第2回 知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会

  1. 開 会 : 平成22年2月26日(金)9:00〜11:00
  2. 場 所 : 内閣府庁舎別館2階 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【担当政務官】 津村啓介 内閣府大臣政務官
    【委 員】 岸副会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、江幡委員、大渕委員、上條委員、久夛良木委員、迫本委員、佐々木委員、佐藤委員、高柳委員、中村委員、西山委員、野元委員、福島委員、山本委員
    【事務局】 近藤事務局長、内山次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開 会
    (2) 「知的財産推進計画(仮称)」に盛り込むべき事項について
    (3) 閉 会


○岸副会長
 どうも、皆さん、おはようございます。
 定刻になりましたので、きょうの会議をスタートさせていただきます。
 きょうは、知的財産に関する競争力強化・国際標準化専門調査会の第2回会合ということで開催させていただきます。
 本日は、本当にご多忙のところ、朝早くからご参集いただきましてありがとうございます。
 本日は、妹尾会長が所用によりましてご欠席なものですから、副会長である私が議事進行を務めさせていただきます。
 さて、本日は前回に引き続き知的財産による競争力強化・国際標準化に関してご議論をいただきます。前回会合において、各委員からご指摘いただいた論点も踏まえ、本日はより具体的な目標や施策をイメージしながら議論を深めていただきたいと思います。
 まず、冒頭に津村政務官からごあいさつをいただく予定でしたが、15分程度おくれられるということで、会議がスタートしたあとで、お見えになったときにごあいさついただきたいと思います。
 また、本日、初めて本専門調査会にご出席いただいた委員をご紹介いたします。
 迫本淳一委員でございます。ちょっと立ってごあいさつだけお願いできますでしょうか。

○迫本委員
 迫本です。よろしくお願いします。

○岸副会長
 よろしくお願いします。
 なお、本日は妹尾委員、それから渡部委員がご欠席との連絡をいただいております。また、迫本委員は所用のため、本日途中までのご参加という予定になっております。できるだけ早い段階でご意見などを言っていただければと思います。
 それでは、議論に入りたいと思いますが、先ほど申し上げたように本日は前回の議論を踏まえ、具体的な目標設定や施策をイメージしながら議論を行いたいと思います。前回の議論を踏まえて、事務局のほうから作成した資料について、まず説明をお願いしたいと思います。
 高山参事官、お願いいたします。

○高山参事官
 それでは、私のほうからご説明させていただきます。
 ご説明に先立ちまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第のところに配付資料のほうは並べさせていただいておりますが、資料1が、前回の専門調査会で出ました主な意見をまとめさせていただいたものです。資料2は、横長の大きな紙ですが、こちらは論点整理の紙でございます。前回提示させていただいたものから若干の修正をしております。後ほど修正内容についてはご説明させていただきたいと思います。資料3が、本日主に使っていただきます討議用資料ということになります。それから、資料4は、相澤英孝委員からご提出いただいた資料、資料5は、荒井委員、山本委員、渡部委員の3名から連名でいただいた資料、資料6が高柳委員からいただいた資料、資料7が本日ご欠席の渡部委員からいただいた資料になります。
 それから、一番下に未定稿という形でパブリックコメントの結果についてというものを配付させていただいております。現在、取りまとめ中で公表に向けた準備をしているものですから、まだ公表できる段階のものではありませんので、未定稿という形で今回添付をさせていただいております。
 配付資料は以上ですが、過不足等ございませんでしょうか。
 それでは、資料2から順番にちょっとご説明をさせていただきたいと思います。
 資料2、前回ご意見をいただいたものを反映させていただいておりまして、特に3枚目、右下部分に3と書いてあるスライドをごらんください。失敗事例等をいろいろと勉強したほうがいいんじゃないのかというご提示がありましたので、左側に携帯電話における失敗事例というものを載せています。
 
 それから、また数枚めくっていただきまして9枚目ですね。右下に9とあるところですが、左下のところ、マサチューセッツ工科大学の研究費の様子というのをご紹介させていただいております。
 それから、右下のほうには、バイドール法のことが少し出ましたので、バイドール法についてご紹介をさせていただいております。
 また、2枚ほどめくっていただきまして右下11番です。中小企業の海外展開支援のことについて、右下にまとめさせていただきました。
 もう一枚めくっていただきますと、右側に営業秘密の保護制度のことについてご紹介させていただいております。
 最後のページ13枚目ですが、右側にユーザー・イノベーションというものについて、現状をつけさせていただいております。
 資料の2については、以上です。
 続きまして、資料の3に移らせていただきたいと思います。これまでの議論とか、それからパブリックコメントやヒアリングの結果を踏まえて、具体的な目標とか、それから施策についてのアイデアを幾つか並べさせていただいております。
 まず、1枚目にはその現状認識と、それから目標を書かせていただいておりますが、目標は知的財産と、それから国際標準を戦略的に活用することによって、2020年までに大きな経済成長を達成しようというのが大きな目標になるかと思っております。
 1枚めくっていただきますと、1.国際標準化、知的財産権等の活用を通じた世界市場での売上増加や、技術貿易収支の拡大ということが、前回から1.としてまとめさせていただいております。これの下に具体的な目標とか、施策のアイデアを幾つか並べさせていただいております。
 まずは(1)とか(イ)と書いてあるようなところが目標のアイデアになります。その下に細字で幾つかの具体的な施策例というものを並べさせていただいております。
 1枚めくっていただきますと、今度は(2)でアジア諸国との連携強化というようなものとか、(3)の「安全・安心」を普及と、それから国際標準化活動の強化というような関連について、幾つかの目標と、それから具体的な施策の案というものを載せさせていただいているところであります。
 それから、4ページ目は、低コストかつ効率的なグローバルな権利保護を可能とするような施策について、目標と施策というふうになってございます。
 それから、5ページ以降は、今度は2.ということで、我が国のすぐれた技術を活かした世界に通用する新規事業を創出しようというものでございます。(1)は産学連携というところについて、幾つかの目標と、それから産学が共創する場を構築していこうというような幾つかの施策の例。
 もう一枚めくっていただきますと、真ん中辺ですが大学等の産学連携力を向上するために、既存の大学知財本部とかTLOを再編したほうがいいんではないかというようなアイデア、それから産学連携を促進する環境整備ということで、オープンアクセスとか、それから大学の特殊性を踏まえた制度の見直しというようなアイデアを書かせていただいております。
 (2)は、中小企業・ベンチャー関係でございます。
 もう一枚めくっていただきますと、それに関する目標を幾つか提示をさせていただいておりまして、具体的な施策の例としては、特許パック料金制度とか応援弁理士制度というような、新たな支援制度の創設、さらにはワンストップ窓口の設定、それから普及啓発活動をさらに強化していくというようなアイデアを幾つか並べさせていただいております。
 それから、最後になりますけれども、オープン・イノベーションに対応したイノベーションインフラ整備ということで、8ページになりますけれども、世界トップクラスの知財制度を実現しようというような目標ですとか、具体的な施策としては、特許の活用を促進するための制度整備、さらには営業秘密の内容を保護する。ダブルトラックの問題や、ユーザー・イノベーションの促進というような施策の例を幾つか並べさせていただいております。
 事務局からは、以上です。

○岸副会長
 どうもありがとうございます。
 それでは、皆様からご意見を伺ってまいりたいと思いますが、内容が大変多岐にわたりますので、資料3の整理に応じて各論点を区切って議論を進めたいと思います。
 しかも今回委員の方は20人ということでかなり多い調査会ですので、1人の方、できるだけ手短にポイントをついてご発言いただければと思います。
 それと、私は記者上がりなものですから、余り毛色が違っていて、こういうところで本当に司会など務まるのかと、嫌だ嫌だと言ったんですが、どうしてもやれというので。私は大蔵とか日銀が長くて、毎日夜討ち朝駆けして彼らと禅問答を繰り返して、彼らが本音で何を言っているかというのをかぎ取る訓練ばかり続けてきたものですから、ご発言の中でどこが本音か、どこがちょっと違うのかというのを感じたときは、突っ込みを入れさせていただきたいと思いますので、ひとつ、ぜひよろしくおつき合いのほどお願いします。
 では、まず今、高山参事官からもご説明いただいた1の国際標準化・知的財産権等の活用を通じた世界市場の増加という論点に関して、皆様のご意見を伺いたいと思います。
 この資料3というところの(1)から(4)について、主にご意見をちょうだいしたいと思います。特に資料にある目標ということ、この点については目標を設定するべきかどうか、その可否も含めてで結構なんですが、あるいは目標の立て方、数字ではないのか、あるいは別の立て方とか、私もその辺がややあいまいでありますが、そういうものを含めて議論をスタートしたいと思います。
 まず、ご意見のある方、おられましたら挙手をお願いしたいと思います。
 どうぞ。

○佐々木委員
 まずは目標のところですが、1.の目標のところで丸が2つありまして、上のほうの目標の世界市場規模、目標シェアのところは何らかの形で定めればいいと思うんですが、うまくいったときと、うまくいかないときの検証が、何が作用したのかというのは非常に難しいということで、ここは注意を要することと、下のほうの目標の環境技術の移転による技術貿易収支なんですが、これも環境技術に限ると技術貿易収支が瞬間風速的にはプラスになっても、将来的な競争力をそぐということもあり得るので、ここを継続的な目標にするのかどうかというところがポイントだというふうに思います。
 それともう一点、上の目標のところに小さい字で書いてあるところなんですが、スマートグリッド、燃料電池、電気自動車等々とありますけれども、これは前政権ではありますが、経済産業省主導でクールアースのエネルギー革新技術計画というのを策定しているはずでありますし、政権の継続性云々はともかくとして、いろんな国家施策の中でこれがどう絡むかというところを明確にしないと、あっちにもこれがある、こっちにもこれがあるということになって、また力が分散しかねないので、その辺は基礎点検等をきちっとするようにまとめていくのが重要だと思います。
 以上です。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 今、ちょうど津村政務官がお見えになりましたので、まだ最初の方のご意見が出たところなので、ぜひここで政務官のほうからごあいさつをいただければと思います。

○津村政務官
 おはようございます。遅参をして大変失礼をいたしました。
 このところ、コンテンツ強化のほうも含めて連日のように知財の専門調査会を開いていただきまして、一応、一通りお話を聞くようにしているんですけれども、大分議論が広がってまいりまして大変勉強になっています。
 3月末にまとめていくということで、日程がなかなか大変なんですけれども、副大臣や秘書官たちと私的な勉強会等も開いて予習復習にも努めておりますので、どんどんきょうも活発な意見をしていただければと思っております。
 特に気のきいたことも言えませんが、きょうもよろしくお願いいたします。

○岸副会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続き会議を続けさせていただきますが、まず、あと一人、お二人ぐらいご意見をちょうだいできますでしょうか。

○相澤(英)委員
 数値目標を設定すること自体に反対をするわけではありませんが、数値目標の設定の仕方によっては、かえって、好ましくない結果になるおそれがあります。例えば、特許庁の審査迅速化いうことが数値目標として設定されて、それに向かって法改正などをしたら、今度は特許出願が大幅に減少するということになりました。日本の特許制度の根幹のところがちょっと怪しくなってくるという問題が出てきました。数値目標の選定及び設定については慎重に取り扱っていただきたいと思います。

○岸副会長
 どうもありがとうございました。ほかにはいかがでございますか。
 あるいは、目標設定そのものが必要ないんではないかというご意見もおありなのかもしれないんですが、そういうご意見の方はいらっしゃいますでしょうか。それにかわるものがあるのか。
 どうぞ。

