知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会
知財人財育成プラン検討ワーキンググループ(第2回)



  1. 日時 : 平成23年9月28日(水)14:00~16:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾座長、荒井委員、上條委員、佐々木委員、澤井委員、末吉委員、杉光委員、
    住川委員、中島委員、本田委員、八島委員
    【事務局】近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)企業セクターにおける知財人財の育成・確保について
      (3)知財人財育成の取組について
      (4)「知財人財育成プラン」に向けた検討課題について
      (5)閉  会


○妹尾座長
 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。よろしいですか。
 皆さんこんにちは。人財育成なのでもう少し元気よくいきたいと思いますが(笑)、「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会 知財人財育成プラン検討ワーキンググループ」の第2回であります。ただいまから開催させていただきます。一応予定は14~16時でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、御多忙のところを御参集いただきありがとうございます。第1回の会合で各セクターにおいて必要とされる知財人財を明確にすることが不可欠だという指摘、またその上で必要とされる知財人財育成をいかに図るべきかということが指摘されました。なぜ必要か、どういう人が必要か、いかに育成するか、こういうことだと思います。why、who、howかもしれません。
 それを踏まえまして、今回はまず企業セクターにおける知財人財の育成・確保に関して御意見をいただきたい。その企業の立場で御参加をいただいている委員の方に御説明をお願いしてあります。
 続いて、工業所有権情報・研修館、日本知的財産協会、日本弁理士会、発明協会、日本弁護士連合会、知的財産教育協会及び日本知財学会、この7つの機関は何だと思いますか。この7つの機関によって知的財産人材育成推進協議会というものが形成されております。この協議会はこの専門調査会ができたときに、その中の人財育成1.0と我々は呼んでいますけれども、そのプランの目玉としてつくられたものです。今日委員でいらっしゃいます荒井寿光先生がそのころ事務局長として大変進めてくださってこの協議会ができております。
 この協議会がどういう活動をしたのか、それを知財人財育成プランに向けてどういうふうに発展させたら良いかということについてとりまとめをしてありますので、それを伺った上で議論を進めたいと思っています。
 これが今日の全体内容なんですけれども、ただ、残念なことに、今日、青山委員、高倉委員から御欠席の御連絡をいただいております。上條委員は御出席ですけれども、少し遅れるという御連絡をいただいています。
 前回に引き続いて、関係省庁として特許庁総務部から後谷企画調査課長、中村知的財産活用企画調整官がオブザーバーとして御出席されております。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、開会に当たりまして、まず近藤局長の方からごあいさつをいただきたいと思います。お願いします。

○近藤局長
 ありがとうございます。本日もお忙しい中でお集まりいただきまして、ありがとうございます。このワーキンググループ、2回目でありますが、今日からいよいよ本格的な議論ということでございます。
 ちょうど今月の2日、もうかれこれ1か月になりますけれども、新しく野田内閣が発足いたしまして、今度のラインは総理がいて、古川大臣、石田副大臣、大串大臣政務官というラインでございます。古川大臣は鳩山内閣のときに副大臣で知的財産の担当をしておられましたし、民主党がまだ野党の時代に「はばたけ知的冒険者たち」という、知財がこれから生きる道だという論文を書いたときの有力なメンバーでもありますので、御理解をいただけていると思っております。
 今度の内閣でも同じく知財問題をしっかりと進めていかなければいけないのですが、最近では大分いろいろ大きな出来事がございました。例えばアメリカでは、まさについに先発明主義をやめて先願主義に切り替わるといった事態が起こっております。これは先ほどもちょうど妹尾先生ともお話をしていたんですが、アメリカがもう変えざるを得なくなった、同時にアメリカは変えてもいけるというきっと何かができて動き始めたんだろうと思うんです。そういうところに我々は今後どう対応していくのか。これは本当に考えていかなければいけない時代になってきたんだと思います。
 先日の新聞でも、例えばアメリカのIT企業が特許の売買を活発にやっているということで、アップル、マイクロソフトなどの連合がノーテルを45億ドルで買った、グーグルはモトローラの特許取得を目的に125億ドルで買ったという記事も出ております。いよいよ知財戦争が起こってきたなという気がしているわけであります。
 そういう中で私どもは、この知財の人財、これは人は宝だという意味で人財という字を書かせていただいておりますが、人財関係を本当に進めなければいけないし、人財の育成というのはもう時間がかかるものですから、1日、2日でできるわけではありません。時間をかけてじっくりやるためにも早くスタートしたいということで議論をさせていただきたいと思うわけであります。
 5年前に知的財産人材育成総合戦略というのを当時の荒井事務局長、妹尾先生も入っていただいてまとめていただきました。これは非常に重要な戦略をつくっていただいたわけであります。そのときのことも我々は十分念頭に置いて、何ができたのか、何ができなかったのか、今、何を更にしなければいけないのかといったことをしっかりと頭を整理して、10年後、20年後にあのときこの戦略をつくってよかったなと思えるようなものを進めていきたいと思っているわけであります。
 いつも無理をお願いしている事務局長で皆さんに改めておわびを申し上げますが、年内ぐらいと思っておりまして、実は年内はあと少ししかないんですね。12月の頭ぐらいにはそこそこでき上がらないと現実問題は厳しい。そう思うと、もう9月の最後でありますから、10、11月とほぼ2か月ぐらいで片づけなければいけないという状況であります。
 皆さんには今までも御迷惑をかけていますけれども、更に御迷惑をかけますが、集中的に我々も力を込めて短期決戦でやりたいと思いますので、是非御指導をよろしくお願いしたいと、いつもお願いばかりで恐縮でございますが、改めてお願いをする次第でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。ありがとうございました。

○妹尾座長
 ありがとうございます。無理をお願いされ慣れるというのは危険ですね(笑)。かなり慣れてきた気もしますが、とはいえどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速始めたいと思います。まずは事務局の方から資料の確認、その他についてよろしくお願いします。
 髙原参事官の方からお願いします。

○髙原参事官
 それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第の下に資料を並べてございますが、メインテーブルのみの資料もございます。
 まず資料1、佐々木委員から提出していただきました資料です。
 資料2は八島委員からの御提出資料ですが、この資料1、2は恐縮ながら本ワーキンググループメンバー委員限りということで、メインテーブルのみに置かせていただいております。
 資料3は「『知財人財育成プラン』に向けた検討課題について(案)」というペーパーでございます。
 資料4は「今後の進め方について」。スケジュールをまとめたペーパーでございます。
 あと参考資料が2つございまして、参考資料1が「知財人財育成の取組の概要」ということで、後ほど人材育成推進協議会の取組の御説明のときにこちらを使用していただくということでございます。
 参考資料2は前回会合における主な意見をまとめたものでございます。
 最後に、第1回会合に資料としてお出しした資料6の抜粋として、「知財人財育成に関する現状」というペーパーをメインテーブルに置かせていただいております。
 資料の方、不足等ございませんでしょうか。

○妹尾座長
 よろしゅうございますか。もし何かあったらまた事務局に言っていただきたいと思います。

○髙原参事官
 それでは、資料4のスケジュールについて確認させていただきたいと思います。
 「今後の進め方について」というペーパーでございますが、今後、10月~12月にかけてワーキンググループを開催させていただきますが、以前に委員の皆様には10月から月1回のペースでと申し上げておりまして、そのうち11月については2つの候補日があるということでお知らせしておりましたけれども、今般、11月につきましては21日ということで決めさせていただいております。12月につきましては、7日と22日の2回、最後の第6回で取りまとめとさせていただきたいと考えております。年末遅い時期まで御迷惑をおかけいたしますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。ここに書かれているようなスケジュールで、先ほど局長もおっしゃられたとおり短期決戦になりますので、皆さんくれぐれも健康には御留意をいただきたいと思います。それはお前のことだろうと言われそうですけれども(笑)、お互いに気をつけましょう。
 それでは、早速、企業セクターにおける知財人財の育成・確保に関して、企業御出身の3名の委員の方からお話を伺いたいと思います。まず順番に佐々木委員からお願いしたいと思うんですが、よろしくお願いいたします。

