第6回 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会

  1. 開 会 : 平成22年4月12日(月)15:00~17:00
  2. 場 所 : 内閣府庁舎別館2階 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 妹尾会長、相澤(益)委員、荒井委員、江幡委員、大渕委員、上條委員、岸委員、
    久夛良木委員、迫本委員、佐々木委員、佐藤委員、高柳委員、中村委員、
    野元委員、福島委員、山本委員
    【事務局】 近藤事務局長、内山次長、戸渡次長、小川参事官、高山参事官、髙原参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開 会
    (2) 「知的財産推進計画2010(仮称)」骨子に盛り込むべき事項
    (知的財産による競争力強化・国際標準化関連)について
    (3) 「知的財産推進計画2010骨子」について
    (4) 今後の進め方について
    (5) 「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項について
    (6) 閉 会
○妹尾会長
 それでは、時間なりましたので、ただいまから知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の第6回会合を開催させていただきます。
 本日は年度の始めということで、皆さんお忙しいと思いますけれども、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。常にお忙しい皆さんにお集まりいただきまして、本当に恐縮しております。
 これまでの1か月強という大変短い期間に集中的に会合を開かせていただきました。かなり密度の濃い議論を行って、「知的財産推進計画2010」骨子に折り込むべき事項を取りまとめさせていただいたわけです。この取りまとめたものが3月30日に開催された知的財産戦略本部会合に報告され、その報告を踏まえて「知的財産推進計画2010」骨子が本部決定されました。今回はその後の議論のスタート、リスタートということになりますけれども、そういう位置付けで開催されものであります。知的財産による競争力強化・国際標準化に関して、前回の専門調査会では報告を取りまとめるという都合上、議論の詳細については4月、5月にやりましょうということでお願いをした点が幾つかあるかと思います。そういった論点について議論を継続して深めていきたい、こういうふうに思っています。
 本日も活発なご議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 ここで津村政務官のご挨拶をいただこうと思ったのですが、少し遅れられるということなので、少し後に回させていただきます。
 本日は相澤英孝委員、それから出雲充委員、それから西山浩平委員、渡部俊也委員はご欠席との連絡をいただいております。その他の方は全員ご参集いただきました。 まず、議題2及び3の、「知的財産推進計画2010(仮称)」骨子に盛り込むべき事項について、それから「知的財産推進計画2010骨子」についてということで、つまり3月30日の本部会合へ提出された本専門調査会の報告書及び本部決定された推進計画の骨子についてどういうふうになったかということです。ご一任いただいた部分もあれば、本部会合自体で折り込まれたものもございますので、その辺の報告を事務局からお願いしたいと思います。
 それでは高山参事官、よろしくお願いいたします。

○高山参事官
 それではご説明をさせていただきます。まず、ご説明に先立ちまして4月1日付けで事務局に人事異動がございましたので、それをご紹介させていただきます。私の隣に座っている高原参事官が着任しております。
 それでは、議事次第を見ていただいて、配布資料の確認をさせていただきたいと思います。まず資料1、「知的財産推進計画2010(仮称)」骨子に盛り込むべき事項について、という報告書の取りまとめのものでございます。それから資料2、こちらが「知的財産推進計画2010骨子」です。本部決定をされたものになります。資料3ですが、こちらが知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の今後の進め方について(案)、というものであります。資料4が今回の論点ということになっております。この資料4には別添が付いてございます。 資料5が相澤英孝委員からご提出いただいた資料です。資料6が荒井寿光委員からご提出いただいた資料です。資料7-1と資料7-2、岸宣仁委員からご提出いただいた資料です。
 参考資料1が前回、第5回における主な意見、参考資料2が目標指標例について、という討議用参考資料というものであります。
 それから、一番下に妹尾会長から政策評価のための目標指標設定に関する10の注意事項ということで、参考という形でお配りをしていただいております。不足等はございませんでしょうか。
 よろしいですか。
 よろしければ議題2と3、資料1と資料2のご説明に入らせていただきます。
 まず資料1ですが、前回、最後、妹尾委員長預かりになっていて、その後直した点についてご説明させていただきたいと思います。1枚捲っていただいて2ページ目の一番下です。「スピード感をもって推進していく」というところを書き込むべきではないかというご意見に対応させていただいて修正をしております。
 3ページ目、ベンチャー・中小企業・大学という我が国の知を生み出す能力を活性化する。また、それだけではなくて海外からも知を取り込んで有効活用していくというグローバルな視点を書いておくべきではないかというご指摘がありましたので、それを書き加えさせていただいております。
 それから、6ページになります。真ん中辺です。国際標準化活動の専門家のところに知財知識というものも重要なのではないかというご指摘があって、これを加えさせていただいております。
 それから8ページ目です。途上国のキャパビリの話ですが、「日本での研修」という書き方をしていたのですが、日本国内だけに限る必要はないのではないかということで、「我が国による研修の」というふうに書き加えさせていただいております。
 それから10ページです。上から2つ目の○、「ベンチャー・中小企業」の前に「知財に対する意識が低い」という修飾語があったのですが、それは不要であろうというご指摘がありましたので、それを削除する修正をしております。
 修正した点は以上になります。
 それから資料2ですが、資料2は骨子です。全体構成として、まず1.で「目的」というものが書かれております。その次に2.で「3本柱と目標」ということで、3本柱の(1)が特定戦略分野における国際標準の獲得を通じた競争力強化。(2)がコンテンツ強化を核とした成長戦略の推進。(3)が知的財産の産業横断的な強化策ということで3本の柱が立ってございます。
 3ページ以降がそれぞれの柱に対応した重点施策ということになってございます。
 5ページから今度は推進計画、これは骨子ですので、これを基に議論を更に深めて、今年5月を目途に推進計画の2010を策定するということが書かれています。
 それから、詳細施策としてその次からですが、別添という形で全部で82の施策が書かれております。ここに書かれている施策は先ほどの当専門調査会の報告書である「盛り込むべき事項について」というものに書かれていた施策を全て反映しております。更に加えて当専門調査会に関係のある項目としては別添の方の4ページの一番下ですが、アグリインフォマティクス・システムの開発という項目が加えられて本部決定がされております。
 報告書と骨子の方については以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ということなので、ここの専門調査会で話をした内容と何が違うのか。少なくとも漏れなく全部入っている。漏れなくは入っているけれども追加があった。追加があったというのは農水省からの案件が1点追加されている、こういうことですので、差分はそれだというふうにご理解いただければと思います。
 漏れなく入っているけれども追加も1件あったよ、こういうことであります。
 それでは、引き続いて今後どういうふうに進めるのかという、それが見通しであった方が今日の議論もしやすいと思いますので、今後の進め方について検討スケジュールを事務局からご説明ください。お願いします。

○高山参事官
 資料3をご覧ください。今後の進め方ですが、これまで全部で5回の専門調査会を開催して、骨子に盛り込むべき事項を取りまとめていただきました。この骨子から今度は5月を目途に「推進計画2010」の策定に向けた議論をしていただきたいと思っております。今のところ予定としては今回が第6回、それから第7回が4月26日を予定しております。この第6回と第7回については「推進計画2010」に盛り込むべき事項についてのご議論をいただきたいと思っております。第8回が5月13日をとっております。一応ここで専門調査会としての報告書としての取りまとめをできればなと思っております。予備としては5月21日もとらせていただいているところです。事務局からは以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。あと、今日を含めて3回でこの取りまとめをしなければならないということです。1回予備日はありますけれども、皆さんお気づきのとおりスケジュール的に言うとかなりこの時期はいろいろなことが起こりそうなので、できるだけ早く前倒しで取りまとめができればというふうに思います。ありがとうございました。
 それではスケジュールだけに限りましょう。何かご質問、ご指摘があれば。
 よろしいですか。
 では、資料3のこの進め方に沿って討議をしていきたいと思います。それでは「知的財産推進計画2010」に盛り込むべき事項についてということで、まず説明を事務局からいただいた上で議論に入りたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

○高山参事官
 それでは資料4をご覧ください。今回の論点として上げさせていただきましたのは、これまでの専門調査会で出てきたご意見等をまとめて、それでまだ議論をしっかり深められていないという項目について幾つかピックアップさせていただいております。
 まず最初、1つ目、知的財産権の流通というものです。これは岸副会長などからもかなり知財の金融というお話でご提言がありました。過去の専門調査会、それから過去の知的財産戦略本部会合でも金融面での取組というのはいろいろと議論はされているのですが、なかなか深まっていかなという、少し難しいテーマではあると思います。これについて一番最初に挙げさせていただいております。
 それから2ページ目です。2.の「特許の機械翻訳、英語出願」。世界統一特許というものを目指していったときには統一言語で、多分それは英語だということになるのだと思いますが、統一言語で物事が進んでいくというふうにしないと世界統一特許というのは難しいと思いますが、その一方で現在では各国で各国ごとの公用語で特許が付与されているという状況の中、どういうふうにすれば世界統一に向けて進んでいけるのか。大きな問題としては、その翻訳費用の問題というのがありますので、ここをどう解決していったらいいのかというのが大きな論点になっているのではないかと思っております。
 続きまして3ページ目です。ブランド構築というところについて先日、ご意見がございました。特に妹尾委員長からはテクノロジーをデザインで保護していくというものもあるのだということで、それで別添の方に幾つか付けさせていただいております。3種類ほどございますが、資料4の別添の1ページ目、製品だけではなくて消費者との接点も知的財産権で保護しようという、パナソニックさんの具体的な例であります。
 それからもう1枚捲っていただきます。これはワコールさんの例ですが、スポーツウェアの機能をデザインで表現してというようなタイプでございます。それから3枚目でございます。これはTOTOさんの例ですが、ハイドロテクトという技術そのものをブランドにしてしまうという、そういう戦略でございます。こういうようなブランド化という事例があるのだということをご紹介すべきだというご意見がありまして、ここで取り上げさせていただいております。
 それから4ページ目です。今回の国際標準化の関係では、今までヨーロッパを中心に作られてきていたデジュール標準というものをもう少しアジアでという観点が必要なのではないかということが幾つか出てきたかと思っております。その点をいろいろなご指摘をここに並べさせていただいております。
 それから5.は知的財産によるベンチャー振興策、ベンチャーは大事だというのはよく出てくるお話ですが、そのうち特に我々が担っている知的財産というものを使ってどうベンチャーを振興していくかというのを考えていかなければいけないのではないかというのがここの論点になるかと思っております。
 事務局からは以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。これをバラバラに議論すると大変なので、今回の5項目それぞれを議論していって、それ以外、皆さんからのご提起があれば、それについて議論をしたいと思います。
 最初にまず知的財産の流通について、これは金融面での取組という理解でよろしいかと思いますけれども、これは岸副会長の方からこの前ご提案がありましたし、資料が提出されておりますので、この論点からまず議論したいと思います。
 では、岸副会長から今回の提出資料の内容について紹介いただいて問題提起をということですが、お願いできますでしょうか。