○佐藤委員
 数値目標というのは、一つの目標であることは確かですけれども、本来やっぱりグランド・デザインがあって、その中の支えとして何をメルクマールとしてそのグランド・デザインが実現できたかという位置づけで、目標というのが見えるような形であるべきだろうと思うんですね。ただ、そういう形で本当にこの目標設定が設定されているのかというと、まだそういう話になってないじゃないかというふうに懸念しております。
 そういう意味で、目標設定をするのはいいですけれども、本来その5年後、10年先にどうするんだという絵があって、その中でこれとこれは絶対必要だよねというような位置づけを、ぜひしていただきたいというふうに思っています。
 ただ、これを3月までにできるかどうか、とても心配ですけれども、ただ、そういう描き方でないと、結局何のためにこの設定がされているかというのが見えなくなってしまうじゃないかというふうに思います。
 それから、先ほど相澤委員からお話が出た目標設定の話ですけれども、1点だけつけ加えますと、ここ7年間の日本の知的財産戦略は、とにかくスピードを上げろということで、あらゆる制度改革をやってきました。その結果、やはりスピードを上げたために失ったものも出てきている。とにかく権利を早くつくれ、早く訴訟を解決しろ、そういう形で、そうしないと知的財産というのは十分に活用できないという、そういう絵を描いてきたわけですけれども、そのために、早くやったためにかえって権利が不安定になるとか、争いが複雑になるとか、いろんな問題が出てきている。そういうところをやっぱりもう一度、本当はこの段階で踏まえた上で、絵を描いたものの中でその具体的な目標設定というのがされるべきではないかと。非常にプリミティブな話をしてしまったのですけれども、そんなふうに思います。

○岸副会長
 今おっしゃったグランド・デザインというのは、あらゆる成長戦略も含めて、日本のいろんな施策で言われる話ですが、この知財の、しかも標準に絞ったときのグランド・デザインというのは、どういうものをお考えになって今おっしゃっていたんですか。

○佐藤委員
 大変難しいお話になっていますけれども、標準をとれば勝てるわけじゃないというのは、前回出たと思うのです。やはり標準をつくるための、基本的なデファクト、デジュールになる技術をどうやってつくるのだということがあって、かつそれがデファクトなりデジュールになるような事業戦略があって、それを実際にデジュールに固めるために、国際機関の中でどういう形で活動するかという組み立て方であろうというふうに私は理解しています。
 そういう意味では、パーツパーツとしては、そういうものの専門人材をどうつくるかとか、どういう組織をつくるかとかいうことは非常に重要な点なテーマですけれども、その中において今このものが日本では足りない、それをしなければいけないからこの目標なんだというような、そういう絵があったほうがよろしいじゃないかという意味で申し上げました。

○岸副会長
 もう一点、すみません。その際に必ず議論になるのは、国家戦略でやるべしという、例えば中国だと国家標準化管理委員会みたいな、韓国も恐らく国が中心になってやっている。ただ、それは本当に標準化を進める上で機能するのかという議論もありますね。今のご意見の続きで、国にそういう組織をつくるということは意味があるというふうにはお考えでございますか。

○佐藤委員
 この標準化とも含めてですけれども、今までこの戦略の中で議論されてこなかったのは、プレーヤーが見えないというところだと私は思っています。
 それは、議論的には産学官というものがあって、それぞれの役割を果たすということになっているのですけれども、その中でだれがイニシアチブをとり、だれがどういう役割を果たし、それが連携してどう動くんだということについては、余り議論がなされて来なかったんじゃないかというふうに思っています。
 今、中国、韓国のお話が出ましたけれども、彼らのほうはきわめて国家的にイニシアチブをとってドライブするという、そういう施策をやっている。その結果として非常に早いスピードでいろんな対策が出ている。
 きのう、おとといも国際シンポジウムで韓国の最近の特許制度の動きを見ましたけれども、この1年間で猛烈な改革が進んでいます。そういうスピードに対応できないのが今の日本ではないかということを、心配しております。
 そういう意味で、前回、私も戦略本部で申し上げたのは、やはりこの戦略をドライブする形で機能をどうやってつくるかということが重要じゃないかというところです。

○岸副会長
 ありがとうございます。少し突っ込み過ぎたかもしれなんですが、ほかに目標設定についてご意見がおありですか。
 どうぞ。

○迫本委員
 すみません。今回初めてなもので、前回の議論と重なってしまうか、またちょっとずれているかもしれないのですけれども、目標設定ということで、国際標準化等の知的財産のことからちょっとずれるかもしれませんが、私どもは映画・演劇のコンテンツという広い意味での知的財産の観点から、国のさまざまな委員会等で私がいつも発言していることなんですけれども、今現状で日本の国において非常に財政状態が厳しいという中で、なぜこの知的財産を強化すべきかというところは、はっきりと言ったほうがいいんじゃないか。それがないと、国益のためにやるだということが明確じゃないと、これを強化するということの腰が定まらない。やっぱりやる以上はこれを継続して、ある程度の成果を決めて、それが出なかったら見直すみたいなことじゃなくても、何があっても10年なら10年やり通すんだという覚悟がないとできないんじゃないかと思っていまして、コンテンツの関係で言うと、我々は業界を活性化したいという思いもあるんですけれども、それが日本の国益に結びつくからと思って、一生懸命我々もさまざまなボライティア活動のような委員会活動をやっているわけなんですけれども、1つコンテンツのところに限らせて言わせていただいて恐縮なんですけれども、文化であるということはありますし、それから産業の非常に波及効果が強くて経済に及ぼす影響が大きいということもあるんですけれども、一番重要なことは、日本のそういう知的財産といいますと、文化が外に出ていくことによって日本人がどれだけ得するかということだと思うんです。
 アメリカがアメリカ映画を見てもらうことによって、アメリカ人はどれだけ得しているか、冬ソナによって韓国人がこれまでの外交や政治等の努力にとても及ばないような、どれだけの国益に資したものがあるか、私どもが昨年製作にかかわらせていただきました「おくりびと」が、アカデミーをとりましたけれども、ああいうような映画が世界で今評価されるような時期に来ているわけで、やはり日本のそういうものが外にきっちり出ていくことによって、非常に日本の国益に資するんではないかと。ここはやっぱりはっきりとして、日本は何があってもやっぱりそういう知的財産等、今まで弱かったところをやっていくんだと。今の話もちょっと関係すると思うんですけれども、それを明確にする。それが日本人にとって得なんだ、だから何があってもやり続けるんだということを言わないといけないんじゃないか。
 我々は、本当にいろんな国の行政の方などとも話をさせていただいているんですけれども、まず一番困るのが、ジャンル別に分かれて、やっと最近民間のほうでも業界横断的になったが、国の場合はどうしても省庁縦割りになってしまうということが1つと、それから予算の見直しみたいな、単年度予算で、3年ぐらいで成果が出なかったら見直すみたいな。そうすると、国の担当の方が来て説明して、やっとわかっていただいたなと思うとかわっちゃって、またほかの省庁でも同じようなことをやっている。それが毎回、何度もで、ちっとも前に進まない。
 だから、やはりきちっとそういうことをやるんだということを、どういうふうになろうがやり続けるということを、ぜひやっていただきたい。それが本当に日本のためになるんだということがわからないと。やっぱりそういう活動というのは。
 特にコンテンツって、人と人とのつながりでつくってるものですから、例えば映画をつくるにしても、この人がどういう脚本を書くか、どういう美術をやるのか、どういう照明をやるのかと、1本をやるのに大体3年ぐらいかかる。そうすると時間がかかるんですよね。それに、ある程度きちっとしたプレーヤーを育てるためには、2、3本やろうとしたら、すぐ6年だとか9年だとかたってしまう。そうすると、その成果が出る前に、じゃ、その具体的な目標成果をどうしろという形で今までやってきたことを見直されると、非常につらいものがある。
 ですから、私は数値目標というのは非常に重要なことではあると思うんですけれども、それとともに、なぜこれをやるんだと、これがどうして国のために役に立つんだと、だから継続してやるんだということを明確に表明することが、やっぱり今の現代においては非常に日本において必要なものではないかというふうに考えます。
 ちょっとずれたかもしれません。

○岸副会長
 いえ、まさにその継続の意思、継続は力といいますけれども、それだと思うんですが、今、冒頭、評価ということをおっしゃいましたね。今お考えになってる評価というのは、どういうことを指しておっしゃって、その目標を設定して、それが目標に到達するかどうか評価で決まるわけですよね。その評価というのはどういうようなフレームだとお考えになっているか。

○迫本委員
 それは知的財産全般に通じることかどうかはわからないんですけれども、コンテンツの場合、非常に評価というのはしづらい。正直。何をもってその数値目標にするかということは非常に難しい。
 ですから、むしろ私はその数値目標よりも、これをきっちりやるんだということのほうが重要かなというふうに思っているんですけれども。

○岸副会長
 それは、例えばどうも文字で書くとお題目に必ずこういうのはなってしまう「頑張ろう」みたいな。そうではなくて、もう少し具体的に継続の意思みたいなのをどういうふうに表明したらいいと思われますか。

○迫本委員
 ですから、その数値目標というよりも、むしろ国としてはこういう形で10年なら10年かかわっていくとか、こういう形で、どういう形であろうがやっていくとか、そういう形で表明したほうがいいんじゃないかなという気がするんですけれども、それがあった上で各論の数値目標というのがあっていいと思うんですけれども。
 例えば、海賊版なんかの話があって、今我々の映画なんかも随分アジアから仕事をしに来たりしている人がものすごくよく働いて、話していると、我々が出した覚えのない映画とか見ているんです。するとダウンロードで違法でやっぱり見ていたり。そうすると、やっぱりそういうところが整備されたらいい。そういうのは数値目標として出しやすい。そういうことは各論として出していくに当たっても、それがなかったとしても、まず大前提としての大目標みたいのは、その方向性としてこれだけやり続けるんだということを、数値目標じゃない形で出したらいいんじゃないかというのが。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 今のは、どうですか。

○相澤(英)委員
 多分、今おっしゃったコンテンツの分野と、こちらが多分違うんだと思います。ですから、こちらでいくとコンテンツの問題と違って、重要なのはこの財政状況の中で財政支出を伴わない経済政策という点で、この知財政策というのが重要だろうというふうに思います。
 それから、数値目標というのも、さっき迫本さんがおっしゃられたように、コンテンツというのは目に見えない影響って非常に大きいんですけれども、こちらは経済問題なので、いろんな指標、例えばR&Dの額、これはいろいろ集計で問題がありますけれども、R&Dがどれだけ増えたかとか、そういうある程度の経済数値をコンテンツと違って使うことができるので、あるいは特許で言うと特許出願数とか、数の統計がある程度あるので、使う指標としてはないわけではないので、ちょっと感じが違うのかなと思います。
 すみません、津村政務官、失礼しました。

