第7回 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会 |
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○妹尾会長 皆さん、おはようございます。 ただいまから、知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の第7回の会合を開催させていただきます。本日もご多忙のところ、どうもありがとうございます。 前回、「知的財産推進計画2010」の骨子を取りまとめた後の議論を再開したわけであります。3月の末、骨子取りまとめまでに議論できなかった部分について議論をいたしましたけれども、今回も、議論が尽くされていない部分について、前回に引き続き活発なご議論をお願いしたいというふうに思っています。 本日は、岸宣仁委員、迫本淳一委員、山本貴史委員はご欠席だというご連絡をいただいております。また、相澤益男委員、江幡奈歩委員は本日は途中までのご参加というふうに伺っております。もし途中で退席する場合に何かご発言がありましたら、合図を送っていただければと思います。 それから、本日は私どものほうから、下川一哉日経デザイン編集長にお越しをいただいております。参考人として後ほど、ブランド構築と知財の活用に関してプレゼンテーションをしていただきたいというふうに思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項についてということで、まず事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。 それでは、高原参事官、よろしくお願いします。 ○高原参事官 おはようございます。今回から担当させていただきます高原でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 それでは説明に先立ちまして、議事次第をご参照いただきながら、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。まず資料1、今回の論点ということになってございます。それに続きまして、後ほど下川参考人からプレゼンテーションしていただく際の資料、「製品アピールやサービスのプロモーションのためのデザイン開発、意匠権活用方法」というタイトルのものでございますが、参考人ご説明資料としてつけさせていただいております。 それから、資料2から資料5までは、委員の方からご提出をいただきました資料でございます。まず、資料2は相澤英孝委員から提出いただいた資料でございます。資料3は妹尾堅一郎委員から提出していただいたものでございます。資料4でございますが、山本貴史委員からご提出いただいたものでございます。最後、資料5でございますが、荒井寿光委員からご提出をいただいております。 続きまして、参考資料についてでございますが、まず参考資料1、こちらが前回、第6回の専門調査会における主な意見でございます。それから参考資料2でございますが、「知的財産推進計画2010(仮称)」骨子に盛り込むべき事項についてというものでございます。それから、参考資料3でございますが、目標指標例についてという討議用参考資料でございます。最後に参考資料4でございますが、先々週になりますが12日から16日にかけて開催されました、ACTAの第8回交渉会合の概要について配付をさせていただいております。 資料につきましては以上でございますが、不足等ございませんでしょうか。 よろしいようでしたらば、次の議題であります「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項についてという項目に関します資料1、こちらのご説明に入らせていただきたいと存じます。 まず項目の1つ目、これは1ページ目から3ページ目にかけてのものでございますが、企業におけるブランド構築と知的財産権の活用というふうにタイトルをつけさせていただいてございます。1ページ目には、ブランドは知財のみならず、企業におけるさまざまな活動の総体として構築や維持、さらに向上がなされるものであり、ブランド、イコールあるいはデザインといったような単純な関係にあるものではないということ、それから右上の表になりますけれども、日本の企業が有するブランドについては、他国との比較によって必ずしも世界的に高い評価が得られるというところまでは至っていないのではないかということに触れさせていただいた上で、その背景として、企業において複数の知的財産権を組み合わせまして、競争力強化につなげる戦略の構築が十分とは言えないのではないか、また、地域の中小企業が独力でブランド構築をするには限界があるのではないか、こういった点について書かせていただいております。 これを受けまして、1枚めくっていただきまして、2ページ目でございますが、企業におけるブランド構築やその維持、向上を促すために、技術でありますとかデザイン、こういったものを組み合わせまして、効果的な知的財産権の活用手法に関する事例集を準備する、それとともにさらには、ブランドの戦略が企業の経営の戦略といったものにうまく反映されるように、企業のマネジメント層といったところも含めた啓発を図るべきではないかという論点を挙げさせていただいているところでございます。 このページの下、参考の部分は、前回の専門調査会においてもご紹介をさせていただいた事例でございます。 さらに3ページ目でございますが、中小企業のすぐれた技術でありますとか資源、こういったものを世界で通用するブランドの構築につなげることを促していく、そういったことのために海外マーケットの情報収集や発信も含めた、中小企業支援策を強化していくということが必要ではないかという論点を挙げさせていただいております。こういった論点につきまして、委員の皆様にご議論をいただきたいというふうに考えております。 続きまして、4ページから6ページにかかる部分でございますが、こちらは目標指標にかかる議論のうち、特に特許の海外出願比率を高めるという指標の例、こちらを数値で記載することが妥当かどうかという論点に関するものでございます。この4ページのグラフでも示しておりますが、我が国ではここ数年の動向を見ましても、海外での売り上げの比率が上昇するに伴って、グローバルな出願率も増加するという傾向にございますけれども、欧米諸国に比べますと必ずしもグローバル出願率は高くないという現実があるようでございます。 これに対しまして、1枚おめくりをいただきまして5ページ目になりますけれども、前回までの専門調査会におきましても、企業の立場からすれば海外の出願比率の増加といったものを数値で特定するのはおかしなことではないかというご意見でありますとか、また、国内出願の減少によっても達成がなされるような目標指標の設定はどうかといったご意見も寄せられていたところでございます。確かに、5ページの下の表にもございますように、個別の企業のレベルで見てみますと、グローバル出願率がさほど高くないという場合でも海外売上高の比率が相当程度高いというような例も見受けられるところでございます。 しかしながら、次の6ページになりますが、こちらの左上の表にも示しておりますが、日本の国全体で見ますと、我が国から海外に向けた特許の取得活動といったものは、欧米と比較すればまだ低い水準と言えるかと思います。そして、右上にありますこちらのグラフにもあらわれておりますとおり、海外への事業展開というものは非常に強いというふうに言えるかと思いますけれども、日本企業全体として、こういった状況を踏まえれば、グローバルな特許取得の活動の促進、あるいは奨励をしていくという方向性は妥当であるというふうにも思われますところ、果たして特許の海外出願比率というものを高めるという指標が必要であるかどうか。これまでもご議論いただいているところではございますが、この論点につきましても委員の皆様に議論を深めていただきたいというふうに考えております。 最後に7ページから8ページでございますが、こちらは議論の項目というよりは、参考という扱いでございますが、こちらは前回の専門調査会での特許の機械翻訳、それから英語出願に関するご議論を受けたものでございます。先に最後の8ページのほうをご覧いただきますと、こちらには海外において事業を展開するに当たりまして、企業の方あるいは特許制度を利用する者の立場から見まして、特許の出願・取得から各国における他者の権利の調査といったものに至るさまざまなフェーズがあるわけでございますけれども、それぞれのフェーズにおける言語の違いといったものに関連したこれまでの取り組み、あるいは現状といったものについて、表の形式で整理をさせていただいたものでございます。 そして、1ページ戻りまして、7ページ目では、単一の言語による世界各国での特許・取得が実現すると、そういった目標に向けた制度調和の議論というものはもちろん今後も続けていくということであるかと思いますけれども、言語の壁という目の前にあります問題、課題等を克服するために、機械翻訳の精度を向上することを中心とする取り組みを一層推進していくことが必要ではないか、というふうにまとめさせていただいているところでございます。 資料に関しまして、事務局からは以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 きょうの議論は、今のご説明があった論点を中心にしていきたいと思いますけれども、前回同様に論点を区切ってご議論をいただくほうが効率的だと思いますので、そうさせていただきたいと思います。 それでは、早速なんですけれども資料1、1ページをご覧いただきたいと思います。 まず、ブランド構築と知的財産権の活用についてご議論いただきたいと思います。前回も議論があったわけですけれども、今回、皆さんのご意見を伺う前に、企業におけるブランド構築の新たな試みがいろいろされているわけで、その活用の事例について理解を深めるために、有識者からプレンゼンテーションをいただくということにしたいと思います。 日経デザインの下川編集長がお見えになっていますので、お話をいただきたいと思います。それでは、下川編集長、よろしくお願いいたします。 ○下川参考人 皆さん、おはようございます。参考人招致されました下川でございます。 昨年度、特許庁のほうで妹尾会長もメンバーの一人として参加していただきましたけれども、製品アピールやサービスのプロモーションのためのデザイン開発、特に意匠権の活用、登録というようなことを調査をしたり、議論をしたりして報告書を1冊まとめました。その中で出てきたものをベースに、きょうは皆様の前でお話をさせていただきたいというふうに思っています。 もともと意匠権というのは、釈迦に説法になると思いますけれども、物品の形態を保護するという目的で制度化されているものだと思います。例えば自動車であれば自動車の形態、あるいはその一部を権利化する。家電製品であれば、また同様にその形態を保護する。かつてはそうした物品の形態を保護するだけで、ある程度その企業のブランドというものが保護あるいは維持されていた。ただし、今日のようにさまざまな競合関係が複雑になったり国際化があったりとか、あるいはブランドとユーザーの接点が非常に高度あるいは複雑になっていく中で、そうした物品の保護だけではブランドがなかなか保護、維持されない。逆に企業側から言えば、さまざまなユーザーとのタッチポイント、あるいは接点をもう一度見つめ直して、そのタッチポイントごとに意匠権あるいは商標、特許、いろいろなものを活用して、何らかのイメージを、あるいは形、色、いろんなものを保護できないのか、そうすることによってブランドを一層強くできないのかということを実践しているようだというような問題意識をもとに、この調査あるいは議論というものを進めたというふうに思います。 