知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第2回)
○妹尾会長 皆さん、おはようございます。ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第2回)」の会合を開催いたします。本日は、御多忙のところ、また花粉が飛び始めた中、よく御参集くださいました。どうもありがとうございます。 本日は、後ほど知的財産戦略担当の島尻大臣政務官に御参加いただくと伺っております。御到着後、御挨拶をいただく予定になっております。 この専門調査会では、今回、知財計画2013を例年どおり計画立案して、本部会合のほうに上申しなければならないというタスクを持っていますが、もう一つ大きな課題として、知的財産戦略の今後の10年、すなわち知財立国が始まってから10年の総括と今後の10年の展望をつくることになっております。この検討の方向性に関する議論をこの専門調査会で上げることになっております。前回、御案内したとおり、この調査会とコンテンツ系の調査会の2つが合同でワーキングを結成しておりますけれども、そことの連携をとりながら、この知的財産戦略の今後の10年について検討を進めていくことになります。 なお、本日は、西山委員から欠席の御連絡をいただいております。また、知的財産戦略本部員としては、三尾本部員に御参加いただいています。よろしくお願いいたします。 それでは、早速、きょうの議事を始めたいと思います。 まずは、本調査会の進め方等についての事務局からの説明を伺いたいと思います。それでは、安田参事官、よろしくお願いいたします。 ○安田参事官 まず、配付資料の確認でございますけれども、資料1、2、5、6が事務局から用意させていただいたものになります。 資料3が妹尾会長からの提出資料。 資料4が高橋委員からの提出資料でございます。 漏れ等がありましたら、事務局まで言っていただければと思っております。 それでは、専門調査会の進め方について説明いたします。資料1をご覧いただければと思います。 前回会合におきましては、専門調査会の6月までのスケジュール、議題、また知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループの設置、それぞれについて御承認いただいたところでございます。本資料1は、専門調査会とビジョン検討ワーキンググループの連携した検討の進め方を概念的に示したものでございます。第1回あるいは今回の専門調査会におきましては、過去10年の取り組みの検証を行いつつ、すぐに取り組むべき検討課題から、今後10年を見据えた長期的視点での検討課題など、御議論いただいたところでございます。その中で、中長期的な視点での検討課題をワーキンググループにて展開いたしまして、さらに深掘りした検討を行うものでございます。 一方で、ビジョン検討ワーキンググループにおきましては、知的財産政策ビジョンについて検討いたしまして、その検討状況や取りまとめの結果を専門調査会に展開いたしまして、例えば中長期的な施策のうち、足元の推進計画2013に短中期的に検討できるものにつきましては、本調査会で議論を深めていくというものでございます。 このように専門調査会とワーキンググループが連携しながら、知的財産推進計画2013、それから知的財産政策ビジョンの両方の検討を進めるということでございます。資料1の図面では、矢印が2つしかありませんけれども、随時連携を図っていくということでございます。 簡単でございますけれども、以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、資料1のとおり検討を進めたいと思いますが、何か御質問あるいは御意見ありましたら、この段階でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。進める中身そのものではなくて。よろしいですか。 1点確認しておきたいのは、資料2のほうの整理が知的財産の創造、保護、活用、中小・ベンチャー、国際標準化、知財人材と書いてあるのですが、前回、政策ビジョンのワーキングのところで、創造、保護、活用という当初のたてつけのような括り方が、10年たって、途中から変えなければいけないという話になっているが、またこれに戻ってしまうのかという御指摘がございました。これは、もちろん戻しているわけではなくて、まず最初の整理学として、こういう分け方になっているという御理解をしていただきたいと思います。恐らく2回3回と進むにつれて、今後に向けたたてつけの仕方に事務局が資料を直していくと理解しております。 これが補足です。他にいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、一応この形で進めさせていただきたいと思います。 次に、知財推進計画2013及び知財戦略の今後の10年に向けた検討の方向性について議論したいと思います。事務局から説明をお願いしますが、今、申し上げた資料2の論点と、第1回ビジョンワーキングにおける議論の内容を説明いただくことになります。よろしくどうぞ。 ○安田参事官 資料2をごらんいただければと思います。これは、前回の専門調査会の資料をベースにいたしまして、前回の御議論を踏まえまして、追加の項目といたしましては35ページ以降になりますが、2つです。グローバル化に対応した海外における知財の活用支援、それから知財マーケットの活性化といった項目を追加してございます。 それから、2ページ等をご覧いただければ分かるかと思いますけれども、各委員からの意見、それから前回の専門調査会での意見を踏まえました論点、議論を深掘りするための論点を追加してございます。それから、新しいデータ等のファクトも追加してございます。 なお、各項目の詳細につきましては事前に御説明差し上げていることから、詳細な説明は割愛させていただければと思います。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。御説明を先取りして、たてつけは後ほどと申し上げたので、御理解いただきたいと思います。 ○安田参事官 すみません、補足でございます。 それから、資料6をご覧いただければと思いますけれども、前回の1月25日に行われました第1回知財政策ビジョンワーキンググループの報告を簡単にさせていただければと思います。 簡単なポイントを紹介いたしますと、全体的な意見といたしましては、4つ目、「今までは知財と知財権を同一視していたことが問題である」ということでございまして、「知財立国は知財権立国ではないということを認識すべき」だといった点。 それから、1ポツの真ん中の職務発明制度につきましても、「まだ競争力の阻害要因になっている」といった問題提起。 それから、4ポツの中小・ベンチャーの最後のところで、「中小・ベンチャー企業に対してトータルに事業をコーディネートする仕組みが必要」といった検討課題をいただいているところでございます。 すみません、追加でございました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。何かありますか。よろしければ議論を進めてまいりたいと思います。前回の議論の内容も踏まえて、私、会長ペーパーを少し準備させていただきました。情勢認識というところで共通の議論の基盤をつくりたいというのが意図であります。これは、資料3になります。まことに恐縮ですが、ブラッシュアップがまだ十分でないということなので、未定稿ということにさせていただいております。これは、もちろん私の情勢認識ですから、皆さんとは異なる面もあろうかと思いますけれども、議論の基盤ということで用意させていただきました。簡単に読み上げます。 産業が、デジタル・ネットワーク技術化ならびにグローバル経済を前提として進展する中で、世界の産業生態系やビジネスモデルは根本から様変わりしている。変容と多様化しているという話です。技術で勝って事業でも勝つためには、グローバル視点に立った上で、他産業との比較検証(産業形態の空間軸における「相似と相違」)、何が産業ごとに同じで何が違うか。とかく相似ばかり強調される。うちの業界は違うという言い方ですが、産業俯瞰的に見ると、グローバルな産業は同じ方向へ流れているというのが我々の認識です。何が同じで何が違うかということですね。 もう一つは、時間軸における継続と変化。ビジネスと知財の関係で何が継続的に動いて、何が変わっているかという認識をしながらビジネスモデルを構築することが産業界で急速に行われていると、我々は認識しております。 この中で、大ざっぱに言いますと、日本の産業は「3つのI(アイ)」で展開している。最初はイミテーション、すなわち模倣と技術導入の時代。これは、50年代、60年代にものすごかったわけです。それから、70年代、80年代がインプルーブメント、改善、改善で競争力を培ってきました。そして、今、イノベーションの段階に入ったということであります。ちなみに、中国はイミテーションの段階をいよいよ脱した。韓国は、インプルーブメントの段階をいよいよ脱しようとしているということでありますから、我々のイノベーションが本当にできるのかどうかが問われているということであります。しかしながら、どうもイノベーションのやり方が日本はいま一つではないかということで、我々はじくじたる思いであります。 次に、世界と、ここの場でもよく議論されております。ただ、そこで言っている「世界」というものについて、我々は80年代の想定をもう崩さなきゃいけないと思います。G7の中産階級以上の7億から10億で日本が勝ってきたときの「世界」と、今、人口70億のうち40億〜50億を入れるG20プラス、ベースオブザピラミッド(BOP)の市場経済を考えたときの「世界」は明らかに違います。ですから、従来型のG7を前提にするようなことにプラスアルファみたいな認識は、ここで決定的に改めませんかということであります。 その次、そのような中で我々は、日本がかつて得意にした、既存の商品分野を前提にして、そこで改善改良モデルで勝ち抜くことは、もう限界である。さらに、イノベーションだとみんなおっしゃってはいるのですが、よく見てみると既存分野のフルセット垂直統合型、なおかつクローズドで勝つということで進んできています。これだけでは難しいですね。技術起点型のイノベーションモデルだけでは立ち行かないのです。 各国は、次々に次の世代の社会価値をどう形成するかということと、それを実現するためのイノベーション戦略を国と産業界が、これはもちろん欧米と中国と韓国と、スタイルはそれぞれ違いますけれども、動かしております。ビジネスモデルについては、技術開発にせよ、市場開発にせよ、オープンの領域とクローズドの領域をしっかりデザインして、なおかつそれを学習的に進めていることが極めて重要です。最初に決めたものに固執しない、柔軟に変えていくというしたたかな学習過程が企業の皆さんにあるということであります。 そうすると、ここで議論すべき産業モデル、ビジネスモデルに対応すべき知財マネジメントの果たす役割はどうなのでしょう。急激に変わっていますねということであります。特許制度導入当初に想定していたのは、例えば薬品のように、個々の産業分野の中での競争において、1製品少数特許が直接的にビジネスモデルを支えるケースです。それが知財特許制度の基本でありますけれども、これは産業全体から見ると極めて少数の古典的ケースになってしまったということであります。もちろん、それが悪いと言っているわけではなくて、それを全部の産業に適用することはそごがあるということであります。 むしろ、スマートフォンをめぐる産業のように、ハードウエア、ソフトウエア、コンテンツ、サービスを包含する産業生態系が動いて、その中でどのレイヤーを主軸に、どのレイヤーまでカバーすべきか、すべきでないかという判断が事業に求められているということであります。