○佐々木委員
 それでは、資料に基づきまして簡単に御報告させていただきます。ここに御参集の先生方には釈迦に説法的なことではありますけれども、大きく環境の変化が起きる中でどういう人財育成をしているか、更に今何を目指しているかということも含めて説明させていただきます。
 まず2/9をごらんください。これはいろいろなセクターに特徴があるということを先ほど座長の方からもおっしゃいましたけれども、我々のところは御承知のように商品と特許の関連というのは極めて特殊でありまして、1台の車が1件の特許、2件の特許で保護されているわけではなくて、極めて多くの特許が含まれている。
 それと2番目で、裾野は極めて広いんですが、狭い業界であると認識しております。つまり、自動車メーカーは比較的少なくて新規参入が少ない。これはまさにこれまででありますけれども、比較的高い参入障壁があったと認識しています。
 3番目は、今いろんなところでアライアンスが盛んに行われている根本原因でありますけれども、特に環境領域での研究開発は極めて激化しているという状況であります。
 こんなことを背景に、3/9のスライドです。知的財産をめぐる状況ということで、これはトヨタ自動車と真ん中に書かせていただきましたが、今までは一重円のところ、同心円で一番近いところをターゲットに競争を意識していればよかったんですが、それがその次のメガサプライヤに及び、更には右下のエネルギー関係に及び、左下のインフラに及び、更には電池メーカー、半導体メーカー、一番左上は戦う国も随分変わってきているということで認識しておりまして、こういうことを図式化したものであります。
 4/9のスライドをごらんください。これは今申し上げたようなことを文字にしまして、結局どういうことが必要かとひも解いてくると、最後は「5.変革に向けた課題」でありますが、やはり守備範囲あるいは役割の拡充ということで、これを求めた人を育てなければいけないという状況になっているということであります。
 5/9でありますが、関わりの拡大ということで、これはごちゃごちゃした図になっておりますけれども、我々が実際に使っているものでありまして、左下の知財と書いてあるところに行けば行くほど、非常にプリミティブな知財の仕事と認識しております。エッセンシャルな知財の仕事ということになっております。
 つまり、特許調査あるいは特許出願というふうにだんだん技術軸では横軸に発展していく。全体の出願戦略やポートフォリオマネジメントに発展していくという状況でありまして、我々はこれを開発知財と呼んでいます。更に知財部の持つ機能としましては、今度上の方に伸びていくんですが、商標とかコピー車対応、模倣対策ということで伸びていくと、最後はブランドマネジメントということで、そこまで拡大していく。右上の方に伸びていったのが事業戦略、知的資産マネジメントということで、これはノウハウ、営業秘密等々を含む、あるいはアライアンス、M&Aの提案企画というところまでを守備範囲にだんだん右肩の方に上がっていかなければならないということで今動いているということであります。実際、ここには点々で実態がどこですというのは内部では使っていますけれども、今日は恥ずかしいので点々は外してあります。
 6/9のスライドです。こういう中で守備範囲の拡大と役割の高度化ということで、これはいろんなところで同じように言われていることでありますけれども、知財と右の円の技術との融合、更に経営ということで三位一体活動と呼ばれているところもたくさんあるようですが、こういうところで我々は知財の専門の人財、今まで比較的そこに傾注していたところを中ではA人材と呼んでいまして、技術、典型的にはMOT等々を扱える人財になりますが、これをB人材、アライアンスや経営企画等々に関わる人財をC人材と呼んで、ABCと位置づけておりまして、このABCをどういう形で育てているかというのが7/9ページであります。
 一番左が基礎教育、これは知財を扱う者の本当に必須の要件でありまして、そこから右にA人材、これは知的資産、つまり知的財産を扱う平たく言えば特許系のプロで、出願戦略、ポートフォリオマネジメント、こういう中で我々の方は米、ヨーロッパ、中国の方に今海外研修、来年からインドにも出しますけれども、海外研修ということで全く仕事をせずに勉強だけしていろという研修制度で人を出しています。
 B人材はMOTのプロということで、これはどうしても中では育てていかないものですから、企画開発部署でローテ人財というのがありまして、3年ぐらいで知的財産部と、例えばエンジンの開発部署あるいは電子技術の開発部署というところとローテーションするわけですが、このローテーション人財を通して技術の比較とかMOTに関係した知識あるいはスキルを習得する。開発から来た人間は、開発スキルを持って知財のスキルを習得することによってそういう人財に育てるということをやっております。
 一番上のC人材がなかなか難しいところでありますけれども、ここは会社の中でも色合いの違った法務部あるいは経企、弊社では総合企画と呼んでいますが、いわゆるM&Aやいろいろな新しい仕掛けを考えるところとローテーションをするとか、外の係争に積極的に関わらせるというような格好でプログラムができておりまして、この中でこういう設計図を基に人を育てているという形になっています。
 ここまでは一番ベーシックなところなんですが、8/9のページで最近取り組んでいることを紹介します。これは②から行った方がいいかもしれません。②は実は私は強く知財は情報戦だということで、これを定着させるべく動いています。Competitive Intelligencesと書いてありますけれども、洞察力や段取力、行動力の育成を目指すということで、してある仕掛けは右下の四角でありますように、部内にCompetitive Intelligencesをする組織を兼務も含めまして立ち上げてあります。ここで知財情報だけではなく一般情報を基に、他者がどういうところが強いのか、あるいは我々にどういうところに弱みがあるのかというようなことを解析して非常に上位の会議体で報告するというルートをつくってあります。
 上位の会議体から、そこまでわかるのだったらこれもわからないかというルーチンが回って、いわゆるミッションインポッシブルみたいなミッションが来て、それで組織を育てるという仕掛けをしてあるのですが、残念ながら上位会議体の方はまだそこまで情報がセンシティブではなくて、報告を聞いて関心をしてくれたりいろいろするんですが、それだったらここまでやってくれというのはなかなかまだ来ていない。これがうまくは回っていないんですが、そういう仕掛けで回したいと思っています。
 その一番の根源は、左にイージス艦的機能とありますけれども、先ほど申し上げましたように、自動車産業は非常に設備産業でもあって、今までは自然に参入障壁ができていたわけです。特許も参入障壁の1つであったわけですけれども、御承知のように簡単にEVができるとかそういう世界になると、どこから何が入ってくるかわからない。是非我々が不意打ちを食らわないような機能を知財を中心に持ちたいという発想で実はこの組織をつくったということでありました。
 もう一つしているのが、①にありますような自己改革し続ける組織。これも我々のところはいろいろ創意工夫とか改善活動だと言われていますけれども、あるいはナレッジ、イノベーション活動とか、いろいろ世間で言われている活動があるんですけれども、私は多分それと同じようなものを目指していると申し上げると一番ぴったりかもしれません。こういうCompetitive Intelligencesを中心にして、自己改革し続ける組織というのはどういう組織かと、つまり、毎年毎年自己改革のいろんな提案をさせるんですが、毎回焼き直しが出てきます。
 例えば簡単な例として、出願までの日程をいかに短縮させるかというのは、毎年いろんなところが発表してくれてこういう成果が出ましたと言われるんですが、毎年同じ課題で出てくる、全く進んでいない。そんな改革ではなくて、本当に真剣勝負で改革していく自己スパイラルアップしていく組織を定着させようということでやっています。
 この2つをどう組み合わせていくかというと、9/9ですが、先ほど申し上げたCompetitive Intelligencesをできる組織、ここをやるメンバーというのを緩やかに極めて選ばれた、あの人だからそこに行けるんだねという組織を見えるような格好でつくろうと思っています。
 これは会社のマネージャーとしては一部まずい部分を含んでいるのかもしれませんが、あの人たちはいいねと、あの人たちはエリートだねと言われるところをあえてつくろうとしています。つまり、それに向かって自己改革をする力というのが徹底的な人財育成のパワーになると思っていて、そうでないと大体与えられたものを口を開けて待っているというカルチャーが根付いてしまっているので、こういう人財になるにはどうしたらいいですか、あるいはこういう人財になるためにこういうツールをそろえてください、あるいはこういう人財になるために部長がやっているローテーションの期間は短すぎます、長すぎますというマネジメントへの批判も含めて、ここを目指したいというパッションを何とかつくれないかということでやっています。
 ここが今できていないなりに目指しているところなんですが、これをここの人財育成に当てると、例えば今はどうかわかりませんが、松下政経塾みたいなものに行きたいと、総理の椅子に座りたいというものがあって、やはりものはうまく動くようになっているのではないかなと考えると、例えばいろんな知財権があり、いろんな知財関係の機関があります。これにもう少し国家の競争力を担っているという機能を付与できて、それが経産省さんなのかもしれません。そこは私もわからずに申し上げているんですが、そういうものがあって、そこを学生なりがなぜ知財を勉強するのか。いずれはそこで活躍したいんだと、いずれはあそこのメンバーになりたいんだというものをつくるということも1つの単純な方策ではないかなと思います。
 ただ、企業でターゲットを絞ってCompetitive Intelligencesをやっても大分難しいので、国家レベルでしかも知財をベースにやろうとなると、かなりハードルは高いかもしれませんけれども、ちらちら見えるような組織があって、そこを是非とも目指したい、そのためにはどういうことを身につけたいというように自らが動けるような、知財を志す人間が自らモチベーションを持って動けるような仕掛けができないかなということで今日はこんな話をさせていただきました。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございました。今のお話は、トヨタさんの置かれている状況からどういう知財人財が必要かということだったんですが、せっかくですのでここまでのところで佐々木委員に何か御質問があるとかコメントがあるとかというのがあれば、今うかがってしまいましょうか。その方が後で思い出すよりよろしいかと。後で総合的な討議はしますけれども、いかがでしょうか。何かございますか。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 非常に興味深くお伺いしたんですが、Competitive Intelligencesをもう少しブレークダウンしてこういうものだとイメージできるように補足説明していただけますか。

○佐々木委員
 今まで出ているアウトプットとしては、とある電子媒体系のものをグループ企業で内製したい等々というのがいろんなところの思い込みで進んでいるのを世界の知財を基にした力学を分析することによって、もうそんなものは絶対戦いようがないからということで、それをひっこめてもらう一助にしたりとか、これから電気自動車あるいはプラグインハイブリット等のインフラ絡みの事業について何が起こるかということを知財を基に分析していく途中で、どうもこの小さな会社なんですが、ここの会社だけはどうも避けて通れないということで、そこにいち早く出資をするような動きにつなげさせてもらったりとか、そういうことで動いてきているというところであります。
 アライアンスまでは行きませんけれども、出資等々についていち早く情報を挙げられたのは、目に見える成果だったかなと思っています。

○荒井委員
 ありがとうございます。

○妹尾座長
 ほかにいかがでしょうか。全然別な観点から質問させていただきたいんですが、今回3名の委員の方にお願いしているんですけれども、それぞれ業界が違いますね。業界のタイプが違うということがあるので、その意味で質問させていただくということで御理解いただきたいんです。
 自動車業界は10年後どうなんだろうという話があります。自動車業界は基本的に機械だ。これが特にすり合わせの機械が電気自動車化する次世代自動車化になるとモジュラーの組み合わせになりますね。今までは、コアのエンジンと全体の設計をしておいて、残りは系列の縦の垂直統合でやってくれば良かったわけですよね。だから共同開発をしても共同出願その他についてある程度の知財の担保がある。しかし、これが変わってきてしまう。
 従来、機械はアクチュエーターだっただけのものにパワーが入り、センサーが入ってきて、コンピューティングがある。すなわち、1,000万ステップ以上のコンピュータと同じになってきたんだということです。すると、従来ともう商品アーキテクチャからビジネスモデルまで全部変わってしまうでしょう。だから、知財マネジメントも全く変わるではないですかということがありますね。標準の取り方も全く違う。
 もう一つ大きいのはスタンドアローンの製品だったのが、これからエネルギーネットワークと情報ネットワークと全部結び付かれるからネットワーク製品になります。そうすると、主導権を握るレイヤーが変わってくるではないでしょうか。しかもその中で従来とは違うIT系の考え方だと、プログラムの著作権の考え方とかいろんなものが要るのではないでしょうか。そうすると、求められている知財分野の知財の感覚は従来のプロパテントの感覚だったら全くやっていけないという話になりますね。
 そういう観点から見ると、人財の育成というのはどういうふうに考えたらいいのでしょうか。まさにそこのところが、こういう日本が従来すり合わせとかで強かったところが直面している課題であり、また、そのビジネスモデルと商品アーキテクチャの問題であるならば、あるいは産業生態系の話でもあるわけですね。それが根底から覆ってしまうという状況が今あらゆる分野に出ている。だから、トヨタさんなどがどういうふうに変えていくのか、知財マネジメントをどういうふうに変えられるのか、というのは皆さんものすごく参考にしたがっているわけです。その観点から言うと、重い話かもしれませんが、質問させていただきたいと思います。

○佐々木委員
 今、恥ずかしながらそれに対しての明確な組織立った手を打てているとは思っていません。ただ、先生おっしゃったようなことを基に、例えば中で幾つか回しているプロジェクトとしては、我々何人いるよねと、年間に何億、何十億、何百億使っているよねと。これは知財部です。これだけの人がいてこれだけのお金があったら何をすればいいか。知財を外国出願はこれだけしましょうとか、日本出願はこれだけしましょうではなくて、どうすれば一番付加価値を付けられるかというのを、例えば知財は出さない、全部オープンにしてしまうということもいいので、タブーなしで中で議論しろということで、プロジェクトで議論させています。

○妹尾座長
 なるほど。つまりこういうふうに理解して良いですか。今までは自動車産業あるいは完成品組み立て産業みたいなビジネスモデルがあったけれども、よくよく見るといろんなものが組み合わさってくる。言わばICT系の一製品超多数技術、携帯みたいにこの中に1万個特許が入っているねという世界も扱わなければいけないし、その一方で、いやいやここの素材でいけば医薬品と同じような話ではないですかという一製品少数特許の話もある。また、こうやってくるとコンピュータアーキテクチャだからプログラム著作権の話であって、特許とは関係ないではないかみたいなものもある。さらに、意匠でどうするのかといったら、最近はテクノロジーとデザインの融合領域もあるのではないか、となります。すなわち、ありとあらゆる領域が全部詰め込まれてくるようになるわけです。そうすると、従来イメージで出願して特許で守ればいいという知財部員の発想だと全くできなくなる。そこで今の佐々木さんのようなやり方で少し頭をかき回させていると考えていいんですか。

