知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会
知財人財育成プラン検討ワーキンググループ(第1回)



  1. 日時 : 平成23年8月2日(火)15:00~17:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当大臣政務官】阿久津幸彦 内閣府大臣政務官
    【委 員】妹尾座長、青山委員、荒井委員、上條委員、佐々木委員、澤井委員、
    杉光委員、住川委員、高倉委員、中島委員、八島委員
    【事務局】近藤事務局長、芝田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)知財人財育成プラン検討ワーキンググループの運営について
      (3)今後の進め方について
      (4)「知的財産推進計画2011」について(報告)
      (5)知財人財育成に関する現状と課題について
      (6)閉  会


○髙原参事官
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「知財人財育成プラン検討ワーキンググループ」第1回会合を開催させていただきます。
 本日は御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 私は内閣官房知的財産戦略推進事務局の髙原でございます。後ほど委員の皆様の互選により本ワーキンググループの座長をお決めいただきますけれども、それまでの間、議事の進行を代わりに務めさせていただきます。
 本日、阿久津大臣政務官は御公務のため遅れて到着される予定でございます。
 それでは、開会に当たりまして、知的財産戦略推進事務局、近藤事務局長から一言ごあいさつを申し上げます。

○近藤局長
 知的財産戦略推進事務局長の近藤でございます。よろしくお願いいたします。
 本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
 ごあいさつの前に、皆様のお机の上に知財人財の育成プランの検討をお願いする委嘱状を置かせていただいております。御多忙の中、お引き受けいただいたことを心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
 知財人財に関しましては、今日お配りしてございますが、ちょうど6月3日に「知的財産推進計画2011」という冊子の形で取りまとめた計画をつくりました。6月3日によく知的財産戦略本部会合を開催できたと自分でも思っているところでありますが、お陰さまでこれを決めることができまして、187の施策が入っておりますが、それぞれの施策を何年度までに何省がどうやるんだということを全部工程表の形で詳細に書いてあります。それをまた毎年評価をしてまいります。後ろの方には、2010年につくりました計画についての評価もつけてございます。
 そういった具体的なアクションも含めた施策をつくっておるわけでございますが、その中で、今年の大きなテーマが人財でございます。人は宝だということでありますので、「ざい」という字は「材」ではなくて「財」です。人は宝だという気持ちで人財と書かせていただいておるところでございます。
 こうした人財の育成というのは一朝一夕ではまいりません。皆さんにいろいろと御検討をいただいて、御指導いただいて、知財人財育成プランというものを年内をめどに取りまとめていただきたいと考えているところでございます。各企業での人財、どういう人財が要るのか、あるいは大学、研究機関、弁理士、弁護士、更には私どものような官の世界でも皆さんと一緒にどうやってこういう人財を育てていくのか、それがどう競争力につながっていくのかということを見据えながら、御議論をお願いしたいと思っているところでございます。
 これまでも私どもがやらせていただいている知的財産戦略本部に関係していただいている先生方には、よく御承知かもしれませんが、本当にタイトなスケジュールを組みます。誠に申し訳ないのですが、タイトなスケジュールを組ませていただきます。妹尾先生が怪訝な顔をしておられますが、去年に引き続きあるいはそれ以上にタイトなスケジュールを組みますので、是非よろしくお願いをしたいと改めてお願いをする次第でございます。
 本日キックオフでございます。引き続きの御指導をよろしくお願いいたします。改めて皆様に感謝を申し上げながら、冒頭のごあいさつにさせていただきます。ありがとうございました。

○髙原参事官
 次に、今回委員をお願いいたしました方々を御紹介させていただきたいと思います。配付資料の中で附せんが付いております資料1に委員名簿がございますので、御参照いただければと思います。
 青山伸悦委員でございます。
 荒井寿光委員でございます。
 上條由紀子委員でございます。
 佐々木剛史委員でございます。
 澤井敬史委員でございます。
 杉光一成委員でございます。
 住川健委員でございます。
 妹尾堅一郎委員でございます。
 高倉成男委員でございます。
 中島淳委員でございます。
 八島英彦委員でございます。
 なお、本日、末吉亙委員、本田圭子委員は所用のため御欠席でございます。
 続きまして、事務局サイドでございます。
 先ほどごあいさつさせていただきました近藤事務局長でございます。
 それから、本来、上田事務局次長も出席させていただく予定でございましたが、本日は所用のため欠席をさせていただいております。
 続きまして、正面、向かいまして右側が芝田事務局次長でございます。
 正面、向かいまして左側、近藤事務局長の隣が安藤総括参事官でございます。
 私の左隣に藤井政策参与でございます。
 また、関係省庁として、今回は特許庁から総務部企画調査課の後谷課長、中村企画調整官にも御参加をいただいております。
 それでは、議事に入ります前に、本日の配布資料を簡単に確認させていただきます。
 議事次第の下に資料を重ねてございます。
 資料1、先ほどごらんいただきました委員名簿でございます。
 資料2、後ほど御説明いたしますけれども、本ワーキンググループの運営について(案)という紙でございます。
 資料3、同じく本ワーキンググループの公開の手続について(案)でございます。
 資料4、今後の進め方について(案)でございます。
 資料5、知財計画2011の概要でございます。
 資料6、「知財人財育成に関する現状と課題について」でございます。
 資料7、「特許庁における調査研究について」というタイトルの資料でございます。
 参考資料1がございます。本ワーキンググループの設置についてという紙でございます。
 それ以降の資料はメインテーブルのみでございます。
 参考資料1の下、妹尾委員から御提出をいただいております資料、「事業起点型イノベーション人財の育成」というものでございます。
 最後に、先ほど近藤局長からも紹介がありました、「知財計画2011」の冊子でございます。
 以上でございます。不足等がございましたら、お申し付けください。よろしいでしょうか。
 それでは、まず本ワーキンググループの座長をお決めいただきたいと思います。
 参考資料1、本ワーキンググループの設置についての資料でございますが、こちらの3.の(2)にございますように、ワーキンググループの座長は、委員の互選により決定することになってございます。委員の方々から御推薦はございますでしょうか。
 中島委員、お願いいたします。

○中島委員
 中島でございます。
 妹尾委員でございますけれども、大もとの競争力強化の専門調査会の会長もされておりますし、ここの人財育成ワーキンググループもこれに大変密接に関係しております。更にパワフルでございますし、エネルギッシュでございますので、妹尾委員にやってもらったらいかがかと思う次第でございます。

○髙原参事官
 ありがとうございます。
 ただいま妹尾委員が適任ではないかという御推薦がございましたが、ほかの委員の皆様いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○髙原参事官
 ありがとうございます。
 それでは、妹尾堅一郎委員に座長をお願いしたいと存じます。
 ここからの議事の進行は妹尾座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

(妹尾委員、座長席へ移動)

○妹尾座長
 妹尾でございます。ただいま推薦をいただきましたので、私が座長を拝命させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ただ、推薦の弁に1点誤りありました。エネルギッシュ、パワフルとありますが、私は夏ばてで大変な状況でございますので、その点だけは御了解をいただきたいと思います(笑)。
 それでは、私からごあいさつも含めて意見を申し上げたいと思うのですが、まずは本ワーキンググループの運営について、皆さんの御了解を得たいと思います。今後の進め方、その他についてお話をさせていただきたいと思います。
 本ワーキンググループの運営について定めたいと思います。運営については、参考資料1をごらんいただきたいと思いますが、参考資料1にありますとおり、座長が定めるとなっております。これについて座長として定めたいと思います。本ワーキンググループの運営及び公開手続について、事務局から説明を受けて、それからということにしたいと思います。
 髙原参事官、よろしくお願いいたします。

○髙原参事官
 それでは、お手元に資料2と資料3を御準備いただきたいと思います。両資料とも上位会合でございます「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の運営、公開の原則を踏襲したものでございます。
 資料2のポイント、まず「1.議事の公開について」でございますが、座長が非公開が適当と判断した場合を除き、ワーキンググループは原則公開、また、議事録につきましても、原則、会議終了後、発言者名付きで公開でございます。同じく配布資料も原則公開でございます。
 3.は座長は参考人を招致することができるという規定でございます。
 最後4.でございますけれども、ワーキンググループの運営に関して、その他必要な事項は座長が定めるという内容でございます。
 続きまして、資料3、公開の手続についてでございます。
 1.本ワーキンググループの開催につきましては、原則、会議開始1週間前までにホームページに掲載いたします。
 2.は傍聴の事前登録の期限について定めたものでございます。(1)一般(2)報道関係傍聴者と定めてございます。
 2.(3)その他でございますが、傍聴希望者多数の場合は制限することがございます。最後に、(3)の②は会議進行上の座長の権限について定めたものでございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 それでは、ワーキンググループの運営について資料2、公開手続について資料3にありましたけれども、これについて定めたいと思いますが、委員の皆さん、よろしゅうございますか。人財育成ということに関しての議事なので、それも配慮いただくと、こういう形が適切ではないかと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 それでは、資料2及び資料3ということで行いたいと思います。
 もう一つ、急な事情、私、先ほど申し上げたとおり、夏ばてがひどいので、例えばそういうようなことがあったときに、会の議事進行をしていただく方として、本ワーキンググループの副座長を定めておきたいと思います。副座長を私から指名をさせていただきたいと思いますが、実は本日は欠席の末吉亙委員に副座長をお願いしようと思っております。推薦の理由は、知財人財育成に関して、長いこと私どもと一緒に強力に進めて、特に弁護士会その他を中心に幅広く人財育成を見ていらっしゃるとともに、こういった会の議事運営については、非常にたけた方なので、末吉先生にお願いできればと思います。本日御欠席ですが、後ほど本人の御了承を得るということで進めさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○妹尾座長
 欠席裁判ということで、弁護士が何と言うか分かりませんけれども(笑)、末吉先生にお願いをしようと思っております。
 政務官、もう少ししてからでよろしいですか。

○阿久津大臣政務官
 大丈夫です。

○妹尾座長
 政務官がお越しになりましたけれども、ごあいさつは後ほどいただくことにして、事務的な手続を先に進めさせていただきたいと思います。
 それでは、ワーキンググループの今後の進め方について、事務局から御説明ください。髙原参事官、お願いいたします。

