知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会 知財人財育成プラン検討ワーキンググループ(第4回)
- 日時 : 平成23年11月21日(月)10:00~12:00
- 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
- 出席者 :
【委 員】 | 妹尾座長、青山委員、荒井委員、佐々木委員、澤井委員、末吉委員、杉光委員、 高倉委員、中島委員、本田委員、八島本委員 |
【事務局】 | 近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与 |
- 議事 :
(1)開 会
(2)知財人財の育成・確保について
(3)「知財人財育成プラン」に向けた検討の方向性について
(4)閉 会
○妹尾座長
それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。皆さん、おはようございます。ただいまから「知財人財育成プラン検討ワーキンググループ」の第4回の会合を開催いたします。本日は、御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、まず、有識者からヒアリングを行います。それに続きまして、特許庁委託調査の中間報告を伺います。そして、その後に「知財人財育成プラン」に向けた検討課題について議論を進めたいと、こういうふうに考えております。
本日は、住川委員から御欠席の連絡をいただいております。
それから、上條先生と本田委員が少し遅れているようでございます。
そして、本日は、参考人として、竹内利明電気通信大学特任教授にお越しいただいております。先生、お忙しい中、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
また、関係省庁として、特許庁総務部から後谷課長、中村知的財産活用企画調整官にもオブザーバーとして御参加いただいています。よろしくお願いいたします。
では、開会に当たり、まず、近藤局長からごあいさつをいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○近藤局長
おはようございます。今日もよろしくお願いをいたします。
このワーキンググループも早いもので、もう4回目の会合になるところでございます。御審議をいただいておりまして、心から感謝を申し上げます。
皆様、御承知のように、先日来、話題になりましたTPPでも、知財問題というのは非常に大きなテーマの1つだそうでありまして、だそうでありまして」というのは、我々もよく分からない。参加交渉に向けて関係国と協議に入るという、何かよく分からない表現になっていますが、要は、TPPでも知財の分野というのは非常に大きなテーマになってきているわけであります。
先日、皆様の御協力で署名することができたACTA、模倣品防止条約の交渉がTPPの先駆けになっていると思っている次第ですけれども、こういうもの一つ取っても、グローバル・ネットワーク時代、世界に出ていかなければいけない時代になったんだなというのを改めて感じるわけであります。この知財人財の中でも、グローバル化、ネットワーク化の中で人財をどう育てていくかということが大きなテーマになることでございます。
今、年内の日程も、皆様、お忙しい中で調整をさせていただいておりますが、議論の進展次第によっては、あるいはもう一回ぐらい、場合によったら年明け早々ぐらいにお時間をいただかなければいけないかなとも思っているところであります。いずれにしても、今日、御議論いただいて、できれば年内、もしできなくても年明け早々ぐらいには、このワーキンググループでの人財育成プランのまとめをしていきたいと、こんなふうに思っているところでございます。何とか全力で頑張ってまいります。引き続き御負担をおかけいたしますが、お力添えをよろしくお願いいたします。今日も御審議のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○妹尾座長 ありがとうございます。
もう一日といううわさが出始めたということは、皆さん、御覚悟をよろしくお願いします。いいものをつくるためには、余り拙速ではなくて、だからといって、お忙しい中、お時間を取らせるというわけではないですけれども、その可能性もあるということをお含みおきいただきたいと思います。
それでは、早速、本日のことに入りますが、まず、資料の確認を高原参事官からお願いいたします。
○高原参事官
おはようございます。資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に続いて資料をまとめております。
まず、資料1は、この後、竹内先生から御説明いただく際の資料でございます。
それから、資料2は「知財人財育成に関する調査」。特許庁で今、実施していただいている調査の中間報告ということで、中間のステータスということでもございますので、机上配布資料とさせていただいております。
それから、資料3、「『知財人財育成プラン』に向けた検討の方向性」でございます。
本体資料の最後、資料4が「今後の進め方について」でございます。
また、参考資料1が、前回ワーキンググループ(第3回)における主な意見です。
それから、配布資料のリストにはございませんが、これ以外に席上配布させていただいている資料が幾つかございますので、御確認いただければと思います。
まず、竹内先生から御提供いただいた資料が4種類あります。
冒頭の「始めてみませんか」と書いてありますのがビジネス支援図書館サービスの御案内パンフレットです。
その次が「図書館があなたの仕事をお手伝い」というタイトルの冊子です。
それから、3つ目が「UEC NEWS」、電気通信大学の広報誌です。
竹内先生からの御提供資料の最後が「第7回産学官連携DAY in電通大」、6月1日に開催されましたイベントの案内冊子です。
これとは別に、「出張報告(知財人財育成関係)」というタイトルの資料を席上配布しております。こちらについては後ほど簡単に御紹介させていただきます。
以上、資料の不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
○妹尾座長
ありがとうございます。
もし資料に何かございましたら、事務局にお申し出ください。
それでは、早速「知財人財の育成・確保について」、有識者からお話を伺うということでございます。竹内参考人にお話をいただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。それでは、竹内先生、よろしくお願いします。
○竹内参考人
皆さん、おはようございます。ただいま御紹介いただきました電気通信大学の竹内です。どうぞよろしくお願いいたします。
座ってお話しさせてください。20分程度と言われておりますので、ちょっと内容が多いものですから、少し早口になってしまいますけれども、御容赦ください。
(PP)
産学連携、中小企業・ベンチャー支援、ビジネス支援図書館に関わる観点から、知財人財の育成に関して御提案させていただきたいと思います。ただ、本提案は私の私見であり、電気通信大学及びビジネス支援図書館推進協議会等の公式的な意見ではないことは事前に御了承いただきたいと思います。
人財育成の観点から、先に少しお話しさせていただいて、産学連携、中小企業及びベンチャービジネス、それから、ビジネス支援図書館という順序でお話ししていきます。
まず、参考資料の簡単な説明ですが、「UEC NEWS」の中に、私が取り組んでおります、電気通信大学のキャリア教育が紹介されています。これは、文部科学省の大学生の就業力育成支援事業に採択されておりまして、その関係について説明したものが中に書いてあります。
それから、2番目の「産学連携DAY」というのは、私が産学連携において中小企業支援という立場からいろいろ取り組んでおりますので、そのことをまとめたというか、毎年行っている事業についてです。
そして、3番目のビジネス支援図書館の入会案内と同時に冊子をお配りさせていただいておりますけれども、これは昨年初めて行いました、中小企業のいろいろな課題、実際にどういうことに困っているかということをテーマとして中小企業の方に出していただいて、それを図書館の司書に、公募でレファレンスをやっていただきました。50人ぐらいの応募があって、その中から優秀なものをここに入れております。終わった後に、課題を提供してくれた中小企業の経営者に対してフィードバックしています。図書館でここまでできるのかと非常に驚いたという回答をいただいております。図書館はやればここまでできますというところを参考に見ていただければと思います。
(PP)
続きまして、人財育成の観点から言うと、主に3つありまして、今、お話ししました電気通信大学のキャリア教育ということ。2005年にキャリア教育を導入しまして、7年間、今、ちょうど7シーズン目に入っております。その間、文部科学省の特別教育研究経費で5年間支援を受けて、その後、昨年からまた大学生の就業力GPと言われているものにも採択いただいておりまして、非常に御支援いただきながら、国立大学、特に理工系としては先進的なキャリア教育ができているのではないかと思っております。
2番目には、ノンディグリーのMOTということで、技術経営実践スクールというのも、7年前に私が企画して立ち上げて、今、7年目ということです。これは中小企業の経営者・管理者、または大企業の中堅幹部を対象に、そこに本学の大学院生が毎年数名、一緒に参加しているというのが特徴で、年間12回、土曜日に90分の講義を4コマという形でやらせていただいております。
一番新しいのが地域産業振興講座で、これは関東経済産業局と中小企業基盤整備機構との共催で、2008年に新規に開講して4年目です。これは自治体の産業政策担当者に電気通信大学に来ていただいて、産業政策について勉強するということを年間12回程度。一部、金融機関の職員を何人か入れるという形で取り組んでおります。
(PP)
キャリア教育について簡単に説明しますと、写真にありますように、約50名の産業界のOBの方々が有償ボランティアという形でお手伝いいただいております。平均年齢66歳、本学の卒業生はこの中の十数名で、他大学の卒業生の方にも多く御支援いただいています。本学は、昼間700人、夜間100人、合計800人の入学生がおりますが、夜間の中の社会人コース30~40人を除く760名程度はすべて、私のこの授業を受講するという形になっております。そのために、この50名の産業界のOBの方々に御協力いただいています。大学の教員だけではできない実践的な内容を盛り込んでいます。それから、知識教育だけではなく、学生のグループワークを中心にした授業を行っているという形でございます。
(PP)
こういうような経験から、今日は知財人財の育成ということで少しお話をさせていただきますけれども、まず最初に、産学連携の観点で、教育という面からお話しをします。、1つ目に、高校生に弁理士等知財に関わる仕事の認知度を高める活動をしていかなければいけないのではないかと思います。
7年間にわたって、キャリア教育の授業の最初に、高校を卒業してきたばかりの大学生に対して「弁理士という資格を知っていますか」と問いかけると、この7年間、ほとんど変化がないんです。2~4%。若干は増えてきました。700人に聞いても、20人とか30人。昔が0~2%だったのが、最近は3~5%になっている。伸びていると言えば伸びていると言えるかもしれませんけれども、ほとんど知られていない。うちは理工系専門大学ですから、理工系専門大学に来た高校生ですら、それしか知らないということは、ほとんどの高校生は弁理士を知らないと考えた方がよいのです。これは一体だれの責任なんだろうかというふうに考えさせられるわけです。
第1に、学生の問題というより、一体、何割の高校の先生が弁理士という資格を高校生に説明できるんだろうか。これについては私はデータを持っているわけではないのですが、考えてみたいと思います。こういうことを調べてみる必要があるのではないかと思っております。
ところが、本学に入ってくると、この弁理士という資格の話を聞いた瞬間、これは自分の天職ではないかと考える学生が必ず毎年いるのです。実際に、そこから努力して、もう2年ほど前になりますけれども、学部卒業した半年後に弁理士試験に合格した学生が出ています。その後、うちのTLOで1年か2年働いて、今、企業に移る。文部科学省の大学の知的財産本部整備事業の申し子みたいな子ではないかと思っているのですが、そういうことも生まれてきています。