○佐々木委員
 そういう全く根本的な仕掛けと、もう少し中間の仕掛けで、依然としてシーズありきなんですが、一番先端のシーズが出たときに、これはいろんな部署に声をかけてもなかなか乗ってこないので、知財部の中でこのシーズを今そこの研究部がこれをやろうとしているもの以外に使えないかをまず全部アイデアを出して、どんなビジネスができるかというのを考えろとか、先ほど申し上げたのは一番根本のがらぽんのプロジェクトだとすると、ちょっとミドル級のプロジェクトとを違う人財をあてがって検討させて、柔らか頭のトレーニングとその中から我々はもう少しこういう機能を持っていくんだよねというのが出てくればいいなという両方をねらってやらせています。今はそんなところでぐちゃぐちゃまだ本当に混沌としているところです。

○妹尾座長
 そうしますと、資料の7/9のところに育成イメージがあるんですが、3、5、7訓練とあって基礎習得からコアを取れと言っていらっしゃいます。しかし、ぶしつけな質問で怒られるかもしれないけれども、これで間に合いますか。

○佐々木委員
 これが一番今私のところに残っている最新のもので持ってきましたが、先ほどのローテーションとか、どこの部署とのローテーションとか海外研修とかというのはきちっとやっていますけれども、それ以外のこの線あるいはこの立ち上がりの角度、もうこれもぐちゃぐちゃです。

○妹尾座長
 例えばこういうときにこういうことは考えられますか。あらゆる業種のビジネスモデルと知財マネジメントのいろんなタイプがトヨタさんの中にダっと一気に流れ込んでくる。そこで、逆に知財部員を機能性素材のそれこそ八島さんのところに1年修行に出すとか、あるいは全然違うネットワーク系だから、澤井さんのところに1年出すとか、そういう業種ごとに出向研修みたいなのはあり得ませんか。もし受け入れてくれるところがあったらやっても良いぞ、みたいな感じはありませんか。

○佐々木委員
 それはあり得ると思います。今、我々のところはどうなっているかというと、例えばデンソーというような会社からも学ばせてとか、受け入れる方は大分やっているんですけれども、他社さんとやろうとすると、我々のところですと当然グループ外の会社さんになるので、今まではそのハードルは余り超えていないんですが、これは十分考えられると思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。イノベーション論をやっている人間から見ると、どうも産業内の知識のやりとりはインプルーブメント以上を引き出さないですね。今、起こっているイノベーションというのは全部産業間の情報伝達のやりとりで出てくるから、そんなようなことで知財マネジメントのウイングが広がると面白いかもしれないですね。
 ありがとうございます。ぶしつけな質問をさせていただきましたけれども、まさに日本の経済を引っ張っている自動車業界ですから、そこがどういうふうに今後考えていらっしゃるかというのであえて伺わせていただきました。ありがとうございます。
 それでは、続いて、澤井委員にお願いしたいと思います。澤井委員の場合は勿論、NTTということでネットワーク系からということが多分に大きいと思います。澤井委員からの資料はないので口頭ということでよろしいでしょうか。

○澤井委員
 済みません。資料なしでいいということだったので口頭でさせて頂きます。適当に口からでまかせにならないようにいきたいと思います。

○妹尾座長
 でまかしはいけませんよ(笑)。

○澤井委員
 私は、経団連としてお声をかけていただのですけれども、経団連としてまとまった見解があるわけでもありませんし、経団連の中で特別に知財に限って人材育成論を議論しているわけでもないので、今日お話しさせていただくのは、NTTで知財管理をやってきた経験と、東京理科大の知財職専門大学院で6年近く教えてきた経験に基づいてお話をさせていただきます。
 人財育成論について、最初の前提として幾つかの印象についてまず簡単にお話します。これまで人材育成に関しては、いろんな施策が打たれていて、例えばポスドク1万人計画とか、ロースクール構想とか弁理士増員計画とかがあります。しかし、それらのいろんな人財の育成のため施策が、果たしてうまくいっているのかなという疑問があります。
 私が1回びっくりしたのは、知財立国を議論した初期の会議で、知財人財の育成がテーマになったときに、「ポスドクで行き場がない人材を知的財産人財として活用すればいいだろう」という趣旨のことを言われた方がいて、愕然としたことがあります。
 知財に関しても、このワーキンググループのほかに国際標準の人財育成とか、知財に関わる周辺のところがいっぱいあって、そこでそれぞれまた人財育成の話を多分されているのではないかと思うのですが、そういうところとのクロスオーバーをどうするのかなというの感想もあります。
 今回は最初の人財育成ワーキンググループの会合で、事業を起点としてそこから逆に見ていくよという話があり、総論としては私も非常にいいなというお話はしました。今日は、我々企業セクターの立場での報告ということなんですが、企業あり、大学あり、役所あり、特許事務所あり、それぞれ本当に質の違うセクターの人材育成の議論を一緒くたにできるのかという疑問も正直あります。たとえば、事業を起点にして見ての人材育成を考えるとしたときでも、事業についての見方やアプローチの仕方が、セクターによって相当違うのではないかなと感じています。それをどういうふうにしてまとめ上げていくのかという視点は、是非座長始め、とりまとめのときに考えていただきたいと思います。
 もう一点、こういう議論のときに我々企業サイドで感じるのは、人財を議論していただくのはいいんですけれども、人財はコストです。そこの意識が結構抜けているところがあると感じています。多分先ほどうまく行っていないと感じている例などでも、企業との関わり合いで言うと、「企業には人財を必要とする仕事があるし、これだけの人財が育てば採用されるはずだ」という思い込みが大きすぎた感じがあるのではないかと思いました。 経営的には人財は確かに財産ですけれども、反面、もうそれ自体が固定的なコストになりますから、企業の個々の活動の実態と離れたところで企業はこうあるはずだという一般的な観念論で知財の人財の議論をしても、本当にそれが即座に企業が採用するようなところにつながるのかどうかというのは結構難しい課題だなと感じています。
 そうは言ってもしようがなくて、では企業の人財の育成は実際どうなっているのかなという感じで、一言でいうと、今日、多分佐々木さんと八島さんのお話を聞いてもおわかりになると思いますけれども、採用、育成の考え方は業種、業態、企業風土で相当さまざまなので、ひとくくりでは語れないと思っています。
 ただ、総じて言えることは、よい企業であればとても「人づくり」を大切にして、そのための環境整備やビジネスの場で機会を与えることで、本人がどう自ら育っていってくれるようにということについては、常にいろんな工夫をしているのではないかと思います。
 多分多くの企業では、大学とか教育機関で獲得した知識とかスキルよりも、将来伸びる基本的な資質の高い人財を採用して、その後、実際の仕事を通じて育成していっていると思います。その際に、1つの職場だけでは成長に限界があるので、先ほどの佐々木さんの話もありましたけれども人事ローテーションを上手に組み合わせながら、その人財に合った育成を心がけているというのが企業の中の実際だと思います。
 例えば、企業の知的財産人財を考えても、最初から知的財産部門に配置してずっとそこで育てていくのがいいのか、それともほかの部署の人財を途中から異動で受け入れて育成するのがいいのかについても、企業によって相当違うと思います。
 最初から知的財産部門のプロパーで採用していろんなことを経験させながら育てていくというのもありますし、R&Dをある程度経験させて、その後、知財部門にローテーションをかけて、必要であれば知的財産部門に残していくといったように、いろんなやり方をしていると思います。そこら辺が先ほどの佐々木さんの図にもあったようにいろんなフェーズに分けてローテーションをかけている意図でもあると思います。
 私の個人的な感覚では、現場の経験が企業の場合にはとても大事です。特に知的財産の仕事は優れて創造性を要求されるので、1回は研究開発の現場を経験させるのがいいのではないかと思っています。だから、知的財産部門で最初にプロパーで採用しても1回研究開発の現場に行けるのだったら行かせてあげたいと思います。研究開発部門の要員として会社が採用した人間が、まず研究開発を1サイクル5年とか経験し、技術の本当の現場のしんどさを知った上で人事ローテーションで知財部に来て、そこに来たときの本人の興味や適正を見ながら、知的財産の専門家として育成していくプロセスを取っていく方が総じて効率がいいのではないかなというのが私の感じです。
 ただ、R&Dを経験した人間が知財部に適正があるとは限らないので、それは来た後の仕事ぶりや本人の興味、関心事を見ながらスクリーニングをしていくいのがいいでしょう。私のところの場合も、最初に研究開発で10年前後ぐらい関わった人間がローテーションで来て、いい資質を持つ人には、「お前の研究者人生はもう捨てろ!、研究者としての能力よりも知的財産部門で仕事をやる適性の方が勝っているから、こちらの知財部に来い」といった風に何度か口説きました。
 そんなときに必要な資質として個人的に見ているのは、まずバックグラウンドとして社会的な常識がどの程度あるのかどうか。その上で、自己変革と佐々木さんの話にもありましたけれども、好奇心が旺盛か否か。創造性に富んでいるか否か。研究者だからといって創造性に富んでいるとは限りませんから、そういうところを見る。その上でコミュニケーションが上手にできるかどうか。
 そこら辺のことを見てやって、あと仕事をやらしたときにもう一つ見ている点があります。知財の仕事は縁の下の力持ちでありバックヤードの仕事ですから、社内のクライアントである研究開発者から提案される発明の支援をしたり、事業でのいろんな知財にまつわるトラブルシュートあるいはソリューションを提供して、社内のクライアントの仕事がうまく回ったときに、クライアントの喜ぶ姿を見て、一歩下がったところでこれは面白いなと感じたり、あるいはそこに喜びを感じてくれるかどうかというのを見ています。単に知財部門に行きたいという人間を採用して大体失敗するケースは、一歩下がって仕事を楽しむ事ができない人材であることが多いのではないかと思っています。
 今回の人財育成の視点である「事業を起点として見ていく」というのに絡むんですけれども、今のような資質があった上で、事業を見据えてイノベーションの源泉である発明にまでさかのぼって、全体のプロセスをイメージして、そのプロセスに実質的に関与できる人財が欲しいといつも感じて、そのためには次の4つが必要なのではないかと思っています。
 1番目は、直面する問題の課題とその本質を抽出する能力。2番目は、問題解決のための具体的ソリューションを創造的に提案する能力。3番目は、全体のプロセスのプロジェクトマネジメントをする能力。4番目は、経営の数字を理解できて、それで経営陣と会話できる能力。このぐらいの4つが欲しいなと。ただ、これは私自身も含めてとてもこんなスーパーマンではないので、その中の幾つかでも仕事を通じて身につかせるようなことをやって、それぞれの特性のあるところで伸ばしていくのが大事かと感じています。
 そして、先ほどの佐々木さんの図のA人材、B人材、C人材というものとつながると思うんですけれども、最近の感じではプロジェクトマネジメントがキーになると思います。この前に、「発明は個人でイノベーションは組織だ」と言いましたけれども、イノベーションを成し遂げるまで関わり合う色々な組織に対して、プロジェクトのファンクションを考えながら働きかけるような人が育ってくれるといいなと感じて見ています。
 企業とは全く異なる知的財産専門職大学院で教えていて感じることが幾つかありまして、その話を少し致します。最近の傾向は実に幅広い人財が知的財産に興味を持って大学院に集まって来ます。ただ、それこそ荒井さんが旗を振っていただいた知財立国の最初のころは相当いろんな関心が高かったんですけれども、現在は正直言って関心の度合いが相対的に最初のころに比べると低下しているなという事を感じているところです。
 その中で教える際に、基本的に一番大事なのは考える力です。企業にとっても、考える力のある人財が欲しいわけですから、単なる知識を教えるだけでは不十分で、その知識を生かす知恵をどう植え付けるかが大切で、その知恵を出すための基本となる考える力がすごく大事だなというのは常々感じています。
 考える力をどう身につけさせるかというのは、本当に難しいんですけれども、それがうまくいったときには面白いなと感じるところがあります。知的財産は先ほどのプロジェクトマネジメントにも関係しますが、多面的に考える必要があるので、考える力を付けさせようとすると、正直1人で教えるというのは限界があります。チームで教えるとか、そのための教育手法とか教材というのはもっと工夫する余地があるのではないかなと思います。
 教えていて感じるのは、受験勉強に慣れ切った若い者とか、所定の決まった仕事のやり方しかやらないで満足している連中が入ってきたときには、自分の頭で考えることというのを教えるのが相当大変です。その際のポイントは、いかに本人の興味あるものに関連付けて知的財産的なものを考えさせることができるかにかかっているのではないかなという感じはしています。
 工夫の例ですけれども、東京理科大学と日本弁理士会で一緒に共同研究講座というのを5年間やりました。そのときには発明そのものを創造するプロセスと、その発明に絡むビジネスモデルを創出するという2つの創造過程を模擬的に経験させました。その模擬的な創造過程で出てきたものに応じて講義を組み立てていきました。4人の講師陣が総がかりで毎週宿題を出しながらその結果を見ながら授業を組み立てていくというようなことをやって、一部その成果は弁理士会のe-Learningのコンテンツの中にもアップされています。知的財産人材の育成に当たっては、このようにいろんな教え方、工夫の余地がまだまだあるのだろうなと思っています。
 そういうものとは別に知財プロジェクト研究という論文指導があって、そこでは例えば、医療行為特許といったものをどう扱ったら医療の持つ倫理性と特許の持つ産業発展性を両立させて、患者のためになることができるのかといった議論をさせたりしています。そして 医療制度と特許制度という質的に異なるものの本質を考えさせながら、医療的なアプローチと特許的なアプローチという複眼の目で政策的な提言をまとめさせるようなことをやっています。このような業際的な分野での研究はこれから重要になると思われますけれども、教え方や教育体制を含めてまだまだ教育の現場でも工夫の余地があるのではないかと思っています。
 いずれにしろ、知財専門職大学院というのが単なる知識付与だけではなくて、それに加えていかに具体的に考えさせることができるかがキーポイントになるだろうなと思っています。 最後に、企業サイドの知的財産管理をする立場で知的財産人材を長く見てきた経験と、知的財産専門職大学院で教える難しさを経験した立場から、人財育成のための政策のヒントになるやり方について1つのアイデアをお話したいと思います。 知財人財の育成に関しては、もう既存にいろんな教育機関があるので、それを上手に使うこために、それらを競い合わせるような支援策を考えるという事です。 知財人財の育成に関係する教育機関においては、先ほどお話ししたような教育手法とか教材においてまだまだ工夫を凝らす余地がたくさんあるはずですから、そのような工夫に対する支援を国の施策としてやるのがよいと思います。そうすると、それぞれの教育機関が、どのセクター、要するに彼らにとってのユーザー、をどう想定するかによって取組みが変わってきます。企業人をターゲットとするところは企業人に合わせた工夫、あるいは大学の知財関連室の人財を育てたいというところはそれなりの工夫もあるでしょう。また、弁理士試験だけに通ることを考える教育機関もあるかもしれないし、むしろ試験の合格した後の弁理士の更なるレベルアップに照準を当てた教育機関の工夫も出てくるかもしれない。更には、法律の体系や知識を重点的に教える教育機関の工夫があるかもしれないし、ビジネススクール的な要素を色濃く取り込んだ知的財産を教える教育機関の工夫があるかもしれない。いずれにしても、そのような特色を備えた多様な教育機関が教育方法とか教材について工夫することに対して支援策を打つことで、その特色をユーザーが選択できるようにすることがいいかと思います。
 それと同時に、企業の方へのインセンティブ策を打つといいと思います。工夫を凝らす教育機関を使うユーザーサイドである企業に何かメリットがあるような施策を打ってもらえればいいなと思います。先ほど言ったように、教育機関が競っていろんなことを考えたときに、そこに人材育成の一環として人を派遣しようとする企業には幾つかの負担が発生します。すなわち、企業には、金銭的な負担と、時間的な負担と、不在のときに仕事を肩代わりする負担があるので、例えばその中の金銭的な負担について、実績に応じて補填するような支援策を取るのも一案ではないかと考えています。
 私は事実を確認していないので正確ではない情報なのですけれども、フルブライトの留学生を企業が派遣したときには、金銭的な補助をその企業に対して行うという支援策があるやに聞いたことがあります。 このように教育機関サイドと企業サイドの両方に向けて国の支援策を考えていただくのも意味あることだと思います。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございました。時間が押していて急がせて済みません。ほかの方々から澤井委員に今の話の中で御質問はございませんか。よろしいですか。
 簡単に手短に教えてほしいんですけれども、1つはNTTとしてのお立場で、もう一つは理科大の教授としてのお立場で。NTTさんはビジネスモデルが完全に変わりますね。だから、従来のネットワークキャリアの話ではなくなってくる。もうここまで来るとデバイスとサービスとコンテンツの3分野が明確に合従連衡を始めていて、従来はNTTさんなどが1対1対1を全部統合していた話が、n対n対nになるような話でしょう。だから、今まではデバイスについてもNTTさんが全部4社につくらせていれば良いという世界から、いろんなものが、例えばテレビの受像機からデジタルサイネージからフォトフレームまで全部一緒くたになってしまう世界に入ってきた。
 サービスについても、全然サービスプロバイダーが全く違う形になってきた。コンテンツについても何でもありだよねとなる。そうすると、ビジネスの在り方が全然違うから当然のことながら知財マネジメントが全く変わってきますね。そういう激乱期のときに知財部員は、先ほど言われた直面する課題とか問題解決とかプロジェクトマネジメントといった抽象的な話ではなくなる。従来の出願人財ではないですね。そうすると、どんなようなところにウェートがかかってくるんですか。

