第4回 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会

  1. 開 会 : 平成22年3月19日(金)9:00〜11:00
  2. 場 所 : 内閣府庁舎別館2階 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当政務官】 津村啓介 内閣府大臣政務官
    【委 員】 妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、江幡委員、大渕委員、上條委員、岸委員、久夛良木委員、迫本委員、佐々木委員、
    佐藤委員、高柳委員、西山委員、福島委員、山本委員、渡部委員
    【事務局】 近藤事務局長、内山次長、戸渡次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開 会
    (2) 「知的財産推進計画2010(仮称)」骨子に盛り込むべき事項について
    (3) 閉 会
○妹尾会長
 おはようございます。ただいまから知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の第4回会合を開催させていただきます。
 本日は、本当にご多忙のところ、年度末にご参集いただき、まことにありがとうございます。皆さんほとんどご出席されているということで、大変ありがとうございます。
 今日は、知的財産による競争力強化・国際標準化に関して、前回の会合までに委員の皆さんからご指摘いただいた論点や、あるいは具体的な施策のあり方に関する意見など、いろいろいただきましたけれども、それを踏まえて、施策、それからそれを誘導するようないわば目標設定ということについて、議論を、少しウェートをそちらのほうに移して深めていきたいというふうに思っております。
 本日は、中村伊知哉委員、野元修委員はご欠席というふうに連絡をいただいております。それから、迫本淳一委員は、所用のため途中でご退席と伺っております。
 最初は、津村政務官にごあいさつをいただこうと思ったんですが、何か妙にご遠慮されているので、早速始めさせていただきたいと思います。
 それでは、最初に知的財産推進計画2010の骨子に盛り込むべき事項についてということで、それについての議論に入りたいと思います。
 今回、4回目の調査会の進め方について、まず最初に皆さんにご理解いただきたいのは、前回、3回目まで議論をしてきたところで、積み残しになったといいますか、ご議論が大変活発に行われたいわゆる仮出願の話と、それからダブルトラックの問題ですね。これについて議論をしていただいて、その後、論点ごとに目標を中心に話を進めていきたいと、こういうふうに思っています。
 第5回、次回は、今回4回目の議論を踏まえて取りまとめを行いたいというふうに思っています。全部で5回で整理するということになろうかと思います。
 それで進めさせていただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、資料全体の確認と、それから今申し上げた仮出願とダブルトラックについて取りまとめをしました。前回申し上げたように、可視化してくれということで、事務局が一生懸命取りまとめをしてくれました、その資料。それから、皆さんのご意見を踏まえた修正資料ですね。これらについて説明をしたいと思います。
 それでは、高山参事官のほうからよろしくお願いいたします。

○高山参事官
 それでは、私のほうからご説明をさせていただきます。
 まず、資料の確認をさせていただきます。
 議事次第のところに配布資料を並べさせていただいておりますが、資料1が骨子に盛り込むべき事項について(案)というものでございます。それから、資料2が相澤英孝委員からご提出いただいた資料です。資料2には参考資料も添付されております。それから、資料3−1と3−2が佐藤委員からご提出いただいた資料になります。それから、参考資料になりますが、参考資料1、こちらは前回、第3回の委員会における主な意見をまとめさせていただいたものであります。それから、参考資料2、横長の大きな紙ですが、討議用の資料ということで、若干のリバイスをさせていただいている資料です。それから、参考資料3というのが、先ほど委員長からございました、委員長の指示によってつくらせていただきました補足用の資料ということになります。それから、参考資料4、本日主にご議論いただきます目標指標例についてということについてまとめた参考資料でございます。
 資料については以上でありますが、お手元にないとか、問題はございませんでしょうか。
 そうしましたら、順番的に、すみません、参考資料3からご説明をさせていただこうと思います。
 1枚めくっていただきますと、いわゆる仮出願についてということで、仮出願の導入を求める方々の主張というものをまとめさせていただきました。国際競争力が激化しているので、とにかく一刻も早く論文を出さなければいけないんだと。それから、かといって、iPS細胞のように、しっかりと研究成果を特許にしていかなければ実用化の道というのは開けないというご意見。それから、仮出願制度が整備されているアメリカに比べると、我が国の研究者は不利な状況にあるのではないか。したがって、日本でも論文で仮出願することを認めれば、出願日もすぐ確保できてよいのではないかというものが、皆様のご主張かと思っております。
 もう1枚めくっていただきますと、これに関していろいろなご議論があったと思います。左側にこういうものを導入すべきだという方のご意見を主に並べさせていただきました。右側には、要は論文で出願してもそれで本当にいい権利が取れるわけではないので、論文出願というのは安易に導入すべきではないのではないかという、導入の必要性はないというご意見をまとめさせていただいております。
 もう1枚めくっていただきますと、日米欧における論文による出願の状況というものを比較させていただきました。アメリカというところは先発明主義で、その中で論文でも出願日が確保できるというような仕組みがあると。法定の費用としては220ドルですが、大学であれば110ドルで安く済みますということを書かせていただいております。
 それから、真ん中にヨーロッパ、右側に日本とありますが、両方とも先願主義という仕組みでございます。その中、ヨーロッパは、請求の範囲がなくても出願日がちゃんと確保できるというような仕組みを導入されております。
 もう1枚、めくっていただきます。ここでもう一度よく考えてみようというのが、妹尾委員長からのご指摘で、コンセプトの転換というような形で書かせていただいておりますが、アメリカのような仮出願制度というものの導入が本当に必要なんだろうかと。そもそも、本来出願すればよかったような発明が、時間的な余裕がなくて論文の中に入っているだけで埋もれてしまっている、こういうものをちゃんと救済して発掘していくということが、本来のポイントなのではないかというものです。そのためには、論文による出願ができるように、出願フォーマットが自由化できるということのほうが重要なのではないかと。ただ、よく考えてみると、論文の内容だけではやはりちゃんとした特許というふうにはならなくて、そこは産業界で使えるような特許に育てていく仕組みというものが大事なんじゃないか。つまり、論文の中にはいわゆるチャンピオンデータのような、ごく狭い発明が開示されているだけであって、それでもって本当に産業界で使えるような特許にするというのは難しいのではないかというようなご意見が並べられているかと思います。
 そういうところを考えさせていただきますと、次のページです。これまでは時間的な制約があって、論文発表するだけで出願されていなかったものを簡単に出願できるようにしたらいいんじゃないかと。ただ、簡単に出願できるようにするだけでは不十分で、それをちゃんと産業界で活用できるような特許として育成するような仕組み、そういうものを合わせ技で、パッケージで考えなければいけないのではないかというところであります。
 具体的には、右上のところに黄色く書かせていただいておりますけれども、我が国の中には、今、国内優先権制度というようなものがございます。右下に国内優先権制度の仕組みを書かせていただいておりますけれども、最初に基本となる出願があったときに、それを補充するような改良発明とを包括的に1年以内に出願ができるという仕組みです。また、そのほか、相澤英孝委員から、補正の考え方というようなものもいろいろ問題があるんじゃないかというご指摘もありました。そういうところをあわせて、包括的に、単に簡単に出願ができるというだけではなくて、それを産業界で使えるような仕組みに育てていくということの合わせ技で施策を考えていくべきではないかというのが、この5枚目の紙でございます。
 それをちょっとまとめさせていただいたのが、その次のページです。要は、今まで大学の中のTLOの方々とか、大学知財本部の方々、出願をするためにどういう出願様式をつくればいいのだというところで、出願前の短い時間に明細書をつくる、クレームを書く、特許請求の範囲をつくるというようなところで、非常に負担があったと。そこを軽減する。軽減した分を使って、むしろ企業の方々との連携に注力していただいて、企業の方々と連携することによって、よりよい、本当の意味で社会で使えるような権利に育てていくと。そういうようなものが考えられる。そういうような仕組みを考えるべきではないかというものであります。
 左下にございますように、ただこれはある程度緊急避難的な措置であって、本来的には先願主義の国ですので、出願までにきちっとした内容のものをつくるというのが原則になるということは変わりがないかと思っております。
 それから、もう1枚おめくりください。ダブルトラックの問題ですけれども、ここにありますように、特許の有効・無効を、特許庁とそれから裁判所と、2カ所で争えるということが問題だというものであります。これは、もともとは日本はドイツ型の法律体系を持っていまして、いわゆるシングルトラック、今でもドイツは特許の有効・無効については、特許庁、それから特許裁判所というところでしか争えない仕組みになっていて、いわゆる侵害訴訟の中では争えない仕組みになっております。日本もそういう仕組みになっておりましたが、アメリカではそれを侵害訴訟の中でも一回的に解決できるという便利な面があって、そういうようなところで、2000年にキルビー判決というものが出て、裁判所の中でも、侵害訴訟の中でも有効性・無効性について争ってもいいのではないかという判決が出たことを契機に議論が巻き起こって、一部アメリカ法的な考えを導入したらどうだということで、特許法104条の3というものが2005年に設けられたというのが一般的な解釈になっているかと思います。
 そのように、ある程度日本のこれまでの法体系の中にアメリカ法的な考え方を入れてきて、今、ダブルトラックになっているという状態になってございます。
 もう1枚、おめくりください。そういう意味では、このダブルトラックという問題を見直すべきだというご意見がある中、この間、江幡委員がご説明していただいたのがすごくいい内容だったと、私としては思っておりまして、私がここであまり余計なことは言わないほうがかえっていいのかなとは思っておりますが、江幡委員からご指摘がありましたのは、結局、昔も侵害訴訟の中で無効と判断すべきような場合もあったんだけれども、それはなかなか無効という法律的な手だてがなかったので、権利範囲を狭く解釈するというような形で、侵害なしというような判断がされていたんじゃないかと。それを明確にしただけなんじゃないかと。
 それから、齟齬があるのではないかという話は、知財高裁のところで一括化されているので問題ないのではないかというご説明があったかと思います。ただ、一方、いわゆる蒸し返しというような問題については、一番下のところにちょっと注書きで書かせていただきましたが、ダブルトラックということとはまた別の問題として検討する必要があるのではないかというご指摘もあったと思います。
 それから、右側の一番下のところに書かせていただいておりますけれども、特許法104条の3というのが新設されてからまだそれほど長い時間がたっているわけではありませんので、判決の蓄積等もまだ十分ではないという状況で、こういうものを全体的にもう少しじっくり勘案しながら考えていくべきではないかというようなご指摘がされているところかと思っております。
 最後のページは、全体的な統計数字を載せさせていただいた参考資料になってございます。
 続いて、資料1をご説明したいと思います。
 先ほど委員長からありましたけれども、次回が最終回になりますが、そのときに当専門調査会の報告書というような形になるものの案というふうに見ていただいていいかと思うような資料でございます。冒頭、現状認識というところは妹尾委員長にかなり手を入れていただいて、今回の専門調査会での議論をなるべく反映するような現状認識になるように修文をさせていただいております。
 目標のところも同様の修文をさせていただいております。
 3ページに入っていただいて、枠囲いですが、成果イメージというものが書かれております。まだ黒丸になっておりまして、ここは知財政策だけで決められる目標、成果イメージというものではなくて、全体的にもっと成長戦略での議論等を踏まえて書いていかなきゃいけないのではないかというものを、ここで黒丸で書かせていただいております。
 それから、4ページ以降、具体的な施策例と、それから5ページに入りますと、目標指標例ということで、本日ご議論いただく内容について書かせていただいております。この目標指標例、後ほどまた少し詳しくご説明をさせていただきます。
 6ページのところは、前回、特許審査のワークシェアリングといったときに、条約のことばかり言っているのではなくて、デファクト的に実際上の協力というものを進めるべきではないかというご議論がありましたので、その点を加筆させていただいております。
 それから、8ページ以降は、2.我が国の優れた技術を生かして世界に通用する新規事業を創出していこうという項目になります。この中も、妹尾委員長からご指示をいただいて、幾つかの細かい修文をさせていただいております。
 特に大きなところといたしましては、すみません、11ページになりますが、前回ご指摘がありました普及啓蒙活動というのを、中小企業とかだけではなくて、大学の中でもやってほしいというお声がありましたので、上から2つ目のポツで、施策として入れさせていただいております。
 大きな変更点は以上です。
 続きまして、すみません、また順番がぐちゃぐちゃになって申しわけありませんが、参考資料4というのをごらんください。目標指標例というものです。先ほど資料1の中に目標指標というものを幾つかつくっているというご説明をさせていただきましたが、事務局のほうで何でこういう数字にしたのかというようなところを、考え方を少し書かせていただきました。
 例えば、(1)(イ)の、特定戦略分野において標準化ロードマップを含む知財マネジメント等の競争力強化戦略を策定・実行するというものについては、このような戦略が策定されたか、実行されたかということを定性的に評価するのがいいのではないかというものです。
 それから、その下の(ロ)は、国際標準の共同提案というところなんですが、ここは件数をあまり明示すると、その件数だけが自己目的化するのではないかというご議論がありまして、ここをどういうふうにすべきかというのは、すみません、正直申し上げますと、事務局としてはあまり知恵がございませんので、ここは皆さんにご議論いただければと思っているところです。
 もう1枚めくっていただいて、2ページですが、(ハ)高い交渉スキルを有する国際標準化活動の専門家を育成しようというところで、どれぐらいのレベルなのかというふうに考えますと、やはり国際会議でちゃんと取りまとめを行えるような議長とか主査というポストを任せられるようなレベルと。現状どれぐらいいるかというと、おおむね200人弱ぐらいということです。そうしますと、予備というとちょっと言い方はおかしいかもしれませんが、いつでも交代ができるようなバックグラウンドを持っている人というのは倍ぐらいいたほうがいいんじゃないかということで、400という数字を載せさせていただいております。
 それから、その下、国際標準機関における幹事国というような数では、具体的にどういう数字になっているのかということを並べております。特にドイツなどを見ていくと、160以上ということですので、150件というのを一応目標に置いたらどうかという提示でございます。
 それから、安全・安心のところは、ここも獲得件数自体を目標にしてしまうとちょっとおかしなことになるのではないかと。それよりはやはりちゃんとした、しっかりした国際標準が獲得できたかというところを見るべきではないかというものであります。
 それから、その次は、特許の海外出願比率ですね。これは、現状、日本はグローバル出願率というものが24%、アメリカは51、欧州62という状態になっています。幾つにするのがいいのかというのはいろいろな議論があるかと思いますが、とりあえず10%ぐらいアップということで、35という数字を置かせていただいております。
 それから、実質的な相互承認に向けてというところは、そういうような具体的な取り組みの進捗状況を定性的に評価するとともに、PPH、特許審査ハイウェイというものが、今おおむね70%ぐらい使える状態になっていますので、これを90%ぐらいまでは引き上げるというのがいいのではないかと思っております。
 それから、模倣品・海賊版防止条約ACTAのほうは、なるべくそういう加盟国が増えていくようにがんばるということではないかと思います。
 それから、(ニ)ですが、模倣品・海賊版による被害率ですね。これは、将来的には撲滅という、被害が全くなくなることがいいわけですが、そうはいってもそう簡単にはいかないと思いますので、今24%というものを12%、半減させるというような目標を立てております。この数字については、アンケート調査ですし、それからそもそも模倣品被害を認知しているかどうかということが出ておりますので、どこまで正確な数字かというと、若干ちょっと怪しいところはあるかもしれません。
 それから、4ページの(1)(イ)ですが、中小企業、ベンチャーの特許制度の利用者、この裾野をなるべく広げていくべきではないかという議論ですので、新たに特許出願したことがあるベンチャー、中小企業の数を、今全体で1.2万社なので、2.5万社、倍増させるぐらいの感じで書かせていただいております。
 それから、ベンチャー、中小企業における海外出願件数というのは、現状の1.5倍ぐらいというような数字です。
 それから、ノウハウ取得を含めた知財戦略というのをちゃんと浸透させようといったときに、浸透具合というのはなかなか数字は難しいのかなと思いますので、アンケート等を参照しつつ、総合的に判断というふうに書かせていただいております。
 それから、もう1枚めくっていただきまして、5ページです。日本の産学連携力、これはIMDというところが出している数字がありますので、このIMDの数字自体の信憑性等はいろいろあるかとは思いますが、これをトップクラスということで5位以内ぐらいを目指すのではないかというものです。
 それから、大学と産学連携がうまくいくような、競争する場を構築するというのについては、世界的に見ましても、各国1個とか2個というような状況ですので、とりあえずできればいいのかなというふうに思っています。
 それから、企業から大学や公的機関に入ってくる研究費ですが、今、おおむね1,000億円です。これをアメリカ等を参考にしながら、1.5倍ぐらいまで増やしていくというような目標。
 それから、海外からの資金ですが、日本は今0.04%とか0.4%というように、非常に低い領域です。欧州は3から8ということで、いきなり欧州並みというのも難しいと思いますので、とりあえずここはきりのいい数字で1%というものを置かせていただきました。
 それから、引き続いて、オープン・イノベーションに対応した知財制度の構築というところですが、6ページですが、これについては、やはり法改正等の進捗状況を定性的に評価するということしかないのかなと思っています。
 それから、権利の安定性のところも総合的にいろいろと評価をするということにならざるを得ないのかなと思っています。
 第1回のときに、特許庁と、それから裁判所の齟齬の程度を数値目標にしたらどうかということを事務局から提示させていただいたところ、委員から、こういうものは数値目標にはなじまないんじゃないかというご意見をいただいておりましたので、そこを一応、なお書きでつけさせていただいております。
 それから、審査順番待ち期間は、特許庁が2013年、11カ月にするということで、今、目標に向けてがんばっているところですので、その目標を書かせていただきました。下には現状、まだ日本は29カ月ぐらい、ヨーロッパが23カ月、アメリカが27カ月というような状態になっているというファクトのデータを書かせていただいております。
 事務局からは以上です。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 議論についてはあちこちに行っても混乱するだけなので、1つ1つこなしていきたいと思います。
 それでは、まず津村政務官から。

