第3回 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会 |
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○妹尾会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の第3回の会合を開催させていただきます。 本日は、ご多忙のところ朝早くからご参集いただき、まことにありがとうございます。 私は前回事情により欠席し、岸副会長に議事の進行をお願いしました。申しわけございません。きょうはまた私が議事進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 本日は、知的財産による競争力強化・国際標準化に関して、前々回、第1回目、それから第2回において各委員からご指摘をいただいた論点を踏まえて、より具体的な議論をしたいと思っております。 津村政務官が、国会日程が急遽入ったということで、きょうはご欠席なさるということであります。 それから、相澤益男委員は途中からご出席との連絡をいただいておりますし、相澤英孝委員と渡部俊也委員は所用のため途中でご退席というご予定だというふうに伺っております。 それから、本日は専門委員に加えて、私のほうからお二人のゲストをお呼びしております。日本電気の広崎副社長、それから東京大学の小川教授にご列席をいただきました。後ほど国際標準化に関して、我々の意識合わせをきちっとしたいというふうに思いますので、お二人からプレゼンテーションをいただこうと考えております。よろしいでしょうか。 それでは、「知的財産推進計画(仮称)」を骨子に盛り込むべき事項についてということで議論に入りたいと思います。 まず、資料全体の確認と前回の議論を踏まえて事務局が修正を行っております。その討議用資料についてまず説明を、それでは高山参事官のほうからよろしくお願いいたします。 ○高山参事官 それでは、私のほうからご説明をさせていただきます。 まず、冒頭すみません、おわびですが、委員名簿のところ、中村伊知哉委員のご所属の慶応義塾大学が、ちょっと間違ってプリントされております。申しわけありません。 それから次に、議事次第をごらんください。議事次第のところに配付資料について並べて書かせていただいております。まず資料1が本日の討議用の資料になります。それから資料2、広崎参考人のプレゼン用の資料でございます。それから、この資料2には別添もついてございます。資料3が小川参考人のプレゼン資料でございます。資料4、相澤英孝委員の提出資料でございます。資料5、江幡委員の提出資料であります。資料6、佐藤委員の提出資料であります。資料7、渡部委員の提出資料であります。それから資料8が本調査会の今後の予定について記載した紙でございます。それから参考資料1が前回、第2回における主な意見というものをまとめさせていただいた資料です。参考資料2というのが、横長のちょっと大きな紙ですが、こちらが論点整理の紙になっております。 資料については以上ですが、不足等ございませんでしょうか。よろしければご説明に入りたいと思います。 まず、参考資料2をごらんください。前回に比べて加えたところは、10枚目になります。ユーザー・イノベーションの現状という紙ですが、こちらに西山委員からご提出いただいた資料を少し反映させていただいております。それから一番最後、15枚目になりますが、作業中とさせていただいておりますけれども、妹尾委員長からご指示がありまして、知的財産人材育成についてちょっとまとめさせていただいております。 参考資料については以上です。 それから、資料1に戻っていただきたいと思います。 討議用資料、前回の議論の中で、グランドデザインをしっかり書くべきではないかというご指摘がありまして、1枚目の現状認識のところを少し厚めに書かせていただいております。1枚めくっていただきまして、下のほう、「目標」というところもございますが、こちらのほうも前回よりも少し内容を膨らませて書かせていただいております。 もう1枚めくっていただきまして、1.論点ですが、こちらのほう、戦略的な国際標準化、知的財産の活用によりグローバルな規模で事業に成功するという点でございますけれども、これについて認識と課題を幾つか、グランドデザインにつながるようにということで3点ほど書かせていただいた後、施策例をいろいろと並べております。まずは標準化ロードマップを含む官民合同戦略の策定というようなもの、ここについては課題解決型とか、実証実験型プロジェクトなどにおいて、研究開発と標準化を一体的に推進すべきではないかというような施策。それから、官民合同戦略をつくろうといったときに、その基盤の整備となるような、例えばフレームワークプログラムみたいなものを検討すべきではないかとか、それから現場での交渉スキルというようなものを身につけた技術交渉人材というようなものの育成が必要ではないかというような施策。これらの施策がきちっと遂行されているかどうかということを確認するための目標指標例というものを幾つかここには並べさせていただいております。 それから、(2)、日本の特徴とも言えます「安全・安心」というものを普及していくという観点の施策。 それから、(3)は国際知財システムを構築しようということで、ワークシェアリングの質と量の拡大というような施策。それから、1枚めくっていただきますと、特許制度の国際調和という観点のもの。それから、途上国の知財環境整備に関するもの。それから、前回の委員会でご指摘のありました模倣品・海賊版対策というものの施策もこちらに並べさせていただいております。 もう1枚めくっていただきますと、論点2であります。「我が国の優れた技術を活かした世界に通用する新規事業を創出しよう」というものであります。これについても4つほどの認識と課題をまとめさせていただいております。 もう1枚めくっていただきますと、具体的な施策の例です。中小企業の支援施策を充実していかなければいけないのではないかという施策。それから、ワンストップ相談窓口のような支援体制の整備のこと。それから普及啓発活動の強化。それから個人の「知」を活用していこうということで、ユーザー・イノベーションというものを促進していこうというような施策を並べさせていただいております。 もう1枚めくっていただきます。産学官共創ということで、要はイノベーションを達成しましょうという共通の目的に向かって、産学官がともにつくり出そうという、そういう場を構築しようというような施策。それから、大学等の産学連携力を向上させようというような施策。もう1枚めくっていただきますと、産学連携を促進する環境の整備というような施策。 それから、(3)です。下のほうですが、イノベーションを加速するインフラを整備しようということで、オープンイノベーションに対応した知財制度を構築しようというような施策。それからもう1枚めくっていただきまして、権利の安定性の向上、あるいは特許審査の運用改善というような施策を並べさせていただいております。 私のほうからは以上です。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。 ちょっと駆け足で恐縮でありますけれども、以上のように協議用の資料ができております。 ちょっと確認をしたいんですけれども、この専門調査会の今後の予定というのが資料8にありますけれども、今回は具体的な施策について討議すると。それから、その具体的な施策にどう取り組むかという意味での目標設定ですね、これは第4回、次回にしたいというふうに考えております。すなわち目標が先行してしまうといけないので、施策がまず先行し、それを遂行するための誘導的な目標設定をすると、こういうことなので、順番としてはきょうは施策そのものについての議論にしたいと、こういうふうに考えております。したがいまして、今の高山参事官が説明してくださった資料の中で、ゴシックで書かれている、太字ですね─これが中心で、明朝で細く書かれているのは、これはあくまで仮の目標、例えば、ここの目標について、いい、悪いはきょうの議論ではちょっとご勘弁いただきたい。もちろん変えたほうがいいということでしたら、後ほど事務局のほうに言っていただきたいというふうに思うんですけれども、ここの明朝体のところを云々というのは、ちょっときょうの討議からは少し外させていただくということでご理解をいただきたいと思います。3回、4回をそういうふうに進めた後に、5回目ですね、当初予備で皆さんの日程をおとりさせていただいておったので、そこを使わせていただいて大変恐縮なんですけれども、3月26日に第5回の会合を開催して、本専門調査会の取りまとめを行いたいと、こういうふうに考えております。 きょう皆さんのご意見を伺う前に、国際標準化とか、国際の知財のマネジメントが今一体どういう状況なんだということを少し意識合わせをしたいというふうに思いまして、国際的な視点に関する認識の共有という観点から、有識者にお二人お越しいただいております。それぞれ10分程度で、本当に短くて恐縮なんですけれども、プレゼンテーションしていただこうと思っています。先ほど申し上げたとおり、日本電気の広崎副社長、それから東京大学の小川先生であります。 それでは、まず最初に、早速なんですけれども、日本電気の広崎膨太郎副社長にお願いをしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それではよろしくお願いいたします。 ○広崎参考人 おはようございます。こういった貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。 私は今ご紹介いただきました日本電気の広崎ですが、きょうの資料に書かれておりますように、現在、経団連の中で知財委員会の企画会長を務めておりまして、この企画部会としての経団連の提言書をつい最近まとめたところであります。つい2日前に経団連の評議会が開かれまして、正式に承認されたということで、できたてのほやほやの資料をぜひこの場で皆様方にご説明させていただきたいということで、お時間をいただいております。 時間が限られておりますので、このプレゼン資料でご説明したいと思いますが、添付資料のほう、資料2の別添というほうがこの提言書になっておりまして、1ページ目に全体のエッセンス、エグゼクティブサマリーということで1枚にまとめております。具体的な文章化されたものはその後に出ておりますので、後ほどご参考にしていただければと思います。 それでは、早速、資料2に従って簡単にご説明したいと思います。 まず1ページ目でありますが、これはもう皆様方ご案内のとおり、我々を取り巻く環境が社会、経済、あるいは我々の資源・環境といったところで非常に難しい問題に直面していると。考え方、視点を変えてみますと、日本がある意味ではこういう課題に真っ先に突入しているというふうな見方もできるわけで、これを乗り切っていけば新たなイノベーションの種、牽引力が生まれるんじゃないかというふうに考えておりますが、中でも、2ページ目の経済のところを少し復習してみたいと思いますが、パーキャピタGDPで見ますと、ご案内のとおり、こういう構図になっております。2008年、2009年の見通しを入れると、先進国も若干下がってきておりますが、2000年以降のマクロトレンドというのは変わってございません。ここで言えることは、2000年前後で先進国は非常に停滞したんですが、その後、先進国、日本以外は新たな成長をしていると。それから一方で、下のほうで、発展途上国、新興国ですね。こういったところは大変なGDPの急成長を遂げているということで、ある意味ではグローバルな単一市場経済の環境、それからネットワーク化の環境の中で、新興国については低価格モデルで伸ばしていると。それから、先進国で伸びているところは、新たなビジネスモデル、これを構築して再度浮上していると。そういった中で我々が若干停滞しているというふうにも解釈できるのではないかと思います。 次のページですが、したがって、こういう客観状況を見据えた上で、我々産業界としては、やはり次の10年あるいは20年、日本が新たな競争の機軸を持って進まなければいけない、そういう大きな方向性からこの知財政策に対しても課題を整理していこうということで、機軸を据えようということを大きな論点にしました。一言で言いますと、イノベーション立国、あるいはさらにこれを具体的なイメージとして持った上で現在の課題を整理しようということで、今回思い切ってイノベーション・ハブを目指すという、こういう仮説を置いたときに、具体的にどういう論点が必要になるかといったことで今回の提言はまとめさせていただいております。したがって、従来の経団連の提言といいますと、各業界のいろいろな要求を列挙してまとめて政府にぶつけるといったことが多かったんですが、今回はこれをむしろイノベーション・ハブという具体的なあるべき姿を想定して、そこに向けて、民間は何をすべきかと、それから政府には何を期待すべきかという観点で大きな整理をしたというところが特徴になってございます。 