これは御案内のとおり、電子・電機産業のみならず、現在では機械系がほとんどそっち側に移行して、さらに食品や機能性素材までそちら側に動いているという認識をきちんとしないと、いつまでも産業政策的には手おくれになります。こういう古典モデルだけではない対処をしませんかということであります。 知財政策に関しての情勢認識は、私は3つの二分法の限界をそろそろ脱しないといけないと思っています。 第1は、知財権=参入障壁、国際標準化=参入促進という二分法です。これを我々は前提に考えてきましたけれども、知財権が参入促進に使われる場合も多々あります。オープンライセンシングを初めとして、あるいはパテントトロール、その他のあの手この手が使われるようになりました。国際標準化を障壁に使うというビジネスモデルも多数開発されています。また、国際標準だけではないということを考えると、例えば医療的なレギュレーション、規制みたいなものもある種の標準で、障壁になりつつ、実は参入にも使われるみたいなモデルが欧州を中心に開発されている。これらのことを、我々はしっかり認識すべきだろうと思っています。 第2は、大企業=グローバル、中小企業=国内という議論がもう限界に来ているということで、これは多くを語る必要はないと思います。 第3番目は、この専門調査会の立ち位置にかかわりますけれども、コンテンツ=著作権、ものづくり=テクノロジー=産業財産権という縦割りの限界であります。知財立国のときには、これは確かに適切でありました。しかし今、例えばハードウエアのほとんどはアルゴリズムが制御系に入っている。すなわち著作権の話になっている。あるいは、コンテンツの産業を取り巻く機器、その他については、ほとんどテクノロジーの世界で動いているということですから、単純に2つの専門調査会が縦割りでやっているだけでは難しいということが我々の認識であります。これらを超えた産業政策をやっていきたいねということです。それが、私が皆さんに共通認識として呼びかけたいことであります。 グローバル経済においては、ビジネスにおける地理的・時間的な制約がなくなります。しかし、知財制度は国ごとに設定するという矛盾があります。この制度の違いが企業の皆さんの活動をどういう形で制約してしまっているのか、ここを認識しなきゃいけません。グローバル知財システム全体を日本ができるだけ主導することが肝要であるということは、皆さんと共通認識だと思います。 他方、日本の知財システム自体が魅力あるものにならなければならない。しかし、日本の知財システムが欧、米、中、韓、日の5つの中でかなりおくれてしまったという認識があります。その中で新興国に日本の知財制度を準拠してもらい、それが間接的・相対的に日本の競争力強化につながるという形になれば良いと思っております。 そういう認識に立ちますので、私は会長として、本調査会はこういう検討の方向性を持ったらどうかということを考えております。 1番目は、グローバルな企業活動を支援する産業政策へ、知財戦略としてどう貢献するか。それをどう実現するか。その知財システムの構築が必要だということであります。 2番目は、ここに新しい「中堅大企業」という言葉を入れさせていただきました。これは、法律的には大企業か中小企業かという二分法になるのですが、現実に大企業はたくさんの知財部員を抱え、本部員を抱え、頑張っていらっしゃるわけですが、実は中小企業もベンチャーも大変だ。ここをどう支援するか。同時に、中小企業ではないから全部大企業と言われているクラスの企業群が、実際はグローバルに活躍しなくちゃいけない状況になっている。それらの企業をあえてここでは中堅大企業と呼ばせていただいております。これについての知財マネジメントの支援をしていくべきではないかと考えております。 それで、知的財産計画2013ならびに次の10年を見据えた知的財産政策ビジョンの策定・実行に取り組むべきだと思っています。 少々長くなって恐縮ですが、最後のところはこの検討の運営についてです。先ほども申し上げたとおり、この調査会は2つの使命を持っています。1つは、2013の策定であります。これは、例年どおり粛々と、当面、直近の短期で可及的速やかに手をつけなければいけない課題を取り上げて、これを具申していくことが1つであります。 もう一つは、知財立国10年を踏まえた10年の総括、今後の10年の展望を策定するための検討を行うことであります。これについては、もう一つのコンテンツ調査会と我々の調査会の両方でワーキングをつくって、そこで審議していく形をとっておりますけれども、ここへ向けてもこの専門調査会からいろいろな御意見を発信していただきたいと思っております。 いずれにせよ、この調査会は内閣に設置された知財戦略本部の調査会だということを、改めて委員の皆さんと確認したいと思います。すなわち、各府省の追認機関ではないと考えております。できるだけ司令塔的役割を果たせれば良いという志で、この専門調査会を大所高所、長期の観点から見ていきたい。また、府省俯瞰的・横断的な観点からの先導的な役割を果たしていきたいというのが、ここでの話であります。 これは、検討の方向性の会長ペーパーとして、私個人の意見を述べさせていただいたわけでありますけれども、もちろんこれは異論、反論、おありだと思います。ただし、これを共通のたたき台として御議論賜れば幸いに思います。多少長い話になってしまって恐縮ですが、以上が私の会長ペーパーの説明です。 ちょうどタイミングよく政務官がお越しになられましたので、知財戦略担当の島尻大臣政務官にまず御挨拶いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○島尻大臣政務官 皆様、こんにちは。御紹介賜りました、このたび安倍内閣で内閣府大臣政務官を拝命いたしました沖縄県選出の参議院議員でございます島尻安伊子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 本日は、各委員の皆様方、本当にお忙しい中、本調査会に日ごろから御協力いただいておりますことに、まずもって心から感謝申し上げたいと思っております。今、入ってまいりまして会長のペーパーの御説明を聞いておりましたけれども、知財戦略、的を射たものでないと意味がないとつくづく思いました。また、委員の皆様方の御忌憚のない意見をどんどん出していただいて、我が国の経済の再生のためにもお力添えを賜りたいと思っております。 きょうは、少しここで座って皆様方の御議論をお聞かせいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。 ○妹尾会長 政務官、ありがとうございました。若干お時間をいただけるようなので、皆さんの議論も聞いていただければと思います。 それでは、早速ですけれども、皆さんに御意見を伺いたいと思います。きょうは2回目です。前回は1回目ということで、最初のポジショントーク的な話だったのですけれども、きょうは今までの議論を踏まえ、これからについて、これを中心的に議論すべきだということをおっしゃっていただいて、できればディスカッションしたいと思います。ただし、済みません、委員の皆さんの数がありますので、できればお一人2分以内にしていただいて議論できればと思います。おまえは何分しゃべったのだというおしかりは受けるかもしれませんけれども、皆さんには2分ということで、1回議論が幾つかできればと思います。 早速ですが、挙手いただけますでしょうか。相澤委員、お願いします。 ○相澤委員 妹尾会長のお話に、知的財産というマーケットを付け加えたいと思います。 特許出願数が大変に減少しているという大きな問題を抱えています。特許出願というのは、日本における知的財産マーケットの指標です。 グローバルに関する政策、例えば、特許スーパーハイウェイにしても、日本が空洞化したのでは、政策の目的は達せられません。 この10年間の政策というのは、勝訴率が低い問題というばかりでなく、特許権の取得についても、その方向性に問題がありました。審査を促進するために、特許権を取得しにくい方向への改正をしています。例えば、現在検討中の付与後異議も、特許権付与後の特許請求の範囲の拡大などにより、バランスを計ることも企画されていませんので、特許権を取得しにくい方向に向かっています。特許の取得を難しくすると、特許出願は減ることになります。ユーザーの皆さんはきちんと審査してほしいとおっしゃっているのですが、その意味をよく考えなくてはいけません。均質な審査は重要ですが、特許権を取得するのを難しくしたら、出願を増やすなどとおっしゃっているわけではありせん。 アメリカよりも日本が厳しければ、日本で出願したら拒絶される可能性が高いということになり、第一国出願はアメリカへ逃げていくことになります。日本で第一国出願をしてもらうためには、日本で通ってアメリカで拒絶されるという例があってもいいが、アメリカの審査の問題を別にすれば、アメリカで通るけれども、日本では拒絶されるという例がないようにしないと、みんなが日本で特許の第一国出願をしてくれなくなります。 すごく大きな問題ですけれども、ここ10年の施策で欠けている視点だと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。これについて異論・反論は多分おありだと思いますが。長澤委員、お願いします。 ○長澤委員 長澤でございます。 日本の得意技というのは何かということに戻って、次の10年間、どういうふうに産業を盛り上げるか、ちょっと考えてみたのですが、妹尾先生がおっしゃったように、単なる日本企業による垂直統合ではだめで、企業連携があって、それが国際的であって、ヘッドハントもして、ひょっとしたら外国資本も入れなきゃいけない状態になっています。ただ、その中で今、「アメリカがやっているような施策を日本ができますか」というと、弊社のことを顧みると結構難しいと考えています。 では、何で勝てるのかということを考えると、日本の得意技は改良・改善という話が出ていましたが、到達困難な改良・改善を日本の企業は結構やってきたわけです。それを活かすような特許制度になってほしいわけです。何かといいますと、その得意技を相対的に守ってほしい。先ほどの話のように、余りにも、全世界の特許レベルが共通になって下がってしまいますと、特許の数が無尽蔵に増えていきますそうすると、技術的難易度がある高難度技術と、そうではないものが一緒になってしまい、トータルでは日本の利益にならないのではないかと思います。 ですので、確かにアメリカは審査官レベルとか、いろいろな問題があって、いろいろなものが特許になってしまいます。でも、日本の特許庁さんの審査のやり方がいいのかどうかは別にしまして、そういうある程度の進歩性がある高難度の技術、ほかの人たちが到達するのにある程度時間がかかるような技術はしっかり守ってほしい。そういう技術については、原告勝訴率が上がってほしいということです。ただ、本当にソフトウエア、ハードウエアを問わず、進歩性ぎりぎりのものが沢山特許になるような状況は、本当に我々のためになるのかというと、非常に疑問に思います。 そういう点で、中長期的に考えて、そういう技術を守るという考え方のもとに、差止請求権とか裁判制度とか海外支援とか審判制度とかのあり方は論じられるべきではないかというのが私の意見です。それら以外に、例えば模倣品対策とか人材育成とか職務発明問題というのは、その方向性とは別に喫緊の課題であると思っています。、だから、「もう少したくさん通そうよ」と、一目散にプロパテントに走るのは心配がございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 3人並んでいるので、大渕先生。 ○大渕委員 それでは、今の点と、それから早期に退室しますので、ほかの点もついでにお話させていただければと思います。 