○津村政務官
 具体的な議論になる前に、今日、取りまとめ前の最後ということですから、ちょっと全体的に危機感を持ったものですから、議論の前に少しお話をさせてください。
 あるとき、私発言をさせていただいて、成果イメージというのは確かに大きなものをイメージを持つことは非常に重要で、この今の資料で言いますと、資料1の3ページの一番下のところに、「成果イメージは、知的財産関係施策を実施すれば到達できるものではなく、他の施策、要因にも左右されるものである」というふうに書かれていて、逆に言えば、いつでも言いわけできるようになっているわけですけれども、じゃその間にあるものはせめて言いわけできないものにしませんかということをあるとき申し上げて、この目標指標例というのは、例えば数値目標というふうな言い方をしたと思うんですけれども、数は逃げようがないですから。
 ただ、先ほど権利を安定化させるとか何とかという、ほとんど何の検証のしようもない目標施策例が出てきていましたけれども、もちろん数値目標になじまないものはあると思うので、それはそうかもしれません。しかし、じゃ定性的な表現にするか、数値目標にするかという、そういう何か二元的な話をしていただきたくはなくて、私がお願いしたのは、検証可能なものにしてくださいということを申し上げたので、検証不可能なものはできれば外していただきたいと思います。別のところにお題目として書いていただければいいので、これをやったかやらなかったかが何年か後に厳しく検証されるものにしていただけませんか、この目標施策例のところは。そうじゃないと、本当に言っているだけになると思うので。
 それから、短期、中期、長期という表現が出てきますけれども、これ何年のことですかね。

○高山参事官
 資料1の3ページのところに書かせていただいております。短期は今後一、二年で実施すべき事項。中期は今後三、四年かけて実施すべき事項。

○津村政務官
 わかりました。すみません、見落としていました。
 これから3月末までにまとめるのはあくまでも骨子であって、4月以降、2011年の計画を立てるときに、具体的な、もう本当に逃れようのない具体的な政策になっていくと思うので、この段階でどこまでリジッドな骨子にするかということは確かに、多少の幅があってもいいとは思うのですけれども、それにしてもちょっと漠とした表現が、きちんと詰まっている表現と一緒に混ざってしまっているので、そうすると、悪貨は良貨を駆逐するではありませんけれども、そちらのぼわっとしたほうに寄せられてしまうので、本当に大事なところが残るように、あいまいな表現はもうむしろほかのところに落としていってください。
 あと、ぜひ中身の話、これまで何回かしてきていますので、ぜひ委員の先生方にも、もう最終段階まで来ていますので、後でチェックができるかどうかというその表現ぶりみたいなところも、ぜひ今日は厳しい目でチェックしてください。これから、これがまとまった後、働くのは私たちであり、事務局なわけで、私たちがそこで、せっかく皆さんに議論していただいたことを、いくらでもやらなくできるようなものを宿題としていただいても不幸なことだと思うので、ぜひこの表現、逃げ場のないような表現をぜひご提案いただければというふうに思います。
 個別のもので2つほど。
 西山委員にご説明いただいたユーザー・イノベーションのところの表現ですけれども、中期の目標で、9ページですか、1行だけ促進すると書いているんですけれども、やっぱりこれでは、方向を示しているという意味では大事なことなんですけれども、もうちょっと、目標指標例のところにもないですよね。もう少し具体的に書けないかなというふうに思っていまして、この間の議論で、必ずしも具体策のいろんな例があって、ここで集約できていなかったかもしれませんが、場合によっては次回までに、個別に西山さんにお知恵をいただくことも含めて、ぜひユーザー・イノベーションのところをもう少し詳しく書いていただきたいなと。この1行だけかというのがちょっと残念に思いました。
 それから、上條委員だったかと思いますが、人材のところも私は比較的そういう数値目標的なことになじむというか、はっきりと目標を打ち出せる類の話だと思うので、ちょっと今、どこかぱっと出てこないんですけれども、ぜひ今日、場合によってはご意見いただいて、このぐらいまではできるはずですというようなところをぜひ示してください。お願いします。

○妹尾会長
 それでは、今、津村政務官からのご発言をいただきましたけれども、基本的に目標のチェック可能な表現、逃げ場のない表現に変えたいというご意向でありまして、そこで見てほしいということなので、委員の皆さんもそこを中心に、この後のご議論をいただきたいと思います。
 それから、ユーザー・イノベーションと人材育成目標ですね。ユーザー・イノベーションに関しては、これは実は私の責任でありまして、西山委員と、今ご相談させていただいておりまして、西山委員からユーザー・イノベーションというのは、実は幾つかの構成要素がありまして、それを整理したほうがいいだろうということで、話をしています。骨子ではこのぐらいにしておいて、4月以降に具体策を練ったらいいというお話をしているので、それでご理解いただければと思います。
 人材育成目標については、各委員、上條委員を初めとして、皆さんいろいろお持ちだと思いますので、今の政務官のお話に沿っていきたいというふうに思います。
 それでは、討議に入りたいと思います。
 まず、議論がずっと続いていたものを、今回ぜひ整理をしたいということで出てきた参考資料3ですね。仮出願とダブルトラックです。これについてまずご意見をいただきたいのですけれども、事務局のほうで整理してくれた、まずいわゆる仮出願ですね。これについてご意見いかがでしょうか。
 山本委員。

○山本委員
 妹尾先生のところでよくまとめていただいて、仮出願という言葉を使うことがいろいろ議論を呼んでいるような気がしております。ここにありますように、本当に緊急避難的な話だと私は認識していて、出願フォーマットの自由化で十分足りると考えております。
 なので、資料1の11ページ目ですが、ここで括弧内に仮出願制度の導入というふうに、下から10行目ぐらいですか、というところがありますので、これを出願フォーマットの自由化による論文出願の実現と変えていただくことと、中期になっているので、これを短期に変えていただきたいと思っております。
 私は以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 まず、そもそもこれをご提案いただいた山本委員のほうから、仮出願という言葉自身がどうも妙な議論を呼んでしまうということなので、むしろご提案の趣旨からいけば、出願フォーマットの自由化ということにすべきだろうと。それから、中期の目標ではなくて短期でやるべきではないかと、こういうご発言でありましたけれども、これに関して何かございますでしょうか。
 相澤委員、お願いいたします。