○津村政務官
 大変興味深いお話だったので、早速ちょっとマイクを握ってしまったんですけれども、自分の首を締めるようなことを言うんですが、やっぱり皆さんにお願いしたいのは、ぜひ政府の逃げ場をなくしていただく議論をしていただきたいんですね。
 数字かどうかは別として10年後のイメージをなぜ言っているかというと、それは1、2年のうちに何をやるべきかということを、よりはっきりと示すために、10年後はこうなんだから、あそこに行くんだから、じゃ1年目はそこまでいかなきゃ行けないよねということを、よりわかりやすく示すために10年後の話をしているわけであって、大事なのは1年以内に何をやるかなんだと思うんですよ。そうじゃないと10年後の話を幾ら毎年やったって、そんなのはふにゃふにゃした話にしかならないわけで、やっぱり私たちはマックスでも4年間の任期でやってるわけですから、そこは2、3年でおまえたち言ったことをやらなかったじゃないかと後で問われるような逃げ場のない目標設定をしなきゃいけないわけで、そうじゃないとマニフェストにならない、ただのいいかげんな明るいまちづくりみたいな選挙公約にしかならないわけで、私たちは、ここで僕はマニフェストをつくっていただきたいんですよ、もう逃げ場のない。
 だから、それは数値目標でもいいかもしれないし、2、3年以内に検証できるものとしての、あるいはそうでなければ、もっとゼロか1かでわかるような、著作権の死後50年、70年とかいう、ああいう話でもいいですけれども、どっちか、真ん中がないような、そういう目標を幾つか、目標というか施策と言うべきかもしれませんけれども、そういうものをここで皆さんからぜひ絞り込んでいただきたくて、そのときにもう一つお願いしたいのは、バランスよくいろんな分野からここに来ていただいているわけですから、当然皆さんの素敵なコンセンサスができるほうがおかしくて、いやそれはうちの業界というか、うちの仲間は困るよ、こんなことをされたらという方がこの中に必ず入っているような、そういうエッジのきいた議論じゃないと、何も新しいところに進まないんだと思うんですね。何かこんなことを言っちゃいけないのかもしれませんけれども。
 だから、ぜひ皆さん、いろんなお立場の方に来ていただいていますが、個人の思いでというか、何かを代表した形で来ていただいているわけではないので、そういう意味での責任は感じていただかなくていいと思うので、自分の仲間たちと多少違う意見かもしれないけれども、大きく考えたら確かにここはこうだよねという議論を、ぜひ個人のお立場でしていただいて、ここが国の、そして先ほどお金のかからない経済政策、まさにそうです。成長戦略のことを最初の会に申し上げたのは、やはり個人の権利保護だとか、いろんなことも重要なテーマで、そのことを軽視するつもりは全くないんですが、やはり国としてこの厳しい経済、財政事情の中で、知財というものに光を当てていっているモチベーションはやはり1つあって、ぜひそこに答えを一緒に出していただきたいと、そこは重ねてお願いしたいと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。最近のマスコミ論調を読んでいても、私も長くそんなところにいて記事を書いた人間だから感じるんですが、どうも劣化論だ衰退論だ、日本はこのままだと終わっちゃうみたいな、すごく後ろ向きの議論ばかりで、私も記者でいたらそんなことを書いているのかもしれないんですが、やや悩ましいなと感じております。
 結局、ちょっと生意気な言い方かもしれませんが、シュンペーターの言う創造的破壊、イノベーションでしか日本の成長はあり得ないし、その成長を支えるのは、そのワン・オブ・ゼムかもしれないけど知財だなと私は感じておりまして、しかも政務官は、これまでのいろんな記者会見を文字で読ませていただくと、例えば「先鋭なアイデアを出してほしい」とか、「とんがった議論をしてほしい」ということをかなりおっしゃっている。ぜひ、こういう会議でもあんまりお上品な発言に限らず、少しとんがったご意見も出していただければと思います。
 もうお一人ぐらい、目標設定で何かご意見をどうしても言いたいという方がおられたら、どうぞお願いします。

○高柳委員
 私は、薬屋なんですけれども、特にその数値設定の中の技術貿易収支、これは非常に我々としてはむなしく、これは決められたとしても産業界に求められても余りピントこないと。
 というのは、我々は今どこでもそうだと思うんですけれども、企業が生き残りをかけてグローバルに戦ってるわけですね。そして研究開発も別に国内の相手先でなくとも、ボーダレスに求めて、とにかく我々としては新薬を出していくんだという時代です。
 したがって、後で申し上げようと思ったんですけれども、世界中の英知が日本に集まる、研究が、あるいはリソースが日本に集まるような環境をつくっていただくことが基本であって、どこの国の収支がどうのこうの、我々はひょっとすると提携先の中国、あるいはアメリカの知財としてライセンスするかもしれません。あるいは物を出すかもしれません。トヨタさんなんかもちろんそうですよね。
 そういう中に、昔ながらの国の技術収支というのは、どこでどういうふうに計算されているのかもわかりませんけれども、そういうのを目標にして、これは何兆円とするんでしょうかね。どういうふうなものが出てきても、我々としては余りピントこないなという感じがします。
 もっと目標であれば、確かに数量的なものはもっと難しいかもしれませんけれども、やっぱり私から言えば本当に世界中の英知が、研究が、センター・オブ・エクセレンスが日本へ来ようという惹きつけるロケーションになって欲しい。現実にヘルスケア、医学業界では、昨年メルクの研究所が閉じました。その前にはファイザー、その前にはバイエル、次々と外資の研究所が撤退していっているんです。何百人という研究者が職を失っています。これは日本に魅力がない、センター・オブ・エクセレンスとしての機能が果たせないということを現しています。
 それであれば、我々も日本にじっとしていられないんですよ。やっぱり世界中が我々は競争相手ですから、そこの中で生き残っていかなければならないという。もちろん日本人ですから、企業ですから、日本でやりたいですよね。だけどそういう仕組み、政策を設けていただかない限りは、やっぱりここで生き残っていけないと。
 中国だって2008年にイノベーション型知財国家の構築という戦略を立ててるわけですよね。我々のもともとの2003年からの推進計画、ああいうもののいいとこ取りで、今、韓国も中国もやってきていますからね。ぜひ、日本がそういう研究を惹きつける政策や仕組みを作ることを切望します。

○岸副会長
 少し目標設定にこだわり過ぎたのかもしれないんですが、時間の関係もありまして、目標設定は今後、あるいは3回目、4回目、改めて議論になるかもしれないんですが、今ご意見いただいたように、少なくとも日本の知財で前向きに進んでいかざるを得ないということは事実でありまして、先ほど高山参事官からご説明いただいた、これらの1から4ぐらいの中で具体的な施策、何をしたら日本はいいのか、少なくとも中国、韓国、あるいは台湾にかなり水平分業が進む中でかき回されてるという言葉は違っているのかもしれないんですが、かなりやられていると言ったほうが近いのかもしれない。
 そういう中で、じゃ具体的に何をやったらいいんですかという点で、ぜひ計画的、あるいはとんがった議論でも結構ですので、ご意見をちょうだいしたいと思います。

○相澤(英)委員
 (1)から(4)の話ですね。

○岸副会長
 はい。あと、後半はまた別のほうでいただきたいと思います。

○相澤(英)委員
 (5)まであるのですけれども、(4)までの議論ですね。

○岸副会長
 冒頭、事務局から(4)までと言われていたので。(5)もいいそうですので、それも含めてご意見を。

○相澤(英)委員
 では、4ページの(5)のところの数値目標で、特許の海外出願比率というのが出ています。日本は世界第3のマーケットですから、日本のマーケットも非常に重要です。重点を外国に置くというのは、国内マーケットの軽視につながり、良いことではありません。海外の出願比率を数値目標にすべきではなく、海外の出願を数値目標とするならば、日本の出願数とならんで、海外の出願数を数値目標とすべきです。
 日本の特許権が海外でどれだけ登録されているか、いいかえれば、日本の審査がどれだけ承認されているということが重要です。これも数値目標とするならば、数のほうが良いのではないかと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 荒井委員。

○荒井委員
 目標設定ではないんですが、4ページの(5)の関係で、今、高柳委員などお話がありましたように、非常に企業もそうですし、研究開発が国際化してるわけですから、(ロ)に書いてあるように、相互承認に向けて着実に前進するのは非常にいいことですし必要だと思いますが、そのときに特許審査ハイウエイというのは1本に過ぎないんで、例えば日本と韓国、日本の企業が韓国にも出し日本にも出すというとき、あるいは韓国の企業が韓国に出し日本に出すというときには、ぜひ日本と韓国の特許庁が共同で審査をすれば一度に済んでグローバリゼーションに役に立つと思いますので、ぜひ施策例にはそういう2国間での国際的な共同審査を開始すると、そういうことで、ぜひアジアの共同体じゃないですけれども、研究開発のベースもそれによって非常にできるし両方の無駄も減るわけです。ばらばらにやっているのは無駄なわけですから、ぜひそういうものを、今回は大胆に踏み出していただきたいと思います。

○岸副会長
 荒井委員にお聞きしたい。今、新聞記事で読む程度の知識しかないんですが、審査ハイウエイはたしか13カ国で既にインフラはある程度整ったというような記事を読んだ記憶があるんですが、現状はどうなっているっているという理解ですか。

○荒井委員
 数字は、ここの資料にございます。資料2に、真ん中に特許審査ハイウエイが、日本からアメリカへの、下のほうに申請件数が。

○岸副会長
 何ページですか。

○荒井委員
 7ページです。資料2の7ページの真ん中の下のほうに実績が書いてありまして、日本からアメリカに3年間で1,300件出たと、年間平均すると500件なんですね。
 一方、日本からアメリカへ出願しているのが年間で3万件なんですよ。ということは、1%しか使われていないんです。ということは、これは制度的に、正直言うと企業の皆さんに聞いてみると、手間がかかるんで余りこれは使いたくないというのが、ここへ出ているんだと思うんですよ。政府は一生懸命努力しているけれど、日米のように企業が大変特許を取りたい間でも、実際上はまだ1%しか扱ってない。
 したがって、これはもちろん趣旨はいいわけです。特許庁間の協力は、趣旨はいいんですが、企業の皆さんの実態のニーズには余り合ってないというのがこの数字に出ているんだと思うんですよ。これは日本とアメリカがそれですから、ましてやほかの国との、実績はどれぐらいあるんだというと非常に限られる。
 ですから、政府間で協力するということの趣旨はいいし、進めると。しかし、もっと企業の皆さんから役に立つのは、いっぺんに審査すれば済んじゃうだから、両方で同じ結果が出るほうがいいんで、次には企業の皆さんもグローバリゼーションはもうそこまでいっているということだと、僕はこの数字から見ています。

○岸副会長
 ありがとうございます。手間がかかるというのは一つの悩ましい表現だなあと思うんですが、それで1%に過ぎないと。この手間がかかるというところ、もし企業のご出身の委員の方で実態を把握されている方がおられたら、少しお話しいただけますか。よろしくお願いします。

○福島委員
 荒井委員のご意見とは少し違うかもしれません。手間がかかるというというよりも、制限が色々あるという点の方が問題であると思います。現実には日本のハイウェイ制度には制限があり、その制限を満たす出願であれば数も当然限られてきます。手間という意味では、先程より荒井さんが言われたように、例えば日本で審査された案件の結果が他国でそのまま尊重され利用される、それによって結果としてグローバルに権利範囲のバランスが取れるといいますか、範囲が調和されるような形がグローバルな事業を行う立場からすれば極めて重要な条件と考えています。
 その一つの手法として、米国との調和もあると思いますが、もっと広がりのある仕組みにどう変えていったら良いのか、現状は各国がそれぞれの国家権限として、それぞれが独自のペースで審査をされますから、一私企業としては出来る範囲は限られていると思います。少なくとも最終目標として、同じような権利範囲がグローバルに出来るだけ同じようなタイミングで取得できることが事業として展開する上できわめて重要かと思います。その一手法としてハイウエイを如何に変えていくかという議論をしていただければ、有難いと思っています。