大学としては、工学部離れという問題があります。高校生は進路指導の中で、資格に守られて就職に有利なところに理系人財が流れています。簡単に言うと、医療系です。医療系に進むのは理系人財ですけれども、資格が取れる、就職が守られるということから、当然、そちらを選ぶ学生が増えて、工学部離れが起きています。
また、リケ女と言われている理系女子についても、我々の大学でやっと8%。非常に悲惨な状況です。消費税よりはいいけれども、今、議論されている10%に上がると、消費税にも負けてしまうというような状況になっているわけです。女子学生にとっては、結婚とか出産でキャリアが中断することを考えると、再就職に有利な資格というものに非常に関心があるわけです。
そこで、「高大連携を活用した知財人財広報活動」を御提案させていただきます。理系志望の高校生に職業観を醸成する必要があるわけですけれども、こういうことを特許庁とか弁理士、弁理士会、こういうところからアプローチしても、高校側から見ると、数ある職業の1つでしかないということになると思います。
大学も優秀な理系人財を確保したいわけで、先ほどのように、弁理士、知財関連の仕事を知ると、勿論、弁理士は理系である必要はないわけですけれども、理系のバックグラウンドがある方が有利であることは間違いない。そういうことから、将来のことを考えて、高校生に対して、キャリアプランとして、理系の大学を出て、弁理士、または知的財産管理機能検定等を目指していく、理系人財を目指したらどうかというような提案を大学側が優秀な理系の人財を確保するために使います。
ここにおいて、当然、大学だけではできませんので、例えば、弁理士会ですとか、特許庁等が一緒にそういうところを支援していただく。そういうことがわかるようなキャリアプランを書いた冊子を提供するとか、必要に応じて、弁理士が大学と同行して高校に行くという形、または大学がそういう前提で知財人財のキャリアプランというものを話す場合に、旅費ですとかを負担する、そういうような支援制度ができてくれば、早い段階で認知度を高めることができるのではないかと思います。
(PP)
では、大学に入ってどうなのかということになります。現在の本学の1年生の教育だけで、キャリア教育を除くと、知財の人財の認知度は全く上がりません。いろんな職業を紹介していかなければいけないという状況の中で、ある年、弁理士の方に講義もお願いしなかったし、弁理士の資格ということを話さないで2年生を迎えた学生に対して、2年生でどれだけ弁理士を知っているかということを確認したら、何と、悲惨なことに5~10%、ほんの少ししか増えていなかったということを実際に体験しました。
そこで、理工系の学部のキャリア教育という中で、知財の仕事を紹介するような教材の提供とか、講師を派遣する制度も御提案したいと思います。
更に、研究者ではないということが重要なのですが、研究者ではない、知財教育専門の人財を弁理士会等で育成して、大学に派遣する制度を検討されたらよいと思います。
平成15年に大学知的財産本部整備事業に応募するときに、私が担当しまして、その申請書類をつくりましたが、電通大出身の弁理士を調査したら、当時、104人おりました。当時の弁理士の約2%で、卒業生の少ない電通大でなぜこんなに多いのだろうかということを考えまして、学内でもいろいろ聞いて歩いたんです。そうしたところ、非常に知財教育に熱心な先生が昔いて、その先生の影響が非常に大きいんだということを言われました。
そこで感じたのですが、普通に研究者の方が授業をやっていても、学生の人生を変えるような教育ができるというのは非常に限られているわけです。そういう意味で、本当に教育に熱意を持って知財の人財育成をする、そういうような教員を大学に置くことは難しいわけです。大学というのは、どうしても研究によって業績を評価されます。そういう意味では、弁理士会とか、特許庁とか、そういうところにおいて、弁理士の中にも、普通の営業活動をするよりも、教育活動に取り組みたい、そういうところに意欲のある弁理士もいらっしゃると思うんです。そういう人の給与を弁理士会で持って、いろいろな大学に派遣する、そういうことを考えられたどうかというのを御提案させていただきます。
(PP)
それから、産学連携の観点の2として、教育ではなく、大学側の立場から少しお話しさせていただきます。審査請求ですが、これを遅くする制度をつくることはできないでしょうかという御提案です。2001年の10月の法律改正で7年から3年に変更になりました。審査待ちの期間が短くなるなど、知的基盤構築に非常に有効に働いたということはよく理解できますが、大学から見ますと、知財を3年間で判断するというのは非常に難しい将来技術に関わる研究が多い。結局、特許を出願しながら審査請求しないで、どんどん捨てていく、こういうことが起こっていく。みんな公知にしていくしかない。それだったら論文で出して特許を出さなくても一緒ではないかと、こういうような疑問を最近、非常に強く感じております。したがいまして、早期に審査を行う制度と対照的に、審査を遅らせていただく、申請によって、7年程度までは待っていただけると、こういうような制度が生まれてこないと、大学は今、これから知財をどうしていくかということは非常に悩んでいるところです。このままでは、非常にコストがかかる割に大学にメリットはないという状況になってきている。そこが問題だと思います。
もう一つ、JSTの若手起業家というようなAステップの審査員もさせていただいておりますけれども、ここでいろいろな大学が申請してくる内容を見ていて、非常に感じることは、大学の知的財産本部整備事業で大学の知財管理に関しては飛躍的に向上しましたけれども、現段階で大学間の格差がものすごく起きています。これを各大学の問題として考えていいのか。日本の国としての損失として考えなければいけないのではないかという疑問を感じております。
知財の権利化の判断、権利化の手続、管理、活用まで、ある意味、そこではマーケティングのことも関わってくるわけです。その知財が将来、本当にマーケットがあるのかということを含めながら考えていくと、各大学の知財本部の現状の中では、そういうことができる大学は、全国の中でも本当に1つか2つ、見ていて明らかに差が生まれています。こういうことを考えると、少なくとも国立大学に関しては一元管理しながら、出先機関として各大学の知財本部を置くということが必要ではないかと感じております。
そういうことを考える中で、本学は知的財産権を取得するメリットは大きくないと感じています。これは、大学の研究分野が情報通信、その中でも電気、機械、ロボットに関わる、企業が非常にたくさんの知的財産を取得されている分野であるからということは言えるわけです。単独で特許を取っても、それで商品化できるケースは非常に少ないですし、ほかの企業の持つ多くの知財を活用することになります。企業同士であればクロスライセンスということも可能ですけれども、大学はその対象となる知財群を持っているわけではありません。この対策として、大学連合で知財をグループ化する試みも行われていて、私どもも参加していますけれども、結局、見ていると、そこで対象となる知財は電気とか情報ではなくて、医療系で、各大学のものを集めてグループ化しようという動きにならざるを得ない。そういうところにしか魅力がないことになっているわけです。
このような状況で、実施主体とならない大学の権利は非常に弱いわけです。では、なぜ電通大は出願しているのかというと、これは国の競争資金を獲得するために、大学と企業との共同研究において、やはり特許を見せなければいけない。特許がなければ国の競争的資金が取れないという状況の中では、今は別に出願を止めているわけでもないし、今までどおり熱心に取ってはいます。そういうような状況になっている。
もう一つ、知財の側面として、では、大学の特許を侵害されたら訴訟できるおだろうか?、最近、非常に疑問に思っております。今、うちの持っている知財本部の人・物・金の状況の中では、とてもできないと思います。それから、実際に侵害している企業が大企業ならまだしも、中小企業であった場合、大学がそういうところを訴えた場合、大学が弱い中小企業をいじめているというように取られる危険もある。そういうことを考えると、相当慎重にせざるを得ない。実質的に、侵害されてもほとんど難しいのではないかと思います。
(PP)
あと、中小企業の観点からは、中小企業と一概に言わずに、層別して考えていただきたいと思います。1985年ごろまでは、日本の中小企業の成功モデルは明らかに下請に徹すること、下請型の中小企業でいるということでした。今の中小企業の経営者はその時代を生きてきた人たちです。しかし、21世紀の成功モデルとしては、自立型の中小企業が求められているわけです。今、やっと転換に取り組んでいる。こういう中で、ただ中小企業を支援する、一律に支援するではなく、業種とか、業態とか、機能とか、今、言った下請型、自立型、こういうことをきちっとターゲットして、支援策を考える必要があるということです。
あと、中小企業の知財の位置づけというのは、中小企業の特許というのはいいものが少なくて、他社の商品を排除できるとか、排他性を持つものは非常に少ない。防衛的な位置づけで、自社の商品を守るため一応出願しているというケースが多いわけです。これは、1つに、大学と同じように、中小企業も特許群を持っているわけではないので、非常に弱いということになります。知財を侵害されても、中小企業の現状から言って、持っている経営資源から訴訟に踏み切れるケースはまれです。中小企業も大学と同様、今の知財制度の恩恵にあずかれていないのが現状ではないかというのを非常に感じております。中小企業に関わる、中小企業支援をメインにしてきた経験から、知財制度というのは大企業のためにあって、大企業を守る知財制度ではないかというような印象を常に感じております。
(PP)
中小企業の知財管理の基本はアウトソーシングだと思います。経営資源が乏しい中で、知財の人財に専任として有能な人財を配すことはできません。したがって、広く、開発技術者に対して知財の基礎知識を教育することと、弁理士事務所を活用する、そういうような教育が中心になってくると思います。そのときに、優秀な人財をそろえた大手の弁理士事務所は、発注頻度の少ない中小企業は歓迎するお客さんではないのです。そして、技術が多様化する中、多面的に検討が必要な知財、こういう中で、小規模で特定の技術に特化した弁理士事務所が中小企業を見てくれているわけですけれども、果たして出願した特許に対して最適な弁理士であるかというところでは、非常に疑問を感じるケースが多くあります。こういうところから見て、中小企業の出願書類は大企業に比べて、強い権利を持っている書類ができていないというケースが多い。そこで、中小企業に限って、希望があれば、内容を精査して、強い権利を確保できるようにアドバイスするような制度を検討していただければと思います。
(PP)
最後に、ビジネス支援図書館ですけれども、公共図書館というのは分館を含めると3,000くらいあります。10年ほど前からビジネス支援図書館推進協議会をつくって取り組んでいますが、ほぼゼロという状態から、2003年に小泉内閣の「骨太の方針」に掲載していただいたこともあり、今、200館程度までビジネス支援に取り組む図書館が生まれています。ビジネス支援のポータルサイトとして、知財教育とか、知財制度の普及に使うことを御検討いただけないかと思います。中小企業庁の政策広報、日本政策金融公庫との連携の講演会、ハローワークとの連携、中小企業診断協会との連携での相談会、こういうものはもう既に実現してきております。こういう中で、是非、知財の制度普及等にも御活用いただければと思います。
数年前に岡山県立図書館という非常にいい図書館ができました。日本で今、資料費はトップクラスです。ここの図書館は初年度から1年間に100万人が来館しました。つい最近では、熊本市立図書館が10月に駅前にオープンしました。11月の初めに行ってきましたが、1か月間で7万人の利用があったという状況が生まれています。このようなことから、是非、公共図書館との連携も考えていただければと思います。
時間を超過したようで済みません。どうもありがとうございました。
○妹尾座長
ありがとうございます。