○髙原参事官
 資料4をごらんいただきたいと思います。今後の進め方について(案)でございますけれども、本日8月2日に第1回会合を開催させていただいております。
 今後でございますけれども、9月以降11月にかけまして、およそ月1回のペースで議論を進めてまいりたいと考えてございます。
 12月には報告書の取りまとめの会合、今のところ第5回と考えてございますけれども、議論の進捗を踏まえて、第6回会合を予備とさせていただきたいというところでございます。
 そういたしまして、年明け1月には、取りまとめいただきました報告書を専門調査会へ最終的に報告をいたしたい。このように考えております。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今の御説明について、何か御質問あるいは御意見ございますか。よろしゅうございますか。
 先ほど近藤事務局長がタイトなスケジュールで申し訳ございませんとおっしゃっていましたが、近藤事務局長は言ったことは必ずやる方なので、なるほどと思いました。言ったとおりタイトなスケジュールだということが分かりました(笑)。多分私の勘では6回目の会合の予備もあり得るのではないかと思います(笑)。恐縮ですけれども、皆さん、その点は御了解をいただければと思います。
 それでは、資料4のスケジュールで検討を進めさせていただきたいと思います。
 ここで議論に入りますが、その前にせっかくですので、政務官からごあいさつを賜れればと思います。よろしくお願いいたします。

○阿久津大臣政務官
 今日はありがとうございます。知財戦略担当の政務官をさせていただいております、阿久津幸彦でございます。玄葉大臣の下で福山内閣官房副長官、副大臣とともに知財戦略の推進に取り組んでおります。
 本日はお忙しい中また暑い中、人財育成という本当に大事なテーマのためにお集まりいただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。
 去る6月3日に知財本部の委員、専門委員の皆様に御尽力をいただいた知財計画2011を知財戦略本部で決定しました。その際には総理から知財計画は大変重要であり、政府としてその実現に力を尽くしていくと発言をいただいております。これからは知財計画2011のそれぞれの施策を具体化していく必要があります。その中でも知財人財育成プランの確立に向けた検討は、特に重要なことであると考えております。制度や設備があっても、これを使うのは人であり、人財の育成がすべての取組の根幹となります。
 今回は人財育成について時代のニーズを踏まえた御議論をいただき、年内をめどに将来の我が国の人財育成の在り方を方向づける、知財人財育成プランをとりまとめていただくことをお願い申し上げます。
 その中でも1点だけ私から特にお願いしたいことがございます。妹尾先生がたびたび例に挙げられるインテルのインサイドのビジネスモデルがございます。こうしたクレバーというか、スマートというか、知財を活用した戦略を経営戦略としてつくり出すことができる人財、経営層の育成が我が国には必要だと考えております。我が国は既に新興国から追い上げられる立場になっています。そうである以上、標準化を含め知財を活用して、競争の土俵を有利に設定していくことが不可欠となっています。こうした知財戦略を生かせる人財の育成につながるようなプランの検討を是非お願いしたいと思います。
 本日は、知財分野の第一線にて御活躍の人財育成に明るい有識者の御参加をいただいておりますので、現場での御見識を議論に反映していただき、意欲的な人財育成プランとなることを期待しております。
 委員の皆様には御多忙のところ恐縮ですが、我が国の知を活用して、再び世界で輝けるように、政治としても努力してまいりますので、お力添えを賜りますようよろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。

○妹尾座長
 どうもありがとうございます。今、知を活用する人財ということなので、我々も一生懸命育成プランを練りたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、早速議論に入りたいと思います。今回はキックオフ会合ですので、全体の状況の俯瞰的なすり合わせ、共通化をしておきたいと思います。そこで、事務局にお願いをして、知的財産推進計画2011の概要の報告も含めて、関係資料を御説明いただきたいと思います。髙原参事官、よろしくお願いいたします。