1枚目の紙をめくっていただきたいんですけれども、企業ブランドというと大きなコーポレートブランドから個別の商品ブランドまであるし、その保護の仕方あるいは戦略化というのも多岐にわたっています。そして、今日、特に意匠権をもとに保護されているのはもちろん製品そのもののデザインでありますし、また、そうしたものを包装するあるいは店頭に並べるためのパッケージデザインというものも非常に重要で、このパッケージデザインの出願もふえている。さらに、このあたりが非常に新しいところでもあるんでしょうが、それに限らず、例えば店頭の販促品であるとか、もちろん店舗のデザインそのもの、こういったものも、特に海外のブランド等、この辺は非常に積極的なんですけれども、意匠権でとりあえずまず保護しようと。で、保護期間中はこれはがっちり守って、ゆくゆくは商標化をねらおうというような動きも出ております。 もう1枚ページを、2ページ目をめくっていただきたいんですけれども、私たち、デザインというものを日経デザインの場合に考えるときには、個別の物品のデザインを考えるときもあるんですけれども、もっとユーザーとの接点すべてにデザインというものを活用すべきなのではないかというようなことを、常々、議事の中で申し上げております。ユーザーと製品、あるいはブランドの接点というのは、意外とこうやって見るとたくさんあるんだなということがあって、その過程の中でユーザーはその製品のデザインというものを評価をしている。 例えば、こういったミネラルウォーターがございますけれども、コンビニエンスストアの中でこういったものを発見する。そういった場合には、こういったグラフィックデザインとかパッケージの形状そのもの、そういったものが評価をされる。手にとって、購入して、運搬をする。このサイズがどうかとか、いろんなものがその過程で評価をされる。で、開封をする。実際に、あけやすいのか、あけにくいのかとか、使っていくうちに、例えばバッグの中に入れやすいのか、あるいは冷蔵庫の中に入れやすいのか、あるいは使い切ってしまったときに、これはごみになるわけですけれども、ごみとして分別しやすいとか、さまざまなことがデザインとしてユーザーの中で今、評価をされている。ペットボトル一つとっても、さまざまなデザインがユーザーとの接点の中に存在しているなというふうに思います。 3ページ目をめくっていただきたいんですが、これは1年ほど前にでた日本コカ・コーラさんの「いろはす」というミネラルウォーターのパッケージです。これは当然、意匠登録をされていまして、この意匠登録をしたというだけではなくて、このパッケージは非常に薄くできていますし、機構的・構造的にもつぶしやすい形状になっているんですね。まるでぞうきんを絞るようにアクションをすると、こうやってコンパクトに折りたためて、例えばバッグの中に入れても邪魔にならないとか、捨てるときにもごみがかさばらないとか、そういう価値があるんですね。 そうしたものを権利化しながら、日本コカ・コーラさんは、広告展開の中でこういう表現をしているんですね。右の「3」とか、例えば花というか、草木がぽっと添えられているような。権利化だけではなくて、そういう販売促進とか広告のプロセスの中で、登録意匠を活用したようなアピールをしている。むしろこの製品の広告の中ではおいしい水とかをうたっていないんですね、ほとんど。パッケージの特徴をうたうことによってブランド化を進めているという、非常に稀有な事例であるし、今日的な、特に先ほどのシークエンスで言えば、廃棄のシークエンスというところに着目をしたいい例で、皆さん、コンビニエンスストアに行っていただくとわかると思うんですけれども、もう新規参入のミネラルウォーターとしては非常に強いブランドを築いています。 もう1ページめくっていただきたいんですけれども、これも少し似たパッケージの事例ですね。これはむしろユニバーサルデザインとかエコということを強くうたっている。先ほどの「いろはす」もそうなんですけれども、ユニバーサルデザインとかエコをうたうことによって、販売促進だけではなくて企業の社会的責任、CSRという部分にも踏み込んで、製品のブランドイメージだけではなくて、その企業のブランドイメージにも大きく寄与させようというような動きもございます。これも非常に変わった形をしていますけれども、注ぎやすかったり、詰め替え用のパウチなんですね。詰め替えやすかったり、あるいは捨てるときにコンパクトにくるくるっとできたりとか、そういったことを強く意識しているパッケージです。 もう1枚ページをめくっていただきたいんですが、これはJALの国際線のスイートの座席といいますかキャビンなんですけれども、本来であればこれは別にJALがつくっているわけではなくて、JALが発注しているメーカーがつくっているものですから、そのメーカーが意匠を取得して権利化すればいいんですけれども、JALから見ればこれはまさに自分たちのサービスのゆりかごといいますか、サービスを受けるユーザーからすると、もうほとんどこの空間の中でしかコミュニケーションできないというようなことも言えると思うんですけどね、そういったものをきちんと権利化してブランディングに役立てていこうと。しかも、この左右の写真を見ていただくとわかるんですけれども、登録商標とともにイメージを近づけるようなデザインをきちんと施して戦略化していると、こういったことが言えるのではないかなというふうに思います。 最後、6枚目ですけれども、意匠権一つを見ても、このように物品の形態の保護ということを超えて、企業のブランディングに活用する事例がふえていますし、そのことをきちんと戦略化するためには、こうしたユーザーと製品あるいはサービスの接点すべてをシークエンスとして洗い出して、その中でどういうふうなものを保護していくべきなのかということとを考える必要がありますし、さまざまな意匠法、商標法、特許法についても、そうしたことを踏まえた法整備というものが求められているのではないかなというふうに思います。そうすることによって、知的財産というものが、企業の中で言うといわゆる法務部とか知財部という方々が専門に扱うものではなくて、要するにデザイン部もそうですし、営業部もそうだし、広報・広告もそうですし、さまざまな人たちが扱うべき知的財産というものになるのではないのかなというふうに思っております。 ちょっと駆け足になりましたけれども、そういったことを昨年は特許庁の中で議論したり調査をしましたので、それをご報告いたしました。ありがとうございました。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。今、非常に要領よく、最近のブランドに活用される知財権の様子をお話しいただいたと思います。 早速ですけれども、皆さんからこれに関するご意見、あるいはご質問、せっかく編集長がいらしているので、何かあれば挙手をいただきたいと思います。いかがでしょうか。 相澤委員。 ○相澤(英)委員 今のお話から、ブランドをうまく保護していくために、意匠法を現代化していくことが必要だろうと思います。物品にとらわれた意匠法を改正していくことが必要であると思います。例えば店舗デザインを、現行法の意匠法では保護することができませんから、それも含めるように改正することが必要であると思います。商標法も、識別力だけにこだわることなく、ブランドのイメージを、商標法で保護できていないと思います。意匠法、商標法、不正競争防止法を現代化して、ブランドを保護してくことが必要であると思います。 そのほか、例えば、偽ブランド商品の個人的な使用は法律上問題ないということになっていますが、著名なブランドについては、そのイメージを保護するために、限定的な措置をとることも考えるべきではなかろうかと思います。 それから、差止請求をした場合に、販売のために用意されているが標識がふされていない商品の廃棄、それから、侵害する虞のある商品の引き渡しなどの権利行使の充実させることも必要であると思います。 中小企業のブランディングですけれども、一般的に、日本の中小企業さんがブランディングをうまくできていないとは思いません。小さい会社でも全国的に知られているところもあります。できているところとできていないところとあって、そこの原因をはっきりさせる研究を行う必要があると思います。 中小企業のブランディングが上手くできないときに、中小企業が参入しにくい規制などがあるのではないか、と思います。そのような参入障壁を軽減するための規制緩和が必要なのではないかと思います。 ○妹尾会長 どうもありがとうございます。意匠法、商標法の改正まで、改正というか現代化というところまで話が行きましたけれども。 ほかにいかがでしょうか。 渡部委員、お願いいたします。 ○渡部委員 今のお話のとおりなんですけれども、例えば2ページの一番下のところに「技術そのものをブランド化」という、これ、光触媒でやったもの、十数年前に私がこういうことをやりまして、役員から文句を言われながらほとんど理解のない時代にやって、それとそんなに今は変わっていないということを、逆に今話を聞いていて思ったわけですけれども。 これ、やはりブランドが大切だというのはわかるんですね、経営者の方は。技術ブランドの話もある程度わかったとして、それが知財権とどう関係しているかというところが、やはり結構難しくて、その辺の効果が余りわかっていただきにくいのだと思います。 そういう意味で、今の意匠なんかの問題にしても、意匠権ってたくさん出すと権利が狭くなっちゃうような性格がありますよね。そういうようなところとか、やっぱりそんなに重視されていない……現実に今、意匠権出願数が減っているわけですから、日本ではですね。そういうようなところを根本的に何か考えないといけないというのは、多分、今、相澤先生が言われたような現代化というところだと思います。 ただ一方で、意匠出願は、私、これ、携帯電話の意匠出願の分析をたまたま研究室でやりまして、携帯電話はちょうどいいぐあいに業界が比較的、日本企業でまとまっていて、日本意匠出願で言いますと、意匠出願の特徴、特にパイオニア的な意匠出願、これ、意匠って意匠権の公報って余りほとんど情報は書いていないんですが、だれがやったかというのと、それから分類ぐらいはわかるので、そこからデータをとってやりますと、突然出てくるようなパイオニア的な出願で、その後引用をたくさんされるようなものと、それからその製品、製品とのひもづけは通常難しいんですが、その製品との関係というのは結構説明できるんですね。 これ、デザインランキングというの、日経さんだったですかね、そういうようなランキングとか、グッドデザイン賞だとか、そういうものとこういうふうに算出した意匠権データは結構相関が高いんです。だから逆に言うと、企業のマネジメントの仕方によっては、意匠権というのは十分効果が出ているんじゃないかという、そういう側面も注目していただいて、こういう使い方をすれば競争力に評価するというような啓発も必要なんではないかと思います。 それから、中小企業との関係で言いますと、これも大分前、二、三年前ですか、調査をやったことがありますけれども、中小企業さんにとって、やっぱりデザインというのが接点が余りないんです。今まで、ともかく系列の中で仕事をしてきたわけで、そこが多分最初のポイントで、そういうところのデザイナーって、今度はデザイナーが余り知財のことをよくご存じない方が多いわけで、デザインというのは何で保護されるかというのも、実を言うと余りよくわかっていないような方も結構おられますよね。