○澤井委員
 どんなようなところというのは、今、言ったようなデバイスとかコンテンツとかそういう意味での話ですか。

○妹尾座長
 従来、出願をしていれば良いよねとか、関係会社の特許との管理をしていれば良いよねという人たちだったと思うんだけれども、これからNTT研究所で出てくるものもどうにかしなければいけないしとか、あるいはこちらのサービスレイヤーでコンテンツレイヤーと触れ合うから、そいつの著作権から何から見なければいけないねみたいになってくる。そうすると、従来の出願だとか管理だけの人が知財部員という話ではなくなるのではないか。それがはたから見た推測なんですけれども、そういうところはどうなんでしょうか。

○澤井委員
 それは組織をどうするかというのに関わっています。NTTの場合は主たるR&D部隊を持っているのはNTT持株会社で、その中に知財センタがあります。そのほかにサービスを提供しているNTTコミュニケーションズの中にも知財部門があり、ビジネスに近いところに知財セクションがあるので、そこが実際のビジネスに応じていろんなことを考えます。ビジネスを営む会社と持株会社の間で知的財産の人材の人事ローテーションをかけています。
 ですから、先ほどもお話があったように、企業はビジネスをやっている実際のところをどうやって見ているか、経験させるかということで、今、妹尾さんがおっしゃったようないろんな問題点を把握して対処しています。その際に、必要であればコンテンツの著作権の話とか、通信と放送の境界領域のところで今法制度がどう動いているかというような事を、知財部員だけではなくて、そういうことを所掌している人も集めた会議体などで議論しています。

○妹尾座長
 ぶしつけな質問で恐縮なんですけれども、それはNTTグループ内でのローテーションだけで大丈夫ですか。

○澤井委員
 それは先ほどの佐々木さんへの質問と同じだと思うんですけれども、グループあるいは資本関係を一切はなれて、そのようなローテーションをやろうとしたときには、守秘義務の話とか、コンペンティティブな他社とどうやるのかという話が出てくるから、理想的な絵としてはきれいだけれども、実際はできないでしょう。それに、たとえばA社とだけのお付き合いがあるのだったらいいんだけれども、必ずしもそこと心中するわけにはいかないから必ずほかのB社ともビジネス関係を持つという実際もあります。

○妹尾座長
 今はNTTはホールディングにしても事業会社にしても、知財部の方は基本的にNTTプロパーの方ですか。あるいはいろんなところから来られているのですか。

○澤井委員
 そういう人もいます。

○妹尾座長
 そういうのはいろんなところから集めてこられるんですか。

○澤井委員
 色々とあります。例えば今一番元気なNTTドコモの知財部門には相当いろんなところから人が来ています。そういうところと持株会社との間では会議体を設けて、いろんな意見交換をしたりします。

○妹尾座長
 わかりました。出向だけではなくて例えば中途採用も実は知財部員の中を変える1つの要因なのかもしれないですね。ローテーションといっても、要するに組織間のローテーションというか流動性みたいなところ。

○澤井委員
 そうです。そして、その難しさというのは、いろんなバックグランドを持つ人の中から、会社の知的財産部門の将来背負っていく人材をどう育て、キャリアパスを積ませていくかという辺りに現実的にはあると思います。

○妹尾座長
 わかりました。もう一つ、知財大学院については、残念な話は、ここのところの関心が薄くなってきたということかと。

○澤井委員
 総合的に関心は少し薄れてきているのと、荒井さんがいろいろやっていただいたころに比べると集まってくる人数とか入ってくる人が変わっているような感じがします。良い悪いの話ではなくて、現実問題としてです。

○妹尾座長
 なるほど。当初、最初に澤井さんがおっしゃったときに、人財はコストセンターだねという御発言がありましたね。

○澤井委員
 コストセンターではなくてコストそのものという事です。

○妹尾座長
 ということは、知財部はコストセンターだったという話なんですね。この知財立国の話が出たときに、コストセンターをプロフィットセンターに変えようというお話ができたんだけれども、人財がまだコストと言われていることは、その人財が属している組織もまだコストセンターという認識なんですね。これがプロフィットセンターあるいはベネフィットを得られるとしたら人財もということになるでしょうけれどもね。

○澤井委員
 企業の活動の中で、知財部門を独立したプロフィットセンタとして見るか見ないかという議論ですね。企業は基本的には実際の自分のところのプロダクトである製品とかサービス、そういうものが実際のマーケットでお金を吸い上げてくるわけですから、そこでいかに利益を上げるか、そのために知財をどう活かすかということが基本だと思います。だから、知財だけ独立させてプロフィットを議論するのは危険だと思っています。

○妹尾座長
 それは知財立国の当初、金融系の方が大分誤解した考え方ですね。つまり、プロフィットセンターと言ったときに、知財権の売買でもうけるというふうに勘違いされたんだけれども、そうではない。事業経営で利益にどの程度寄与できますかという話ですね。その寄与しているところとしていないところ、寄与をしているけれども、認知できているところとできていないところ、というのがまだまだばらつきがあるという感じなんでしょうかね。

○澤井委員
 それはそうでしょうね。企業の中の知的財産部門と経営陣との距離の遠い近いもあるだろうし、実際に企業がどうやっているかによっても違うと思います。

○妹尾座長
 わかりました。IPR(知財権)を商品とするという一部でかなり動いた金融会社が勇み足をされた、その話は落ち着いてはきたと思うんです。
 知財大学院については、御参考までに申し上げると、先ほどどうやってチームで教えるかみたいな話があったんですけれども、私は人財育成の専門家として申し上げると、一番良い方法は「教えない」というやり方です。教えると覚えようとするんです。覚えようとすると考えなくなるんです。だから、私はまず授業の最初に教えないという宣言をします。なぜならば、考えてほしいから。ついつい我々は教えるという言葉を使うんですけれども、これは人財育成では実は禁句なんです。教えてはいけないです。考えさせないといけないというのがありますけれども、これは御参考までにです。
 どうもありがとうございました。澤井さんからお話を伺いました。最後3人目になりますけれども、これは全く違う分野でありまして、機能性素材を中心にされている八島さんからお話をいただきたいと思います。
 では、八島委員、お願いします。