○相澤(英)委員
 導入するのであれば、補正、分割出願、いわゆる記載要件、いわゆる記載要件については、今回、佐藤委員が資料を出していらっしゃいますが、それから、いわゆるサポート要件等を緩和しないと、形ばかりの論文出願を認めたということになって、実質的に権利としては保護を受けられないことになります。制度を設けるのであれば、保護を受けられるようにしなければ、いけないと思います。
 平成6年に特許法を改正して、補正を非常に厳格に制限しています。ですから、平成6年前まで戻せばかなり補正の範囲が広がるので、論文出願でもある程度の保護を得られるのではないかと思います。
 補正、分割出願、いわゆる記載要件、いわゆるサポート要件の緩和をすることによって、論文だけではなく、企業の特許出願についても、十分な保護が与えるようになります。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 記載要件の緩和その他についてなんですが、佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤委員
 今、相澤委員から、私のペーパーについても触れられましたので、その点についてちょっと関連して、資料3−2ですが、ここではユーザーフレンドリーな制度構築ということを今後の我が国の知財戦略の柱にすべきだという提言のペーパーです。先ほど相澤委員からお話があったのは、この1番目は権利回復処置の問題ですので、後回しにしまして、次の2番目の3ページ目に、諸外国と比較して特許明細書の記載要件が厳格すぎる。その例が、後ろのほうに事例として、日本の裁判所では認められないけれども、ほかのヨーロッパ、アメリカでは認められている、こういう格差が起こっています。この縛りが非常に厳しいために、仮に今のような論文出願を出しておいて後で補正しようとしても、補正できないということになってしまいます。したがって、単に制度を入れるというだけではなくて、こちらの枠組みも変えない限りこの仮出願という議論は成り立たないということは、相澤委員がおっしゃっていることと私も同感でございます。
 本来、この仮出願の問題というのは、資料3のペーパーの中の4枚目にございますけれども、埋もれてしまった、その論文だけ発表して出願にならない、埋もれてしまった発明を救済しなければいけないんだというのが趣旨だというふうに思うんですね。しかし、実際に救済されないのはなぜか。それは大学の知財体制がしっかりできていないからだということが、一番根幹の問題だと思っております。仮にある先生が年間100件、論文を発表した。それを仮出願で出した。それを権利化して、強い権利にするためには、その100件を本出願にしなきゃいけないんですね。その本出願にする100件をやれる体制が、今の大学にあるか。この問題を解決しない限り、制度をいじるだけではこの問題は解決しないというのが、私の認識です。
 ちなみに、東北大学の知財本部は4名しかおりません。研究者は多分、1,000名以上いると思います。この方たちが、論文を年間1人3本ずつ書いたとして、3,000件の出願を4人の知財本部の体制でできるか。この体制をつくり直さない限り、仮出願をしても、制度を導入しても、実際にはうまくいかない。かえって、論文出願をして、その後始末ができないで、それがみんな捨てられてしまったら、それは何の意味もないじゃないかという危機感を、私は強く持っています。
 そういう意味で、この制度、埋もれてしまった発明を救済するという観点で議論するのは、これは仮出願の考え方は1つの論点であって、それだけで解決できるものではないということをしっかりと受け止めていただいて、この議論をしていただきたいというふうに思います。

○妹尾会長
 山本委員、お願いいたします。

○山本委員
 相澤先生、佐藤先生のご意見はごもっともで、出願フォーマットの自由化という点では、ぜひ、それに付随する補正ですとか、そういったところについての緩和をしていただければ、かなり解決すると思っております。
 実際、アメリカで例えばNIHとかどうなっているかというと、論文出願をした後に、研究者は論文を必ず発表します。そうすると、産業界がこれはおもしろいと言って、研究者のところにいっぱい来るんですね。こうしたおもしろいものについては、実は後で、弁理士や専門家の先生に相談をして、何とかこれを少しでも権利範囲の広い特許にしようかということでかなり努力しているというのが、米国の実態であったりするので、そういった意味では、すべてが救済できるということではないかもしれませんが、少なくともいいものを救済できる可能性は高くなると思っております。
 ここでは2点申し上げたいのですが、まず佐藤先生に、私は仮出願という言葉を使うことを取り下げておりますので、仮出願、仮出願と言わないでいただきたいというのが1点と、2点目は、論文出願とその体制の話は別の話だと認識していますので、この論文出願、要するに出願フォーマットの自由化というところについてはお認めいただきたいと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 佐藤委員、ございますか。

○佐藤委員
 1点、つけ加え、仮出願という制度じゃないとのことですが、アメリカの仮出願をイメージするから問題だということのようですけれども、ではそれにかわる制度をどう構築するんだということを議論しないと、この話って本当は進まないんだと思うんです。
 ちなみに、このペーパーでも、資料3の各国比較的な表がございます。3ページですけれども、アメリカとヨーロッパと日本を比較した表があって、欧州ではアメリカのような仮出願制度ではなくて、審査請求制度は後出しする、そういうフォーマットの形をとっているんですね。実は韓国も同じようにFTAで、アメリカと同じように仮出願制度を入れようとしたんですけれども、実はやはり制度がなじまないといって、このヨーロッパと同じスタイルになった。そういう意味では、この出願は、この論点については、今の大学の先生方の要望を踏まえた上で、しっかりと制度が本当にマッチングするような、また役に立つような形になるような制度設計をしっかり検討するという形が必要だというふうに思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今のご議論がありますけれども、よろしいですか。

○佐々木委員
 大学とか小さなベンチャーのところから論文でという議論がずっとあるんですけれども、もともと、それじゃ弁理士の先生等々を最初からもっと巻き込めないのかというところに頭を戻してみますと、お金高いよねという話もあったと思います。前回、いろいろ特許とか発明とか、これをどうしていくかというところのワンストップサービス的な議論もあったやに記憶しています。
 そういうところから検討していくと、これは弁護士先生、弁理士先生にはちょっと申しわけない言いようかもしれませんけれども、弁理士法、弁護士法のところにもちょっと踏み入らざるを得ないのかなと。例えばいろんなサービス等々をもうちょっと自由化すれば、弁理士資格、弁護士資格がなくても、もうちょっと大学のほうにサポートをしたい、できる、そういう業態も多分出てくるわけで、そこのところも、事によっては検討の対象にせざるを得ないのかなというふうに、私は思います。
 以上です。

○妹尾会長
 佐々木委員から今のようなご意見でありました。
 この論文による出願といいますか、これでちょっと混乱していますのは、何か仮出願という言葉のイメージが出てきてそのままになってしまっているところがあるので、これが最初にご提案された山本委員から、仮出願という言葉をやめようと。概念的にはそうではなくて、記載要件の緩和と、あるいは自由化ですね。フォーマットの自由化を含む記載要件の緩和というところで、まずは1つ、短期的に動かせるところを動かさないとではないかと、こういうご意見だったと思います。
 今、佐藤委員、佐々木委員にご議論いただいたように、制度の根幹だとか、あるいはほかの面とあわせないと、大学からの知をきちっとマイニングして、特許という形にするというふうにはならないんですが、まずはこの記載要件、それから自由化ですね。ここのところで短期的にまず手をつけるということについて、何かご意見があればと思うんですが。
 江幡委員。

○江幡委員
 この資料3を拝見していて少しわからなかったのですが、フォーマットの自由化という点は理解いたしましたが、そのときに、ヨーロッパの制度のような、特許法条約に基づいて請求の趣旨(クレーム)の記載がなくても出願日が確保できるという点も含めたフォーマットの自由化というご趣旨でおっしゃっているのかというところを確認させていただきたく思います。それが1点目です。
 あと、ややパターナリスティックに心配してしまうのは、やはり緊急避難的な措置とはいっても、どうしても論文による出願に流れていくのではないかということです。より安価で、より簡便な方法を大学が選ぶことによって、結果として、一、二カ月あればきちんとした出願ができるところを、その準備を怠って論文による出願に流れるということのないように、どのような方策が講じられるのかということも、あわせて考える必要があると思います。

○妹尾会長
 山本委員、お願いします。

○山本委員
 まず、出願日はご指摘のとおりで、その日に出願日が確定できることを想定しております。
 それと、安易に流れるのではないかというのは、第1回目のときに佐藤委員からもご指摘があって、それは本当にご指摘のとおりですが、アメリカではプロビジョナル、仮出願でやっているわけですけれども、実際には出願までに少しでも時間があれば、何とかクレームぐらいは入れるように努力をしていますし、私たちも現行では、論文出願は日本ではできないので、アメリカの仮出願を使うことがありますけれども、出願まで1日であっても何とかクレームぐらいは書こうという努力をしているのが実態です。別の議論として、私としては、この制度の切り替えと同時に、それこそ特許庁や弁理士会のほうで、大学に対して安易に論文だけで出願をするということを警戒するような勉強会だとか、そういったことを実施することは必要だと思います。また、全国の大学の知財本部やTLOが集まった大学技術移転協議会では、年1回実務者が全員が集まるような会議があるので、安易に論文で出願することはいかに危険かというようなことを議論する場を設けたいと思っております。
 私としても、そこは心配なところであるので、決して安易に提案しているわけではないということと、あとお金の点で、コスト削減で言っているわけでもないというのはご理解いただきたいところです。どうしても明日、論文発表をされてしまうというとき、日本では救えない現実がある。アメリカで仮出願をすれば、別に救えるんですけれども、全部が全部、アメリカで出していくのもいかがなものかというのがあるので、何とか日本で救済できるような、緊急避難できるような場を設けていただきたいという、そういう趣旨です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 このご議論、大分煮詰まってきたと思うんですが、全員が一致しているところは何かというと、大学において論文という知が山ほど出ているけれども、その中からきちっと特許という、あるいは知財というマイニングがちゃんとできていないから、そこについて何とかしたいね、その論文だけで流れ出る知をどうにかしたいということであります。
 先ほどから、これが薬にたとえれば、副作用があるんだという話と、使用法を間違えるといけないという話がかなり錯綜しているというふうに思います。今のような、これを入れたときに、やすきに流れるということがないようなヘッジをどうかけるか。これは4月以降のご議論で詰めていくということにさせていただけませんでしょうか。細部に入ってしまい、制度的な根幹に入ってしまいますと、せっかくの話が立ち消えになってしまうので、このフォーマットの自由化を含む記載要件の緩和ということは短期にすべきだということで、一応今回置いて、その詳細ないしはその副作用についてこうしたい、使用法を間違えることについてはこういうようなヘッジをかけたいということは、今後さらにご議論いただくということにさせていただきたいと思います。記載要件の緩和ということをセットにしないといけないという相澤委員からのご指摘も含めて検討していきたいというふうに思いますが、いかがなものでしょうか。もしよろしければ、次のダブルトラックへ移りたいと思います。
 ダブルトラックのほうは次のページから入っているんですが、7ページ以降です。2つのトラックで争えるけれども、一体どうだろうかということで、ご議論が随分、これもまた白熱したものでありました。整理をするとこういう対比表になるんだというのが8ページに入っております。9ページが、実際は件数が本当に少ないところでの今の話なので、もう少しきちっと件数その他について様子を見ないと、まだ始まったばかりのことなので、安易にまたハンドルを戻すということでもないのではないかというのが概ねかと思いますが、ご議論があればお願いしたいと思います。
 荒井委員、お願いいたします。