○岸副会長
 今、冒頭制限があるとおっしゃいました。制限って何を指しておっしゃっていますか。

○福島委員
 日本で言えば早期審査をかけた案件についてのみ、この制度を適用していると。

○相澤(英)委員
 そもそもこの制度の適用に制限があるので、そう増やしようがないでしょうというのが、多分、福島委員がおっしゃった。

○岸副会長
 それは、早期審査がポイントですか。

○福島委員
 現状は、早期審査の対象のみにこの制度を使わせていただいています。これは特許制度の様々な仕組みとの絡みがありますから、当社の出願が早期審査に馴染むものもあれば、そうでないものも当然あり得ると思います。

○岸副会長
 それじゃ、事務局のほうからこの点について、ちょっと説明をしていただきたいと思います。

○高山参事官
 ちょっと簡単にご説明をさせていただきます。
 特許審査ハイウエイの仕組みというのは、第1国で特許になったものを第2国で早期に審査をして早目に結果を出しましょうというものですので、例えば日本からアメリカの場合に、まず日本で特許になっていないとこの制度が使えない。また逆に言うと、アメリカから日本に来るときも、アメリカで最初に特許になっていないと、この仕組みは使えないということで、そういう意味での制限というのはありますが、まず最初に第1国で特許になったというものを第2国でも特許になりやすくしましょうという、そういう仕組みでありますので、すべての出願が特許にすぐなるわけではないですので、特許にならなかったものはこの仕組みは使えませんので、そういう意味ですべてのものがさっさと次の国で使えるという仕組みにはなっておりません。
 それから、あと現状は日本のほうがややアメリカと制度が違いまして、日本は審査請求制度というものがございますので、アメリカで先にどうしても審査をされるケースが多いものですから、日本からアメリカに行くというのは、行きにくいというような状況になっているというのが現状であります。

○岸副会長
 ほかに、どうぞ。

○高柳委員
 前回も申し上げたんですけれども、ハイウエイは一方通行なもんですから、自国のものが特許になってからでないと利用できない。そういう意味ではいろいろ難しい点があると思うんですけれども、荒井委員のご指摘は、私も非常に賛同するところがありまして、少なくとも東アジアだけでも双方向、韓国にこの間行ったら非常に、何でハイウエイといっても片道なのかと、韓国の審査は信用できないのかとか、もっともっとハイウエイだけじゃなくても東アジアは、特許制度も非常にもともと日本の制度をベースにしているわけですから似ている。それから、中国、韓国、日本でハイウエイ双方通行、あるいはそれ以外の方法で審査協力をする。それを日本がリードをすると、東アジアの知財制度を日本がリードするということが重要だと思うんですね。ぼやぼやしてれば、もう5年たったら中国がリードするようになるんじゃないかと、それを心配していますね。
 いいことなんですけれども、日本がやっぱり東アジアでリードして、この知財制度をギブアンドテイクしていくということが必要だと思いますし、そのためには5年、10年のことを言えば、本当に英語化ということでコストも安く審査請求料も安いと、そういうような制度を率先してやっていくべきじゃないかなと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 審査ハイウエイについては、恐らくまた議論が、この後3回目、4回目と続くかもしれませんが、時間も限られておりまして、ほかにおっしゃりたい方がおられると思いますのでお願いします。

○相澤(益)委員
 (4)のところの(イ)です。人材の問題であります。この人材の問題というのは、知財戦略の中で常に出されていて、いつも具体的にどこまで達成できたかということが把握できないという状況のものだと思います。
 今回、ここに上がっているところは、もっとそこが心配な目標の立て方ではないかと思われます。出すならば慎重に、かつ具体的にしなければいけないんではないかと思います。特にここで目標値が専門家ということで(●人)ということになっております。この専門家というのは、どういうレベルの人を指して、しかも何人ということなのか。これは教育コースの制度設計がなされて、こういう人材が、何人育成されるという、そういうプログラムが提起されるならば意味があるんですけれども。ここの施策例ということで掲げていることは、そういうシステムの問題でもなさそうなので、これをより具体的にする必要があるのでは。今まで知財人材で具体的に進んだのは、専門職大学院の知財人材育成コースが、幾つかの大学で大学院の専門職課程としてつくったこと。こういう場合ですと制度設計があり、かつ人材育成の目標値が設定される。そこまで入れるかどうかというところは慎重にしなければいけないところではないかというふうに思います。

○岸副会長
 わかりました。

○相澤(英)委員
 知財専門家でいいますと、弁理士さんの数は順調に増加していますので、人材育成では、そこも評価の対象にしていただきたいと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。知財の議論をしていくと、私も一記者として10年ぐらい一生懸命取材をしている中で、常に議論していく最後の最後は人材だねとなるんですね。やっぱり専門性を持った人材をいかに育成するか。
 例えば、国際標準で作業部会やなんかで動いてる人間の動きを聞いてると、例えば中国はジュネーブに1つの作業部会で10人ぐらいの人間を送ってきて、わっとやる。それに対して日本人は2、3人が行って、日本人のメンタリティーもあって英語もちょっと難しいなというので後ろのほうに控えていて、スマイル・サイレンスなんですか、そんな感じでいるというのは話もよく聞いて、やっぱり人を育てて、しかも交渉力があって、英語で技術が語れて、これは大変高望みかもしれないですが、そういう人材をいかに育てるかというのは、私は究極の目標だと思います。
 相澤先生がおっしゃるように、それは数値目標というのとちょっと違うんだと思うんですが、その人材育成という点で、あるいは企業の現場なりで見ておられて、あるいは国にこうしてほしいという要望もあるのかもしれませんが、何か感じているところ、あるいはこういう施策を入れるべきではないかというようなお考えがおありの方がいたら、ご発言いただければと思います。
 どうぞ。

○佐々木委員
 私は、ここで施策をどう考えるかというところで、実はちょっと疑問がありまして。といいますのは、標準化人材をどう育てるかという何年か前の委員会にも出席させていただいたんですけれども、そのときにやっぱり問題になったのが、経済実態として動いている企業の中で、標準化に携わる人間が余り高く評価されないとか、まとまったその組織がないとかいろいろ言われていますが、だから組織をつくる、あるいはその人材を育てるというのは、ちょっと私は本末転倒な感じがします。
 といいますのは、やっぱり各企業が生き残りをかけて必至にやっているんで、必要があれば地球の裏側にまで研修生を送ってやってきたわけです。ということは、ひるがえって標準化人材を考えると、標準化について見えていなかった部分もあると思うんですが、標準化に強い競争力を求めてこなかったというのが実態で、もしそれが本当に企業の競争力の根源であれば、当然そういう人材を早く育てて、大学にもそういう人材の輩出を要求し、社内でも育てて、そういう人間が企業のトップについてくということがもう起こっているんだと思うんですね。
 だから、そこのところを余り人材ありきの論点でいくと、また人材はつくればいいんだけれども、結局その社会の中で埋没してしまうことが起こりかねないので、その辺は一歩引いて見たほうがいいんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。

○岸副会長
 もう一人ぐらいご意見をいただきたい。上條委員は、人材の件で、ご自身がそのご専門家でおられるので、ちょっと上條委員のご意見もお聞かせいただけますでしょうか。

○上條委員
 ありがとうございます。私共は金沢工業大学大学院虎ノ門キャンパスにおいて、実際に国際標準化戦略プロフェッショナルコースを2009年度から開講しておりまして、国際標準化人材育成を行う専門のコースとしては、日本で最初にスタートさせて頂いたわけでございます。本コースを開講するにあたり社会人大学院生を募集した際、もし標準化人材の重要性が世の中に既に浸透し認識が高まっているのであれば、募集定員以上の沢山の方が集まってくるはずですが、実際は、標準化の重要性を説明会等で解説しながら、研究開発戦略、標準化戦略、知財戦略を三位一体で捉えて戦略立案できる人材や、国際的な標準化の現場で交渉に臨めることができる人材が、国としても企業としてもこれから求められるということを伝えつつ、受講生を集めているのが現状でございます。標準化人材の重要性・必要性を啓蒙しながら、標準化人材の育成を進めるということは、いわばトンネルの端と端を掘り下げていくような作業であり、両方のアプローチが必要がと思います。やはり、企業経営の中でいかに標準化が重要であるかを特に経営者の方々に認識して頂き、知的財産や研究開発のマネジメントと同様に、標準化をどのように進めていくかを経営戦略の一環として位置づけると同時に、社員に対して標準化についての研修を行ったり、現場での経験を積んでもらったり、場合によっては社会人大学院等も活用して頂いて、標準化のマネジメントができる人材の育成も行っていくことが重要だと思います。
 ただし、一言で「標準化人材の育成」と申しましても、経営戦略を立案するという役割を担って、国際的な会議等で国や業界や企業を代表して交渉に当たるような、英語、技術、交渉に長けたトップレベルの人材を育成する、ということも必要だと思いますし、一方で知財担当、研究開発担当の方や、入社間もない社員に対して、知財研修や新人研修等の場面で、ビジネス・リテラシーの一つとして標準化の重要性を認識していただくような教育・人材育成も、それはそれで必要だと考えています。

○岸副会長
 その点で、国から予算をもらって、その予算で何かやりたい、やればできるんだと、何かそういう見通しみたいなのはあるんですか。それは関係なくて、予算とは全然違うレベルで民間企業なり大学なりが、自分たちのプログラムの中で一生懸命啓発しながらやっていけばできるものなのか、その辺はどうお考えですか。

○上條委員
 今、申し上げたように、例えば大学生、理系大学院のドクター、ポスドクの方々のリテラシーとして、標準化の基礎知識や大枠を学んで頂くというようなことであれば、大学や大学院の中のプログラムである程度カバーをするということはできると思います。そして、私どもの社会人大学院では、社会人として実際に活躍されている学生さんを対象としておりますので、基礎的知識のみならず、実践的な内容、例えば交渉学の演習を行ったり、国際標準化機関の議長経験者や企業の現役の標準化戦略担当者等に講義を担当して頂き、可能な限り実践に役立つ講義内容を準備しています。しかしながら、現在の状況としては、大学や大学院などで標準化について教えられる人材の数がそもそも少ない、という問題があります。知財人材育成のときもそういう議論はあったと思いますが、教えられる人材をまず育てなければいけないと考えます。例えば、企業の第一線で標準化の実務に長年携わってきたご経験のある方や国際標準化機関の会議議長の経験者の方等に集まって頂き、そういった方たちに標準化を教育できる人材になって頂くためのプログラムや研修などを、ぜひ国の予算などを使って構築し、大学院や企業研修などの標準化人材育成の場で教壇に立って頂くなど、実行できたらいいのではないか、と考えております。