著作権じゃないかと思っていらっしゃる。そういうところのやっぱり啓発も重要なんではないか。現実に、やっぱり地域中小企業とデザイナーの接点をいかにしてふやして、そういうことにかかわっていただくかということが多分ポイントじゃないかというふうに思います。これは、調査をやったことがあります。 そこまで、論点に関してはそうなんですけど、多分きょうの議論に入らないんですけど、ちょっとあえて言うと、追加で山本委員の資料4のところですね。これあえてちょっと言っておきたいんですけど、今、大混乱している問題があってですね。 ○妹尾会長 ちょっと待ってください、資料4。 ○渡部委員 山本委員の資料4ですね。 これ、日本版バイ・ドールの改正というのがあって、この4月1日付から独占ライセンスに関しては事前承認になったという通達が何か来ているらしくて、それがもういろんな省庁に聞いてもよくわからんと。下手すると、独占ライセンスするようなときには政務三役の許可がいるようになったんじゃないかとか、ちょっと大混乱をしていて、いまだにまともな回答が得られていないという状況で、今までの契約を破棄しないといけないのかみたいなことになっていると。 これはもう当然ですけれども、多分2年前に、このバイ・ドールの若干改正については、審議会で少し聞いたことがありますが、立法趣旨はそもそもUS manufacture preferenceがアメリカではあるのに、それに相当するものがないと。パテント取るのや何か譲渡するようなことに関してどうするかというようなことだったと思いますので、当然これをどういうふうに運用するかというガイドラインをどこかの委員会でやって、わかりやすく契約の混乱がないようにしないといけないんですが、4月1日付だと言っていますので、これは早急にちょっと対処していただきたいということでございます。 ちょっと山本委員、欠席ですけれども、あえてつけ加えました。 ○妹尾会長 渡部委員、これ、バイ・ドールのこの話は、ブランドの議論とは別というふうに考えてよろしいですね。 ○渡部委員 はい、別です。 ○妹尾会長 はい、わかりました。この今の問題提起については、ちょっと後ほどに移行させていただいて議論をいただきたいと思います。 それでは、ブランドのほうに。 相澤委員、いかがでしょうか。 ○相澤(益)委員 これは質問なんですが、ブランド構築で、今ご説明いただいたところは非常に説得力があってわかりやすいんですが、私、だんだんとブランド構築の中に安全性とか信頼性、こういったものが非常に重要になってくるのではないかというふうに思うんですね。この辺のところは特に、今、環境という言葉でつながっているところがそのちょうど境目というか、そういうようなところになっているんではないかと思います。 それで、今後、この安全性、信頼性というものをブランド構築の中に強く押し出していくということになった場合に、この今のブランド戦略、こういうところにどういう変化が起こり得るのか、あるいはどういう対応があり得るのか、その辺のところについてちょっとお考えをいただければ。これは質問でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 参考人であります下川さんのほうから、何か今の点に関して。 ○下川参考人 安心・安全というのは、日経デザインでもよく特集をするデザインのテーマなんですね。いろんな安心・安全がありまして、例えば高齢者に安全とか、子供に安心して使わせてもいいとか、あるいは非常に公共の場で安心・安全というものがありますので、こういう経済が特に右肩上がりで行きにくい環境下では、非常に安心・安全というキーワードあるいはそういう価値が、非常に消費者に響くんですね。 そしてもう一つ、最近のキーワードでいうと、家族というのがとても大きなキーワードになっています。例えばユニバーサルデザイン、みんなに使いやすいものをつくりましょうというよりも、実は家族みんなで使えますというほうが、とても響く。任天堂のWiiのようなものは、ユニバーサルデザインと言ったら多分売れなかった。家族みんなでリビングで楽しめると言ったがゆえに、ユニバーサルな現実に受け入れられたと。 そういう、単にユニバーサルとかエコとか安心・安全と言うよりも、何かそういう今の社会が求めている家族の輪とかコミュニケーションとか、離れている家族をつなぐための何かツールとか、そういった打ち出し方をするほうが、今の社会には響いていく。それが一つのブランディングの方向であって、そこに安心・安全とかユニバーサルとかエコとかそういったものが入ってくる、そういうブランディングが、実際にはビジネスの現場では求められているんでしょうね。 したがって、そういった方向でさまざまな権利化が必要でしょうし、そういったものを支える法体系になっていなければいけないのかなというふうに思っています。ちゃんとした、正対した回答になっているかどうかわかりませんけれども、そういうふうに考えています。 ○妹尾会長 相澤委員。 ○相澤(英)委員 今、農産物で日本製というのは非常にいいブランドですね。そういう状況から考えると、農産物等の原産地の表示というものをきちっと保護していくことが必要だと思います。 さらに、家電製品でも、日本製はブランドとしての価値を有してきています。それを保護できるようにしていくことは、日本の空洞化を避けるという効果もあると思いますので、そういうことも考えていいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 佐々木委員、お願いします。 ○佐々木委員 この論点のところにあるように、ブランド戦略をどうしていくかというときに、今いろいろお話の中で何点か出てきましたけど、本当にシンプルに考えると、3つぐらいの段階に分けて考えたほうがいいのかなという感じがします。 まず1つは、このエビアンを見て思ったんですけど、例えば私なんかは中国に出張すると、部屋にコンプリメンタルなミネラルウォーターが置いてあるんですけど、わざわざ冷蔵庫の中の有料のエビアンを飲みます。この場合に、まず安心というブランドで、これは多分まじめにちゃんとしたものを商売し続けるということが、多分ブランドインハンスメントの一番のポイントだろうと思うんです。 その次の段階で、今、日本のマーケットなんか多分そうだと思いますけど、いろんなものがほぼ何を手に取っても安心できる市場において、じゃ、ブランドインハンスメントはどういうものか、かなりそのイメージに振った多分戦略が出てくるだろうと思います。 もう1つは、本当に確立してしまったブランドをどう守っていくか。守りやすいというのは、やや排他的な要素が入ってきて、今申し上げた2番目の安心したマーケットにおいてのブランドインハンスメントと、確立したそのブランドを守るというところに、一番冒頭に相澤先生がおっしゃった、いろんな法律が多分コンフリクトしてくるような部分も持っていたりするので、そういうふうに幾つかに分けて、それをやっていくときの戦略をどう進めるのがいいか、そのために邪魔な法律、あるいは必要な法律はこういうものがありますよというふうに、そういうふうに分かれていると、非常に使うほうが使いやすいといいますか、非常にまとまりいいのかなという感じがします。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ブランドについてのいろいろな議論も整理しなくちゃいけないということですけれども。 お願いします。 ○高柳委員 ブランドについて、今までおっしゃられた各委員の方のご指摘、もっともだと思いますし、ただ、この論点のそういう大切なことはわかりますけれども、それを効果的に活用させるために活用手法に関する事例集を作成したり、意識向上を経営者にと。これが国のとる戦略なのかというと、いささか疑問というよりも大いなる疑問を感じます。 これは、事業戦略は各企業が必死でやっているわけですね。そういうふうにやっていることが非常に、先ほど言ったように法整備的に不備であるとか、そういうことで国が何か法律を改正するなりつくったりするのをやるべきであって、各企業の戦略を国が行政が指導するとか、そういうのは我々にとっては大きなお世話というんですか、もっとやることが国としてはあるんじゃないかと言われても仕方がないんじゃないかなと思います。 以上です。 ○妹尾会長 例えば、もっとやるべき仕事でご提案はないですか。 ○高柳委員 先ほどの法的な整備が、今の現代的なこのブランドの戦略を国として支えるためには、ちょっとおかしいとか、どういうところがおかしいのか、あるいは強過ぎる……権利が狭過ぎると言ったり、広くては困るという面もあると思うんですね。そういうところは研究すべきだと思います。 また、今、中国では、意匠だけで年間30万件も出願が出ているんですね。これ、非常に脅威です。これは今、日本にまで来ているかどうかわかりませんけれども、彼らは教えなくても30万件出してきているというこの事実、この現実をどう考えるとか、そういう世界の、特に中国の勢いとかその中で、日本の現代のこの法体制がこれでいいのかというところを研究すべきであって、個々の事業戦略について、こういうのいいとかいう事例、それはそれもいいんでしょうけれども、もっと国としてやるべきことを盛り込むべきじゃないかなと思うわけです。 ○妹尾会長 わかりました。今、国としてやるべきなのは、法の現在への整合性があるかどうかということをもっと研究しろと、こういうご提案と受け取ってよろしいでしょうか。 ○高柳委員 はい。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 佐藤委員、お願いいたします。 ○佐藤委員 今のご発言との関連でございますが、法制度の問題に関しては、やはり今までのいわゆる産業財産権というのは縦割りの保護をやってきていて、今とらえられている問題は、縦割りじゃなくて、総合的にこの知財を活用して競争力を強化するという流れになっている。そういう意味で、法制度と実際の実態とのギャップが出てきているということは言えるというふうに思っております。 特に、例えば不正競争防止法に関しても、基本的には、中国の場合も反不当競争法には一般条項がありまして、不正競争行為というものが定義されていて、それによって包括的に保護するというふうには書いてあるんですが、実際にはそうなっていませんが。日本は、逆に個別的に保護する対象を限っています。そういう意味では横断的な保護を、不正競争防止法で保護するのには限界がある。今までも一般条項を入れるかどうかと、日本の中で何度も議論されているわけですけれども、今のようないろんな種類の知的財産を総合的に活用して、それで競争力を増していく、それを法制度的にサポートするとするならば、やはり個別的な保護ではなくて、横断的に包括的に保護できるような、不正競争行為に関する一般条項的な保護をすべきかどうかということは、一回議論してよろしいんじゃないかなというふうに思っております。 それから2つ目は、先ほどのご意見で、企業が当然これはプレーヤーですので、みずからがこのブランディングについて努力していって、自分みずからが力をつけていくということが一番基本だろうと思うんですが、中小企業という観点で見ますと、やはりなかなか自分だけの力ではできないという、そういう方々もいるわけです。そういう意味では、やはり国がしっかり支援していくということが必要ではなかろうかというふうに思っております。 それから3点目としては、きょう参考人からお話しいただいたケースは、製品にとどまらず、それが消費されるまでの間を包括的にブランド戦略としてまとめていくという切り口は、大変すばらしいというふうに思っておりますが、もう一つは、やはりマーケティングという観点が、きょうの議論の中にはちょっと薄いのではないかなと思います。