○荒井委員
 7ページに、グラフがございますが、ちょっとこれを遠くから見てみると、何を議論しているかというと、一生懸命に技術開発をして、それを一生懸命努力して特許を取る。特許を取って終わりじゃないわけで、特許を取って、実用化して、イノベーションを起こすというわけですが、そのときにそういうことがしやすくなるように、特許を取った人には独占権を与えますという権利として認めているわけですから、その権利の主張、せっかく一生懸命技術開発をして、特許を取っても、今起きていることは、じゃそれで人が侵害したといったときに、もう一度裁判所でも争いなさい、特許が有効かどうか。それから、特許庁でも有効かどうか争う。それも何度もやっているというのはそもそもおかしいんじゃないですか。
 どうしてこうなったかというと、実は特許庁のほうにも問題があって、今までは特許になっても本当にいい特許かどうかわかりませんよという、特許審査に対する不信感。それから、審判が時間がかかって、待っていられないという意味での不信感。両方あったからこうなったわけなので、国全体としては、本来なら特許庁に3,000人、技術者の集団がいるわけですから、そこがしっかり特許を審査して、そしてまた問題があることについては審判をプロとしてやるというのは、国全体としてはいいと思うので、裁判所のほうでは、どうしてもそれは法律的な専門家の人が数十人、二、三十人だと思いますが、やるわけですから、それは法律的な事項については裁判所がやるというのは、国全体としていいと思います。
 裁判所においても、技術的な特許が有効か無効かを議論していくのは、これは国全体として無駄なことと、権利者にしてみると、せっかく苦労して取った特許が全く行使ができない、価値のない特許だということになるわけで、そういうことをぜひ見直すべきだというのが私の意見です。
 したがいまして、8ページに書いてある、右側にある、問題ではないというのは、両方並べて、侵害したであろう人から見れば問題ないということなので、一生懸命苦労して特許を取った人からすると問題だらけということだと思います。
 その結果は何が起きているかというと、9ページにありますように、特許を取って、自分は勝つと思っていたらほとんど勝たないとか、それじゃ何のために特許を取ったかわからない状況になっているので、そういう技術開発を進めよう、それからそれをしっかりした特許にしてイノベーションに進めようという原点に返ってやって議論することが必要だと思います。
 その前提は、特許庁が審査をしっかりする、それから審判もしっかりする、そういうことについて、質を上げるだけではなくて、時間も短縮して、そういう裁判が遅延を起こさないようにするということをやるべきだと思います。
 ということで、特許庁のほうの努力と、それから裁判所と特許庁の機能をもう一度分けて、権利者にとって、そういう意味ではユーザー・イノベーションだと思うんですが、ユーザーにとって意味のある国の仕組みにしないといけない。
 これでどういうことが起きるかというと、結局権利者は日本の裁判所で争ってもだめだから、外国へ言っていこうという、特許裁判の空洞化が起きるわけですから、これはぜひ直していただくことが必要だと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今のご指摘の中で、大きいのは、この8ページの表の表題の書き方もちょっと問題かもしれませんね。2つここに混在していますね。ダブルトラックが問題であるという意見と、問題でないという意見と、今の制度は見ようによって、あるいは立場によって違うじゃないかという荒井委員のご指摘があります。だから、今見直すべきかという議論と、もう少し見ないと見直しがちゃんとできないじゃないかというご議論があるわけで、この両方がちょっと混在した書き方になっているので、そこを整理して考えたいというふうに思います。
 確かに、制度というのは問題だという人と問題でないという人は必ず出てくるわけですが、それを見直す時期であるかどうかというところがもう少し時間をかけないといけないよねというのが、前回もあったと思うんですが、これについて。
 では、相澤委員。

○相澤(英)委員
 基本的な問題として、日本の場合には他の民事訴訟に比べても勝訴率が低いということがあります。これは司法統計などを見れば明らかです。和解の話が出ているのですけれども、他の訴訟に比べて和解数が知的財産訴訟で高いかというと、少なくとも司法統計を見る限り出ていません。そういうことからすると、きちんと保護をするという姿勢を出す必要があるだろうと思います。その姿勢を示すために、無効の抗弁の廃止ということが一策になると思います。
 それから、9ページの表には、キルビー判決が拡大解釈されて、既に104条の3が施行されたのと同じような状況になってから後の統計しかありませんから、104条の3については、ミスリーディングな表であろうと思います。

○妹尾会長
 この表については、私も聞いたんですけれども、これは前の統計が正確にないんだそうですね。

○相澤(英)委員
 裁判所だけは集計されているのでしょうが。

○妹尾会長
 私も相澤委員と同じように疑念があったんですけれども、それがない。
 佐藤委員、いかがでしょうか。

○佐藤委員
 この問題に関しては、やはり先ほど相澤委員がおっしゃったところのキルビー判決がきっかけなんですけれども、キルビー判決では、裁判所と、これは荒井委員のほうのご意見とも重なるんですけれども、最高裁はちゃんと裁判所のあり方というのを考えて、特許庁の行政とすみわけをしっかりした形で、キルビー判決って書かれているんですね。明らかに無効な理由があるときは権利行使を認めないと。しかし、法律になったときに、この明らか要件を外せと、産業界の要求で外れたわけです。その結果、特許庁の審判の判断も、裁判所の判断も、全く同じ土俵になってしまった。したがって、まさにダブルトラックの状態になっているということが、この問題の出発点なんです。
 先ほど荒井委員がおっしゃられたように、やはり行政と司法との役割分担というのは、社会制度的にはしっかりとやるべきだというふうに思っていて、それが国家的に見れば、一番効率的な制度になるというふうに理解しております。そういう意味で、このダブルトラックの問題というのは、法律論的には、司法と行政の役割分担をこのままでいいのかという観点で議論する必要がある点だと思っています。
 ちなみに、この制度論で、僕は104条の3を廃止しろというほうではなくて、むしろ見直すべきだという立場でございますが、見直す点に関しては、既にもう荒井委員がお話しになりましたように、中小企業にとっては、もう特許は、それが企業を存続させる唯一の手段にもかかわらず、それを特許にして権利行使をしたら、裁判所で権利が無効になってしまう、そういう状態ではとても特許を信頼してビジネスができないという、ここが一番大きな問題だろうと思うんですね。その仕組みとしては、何もこのダブルトラックの問題だけではなくて、まさに荒井委員がおっしゃったように、特許庁の審査、また権利になるまでの間の本当の無効理由をきちんとスクーリング、できるだけできるような制度をつくるというような工夫をしていかない限り、この権利の安定化の問題は、ダブルトラックだけいじっただけでは解決できないという問題だというふうに思っています。
 ただし、我々弁理士として、実際にこの特許の侵害訴訟を扱っている立場からしますと、やはりこの104条の3ができてから権利が無効になるということが非常に強く、現場の感覚としてあって、そのためになかなか原告が権利行使しにくい、そういう環境になっていることは事実でございます。
 そういう意味では、やはり現状、我々の置かれている環境を踏まえた上で、もう一度この状況がいいのかということを検討する必要はあるというふうに、私は思っております。ここでは、もう少し時間をとって、経過を見てから議論すべきだというお話もございますけれども、やはり議論はすべきだというふうに思っております。
 以上です。

○大渕委員
 たしか高山参事官がご説明になったときに、前々回ですか、江幡委員が言われたのが非常に的確だと言われましたが、私もそう思います。そのご指摘のところがこの8ページの表に書いてあるかと思いますが、これには、非常に複雑な、いろいろ問題が混じっています。まず、特許というのは独占権という非常に強い法的保護が与えられているわけですが、それは当然のことながら、特許が付与されるための要件というのは法定されておりまして、そのような新規性、進歩性等の特許要件をきちんと満たした特許であればこそ、強い独占権が与えられるわけであります。逆に言いますと、最終的に、そのような特許要件が満たされていないと判断されるのであれば、むしろ、そもそも独占権を認めてはいけなかったということになってきます。ですので、このように、本来、むしろそもそも付与されてはいけない特許だったとしたならば、その独占権を肯定し、損害賠償や差止めを認めるのは、当然のことながら、むしろ法の趣旨に反することになってしまいます。この点だけは、最低限、きちんと押さえておく必要があると思っております。
 それから、統計云々の話も出ておりますが、これも繰り返しになりますけれども、侵害訴訟における特許の有効・無効の判断に関しまして、このキルビー最判以前には、今であれば無効の抗弁で処理するものが、公知部分除外説等という形でクレームを非常に限定的に解釈することによって、結局は無効の抗弁を認めたのと同じ帰結を導いていたために、このような無効判断の形はとっていないが、実質的な無効の判断というものについては、統計だけでそのあたりがなかなかとりにくいのです。実際、本当の理由は特許の無効なのですが、当時は侵害訴訟では特許無効の判断ができないとされていたために、クレームを通常の解釈手法によるもの以上に狭く解釈するなど、ほかの形で、結局は無効と同じ帰結を導いているということでありますので、そういうような特許無効の判断でない形で特許無効の実質的判断がされていたものが、いわば暗数としてあると思います。そういう点を総合的に考えると、キルビー最判以降、特許無効という形で表面化してきたから目立つようになっただけで、実質はあまり変わらないのではないかというのが、むしろ現場の感覚ではないかと思います。そういうところをきちっと押さえないと、そもそも、時期尚早云々という以前に、私の感覚では、議論の問題設定の焦点が必ずしも正しく定まらずに、統計とか数字などが一人歩きして、これは数字の恐ろしいところでありますけれども、いろいろ混乱しているところがあるのではないかというのが、まず、1点であります。
 それから、この表はなかなかうまくできていまして、ダブルトラックを見直すべきという8ページの左側の中に、ダブルトラックを見直すというとシングルトラックになるわけですが、このシングルトラック化についても、無効審判に一本化すべきという意見と、それから侵害訴訟に一本にするべきという意見との双方があるのであって、現在は、要するに侵害訴訟と無効審判とのダブルトラックになっているんですが、それをやめるとなったら、元に戻して無効審判に一本化すべきというのと、逆に、さらに先に進んで侵害訴訟に一本化すべきということと、どちらのシングルトラックであるかによって全く話が違ってくるのであります。ここだけ見るだけでも、そう簡単に論じられるものではない難しい問題があることがお分かりかと思います。それから、法律家以外の方からはあまり注目を集めないかもしれませんけれども、注に書いてある「蒸し返し」というのが、特許裁判の現場としては、こちらのほうが本当の問題であると思っております。会長のほうから、議論がわかりにくいから可視化してくださいということで、今回、高山参事官ががんばられて、わかりやすく整理していただいたんですけれども、整理すればするほど非常に複雑な問題だということがおわかりいただけるのではないかと思いますので、そこのところは複雑な問題であればあるほど、それをきちんと正しく問題設定して議論していくことが重要ではないかと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございました。

○相澤(英)委員
 もし勝訴率がキルビー以前も変わっていないとすれば、勝訴率が20%程度ということになります。勝訴率が20%程度ということ自体が大きな問題であると思います。

○妹尾会長
 江幡委員。

○江幡委員
 今、勝訴率の話も出ましたので、少しお話しさせていただきたいのですが、まず特許侵害訴訟というのは、例えば通常の交通事故に遭ったからお金を払えというケースとは全く違って、非常に微妙な技術的判断もありますし、かつ法律的な判断も含まれます。そういう意味では、勝負をかけるほうも必死で戦って、防禦するほうも必死で戦うと、そういう訴訟であります。
 その観点で、30%とか20%といった数字では、勝訴率が低いのではないかというご指摘がございましたけれども、一方で、当事者がお互いに企業であることが多いですので、和解で解決することが多く、その中では、相当程度、権利者側が実質的に勝っているケースもあるという点も忘れてはならないと思います。
 また、参考資料3の9ページの表には2008年までの統計が載っておりますけれども、私が最近、東京地裁の裁判官の講演で聞いたところによりますと、東京地裁では、2009年は36件の判決が出て、10件が認容され、27%の認容率であったということです。したがって、敗訴率で言うと73%ぐらいになっているということかと思います。したがって、さらにこの表の敗訴率の数字は下がっているのではないかということもご指摘したいと思います。
 本当に、特許庁が審査の段階ですべての無効理由を見つけて、登録を認めなければいいといっても、それはやはり審査時点で完全であるということはないのであって、訴訟になって、当事者が必死で先行技術を探すからこそ出てくる無効理由もあるということをお伝えしたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、少し議論を収束させたいんですけれども。渡部委員、お願いいたします。