○岸副会長
 ありがとうございます。前半の議論で人材を離れて、また別のテーマで何かおっしゃりたい方がおられたら。
 どうぞ。

○佐藤委員
 標準化の話ですけれども、中国の知財では標準を語らないのは一流の知財専門家ではないというふうに言われています。
 そういう意味では、要は発展途上国、先進国を追いかける人たちからとっては、国際標準というのはきわめて大きいなバリアで、これを超えない限りは国際市場にて活躍できないという非常に強い危機感があります。
 日本の中で、じゃ、それがどこまであるのかということがポイントなんだろうというふうに思うんですね。そういう意味では、業界ごとによって、やっぱりこれも国際標準に対する感覚が全然違うんじゃないかと。まさに国際標準に乗らなければ商品が出せない業種と、そうではなくてある程度自己完結型にビジネスができるフィールドと、また全然違う。だけどもIT関連のほうでは、もう国際標準なしには絶対いけない。また、だからこそ今これが問題になっているというふうに私は理解してるんです。
 先ほど人材の問題が出ましたけれども、私は弁理士で、まさに知財の専門家という立場にいるわけですけれども、ここの中ではやはり一番大事なのはOJTで実践をしない限り、本当の専門家は育たないというふうに思ってます。
 学問で幾ら教えても知財専門家はできないです。基礎的な素養は身につけられますけれども、やはり現場において本気で戦って、戦ってきた人が実際に語れる話だろうというふうに思います。
 そういう意味では、この知財標準の専門家を育てるならば、ということを目指すんであれば、そういうところにチャレンジしていける人をどんどん送り込んで来る、また活躍できる場をどんどん国が支援していくということが必要じゃないかということが1つ。
 それから、もう一つは、やはり企業側がみずからの企業生命をかけて、どんどんそれに取り組んでいくということが必要ではなかろうかというふうに思います。

○岸副会長
 活躍できる場を設けるというのもおっしゃられましたけれども、企業でなく国でやるとすると、どういうことなのか、何とか人材センター、国際標準化人材センターみたいなのをつくって、そこでというようなお考えでおっしゃいましたのでしょうか。

○佐藤委員
 私は知財の専門家って、我々は今、弁理士も、保護の段階から活用、それからそれの戦略まで我々がかわらなければならないと言われているわけですね。だけど実際にそれにかかわってない弁理士が、それをやれと言ってもできません。
 そういう意味では、そういうところに人を送り込んでいって、実際に経験しながら育てていくというのが、やはり実務家としては非常に重要だというふうにいうふうに思っています。
 じゃ、そうなったときに教えられる人は何人いるか。これも非常に限られている話なんで、その限られた人たちが、いかに次の人たちを育てるために指導し、また協力していくような仕組みづくりをしていかない限り、そういう人がふえていくという構造にはならないんじゃないかというふうに思います。

○岸副会長
 どうぞ。

○福島委員
 自らの経験から申し上げますと、知財部門を担当する前に技術者としてISOの標準化やDVDのデファクトをつくるとき、様々な経験をさせていただきました。
 先程、佐々木委員からもありましたように、企業は標準化活動が本当に事業として成長するためのものであれば、決して企業の中で標準化を担当する人間が粗末にされるということはあり得ない。一方で、自らの経験から申しますと、技術者自身が十分に標準化の目的や知財の重要性を考えて取り組んできたかというと、自社に限らず周囲を見ても、必ずしも言い切れるところは少ないかもしれません。
 ただ、一方で標準化活動だけを余り声高に言われますと、標準化活動自体を目的とした仕事にしてしまうという側面も非常に強くなり、企業の中では課題になることもあります。標準化された規格書を策定することが目的ではなく、企業の標準化活動は商品に結び付く事業となって初めて成長に繋がります。標準化そのものだけを議論する人間であってはならないのですが、この点が時として薄まってしまうと、課題ではないかなと感じています。

○岸副会長
 ありがとうございます。かなり、そこは言い得て妙といいますか、初めに確かに標準化ありきではないというのは、技術開発の世界の方はみんな言いますね。
 でも、逆に標準が大事だと言いながら、標準化担当の方というのは何か知財本部の端っこのほうにいて、毎月バミューダへ行きました、ハワイへ行きましたというんで、何か白い目で見られているような、私もかなり大手企業何社かの標準化担当の方と議論をしたんで、かなり彼らが悩ましい状態に置かれている。
 最近は、特にリーマンショックの後は、何かビジネスクラスで行けたのがエコノミーになっちゃったとか、3回通っていたのが2回に減らされたとか、そんな話ばかり聞いていまして、私は知財戦略というのは、生意気ですけれども、企業のトップがどうそれを評価するか、それによって知財の動きも変わるし、その中における標準化の動きも変わると思うんですが、企業の中で知財本部の中に大概ありますよね、標準化担当の方がおられますよね。そのポストの地位というのは、ここ何年か、かなり高まってきてるんですか、それとも一部の人が走り回ってるという状況なのか、その辺どうでしょう。本音の部分として。

○福島委員
 他社の状況は何とも申し上げられませんが、弊社の場合は明確に評価されていると言い切れます。標準化のために知恵と時間を使って事業成果を上げた方は、担当役員クラスまで適正に評価されていると言い切れます。
 先程、他社の標準化担当の方のお話がありましたけれども、弊社にも同じような位置づけの担当者がある程度いることも事実です。そういった方々の仕事ぶりと言いますか、実績を見たときの大きな課題は、事業視点が無くて標準化のための標準化活動を行われていると思っています。

○岸副会長
 企業の方でもう一人ぐらい。
 どうぞ。

○佐々木委員
 先ほどの発言でちょっと誤解をされたかもしれませんが、標準化に走り回る人は、ちょっと変な言い方ですけれども、リスペクトはされているんですが、この分野の標準化はこの人がやっているねというのがあるんですけれども、やっぱり今おっしゃったように、標準化については非常に詳しいんですけれども、競争優位の標準化で何を求められているかというと、例えばこういう技術を開発して、ここだけをブラックボックス化して、ここは特許で開放することによって、あるいは、ここは標準をとることによって、結局全部我々のフォロワーにできるよというような、その企画力というんですか、そういう意味での標準というのはきわめて我々も重要視して、遅ればせながらどうするんだというのをやって、かなりそれに対してのプライオリティーというのは高まりつつあるんですが、仮にそういう戦略ができると、あと国際会議に行ってもらって、発言してもらって、何をしてもらうというのは、それはもうちょっと別の専門家に求めればいいのかなと。一人ができればそれはベストなんですけれども、そういうふうに考えたときに、こちらのほうの標準化のところは、やっぱり人材先にありきということをやるとちょっと問題があるのかなと。
 今一番求められているのは、この根っこの戦略をつくるところ、ここが重要だというふうに思っていまして、企業の中も大分そういう感じで標準化にかかわる人を見てるという、そんな状況です。

○久夛良木委員
 私の経験で、この標準化にちょっと意見を述べさせていただきたいんですが、ほかの委員の方と意見が違うかもしれませんけれども、標準化するときに、知財の方が出られる場合と、例えばISOですが、結構最終ファイナルステージのときは専門家の方が表に出るケースが多くなっているんですけれども、先端領域を議論するときというのは、もといた私の会社の場合、えてしてエンジニアが直接出ていってしまうケースがあるんですね。
 そうすると、どうも自己中心的になるというか、セルフィッシュになって、何とか自分の意見と自分の特許を、ひいてはそれを出してる会社を背景にして、なるべく多く通そうとするわけですよ。
 そうすると、結果どうなるかというと、なかなかまとまらないということと、その標準化案そのものがある意味で美しくなくなるということがどうも起こってしまって、それがひいては国際競争という中で、何か日本の人たちだけで話をしていると次につながらないような標準になってしまう。これが通信においても電機業界においても、よく手打ちというのがあるんですけれども、手打ちとかやると本当にきたないものになってしまう。
 これは私の意見なんですが、やっぱり標準というのは競争するための土台だと思う。標準になったからといってお金が儲かるわけでも何でもない。やはり標準というのは次の新しい標準をつくる大きなきちんとした土台でなくちゃあいけないと思うんですね。つまり、標準というのは進化していくものだと。
 そういう意味で、大きな意味でやっぱりいろんな階層的レイヤーを考えながらというか、例えば10年なら10年でもいいし、20年、30年進化するためにはどういう標準がいいかをまずつくる。その上でどういう競争がフェアにされて、その上でまた次の新しいイノベーションが起こって、またその上にきれいに次の標準が乗る。通信分野ではたしかそういうふうに考えてつくっておられますが、そういうようなグランド・デザインを、みんなでコンセンサスをとって考えていただければと思うんですね。

○岸副会長
 久夛良木さんの前おられた企業は、すみません、名前を出すといけないのかな。標準化に関しては、私も随分大手企業を取材して、きわめて先進的だなと私は思ったんですね。それは多分、これも失礼かもしれない、ベータマックスの失敗から相当学んで、それが後のあの会社の標準戦略の、ブルーレイはまさにそうだと私は思っているんですが、あの会社の標準化に対する社の中の目標設定というか、考え方というか、あるいはコンセプトというか、何か他社と違うものがあるんじゃないかと私はぼんやり思っていたんですが、その辺はいかがでしょうか。

○久夛良木委員
 基本的にバイタリティーがあったということは間違いないです。いろんなものを生み出してしまう。何かいろんなもの考えて生み出して、それを提案するということが楽しくてしょうがないという時代ではあったと思いますね。
 あと一つ、私のメンターでもある本当に聡明で優秀な方がいらっしゃって、その方の何がすばらしいかというとフェアなんですよ。この標準化というときに、フェアさというのはとっても大事で、例えば標準化委員会でチェアマンをやれるかということです。みんなをまとめていって、いろんな人が結構セルフィッシュなことを言ったり、自分の技術が一番いいんだと本当に信じ切っているわけですが、何をやるためにこの規格を決めるんだと、それによって将来何を生み出すのかという、そういうような視点で考えられていましたね。

○岸副会長
 フェアというのは大変これもキーワードだと思いますが、それは御社にはフェアな人がかなりおられた。

○久夛良木委員
 少なくとも、私が現役だったころにはいました。

○岸副会長
 ありがとうございます。変なオチになってはいけないので。
 では、ちょうど時間も真ん中あたりにまいりまして、少しまだ言い足りない方もおられるかもしれないんですが、もう一つのほうの大きな枠組みで、資料3の5ページを開けていただくと2のほうで、我が国のすぐれた技術を活かした世界に通用する新規事業の創出という大きな枠になっておりますが、こちらのほうにちょっと議論の焦点を移していきたいと思います。
 まず、この点に関して事前にお読みいただいたと思うんですが、この点に関して何かご意見がまずある方、挙手いただければと思いますが。
 はい、どうぞ。