次のページはもうご案内のとおりで、イノベーションについては世界各国大変なメガコンペティションになっておりまして、ヨーロッパのイノベーションスキル、これは非常にうまく設計されております。特にFP7ではプラットフォームとそれからJTIというイニシアティブ、これが非常にうまく組み合わさっているということと、それからもう一つ大きな特徴は、右下のほうでありますが、出口論に対する産業政策が非常にしっかり設計されているというところでございます。 次のページに、ではこういった客観情勢を踏まえて、このイノベーション・ハブ、どういう全体像をイメージするかということで、ちょっと複雑な絵が書いてございますが、この絵の真ん中にあるのが、日本の今後あるべき姿としての知の集積点といいますか、基盤、これを再構築していこうじゃないかと。そのために、その制度設計の一環として知財政策というのがどうあるべきかということを改めて考えようというふうに絵を書いたわけでありますが、この絵の細かいところはちょっと省略しますが、この真ん中の円から上のほうですね、基盤から上のほう、これが出口、産業としての出口ですね。それから、下のほうがこの基盤を強化するためのイノベーションの入り口というふうに、インプットというふうに考えていただければ結構であります。 我々の大きな論点としては、上のほうはやはり民間がみずからの力で努力していくべきところで、ただし、官の、国の支援、これがいろいろな意味で必要になってくるだろうと。民主導・官支援というのが上半分。下半分は、逆に国を挙げてこの知の基盤をきちっと再構築すると。そこに対して民の、現場のノウハウあるいは知恵、これをインプットしていくと。官主導・民支援というという形で、国全体としてイノベーション・ハブ構想というのをイメージしてみてはどうだろうかということで、この共通イメージのもとにこれまで業界で議論をしてきたということでございます。 その結果、このイノベーション・ハブ構想実現には3つの大きなポイントがあるだろうと。ここにありますように、(1)産業界のイニシアティブによる構想と。それから2番目に、政府による総合的なイノベーション政策の推進がやはり必要だろうと。特に入り口から、従来出口が薄かったんですけれども、出口の支援まで含めた一貫性のある総合政策、これを産業界としても要求すべきであろうと。それから、3点目が産官学合わせて内外の知が自然に集まってくるようなグラビティ、これをどう構築するかと。これも大きな論点であろうと思います。先ほども標準化の人材の話が例えばありましたけれども、こういう論点一つをとっても、日本に来たら日本にいろいろなメリットがあるというふうに、例えば東南アジアの優秀な人材が思ったとしますと、そういう人たちが将来、日本と連携してアジアの共通の標準化活動をするヒューマンリソースになり得るわけですね。そういったもろもろの意味で、グラビティをどう実現するかというのが3番目の論点だろうと。 こういう論点を考えたときに、これを知財の制度設計にどう反映させるのかということで、次のページに書いてございますように、ここでは4つの点に集約しております。守るべき権利をしっかり守るとともに、イノベーションを強化するということで、例えば「競争」と「協調」の使い分けを可能とするような制度設計でございますとか、最近国によって障害になるような制度がございまして、これに対して国家間で解決するような仕組みでございますとか、いろいろな形で政策提言をしてございますが、全体の政策提言を、次のページにございますように、入り口論と出口論というふうにマクロに分けて整理してございます。入り口については、解決の方向性としては、ちょっと細かい字で恐縮ですけれども、共同研究あるいは共同開発の促進、特に最近のように、例えばスマートグリッド等システムが非常に大きくなっていると。そういったときに異業種間でこのあたりの入り口を強化する。それから出口については、国内、それからグローバルと、その両方について出口をどう強化するかということで、大きな枠組みを設定しております。 最後に、標準化に関するところでありますが、10ページはこれまで言われております標準化の我が国の問題を整理したところでありますが、11ページに今後の標準化の推進方向ということで3点まとめてございます。1つは、先ほどお話ししましたように、課題が非常に輻輳化あるいは総合化しておりますので、ソリューション提供という視点から標準化活動を見直すということが必要だろうと。その中には、例えば認証システム等の構築、これも大変大きな競争力、あるいはリライアビリティと言いますか、これを確保するポイントになると。 それから、2点目が国際連携でありますが、特に今後、アジアが経済の主体になってくるということを考えますと、日本の強みを生かせるんじゃないかと。 それから、3点目が、昔から言われております人材であります。これについては従来以上に工夫していく必要があるのではないかなと。例えば資格等といったことも含めて工夫する必要があるのではないかと思います。 多少余談ですが、ヨーロッパはある意味では縦社会ではなくて、クラブ社会ですよね。そうしますと、例えば、あるときシーメンスで標準化を推進していたところ、次の時点ではノキアでやっていると、ほかの会社でやっているといったことが横社会で、もうそれができているんですね。それに対してどうしても我々東洋というのは縦社会ということがあるんですが、そういった習慣の違いを乗り越えるためには資格制度等といったものもあってもいいのではないかというふうに個人的には思っております。 最後にまとめでありますが、イノベーション立国に向けて、イノベーション立国というだけではなかなか大きな方針はまとまりませんので、思い切ってイノベーション・ハブという具体イメージを描いた上で何をすべきかという提言を今回まとめたということでございます。 以上であります。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。 イノベーション・ハブという新しいコンセプトで、その構成、その他についてのお話を伺いました。今伺った中だと、イノベーション・ハブの中でも官主導・民支援、民主導・官支援というふうに入り口・出口分けられていらっしゃると思います。具体的な施策とどう結びつくかというところなんですが、恐らく私が今拝見するところによりますと、阻害要因の制度的な排除というのが裏側に一方ではあって、もう一つのほうで、いわゆる貢献をするときの誘導ですね、制度的な誘導が何が必要かというところに関連してくるのかなというふうに伺っておりました。これについても後でご議論いただきたいと思います。 それでは、ちょっと時間の関係でまことに申しわけない、せわしないんですけれども、引き続いて東京大学の小川先生のほうからお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○小川参考人 承知しました。皆さんおはようございます。 今、広崎参考人のほうからいろいろお話を伺いましたが、特にマクロの話をいただいたと思うんですけれども、特に私のほうは広崎参考人の10ページ、11ページですね、この辺に焦点を当てまして、もう少し具体的にどんなことをやっているか、起きているかということをお話しします。 テーマは、広崎参考人もアジアとの連携とおっしゃいましたけれども、アジアとの連携は一緒になって国際標準をとるという、そういうのもあると思いますが、我々別の見方をしますと、アジアがこれから急成長していくわけですね。その成長を日本の雇用とか、経済成長に結びつけるために、国際標準というのはどういった使い方ができるのだろうかと、こんなことを念頭に置きながらお話しします。 10分しかないというふうに聞いたものですから、いっぱい資料を持ってきましたが、最初の10ページだけお話しします。国際標準化がつくるオープン国際分業の中の産業構造の中で、実は知的財産の役割が変わってしまったという話をまずお話しします。それから、1980年代から90年代にかけて欧米諸国は産業構造をがらっと変えましたけれども、結果的に彼らがその中でつくり出した標準化とか、ビジネスモデルというのは、結果的に中国やインドとか、そういうアジアの成長を彼らの中に取り込むような仕掛けになっている。これは後からわかったことですけれども、そういう話をします。3番目は、国際標準というのは分業型とか、オープン化という、そういう構造をつくりますので、知的財産の役割が20年前と変わってしまっているんだという話ですね。そういう意味で、我々は標準化とか、知財政策の再構築が必要じゃないかと、こんな話をいたします。 まず、2ページ目をめくっていただきまして、これは妹尾先生の本にもよく出ていますけれども、真ん中辺に液晶パネルとか、DVDプレイヤーがありますけれども、これは日本が圧倒的に知的財産をいっぱい持っているんですね。特許の数は圧倒的に多いと。しかしながら、大量普及すると見事に同じカーブを描いてシェアがどんどん落ちて競争力がなくなります。これはいろいろな産業に共通してあらわれますという図が書いてあります。 次のページは、実は今申し上げたDVDだの、液晶というのは、この図の真ん中辺にありますけれども、そうじゃなくて、最近省エネあるいは環境エネルギー分野で重要になっている太陽光発電とか、固体照明ですね。そういうものでも全く同じように左側のいわゆる垂直統合型というのですか、自前主義というのですか、こういう構造から、国際的なオープン分業型に転換していくと。この後ろには知財マネジメントとか、知財のあり方がものすごくかかわっているんだという話ですね。特に乗用車では、いろいろ言われておりますように、電気自動車になると右側に行くスピードがどんどん早くなるだろうと。それから、一番下にインフラ型の産業機械とか、環境エネルギー分野、これは今まで安泰だったんですけれども、実は、例えばスマートグリッドでも世界に何百という標準化団体がございますね。これはみんなデータ技術で構成されておりますので、今までの例からいくと、間違いなく右側のオープン分業型に転換すると。それはそのほうが市場が何十倍もばっと広がりますので、当然こういうことになりますね。 次のページをお願いします。 今はマクロな一般論でございますけれども、じゃそういう中で、ヨーロッパやアメリカの人ってどんなことをやったんだろうかという代表的な例として、有名なのはインテルの例でございますので、お話ししますと、この中で2つのことをちょっとこの絵で見ていただきたいんですが、インテルのこの点線で囲んだ部分、これは囲い込みと言うんですか、完全なブラックボックスになっていると。それから囲い込んだ点線の周りは完全なオープン標準になっていると、こういう二重構造になっていると。ですから、インテルがオープン、標準化と言うのは、実は自分の周りだけであって、自分の中身は一切標準化しない、オープンにしない、こういう構造になっています。一番この図の右上にありますけれども、例えばインテルが台湾とか、いろいろなところにライセンスをするときに、インテルの技術の範囲内で使うというのが契約の中に暗黙のうちに書かれていまして、それを外れるという、つまり改版するとか、進化させると、これは契約違反と言って、全部ビジネスをとめられると、こういう構造ですね。したがって、これは自動的にインテルが知財と契約を上手に使ってこの世界を独占していくようなメカニズムになっていると。右下には、例えばUSBのメモリもございますけれども、これはインテルはこの中に知的財産なんか一切ありませんので、この中でフォーラムをつくって、参加した人は知財を全部オープンにしなさいと、そういう構造ですね。これがアメリカで代表的な彼らのマネジメントですね。 次のページ、これはもう少し別な視点で申しますと、パソコンの左側にはバリュー・チェーンが書いていまして、上はキーボードとディスプレイ、一番下はコンポートまで、いろいろなバリュー・チェーンがあるわけですけれども、その中のプロセッサーチップセットという特定の領域に彼らが準拠し、ここに知的財産を独占する。それから、ここで技術の改版ですね、進化させている権利を独占している、こういう構造になっています。したがって、一番上のほうにも赤で書きましたけれども、技術とか、特許の数・質というのは必要条件であって十分条件ではない。十分条件というのは契約によって、その技術を進化させていく権利ですね。これをオープンの市場で握ると。これによってオープン市場を完全に支配すると。どういう支配構造になったかは後の付録に書いておりますので、後でごらんください。 今のはアメリカの例ですけれども、このアメリカの例は現在の中国市場とか、アジア市場、至るところでこのモデルが全部行われています。日本には非常に少ないですけれども。 右下に6ページ目と書いてあるのは、これはヨーロッパの携帯電話の例ですが、携帯電話でオープン化とか、標準化と言っているのは左下のハンドセットのところですね。ところが、携帯電話システムはその上に、真ん中辺に黄色で書きましたけれども、基地局、いわゆるベースステーションがありまして、そこから交換機、ゲートウェイを通して東京から大阪、こうなるわけですが、彼らがオープンと言っているのは左下だけですね。