○渡部委員
 収束するかどうかわからないんですが、ここで問われているのは、ダブルトラックを見直すべきかが問題ではないかということに関して、ダブルトラックは別として、何が問題かというとらえ方は、先ほど佐藤委員が言われたように、中小事業者とかそういう人たちが特許を信頼して事業ができないという問題を、ここが今の審査、審判、裁判という3つのプロセスで本当にそれが実現できる、期待できるような仕組みになっているのかどうかということだと思います。
 ダブルトラックを含めて、そういうことは問題でないという立場は、これはあり得ないと思います。現実にやはり信頼できないと思っているということはあると思うんですね。
 ただし、それがどこに原因があるのかとか、今制度の話とデータの話が混在しています。データの話に関しては、先ほども出ていましたけれども、これ裁判所のデータがはっきりしていないというのは相当問題だと思っていて、こんな大事なものを我々がわからないで議論をするというのは、非常にやっぱり困るんじゃないか。特にこの和解なんかのデータが、和解は実際はこちら、研究者は勝っているんだというのが出てきて、これは実際は検証可能な格好で出ていませんよね。こういうのは、はっきり言ってよくないと思います。
 なので、こういうのが出てくるのであれば、ちゃんとそういうデータ、ちゃんとここに出てきて、検証可能な形にして議論をすべきであります。それがないのであれば、経過を見てとかいうのもちょっとあり得ないと思います。それが1点です。
 それから、確かにこれ、裁判所だけの問題ではなくて、審査、審判、裁判が本当に三審制として、審判は準司法ですから、三審制としてちゃんと機能しているかどうかというところで見れば、これは当然裁判だけの問題ではないはずなので、有効だというものがひっくり返ったとしても、それは本当にひっくり返るのが正しいのかもしれない。そういう意味で、ここの問題を、今回はちょっと間に合わないと思いますが、三審制として本当に審査、審判、裁判が機能しているのかどうかということで、しっかり品質をとらえると。ユーザーの視点でどうかということをもう1回チェックするということをすべきではないかと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 私は、このご議論が大変盛んにされているので、議論自身を可視化しなくちゃいけないということで、可視化をしていただきました。先ほど大渕委員のご指摘もありますように、可視化すればするほどパンドラの箱は開いてしまったということが大変よくわかりました。
 今、渡部委員がおっしゃったように、データ等についてもまだ不十分でありますし、それからもう一方で、これを法務的な議論としてするのか。それから、これは競争力強化のための委員会ですから、当然のことながら、産業活性のためにこの法制度が有効であるかどうか、これは佐藤委員もご指摘されております。この観点から、もう1回見直しをしないと、今ここで結論というわけにはいかないように、私は思います。
 そこで、もう一度、今の問題設定のあり方自体も含めて、どういう課題にするかを、申しわけないんですけれども、次回までにもう一度、パンドラを整理させていただくと。最後に希望が残っていることを願いつつということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。今日の主たる議論のはずの目標数値に時間がいかなくなってしまってもいけないので、ここは引き取らせていただきたいというふうに思います。よろしくご理解いただきたいと思います。

○津村政務官
 ぜひこれから目標の話をしていただきたいんですが、その前に、先ほどの出願フォーマットの自由化の件で、その結論はもうそれで、もちろん結構なんですけれども、途中で出てきた佐藤先生のご発言が私は非常に響きました。実はつい先般、科学技術のほうで、別の議論の中で出てきた話と全く同じだなと思って、そのときの資料を今、取り寄せてもらったのがこれなんですね。この3枚紙ですけれども、これは何かといいますと、これは京都大学のiPS細胞の山中先生のプレゼン資料なんです。
 そのときの山中先生のご発言要旨をちょっと引用させていただきますと、知財と専門官、高度技術者などの研究支援人材についてというテーマで、日本は研究者の数は増えているが、研究者をサポートする研究支援スタッフの人材が、アメリカに比べて不足している。アメリカでは、Ph.Dを持っている人がそうしたスタッフとして研究者をサポートする体制ができているが、日本で博士課程の学生にそういう道を進めると、自分はもう将来だめだと言われたと感じて泣き出してしまうと。博士号を取って、教授への道を進むことがベストだと思っている。アメリカでは研究者も周りのスタッフも対等の関係で、日本ではそのような認識になっていない。現在の制度では、高度技術者や知財と専門官などを研究者(特認教員など)として採用しているが、教員は論文獲得研究費で評価されるため、そういう特認教員として採用された知財等の専門官は正当な評価、雇用条件を得ることができない。そういうことをおっしゃって、多分、先ほどの東北大学4人とかいう話と非常に同じ話なんだろうというふうに思うんです。
 今、この骨子案を見てまいりますと、10ページのあたりの下のほうには、既存の大学知財本部・TLOの再編、知財マネジメント人材の質的強化等により、産学連携機能を強化すると、多分これに読み込むことになっているんだろうとは思うんですが、もう一つピンと来ないということと、(中期)となっているので、ぜひ、やっぱり普通に考えて、天下の東北大学で知財の方が4人って、先ほどのお話、すごく象徴的な話だと思いますので、数字がなじむのかどうかは別として、もう少し、3年たったらその状態が明らかに解消されているようなことを、この文章の中に書き込むことを、ぜひお願いさせてください。

○高山参事官
 今、津村政務官からご指摘のあった点、そのすぐ下のところなんですが、10ページの一番下に、研究者が創造的研究活動に専念できる環境を実現するため、知的財産管理等の研究マネジメントや先端設備等の高度な技術支援にかかわる専門人材を育成、確保するということで、その中身を書き出したものを一応その下につけさせていただいております。

○津村政務官
 そうでしたね。そのとおりですね。後で検証可能なものにしていただくことと、あとできれば短期にしていただければと思います。ありがとうございました。

○妹尾会長
 今のご指摘がありましたところ、特にこの中でも短期にできることがあれば、ぜひ書き足したいと思いますが。

○佐藤委員
 これは前々から、いわゆる知的財産戦略が第3期に入ったときも、産学連携のあり方を抜本的に見直すというテーマが、昨年立てられたんですね。しかし、政権交代もあって、それが頓挫してしまっているというのが現実です。
 これはもう中期の問題ではなくて、短期の問題だと思います。切実な問題。今までの日本の知財戦略というのは、大学研究機関を基礎研究の開発現場として、そのシーズをさらに産業界に結びつけることで日本の競争力を強化するというモデルで来ていたはずなんです。しかし、それを支える現場がそうなっていないということが、今までこの7年間、非常に多くの投資をしながら成果に結びついてこない大きな原因だったわけです。
 確かにここ7年間の中には、知財本部ができ、TLOができ、さらにいろんなアドバイザーができて、いろんな仕掛けができたんですけれども、実際にはそれが力になっていないということは、前回、12月の本部会合で私、首相に申し上げたと思うんですね。ここもまさにそのとおりなので、ここをぜひとも現政権下のもとで短期に対応できるように、ぜひお願いしたい。
 私も今、東北大に4人と申し上げたのは、今、我々東北大の最先端現場の研究を弁理士がサポートするという、今プロジェクトが動いているんですね。それで、現実見ているんです。もう現場の知財本部の先生方から、もうとてもできないとこぼされているのが現状なので、これは中期問題ではなくて、即取り組んでいただきたいと、改めてお願い申し上げます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 相澤先生。

○相澤(益)委員
 私も佐藤先生と同じように、当初から産学連携、特に大学における知財の体制がもう危機状態であるということで申し上げているわけです。そのことが、10ページの下のほうのポツの初めのところに集約して書かれてはいるんですけれども、あまりにも集約されてしまったために、今のような具体的に何をどうするべきということが不明確になってしまった。むしろ、末端の現象と見られることがここに大きく取り上げられていて、本質のところをきちっと構築していないというふうに見えますので、ここはぜひ、今までも既に情報としては出しておりますので、それをきちっと整理して入れていただきたいというふうに思います。
 特に、11ページの1つ目のポツのところに書かれていることは、これは私はむしろミスリーディングであろうというふうに考えます。ここに産学連携活動に取り組む場合には、大学教員のその他業務を低減し、インセンティブにするという、これは非常にミスリーディングだと思います。この産学連携活動をするのは教員ではなく、今出てきた研究マネジメントとかあるいは知財の支援をする人、そういう人がこの業務をするべきであって、それを大学の教員がやろうとしているからひずみが起こっているわけです。ここのところ、非常にこれはミスリーディングなので、ここは全面的に改訂していただきたいというふうに思います。
 特にこの中に、共同研究費等を原資として博士課程の学生やポスドクを研究助手として活用する。これは非常に間違った、私は位置づけだと思います。むしろポスドク制度ができたのは、学生を研究労働力あるいは研究助手として使ってしまうような、この日本の状況を何とかしなければいけないというところがスタートであります。ですから、高度な研究環境で環境指導を受ける。そして、そこを積極的にして、研究者のすぐ一歩の手前のところにいる人がそういう場で経験を積んでいくわけです。ですから、プロジェクト推進の推進力のサーバントのような形で使うことは、日本の研究人材育成の根本的な欠陥であるというのが、むしろ認識されるべきことだと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。いわゆる研究室奴隷工場に対しての全面改革をしなくちゃいけないというお話だと思うんです。
 渡部委員、お願いいたします。

○渡部委員
 まさしくおっしゃるとおりで、現場の状況というのは1つはだけれども考えないといけないのは、科学技術コミュニティとしての研究現場と、それから管理をする大学法人との間でも摩擦が起きてしまっている状況がありますので、私、自分の紙には書いたんですけれども、研究現場側にリサーチアドミニストレーターを入れるというようなことで、先ほどの論文出願みたいなもののフォローをしていくというようなことが必要なのではないかというふうに思って、たまたまこれ、後で配られたものの最後にリサーチアドミニストレーターの話が書いてありましたけれども、そういうことをやって、ちゃんと価値の高いものを、先ほどの制度と組み合わせて出していく。そうしないと、もう中国の大学は、今、年間3万8,000件でどんどん特許が出ていて、日本の特許を出さない論文の改良発明がいっぱい向こうで出ていますよと。これはもう、すぐ対応しないといけない問題だということを、ちょっとつけ加えたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。産学連携の現場のほうの生々しい話ができて。
 出雲委員、お願いいたします。