やはり市場があってブランディングであると思います。当然、プロダクト、プライス、それから流通経路のプレス、それからプロモーションというような、そういうものをトータル的にうまく結びつけていくということが、ブランディングにとっては不可欠な観点なので、この点もやはり大きなブランド戦略の要素だということで、明確化されたほうがよろしいんじゃないかというふうに思いました。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。以上、今のお話も、やはり法的な側面でのバックアップも必要だということと、その一方で啓発も必要だということでご意見をいただきましたけれども、ほかにいかがでしょうか。 佐々木委員。 ○佐々木委員 今、高柳委員と佐藤委員のまさにおっしゃったところに、これは問題があるのかなというふうに思います。というのは、ここの緑のところの論点のところへいきますと、この事例集というのはやっぱりだれに使わせるんだというところが最もポイントで、これは結構な大企業に限らず、小さなサイズの企業でも何とかしていこうというところの経営者で、ブランドというのを知らない人はいないと思いますし、本屋に行けばそれなりの戦略本が幾らでもある。この中で事例集をつくって、本当にどこまでのものが参考にできるかということが一つあります。 それとはちょっと裏腹になりますけど、これ自体が日本の津々浦々まで、国民一人一人にまでブランドマインドを植えつけて、いつでもブランド予備軍にしようというコンセプトであれば、これを進めるべきであると思いますし、そうでなければ、ちょっと中途半端なところにボールを投げる形になるので、そこをもう一度ちょっと整理すべきかなという感じはします。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。事例集の使い方についても十分な配慮をせよということかと思います。 ほかにはいかがでしょうか。 それでは、江幡委員、お願いします。 ○江幡委員 先ほど不正競争防止法について、包括的な保護条項を設けるべきというようなご指摘がありました。例えば実務においても、パッケージのデザインなどのイメージや色の展開などは似ているけれども、不競法上の保護を受けられるほどまでとは言えないというような微妙なケースが問題になることも多く、相談を受けた立場としては、そのような場合に何とか保護が受けられないかと思うこともございます。しかしながら、一方で、様々なデザインが発展していき、デザインのバリエーションが可能になるためには、不競法による保護をあまり広げ過ぎてもいけないと思います。不競法は、保護と同時に他者に対しては制約になるという面も両方ありますので、常にその保護と制約のバランスというところも意識して考えていかなくてはならないと思います。 模倣品の個人ユースに一定の制約をかけるべきか、これも長く議論されているテーマではあります。日本で個人ユースを制約する前に、やはりビジネスとして模倣品の販売を行っている場合や商売としている場合に対して、より権利者が権利行使しやすくすべきでしょうし、警察や税関、水際での措置をより利用しやすくなるようにする措置を考えるべきではないかと思います。今でも、正々堂々と模倣品が売られているような事例が日本においてもまだあるようですし、インターネットで、模倣品が売られていて、購入者が模倣品であると意識せず買っているということもありますので、まずはこういった問題に対処していくべきかと思います。 最後に、資料1の3ページ目、支援策の強化ということで、いろんな地方のブランドを構築するためにプロジェクトとして支援していくという項目がありますけれども、各地域任せにするのではなく、ある程度東京からもサポートをしていったほうがいいのではないかと思いました。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、ちょっと時間のほうもまいったので、すみませんが私が委員発言をさせていただきたいと思います。 このデザインの問題というのは、佐藤委員に前々回ご提起いただいた、デザインというかブランドの問題ですね、それから議論が始まっておりますけれども、これの背後にありますのは、やはり企業戦略が変わってきた、事業戦略が随分変わってきたということがあろうかと思います。これは下川参考人がおっしゃったとおり、従来のデザインを製品形態で保護するというようなものから、急激に変わってきています。 それは例えば、先ほどのような縦割りで、これは商標権、これは意匠権、これは特許、これは実用新案というような形ではなくて、それを総合的に使う知財権ミックスと私はそのように呼ばせていただいているものが動いているということですね。その知財権ミックスは何かというと、これは佐藤委員がおっしゃられた、先ほどのマーケティングの通常でいう4Pの考え方もある一方で、いわゆる顧客関係性のマーケティングが出てきた。それからユーザー・エクスペアリアンスのマーケティングが出てきた。それから、いわゆる価値形成のマーケティングが購買をして、使用して、そして廃棄するに至るまで全部に注目して動いているということですね。そこで、その価値を保護するために、いろいろなあの手この手が権利上も動いていると、こういうふうに見ることができると思います。 したがって、我々は先ほどのように、総合的な法体系の整備に持っていかなきゃいけないという、相澤委員、佐藤委員のおっしゃっている、ここのところをもっとやらなければいけないところだと思います。今回、いきなりそれでどういう政策かという話にはなりませんけれども、そういう課題があるということは今回で認識をしたいと、こういうふうに思うわけであります。これが第1点であります。 第2点は、政府がやる以上は、これはジャパンブランドとしてどうなのかというお話かと思います。企業のブランドの総合、つまり積み重ねがジャパンブランド、日本のブランドなのかとこういうことなんですが、日本製品と言われているブランド力は一体何に準拠しているのだろう、こういうことであります。日本製品のブランドイメージというのは、我々が小さいころは実は安物だったりまねっこだったりということだったんですけれども、それがいつの間にかバブルに近いころまで、先輩諸氏の頑張りによって、品質とコストということがイメージになってきたと思います。それが先ほど、相澤委員からご指摘があったとおりでありまして、安全と信頼というふうに現在かなり移行をしてきているということだと思います。すなわち、日本製品自身のブランドイメージがどうなったか。 これがコンテンツ系になりますと、恐らく中村委員が普段おっしゃっていらっしゃいます、クールということになると思います。クールジャパンと言われている、いわば格好いいといいますか、江戸弁で言えば様になるというようなことだと思いますけれども、そういうようなイメージと企業ブランドに相乗関係ができているかどうか、これが問われているということだと思います。日本製品と言われている全般と、個々の企業のイメージが、これをうまくお互いを利用し合っているだろうか、これが多分問題だと思います。 そうすると、グローバル企業のイメージが、例えば中小企業のイメージにうまいぐあいに反映できる形があればいいんですが、なかなかそれがうまくいっていない。中小企業の方も、そういうイメージをうまく活用できるすべが実はよくわかっていないという状況だと思います。したがって、そういうプラスになるようなことを啓発するということも一方で必要だなと、こういうことになろうかと思います。 したがって、今回、皆さんのご議論を少し整理させていただくと、大きく事業戦略が国際的に変わっているときに、法体系がそれを支援するような形で整備されるべきだということと、もう一つは啓発をもっと進めないといけない。例えば啓発は、先ほど佐々木委員がおっしゃった事例集の活用の仕方なんですが、できれば特許庁で、あるいはINPITでおつくりになっている産業財産権テキストの中に、こういうのが新しい観点で組み入れられるといいんだろうなというふうに思います。事例集自身については、従来の市販の事例集とは相当違うというふうに私は見ております。というのは、今みたいな新しい戦略を織り込んでいらっしゃるということなので、それをさらに進めたものができればいいなというふうに思います。 以上、ちょっと簡単に整理をさせていただいて、次の話題に行きたいと思いますが、よろしゅうございますか。 それでは、よろしくお願いいたします。 では、続いて資料3をご覧いただけますでしょうか。これはユーザーイノベーションについてであります。資料1には含まれておりませんけれども、西山委員からご提起いただいたユーザーイノベーションについていろいろお話をいただきました。いわゆるユーザーイノベーションについては、ご提案がありましたけれども、今までの会合を踏まえて、私どもと事務局とそれから西山委員とが協議して、ユーザーイノベーション類型を整理させていただくということにしておりました。その整理の結果を、資料3として提出させていただきました。 これ、ユーザーイノベーションというのは、90年代後半から次第に使われるようになった言葉でありまして、私もそれをかなり喧伝した一人なんですけれども、ただ世界的にはいろんな使われ方がありまして、それがどうも議論の混乱を招いていた感がありますので、それを少し整理をさせていただきました。 これは別に学術論文ではないので、すべてを網羅するというよりは、この会に関連するものを抜き出したというふうにおとりいただきたいと思います。 1つは、ユーザーイノベーションということは、当然、ベンダーイノベーションがあるんでしょうと、こういう話であります。ベンダーが主導するイノベーションが強調される中で、ユーザーがどういうふうにイノベーションにかかわっていくか。あるいはベンダーという像が、ユーザーがインタラクティブにどうするかということをいう、そのときにイノベーションそのものにユーザーを大きく関与させようということです。それがここに書いてあります。いわゆるリードユーザーイノベーションだとか、あるいはイノベーションの結末に行く前のイノベーターユーザーがどういうふうに推進をするかといった議論もこの中に恐らく含まれるだろうというふうに思います。 2番目は、これは人によってニュアンスが違うんですが、デモグラフィックイノベーションないしは2.0と呼ばれている、いわば一般の大衆の知を集合知、コレクティブナレッジというふうに呼ばれていますけれども、これに活用するという形のものです。これはWebの世界、ITの世界では極めて最近では普通に使われるようになっておりまして、もとはLinuxだとかWikipediaとか、ああいうものをいろいろ集めながら、専門家の知が権威を持って出てくる1.0型ではなくて、みんなの知が集積されて高まっていく、あるいはそれがアーカイブとして形成されると、このたぐいであります。 3番目は何かというと、アマチュア、いわゆるセミプロやアドアマなんかも含めて、それらの人たちが提案、参画するということです。これは文芸作品だとかいろんなものでもそうですけど、いわゆるプロの作家のみならず、いろんな人が応募しながらそれが知として形成される。特にコンテンツ系ではかなり多いと思いますけれども、こういうプロ・アマの垣根を越えた点による知財創出が行われるものが3番目です。 4番目は、特定領域に関心のある集団の需要に対応したビジネス展開を行うものであります。