○岸委員
 岸でございます。資料7-1と7-2を今日皆様の方にお配りしてありますが、私はこの専門調査会でITの有効的な活用と金融の巧みな取り込みというのを執拗に言ったのですが、その後、事務局からお声がかかって、お前が言うことはよく分からない。金融、金融と叫ぶけれども何を言っているのだと。例えば特許の売買に金を付けるようなことなのかと聞かれたのですが、私は全然そういうことではなくて、今アメリカを中心に金融工学に近い部分まで取り込んだ知財のマネジメント、あるいは知的財産戦略が起きているということを多少フォローしております。なかんずくインテレクチュアル・ベンチャーズという大変大がかりな会社が2000年にアメリカに生まれまして、今10年目ぐらいに入って、要するにインベンション・キャピタルと彼らは呼んでいる。発明資本ですね。一部にはパテント・アグリゲーターという見方もあるかもしれませんが、私はインベンション・キャピタルにかなりシフトした会社であるなと思っております。
 彼のトップのネイサン・ミヤボルトとか彼らのインタビューとか、あるいはアメリカの最新知財マネジメントに関する論文などを読んでいますと、多分この5年以内にインベンション・キャピタル・マーケットなるものができるであろう。つまり知財をある種数式で解いて、それをマーケットにしてしまおうという動きが今活発に行われているように私には思えます。
 そのインベンション・キャピタル・マーケットとはどのようなものかというふうに私も想像はつかないのですが、ニューヨーク・ストック・エクスチェンジみたいにはならないで、ニューヨーク・マーカンタイルとか、あるいはシカゴの商品取引所みたいな、プライベートで入っていったマーケットで金融をどこかに付けながら知財をやりとりする。そういうマーケットが多分ですが5年以内にできるだろう。日本で知財に詳しい、しかも金融から知財を見ている人たちと話をして、先々週も4人で話していたのですが、おそらく5年以内にできるというのでみんなの意見が一致しました。
 そういう動きを前提にしてお話をさせていただきますと、まず資料7-1です。これはインテレクチュアル・ベンチャーズはいろいろな金融工学の手法を使いながら、シアトルのヘッドクォーターには金融工学の専門家が相当ヘッドハンティングされていると思うのですが、彼らが少しずつ見せてきたその手法、今のところ2つぐらい見せているのですが、1つ分かりやすい方からご説明いたします。
 これはインテレクチュアル・ベンチャーズが作り上げたIPファイナンシング・ブリッジという仕組みです。簡単に説明しますと、ノヴァフォーラという左の上の会社がトランスメタという半導体の会社、半導体では大変いいIP資産を持っているけれども、経営がうまくいかなくなってノヴァフォーラがこのトランスメタを買おうとした。だけど、ノヴァフォーラが銀行から金をキャッシュでもらうとか、あるいは株式市場で資金を集めるとか、いろいろな調達方法はあるけれども、多分お金がなかなか集まらなかった。では何をしたかというと、IV(インテレクチュアル・ベンチャーズ)とおそらく話し合って、IVからIPファイナンス・ブリッジという資金を提供してもらって、ノヴァフォーラに。それでトランスメタにM&Aをかけた。トランスメタを買収する。ここでポイントは、IVはIPFB、つまりIPファイナンス・ブリッジを返さないでいいという前提で貸すんです。ではIVは何をするかというと、トランスメタのこの下にあるIP資産、これは半導体に関する相当いいIP資産を持っているはずですが、それをIVはとりあえず手に入れて、ここがIVの凄さだと思いますが、彼らの知財の評価の方法、あるいはポートフォリオの組み方、あるいはそこに資金をどう付けるか、金融をどう付けるかという、一切のノウハウが彼らの中にあって、そこでトランスメタのIPを多分うまくポートフォリオを組んでA社、B社、C社にライセンスする。そこから上がったフィーで元を取る。元を取るかどうかちょっとよく分からないのですが、しかもノヴァフォーラにももちろんこのIPをIVからライセンスする。
 私自身はこのスキームが本当に回るのかというのはよく分からないです。どこかでレバレッジをかけてヘッジしているのかなという気もしないではないけれども、ただエドワード・ジュングという創業者の1人と東京で2時間ぐらいインタビューしたけれども、我々は特にリーマンショックの後で、去年の6月にインタビューだったので、我々は決してそういう危険なヘッジはしていないということはかなり強調していました。ただ、こういうものが多分彼らはどんどん作ってくるだろう。その先にインベンション・キャピタル・マーケットみたいなものを見ている。それは私は間違いがないと思います。
 ここまでがアメリカの話ですが、日本にそれに類似する会社、それに類似するというのは、つまりIPマネジメントを金融から何か動かす、そういうことを考えている会社はあるのか。これは記者の興味でかなり走り回ってやってみたのですが、例えばオーシャン・トモみたいなライブオークションで知財をマッチングしてしまう、ああいうのはまずない。それからナンイシグマとか、イノセンティブというようなITの世界で技術移転をしてしまう、そういうのさえない。明らかにない。あるのは評価会社だけです。つまり技術のユニークさを評価する会社だけしかないというのが私の今までの取材の結果であります。
 ただ1つだけ私は、あるいはこれが知財の評価と金融とがつながるのではないかというのが1つございまして、これが資料7-2を見ていただくと、文章で書いてありますので簡単に説明します。
 これは皆さん弁理士さんのお仲間では有名なのかもしれませんが、工藤弁理士が考えた手法であります。YK値、YKS手法というもので、このポイントはさっき申し上げた評価というのは大概ユニークさで、あるいは技術の高さみたいに評価するのですが、これは例えば特許の途中、排他的独占力、独占排他力といった方がいいですか、それに着目して、その特許を申請した後、例えば閲覧請求が起きるとか、あるいは無効審判が起きるとか、あるいは旧法で言う異議申立みたいなものが起きたときに、それというのは要するにこの特許が強いから潰してやりたいという相手の思惑があるわけです。それが強ければ強いほど、潰したいという思惑が強ければ強いほど、これは邪魔な特許だから強いという前提に立って、閲覧請求とかそういう無効審判などを特許庁の公表された資料から分かるわけで、手続履歴といいますか、あれで分かるわけです。そういうのを全部指数化して、特許の強さを図った。それがYKS手法であり、YK値です。工藤先生にYKとは何ですか。何かカッコいいことを考えているのかなと思ったら、プログラミングで頑張っていただいたヨシザワさんと中国人のキョさんの名前を二人使ってYK値と呼んでいまして、ちょっと洒落た名前にしているなと思ったんです。
 それでこのYK値は、株式市場というのは半年ぐらい、あるいは数か月とよく言うんですが、先の日本の企業の業績を読んでいるのが株式市場です。このYK値がどのぐらい先を読めるか分からないけれども、少なくとも技術というのは申請などしても、あるいは事業に見えてこないとなかなか特許の価値というのは分からないわけです。ただこのYK値は途中の無効審判とか、あるいは閲覧請求とか、そういう段階でもかなり数値を読めるというので、かなり先読みの指標ではないかと私は思っております。
 それでこの3番目ですが、YKS手法を株式市場へ応用ができるというのが工藤先生のお考えです。過去、リーマンショックの後ですが、9か月間ぐらい、このYK値で割安株100銘柄ぐらいをこのYK値で測って、それをトピックスと比べてみたらほぼ9か月間、2.7倍と書いてありますが、2倍から2.7倍ぐらいにYK値の高い方がトピックスの上をいっていた。これはかなりきれいなグラフに出ていまして、これは日本にも知財マネジメント、金融がドッキングする、あるいは金融市場で使える1つの芽があるなと私は思いました。こういう芽をよく言われる知財インフラ作り、知財インフラの整備という点で、是非こういう芽を、国家戦略というのがちょっとよく分からないのですが、うまく引き上げたらいいなと思っています。
 最後に一言です。そこまで事務局にご説明したら、そこまで分かった。発明資本市場がアメリカでできるであろう。更に日本にもこういう評価手法を持ったある種の指数化した数値みたいなものがある。そこまでは分かったけれども、では金融と知財マネジメントがドッキングする中で今後、日本が国家戦略としてとるべきは何かというふうに事務局から聞かれたので、待ってましたということで、私の考えを説明させていただきます。
 私の考えは目くじらを立てられる方もおられるかもしれないけれども、TLOを1つにしてしまえというのが私の考えです。TLOを1つにして、そこをプロフィットセンターにして、そこに金融工学の人間を集めて、そこで日本の知を全部集めて、そこでレーティングして、そこで世界と闘う、そういうことをしない限りリゾート法と同じで、日本国中にリエゾハットができて、雲散霧消してしまったような感じなので、私はTLOを1つにして、そこをプロフィットセンターにして、こういう手法を使った市場作りに日本も乗り出せというのが私の考えでございまして、少々長くなりました、すみません、以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。インテレクチュアル・ベンチャーズについては以前のこの専門調査会でも何回も議論になった話でございますので、委員の中には覚えていらっしゃる方もおられると思います。
 それでは、今の岸委員のご提起に対して何かご議論がありましたらお願いいたします。

○佐々木委員
 金融工学と知財を、IVを合わせてお金の流動性とかいろいろな市場を発展させるというところは、そういう観点もきっとあるのだろうと思いますけれども、一方、今ご承知のようにパテントトロール、この言葉はあまり適切ではないようですが、パテントトロールで苦労している会社がたくさんあって、悪い言い方をするとこういう市場というのは人の褌で相撲をとってなんぼのものだという感じがしないでもないです。多分知財を使っている産業競争力の発展という観点からいくと、Aという会社とBという会社が健全な競争をして、Aという会社が技術でB社に先んじて知財権をとって、B社がそれを使ってやろうとしたときに、そこからあるお金がA社に移り、A社はそれを更に研究開発に再投資するという、そこは難しいところですが、私はあるレベルで知財権から生じたプロフィットなりお金の流動の範囲というのは限られるべきではないかと思っています。
 すごく大きな目で見ると確かにパテントトロールと言われているところも人の特許を買ってきて、いろいろな会社を脅してお金を取って、それをいろいろな環境ビジネスなりに投資しているので、地球規模で見るとお金の流動性を高めているというふうにも見えるわけですが、本当の健全なこところはどうだろうというところで、私は今、岸委員が言った観点と違うかもしれませんけれども、ちょっと危険な部分があるので、そこは慎重に検討すべきだと思います。以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今、佐々木委員がおっしゃっているのは、産業、従来型の製造業を中心にした産業競争力の強化という観点から見ると、金融競争力の強化というのとは少し相容れない部分がありそう、こういうご発言だと思います。他にいかがでしょうか。