出願件数の減少というのは、特許制度全体にとって非常にゆゆしき問題で、マーケットの大きさなどの関係もあって、非常に重要な点だと思いますが、それは現象面として重要なのですが、これがとりにくくされているのか云々ということについては、恐らく多くの方は異論があるのではないかと思います。本来、特許というのは、直前の方がおっしゃっていましたとおり、一定の進歩性があって、特許を付与すべきものに対して与えるというのが大前提なので、そうでないものがあれば拒絶するし、後から見つかれば付与後異議で取り消したり、無効の抗弁で葬るというのは、実態に応じてやむを得ないことなので、そういうものを無理に操作していくのはいかがかなということであります。 先ほど、付与後異議が特許をとりにくくする方向と言われたのは、異論がある人が多いのではないかと思いますが、27ページに書いていただいている付与後の権利見直し制度の検討というのは、特許権の安定性向上というよりは、むしろ多くの人が支持するもの。最終的には、侵害訴訟で無効の抗弁で葬られることになるかと思うのですが、そういうものを待たずして、簡易迅速に特許権の安定性の観点から、こういう手続を入れましょうというので、とりにくくしているわけではないのであります。 そのあたりは、本来、特許というのは与えるべきものに与えるという大前提を崩したら、特許制度が全部崩壊してしまいますので、その上で件数の減少というのはどういうことがあるのかというのを、きちんと理由を分けて分析的に考えていく必要があるのではないかというのが1点で。 早退するので、別の点をつけ加えさせていただければ、やや前回の繰り返しになりますが、このパワポの25ページで、私はこれはもう少したくさんの方に明示的に賛同していただけるかと思ったら、そうでもなかったのですが。ここにあるように、今の話にも非常にかかわってくることなのですけれども、きちんとした特許制度を維持するためには、そのベースになる審査官の増員等が図られなければいけないのに、任期付審査官の関係で、25ページにあるとおりで、定員が大幅に減ってしまえば、せっかくFA11が達成できたのに、リバウンドしてFA40にもなりかねないというあたりは、皆さん共通の認識があるかと思います。 ここにもありますとおり、クリアな形で共通した強いメッセージを打ち出さないと、財政が厳しい中、公務員数というのは放っておけばがんと減ってしまう。さりながら、特許制度のために不可欠な人員というのは、必ず維持すべしというクリアな強いメッセージを打ち出すことが必要ではないかと思っております。 それで、グローバル化に対応した海外における知財取得支援、22ページのこういうことをグローバル化のためにやっていただくのは非常に重要なことではないか。アジア新興国知財庁に日本の特許庁の審査官を相当規模で派遣しているというグローバル対応をやられているのが現状で、大変重要なことだと思いますが、こういうことを推進していただくためにも、やはり人員がいなければできないということがありますというのが1点。 もう一点だけつけ加えさせていただきます。職務発明の関係で前回申し上げたのが、資料5の職務発明の見直しの2つ目の丸に書いていただいているのですが、ここがやや意味がわかりにくかったというお話をお聞きしました。職務発明の見直しというのは非常に重要な点だと思うのですけれども、これは特許法の中では最も難しい論点の一つで、基礎研究が不足しておりますので、やや大げさな言い方をしましたら、職務発明本質論みたいな大きな論点というのに触れずにはとても前進いたしませんので、こういうものをやるのであれば、今まで何十年か避けられてきた基礎研究のところに本格的に着手しない限り、解はないのではないかと思っております。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 奥村委員、手を挙げていらっしゃいました。 ○奥村委員 ありがとうございます。 それでは、最初に相澤先生から御指摘された、特許がとりにくいのではないかという点についてコメントさせていただきます。 相澤先生は、特許がとりにくくなっていると非常にざっくりとおっしゃっていただいたので、言わんとするところには恐らくイシューがたくさん含まれていると思います。先ほどの長澤委員の言われたように、例えばレベルの低いものと高いものと混在して、レベルの低い発明がどんどん権利化されるというのは、私もどちらかというと非常に懸念を感じます。私の所属しております日本知的財産協会の多くの日本の企業も、恐らくそれに関してはかなり懸念を示すと思いますし、現時点で企業・産業界側が日本特許庁の進歩性のレベル感に関して、それほど大きな不満を持っているということは、今まで余り聞いたことはございません。 ただし、1点、業界で議論しておりますところは、特許の明細書におけるちょっとテクニカルな話になるのですが、記載要件の基準がどれぐらいなのかといったところにつきましては、研究課題として協会でも取り上げて研究しているグループがございます。こういったことは、現在、日本の特許庁もEPO、USPTO、さらにはテゲルンゼイの仲間とで世界中でいろいろハーモナゼーションを図ろうとしておられます。そういった各国でも同じような記載基準で権利が取得できることが、我々、出願人側の産業界側の願いでございます。例えば、日本だけ特別に特許出願するときにたくさんデータを要求されるということがあると、それは困る。そういった点はあるかと思います。 ただ、もう一度申し上げますと、レベルの低い権利がたくさんできることに関しては、非常に懸念しております。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 今の特許の取得にレベルの差、きつくなりつつある。ここでいきなり振りますが、特許庁の桂課長、どうですか。 ○特許庁桂課長 データを見ますと、これは前のデータですけれども、近年、少しずつ上昇してございます。裁判所における判決も踏まえまして、あるいは各国での議論の違いなども検討させていただいて、私どものほうも日々見直しているところでございます。 また、いろいろな御要望をいただきましたら、それについて真摯に検討してまいりたいと思いますので、何かございましたらいただければと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ○相澤委員 今の事実について、1個反論してよろしいですか。 ○妹尾会長 はい、相澤先生。 ○相澤委員 長期的に見れば特許率は低下していると思います。 少し補足をさせていただくと、厳しすぎることのなかには、記載要件の問題も、補正の制限の問題も含まれています。また、アメリカにある再発行のように特許後に権利の拡大をするなどの特許をとりやすくする方法が日本の特許法には欠けていると思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 1点、私のほうから。特許数の減少は、今みたいな法務的なリーガルな面での議論があるのですが、もう一つは、これが日本の技術力のバロメーターかどうか、あるいは産業競争力のバロメーターかどうか、その点についての議論が、むしろこの内閣の委員会としては重要だと私は認識しております。それは何かというと、単純に中国の特許件数が日本やアメリカを抜いたから、あっちの産業競争力が高くなったみたいなことはあり得ない。しかし、それは日本の産業競争力に多大な影響を及ぼす。では、これをどういうふうに産業政策的に考えるのか。 法学的な観点は、もちろんこれは特許庁中心に御議論いただくのですが、ここでの議論は、できれば産業競争力の観点として、どう議論するか。そちらのほうも委員の皆さんからぜひ御議論いただければと思います。 荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 今の話も議論するのですが、妹尾先生のペーパーの資料3に書いてある、グローバルな視点で全体の知財システムを考えるというお考え、大賛成です。 その際に、グローバルな知財システムというときに、長澤委員がおっしゃったみたいに各国の企業の戦略があると思うのですが、同時に日本の企業も大変国際化してビジネスをやっていますので、日本だけ厳しくて外国で甘かったりすると、グローバルなビジネスが展開できないのではないかという課題がありますので、グローバルなものをどうしたら日本がモデルになるようなものをつくれるかという観点を、10年のことですから、前に出して議論したほうが私はいいと思います。そうすると、結果として日本企業のグローバル展開のメリットになっていくという観点が1つ。 もう一つは、知財システムの構築というお考え、賛成なのです。それは、特許をとる人あるいは企業の人、大学の人、それから特許庁があって裁判所があるとか、全体をエコシステムとして機能しているのかという観点で見ていかないといけないのではないかと思います。それは、資料2の10ページ、紛争処理機能。ここまで含めて日本の知財システムが世界のモデルになっているか。10ページの左のほうは、日本は非常に件数が少なくて、アメリカが多いとか、訴訟地に関する意見も、これをよく読むと、基本的には日本以外で裁判をやると言っているのです。 そういうことがシステムとして不十分なのではないかということですから、権利の有効性の推定規定を導入するとか、ダブルトラックを廃止するとか、いろいろな特許法の改正をやって、裁判所とか弁護士がみんな協力して、日本へ来れば、特許をとるだけじゃなくて、しっかり守ってくれるという知財システムをつくるという観点をもうちょっとやったほうがいいのではないか。 もう一点、その関係で、妹尾先生がおっしゃっている二分法の中で、特許と著作権、あるいは産業財産権と著作権となっている、この分類はおかしいという意見、大賛成なのですが、同時に、産業財産権の中でも営業秘密について、これは日本では今まで取り組みが弱かったと思うのです。それは、資料2の29ページ、国際比較してみれば、日本では表1にありますように、未遂が対象になっていないとか、国外のものについては重罰になっていないとか、非親告罪になっていないとか、いろいろ刑法的な問題。 それから、裁判所に行ったときに、日本では原告の営業秘密がなかなか保護されないからちゅうちょしているという現実もあるわけですから、ぜひもっと広い意味での、まさに知財システムというか、全体が保護されるように。例えば営業秘密保護法のようなものをつくって独立させて、日本では特許だけじゃなくて営業秘密もしっかり守る。だから、日本へ来て事業してもらってもいい、あるいは日本企業も思い切って事業をしてもいいというふうにすれば、内外に対するメッセージになります。 それから、日本企業がいろいろな国へ海外展開して悩んでいますから、そういうことに対する世界の模範になっていくのではないかと思いますので、不正競争防止法からぜひ独立させて営業秘密保護法をつくって、しっかりメッセージを内外に出して世界の模範になっていくということもやっていただいたらいいのではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 足立委員。 ○足立委員 今の営業秘密とか技術流出という問題は、企業にとっては大変重要な問題でありまして、この問題に対して大変危機感を持っているのが実態でございます。今、おっしゃっていただいたように、海外との競争力という意味で、我が国の競争力を失っていく。そういう意味では、国の力を、国富を阻害している大変大きな要件の一つではなかろうかと思っているわけです。 もちろん、企業から人が退任していくときの秘密契約の問題とか、競争会社に一定期間の就業抑制をどうやってさせていったらいいのかとか、企業の側が着実にそういう問題について取り組んでいくということは大変重要なことなのですけれども、これを国としてバックアップしてもらうことが、企業だけで個人との間の契約ということではなくて、国としてどうするのだということも大変重要なことだろうと思います。 特に、営業秘密を海外に持ち出した場合の刑事罰ということも、私はもうちょっと過重していく必要があるのではなかろうかと思います。