○八島委員
 わかりました。八島でございます。一番初め、この資料自体は席上配付でしたか。
 1ページ目にありますように、一科学企業からの視点ということになっているんですけれども、これは注釈が後で出てくると思いますが、知的財産協会に所属している会社さんは何社あるか御存じかわかりませんが、大体900社ぐらいあるんです。そのうち科学系は400社なんです。ということは、日本における科学で持っている会社でどれだけ多いか。
 今日のお話は、1番、2番、3番となるべく簡単に御説明しますが、1番は日本の化学産業の特徴ということと、当社のケミカルホールディングスの紹介は簡単に、あとは私ども三菱化学の知財人財の育成についてということで御説明します。
 3ページ目「日本の化学産業の特徴」。これは化学ビジョン研究会というところが出したものであります。縦軸が世界の市場規模、横軸が日本企業の世界シェアということです。色付けで言うと柿色の上の大きなものが自動車産業。トヨタさんを含め自動車さんはそういう状況におられる。世界の市場規模は非常に大きくて、日本の占める割合は30%ぐらい。また、ブルーが電気、電子ぐらいのところが入っていますという形になっています。
 それに対して機能性化学というか、我々の一部でありますけれども、機能性重視、機能性化学というのは、どちらかというと右の下の方にあるところで、市場規模はそんなに大きくないのだけれども、世界における日本の企業のシェアが大きい。これは例えば東日本大震災のときにもおわかりだと思いますけれども、いわゆる東北のところがいろいろと抱えていた産業がつぶれることによっていろいろ困るということがわかりますけれども、そういう状況になっています。
 そういうことを含めて4ページ目「(1)化学産業の位置づけ」でございます。出荷額は大体44兆円、これは輸送用機械器具に次いで2位。輸送用機械器具というのは自動車産業なんですけれども、それに次いで2番目の大きさで、従業員も大体100万人弱ぐらいいるような企業でございます。
 そういう意味で言いますと、高度な部材を提供することによって、我々のユーザー産業であるような自動車とか電気、電子等の産業さんに対して部品を提供して、ある意味で言うと日本の産業を支える基盤産業であるというような自負はしておりますが、一方、先ほど言いましたように400社ぐらいいるということで、一製品の市場が多数の企業がいるということで、供給力の過剰による個々の企業の収益力の低下が強く見られる。逆に言うといろんな会社が同じことをやるということで、研究投資も重複もあるし、日本の企業はそんなに大きくないので、海外の化学会社との間で言うと投資規模が負けているというような状況だと思います。
 5ページ目、そういう化学産業の知財面での特徴は、先ほどありましたように、私どもの企業で具体的に言うと、医薬は特徴的ですが、1つの製品に1つの特許で守っているというようなところがまだあります。我々ユーザー産業でありますような電気、電子さん、もしくは自動車さんは、1つの製品を1,000とか万とか、下手すると10万ぐらいの特許で守っているのではないかと思いますが、そういうようなところがあります。それに対して我々化学産業は、1つとは言わないにしても、数百、せいぜい1,000の特許権を1つに製品に持っていることはほとんどなくて、数十から数百単位ぐらいの数字でございます。
 もう一つは、それであるがゆえに、牧歌的なという話があるかもしれませんが、特許の本質で言うと排他力というのを極めて重視しているというようなところがありまして、特許はライセンスよりも自己実施することが多いということがあります。これはここに書いてありますけれども、もともと市場規模が余り大きくないというのが1つ、競合会社が多いということで、ライセンスによる得られる収入よりも自己資本がいいわけで、逆に言うとライセンスによって研究投資を回収することは基本的にできないので、割と排他的に使っていくということになります。  日本の特許件数、先ほど言いましたように、ユーザー産業さんに比べると圧倒的に少ないということから、ある意味で言うと他者がどういうことをやっているかというのはある程度見ればわかるということは1つ。
 そういう中でありますけれども、6ページ目、日本の化学産業は世界の化学産業に比べてはるかに小さな、例えば三菱ケミカルホールディングスと言っても、化学産業の中でナンバー付けで言うと10番に入るか入らないかぐらいの会社でございますので、そういう意味で言うとまだまだ小さいということでございます。そういう中で化学産業の課題、対応については、少しずつビジネスモデルを変えていかないといけない。具体的にはどういうことかと言うと、あるいいものをつくって売ればよかったという時代から、いいものプラスαというのが求められている時代であります。1つは素材から部材へ、もしくは部材をやっているところは更に消費財に展開するとか、更には部材と農業または部材とサービス等の組み合わせとかというところ。
 例えば卑近の例でございますが、弊社におきます植物工場というのは、いわゆるLEDの照明+太陽電池と水回りの制御。そういうものを使って植物に出る。これは産業というか役に立てるかどうかというのは別にして、そういうことを出していこうということを考えていますので、そういう意味で言うと、単純に素材を売っていくという時代から変わってきているということになると思います。
 そういう意味で言うと、まだまだ化学というのは特許1つで独占していくという戦略はあると同時に、更にどこをクローズにし、自分たちの強みはどこだと、どこが弱いから他者を使っていくかというような戦略、大きく2つの戦略ですね。クローズを第一線の戦略というのは電気会社でありますが、あれよりは徹底的にクローズにしてしまうか、あるいはどこか一部をクローズにする。垂直統合的に全部やってしまうのか、ある部分は開けた状態でやっていくか。その2つの道が多分素材産業が生きていくルートではないかなと考えています。
 そういう中でケミカルホールディングスの紹介。ケミカルホールディングスは簡単にさせてください。我々は4事業会社、三菱化学と田辺三菱と三菱樹脂と三菱レイヨンがありまして、大体3.2~3.3兆円の大きさの会社でございます。その中で一番大きいのが三菱化学で2兆弱でございます。各特許はこの4つのそれぞれ事業会社にございまして、4つの事業体の中に知的財産部があり、知的財産部署があるという形になっています。
 次のページ、2015年のあるべき姿はここにあるような数字を求めてやっておりますし、更に最近、我々の社長の小林がKAITEKIという言葉でSustainabilityとhealthとComfortと、この3つの基準である企業価値をつくっていきたいと考えております。
 10ページ目でございますが、収益イメージとしては、今2010年はどちらかというと素材、ヘルスケア、機能商品、大体3部分ずつでございますが、2015年には5兆円または4,000億の営業利益で機能商品という部分を強くしていきたいということでございます。
 11ページ目に成長ドライバーとしましては、ここに挙げているような9つのものを持って機能商品化していきたいというのが動きでございます。
 12ページ、13ページ目でございますが、そういう中で三菱化学知的財産部、昨年2010年4月に組織を変えました。今まで知的財産部というのは社長直結の部隊にあったわけですけれども、それを経営戦略部門というところに部門化して、その下に経営戦略と経営企画とRD戦略、知的財産と情報システムと4つの部門を統合し、言葉は悪いですけれども、RDイコール経営であるというような旗の下にしました。経営戦略部門の下に事業戦略とRD戦略、知財戦略は一層連携できるような形にしております。ただ、これは三位一体と形はなっていますけれども、今後ちゃんと三位一体になるようなことをやる必要があると考えております。
 そういう中で14ページでございます。では、知財戦略の活動の目的はなんだと言いますと、先ほど澤井さんもしくは佐々木さんがおっしゃったように、我々企業体から見たときの知財というのは、取るものではなくて活用するものでございます。知財活動によって事業を強くする。事業を強くするというのは、売上高を大きくするのではなくて、売上営業利益を大きくする。売上は大きくすることではなくて、どれだけもうけるか。そのもうけるための武器として使うんだということを考えておりまして、事業を強くするための活用を考えた知財(群)の創出。活用というのが一番大事。活用をどうやってやるかということが大事。
 もう一つが経営者への事業リスクがありますので、知財情報とその対策・対応を発信していくんだということが知財活動の目的となる。そういう知財活動をどういう人間が担うかというのが、今、私の方で言っているのは2つありまして、1つは知財のプロであること。プロというのは大事なことは我々の顧客。具体的に言うと、知財部で言うと事業もRDも人間にとっての最高パフォーマンスが提供できる人間はプロであると定義して、単純に知財の知識だけではなくて、そういう意味で言うとRDとか事業の知識、情報も必要。
 もう一つ大事なことは、虫の目と鳥の目を持つ。両方は先ほどもありましたけれども、どうも知財の人間は、特に初めから知財に入っている人間は、言葉は悪くて申し訳ないんですが、論理ゲームを好む人間が多い。ある意味で特許庁さんとの間である発明というものを出して出願をし、その出願をすることによってどう取っていくか。審査官と自分たちの間で論理ゲームをやって、ある材料の中でどう取っていくかというのを楽しむというか、結構ある意味で言うとものすごく面白いゲームです。これはやればゲーム。どれだけ勝った、勝たないかというのがある。そういうことに陥ると、結果的に何のための出願なのか、何のために使う出願なのかというのを忘れてくるので、取ればいいんだと、またはどれだけうまく取ればいいかという議論になって、それを楽しむというか、それが非常に大事ではありますけれども、決してそれだけではない。
 鳥の目というのはそういう細かくある特許の戦術もできるような、例えば特許庁の審査官に対して、また知財高裁の裁判官に対して論理的に展開できるような緻密な力。それと同時に、事業として大きく見れば、どういう海図になっていて、どこにどういう知財があり、どこにどういう知財があるか、だからこちらに進むんだと、そういうような大きな把握ができることができない。これは多分非常に難しいんですけれども、一番大事なのは、そういうことを1人の人間ができない限りは、本当の意味での知財戦略というのは出てこない。
 上からこうやったらいいよという人間と、下は下からやる人間、いわゆる虫の目だけの人間と鳥の目からの人間だけでやると、確かに形にはなりますけれども、決してうまく知財戦略が行ったことにはならない。1人の人間の中でそれぞれ埋め込む。勿論、長短あるんでしょうけれども、人によって虫の目が多い人と鳥の目が少ない人もいるかもしれませんけれども、必ずどちらかの2つの目を持たなければいけない。それが今後の知財戦略を担っていく人間であると我々は位置づけています。
 その意味で、15ページ目、知財人財の育成としては大きく3つ分けておりまして、事業のための知財を活用できる人財の育成ということで、これはトヨタさん、澤井さんとかありましたけれども、我々の中ではインターンシップという制度がありまして、ある一定期間、事業部門との交換ができるということもありまして、そういう人間を知財に入れる。この目的は、知財の人間が知財が大事であるというのは当たり前で、決して周りの人間は共感を呼ばない。むしろ逆に言うと、知財ではない人間が知財が大事である、むしろ事業部門の人間が知財戦略を使おう、もしくは知財を使っていきたいというようなことが言える人間が多ければ多いほど、企業としての知財力は上がると考えております。
 そういう意味で言うと、知財をわかる人財、ある意味で細かい、虫の目がちょっとわかる人間を育てていきたいということ。
 もう一つは、重要RDテーマの事業の加速のための人財の育成ということで、これはまさに知財のプロ、特許だけではなくて特許契約は非常に重要でございますので、その2つの充実化をしていきたい。そのためには重要テーマでの経営陣への情報発信とか、社内・社外への研修とか、中途・新卒の採用等をやっています。
 あともう一つ、MCHCは三菱ケミカルホールディングスという名前ですけれども、三菱ケミカルホールディングスの知財部門への知財人財の供給というのが我々の中身であります。
 そういう意味で後は具体的なプログラム例でございますが、知財人財をつくっていくOJTというのは重要テーマでの経営陣への発信。これは月に1回私どもの業務に対して重要テーマについて2時間ぐらい時間をいただいて、そのテーマについての知財面でできていること、できていないこと、事業面はこう進んでいるけれども、知財面ではこうなっているということを中心に説明しているということをやっています。我々は鳥の目をつくりたいということでやっております。
 17ページ、知財人財の部員の育成プログラムを運用して、人事考課の中に入れていくということをやっています。あとOJTでございますが、OJTは大きく2つ分けられて、社内での教育プログラムで、ここに挙げているのはどちらかというと経営系のセミナーでございますから、それに必ず参加しろということと、もう一つが知財協という場を使って、そこで交流をする。特に知財協の専門員の経験とか、知財協での研修を使って、そういうところをうまく使っていきたいということです。
 最後に、そういう中で育成プログラムの運用でございますが、知財部に対してはここにありますようにあるべき姿、あるべき人物像を出して、それを可視化してどれだけ近づけるかということを挙げております。それを毎年4月に自分たちの考課と同時に、ここは足りないということをやっています。そういう意味で必要な能力は何かというと実務的な能力、企画戦略、いわゆる創造等です。それともう一つは組織運営。どうもゲームおたくではないですけれども、それに近い人間も多うございますので、そういう人間は自分がよければいいとなってしまいますから、そうではなくて、やはり企業として働いている以上、やはり組織運営。特に課長職になればなるほど実務というのはある程度でき上がっていますから、それを企画戦略とか、もしくは経営、組織運営、そちらの方にウェートを置いて、そこをよい人間が評価的によくなるというような形にしていくとしています。
 最後にあるべき姿というのはどういうことかということを、これは社内資料でございますけれども、こういうのを挙げておりまして、事業収益の最大化のための事業とRD一体となった知財戦略を行う人財。同時に知財の専門家としてその業務をタイムリーかつ生産性高く行える人財という形でずっと挙げております。そういうふうになってほしいということを考えてございます。
 以上でございますが、要は先ほども言いましたように、知財のプロであることと二律背反しますけれども、虫の目と鳥の目を必ず持った人間になってほしい。そういう人間だからこそ知財戦略を推し進められると考えています。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。今の八島さんの話、これは今までと違った化学、特に機能性素材等を中心にした業界なわけですが、皆さんの方から何か御質問はありますか。
 安藤さん、どうぞ。