最近では、例えばモジュラー製品の代表であるレゴブロックそのものが特定建築家の作品、何々のお城とかだれだれが設計したこれこれのビルとかいうものが、これ、キットで販売されて大変世界中で人気になっていると、こういうような状況がありまして、こういうようなものはある種の特定関心領域コミュニティに対する製品提供、サービス提供と、こういうふうに我々は呼んでいますけれども、そういうものもいわゆるユーザーイノベーションに含まれると、こういうふうに議論される場合もあります。 以上のように整理しているもので、もちろんそれにこぼれるものもあろうかと思いますけれども、海外政府、特に欧州政府がこれらに注目して政策支援を始めているという指摘があります。これは西山委員からたびたびお話をいただいているところなのでありますが、これらについて、やはり我が国も調査を進めていって、その政策のあり方を検討していくべきではないかと、こういうことだと思います。 2枚目を見ていただきたいんですが、これらの議論をよくよく見てみますと、通底するのは従来のイノベーションの議論のコンセプトは一体どうなっていたんだろうな、それを拡充したほうがいいんじゃないか。すなわち、イノベーションのリソースを従来の大企業先導にこだわる必要はないじゃないかと、こういうことだと思います。 これはさらに言えば、「日本人の・働く・大人の」の知だけを活用するということが前提になったイノベーションの議論ではなくて、国内外の老若男女のすべての人が関与できるようなイノベーションのスタイルを検討したらどうかと、こういうことではないか。いわばイノベーションインフラの整備は、従来型とははるかにもっと違う、あの知もこの知もどの知も活用できるようなプラットフォームを形成すべきではないかということであります。したがって、極端に言えば、企業だけではなく、一個人の知恵もうんと活用できるようなスタイルをとってはどうかということであります。 これらのことを考えて、上記については基本的には企業や大学等の主体が進めていただくべきことであることでありますけれども、ただし、これが誘導され得るような政策的支援も考え得るわけであります。その一つとして、本会においても言及されたイノベーション特区を推進する点が考えられます。これは前回、中村委員と私とで、両方の調査会の合流起点としてここをやってはどうかという話をしていたわけですけれども、これにモデル地域を設定して、それらに関する政策の集中特化を試みるということによって、この可能性を開いてみてはどうかと、こういうことです。テクノロジーとコンテンツ、モノとサービスの融合・連動を行う、そういうアイデアの受信や、試みの実証や、結果と提案の発信等を行える地域でこれを試していくことが政策的支援の一つのあり方ではないだろうかというのが、一応整理をしたところであります。 これについて、何かございますでしょうか。 西山委員、お願いいたします。 ○西山委員 妹尾会長、どうもありがとうございました。 ちょうど妹尾会長からコメントがありましたように、他国では既にユーザーイノベーションという言葉を用いて政策に盛り込もうという動きが活性化してくる中で、日本政府としても何らか呼応するような対応をしていくべきだろうというふうに思って、この議題を上梓していただいた次第ですが、最終的に目指す目標は一つだと思います。個人が起業家精神を持って起業しやすくするようなインフラを、知財の面からサポートしていくということだと思います。 例えば、コンテンツの部分においては、ネット上で調達できる知財を個人が再加工して販売することによって、小さなビジネスがスタートできたり、商品・プロダクトの場合だったら、既に流通している商品に何らかの加工を加えて、それを対価に、それを売るということではないんですけれども何らかの報酬を、もしくはその宣伝ができるようになっていったりすることを促進していったり、すべては多分個人の創造的な活動を支援するところに集結していくべきだと思うんです。 加えて、この国が用意する政策・施策の上に、日本人が乗るのは当然ですけれども、日本人以外の人々も日本のこのプラットフォームに乗ってくるようにサポートできれば、なお喜ばしいことだろうと思います。すなわち、イノベーションを起こし得る個人が日本に来たくなるような磁場を、もしもこの議論から何かを生み出すことができれば、それは後々にとって、この国にとって非常に有益なものになるだろうというふうに思っております。本当に目的だけですけど、今、ここでは具体的にはイノベーション特区を推進するというところで落としどころが見なされようとされていますけれども、ぜひこれを皮切りにもしくは次の手に着手できるようなところに持っていっていただいたらなというふうには思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 今の日本人以外のというのは、これは特にテクノロジー系だけに限らず大きいことでありまして、いわゆる第一次世界大戦後にパリが世界の創造的な人材をあっという間に吸収しましたよね。それから、第二次世界大戦のニューヨークがそういう機能を果たしたわけであります。それが東京かどうかは別にして、日本のところで、世界から知恵が集まるというようなスタイルがとれればいいということなんですが、そのための一つの手立てということかと思います。 いかがでしょうか。 中村委員、お願いいたします。 ○中村委員 私、この論点、非常に大事な論点だと思っております。3点ばかり申し上げたいんですが、1つはIT。 ITも、過去5年ほどの動きを見ると、新しい動きはほとんどユーザーから出てきておりますね。先ほどWeb2.0という言葉がありましたけれども、それに代表されるように。つまり、技術を開発していた段階があって、それがサービスや商品に変化していった段階があって、それらが世界中にまき散らされて、今やITというのは、それを使っている人たちが次のトレンドを生み出していくという段階に入ってきた。成熟してきたらそうなるんじゃないかと思っていたんですけれども、そうなってきたということ。 それから、同じくコンテンツですけれども、先ほどのブランドの話になぞらえて申し上げますと、クールジャパンと呼ばれている、クールの源は何かという議論を我々はするんですけど、結局やっぱりそれは日本の大衆文化力、つまり、ハイカルチャーの芸術の分野ではない、ポップのところにあるんでしょうね。だとすると、それらを支えているのは日本のファン層、ユーザー層の文化力といいますか、表現力といいますか、創造力のところにあるんでしょうね。 したがって、そのコンテンツもこれからどうなっていくか、どうすれば発達していくかということを議論すると、例えば、この間もコンテンツの調査会で、コミックマーケット、コミケをどう見るのかという議論がありました。あれは漫画のフェスティバル、即売会なんですけれども、プロフェッショナル、読者、アマチュアが一つに集って新しいものを生んでいく増殖炉になっている。一方で著作権から見ると、著作権違反の巣窟という困った面もあるんだけれども、それをどういうふうにプラスの方向に持っていけばいいんだろうかという議論がありました。 同じように、過去数年の文芸作品を見ると、ケータイ小説が非常に売れていて、上位を独占したりしている。あれは表現の場をモバイル企業が用意をしたことによって、文芸書の上位を独占するような作品を素人や高校生が産んでいったということですね。という、そういう状況にあります。そういったものをどうつくっていくかということだと思います。 3点目、先ほどの高柳委員の指摘と同じことを考えなきゃいけないんですが、じゃ政策としてそこで何ができるのかというと、やはり、私、頭ひねっても出てくるのは、そうした場とかフィールドとベースとなる技術を提供するということが一番効果的、効率的なんじゃないかと思います。先ほど妹尾会長がおっしゃった、プラットフォームというやつですね。 それは特区という落ち着きどころでよいんだと思いますけれども、もう一つの調査会で考えているコンテンツの特区の設計もしなければいけませんので、やっぱり合わせる形がいいだろうと。それはコンテンツも、特許に関する施策も、技術開発などの施策もそこに集中同化をして、先ほどおっしゃったパリとかニューヨークに匹敵するような次を生んでいくというぐらいの強いものを考えていく必要があるんじゃないかと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。中村委員が会長をやられているコンテンツのほうの専門調査会とも、この辺で相乗効果を出せればやはり一番いいなという感じがいたします。 ほかにはいかがでしょうか、皆様のほうから。 よろしければ、そういう形で頑張っていただくのはもちろん企業だとか個人だとか、あるいは大学だとかいろいろな団体だとかいうところで、さまざまな人たちが知を発揮できるような場と機会を政策的に支援するというところの方向で進むために、まず第一段階としてはそういう場と機会を提供するところから見ていきたいということで整理をさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。 それでは、この話題はここでいったん整理をさせていただきます。 続いて、目標指標についてということです。特に海外出願比率については前々回、前々々回ぐらいから、皆さんのほうからもさまざまな意見が出てまいりました。比率にすべきか、額にするべきか、あるいはそれ以外のものにすべきかというようなことがあろうかと思います。先ほどの事務局から説明がありました、資料1の4、5、6ページ、ここについてご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。 では、荒井委員、お願いいたします。 ○荒井委員 特許の海外出願比率については、今回の議論の目標が国際競争力を強化するとか、国際標準化を進めるということだと思いますから、目標として設定することは適切だというふうに思います。これは、従来は日本の特許は国内出願重視の特許戦略で来ているわけでございまして、必ずしも企業全体、あるいは経済の国際化にその辺では追いついていないという面があるんじゃないかと思います。しかし、現状では国内だけで販売している商品はほとんどないわけですし、また国内だけで使われている技術もほとんどないというように国際化している。 それからもう一つは、特許が今まで企業の方もマークしていたのは、国内メーカーとのクロスライセンスをはじめとして、国内メーカーを中心にマークしていたわけですが、特許の競争相手は国内だけじゃなくて、もちろん欧米だけじゃなくて、さらにアジアに非常に強力なメンバーが誕生しているという事実、それから国際標準が非常に重要になってきていると、こういうことからいって、企業のあるいは日本全体の特許戦略はもっともっと国際化すべきだと思います。本来、科学技術に国境なしということですから、海外の出願比率というのは100%になるのが本来の姿だと思うんですが、それは将来の形として、少なくとも当面は欧米並みの水準を目指すというのが適当じゃないかと思います。 その際に出されている議論で、国内出願を減らすんじゃないかという話があったんですが、これは本末転倒な議論になるわけですから、日本全体でどういうふうに技術開発をして、それを国際的に生かして、国家として競争力を維持し標準化するかという観点から見たら、国内と海外を分けるというのはおかしいわけで、したがって国際的な特許戦略が当然大きな比重を占めるようになるべきだというふうに思います。 それから、もう1点、さっきの資料の中で、企業ごとにこの比率はまちまちというのは、これはいろんな目標についてすべて企業によって状況は違うわけですが、まちまちなわけですが、それを全体を統合した国全体としてはどのくらい国際化にしたらいいかということですから、国全体の目標として設定したらいいんじゃないかというふうに思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。