時間が短くて恐縮なんですけれども、お話をいただきました。今の竹内参考人からのお話について、何か御質問等がございましたら、御遠慮なくお願いをしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○青山委員
青山と申します。ありがとうございました。
先生、中小企業の観点で1つ教えていただきたいんですが、先ほどのアウトソーシングの中で、アドバイス制度が必要ではないかという御指摘ですけれども、具体的にどういうものか、イメージございますでしょうか。
○竹内参考人
中小企業の特許の出願等の相談を受けて、非常に強い権利にするために大手の弁理士事務所などを御紹介するケースがありますが、その前に非常に小規模な弁理士事務所さんで特許を出願しているのです。そういうのを見てもらったときに、最初の権利の取り方が悪いとか、出願の仕方に問題がある、こういうのではだめだという指摘を受けるケースがよくあります。そういうことから見て、精査は必要でしょうけれども、中小企業の特許の出願の中でも、これは非常に将来有望なものだというような審査を経て上がってきたものについては、例えば、出願された後というか、出願のタイミングで、その分野の非常に力のある弁理士のチームに見ていただいて補強する、そういうような制度ができないかと思っております。
○妹尾座長
ほかにいかがでしょうか。盛んに弁理士の話が出ていますが、中島委員、何か。
○中島委員
御指名でございますので。弁理士側から見ますと、弁理士を高く評価していただいて、人財育成の観点から事業に取り組んでいただいているということで、大変ありがたく思います。また、逆に、今のお話のような、もっとハイレベルな弁理士人財の要望ということで、御指摘も大変たくさんいただいたように思います。
先ほどのように、高大一貫で人財育成の観点から弁理士になられる若者を育てていくというのは大変貴重な観点ですし、重要なことだと思います。そこで、先ほどの話とも関連するんですけれども、弁理士として、例えば、権利化の御支援をする場合に、いろんな要素が必要でございまして、単に資格があればいい権利を取れるかというと、なかなかそうもいかない。やはりいろんな知識、いろんなスキル、更には経験も必要なわけでございます。そういう意味では、多分、権利化活動に携わっている弁理士のかなりの部分、ほとんどと言っていい部分は、自分自身で技術的な経験を持っている人がかなりなわけです。そういう意味では、学校を卒業して、ストレートに弁理士試験を通って弁理士になっても、経験を積むには長年の時間がかかるわけです。そこら辺に関して、事業の中でどういうふうな御指導をされているのか。竹内さん御本人がものづくりの経験が長いという意味で、古い言葉で言えば、手に油がつくような状態でものづくりをしている弁理士代理人が非常に貴重だというのはおわかりいただけると思うんですけれども、そこら辺の指導について、何か工夫がございましたら、教えていただければと思うんです。
○竹内参考人
どうもありがとうございます。
ものづくりとか開発を経験した後で弁理士になられる方は、それはそれで非常にすばらしいと思いますが、そういう方ばかりではないと思います。現場でそういうことを学ぶというよりも、教育の過程で、どうしても知識付与型の、知識を与える形での教育が多いと思いますが、そうではなくて、弁理士同士とか、教育を受けている過程で、ワークショップとか、グループワークとか、そういうような形で、人によって見る側面が違いますから、同じものを権利化しようとしても、見ている側面が違う。そういうような経験を共有して、自らが気づきを持たないとだめなんです。言われてわかって、頭に入っているだけではなくて、自分から、あっ、それは確かにこうしたらいいんだ、こういう見方があるんだという驚きを伴うような教育の場をつくる。よくわからないのですが、そういうものが弁理士のレベルアップとか、弁理士になる過程で、そういうような教育体系ができているかということだと思います。そういうことを入れたら、非常に伸びが早いのではないかと思っております。
○中島委員
ありがとうございます。
まさに今、御説明のところは、弁理士としてハイレベルの仕事をする中での重要な1つのポイントだと思います。そのほかにも、先ほど、チームでの支援とか、貴重な御指摘をいただきましたので、現状の弁理士会にも、産業界、特に中小企業関係からたくさんの御要望をいただいている状況ですので、そういったことを踏まえて対応していくのが一番近道だと思いますし、今回の育成計画の中にも、そういったものは盛り込んでいくべきだと思います。貴重な御指摘ありがとうございました。
○妹尾座長
ほかに。本田委員、お願いします。
○本田委員
学生というか、裾野を広げるという意味で、大学生や高校生に弁理士の職業観を広げていくというのは、私もせっかく大学にいるのに、そういうところがちょっと薄かったかなというのを反省しながらお聞きしていたんです。どうしても技術移転という、そちらの側面の説明が主になってしまって、弁理士で、こういう仕事もあるんだというのを伝えていなかったなと感じております。
一方で、学生の中で、天職だと思われて目指される方々がいらっしゃるというお話だったんですけれども、そういう方々の性格であったり、特徴であったり、何か共通点はあるんでしょうか。
○竹内参考人
ありがとうございます。
あるんですが、非常に話しにくい。誤解される危険が強いので、非常に難しいんですけれども、一般論として、1年生、2年生はそんなに論理的な思考ができていませんが、やはり論理的な思考というものに対して適性が多少あるから理系に来るんですね。そこがちょっと心配になってくるのは、弁理士がということではなくて、自分の価値観とか、自分の考えを論理的に積み上げて、ほかの人のものを排除するような傾向が全体にあるんです。したがって、何をしているかというと、同じものを見ても、いろんな価値観、いろんな考え方の人がいるんだ、それは尊重しなければいけないんだということを、1年生の最初のキャリア教育の中で徹底的にやろうとしているんです。
これをやらないとディスカッションが始まらない。みんな自分が好きなことを言って終わってしまうんです。6人でディスカッションさせると、みんなが自分の言いたいことだけを言って、発表者が立って、自分の思っていることを中心に発表して終わる。そういうところから始まるんです。これをみんなが議論して、ちゃんと1つの意見にまとめ上げるということをやっていかなければいけない。こういうことが全体に非常に遅れているんです。こういう中では、どちらかというと、一人でできる仕事、人と余り関わらないでできる仕事をしたいという人材がそちらに向く傾向が非常にあるので、ちょっと言い方が難しいんですけれども、済みません。
○本田委員
弁理士の仕事は、実は人と人をつなぐ仕事だと思いますので、大学で講義をさせていただくことがあるんですけれども、そういう側面が必要だというのは積極的に伝えていかなければならないというのは非常によくわかります。ありがとうございます。
○中島委員
済みません、説明というか、誤解を解くというかですね。弁理士の職業というのは、人の意見を聞かなくて、自分が思っていることを主張すれば終わるかというと、そういうふうに誤解されている節はあると思うんですけれども、全くそんなことはございません。当然ですけれども、代理人というのは、AとBの間に入って、私ども権利化で言えば、御依頼主である発明者、企業、特許庁との間に入って、いかに最適なところを探すか、全体がうまくいくようにバランスを取るということが大事でございまして、私が主張しているところも、知識、それを使うスキル、それをうまく自分として有効に使えるためのマインド、この3つがそろわないとだめだと、マインドの中の一番大切なことはコミュニケーションとバランスだと説明しております。
そういう意味では、最初から始まって、出願するのか、しないのかとか、中間処理でどうするんだ、拒絶理由を受け入れるのか、またはそれを限定してまで権利を取るのか、契約に際してもそうですし、権利活用に際してもそうですし、常にバランスを取らないといけない仕事です。答えは1つではないと思いますけれども、常に最適解を求めるというのが仕事の1つですし、最適解の要因の1つは、やはり人間関係、コミュニケーションということがあります。皆様方の多くはおわかりだと思いますけれども、ひとつ釈明だけさせていただきたい。
○竹内参考人
済みません、私もよくわかっているんですけれども、学生が資格というところで勘違いしてしまうのと、もう一つは、では、その大事なコミュニケーションの試験が弁理士試験のどこにあるんでしょうかということなんです。
○中島委員
済みません、また追加ですけれども、大変貴重なことを言っていただきました。今、弁理士の試験というのは、残念ながら、弁理士稼業が立派にできるための試験ではありません。ほんの一部が試験だけです。むしろ弁理士稼業をきちんとやっていくためには、弁理士試験と関係なく、そのほかの要素が90%以上でございますので、私も常々そういうことを主張しているんですけれども、なかなか進展いたしません。ということを御了解いただければと思います。
○妹尾座長
ありがとうございました。
弁理士に限らず、永田町近辺も含めて、本来の姿と現実の姿に乖離があるという御認識を皆さんがお示しになったと、こういう一幕だったと思います。
時間が足りないので申し訳ないんですけれども、簡単に質問させていただきたいんですが、1つは、公共図書館のビジネス支援サービスは、3,000図書館中200館あるということなんですが、この200館のビジネス支援の具体的な内容は、基本的には文献レファレンスを御紹介することが主であると確認させていただいてよろしいでしょうか。
○竹内参考人
後ろに資料を入れておりますけれども、それだけではなくて、図書館の日本十進分類法でいくと、ビジネス系のものが1か所にそろっていないんです。いろんなところにある。それをビジネス支援コーナーというシールを張って、別置する。ビジネス支援コーナーに集めるとか、いろいろなデータベースを使えるようにする、シンポジウムとかセミナーの開催、多彩にいろいろなことをやっております。
アメリカには、SIBLといって、ニューヨークに非常に大きな、ビジネス支援に特化したような公共図書館がありまして、ここをモデルに我々も10年前からいろいろ勉強させていただいています。そこだけではなくて、アメリカに行きますと、各地にある図書館の中にビジネスコーナーとか、ビジネス支援を担当するビジネスライブラリアンというものが配置されているという状況です。
○妹尾座長
ビジネスライブラリアンは文献のレファレンスだけではなくて、具体的な案件についてもアドバイスをしたりということはあるんですか。
○竹内参考人
やはり公共図書館ですから、どこまでできるかということで、自分たちでできない場合は専門家で、例えば、SCOREという制度を御存じですか。リタイアした経営者たちがボランティアで後輩の経営者のためにアドバイスする組織です。ニューヨーク市の中小企業庁の中に事務所があって、そこで相談を受け付けているんです。こういうものの出先を図書館に置いて、予約制で相談を受ける。具体的な創業の支援とか、具体的な経営のアドバイス、そういうものをやる。図書館の中に専門に個室を用意して、SCOREを誘致するというような形でやられています。
○妹尾座長
なるほど。要するに、図書館とそういう関係がちゃんとネットワークされているということですね。
○竹内参考人
そういうことです。
○妹尾座長
今のようなビジネス支援のライブラリアンは、大学の図書館の中にもいますか。
○竹内参考人
大学の中にはまだほとんど普及していない。まず、専門図書館と公共図書館という区分もあります。自動車図書館とか、そういうところとの連携を始めています。大学については、大学の図書館の中でもこういう活動を広めてやっていけるようにしたいということで、大学図書館をサポートしている企業が、そういうような相談に先週初めてお見えになりました。大学の中では、残念ながら、私ども電気通信大学でも紹介はしているんですけれども、余り関心は持ってもらえないという状況です。
○妹尾座長
なるほどね。ありがとうございます。
もう一点、最後に簡単に。先生にお話しいただいた最初のところで、盛んに理系、理系とおっしゃっていました。先生の目からごらんになると、知財人財は極めて理系だという感じですか。
○竹内参考人
まあ、そうではないことはよくわかっています。理系のバックグラウンドをお持ちでない方もたくさんいますけれども、そういう方も、自分の専門性をどこかに求めようとか、弁理士を取られた後でも、我々の大学の夜間の授業を取ったり、そういう方もいるケースから見て、半分ぐらいは理系であってもいいんではないかと思いますけれども、実態はどうなんでしょう。