○荒井委員
 5ページからということでよろしいですか。

○岸副会長
 結構です。

○荒井委員
 3点お願いしたいと思いますが、1つは大学の関係、2つは中小企業の関係、3点目はニセモノの対策です。
 第1点は、6ページのところに、下のほうに産学連携を促進する環境の整備というのがあって、2つ目のポツに、大学等の特殊性を踏まえ制度を見直す。「(中期)」とあるんですが、これを短期にしていただきたいと。その意味をちょっと資料5で補足説明させていただきたいと思います。
 前回、山本委員から本件提案がありまして、大学の関係者から大変強い要望がございますので、今回、渡部委員と3人で資料5という形で配付させていただきました。
 大学の学者は、国際競争が激化しているため一刻も早く論文を発表したいという性格をお持ちですし、一方iPS細胞のように研究成果を特許化しなければ実用化しない、特許も時間との競争と、この2つの要請にこたえるために2つの提案をいたします。
 1つは提案1、論文による仮出願制度を認めるということでございまして、論文ですから発表して、それを特許として出願して、出願日を確保するということができるようにして、ただし1年以内には本出願に切りかえていくということでございます。
 提案の2は、発明の新規性喪失の例外規定を大幅に緩和するということで、特許は本来自分が発明したら、いい研究をしたらそれで特許にするのでいいわけですが、たまたま人に発表してしまったら特許にしないと、自分のものであってもですね。そういう制約があるんで、これの調整をするものとして、もちろん人の発表によるものは特許にはならないわけですが、自分が発表したものについては、それに基づいて特許にしてもいいというふうにしたらいいんじゃないかということでございます。いわゆる猶予期間とかグレースピリオドと言われていますが、現在は特許庁指定の学会ということで非常にしばられておりますので、日本では余り使われていないと。しかも期間が6カ月以内ということになっております。この辺をアメリカと同じように、あらゆるどこの発表でもいいから、それを認めたらいいんじゃないかと。それから1年以内にするということでございます。
 下に@とございますが、日本の学者の先生は一生懸命研究されていても、この2つの制度がアメリカに比べて劣っているため、日本の学者は不利になっているということだと思います。
 それから、仮出願を認めて論文を早く発表すると。企業の皆さんは知財部がしっかりありますから、特許を出してから論文を発表するということはできるわけですが、大学にはそういう体制もありませんからできない。しかし一方、論文は早く発表したいという競争がありますので論文を早く発表するわけですが、そのこと自身は社会にとって、あるいは世界にとってもいいことだと思います。研究成果を早く発表するということで、社会が進歩するわけですから、マイナスの影響を受ける人はいないと思われます。
 Bは、実はこの辺は10年以上前から議論はあるんですが、アメリカを先願主義に移行するための取引材料にするとか、ヨーロッパは厳格だからみんな合わせてやったらどうかということを10年以上言ってきているんですが、実際には止まっていまして、まとまっていません。
 したがいまして、とにかくめども立ってないんであれば、まず日本の学者が不利な状態を直して、どんどんいい研究をしていただいて、いい特許にしてイノベーションに進めていただくということがいいんじゃないかと思います。
 この関係で、国内優先権制度で同じ効果が出るという意見もありますが、これは資料2にはそうやって書いてあるんですが、実は国内優先権制度は、やっぱり特許として出願しないといけないわけですから、やはり大変な手続、手間がかかりますので、正式な特許出願の前提の国内優先権制度とは違うので、ぜひ論文による仮出願制度を導入していただきたいと思います。
 もう一点は、こうすると特許の質が下がるという意見があるんですが、いい発明をして、いい研究を大学の先生がして、それを論文に発表して特許にするわけですから、特許の質が下がることはないので、特許の質が下がるとすれば学者の研究の質が低いということなので、この点は関係ないと思います。
 以上は第1点でございますが、6ページの(2)から7ページの中小企業の関係がございますので、この関係で7ページの施策例のところでございますが、中小企業に対し、中小企業はとにかく今は国際競争が大変で、知財で守っていただくという方向は大賛成で、書いていただいていることは大変ありがたいと思っておりますが、支援施策の充実の2つ目のポツ、3つ目のポツは、「拡充」すると書いてありまして、実は現在ある制度が大変使いにくい、あるいは非常に限定されているということですから、単に拡充ということではなくて、例えば次のように修文していただいたらどうかと思っております。
 2つ目の点は、特許料等の減免制度を大幅に拡充し、対象を中小企業全体に広げる。
 3つ目の点は、この制度もほとんど使われていませんので、外国出願費用の助成制度を抜本的に拡充すると、こんなふうに直していただきたいというお願いでございます。
 それから、その下に普及啓発活動の強化ということで、ノウハウの秘匿その他、営業秘密の話がございますが、特に中小企業にとっては技術の流出・漏えいが大問題になっておりますので、中期ということではなくて、もう今喫緊の課題ですから、これも短期にしていただきたい。2つとも短期にしていただきたいと思います。
 それから、8ページというか、一番最後に(4)として、ニセモノ対策を抜本的に強化するというのを追加していただきたいというお願いでございます。
 これは、ニセモノ対策は工業品だけではなくて、コンテンツとか、農産物とか、今いろんな分野で知的財産が問題になっているわけでございまして、日本のそういう企業、国民が持っている知的財産は国家の財産だと思いますので、国家がしっかりそれを保護するという体制をつくっていただきたい。もちろん民間もしっかりやるし、政府もしっかりやると。それに必要な体制を整備するとか、法律を直すとか、予算を使うとか、あるいは外交力を使うということを、ぜひ入れていただきたいと思います。
 以上3点です。

○岸副会長
 この件に関しては、共同提案者である山本委員のほうからもご意見をいただければと思います。

○山本委員
 補足をさせていただきます。よく日本の産学連携、もっと頑張れという話があるのですけれども、ルールが、アメリカの方が有利なんですよね。アメリカでは研究者はとにかく発表と同時に権利を取得できるという点で比較しても、日本はどうしても出願してから発表しろと言うと発表をおくらせてくださいという話になります。大学での発明は完全に発明が完成してから出願されるというよりは、研究者が一番発表したいタイミングである、一番大きなインベンション、発見があったときに発表したいというときに、どうしても発表を優先されてしまうというのがあります。
 研究者にとって特許出願をするよりも、サイエンスとか、ネイチャーとか、セルに載るほうがはるかにプライオリティーは高いです。別にノーベル賞が取れるんだったら特許なんか要らないというのが本音なんで、そういった意味では、今までも発表を優先して権利を取れなかったことは東京大学でもいっぱいあります。
 補足でちょっと詳細を言いますと、例えばカナダも論文のまま出願できます。アメリカと同じですね。グレースピリオドも1年あります。オーストラリアでも論文のまま出願できます。インドでも論文のまま出願できます。日本が論文のまま、仮出願と言ってしまうとちょっとアメリカの先発明主義に寄っているような形に見えるかもしれませんが、要するに出願フォーマット自由化で論文のまま出せるようにしていただければ随分違うと思います。
 米国はどうかというと、例えばハーバード大学は全部100%仮出願されています。スタンフォードも80%ぐらい、コロンビアも80%ぐらい、これは何年か前に聞いた話なんで、最近のデータがもし必要であれば、ちょっと取ってこようかなと思っていますが、ほとんどこの論文のまま出願していて、彼らがもし時間的余裕があれば、ちゃんとクレームは入れています。請求項は入れて出願して、論文のままだけで荒っぽい出願をしているわけではないというのが実態なんですが、彼らも一番言っているのは、やっぱり発明者は発表したいので、これを待てとは言えないという部分があって、そういった意味では、このプロビジョナル・アプリケーションは、非常に有効だというふうに言われているので、ぜひこれを実現していただきたいなと思っています。
 あと、もう一点の観点でいうと、論文のまま出願できるので、非常に大学がコスト低減になっているという点です。スモール・エンティティーなんで75ドルで出願できますので、7,000円で出願できるというのが大きいところですね。
 日本は、各大学が疲弊してるのは出願費用がないという話があって、これは別に特許出願料が高いというよりは弁理士費用が、弁理士の先生がいらっしゃいますけれども、かかるので。大体、1件30万ぐらいかかるんですね。なので、日本は3件出願して90万、アメリカは100件出願して70万ということを考えると、大学の経営的な観点でいっても、そのメリットが大きくなると。
 実は昨日も、一番私たちが期待している特許を、日本で出願せずにアメリカで仮出願で出しました。どんどんアメリカに先に出願するということをやっています。これは何が起こるかというと、非常にうまくいったケースがあるとアメリカ特許庁のおかげですと。日本の弁理士さんに、最初に仕事が行かないわけですね。アメリカで出願して、そこと提携している日本の特許事務所に、PCTから移行すれば仕事が行くんですけれども、最初に日本の弁理士さんに仕事が行かないということを考えると、やっぱり同じことができるんであれば、日本でやれるようにしたほうがよいのではないかというふうに思っております。
 私の補足は、以上でございます。

○岸副会長
 1点だけ。前回の1回目の議論のときに、山本委員がたしか、iPS細胞の山中先生はほとんどアメリカで仮出願していると、チラッとふれられましたけれども。

○山本委員
 ええ、武田の常務をやっておられた秋元さんがアドバイスをして、ほとんどじゃなくて全部だと秋元さんはおっしゃっていました。山中先生から聞いたんではなくて、秋元さんから聞いたんですが、秋元さんが手伝っていますので、多分事実なんだと思います。

○岸副会長
 ちょっと私にはその意味がわからない部分があるんですが、それがどんどん継続して行われると、山中先生のiPS細胞の特許というのは、将来どうなってしまうのか。

○山本委員
 最初にアメリカで出願されるだけで、それはPCTで国際出願すると、日本でも後で出願されるんで、別に日本で先に出願したものと変わるわけじゃないです。
 山中先生は何でそうしているかというと、ご案内のとおり、iPSは毎日のように海外の大学の研究者が、山中先生の方式とは違う方式で新しいiPSの発明をされるわけです。そうすると、発表をおくらせるということは研究者にとっては致命的なので、とにかく発表はどんどんしていきたいと、アナウンスをしていきたいと。だけれども、それを出願してから発表するとなるとおくれるんで、発表と同時にアメリカで仮出願をどんどんやっているという話です。

○岸副会長
 わかりました。
 どうぞ。

○佐藤委員
 大学の研究者のニーズというのは、私も切実にそういう状況にあるだろうと思っています。そういう意味では、基本的な考え方としては正しいんですけれども、ただ論文を出願すれば権利が取れるか、取れません。ここをしっかり考えていただきたい。やはり特許を取るためには、権利請求をする書類でなければ権利は取れないんです。ただ事実を並べただけでは、何がアイデアであるかということを特定できない。
 したがって、論文をそのまま出願するときには相当のリスクが生じます。アメリカの場合は、先発明主義という土俵があって、発明したことの事実そのものが保護されるという仕組みと、先願主義における出願した書類によって発明が特定されるという世界は違うということ。この違いをやはりしっかりと仮出願を考えるときには考えないと、何か論文を出願して仮出願しておけば何か得するみたいな錯覚をすると、後で大きな失敗をするんじゃないかというふうに思っています。
 そういう意味では、仮出願のようなものをトライするんであれば、そういう仕組みをしっかりと考えた上でやらないと、アメリカと同じことを日本でやって、そのまま、じゃ、日本にいて、アメリカで出した仮出願で日本に出願をしてきて、それで優先権主張でどこまで保護されるか、これは違います。また、ヨーロッパへ行っても同じように保護されるか、これも違います。そういう意味のリスクを伴った形の制度だということと、本質的に制度が違うということを踏まえた上で、もしこれをやるとすれば制度設計しないといけないというふうに思います。

○岸副会長
 その点、山本委員、いかがですか。

○山本委員
 これは、基本的には救済措置なんです。どうしても時間がないときは、私たちにもよくあります。明後日ネイチャーに載りますと言われて、やっぱりちゃんと本当に時間的な余裕があるかということでいうと、やはりこれは出願をしないデメリットのほうが、日本全体とすれば国益を失うというのが1つあります。
 それと、実際に山中先生のようにアメリカで仮出願、論文で出して出願して、日本に来たときには審査官は同じことをやるわけです。仮出願で権利が取れないというわけではないんです。論文で出願して権利が取れないというわけではなくて、結果的には、それでも権利にはなる可能性があって、1年後にはちゃんと出願するわけです。もちろん時間的余裕があれば、ちゃんとした明細書を私たちもつくりたいわけです。
 それと、もう一つは、今30条適用というのはあるわけですよね。30条適用の場合は、大学の先生が発表したものに対して半年後にちゃんとクレームをつけて、特許庁の審査官は、それを審査するわけですね。これは、論文で先に発表になった部分のうちの権利はこれですよというのは、これの論文出願と何が違うのかという意味では余り論理的な話ではないと思っています。

