちイノベーションを起こそうと思うと、一企業だけでは起こらなくて、かなりいろんな連携をするとか、あるいは役所さんで言いますと、いろんな省庁連合でいろんなことをやっていただくことが不可欠になっている。例えば特許と農業とか、特許と医療とか、全然異分野のところにリーチをかけないと物事は変わりません。
 そんな風に、企業の枠を超えるなり、役所側の人の省庁の枠を超えて連携をしていくような、イメージを持って、この縦の軸をつくらないといけないと思います。この縦軸を単に“事業戦略”とやってしまうと、それは2006年のときの領域性のところでやっているのと本質的に何も変わらないのではないのか、という疑問が残ってしまいます。従来との差分は、先ほど荒井さんがおっしゃったように、どこにあるんですかというのがまだクリアーになっていないのではないかなと私も印象を受けました。
 縦軸を“イノベーション戦略”という眼で見たときに大事なのは、全然異なる視点を備えた複眼で物を見たり考えたりすることだと、私は考えています。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 これもまた、八島委員も澤井委員も佐々木委員も、企業の皆さんからの御指摘というのは非常に大きい、大変参考になるといいますか、是非取り入れたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 青山委員、お願いします。

○青山委員
 この席上配付の資料なんですが、10年後の姿ということになっております。それは非常に重要な視点だと思いますけれども、それでは10年後までどのようにしていくんだというロードマップみたいなもの、特に中堅・中小は結局、足元で生きなければいけないものですから、それでは足元で一体何をすればいいんだ。まず入り口論で何があるのか、どういうメリットがあるのか。先ほど八島委員がおっしゃられましたけれども、事業収益というところにどうやって結び付くんだろう。それで、出口になったらもっと、それがどのような姿になってくるんだろうという、イメージがわかるようなものがあると非常に関心を呼ぶのではないかなというような感じがいたします。こういうような視点を是非とも入れていただきたいと思っております。
 それから、先ほども触れさせていただきましたけれども、この第2章で分析が入ってきますので、この分析のところで、企業のところの実態の分析をより深掘り、要は先ほど荒井先生がおっしゃったような、2006年のものとどう違うんだというようなところをもっとクリアーに比較できるような実態分析というんですか、特に今度は中小企業も海外展開せざるを得ないですから、そういうような新しい視点の分析というものを是非とも深掘りしていただきたいと思います。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 本田委員、お願いします。

○本田委員
 まだ少し頭が整理できていないところはあるんですけれども、知財に関しての専門性であったり、領域としても広くという視点でいきますと、皆さんいろんな御意見、いろんな見方があると思うんですが、TLOの業務というものは、知財もやらなくてはいけませんし、小さな組織で経営という視点を持ちながら、あと、専門性としても技術も広い、非常に粗削りな組織なんですけれども、まさにこういう能力を高めるべくしてやっているような組織ではないかなというふうに思っています。
 ただ、事業戦略を起点としたという視点でいきますと、どうしても大学はテクノロジープッシュという視点が出てきてしまう、従来型になってしまうので、うまくそれを、事業戦略を取り込みながら、大学がうまく入っていって、そこで動いているTLOのような組織で、専門知財という視点も持っていて、そういう経営であったり、技術的な専門性というところがうまくかみ合わないかなという、どうしたらうまくかみ合っていくのかなという、そこがまだ頭が整理できていないんですけれども、何か使えないか。私たちがどうにかそういう中にうまく活用していただけるような場はないかなというふうに思っていまして、そういう視点が、残念ながら大学という視点ですと、教育研究機関との間の活発な人財流動という視点でしか入っていないので、何かその視点の項目が入れられないかなと思いました。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 確かに、これは大学の人財その他についてはまだまだ手薄ですね。その辺を考慮したいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 中島委員、お願いします。