○山本委員
 TLOを1つと言われると、TLOとして何か発言しないといけないかなと思ったんです。今のお話は、まず金融と知財という観点、これは私はまだよく分かっていないところがありますが、そこの部分とTLOをまとめてしまうという話と、あとは市場を作るという3つの観点があったのかなと思うのですが。
 まず金融ということでいうと、実は私たちも信託会社と1年半ぐらい、知財信託のときに勉強会うんぬんいろいろやりました。信託会社はこの知財の世界に入ってきたいと思っています。ただ、ざっくばらんに言えば新しい発明があったときに、それを金融的に評価できないというのがあって、TLOなり何らか知見が使えないかという話があったんです。
 これは非常に難しい話で、この特許は幾らですかということを言える人はまずいないと思っています。iPodを構成している特許が仮に10個あったとして、もっとあるでしょうが、10個あったとして、アップルが持っているのと、どこか全然違う会社が持っているのとでは同じ特許でも価値は多分違います。ということを考えると、知財が幾らという話ではないということがあると思っていて、結局、どこが事業化をして、事業化の規模がどの程度になるかということで、あとから金融的価値がついてくるものだと思っていて。
 それで言うと実際、知財信託が今はもう使えるようになっているわけなので、金融的なアプローチというところは何を求めていられるかというのは、私自身が十分把握できていないところがあるのですが、信託業法の改正で知的財産が入っていることで、それをうまく活用しようと思えばできるわけなので十分ではないかなと思っています。
 次にTLOという話で言うと、私たちもよくいろいろな大学からやってくれませんかとオファーはいただいていますが、今のところは正確に言うとアドバイスやお手伝いはさせていただいていますが、他大学の案件をまとめてマネジメントするということはやっておりません。それはなぜかというと、これも3つの観点があるんですが、1つは各大学でポリシーが違うんです。それぞれの大学のルールであったりとか、例えば共同研究をしたときの知財の扱いを譲渡してしまう大学もあれば、譲渡は絶対にしませんよという大学もあったりとか、いろいろ大学によってポリシーというか運用が違っているところで、それは各大学でやるべきではないかなというのが1つあります。従って全部一元化するというのは昔の国立大学に戻すようなイメージが少しあるというところがあって、ルールの部分から考えてもなかなか現実的ではない。
 2点目は、発明者から見ると1時間ぐらいでお伺いできないと十分なサービスはできないですよね。例えば私たちが大阪大学をお手伝いして、1日1件しか扱えなかったという話になると、やはり効率的でないというふうに思っております。
 あとは、産業界から見た場合にもいろいろな大学がいろいろな方針でそれぞれの産学連携のアプローチをしてくる中で、良いものが淘汰されて生き残っていくという方が選択肢が広がるのではないかと私は思っているところもあって、海外で見ても一極集中して成功しているところはないです。昔は、国立大学時代はJSTが全部まとめてやっていたのですが、やはりあまりうまくいかない。JSTの方がいらっしゃったら申し訳ないのですが、やはり一元管理というのは限界があるのだと私は思っています。
 3点目の市場を作るということに関して言えば、それは別に反対ではなくて、どんどん市場を活性化していくべきだとは思っていますが、今、日本にできない理由というのはむしろこれは時間がかなりかかるわりには儲からない。私は民間でリクルートにいたときにこの技術移転のビジネスをやろうということで、社内に提案したのですが、普通に考えれば7年間は赤字ですという提案をしています。7年間赤字で通る会社は普通はなくて、下手をすると12年赤字ですという提案をして、それでも通ったわけですが、すぐに利益ということを、リターンを考えるとなかなかビジネスとしての回収ができないというところがむしろ原因ではないかと思っていて、市場を作ることは賛成ですが、インテレクチュアル・ベンチャーズやあるいはオーシャン・トモみたいな考え方を入れればできるというものではない。かつてエットツードットコムとかいろいろありましたが、あまりうまくいっていないところも多いです。従ってできるけれども淘汰されているというのもアメリカの現状ではないかなと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今、山本委員のお話は3点、金融との関係では知財信託、これはコンテンツの方は、著作権の方はかなり信託の対象になっていますが、技術というのは当然多面的な評価があるからかなり難しい。2点目の、TLO自体を1つにするということに関しては、多様性ということの豊かさの方を尊重したい、こういうことです。
 3番目の市場形成に関しては、あってもいいけれども、それをどうやるかというのは政策的にどうのこうのということではないのではないかということと理解させていただきたいと思います。
 技術移転そのものは権利の流通というのは微妙な違いがありますから、技術移転のビジネスそのものと権利自体の売り買いの市場、これは大分違いますので、その辺は少し切り分けて議論が必要だと思います。
 では他にいかがでしょうか。

○福島委員
 今の山本委員の補足になると思いますが、市場が広がっていくこと自体は、決して反対するものではないと考えます。ただ、そのときに金融と結びつける上で一番大きな課題は知財の価値評価にあると思います。先程も幾つかの評価手法が紹介されましたが、これらの手法はかなり一面的な評価手法であると思います。実業に携わる立場から申しますと、実際に何社かの評価手法を用いて自他社の特許やそのポートフォリオの状況を評価しますと、かなり一面的な結果が得られます。このような結果がなぜ起こるかという点を考えますと、こういう手法が評価する視点はあくまでも特許性そのものであり、実際に事業として知財を活用するときには相手がその特許を製品に使っているか否か、別な言い方をすれば、侵害をしているか否かで価値が大きく変わります。ところが、こういう手法には、侵害立証性に対する見識は何も含まれていません。したがって、特許として有効かもしれませんが、侵害立証性も知財の価値観に大きく作用する結果として、知財価値の見定めがなかなかできません。
 また、技術的な側面から申し上げますと、今日は価値がある技術であったとしても、明日にはこの技術を上回るような新たな代替技術、あるいはこの技術を改善するような効果的な技術が出現すれば、ある日突然にこの技術の価値が大幅に下がってしまいます。つまり、将来的な知財価値の予測性は極めて不確定で不安定な評価しかできません。こういう意味から、本当の価値評価ができるかどうか、見極めることができるかどうか、という視点無しに金融との接点を議論することは、少し無理があるものと考えます。以上です。

○妹尾会長
 今のは実業といいますか、そちらからのお立場からの。
 山本委員。

○山本委員
 前、この会議でも申し上げたと思うのですが、技術の分野によっては大学が部品のような特許を持っていることはいっぱいあります。部品をずっと維持し続けるか。部品だけでライセンスできるかというと非常に難しいものもあります。そういったものを例えば国際競争力を維持するという観点で、例えばですが産業革新機構というところがあるわけですから、そこに集約させるというのはあるのではないかと思っています。燃料電池のこっち側の電極の材料をこう変えたらこうなりましたみたいなのが大学では多いんです。光スイッチだって、いろいろな大学が光スイッチとかいっぱい出していて、どれがデファクトになるのか分からないみたいなものをまとめていく。例えばスマートグリッドで勝つのであれば、多分太陽光とか風力とか、いろいろな電力が、しかも安定的ではない電力が来たときに、それを制御する技術というのは各大学にあります。そういったものが日本でちゃんと維持されていれば、どこがスマートグリッドで、例えば発電機の開発が優れていたりとか、あるいは電池の開発で遅れをとったとしても制御は必ずコアになってくると思っていますので、そういったところを押さえるというような意味では、各大学に任せていては不安だというのも岸委員のご意見の中にあるのかもしれないと私は推察したので、だとすればそういったものをプールとして産業革新機構が全ての分野は無理でしょうけれども持っていて、それをいつかはコマーシャライズするという進め方はあるのではないかと思います。

○妹尾会長
 今の話の前段階では、前回だったか前々回だったか、山本委員がご発言された大学が今、例えばインテレクチュアル・ベンチャーズだとかそういうところに特許を買い上げられる。これは昔、数校だったのが今は9校が20校になっている。これが日本の大学の知が全部海外に買い占められるのではないか、これが危機感の後ろにあろうかと思います。それを今のような産業革新機構みたいなところがやると、これは国家戦略的な話であって、市場形成で市場に任せるという話とは話が少し突き合わせないというところがあろうかと思います。
 それから、先ほどの福島委員のお話は実業からの評価ということだったのですが、これは確かにいろいろなところで議論になっているので、もう1回整理しますと、例えば産業的な評価というのは特許性の評価、技術性の評価、事業性の評価、全部違います。それから使用価値と保有価値も全部違う。ということですので、これが市場で勝手にやってねという話はかまわないけれども、それは政策的になじむかどうかというご指摘だったと思います。
 つまり企業にとって技術をどう評価する、そのノウハウ自身がものすごいマル秘のノウハウですから、企業さんがそれを公的にというのは使えないというか、使わないという、これは一般的な常識かと思います。
 他にいかがでしょうか。

○佐々木委員
 先ほどの市場のところで言うと福島委員がおっしゃったこと、全くそのとおりだと思います。福島委員がおっしゃったようにある市場ができて、それが実態に合わないものであれば、それ自体が潰れて、また新しいものになっていくのであれば、まだ健全性は保てると思うのですが、一度何かで確立した手法で、それが一人歩きしだすと実態と合わないファンドマネーが飛び回る、こういうことは絶対に少なくとも日本では許すべきではないと思っています。したがって非常に難しい市場なので、それが常に見直されて、今日の市場は明日には成り立たないかもしれないというものが担保できれば、賛成ではないのですが、そこはまだ許せると思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。指標自身にも多様性があって、そのつど動かないと、これはかえって健全ではないのではないか、こういうご指摘だったと思います。
 他にいかがでしょうか。
 今の皆さんのご議論を聞いて、岸委員、何かコメントの追加はございますか。

○岸委員
 山本委員のおっしゃることはよく分かります。ただ遅かれ早かれ、あるいは好むと好まざるとにかかわらず市場はアメリカにできる。そのとき日本がそれにどう対応していくか、知財インフラとして。そこが僕は、今のところ何もないと言うと語弊があるかもしれない。評価会社しかない中で金融とどこかで結び付いた知財マネジメントという知財インフラをどこかで作っていかないと、結局、アメリカの場所借り、またお金を払って場所を借りてやるだけ。それに備えて何かを作っていかないと危ないという危機感の方が私は強くて、それではお前はどういうふうに作るのかというのは、そこまでのビジョンは私の頭脳ではなかなか描き出せない。
 もう1つすみません、TLO1つにというのは極論で、私はこういうことを言いたかったんです。要するにこれからの例えば韓国あるいは台湾、中国との闘い、あるいはインドとの闘い、ある種どこかでオールジャパンの闘いをしていかないと分散で地上戦で闘っても闘えないときが来るのではないか。そのときにオールジャパンで何かヘッドクォーターみたいなものがあった方がいい。そのときTLOを1つにと申し上げたのは、正確にはプロフィットセンターを1つにという言い方をしたんです。それがどうできるか分からない。でも50幾つTLOがあって、20もパテント・アグリゲーターに特許が買われているという実態があるとすれば、五十幾つ、このままズルズルやってもオールジャパンの本当の知財戦略としての闘う体制というのは、後ろから追いかけてくるアジアを見たら闘えないのではないか。だからTLOの屋上屋を重ねる感じなのかもしれないけれども、プロフィットセンターみたいなものを置いて、そこに日本の主要な知はある程度集める。そこでそれをレーティングして、世界と闘うそこをプロフィットセンターのヘッドクォーターとしてやったらどうかというのが私の考えです。東大TLOを1個にして、あと全部なくすという意味では申し上げていないつもりであります。すみません。

○妹尾会長
 岸委員、すみません、1点確認させてください。今おっしゃっているのは大学の知に限っているのか、あるいは企業の知も含めて、あるいは独法、研究所の知も含めておっしゃっているのか。