○妹尾座長
先生のお話の前提は、知財人財というときに、知財の保護・権利化人財を主に考えていらっしゃるという理解でよろしいですね。今、我々は知財を活用する側の人財不足を申し上げているんで、それは必ずしも理系である必要はないと考えてもよろしいでしょうか。
○竹内参考人
はい。
○妹尾座長
ありがとうございます。
まだまだお聞きしたいことはあるんですが、時間があれなので、先生、どうもありがとうございました。
それでは、引き続き、特許庁における調査研究の中間報告をお願いしたいと思います。特許庁の後谷課長から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○後谷課長
よろしくお願いいたします。資料2に基づきまして説明させていただきます。資料2の右下にページが振ってございますけれども、そのページ番号に基づいて説明させていただきます。
第1回目のワーキンググループで調査を実施する旨の御紹介をさせていただきました。2ページ、背景でございますけれども、「知的財産推進計画2011」に、グローバル・ネットワーク時代における知財人財育成プランを確立することが盛り込まれました。これを受けまして、我が国の知財人財の現状と課題、今後の方向性を見極めるための調査を8月から実施をしております。
目的でございますけれども、1つは企業、大学、弁理士・弁護士、そして知財庁なども含めまして、現状どうなのかということ。それから、グローバル化・オープンイノベーションの進展の中で、知的財産人財像、知的財産人財育成策に与えた影響は何なのか、こういった調査を実施しているところでございます。
具体的には下の(1)~(4)でございますけれども、海外及び国内のヒアリング、それから、アンケートを中心に調査をしてございまして、右側にパーセンテージが載ってございます。現状、中間報告という形でございまして、海外ヒアリングは70%が終わりましたが、ほかは50%弱でございまして、調査を継続しているところでございます。
3ページ、「海外ヒアリングの概要」でございます。アメリカが5機関、イギリス3機関、ドイツ2機関という状況でございまして、中韓は調査中でございます。
4ページ、ヒアリングの状況でございますが、企業につきましては、とりまとめ中でございます。
5ページ、教育機関です。これはアンケート調査でございますけれども、大学・高等専門学校につきましては4割くらいの回収率になってございまして、ほかは回収率がかなり低いものですから、もう少し回収率を上げるべく努力しておるところでございます。
6ページ以降は、結果報告でございます。
7ページ、海外ヒアリングの米国の特許商標庁でございます。左側の囲いでございます。米国は特許商標庁のみではなくて、ほかも同じような状況でございましたけれども、マネジメントの重要性についてはかなり認識しています。一方、知財の使い分けも含めて、浸透していない。要するに、なかなか実施するところまで行っていないという状況でございます。
8ページ、ハーバード・ビジネス・スクールでございますが、左側にマネジメントについてまとめました。欧州も含めまして、ビジネス戦略として知財戦略との統合が課題であることを認識しているということでございます。一方、ビジネス及び知財の担当者間での考え方、用語等も異なっており、なかなか両者の対話が進んでいないという状況でございまして、今後どのような形でマネジメントについて教育するのかについて迷っているような状況でございます。
9ページ、MIT(マサチューセッツ工科大学)でございます。左の枠でございますけれども、イノベーションの促進のためには、知財戦略、事業戦略、組織管理、それぞれが必要ということでございます。その中で、組織の体制が整備されていないのが現状でございまして、イノベーションを起こすことはなかなか困難ということでございます。2つ目でございますが、例えば、秘密管理、製造・販売体制、こういったことが十分でなくてはいけない、しかし、余り十分でなくその辺りの整備が必要だということでございます。
10ページ、こちらはハーバード・ロー・スクールでございます。企業に対しての印象も彼らは述べておりまして、左の枠の1つ目でございますが、知財をどのように活用すればよいかという点について、企業の認識が低いのではないかという問題が指摘されています。
それから、代理人に関しては、弁護士の方々が初期から参加していただいていれば、いろんなロスが少なくなる。逆に、問題が生じないと、弁護士・弁理士の方々と相談しないといったコメントをいただいてございます。
11ページ、ジョージ・ワシントン・ロー・スクールでございます。左上の囲いでございます。ここもマネジメントの重要性については認識している。一方、米国では、知財を専門としていない人材に対する知財教育が遅れている。また、専門とする人材については、訴訟や出願に関する教育が主体となっていて、マネジメントの人材という部分が米国でも不足しているという状況でございます。
12ページ、英国でございます。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにヒアリングをいたしました。これらの大学はマネジメント教育はやっておりませんで、民間に委ねるということが共通のコメントでした。
13ページ、ドイツでございます。左側はミュンヘン知財センターでございます。1つ目でございますけれども、権利行使やライセンス、ベンチャー企業における知財管理等を修得する応用科目があります。
2つ目ですが、既に学位を有している人材が更なる知識を求めてくる機関であるので、学術な面の教育、実務的な面の教育も重視していますということでございまして、具体的には、弁護士のニーズに応えるため、実務面をより重視しつつあるようです。
右側は、ヨーロッパ特許研修院、EPOの附属機関でございまして、2つ目でございますけれども、特許弁護士に対して、中小企業などのコンサルタントをできるような講座は提供していない。つまり、マネジメントの講座は提供していないということです。
3つ目ですが、知財マネジメントの講座は、中小企業がどのように知財を保有していて、どう使うのかという基礎的なものにとどまっているということでございまして、やはり欧州でも、必要性はうたわれているものの、具体的なところまではまだまだ達していない状況だということでございます。
16ページ、国内のヒアリングの状況ですが、まだ結論はでておりません。17ページ以降、国内アンケートにつきまして簡単に紹介をさせていただきます。
18ページ、大学と高等専門学校のアンケートでございます。上のグラフでございますけれども、理工系大学の4割が、カリキュラムを見直し知財教育の内容を最近変化させています。
下のグラフでございますけれども、知財教育における外部人財の活用状況と活用ニーズは、弁理士を活用している状況、そして知財経験者を活用しなくてはいけないという状況です。
19ページ、高等学校と中学校でございます。知財教育の実施に当たっての希望と要望をまとめました。左側を赤く囲いましたけれども、希望が多かったのは3点でございまして、テキスト・教育用副読本の授業での活用方法を扱った研修に参加したい、それから、外部講師、具体的には企業とか大学の有識者の方々の講師が必要だということ、そして、知財の教育に関わる研修に参加したい、でございます。
20ページ、小学校です。右側のグラフでございますけれども、外部講師の実践的な授業を今後実施したいということで、まだまだ実施されていない状況でございます。
最後に21ページ、都道府県等の教育委員会でございます。私どもとしても、今後、注視していかなくてはいけない、もしくはサポートしなくてはいけない部分は、真ん中辺りでございますけれども、4分の1の都道府県・政令指定都市では、教員に対する知財教育の研修が行われていないということです。まだまだ知財教育もしくはマネジメント教育に対して不十分ではないかということがアンケートで見て取れます。
以上、中間報告で恐縮でございます。今後、更に整理をさせていただきまして報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○妹尾座長
ありがとうございます。
それでは、中間報告ということですから、全部というわけではないんですけれども、今までの中でお気づきの点、あるいは御質問の点、ございましたら、どうぞお願いいたします。澤井委員、お願いします。
○澤井委員
最初のときも議論があったんですけれども、いろんなセクターがあります。知財人財教育のヒヤリングということで、今回、かなりいろんなところに行かれているんですけれども、もともと最初に意識合わせした「事業を起点にする」といった観点から見たときに、今回のヒアリング先の機関とか、アンケートの先というのがそれにかなっているのかどうかについて、正直言って疑問に感じます。結果としてはこういうデータが出ていますというのはわかるんですけれども、集めた情報について「事業を起点にする」という観点で考えたときに、どうやってフォーカスしていくのかというのがちょっと難しいなと思います。先ほどの竹内さんのお話の中に、実践的な話をしてほしいというのがありました。しかし、今回のヒヤリングしたような機関やアンケートでの聞き出し方では、知的財産の研究をする人を育てるわけではないのですから、実践的な能力をつけさせるのに、どうやっていくのがよいかとか、こんな形で複数で教えていくのが良いといったような示唆的なことが、結果として出てくるのか、疑問に感じます。そんな教育をやっていないから、なかなかヒヤリングなどではわからないんでしょうけれども、もし、そういうのがまとめる過程で出てくると面白いなという思いでデータを拝見しました。
○後谷課長
どうもありがとうございます。
やはりアンケート中心ですと、澤井委員御指摘のような形で、やっていない状況しか見て取れないものですから、今、重点的にやってございますのはヒアリングでございます。マネジメント、もしくは実態の方をもう少し深掘りをさせていただきまして、その中でどういったマネジメント教育が必要なのかという観点でまとめ上げる方向で今、調査は継続しているところでございます。
○妹尾座長
今、澤井委員が御指摘されたのは、そのヒアリングする対象にしても、狙いから言うと、前の人たちと言ってはいけないですけれども、保護・権利化の人財ばかりに偏っていませんかという。
○澤井委員
偏っているかどうかわからないけれども、法律をメインにやっているところに行って、事業の話とか、知的財産に関する全体の話をと言っても、多分、もともと彼らはそんなことには関心ないのですから、そういうところから何かヒントになるようなものが余り出てこないだろうというのが、私の素朴な疑問です。
○妹尾座長
例えば、4ページは、企業を対象に聞いていますね。企業は、具体的にはどこをお聞きになられていますか。
○後谷課長
これから行こうとしているところは、まさにマネジメントをされている企業が何社かいらっしゃいますので、例えば、IPSNの秋元さんのところですとかを回りたいと思っています。
○妹尾座長
今、これを拝見すると、順番的に保護・権利化の関係者に先行して行かれているようなので、後半、経営サイドだとか、事業サイドだとか、あるいは活用することに注力している方々のお話も聞かないとバランスが取れないので、もう計画はされていると思いますけれども、澤井委員の御懸念に応えるように、是非、そちら側に重点を置いてほしいと思います。
それから、海外ヒアリングに関しても、これだけ回っているんですけれども、いわゆるビジネススクール系は2つしか行っていない。これもバランスがいかがなものかということもあろうかと思います。
海外ヒアリングについては、高原参事官から何か補足があると伺っていますので、補足を伺わせていただきますか。
○高原参事官
資料の確認の際、最後に申し上げました、委員限りで配布させていただいている「出張報告(知財人財育成関係)」という資料に基づきまして、事務局から行ってまいりました出張の概要について、簡単に補足をさせていただきます。
出張先は米国でございまして、先ほど後谷課長からの御説明にもありました。この資料の下線部を中心にポイントを補足させていただきます。訪問先は、1頁にありますように、ジョージ・ワシントン大学、米国特許商標庁の研修部門、更に、ハーバード大学、MITでございます。