ここは携帯電話の中身も外も全部オープンだと。実は欧州方式の携帯電話システムの規格書には真ん中の基地局にはページ数が1ページもありません。次のページを参考までに持ってきました。これを見ていただきたいんですが、この表の左上のほうに無線基地局とか、基地局制御装置というのがありますね。ここのページ数は1ページもありません。この図はヨーロッパGSM携帯電話方式のページ数6,374ページで構成されていますけれども、そのページ数分析です。つまり1つ前のページに戻っていただいて、真ん中の基地局が書いてあるところですね。ここは完全にオープンにされていないということですね。これはヨーロッパのインフラ側ですね。つまり自分のインフラのところは全部オープンにしないで、自分のインフラとつながるところだけをオープンにしたと、こういう構造になっている。これはインテルと同じだというのはおわかりですね、構造は。オープンの中に必ずこういうところをつくっているということですね。 次をお願いします。 今の話は、携帯電話だけで済んでいるんならいいんですけれども、左側は今申し上げた携帯電話の例ですが、実は右側は今ヨーロッパで標準化が進められている電気自動車でも全く同じ構造でいろいろな提案がされています。つまり電気自動車にとっては、いわゆる電気自動車、一番右下にありますけれども、これは携帯電話の端末みたいなものでして、そこにDC電源でチャージしていくわけですね。このチャージスポットのところが、携帯電話で言えば左側のベースステーションに相当するもの。ここにいろいろなサービスが全部集まるわけですね。その上のほうにグーグルがいたり、ノキアがいたり、あるいはIBMがいたりと、こういう構造になりますね。ですから、彼らはヨーロッパの人たちは同じような勝ちパターンをどんどんやってくると、こういう構造になっています。 次をお願いします。 そういうことで、彼らが知財でどういうことをやっているんだろうかというと、国際標準化と知財の関係ですけれども、3つほど挙げられると思います。4つかな。一番上は、当然のことながら標準化の中に知財を入れます、これはそうですね。標準化して、例えば携帯電話ですと、ある特定のレイヤーに知財を入れ込むわけですけれども、それで標準化して大量普及しますと、それと互換性のないもの、つまり入れた技術と互換性のないものというのは普及しなくなってくると。したがって、標準化というのは自分のテクノロジーを大量普及して、ネットワーク外部性を使って、そのほかのテクノロジーが入れない構造をつくる、こういう構造になります。ですから、非互換のテクノロジーを徹底して排除するということになりますね。こういうことですから、日本のドコモが3D、4Dと幾ら言っても絶対勝てないという、こういう構造なんです。 2番目は、そこで重要なことは、実は契約だと思うんですけれども、デッド・コピーは認めるんですね。しかしリバース・エンジニアリングは絶対に認めないと。これは日本と、NECさんとインテルのプロセッサーのいろいろな問題も、それからインターネットの中のシスコ・システムと日本の企業とか、こういうのはみんなデッド・コピーか、リバース・エンジニアリングか、これですべてあらわされていますね。日本とアメリカのメーンフレームのOSの問題も全く同じですね。つまり彼らは徹底してリバース・エンジニアリングは認めない、これによって独占体制を築いていく、こういうことですね。 そういうことがあって、3番目として、いろいろなことをやるわけですけれども、みんなに使わせるところにもどんどん特許をいっぱい出します。自分のところだけに特許を出すんじゃなくて、使わせるところにどんどん特許を出します。それによってオープン環境を支配していく、こういうメカニズムをやる、こういうことです。 次をお願いします。 次は、日本がなぜ韓国・台湾に勝てないのか。例えばDVDとか、いろいろなことで日本がいっぱい特許を持つ、ほぼ九十何%みんな持つわけですけれども、何で勝てないかと。標準化になりますと、パテントプールになって、パテントプールの中でプロセスが始まりますね。したがって、差し止め訴訟がなかなか難しいことになるわけですけれども、この絵はDVDの例で、例えば部品コスト、これは中も外もみんなオープン化されますから、パソコンと同じようで、だれもがみんな部品を買ってきてつくれると。同じように、日本も、韓国も、台湾も、同じ中国でつくりますから、製造コストって余り変わらないと。何が違うかというと、一生懸命になって研究開発するための売り上げ、いわゆるオーバーヘッドですね、これが日本が圧倒的に多いんですけれども、特許をいっぱい持っていますから、黄色で記されたところの知財コストというのが低いと。ところが、例えば韓国はDVDの中で必須特許って2%ぐらいしかないんですね。だから、ロイヤリティをみんな払わなきゃいけないわけですけれども、ロイヤリティとオーバーヘッドを全部足しても、日本のほうが圧倒的に高くなる、こういうことですね。つまり技術が国際標準化され、分業化されると。それによってだれもがテクノロジーを使えるようになると。こうなったときには勝負はテクノロジーで決まるのではないと、こういうことですね。こんなことが、実は標準化とか、デジタル化とか、オープン化とか、こういう状況になったこの15年で生まれたと。だから、特許を幾ら取っても、コストダウン効果はたった3%しかないと、こういうことになります。だから特許の数じゃないということですね。 次をお願いします。 これで最後ですけれども、ですから国際標準と知財マネジメントということを考えるとき、やっぱり国際標準化というのは国・企業のイノベーションの成果を日本のイノベーション投資の成果を大量普及させる経営ツールであると、これはそうだと思うんですね。ただ問題は、やっぱり大量普及するんだけれども、知財の使い方あるいは契約とか、いろいろなそういうものを使ってアジアに、オープン化する、標準化するというのはみんなに使わせることですから─使わせることによって、ヨーロッパの人が中国にみんな携帯電話をつくらせるように、そういうふうにするんだけれども、結果的にアジアの人がどんどん使って大量生産すると、ヨーロッパの企業の収益に貢献すると、そういうような構造をやっぱりつくらなきゃいけない。きょうは事例をお話ししませんけれども、日本にはそういう例がいっぱいあります。これは赤字で書きましたけれども、三菱化学が1グラム1円もしないようなものを恐らく何万円、初期のころは100万円で売ったそうですけれども、圧倒的に知財とテクノロジーを上手に使いまして勝ちパターンをつくっていると。 それから、下のほうに、知財というのは量や質ではないと、使い方を重視しないとどうしようもないんだと、そういうことなんですね。それはきょうはインテルとノキアの例とかでお話ししましたけれども、シスコ・システムにしろ、グーグルにしろ、ありとあらゆるところで、数ではない、使い方である、こういうことです。こういうことをやらないと、幾ら特許をいっぱい取ったって、日本は絶対競争力強化にならない、こういうことでございます。これが私が見てきた現実の姿でございます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 短い中で手際よくご説明をいただきました。詳しくはこの後の資料を読んでいただくということになると思います。 今、小川参考人のほうからお話があったのは、知財を目的にしてもいけないし、標準を目的にしてもいけないと。標準あるいは知財は競争力のいわばツールであるということなので、その使い方を工夫しない限り幾ら数を取ったってだめだという、今の世界の先端の認識だというふうに伺ったかと思います。 それでは、早速ですけれども、皆さんからの意見を伺ってまいりたいと思います。前回同様、資料1の整理に応じていくんですが、その前にまず、今の参考人お二人の話に関連するところで何かご意見があればいかがでしょうか。 渡部委員、いかがですか。 ○渡部委員 すいません、前回も欠席で、きょうも途中で退席させていただきますので、ちょっと先に私が配付している資料で、今の話に関係することで言いますと、資料7の6ページなんですけれども、今、知財が標準化あるいはパテントプールの中で余り競争力につながっていないという話がありましたけれども、DVDのパテントプールに関しまして、私のほうで少し分析をしていまして、パテントプールをやりますと、中のシェアが大切なので、左の絵は、青は親出願で、どんどん分割して数をふやすということを皆さんやられるわけですけれども、やっぱりポイントなのはこの親出願で、どんな技術開発をすれば標準技術になるかというところなんですが、それについては右側の絵で、パイオニア開発が確かにきくんですけれども、他社技術を参考にするとか、仲間づくりとか、こういうのが非常に効果的という中で、日本企業は次のページなんですが、この次のページの横軸、縦軸が右上に行けば行くほどパイオニア的開発で、自社の技術、自前主義、左下に行けば行くほど他社技術に依存して、改良発明と。明らかに日本企業というのは非常に質の高いパイオニア発明をもとにパテントプールの中に引き込んできているという構造様式でありまして、これをどう見るかなんですが、先ほどの小川参考人の話を含めていって、これらが結局余り役に立っていないという。パテントプールってシェアを圧縮して、これでどんどん稼いでもらえば非常にいいわけですけれども、結果的にはそうなっていない。プールの中に入りますと、1件はもう1件でしかないということで、コストをかけないでここに入れたほうがいいということになると、実は韓国メーカーのほうが合理的かもしれない。 こういう仕組みが都合が悪ければ制度を変えないといけないわけです。今まではどっちかというと、プールを圧縮して、ロイヤリティを払わない方向に圧縮していたんですけれども、本当にそういう競争という意味では、それがよかったのかどうかとか、もっと質を見て配分を決めたほうがいいとか、そういうようなこともあるのではないかということを考えさせられます。 これに限らず、先ほどの広崎参考人の中で制度提案の重要性というのがありましたけれども、やっぱり制度のイニシアティブをとって提案するというのは非常に重要でありまして、これは何年か前にドイツから特許の価値の評価の基準を国際標準に提案してきたことがありましたけれども、こういうようなものをむしろ日本からどんどん制度提案して、日本の競争力を、皆さんがほかの国も合意できるような形で高めるような提案をどんどんしていくということが重要ではないかということであります。 次の8ページは、実はオープンというのはクローズ─クローズというか、訴訟みたいな非常にハードな部分と必ず組み合わせてきますので、そういうところのやっぱり力をつけることということが必要だということでありまして、これはアメリカの代理人からLike moths to flameにならないようにということを本当に言われたことがあって、これから新興国に進出する企業の方にはこういうところの視野も必要ではないかというふうに思います。 これは標準関係なんですけれども、ちょっと1点だけ、この資料の前半は前回議論があったと伺っていますけれども、大学の発明の仮出願制度で、論文出願制度の必要性ということに関する背景を書いてございますので、参考にしていただければと思いますが、これはちょっと決して誤解していただきたくないのは、論文出願制度というのはいい加減に出願できるという制度では絶対まずいわけで、どちらかというと私は特許の質を全体的に上げることのイニシアティブをとろうというのが意見でありまして、これも現場でともかく毎日毎日出てくるような発明を何とかこのオプションを使っていいものにしていくという、そういう大学側あるいは現場側のマネジャーの努力が前提となっております。そういう意味で、これは質の高いものをやっていただくということでありますので、そこは一部、何かこれで楽ができるとかという話もあると聞いていますが、それは全く間違いという、提案の趣旨はそういうことでございます。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 今、渡部委員から出ましたのは2点ありまして、1つは参考人のお二人のお話を受けて、積極的に制度提案をする形でイニシアティブをとっていくべきではないかということで、これは全くそうだと思います。問題はどういう形の制度提案をどういうふうにする、またその人材がどれだけ育っているかということとつながってくるかと思います。 2番目におっしゃられたのは、前回は私欠席してしまったんですが、大分ご議論があったというふうに伺っています。論文による仮出願制度の話だというふうに伺っておりますけれども、これも後で議論が出るかもしれませんけれども、現在、私が事務局のほうにお願いをしているのは、この議論が随分熱心なんですが、かなり錯綜している部分もあるので、可視化できるような書類をつくってほしいということをお願いしています。