○岸委員
 私自身は一応大学の知を第一義的には考えております。そこから先ほどまで広げたら、むしろそれはもう世界的なインベンション・キャピタル・マーケットができた後の話かなと思っていて、とりあえずというふうに私は考えています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今のこれはいろいろな解釈があると思います。以前もこの委員会でIVをどういうふうに理解するかということの議論があったと思います。要するに知財インフラと話が今出ましたが、むしろ金融は、今まで不動産に手をつけて、動産に手をつけて、その次に有形資産に手を付けて、今度は無形資産に手を付けて、要するに金融インフラの拡充というところの中で知財が入ってきたというとらえ方もあります。つまり全く逆なとらえ方もあります。
 それからもう1つ、これはどういうふうにとらえるかといったらインテレクチュアル・ベンチャーズの動きをどうとらえるのかということと、それからインテレクチュアル・ベンチャーズ的な状況が意味するものをどう解釈すべきか。これはいろいろ多様なことがあろうかと思います。大学の知財が買いあさられているという認識があったときに、それにどう対応するかという話と、それから知財の権利が流通するという話と、技術移転がどう進むかという話と、大分多層な議論がここで錯綜しているように思います。ただ、1つはインテレクチュアル・ベンチャーズ自身が日本をもう去りつつあると言われている状況なので、それが知財の日本の活性度のバロメータなのか、あるいは不活性のバロメータなのか、これはいろいろ解釈があろうかと思います。TLOをしっかりしてねという話なのか、インテレクチュアル・ベンチャーズに対抗するものを置こうよという話なのか。いやいや、そもそもああいう動きを日本では許してはいけないのだという話もあれば、これはまだまだ議論がいろいろあろうかと思います。また改めて皆さんと、ということに今回はさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
 それでは2番目に移らせていただきたいと思います。2番目は特許の機械翻訳、英語出願についての話でありました。これは前回、産業界からの意見がいろいろ出ました。皆さんのご意見を伺ってまいりたいと思います。ご発言のある方は挙手をお願いしたいのですが、いかがでしょうか。ここに書かれている事務局の資料の書き方そのものについてでも結構です。いかがでしょうか。

○福島委員
 事務局で翻訳に関する取組みのご説明を資料にたくさん記載していただきましたが、これらの取組みがなされていることは十分に承知しております。ただ、これらの取組内容が主に出願後に公開された特許情報を翻訳して提供するためのものであり、特許の出願活動、特に外国への出願活動自体をサポートする取組みとは直接結び付いていません。こういう視点では、是非とも外国出願のハードルをより低くするために、特に日本の場合には言語の制約、障壁が非常に大きいと考えていますので、外国出願自体に対する機械翻訳のような支援が是非とも骨子に盛り込まれる方向をご検討いただきたいと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。これについていかがでしょうか。

○荒井委員
 機械翻訳、英語出願というタイトルですが、特許は技術開発されたものが世界中に普及していくというのが日本にとって利益というだけでなくて、お互いに科学技術を進歩させよう、そういう大きな目的があるわけですから、是非これは進めていただきたいと思うのです。
 1つは、書いてある中にも出願日を確保するためにとりあえず英語で出していいという部分の、出願日を確保する種類の話と、第2に各国の言語にするけれども、しかし補助言語としてはお互いにワーキングレベルでスーパーハイウェイとか何かでやったりし合うときに英語でやり合うというプラクティカルな部分。第3に本当に共通の言語で最後は統一する。いろいろステージがあると思います。ちょうど学会でもいろいろそういうステージを経て出たと同じようにありますので、後ろの方に書いてある条約とかそっちの方は出願日にという権利の部分で見ているわけです。ですから出願日の話をしているのか、補助的なワーキングランゲージという話をするのか、共通でお互いに科学技術文献だから英語にしようとするのか、そういうふうにまず分ける。
 それから、お話があったように、日本人はこれから国際出願を増やしていく必要があると思いますし、増やすことが必要だと思います。いずれにせよ、今のように日本が国内出願偏重で来ているのは異常な状態です。世界の中で日本だけです、こんなに内国出願重視でやってきているのは。ですから、これだけの国際化時代には国際出願を増やす。そのために機械翻訳を使うとか、そういうことが円滑にいくような、プロフェッショナルの翻訳家も足りない。知財の翻訳家も足りないわけですから、そういう整備をしてやる。両方を体系化して分類して、マトリックス的に整理してみて、是非これは進めていただきたいと思います。大して金はかからないと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。荒井委員がおっしゃったのは2つあると理解させていただきたいと思います。これの背景をどういうふうにとらえるかということです。これは国際特許を推進するという日本の大方針があります。その中で考えよう。これをやりますといわゆる共通専門語化ですから、IPエスペラントを作るみたいな話になるわけですが、そこにいかない。そうすると、その下のレイヤーは何かというと、これは共通言語化ということですから、英語が共通言語になるのか、あるいは中国語がなるのか、みたいな話です。第3レイヤーは何になるかというと、おそらく共有言語化だと思います。これが翻訳によってお互いが共有する。それからによってお互いが代替関係にあるのか、補完関係にあるのかというので変わってくるので、そこを整理しろよ、こういうことが1つ目のご指摘だったと思います。
 2つ目は、これは機械翻訳だけではなくて、日本の権利の翻訳がここのところ問題になってきています。中国への翻訳が相当崩れてきているというのがネットでかなり騒がれているというのが皆さんご承知だと思います。それも含めて内国出願重視から脱内国出願重視、国際出願を促進するために、それのインフラ基盤はどうやって政策的に支援するのか。これをちゃんと考えてほしいということだと思います。これについていかがですか。

○高柳委員
 世界統一特許、これには必ず共通言語というものが要るわけですから、目標とするところがそういうところであれば、段階的にですけれども、1回英語に翻訳すれば、あとはもう中国とか韓国とか、それぞれの国の翻訳が要らないような、そういう目標で、逆に我々も外国からは英語で出願されて、それを英語で審査していくということが必要になる、そういうインフラも必要になると思います。是非ともそういう旗印で推進していっていただきたいと思います。
 それから、前回ここに、特に中国語への翻訳費用が高いと書いてあります。私の前回の発言からかと思います。これは特に中国語が相対的に、私の印象としては高いというふうに感じているのですが、客観的にこれが本当に正しいかどうかは検証していただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。推進をすべきであるということだと思います。他にいかがですか。

○佐藤委員
 先ほど荒井委員からお話がありました件に関連して、我が国が国際競争力を増すためには国内企業が外国出願をもっと出していくということが必要だと思っています。そのためのインフラとして翻訳という問題が非常に大きなテーマになっていて、その翻訳をできるだけスムーズにすることでコスト低減ができ、それによって出願促進できるということが図れるのであれば、それはやはり国としてやるべきだと思っています。それは我々代理している弁理士としてもそういうツールを開発し、それを利用することによって国際出願が増えるということであれば、それは大変ありがたいことだと思っていますので、そういう形の中の1つとして翻訳問題を取り上げていただくということでよろしいのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。いずにせよ英語出願、機械翻訳というこのレベルではなくて、もっと大きなコンテクストの中で政策的に推進を図るべきだ、こういう皆さんのご意見だと思います。
 関連して他にございますか。
 いずれにせよ事務局にお願いしたいのはここのところ、前々回か、福島委員からご指摘がありましたが、韓国その他が国際特許あるいは欧米の特許のことについてかなり戦略的なインフラを構築しつつあるということに日本は大分遅れをとっているという危機感も一方であろうかと思います。是非その辺のところで状況を、ここには若干書いてありますが、もう少し詳しく書いていただいて、政策的な面での促進の観点を少し整理していただければなと思います。先ほど荒井委員のマトリックスでも何でも整理しろというご指摘に応えたいと思いますが、いかがですか。よろしいですか。
 では、事務局にそれをお願いしたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、もし格別になければ次へ移りたいと思いますが、よろしいですか。
 では3番目のブランド構築における知的財産権の活用ということについて皆さんのご意見を伺いたいと思います。ご発言のある方は挙手をお願いいたします。
 ここに挙げてある事例は委員の方に関係していたり、今日ご欠席の委員が発明したものがあったりいろいろしておりますけれども、他意はございません。たまたまいい例なので取り上げております。
 何かご発言はないですか。

○佐藤委員
 前回も私、この点について発言させていただいたのですが、今までのお話は特許中心の知財というものをテーマとして議論してきたことが多いと思いますが、それともう1つ並ぶ大きな知的財産としてブランド、会長はデザインも含めてということでお話になっていますが、こちらの戦略化というのがやはり重要だろうと思っています。
 私も最近、いろいろな地域の中小企業さんとお付き合いをしていてつくづく思うのですが、この失われた15年の中で生き残った企業というのはみんなしっかりした技術を持っています。ただ、それを外に対してアピールして市場を作っていくというところに関しては、まだまだ十分に能力が発揮されていないということを感じています。
 もう一方では地域ブランド、これはこれで地域のブランド化ということについては一定の成果を上げてきたと思っています。そういう意味ではブランドを生かして、もともと持っている知財資源を外にアピールして市場に結びつけていくというために、やはりもっと我が国の中小企業さんはもっと努力すべきだろうと思うんです。ただし、これも特許と同じで、それをやるにしても先立つものがない。また、それを支援してくれる専門家もいないというのが現状だというふうに思います。そういうところをブランドという切り口で、後ほど出てきていますワンストップショッピング的な支援の中で大きなテーマとして取り上げていくということが必要ではないかと思っております。以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今のお話は地域団体商標についてはそれなりに進んでいるぞという感じがあります。確かに中国での模倣その他の問題がよく新聞では報じられますが、それなりに進んでいる。だけど中小企業の技術のブランド化はなかなか進んでいないので、更にバックアップが必要だ、こういうお話だと思います。
 いかがでしょうか、それに関連して。

○上條委員
 私の方から1つ意見を申し上げたいと思います。「日本の技術力は、多くの分野で依然として世界最高水準である」ことが、知的財産推進計画2010の骨子に記載されているように、中小企業、ベンチャーから大企業に至るまで、日本が有する技術力、すなわち日本の技術者さん達が持っていらっしゃる技術力の高さは、本当に存在すると私も思っております。今後は、その技術の素晴らしさ、優れている点について、どのように見せていくか、ということが非常に重要になってくるのではないかと考えます。そういう意味で、優れた技術を多面的に保護し活用することは重要であり、特に、ブランド構築という観点で知財を活用していくという試みは非常に必要、かつ重要なことであると思います。
 特にテクノロジーをどのように見せるかというトピックとして、本日の配布資料の中において、技術のブランド化のご提案が1つ例として挙げられておりますが、当方の大学においても、研究の対象としてこの「テクノロジーブランド」を捉え、いかに技術のブランディングを行うかについて研究に取り組んでいます。例えば、企業さんの名前を出していいか分かりませんが、パナソニックさんの「ナノイー技術」や、ユニクロさんの「ヒートテック」のように、その技術の持つ機能・特徴やユーザーにもたらす利益・効果について、キャッチーなネーミングを用いて製品横断的に使用し、皆さん(顧客・ユーザー)に分かりやすい形でお届けしている例が挙げられます。一種のマーケティング手法ともいえると思いますが、会社名や製品名でなく「技術」そのものをブランド化しているところが特徴的です。
 その際に、そういったテクノロジーブランド等をどのように法律的に保護し、活用するのかを考えますと、まず商標として商標権で保護することが第一に考えられますが、配布資料にもありますように、技術が具現化されたデザインや機能美を意匠権で保護することもできますし、技術の特徴やイメージを表したロゴマークをつくり著作権で保護するという方法も考えられます。技術は、技術的思想である発明という形で特許法でしか守られない、と一面的に考えがちですが、そういった法律を駆使した多面的な知財の保護を行い、ブランド構築を行っていくことは、知財マネジメントという観点からも非常に有効だと考えております。その手法や事例を収集し、大学においても研究を進めていきたいと考えております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。