○髙原参事官
 それでは、資料5、資料6、資料7を用いまして、御説明申し上げます。
 まず資料5でございますけれども、知財計画2011の概要でございます。
 表紙をおめくりいただきまして、知財計画2011についてという絵が盛り込んであるスライドがございます。高速なコミュニケーションを可能とするデジタル・ネットワーク、グローバル・ネットワークで世界中の市場が連結され、シームレスにつながっております。これまでは各国の中で閉じていたといいますか、済んでいたのに対しまして、ボーダレス化が本格的に進んで、国境を越えて世界がシームレスにつながるグローバル・ネットワーク時代が来たということで、コンセプトをまとめてございます。加えて3月にございました危機の中の危機である東日本大震災を踏まえまして、今後の成長基盤となるものを定めたのが知財計画2011でございます。
 震災への対応を含めまして、下にございますような4つの柱がございます。1つ目が国際標準化のステージアップ戦略、2つ目が知財イノベーション競争戦略、3つ目が最先端デジタル・ネットワーク戦略、4つ目がクールジャパン戦略でございます。
 各戦略につきまして、簡単に2枚目以降のシートでごらんただきます。   2番目のシート、既に一番上、真ん中の枠内は申し上げました。一番下の枠の構成につきまして、冒頭近藤事務局長からも紹介がありましたけれども、知財計画2010からの施策を着実に進めるとともに、震災対応の新たな施策を追加して、全部で187の施策を盛り込んでございます。それぞれの施策につきまして、担当府省を含めた工程表も付しております。
 3ページは「戦略①、国際標準化のステージアップ戦略」でございます。
 各企業が戦略的に知財マネジメントを行って、国際化に対応していくことが何よりも重要ということで、2010年には左下にございますような7分野を国際標準化戦略の特定分野といたしまして、アクションプランをまとめました。この実行、検証を進めていくということでございます。
 更には戦略の実行を推進するために、左下にございます、標準化活動の更なる活性化、認証の戦略的活用、アジア諸国との連携強化といった基盤的施策を追加しております。
 4ページは「戦略②、知財イノベーション競争戦略」でございます。
 各国の「知財システム」が激しい国際競争にさらされていることから、アジア・世界で一層活用されるような知財環境を整備していこうということで、1つめの柱が、我が国の知財システムの競争力強化でございます。
 2つ目は、中小企業を含む我が国企業そして大学が生み出す知の活用を促進していくという柱でございます。
 3番目の柱は、本日のこちらでの御議論に最も関係しておりますが、知財戦略を支える人財の育成・確保ということでございまして、グローバル・ネットワーク時代の知財人財育成プランをしっかり確立すると書いております。
 戦略③につきましては、5ページでございます。コンテンツのデジタル化・ネットワーク化がグローバルに急速に進展してございます。このデジタル・ネットワーク社会の先端を切り開き、日本の経済成長につなげていこうということで、4つの重点施策をこちらに立ててございます。
 1つには、電子書籍の市場整備の加速化あるいは知的資産のアーカイブ化を促進していくということでございます。
 2つめは、クラウド型コンテンツサービスに関する著作権法上の法的リスクの解消も含め、デジタル化・ネットワーク化推進の基盤を整備していこうということでございます。
 3つめは、グローバルな著作権侵害対策を強化していこうということ。
 更には4つめ、二次創作の円滑化でありますとか、若手クリエーターの育成も含め、デジタル制作基盤を強化していこう、こんなことで戦略③を書かせていただいてございます。
 最後に「戦略④、クールジャパン」でございます。6ページにもありますように、海外で人気の高い我が国のコンテンツ、ファッション、食、伝統文化等、クールなジャパンを推進して、日本の経済成長につなげていくという認識の下で、我が国の誇るべきコンテンツを発掘、創造し、対外的に発信し、更に拡大をしていく、こういったサイクルを強く回していこうということでございます。
 以上、知財計画2011の各論、戦略①~④につきまして、概略を御紹介させていただきました。
 続きまして、資料6でございます。「知財人財育成に関する現状と課題について」という資料をごらんいただきたいと思います。
 1ページは「目次」でございますけれども、第1部は「知財人財育成プラン策定の背景」、また、第2部は「知財人財育成に関する現状」をセクターごとにまとめたものでございます。最後、第3部「知財人財育成に関する課題」ということで、本日はここでお示しします論点も御参照いただきまして、御議論をお願いしたいと考えてございます。
 2ページでございますが「知財人財育成プラン策定の背景」でございます。
 先ほど知財計画2011の概略でも申し上げましたようにグローバル・ネットワーク時代が到来したということでございます。グローバルに活躍する知財人財が正に求められているということで、知財計画2011の策定に至る専門調査会の場でも、競争力強化のために標準を含む知的財産を戦略的に活用できる人財、知財マネジメント人財の育成・確保が不可欠であるという御意見、それから、弁理士の方を含む知財専門人財についても、これまでの国内志向を脱し、グローバル化という観点で人財育成をしていくことが急務であるといった御意見をいただいたておりますことを受けまして、知財計画2011に知財人財育成プランの確立という施策を盛り込んでございます。
 一番下の枠にございますけれども、まずは知財人財育成プランの策定ということで、専門調査会の下にこのワーキンググループを設置させていただいて検討を進め、年内をめどに報告書を取りまとめたいと考えてございます。
 3ページ以降に「知財人財育成に関する現状」をまとめてございます。
 具体的な内容は4ページ以降、まずは弁理士の方でございますけれども、こちらのシートに書いてございますとおり、2000年の弁理士法改正に伴って、量的に拡大をしているということでございます。また、2007年の法改正で実務修習制度、継続研究制度が導入され、資質の維持、向上が図られておりますけれども、グローバルに知財を活用する、あるいはグローバルな事業展開を支援できる弁理士の育成が不可欠ではないかということでございます。
 5ページの法曹人財については、新司法試験制度に移行した後、一定の割合で知財法を選択した合格者が出ていることがお分かりになるかと思いますが、弁護士知財ネットへ参加されている弁護士の方の規模なども含めて、更に活動を活性化させる必要があるのではないかということでございます。
 6ページ、各企業における知財担当者の現状でございますけれども、量的にはやや一定数に達したようにも見受けられますが、知財専門職大学院の設置あるいは知的財産管理技能検定の実施によりまして、知財の専門知識を習得する環境が整いつつあるという状況かと思います。ただ、グローバル化に対応して、知財を戦略的にマネジメントできる人財を育成する必要は今後まだあるということでございます。また、中小企業においては、知財関係業務を担当する方を十分に確保できない状況にあります。
 7ページ、大学・TLOの知財担当者でございますけれども、総数は増加傾向にはあるものの、1つの機関当たりの知財担当者になりますと、3名程度ということでございます。これに関連して、産学官の技術移転、ベンチャー企業の設立実績等は諸外国、特に米国と比較して進展していないという現状も見られるところでございます。
 最後は8ページ、知財教育でございます。知財に関する授業科目を開設する大学も一定の規模に達しておりまして、知財教育機関の間でも連携の動き、右下に知的財産研究・専門職大学協議会の設立と書いておりますけれども、こうした動きがございます。知財マネジメント人財でありますとかグローバル知財人財の育成に向けては更なる環境整備が必要でございます。また、高等専門学校、工業高校などに対する知財教育の推進も引き続き重要ということでございます。
 こうした現状も踏まえまして「3.知財人財育成に関する課題」でございます。
 10ページは先ほどお話した内容と重複しておりますが、専門調査会における知財人財育成に関する主な意見の柱といたしましては「知財マネジメント人財に関して」及び「グローバル人財に関して」がございます。
 知財マネジメント人財は、最初のポツでございますけれども、従来のように研究開発の成果を守るために事後的に知財権、特許を確保するだけではなくて、事業構想を起点とした特許の確保や、国際標準化戦略、デザインやブランドの価値を高める権利の確保、あるいはあえて権利化をしないというノウハウ秘匿を含む、より高度で総合的な知財マネジメントを行える人財育成が必要なのではないかということでございます。
 グローバル知財人財に関しては、知財の取得・活用はグローバルな活動でございますので、こうしたグローバル化に対応した知財人財をますます充実させていく必要があるということでございます。
 こうした御議論を踏まえまして、今般の知財計画2011には、人財関連の施策として、11ページにまとめました施策を書き込んでいるということでございます。
 (イ)は正にここで御議論いただくグローバル・ネットワーク時代の知財人財育成プランの確立でございます。
 (ロ)は知財システムを支える人財育成の強化でございます。こちらにつきましては、項目だけでは分かりにくい部分があるかもしれませんが、先ほど申し上げましたこちらの冊子をごらんいただきますと、20から21ページが今のスライド11に列挙しております項目の内容に対応している部分でございます。「知財マネジメント人財育成の強化」につきましては、技術経営専門職大学院あるいは高等教育機関における教育を充実させていくこと、そして、産業界を含め、知財マネジメント人財を充実させるためにマネジメント層も含め啓発を強化していくといった、冊子20ページの(ロ)の最初の施策をはじめとして、各層、例えば、研究開発コンソーシアムにおける研修の強化、弁理士、中小企業診断士の方々の世界に加えて、行政の分野においても審査官の研修強化などの施策も盛り込み、2011年は正にこうした施策を実施していくということでございます。
 資料6に戻りますが、本ワーキンググループの今後の御議論に向けた1つの視点でございますけれども、まず12ページの1つ目のパラグラフにございますように、グローバル・ネットワーク時代における産業競争力の強化に向けて、知財マネジメント人財やグローバル知財人財が求められているということでございます。
 そこで2つ目のパラグラフですが、国際競争力の強化に向けて、研究機関、大学・教育機関等々、各セクターにおいて必要とされる知財人財像を明確にすることが不可欠ではないか。これがまず第1段階でございます。その上で、必要とされる知財人財の育成をいかに図るべきかを議論していただけないかということでございます。
 12ページの下の図は、各セクターの関係について、企業関連部分を具体的に書いております。グローバル対応、知財マネジメントという観点でいかに人財育成を図っていくか、そして、そのほかのセクターとどのように連携しながら、その目標を達成していくかという問題意識でまとめております。
 資料6の最後、13ページでございますけれども、各セクターにおいて必要とされる知財人財像の明確化という意味合いで、ここでは企業における競争力強化に向けて必要とされる知財人財像を明確化するための視点を例として示させていただいてございます。
 下の枠内の最初のポツが正に企業内における視点でございますけれども、グローバル化への対応を図りつつ、三位一体の経営戦略を実現し競争力強化を行っていくため、いかなる事業経営の在り方が必要か、そして、そこに知財部局の方はどのような貢献をすることができるのかといったことでございます。
 2番目以降のポツは、企業と連携して取組を進める各セクターでどのような人財像が求められるのかを、大学・教育機関、弁理士・弁護士さんに代表される専門家、研究機関・TLO、行政機関ということで併記しております。
 このような視点の妥当性につきまして御議論いただければと思いますし、ここでは企業を中心とした例を示しておりますが、ほかのセクターにつきましても御意見等を頂けましたら幸いでございます。
 最後、資料7は「特許庁における調査研究について」でございます。
 知財計画2011を受けて、特許庁においても我が国の知財人財育成の現状と課題、全体像を把握して、今後の知財制度の在り方の検討にも資するような調査研究を行うこととされております。
 調査項目は2.にございますけれども、具体的には(1)~(4)の国内外の文献調査、国内に対するアンケート調査、更には国内、海外に向けてのヒアリングでございます。こうした調査研究も踏まえまして、本ワーキンググループでの知財人財育成プランの確立に向けた議論を進めていければと考えてございます。
 特に2.(2)の国内アンケート調査でございますが、取りまとめに時間を要するということもございますので、表紙の下に別紙として、各セクターに向けてのアンケート項目の案を付けてございます。これにつきましても委員の方々からコメント、御意見をちょうだいできれば幸いでございます。
 別紙1ページが企業向け、3ページが弁理士・弁護士事務所向け、4ページ、5ページが大学・研究機関向け、6ページが地方自治体向け、7ページが税関向け及び小中高校向けの、それぞれ、アンケート項目案でございます。
 必要に応じまして、こちらの項目につきましては、後ほど特許庁からも補足していただければと存じますけれども、資料7の概要は以上のとおりでございます。
 長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 資料7を御説明いただきましたが、これは特許庁で今正に調査を開始されていると思います。後ほどこれについての御意見をまた伺いたいと思います。
 それでは、事務局から説明をいただいたので、大体このワーキンググループができた経緯あるいは背景について、皆さん御承知いただけたと思っております。
 委員の皆さんの御意向、御意見を伺いたいと思いますが、座長になるとなかなか意見が言えなくなるので、最初の間隙を縫って私の意見を言わせていただこうと思っております。今、事務局が配ってくれたものが2つあります。それと机上配付のものがありますので、これについて、私の意見を表明させていただいてよろしゅうございますか。ありがとうございます。
 実は私うっかり知財にもかかわらず、何もコピーライトの作業を入れていません。これは私がつくった資料でございます。本当に4スライドで1枚で良いのですが1スライド1枚で印刷されている。4枚もやると資源上もったいないと思います。
 最初を見てください。知財人財育成総合戦略ができたのが2006年1月30日です。当時、戦略本部の中に知的創造サイクル専門調査会がございまして、ここで随分人財育成に関する議論はあったのですが、それを集大成しようということでまとめられたのがこれであります。当時、これを御指導くださったのが現在の荒井委員でございまして、事務局長の時代にこれを鋭意進めてくださいました。
 実際にこの中身がどうなったか、とりまとめが出ているのは『知財学会誌』です。2008年になってようやく出ました。学会誌というのは大体遅れるものなんですけれども、このときには既に事務局長がかわられて、小川さんにかわられて、その後に素川さんにかわられました。事務局長の名前で育成戦略についてというものがここに書かれております。
 振り返りますと、このときに知財人財というものを3層に分けて議論しました。知的財産の専門人財というのは、今でいいますと、出願だとかを担う、いわゆる専門家の方です。知財部員だとか弁理士の先生方、あるいは弁護士さん、いわゆる知財そのものに関わっている法務的なものをきちっとやられる方を中心に専門人財と呼びました。
 その次に知的財産を創出する、研究開発技術の関係です。それから、それを活かして事業をやるというマネジメント人財、これが第2層と呼ばれました。
 それから、裾野人財という言葉があります。これは私どもも随分事務局と議論をしたんですが、結局は押し切られまして、裾野人財という言葉になりました。これは一般国民ということであります。 あるいは次世代の若い人たちが発明や創意工夫に取り組んで、いくいくは第2層、第1層になっていく方々です。こういう3層構造を基本にしたのがこのときの考え方です。
 そして、推進期間については、2005年から2007年が第1期、第2期が2008年から2011年、第3期が2012年から2014年ということで、ホップ・ステップ・ジャンプという形になったわけです。ところが、当然これは10年間の計画でありますから、ある段階でローリングをしなければいけないということになると思います。もちろん10年一律のごとくこの方針だけで進められるほど、国際情勢、環境はステーブルではないわけです。
 今回、私はこれを2.0にバージョンアップすることだと理解しております。そのときに参考までに次のページを開いていただくと、総合戦略の10つの重点施策がございます。ここには知的財産人財育成推進のための協議会の創設がトップにありまして、これは正にすぐできて、関係8団体が協議会をつくり、今も活発に活動をしているものです。ちなみにそのときに最初の幹事を仰せつかったのが、私と現在委員で出席されている高倉さんです。2人でこれを立ち上げて、当時の荒井事務局長が全面的に強力な後押しをしてくださいました。それまで個々の団体がそれまでやっていた活動を相互に乗り入れをしながら、情報交換をしながらやるという1段階進んだ形になりました。
 2番目、知的財産教育研究への支援プログラムの充実、先端技術を理解できる人財等の誘引活用、実務経験者の活用、キャリアパスの確立による融合人財の育成、海外派遣など海外との交流の促進、人財のネットワーク化、学会の活用と支援、教材教育ツールの開発、知的財産人財に関する民間施策の充実ということがありまして、それぞれかなり進んでいるものもあれば、それなりに進んでいるものもあれば、あと一歩のものもあればということです。これが5年以上に実施されてきて、そして、進んできたという状況であります。
 これを振り返って、どういうふうになるのかというのがあります。それが次のページであります。これが人財育成総合戦略2.0へということです。私は「材」を「財」という字に変えた初めての人間ではないかと思いますが、これはなぜか打ち間違えをして「材」になっております。
 「じんざい」の「ざい」というのは、御存じのとおり、5段活用をするのが定番であります。一番最初は人在、ただいるだけの人というのがありました。2番目が材料として使われるという意味での人材、3番目は価値を持つ人財、4番目は何かというと、いると困るという人罪(笑)、5番目にはもう終わってしまったという人済と書く(笑)。これが「じんざい」の5段活用ということですが、私は3番目の人財でいきたいと思っています。
 さて、モデル1、現在、使われているモデル1の基本コンセプトは何だったんだろうかと振り返ると、こういうことが言えると思います。正に知的創造サイクルの専門調査会できたことでありますので、知的創造サイクルの技術基点型モデルが基本でありました。すなわち技術という知的財産ができて、それを保護・権利化して、それを活用するというモデルです。ですから、これはコンテンツ系でいけば、いいキャラクターみたいなものができて、それが著作権で保護して、それでクールジャパンだねという回り方をする。これを私は、現在いろんなところで技術王道と呼んでいます。技術王道の回り方です。オワンクラゲからいろんな科学的な知見ができれば、それは30年後に実を結ぶということでありますから、これは科学技術に関しては、王道の進め方だと思います。
 これが私は現在急激に変わってきたという認識をしております。それは何かというと、逆回りをしているということが、最近のイノベーションの世界では極めて多くなってきている。事業創造サイクル、下に書いてありますのがそれです。事業シナリオ基点型モデルが基本になりつつある。これは先ほど政務官が言ってくださったインテルのインサイドモデルとともに、私がアップルのアウトサイドモデルと呼んでいるとおり、アップルはある画期的な技術ができたからiPodをつくろうと言ったわけでは全くありません。スティーブ・ジョブズがこんなことをやりたいと言ったところから発端して、それをどう事業競争力に高めるかと動いて、そして、技術調達はどうするかといって、日本から技術を7割、8割調達しているという状況です。そうすると、日本は完全に下請状況に入るとなっているわけであります。
 最近のイノベーションモデルは、ほとんどこちら側で動くようになってしまったということがあって、技術王道に対して、私は事業覇道と呼んでいます。言わば三国志の状況でいえば劉備対曹操の戦いである。全くコンセプトが違う者同士がぶつかり合うとどうなるかという話になります。
 モデル1の基本コンセプトの2番目は、知的創造をしたときに保護・権利化を主軸にする。したがって、保護、権利化の専門人財がたくさん育成させなければいけない、強力にならなければいけないということで始まったわけでありまして、正にこの戦略のおかげで大分充実をしてきた、見事に進んできたと私は見ております。弁理士さんの数も増えたし、あるいは知財部員の人たちも数の上下はあるにせよ、かなり充実してきたと言えると思います。
 3番目、しかしながら、どうしても国内市場中心という慣性が働いてしまう。いまだに特許の出願件数は、日本は米国と比して格段に違うのは内々特許がほとんどであるということだと思います。こういうことを考えてみると、国内市場重視だということは変わらないし、人財もそれに対応した人財であるということがわかります。しかし、グローバル経済の進展、先ほどの髙原参事官のお話にあるとおり、デジタル化・ネットワーク時代になりますと、グローバル市場そのものが出てくるわけです。そうすると、モデル2で我々が考えなければいけないのは、事業戦略、イノベーション戦略を主軸にしなければいけないし、なおかつグローバル市場を重視したときに、それに対応できる知財人財が正に急務として動かなければいけない。そうすると、モデル1を否定するのではなくて、モデル1を片方で踏まえつつも、モデル2を導入、移行、重点化あるいは加速化しなければいけないわけです。そういうのが問題意識として生じるのではないかと思います。したがって、育成戦略の2.0はモデル1とモデル2の両輪を回さなければいけないという大変で面倒くさいことになってきたという状況ではないかと思います。 そうすると、その次の戦略2に入りますけれども、環境の変容があります。例えば2011で見たように、日本の知財システム自身が、俗にいうガラパコス化を始めて、知財システム、制度を含めたあらゆるものについての知財システム、これは裁判も含めていますが、あるいは事業戦略も含めて、日本が世界に比してリードしていたものが、中国、韓国の台頭によって、実は日本をすり抜けられてしまう。知財システム自身の競争力がなくなってきているということが問題であるわけです。
 2番目に、次世代産業モデルにおける知財の位置づけの変容と多様化が起こっていて、従来のように保護・権利化したらビジネスモデルが動くという形ではなくなってきている。そうではなくて、保護をするものもあれば、あえてしないものもあれば、権利化するものもあれば、秘匿化するものもあれば、標準化するものもあれば、標準化をつぶしにいったり、あるいは標準化をしないものもあれば、ありとあらゆるあの手、この手が出てきているわけです。そのことを踏まえますと、知財人財もそういうことを対応できる、あるいは先手をとる人財がいないといけないということであります。
 更にもっと大変なのは、テクノロジーで特許イコールで、実は意匠権は別だと思っていた。ところが、デザインとテクノロジーが融合を始めた。御存じのとおり、アピアランスデザインだけではなくて、デザインそのものが技術と密接に関係する。先ほどの例でいえば、iPodのインターフェースデザインは、明らかにアピアランスデザインではなくて、テクノロジーを最大限に生かすデザインになっている。それから、iPodのような小さいものにどうやってあれだけのものが押し込められるか。これはデザイナーの協力なくては、全く動かないということですから、特許権と意匠権のミックスが始まってきたと考えざるを得ません。
 それから、次世代知財人財のビジネスモデルと競争力の変容、すなわち知財人財自身がどういうビジネスモデルをやるか。企業においては、知財部門自身のビジネスモデルが変わってきたということでもありますし、弁理士さんのビジネスモデルも変わってきたわけです。弁護士さんのビジネスモデルも変わってきたということだと思います。あるいは我々知財に関する研究者のビジネスモデルも変わらなければいけないのかもしれません。そして、知財の取得人財から活用人財への重点が移行する。そして、施策的にはいろんなものが起こりますということが、ここでの話です。
 これ以上やると、私の授業がますます発展してしまいますので、この辺に押さえておきたいと思います(笑)。いずれにせよ、前の1.0はかなり充実して進んできたと思います。そこにおける人財育成については、配られた知財学会のものがございます。よくバックナンバーが残っていたと思うんですが、入手してきました。これは私の論文が巻頭論文で入っていますし、杉光委員のアプローチの論文も入っています。このときの考え方というのは、私がここでいろいろ整理させていただいているものを御参考にしていただければと思います。
 もう一点、参考資料の下に、机上配付で20ページほどのワードの資料が置かれていると思います。これは未定稿、転載はいけません、取扱いに注意してくださいと書いてあります。これは私が想定しています先ほどの技術王道型の人財ではなくて、事業覇道型の人財育成をするにはどうしたらいいかということの論文です。これは東京大学の私どものプロジェクトが9月末に発刊する3刊本の中の1つの論文ですので、これを配ってしまうと著作権上いろいろ問題があるので、未定稿、取扱注意で出させていただいています。これは委員の先生方のみにごらんいただきたいと思っています。
 私が著作権上のちょんぼをいたしました。一番右下にコピーライトが2010と入っているんですが、これは2011の間違えです。いかに使い回しのワードを使っていたかというのがばれてしまいます(笑)。この中にいろいろ私の考え方がありますので、これをもって私の意見表明とさせていただきたいと思います。
 以上です。長々お話をさせていただいたんですが、これが私の委員としての意見でございます。何か御質問等がございましたら、いかがでしょうか。
 これが問題意識です。1.0を否定して2.0にいくのではなくて、1.0を踏まえて、次に必要なものをがちっと入れるというのが今回の人財育成戦略ではないかと思っています。
 もう一つ、先ほど髙原さんが説明してくださったものを見ると、やっていることを並べただけではないかとおっしゃる方がいるかもしれません。例えば知的財産推進の2011の20ページ、21ページに中身が書いてあると参事官がおっしゃったんですが、21ページの上に中小企業診断士への研修の促進とあります。これは中小企業の方にも知財マネジメントを学んでいただきましょうということで、だれも否定はされてないと思います。良いことだとおっしゃって、実際に研修が始まったら、特許法1条からの解説が始まるということでは全く意味がない(笑)。こういうことをきちっとしたいと我々は思っています。特許法を学ぶことがいけないことだと言っているのではなくて、中小企業診断士の方に学んでいただきたい知財マネジメントは、先ほど申し上げたような産業モデルとビジネスモデルを踏まえて、どうやって特許を取ったり、取らなかったり、隠したり、あるいは標準を取りにいったり、取りにいかなかったり、つぶしにかかったり、いろんなことをあの手、この手でやる。そういう活躍を中小企業診断士の方々にしていただきたいということがあるわけです。そういう中身をきちっと踏まえないと、これが相変わらずアリバイ型研修になってしまう。アリバイ型教育というのは、そんなことはやっていますといって、中身を見た途端にがっくりするという話です。100人集めて講義をしたら、研修をやったという時代ではないということを我々は強くここで訴えたいと私は思います。知財人財育成の現場を預かっている人間としては、数の論理で何人研修しましたという話はナンセンスです。それはやめましょう。どんな研修をして、その人たちがどんな活躍を実際にできるようになったのですかという話を進めたいと思っております。
 それでは、いろいろな意見を皆さんからいただきたいと思います。今日はフリーディスカッションということですので、皆さん自由に御意見、思っていることを述べていただければと思います。ちょうどあと1時間あるといいますか、1時間しかないといいますか、順次各委員の先生から御意見をいただきたいと思います。あっちに飛んだり、こっちに飛んだりして構いません。皆さんからということでいきたいと思います。
 早速、高倉委員、よろしくお願いいたします。