理想は100%だということですが、現実的にはということで、これは設定すべきじゃないかというご意見ですが。 野元委員、お願いします。 ○野元委員 この海外出願比率の目標設定にはものすごく大きな違和感を感じます。そもそも、欧米に比べて日本が低いというところから上げようということでもあるんですけれども、日本はグローバル出願率は低いけれども、この6ページの資料では海外売上比率は53%と結構高いですね。出願率が低いことは、具体的にどういう問題があるのか。高くしなきゃいけない理由というところをもっと分析すべきだと思います。何が問題なのか、それはなぜなのかと。それをしないと、じゃ、24%を35%にしたからといってどんな良いことがあるのか。どんな問題が解決されるのかということはよくわからないので、そこはやっぱり明確にした上で、もし数字を決めるのなら数字を決めるべきであろうと。 同じ、前のページで、輸送用機器の会社でも企業によっては大きく違いますし、同じ企業でも、当社なんかでも事業は幾つもありますので、非常に低い事業もあれば、非常に高い事業もある。平均値で議論できない点があるんです。ですから、事業によって、同じ会社であっても事業によって高かったり低かったり。それはもうひとえに、その事業の事業戦略とそれから海外出願をするその費用対効果をにらんで決めているわけであって、国が何%と言ったとしても、企業はそれに従うとは限らないと思うんですね。 むしろサポートしてほしいのは、この資料2、機械翻訳の精度アップというのがありますけれども、精度アップをどの程度精度アップするのかというのを、数値目標を決めて早く使えるようにサポートしていただきたいなということと、そういうことをすることによって海外出願のコストが半減するとか、そういうのを行政でしていただくと非常に助かるなというふうに思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今のは、また逆に反対のご意見ですけれども。今のは、例えば出願比率が上がれば、売上高、利益とどういう相関になるのかと、それがわからないときに単に片方の指標だけ上げてもしょうがないじゃないかとこういうご意見だと思いますし、もう一つは、この目標というものの主体は一体だれがやるんでしょうかということの、問題提起だろうというふうに思います。 これについては、皆さん、いろんなご意見があると思うんですが、荒井委員、いかがでしょうか。 ○荒井委員 どんな問題が生じているかですが、日本の企業の方の特許戦略は、国内での出願競争でずっとやってきているわけです。こういうことが変えていかなければいけない時期が来たと思います。例えば、国内でそういうことをやっていることの結果、海外には余り出さないそのギャップが、無意識による技術情報の流出になっているわけです。近隣の国がみんなそういうものを見ている。日本の企業はそういう国に対してあまり出願していないわけですから、近隣の国の企業は特許情報を自由に使えるようになっている。非常に大きな問題が生じていると思います。それが一例です。 ○妹尾会長 今のように、国内出願だけの場合は、実は技術流出のリソースになってしまっているという、この問題もあるよというご指摘だと思います。これについては、いろんな立場からいろんなご意見がありそうですね。 相澤委員。 ○相澤(英)委員 主体の話が出たのですが、そうすると、悪しき行政指導というようなことが行われる虞があります。政府がやらないことに対して、数値目標を置くことについては、問題があると思います。皆さんがおっしゃられているように、企業の方がポートフォリオを自分で決めるのが適切なので、そこに介入することはよろしくないと思います。 ただし、政務官が数値目標をつくれとおっしゃられるので、であれば、より弊害の少ない数値目標としては率ではなくて、数でしょうと申し上げているのです。海外出願がふえること自体は悪いことではなく、海外出願がふえるようにそれを支援する政策を行うということも悪いこととはいえないから、であれば、より弊害の少ない「数」の数値目標の設定をお願いしたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 ちょうど政務官がいらしたところですが、今のことに関して、いかがでしょうか、ほかの方。 佐々木委員。 ○佐々木委員 方向性の賛否の議論は、今、両方からの意見が出ましたので、ちょっと参考までに申し上げると、輸送用機器のところの多分A社というのは弊社ではないかなと思うんです。ただ、多分、数としては一番多いんじゃないかなというふうに思っていまして、それで必要なところに必要なという動きについては、10年ぐらい前まではまず第1国をアメリカ、第2国は我々の産業構造からいってドイツ、大体そういうふうに決まっていまして、だんだんそれがイギリスとか広がっていき、重要でないものは足切りをしていくという、そういうプラクティスだったんですが、ここ何年かは多分1番が中国になっていると思うんです。これはやっぱり先ほど荒井委員がおっしゃったような、技術流出の問題とか模倣の問題とかいろいろ見ながらコントロールをしていますので、やっぱりそこは比率ではなくて、海外のアクティビティに対してどういう手を打っていくかというところで、まだ足りないようなところがあれば、やっぱり量であるべきだろうなと。先ほどの相澤委員のおっしゃったことなんですが、私はそれが適切だろうなというふうに思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 いかがでしょうか。 それでは、お願いします。 ○大渕委員 今の点に関して。先ほど、海外での出願を行わないと技術情報が流出する弊害があるよということなんで、ちょっとその辺をお伺いしたいんですが。私はこのあたりは、要するに特許を取るのと取らないのとどちらがプラスかマイナスかという、費用対効果を総合的に各企業が判断された結果がここにあらわれているんで、意識が低い云々というのは次第に高まっていけば、そのあたりで最も各企業が合理的な判断をした結果がこういうものじゃないかと思うんですが、そういう意味で、先ほど技術は国境がないと言われた。技術自体は国境がないにせよ、ターゲットとするマーケットについてはいろいろあるわけで、その辺の関係でちょっとこれも余り当然過ぎて出ていないのかもしれませんけど、ちょっとここのあたり情報として出しておいたほうがいいのはと。 技術情報の流出の問題があるにしても、海外出願をしていないのには、先ほどいったん出ておりましたけれども、何かしらいろいろ各社ごとのそれなりの経営的なご判断があるんじゃないかというふうなことは、もうちょっとそのあたりの具体的なところは出していただいたほうが、ここはイメージがつかめやすいんじゃないかという感じがしまして、そういう観点からすると、やはりちょっとそういうのも原因等も考えた上で、比率というのは先ほど件数にせよ似たような話じゃないかと思いますけど、いろいろフィックスしてしまうと、先ほどの合理的な判断に足かせになるというか枠をはめてしまうことになりかねないので、その辺は先ほどのように、翻訳の機能、精度を高めるためのものとか、もうちょっと別のところで指標というのもあり得るんじゃないかと思いますので、その辺はもっとトータルに考えていいんじゃないかというふうに思っております。 ○妹尾会長 今、大渕委員がおっしゃられたように、技術に国境はないかもしれないけれども、事業にはターゲットの区域というのがあるんだから、当然これは企業の戦略的な結果ではないかということと、それからもう1点は、この指標そのものが適切かどうかというご指摘だと思います。 政務官がいらっしゃったので、政務官がよくおっしゃられる、後で検証できて、一体それの責任はだれがどうとるんだというときに、これをやったときにもし達成できなかったら、だれがそれを負うんだという話はあると思うんですね。本当に数を指標とするんだったら、企業別に数が振り分けられるのかということになると、これは全くの企業介入になってしまうので、むしろ実質的にさらにこれらが推し進められるような、政策当局そのものが責任を負えるような指標に転換してはどうかということが、大渕委員のご発言かと思います。そのうちの一つは、先ほどの野元委員のご発言と関連してくるのではないかと思いますね。そのときに、具体的に政策支援をしてくれるなら、政策支援としての機械翻訳ですね、ああいうようなものがいいのではないかと、こういう話かと思います。 この議論自身は、むしろ海外展開をするときに、企業が展開しやすい政策支援そのものについての目標数値というぐあいに、ブレークダウンをしたほうがいいかもしれないですね。もちろん、先ほど荒井委員がおっしゃったようにも、100%が本来の姿であるということも含めて考えると、少しこれだけが今、焦点が合っちゃっているんですよ。もとへ戻ってみると、政策的に一体何が実行可能で、後で検証可能な形になるかということを探ったほうがいいと思うので、その辺を少し見てみるということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。 それについて、具体的なアイデア、どなたかおありでありましたら、ご発言を。 それじゃ、福島委員、お願いします。 ○福島委員 前回あるいは前々回から、翻訳には非常にお金がかかるお話をさせていただきました。また、先程からの委員のご発言にもありましたように、企業がグローバルに権利を取得しない一番の理由は予算の制限です。企業の限られた予算枠内でより有効に経営資源を活用しようとしたとき、翻訳費用は残念ながら非常に高く、本来なら多くの国にも出願したい特許を限られた国にしか出願しないという事情は、多くの企業であるお話と思っています。 このような観点から、政策的支援による機械翻訳、また前回に荒井委員からご指摘の有りましたコンサルテーションのような支援も必要と考えます。つまり、限られた資金でより多くの国に出願展開できる施策があれば、自ずと海外展開は広まり、より強化されていくと思います。 また、一つの目標指標として資料に記載された海外出願比率や海外出願数が議論されること には、少し違和感があります。と申しますのも、日本とアメリカとあるいはヨーロッパでは、特許制度や出願制度がかなり違っており、単純に出願数を比較することにどれだけの意味があるのか疑問です。一つ間違えば、粗製乱造の出願にも繋がりかねないと思います。それよりは権利を何件登録したのか、あるいは登録された権利がどれだけ活用されているのか、ということをポイントに目標指標を考えることが望ましいと思います。 例えば、社内調査結果の一例として、米国特許登録のベストテンには米国企業が4社か5社入っていたと思いますが、彼らの米国登録特許の中で米国以外の国でも登録された特許は三十数%という数字があります。このような視点から見ますと、単に出願された権利がどれだけ海外に展開されているかということよりも、自国で登録された権利が知的財産権として海外でもどの程度まで権利化されているかを数字としてきちんと評価していくことがより的確であると思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今の前半のほうと関係がありますのは、実は、資料1の7ページ以降の参考にあります、言語の違いによる負担ということですね。これはちょっと後でご報告しようと思ったんですが、話がここまで来ましたのでちょっと申し上げると、機械翻訳のこの議論、前回、前々回ありました。