そういうことをやると、海外流出した立証責任という問題もあるわけですから、こういうものに対する軽減措置等々を含めた法改正をしてもらうことも重要ではなかろうかと思っています。この営業秘密の保護策については、情報の共有化を行っている官民のフォーラム等々でもっと真剣に議論していくときに来ているのかなと思います。こういう審議会の場で、この問題についても真剣に議論していただければと思いますので、営業秘密の話が出ましたので、その件に関しまして御意見申し上げました。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 では、岸委員の御発言で政務官が退席されるということです。 ○岸委員 今、ちょうど営業秘密の保護の問題が出ましたので、私は記者なので、これまで取材してきて感じたことを1つお話したいと思います。 前回の専門調査会から私はずっと参加させていただいて、毎回1回はこの問題が出るのです。でも、私が知る限り、この数年で不正競争防止法で変わったのは、領得に広げたのと呼びかえをやった程度で、基本的に抑止力につながっているかなとずっと思っているのです。その中で、今まで出なかった視点で、私が取材して感じたことを申し上げて、あるいはそこから手をつけると、不正競争防止法だけじゃなくて、この問題は1つ前進するのではないかと申し上げたいと思います。 それは、技術流出をするタイプに2つあるのです。1つは、例えば日本のある電池メーカーが韓国に十二、三人、一気に抜かれたケースがあるのです。その会社は、自社で計算してリチウムイオン電池で300億円ぐらいの損害を出した。十二、三人というのは、ほとんど中堅クラスが抜かれているのです。1人の人間を抜いただけではわからないから、そこの集団を全部抜いていってリチウムイオン電池をつくる。この人たちは、ある意味で生活がかかっているという面もあって、この議論をしていると、26ページの論点にもあるように、職業選択の自由が必ず出てきて、必ずこれでまた議論がストップしてきたのです。 私は、今、言った電池で十何人抜かれたパターンというのは、ある意味で生活派と私は呼んでいて、次の職業をどうするかというのがポイントだと思うのですが、今から七、八年前、このテーマを執拗に追ったときに、もう一つの全く違うパターンがあった。それはどういうことかというと、私は左うちわ派と呼んだのですが、ある程度功なり名を遂げて、最後、トップになり切れないクラスが、韓国や中国から顎足つきで呼ばれて、接待を受けながら、自分が蓄えてきた技術をぼろぼろ流しているケースというのがあるのですね。私は、七、八年前、一生懸命こういう人たちを3人ぐらいリストアップして、3人にアポを入れて1人だけインタビューできた。 あなた、これはまずいのではないか。その人の名前を言うと、エレクトロニクス業界の方はえっと言う方だと思うけれども、日本の国力というか、技術をこんな形で出して本当にいいのか。あなたはどうしてそういうことをするのだと聞いたら、彼の答えはこうでした。自分は、若いころにアメリカに留学して、アメリカはそのころ、すごくおおらかで、あらゆるものを教えてくれて、物も出してくれた。それで日本の戦後の成長があった。 今、我々がジャパンアズナンバーワンかどうかわかりませんが、トップに立って、その後に韓国とか中国とか、中進国あるいは新興国が出てきた中で、経済というのは雁行形態で発展していくから、我々がアメリカから学ばせてもらったものを彼らに教えて何が悪いという言い方をしたのです。私は、この人をインタビューして義憤にかられました。、しかも功なり名を遂げて、ほとんど生活に問題ない人たちです。 私は、技術流出を捉えていくときに、職業選択の自由で必ずストップしてしまうとすれば、左うちわ派を経産省あたりはもっとリストアップして、こんなことをしたら危ないという。すぐ不正競争防止法で消えてしまうので、退職者も2つに分けていいと思うのです。生活派と左うちわ派を分けて、左うちわ派に決定的にメスを入れられるような仕組みができないかと、ずっと思ってきました。営業秘密の保護の問題がずっと出ているので、一つの考え方として提示してみたいなと思いました。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、政務官、御退席になりますので、一言いただければと思います。 ○島尻大臣政務官 議論を聞いておりまして、日本の企業がグローバル化といいますか、スケールがグローバルになっている中で、この線引きをどう考えていったらいいのかというのは本当に難しい問題だなというのは、短い時間ではありましたけれども、それを大変強く感じた次第でございます。企業の皆さん、あるいは日本国民が額に汗して積み上げてきた技術をどう守っていくのか。それは、我々、国がしっかりとお守りしなければならないということを改めて感じたわけでございます。 また、今後も2013の計画を立ててまいりますので、そこにまたしっかりと皆様方のお考え、そしてお気持ちが入っていく計画になりますように、私も尽力させていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。 本日は、まことにありがとうございます。 ○妹尾会長 政務官、どうもありがとうございました。 それでは、こちらのほうでまた議事を進めたいと思います。情報・技術流出の関連で何か御発言の方。どうぞ。 ○柳生参考人 柳生でございます。妹尾会長にまとめていただいた検討の方向性のうち、グローバルな企業活動を支援する産業政策への知財戦略での営業秘密の考え方でございますが、確かに日本を基点とした場合には、今の皆様の議論はすごくよく分かるのですが、実際、弊社グループですと、日本で開発したものが既にグローバルな拠点で営業秘密として管理されております。それを、その国もしくは近隣諸国に展開していっていますので、むしろ大きな課題として感じていますのは、例えば新興国の拠点で営業秘密をどう守っていくか、それをグローバルにどう保護していけるだろうかというのが、現実の懸念としてございます。 例えば資料の29ページに幾つか比較がございますけれども、実際にアメリカの動向で書いていただいていますように、ITCの決定で、たしか中国での不正な技術流出の使用であったと記憶していますけれども、その製品を米国に持ち込んだときに差しとめられることが既に判例としても確立しています。一方で、欧州でのこういった事例では、欧州のある国に国外で不正使用された技術で製造した製品を持ち込もうとした場合に、なかなか止められない状況で、法制備もまだできていないことがあります。 グローバルに見たときに、こういった部分について、国外での不正使用をしっかりととめられる形で、全世界で見たときに営業秘密をしっかり守っていけるのだということを日本も整備しつつ、外国にもこうしたことを働きかけることが、グローバルに活動している企業の支援になるのではないかと感じています。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 では、渡部委員。 ○渡部委員 今の柳生参考人のお話に関係するのですけれども、今回、36ページに、グローバル化に対応した海外における知財活用支援ということで、今回つけ加えていただいたのだと思いますが、投資協定等で、いわゆるライセンス契約にかかわるロイヤリティ料率等々の問題について働きかけをしていこうというのは、非常に重要だと思います。日本は今、実貿易収支で大体2兆円の黒字で増えていると言われている。 その中で知的財産のライセンス契約は非常に重要な役割を果たしているのですが、現地法人との関係であれば、努力しないでも当然増えていくだろうというのは多分間違いで、非常にいろいろな問題を抱えている。多分、こちらにおられる企業の方々のところもすごく苦労して、ようやく2兆円になっているのだと思うのです。 その中の問題として、現地の予見可能性が低い不透明性があるような制度の問題とか、ロイヤリティ料率も、本来設定すべき料率がとれない。あるいは、営業秘密ですけれども、ノウハウがライセンスの対象になる国とならない国があったり、非常にまちまちです。これは貿易問題なので、こういう問題をしっかり扱っていくことによって、2兆円をもっと大きくすることにつながっていくだろうと思います。 もう一つ、企業側も、そうやっていろいろな国に出てみると、初めて分かる問題がありまして、最初に設計していればいいのですけれども、ある国で開発して、またほかの国に持っていく。いわゆる物のサプライチェーンと同じで、知財のサプライチェーンみたいなものがきちんと設計されていないと、これがなかなかうまくいかないというマネジメントの課題があることは企業の中でもシェアして、その戦略を知財として立てていくことの重要性というものが認識されることが必要だと思います。 それから、ついでに先ほど紛争の話がありました。こういう知財紛争の話だと、大体、米国、中国、日本なのですけれども、ぜひドイツとかオランダとか、市場が小さくても、ここだったら権利者が勝つので訴訟地に選ぶという話をよく聞きますので、比較していただくと、例えば市場が大きいから紛争が起きるという話じゃない部分があると思いますので、その点を調べていただきたいということです。 あと、産学連携の話が余り議論になっていないのですけれども、今回、産学官連携機能強化のところで、機能評価指標の話、4ページ、5ページに書いていただいています。この項目は、こちらの調査会で戦略計画の中に入れていただいて、産学連携の機能を評価し、それによって産学連携機能を向上していこうということで、調査を1年やりまして、まとめていただいています。これについて一言で言うと、今までのように特許出願が多ければいいということではなくて、大学が特許出願をした結果として一体どうなっていますか。それが本当にイノベーションに結びついているのか。 あるいは、共同研究もそうなのですけれども、共同研究は大学にお金が入るので、増えたほうがいい。単純に言えばそうなのだけれども、その共同研究をやって、その結果がどうなったのかというところを評価指標にしていくべきだという考え方であります。なので特許出願数は分母です。共同研究数も分母であるべきと。それで結果としてのイノベーション創出を測って、これを指標にしようという考え方で報告書を書いていただいているところだと思います。 これについて、大きな異論はないと思いますので、今後、単純に大学に金が入るから共同研究すればいいやということじゃなくて、それがイノベーションの創出に本当に結びついていくかを見ていくことによって、TLOと大学との関係等も機能的に連携が深まると思います。ただその議論を行っている中で幾つか問題だなと思うことがございます。 1つは、評価しようとしたときに、例えば大学の特許出願は今、毎年7,000件くらいで、60〜70%が企業との共同出願なのです。この企業との共同出願に関してのイノベーション創出の評価がなかなか難しい。共願なので実施の報告義務もない。あるいは、最近ですと、大学はお金がないのでどんどん譲渡しています。そうしますと、ここから何が生まれているかがよくわからない。国費、原資も含めて国のシステムを使ったものですから、その成果がどういうものかということを、これは産業界にも協力していただいて、何らかの形で把握していく必要があるだろうということがあります。 それから、2番目に、これはやっていて分かったことですけれども、大学発ベンチャーというものがイノベーション創出のパスとして重要なのですけれども、昨今はM&Aとか上場するベンチャーが多くなってきて、非常に楽しみだと思われますが、実は過去10年ぐらい見ていて、大学の特許でベンチャーに行っているものが非常に少なかったのです。年によっては数十件ぐらいです。