○高倉委員
 今後、知的財産総合戦略バージョン2をつくるということだと思うんですが、キーワードとして、グローバル・ネットワークという言葉が幾つか使われていたので、そのことの意味を確認したくて発言させてもらいます。
 事務局の説明によると、高速コミュニケーション、デジタル・ネットワークという言葉が使われていたんですが、グローバル・ネットワークは、決してグローバルな通信ネットワークという狭い意味ではなくて、もっと広い意味で使っているのではないかと思います。知財との関連でいうと、知的創造サイクルの研究開発、権利保護、事業化と3分割する、あるいはもっと細かく分けたとき、一つひとつの区分をどの国でやっていくのが一番最適かということを考えながら、企業のイノベーションとか経営を、あたかも世界がシームレスであるかのように実現をしていくという意味で使われていると思います。
 その意味で、グローバル・ネットワークの時代と言われると、インターネットなどを思い浮かべてしまうのですが、多分受け止めるべき理解としては、グローバル・マネジメントの時代における知財戦略人財の在り方とか、あるいはイノベーションのグローバル化、シームレス化、フラット化の時代における企業の知財戦略に資する人財の育成がいかにあるべきかということではないでしょうか。グローバル通信ネットワークの時代というと、著作権とかビジネスモデル特許とか、そういう狭いイメージになってしまうおそれもあるので、もし先の理解でいいのであれば、実はこの言葉の意味は広いんだと理解してスタートしていかないと、これからの知財総合戦略はできにくいのではないかと思ったんです。そういう理解でいいのかどうかまず確認させていただきます。

○妹尾座長
 御指摘は私も2~3日前に事務局と大議論をやりました。これはどういう意味かというのが分からないところです。これについての説明と我々はどう考えようかというのが2つあります。
 説明は安藤総括参事官、お願いします。

○安藤参事官
 お配りしております「知財計画2011」は、6月3日にまとまり、現在、各方面に説明をしております。冒頭の1ページから6ページまでは、特に近藤局長の肝いりで、思いをまとめさせていただいています。今、委員御指摘の趣旨をしっかりと書き込ませていただいております。単にインターネットのグローバル・ネットワークということではなく、むしろ、インターネットも使いながら、グローバルなコミュニケーションを高速瞬時に行っていく。さらに、事業創造の際にも、フィードバックを含めて、あっという間にビジネスモデルが展開していく。そういう時代に、どのように新しい知を生み出し、活用していくのかが大事になってきている。一言では語り尽くせませんが、こんな問題意識を、この文章の中にすべて埋め込ませていただいております。是非、お時間のあるときにごらんいただければと存じますが、ここが立ち位置でございます。