まず、米国特許商標庁では、国際知財研修院、いわゆるアカデミーと呼ばれている機関と、イノベーション推進課及び教育課の3者がうまく役割分担をしながら、知財人財の育成を実施をしております。
1枚おめくりをいただきますと、アカデミーが開催したセミナー、4日から5日間という短期間のプログラムが多いようですけれども、このようなプログラムを多数開催いたしまして、年間4,000~5,000人という規模で海外の政府機関職員を中心に研修を実施しているということでございます。
それから、このページの中ほどでございますけれども、アカデミーでも数年前から知財マネジメントの重要性を認識しておりまして、特に印象に残りましたのは、あらゆる知財を活用していく「多次元知財戦略」という言葉です。
(2)のジョージ・ワシントン大学の法科大学院ですけれども、法学修士のコースの中で知財を選択する学生は全体の2割程度でございまして、卒業生約8割は法律事務所への就職ということでございます。
他方で、ジョージ・ワシントン大学ロースクールで、企業経営層を対象に、知財マネジメントという観点も含めて、知財について短期集中で教えるプログラムを開設をする準備を進めているという情報がございます。今年の夏にもそういった講座を設けたいということでございました。
3ページ目、ハーバード大学の部分でございます。こちらで特に印象的でございましたのは、ロースクールとビジネススクールがうまく連携をいたしまして、「知財とビジネス戦略」という企業経営層向け短期プログラムを提供しているということでございます。2009年から始まりましたので、本年が4年目ですが、毎年40~50名程度が参加をして、民間企業からが3分の2程度ということです。これとは別に、かつて学生向けの通年プログラムを提供したことがあるということでした。
それから、ビジネススクールでは、知財について、大半のクラスで何らかの形で扱っており、特に、ケーススタディの形式で知財の重要性について教えるようにしているということでございます。知財を専門としない講師陣も、ビジネスにおいて知財をどのように活用していくかという点、基本的なところはしっかり理解しているとのことでした。
最後の4ページのMIT・スローンスクールです。知財マネジメントができる人財の育成のために、ケーススタディの形を取るなど、工夫をしながら、受講生が主体的に活動できるような形式で教育を行っているということでございました。
知財マネジメントというポイントを絞って御説明、御報告いたしましたが、こうした取組は、我々の今後のプランを立てる上でも非常に参考になると考えております。
簡単でございますが、以上でございます。
○妹尾座長
どうもありがとうございます。
高原参事官の出張報告は、委員限りというペーパーで恐縮なんですけれども、何か御質問ございますか。荒井委員、お願いします。
○荒井委員
一般的に、日米の産業界、経済界を比較したときには、アメリカの方がロイヤリティー収入が多いんではないか、あるいは知財に基づくビジネスモデルをつくって、雇用をつくっているのが多いんではないかという数字とか印象があるわけですが、特許庁のペーパーとか、あるいは今の高原さんのお話もそうですが、大学に行ってみたら、認識はしているけれども、ほとんどやっていないとか、余り効果が上がっていない。ということは、どこに差があるのか。ここから先は大学の問題ではなくて、あるいは聞いた先がまだ足りないのか、むしろ、その後のOJTというか、そういうところの差なのか、是非やっていただきたいと思います。
それから、弁護士についても、印象としては、一般的に、アメリカの知財弁護士の方が辣腕というのか、かなりしっかり国際的に活躍しているという印象で、日本の弁護士は、立派な先生もおられるけれども、一般的には控え目な人が多いと思われているので、この差は何だろうかと思いますので、是非、そこを解明していただかないと、アメリカもこの程度だったとか、同じような認識は向こうも出始めたとか、教育はほとんど効果を上げていないとか、それでとどまったら、実態、あるいは私どもが現実に直面している問題の解決にならない。いよいよ調査の後半戦が期待されるということで、よろしくお願いいたします。
○妹尾座長
それでは、末吉委員、お願いします。
○末吉委員
荒井先生のおっしゃるとおりです。私ならば、やはり法律事務所は是非ヒアリング対象に入れるべきなので、1か所だけ行けというなら、フィネガンに行くと思います。どういうことかと言うと、弁護士は、インハウスロイヤーとのいろんなコラボレーションがあるし、行き来もあるので、事務所内OJTのみならず、外部とのネットワークがあると思うので、そこは日本と違うところではないかと思います。
それから、ついでに一言。今回の国内アンケートになるのかわかりませんが、私は是非、聞きたいなと個人的に思っているものがあります。もし可能であれば、妹尾先生がやられたIPMSという社会人教育があるんです。その受講者が今、どうなっているのかです。メールで簡単にリサーチ結果が集まります。この受講者は、非常に厳選された高度な知財人財であって、知財マネジメントを当然やっているわけです。この受講者が今、何をし、何を考え、何を疑問と考えているか、スリーポイントでもいいかもしれません。
それから、もう一つ言うと、お隣の杉光先生がやっておられる知財検定の1級の1期生というのがいて、あれはみんな知財マネージャーでした。世界の事務所をフルに使っているような、そういう人財でした。まだ国家試験になる前でございましたけれども。ああいう人財が今、何を考え、何を悩んでいるのか。今後、知財マネジメントに長けた人財を増やすにはどうしたらいいと思うかという1問だけでも、多分、メールで簡単に集まるんではないかと思います。
以上でございます。
○妹尾座長
ありがとうございます。
上田次長、お願いします。
○上田次長
荒井委員から、特許庁の調査と、高原参事官の報告についてコメントをいただきました。今日、私も特許庁の報告を聞いていて、同じようなファクツを見ても、我々と特許庁で、やや認識が違うな、ちょっと差があるなという感じがいたしています。
例えば、高原参事官が行った訪問先でも、教授の方から見ると、アメリカの企業の経営者もまだまだ知財の認識は低いようなコメントをされていますけれども、一方で言えば、かなり知財のマネジメントを意識した形での教育が、いろんなケーススタディとか、そういうことを通じて実践的に行われつつある。それから、先ほどのハーバードの例のように、ロースクールとビジネススクールが一緒になって、経営陣とか、かなりレベルの高いビジネスマンを呼んで、ハイレベルの方々に対してのセミナーとか、そういうことが、ここ数年、かなり立ち上がってきているというところを認識しているということがございます。そういう意味で、事実をどう見ていくかというのはいろんな見方ができると思うんですけれども、我々は、こういう調査を政策的にどう生かしていくかという観点から、引き続き先生方の御意見をちょうだいしながらやっていきたいと考えております。
○妹尾座長
もう一つ、荒井先生から厳しいお言葉があったんですけれども、私も、アメリカは、まだやれてはいないけれども、日本と比べたらはるかに進んできたなと、ちょっと危機感を覚えました。というのは何かというと、ビジネススクールとロースクール、アメリカのこの2つは、必要性の認識が、日本のビジネススクールなどに比べると、はるかに強烈に持っているという感じですね。
それから、2つ目は何かといったら、先行的試みをもう始めている。日本ではそこの認識まで至っていないし、まして、その先まで行っていないです。前もお話ししたと思うんですけれども、日本の経営系の学会で知財を扱っている人がどのぐらいいるか。ほとんどいないんです。それから、ビジネススクール、それから、技術系、MOTスクールで知財の科目があるところと、ビジネスモデルの科目があるところはほとんどないんです。
しかも、MOTの協議会に加盟されている、これは文科省の管轄ですけれども、それのモデルプランを見させていただくとおわかりだと思いますけれども、やはり基本は特許法1条から始まるんです。なので、やはりアメリカと日本の差は、残念ながら、ものすごい大きい。しかし、荒井先生がおっしゃるとおり、現場ではものすごい先行していますから、その辺の秘密を解き明かしたい。荒井委員の御指摘は更にそうで、是非それを知りたいですね。
○荒井委員
期待を申し上げたいんですが、今日おられる企業の方はみんな立派にやってきておられるわけですけれども、例えば、戦後も、ライセンスの導入で、大変御苦労されて、経済が成長した。その間、向こうからいろいろな条件を言われて、ロイヤリティーをいっぱい払ってきているわけです。半導体や通信にしても、大変なロイヤリティーを払っているわけです。ハリウッドとか、コンテンツ関係でも、大変なロイヤリティーを払っている。
日本は、特許収支も改善している。2009年にハーバードでロースクールとビジネススクールで合同の授業をやったというより、もっと前からいろんなことをやってきているという事実を是非、直面していただいて、更に米国で進める努力の部分はどうかを知りたい。この報告書だけでは、2~3年前に米国でもやっと始めたというように、読める。決して日本は負けていないとか受けとめる。実態は日米間で相当差がある。
さっき末吉先生がおっしゃったみたいに、世界じゅうの知財ビジネスについても、国際的なサービス産業の競争になっているわけですから、そのときに、どういう人財がどういう競争をして争っているか、歴史とか、ダイナミックな部分も入れて調査していただくと、良いと思います。これだけ見ていると、何だ、アメリカも意識があるだけかとか、気休めにも取られやすい。決してそんなのではなくて、今、妹尾先生がおっしゃったみたいに、更に一歩前へ進んでいくぞということが出るような形で、データを集めて分析してやっていただくと、生きていくと思います。期待の表明です。
○妹尾座長
皆さんから多大な期待がたくさん寄せられています。
佐々木委員も何か期待の御発言でいらっしゃいますか。
○佐々木委員
先ほどの荒井先生の、アメリカの方が辣腕の人が多そうだというのは、勿論、一部あると思いますが、それは主戦場がアメリカであることが多いので、そうなんだろうなと思います。どこでだれが活躍するのだということを考えると、我々の業界はいつもそうなんですけれども、常にどこかに施設団を送って研究しよう、どこどこに研究しようとやっているんですけれども、向こうから日本に来てくれたことは余りなくて、それは悪いことだけでもなくて、我々は常に外に出ていっているからそうなっているんだろうなと思っています。
産業界のように、どこででも生き残れなければいけない業界と、弁理士・弁護士の先生方を一緒にするのはなかなか難しい。つまり、我々は外に出て戦おうとすれば、日本の弁護士・弁理士にお願いするということよりは、その国、その国の弁理士・弁護士、専門家を使わせてもらうことが多い。そういう意味で、国際的な競争力云々かんぬんとやったときに、日本の国土をどう守るかという観点においては、日本の法曹界の方に徹底的に頑張っていただくとして、ちょっとそこは線を引いた方がいいんではないかというのが1つ。
それと、先ほどの資格と仕事の観点から行くと、これも各企業で違うと思いますけれども、私どもは、いろんな会社と話をしてみると、知財機能なのにそんなことまでやるんですかという、企業の経営とか、技術戦略とかいうところに入っているように言われています。そういう企業が中で有資格者をどう使っているかというと、中に弁理士がいたり、一番びっくりしたのが、工学部出身のエンジニアを2年間の研修でアメリカ初め各国にずっと出しているんです。
アメリカのパテントエージェントを取ってくる人間は何人もいたんですけれども、つい最近、ついにアメリカのパテントエージェントプラスバーイグザムを取って帰ってくる人間が出たんですが、だれも知らない。私も実はそのコンサーンがない。向こうの世話をした弁護士事務所から、彼はすごいんだ、こうだと聞いて、すごいねと。だから、極端に言うとSow whatです。その資格があったから重要な仕事につけるわけではなくて、だれが資格を持っているか、持っていないか、だれがどこで研修したかなどというのは余り関係なく、やはり能力本位で仕事をやらせていって、その中で彼らは力を発揮してくれるんだろうと思います。だから、資格と競争力というのは余り結びつけない方がいいんだろう。底上げするためにどうするかという話と、フロントランナーをどうつくるかという話は、峻別できるかどうかはわかりませんけれども、そこのところも、余り混合してしまうと、なかなか難しいんだろうなと思います。