とにかく目に見える形にならないと、どうしても空中戦になっちゃいますので、このことについての渡部委員のご懸念、その他もありますし、あるいはいろいろなご主張もあると思いますけれども、それを今、事務局で可視化するような書類をつくっていただいているということでご理解をいただきたいと思います。 それでは、資料1の整理に応じて、各論点を区切って議論を進めたいと思うんですが…… ○相澤(英)委員 会長、よろしいですか、一言だけ。退席いたしますので。 ○妹尾会長 そうか、相澤委員もそうですね。 ○相澤(英)委員 今、小川参考人からお話をいただいた中で、支配的事業者に関わる競争政策を忘れてはならないと思います。日本では、支配的事業者であるかどうかにかかわらず、ライセンス契約を制限するというようなことがあります。しかし、競争政策上問題なのは、支配的事業者の行為なので、技術開発を推進するためにも、支配的事業の行為が競争に与える影響を考える必要があると思います。 それから、全体について、先ほどの統計で出てきましたように、日本は、世界で3番目のマーケットです。日本のマーケットが期待できないから外へ、外へという議論ではなくて、日本のマーケットにも目を向けていただいたほうがいいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 今の相澤委員のお話も2点ありました。支配的事業者についてのことの観点をどう織り込むかということ、それから日本マーケット自体ですね、それ自身の内需についての視点を持つべきだというご意見でした。どうもありがとうございました。 それでは、資料1に従ってご議論をいただきたいんですけれども、資料は総論として現状認識、論点ごとの認識と課題、そして個別施策と目標指標例という構成になっているのは、皆さんおかわりになったと思います。目標指標例はきょうは議論しないということで、ご理解いただきたいと思います。 総論としての現状認識、論点ごとの認識と課題については、これは私としても大きな違和感はそんなにないと。ということは小さな違和感はあるということでございますけれども、それは後で申し上げるとして、全体としてもう少し大胆にモデルを変えたいなというのが私の意向ではありますけれども、いろいろな事情がありますので、このぐらいかなというふうには思っております。 ただ1点、私かなり強烈に事務局のほうにお願いをしていた文章の直しがあります。それは何かというと、今回は競争力強化と言うんですけれども、国際標準化だとか、知財が自己目的にならないような表現にしてほしいということを繰り返しお願いしています。なぜならば知的財産権が目的ではないですし、標準の数そのものが目的ではないですね。重要なことは競争力を強化することですから、競争力を強化するという目的は外れて、手段が自己目的化するかのようにとらえられる文章はできるだけやめてくれと、できるだけ直してくれというふうにお願いをしてあります。全部直っているかどうかは別なんですけれども、総論的にはそういうような理解をしていただいていると、こういうふうに思います。 本日は個別施策を中心に議論していただくので、総論等のことに関して私の意見に賛成・反対も含めて何かご意見のある方は後で事務局にメールその他で言っていただければと思います。 それでは最初に、資料1の1をごらんいただきたいと思います。先ほどのプレゼンテーション、お二人の参考人の方のご意見も踏まえながら、戦略的な国際標準化、知財の活用によるグローバルな規模での事業展開という論点に関して具体的な施策を中心に、何か皆様のほうからご意見がありましたらぜひお願いをしたいと思うんですが、いかがでしょうか。ご発言の方は挙手をお願いできますか。 皆さんご意見がないようなので、参考人からの意見をお願いします。 ○広崎参考人 意見というか、ちょうどタイミングよくと言いますか、きょうの日経の1面トップに外国投資がいよいよ日本撤退といったことで、ミシュランも日本の生産基地をやめるとか、研究開発の撤退であるとか。対前年度比で、外資の対日本投資が実に55.7%減と、劇的な減少なんですね。それと、科学技術基本計画のようやく1,000億の配分が決まったと。iPS細胞で山中教授に50億ほか、決まりました。これもある意味では入り口政策は、仕分けはありましたけれども、何とか国として頑張っていると。ところが、肝心かなめの産業基盤、競争基盤と言いますかね、最後に経済価値を生み出すはずの産業基盤というところで外資がいよいよ日本を逃げ始めていると。一時的な現象かもしれないですけどね。非常に象徴的な記事がけさの日経1面を飾っておったということをちょっと情報としてご提供したいと。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 確かにけさの日経の、対比的に見ると今のような理解があるなということであります。 荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 4ページ、今の施策例、ここに具体的に並んでいるわけですが、今の広崎参考人のご意見にも関係すると思いますが、例えば大学とか、いろいろ国の予算で科学技術開発、研究開発を進める際に、知的財産をどう使うかとか、あるいは戦略、標準化をどうするかとか、あるいはそれでやるための予算と体制ができていない点、そこへの十分な配分がなされていない点が一般的に弱いと思います。特に国のいろいろな研究開発基金においては知的財産あるいは標準についての事前の調査に必要なお金、それからそれを国際出願を取ったり、国際標準を取るためのお金、それからそれをフォローするお金、それからまた次の研究開発にいくためのお金、そういうことに必要な人材をお願いするためのお金と国際出願にお金がかかりますから、しっかりそういうものを研究開発資金の積算に入れるとかということをしっかりやっていただくことが大事じゃないかと思います。それが1点。 もう1点は、5ページから6ページにかけて、特許審査のワークシェアリングと特許制度の国際調和が書いてあるわけですが、特に6ページの国際調和で、「実態面の調和を推進した実体特許法条約の議論を加速する」とありますが、現実問題は、今、こういう条約の国際交渉は大変難しいわけです。150カ国が集まると、実際にはまとまらないので、それの成果を上げるためには、やはり標準においてデジュールな条約交渉から、デファクトとか、コンソーシアムに移っているのと同じことが特許に起きていると思います。この国際標準を、特許制度の国際調和は日本が例えば韓国とか、アジアと共同で審査をするとか、相互承認するとか、そういうことでデファクトで、あるいはコンソーシアムで実際に成果を上げていくということが必要だと思います。条約に頼っていても時間がかかるから、ぜひ韓国との共同審査や、相互承認などを具体的に着手するということが必要だと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 最初の研究開発の中にも、知財、国際標準、その他に関する予算が織り込められるように配慮すべきであるということと、2番目のこれは、ある意味で、制度自身が通常はデジュールで考えるんですけれども、制度自体をデファクトにしてしまうために実体面で動かそうよと、こういうご提言ですね。なるほど。この実体面というのはそういう意味で、とにかく前に事実上動かすということを進めたいということでのご提案というか、ご支援だったと思います。 ほかにいかがでしょうか。お願いします、野元委員。 ○野元委員 標準化のところで、第1回にも標準化したからといって事業として成功するとは限らないという話がありましたし、きょうの参考人のお話の中でもインテルの例、通信システムの例がございました。したがって、事業として成功させるという観点で、ビジネスモデルも考えた上で標準化すべき項目なのか、すべきじゃない項目なのかということを判断するような仕組みを持った上で標準化の話をしないといけないなということを思っています。これが1点目です。 2点目に、3ページのところにシェアの話が書いてあるんですけれども、事業をする側から見た場合に、マーケットシェアは市場で非常に厳しい競争にいつもさらされています。それはコストであったり、性能であったり。そういう厳しい競争の中で各社が知恵を絞って戦略を練って、血のにじむような努力をして、結果としてシェアが決まるわけですけれども、かつ高いシェアをとったとしても、テクノロジーが変わってしまうと製品が変わり、一気にそれがまたなくなってしまう場合もあります。だから、こういう国家レベルでシェアを議論できるのかなというのを逆に違和感を企業としては感じる点があります。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 1つ目のお話は、標準にする、しないもこれも戦略じゃないかということですよね。これは先ほどの小川参考人のご意見と全く同じだというふうに思います。 2番目のここのシェアに関しては、こういう知財専門調査会で書くべき項目であるかというのはかなりの疑問に思っていますので、これは毎回、津村政務官が政治として判断するとおっしゃっているので、政治としてご判断いただくことでありまして、我々はここは触れていないというのをご理解いただければと思います。おっしゃるとおりだと思います。 ほかにいかがでしょうか。佐々木委員。 ○佐々木委員 小川先生のお話を伺ってなんですけれども、標準化のところで、我々はグーグルとか、そういう今世界で成功しているところに対して、競争力を持とうというふうに検討しているのだとすると、やっぱりこれは個々の企業の問題になろうかと思うんです。はたまた欧米と伍していたときには、今ほどの状況ではなかったようにも思いますし、昨今の新興国、特に中国等々の台頭があってこういう状況になっているということを考えると、やっぱりそこのところをちゃんと分けて考えたほうがいいのだろうなと。今の中国のように、いろいろなところに留学生を出して、優秀な大学を抱え、人口があり、市場が発展していき、国としては比較的ダイナミックに法律も変えられる。こういうところに対して何ができるだろうかというふうな考え方もしたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。特定の国を出すのはちょっと不謹慎かもしれませんが、現実的にはそういうことだと思います。そういうふうに見たときに、標準化の中の施策の中にアジア諸国と云々というのがあるんですが、ここのところを、それは我々が仲よくするところはアジア諸国だというふうに思うんですが、今までの産業の極、欧米、アジアという極からいくと。本当にアジアで日本がイニシアティブをとっていけますかというところをもう一度考えると、やっぱり率直に言ってそれは容易なことではないと思うので、そこはちょっと慎重に考えたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。 以上です。 ○妹尾会長 すみません、ご提言としては何がございますか。 ○佐々木委員 官民合同の戦略のところで、官民一体とありますが、官民一体で一体官が何をして、民が何をするんだというのをもうちょっと明確にしないと、非常に耳ざわりのいい言葉なんですけれども、ほとんどやることは、例えば私企業の戦略立案力であったりしますので。官ができるところで多分一番できるのは、以前も触れましたけれども、例えば日本の独禁法みたいなのはどうするんだとか、税制をどうするんだとか、よそからの研究者とか、研究機関を誘引しやすくするとか、そういうところにフォーカスをしたほうがいいのではないかなと、そういうことです。 ○妹尾会長 官民一体のときに、官は何をすべきかという具体的なご提案をいただくのを委員の皆さんにお願いをしているので、その具体的なご提案は今のような外部からの研究者を招いてやるよと、そういうことですか。 ○佐々木委員 そこの一番の根幹のところはやっぱり法律……、ちょっと私は今ここで、これが障害になっている、あれが障害になっているというふうには申し上げられる知識はございませんが、そういうところにフォーカスをすべきだろうなというふうに思います。 ○妹尾会長 わかりました。ありがとうございます。 ほかにいかがでしょうか。佐藤委員。 ○佐藤委員 先ほどの広崎参考人とそれから小川参考人のご意見を伺って、大変私はきょうはいいお話を伺ったというふうに思っています。特に広崎参考人のほうからお話があった民と官の役割ということがしっかりと提案されている。今お話をしようと思ったのは、官民合同と言っても、小川先生の報告にありますけれども、知財をどう活用して、市場をどういうふうにとってくるんだという使い勝手のところが出口戦略として非常に重要だと思います。そこは民が主導するんだということだというふうに思っております。そういう意味で、官民合同と言っても、何かどっちもお互いに助け合えば何とかなるのではなくて、ちゃんと民と官の役割をはっきりさせて、その上で官民一体になって進むんだというような書き振りになったほうがいいんじゃないかと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 今の佐々木委員と佐藤委員、共通して言えるのは、官民一体と言っているけれども、もっと中身をはっきりさせようねということだと思います。