○妹尾座長
 多分これは何となく分かったようで、分からないようなところがあるので、今、安藤さんが言われたような背景があるということを我々は踏まえたいと思います。
 具体的にいえば、私は3点あると思っています。1つは何かというと、正にグローバル・ネットワークというのは、インターネットその他を通じた物理的なレイヤーの話が1つです。それによる技術、情報の加速的普及展開がある、あるいは加速的漏えいがある。加速的模倣があるという話です。
 2番目は何かというと、我々が前提にしていた機器だとか、機械だとか、そういった物、ハードウェアはほとんどがスタンドアローンではなくて、ネットワーク製品になったということです。ネットワーク製品になった途端に知財の在り方が全く変わってくる、あるいは知財を抑えれば勝てるという状況では全然なくなってきて、価値形成がネットワーク型に移行したときにどうなるか。皆さんよく御存じのとおり、昔のワードプロセッサを考えてみたら、ハードウェアもソフトウェアもないインテグラルな時代でした。それをハードウエアとソフトウエアに分離したインテルとマイクロソフトが主権を握った。しかし、今度は分断したものをネット側にグーグルが価値移行をした。そうすると、単体、単層で勝っていたものは、特許的には抑えることができたけれども、複合体、複層、ネットワーク製品になった途端に価値形成と知財マネジメントは全く違うやり方になってきた。ネットワークというのは、恐らくそういう意味があるというのが第2番目です。
 第3番目は、我々のネットワークというのは、当然のことながら知財に引き寄せていくと、知財人財のネットワーク化はどうなっていくかという話だと思います。ですから、グローバル・ネットワークでないと、国内の村社会で知財村のネットワークをいくら強くしてもしようがない。グローバルな知財ネットワークないしはグローバルの横断的な知財、事業、いろんなものを含めたネットワーク化がされないといけない。こういう幾つかのレイヤーで我々は理解したいと思うんですが、そういう感じの整理を少ししていきたいです。
 高倉委員、問題の御指摘をどうもありがとうございました。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 今回こういう形で知財の人財を総合的にやるというのは、非常にタイムリーだと思いますので、是非成果が上がるように、みんなで力を合わせてやったらいいと思います。
 それで、正に妹尾座長がおまとめになったように、モデル1をつくった。これは日本としても快挙だったと思います。ただし、それから5年の間に世の中がそれ以上に変わってきたということだと思います。あのときに8つの団体はそれぞれみんな大変努力をしたわけで、それは高く評価されると思うんですが、今回、中国が新幹線の特許を出してくるとか、技術輸出について、その後どう変わるかなどは、いろんな意味で世界的なビジネスモデルあるいは国際競争が変わってきているということなので、ここはちゃんとやっていますということよりも、新しい時代にいかに合わせていくかという危機感を持って取り組んだ方がいいのではないか。したがって、それぞれみんな研修をやっているわけですから、研修をやっているところへ避難するということでは決してなくて、やはり新しい時代に国全体で合わせていこうという前向きな形で危機感を持つことが大事だと思います。そうしませんと、どうしてもみんな防衛的な話になるんです。現状しっかりやっていますという話になってしまうので、そうではなくて、そういうことに合わせていく。
 その際に社会あるいはユーザー、顧客、カスタマーサティスファクションというか、そういう観点の切り口ももっと取り入れたらいいのでないかと思います。どうしても今までは保護、活用という観点から見ていましたので、そうではなくて、お客さんから見て、あるいはユーザーから見て、こういう知財の制度がうまく回るように人財が育っているか。例えば特許庁がどうかとか、あるいは裁判所がどうかとか、税関はどうかとか、それを動かしている人財がちゃんとこういう時代に合っているのか。先ほどのいろんな数字の資料なども、政府の人財は十分かというのは余りなかったです。特許庁とか裁判所の数字どうなっているか。法曹人財といって弁護士は書いてあるけれども、裁判官は書いていないとか、あるいは税関で偽物対策をやってくれているかとか、外交交渉でしっかりやってくれているかというのは、多分こういう知財を利用するユーザー、お客さんからの希望だと思います。だから、そういうことにもきちんと取り組む。
 それから、国際比較をもっと入れていったらいいのではないかと思います。今まで日本では非常に精緻にこういうものをつくってきたんですが、何度も議論が出ているように、国際的に連携してアライアンスを組んでやるとか何とかというときに、日本のそれぞれのサービス及びそれをやっている人財がちゃんと国際プレイヤーとして育っているかということを数と質の両面で見ていくと、今回のこともいろんな切り口で案が出てくるのではないかと思います。
 もう一点、人財育成は研修するとか、教育するということは大事なわけですが、法科大学院とか知財専門職大学院とかいろいろつくって、その評価についても、どちらかといったら厳し目になるかもしれませんけれども、それもしっかりやって、もっと立派なものに更に発展させる。これも前向きに見て発展させていくことがいいのではないかと思います。一応ここの数字などを見ると、あるとは書いてあるんですが、だんだんと入学する学生が減っているとか、あるいは企業も派遣する人が減っているというのが現実ですから、そういうことを避けずに正面から見てもっといいものにしていく、あるいはワークするようにしていくことで、モデル2.0を立派にしていただいたらいいと思います。
 それから、1点、クールジャパン的なものは入るのか、入らないのか。それも含めた知財人財にするのか、特許庁の数字を見ると、クリエーターとかプロデューサーとかややコンテンツ的なものなどありますし、あるいは処遇などというと、士業法的なものとか関係する機関などがありますので、そこはぼかしたまま議論を始めてもいいと思いますが、そこのところだけはやっておかないと、話が混乱するかもしれないと思います。そこのところもタームズ・オブ・レファレンスとして混乱を避けるためにも、どこかの段階では整理していただいて、是非モデル2.0を立派なものにして、先ほど政務官がおっしゃったみたいに知を活用して世界で輝くように、そのためには人財が一番大事だと思いますので、是非やっていただきたいと思います。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 荒井委員の御提案は、我々みんな共有したいと思います。1.0の検証はきちんとやっておきたい。ただし、それをとがめる話ではなくて、そこから何を学んで次へ続けるかということでいきたい。
 もう一つ、危機感を持ってということは何かといったら、やはり現実直視論です。悲観論でも楽観論でもなくて、現実を直視しながら課題、問題を抽出していこうという話だと思います。これはこの会で是非皆さんと共有していきたいことだと思います。
 国際比較とか官の人財の人数とかそういうものをどうするかは、この後の調査で鋭意進めていくようにしたいと思います。髙原さん、そういうことで良いですね。
 それから、ユーザーの観点からという視点は、確かに今回は織り込みたいところだと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 またお世話になります。佐々木でございます。
 今日のメンバーを拝見させていただくと、多分一番下の方の話をするのは私の役目だろうと思って、あえてその辺のところに触れさせていただきます。
 人財育成というのは、企業の中でも結構苦しんでいるんですけれども、いろんな人財育成に関するプロジェクトをやらせると担当者が苦しんで、どうしましょうかという話がくるので、私は乱暴にそうナーバスになる必要はない、一生懸命やっても育たない者は育たないし、育つ者は黙っていても育つと言っています。
 そんな折、かなり優秀な弁護士さんが出向してくださっていて、働いてもらって、結局出向期間を過ぎてお帰りになっていただくことになったんですけれども、どうしてももっとやってもらいたいと強く思いました。その根本は、彼が弁護士資格を持っているということは、私の頭の中には多分10%もなくて、90%以上が彼の行動力です。資格がある、ないというのは主要なポイントではなくて、なくても多分非常に活躍してくれる行動力というのがものすごく重要で、行動力みたいなものはテクニカルな育成の中では育成できないところだと思います。
 その辺をどうするかという話とか、あるいはもうちょっと知財関係に関わりたいという人の裾野を増やすための施策として、日本人というのはかなり幼稚になってきていて、昔はきっと『偉人伝』など見て発明家になりたいとか、そうなったのだと思うんですけれども、今そういうことは余り通用しなくて、そうなると、クールジャパンを逆手にとって、知財で活躍する人のドラマを人気俳優で仕立てるとか、農業振興のところにキムタクを使って農業のドラマをどうだという冗談みたいな話もありました。きっとこういう観点の議論はかなり上の方の高級な議論になりますが、ボトムのところも割と重要なものが潜んでいるのではないかと思っています。特にパッションとか、一番重要なところはきっとここら辺では置き去りにされていく話だろうと思うので、その辺にフォーカスを当てられればと思っています。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今、佐々木委員に言われて思い出したんですけれども、よく我々がこういう議論をやるときに、そういう人財は育成できるのかという質問があります。育成するというのを工業メタファーで考えるか、農業メタファーで考えるかというのは大きいんです。育成というのは、実は農業メタファーなんです。ついつい創れるかという工業メタファーで話をすると、創れないという話になるんです。しかし、人というのは実は農業と同じで、育成するかどうかなんです。そうすると、どういう土壌をつくって、どういう種を選んで、どういうところで手を入れて、あるいは暴れん坊の種をどうするかという話になるわけです。そして、どこで実らせるかということになるので、我々もとりわけこの辺をやるので、正に佐々木委員が言われたことです。大丈夫だ、育つというのは農業メタファーであって、工業の最も進んだ1つの典型的企業の方が農業メタファーを使ってくださると思って嬉しく伺っていました。その辺のところを加味していきたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。中島委員、よろしくお願いします。

○中島委員
 中島でございます。
 先ほど来皆様から大変貴重な御発言があり、私もそのとおりだと思って感心して拝聴しておりました。特に荒井先生のカスタマーサティスファクションは、言葉としては前々から言われているわけですけれども、これを実践するのはなかなか難しいということです。妹尾先生の御本にもありますが、いいものは造るんだけれども、ビジネスでなかなかうまくいっていないということも共通する点だと思います。
 それから、先ほどのグローバル時代のマネジメントも、よく考えてみますと、日本全体の問題であって、単に知財の問題だけではない。今、日本全体が直面している問題だと思います。大学の学生などに聞いてみましても、これからグローバル時代だという話をしても、理系の学生などでも割合きょとんとしている。なぜそんなことをしなくてはいけないみたいな、なかなか分かってくれない。就職試験でも海外赴任はどうだとか、海外出張はどうだという話になると、本音は嫌です。ですけれども、嫌だと言ってしまうと採用してくれないので、喜んで行きますと言わなくてはいけないと言われているという状況なわけです。そういうことをどうやって変えればいいのかといつも思っているんですが、こうなると、知財の問題ではない。だけれども、知財が率先してそういうことをやることによって、全体が変わっていくのではないかと思います。そのためには、人財育成ですから、知財人財というよりも、先ほどの一般人財のところも知財を通じてどうやってやったらいいのかというのは大変大事だと思います。
 そういう意味では、知財だけではなくて、常に日本全体を考えて、産業構造にもよりますけれども、50%以上が海外で収益を上げているところがかなり多い日本の社会で、国内のことだけで果たして通るのか。今までそれが通ってきたのが不思議なくらいですし、そういう意味では大変重要なこれからの内需減少型の日本社会において、多様化と高度化というのは避けられないわけで、やはりそれに対しては人財です。数では勝負しない、日本が1人当たりのパフォーマンスを上げていくことで、多様化と高度化をいかに乗り切っていくか。それは知財が率先して、そういうことをやるべきではないのか。
 もう一つは、結局、何のために人財育成をするのか。人財育成をして、どんないい結果が得られるのかというところも忘れないような議論を続けていきたい。人財育成のための人財育成ということではなく。そこら辺は自分への忠告も含めて、そのようなことを思っている次第でございます。