以上です。
○妹尾座長
ありがとうございました。
これは資格についての問題提起でもあるわけですね。資格というものが今回の人財育成の中でも1つの項目に上がっていますけれども、その資格をどういうふうに見るかということの問題提起ですね。
局長。
○近藤局長
産業界は外に出て戦うけれども、弁理士は外に出て戦わなくて構わないと言われているように聞こえましたが。中島先生、とんでもないと言わないといけないのではないですか。
○中島委員
何とコメントしていいのか、ちょっとわかりませんけれども、多分、両方とも、御意見はそんなに相反するものではないと思います。佐々木さんの言われることは、私が言いました弁理士資格と実際の仕事との乖離というもの。これは言っていいのかどうかわかりませんけれども、今の弁理士試験制度というのが、常に私は苦情を申し上げているんですけれども、現実に即していない。残念ながら、日本の試験制度はバーイグザムではない。自分たちが優秀な人を選ぶわけではなくて、我々と別のところでどんどん大量に送り込んでいただけるものですから。ところが、品質責任はおまえたちだということで、これは大変な苦労をしております。そういうことが1つあります。
それから、これは弁理士に限らず、司法試験の方はもっと法廷に近い業務がたくさんあると思いますので、そういう意味では、司法試験の方が、それから、司法修習制度の方がきちんと動いているのではないかと思います。
それから、もう一つは、先ほどのアメリカの制度と日本の制度は、これは言っていいのかわかりませんけれども、全く個人的な印象ですけれども、アメリカの場合には、組織とか制度を育てるんではなくて、単品を育てる。ケーススタディとかをどんどんやって、その中からすごい人が出てくればいいではないかと、そういう感じだと思うんです。日本の場合はそうではなくて、1人、2人ではだめだよ、100人いたら、少なくとも3分の2はきちんとした人を育てる制度にしないといけない、チームワークで戦う、組織がしっかりしているというのが日本流ではないかと思うんです。そこの違いがかなりあると思います。
そこで、局長の、どうかと言われるのには、戦うというのでは、敵は常に相手ではなくて自分でございます。
以上です。
○妹尾座長
今日は全体として、すごいトーンになっていますね。
末吉先生、もう一言、何かありますか。
○末吉委員
中島先生の御意見と少し違うかもしれませんが、司法試験もどんどん人数が増えているので、資格を取っただけではだめです。人数が少ないときは、資格を取ったことで推定が働く時代があったんですけれども、今はまさに、日本の弁護士資格はもう、「だから何さ」というところは同じなんです。しかも、日本国内のマーケットで生きているのが我々弁護士業なんですけれども、日本の国内でしっかりやるためには、経済活動のマーケットは世界なので、海外の事務所とどうネットワークを組むかとか、事務所のみならず、海外の企業とどうネットワークを組むかが重要になります。そういう意味で、日本国内だけで自己完結したやり方では、多分、生き残れない。それが証拠に外資系の事務所も出てきていて、だんだん勢力を伸ばしているわけです。その中で、どうやって民族資本というか、我々が生き残っていくかを考えているという意味では、企業のお立場と、似たような洗礼を受けているということではないかと思います。
以上です。
○妹尾座長
ありがとうございます。
高倉委員。
○高倉委員
先ほどの荒井委員の御指摘にも関連するんですが、私は明治大学のロースクールで知財を担当する者の1人として、ヨーロッパのケンブリッジとか、アメリカのハーバードのロースクールに行けば、特に知財教育、実務教育やっていませんよという答えが出てくるのはおのずと明らかであって、だからといって我々は安心してはいけないと思っています。
日本の企業の知財部もそうですが、アメリカにも優秀な知財のマネージャーがたくさんいる。現に私が今、仕事でつき合っている通信機器の知財部長の経歴は、元大手のコンピュータメーカーの知財部長で、その前は大手の法律事務所で知財訴訟等を担当していた。例えば、アメリカの特許庁の長官も元IBMの知財部長ということで、こういう方たちのキャリアパスといいますか、人事のローテーションの中で人材が育ってきているというところは、日本とアメリカの違いの1つとしてあると思います。
もし今後、後半戦で調査の対象とか、これからまだ選択の余地があるんであれば、教育機関でどんな教育を教えているというよりは、個人に着目をして、その方がどのようなキャリアパスやローテーションの中で、今日の地位とか実績とかを築き上げてきたのかというところを調べるのも、1つ、我々への示唆になるのかなと思いました。
○妹尾座長
ありがとうございます。
中島委員。
○中島委員
済みません、追加でございますけれども、先ほどの弁理士が弁護士と違うとか、弁理士が権利化主体でというのは、当然、当てはまっているわけですけれども、実際には、日本国内の知財訴訟においても、弁理士はかなり活躍しているわけでございまして、弁護士と共同戦線を張るということで、訴訟代理人、または補佐人として、それぞれのパートをもって、大変うまく機能していると思います。そういう意味で、とかく権利化というと、「戦う」という言葉がいいかどうかはわかりませんけれども、内にこもってだけいるというふうな印象があるかと思いますけれども、実際には、特許庁と戦い、訴訟では相手方と十分に戦って、打ちのめされたり、打ちのめしたりしていることがたくさんでございますので、その点は誤解なきようにお願いいたします。
○妹尾座長
ありがとうございます。
期せずして、この調査を元にいろいろな議論ができたと思います。今の中で、我々が大きく取り出さなければいけないのは、幾つも観点があるんですが、後半の方に出てきた観点は、1つは、資格の問題が、資格と能力と業務の3つと乖離している、この三角形をどういうふうに考えるかという問題かと思います。資格が能力とイコールか、資格が業務とイコールか、業務が能力とイコールか、この三角形があって、これらの乖離問題をどういうふうに我々は次へつなげるのか、これが1つ目だと思います。
2つ目は、先ほどの中島委員の御指摘は面白いなと思ったのは、日本流の人財育成ですと、3分の2は使えないといけないねということがあって、アメリカではスーパースターが出てくればいいではないかと、こういうことですね。これは私が普段申し上げる、日本はどうしても人財育成を生産メタファー、工場メタファーで考えるけれども、そもそも育成というのは農業メタファーではないでしょうかということと関係すると思います。工場で品質管理をして、一定生産で、一定条件で、一定品質が出てこないと、何となくやった気にならないという工業メタファーを私たちは持っているんですけれども、育成をやってくると、とんでもなくおいしい、突然変異で新しいものが出てくるというのもありまして、育成メタファーで考える人財というのも我々は考えなければいけない。
3点目は、末吉先生が、弁理士・弁護士も国内自己完結型ではもうだめだとおっしゃっていることです。海外とのネットワーク。これは実は、今のビジネスモデルの問題、前回、我々が議論した、国内に垂直統合的に全部やっておいて、自己完結してから輸出モデルに持っていくという、80年代モデルがもう破綻しているよという、この話は、今まで何回も出てきた話なんですけれども、実は、それと全く同形の懸念があるということかと思います。その意味では、海外に、どこを内側で我々ががっちり固め、どこをオープンにしながらネットワークを組んでともに歩むかという形が求められているということの御示唆ではなかったかと思います。
それ以外にも、高倉委員から出たキャリアパスを調べるとか、それから、末吉委員から具体的に出てきた、スクールだとか、IPMSだとか、あるいは知財検定だとかでフォローしてもらうということも具体的な案件として面白いので、後半、時間があればなんですけれども、従来とは違う、この委員会の問題意識を踏まえて、みんなで後谷さんに期待表明の目線を送りたいと思います。頑張ってください。よろしくお願いいたします。
それでは、次に「『知財人財育成プラン』に向けた検討課題」というのがありました。それを先取りするような議論が大分出てきたんで、私もそれに任せておりましたけれども、事務局から、それのたたき台のような資料が出てきておりますので、高原参事官、御説明をいただけますか。
○高原参事官
それでは、資料3、「『知財人財育成プラン』策定に向けた検討の方向性(案)」をごらんいただけますでしょうか。この資料は、これまで事務局から提出させていただいておりましたペーパーを、前回までの御議論を踏まえて修正をしたものです。特に、これまで提示させていただいておりましたそれぞれの視点、あるいは視点群と申した方がよいかもしれませんが、それら相互の関係を整理しまして、策定すべきプランを実行していくイメージをお示しした上で、委員の皆様に更に御議論いただきたいと、このような趣旨で提出させていただいたものです。
資料の構成は、第1部が「基本的考え方」、第2部が各論に該当いたします「検討の視点」、そして最後に「知財人財育成プラン実行イメージ図」ということで、全部で4ページということになっております。
まず、1ページ目の「基本的考え方」ですけれども、2006年に総合戦略を策定しまして、知財人財育成の方向性を示したということです。これは主として「技術起点型モデル」を基本とするものでした。
その後、世界が大きく変わりまして、グローバル・ネットワーク時代が到来し、このような時代にあっては、従来の「技術起点型モデル」に加えまして「事業起点型モデル」を基本としたコンセプトも更に導入をして、そちらに移行、重点化していくことが必要であります。
1ページ目の第2パラグラフは、この流れを、求められる人材像という観点でとらえたものです。時代の変化に応じて知財マネジメントの内容が変化いたしまして、従来の、主として国内の知財権の獲得や維持といった観点で関与するような知財人財から、事業戦略に立脚して、イノベーションの創生、あるいは国際競争力の強化にどう貢献していくかという形で知財の活用ができるような知財人財に対象が広がって、後者のような人財の育成を強化していくべきではないかということです。
このような知財人財の育成を進めていく上では、まずは知財を取り巻く将来の状況、例えば、10年後の状況を見据えることが必要ということでして、1ページ目、一番下のパラグラフには4つほど状況を例示しておりますが、このような状況を念頭に置きながら、知財人財の育成の取組をスタートさせることが喫緊の課題ではないかと考えております。
2ページ目から3ページ目にかけての「検討の視点」ですが、前回の資料2でもお示しした内容を再構成したものです。Ⅱ.の冒頭にもありますように、10年先、更にその先を見据えて、国際競争力の強化に向けて知財の活用ができるようなハイレベルな知財人財の育成を行い、確保していくこと。それから、そのような知財人財育成を目指していく上での基盤となる知財人財の裾野を一層広げていく。この双方を実現するような知財人財育成プランを策定すべきではないかと、このように考えているところです。
今、申し上げました前者の目標に相当するものが2ページの「1.ハイレベルな知財人財の育成」に掲げた視点です。「(1)ハイレベルな知財人財を養成するための場の形成」「(2)知財マネジメント戦略に関する研究の推進」「(3)グローバル・ネットワーク時代に対応するための特許審査体制の構築」は、これまでの資料でもお示しをしておりました。(4)の、企業の事業活動に資する、弁理士に代表されるような専門家をどのように育成・確保していくかという視点、そして(5)は、これまでも一定数の受験者が受験をし、利用がされてきました知財管理技能検定でございますが、どのようにこの検定を利用すればハイレベルな人財の育成にも活用することができるかといった視点です。
3ページ目の2.にありますのが「知財人財の裾野を広げる」という視点です。ここに含まれるのは、大企業とは異なり、知財人財の確保が困難である中小・ベンチャー企業において、どのような取組みが必要であるかという視点。そして、教育課程における知財教育をどのように充実していくかという視点でございます。
最後の「3.知財人財育成プラン推進体制の整備」です。2006年の総合戦略に基づいて知財人材育成推進協議会が設置されておりますけれども、今の時代に沿った知財人財の育成に向けて、各種関係組織が集う協議体をうまく活用できないかと、という視点です。