○山本委員
 ブランド戦略は非常に大事ですが、ブランドが大事というのは地震対策は大事ですと言っているのと同じで、具体的に進む感じがしないんです。例えばドルビーサラウンドのライセンスをしたのはボブ・メガンツという人ですが、彼は契約書に必ず映画が始まる前にDのマークがありますね、Dを二つ逆に合わせたような、あれを必ず何秒間か映さなければいけないとか契約書に入っているんです。逆に言えば、映画館ではそれが入っている映画館、入っていない映画館で差別化ができて、どんどん入れたいというので世界中200か国にライセンスができたという話があります。大手はできていると思うんですが、中小企業に対してそういうブランド戦略を教育するというか、それをやらないとライセンス契約に入れなければ売れないロゴマークになってしまうのではないかなというふうに思っています。まずそれをやっていただきたい。
 あとは、いろいろ事情があるのはお聞きしておりますが、まず特許庁で意匠という言葉は、デザインといった方が世の中の人が認知するのではないかと思っています。カタカナはだめだという話らしいんですけれども、カタカナも日本語だと私は思っていて、デザインというふうに、小さい話かもしれませんが、意匠という言葉は、ここの人は皆さんご存じですが、町の人は知らないかもしれないので、デザインというように名前を変えていただいた方がいいのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。大変大胆なご意見が出ました。むしろ特許庁にお願いしたいのは、特許庁のものを見ると技術=特許、それがデザイン=意匠、それから商標=商標権というこのイコールの関係で結ばれているというところが実態にそぐわない。例えば意匠そのものは技術をいかに保護するかというのにも活用されます。商標と意匠が加わってブランドになる。要するに1対1対応自身がかなりの誤解を招いている。その辺を少し変えてもらうことも併せてということのご提案がありました。

○荒井委員
 今の話の関係で、ブランドは今まででしたら商品のブランド、会社のコーポレートブランドみたいなもの、国家にとっての国家ブランド、いろいろな概念があるわけです。どういうブランド構築の議論をしているかという、これも少し統一していかなければいけない。今まではメイドインジャパンだと、それでよくて安心だと言われているものが、これだけ多国籍企業化したからパナソニックのつくったものならいいとか、トヨタのつくったものならいいという、そういうブランドに力を入れているわけです。お話のとおりブランドの構成要素としては技術もあれば、いわゆる信用もある。ついては知財の専門調査会でどうするかというときに、意匠法とか商標法とか、特許法とか、不正競争防止法とか、そういう国家の法律が、時代にそぐわなくなってきて変えていかなければいけないのか。音なども商標の対象にするのかとか、そういう種類の議論がある。
 それから企業の皆さんがおやりになっているもので、もうちょっとこういうのをおやりになったらどうですかとか、あるいは業界全体で日本の企業のコーポレートブランドに力を入れるような、どっちかというと世界中のランキングのときにコーポレートブランドのランキングは低いです、日本は。ですから、こういうことを上げてもらうような無形資産経営、知的資産経営を進める運動、昔でいうとQC運動みたいなことで日本の技術水準は上がったわけですが、ああいうもののデザイン版みたいなところでコーポレートブランドを上げるという、みんなで知恵を出し合う、運動する。あるいは契約書に入れる。まとめて言えば国がやるべきことと、企業でやっていただくことをちょっと分けて議論しないと、地震対策は大事、そのとおりで終わってしまう。国がやるべきことと、企業でやっていただくことと分ける必要がある。
 企業の皆さんは確かに立派かもしれないけれども、あのランキングを見ている限りはちょっと寂しい。企業のブランド価値が上がるということは、国家にとってもブランド価値が上がることだから、是非企業の皆さん頑張ってくださいというメッセージはしっかり出した方がいいと思います。企業の人は余計なおせっかいとおっしゃるかもしれないけれども、そんなことはないので、お互いに日本の企業同士はいい企業だという、お互いの連鎖反応というか、相乗効果、いい意味でのものがありますので、これは誰が何をやるかというふうに分けないと、掛け声だけでは足りないという山本委員のご意見に賛成です。是非国のやるべきことと企業、あるいはみんなでやるべきことを分けて、法律でやるべきことと啓蒙運動みたいなことでやること、それから具体的なマニュアル的なライセンスの契約書のひな型を作るとか、いっぱいあると思います。是非やっていただいたらいいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。

○山本委員
 こういう場でお話するのはちょっと恥ずかしいようなアイデアですが、私は前から考えていたのは、今のお話で国でやるべきことというのは、私のアイデアだとドラえもんを日本のブランド大使に任命をして、海外でTVコマーシャルをやる。例えば技術のこと、日本の技術に関してはドラえもんがPRをして、日本のファッションとかはしずかちゃんがPRをして、日本食に関してはジャイアンがPRをすると、ドラえもん自体の著作権とかいろいろあるのでしょうが、ドラえもん自体は世界でも浸透していて、非常に受入れやすいのではないかな。こういう具体的なものを何かやった方がいいのではないか。これは国でやることなのではないかと思っています。

○妹尾会長
 これに関しては中村委員あるいは迫本委員から何かご発言をいただけませんでしょうか。
 中村委員、いかがですか。

○中村委員
 そうですね。コンテンツ強化専門調査会での議論のような話になってきたので、ピクッときたんです。コンテンツの文化力や表現力と、ここで議論しているような競争力、国際標準のような技術の力をいかに連動させて日本としてのパワーを発揮するのかというのは共通のテーマになっていると思いますし、もう1つのコンテンツ調査会の方でも盛んに今回議論しておりましたのは、コンテンツ産業そのものをどうこうするということ以上に、つまり14兆円のコンテンツ産業のこと以上に500兆円の日本経済をコンテンツとか表現とか文化という立場でどのようにプロデュースできるのかという観点でいく必要があるのかなという議論をしておりましたので、そのようなお話とかなりオーバーラップするものだと思います。
 ドラえもんでも寅さんでもどっちでも総動員で大使をやってくれればいいと思うんですが、もっと大事かなと思っておりますのは、日本のブランドをどう作るかですね。ひょっとすると政治が変わって頑張ってもらわなければいけないのかもしれませんが、日本の国としてのブランド力を外に対して発信するという意味で、もっと日本の製品の良さであるとか、サービスの高さであるとか、文化のすばらしさというもののアピールの仕方が、同じような話になりますが、うまくできていないので、その辺りも国のすべきこと、あるいはこの専門調査会が考えるべきことかもしれないなと思います。以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。日本ブランドと日本企業のコーポレートブランドがリンクしているかというと、必ずリンクしていないんです。ソニーがいまだにアメリカの企業だと思っているアメリカ人が大多数だ、こういうことを考えると、国際企業ではないのかと言われてしまいますが、コーポレートブランドと国家のブランドの紐付けという、いい意味でのリンケージが図れるような何かがほしいし、あるいはいわゆるコンテンツ系のブランド力が産業競争力にどう貢献していけるのか。中村委員の今のご発言を受けますと、そういうところがあると思います。
 それからもう1点、ちょっと戻ってしまうのですが、今、大企業さんはそれなりにやられているんですが、例えば中小企業さんを指導するときに、佐藤委員がご指摘になったとおり、ここが少し弱いんです。世界的に活躍している中小企業の指導をやっておりますが、実は意匠権も商標権も使い方をほとんど分かっていないということがあります。
 もう1つは、知財権ミックスがほとんどできていない。ここでブランディングを作るというだけではなくて、実は意匠権、商標権、実用新案、特許はどういうふうにその特徴を生かしながら戦略を段階的に、あるいは時差を使いながらやるみたいな、そういうノウハウが大企業の方はよくご存じですかが、中小企業の方はご存じないので、そういうものを指導するように、それこそワンストップサービスその他でやっていかなければいけないのかなと思います。
 それからテクノロジーブランドの先ほどの上條委員の話は、これはもう1つの意味がおそらくあろうかと思います。先ほどのドルビーと同じで、それ自身がものづくりの事業化にならずライセンスというビジネスに変わるというところです。確かにものづくり企業の方はものづくりに生かすんだとおっしゃるのですが、技術だけがライセンスとしてビジネスとして成り立つ。ドルビーなどはそうです。
 3番目、もう1つは何かというと、ドルビーインサイドなんです、先ほどの。インテルインサイドと同じです。ドルビーインサイドで映画館の付加価値が変わる。これは何かというと、私はよく申し上げますが、部材ブランドによる完成品競争力強化、こういうスタイルです。それをインサイドに持っているもの、全体のアウトサイドの付加価値を高める。こういうようなところの世界的な動きがあるので、それをもっと啓発をしなくてはいけないということがここでのもう1つの趣旨かと思います。
 いずれにせよ地震対策をしようという話をもう少し具体的にしなくてはいけないので、その辺を次回以降、少し掘り下げていきたいと思います。そういうご指摘だと思います。ありがとうございます。
 それから、併せてこの専門調査会そのものではないかもしれませんが、私とブランドの方の専門調査会長である中村委員とで何か合流するようなところを探ろうというお話をずっとしておりますので、それがいずれ、今回の骨子になるかどうかは別ですが、何らかの形で形成できればと思っております。
 それでは、よろしければ続きまして4番目に移りたいと思います。アジア地域における国際標準化活動ということについて、4番目にありますが、これについてご発言の方は、これはまた岸委員からのご提案です。よろしくお願いいたします。

○岸委員
 実は標準化担当の方と話をしていて、彼らの本音の中でどうしてデジュールは全部ヨーロッパで、日本は端っこにいるのよというので提案したのですが、その後、事務局の方がかなり調査をされて、例えばIECにはアジア支部があるというのをこの間メールでいただきました。それから今日、ここへ到着したら、ISOの仕組みについて支部みたいなものはないというのをペーパーでいただいたのですが、この辺りを高山参事官、私もいただいたばかりでご説明をいただけますでしょうか。

○妹尾会長
 お願いします。

○高山参事官
 ISOという組織は民間の組織になりますので、国際機関ではまずございません。確かにスイス、ジュネーブに本部があって、そこに本部があるだけで下部組織というものは基本的にはTCという技術委員会という形のものになります。この技術委員会というのは概ね200ぐらいあって、それぞれの技術分野ごとにおきている。ここに幹事さん、議長さんという方がいらして、その人が中心になってTCに入っている、複数の国が入るわけですが、そのメンバーの人たちと相談をしながら国際会議をどこでやるかとやるわけです。議長さんの国でやることなどもかなり多いようですが、必ず議長さんのいる国でやらなければいけないという決まりもないです。そうなっていった場合にずっと議論をしてきたときにTCごとに日本の占有率が今十数パーセントで、これをどんどん増やしていこうよといっているのはまさにこういう国際会議が日本で開かれるようにしていこうという、その流れなものですから、ISOの本部がどこにあるかとか、ISOの支部がどこにあるかということで、直ちに国際会議が本部で開かれたりとか、支部で開かれたりということとはちょっと違うようだということを岸委員にはご説明をさせていただきました。

○岸委員
 ありがとうございます。その件で1つだけ簡単に。私の疑問は国際連盟下でできた組織が今も厳然とあって、しかも1国1票制度で、EUは拡大EUで1つにまとまると27か国が1国1票を持ってしまう。それに対して日本もアメリカも、もちろん中国もインドも1票だということです。そういう何かハンデ戦みたいなものを、これから闘っていていいのかな。しかも購買力人口を考えたら、拡大EUで大体5億人、アジアで日本、韓国、台湾、中国、インドを合わせて25億人、5倍の人口があるところでものが売れていく、標準化された技術でものが売れていくことを考えたら、27が1つに固まっているのが、全員が1つで闘っているこの姿がこれからグローバル化される時代にいいのかなという素朴な疑問であります。そこにどういうふうなメスを入れるかというのは私の知恵ではないのですが、議論していただければと思います。