○妹尾座長
 どうもありがとうございます。
 先ほどの一般人財、裾野人財というんですけれども、前の1.0のときに出したものを参考までに御紹介すると、そのときに私が提案して受け入れていただいた概念は、知財民度という概念です。要するに模倣品がある、海賊版を受け入れてしまうとか、成田に幾らポスターをはってもみんな海外から持って帰ってしまうのは何なのかというと、これは知財民度の問題ではないか。それは何かというと、具体的には創意工夫を褒める、創意工夫を尊ぶ、これを知財民度と言いましょう。子どもたちがちょっとでも工夫してくれたら、それは発明になろうが、なるまいが褒めてあげよう。ここからマインドを育成しようというのがあったわけでありまして、もちろん小学生の場合、大学生の場合、若い人たちとの場合で違うんですけれども、これがつながっていくだろうというのが裾野と言われていたレイヤーでのキーポイントだったと思います。これは御紹介をしたいと思います。
 続いて、委員の方々の御意見はいかがでしょうか。今日は自由にどんな観点で言っていただいても結構です。八島委員、お願いします。

○八島委員
 八島でございます。
 今回このワーキンググループに初めては入らせていただいて、なおかつ今日いろいろ聞かせていただいて、本当にありがとうございます。
 ここの委員の中で、私も含めて3名が多分産業界ということでして、そういう観点から見ますと、私どもの会社、特に化学会社、素材会社から見れば、どういう形で、今、事業戦略をやっているかということになると思うのですけれども、我々と違って組立型の産業さんは、更に我々よりもはるかにグローバル化していると思います。グローバル化をどう定義するかというのは非常に難しいのですけれども、まだ市場は国内でやっているというのが現状だと思います。
 そういう中で知財をどう活用していくかというのは、先ほど妹尾先生がおっしゃったように、技術基点型から事業基点型に持っていかなければいけないということで、今、やってはおりますけれども、知財部にいる人間がどう考えるかというと、知財は重要だと言うんですが、実際に事業をやっている人間からどう知財を使っていくかというのがなかなか出てこないというのが問題だと思っています。そこら辺のところが一番大事で、多分総合戦略のモデル1というのは、どちらかというと、知財部の人間を育てるための総合戦略だったのではないか。確かにその時代はそれが必要だったのでしょうけれども、今は先ほど先生がおっしゃったように、モデルが変わってきて、我々のような化学というマテリアルをやっている会社でさえ、ある意味でいうと、どんどん出て行かなければいけない。出て行く理由というのは、海外で需要が伸びているからというのが一番大きいです。特に中国です。皆さんどう思われるか分かりませんけれども、いろんな意味で中国は政治体制も違い、まだいろんなものが違うにしても、伸びるところに対してどんどん出て行くことが大事ですから、そこにどうやって知財を持ってくるかという意味でいうと、事業が分かっている人間がどう知財を使っていくかというのが一番大事で、知財の人間に知財が大事だと言っても大事ではなくて、そこのところをちゃんとできるような知財人財をつくっていかなければいけない。
 そのためには特に経営者だと思うのですけれども、経営者に対してどう教育していくか。もしくは経営者に対して、どう知財を使っていくのか。知財を武器だと思っていますし、知財だけで全部が終わるものではない。そこのところは、知財をやっている人間は、知財がものすごく大事だと言い、知財をやっていない人間、事業をやっている人間は知財は厄介だ、逆にいうと、こんなものがあるから、なかなか事業ができないという人間もいます。これは事実でございますので、やはりそういう中でどういうふうに知財を使っていくのだということを教えていく、そういう総合プログラムになればいいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 そうなんです。知財の観点からいうと、知財は重要だと言うんですけれども、必ずしも事業のサイドから見ると、どう重要かというのはいろんなケースがあるわけだから、それをお互いが知り合わないといけないということだと思います。
 よく私が例に出すのは、国語ばかり勉強しないで、算数もたまにはやろうというと、国語の先生がすねるんです。肉ばかり食べずに野菜も食べなさいというと、肉は重要だと議論する人がいるんです。肉が重要でないとは一言も言っていないんですけれども、こういう議論は非常に難しいところがあるので、今みたいな多彩なものがあるという観点で、今回の議論をしていきたいと思います。ありがとうございます。
 澤井委員、お願いします。

○澤井委員
 澤井でございます。産業界のトリオの一人です。
 今日のお話を伺って、基本的に、知財人財育成戦略を2.0へバージョンアップすべきとの妹尾座長のご発言の中で、最後の事業基点型モデルについてのご指摘はその通りだと思います。振り返ってみると、知財推進計画が最初に出たときに、プロパテントという言葉があって、そのうちいつの間にかプロイノベーションに変わっていました。私も大学などで教えていて、端的にいうと、「発明は個人、イノベーションは組織」と言っています。やはり事業をやっている以上、当然発明は個人の創造活動で生まれますけれども、その後きちんと商品やサービスにつなげていくまでには、相当な組織なり人が絡んでくるので、そこのところをどうやっていくかということを企業は常に考えています。
 そういう意味で、知財人財の育成を2.0バージョンの戦略で行くことを前提に、今回の資料を拝見すると、資料6の12ページいろんなセクターがありますといったときに、先ほどの佐々木さんも八島さんもそうだと思うのですが、12ページの図の下の方の大学・教育機関、行政、研究機関、弁理士さん辺りが、事業という意味での体感度みたいなものをどの程度持っていらっしゃるのか、本当に我々と議論がかみ合うのか、非常に厳しい言い方をして申し訳ないのですが、おそらくそこら辺に懸念を持っております。
 また、資料7の特許庁の調査研究のアンケート案については、今つくられている最中だと思うのですが、先ほどのシナリオ2.0の事業創造サイクルをフォーカスしたようなものにつながるアンケート項目になっているかという点については、ちょっと見た感じ、私は正直疑問に感じる部分があります。
 もう一つは、私も大学院で教えていて一番難しいのは、どういう教材、教育ツールを使うべきかという問題もあるのですが、それ以上にどういう教育手法で教えたらいいのかというのがすごく難しい。モデル1の10個の重点施策の中の(2)と9がありますが、おそらくこれがまだ有機的に生きていない。特に私が担当している分野では、学部から入ってくる学生さんと社会人から入ってくる学生さんとでは全然授業のセッティングが違います。だから、そういう方にどういうふうに意識を持ってもらって、一皮、二皮むけて、我々のところから巣立っていただけるか、あるいは希望が叶う転職をしていただける人財にするためには、事業基点の視点で知財人財を育成するにしても、もう少し掘り下げた具体的なことをやっていくことが必要だと感じています。これは感想です。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今の澤井委員がおっしゃられた、アンケートが本当にこの項目に沿っているかというのはまだまだで、アンケートをつくっている調査会社の頭自身が旧来モデルで動いているみたいな感じが非常にします。これは是非特許庁に頑張っていただいて、調査会社の頭を変えていただく、調査会社に頭のイノベーションをやっていただきたいと思います。
 もう一つ、大きな御指摘をしていただいたと思うのは、モデルが変わったときは、新しいモデルを教育できる人財がいないんです。これがすごく重要で、言わば人財育成人財の育成をどうするかというのが急務なんです。

○澤井委員
 私が学生を教えていて、こういうことを言われたことがあります。自分でも意外だったのですが、いろんな先生方がいて、やっている授業に2通りあるということでした。1つは知識付与型であり、もう1つは、動機を与えてくれる授業ですという話があった。確かに動機を与えて、それに感ずる人間はクリエイティビティがあれば、かなりいろんなことをやっていけます。 だから、人財育成の際のテーマの設定について面倒を見る方がきちんと見てあげて、ナビゲートしてあげれば、相当脱皮するという感じがします。特に知財ではない異分野から入ってきた人たちとコラボレーションが起こったときには、結構面白い事象があります。
 私が実際にやった事例でも、医療関係の院生との興味あるケースがあります。その院生が修士論文に該当するプロジェクト研究に取組む際に、最初に私に投げかけたクエスチョンは、「医療は人の命を救うものであり、知財は金もうけの道具である。この2つの相反する命題をどうやって融合させたら良いのか?」というものでした。その院生の基本的な問題意識だったのですが、そういう課題を掘り下げて深くかつ多面的に建設的な議論していくと、結構課題を解決していく手法が出てきます。おそらくそれは学生への動機づけをどういうふうにするかということを考えるときに、相当参考になるのではないかという感じがしています。

○妹尾座長
 教育学会の会長として、今のことにコメントさせていただきますと、動機づけと知識不要ともう一つあって、思考の訓練というものがあります。

○澤井委員
 それは当然あります。

○妹尾座長
 それが多分一番重要だと思います。ありがとうございます。そういう現場の御意見も含めていただきました。
 ほかにいかがでしょうか。青山さん、どうぞ。

○青山委員
 商工会議所の青山と申します。こういう席にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 私どもは経済団体でございまして、その大宗が中堅中小企業ということで、先ほど荒井委員からユーザーという視点を出されましたけれども、私どもはいつもユーザーという視点から意見を言わせていただいております。
 東京商工会議所では知財戦略委員会という委員会を持っておりまして、荒井委員に委員長をやっていただいておりますが、昨年11月にメンバー替えがありましたが、募集しましたら、参加希望が非常に多うございました。最近、特に中小企業でも関心が高まっているのではないかと感じております。
 また、東京都の指導で経営力プロジェクトという7つばかりの視点で経営支援を分析するプロジェクトがあるんですが、知財もその中の1つに入っています。その中で相対的に見ると、まだ知財というのが弱いという分析結果が出ました。中小企業はやりたいと思っているんだけれども、どうやってやったらいいのかというところがよく分からない、方法が分からない。それから、内部人財を育成するというのは、より困難という声がほとんどでございます。ですから、中小企業もグローバル化というのは当然のこととして認識しておるわけですが、今回の東日本大震災、電力不足の問題、そういうことも含めまして、地方の中堅中小企業も海外というものも視野に入れています。ある自動車を中心とする都市では、数十社単位で海外移転を検討しているというところも現実問題として出てきました。
 そんな中で一番困っているのは、最終的にいろんな専門分野があるんですが、知財という問題も大きな壁になっているという話を伺ってまいりました。そういう観点で、私ども商工会議所として、中堅中小企業という視点、ユーザーという視点から意見を述べさせていただきたいと存じます。また、これからグローバル展開をするということで、どういうところに留意すべきなのか、モデル1の検証を踏まえまして、モデル2の視点の中で是非とも御議論していただければ幸いだと思います。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 ユーザー視点、中小の視点、グローバルな視点、この3点で議論をするというのは、正に我々はそれを行わなければいけないと思います。
 数十社で海外移転ですか。