○安藤参事官
 事務局から恐縮ですが、最後のページの「目指すべき知財部員像」ですが、ここにいろいろとお書きになっておられるところを何か数値指標みたいなもので測定するやり方はあるのでしょうか。 あるいは中身はお話いただけないとしても、スキルマップ、スキルシートのようなものがおありになるか、その辺りについてお差支えない範囲でコメントいただければと思います。

○八島委員
 これの下にちゃんとスキルシートがありまして、そのスキルシートに基づいて何点何点とやっております。先ほど言いましたように、新入社員から3年目ぐらいまではどちらかというと実務が90%ウェートで、70、20、10ぐらいのイメージ。ところが、どんどん10年とか15年になれば、例えば課長クラスになれば、できなければ困るんですけれども、少なくとも実務はできて当たり前、いわゆる組織運営力はどれだけ必要なのかということをやっております。

○妹尾座長
 ありがとうございます。安藤さん、今ので良いですか。

○安藤参事官
 結構でございます。

○妹尾座長
 ほかによろしいですか。八島さん、私の方から質問なんですけれども、先ほどお話された化学産業の位置づけというのはものすごく大きいねという話です。俗に私たちが天の川図と呼んでいるのがありますね。これの右側の方でよく解釈について論争するんですが、左側のインテグラルにすり合わせでつくったものが日本は強くてモジュラー系が弱いねという話をして、右側の素材系については日本は中小企業を中心に強いし、勿論、三菱ケミカルさんみたいな大企業も中心に素材系は強いんだねという解釈が一般的です。しかし、私はよくそれで文句を言って、一番右の方でシェアは高いよね、だけれども、収益率はどのぐらいなのかと聞くんですが、どんなもんでしょうか。

○八島委員
 悪いです。

○妹尾座長
 ということは何かというと、高シェアにかかわらず高収益に結び付かないのは一体何が問題なのかという話になります。

○八島委員
 非常に難しい問題だと思います。

○妹尾座長
 昨日、日経の方の取材を受けていたんだけれども、そこで私はわざと極端なことを言いました。高収益に結び付かない高シェアは一体何の意味があるのかという話をしました。勿論、高シェアで高収益はインテルみたいなスタイルが部材でありますね。つまり、ビジネスモデルなんです。そこへ八島さんが言及されていたので、まさに我が意を得たと思ったんです。要するに何のことはない、高シェアで低収益というのは、下請部材屋になってしまっているということを意味しているわけです。これは新興国に全部置き換えられる状況に入ってしまう可能性があるということですね。
 そこのときに今までが2つありましたね。2つのUと私は呼んでいるんだけれども、ユニバーサルな物についてはスケールメリットがあってナンバーワン戦略でやる。もう一つのUはユニークだから、ほかが追随できないからオンリーワン戦略でビジネスモデルを工夫する。化学産業はそれで二分化をしているんですか、そうではなくて同居をしているんですか。

○八島委員
 私のイメージは二分化ではないですかね。

○妹尾座長
 そうすると、明らかに知財マネジメントが違ってきますね。

○八島委員
 違ってくる。

○妹尾座長
 化学産業でもスケールメリットのユニバーサル素材の場合の知財戦略と、ビジネスモデルを主体にしたユニークな戦略をつくるところは全然違う。そうだとしたら、知財部員に対する素質も違ってくると考えて良いですか。

○八島委員
 それは変わらないと思います。

○妹尾座長
 それはなぜですか。

○八島委員
 基本的にはマテリアルを扱っているからです。先ほど言いましたけれども、多分ユニークなのは方針は独占です。ユニバーサルはクローズ&オープンだと。ポイント、肝は何かというと、我々はマテリアルを扱っているんです。マテリアルを扱っているというのはどういうことかというと、キーマテリアルさえきちっと押さえれば、ユニークだしユニバーサルもできる。

○妹尾座長
 両方できる。

○八島委員
 先ほども言いましたけれども、ユニークなものは、ある意味で言うとすごくビジネスモデルは簡単です。つくって売っておけばいい。ユニバーサルなものは、いいものをつくらなければだめです。これは結果的にいいものをつくっていないと、新興国の素材メーカーがどんどん出てきますからそこには負けてしまいますけれども、そこをちゃんと押さえさえすれば、あとはどういうビジネスモデルをつくるか。

○妹尾座長
 そのときに突っ込んで伺うと、先ほど知財を取るのではなくて知財を活用するという意味だと随分強調されましたね。あれをもう少し詳しく言うとこういうふうに言って良いですか。知財権取得のプロではなくて、権利も含めて知財の活用のプロであるということですね。

○八島委員
 そういう理解です。

○妹尾座長
 そうすると、今みたいなビジネスモデルがいろいろあり得るよねというときには、結構いろんなことを知らないといけない、難しいですね。

○八島委員
 ただ、先ほども言いましたように、マテリアルが大事なので、それをきちんと取らない限りは、あとは机上の空論になると思うんです。

○妹尾座長
 ただ、三菱ケミカルさんは有名なビジネスモデルを7回変えて機能性素材を全部やったなどという実績がある。それを私が解析させていただいているけれども、ああいうのは知財の方はどのぐらい関与するんですか。

○八島委員
 あれはほとんど知財は関与していません。というのはどういうことかというと、取るのは取るんですが、あのモデルは基本的にはやけくそ戦略ですね。

○妹尾座長
 アップルもインテルも全部今勝っているところはみんなやけくそでやってみたら成功して、それが勝ちパターンに形式化されたということですね。だから、御社がアゾ染料でやられたものも、勝ちパターンのモデルとして、今やかなりしっかり自覚されていますね。それは事業系の方がたまたまやったけれども、知財系の方々の関与は。

○八島委員
 勿論、知財のサポートはしていますけれども、やはりビジネスモデルをつくるのは知財だけができるかというとできない。だから先ほど言いましたように、もっと知財の人間が事業をわからなければいけないのは、事業の人間は知財をどう見ているかというと、この前お話ししたかもしれませんけれども、すごくサポートする人間とものすごく毛嫌いする人間がいるわけです。
 毛嫌いする人間はなぜかというと、それは事業の役に立たないからです。自分たちがやりたいことに対して危ないと我々は言いますから。他者の特許があるから危ないということになる。それを彼らは嫌がる。逆に言うと、それを超えている人間、いろいろな経験をした人間は知財を使ってやろう。だから、逆に言うと危ないという人間はどこの会社の知財も危ないというのだったら、逆手にとって自分たちの知財力を上げさえすれば彼らは危ないと思う。ということは、将来の競争が参入できるだろうし、要は勝つというかもうけるためには競争の数を少なくしなければいけない。そこのところで1つの数を少なくする手段として知財があるわけだから。

○妹尾座長
 ということは何を言うかというと、知財の人財の育成は知財部門だけではなくて、事業部の人財の育成に期待をかけるというのがかなり大きなウェートを占めると考えて良いですね。

○八島委員
 そうだと思います。

○妹尾座長
 ということは、事業部門の育成が実は重要なのかもしれない。

○八島委員
 そこのところで難しいのは、事業部門でそういう人間がいればいいんですけれども、そういうのがいないので知財が黒子になってそういう人間を育てるんだと思っています。

○妹尾座長
 なるほどね。三菱さんなどの場合、どうなんですか。事業部門への働きかけみたいなものはどの程度やっていますか。

○八島委員
 これはデータを出していませんけれども、10年前ぐらいから特許戦略会議というのをやっていまして、重要なテーマについては事業部門とRD部門と知財部門が集まってやっている。そのときに一番大事なことは事業部門に事業戦略を語らせる。事業戦略を語らせない、語らせても語れない事業部というのは結構いるんです。事業戦略はなんだと。事業戦略をちゃんと語れる人間がいることは本当にいいんですけれども、事業戦略を語れなくて数字だけ言っている人間は事業部は、知財などやらなくてもうかっているかもしれませんけれども、知財が本当に要る事業と要らない事業はたくさんありますので、そこは慎重にすべきだと思います。

○妹尾座長
 ごめんなさい。しつこいようですけれども、最後に1つ。事業戦略を語れるやつがいたときに、それに突っ込める知財部員はどのぐらいいますか。ここは危ないですねとか、ここをやったらこういう展開ができるでしょうとコメントできる人はどのぐらいいますか。

○八島委員
 それはなかなかいないですけれども、それを育てようとしています。というのは、そういうことをやらない限りは、いわゆる出願を中心にやっている者は、逆に言うとアウトソーシングすればいいわけですから、そこのところは間違えない方がいいと思っているし、そういう議論の場を設けることによって部員も協力する形になると思ってやっています。