官民一体というのは確かにファンシーな言葉なんですけれども、官と民の関係性が代替関係なのか、補完関係なのか、相乗関係なのか、どうすれば相乗関係になるのか、そういう点についてもう少し具体性のある施策例を出さないとうまくいかないよねと、こういうことかと思います。確かに民がやることですね。先ほどの民主導・官支援という話、官主導・民支援という話、これらの中身が問われるようになってきたぞと、こういうことではないかと思います。 というところで、官民一体ということの中身を詰めないと、施策としても意味がないぞというところまで来ましたけれども、ほかにいかがでしょうか。西山委員。 ○西山委員 小川参考人の資料の6ページとそれから広崎参考人の資料の9ページ、逆にこれは質問なのか、意見をいただきたいのか、もしくは確認になるのかもしれませんが、官と民の関係について伺いたかったのですが、例えば、この6ページのほう、黄色いこちらがあるほうですね。この絵ではとにかく携帯電話のハンドセットをつくるメーカーに対してはどんどんオープンにして自由につくってもらいましょうと。ただし、基地局は独自技術にしてクローズにしましょうと。これによって競争優位性を保ちましょうということでございます。9ページのここで言うと、出口戦略で官が果たせる役割として、例えば国内需要の重要関連政策、施策例という、このマトリックスのこのセルですね。左から4番目の上から3番目…… ○妹尾会長 西山委員、最初におっしゃられたのは小川参考人の資料の話で、今は広崎参考人の資料の話ですね。 ○西山委員 例えばなんですけれども、政府調達によって需要を創出していくことができるならば、例えば競争力がある技術を政府調達である規格化させてしまって、国内で。その周辺をオープンにさせて、一気に特定分野において国際競争力を持たせるようにすることができれば、官と民が一体となってある特定分野で国際標準もねらえるし、かつオープンもクローズも含めた施策が打てるようになるのではないかということをおっしゃっているというふうに理解すればよいですか。 ○妹尾会長 広崎参考人、すいません、これにお答えいただけますでしょうか。 ○広崎参考人 私でよろしいですか。 ○妹尾会長 結構です。今の、この表の中で広崎参考人がおっしゃっている官民一体の市場開拓というのはどういうことでしょうかという。 ○西山委員 聞き方を変えると、要は政府調達というツールを使って、オープン・クローズ・オープンのクローズ部分を特に内需に浸透させて、それ以外のところはオープンにして海外にずっと普及させるような施策というのは、官と民の組み合わせで有効とお考えなのでしょうかという聞き方に変えさせていただきます。 ○広崎参考人 ある意味では小川参考人のこの具体論と私のこの9ページのこれを組み合わせたときに、例えばそういうことがあるかというご質問ですね。具体的に想定されておられるのはスマートグリッドであるとか、そういう新規分野の話でしょうか。これは9ページにあらわな形では書いていないのですが、先ほど私の資料の最後の標準化に関する提言のところで、今後ソリューション型の標準化戦略というのが非常に重要になるという、ちょっと抽象的なまとめ方をしておる中に、実は暗黙のうちに、今おっしゃられたようなことも考えております。と言いますのは、先ほど来小川先生のご考察で、インテルの例でありますとか、携帯の場合は私は若干違った見方をしていますけれども、3GPPの例とかあるんですが、これと同じようなことを例えば別の分野で日本が同じようにやるということを仮にとったとしても、全く同じ土俵で欧米と闘うということになりますよね。土俵といいますか、彼らは既にいろいろな事例を持っているわけですから。したがって、私は今後フェアな闘いをするためには、例えばインテルのマイクロプロセッサー及び周辺という、このモデルをむしろ相似拡大してシステム全体で考えてみてもいいんじゃないかと。スマートグリッドという、まだどこもイニシアティブが取れていない、非常に大きな社会基盤型のソリューションですよね。こういったものにインテルという、ある意味では小さいというか、マイクロプロセッサーのモデルを相似拡大したときに、どういう戦略の可能性があり得るかということを、これを日本全体で、それこそ官民一体となって考えるべきじゃないかというふうに思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 小川参考人。 ○小川参考人 広崎参考人と意見は全く同じでございます。このモデルを今さら携帯電話でやったって勝てるわけがないですよね。ご存じだと思いますけどね。ただ、基本思想は同じだということを申し上げたかったんですね。インテルの経営思想、あるいは勝ちパターンも、あるいはノキアの勝ちパターンも考え方は全く同じであると。きょうはお話ししませんけれども、例えばDVDはシェアを落としたと言いましたけれども、落としたのはセットとして、DVDプレイヤーとして我々が目に見えるものを落としたんですけれども、その中で使われる材料とか、部品とかは圧倒的に日本が強いんです。勝っているパターンはインテルのモデルと全く同じなんですよ。だから、いろいろ応用できる。だからこのフィオロティを使って勝ちパターンをつくっていったらどうですかというのがきょうのご提案です。 それから、スマートグリッドと言えば2つあると思うんですね。電池は今標準化されていますよね。電池のどのレイヤーを標準化するかによって勝ちパターンが全部変わるんですよ。だから、そういうことをちゃんと理解した上で標準化に参加しないと、とんでもないことになるということを申し上げたんです。自動車もそうです。 それから、電力システムがありますね、スマートグリッドの。あの中の強烈な安定した安全なサービスをやるシステムのノウハウというのは電力システムのコントローラーの中にみんな入っているわけです。それは日本が圧倒的にノウハウをみんな持っているわけですね。ですから、それを生かしながらスマートグリッドの中で日本はどういう標準化をやっていけばいいのかということはおのずと見えてきますよね。ということを申し上げたんです。 ○妹尾会長 よろしいでしょうか。今の話をちょっと私のほうでも引き取らせていただくと、西山委員からの調達という手法を官民一体のときにとったらどうかというご提案だというふうに思います。調達推奨はいろいろな外交上の問題もあるし、法律上の問題もあるんですが、一つの切り口としてこれは検討させていただきたいというふうに思います。 それで、参考人の2人のほうからお話があったときに、1つは新市場の開拓という意味での官民一体と既存市場の引っくり返しという視点での官民一体と、これはやっぱり少し分けて考えたほうがいいかなというふうに思います。ただ、この携帯のモデルは今さらやっても使えないよねと小川参考人の指摘、全く私は大賛成なんですが、もう1点あるのは、先ほど小川参考人がご紹介されたあのモデルをやられた中国が全部アフリカでやったという、この事実ですね。ところが、日本はやられっ放しで、全くそういう巻き返しができなかったという、これは反省に値するというふうに思います。 そういうことが1つと、それからもう1つは官民一体の市場開拓というのは、恐らく新幹線だとか、ああいうインフラ系の売り込みに関しては官民一体が全く日本ではできていなくて、惨敗がずっと続いておりますので、原発だとか、新幹線だとかということはこれは官民一体で進めないとどうしようもないということが多分あろうかと思います。 それから、3点目は何かと言いますと、恐らく、先日申し上げたように、地デジみたいなものですね。地デジの標準は南米に日本式が普及する。だけども売れるテレビやチューナーは全部韓国と台湾製だと。こういうような産業政策になっていない標準の普及はいかがなものかということがあるわけで、その辺も官民一体にならないと、せっかくの莫大なお金を投資して地デジの標準が南米に普及しても日本の製品は全く売れないという、こういう状況になってしまうので、こういうのは避けたいというか、これはまさに反省しながら進めなきゃいけない官民一体であろうと、こういうことかと思います。 すいません、ちょっと座長の私が引き取ってしまいましたけれども、ほかに何かございますでしょうか、この関係で。上條委員。 ○上條委員 私のほうからは2点ほどございます。まず1点目ですが、実は昨日まで韓国へ調査に伺っておりまして、サムソンさんからヒアリングを行いました。そちらで聞いた情報のご提供なのですが、サムソンでは、半年もしくは半年以内で社内の組織変更を非常に迅速に行っているということです。ヒアリングした方も、半年前までは知財訴訟チームに所属だったのですが、半年以内に社長直属の海外法務担当チームの部署へ異動になり、社長直結のトップ組織として海外法務の案件を担当しているそうです。 そういった海外企業の例から見ましても、今回の専門調査会で検討されている様々な施策について、「迅速な意思決定とインプリメンテーション」を行うことが、グローバルな戦略を進めるという意味でも、全般的に非常に重要になってくると思います。ブロードな意見で恐縮ですが、「迅速な意思決定」というニュアンスの文言を、施策の文章中に入れるということが必要ではないかと思います。 あともう1点、「標準化や事業化を見据え、研究開発段階から他国と協調して仲間作りをすする仕組みの構築」という課題について、論点整理のp4に、研究開発段階からアジア諸国と協調して仲間づくりを行うべきとの提案がされております。この点について具体的ご提案がございます。出張等で中国や韓国などに伺った際、日本の大学院等で実施されている標準化人材育成のプログラム等について、現地の企業の方や弁理士、弁護士さんにお話ししますと、非常に興味を持たれて、日本へ訪問しそういった研修や教育を受けてみたい、という声を多く聞きます。ですから、日本側としては、標準化や事業化を見据えつつ、研究開発のアーリーステージの段階において、課題を見つけてその解決策を考えだすという段階から、アジア諸国の方々と連携して研究に取り組むような仕組みを作る、ということはもちろん非常に重要だと思いますし、それだけでなく、標準化人材育成や知財人材育成の場面においても、アジア諸国の方々もともに初期の段階から日本で勉強していただく、といった仕組みをつくるものよいのではないか、と思うわけでございます。アジア諸国の方々に標準化策定プロセスを理解し、それをどのように事業化に繋げるか、といった考え方を共通にもっていただけば、標準化を策定する際の仲間作りの際にもよりスムーズに連携がいくのではないかと考えます。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 1つ目は、要するにスピード、とにかく韓国の今のスピードは驚異的ですよね。恐らく知財マネジメント、企業のレベルは残念ながら韓国企業にもう追い越されたんじゃないかという認識が今広まりつつあります。それも含めて、標準化その他についてもスピード感を持つべきだと、こういうことと、それから標準化人材育成も含め、国内だけではなく、実はアジアの人を巻き込んだ形で形成したらどうかと、こういうご意見かと思います。 ○山本委員 もう時間ですか。 ○妹尾会長 それでは、山本委員、よろしくお願いいたします。 ○山本委員 参考資料2では結構2020年のことが書かれているんですけれども、妹尾先生が最初におっしゃられたように、どうもこの資料1は標準化が目的のような気がすると。それともう退席されましたが、相澤委員がおっしゃられたように、支配的企業をどうするかと。私は例えば2020年で何が起こるかと想像すると、DVDとかは既になくなっていると思うんです。テレビもパソコンも、どっちかなくなるというか、一緒になると思うんです。多分2年前の番組でも先週のテレビ番組でも全部クラウドコンピューティングで見れるようになるというふうに考えたときに、標準化をすることは目的ではなくて、そのときにどこで勝つかというほうが実は重要で、クラウドになって、グーグルがもうかっているかもしれませんけれども、そこでどうやってお金をもうけるかということを考えないといけないわけで、例えば資料1で言うと、このタイトルからして、名文は思いつかないですが、グローバル市場で企業が戦略的な事業活動を行うための例えば標準化戦略、知財戦略を想定するというふうに、どちらかと言うと、主従関係を変えるというようなことが必要ではないかとか、あとは参考資料2でも2020年の目標が「ロードマップを策定する」では10年間何もやらないような感じがするので、例えば資料1のロードマップも中期になっていますが、これは標準化のロードマップではなくて、どこで勝つのかというロードマップを短期で行って、そのために標準化をどうするのかというふうに考えていかないと、標準化する部分としない部分で、しないほうがいい部分はしなければいいわけなので、ちょっとそこら辺が何となくもやっとした感じを受けております。 ○妹尾会長 今のご意見、例えば4ページの「特定戦略分野における標準化ロードマップを含む官民合同戦略の策定・実行」とあるけれども、これはそもそも事業競争力をつけるためのビジネスロードマップがあって、それにどういう知財ロードマップや標準のマップがつくんだという、こういう順番じゃないのというご指摘ですよね。まさに先ほど申し上げたとおり、そういう形で、手段が自己目的化するような表現は極力変えたいというふうに思いますので、山本委員のご意見も多分ご一緒かと思います。 もう1点は、先ほどおっしゃられた2020年を想定するとという話なんですけれども、例えば、ちょっと話題を提供しますと、現在日本の標準化のチェアはだれがとっているの、どれがとっているのというんですけれども、例えば3Dのテレビ、騒がれていますけれども、これはヘッドマウントディスプレイのほうのテレビは確かに日本がチェアをとっているんですね。ところが、今後普及するであろうと思う裸眼の3Dのチェアは韓国にとられていますね。あるいはスウェーデンということを考えると、ロードマップを、先を見越したチェアをとれないと、実はどうしようもないねという話で、標準化についても2020年、先を見越した戦略が必要ではないかということかと思います。 事務局のほうから、では次長。 ○内山次長 今の山本委員からのお話で、4ページ目の標準化ロードマップを含む戦略のところ、これを何か中期で策定するなんていうのはとんでもない話じゃないかと、こういうことだと思うんですけれども、ここは実行というところは当然中期的にいろいろと実行していくわけですけれども、当然のことながら戦略についてはできるだけ速やかにつくる、短期でやるべき話だというふうに私どもも考えておりまして、ここの書き方がちょっと中期となっておりますと、これは本来であれば短期と中期と、こういうことであると思います。 ○山本委員 すいません、ちょっと私の説明が悪くて、標準化ロードマップを中期ではなくて、まずその前のどこで勝つのかという、戦略的ロードマップが短期であって、そこから付随してどこで標準化するのか、あるいは知財戦略をどう絡ませるのかというのは後でもいいというのが私の意見です。 ○内山次長 すいません、そういったものも含めて、できるだけ速やかにつくり、そして粛々と実行していくということだと思います。 ○妹尾会長 主たるご意見の主眼は標準化が目的じゃないんでしょうと、事業が目的なんですよね、そっちの強調をもっとわかりやすく書いてくださいと、こういうことが山本委員のご意見だと思いますので、それに沿ってもう少しわかりやすく書いて、その上での中期・短期の議論ということになろうと思います。 ちょうど政務官が退席されるということなので、一言皆さんに、もっと議論を頑張れよという激励をいただけませんでしょうか。 ○津村政務官 きょうは国会を抜けてくるということで、20分ほどだったので、それだったらかえって出たり入ったりするだけ失礼で、遠慮するべきじゃないか、随分迷ったんですけれども、やはりそうは言っても皆さんの議論をしっかり伝えていくという役割ですし、今実際に来てよかったと思いました。熱を帯びた議論をしていただいて、本当にありがとうございます。 議論そのものへの貢献は残念ながらこの時間ではできないんですけれども、1つだけ、きのう、おとといのことで、話題提供させていただきますと、きのう総合科学技術会議という総理以下の本部会合といいますか、この知財の親会合みたいなものなんですけれども、官邸で開かれまして、こちらにいらっしゃる相澤先生、有識者の座長的な立場でおまとめいただいているんですけれども、そこで科学技術外交戦略に関するタスクフォースというチームがありまして、白石隆先生を初め皆さんでご議論いただいた成果を総理にご報告という場面がありました。その中で総理から、五、六ページの説明の中で、国際標準化のところに目をとめられて、唯一というわけでもないのですけれども、一番ご発言があったのがその部分で、その前日、つまりおとといだと思いますが、他国の首相が総理を訪問された際に、電気自動車だったと思いますけれども、ぜひ欧州と日本でやろうじゃないかみたいなことをトップセールスされたと。それをどう考えたらいいのかみたいなことがきのうの総理レクの場面でご下問があって、そうは言っても、アメリカとのことも含めてちょっとバランスよく考えましょうみたいな、その場は答えになったのですが、やはりトップが意識を持って、トップ・トップの短い会談の中でそういう話をしているんだなと。中身もさることながら、そういうプロセスで議論をされているんだなということに大変強い刺激を受けた次第でございます。 会議の相澤先生はここに加わっていただいていることもそうですし、IT戦略本部もあるんですが、この3つは非常に近い議論をしていまして、いずれも川端大臣、古川副大臣、津村でさせていただいていますので、横の連携もしっかりしながら、ガバナンスのほうはしっかりやっていきたいというふうに思っていますので、また議事録も含めて勉強させていただきます。引き続き活発なご議論をよろしくお願いいたします。 退席の失礼をおわびします。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは津村政務官、ご退席ということですが、広崎参考人におかれましてもご退席ということで。小川先生はお残りいただけますよね。 ○小川参考人 時間ありますので。 ○妹尾会長 引き続き最後まで議論に参加いただければというふうに思います。 ちょっと時間がおしてきたので、恐縮ですけれども、資料の次のほうに移ってよろしいでしょうか。 ○福島委員 先程から韓国企業のお話があったことや、お二人の参考人のご意見にも入口と出口、民と官の役割分担という議論がありました。最近の韓国の事情から、考えるべきポイントがあると考えて少しお話をさせていただきたいことがあります。先週、WIPO主催でイノベーション促進のためのグローバル知的財産基盤に関するフォーラムが東京で行われ、この場で韓国特許庁のKoh長官から官としての様々な戦略的取組みのお話を聞かせていただきました。私個人の印象として、一言で言うと大変感動するものが沢山ありました。まず第一に、弊社はグローバルな権利取得のためにPCT出願を多用しておりますが、韓国特許庁は世界各国からPCT出願の国際特許調査を多数引き受けているとのことです。特に、アメリカ企業から多数の国際調査を引き受け、この調査を通じてかなりの知財情報、つまり知の集積を図られているというお話を伺いました。例えば、マイクロソフト、3M、グーグル、ヤフー、HPのような著名な米国企業がPCTの国際調査を韓国特許庁に依頼しています。韓国メーカーの方にもなぜそうなるのかということを伺いますと、特許庁の対応として大きな要因が2つあると理解しています。 1つは、調査料いわゆるコストの圧倒的な安さです。米国企業が米国特許庁に依頼する料金が約2,000ドル強ですが、韓国特許庁に依頼すれば1,000ドル強で済むとのことです。また、ヨーロッパ特許庁の調査料は2,500ドル強ですけれども、このコスト力は魅力的と言えます。もう1つは、韓国特許庁に調査をお願いすると、英語だけでなく、日本語、韓国語の特許を含めた文献全てを調査していただけるとのことです。要は、安くて質の良い調査がしっかりとできることが要因です。その背景にあるものは、政府を中心としたIT投資が韓国特許庁内で大々的に行われ、この投資が日本語や英語に限らず韓国語も含めて、いわゆる言葉の障壁を越えた知の集積を加速しています。欧米企業から見れば、日本企業やサムスン・LGに代表される韓国企業の出願をも対象とした調査は極めて重要な位置づけにあると考えます。このような視点から、ITを活用した複数言語による調査や、これを支える様々なインフラへの支援がグローバルに事業展開する企業にとって非常に重要なものであり、官に積極的な対応をお願いしたいと考えています。これは、先程の広崎参考人のお話にもありました官からの支援をお願いすべき一つの項目として、また官と民の役割分担としても考えられると、私自身は考えています。当社は事業の側面から、韓国企業との様々なベンチマークをしていますが、欧米企業に勝るともとも劣らない強さを感じています。先程、韓国企業のデシジョンの速さというご指摘もありましたけれども、そういったことを加速するためにも日本における官主導のインフラ支援もご検討いただければと考えた次第です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 そうですか。官と民と言っている「カン」は韓国の「韓」かと思うような話ですが、そういうインフラでも相当なことになってきているということなので、我々頑張らなきゃいけないということがあろうかと思います。ありがとうございます。 相澤委員、お願いいたします。 ○相澤(益)委員 大変遅れて来て申しわけございませんでした。 2つございます。資料の1の2ページ目のところでありますが、ここに事業、事業と次々出てくるんですが、この事業の主体が何なのかというのが非常に不明確であります。例えば丸の1番目のところですと、ベンチャー、中小企業、それから我が国の大学というように出てくるんですが、どこが問題なのか、それから事業が続いていきますね。目標の最後のパラグラフのところに、「世界に通用する事業を生み出し続ける」という、この主体はだれなのか、こういうようなことがこの文脈で非常にわかりにくい。結局は、どこが悪いのかということが不明確であるために、戦略策定という点では主体を明確にしないといけないのではないか。これが1点です。 もう1つは、先ほど議論になりました3ページの丸の2つ目のところのロードマップの戦略策定であります。これは先ほど新幹線その他の国際展開というところにも大きな問題があると。津村政務官の指摘された総理の発言は、環境分野における国際標準の問題との関連なんです。そういうような局面で、官民一体となってどこがまとめて国際展開を図るのか。ここも主体が抜けているのではないか。ですから、これは読み方によっては丸の2つ目は、知財戦略本部がこのロードマップを作成することを初め、全体の戦略展開を責任を持ってやるんだという決意表明とするならば、そういう書き方がよろしいのではないか。そのことは上の四角で囲んだ中に、非常に明確に示してあるところ、「具体的な成果目標の定め方」というところで、「産業政策、科学技術政策、IT戦略等」と書いてある。これらをベースにして総括してこの戦略策定をしなければいけないということを言っておられるので、これを戦略本部がやるよという決意表明にかえていただくことがよろしいのではないかというふうに思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ご指摘のとおりだと思います。事業の主体がどうか。これはきょうずっと出てきました官民一体だとか、あるいは官主導・民支援とか、民貢献とかというようなことと同じで、主体性を明確にしながら、役割分担とか、責任主体がどこなんだということを明確にしないと、これはもう書いただけになってしまうよというご指摘だと思います。確かにこの辺は十分書き込めるだけ書き込む必要があろうかと思います。その辺のところでいろいろな問題はあろうかと思いますけれども、ご指摘、確かにそうだと思いますので、事務局に頑張っていただきたいと、こういうふうに思います。 それでは、2のほうへ移りたいと思います。 江幡委員、お願いいたします。 ○江幡委員 先ほどのようなスケールの大きな話から各論的な話になって恐縮ですけれども、今日は具体的施策について議論するということでしたので、資料5の配付をお願いしております。資料1の最終頁に記載されている権利の安定性の向上という施策について、問題意識の共有化と整理のために資料を用意させていただきました。 まずは、権利の安定性について問題点として指摘されている事項として、侵害訴訟において有効な権利が侵害されたという判決が一回確定した後に、同じ当事者が後から無効審判を起こし、その無効審決が確定してしまうと、今度は遡って権利がなかったことになる。そうすると、一度確定した判決が再審事由に該当するということで覆ってしまうという問題があります。図に示しましたけれども、出願がされ、登録がされ、権利が成立したということで訴訟提起をする。そして、地裁、高裁、最高裁と闘い抜いて、この間に当然ながら権利の有効性についても十分主張を尽くして、勝訴判決が確定する。その後に、負けた側の当事者が無効審判の申し立てをして最終的に無効審決が確定してしまうと、権利が最初からなくなり、それもただ権利がなくなるだけではなくて、損害賠償金は返さなければならないし、さらに5%の法定利息をつけなくてはならないということで、権利者は、一度侵害訴訟で勝ってもそれが後に覆されるというリスクに常にさらされているということになり、このような「蒸し返し」が可能になるという問題点が指摘されています。この問題に関しては、一度確定した侵害訴訟の判決に関して、無効審決の確定により、権利が遡及してなくなるということを制限するということが考えられるのではないかと思います。 