○青山委員
 はい。検討すると回答された企業数です。

○妹尾座長
 ばらばらにではなくて、一斉にグループでですか。

○青山委員
 一社ごと、ばらばらです。

○妹尾座長
 エネルギー問題とともに、サプライチェーンの問題が極めて重要になってきていて、サプライチェーンの問題は2つあって、1つは標準品使用圧力が高まることです。もう一つは、サプライチェーンがどういうことかといったら、ツリー構造ではなくて、ダイヤモンド構造だったというのがわかってしまいました。これが中小企業にとってのサプライチェーン問題の大変なところです。1つは標準品使用圧力が高まる。もう一つは、技術移転、ライセンス圧力が高まる。この2つです。
 正に我々が独自技術、独自製品、独自生産、独自供給をやっていた知財ビジネスモデルが根底から問われるということになっているわけです。中小中堅企業はものすごく苦労されることになるわけで、そうすると、知財マネジメントをやらないことにはどうしようもない。おっしゃる危機感は非常によくわかるけれども、どうしたら良いかということで、その辺が大変なところだと思います。ありがとうございます。
 続いて、住川委員、お願いします。

○住川委員
 働く者の立場という視点からなんですけれども、実際に有用な知財人財になった後、どのように処遇されるのかという視点も必要なのではないかと受け止めております。
 標準化とかそういう分野も含めて、知財人財に貢献していただくようなステージというのは、個社あるいは業界ごと、国といういろんなステージがあるかと思います。個社であれば、その中の労働条件というのが1つありますが、こうした人財、いろんなステージで働くあるいは貢献する知財人財に対して、どう報いていくか。あるいはその方自身が自分のキャリアアップをどうイメージするかというのが見える必要があるのではないか。それが仮に見えないと、よい育成プランをつくっても、なかなかそこに人が集まってこないということも想定されたりしないかと受け止めております。
 ですので、当然、育成の側面というのは非常に大切だと思うんですけれども、それに加えまして、その後のキャリアアップなり処遇の在り方も含めて、政策支援を行っていければいいのではないかと考えているところでございます。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 働く側の視点ということで、人財の処遇とキャリアパスです。知財人財のキャリアパスとはどういうものなんだろうかというのは、1.0のときにも議論になりました。特にそのときに中心になった知財専門職人財の中で、知財部員と特許庁の職員と弁理士さん、この三位の相互交流がどういう形で行われるかということが随分焦点になりました。当時、特許庁が臨時の審査官、いわゆる期限付き審査官は、期限付きが終わったときに弁理士事務所に行くんですか、知財部に行くんですか。あるいは知財部の人たちは独立するんですか、何なんですかという話がいろいろありましたが、この流動化は非常に良いことです。私の論文にも実は書いてあります。ただし、その流動化がその後のキャリアパスにつながるかというと、今これはなかなか難しい状況に入ってきました。これは中島委員が弁理士会の会長のときに随分御苦労されたと思うんですけれども、弁理士の人数もだっと増えてきて、今、単純計算すると、弁理士さんで食べていけない状況になるということと関連します。そういうものが今の時代の変化とどう関係してくるのかというのは、極めて人財育成として重要な御指摘だと思います。
 それから、同時に今度は研究開発の人たちが知財を学んだら、一体何の得があるんだとか。今、多くの研究開発部門の方が弁理士資格を取得しています。中島先生、弁理士さんの資格を取っている方のかなりの割合が企業の人ですね。

○中島委員
 そうです。

○妹尾座長
 研究職の人がものすごく増えたということです。ところが、弁理士資格を取っても、研究者の人は別に給料が増えるわけでも何でもないわけです。それで給料が増えることが良いことかどうかはまた別問題ですけれども、そういうキャリアの話というのはいろいろあります。これは隣の杉光先生のところで2級、1級を取ったらどうなるかという話とも関連してくると思うんですけれども、キャリアパスとの問題は必ず絡んでくるわけです。なので、これはなかなかいい御指摘をいただきました。どうもありがとうございます。
 そういうことで、杉光先生、どうぞ。

○杉光委員
 今、振られたと思いました。ありがとうございます。
 1つは、もともと私が所属している知的財産教育協会というところは、2004年に知的財産検定という民間試験を始めまして、2008年から国家試験に移行しているわけですございます。もともと知的財産の検定試験を最初につくろうと思ったきっかけというのは、私自身の経験もあるんですが、もともと電気メーカーの知財部に入社して、2年ほどしたときに、たまたま弁理士試験に合格できたんですが、そのときに自分よりも優秀な実力を持っている方々がたくさんいて、その方々は弁理士資格を持っていないという中で、どうも弁理士の資格というのは、企業の知財のマネジメントという視点で見ると、もともと目的が違いますので、当然ずれがあるのは当たり前のことなんですが、ずれがあるということを認識しました。むしろ企業の知財で頑張っている、あるいは実力を持って仕事ができる人がきちんと評価できる仕組みが必要ではないかという観点から、仕事がしっかりできる人が受かるような試験あるいは資格をつくる必要があるという観点でつくったというのがもともとの出発点だということを、たまたま、今、お話を伺っていて思い出しました。
 それがもともとの出発点なんですけれども、現状の御説明をさせていただきますと、資料6の6ページの右下になりますが、2007年10月から国家検定として実施されて、第8回で9万1,571人が受検したとなってございます。7月に試験を行いまして、その受検者を合わせますと10万3,000人ということで、ちょうど10万人を超えたところでございます。
 この検定の目的は、先ほど申し上げましたように、もともとは企業の知財部のしっかり仕事ができる方がきちんと評価される仕組みがあるべきだという観点で始まったわけですけれども、現状は知財民度を上げるのにも随分役立っているのではないかと考えてございまして、実際、知財部ではない方々がたくさん受検されていて、そういった方々の感想も試験にしては珍しいと思うんですが、試験が終わった後に、非常に面白かった、なので、知財部に行きたいあるいは知財の仕事をやりたいという方が結構いるということで、そういう意味では、知財業界に優秀な方々を引き込む役割も果たしているのではないかと個人的には考えているところでございます。
 もう一点目ですが、先ほど事業をやる人が知財は分からない、知財をうまく使うのが重要だというお話があったかと思うんですが、実はその方向性は今の受検者層に表れておりまして、当初、受検者層はほとんどが知財分野の方々だったんですが、今の主たる受検者層は研究者あるいは研究所単位で受検をされているということです。あるいは事業部ですので、そういう意味では、知財部門の方々というよりは、むしろそれ以外の事業部門あるいは研究所の方々が受検をされているというのが、新しい傾向として出てきております。
 もう一点は、この試験は、今、国家試験として運営しておりますので、当然のことながら、国の政策に沿って内容も中身もレベルも変えていくべきものだと認識しております。そういう意味では、この試験自体は一種の箱といいますか、ハードといいますか、枠のようなものでございますので、当然のことながら求められるスキルが違うとか、あるいはこういった方向に人財を育てていかなければいけないということであれば、ソフトウェアを変えていく必要があると認識しております。ですので、例えばここの議論を通じて、こういう人財像が必要で、こういうスキルが必要だということであれば、それに併せて中身のソフトウェアも変えていくとことが可能でありますし、そうでなければならないと認識しておりますので、ここでの議論というのは、私自身も非常に楽しみにしているところでございます。
 最後になりますけれども、私は東京大学政策ビション研究センターの客員研究員をさせていただいておりまして、そちらに私の持論も紹介させていただいているんですが、山をなぜ登るのかと聞かれたときに、有名な登山家のジョージ・マロリーが、そこに山があるからだと答えたという話がありますけれども、私自身もこういう試験というのは一種の山のようなもので、そこに山があるからそこを越えたい、それにチャレンジしたいという気持ちが生まれるという効果が必ずあると思っております。そういう意味では、一種の学びや意欲を促進するツールとして使えるのではないかと考えています。
 例えば英語の例をとりますと、英語の勉強をするときに、仮にTOEICとか英検など英語の試験が一切ない世界だったら、皆さんどうやって英語を勉強するのか。あるいは英語を学ぼうという意欲をどうやって保つのか、モチベーションをどうやって維持するのか非常に難しいと思います。そういう意味では、この試験があることによって、一種の山を見て、この山を乗り越えるためにこれを身につけよう、あれを身につけよう、これを学ぼうというモチベーションが生まれたり、継続的な学習の動機づけになる、こういう効果が非常に重要なのではないかと個人的に思っています。
 ただ、そういうことであれば、逆に山はしっかりと目指す方向を目指していないといけないわけですので、もちろん山の方向性も重要なんですけれども、それ以外に山自体があることによってモチベーションを維持したり、方向性を見たりというメリットもあるのではないかと考えてございます。
 以上でございます。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 知財検定も1.0を踏まえて、随分進展してきて、普及啓発に効果があったものの1つだと思います。
 最後のところで、山があるから登るという話がありました。これは教育の観点から我々はよく何と言うかというと、コンサマトリーニーズと言うんです。何で散歩をするんですか、健康のためですか、何ですかというと、散歩が好きだからと。これは資格オタクの方に結構多いんです。勉強が好きだからというのがあります。
 こういう資格物は、通常幾つかのニーズがあるんです。トレーニングニーズ、すなわち自分の力を高めたい。もう一つはクオリフィケーションニーズ、すなわち何級の資格を持っている。例えば弁理士さんはクオリフィケーションを持っていないとだめとかね。3番目は何かというと、ソーシャルニーズです。それによって受検仲間などの交流が行われる。4番目はメンバーシップニーズ、それによってある種のソサエティの中に入れるということです。5番目は何かというと、コンサマトリーニーズです。(もう一つは、インタラクティブニーズ、あるいはソーシャルニーズです)。
 私が昔指導していた弟子の1人が、有名なテレビのスターアナウンサー、女子アナの1人だったんですけれども、彼女を大学院で指導をしていたら、彼女が6つ目がありますと言ったんです。テレビで売れっ子で、なおかつ小さな子どもを抱えて、なおかつ大学院で勉強する。君の動機は一体何だと聞いたら、気分転換ですと答えられました(笑)。もう一つそういうニーズもあるのかと思いました。済みません。全くの余談を申し上げました。
 佐々木委員、今のことに関して何かございますか。