○出雲委員
 これは相澤先生がおっしゃったとおり、11ページ目のところだけはちょっと申し上げたいんですけれども、産学連携活動を推進する際に、大学の先生に研究と教育の時間を減らして産学連携をしてくださいといって、先生が本当にそれをするなどということは全く考えられませんので、そうではなくて、ぜひ弁理士や弁護士の先生と、あと私は大企業ご出身の方が、キャリアとして産学連携本部にお迎えする、そういう事例みたいなものを増やしたり、文科省の産学連携コーディネーターの方がもっと大学をまたいで産学連携を推進するような活動に取り組んでいただきたいと。
 この文章の中では、大学発ベンチャーで中小企業が世界に通用する国際特許を出願する数値目標についてたくさん書かれているんですけれども、我々も大学発のベンチャー企業は、昔、中小企業挑戦支援法を、たしか平沼大臣のときだったと思いますけれども、1円でも株式会社をつくれるようになって、大学発ベンチャーを1,000社つくろうという大きな取り組みの中で、大学発ベンチャーをつくるのはいいことだと、国が推進しているので、私もそれに勇気づけられて、大学発ベンチャー、その1,000社のうちの1社をつくったわけですけれども、その本来の趣旨は、大学発ベンチャーを1,000社つくることではなくて、その1,000社つくった大学発ベンチャーから適切な競争力のある知財が生まれて、それが収益として還元されて、大学の研究開発がより活発にするサイクルが生まれるのが本旨であったはずなのに、大学発ベンチャーは、今、1,700社ぐらいあると思いますけれども、その次の目標として、つくった大学発ベンチャーが適切な産学連携推進活動の支援を受けて、その1,000社のベンチャー企業から、例えばですけれども、1,000件、競争力のある知的財産を発信、権利化するという新しい目標があると、なるほど、大学発ベンチャーもアカデミックインセンティブや出願フォーマットの自由化を受けて、適切な論文をどんどん知財にしていこうという活動が進んでいくと思いますので、大学発ベンチャーを1,000社つくって終わりなのではなくて、つくった大学発ベンチャーが次は収益を生む競争力のある知的財産を1,000件生むような、そういうチャレンジを掲げていただきたいというのが、1つございます。
 それと、もう1点だけなんですけれども、その出願フォーマットの自由化を行うと、大学の先生があまり意味のない、クレームの範囲もはっきりしないようなものを論文で努力を怠って、どんどん仮出願のような形で出してしまうのではないかというご懸念についてご指摘があったと思うんですけれども、私どもも共同研究をして、年間10件、15報とかペーパーを出させていただいています。ですけれども、この10報についてすべてこの出願フォーマットが自由化されたら、全部知財にしようとは考えていません。そのうち収益に近い、応用研究に近いものを、10件のうち例えば1件とか2件、この出願フォーマットの自由化で出させていただければ十分なのであって、それでしたら適切に産学連携本部の知的財産部にアドバイスいただいて、ご負担いただきながら、知財化を目指していきたいと。
 全部論文をずるして、出願フォーマットの自由化に合わせて知財化を目指しているのではなくて、産学連携の研究を実際にしている、それは大学発ベンチャーであっても大企業であっても同じだと思うんですけれども、例えば出願人が大学の先生だけではなくて、大学発ベンチャーであったり、共同研究先の企業と一緒に出しているものは、応用範囲が見込まれているものですので、そういったものについてはぜひ1,000件を目指して、その出願フォーマットの自由化の成功事例をつくっていきたいと思っておりますので、そういう安易にどんどん論文を仮出願するようなことは現場としても考えていないので、ぜひこれは短期で自由化と産学連携、その大学発ベンチャー1,000社つくった後の次の数値目標であったり、施策についても、この知的財産戦略本部の事務局でお考えいただければ大変ありがたいというふうに思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今、出雲委員が、出願要件の緩和のところにまた戻ってこられたので、ちょうど1周できたと思いますので、ここで政務官から大変強く要望されている目標設定のほうに話を、急遽移させていただきたいと思います。今の産学連携については、皆さんまだまだご意見があろうかと思います。私も大変意見を言いたいんですが、特に産学連携コーディネーターは徹底的に再教育すべきだという、私の議論もここで言いたいんですが、それを我慢して、次の議論に移らせていただきたいと思います。
 それでは、恐縮です。時間があと30分余りになってしまったんですが、一番今日の題目でありますものに移りたいと思います。
 資料1をごらんいただいて、総論としての現状認識と目標、その後に論点ごとの認識と目標、その他があります。それから、施策例と目標指標例という構成になっています。ゴシックで書かれているものと、それから明朝体で入っている目標指標例ということがあります。先ほど高山参事官からご説明があったと思いますけれども、この現状認識についてまず確認をしつつも、目標のほうに皆さん目を注いでいただきたいと思います。
 ただし、ちょっと成果イメージのところ、この四角い枠の中、これをちょっと見ていただきますが、これ、先ほど政務官も触れられていると思いますけれども、これ自体はもちろん、知財政策戦略だけでできることではないんですけれども、知財戦略が貢献できることは何かということを可視化しようと。そして、逃げ場がないように、きちっと背水の陣で取り組もうよと、こういうご指摘だったと思います。
 なので、この中で、燃料電池がいいのか電気自動車がいいのかとか、そういう議論は、今回、我々が議論すべきところではないので、ここはちょっと置いておいていただきたいと思います。むしろ、先ほどの施策その他がきちっと誘導されて達成できるような目標指標になっているかということをご議論いただきたいんですけれども、ここについて何かございましたらいかがでしょうか。
 まず大きい1番目のほう、企業との事業の話ですね、こちらからいきたいと思いますが。
 相澤委員、お願いいたします。

○相澤(益)委員
 1というのは4ページから始まるところでございますね。

○妹尾会長
 はい、そうです、4ページから始まるところです。よろしくお願いいたします。

○相澤(益)委員
 前回、私はここのページは、主体が何であるか、明確でないということを指摘いたしました。上の部分については相当工夫がされているのではないかと思いますが、本日の主題である目標設定との絡みで考えますと、ここから始まるところはすべてが主体が何であるかということが、依然としてわからない。ということは、先ほどの検証のしようがあるのかということにかかわると思います。
 特に、この(1)のところで始まっている文章のところは、全体を言っているので、ここは主体を明確に、この段階ではできないのかなとは思います。ただ、その下の施策例としての初めのポツのところ、このところには、標準ロードマップを含む競争力強化戦略をということが出ております。そして、それがさらに続いて、実行するというところまで出ておりますので、これは主体がどこなのかということが非常に明確じゃないというふうに思うんですね。
 ロードマップというのは、これは1つの作業プロセスですよね。ここのところに全体に(短期・中期)と書いてあるところがまたそれを混乱させているんですが、このロードマップは官民一体とはいっても、私は前回、知財戦略本部がこれを策定するのかどうかということは、どこかでこの表現上できないということなのかどうかというところをしていただきたいというふうに思います。

○妹尾会長
 相澤委員、ちょっとよろしいですか。私も相澤委員から前回ご指摘をいただいたので、事務局に相当強く申し上げたら、主体がきちっと書かれていないのは、すべてこれは立場は政府だということだそうなので、これは政府がつくる。ただ、問題は政府のどこの省庁がやるかというのは、4月以降に切り分けをすると、こういう解釈だということなんですが、それで事務局、よろしいですよね。

○高山参事官
 例えば、この特定戦略分野におけるということであれば、その特定戦略分野というのが成長戦略の議論の中等で決まると思います。その分野が決まれば、その分野を担当している省庁というところがございますので、そこの省庁が中心となって、官民一体となって戦略を策定すると。さらにそこを実行していくということになるんだというふうに理解をしております。

○妹尾会長
 ということで、特定に書いていない場合はすべて政府がやるという理解ということですね。その政府の中のどこの部署というのは4月以降の議論の中に全部ディテールが入ってくると、こういうことだそうです。

○相澤(益)委員
 そういたしますと、例えば今のロードマップは、全体、特定分野を特定して、そうしてその全体の戦略は特にないと。あとは各分野ごとに分散して行われるという、そういう理解ですか。

○妹尾会長
 今のはそういう理解になりますね。特定戦略分野自体をどう決めるかという、さらにメタレベルの戦略マップ自身はここではなくて、政府全体の成長戦略の中で決められるということかと思います。
 それでよろしいですね。

○津村政務官
 ここでの議論を排除するものじゃないと、私は思いますけれどもね。時間の制約もある中ではありますけれども。

○妹尾会長
 それでは、荒井委員、お願いいたします。

○荒井委員
 7ページでございますが、ここの模倣品・海賊版対策の2つ目のポツのところに農林水産物が書いてありまして、農林水産の関係、一生懸命みんなでアジアに輸出しようと、力を入れているので、ここに書いていただくのは非常に適切だと思います。
 これは、そのためにも、品種の保護、種苗法的なものがアジア全体に普及することが大事なわけですが、今、UPOVの91年条約に加盟しているのは、日本、韓国、シンガポール、ベトナムだけで、中国、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンとか、いろいろ日本が農産物を輸出しようとする国がまだ未加盟ですから、ぜひこれを推進して、農業関係者のご努力に報いたらいいんじゃないかと思います。
 そのため、具体的に目標指標例に、(ホ)として、東アジア植物品種保護フォーラムを積極的に推進すると。(例えば、UPOV91年条約加盟国4カ国→9カ国)とか、こういうような形で、日本の農産物がアジア中に普及するように、保護されるようにして、輸出が進むようにしたらいいんじゃないかというのが1点です。
 もう1点だけ、ちょっとすみませんが、冒頭の現状認識の関係で、非常によくまとめていただいていると思うんですが、さらにこの、こういうみんなで必死に議論している今、なぜ知財戦略かという、こういう考え方をもう少し書いていただいたらどうかというのが私の意見でして、知財戦略の背景として、国際競争力が低下しているという危機感をみんなで共有していることと、それを突破するためには、日本人の持っている発明とか創作についての、このすばらしい大きな潜在力を発揮して、知財を使って人類の進歩に貢献するという、こういう知財戦略のねらいとか思いをもうちょっと書いていただくといいのかなというお願いでございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ご指摘を早速反映させたいと思います。
 それでは、次に、西山委員。

○西山委員
 まず、数値目標の話に即して話をさせていただきますが、本委員会の位置づけというのは、成長戦略の下にそれをサポートする位置づけであるというふうに認識をしているんですが、それは間違っていないですよね。まず成長戦略があると。
 したがって、その成長戦略が掲げている分野というのがもう既にありますから、それをサポートするために知財がどうあるべきかということが多分論点で、先ほど妹尾会長は、どこの分野にということをまず排除してという話がありましたけれども、その分野を入れて、そこに知財戦略がどう入っていくべきかということこそ、まず議論すべきじゃないのかなというふうに思っています。
 さきに話がありましたスマートグリッドや電気自動車の分野において、どのような知財戦略、我が国が行っていけば国際競争に勝っていけるのかというような話が提示されたかと思うんですが、そういう観点から考えていって、数値目標等々を掲げていって、そこに知財戦略がどう役割を果たせるのか。例えばですけれども、私の提案としましては、参考資料2の11ページ、今回、前段で議論がありましたけれども、例えば産学技術移転に関して、数値目標としてまず見なければいけないのは、この実施量のこの33という数字だと思うんですね。1,000億円の研究費をかけて33億円の、言うならばリターンが得られましたと。米国では2,700億円投じて、1,870のリターンがありましたという理解で、もしも私の理解があっているならば、この率か絶対額を増やすために、例えばどういう施策を打っていくべきなのか、それは短期的なのか中期的なのかというふうに考えていくべきで、その33というのを1つ目標にして、それを分解していくような議論がもしもできれば、より一層早い数字の達成というのができるんだと思っていますので、ぜひそういうストラクチャーを1回、事務局の方に書いていただいて、そこで我々それぞれ委員が、ここの部分ではこういう提案ができると思いますという構造にしていただけると、より実のある数値目標の提示を出したり、施策というのは提案できるような気がいたしております。
 すみません、あくまでもアイディアですけれども。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 これは私がどう考えているかというと、それをこの場でやり始めると、もうとんでもない話になるし、それからある意味では、ブレークダウンしたものをすべてオープンにしてしまうことになるので、それはオープンになったら戦略とは言いませんから、それはこの場とはちょっと違う場ではないかというふうに思っているのが1つと、この特定する分野として決定する、スマートグリッド、燃料電池、電気自動車などについて、それ自身が適切であるかどうかというのをこの場で議論して、それが例えば特許の目標がどうだということは、これは極めて戦略的にやらなきゃいけない。公開でこういうところでやるものか、それから、それがこの今回と次回の2時間ずつの間でできるかどうか、これ極めて難しいことだと思うので、ただそういうふうにブレークダウンしなくちゃいけないという西山委員のお話は全くそうだと思いますので、ちょっとこの場とは別の場ではないかなというふうにも思います。例えば、それをブレークダウンして幾つとって、例えば佐々木委員のところで何件やってくださいみたいな話は、これは当然できませんので、ちょっとそこのところの進め方についてご理解をいただければと思います。

○佐々木委員
 今のお話にちょっと触発された感はあるんですけれども、ちょっと理論が、私自身わかりにくくなっているのは、一番最初のト書きのところで、やっぱり一番重要なのは、知を使う知のプラットホームをつくるというのが一番重要だろうなというふうに思っていて、例えばそれは、今、標準化戦略、知財戦略、いろいろありますけれども、こういうことを議論するいろんな研究所等もあると思いますが、それを1つにまとめて、常に競争優位性を今の日本の国情に合わせて研究していくような、それを民間にどんどんフィードバックできるような、そういうプラットホームをいつまでにつくりましょうとか、今政権中につくっていただきましょうというのは非常にわかりやすいんですが、そういうものと、かなり細かい数字、貿易収支が細かいかどうかわかりませんけれども、こういうものとが混在をしていて、ちょっとわかりにくくなってきているところに加えて、過去にいろいろな議論がかなりされてきていて、非常に長い議論としては、50年先の、これは安倍元政権下ですから、民主党とはちょっと違うんですけれども、クールアース50の中でかなりのロードマップを書いて、これ経産省さん主体でやってくださったと思うんですが、どういう技術を実現していきましょうというようなこともやってきていると思います。
 こういうものに対してどの辺で標準化ができるか、どういう標準化を持っていけばいいかというのを、かなり具体的にマッチングする過去の政策等もある中で、こういうものとの関係をどう考えたらいいかというのは、ちょっと私自身は、すみません、わからなくなってきているので、意見というよりは、もやっとしたことの発言で申しわけないです。質問に近いと思います。