その次に、論点2として書きましたけれども、よく「蒸し返し」の問題とダブルトラックの問題が混在して、一緒に論じられています。しかしながら、ダブルトラックというのは、地裁の侵害訴訟では権利を侵害しているかどうかという判断と、権利の有効性の判断の両方がされ、それと同時に、特許庁に無効審判が起こされれば、権利の有効性についての判断がされる、このように、2つ権利の有効性を争うルートがあるということです。その問題点として両ルートで判断の齟齬が生じるのではないかという指摘に関しては、運用上は知財高裁の同じ部が控訴審で判断することになるので、結果としては判断の齟齬が解消される運用になっていることをお伝えしたいと思います。 また、ダブルトラックがあるからといって、ダブル、二倍の負担になっているかというとそうではなくて、実質的には同じような主張がされていることが多いということがございます。 資料5の整理というところに記載していますが、前回も申し上げましたが、特許法の104条の3を削除すべきではないかという意見に対しては、そうするとキルビー判決が出る前の非常にテクニカルにクレームの文言をちょっとゆがめた形で解釈していた、そういう昔のようなわかりにくい判決に戻ってしまうのではないかという問題があります。また、迅速な審理の妨げになるのではないかと思います。したがって、2ルートあるということ自体が必ずしも問題ではなくて、むしろ2ルートあるがゆえに生じる、先ほど論点1のところで申し上げたような蒸し返しの問題、こちらに関しては何かの具体的な検討を行うべきだと思います。それが1つ目の点です。 あと、もう1つはワンストップ相談窓口をつくるということが資料1の8ページの相談窓口の整備という項目にございます。これに関してご紹介させていただきたいのですが、2005年に弁護士知財ネットが設けられまして、知的財産に関するあらゆる法律相談をワンストップで、かつ地域別に受けています。相談窓口は既にウェブで公開されていまして、地域別に、そして曜日ごとに担当窓口となる弁護士が決まっています。その担当窓口に連絡すると、おおむね1時間ぐらいで相談に対応する弁護士を募って、弁護士を紹介してくれるという仕組みがあります。かつ料金も初回1時間1万円ということで、割と安心して使える制度ですので、ぜひ弁護士知財ネットの既存の仕組みもうまく活用して、また弁理士の相談窓口もありますので、こういう仕組みをうまくコンビネーションで使えれば、より早期にワンストップ相談窓口として普及・活用できるのではないかと思います。 そして、最後に1点だけ、同じく資料1の9ページで、大学の産学連携力の向上という項目に関して一言申し上げたいと思いますけれども、大学の産学連携で共同研究をより活性化させて、企業からの事業化のための研究の委託や企業との共同研究が進むようにするためには、逆に大学側での例えば営業秘密の保護に対する大学の教員、また学生を含めた教育が必要ではないかと思っています。 また、今回、仮出願制度というご意見もありますけれども、大学が研究成果の公表を重視するがゆえに、逆に企業側の利益が守られない、しかし大学の先生には逆らえない、もしそういう状況があるのだとすると、共同研究を活性化させていくためには大学側の受け入れ態勢を整え、企業側のニーズやそれが将来的にどのように日本の利益になり、そしてそれが大学に還元されていくのかというところも含めた理解を浸透させていく必要があるのではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 権利の安定性については、これはいろいろな法律的なご意見があろうかと思います。蒸し返しとダブルトラックの話は1回目から出ておりますので。これもかなりわかりやすく江幡委員が整理してくださいましたけれども、これも事務局のほうに実は可視化をしてほしいということのお願いをしてあります。というのは、議論が見えないと何か空中戦になってしまうので。これもぜひご参考にさせていただいて、資料を事務局のほうで取りまとめていただきたいと思います。 それから、2点目のワンストップの窓口については、これは既存の仕組みを補完的に活用しようというご意見かと思います。もう1つ大きいのは、ワンストップ窓口の件に関しては、これは制度をつくってもだれがやるのと。もう1つは、法律的に困った訴訟だとか、そういうこととは別に、先ほど小川参考人がおっしゃられたような実際にどういうような知財の戦略をつくればいいのと、競争力をつくると、たとえ中小企業といえども勝つためにはどうしたらいいのという相談をするときに、相談員が特許を取ればいいですよと言っているだけではもうどうしようもない世界なので、このワンストップ窓口をつくるにしても、だれがやるんだ、だれを教育するんだ、どんな人材を育成するんだというのが本当に魂を入れる話になるので、それとのセットでこれをご意見を受けたいというふうに思います。弁護士さんは大丈夫なんですよね。すごい失礼なことを言っていますね。 ○江幡委員 相談者が抱えている知財の問題の相談をちゃんと受けることができる弁護士、そういう問題についての経験があるような方が対応されます。また、相談内容は、権利侵害だけではなくて、もちろん契約を結ぶ場面や、また事業化をするにあたって、例えば会社を設立する、ジョイントベンチャーをつくるということや、営業秘密の保護も含めた、幅広い様々な相談、雑多な相談というふうに言ってもいいかもしれませんが、それを受け付けているということでした。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 3番目は、大学関係もちゃんと教育をしないと、実はベースが整わないよねというようなインフラのご意見でした。 佐藤委員、お願いいたします。 ○佐藤委員 本日の資料6で、選抜出願支援制度というのを提案させていただいております。この資料1の中で、8ページに中小企業の知財化支援ということで、特許パック料金制度や応援弁理士制度などの提案が前回なされておるわけです。これはこれとしてやはり支援していくべきですが、海外出願支援では、おしなべて浅く広く支援するというだけではまずいのではないかと思います。やはりしっかり選抜して、本当に育てなきゃならないところに集中的に国が支援していくという仕組みをつくるべきだというのが、この選抜出願支援制度の趣旨です。特に今の日本の中小企業さんたちは、単に国内で競争するだけではなくて、まさに韓国、台湾、中国、これらの企業とも競争しなきゃいけない。そういう意味では国内だけの権利化だけではなくて、海外の権利化も当然進めないといけない。またビジネス展開する意味でも、外国に権利があるかないかでは、ビジネス展開が全然違うという意味では、やはりこれからの中小企業は国内の権利化、さらに海外の権利化をやはりやっていかなきゃいけない。そういう意味で支援が必要であるわけですが、だれでも支援するというわけではなくて、やはり発明の中身をしっかり見た上で支援していく仕組みが必要だろうと。 2枚目を見ていただきまして、これは1つのモデルなんですけれども、国内で出願をしているときに、従来のスモールエンティティーのような形で、出願料は減額をする。その上で早期審査をやって、3カ月ぐらいで審査をして、特許査定になるというようなものを対象にして、選抜をして、それを海外出願の支援の対象にするというような現状の仕組みを利用しながら、選抜の仕組みは考えられるんじゃないか。これは1つのアイデアでございますけれども、こういう仕組みをつくりながら本当に支援すべきものを見出しながら、それに集中していくということが必要ではないかというのが1点目です。 それから、2点目については、この資料1の中で議論されている特許の安定化、ペーパーでいきますと最後のページの11ページでございますが、先ほどダブルトラックとか、蒸し返しの議論がありましたけれども、問題なのはせっかく特許になって、訴訟までいったのが、訴訟で無効になってしまうということが一番大きな問題だというふうに思っております。やはりそれは確かに今は情報検索のツールが発達してきて、後で見つけられてそのために無効になるというケースも多いんですけれども、やはり特許を前提としてビジネスをやる以上、それが安定していなければビジネスが成り立たない。そういう意味ではやはり特許の安定化をするための制度設計なり、改善というのは、これは特許制度を前提としてビジネスを考えていく上では絶対必要だと思います。そういう観点で、今までつくってきた特許制度そのものをもう一回見直す必要があるのではないかという観点で、この安定化ということについては、しっかり取り組むべきだろうというふうに思っております。 3点目は、先ほど出ましたワンストップ相談窓口の問題なんですけれども、これは先日、12月の本部会合でも申し上げたんですが、いろいろな支援組織、支援機関、それから施策、それから費用、それがいろいろな形でここまでつくられてきました。しかし、それがみんなばらばらなために、本当に必要な人のところの支援に結びついていないんじゃないかというふうに思っています。そういう意味では、今までのやり方を抜本的に見直していく必要があるんじゃないかと思います。先ほど、妹尾会長からお話があったように、実際に支援をドライブしていくファンクションが弱い、そのために結果的にはいろいろなことをやってもそれの結果が出ないということだと私は思っています。そういう意味で、ぜひ支援のあり方をもう一回抜本的に見直すということを今回は具体的に検討して俎上に上げていただきたいというふうに思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 3点ご議論いただきました。1点目はこの選抜出願支援制度、これはちょっと一見スモールエンティティーの限定版みたいに見えますけれども、そうではなくて、これを考えていきたいということ。 2点目が安定性の制度設計も制度自体の見直しから考えていく、法律論その他法務論はあるかもしれないけれども、ビジネス論としてこれはどういうふうに制度の安定性を図っていくのと、この観点で見直してほしいよねと、こういうご意見。 3番目は、これは聞きようによると支援制度の仕分けをしろということともつながるかもしれませんけれども、ある意味では支援制度が輻輳して、いわばジャングル状態になっているわけで、これをどういうふうに相互補完ないしは相乗関係に持ち込むのか、これのドライブをどこが仕切るんだと。それを真剣に考えるときではないかということが佐藤委員のご意見、こういうふうに賜ってよろしいですか。今の選抜出願支援制度というのはこれは新しいんですけれども、何かこれとの関連でご意見。荒井委員、どうぞ。 ○荒井委員 選抜出願制度は、海外出願支援制度に変えていただいて、選抜は本人がするようにしていただきたい。すなわち2分の1補助にして、中小企業の人は自分で選抜をして、半分持ってもいいからやるというふうにしたらいいと思います。これは別の認定制度の申請に行って、また書類をつくって、事業性を審査すると言ったら、とても中小企業では使えません。本人が選抜するというのを改善提案として、いたします。 ○妹尾会長 なるほど。選抜する側、される側ではなくて、本人が申請して。佐藤委員、いかがですか、今の。 ○佐藤委員 基本的には本人申請が前提です。それで早期審査をやって、特許になったものとならないものをまずそこで振り分けをすると。特許になったものは、一応これからも海外的に特許になるという前提があるので、それをベースとして海外支援するかどうかを査定するという形がよろしいのではないかというのが今のモデルです。 ○妹尾会長 これはどちらも中小企業のためというお話ですから、もう少しこれを練り上げていくとおもしろいかもしれないですね。わかりました。 ○荒井委員 すいません、中小企業の関係なので、1つは8ページ、今のと関係すると思いますので、ちょっと今は海外に行くときに応援しようと、まさに中小企業も国際的に展開していかないとやっていけない。それから、成長戦略上もベンチャーとか、中小企業がしっかりしていることが大事だと思いますが、その際、資料1の8ページの支援施策の充実の2つ目のポツに、今度は国内のことで、「特許料等の減免制度について、全ての中小企業の減免対象化などの検討を行い」とありますが、これを「全ての中小企業を減免の対象にして」というふうに、「検討」じゃなく、ぜひ実現していただきたいということでございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。そういうご意見であります。 それでは、佐々木委員。 ○佐々木委員 先般、高柳委員が提出された資料に記載されていたと思いますけれども、我が国の優れた技術を生かした世界に通用する新規事業を創出する、つまり優れた発明をしていかなきゃいけないという観点に立ちますと、きょう、先ほどご紹介のあった日経の新聞のように、いろいろな研究機関が外に出て行ってしまう大きなファクターの1つとして、職務発明の制度があるんだろうと思います。