最後になりますけれども、4ページ目にあるのが、知財人財育成プランを実行していく上での視点間の関係を整理したイメージ図です。知財人財の裾野の一層の拡大を図るというのが、このページの底辺部分です。そして、企業、弁理士・弁護士事務所、行政機関といった各セクターにおいても、相互に連携をしながら、それぞれ事業起点型モデルへの対応のほか、新しい時代に沿ったハイレベルな知財人財の育成のための取組を推進していく。
更に、これまでにはなかった要素ですけれども、最先端の知財マネジメント戦略を研究するための拠点を設置するとともに、その成果としての教材を大学院等に提供していく。そうした形でハイレベルな知財人財の育成を推進していけないか。このように考えているところです。
これまで、委員の皆様から御意見をちょうだいするための時間を十分に取ることができませんでした。知財人財育成プランを策定する上での基本的な考え方をどうすればいいか、特に、どのような視点が必要か、更には、それぞれの視点間の関係をどう整理するかといった点も含めまして、委員の皆様から御意見をいただければ幸いです。
以上でございます。
○妹尾座長
ありがとうございました。
これは、前々から出ている方向性の案ということですから、これがどういう形で展開するのかということなんですが、皆さんから御質問はありますか。佐々木委員、お願いします。
○佐々木委員
昨今の例を待つまでもなく、なでしこリーグみたいなものなんですけれども、どこかがきらきらっと活躍すると、黙っていても裾野が広がる構造があります。なかなか知財の中でそれは難しいと思うんですが、私はマネジメント戦略の研究拠点を、勿論、この幅の中で考えていくんだろうと思いますけれども、教育題材を与えるものであると同時に、もうちょっとハイレベルなものにならないかなと思っている。というのは、一応、グローバルでやっていると言われている企業が、もっと知財の観点で活躍をして、それがニュースか何かを通じて津々浦々に行き渡るというのが、裾野を広げるには一番です。それだったらやってみようかなという人がたくさん出てくるということで、そういう責任は感じているんですけれども、これも一朝一夕にはいかないので、日本の中にはすごい研究所があるぞと、ここのレベルを拠点にして、もうちょっとうまくこれが回っていくようにならないか。例えば、今、航空自衛隊にブルーインパルスがあるかどうかわかりませんけれども、常に最先端の航空戦を研究するような、これは多分、そういうところをイメージされているんだろうと思うので、ここをもうちょっとハイライトできるような格好で、是非、検討をさせていただければと思います。
○妹尾座長
ありがとうございます。
研究所の方ですよね、きらきら輝く。きらきらなでしこも、前に2005の1・0の議論をしたときに、弁理士にいい人を呼ぶためにはキムタクのテレビをつくるべきだという議論が大分出たんです。今、キムタクは南極に行ってしまったんで、弁理士事務所に帰ってもらわないといけない。ありがとうございます。
ほかに。澤井委員。
○澤井委員
幾つかあります。この資料で「グローバル」という言葉があるのですが、グローバルという意味に2種類あります。本当に世界中の国にとって普遍的な、いろんなことをやっていくグローバルというのと、ある特定の国のマーケットに特化して、結果的には海外に出ているグローバルというのもあります。企業にとっては、多分、両方ともグローバル活動の一環だと思うんです。この人財育成も、どちらの意味でのグローバルの観点でとらえるかによって、育成に関するアプローチもちょっと違うかなというのが1つです。
それから、企業活動をしていると、知財だけの話しかできない人材では、極論いうと十分ではない。グローバルに活動したときの究極の姿は、お金が日本に戻ってこなければしようがないんです。そういう意味で、「事業を起点に考える」という観点に立つならば、知財と一見関係ないように思える税などの側面を加えた人材育成のアプローチをどうするんですかという辺りも大変大事なことです。佐々木さんがおっしゃった知財マネジメント戦略研究拠点のような所で教えることになるなのかどうかわかりませんが、単なる学者のお遊びのようなカリキュラムではなくて、さっき竹内さんもおっしゃったように、実戦の人たちもかなり入り込んで、お金が日本に本当にいい形で還流してくるというような形を作りこんだり、そのために必要なことを教えるような点にまで踏み込んで、人材教育ができると良いと思います。専門職大学院などの知財のところにも、今までの法律だけではなく、企業活動の実態に適合するような経済観点での実践的な話が入ってくるようになると、面白いし意味があるだろうなと思います。
○妹尾座長
ありがとうございます。
今、グローバルの意味は2つありそうだというのは、グローバル市場を前提にした話と、グローバルに出ていくという、昔で言うインターナショナルですね。
○澤井委員
そうですね、両者はちょっと違う観点から議論をする必要があると思います。
○妹尾座長
地球規模の市場を考えるということと、国際化をするとか、輸出をしていくというのは意味が違いますからね。
○澤井委員
多分、企業のアクションの仕方も相当違うんで、それに応じて知財のやり方もかなり違ってくるはずです。単に、グローバル人材が必要だと、十年一日のようなお題目で議論を進めるのではなく、そこら辺の相違あることを意識して人材育成を議論した方がいいんではないかと思います。
○妹尾座長
なるほど。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。八島委員。
○八島委員
八島です。
内容的には非常にいいんではないかと思うんですけれども、先ほど、企業は海外に出ていって、弁護士・弁理士はという話がありましたけれども、そうではなくて、企業が出ていくために、どういう形で、いわゆる専門家の方々の力をかりるかというところが非常に大事なんだと私は思っていて、是非、そういうところの教育とか、関連をやっていただきたい。
ここに上がっている4番目の「グローバル競争時代の企業の事業活動に資する専門家の育成・確保」というところが大事だと私は思っていて、確かに日本の弁護士は日本の法律、弁理士は日本の特許法ということなんだろうと思うんですけれども、基本的に、海外に出ていく者が、どういう形で国益というか、そういうものをちゃんと守ってこられるか。それは先ほど澤井さんのおっしゃるような利益が戻ってくるということが大事なこともあるだろうし、逆に我々から言うと、例えば、中国とか、インドとか、東南アジアに出ていこうとするときに、そのネットワークですね。特に、トヨタみたいに非常にグローバルにやっている会社は、自分で情報を集めて蓄積できると思いますけれども、我々みたいな会社ですと、まだまだそこまで行っていない部分が多くて、そういうところに対してですと、海外の専門家をきちんと御紹介いただける、もしくはそういう方とのネットワークができる、人脈ですね、そういうところが大事だなと思っているんです。
卑近な例で申し訳ないですけれども、出願件数が多い企業は、外国の弁護士事務所、弁理士事務所を囲い込むことができるんでしょうけれども、中途半端なところはなかなかそれが難しい。特に、化学みたいなところは、もともとそんなに数は多くないですから、そういう中でどういう形でいい人財を活用するかというところは、日本の弁理士・弁護士のネットワークをちゃんとつくっていただかないといけない。それはどういうことかというと、そういうところに聞けば、こういう人財がいるよとか、こういう方に聞いてくれということが情報で集まれば、うまくなる。そういうセンターなりを1つ考えていただければありがたい。
例えば、知財マネジメント戦略に関する研究の推進の中の1つのデータベースとして、どういう人材がいて、こういう問題が出たら、こういう人間に聞いてくれとか、こういう人間とやれとかいうことを、多分、各企業なり、各弁護士・弁理士の個々の情報はあると思うんで、それを集めるというところが1つ。
繰り返して言いますけれども、日本の企業が出ていったときに、ちゃんとサポートしていただけるようなシステムを国家レベルでつくっていただければありがたいと思っています。今、経済はボーダーレス化し、国はボーダーがあるという中で、どうやって浸透していくかというのは、そこがポイントになると思っています。我々日本の企業は、日本のそういう方々にサポートしていただかなければいけない。そうでないとうまくいかないと思っていますので、そういう視点を入れて人財教育を考えていただければありがたいと思っています。
○妹尾座長
ありがとうございます。
今の八島さんのお話は、先ほどビジネス支援図書館の話に出てきましたけれども、あれは一種のドキュメントレファレンスですね。それと対比させると、ヒューマンレファレンスがきちっとできるようになればいい。ただ、これは1つ間違えると、データベースをつくって、制度をつくって、何とかでという、純箱物の政策になってしまうんで、そうではない形を何か考えたいですね。データベースにみんながアクセスできるよねと言ったら、企業はそのデータベースは使おうとしないというパラドックスがありますから、これをどういうふうに超えるかというのが非常に重要ですね。みんなが使っているデータベースで出てくる人は使わないというのがあります。これをどう考えるか。企業の方は皆さんそうですね。テクノロジーロードマップができたら、絶対それには載らない。それは差異化をする原点ですから、ここのところの難しさをどう考えるかというのが課題だと思います。
杉光先生。
○杉光委員
杉光でございます。
前回、検定の概要については御説明させていただいたので、その点はもう触れませんけれども、1の(5)で検定制度の活用というふうに、検討の視点として入れていただいているんですが、1番がハイレベルの知財人財の育成という分類、2番が知財人財の裾野を広げるという分類で、一番上のハイレベルと裾野と、真ん中がないのかなというイメージがしたんです。どちらに入れるのが分類学上いいのかというのは難しい面もありますが、前回申し上げたのは、私としては、特に中小企業の経営者の方が知財をある程度わかっていないと、そもそも頼みようがない、出願の依頼もしようがないという話を御紹介させていただいたかと思うんです。ですので、中小企業の方々に知財を知ってもらうという視点からすると、どちらかというと2の(1)に(5)の話は入る方がすっきりするのかなと、個人的には思ったということ。
あとは、今の関心事としまして、知財部門とそれ以外の企業の観点で行きますと、知財部門と経営層、あるいは事業担当者のコミュニケーションの部分で、例えば、先ほどの委員限りの資料でございますけれども、出張報告の3ページのハーバード大学のビジネススクールのところで、「米国でも欧州でもビジネス戦略と知財戦略の一体化が課題となっている」、ここは下線が引いてあるんですけれども、その後「事業担当者と知財担当者では考え方や専門用語が異なり、両者の対話は容易ではない」ということが紹介されているんですが、この両者の対話の一種の共通言語として、知財の基本知識とか、基本用語の理解とか、そういったところは重要だと思っています。
前回に発表させていただいたとき、中小企業が弁理士の先生とお話しするときに、知財の用語が中小企業の経営者もわかっていないと依頼のしようもないし、お金を出したくもなくなるという話を御紹介させていただいたんですが、そういう意味では、共通言語の理解を進めるという意味で、例えば、検定制度を使っていただくという観点で整理しますと、どちらかというと、1番ではなく、2番に入れていただいた方がいいのかなと、個人的には思っております。
ただ、1番のハイレベルな人材を育成するために検定制度を活用するというのが間違っていると言っているという意味では勿論ありませんで、前回申し上げたのはむしろ、契約の問題ですとか、米国のみならず中国、韓国、その他の諸外国の制度もこのけ検定制度で扱っている。ただ、それは1級に関してということで、1級と2級と3級と、レベル感の違うものが入っているので、どこに整理するのか、ちょっと難しいと思うんです。