結局、それは何かというと、大学発ベンチャー1,000社計画で平沼プランで2,000社近くつくったことになっているのですけれども、恐らくちゃんと大学から特許ライセンスされたもの、これも調べる必要があるのですけれども、会社は非常に少なかった。4分の1以下だと思います。 ということは、大学発ベンチャーといってもハイテクベンチャーが非常に少なかった。定義を大きくしたので全体の数は多く見えるのですけれども、ハイテクベンチャーは実際は少なかった。実はそのハイテクベンチャーのパフォーマンスは悪くないこともわかってきている。このように成功に結び付くハイテク大学発ベンチャーに行く特許が少ないのは、アメリカや諸外国と比べて日本の問題だと思います。これは、共同研究が多いので、そういうことになっているところもあるし、大学にとっては、企業にライセンス、大企業と共同研究したりするとお金が入るのだけれども、ベンチャーにライセンスしたとしてもすぐお金にならない。だから、結局易きに流れているところで、そうなってしまっている部分があって、これを改善することを考えなきゃいけない。 それに関係して、これは大学発ベンチャーだけじゃないですけれども、ベンチャーと大企業との関係について、もっと強固な連携を構築していく必要が、日本の場合は非常に重要であるということを感じています。アメリカなどだと、大企業から多くのベンチャーが出てきて、欧州の会社もそうですが、それをまた大企業が買っていくみたいな循環の中で未利用な発明がスピンオフして利用される構造があるのですけれども、日本の場合、そこが非常に脆弱です。これをベンチャーとか、いろいろな形で促進していく仕組みをもっとつくっていかないといけないだろうと思います。 最後、これは補正予算で1,200億円、大学へ出資するという話があって、こういう話と関係すると思うのですが、600億円は大学に来ると言われていますが、この先の仕組みができていると思われない。特に大学からはベンチャーファンドなどに出資できないので、この1200億出資金に限っては、大学から出資ができるような仕組みを早急につくる必要がある。しかもその先もうまく動かないといけないので、動かすために組織を余り多くつくろうとするとよくないのではないか。例えば産業革新機構みたいなものが、これについてもう一つできて、そこに人材を集めるとか、少し集約してやったほうが私はいいのではないか。 その辺の議論はまだ表に出ていませんけれども、非常に重要なところだと思いますし、ベンチャーと大企業との関係も含めて、先ほどの営業秘密の問題とか、左うちわ型じゃない人たちが企業から出てくる中で、非常に重要な問題だと思いますので、施策を検討していくというのは重要だと思います。これは、ぜひお願いしたいと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ちょっと仕切らせてください。今、渡部委員がおっしゃられたことは大きく2つありまして、産学連携は後で議論したいと思います。その前に先ほどから出ている技術流出とかノウハウのところで、一旦皆さんの御意見を。長澤さん、良いですか。さっきから私をにらんでいたので。 ○長澤委員 視線が鋭いのが特徴なのですが、技術流出については、弊社の実例だけを紹介しますと、今のところ左うちわ型は余りいないと思います。ただ、さっき話のでた生活型はかなりいると認識していまして、幾つか「かなりコアになる技術が流れたな」という印象はございます。それはどういうものかというと、弊社の中で、これは抜かれたら困るというコア技術は、実はそんなにたくさんはないと考えています。10とか20のオーダーだと思います。それらのグループのキーパーソンが相当高い報酬で迎えられたというのは、証拠はございませんけれども、うわさ話とかSNSを介して情報が伝わっています。 そこを何とか防ぎたいわけです。そのために、今、我々の中で退職時の誓約書で、何でも使っちゃだめよと規定するのは効くわけがないので、どういうふうに誓約書を組み立てていくかというのをちょうど検討しているところでございまして、その辺の法制度と先生方のアドバイスに応じた対応を社内ではとっていきたいと考えます。 ○妹尾会長 それじゃ、高橋委員。 ○高橋委員 技術流出に関して、中小・ベンチャーという観点から、配付させていただきました資料4でも同じような意見を記述させていただいております。 それとは別の意見ですが、流出という定義がだんだん難しくなるなと。いわゆる保護という観点で営業秘密をどうしていけばいいかという方向性はどんどん具体化されて進展していく。そうすると、現状少しあいまいになっている部分で個人の技術知見レベル問題がクローズアップするのでは。非常に生々しいですが人材の海外流出は出ております。テレビでもそういうドラマをやっています。 最近の例でも、特に国内においては海外企業のジャパン法人がちゃんと法的にいっぱい存在していて、そこにかなりの技術リーダーシップを持っている日本人たちが、昔みたいに週末になったら韓国に行って帰ってくるのではなくて、ちゃんと日本の中で正規従業員や役員となって職歴上の技術経験を活かして仕事をしている。 これが現実ですので、人に付いて技術は流れているわけです。今後、どうそのあたりで個人の職業選択の自由と組織の営業秘密保護の問題に対処していくかというのは、営業秘密という概念が非常に広がって個人の知識保有レベルの観点まで突き詰めて再検討される時がくる方向にいくべきかどうかの議論が必要かも。 ちょっとお時間をいただき観点を変えての意見ですが、いろいろな観点でいろいろな議論があり、これだけ課題が多いのだなと参考になるのですけれども、今後の方向性の議論については、先ほどもSCMという言葉が出ましたように少し構造化されて方向性を示す表現方法の整理が必要では。 議論が非常に多岐にわたり複雑になっている。したがって、方向性を文章記述的な表現だけではなくて、少し図式的に構造化された表現形の方向性提示での補足があれば良いと思います。例えば、y軸でどう日本の競争力を高めていくかという図式で従来からの創造、保護、活用というのが表現するとします。その場合、知財を個人・、組織・日本という国・グローバルとのびるx軸がベースとなって論点が展開される図式表現。 先ほどの流通の議論で見た場合、大学のTLOはz軸になるのでしょうか、私が意見を述べさせていただいていますように、日本国の産業競争力強化という観点で見たときには、国内流通という議論がもっとあっていいのではないかみたい話がTLPの先のZ軸に図式表現されても良いかもしれません。車などはカーシェアリングが検討されていますけれども、知財でも同じようにシェアリングみたいな議論を今後の10年間の検討の中に入れていくのか、構造化された図式表現の中に入れていくのか。こういう事もクリアにする必要があるのではないか。 知財をシェアリングしようとすると、貴重な個人の財産・組織の財産なので、必ず財政的な補填とか、いわゆる民間ファンド系の組み入れなどの議論までになります。国内の民間ファンド系あるいは知財流通性を評価する金融の仕組みの組み入れ。日本の産業競争力の強化と言うのであれば、そこまでの検討をやらなければならないかも。こういう観点ところがz軸の延長あたりに表現されるか、あるいはxとyの合成ベクトルのあたりで表現される。合成ベクトルは、幾つも出てくるかと思われます。 総論的になりましたが、どう見てもそろそろどのように構造化ということでの方向性も議論していくという事が、次回以降、少し加わってもいいのではないかという気がいたします。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 技術流出、その他に関して、奥村委員。 ○奥村委員 ほんの一言だけ。技術流出に関して、これを何とかしたいという思いは、私も企業人としてございます。ただ、これは余り行き過ぎますと、私どもの会社もそうなのですが、キャリア採用ということで、よその競合会社で働いている方のタレントをたくさん採用しております。そういう人たちの採用は、いわゆる人材の流通というところもございまして、これはある意味産業競争力を高めるためにとても重要なことなので、そういうところに阻害が及ばないようなところをもうちょっと考慮していただいた上で、しっかりと営業秘密の流出をとめるという、両方のところをぜひやっていただきたいと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。グローバルにやると言いつつ、人材がガラパゴスではしようがないですね。 本田委員。 ○本田委員 営業秘密の保護という観点で、大学としてもこれを保護強化していただくのはいいのですけれども、今、大学と企業との間の共同研究とかが盛んになっていますので、そういう意味で大学側も企業の営業秘密に触れてしまう部分がある。では、教職員の先生方であれば、例えば大学の中で周知徹底するみたいな形で、保護強化になったときにそういう理解を深めることができるのですけれども、例えば学生さんが共同研究にかかわるみたいなことも多く考えられるかと思います。その保護強化と言ったときに、学生さんの取り扱いをどうするかというところも、きちんと視点を入れた議論をしていただければと思います。 また、奥村委員がおっしゃられた点と同じなのですけれども、結局、共同研究にかかわって学生さんが就職するというときに、そういう分野で就職される可能性もありますので、その線も含めて議論いただければと思いました。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 ○相澤委員 会長、一言いいですか。 ○妹尾会長 はい。 ○相澤委員 アカデミア側から見ますと、研究の自由、学問の自由の問題も絡んでいることを、御理解いただきたいと思います。 もう一つ、営業秘密について、法技術的に刑事罰を使うという方向に来ているのですが、それが営業秘密の民事訴訟に大きな影響を与えています。刑事罰にすると構成要件が非常に厳格に解釈されるという問題があるので、使い分けとしては、民事についてのみの検討も含めて、民事訴訟も考えなければいけないと思います。 もう一つ、渡部委員の御指摘のように、アメリカは水際を使っています。海外で知的財産権の侵害があった場合には、国内で侵害されていなくても、その流入をとめるという水際措置も考えていくことができると思います。 ○妹尾会長 では、長澤委員。 ○長澤委員 さっき、ちょっと抽象的に発言してしまったのですが、非常に限られた技術というのは特定できます。例えば私が会社を出ていく際に、あなたの知財の知識を一切使ってはだめよと言われると、私は仕事がありませんから、肉体労働しかできません。例えば、キヤノンの場合は、光学技術を持っている方がいらっしゃいます。その方に光学技術を一切使ってはだめよと言ったら、転職はできません。そうではなく、あなたがキヤノンで開発したペケペケは、まだ未公開だから、「これは使ってはだめよ」という技術として簡単に特定できます。法改正とか法を創っていく方に、そういう状況というのはわかってもらおうと思って発言させていただきました。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 これらを聞かれていて、経済産業省の知財室長として、石塚さん、何かコメントはどうでしょう。 ○経産省石塚室長 今、御議論された営業秘密といいましょうか、技術流出問題を、もう一段階、制度論としてステージアップさせていくためには、非常に多方面な議論が要るのだということを実感させていただきました。悲しいかな、私どもの力だけではいかんともしがたい面がございます。あるいは、足立委員から官民フォーラムというのもありました。アメリカではナショナル・カウンター・インテリジェント・エグゼクティブという組織が、恐らく大統領府にあるかと思いますけれども、そこはフォーリン・エコノミック・エスピオナージ、つまり海外からなされる経済スパイについて毎年議会に報告書を出しています。この組織において、件数・手口といった情報をFBI、CIA、国防総省、麻薬取締局が全部収集して議会に報告する体制ができております。