○妹尾座長
 どうもありがとうございます。以上、あとは先ほど非常に面白いことをおっしゃったというか良いなと思ったのは、鳥の目、虫の目のお話です。どうしても知財の方は部分最適と短期最適に割と特化するのがお得意なんですが、どうも今の状況を見ていると、全体最適、長期最適を考えるというところまで人財を育成しないといけないという感じがあります。まさにそこを御指摘いただいたと思います。
 時間が詰まってきたので申し訳ないのですが、今のお三方とは別の角度から、知財人材育成推進協議会というのがございまして、先ほど申し上げたような7つの団体の協議会であります。これについての取組みを御報告したいと思うんです。これの協議会の作業部会において、実は私とともに幹事を務められている特許庁の後谷課長から御説明をいただいて、その先の検討課題について入っていきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

○後谷課長
 特許庁企画調査課長の後谷でございます。よろしくお願いいたします。
 御紹介いただきましたように、協議会に作業部会というのがございまして、そちらの幹事をやらせていただいている関係で今日は説明させていただきます。特許庁の立場ではなくて、協議会の幹事という立場で御紹介をさせていただきたいと思っております。
 今日の内容でございますけれども、知財人財育成の取組みの内容、協議会としてどのような取組みをしてきたのかに関して報告させていただきます。
 目次でございますが、2つのポイントがございます。1つは知的財産人財育成に係る重点施策に関する取組みでございます。ここで協議会そのものについて御説明させていただきたいと思います。
 2つ目でございます。ここはどちらかというと協議会のメンバーの活動でございます。知的人財育成総合戦略の中に5つの人財像というのがございました。
 (1)国際的に戦える人財、(2)先端技術を理解できる人財、(3)融合人財、(4)知的財産競争を勝ち抜く経営人財、(5)中小企業・地域で役立つ人財の5つでございます。このそれぞれの人財の育成のために協議会のメンバーが何をやってきたのかについて報告させていただきたいと思います。
 1ページでございます。1つ目のポイントでございます。知的財産人材育成推進協議会の創設でございますけれども、知財戦略本部会合(13回目)で報告されました知的財産人材育成総合戦略におきまして、10個の重点施策の1つとして協議会の設立が提言されました。これを受けまして、この協議会の設立の運びとなったわけですけれども、メンバーは7団体でございます。左のグリーンの部分でございますけれども、この7団体が会員でございまして、この協議会の行う事業でございますが、中の赤い点線の囲みの中でございます。
 1つは情報交換・相互協力でございます。2つ目といたしまして、人財育成の各種取組みの普及・宣伝でございます。3つ目といたしまして、研修に関する横断的事項の意見を集約しての政策提言でございます。
 右の青囲みに移りますけれども、開催実績といたしまして、協議会として先ほど先生から御紹介ありましたけれども、作業部会というのを設けさせていただいてございます。これは協議会の下に設置されまして、協議会の指示の下に作業する部隊でございまして、協議会は年に2回程度開催してございます。その下の作業部会はおよそ年8回くらい開催してございまして、設立後既に本会合、協議会は10回、作業部会は42回を数えております。
 下の方にセミナーの開催実績を書かせていただきましたが、平成19年からシンポジウムや人材祭、オープンセミナーという形で開催してございまして、これはどうも人が増えているような状況でございます。下の黄色囲みでございますけれども、主な取組みはそちらにまとめてございます。
 2ページは先ほどのそれぞれの育成に関しまして、こちらは国際的に戦える人財の育成でございます。海外からの専門家・有識者を招聘いたしまして、講演やセミナーを実施するプログラムを提供すること。国際問題、語学などの観点から、多様な研修体制を構築してございます。
 主な実績を下に幾つか書かせていただいてございますけれども、例えば知財協会で、外国の知財制度・動向に関するプログラム、要は現地代理人による講義を実施したり、2つ目でございますように、弁理士会ではドバイ税関長でございますとか、インドの審査官を招聘いたしまして研修する、こういったことを実施してございます。
 3ページ、2つ目の点は、先端技術を理解できる人財の育成でございます。実績は1つ書かせていただきましたように弁理士会の方で全国iPS細胞を研究機関に専門弁理士を派遣いたしまして育成を図っているところでございます。また、バイオ、IT等の先端技術分野の知財の戦略的活用を促進するためのセミナーといったものを実施してございます。
 4ページ、融合人財でございますけれども、法律知識のみでなく、他の領域も通じた人財の育成に取り組んでございます。知的財産に関する多種多様な人財の育成を図りながら、育成した成果を客観的に測定評価するための資格制度の充実にも取り組んでございます。実績として下に書かせてございます。
 5ページ、知的財産競争を勝ち抜く経営人財の育成でございますけれども、企業、経営者でございますとか、幹部向けの研修を用意してございます。例えば一番上の実績でございますけれども、知財協の方ではシンポジウムの企画の中で、企業経営者や経営幹部のパネルを設けて、参加者の啓発を実施してございます。
 一番下の囲みでございますけれども、工業所有権情報・研修館では、中小企業の経営者向けに侵害警告模擬研修などを実施したりしてございます。
 6ページ、中小企業・地域で役立つ人財の育成でございますけれども、中小企業向けまたは地方向けの研修を用意してございます。上の囲い、実績でございますけれども、弁護士連合会では、知財戦略シンポジウムでございますとか、知財マネジメントスクール、このようなものを継続的に実施してございます。また弁理士会では、知財経営コンサルティング研修を各地で開催し、また中小企業やベンチャーの知財戦略ゼミ、知財マネジメント等を実施してございます。
 簡単でございますけれども、以上で報告を終わらせていただきます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。この知財専門調査会というか知財戦略本部の提言に基づいてこの協議会ができて、これは5年以上熱心な活動を参加団体の方々がやって、一部にはシナジー効果も上がってきている。つまり実績が次々に出てきたということだと思います。勿論、それに甘んじることなく、次のステージを考えてらっしゃるということで、協議会自体も今次のステップをどうしようかという議論が始まっているという理解で良いですよね。私も幹事だから当たり前だけれども、私の口から言えないので後谷さんに(笑)。

○後谷課長
 勿論まだバージョン2に向けて報告させていただく段階には達してございませんけれども、今まさに協議会の方で議論させていただいてございまして、機会をいただきましてまた御報告させていただきたいと考えてございます。

○妹尾座長
 ということで、今の話は今までの実績の抜粋を御紹介いただいたということです。これから先にどういう問題、課題を皆さん参加団体の方が認知して、どういう提言していくかというのはこれからの段階ということになるかと思います。
 それでは、引き続き知財人財育成プランに向けて検討課題についてということで、全体の議論に入りたいと思います。3人の委員の方々の説明、今の後谷課長の説明を踏まえて議論したいのですが、そのためにたたき台といいますか、討議のための資料を御用意いただいているので、髙原参事官の方から御説明いただけますか。資料3ですね。

○髙原参事官
 資料3「『知財人財育成プラン』策定に向けた検討課題について(案)」をご覧ください。
 「Ⅰ.はじめに」にもありますが、第1回会合でも申し上げましたように、産業競争力の強化に向けて、まず各セクターにおいて育成すべき知財人財像を明確化するという第1ステップ、その上でそうした人財の育成を推進するための方策について検討する第2ステップという2段階で検討を進めていただく、そのためのたたき台としてこの資料を準備したということでございます。
 資料3の全体像につきましては、最後の4ページに図の形でまとめております。まず知財戦略をめぐる展望ということで、現状についてまとめたのがグリーンの部分です。知財戦略をめぐる情勢を踏まえた上で、次に知財を取り巻く将来的な10年後の状況をどう見据えるかというところを中央のオレンジの部分に書いております。こうした10年後を見据えた上で、それではどういった人財育成プランを検討していけばいいかというところを最後に書いておりますけれども、そういった検討の方向性を何例か示させていただいている、そうした性質の資料ということになります。
 それでは、適宜4ページもご覧になりながらお聞きいただければと思いますが、1ページ目のⅡ.に戻りまして、現状の認識というところ、知財戦略をめぐる情勢です。昨今のビジネスシーンにおいて、経営判断上、知財の側面がますます重要になり、知財をめぐる調達あるいはM&Aといった動きが盛んになっております。また、「知財システム」をめぐる動きということで、アメリカで大きな特許制度改革が実現したという状況でもございます。
 新興国、例えば韓国には「IP-Hub Korea」という構想がありますが、韓国が我が国にならい知財基本法を制定して、国家知識財産委員会、これは我が国の知財戦略本部に相当するものですが、こうした体制を整備したのは本年に入ってからということです。また、中国は、2010年についに我が国を抜いて出願件数で世界第2位というような状況にありますけれども、この先、2015年には特許・実用新案・意匠を合わせて200万件の出願を目指すという知財計画を推進しております。
 続いて2ページです。グローバル・ネットワーク時代の到来によって、今後、経営、研究開発及び知財が三位一体となった戦略の構築がますます重要になってくるということですが、今、申し上げました諸外国の状況は、このような傾向を更に助長するというものであろうかと思います。
 今後、経営戦略の中で知財の果たす役割が一層大きくなってくるという認識の下で、各企業においては、経営陣のみならずその下の様々なレイヤーで知財の視点を有する人財、特に経営系、事業系の人財を確保できるか否かといった視点で検討していくことが国際競争力の強化に資するのではないかということです。
 こうした状況を踏まえまして、Ⅲ.ですけれども、知財を取り巻く10年後の状況として、例えばこのような姿が描けるのではないか、こういった活動が定着しているのではないかということで4例ほど示しております。
 1点目、中小企業を含むあらゆる企業が知財戦略を策定・実行していく。この「知財戦略」は内容的にもスタティックなものではないとの認識でして、知財権の獲得だけではなくて、ノウハウ秘匿、標準化も組み合わせた広い意味での知財マネジメントも含めた概念として考えております。
 2点目、弁理士・弁護士といった専門家の方が知財戦略に関する企業のコンサルタントとして定着していく。こういう姿が想定できるのではないかということです。
 3点目、産業界と大学・大学院、教育機関間での人財流動が大きな流れとなっているという姿です。
 4点目、グローバル出願については、まさに英語による審査が普通に行われる状況になっているのではないか、こうした姿を描いてみたということです。
 こうした世界を見据えた上で、このワーキンググループで御検討いただく際のたたき台としていただければということですけれども、今後の10年先を見据えた人財育成の在り方については、これまでの知財人財の裾野の拡大を一層進めながら、グローバル知財人財あるいは知財マネジメント人財といった高度な人財の育成・確保を目指す育成プランの策定に向けて、例えば以下の4つの視点で検討を進めていただいてはどうかということで、あくまでも例示ですけれども4つ示しております。
 (1)は知財人財育成のための教育・研修の在り方です。大学・大学院等の研修機能を強化して、知財マネジメント人財をはじめとした企業ニーズに一層マッチした人財の教育・研究を行う環境をいかに進めていくべきかという視点でございます。
 (2)は知財マネジメント戦略に関する研究の推進ですけれども、グローバルな経営環境・事業環境が急速に変化していく中で、国内外の最新の事業戦略あるいは知財関連情報を蓄積・分析して、事業戦略を踏まえた上で最先端の知財マネジメント戦略を研究できる仕組みをどうやって構築していくかということです。
 (3)は知財人財育成のための資格・検定制度の活用ですけれども、必要な人財を育成又は確保していくために資格・検定制度、つまり、グローバル競争時代に資する例えば弁理士制度や知財管理技能検定といったものを活用した方策を検討していくことはできないかということです。
 (4)はグローバル化に対応した知財人財の育成・確保ですが、各セクターにおいて、グローバル・ネットワーク時代の人財育成を強化していく。例として、グローバル出願に対応した審査官の育成・確保を挙げております。
 先ほどの3名の委員の方からの御説明も踏まえまして、本資料も併せて議論の材料にしていただければ幸いです。 御審議のほどをお願いいたします。