実は職務発明については昨年、特許庁さんのほうの特許制度研究会のほうにも出させていただいて、いろいろ議論を申し上げて、ただ、法改正が行われてから日が浅いので、まだ再改定には時期尚早だという結論に達して、そういう不足を持って産構審のほうで議論が行なわれることになると思いますが、例えば日本で研究開発をしようというところは、個人で出てくる人もいるかもしれませんが、大抵ある企業が投資してくると。そのときに優秀な研究者を連れて来て、そこで研究をして、いい発明が出たときに、その帰属をめぐって将来大変な不安を抱えるようであれば、やっぱり二の足を踏むと思うんです。そういう意味で、一応産構審で議論されるということで、若干持ち越しになっているというニュアンスを出していただいても構わないので、この中で発明とか、そういうものの帰属をめぐる紛争といいますか、憂いを何らか絶つような施策を検討していくというような項目を入れていただいて、継続審議にしていただければありがたいなと思います。 以上です。 ○妹尾会長 職務発明制度自体についてはまだ実施そのものがわかりませんので、内容がどうなるかというのがわからないので、ただそれについてということで、何か具体的なものでご意見はありますか、その中で。継続審議ということのニュアンスだけがご意見でしょうか。 ○佐々木委員 現在起きている職務発明に関する裁判も、それらは全部旧法に基づいているので、改正法以降のものについてはまだいろいろな結論が出ていないというのは先生おっしゃったとおりなので、そこもただ、結論が出ていないのでというふうに考えるにはちょっとリスクが、リスクといいますか、いろいろな心配ごとが多いというのが、いろいろな企業さんに聞いてもそういうご意見なので、それであれば何か問題が出てからというよりは、その問題を絶つ方向でも検討してもいいんじゃないかなと、そういう意見であります。 ○妹尾会長 なるほど、わかりました。ありがとうございます。 では、出雲委員。 ○出雲委員 すみません、時間も少ないので、資料1の8ページ目の支援施策の対象である大学発ベンチャーに対する施策として2つ申し上げたいと思っております。 1つ目は、「普及啓発活動の強化」ということで、知的財産戦略の重要性をベンチャーや中小企業経営に浸透させる必要があるとここに記載されていますけれども、先ほど江幡委員からもあったように、大学関係者に対しても知的財産の秘密を守る、そのノーハウの取得を含めた戦略の重要性を同時に浸透させていただかない限りは、大学発ベンチャーとして共同研究先の先生に相談して、研究先の研究室ゼミから学界や論文を通じて会社の重要な情報が流出するということは、実際に問題として既にありますので、この部分は大学関係者、あと支援人材も含めてその啓発活動をしないと意味がないのではないのかなというふうに思っております。 それに関連しまして、今週末の金曜日に東京大学と大阪大学の共催で、これは初めての試みなんですけれども、大学発ベンチャーのグリーンイノベーションというのを東大と阪大の産学連携本部の共催でシンポジウムを開催しますが、やはり東大では東大でいろいろな大学発ベンチャーの成功と失敗のケース、阪大には阪大の成功と失敗のそれぞれケースがあると思うんですけれども、この成功事例と失敗事例のケースを普及啓発することが、意識の高い大学発ベンチャーもしくは大学の産学連携の支援人材の方にとって一番必要な情報だと思っておりまして、特許料の減免ですとか、2分の1ですとか、こういう優遇政策、アカデミック・ディスカウントは大変ありがたいんですけれども、安くしていただくよりも、成功事例と失敗事例をもっと積極的に普及・共有することで大分改善できる部分があるというふうに考えています。 それと最後に1点だけ、相談窓口支援体制のワンストップの件でございますが、東大の産学連携本部には3つ部署がございまして、産学連携研究部と知的財産部と事業化推進部と、このように3つございます。大学発ベンチャーを支援する窓口は、事業化推進部というところがその部署として担当しておりまして、この部が大学発ベンチャー企業に公認会計士ですとか、税理士ですとか、銀行ですとか、証券会社ですとか、そういったものをいつでも相談に行くと紹介をしてくれるという業務をしているんですけれども、係争ではない弁護士、弁理士の方を相談して紹介するのは知的財産部の仕事であるということで、知的財産部に行くと、大学発ベンチャー企業の支援は事業化推進部の業務であるということが実際に今、ちょっと東大の例しか私は存じ上げませんけれども、そういうことがあるという実態もございますので、この知的財産に関して相談を一元的に受け付けるワンストップ窓口が今ないということと、これを設置して、成功事例があれば、それを、ほかのベンチャー経営者は大変勉強しておりますので、すぐ普及啓蒙というものは難しくないと思いますので、そこがどこだというものをはっきり明示することが非常に重要だというふうに考えております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 大くくりで申し上げては申しわけないんですけれども、大学関係者への啓発、人材育成を、もう根本からやり直そうよということかと思います。私も前回申し上げたとおり、中小企業を指導している方々、産学連携を指導している方々、コーディネーターの方々の抜本的な再教育をやりたいので、ぜひそれは強く聞きたいというふうに思っています。ちょうどこれの中に1ページ、最後のところで人材育成だけのページをつけ加えていただいております。本当に先ほどの小川参考人のお話のとおり、制度を活用できる人がいないことが大問題になっていますので、そういう意味では啓発・人材育成についても太い柱をつくりたいと、こういうふうに考えております。 すいません、時間がないので、高柳委員、お願いします。 ○高柳委員 3点申し上げたいんですが、1つは先ほど佐々木委員のお話の35条の問題ですけれども、たまたまきょうは広崎参考人の別添資料2、「イノベーション立国」に向けた今後の知財政策・制度のあり方、経団連の資料がございます。この13ページの中段に35条の点、最後のほうをちょっと読ませていただきますと、「日本における研究開発の投資意欲を減退させていると言われている。近年の我が国から研究所を撤退させる動きとの関連性も指摘されている」。これは前回私が申し上げました医薬業界では昨年度、メルクさん、その前にはファイザー、それからバイエル、もう次々と外資が研究所を撤退させて、センター・オブ・エクセレンスをよその国に移しております。この制度も関係あるというふうに思われています。「同制度については、発明の法人帰属を原則とする、あるいは廃止して自由契約とする等を含め、制度の再改定に向けた本質的な検討」を至急行うべきだと思っております。これが1点です。 それから、2点目が、9ページ目の産学競争力を世界最高水準に引き上げる。まことに目標はこうであるべきだと思っています。ただ、具体的な施策の中のハウツーが、これで本当にそういうものが達成できるのかというのは非常に疑問を抱いております。1つには産学連携のもはや大学において知を得て、それを事業に結びつけるというのを、そういうビジネスモデルというか、そういうのはもう通用しないということは皆さん認識のとおりなので、やはり産、出口の見える、ニーズの伴った研究開発に抜本的に国が税制面あるいは予算を振り向けるという、そういうことが必要だと思います。今の大学はいろいろなほかの重要なミッションがございますので、単に産業のニーズに向けた研究をやれと言われても、それはすぐには動かないですね。やはりここに書いておられますように、共同研究、これは産がもうニーズを求めて近寄ってきているわけですから、共同研究に重点的に投資するのが一番理にかなうわけですね。そういう意味で、10ページに書いてありますような、予算・税制について抜本的に見直して振り向けると。ただ、これも単に科学技術予算に振り向けるのではなくて、共同研究とか、産に結びついた研究に重点的に振り向けると。要するに出口に結びつきやすいところに効率的に振り向けるということを強調していただきたいと思います。 それに関連して、先ほどと同じように、経団連の資料2(別添)の8ページの脚注に「米国では、出口に責任を有する省庁に科学技術予算の多くが配分されているのに対し、我が国においては文科省が予算の約3分の2を有している。この状況は、科学技術基本計画開始当初から見てほとんど変化がない」と、こういうふうに記載されております。こういう国の科学技術予算の振り向けも含めまして、出口に結びつきやすい共同研究のほうに重点的に予算あるいは税制を振り向けていただけるような施策のあらわし方にしていただければと思います。 もう1点、先ほど仮出願の制度がちょっと今まとめられているというふうにおっしゃられたんですけれども、私は制度全体のことから申し上げますと、仮出願の制度を本当に日本の特許制度に持っていくことが世界の知を集め、あるいはアジアのリーダー、世界統一特許に、そういうふうに目標を置いたときに、本当にいいのかどうかというのはよく検討しないといけないと思います。これはやっぱり我々産業界にとっては、あるいはそういう目標から見ますと、仮出願、今の日本の研究者が論文云々は金の話、そこの手間の話でございますし、アメリカがそういうものを先発明主義に基づいてとっているというのは、これはもう世界統一特許制度から見れば、それを是正していこうという動きのほうが私は正しいんだと思うんですね。アジアのリーダーたる日本がそういうものを設けていいのかということについても否定的で、こういう戦略の中にそれを書くこと自体ももうネガティブじゃないかなと私はそういうふうに思っています。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 3点のご指摘をいただきました。 恐縮ですが、時間がちょっと超えてしまったんですが、ほかにどうしてもご発言ある委員。山本委員。 ○山本委員 今のご意見に質問と意見がございます。まず質問ですが、出口にお金をつけるというのは、例えば共同研究の場合、企業が共同研究費を出していますが、例えばこれに対して税金をかけないとか、そういうお話なのか、それとも既に出口が見えている研究に国がお金を出すというようなこのなのでしょうか。両方なんですね、わかりました。 意見としましては、仮出願に関して言えば、渡部委員の資料7の3ページにあります様に、論文引用件数が日本で最も多い先生が120件の論文を出しているけれども、特許は2件という、これが現実なんですね。本当にこれでよいのかということを考えたら、やっぱり拾えるものをちゃんと拾っていかないといけないと思っております。これはイノベーションに結びついていない、論文を発表して終わりということが現実だと思っております。なので、仮出願という言い方がいいのかどうかは別にして、出願フォーマットを自由化して論文の形式のままでで出せるといことを、要するに論文でも拾えるということを考えていくべきではないかと私は思っております。そのほうがイノベイティブで国のためだと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 この仮出願というか、論文出願というか、コンセプトを、出願があるから仮出願だよと言うと、何か添え物的になっちゃう。だけど出願のフォーマットを実は自由化するんだよという言い方になると全然別のコンセプトになる。 ○山本委員 それでいいです。 ○妹尾会長 その辺のところも含めて、今、事務局に全部議論の整理と可視化をして、それに乗っかって考えていきたいというふうに思っておりますので、そこの点はご理解いただきたいと思います。これは賛成、反対、それぞれたくさんご意見はあろうと思いますので、それの議論の共通のプラットフォームをつくらないといけないというのが今我々の認識ですので、そこのところをご理解いただきたいと思います。 ほかにいかがでしょうか。きょうご発言いただけなかった委員の方々も多数いらっしゃいますが、よろしゅうございますか。 恐縮です。大変せわしない中でですが、大変濃いたくさんのご意見、ご提言をいただきました。これを事務局に整理していただくことになり、しかも次回の日程が大変迫っております。その中でどこまで事務局が倒れずに徹夜でできるかということなんですが、少しお願いをいたしたいと。次回はきょうの話を踏まえて、目標設定の話に入っていかざるを得ません。これは3月末までに取りまとめをしなくちゃいけないという、大変我々としては苦しい状況なんですけれども、我々というか、皆さんともどもですね。これはやっていかなきゃいけないので、ご理解をいただきたいと思います。 日程について事務局からお願いします。 ○高山参事官 次回の専門調査会は来週の金曜日、3月19日、朝9時から、また本日と同じこちらの場所で開催させていただきたいと思います。 ○妹尾会長 それでは、予定の時間を超えてしまいました。私の采配が悪くて申しわけございません。本日の会合をここで閉会したいと思います。 本日はご多忙のところどうもありがとうございました。 |