○中島委員
 大変苦労された作成、ありがとうございます。
 それで、人財育成をする場合には、やはり人を育てるだけということよりも、その人が活躍できる仕組みをつくるということが一番大事なわけで、この10年後の姿に達するためにはどうすればいいのかということです。人は育ったけれども活躍しないということでは困るわけでして、先ほど青山委員が言われましたように、ユーザーの方ですね。ニーズの方といいますか、こちらにどれだけ使うメリットがあるのか。または人財の方から行けば、どれだけ活躍する場があるのかということを真剣に考える必要があると思います。
 幾ら研修をしても、幾ら教育をしても、なかなか実践人財は育ちにくい。知識だけはあるんですけれども、実際に動けないというようなところが大変大切ですので、そこら辺を十分盛り込めるような形が何か出てくれば非常にいいなと思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 お時間もぎりぎりなんですが、ほかに先生方いかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。
 全体として、私も事務局が大変苦労してこういうものを考えてくれていることを評価したいんですが、まだまだためらいがあるなという感じがすごくしていて、どうも先生方の御意見は、もういいから行ってしまえよ、ルビコンを渡ってしまえよという感じかもしれないと思います。
 1つは何かといいますと、やはりイノベーションだ、競争力だというふうに言おう。そうすると何を言うかといいますと、2006と書いてありますが、実際は2005年度につくったあれなので、あのときはどうしても専門人財と称して、保護・権利化人財を中軸に置いていた。でも、どうもここの御議論を聞いていますと、活用人財をとにかく徹底しろということですから、その意味では重点を完全に活用人財に置くという踏み込みをやってもいいのではないかなという気がしています。
 これの書きぶりが、例えばリストにしても、あるいは10年後の状況にしても、やはりどうしても保護・権利化人財が最初に書かれるというところなんですが、むしろ我々が思い切って違いを出すとしたら、活用人財主軸で書いてみるというのも手かもしれないので、ちょっとそういうことも、構成をし直すのを事務局と私の方でも相談してみたいと思います。
 それで、この図については、これは苦労を重ねていらっしゃるんですが、実はこれは一般的な図ですね。一般論で、プロフェッショナルのこれをどうするかというのは、当時、私が論文の中にたくさん書いていたことなんですけれども、ですから、これは専門人財とも言えますし、つまり保護・権利化人財とも言えますし、活用人財でもこれは同様のことがあるわけです。これが右と左で交わってくるという図なのかもしれませんし、その辺はまた少し事務局に奮闘していただければなと思います。
 いずれにせよ、今日は大変いい御指摘をたくさんいただきました。荒井委員、佐々木委員、八島委員、澤井委員、青山委員、本田委員、中島委員、皆さん大変いい御指摘をしてくださったので、そういうものを全部入れるとこれは大変で、また事務局は正月休みがなくなるという惨事になりますから、それを踏まえながらもいろいろやって、次の骨子(案)の中から成案に結び付けたい、こういうふうに思います。
 多分、まだ御意見があると思いますし、今日休まれた委員の方からもあろうかと思いますけれども、今日は休みはいないんですか。上條さんだけがいないんですね。それでは、上條さんからも聴取しますし、それから、皆さんもまだこの場で言い足りないこと、あるいは後で気がついたことがありましたら、私ないしは事務局の方にお寄せいただきたいと思います。
 それでは、済みません、予定の時間が来ましたので、本日はこのくらいにしたいと思います。今日は大変充実した会合だったと私は思います。本当にありがとうございます。
 それでは、事務局からの連絡事項を最後に少しお願いします。

○髙原参事官
 次回の第6回でございますけれども、今月22日の木曜日、午後3時からこちらの会議室で開催させていただきます。報告書につなげていきたいと考えております。また、前回会合で予備日について触れておりましたが、調整の結果、年明け1月13日の午後2時からとさせていただきます。本日の御議論も受けまして、報告書の取りまとめのための第7回の会合とさせていただければと考えております。委員の皆様には誠に恐縮ですけれども、日程の確保のほどをお願いいたします。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 当初はもう一回少なくて済むかと思いましたけれども、これだけ皆さん御熱心にしていただいた議論を生かすべく、報告書案をもっと練り込みたいと思いまして、そのため、来年1月13日、申し訳ございません、これは金曜日なんですが、めげずに御参集いただければと思います。それまで事務局は奮闘してくださると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
 そういうことで、今日は閉じたいと思います。皆さん、おかぜなどを召さないようにしてください。
 それでは、どうもありがとうございました。