あるいはFBIのウェブサイトの中には、トレードシークレット専門ページがありまして、その中に何かあったら相談、俺のところに来いとはっきり書いてありますし、あるいはFBI自身がトレードシークレットを守るための組織のトレーニングもすると書いてあります。あるいはお隣の韓国では、昨年6月に営業秘密保護センターという営業秘密の保護専門組織が立ち上がって、そこでも今、申し上げたようなトレーニングをしますとやっております。 そういう意味で、日本で言いますと情報セキュリティの分野において構築されている仕組みが一番近いと思うのですけれども、取締当局も含めて、専門調査会の御指導のもと、あるいは知財事務局の御指導のもと、ぜひとも横断的な議論・情報共有をする場を設けていただければ、我々としては幾らでも作業をさせていただく所存でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。この問題は、リーガルにどうするかという話と、イリーガルにどうするかという話と、リーガルとイリーガルをどこで区別するかという極めて複雑な話なので、これを整理しつつ、対処法を皆さんと考えていきたいということかと思います。 先ほど渡部委員が出してくださった後半のほうの話題に移りたいと思いますが、産学連携絡みのところで、皆さんのほうから何か御発言があれば、いかがでしょうか。はい、お願いします。 ○奥村委員 奥村でございます。産学連携につきましては、ふだんからちょっと考えておるのですけれども、学が現存している日本の大きな企業とライセンス関係を結んで、その技術を実用化していくという発想である限り、やはり先ほど渡部さんが言われたようなことになってしまうのではないかと思っております。ですから、私も渡部さんが言われたようなベンチャーというのはとても大事だと思っております。ベンチャーを創出することで、そこで働く人ができて雇用も生まれて、それができては潰れ、できては潰れというマーケットが1つ必ず必要だと思います。 ただし、それをどうすればいいのかというのが、随分長い間議論されてきていると私、思います。そのときに、日本のテクノロジーだからというのがよく冠についておりまして、私はここでぜひ御検討いただきたいのは、むしろ人のふんどしで相撲をとる方法として、ベンチャーをマネジしていく人がもしいないなら、外国から来てもらう。ベンチャーを動かすお金がないなら、外国のファンドにこっちでお金を出してもらう。ただし、そのテクノロジーの知財の権利は日本の法人が持つぐらいにしておけば、事業化されたときにお金が最終的に日本に還流してくるのではないかと、ざくっと考えたりしております。 ですから、現状の日本国内に存在している日本人、日本の企業だけで何とかしようというのではなくて、むしろそういったもっとリスクをとるような外国のマネーなり人なりをどんどん導入してやっていくことで、大学からベンチャーがたくさんできて、企業もできて、雇用も生まれるのではないかと、これもいつものように夢のようなことをちょっと考えております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ついつい我々、すぐオールジャパンと言いたがるのですけれども、オールジャパンは必ずしもオールジャパンのためならずということもあろうかという御指摘だと思います。 はい、お願いします。 ○本田委員 今、奥村委員からも、オールジャパンではなくて、もう少しグローバルに産学連携も進めなさいという御意見だと思うのですが、既に海外との連携ということで、文科省の支援もあって、いろいろ進んでいる状況かと思います。ですので、その視点で既にグローバルな産学連携というのは進みつつあるのではないかと思っております。 ただ、今、状況として、産学連携で出口を見つけていこうということで、どうしても号令だけになっているのではないかということで、何らかの刺激策みたいなものも入れていかないと、動きが少し停滞しているというか、評価指標などをつくりつつ、中身、実態をまず洗い出そうという状況になっているかと思います。刺激策として、号令だけではなくて、何かインセンティブになるような制度というのも、そろそろ必要なのではないかと思っています。 では、何が大学にとってインセンティブになるかというと、どこの大学も実際にいい発明が生まれてきたけれども、出願する費用を捻出することがなかなか難しいということがあります。例えば、今JSTの外国出願支援制度というものが大学にとってはすごくありがたくて、サポートいただいている制度なのですけれども、例えばこの予算の半分をインセンティブ制度のほうに投下してみようみたいなドラスチックなやり方も、1つあるのではないかと思っています。具体的には、ライセンスや製品化というような成果に応じた支援配分みたいなことができれば、単に出願するだけではなくて、ライセンス、製品化というところに積極的に大学が意識をそちらに誘導できるのではないかと思っています。 そのときに、規模の大小によって有利・不利みたいなものがあろうかと思いますので、そこは渡部先生がおっしゃられているような、例えば発明届け出件数あたりの打率みたいなもので平等になるといいますか、有利・不利という関係がないような形もとれるのではないかと思っています。 予算も、JSTの外国出願支援制度の半分と言うと、そこはなかなか難しいことかもしれないですけれども、JSTの支援をいただいている中で、うまく原資として捻出できる部分があるのではないかと考えておりまして、例えば今どこの企業さんも余り使っておられないようなPCTの予備審査請求制度というのは、JSTの支援を受けるために大学は皆さん使っているという状況で、その分を削減すれば、ある程度の原資というものはつくれるのではないかと思います。 大学としては、そういうふうに成果に応じた支援ということになると、成果を出そうという力にもなりますし、成果が上がらないような案件をいつまでも置いておいても、結局それは不利なことになるので、ある種棚卸しというのもできるので、きちんと見きわめを誘導する形にもなるのではないかとも考えます。 その支援制度によって、このときには今の出世払い的な融資の形ではなくて、投資という形で助成していただきたいと思うのですけれども、JSTにとっても、その投資効果として、これだけのライセンス件数、これだけの製品化が出てきましたということで、その助成に対する投資効果みたいなものもきちんと説明できるようになるのではないかと期待しているのです。そういうことで、今までになかった刺激策みたいなものも少し考えていくべきではないかと考えます。 以上です。 ○妹尾会長 今のことについて何かありますか。今のJSTの話は相当具体的なのだけれども、文科省の工藤室長、何かありますか。 ○文科省工藤室長 文部科学省の大学技術移転推進室長の工藤でございます。今、本田委員から御指摘いただいた件につきましては、非常に大きなところを含んでいるのですけれども、トラッキングの問題は、先ほど渡部委員が、評価指標を考えるに当たって、大学と企業が共願で出願したものについて、その後どうなったのか、実用化されたのか。同じ問題で、実はJSTが外国特許出願支援したものについて、これは実用化されたのかどうなのか、よくわからない部分がございます。 これを追おうとすると、相当コストをかけてやらなくてはいけないのですけれども、JSTの外国特許出願支援は、おかげさまで非常に盛況でございまして、それを半額と言うと、大学関係者、企業関係者はみんな卒倒すると思うのですけれども、そういう状況の中でこれをどうしていくのかというのは非常に大きな課題だと受けとめております。済みません、大した考えがあるわけではないので、今後検討していきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 では、本田委員。 ○本田委員 トラッキングの問題も、恐らく成果に応じたということになると、必然的に大学から報告が上がってくることになるので、そこも解消できるのではないかと考えます。 ○文科省工藤室長 ありがとうございます。 ○妹尾会長 先ほどから手が挙がっています高橋委員。 ○高橋委員 JSTからちょっと離れるかわかりませんけれども、大学とTLOという部分についてです。たまたま先日、大阪大学でフォーラムがありまして、産学連携についての話題がありました。TLOとかインキュベーションという内容から冠講座的なものまでの取組み紹介があり、現在はラボラトリ・オン・キャンパスと言って民間企業の研究組織が大学の中に入ってきてくださいというスタンスの研究施設との事。委託研究費とかTLOを通して知財をどうこうという取組だけじゃなく企業人材の大学への導入も含めて研究だけでなく教育にも企業が参加貢献してくださいという趣旨で大学内に企業の研究所ビルをつくりましたということのようです。 別の事例ですが、20年ぐらい前になりますか、私はボストンにありますMITにリエゾンオフィスを通して何度か訪問していた時期がありました。この時びっくりしたのですけれども、全くのビジネスライクで、研究室訪問中は分刻みでチャージがされるところから始まりまして、そこの研究室の成果利用は、特許だけじゃなく、研究室の知見はすべてという感じで(弁護士さんに法律相談していたら時間チャージされているような如く)ビジネスとしてすごくでき上がっている。ある意味では合理的ビジネスなので知財や知財権の価値評価もすぐに数字になってわかりやすいかも。 その後、日本にもTLOなどいろいろ知財や技術移転の組織ができてくるようになりました。また、日本の大企業を中心として共同研究室みたいなものを大学内に構えるようにもなりました。日本は、米国の後追いっぽい形態になっているのかなと。今は、日本の大企業が上海、北京で大学の中にラボラトリを置いている。米国の企業も、かなりの企業が中国の有力大学にラボを持っている。もうTLOを超えているわけです。 そこでは、求められる創造の内容は、知的財産権だけじゃなくて、将来に向けてのニーズやテーマに対して、どういう知的な創造活動や知的労働をするかまで広がっている。こういう現実の実態は変化している中で、ここの場での大学とTLOという議論のあたりには、現場・現実とのギャップが随分出てきているのでは。そういうところもこれからは議論していく必要があるなという認識でおります。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 大学関係で、渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 今の話を聞いていて、確かに日本の大学は新興国の大学と連携を結構やっているのですけれども、さきほどの問題と同じで、新興国の大学の共同研究の成果の取り扱いというのは、かなりいろいろな問題を含んでいる可能性があります。バイ・ドール類似制度を持っているところがあるのですが、ある国のバイ・ドール類似制度は、政府が全く同等の権利を持っていると解釈する学者が多かったりするので、これは先ほどの投資協定の問題も含めて、そういうことをどういうふうに考えるかというのは、企業にとっては今、重要な問題だと思います。 それから、先ほど奥村委員が言われたベンチャーをグローバルに育てていかなきゃいけないというのは、まさしくそのとおりで、現実に今、大学発ベンチャーの事例を見ていると、創業当時に日本にいるのは1人で、あとは全部自国で開発をやっているとか、そういうのが普通になってきています。それから、日本でインフラがなかったら、自国まで行って、向こうで大きくなったら、ホームカントリー志向がありますので、日本に工場をつくって形にするとか。そのときにどういう契約をしたらいいか、これはロバート・ケネラーという先生が、買い戻し特約みたいな契約書をつくってやればいいのではないかなどと提案されていますが、そういう議論をどんどんやっていく必要があると思います。 