○佐藤委員
 もう一点だけ、その点で。

○岸副会長
 ちょっと別の方。まだきょうご発言になってない方もおられるので。
 大渕先生、どうぞ。

○大渕委員
 賛成か反対かという前に、ちょっと前提となる点をお伺いできればと思うんですが、資料5のところで、「日本の学者は不利」とあって、アメリカに比べて不利であるということのようですが、この制度の関係でヨーロッパの学者の場合にはどうなのかという話です。先ほどの話では日本の学者も、結局はアメリカに仮出願すれば同じではないですかというところになってくると、ご趣旨としては、その仮出願をわざわざ英語でアメリカでするよりは、同じことを日本でさせてほしいという、そこにポイントがあるんでしょうか。結局は、今もアメリカ経由であれば、先ほどの先発明主義とか、そういう点を除けば今でもやり得るし、さきほどの国内優先権制度でもできるけど手間がかかるから、そういう手間を減らしてほしいといったところにポイントがあるということになってくるわけでしょうか。そういうあたりの点の確認です。

○岸副会長
 その件で、どうぞ。

○荒井委員
 まず、すみません、1点は、もちろんこれは出願日をとることの話をしているので、中身をいいものにするのはちゃんとやらなければいけない。そこはそのとおりで、それは勘違いしていません。
 それから、2点目の今の話の点は、海外へ行ってくりゃいいじゃないかというのは、そのとおりなんです。ということは、日本の学者の成果を海外へ行って日本の中で発表しないという空洞化をしようということだから、日本全体としては大変な損失というふうに考えたほうがいいと思うんです。
 この発想は、学者と企業は違うんですね。企業は知財部があって、そこでしっかり特許にしてから論文を出すんですが、まず学者の場合には、とにかく学問の進歩に貢献したいという本能がありますから、それは基本的にとまらないんです。
 ということは,どういうことが起きるかというと、論文は発表するけれども特許にしない場合、論文を発表してから特許にする場合、それから特許に出願してから論文にする場合と3段階あって、3段階がベストだと言ってもそれはできないから、せめて2段階にしたらどうですか。今のままだと論文は発表するけれども特許にしないという第1段階でとどまってますということを申し上げています。

○岸副会長
 仮出願というテーマは、かなり重い内容を含んでいるなと思いますが、この点でほかの。
 相澤委員。

○相澤(英)委員
 仮出願制度を設けるとか新規性の緩和をするだけの制度改正では、大きな意味はないと思います。現行法及びその運用は、審査を促進するために特許出願の内容を修正することを非常に厳しく制限しています。補正、分割出願、訂正、記載要件、サポート要件などの特許出願の修正を制限する規定を緩和して、発明した技術思想がきちんと保護されるようにしなければならないと思います。

○岸副会長
 もう一人ぐらい、仮出願で何かご意見おありになる方。

○佐藤委員
 たびたびで、すみません。
 今、相澤委員がおっしゃったように、日本の特許を権利化するのには非常に厳しい制限がたくさんあります。それはなぜかというと、従来、非常に緩やかな制度であったために、後出しじゃんけんみたいなものが出てきたわけですね。そういうものを排除するために、どんどんそのしばりを規制してきた。
 そういう意味では、最初にどれだけのものを開示できたか、どれだけのものを発明として構成できたかということで勝負が決まってしまうのが今の世界なんです。そういう意味で、仮出願を出すのはいいんですけれども、出願日を確保するのもいいんですけれども、それが本当に最終的にいい権利になりますかというためには、今の制度の中では非常に難しいということがこの一つのポイントだと思ってます。
 そういう意味で、先ほど大学のニーズというのは、私は十分理解しているつもりなんですけれども、今の制度の仕組みの中でやるときには、十分にそれを考えないとできないというのが、今、相澤委員がおっしゃったいろんな要件のところの緩和をするかしないか、それによってはね返ってくる弊害がどこに来るのかということもしっかり考えなきゃいけないと思います。
 それから、もう一つ、新規性喪失の例外を拡張する。これは学会の指定を外すのは非常に簡単ですし、またやるべきだと思います。
 ただ期限を、これを延長した場合に、果たして今度はその延長したものがヨーロッパへ行ったときにそれで保護されるのかという問題があって、今まではヨーロッパが認めない限りは、なかなかできないというところにあったというところもあるということを申し上げたいと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 ここからちょっと司会者の特権を利用させていただいて、実は第1回目に西山委員からユーザー・イノベーションという話が出まして、私は直感で何を言っているのかなとちょっとわからなかったんですね。
 ただ、相当これこそグローバルな意味での大きなテーマになり得るのかなと実は思いまして、それで実はユーザー・イノベーションを西山委員から初めてお聞きしたときに、昔、私も30年ぐらい前になるんですが、花王という企業を担当していまして、まだ今ほど大きな企業じゃなくて、当時中興の祖である丸田芳郎さんという方が社長をされて、20年ぐらい前からされたんですが、彼とインタビューする機会があって、ちょうど中興の祖として新機軸を打ち出しているときだったんですね。花王独自の販社制度とか、いろんなものを打ち出して今の花王につながっているんですが、彼がそのときやった大変おもしろいのは、1日24時間クレームを受け付ける部署を彼は設けたんです。とにかく24時間人を待機させて、消費者からのクレームを受け付ける。
 私は、まだ駆け出しの経済記者だったんで、その意味がよくわからなくて、丸田さん、そんなものをやって何のメリットがあるんですかと、当時クレーマーという言葉はまだなかったですけれども、部署でいつもクレームを毎日のように聞いている人は大変じゃないですか、相当手当をあげなきゃあいけないんじゃないですかと、ばかなことを言っていたのですが、彼が言ったのは、要するにクレームというのは技術革新、あるいは技術開発に向けた最大の宝だと言うんです。それをいかに、もちろん目利きで分析するかがポイントなんだけれども、要するに消費者が持ってる、そういうクレームに限らないのかもしれないんですが、こう使い勝手をよくしたらというような、そういう意見みたいなもの、その主役を持ち上げていったところがユーザー・イノベーションなのかなと、私なりの解釈を実はして、多分この知財戦略を今後、成長戦略につなげていく上では、これは今世界的にもグローバルにもまだ始まったばかりのような状態ですので、日本もおくれないように、その波に乗らなければいけないという点で、西山委員に少しその辺を。何かお聞きしたところではデンマークがその先進国で、きのうまでデンマークにおられて、いろいろ調査もされているというふうに聞きいていますので、少し手短でお願いしたいんですが、ご説明いただけますでしょうか。

○西山委員
 こちらの配付資料の13ページに事務局の方に例を掲げていただいたんですが、右四角の上に定義が載っております。ユーザー・イノベーションとは、製品の使い手であるユーザーによる製品の改良・開発などを通じ、ユーザー自身がイノベーションの担い手となるというふうに定義されるわけですけれども、このイノベーションをまず認知することの重要性というのが、まず重要だと思います。
 と申しますのは、相澤委員が冒頭におっしゃいました、いかに少ない財源で多くの効果を生み出すのかという観点に立てば、実際価値を生んでいるのに使ってこなかったものを活用するという、そういう考え方がきっちりと当てはまるというふうに考えるからです。
 1回目の会議で、佐藤委員からスモール・インベンションのことですかという質問を受けました。そこにすら至らないものが実は世の中にたくさんあって、今の法の網目をくぐり抜けてしまっている価値のある知識、もしくは価値のある知的な資産、今の定義でいうと知的な資産にすらなってないんですけれども、知的な何らかのものを何らかの形で、1、新規事業につなげる政策をつくることで何か価値につなげられないか、モネタイゼーションができないだろうか。
 それから、2、今の議論というのは、大企業、それから大学、中小企業というふうに、今その該当者がほぼ集中しているんですが、その周辺にいる個人、市民、国民にも知的財産を生み出す可能性があるんだということを広く伝え、彼らにもわずかかもしれませんが活動してもらって、何らかの価値を生み出してもらって、それが何らかの政策で日本に集中するように持ってきて、お金にかえることができるようになるならば、もしくは政策でそれを促進することができるようになるならば、それこそが10年先を見据えた、ことしとるべき策の一つになるんではないかというふうに考えております。

○岸副会長
 その点で、デンマークの実情といいますか、少しそのような具体例があると、お聞きになっている方がみんなイメージがわくと思うんで。

○西山委員
 2001年に、デンマークでは新しい政権が誕生しました。彼らが真っ先に行ったことというのは、より国民参加型のイノベーション政策をとるという大方針を政策に反映することでした。今9期目で、来年恐らく選挙があるだろうというふうにされているんですが、その政策は2期にわたって続けられています。
 彼らがやってきたのは、そのイノベーションの担い手というものが多くの企業の研究所から個人、発明者のほうに移ってきていて、その発明者というのが国の中にいない可能性があると。だから、国外にいるその者をいかに連れてきて、それを国内の企業がお金にかえるようにする手立てをどうするのかということを支援するものでした。残念ながら8年たっても大きな目ざましい成果は、私の判断では見えていないと思うんですが、今これに目を向けているかどうかで、この先の10年間が大きく変わるような感覚を持っています。これは私感でしかありません。

○岸副会長
 法政大学の総長をされていた清成先生が、よく「草の根イノベーション」と言うんですね。あれとは考え方が違うんですか。
 あるいは、もしユーザー・イノベーションを今後、日本でも推し進めるときに、その受け皿というのは、一体どんなものを想定されて、西山さんの頭の中では組み立てていらっしゃるのですか。

○西山委員
 1つのキーワードは中小企業だと思います。もしくは中小企業に至るもっと前の起業家精神を持った個人になると思います。
 すなわち、彼らが思いついた何らかの発明の一歩手前、創意工夫をもとに資本を、わずかかもしれませんけれども集めてきて、何らかの経済行為に至ることを促進すると。要は、起業家精神の醸成にその知的財産の制度がうまく合致すれば、それは政策としては大きな価値を将来に向けても生み出すだろうと思います。
 受け皿としては、荒井委員がいらっしゃるような、大きな政府的な公的な機関かもしれませんし、山本委員がいらっしゃるような大学かもしれません。もしくは企業の中にもそういう受け皿をつくることは可能かもしれません。

○岸副会長
 ありがとうございます。ユーザー・イノベーションについて、西山委員が先頭に立って提案していただいてるんですが、ほかにこれについてご意見。

○中村委員
 過去5年、10年単位で見ると、IT系の新しいトレンドというのは、ほとんどユーザーが起こしています。これまでのように研究所や企業が起こしてきたというよりも、学生とか、そういうところから出てきて、それを大衆が支えたという。
 そういう意味で言いますと、ユーザー・イノベーションの必要性の高いジャンルというのが幾つかあって、それをまずピックアップするのがいいかなと思います。
 それから、この知財本部で同時並行に今議論を進めておりますコンテンツの調査会のほうでも同様の議論がありまして、日本がクールだとかホットだとか今海外から評価されているんですけれども、それは高度なクリエーターが存在するというよりも、それ以上にそれらを支える大衆の表現力のところが日本の強みではないかという指摘があります。
 例えば、それは投稿サイト、あるいはブログ、SNSなどに出されている日本のユーザーの作品レベルというのが世界最高ではないかというような指摘もあり、またそれはコミックマーケットに集まっているような作品を見てもわかるんですけれども、問題はそうしたユーザーの大きな創造力とか表現力といったものがビジネスに結びついていないというところでありまして、同じ悩みといいますか、課題を抱えております。そうしたユーザー力を新しいデジタルの時代でいかに競争力に結びつけていくかというのが、コンテンツのほうでもポイントになっていると思います。
 以上です。