○妹尾会長
 わかりました。
 久夛良木委員、お願いいたします。

○久夛良木委員
 長く企業にいた人間として、今、議論をお聞きして、疑問に思うことが1つあるんですね。スマートグリッドにしても、それから電気自動車にしても、テーマは何でもいいです。何かの領域を競争力強化のテーマに取り入れ、それを国がお決めになって、まずやるべきことは何かというと、パテントマッピングを絶対つくる必要があると思うんです。これは1年とかというレンジではなくて、それを例えば我々の世代、10年とか20年のレンジで大きな方向性とテーマを決めて、みんなで取り組むわけですから、当然そういったパテントマッピング策定が極めて重要となってくる。
 我が国と言ったときに、我が国だけで標準をつくって、それでアジアの国々で共有するなんていうことは多分もうあり得なくて、今後はすべてが世界標準になっていくと思う。世界標準をつくる中で動いているパテントマッピングを、いかに誰がメンテナンスをするか?
 そういったものを誰が引っ張るか?というのはとても大事。これは間違いなく政府が率先して策定し、牽引する領域だと思う。そして政府が何か決めたらあとは走るだけというんじゃなくて、どんどん世の中は時間と共に進化していきますから、その進化していく中で、パテントマッピングそのものも適応的に動かしていって、ある部分、これはねらい目だと、もしくは日本が強いというところにおいては徹底的に、とにかくそこに対して国全体、官民一体となってサポートするという体制が必要だと思うんですね。
 今日の前半の議論で、大学発の「知」。これはシーズのレベルではとても大事だし、京大の山中先生みたいにアージェントな分野もある。これは絶対強化し、何らかの方法でどんどん強化したいと思うんですが、この国が何が今一番弱いかというと、ベンチャーが全然立ち上がってこない。全然というのはちょっと言いすぎかもしれない。大学発としても1,600社もあるんですけれども、そういった意味では、例えばグーグルとか含めた、世界を慄然とさせるような大きなベンチャーが立ち上がってこない。これは理由はとても簡単で、今、既存の何十年も何百年もやっている企業の方が企業の中でやろうとしていて、これではなかなかスピードも追いつかないし、体もついていかないケースが多い。大学の先生は、どうしても自分のご専門のところをおやりになっていて、大きな事業的な取り組みはあまりお得意ではないかもしれない。
 要は、グーグルもそうだったし、アップルもそうであったように、何かやろうと考える若者が例え二、三人であって、若いかどうかは別にしても、そういったベンチャースピリッツを持っている人にはいいアイディアがあるんです。別に特許申請のお金を半分にしてくださいなんて、だれも本当は言っていなくて、実は本当に足らないのは何かというと、優秀な人材なんですね。垂直立ち上げをして、一気にそのアイデアをリアライズする優秀な人材が足らないんです。その人材は、例えばシリコンバレーだったら、スタンフォードだったりカルテックだったり、いろいろなところに人材の揺り籠があってすごく流動性がある。ところが、この国はそれがない。大企業にすごい研究者がいても、その研究者はなかなか出てこないし、知的財産の帰属をめぐってベンチャーになかなか参加できない。大学の先生なんて、お金もらったらあとは1年後に報告しますとのんびりしたことをおっしゃるケースが多い。
 ですから、ぜひ政府のほうでも、今回この議論を踏まえて考えてもらいたいのは、凄いアイディアを持っていて、これを育てたら、このパテントマップが埋まるどころか、世界的な競争力になるというベンチャーを助けるためには、大学から、それからもしくは企業から、本当にすごい人材がごく少数でもいいから集まる仕組み、それをサポートできる仕組みをぜひつくってほしいというのが、私の意見です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。

○岸委員
 今の久夛良木委員のご発言ともちょっと絡むと思うんですが、この資料1の12ページの(3)のオープン・イノベーションの対応を含め、イノベーションを加速するインフラを整備するという項目がありますが、この下に目標指標例で、オープン・イノベーションに対応した知的財産制度を構築すると書いてあるんですね。ただ、あまりにも何か表現が漠としていて、安易で、これ入れる意味が本当にあるのかなというのが私の実感で、もしこれを入れるとすると、私はこれまでの議論、あるいはこの一連の資料を見ていて、最も日本が足りないなというのは、知財をめぐるITの活用と、金融の取り組みじゃないかなと思っているんですね。
 これは私自身が取材した限りの話なんですが、アメリカではもう、例えば特許同士をライブオークションで取引するオーシャン・トモとか、あるいはイーライリリーから出たイノセンティブというような、ネット上で技術移転をしてしまう仕組み、あるいはナインシグマとか、これは何か日本法人もあるようですが、そういうのもできている。さらに、もっと言うと、インテレクチャル・ベンチャードというような投資ファンドを引いてきて、それを発明者に与えて、発明してもらって、特許を取ってライセンスして、キャピタリストに戻すみたいな、そういう彼らはインベンションキャピタルと呼んでいるんですが、そういうビジネスモデルさえもできている。
 そういうアメリカ発の、まさにグーグル、アップルであり、あるいはマイクロソフトなのかもしれない、そういう動きに対して、日本は何かほとんどインフラというものがゼロに等しいんじゃないかと、私はずっと思っておりまして、それに対して、じゃどういうインフラをつくったらいいのかというのは、実は私自身もアイディアが今のところありません。単にベンチャーキャピタリストを育てろとか、それに補助金をつけるとか、あるいはエンジェル税制を拡充せよみたいな議論だけでは、多分できない。何か1つインセンティブみたいなものを、IT、金融絡みの何かインフラをつくっていかないと、多分、地上戦で一生懸命わーわー戦っているのに、空からネットでぱっと、ITと金融で網をかぶせられて、みんな日本の知財がアメリカあるいは中国へ行っちゃう、そういう不安を感じております。
 1つだけ、実は民主党は、2000年6月、今からちょうど10年前に、21世紀の知財戦略を出したんですね。はばたけ、知的冒険者たちというタイトルをつけて。私はこれにちょっとかかわったので思い出深いんですが、10年ぶりにこれを見返して、どのくらい達成したかなと見たら、ほとんど達成しているんですね。知財基本法とか、知財戦略本部とか。まだ達成していないのが、憲法に知的財産権を書けというのと、もう一つ、あっと思ったのは、特許売買市場を創設せよと出ているんですね。これはちょっとプリミティブな表現で、単に知財をマッチングするだけじゃなくて、今やITと金融が絡んできちゃっている話ですが、そういう知財、私は知財仲介ビジネスと呼んでいるんですが、あるいは知財流通ビジネス、そういうものを日本につくっていかないと、インフラをつくっていかないと、結果的にやっぱりアメリカ、中国にみんな知財が逃げていっちゃう、そういう感じを持っておりまして、残念ながらアイディアがないんですが、ご議論の一つにしていただければと思います。

○妹尾会長
 佐藤委員。

○佐藤委員
 昨日、ベンチャー学会でこの議論をやっていまして、一番、何でベンチャーが日本は育たないんだという話ですけれども、やはり産総研にアメリカのファンドたちが来て、いろんなお話を聞くと、これだけいいシーズがあっていいネタがあるのに、何で事業をやらないんだと言われる。彼らはそういうことを平気で20億、30億金集めてきて、事業化を始める。そういう人たちが日本にいないということが、昨日、大きなテーマになったんです。
 それをどうやってつくるかと。先ほどのベンチャーキャピタルつくるという話で、ベンチャーキャピタルもたくさんできました。だけれども、実際には金が集まってこない。したがって動けない。だから、上場する企業も、今年は50社までいかない。そういう状況になっている。
 この状況を変えるのには何をすればいいかというのを、昨日、議論したわけですけれども、そのときに、今のやっぱり日本の金融なりベンチャーに対する風土というのが、結局リスクマネーを払ってでもやるという人たちが非常に少ない。したがって、銀行にいくら話しても金は来ないし、さらにエンジェルもそんなにないし、いくら税制やったってなかなかそういう人を金出す人がいないと。ここを何とか解決しないと、1人でいいシーズを持ってがんばれよと言われたって困りますよねというのが、出雲さんのお話だろうと思うんですね。
 それで、昨日議論していたのは、そういう風土が日本にできていない以上、当面はまず国がしっかり支えるというところから始めて、そういう人たちが生まれてくる仕組みをつくっていく必要があるんじゃないかという、昨日、議論していました。
 そんなことで、私はお金の問題が非常に大きいというふうに思っております。

○妹尾会長
 渡部委員。

○渡部委員
 数値目標に関してなんですけれども、評価方法とかそれから制度に関する国際標準の提案なんか、これはほとんど、あまり害はないと思いますので、非常にいいと思うんですが、一方、国際標準の提案件数なんかを全般的にかぶせるとなかなか難しい面があるんですが、そこでちょっとこれ全体を見て、もうちょっと研究開発戦略との何か結合があまりあらわれていないなと。多分、政府がコントローラブルなのは、研究開発プロジェクトを立てて、産学連携でやって、その結果を標準にするみたいなのほうは、よりコントローラブルだし、戦略の入れ込みができるはずなので、そっちのほうを何か数値目標にしていったらいいんじゃないかというのが1点です。
 それから、今ベンチャーの話が出ていますけれども、これもちょっと私は冒頭でも言ったかな、大学の特許とか知財、単独で持っているものは、私はベンチャー、中小企業優先でしかるべきだと思っています。これは大企業の方は、特許1件がどうのこうので不実施補償がどうのこうのなんてもうやめてくれと言われているんだから、むしろ大学の単独の知財は、ベンチャー、中小企業優先、これはアメリカと同じです。アメリカのような考え方をするということにして、大企業との連携は共同研究で国際標準になるようなプロジェクトをいかに速やかに効果的にやるかということの中で、共有特許なんかもうつくらないと。一方に譲渡するというような格好で、今もめているようなことを処理をいっぺんにするというのが、私の提案です。そっちの側の数値目標みたいなものを、中小、ベンチャー優先の側の数値目標みたいなものをつくってもいいのかなと思っています。
 以上です。

○妹尾会長
 渡部委員は大きく2つのご提案というふうに伺いたいと思います。
 山本委員。

○山本委員
 私もこの数値目標で、やっぱりコントローラブルとアンコントローラブルな部分があって、例えば産学連携、IMDランキング5位って、もちろん1位を目指すんですが、IMDの評価ってどういう評価指標かもわからないので、どうやったら5位に入れるのか、ちょっとよくわからないですね。こういうものは目標にしていただいても、何をがんばったらいいのかわからないというのが正直ございまして、それで調べればわかるのであればがんばりますけれども、指標がわからないというようなものはちょっと除外していただければと思っています。
 それと、ベンチャーの話は、先ほどのベンチャー優先ライセンスというのは、アメリカではもちろんあって、それはいいと思うんですけれども、この場で議論することではなくて、武田薬品の長谷川社長がおっしゃっていられるように、武田薬品がベンチャーに1億円出したら、それをエンジェル税制の対象にするというのは、お金の問題という意味ではものすごく解決されると思います。残念ながら、ベンチャーキャピタリストの方は、武田が1億出したというほうが、この技術が評価に値するかどうかよりも事実として大きくて、そのほうがお金が集まると。ただ、現在の話ですから、それを財務省が認めてくれるかどうかというのは大きいと思いますが、経済効果とすればすごく高いと思います。
 人の問題というのが実は一番難しい話で、ただそれはここの場の議論ではないのではないかと思っています。私は個人的には意見をいっぱい持っておりますが。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 ちなみに、アンコントローラブルな目標を入れてはいけないというのは、極めていい基準だと思いますので、それはぜひ入れさせてもらいたいと思います。ただ、IMDの詳細は、何を足し合わせればこういうふうに評価されるというのは、全部明示されています。
 高柳委員。