大学はいろいろなところでグローバルなつながりがありますし、グローバルにやっている会社は企業の中でのそうグローバルな資源があるわけです。それを両方あわせると、かなりいろいろなことができるはずで、シリコンバレーは日本の資源の中にもあると思っていますので、そういうことを促進すればいいと思います。 ○妹尾会長 今、大学等から見れば、産学連携だけではなくて、もう少し広い意味があるのですが、例えば新興国のバイ・ドール法比較というのはされているのですか。いかがでしょう。あるいは、それと絡んで、今までの議論について、経産省の佐藤課長、いかがですか。 ○経産省佐藤課長 まず、渡部先生に産学連携指標を御紹介いただいたのですけれども、ほぼ今、固まりつつありまして、御指摘いただいたとおりです。効果というか、量ではなくて質の面でどういうふうに産学連携がうまくいっているかというのを、ぜひ見える化していこうということです。ただ、幾つか課題もございますので、これはまた来年度、試行的にやりながら対応・改善することを考えているところでございます。 それから、ベンチャーの話も出ておりますけれども、ベンチャーにかかわらず、中小企業も最初からグローバルということを認識している会社が大変多いですので、皆さんのおっしゃっているように、グローバルをどのように最初からインプリメントしていくかいうことを我々としても認識して、これから進めたいと思っているところです。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 イシューの項目として、まだまだあると思うのですけれども、皆さんのほうから何かこのことで議論をということはありますか。長澤委員。 ○長澤委員 もう一つだけ。私もインターナショナルで資金を調達したり、ヘッドハントしてでもビジネスを立ち上げたりというのは、非常に賛成できるところなのですけれども、「足りないな」と思うのは、ベンチャーを創ったときは規模が大きくないので、知財の専任者などいないということです。そうすると、契約で非常に大きなリスクを負っているという感じがすごくします。そうすると、大企業としても、そういうベンチャーに大きな金を投資するのは非常に難しくなると思います。 一方、大企業で働いた人がこれからどんどん定年を迎えます。彼らはそういうリスクを非常に知っていて、日本で働きたいという人がいっぱいいます。そういう人をベンチャーだけで丸抱えするのは非常に難しいと思います。先程高橋委員とも少し話したのですけれども、そういう人を活用する仕組みがあれば、未然にリスクが防げるのではないか。だから、日本発のベンチャーを成功させるには、特許権の取得だけではなく、知財の常識とか他の知財リスクを知っている人がそこにいる、もしくはアドバイザーがいる状態をつくっていただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 はい。 ○足立委員 例えばベンチャーの育成というときに、ただ産学連携とかということでなくて、企業がベンチャーに対して技術的支援という観点は非常にいいのですけれども、それよりも財務の知識とか総務の知識ということを企業がどう後押しすることができるのかどうかということも、ベンチャーを立ち上げた若い人が財務とか経理とか法務とか総務の知識がないわけですから、そういうものについても企業がバックアップしながらベンチャーを育成していくかということも、私は大変重要な観点ではなかろうかと思います。そういう観点からも、企業のどういう支援の仕方があるかという方法も考えなきゃいけない時期に来ているだろうと私は思っています。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 本田委員。 ○本田委員 ベンチャー支援ということで、大企業の方々からの支援というのはすごく大きいと思うのですけれども、そのときに例えばエンジェル税制みたいなものは、個人がベンチャーに投資したときにしか認められないのですけれども、例えば大企業がベンチャーに投資したいときの税制優遇みたいなものがあれば、そういうものも進むと思いますし、投資した先のスタッフ的な支援が連携して進めば非常にいいと思います。当然、そのときには減税という形になってしまうので、例えばある程度上限を設けてというところを配慮すれば、そのバランスもとれるのではないかと思いますので、そういう点も必要になってきているかと思います。 ○妹尾会長 杉村委員。 ○杉村委員 妹尾会長のほうから別のイシューについての議論もというお話がございましたので、意見を述べさせていただきたいと思います。 まずは、先ほどの妹尾会長のペーパーや資料2の1ページにもありますように、グローバル展開ということと中小企業支援という2つの切り口を中心にして、知財推進計画2013、それから今後の10年の知財政策ビジョンを策定する方針に関しましては、賛成でございます。 そもそも知的財産が生まれるためには、新たな研究開発や商品開発が不可欠であるということは、皆様一致している点だと思います。 先ほどからいろいろ御議論もありますように、そのために大学とか公的機関も含めた研究開発費の増額、研究開発費にかかる税金の控除、それから、企業の開発等の投資をふやすような環境づくり、仕組みづくり、こういうものが必要ではないかと思っております。 また、権利を取得するインセンティブを促進するため、特許取得にかかる費用の税額控除やロイヤリティ収入にかかる課税の軽減策などを積極的にこの専門調査会で提言して検討していくことも必要ではないかと考えています。 中小企業支援ということで意見を述べさせていただきますと、資料2の35ページにありますように、海外での知財エンフォースメント・知財活用の支援、特に中小企業のグローバルな活動支援には専門家のアドバイスが不可欠だと思っております。中小企業がグローバルな活動をするために、知的財産の面で、例えば専門家である弁理士が企業に出願戦略・模倣品対策や鑑定等の法的なアドバイスを行うことが多々ございますが、これらのことを記載した文書は、アメリカのみならず、オーストラリア、コモンローのASEAN諸国、インドなどのコモンローの国でのディスカバリー制度によって、一方的に日本の企業だけが裁判で全て開示しなければいけないということが求められることがあります。 これらの文書、特に日本の中小企業にとりましては、海外でビジネスを展開する上で極めて重要な資料である場合が多うございまして、一旦開示されますと、特に中小企業様の場合には海外事業から全面撤退という場面が予想されることがございます。したがいまして、日本の中小企業支援、特にグローバルな活動の知的財産面での支援という点面におきまして、一方的に日本の中小企業が不利になることがないように、コモンローの各国におけるディスカバリー制度に対抗する手段として、コモンローの各国の各裁判所が日本企業に対して秘匿特権を認めやすくなるような、秘匿特権に関して担保できるような仕組みづくりがぜひ必要だと考えております。中小企業がこれからグローバルな活動を安心して戦略的に行っていくためには極めて重要な問題だと思っております。 また、中小企業やベンチャー企業など、これらの企業を知的財産面で総合的に支援するには、知財のワンストップサービスが不可欠だと思っております。資料の41ページを見ますと、知財総合支援窓口は、これまでいろいろきめ細やかに対応しているようでございますが、全国に56カ所しかございせん。56カ所の支援窓口を更にサポートするためにも、今1万人になりました弁理士を有効活用することは、日本の知財活動を活性化するためにも必要不可欠なことだと思っております。 また、資料の42ページの下に、弁理士の知財コンサルティング能力の不足と解されるような記載もございますが、弁理士は、日常業務として企業等から、商品開発、市場の動向、グローバルな販売戦略、事業展開などの情報を聞きながら書類作成を行っているわけでございます。このことは、まさにコンサルティング業務の一つに該当すると思っております。大切なのは、中小企業にとって利便性がよいように、専門家、弁理士が知財全般の相談に関与することができる仕組みづくり、総合的な関与を促進するような仕組みづくりのようなものを、ぜひここで検討して議論していただきたいと思っております。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。関連して御意見、いかがでしょうか。 それでは、三尾さん、どうぞ。 ○三尾本部員 オブザーバーなので、簡単に申し上げたいと思います。 中小企業・ベンチャーの支援についてなのですが、先ほど何人かの委員からもお話がありましたように、中小企業やベンチャーの場合は、総務とか財務とか、知財の周辺といいますか、会社全体的な支援が足りないのではないかという御指摘があったと思います。特にベンチャーの場合は、立ち上げからハンズオンで支援していく方が非常に少ない状況でして、私の周りにも非常にお金がないベンチャーがいるのですけれども、その際に、会社を立ち上げるには、そもそもどうしたらいいのですか、設立登記はどうするのですか、出資比率はどうすればいいのですかといったところから始まりまして、そもそも資本金を幾らにしましょうかという非常に初歩的なところからスタートしてしまうのです。 知財というのはもちろん大事なのですけれども、まず発明があって、権利化をしてしまって、それから会社を立ち上げますと、例えば医療特許の場合ですと、期間が短いので製品化まで至らないとか、いろいろな意味で会社設立とか全体的な仕組みについて、よくわからない方が多い状態なのです。特に、J-SOX法というのができましたこともありまして、今、日本でもコンプライアンスが非常に厳しくなっています。ですので、中小はもちろんそうなのですけれども、ベンチャーも知財という切り口だけではなく、もう少し幅広く、本当に会社全体を教えてあげるような切り口で支援していかないと、そもそも海外展開などとても難しいのではないかと思います。 ですので、知財支援総合窓口はあるのですけれども、私のほうで情報をとった範囲内では非常に細かい相談が多い。例えば海外で権利侵害されたらどうしようとか、こういう形で権利をとりたいのだけれどもという、本当にピンポイントの知財に関する相談だけということが多いと聞いています。ですので、もう少し幅広く、トータルでの相談を、私、弁護士なのですけれども、弁護士も含めて支援してあげないと、そもそも権利化だけできても、先へ進めないというところがすごくたくさんあると思うのです。 まず、お金がないところにお金をつけてあげるところから始めて、会社をどう形をつくりましょうか、どの段階で立ち上げるのがベストですとか、そういう一つ一つの初歩的な質問のほうが非常に重要だと思いますので、そのあたりも検討していただきたい、支援窓口をつくっていただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 座長として発言していいのかどうかわかりませんけれども、一点。日々コンサル業務をやっている人間の1人としては、私も今の三尾先生のお話は大賛成です。そもそもビジネスモデルを考えていらっしゃる中小・ベンチャーはどれだけいるのだろうかというと、余りいなくて、技術はあるのだけれども、あるいはまごころはあるのだけれどもというところから始まっている。よく私、議論するのですけれども、中小企業に財務諸表の見方を教えるのは良いことです。でも、財務諸表が読めたら競争力が高まるのですかと私、よく申し上げます。ビジネスモデルそのものを語れるようなコンサルティングの方がいないと、幾ら権利をとってもしようがない。出願コンサルとビジネスコンサルと知財コンサルは違うのだという原点に立たないと、この支援策はできても、といういつものパターンに結局なってしまうのではないかという懸念が大変あります。そういうことも考えながら伺っていました。 