○佐々木委員
 先ほどの何のために学ぶかというところに通じるかもしれません。何のための教育か、人財育成かと中島先生がおっしゃいましたけれども、ちょうど7月30日の『東亜日報』でサムスンの名物会長の李健煕さんが3大重要課題として、ソフト技術、S級人材、特許を明確に挙げていて、これは妹尾先生がおっしゃる1.0なのかもしれません。いろいろな分野で特許を出していますが、明確に勝たなければいけないということで、2005年から倍ぐらいに増やした。こういうマーケットニーズがあって、人がはまっていくというのは、極めて考えやすいやり方ですが、そこをどう考えるかというのが非常に難しいんだろうと思いました。
 それと、先ほど育つ人間は黙っていても育つと申し上げましたけれども、その観点で考えたときに、我々はどういうビジョンがあればいいかと常に考えがちなんですが、何か邪魔になっているものはないかと一遍見てみたらどうかと思います。例えば規制緩和が必要だったり、人財の流動化を促進するために邪魔になるような社会システムがないか等々、その辺が極めて重要なことなのではないかと思います。
 以上です。

○妹尾座長
 ありがとうございます。
 今のサムスンの会長は、3番目に特許と挙げられているんです。知財人財の育成の1.0ができたすぐ後に、多分今から御発言される上條委員がコーディネーターになりまして、そのときに関わった各分野の人材育成の人間が韓国に呼ばれたんです。韓国での知財人財育成のキックオフをやるから、日本から来てくれと言われて、あれは杉光委員も御一緒しましたね。私は基調講演をやって、そのときにサムスンの研究所長の常務さんが会長で、明らかに後ろをひたひた走られているというのがわかりました。最近の雰囲気は韓国に1.0に関しては越されたのではないかと思います。
 恐らく中国はまだ1.0だろうという感じがあります。我々が早く先手を打てればいいと思っております。
 上條委員、お願いします。

○上條委員
 ワーキンググループに席を並べさせていただいて、ありがとうございます。
 私は社会事務系の知財の大学院で実際に教鞭をとらせていただいて、日々学生さんと接している立場としての意見を申し上げさせていただこうと思います。
 我々が実際に教鞭に立ちながら、大学や大学院で知識不要型だったり、現場で御活躍の方にお越しいただいて、現場の息吹を伝えていただくような講義をしていただいたり、手法としてももう少し工夫のしようがあるとは思うんですが、そういった教育をやらせていただきながら、学生さんを産業界に送り出させていただいているわけですが、やはり実際に社会人になって、特に社会人大学院ですと、また現場で経験をされている方ですので、若干状況は違うんですけれども、大学や学部レベルで知財の勉強をしても、その後、社会人になって、実際に現場でもまれて、正に佐々木さんなどの企業のところで、結局は現場で経験を積みませんと、一人前の知財人財になれない。知財人財の育成のそれぞれの場でやられているんですが、そのギャップといいますか、差といいますか、隔壁というものがあるのではないかと日々感じております。できるだけ社会に出てから、すぐに即戦力でとはなかなかいかないと思うんですが、役に立てるといいますか、フレキシブルな発想で新しいことに果敢に挑戦できる人財を送り出していかなければいけないと考えております。
 先ほどの澤井さんのお話でも、大学等で人財育成をやる場合の教育手法の面でも、もう少しフレキシブルかつさまざまなやり方があるのではないかと考えておりますので、その1つとして、産業界の方、大学のアカデミアにいらっしゃる方で、もっと人財育成においても産学連携といいますか、官の方も含めて、御協力いただきながらやっていかなければいけないということを改めて申し上げたいと思います。
 特に国際標準化人財の育成は、知財人財育成よりも更に感じております。妹尾先生から特許法だけではだめだという話がありまして、もちろんそうなんですけれども、知財ですと特許法とか、そういったフレームワークといいますか、勉強したということが分かりやすい法律などが比較的あるし、知財の方は検定などもありますし、割と明確に自分が進歩したということが分かりやすいんですけれども、標準化の場合ですと、雲をつかむような思いといいますか、技術的な側面ですとか、考証学といったような側面ですとか、様々な側面がありますので、そういった標準化人財育成を行っていくというのはなかなか難しいのと、それを評価する手法というのは、まだ明確ではないということがございます。更に標準化のことだけやっていると、標準化のための標準化ということでおしかりを受けるということで、済みませんとなぜか謝るみたいなパターンが今ループに入っております。
 よくよく考え見ると、先ほどの実際に事業化に資するような技術も、知財も標準もしっかりマネジメントできて、オープンクローズも使いこなすことができる人財を輩出していくことが、そもそもの目的意識だと思いますので、もう一回そこに立ち位置を戻して、今までは知財人財育成、標準化人財育成、必要なものをまず並べてきたと思うんですけれども、もう一回デザインし直すといいますか、そういったことが必要だと感じておりまして、それがモデル2.0につながっていくのではないかと思います。
 済みません。長くなりましたが、是非頑張っていきたいというか、よろしくお願いしますということです。

○妹尾座長
 ありがとうございました。
 今のお話は、社会人をどう変えるか。既存の知財人財をどう2.0へバージョンアップするかという話と、違う分野から2.0へいきなりくるような人財をどうやって誘引するのかという話と、3点目はそれらについて標準化の資格だとか、今、直接はおっしゃらなかったけれども、例えばビジネスモデルとか、商品アーキテクチャーをどうやってつくっていくかみたいなものについての学習、教材、資格のつくり方みたいなものを検討することが必要だと解釈をさせていただければと思いました。
 一応委員の先生方には皆さんお話いただけたと思うんですが、まだございますか。高倉委員、お願いします。

○高倉委員
 2回目の発言で済みません。法科大学院で知財教育を担当している者として、現状の報告と課題、今後取り組むべきことについて、簡単に報告したいと思います。
 新司法試験が平成18年から始まって、去年の実績で受検生が1万人で合格者が2,000名、選択科目が8科目あるんですが、そのうち知的財産法は3番目です。一番多いのが労働法で、30%ぐらいです。2番目が倒産法で二十数パーセントです。3番目が知的財産法で、人気度はこのレベルで大体きています。
 私自身の悩みとしては、将来企業や法曹の人財として、特に知財法曹に携わる人財にモチベーションを高めて教育したいという反面、やはり試験に通ってもらわないといけないという教える側の立場、義務もあって、決して受検対策のための授業をやっているつもりはないんですが、やはり学生にも試験に通る実力を与えるということと、将来知財法曹人財になるためのモチベーションを高めるというところのバランスをどのように維持していくかというところに苦労しているところです。
 もう一点報告しておきますと、本来、知財の人財は文理融合型の人財が望ましいということで、非法学部出身の方たちが新司法試験に合格しやすいスキームをということがあって、非法学部あるいは社会人が3割という努力目標があるんですが、現実には出口の試験が難しいということもあって、法学部卒の割合が高まって、非法学部卒の割合が下がってきている。現在、非法学部卒は2割ぐらいまで落ちてきていると思います。年齢も逆に下がってきている。社会人が少なくなってきている。社会人もリスクをかけて、今ある職場を辞めてまで法科大学院に2~3年行ってやるという展望がなかなか切り開けないところもあって、低年齢化している。あるいは非法学部卒の方たちが少なくなっているというところで、本来両方の視点を持った人財を育てたいというところから見ると、やや違う方向にきているというところは、今後どのように解決していけばいいのか。
 1つの出口としては、大学院の定員を少なくすることによって、プロセス重視で学んでいけば、出口でおのずと高い、医師の国家試験並みの合格率で合格できるような体制をつくれば、法科大学院への入学が合格した段階で、自分の進路の将来がだんだん見えてきますので、法科大学院の定員をもう少し絞り込んで、プロセスを重視した教育ができるようにすることです。しかし、それまでには少し時間もかかると思いますので、我々現場で教育をやっている者としては、先ほど上條先生のお話にもありましたけれども、企業の方たちを呼ぶことによって、教育における産学連携をすることに通じて、法学部出身の方たちにも事業の視点とか技術の視点を学ばせる機会をなるべく多く取り込むように努力をしているところです。
 今後の課題として、大学間の連携といいますか、ほかにも先生が複数いるわけですので、大学間連携を進めていくことができればいいと思っております。
 時間が長くなりまして、済みませんでした。

○妹尾座長
 ありがとうございます。法科大学院の知財のあれですけれども、先ほど荒井先生がおっしゃられたように、検証をきちっとしながらということと通じるところがあると思います。ありがとうございました。
 それでは、時間がきました。
 最後になって、先ほど政務官が言われたときにうっかり忘れたことを思い出しました。何かというと、人財育成のところで、ファジーな周辺領域があるという御指摘がありました。コンテンツ人財をどこまで入れるかとか、あるいは農林水産関係はどうするのか。確かにファジーな部分がすごく出てきて、コンテンツの領域とテクノロジーの領域は、先ほどのデザインとの関係なども含めて随分重なってきています。
 それから、農林水産など種苗法だけではなくて、生物資源イノベーションを考えてくると、農林水産でも特許、知財マネジメントをきちっとしなければいけない部分がかなりある。しかも、農林水産はグローバルになってきますから、最初のうちは少しファジーのまま議論していって、議論が浮き彫りになってきた段階で、話を詰めるということにしたいと思いますが、いかがですか。よろしいですか。
 もう一つ、先ほど御指摘がありました特許庁の調査関係は期待をしたいと思うんですけれども、中身をもう少し精査しなければいけないということがありました。委員の先生方も、もし具体的にこういう点はどうだとか、こういう質問をしたらどうかというアドバイスがありましたら、是非よろしくお願いしたいと思います。
 後谷課長、それでよろしいですね。ただ、早目にしてねと言いたいんですね。

○後谷企画調整課長
 よろしくお願いします。

○妹尾座長
 そういうことなので、早目にしましょう。目がそういうふうに言っています(笑)。そういうことです。
 私のマネジメントが悪かったので、時間が少し延びてしまいましたけれども、これで予定の時間がきましたので、終了したいと思います。局長よろしいですか。
 髙原さん、連絡事項は何かございますか。

○髙原参事官
 本日の御審議誠にありがとうございました。
 次回のワーキンググループは、資料4の今後の進め方でも御確認いただきましたように、9月中に開催する方向で日程を調整させていただいております。決まり次第、皆様に御連絡申し上げますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

○妹尾座長
 今日言い足りなかったことが実はあるとか、後で思い出したことがありましたら、事務局ないしは私に御連絡をちょうだいできればと思います。
 それでは、ちょっと長引きましたけれども、これで時間になりましたので、閉会したいと思います。どうもありがとうございました。