事務局に整理を依頼しておりました。その結果が、この資料の7ページ、8ページですね、ここに書かれています。 このところは、行き着くところは単一言語による、英語なのかIPSプラントなのかわかりませんけれども、統一特許ということになろうかと思いますけれども、すぐに実現できるものではないので、これは段階的にいかなければいけないと思います。これは今、機械翻訳はかなり注目、これは当然、福島委員のご発言から大きくクローズアップされていたんですが、当然、翻訳者ですね、インタープリターだとかトランスレーターのレベルアップの問題だとか、いろんな問題が海外出願については伴っております。そこら辺をどういう順番でやるかという政策的なロードマップ、及び俯瞰図を描いていただきたいなというふうに思っているんです。それでたびたび事務局のほうにお願いをしているんですけれども、なかなか手が回らないので、次回ぐらいまでをめどに、その辺も少し含めて考えていただきたいというふうに思います。 それから、もう一つは、今までの話にあって、率か数かどうかというのを言っても、スタックしちゃうだけの話なので、むしろ企業なり何なりが活動しやすいために、もう少しブレークダウンした具体的な指標はあり得ないか、ちょっとこれを探ってみたいと思います。 このままがいいか悪いかという議論をいつまでもやっても、双方よかれと思ってのご発言だということは確かなので、具体的な行動指針、すなわち数値目標、これについては前回、私がペーパーを出しましたけれども、要するに行為自体が行為変容を起こせない指標を出してもしょうがないんですね。直接的にその行為主体が行為を起こす、ないしは行為変容を起こすというものが目標、指標の誘導的な意味ですから、それがないと後で検証も何もできないということになりますので、どうすれば、みんなが促されて動くのか、動いてくださるのかということをもう一回原点に返って考えてみたいと思います。 ということでよろしいでしょうか。ちょっと、いったん整理をさせていただきたいと思います。 それでは、海外出願比率に続いて、その他の中で幾つかの論点がありましたので、これを整理しておきたいと思います。一つは、産学連携活動の評価についてということで、大きな問題提起が前回、前々回にありました。それが資料4ですね。本日、ご欠席の山本委員からも資料を提出していただいております。産学連携活動の評価についてでございますけれども、さきの議題で議論した推進計画の実施状況、評価をするための目標指標とは別の話にさせていただきたい。これが目標指標だということではなくて、これだけ分けてほしいと思います。それは、山本委員がご発言されたのは、目標指標をこういうふうにしようよ、今回これで決めちゃおうよということではなくて、おっしゃられたことの基本的な意味は、産学連携活動全体の評価、国としての評価がどうあるべきなのか、それをじっくりと議論するタイミングに来ているのではないかということが、山本委員からの問題提起だったと思います。 1つは、産学連携活動の進展の測定、どの程度進んでいるのと、こういう話ですね。それから2番目に、日本と海外、諸外国の違いは何なのかという比較。それから3つ目に、個別の大学の評価というようなものがあろうかと思います。政策的な支援をするに当たって納得できる評価指標は、政府として何を定めるべきかという議論もありますし、あるいは大学の知財本部やTLO、そういうところがUNITTという技術移転協議会を団体として構成していますので、そこが自主的に取り組むべきことではないかとか、いろんな観点があろうかと思います。これについて、山本委員のここに書かれている産学連携活動指標の確立と集計を行うということについて、ご発言、ご意見があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。 渡部委員、先ほどのご発言と関係させて。 ○渡部委員 関係余りないんですけど。1番と2番は多分、全然別の問題で。 ○妹尾会長 はい、わかりました。 ○渡部委員 1番に関しては全くそのとおりだと思います。2004年に法人化した以降は、大学の特許出願というような形で集計されているんだけど、ここに指摘されているように、それ以前の部分が実態的に個人帰属で流通されていた部分との接続がなかなかデータ、統計的にうまくいかないとか、テクニカルな問題が結構あります。 あと、もう一つは、各省庁のやっているものを本当は全部合わせてみないといけないんですけど、そういうような問題とかあって、ちょっとどういうふうなやり方で評価をしていくかということについては、ちょうど議論の時期に来ているんだろうと。これは2004年からやっている成果ですからね、ちょうどこれで5年、6年たちましたのでということだと思います。 2番目に関しては、これは全然問題のレベルが違いまして、今来ている通達が極めて混乱を呼んでいるということでありまして、バイ・ドールが変更になって事前承認制になったと。今、企業との契約にしても、場合によっては破棄しないといけないとか混乱しているので、ところがこれはガイドラインの中をつくって、本来の政策趣旨に沿ってこういうふうにしましたということがちゃんと説明されるべきなので、ちょっとそこのところは早急に手当てをしてくださいという話です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 せっかくここに来たので、2番目のバイ・ドールの改正に伴う基準と運用の明確化。これは主体はどこなんでしょうか、政策的には。 ○渡部委員 バイ・ドールは経産省、産構審でやって、それが全部省庁に行っているはずなんですが。 ○妹尾会長 これについて、事務局のほうから何か。これに関するお話は事務局でもまだ把握していません? そうですか。 ただ、これについては、かなり現場は混乱している話なので、渡部委員からのご指摘に、次回までに整理をしてお答えするということでよろしゅうございますか。それでは、事務局のほうで。 ○近藤事務局長 経済産業省とご相談します。 ○妹尾会長 そうですか。近藤局長のほうから今、力強いお話がありましたので、これは次回お答えをいただきたいと思います。 それでは、最初の産学連携活動指標についての話ですが、これはいかがでしょうか。 相澤委員、お願いします。 ○相澤(英)委員 質問です。今、どういうことが行われているかということがこれからはわからないのですけれども、補助金が支出されている場合には、報告はなされているのですね。 ○妹尾会長 これは私の理解は、現在いろんなところで評価をされていますけれども、評価が、例えば文科省はこうやっている、経済産業省はやっている、ことしはこうやっている、でも去年はこうだったねというふうに、評価全体自身にまだ試行錯誤が行われている時期だと、こういうことです。そろそろ6年以上たってきたので、例えば政府で評価するなり何なりするときに、もう少しフォーマットが整理されたものとして出てくればいいのではないかなと。そうしないと、その都度都度の評価になってしまうので、安定性がないよね、長く見られないよね。この辺が山本委員がご指摘されたことです。 ただ、各大学が自主的に評価することも重要ですので、それを決めつけてしまう形はよくないと。ただし、政府として支援するんだったら、何かしらの評価基準があってもいいんじゃないかというところが多分、問題提起だと思います。 渡部委員。 ○渡部委員 いない人の意見は余り言わないほうがいいと思いますが(笑)、本人に確認したほうがいいと思いますが、私の理解だと特許出願数だけが注目されるということで、本当にその実質的な産学連携活動で成果が上がっているとは、必ずしも見えていないんじゃないかというところが大きいんじゃないかと思います。ただ、これはご本人に確認したほうがいいと思います。 ○妹尾会長 実は、ご本人とこういう話だねというのは電話で確認をとっていたので、今、代弁をさせていただいたんですが、中身の具体的なものは渡部委員がおっしゃるとおりであります。 今、この場で出願比率を入れようとかという議論は今回とても間に合わないので、そういうものが必要だねという確認を今回とりたいということが大きな趣旨です。ただし、そのときにこういう点に注意したほうがいいとか、こういう点は考えたほうがいいというのは、皆さんのご意見を大いに今承りたいと、こういうことでございます。 相澤委員。 ○相澤(英)委員 補助金を出さないのであれば、各大学さんが自由にやるべきことで、とやかく言わないほうがいいと思います。ただし、補助金を出すのであれば、基準をきちんとしないで補助金を出し続けるというのは非常によくないと思いますので、評価の基準の設定を含めた政策判断が必要なのではないかと思います。 ○妹尾会長 なるほど。ありがとうございます。 佐藤委員。 ○佐藤委員 今までのこの調査会での議論でも申し上げましたけれども、産学連携を見ていった場合に、まず大学の知財本部、TLO体制、これはこの2004年以前からやってきているわけですけれども、やはりもう一度見直すべき時期に来ているという意味では、しっかり指標を定めて評価をし、何をどう直すべきなのか、どう改革すべきなのかというのを、早急に私はやるべきだろうというふうに思っています。そういう意味で、指標をはっきりさせるということは必要だというふうに思います。 やはり、今までの我が国の知財戦略は、基本的な開発を大学などの研究機関に資源を投入して、そこで生まれたものを社会に還元していくという戦略でずっと来たと思うんですね。だけれども、じゃ実際、そういう先端が今の研究開発の成果が市場化されているかというと非常に少ない。また、うまくいっているケースも少ない。そういう意味では、今の産学連携というのが本当にうまく回っているのかということをしっかり評価しなければいけないという点で、この評価指標を決めるということは重要じゃないかというふうに思います。 そのときに、いつも比較されるのは日本とアメリカだけなんですね。本当はやはり韓国、中国とも比較していただきたい。私の持っているデータからすると、既に日本の大学の知財成果に関しては、韓国にも負けているというふうに思っています。そういう現実を踏まえて。アメリカだとどうも100倍ぐらい違うよね。まあ、100倍ぐらい違ってもそれは当然だねというんですけど、ここでやっぱり韓国に5倍負けているぞと言われると、やはり考え直すんじゃないかなというふうに思いますので、そういう意味では日本はアメリカだけではなくて、隣国を含めた評価をできるような形をしていただきたいというふうに思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。今のお話は、逆に言うと相澤委員へのお話ということになろうかと思います。要するに、補助金を出す出さないについての、検討をするためにもそういう評価が整備されていないといけないと、こういうことかと思います。 ○相澤(英)委員 補助金を支出し続けて、何年もたっているのに、自立しない知財本部とかTLOに、これ以上、補助金を支出することは、一つの政策課題だろうと思います。ただし、これは政策判断だと思いますので、これ以上申し上げません。個人的には、補助金の支出には限度をつけて、何年かたったら自立してもらうということが必要なのではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか、何かご意見あれば。 あくまでこういう指標を具体的につくるということが今回の話ではなくて、これらを整備すべきだというところで話を整理したいというふうに思っております。今後の対応について、今の意見を踏まえて対応させていただきたいと思います。 