時間があと15分ほどあるので、これ以外のイシューについて本格の議論はできないけれども、頭出しをしていただこうと思います。渡部委員、お願いします。 ○渡部委員 グローバル知財人材育成のところなのですけれども、実際はいろいろな機関、弁理士とか書いてあるのですけれども、その中でも大学、特に知財専門職大学院というのは、まさしく知財人材育成に特化した形でこういう役割を担っているわけですので、グローバル知財人材あるいは社会人をしっかり育成できる機関として期待されているところだと思います。昨年、知財専門職大学院の協議会をつくって、8大学院が協力してサマースクールを英語でやって、外国からもかなり来られた。そこに日本企業の方が入られて英語でディスカッションした。そういうものが、実はWIPOとの連携もできるような形になってきましたので、そういうところにこの役割をもう少し担ってもらう形の施策を考えていただくといいのではないかと思います。 簡単ですけれども、以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 柳生参考人。 ○柳生参考人 先ほどからも御意見が出ていました税制に関して、渡部先生の言葉をかりると、知財のグローバルなサプライチェーンを考えたときに、大きな課題として移転価格税制の問題がございます。これは、二国間で協議ができる国もあれば、制度があっても、まだ機能していない、もしくは制度のない国もありますので、妹尾会長がおっしゃいましたように、内閣に設置された調査会ということからしますと、ここで議論されるかどうも含めて、もし別の場で税制として御議論ということであれば、それで結構なのですが、大きな課題であるということは申し上げたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今のことで言えば、ここで議論を詳細にするかどうかは別だと思います。ただ、ここは司令塔的な意味ですから、そういう課題を各府省に対して検討してくださいということは言えるポジションにあると思います。ということで御理解いただければと思います。 はい。 ○奥村委員 奥村です。気になるイシューが幾つかあるので、頭出しだけちょっとさせていただきますが、その前に、先ほどの杉村委員の発言の、これはある意味日本における知財の人材育成にも関係することだと思います。弁護士さんにしても、弁理士さんにしても、1人で全部の相談をするのはなかなか難しゅうございますので、チームを組んだり。だけれども、時には自分の苦手なところでも相談を受けなきゃいけないところがあるので、そういう活動がしにくいならば、それはぜひ見直して改正していく必要はあると思っております。ただ、うまくきちんとチームをつくって、中小企業が相談できる窓口が必要だろうというのが1つです。 あと、頭出しだけなのですが、前回も少し申し上げましたが、日本の政府もしくは特許庁の国際的な発言力を高めていただきたいと思います。非常に頑張っていただいている部分も認識しております。例えば生物多様性条約ですと、アメリカも入っておりませんし、EUもむにゃむにゃ言ったりすることがございますが、日本の政府はしっかりした意見を言っているということもヨーロッパの仲間から聞いております。ただ、いろいろな国際の場面で、アメリカ政府とEUが相談しているというのはよくニュースに流れてくるのですが、そういうときにもっとJPOとか日本の政府がというのがどんどん流れてくるぐらいの話が出てきてほしいと思っております。 その理由の1つは、やはり日本の企業の意見がそこに盛り込まれるべきだろうと思っていますので、政府の発言力があればこそ、EPAとかTPPとか、いろいろな交渉のときに知財の重要なことが相手側にも協議で出せるだろうと思います。 もう一つは、海外支援のことでございますが、私、前回、ASEANの支援を申し上げましたけれども、昨今の対中国との外交上の非常に難しいところを考えますと、まさにASEANの中で、特にここにという集中的な支援をぜひ総合的にしていただきたい。その中の一つの支援活動として、知財というものも含めていただく。そうすると、日本の仲間がふえる。仲間が増えれば、ますます日本の発言力が上がる。私は製薬企業の者でございますので、できれば新興国とか途上国の医薬品アクセスへの日本国としての支援も、その中に織り込んでいただければ。最近、反知財という運動もかなりございまして、そういったものに対する対応策にもなるのではないかと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今の前半で強調された政府の発言力は、特許庁だけではなくて、例えば国際標準・認証も絡んでくるところかと思いますが、経産省の山内さん、土井さん、何か御発言ありますか。いや、ありますよということも、頑張っている最中ですということもおありでしょうが。 ○経産省土井課長 知財の標準の関係で、年末年始、ヨーロッパとアメリカ当局が必須特許の取り扱いについてかなり明確な方針を出しております。必須特許で事業を差止めるのは、制限を設けるべきという。事ほどさように、ISO/IEC、ITUの場でも必須特許をめぐる議論が大変盛んになっておりまして、3機関の特許ポリシーはITUで大体決めていくことが多いのですけれども、今後の必須特許をめぐる方針を、特にFRANDルールのリーズナブルな意味だとか、そういうものを議論するアドホックグループが設置されておりまして、そういうところに私どもが議論に参加しているところでございます。 ちょっと断片的な御議論でございますが、御報告を。 ○妹尾会長 特許庁のほうから何か。 ○特許庁桂課長 これは一言頑張りますとしか、言いようがないのですが、企業の方々からの御要望、御意見を十分聴取させていただいて、場合によってはスクラムを組んで国際的な場で議論をリードしていきたいと思っていますので、応援、よろしくお願いします。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 時間もわずかになってきたのですが、資料2の1ページをちょっと見ていただきたいのです。皆さん、いろいろな観点から御議論いただきましたけれども、1の(2)の職務発明制度の見直しについて、それから3の知財の活用、適切な権利行使の在り方について、それから5番目の国際標準化・認証の取り組みについて、それから人材がやや弱かったということですが、これは次回も議論をさらに続けたいと思います。これらの関係でいま一度、話をしておきたいという方がいらっしゃいましたら。足立委員、お願いします。 ○足立委員 職務発明制度の問題については、前回も私からお話申し上げているのでございますけれども、対価をめぐる裁判所の考え方等々が企業の実態と大変大きな隔たりがあるのではなかろうかと思っています。これが産業の阻害要因になっていく可能性を秘めておりますから、ぜひそういう意味で職務発明制度の改定ということについて、積極的に議論の場に乗せていただきたいなと思っています。2005年に改正されて、その後判例が出ていないわけですから、そういう意味ではまだちょっと早いという意見が出てくるかもしれませんけれどもね。 そういうことではなくて、産業の育成という観点、対価の問題等々については、大変難しいものでございますから、考えながら発明に対する奨励金等々については、これは企業の戦略としてインセンティブをどうするのかということで考えていくことが必要ではなかろうかと思っていますから、そういうところも含めて、ぜひ早急に検討していただく重要な内容だろうと思います。よろしくどうぞお願いします。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 はい。 ○本田委員 職務発明制度の見直しという項目に関しましては、職務発明制度自体が企業での発明という視点に立った条文のつくりになっていて、今、大学での発明というか、大学で生まれてくることがちゃんと加味された法律になっているかというと、学生の発明をどうするかというのは、実は職務発明制度ではカバーできていない部分かと思います。大学でも積極的に発明活動というのが盛んになっていますので、そのあたりも含めた形で見直しをすべきではないかと思います。 ○妹尾会長 あわせて、長澤委員。 ○長澤委員 棚に上げたいことを皆さんに大体言っていただいたので、私が考えている中で残っている課題は差止請求権の在り方の問題です。これは非常に難しい面があって、改正は成文でやるのか裁判所の判例でやるのか、いろいろな考えがあると思いますが、恐らく合わせ技になっていくのではないかと私は考えています。「どの線までは裁判所に任せましょう。どの線からは成文できますね」という議論をぜひこの場でやってもらいたいと思います。 ○相澤委員 それに関連して、いいですか。 ○妹尾会長 相澤委員。 ○相澤委員 その点に関して、大きな懸念を持っています。日本における知的財産の保護は全体として不十分と言わざるを得ません。損害賠償の額は少なく、勝訴率は低いという中で差止請求権の制限の議論をするのは、バランスに欠ける議論だと思います。アメリカにおいて差止請求権が制限するという議論は、勝訴率も高く、損害賠償も高い中で、バランスをとる議論です。総合的に考えないと、ますます、日本の特許権は弱くなってしまって、日本の特許制度の意味がなくなってくるということに配慮しなければなりません。 保護水準の高いアメリカの議論を、そのまま日本ですることは、バランスの欠けた議論になるのではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。これらの問題は、職務発明の問題も差止請求権の問題も、それぞれの府省できちんと議論されている部分もありますので、この調査会として詳細まで踏み込むか、です。ただし、方向性としては、きちんとこういう形でやってくれという話はしなければいけないので、そこのあんばいがあろうかと思います。 それから、法改正という問題でいけば、もう弁理士法の改正というのも入ってくるわけで、それは一体どうなっているのかということもあります。我々はグローバルな知財人材が世界では活躍しているときに、日本の弁理士さんは国内知財人材だけで良いのかという問題意識が当然この中では出てきているわけです。それも恐らくイシューに挙がってくるのではないかと我々は考えております。 それでは、時間がそろそろ来たのです。次回もまた御議論いただきますが、次回はもう一歩進んで、盛り込むべき事項についての素案を事務局が提示してくれる予定になっております。ですので、きょうの議論を踏まえて何かありましたら、事前にぜひ事務局ないし私のほうに御連絡いただければと思います。 きょうの御議論で結構特徴的だったのは、知財権中心の話から、どうも知財全体の話へ移りつつあるなということだったように私は感じました。皆さんは、いかがでしょうか。 もう一つありました。資料2というものをつくっていただいたのですが、最初に私がお断りしたとおり、これは仮の柱立てでございます。たてつけをこういうふうにしてしまうと、この中での議論になってしまうのです。我々はそういうことを脱して、このたてつけ自身が次の時代の2013を生むときに良いのだろうかという議論に入っていくという感じが出てきたのは、好ましいことだと思います。この中の議論は、各府省に詳細にやっていただく部分がかなりあると思います。このたてつけはこれで良いのかというのが、専門調査会の大きな狙いだと思いますので、そこを踏まえて、事務局、私のほうにいろいろな議論を次回までにぜひお寄せいただければと思います。 それでは、事務局のほうから。 ○安田参事官 次回の専門調査会でございますけれども、3月21日木曜日午前10時から、この場所で開催いたします。 ○妹尾会長 また、皆さん、お忙しい中、年度末にお集まりいただくことになろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。 |