○妹尾会長
 という話ですが、どなたかいかがでしょうか、これに関しまして。

○佐々木委員
 今の各国1票ずつ、どこの地域という話はもちろん非常に大きなファクターだと思いますが、ちょっと参考までに。実は自動車の業界で調べたことがありますので、簡単にご紹介させていただくと、もともとドイツが非常に強そうだということで調べてみると、ドイツは自動車会社と日本の部品工業会みたいなところが同じテーブルについていて、そこで新しい技術が出てくると、それと併せてすぐに標準化を考える、日本の自動車工業会の中に標準化委員会みたいなのがあって、すぐに標準化を考えて、まずドイツの国内標準にしておいて、それをストックしておいて、時期を見てISOの方にそれを出していく。かなりタイムリーに標準を取るというようなことをやっているようです。
 その組織だったやり方以上に、産業構造的に違っていて、日本は私どももそうですが、日本の完成車メーカーはほとんどが新しい技術が出たときに自分のところだけでデファクトを取りにいくということですが、ドイツ辺りはスーパーサプライヤーがあって、具体的には多分ボッシュなんかがその代表格だと思いますが、そこが新しい技術を持ってくることが多いので、まず日本辺りにやられないように全部の会社がまとまって標準化戦略をつくりやすい、そういう性質がありそうなので、場所と産業構造の成り立ちとか、あるいは業界とかでもこのデジュール標準をいろいろな性質の中で解いていかなければいけないという難しさはあると認識しております。以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ご参考までにですが、ボッシュが最近、電気自動車で提案しているあの作戦のスタイルは北欧連合軍が中国市場で携帯の領域を全部とったのとほぼ同じ作戦です。これは携帯領域で日本がさんざんやられたんですが、自動車業界の方はなかなかご存じなくて、同じ作戦でやられそうだぞというのは僕らはウォーニングを出していますが、そういう業界間の標準の作戦のとり方自身が日本の中では縦割りが強すぎて、お互いの学び合いがもう少しあった方がいいのかな。そのためには業界のご努力も必要ですが、少しそういうようなことの流通する啓発の政策があっていいのかなというふうに私も思っています。
 もう1つ、今、佐々木委員が大変うまくおっしゃってくださったのは、産業構造が若干違いますので、国内で標準を固めて、それを海外展開するというのが日本にとっていいスタイルなのだろうか。これがちょっとありますね。日本は国内でやっておいて海外に出ようとして、例えば携帯のように世界中誰も使わない国際標準をとったというようなスタイルになってしまうわけですから、この辺の産業構造ごとの違いと、あるいは日本の産業の独自性から来る標準戦略の違い、この辺のところをお互いに学び合わないといけないのかなと思います。その辺のご指摘を今いただいたと受け取っております。
 他にいかがでしょうか。
 よろしいですか。この話は私は岸委員からのご提案、具体的には例えば国際機関のブランチをということをおっしゃっているのですが、これはかなり深い話ではないかと私は思っています。国際機関との付き合い方を戦略的に見直そうというご提言だろう、こういうふうに思っております。すなわちISOだとか、そういった国際標準機関、それ以外にもいろいろなところがありますが、あるいは学会にそれが委ねられている分野もありますが、それとの付き合いがどうしても日本は受け身一方でありまして、能動的に係わる、戦略的に係わるというのがなかなか得意でない。しかし、世界はそういうものをかなり活用していると、こういうことだろうと思います。その意味で戦略的にフォーラムの機関とかデジュールの機関をどういうふうに使うか。これをもう一度考え直しましょう。そして政策的な支援ができれば、それを大いにやりましょう。こういうご提案と受け取っています。
 第2点は何かというと、デジュール的なものというのはどうしても公共的な意味ではあると強く言われるんですが、全ての標準はコントリビューションツールであるということと、社会に対してです。もう1つはコンペティションツールだということだと思います。産業競争的なツールとしての標準と、もう1つ公共的なツールという両側面がありまして、日本は公共的にいいことだ、みたいな思い込みが強いようです。それを世界では全然違う見方をしているよというところは改めた方がいいだろうと思っています。
 それから先ほどのご発言がありましたが、世界ごとに標準機関の使い方が大分色合いが出てきています。特に放送通信的なところを見ますと、アメリカは徹底的にデファクトでいく。デファクトで強い企業がとっていくというスタイルです。欧州がそれに対抗してデジュールで、とにかくオープン政策でアメリカを阻止しよう。中国は先ほどの話にも出てきましたが人口をかなり強力に使って、大ガラパゴスコアを新興国連合でつくろうとしている。日本だけがどうしても小ガラパゴスの独自基準で何とか頑張りましょうみたいなところに偏っているというのが今の国際標準の色分けではないか。もちろん業界ごとに違いはあります。この辺を踏まえないといけない。
 そうすると国内で固めて海外に出るという日本の戦略的な方針がはたして本当に適しているのだろうかという疑問があります。いずれにせよ戦略的に標準を使う。もちろん国際貢献という意味での標準を作る、イニシアティブをとる、両方ありますが、これを先ほどの話と同じで地震に対応しようと言っているのと同じような私の会長発言でございますけれども、この辺を踏まえて政策的に何ができるのかを更に掘り下げていきたいと思います。
 ありがとうございます。それでは、最後の5つ目に移りたいと思います。知的財産によるベンチャー振興策ということであります。ベンチャーとか新しい産業事業が出ない。それをスピードをもってやろうよというところのご発言がこの前強く出ました。スピードをもってやるのは大企業も中小企業もベンチャーも全部同じですが、ベンチャーがもっと活性化しないと産業が育たないよね。そのときに知財はどう使えるのか。こういう話だと思います。
 それではこれについてご意見を。

○久夛良木委員
 先回、私からも意見を述べさせていただいたわけですが、ベンチャーというものを考えたとき、すばらしいアイデアを活かして競争力の高い知財をどんどん積み上げ、その上で、すばらしいビジネスモデルとともに一気呵成に垂直に事業を立ち上げる。これがベンチャーの醍醐味だと思うのですが、この「スピード」ということを考えたときに、我が国の人材の流動性というのが、他の国に比べて非常に低い、ということに対して危惧を持っているわけです。例えばアメリカという国は、国そのものが多種多様な人が入って来られるというような流動性のある国でもあります。その上で大学と企業、或いはそれぞれの企業の間でさえ、より新しいエキサイティングな提案がされると、およそいろいろな才能が、その会社であるとかチームにパッと集まる。こういうきわめて機動的な流動性が、さまざまな場面で機能している国であると思います。
 一方、中国や韓国であるとか、台湾もそうかもしれませんが、国として、よしここに賭けようとなると、強力なリーダーシップの存在があると思いますが、そこに一気に人材及びお金、さまざまな資源を集める。「集まる」のではなくて、「集める」仕組みができるということで、やはり一気呵成に新しいものを立ち上げようとするときには、我が国の力、今までの成功の経験が必ずしも生きていないというか、場合によっては、ひょっとしたら「意識的」な意味からも、ちょっと邪魔している時もあるのかもしれない、というふうに思います。
 例えばどういうことかというと、我が国のすばらしい人材は、先の大量生産の時代に上場されたような既存の大企業の中にたくさんいらっしゃって、その人たちはもちろんその中ですばらしい活躍をされているわけですし、知財も創出しておられるわけですが、どうしてもそこから出ていかない。いや、なかなか出ていけないという風潮になっている、と私は経験上思います。
 大学の場合においても、そこから例えば1年間どこか新しいところに出て、TLOどころか、もっと新しい最先端の挑戦の場に出て、いろいろなベンチャーの立ち上げを経験をしてからまたお戻りになる、こういうこともなかなか進んでいないというふうに思っています。今日の提案の中で、岸委員から「インテレクチュアル・ベンチャーズ」というご紹介がありましたが、ともすれば巨大な企業群が、力にまかせていろいろなものをデファクトで決めてしてうが故に、いろいろな意味で多様性であるとか活性化がしにくくなるという危惧感から、当初はディフェンシブな意味もあったようですが、埋もれてしまっていて未だ活性化されていないような知的財産、先程のトランスメタの事例などはまさにそうですが、競争に敗れ商売をやめてしまうようなところに死蔵されているすばらしい特許であるとか、もしくは大きな企業体ではあるものの、その会社ではメインの事業としてなかなか生かしきれない、というようなさまざまな特許を集めてきて、それによって1つのパテントプールみたいなものを作る、ということが最初のきっかけだったというふうに思っています。まさにそういったものがあると、時にファイナンスのインデキシングが起こって、これを元に、「知財を集め、まとめて、この人たちにやらせるとすごいことが起こる」というふうに当然考えるようになる。そうなると、その読みがうまくいくと、化けるわけです。要するに知財そのものも、人材そのものも流動性を持ってきたので、そこに金融の流動性が加わると、新しい事業の可能性が一気に広がってくる。この意味で、岸委員の先ほどの問題提案と、私の問題意識は全く同じであります。是非ここのところを、皆様に共通の可能性としてご議論頂きたい。我が国がそこを疎かにしていると、あっという間にアメリカ、もしくは新興国にさえもやられてしまう、ということになりかねないと思います。
 いずれにしても十分に生かしきれていない人材、私の提案では、主に人材面ですが、もちろん知財の積極的な活用という意味もあります。こういったものを何かしらのエンドースメント、もしくはプログラムで集める仕組み、しかも短期決戦でも結構、そういったものをやれる仕組みをぜひ作っていただきたいと思っています。
 例えば、この事例の中で武田さんがどこかに投資をされるというと、これはいい技術かもしれないとエンドースされたというのと同じに、国としてとか、これはすごいいい芽がある技術・シーズだ、というふうにエンドースメントを与えるだけで、我が国の人材が動きやすくなるのだったら、それはそれで私としては是非やっていただきたいと思います。
 その場合、国が様々な人材を国の既存組織の元に集めて、そこに国の予算を付けて…とやっていると、またスピードが間に合わないような気もするので、本当に何かしらの形で人材を速やかに集める仕組み、1年間という期間を切ってでもいいと思います。特にシリコンバレーの事例でさえも、ベンチャーというのは、前にもお話ししましたが、立ち上げの段階では何も何100人も必要なわけではなくて、本当に10人ぐらいの優秀な方が集まるだけでとんでもないことができる可能性もあるわけですから、是非この辺について具体的な施策案を、皆さんとの議論の上で、是非この報告書に盛り込んでいただきたいと思います。以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。