○岸副会長
 中村委員は、もしユーザー・イノベーションの機構みたいなものをつくるとして、受け皿というのは、例えばどういうものが可能というふうにお考えになっていらっしゃいますか。

○中村委員
 これは、きのうのコンテンツの調査会でも発表したんですけれども、例えば小中学生、あるいは高校生などが自分たちでコンテンツをつくったり、発表したり、発信したりというような活動を現にあちこちでやっているんですが、そういったものを束ねるようなNPOを育てていくとか、あるいは大学が受け皿になってもいいですし、いろんな主体が横断的に活動できるようにするような場を、肝心なのは日本の中につくって、日本をその本場にしていくことだと思います。

○岸副会長
 その点で、まだ日本は、またおくれをとっちゃったということはなくて、世界がほぼ同時に今動いてるという理解でよろしいんでしょうか。

○中村委員
 日本が進んでる面と非常におくれてる面と、両方あります。ただ、そういったプラットホームに日本がなれるチャンスと力は十分あるので、活かすべきだろうと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 このユーザー・イノベーションで、ほかにご意見はありますでしょうか。ちょっとわかったようでアブストラクトというか、わからない部分があって、ただ、これからの、今、中村委員がおっしゃったようにデジタル、インターネットがこれだけ普及して、デジタルネットワークがこれだけ進んでいく中で例えばツイッター、私なんかの単純な発想で、素人発想で、ツイッターでこの携帯のここのところをもう少し使い勝手をよくしてよみたいな、何かそういうのがつぶやきで入ってきたときに、それが吸い上げられて次のイノベーションにつながらないとも限らない。ユーザー・イノベーションは、そういうものの総体を恐らく言うのだという理解でいいですよね。

○西山委員
 小さいものはそこから始まると思います。それは、例えばこの水を飲んだときに得た、これが使いにくい、こうしたらいいのにという小さい改善に、それはコストがかかり過ぎるから、こういうふうにしたほうがいいですよ、じゃ自分で1個つくってみました、それをウェブに上げました。そういった工夫の連鎖が蓄積されると、つながっていることによって大きな価値を生むという意味では、それがそのうちの一つだと思います。

○岸副会長
 ほかに、この点でございますか。

○高柳委員
 ユーザー・イノベーションではないんですけれども、もう一度、産学連携力の世界トップクラスという点ですけれども、これは(イ)、(ロ)、(ハ)ありますけれども、やっぱりハウ・ツー、どうしたらこういうふうに大学の知恵を活用して事業化へ向けて、あるいは企業から大学へ支出する研究費増加、あるいは外国資金の割合、これで具体的な施策の例の中で書いてありますけれども、直ちにこれは効果を発するのは最後の税制です。
 まさに税制、これはお金がかかるわけですけれども、ただ我が国の科学技術予算は、例えばアメリカなんかと比較しますと、出口に責任を有する官庁への配分が少ない。必ずしも出口を意識しない科学技術、基礎研究に重点的に予算を配分しております。
 まさにこの事業仕分けで、新政権下の限られた予算をどういうところにシフトするかで、こういうふうに資金が流れやすくするような、我々も研究、アカデミア機関との共同研究等に、今の措置とは違ったような税制の減税の措置があれば投資価値がどうかなと思ったところも積極的にいけるということは、これは一番まずは効果があります。
 それから、あとは大学自身が変わっていただかないことには、先ほど私が申し上げましたように、資料でもあるんですけれども、日本が世界の英知を集められるような、大学自身がそういうレベルになって保ち続けていかないと、これはもうボランティアはできないわけですから、そういう自己改革をしていただかないとどうしようもないと。
 資料の論点整理の8ページに、産学連携技術移転、ここにまさに述べられていますけれども、まず大学の独自の発明を特許化して次に企業にライセンスするという単純な技術移転の仕組み、特許ファースト(first)の政策、これは基本的に機能しないということは、これまでの実績でわかっているわけですね。いかに産業政策としてニーズや出口を意識した研究に予算配分をしなければならないか、大学自身がそれと変わらなければならないかというところをやらない限りは、このままじり貧で産学連携力はアップしないと思います。

○岸副会長
 ありがとうございます。
 時間も大分押し迫ってまいりました。あと十数分ということになりまして、少し大きな2つのテーマでやってきたんですが、残りは全体のテーマで結構ですので、まだご発言なかった方を中心にちょっとお話をいただければと思います。
 どうぞ。

○江幡委員
 全体のテーマということですが、先ほどのイノベーションインフラの整備というテーマについて少しお話しさせていただきます。資料7ページの2−(3)の(イ)として、世界トップクラスの知的財産制度を実現するとあり、どういう評価基準なのかわかりませんけれども、日本が今20位であるという記載があります。しかしながら、知的財産制度という観点では、日本は既に世界トップレベルの制度を有してると、もっと自信を持って述べていいのではないかと思います。
 審査の質という観点では、個々のユーザーから見れば、色々こうしてほしいという改善要望があるにせよ、全体的に見れば日本は非常にレベルが高いと感じております。また、知的財産訴訟という観点では、スピードが早いことがいいのかという問題は別にありますが、非常にスピーディーで、ほかの国では通常2、3年かかるのは当たり前の中で、約1年で地裁の判断が出ます。しかも知財の専門部があり、そこが判断してくれるという、紛争解決の場としては、非常にいいフォーラムを持っているのではないかと思います。
 権利の安定性の向上に関連して、ダブルトラックの問題が指摘されております。ただ、ダブルトラックがあるということ自体が果たして問題の本質なのかというと、個人的にはそうは思いません。
 また、104条の3ができて裁判所が無効の判断を行うようになったことで、権利が無効になってしまうということをおそれて、それで特許侵害訴訟が起こされなくなってきているのでないかという、そういう指摘もかつてはあり、また現在もあるわけですが、実務感覚的にはそうかなと思う側面もございますけれども、数値的には訴訟件数が盛り返しているようでして、必ずしもそうとも言い切れないのではないかと思います。
 104条の3という規定ですけれども、これが導入される前からキルビー最高裁判決で無効の抗弁が認められていて、さらにその前から、どうやったら権利性に問題がある権利の行使を制限できるかという観点で、例えばクレームを限定的に解釈して、文言の限定解釈によって被告製品を除外するとか、あとは公知技術の抗弁と言われていましたけれども、公知技術を使っているに過ぎないから侵害に当たらないというように、様々な形で権利行使を認めていませんでした。裁判では、104条の3だけが問題なのではなくて、その前から無効な権利の権利行使を認めるべきではないという価値判断をベースに、どのようにそのような権利行使を制限するのかについて色々と議論をされてきたのだと思います。ですので、単に104条の3を削除すればいいというわけではないと思います。
 また、裁判所の紛争解決機能としては、判決を出すことだけではなくて、和解の仲介機関になるというところもあると思います。その場合には、裁判所が侵害論、すなわち侵害があるかどうかだけではなくて、権利の有効性も検討した上で、和解を当事者に勧めるから説得力があり、そういうところも、裁判所が紛争解決機能としてすぐれている理由だと思います。
 以上です。

○岸副会長
 出雲委員はよろしいですか。
 どうぞ。もう時間が限られてきてますので。

○出雲委員
 すみません、最後にどうしてもお伝えしたいのは、きょう荒井委員からあった仮出願制度と新規性喪失の例外規定の緩和についてなんですけれども、多分皆様から一部遠い、10人、20人のベンチャー企業で今どういう課題を抱えているのかというのを一点強調させていただきますと、私どもは東大の、私も含めて農学部のゼミのバイオ技術から出発している会社でして、その先生と一緒に共同研究しているわけですけれども、その共同研究先の先生が、新しい新規の発明・発見を私どもの会社と共同研究で見つけました。当然、恩師である教授が、これは当然ペーパーにすると、もしくは学会へ発表するというときに、こういう仮出願制度が今ない状況ですし、新規性喪失の例外規定等も先生は当然ご存じないので、お願いはするんですけれども、やっぱり先生が学会で発表してしまう、ペーパーとしてパブリッシュされるというのは、実際問題あります。それであって、その新規で発明されたバイオ技術ですとか、新規の機能性物質をベンチャー企業として知財にできないので断念せざるを得ないということが、実際に当社だけではなくて大学発のベンチャー企業では恐らく似たようなことは多く起こっていると思いますので、この論文仮出願制度と新規性喪失の例外規定は、ぜひ実現していただきたいのと、もし、仮にこれが実現できないのであれば、今回の論点整理の資料の7ページ目の最下段に、普及啓発活動の強化というふうに書かれてありますけれども、ノウハウ秘匿を含めた知的財産戦略の重要性を中小・ベンチャー企業経営に浸透させる啓発活動とありますけれども、ベンチャー企業の経営者は、余り知的財産の重要性を理解、認識できていないという現状が恐らくこういう政策を立案する側の方にあるかもわかりませんが、これは大学の先生にもこの話を周知・啓蒙・徹底するような活動をしていただかないと、ベンチャー企業、産学連携しっかりやってくれ、資金も出す、助成金もつけると言われても、知的財産が確保できないという本末転倒のことになりますので、我々ベンチャー企業も当然、啓発活動を通じて勉強しなくちゃいけないんですけれども、共同研究先である大学の先生にもこの点、十分注意喚起していただくようなことがない限りは、この論文仮出願制度がないと、ベンチャー企業としては大変困るということだけ補足させていただきます。

○岸副会長
 仮出願は、恐らくこれからも大きなテーマとして引き続き議論になると思います。
 それから、あと先生、もう本当1、2分なので、大渕先生、その範囲でお願いできますでしょうか。

○大渕委員
 1、2分だけで。先ほど江幡委員が言われたところはもう繰り返しませんけれど、前回も無効の抗弁は廃止すべしという提案が出たりしていたのですが、それは平成16年改正と全く逆方向を進むことでありますし、かつて、先ほども出ていましたとおり、無効の抗弁等ができる前は、端的な無効判断という形が取れないために、公知部分除外説等という形で、「歪められたクレーム解釈」ともいわれる、端的な無効判断以外のほかの形で非常にわかりにくい、透明性等のない形で同じ結果が実現されていたのが、無効の抗弁ができたことによって非常に透明性等のある、わかりやすい形になっているということ等もありますので、そのあたりは総合的に考えていく必要があるのであって、無効の抗弁を廃止すれば済むという問題では全くないという点だけ繰り返しておきたいと思います。

○岸副会長
 ありがとうございました。
 きょうは、本当に2時間弱、貴重なご意見をいただきまして本当にありがとうございました。より具体的な内容でご議論をいただいて、新しい知的財産推進計画のイメージが少しずつ、まだまだ議論は尽くさなければいけないと思いますが、少しずつ見えてきたかなという感じもいたします。
 次回も引き続き、具体的な目標設定や施策をイメージしながらの議論を進めていきたいと思っております。
 最後に、津村政務官のほうから、よろしいですか、何か一言まとめで。

○津村政務官
 大変勉強になりました。

○岸副会長
 ということでございます。
 それでは、次回の日程について、事務局のほうからご説明いたします。

○高山参事官
 次回の専門調査会は3月10日水曜日、また朝早く9時からということで、申しわけありませんが、本日と同じこちらの場所で開催させていただく予定でございます。

○岸副会長
 それでは、予定の時間が来ましたので、この辺で閉会といたしたいと思います。
 本当に、つたない司会で大変恐縮いたしました。あるいは突っ込み過ぎて失礼があったかもしれません。ここでおわびしておきます。