それでは、ここで話題の切れ目なんですけれども、政務官がここでご退席されるということなので、一言いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○津村政務官 すみません、出たり入ったりで大変申しわけありません。特に形式的なごあいさつということは置いといて、わずか30分ほどお話を聞いただけでも、皆さんが3月末にまとめていただいた骨子のところから、具体的なまさにPDCAのCをちゃんとできるような指標をつくっていこうという議論を丁寧にしていただいていることがよくわかりました。また引き続き、次回も議論が続いていくと思いますので、まさにこういう形で進めていただければと思います。 1点、ご報告というかご相談といいますか、大臣のほうからお話がありましたのは、改めて知財、IT、科学技術あたりの議論がかなり煮詰まってきたところを俯瞰すると、かなり重なる論点も多いので、横串を刺していくという意味でも、一度各調査会の全員というとなかなかまたご負担が大きくなるので、何人かの方々に集まっていただいて、一堂に会して論点整理みたいなことを、連休明けくらいにでも一度させていただこうかということを議論しておりますので、何人の方にお願いできる形になるのかちょっとわかりませんが、そういう角度からもチェックをしていきたいということだけ申し添えます。 ありがとうございます。 ○妹尾会長 ということで、総合科学技術会議、IT戦略会議、その他関連あるところがそれぞれに成果を出しつつあるということで、我々の成果とともにご議論いただく機会をつくっていただけるということだと思います。 では、政務官、ここでご退席ということで、どうもありがとうございました。 ○妹尾会長 それではあと1点、国際標準化についてのご報告があります。推進計画骨子では、国際標準化ロードマップを含む競争力強化戦略を官民一体になって策定して実行しようと、こういう施策が盛り込まれておりましたけれども、その特定戦略分野自体については実は決定はされていないんです。この点に関して、事務局のほうから報告をいただこうと思っております。 内山次長、それでは、お願いいたします。 ○内山次長 今、お話のございました国際標準化の戦略の策定でございますけれども、これは基本といたしましては、産業界の英知そして主体性、そういったものを尊重しながら、政府も一体となって推進をしていく、産業界を強力にバックアップしていくと、そういう必要があるところでございます。こうした観点から、このたび知財本部におきます国際標準化にかかる推進体制強化を図るために、4月22日に開催されました知財戦略本部の企画委員会。この企画委員会というのは、座長が知財戦略担当大臣の川端大臣、構成メンバーといたしましては関係各省の副大臣クラス、これらのメンバーでございますが、この企画委員会におきまして国際標準化戦略タスクフォース、この設置の決定をしたところでございます。 そして、このタスクフォースの座長でございますけれども、本専門調査会の妹尾会長にお願いをすることになっております。タスクフォースのメンバーは、有識者の方を中心にいたしまして、実務担当としては知財戦略推進事務局そして国家戦略室も加わる予定でございます。先ほど、妹尾会長からお話がございました具体的な特定戦略分野、これにつきましてはこのタスクフォースでの検討を経まして、最終的には5月末に策定する予定の「知財推進計画2010」、これに盛り込まれる予定でございます。 以上、ご報告をいたします。 ○妹尾会長 ありがとうございました。ということで、このことが動いていくようになろうかと思います。 全体的に時間がちょっと早目なんですが、今回の論点以外に、次回取りまとめに向かって何か皆さんのほうからございましたら、いかがでしょうか。 荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 参考資料2が2010年の骨子でございますが、これの11ページの関係でお願いでございます。私の発言内容は、資料5としてお配りしてあります。参考資料2の11ページにございますように、中小企業対策に力を入れていただくということで大変喜んでおりますが、お金のほかにもう一つ手続が中小企業にとっては大変な問題でございますので、資料5にございますように、手続についてぜひ様式の導入をお願いしたいということです。 1は……失礼しました、字が間違っております。「中業企業」じゃなくて、中小企業にとっては特許の手続は複雑で大変難しいものです。特許審査のために出願だけでなくて、審査請求が必要だということを知っている中小企業は少ないわけですし、さらに早期審査請求制度はほとんど知られておりません。 2にございますが、そのため過去10年間、いろいろな普及広報をやってきましたが、やはりこれでは限界があると思いますので、3番にございますように、今回は普及広報だけではなくて、さらに一歩踏み込んで中小企業用の一体型願書を導入していただきたいというお願いでございます。中小企業は、一般的に出願と同時に審査を希望しておりますから、①特許の出願書、②審査請求書、③早期審査請求書、こういうものを一体にした、1通にした願書の様式を導入していただきたいということです。 ちょうど民間の保険のときに、申し込み用紙に「○」をつければ、いろんな特約がつくのと同じようにしていただければいいんではないかということでございます。もちろん、出願時に審査請求を希望しない中小企業は、従来と同じ手続でいいということになる。こういうふうにしていただければ、随分手続面における複雑さが解決されて、中小企業にとってユーザーフレンドリーな特許制度になるんじゃないかと思います。しかも政府にとってもほとんどコストのかからない制度だと思います。普及広報よりも安いんじゃないかというふうに思いますので、ぜひ導入していただきたいと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。これについてはぜひ、今回どうのということではないですけれども、検討を始めるということでよろしゅうございますか。ということで検討していただく。 相澤委員。 ○相澤(英)委員 様式を変えるなら、中小企業だけ変えるのではなくて、全部様式を変えるべきだと思います。 ただ、電子出願のシステムを変えるということが必要になるだろうと思いますで、コストを含めて、十分に検討していただいたほうがいいのではないかと思います。 ○妹尾会長 いずれにせよ、出願フォーマットについては今回、当初1回目、2回目、3回目ぐらいでわっと議論があったもので、それとの関連もありますので、出願様式の自由化みたいなところもありましたので、それとあわせてご返答いただくということになろうかと思います。 ほかに。 渡部委員。 ○渡部委員 先ほど決定事項ということでタスクフォースの話がありましたけれども、これは先ほどの説明の内容がどのような仕組みで実行されていくのかということについては、これはいつの時点ではっきりするのかということを確認したい。 当然ですけれども、先ほど言われたように、企業のバックアップという主旨であれば、企業が自主的にやっている標準化活動に対して基盤整備、環境整備をすることと、それを支援するということだろうと思います。よもや企業が自主的にやっていることについて、政府がこれはいいとか悪いとかということでは、当然ないだろうというふうに思います。それはどういう仕組みの中で実際に動くのかということはいつわかるのかということを確認したいと思います。 ○妹尾会長 内山次長、お願いします。 ○内山次長 タスクフォースでの検討というのは、5月、連休明けからということになろうかと思います。その検討の結果というのは知財戦略本部の決定の中に盛り込まれていきますので、この専門調査会の場でも必要なことについては、今、渡部委員からのご指摘にございましたような点も含めましてご説明をしていく、あるいは、また対外的にもそういった知財推進計画に盛り込まれる過程の中で公表をしていくということになろうかと思います。 ○妹尾会長 よろしいでしょうか。ただ、短期間なので、できるだけ早く皆さんには報告をしたいと思いますし、今の環境整備と政策支援というところに重点を置いたタスクフォースであるという理解をしておりますので、それ以上、例えば企業の活動に何か制約を加えるとかそういうことではないようにしたいと考えております。 ほかに。 佐藤委員、いかがですか。 ○佐藤委員 2010をつくるということで、もう最終段階に入ってきているかと思うんですが、政権交代もあって、昨年とことしは多分やり方が違うんだろうと私も思っているんですが、実際にこの専門調査会でやったことが2010の形にどういう形でブレークダウンされていくのかというプロセスが、私もまだ理解できていないので、その辺はどんなプロセスをお考えなのか、一度伺いたいなというふうに思ったんですが。 ○妹尾会長 これも私もわかりませんので、事務局に伺ってみたいと思います。 ○内山次長 3月末にまとまりました「知財推進計画2010」の骨子におきましても、専門調査会の皆様方にご議論いただいた盛り込むべき事項ということにつきましては、しっかり盛り込むということは先回ご説明したとおりでございまして、基本的には知財推進計画2010の本計画におきましても、これまでの専門調査会で議論したこと、これを次回、妹尾会長のもとでおまとめいただくわけでございますので、そういったものをベースにしてですね。 ただ、もちろん政務三役、そして前回ご報告いたしましたように、知財戦略本部のもとに企画委員会というものが設置をされております。企画委員会におきます議論、そういったものを踏まえまして、最終的に本計画が知財戦略本部で決定をされるというのは、これまでと同じような過程で決まっていくということでございます。 ○佐藤委員 そうしますと、具体的なイメージとしては、この参考資料2には推進計画に盛り込むべき骨子があって、その裏側に各省庁が責任担当で項目出ししたペーパーがついていましたが、あれが基本的な形となるという理解でよろしいんでしょうか。 ○内山次長 そのとおりでございまして、計画の骨子として既に知財戦略本部で決まっております。そういったものをベースにしながら、さらに今後の行程表といったようなものも含めまして、本計画というものができ上がるということでございます。 ○妹尾会長 専門調査会が決めたものが、そのままイコールというわけにはいかないので、その間に段階が踏まれるわけですけれども、我々としては我々の議論を十分に反映したものを中心にしたいと、こういうふうに思っております。 それでは、時間がまいりましたけれども、よろしいですか。 本当にきょうもまた熱心なご議論、ありがとうございました。これまで7回の専門調査会を開催してまいりましたけれども、次回が最終回になります。次回会合では、本専門調査会の最終的な報告の取りまとめというスタイルになると思います。ですので、その場で議論できることに限りがありますので、ぜひ何かありましたら、事前に事務局のほうへお寄せいただければと思います。当日その場でいきなりというのはなかなか難しいことがあろうかと思います。その辺は皆さんご承知だと思いますので、ぜひご協力をお願いしたいと思います。 それでは、次回、第8回の専門調査会について、高原参事官、ご案内をしてください。 ○高原参事官 次回の専門調査会でございますが、5月13日、木曜日になりますが、10時からこちらの会議室で開催する予定でございます。よろしくお願いいたします。 ○妹尾会長 それでは次回、連休明け早々で、また皆さんにご苦労をかけると思いますけれども、取りまとめということでぜひよろしくお願いしたいと思います。 それでは、皆さん、お疲れさまでした。どうもありがとうございます。 |