○荒井委員
 ベンチャー、これは大学発ベンチャーをやったりして、1,700社ぐらいできた。10年間いろいろやってきた、そういう経験はみんなで大事にして、やってよかったと思うんです。いかに難しいかということも分かったし、うまくいったのはどういうケースかということが分かったと思います。更に新成長戦略ではないですが、世界中でイノベーションを起こしていこうというときにベンチャーは非常に大事だという認識はあるわけです。
 5つの、プレーヤーという観点から見たときに分けたらどうかと見ています。1つはベンチャー起業家、今のように集まるような人々が日本でもう少ししっかりした、いい技術に基づいたり、ビジネスモデルに基づいてしっかりした知財戦略を作るというのが弱かったということだと思いますので、ベンチャー起業家、これは大学もあれば中小企業もあるわけですが、個人でおやりになる人も、もう少ししっかりとした気合を入れてやっていかないと、そんなに甘いものではないぞという気持ちが必要です。しばらく前は甘く考えていた人も相当いました。ベンチャーと言えばうまくいくと思っていた人も相当いるので、ソニーを始められた方とか、皆さん大変な覚悟でおやりになったわけですから、そういう甘くないぞということを考えなければいけないというのがベンチャー起業家の点だと思います。
 2点目はサポートする人材です。シリコンバレーに比べて、10年たっても弁理士や弁護士、キャピタリストのネットワークは日本ではそんなに育たなかった。みんなそれぞれ縦割りでいて、いざ困っているところがあっても、みんなチームで助けるような仕組みは結局、日本ではまだできていないと思います。
 3点目は、ベンチャーファンド。お金は大事というのですが、しかしこのファンドもこれだけの低金利の時代ですから、コンテンツの方でもファンドの議論をしていると思いますが、本当にいいところなら金が出てくる。しかしリスクをとることの仕組みがうまく根づかなかったんだと思います。中小企業の有限責任組合法とか、法律もつくったりして、整備はしたけれどもう1つです。
 4点目は、イグジットしてのベンチャー振興市場が6つできてしまって、言葉は悪いけれども粗製濫造みたいになった。したがってみんなで低いレベルのものまで上場させてしまったから、一般投資家がみんな離れてしまって、ベンチャー振興市場はあぶなくて普通の人は手が出せないとなりました。イグジットが全然できないから、ここは是非6つを1つか2つに統合して、もっとレベルの高いものにしないといけない。イグジットがない限りファンドを作ってもだめです。
 5つ目は、国としてのこういうものについての税制の面あるいは法律の面でももう一遍再整備する。どうしてアメリカ、中国、韓国に比べて日本のベンチャーは少ないのかを考える。今の税制で、エンジェル税制その他といっても、あれではほとんど金は集まらないです。いい名前のものはできたけれども使えないということなのです。今言ったような、10年間の経験を生かして、これだけのプレーヤーが全部、もう一遍再活性化がいると思いますので、そうしないといけないのではないかと思います。
 これは知財専門調査会だけではできないのですが、しかしそこもできない限りはせっかくいい研究開発、技術開発をしても、あるいはいいコンテンツを作っても、研究はビジネスとしては成功しないから雇用効果も生まないし、世界にも広がっていかないということだと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。久夛良木委員。

○久夛良木委員
 1つ補足させていただきたいのですが、この議論をしていている大前提というのは、我が国の競争力強化が「国家戦略」であるならば、それに「スピード」が大事であるならば、という前提付きで私は提案させていただきました。言い方を変えると、例えばK-1で世界チャンピオンになるとか、マスターズで優勝するとか、そういうレベルのベンチャーが出てこないと、という意味です。ですから、とにかく発足5年で売上1兆円とか、世界の例えば50億人がユーザーであるとか、そのぐらいのつもりのベンチャーを国として立ち上げる気があるのか、もしくはそういったチームを育てるみんなのモチベーションといいますか、「気骨」があるのかということです。そうでないと本当に売上1,000万とか1億のベンチャーばかりが山ほど出てきます。そういった話をここでしているのではないでしょう。つまり、我が国として、ある意味で依怙贔屓になるかもしれませんが、この国の競争領域を定め、人材や知財を集中させることにより、例えば私がさっき言ったようなベンチャーを10社も立ち上げることができたら大変なことになるわけです。例えばバイオの分野であるとか、情報処理の分野であるとか、グリーンエネルギーのところとか、それらは国として選択集中領域のところでもあると思うので、そこに場合によっては既存企業からでも強引に人材を抜いてくる。加えて、優秀な大学の先生も抜いてくるぐらいのことをやらないと、本当にこれから追いかけている国々にも負けると思う。それをやらないで、既存の人たちが「なかなかそんなことは無理ですよ」という話をしているとするならば、この国はどんどんどんどん置いてきぼりをくらうということは間違いない、というふうに私は申し上げたかったんです。それで、具体的に皆さんお話をしませんか?ということをご提案申し上げたつもりです。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今の趣旨に、あるいは荒井委員のご指摘に対して、あるいは他の観点で、この問題についていかがでしょうか。山本委員。

○山本委員
 すみません、私はいろいろな委員会に出ていて、どこの委員会で発言したのか、自分で記憶がはっきりしないんですが、例えばオランダの国立研究所なんていうのはTNOというのがあるんですが、TNOホールディングスというのがあって、その下に日本でいえば産総研ホールディングがあって、その下に産総研があって、ホールディングが出資を例えば50%して、民間が50%してベンチャーを作るなんていうので、もう何十社も会社を作っています。これは国策として作っているというか、今はすぐは儲からないような会社でもどんどん会社を作っているというのを何年か前にお聞きしたことがあります。
 例えば日本の独法から本当に会社をつくろうといったときに今できるのかというと、会社自体はつくれるかもしれませんが、どちらかというと研究者がご自身の発意でどこかから、ベンチャーキャピタリストと話をしないとできないという、そういう話だと思うんです。そういったことというのを検討することも可ではないかなと思っております。
 あとは先ほどお話をしましたが、例えば産業革新機構にある種の技術を集約させれば、そこでベンチャーというのもできる可能性は十分にあるのではないか。産業革新機構自体は彼ら自身がファンドも持っているわけですから、お金のサポートもできる。久夛良木委員がおっしゃった人の問題が一番重要でそこだけは、大学の研究者がベンチャーに参加したらうまくいくのかというと私も疑問を感じるときもときどきあるんです。いずれにせよ、そこの人の問題というのが一番大きいのですが、今ベンチャーで語られていることは日本の中でのベンチャーですが、グローバルアイの海外の市場を押さえていくようなベンチャーというのがまだ少ないということも問題ですので、それに向けての議論をどんどんやっていただいた方がよいと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。佐藤委員。

○佐藤委員
 昨年までの議論の中でも産業革新機構の中にファンドだけではなくて、ベンチャー育成の機能を持たせるべきだという議論もされていたのですが、その議論も政権交代もあって頓挫しているという状況にあるのではないかと思います。先ほど久夛良木委員からお話があったように世界に飛び跳ねるような大きなベンチャーを育てるという目標を掲げてやるべきだと思うのですが、そのときに先ほど来議論されているように、それを本当に支えていく組織というもの、また機能、また人材というものが整っていないというのが現実なわけです。それをどうやっていち早く作り、そういう人たちをサポートしていくかということを考えると、今ある既存の組織でできるかどうかという検討と、できないのなら新しい組織を作るのか。仕組みを作るのかということを早急に検討すべきではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。いかがでしょうか。
 これまでベンチャーの苗床ないしは生態系の整備という考え方と、先ほど久夛良木委員がおっしゃったように手を突っ込んででも、とにかく伸ばすやつは伸ばしてしまえ。要するに環境づくりの方なのか、要するにロイヤルゼリーを与えることをやるのか。政策的な、かなりコモン的な考え方に触れると思います。

○久夛良木委員
 もちろん両方やる必要があると思いますが、環境づくりというのは教育と一緒ですから、継続的にずっとやっていかなくてはいけないと思いますが、やはりこの国で、目覚しい成功事例が出ないと、なかなか次に続かない可能性があります。ともすれば何もこの国でやらなくてもいいと思う人たちも今後たくさん出てくると思いますから、是非ここで議論しているのが「我が国の知的財産、及びコンテンツも含めてどうやって競争力を高めるか」ということであるとするならば、ここで是非そういった事例を実現していきたいというふうに思うわけです。
 そのためには、まず「スピード」が大事と言いましたが、少なくとも私に見えている限りにおいては、十分にそれがやれる人たちが我が国にもいらっしゃいます。ただ、それがそれぞれの大企業の中に数人とかバラバラになって分散している。とは言え、それぐらいの割合で確実にいらっしゃる。大学にも、もちろん優秀な人材が潜んでいる。そういった人たちをどうやって集めてくるか?
 それには目利きというか、優秀なプロデューサーの存在ももちろん必要ですが、それが見つかったところで今まではそれで終わり。確かにいるよね、で終わってしまう。本当に残念なことでもったいないんですが、そこは例えば「我が国の十大施策」の1つだということで、よし1年間なら行って来い、というぐらいのつもりでやれば、ひょっとしたら今まで何もやれなかったことに比べれば、はるかにいい結果が出るというふうに思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今、明確に久夛良木委員が言われたように環境づくり、お花畑をどうするのという話と、中でロイヤルゼリーで女王蜂をどうやって育てるのという、この両方の施策をどういうふうに考えるかということだと思います。人材育成の観点から見ますと、集める仕組みという、先ほどおっしゃった技術を集める仕組み、知財権を集める仕組み、それから人材を集める仕組み、これを集めて価値づくりにどうやって貢献させるのかという、ここのところがポイントだと思いますが、この委員会でも再三議論はずっとされてきたわけですが、私の観点から言うと1つは産業生態系が枯渇しているので、どういうふうにするんだという話です。
 もう1つは、人材育成的に言うとコンテンツのところで中村委員がよくおっしゃっているプロデューサーがいない。こっち側もそうなんです。ビジネスプロデュースがいない。どうしても皆さんコーディネーターといってしまう。利害調整屋さんばかりを支援する施策ばかりでプロデューサーを支援する施策になかなかなりにくかったのがこの10年ではないかというふうに思っています。しかも、それはコーディネーターは何かというと、今までの経験者を優遇するというか、すなわち経験者というのは要するに古いモデルで来た方々を優先する、政策的にはもう考え直す時期ではないか。新しいことにチャレンジするプロデューサー育成ではないか。
 もう1点は何かというと、私がよく言わせていただいているのは、第2の藤沢武夫創生プログラムを作るべきだ、こういうことであります。日本にはたくさんの本田宗一郎さんがまだまだいらっしゃる。若い人を見ているといるんですが、藤沢武夫さん的な方がなかなかいない、というところがあるので、ベンチャーに対してどうやって藤沢武夫さんが出てくるか、こういうことかと思っています。
 これについても政策的なところで手を入れられる部分には、かなり難しいところがあるので、これについて更に皆さんとご議論したいと思います。これは長年、これも先ほどの話ではないですが、地震対策をしましょうに近い部分があるので、ここは何かブレークスルーしなくてはいけないと思っていますが、その辺のところを事務局にも知恵を絞ってほしいし、皆さんからのご意見もいただきたいと思います。
 それではありがとうございました。今の皆さんの議論を踏まえて、また何かありましたら事務局へ意見をお寄せいただきたいと思います。
 ちょっと時間が押してしまったのですが、目標指標について、少し意見交換をしておきたいと思います。何点かの論点が残っていると思います。例えば資料1、事務局からこういう話が出ています。資料1をご覧ください。資料1の6、7、8ページです。この特許の海外出願比率を高めるという目標例案が事務局から出されています。比率ですので分母、すなわち国内出願を小さくすることで目標に達成することができるのではないか。したがって海外出願比率ではなくて、海外出願件数にすべきではないかという意見もありました。こういう詳細に見ていくと意外に指標作りというのは難しいものであります。こういうようなこところで、この目標指標例が皆さんからのご意見があれば、もっともっと議論したいところですが、個別に入るとかなり大人数での議論がしにくい案件でもあるのは確かですが、皆さんからご指摘がありましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 参考資料を見ていただけますか。番号が付いていないもので、私が書いた3枚ものがあります。「政策評価のための目標指標設定に関する10の注意事項」、これは私の専門の方から少し書かせていただきました。ここでは読み上げませんが、政策目標を作るときに、例えばアウトプット評価をするだけでアウトカム評価がなされないと、ついついハウの評価だけで終わってしまうよとか、学習効果を重んじないとついつい手段の自己目的化がされて勝手に矮小化されたものが動いてしまうとか、PDCAサイクルを回すというのは一見良さそうに見えますが、サイクルで回せるもの意外は実は施策に入ってこない。俗に言う皿回しは回せる皿しか回さないという状況に入ってしまうので、この辺を注意深くしないと政策目標指標は立ちにくいですよということであります。これは私の専門に近いところなので、少しそれらをここで書かせていただきました。ここでは読み上げませんが、ご参考にしていただけたら幸いです。
 それでは具体的に何か目標指標についてご意見がありましたら。