そういう意味では、先ほど佐々木委員がおっしゃっていたように、上の資格を持っていて実務ができるのかという話があったかと思うんですが、要するに、ミニマムリクワイアメントにはなるのかもしれないけれども、それ以上ではないんではないかという御指摘だったと思うんです。そういう意味では、資格とか検定というのは、ある意味、ミニマムリクワイアメント的な要素もありますので、2番の裾野の方は、先ほどの共通言語という意味でのミニマムリクワイアメントということで整理できるのかなと、個人的に思ったところでございます。1番に入れていただいているのは勿論いいんですが、その辺は逆に議論いただければというふうにも思います。
以上でございます。
○妹尾座長
ありがとうございます。
澤井委員。
○澤井委員
今の議論に絡んで、さっき佐々木さんがおっしゃったのと同じ趣旨で、4ページの図面は修正をお願いします。この図面だと、企業があたかも検定制度を積極的に支援するような大きな誤解を与えてしまいます。ミスリード的なので、検定制度の活用というのを企業という文字と一緒に書くような絵の描き方は止めて下さい。このような誤った絵が社会にでると、資格があったり、検定に受かれば、仕事ができるあるいは会社が認めてくれると勘違いする人が出てきます。当たり前のことですが、会社はそんな資格や検定には全く関係なく、あくまでも仕事ベースの能力でしか話をしませんので、ミスリードにならないような資料のつくり方をお願いしたいと思います。
○妹尾座長
ありがとうございます。
青山委員。
○青山委員
中小企業の観点からお話しさせていただきたいと思うんですが、ここの中に、一応、整理上、裾野を広げるということで、これはこれでよろしいかと思います。ただ、一方で、実は、中小企業も、非常に関心の強い企業もあれば、そうでない企業もある。中小企業も非常に数が多いものですから、中小・小規模企業といった場合、世の中に大体420万社ぐらいあります。そのうちの中小企業基本法で言う小規模事業所は370万あると言われていますので、本当の中小企業というのは50万社ぐらいではないかと私は思っております。
この50万社というのはすごいボリューム感なんですが、みんなを引っ張っていくというのはなかなか困難だとは思いますけれども、どうやって知財を経営の中に組み込ませていくか。実は、中小企業政策というのは、今までを振り返ってみますと、金融と税制、補助金、恐らくこの3本立てではなかったかと思います。この中に知財というものが、実はお金の成る木なんだみたいなものをどうやって組み込んでいくか。要は、経営者にどうやって気づいていただくか。これからのグローバル化の中で、中小企業はどんどん海外に出ようとしていますから、知財が重要な戦略の1つになっているんだということをどうやって理解していただくか、こういう仕組みが恐らく裾野を広げるところの仕組みの中に絶対必要になってくるんだと思います。ただ単に育成策を出しても、なかなか御認識いただけない。そういうことを御理解いただければと思っております。
それから、もう一つ、大企業と異なるところが、内部人財がいないということで、これは何回も指摘されているとおりでございます。弁理士の先生にすべてを教えていただけるかというと、お話を聞いてみると、そうではない。弁理士の先生は確かに御支援の力になるんですけれども、一方で、もっと実務に基づいた支援が欲しいんだという声がものすごく多いんです。
こういう人財はどこにいるのかということになりますと、日本では、公的な支援ではなかなかないんではないか。東京都には知財センターがありまして、そういう方向性を出しておると私は認識しておりますけれども、日本全国でそういうような相談センターみたいなところが、気軽に行けるところが、これからますます必要になってくるんではないか。ハイレベルは必要だと思いますけれども、気軽に行けるところも必要になってくるんではないかと思っております。そういうような人財、要は、知財を教えてくれて、事業化をある程度サジェスチョンいただけるような指導者となる人材を育てていただくということも重要な観点ではないかと思います。
以上でございます。
○妹尾座長
ありがとうございました。
別の観点で、中小ではなくて、中堅は、青山さんから見られて、どうですか。
○青山委員
中堅も、これはあくまでも感触でございますけれども、自力でできる会社と、弁理士の先生方に御支援いただく会社と、恐らく2つに分かれるんではないかと思います。中堅とは、ワンランク高いところにあるんではないかと思います。
○妹尾座長
今、なぜ御質問したかというと、大企業と中小と言うと、世界で頑張ろうとしている中堅がすこんと抜けてしまう感じがありまして、だけれども、今、中堅どころが勝負どころに入ってきていると私は認識しています。全体としてはそうでしょうね。
○青山委員
おっしゃるとおりです。ですから、先ほど竹内先生から「層」という言葉がありましたけれども、私どもが感じる層は、実は、いわゆる大企業、中堅、中小、そういう層としてとらえたらどうかと認識しております。
○妹尾座長
なるほど。ありがとうございます。
時間が来たのですが、ほかに御発言ありますか。高倉委員。
○高倉委員
では、手短に、今後の知財人財に求められるスキルとしての英語力と、国際的な特許システムの活用力の2点について申し上げます。
まず、第1の英語力の点です。例えば、沖縄科学技術大学院大学にたくさんの外国の研究者がいらっしゃると思うんですが、そこで生まれる発明についてだれがどのように特許化を支援しているのか、英語でコミュニケーションができて英語でドラフティングができる知財部のスタッフとか弁理士が本当にいるのか。多分、相当難しいと思うんです。今後、このような国内における外国の研究者による発明の権利化支援に対応できる人財の育成も考えていかないといけないと思っています。これは知財に限らず、英語が使えるグローバル人財をどう育成するかという国全体の課題の中で議論される問題ですが、知財戦略プランの中に、知財人財にも英語力が必要であるというメッセージを入れることも一案です。また1の「(3)グローバル・ネットワーク時代における特許審査体制の構築」に関連して、PCTに基づく国際調査報告書を英語で書く、場合によってはアメリカのPCT出願を日本が受けることなどを視野に入れるのも一案と思います。これは人財育成の問題と直接関係ないかもしれませんが、特許庁において英語での審査は当たり前という環境をつくることによって、人財育成における英語問題も加速される可能性があるかと思うので、あえて人財育成の観点から検討されたらどうかなと思います。
2点目は、弁理士試験における外国法、特にPCTの知識の問題です。実は、平成14年に論文試験から条約が落ち、5年後の平成19年にそれでいいのかという議論がなされ、結局、受験生の裾野を拡大する観点から、余り負荷をかけない方がいいということになって、条約等は論文試験の対象から外れたままになっています。そのときは、試験合格後の弁理士研修を強化すればいいのではないかということになったと承知おります。私もそれでいいと思うし、今、ここで条約を弁理士試験の論文試験に復活することを提案するものではありませんが、過去5年間において、弁理士会等における外国法、特にPCTの研修がクライアントのニーズに合ったものになっているかどうかもう一度検証した方がいいと思っています。そういうこともプランの中に入れていただくことを検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
○妹尾座長
ありがとうございます。
中島委員。
ちょっと時間が延びるのをお許しください。
○中島委員
全体的なことなんですけれども、今日の議論でも、知財人財の育成はなぜ必要なのか、この御時世にというふうな意見があると思うんです。結局、知財人財育成は何のためにやるのか。知財戦略のため。知財戦略は何のためにやるのか。産業政策のため。そこら辺が、全体を通じて、どうしても定性的な表現になるとわかりにくい部分があるわけです。国内総生産が10年間伸びていないのに、海外はこれから伸びるのかどうかわからない。そこで人材を育成してどうなるんだというところは、きちんと長い射程での計画も、ある意味、定量的なことをきちんと目標を定めてやらないと、ただのものになってしまうという気がいたしますので、そこら辺、是非、御検討いただきたいと思います。
○妹尾座長
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。今の定量的というのは、是非、事務局で検討していただきたい。定量的な目標は難しくて、ひとり歩きをするリスクと裏腹なので、是非、定量と定性がカップリングしたような目標設定をできればと思います。
時間がなくなったんですけれども、お陰様で、今日、いろいろな話題が出てきたと思います。人財育成というと、ついつい教育機関の話が主になって、では、制度をどうするのみたいな話になるんですが、今日は、荒井委員なども強調されたように、現場で実際に人が育っている、そこをどういうふうに考えるかというところもクローズアップできたので、非常によかったと思います。
実は、私は、資料3の案は、かなり書き直してほしいというふうに依頼をしています。というのは何かというと、ハイレベルな人財といったときに、ハイレベルというのは何を意味しているのか、よくわからないんです。「レベル」という言葉でいけば、2005、つまり1・0をつくっときに、3層構造論とともに、そのバックヤードでは、高度化と広域化というマトリックスをつくって、そこで「レベル」という言葉を使っているんです。「ハイグレード」という言い方をして、それから「ワイド」という言葉を使って、要するに、広域にウイングを伸ばす人間と、専門に特化する人間という2軸を使ってやったんですが、このハイレベルがよくわからないんです。
ですので、何が言いたいかというと、批判しているわけではなくて、2005のときの理論的な基盤と対比をきちっとしなくては、ファンシーな言葉が浮いてしまうんだと思うんです。なので、是非、2005のときの理論的な基盤、あるいは教育に絡んだ考え方、あるいは知財と産業の考え方と対比的にこれをおつくりいただき、直してほしいというのが私のお願いしているところなんです。
もう一点は、やはりこれを見ていると、委員会の中で盛んに出てきているのは、活用人財の育成をどうするんだという話なんです。ところが、活用人財の育成についてのトーンがまだまだ私は薄いと思います。
それから、もう一つは、保護・権利化人財の活用へのウイングを広げていただく、あるいは視野を広げていただくことが、保護・権利化人財の方々がこれからますます活躍の場を広げるという意味ですから、その意味では、活用人材の育成と保護・権利化人財の活用への視点・視野の拡充、あるいは研究開発、すなわち創出人財の活用への目配りといったところを更に強調していただけないかなというふうにお願いをしたいと考えております。
これもまだ途中のところなので、別にいけないということではなくて、先ほどの特許庁への調査への皆さんの期待の表明とともに、事務局への期待の表明ということで、頑張っていただきたいと思います。
時間が延びたんですが、これまでのヒアリング、あるいは調査研究の中間報告、事務局からの説明を踏まえて、これらを討議できたわけですけれども、これ以降、いよいよ我々がこの中身を整理し、議論していくというフェーズに入っていくことになると思います。その予定について、高原参事官から簡単に説明をお願いします。
○高原参事官
次回第5回は、12月7日の午前10時から開催させていただく予定です。
その後のスケジュールにつきましては、お手元の資料4の今後の進め方にもありますが、12月22日に第6回を開催しまして、プランを取りまとめるというのが当初の予定でした。議論の進捗も踏まえまして、新たに予備日を確保させていただきたいと考えておりますので、委員の皆様には誠に恐縮ですけれども、今後、日程の調整をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
○中島委員
年内ですか。
○高原参事官
年内も含める積もりでおりますが、年明けも視野に入れて日程を伺いたいと考えております。
○妹尾座長
済みません、慌ただしい年末年始だということかと思います。余り拙速でということではなくということで、御理解いただきたいと思います。
では、今日、あの話をもう少し補足しておきたいとか、あるいは今日、言えなかったんだけれどもということがありましたら、私ないし事務局に御連絡を賜ればと思います。
それでは、済みません、私の差配が悪くて時間が大分延びてしまいましたけれども、今日はこれにて終了したいと思います。どうもありがとうございました。お疲れ様でした。
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