○高柳委員
 最初の、前にも申し上げたんですけれども、1番のところの技術貿易収支の0.4兆円を○○兆円というようなのが成果イメージとしてありますよね。その前に、世界で世界市場規模云々と。こういうものと並列されて、これが目標設定なのか成果イメージなのか、これは残るような形になっているんですけれども、これ、我々製造業からしますと、世界に物を売って何ぼと。世界市場で物をということであって、技術収入は、ライセンス収入はセカンドベスト、あるいはサードベスト、そういうさまざまなリソースとか問題で、物を売れないから技術をライセンスすると、こういうことが1つ。
 それから、我々の経営戦略としては、できるだけ他の技術をうまく取り入れて新しいものを出す。我々で言えば新薬を創生する。あるいは、競争力のある製品をつくるというのが経営の1つの目標なので、そのためにロイヤリティ、ライセンスを払うのは一向に構わないんです。しかし、技術収支が上向いたから世界市場で物が、シェアが伸びますよということではないと思います。そういう意味では、世界市場でシェア何%という各目標というか、結果イメージと技術収支が上がりました、両方追いかけろというのは、何か矛盾しているような気がいたします。
 それから、全体的にも、我が国の中小企業でも、自分の知をいかに活用して世界に進出する、もちろんそれは、ものすごく大切なんですけれども、この間、メルクのオープン・イノベーションの講演がありましたけれども、メルクでさえ、たかだか世界に比べれば1%の研究者だと。99%以上は、彼らとしてはエクスターナル・ラボだと。世界の知を取り入れて、それで自分たちをさらにブラッシュアップしていくと、こういう戦略が必要じゃないかなと。その知を使う、その知は、自分の知だけじゃなくて、他者の知とか、あるいはそれは国内であろうが国外であろうが、そういうセンスが必要じゃないかなという感じがいたします。
 それから、すみません、もう時間がないので、12ページのオープン・イノベーションの整理というところで、目標指標例の中に、35条の見直しの問題は何回も佐々木委員からもありましたし、私も申し上げましたけれども、経団連としても強く要望している問題でございますので、中期かもしれませんけれども、ぜひ入れていただけるようにお願いしたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 すみません、私のマネジメントが悪くて、あと時間が本当に少々になってしまいました。目標設定を議論するはずの今日でございましたので、目標の例で、これに直接的に触れるようなご議論を手短にしていただければ大変助かるんですが、いかがでしょうか。
 上條委員。

○上條委員
 標準化のところの専門家の育成の数値のところだけ、一言ご意見を申し上げたいと思います。
 こちらのほうで国際議長及び国際幹事は現在100人、ワーキングなどの主査は100人ということで、合計200人を交代できるように、人材を400人まで育成する、という数値目標自体は非常に具体的で、設定をするのがよろしいのではないかと、私も思います。
 ただ、この100人、100人という方の内訳に目を向けますと、実際、日本の1970年代後半から80年代、日本が非常に勢いのあった時代に中核をなしていらっしゃった人材が、長年にわたり現在に至ってまで、ここ20年、30年を標準化の業務に長年携われて、支えてこられたという事実がございます。ですから、2020年を想定しますと、大変恐縮ですが、その方々はご定年されていらっしゃることが考えられ、2020年までに、標準化のキャリアをしっかり積んだ力をつけた人材が育成されるためには、標準化人材育成における世代分布も非常に重要になると思います。従いまして、若手人材を増やすという点や、年代分布についても言及いただきたいということがございます。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 西山委員。

○西山委員
 ユーザー・イノベーションのところなんですが、これも数値目標に関して1つ提案なんですが、短期、中期は今後、また4月からの議論でさせていただくということにしたとしても、ユーザー・イノベーションの本質というのは、ベンチャーに至る前の企業家の育成だというふうに思っています。ですから、デジタルな、もしくはネット上で何かをつくって創発して、ビジネスにするに至った人間の数をどのぐらい育成できたか。そういった数値というのを、今これ仮置きですけれども、つくって、それの達成を目指すというのが、1つKPIとしては有用かなというふうに思っています。実質、デンマーク政府も今、それを目標にしていますので、参考事例は他国からも学べるかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 相澤委員。

○相澤(英)委員
 最初に、国内市場の大きな伸びが期待できないという、内需拡大にあきらめ的な記述はよくないと思います、ここは書き直して、国内市場を拡大するとともにというようなこと書き方にして、夢のあるにしていただきたいと思います。
 漠然たるところが多いというのは政務官ご指摘のとおりでありまして、例えば7ページのところにいろんな条約が出ているのですが、交渉途中のものでどうなるか、先ほどご指摘のとおり、他力本願なのでだめでしたという意味では抗弁にはなるものが多いのですけれども、荒井委員が言われたように、UPOV締約国数などの目標のほうがより具体的な目標になるのではないかと思います。
 FTAも交渉中なので、FTAに知財条項というのをどう盛り込んでいくかということは現実的な目標になると思います。
 農産物については、日本にないAOC制度をどうするかということもあると思います。
 率を目標にすると、分母も分子も大きくして、分子が大きくなるというのが本当の政策目標であっても、政策目標を率で掲げると、分母を小さくすると目標達成というになるので、まずいのではないかと思います。
 11ページで、相澤(益)委員がご指摘の点に関連するところですが、大学における営業秘密管理云々という記述があります。論文について仮出願というものを認めるべきだとすれば、論文を出すのを抑制するような記述は報告書としての一貫性を欠くものだと思います。世界に通用する論文発表を積極的に進めなければいけないと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 時間がないなので、どうしてもここでということがございますか。佐藤委員。

○佐藤委員
 私、ペーパー出していますので、一言だけ。資料3−1のほうをまず見てください。これは、前回から議論されています中小企業支援について、日本だけではなくて、中国、アメリカもやっているぞということをご指摘申し上げます。日本が逆にアメリカ、中国にすら遅れているということをしっかり受け止めて施策をとらないといけないということで、あと中身についてはごらんいただければと思います。
 それから、3−2のほうにつきましては、先ほど後半の明細書の記載要件について、非常に厳しすぎると。それがほかの国とバランスがとれていないということはもう既に申し上げましたけれども、その前にもう1点、1ページに書きました、資料3−2のほうですけれども、権利回復処置、これも世界中見ますと、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、中国、韓国、これらと比べても、非常に日本の特許制度の手続は厳格で、救済されない。こういう形では、日本の特許制度、知財制度がユーザーフレンドリーな形にならない。したがって、世界中の知財が日本に入ってこないと、極端な言い方をするとそうなるので、ぜひユーザーフレンドリーな形の制度構築見直しということをぜひやっていただきたいということを、今日はペーパー出しましたので、一言申し上げます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 まだまだご意見があろうかと思いますが、ちょうど時間になりましたので。今日わかったこととして、会長として3つの点を、最後に申し上げたいと思います。
 1つは、やっと皆さんのエンジンがかかってきたと。4回目にして、取りまとめの直前になってようやく皆さんがエンジンが温まってきたということで、大変頼もしい限りなんですが、実はそれは2つ目につながりまして、今回、3月末までに、全体の成長戦略とのスケジュールの関係で、骨子を出さなければいけないということがあります。骨子の部分と、それからディテールを書き込む今後の部分と、ぜひそこのところは少しご理解をいただきたいと思います。そうしないと、結局パンドラの箱を開けたままで、全部ぐちゃぐちゃになって、また結局ということになって何も進まないという、デッドロック状態に入ってしまいます。一歩一歩でも進めなければいけないので、ぜひそこの切り分けのところはご理解をいただきたいと思います。
 3点目は、しかしそうはいっても、今日のようにエンジンがかかってきて、皆さんの活発なご議論、大変ありがたかったと思いますので、徹夜続きの事務局の方々に、私がこれ以上申し上げるのは大変恐縮なんですが、次回取りまとめまでに、ぜひ委員の先生方の本当の思いをもう一つ酌み取っていただければというふうに思います。ただ思いだけではなくて、具体的なご意見をいただきたいというふうに思います。ああだね、こうだねという評論ではなく、ぜひ具体的なご意見と具体的な数値目標の案を提示していただけたら大変助かるというふうに思います。
 それでは、最後に政務官のほうから一言いただきたいと思います。お願いいたします。

○津村政務官
 今、妹尾会長からもお話がありましたが、これからのタイムスケジュールの一番のポイントを申し上げると、3月末に総理を初めとする本部会合を開きまして、まさに今日、皆さんにご議論いただいたものを、26日にもう1回バージョンアップしたもので議論していただいて、そこでの議論もさらに踏まえてバージョンアップして、これ自体を総理にご説明するという運びになっています。
 そして、そこからもまたタイトなんですが、5月いっぱいで成長戦略をきっちり、全体としてもまとめていこうという中で、知財も先ほど西山さんから、成長戦略のある意味ではサポートする側でもあるんですが、逆に言えば、成長戦略に盛り込んでいくという部分もあって、その相互作用を4月、5月ときっちりやっていきたいということもあるものですから、ぜひこの3月末は1つの中間報告なだけで、さらにその後、皆さんとの議論を続けさせていただきたいということでございます。
 そこで1つ、私がお詫びをしなければいけませんのは、来週の3月26日は私が全く参加できません。今、冒頭申し上げたように、そうは言いながら、しっかりまとめていかなければならないという中で、今日はできるだけ議論に参加できればと思ったんですが、言い残すようなんですけれども、次回もまだまだ修文ができるそうですから、今、エンジンがかかってきたというお話がありましたが、次回の2時間の最後のほうに出てきた議論も反映はできるということですから、ぜひまだまだ議論をしていただきたいということと、そこで3点、すみません、こだわらせてください。もう何度も重ねて言っていることではありますけれども、1つはやはり検証可能であること、これを確保してください。これは本当にこのペーパーの命にかかわるというふうに思っています。
 それから、2点目、これは先ほどのお話で解決をしているのかもしれませんが、やはり主体が明確であるべきというお話は全くそのとおりで、何も書いていなければ政府だと読めばいいというのは、そうかもしれませんけれども、何なら全部、政府はと書いてもいいですし、特に知財本部がやるべきことについては、これは知財本部が個々がやるんだということは、はっきりだれが読んでもわかるように書いていただきたい。事務方にそういう書き方をしていただいて、皆さんに来週チェックをしていただきたいというふうに思います。人ごとになってはいけないという意味です。
 それから、3点目ですけれども、これは初めて申し上げますが、この何とか等という役人言葉が随所に見られるわけで、それは広がっていく幅を持たせるのであればもちろんいいんですが、往々にして、「等」のほうで読み込めばやったことになるみたいなことがありますので、基本的にこの中で「等」という言葉はすべて除いていただければというふうに思います。もし残す場合は、そのことについて挙証責任を果たしていただきたいというか、なぜこの「等」が必要なのかということを具体的に教えていただきたいというふうに思います。たくさんのものがあるのであれば全部例示していただければ結構で、何のことかわからない、何とか等を何とか等するみたいなことは、全く意味がわからないので、これはほかの科学技術本部でもお願いしたことなんですが、知財本部においてもそういうペーパーに、事務方に来週までにまず、その「等」を切るだけですから、やっていただいて、それが妥当であるかどうかを皆さん、26日にチェックをしてください。
 次回、出てこない者がいろいろ言って申しわけありませんが、ぜひ最後までよろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。
 少し時間が延びましたが、最後に日程等について、事務局、確認をお願いいたします。

○高山参事官
 もう既に出ておりますが、来週の26日金曜日午後3時から、またこちら、同じ場所で開催する予定でございます。

○妹尾会長
 それでは、時間を過ぎて申しわけございませんでした。今日も本当に活発なご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。これで終了したいと思います。
 どうもありがとうございました。