○山本委員
 14ページに産学連携の指標がありますが、総合科学技術会議でも私は申し上げましたが、全国の大学の産学連携の実態を表す数値というのは今存在していません。法人化以降の大学帰属の特許出願件数や大学帰属の特許のロイヤリティ額はあるんですが、大学はご案内のとおり2004年までは法人化されていなかったので、それ以前のものとかは全くデータがないんです。大学技術移転協議会、これはTLOと知財本部の集まりですが、ここで調べているものだけでも文部科学省から公表されている大学のロイヤリティよりも1.5倍ぐらい多い。ということはもっとあるという話です。
 それで言うと産学連携はこの目標指標をどうするか以前の問題で、実態で全体をとらえた出願件数だとか、ライセンス件数、ロイヤリティ額というものがまず今ない状況で、個人に帰属していたものを調べるのは多分大変な作業で限界はあるのかもしれませんが、少なくとも知財で産学連携をどうしようというときにある程度調べられるところまでは調べて、税金を使って研究をしているのですから公表するというようなことが必要ではないかと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。山本委員のご発言は産学連携評価指標も作る時期に来ているのではないか。それは政策的にカチッとやろうよ、つくろうよ、こういうご提案ですね。ありがとうございます。

○佐々木委員
 従前、議論になったところですが、8ページの外国出願比率、ここの細かいことについてうんぬんと言うつもりはありませんが、通常、私ども知財部を持っていて一生懸命考えているつもりの企業からすると極めておかしな目標設定には見えます。もちろん縮小均衡的に分母を減らしてなんていうことはしないまでも、日本にたくさん出すにはそれなりの理由があってやっているところが多いと思うので、そういうふうに見えますということと、はたまた私はいわゆる中小さん、ベンチャーさんのところは分からないので、こういう目標の掲げ方をすることによって、それが改善するのかどうか、そこがちょっと分からなくて非常にコメントしにくい、この目標は。我々の目から見たら非常におかしな目標に見えます。結果的に海外で知財を出して、海外で活躍してくださいよ。そのためには知財権は海外にたくさんいるんですよということを浸透させることによって数が増えるというのは非常に分かりやすいのですが、限られた原資の中で当然そうなってくるとだんだん日本出願も減ってというのも、それも結果論としては分かるのですが、これを目標にするということが、それにドライブフォースに働くのかどうか、日本全体としては分からないところがあるので、そういう面については少し傍証か何かをいただければありがたいな、議論の中で。

○妹尾会長
 分かりました。先ほど荒井委員との話があった脱国内偏重主義をやろうというときに、この指標が本当に誘導指標になるのかということだと、別のやつがあってもいいかもしれない。あるいはこれが本当にそうだとしたら、何か理由付けがしっかりほしいね、こういうことですね。
 確かに直接努力目標でしょうというわけにはなかなかしにくい。結果目標になりやすいことがあるので、そこのところが産業界としては違和感がおありなのだろうと思います。
 再び事務局に知恵を絞っていただきたい部分かもしれません。
 ほかにいかがでしょうか。
 先ほどの例えば山本委員が産学連携の評価手法でもう少し整理した方がいいよねというところから関連して、私はここのところちょっと困ったなと思っているのは、独法の出願を見ていると、出願したら本当はまずそうなものまで全部出願してしまうとか、大企業であるにも係わらずこれを全部表にさらけ出していいの、特許をとってというのがあって、なぜそういう危険な、つまり情報を全部外に出してしまうようなことをするのというと、社内で出願件数の目標があるからだという、ノルマ主義から来るという、つまり戦略的に出したり出さなかったりすることを決めるのではなくて、出願件数が自己目的化するという、こういうのがあります。
 発明件数で勝負するのならいいんですが、出願件数になると出してしまった特許とか、なんちゃって特許に全部なってしまうので、この辺のところの目標の作り方は非常に難しいという感じが極めてするんですが、その辺も踏まえながら、こういうところを誘導指標として作らなければいけないわけです。
 ほかに。

○佐々木委員
 今のお話に絡んでですが、非常に大きなファクターとしてあるのは、知財権は人の権利として侵さないことを前提とするかどうかなんです。先ほどのマーケットの話にもありましたが、通常はどこに出ていようが、それを使うことになれば、そこにお金を払うという当然なことが生じるわけです。ところがリアルワールドとしてほとんどそうではないものだから、今のパテントを持ってきて、どこかに使わせるという構造も成り立つし、今、会長がおっしゃったようにここまで出してしまっていいのか。確かに出したはいいけれども侵害発見できないという特許もたくさん出してきたんです、過去には。これは結果的には性善説に基づいて行動してきたわけで、これが多分成り立たない世界と成り立つ世界というので、多分成り立たないのだろうと思いますが、そこをどう考えるかというので、今の政策みたいなものが変わってくるのではないかと思います。

○妹尾会長
 国内出願が多かったときには性善説はわりと通ったのですが、国際マーケットを前提にしたら性悪説に立つわけではなくて、ビジネスライクになってくるとどうなるかということだと思います。
 いかがでしょうか。他に何か。
 よろしいですか。この指標、これが固定されるわけではないので、あるいはそれ以外の指標をもちろんご提案いただいてもいいし、この指標については先ほどのような、これは問題があるからというご指摘もあると思います。それは是非事務局の方にお寄せください。
 一番最後の最後でこれはちょっと待ったというと困るので、できたら早めに皆さんのご意見を賜りたい、こういうふうに思います。
 それでは時間が迫ってきたので恐縮ですが、そういう形で事務局の方へお寄せくださいということになります。
 荒井委員。

○荒井委員
 資料6にワンストップ相談窓口の資料をお配りしたので、一言だけお願いいたします。前回大変議論があったのは承知しております。そこでポータルか、ジェネラルプラクティショナルかとかいろいろあったわけですが、最後の文章のまとめがワンストップ相談窓口を全国に整備するとなったわけですが、全国の整備が量的な整備ではなくて質的な整備をお願いしたいというのがポイントです。
 なぜかというと現状にありますが、実は既に全国に数百か所あります。これが問題はみんな縦割りになっていて、各県に行っても横の連絡が全くないんです。全くと言ったらしかられますが、非常に少ないので、それぞれの出先で是非各県ごとに中小企業の知財支援者のネットワーク、そういうものを作って、毛細管がちょうど末端でよくつながって血液が流れるように、そこで助け合ったら効果が出ると思いますので、ぜひ縦割りの整備はもう十分になされているから、これをいかに生かすかということをぜひ今年の計画でやっていただきたいと思います。お願いです。

○妹尾会長
 ありがとうございます。縦割りをいかに横を繋いで、より価値あるものに。

○荒井委員
 今のままだと仏を作って魂を入れずで、皮袋に酒が入っていない状態なんです。ぜひ生かしていただきたいということです。

○妹尾会長
 分かりました。そこのところのご指摘を政策上に意味のあるような書きぶりでまた考えていきたいと思います。ありがとうございます。
 ほかにございますか。

○相澤(益)委員
 本日、国際標準化のところが先ほど来ずいぶん議論になりました。そこで申し上げるべきかどうか、ちょっと迷っていたんですが、この基本計画が国際標準ということを表に出したので、何とかそれが実効性のある施策展開に繋がってほしいと願っているわけです。私がここで強力なものを出していただきたいと思うのが5ページであります。

○妹尾会長
 資料1ですか。

○相澤(益)委員
 そうです。この会で私が再三、主体はどこかということでこの標準化、ロードマップということを取り上げました。これを担当の省ということで、こういう形で幾つか書いてあります。しかし、これで官民一体となってロードマップができるのだろうか。先ほどの議論にありましたように国がこっちであるべきだという標準化のロードマップというのは実効性のあるものかどうか。先ほど来いろいろと議論がありましたが、企業が独自でやっていく。ドイツのように産業界とぴったりと国が一体的に進めようという体制があれば、こういうロードマップが極めて有効かと思います。
 そこで政策的に今回、知財本部がここのところを実体的にどうするかというところにかかっているのではないかと思います。これを何とか実体あるものに議論を積み上げていただきたい。
 もう1つは津村政務官が再三言われておりましたが、科学技術政策とIT等の内閣府が管轄している本部のようなところと知財戦略との一体的な推進です。特に5ページの特定分野というところが新成長戦略と科学技術基本計画の柱でもある2つの分野になっております。これが現在進んでいるんです。ここのところに標準化がいろいろ出てくるんですが、これだけでは十分にそれを遂行できない状況です。しかも非常に緊急性を要しておりますので、是非ここのところを補足していただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりで総合科学技術会議あるいはITの会議、その他と連動しながらこれを早急に進めなければ、まさにスピード感をもって進めなければいけないところだということだと思います。相澤委員のご指摘、全くそのとおりだと思います。これを進めたいと思います。
 もう1つの点は、今標準化ということが言われて、ブーム的になりまして、何でも標準化みたいなのがありまして、一方で後押しをしなくてはいけないのですが、一方で先走りをどういうふうに見るか、こういう話があります。というのは何でも標準になりますと、全て全部比標準で技術をオープンにしてしまうという戦略性のない標準作りが散見されるように感じるので。標準にするというのはいわば技術を全部オープンにするので。
 ここのところも含めて、相澤先生のおっしゃるとおりでありまして、標準化自身の戦略を作成するためのポリシーを我々は本部として考えなければいけない。こういうふうに思います。標準戦略のポリシーは一体何なのか。日本としての考え方を早急に定めなければいけない。それを実際の個々の特定分野にどういうふうにアプライするのかということが求められていることだと思います。まさにここのところを行っていきたいと思います。
 更に今のような大所高所のご意見とともに、本日の議論を踏まえた施策案を見直していきたいと思います。議論が十分でないとか、本当は言いたかったのにみたいな論点がございましたら、ぜひ事務局の方にお寄せください。4月にすごいスケジュールでまた進みますので、その辺のところをご協力いただければと思います。
 1点、津村政務官が来られる予定でしたが、どうしても離れられないということで今日はご欠席のままということになりました。
 それでは、次の日程を高山参事官、ご確認をお願いいたします。

○高山参事官
 次回第7回の専門調査会は4月26日(月曜日)、朝10時から、こちらの会議室で開催したいと思います。よろしくお願いします。

○妹尾会長
 それでは時間がまいりましたので、本日の会合をここで終わらせていただきたいと思います。
ご多忙のところをどうもありがとうございました。