○妹尾座長
 ありがとうございます。御審議とおっしゃったけれども、これはあくまで例示だから、御審議というよりはむしろこれをたたき台として、これをきっかけに議論していただきたいということだと思います。時間が少なくなってしまったのは私の進行の不手際で申し訳ございません。早速ですが、皆さんの方から何か御意見等がありましたら是非よろしくお願いいたします。
 中島委員、どうぞ。

○中島委員
 それでは、2ページのⅢ.10年後の状況で、産業界=教育機関間の人財流動というところなんですが、これがつくられたことの意図を確認したいんです。要は大学・大学院から産業界に行くのは普通の流れということがあるわけですけれども、そういう意味ではここはむしろ産業界から教育機関、大学・大学院へ行くということを想定されているのか、それとも学習人財ではなくて教育人財のことに特化しているのか、そこら辺のところが見えなかったんですけれども、どんなものでしょうか。

○髙原参事官
 双方あろうかと思いますが、中島委員御指摘の産業界から教育機関に向けた人財の流れにつきましては、いろいろヒアリングを行いますと、学ぶという立場での流れが量的に十分かどうか、もっとそこを活性化していく必要があるのではないかということも聞いております。その意味では今申し上げた流れを一層強くしてという意識がございます。

○中島委員
 あくまでも学習する人財、教育を受ける人財をどんどん大学・大学院に産業界から供給するというようなイメージということですね。

○髙原参事官
 今後その流れを強くするということです。逆に、大学に、教える立場で産業界から加わっていただく方が発信する情報を、今度は広く産業界に向けて流していだたくということも必要ではないかと考えております。

○中島委員
 ありがとうございます。

○妹尾座長
 今のはよくわかったようなわからないような禅問答みたいですけれども(笑)、よろしいですか。むしろ教育人財と両方とも双方向に流れるし、教育者が学習者になっても良いし、学習者が教育者になっても良い。産業の人が教育に行っても、教育の人が産業に行っても、もうこれからはソーシャルネットワークの時代だから、片方のダウンロードだよね、アップロードだよねという話ではないね、というぐらいに大きく考えても良いかもしれないですね。

○中島委員
 そうですね。先ほど前の時間で質問をしそこなったんですが、人財の流動性のことだと思うんです。企業の内部での流動性だけでなく、外部との流動性ということで、10年前に比べますと、知財人財の流動性はものすごく増えたなという印象があるんです。企業への知財人財の流入というのはものすごく大きな勢いで流れているんですけれども、しかし、よく見てみると、まだまだ知財のオペレーション人財が主流であって、マネジメントとか管理人財というのはなかなか少ないように思うんです。そういう意味では、企業がまだ即戦力のオペレーションの人財の時間を買っているのではないかなと。頭脳を買っているというところまでいかないのではないかなという気がするんです。それは澤井委員は専門職大学院の教える側と受け入れる側と両方の二役をやられていますので、そういう意味では非常に期待するところかなと。やはり先ほど話があったような専門職大学院とか大学院へ行くからには、当然出口を見るわけですから、何のために行くかというと、そこに魅力がなければ行く人もインセンティブが働かない。これはやはり社会全体の問題かなという気がいたします。

○妹尾座長
 ありがとうございます。澤井委員、手を挙げていらっしゃった。

○澤井委員
 この資料で伺いたいのは、今、中島さんが言われた3番目なんですが、今回の議論が事業起点型でバージョン2の知財人財育成ですねという話をしている割には、事業戦略というか事業に関わるようなところが少なすぎる。それらがもう少し色濃く出ていないといけないのではないでしょうか? そうでないと、何となくまた同じことをやっているのではないかという事にになってしまいます。先ほど来、我々企業の経験者に話す機会を与えてくれたのは、事業といろんな意味での密接度合いをどうやって深めて人材育成をやっていくかというところの期待値があるような気がしたので、あえて言わせて戴きました。

○妹尾座長
 今日の話を伺ってから、これが書き直されるんです(笑)。

○澤井委員
 わかりました。それでは、次のバージョンを楽しみにしています。結構です。

○妹尾座長
 それを最初に書いてしまったら意見が出にくいではないですか。ほかにどうですか。
 杉光委員、どうぞ。

○杉光委員
 3ページの(3)のところで、資格・検定制度の活用という項目が挙げられているんですが、前回のこの会議で私が申し上げましたように、例えば知的財産管理技能検定に対しては、国家試験ということで国の政策に基づいて、あるいは国の政策に沿って実施されるべきものでありますし、あるいは政策が変わるのであればそれに併せて変えていくべき内容であると思っているので、今ある視点を云々ということではなくて、むしろゼロベース、どういうことをやってこの検定制度をうまく使ったら人財育成ができるのかという視点で考えていただければいいなと考えております。
 もう一つの視点といたしましては、知財人財といっても大企業、中小企業、いろいろ規模があるかと思いますので、そういう意味では大企業ではある程度社内でしっかりした人事体制なり評価ができているということで仮にあるとするならば、例えば中小企業を中心とする方向性で活用するということも選択肢の1つに入ってくるのではないかと考えてございます。
 いずれにしましても、よく検定とか試験といいますと、それでどこまで評価できるのかという話もよくあるんですけれども、私がそのときにいつも挙げる例、たとえ話としましては、昔お茶のペットボトルは10年前はなかったのではないかと思います。15年前ぐらいですか。あのときの聞いた話なんですが、当時、お茶のペットボトルを出そうという企画を出したら、あんなものを町の料理屋なり何なりでただで飲めるものをペットボトルに詰めて売れるわけがないだろうという話があったらしいんです。その話を聞いたときに、それは要するにペットボトルに入れられたお茶を見ていない、存在を知らないからイメージで、自分が持っている既存のお茶のイメージで語っているからそういう結論になったと思うんです。
 ですので、私が申し上げたいことは、試験あるいは検定という皆さん御自分のイメージがあって、それに基づいてそれで何ができるのかというふうに御意見される場合が多いんですが、そうではなくて、検定制度、実際の問題を含めて現状を踏まえて、中を実際見ていただいた上でどこをどうしたらいいのかというのを逆に御指摘いただければありがたいなと思っておりますので、もし可能であれば、今の検定制度はどんな内容でどんなデータがあるのか、その辺も御説明する機会なり、あるいは資料を御提供させていただくことができればありがたいなと思っております。

○妹尾座長
 ありがとうございました。今みたいな調査も当時に進めていらっしゃいますので、事務局の方でそれを是非出していきたいと思います。時間が押し迫ったんですけれども、是非という委員はいらっしゃいませんか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございます。この人財育成プラン、まだまだこれはある意味ではたたき台ですので、皆さんでもっとこれを色濃くしようよと、あるいはもっとこういうところを書けるよというお話が多分あると思います。私自身も実は事務局にいろいろ申し上げていることがあります。
  例えば2ページの「Ⅲ 知財を取り巻く10年後の状況」があります。これは見るとたしかにそうなんだけれども、例えば中小企業を含むあらゆる企業が知財戦略を策定・実行するという知財戦略の中身は10年後は様変わりになっているだろうという予測が立ちます。すなわち、知財戦略そのものの中身が変容と多様化しています。そうすると、その下のグローバル知財戦略に関する企業コンサルタントという部分は、ここの知財戦略も急速に変容と多様化しているはずです。知財人財連携と次に書いてありますが、この知財人財連携の在り方も変容と多様化をするはずです。
 例えばの話ですが、月曜日に我々は東京大学の知的資産経営総括寄附講座のシンポジウムをやりまして、今や、明らかに独占的排他的な使用は限定的な領域以外はないという結論がほぼです。その意味では、ある領域以外は役に立たないというショッキングな発言までありました。独占排他的な活用モデルでなくなったのかといったらそんなことはないわけで、それは先ほどのマテリアルにしても何にしても残っているわけです。ただし、ではパテントプールはどうするのか、共有モデルではないか、あるいは標準に組み込むモデルがあるではないか、あるいは全くそれをなしにするのもある。
 そうすると、知財権の活用モデル自身が変容と多様化している。その中で、それを戦略化するということは一体どういうことなんだと。そういうことを踏まえないと、ここに書かれていることは旧来型のモデルを戦略策定実行できる人が幾ら増えてもしようがないわけですし、その古いモデルを指導するコンサルタントがいたら、これは百害あって逆に一利なしというスタイルになってしまうわけです。したがって、そういう中身まで実はきちっと表現をしないとミスリードが起こるのではないかということがあるわけです。そういうことも含めて、こういう部分を少し修文しながら進めていきたいと思います。
 その結果として、杉光先生が先ほど言われたような検討の在り方なども全く変わってくるし、あるいは佐々木先生がおっしゃっていたような教育の在り方も全く変わってくるしということになろうかと思います。
 その意味で言えば、ここの現状認識の1ページの一番下に中国が特許出願件数をついに抜いたということですが、我々はこれで色めき立つ必要はないだろうと思っています。200万件にしても、まだ数の大国主義を取ってらっしゃるなと思っています。我々は使い方の質の立国主義を取るべきだと思います。我々は数で勝負ではないよね、知恵で勝負だよねというふうに言いたいのです。知財権の出願件数を競うという時代ではもうないので、それの使い方の知恵を競い合うということだと思います。
 もう一つは、どうしても我々こういう話をするときに、大企業と中小企業という区分で考えますね。これの区分だとすると、でも今一番大変なのは、大企業と中小企業の中に入っている中堅企業さんだよねという話もあるのです。これがいつも手薄になるみたいなところがあるので、その辺の人財はどうするのかということも考えていきたいというのが一方にあります。
 もう一方にあるのは何かというと、先ほどお三方、委員の方々に御説明いただいてわかったとおり、業種では考えられない時代に入ってきたなということです。私が今書いている本には実は製造業は業態化するという話をしています。流通だけが業態化をするのではなくて、製造業自身が業種を超えた業態化を始めている。すなわちビジネスモデルが全く変わってきているということに意味があって、ビジネスモデルは何なのか、知財戦略も業種的なビジネスモデルではなくて業態的なビジネスモデルが、どういうふうに変わるかということがあると思うわけです。その辺も見据えた人財が育成されなければいけないということをいろいろと考えています。
 そういうようなことなので、これから先、何回かインテンシブに議論するんですが、皆さんの方も是非いろんな意見をお寄せいただければと思います。ということで、恐縮ですが時間を少し延びてしまいましたけれども、これ以外にもそうだよね、こういうことを思い付いたとか、こういうことを忘れていたとかということがあったら、私だとか事務局の方に御連絡を賜れればと思います。
 局長、何か最後の方でよろしいですか。

○近藤局長
 はい。

○妹尾座長
 それでは、事務局の方に今後の事務的な話を伺いたいと思います。連絡事項があればお願いします。

○髙原参事官
 次回第3回会合ですが、10月24日月曜日の午前10時から開催させていただく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

○妹尾座長
 それでは、本日は御多忙のところをお集まりいただきましてありがとうございました。お陰様で貴重な意見の交換ができたと思います。今後ともひとつよろしくお願いします。どうもありがとうございました。