知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第1回)



  1. 日時 : 平成24年12月21日(金)10:00〜12:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 妹尾会長、相澤委員、足立委員、荒井委員、大渕委員、奥村委員、岸委員、
    杉村委員、高橋委員、長澤委員、西山委員、渡部委員、柳生参考人、
    中島オブザーバー
    【事務局】内山事務局長、山根次長、作花次長、畑野参事官、安田参事官
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)会長の選任
      (3)副会長の選任
      (4)検討スケジュールについて
      (5)知的財産政策ビジョンWGの設置について
      (6)知財人財育成プラン検討WGの廃止について
      (7)過去10年の知的財産推進の取組の検証について
      (8)閉  会


○山根次長
 皆様おはようございます。時間よりちょっと早いですけれども、皆様お集まりでございますので、ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第1回)」会合を開催させていただきます。本日は、御多忙のところ御参集いただき、まことにありがとうございます。
 私は、内閣官房知的財産戦略推進事務局次長の山根でございます。よろしくお願いいたします。後ほど、委員の皆様の互選によりまして、本専門調査会の会長をお決めいただきますけれども、それまでの間、議事の進行を務めさせていただきます。
 会議の開催に先立ちまして、知的財産戦略推進事務局の内山事務局長から御挨拶申し上げます。

○内山事務局長
 皆様おはようございます。内山でございます。本日は、皆様、年末の大変御多忙の中、御参集いただきましてありがとうございます。各界を代表する皆様方に委員に御就任いただきまして、本日、第1回の専門調査会を開催できますことを大変心強く、そして、嬉しく思う次第でございます。
 皆様御案内のとおり、知財を巡る状況というのは、刻一刻、すごいスピードで変化を遂げております。アップルとサムスンの国際的な知財訴訟に見られますように、グローバルな企業間におきましては、大変激しい知財競争が繰り広げられております。また、中国を初めとする新興国の台頭も大変目覚ましいものがあるわけでございます。まさに、こうしたグローバルネットワーク時代におきまして、我が国の知財制度システムの不断の改革、そして企業のグローバルな知財活動をしっかり支援していくといったことを、スピード感を持って大胆に進めていく必要があると考えております。
 来年3月には、この知財戦略本部が創設10年を迎えます。節目の10年を迎えるに当たりまして、知財立国実現という原点に立ち戻って、しっかりこの10年を厳しく検証するとともに、こうした世界経済の大きな変化を踏まえて、危機意識をしっかり持って、今後の知財政策を再構築すべき時期に来たのではないか、新たなスタートを切るべき時が来たのではないかと思う次第でございます。
 委員の皆様におかれましては、私がお願いするまでもなく、しっかり率直な御意見を言っていただけると思っております。外は寒いわけでございますけれども、内では熱い御議論を闘わせていただきまして、新たな知財政策の再構築に向けて、素晴らしい議論をぜひお願いしたいと思っておる次第でございます。私ども事務局といたしましても、関係省庁の皆さんとしっかり連携をとりながら、委員の皆様方のサポートを全力でやっていきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

○山根次長
 それでは、今回、委員に御就任いただきました方々の御紹介をさせていただきたいと思います。
 資料1の委員名簿をごらんいただきながら進めさせていただきたいと思います。
 まず、相澤英孝委員でいらっしゃいます。

○相澤委員
 相澤でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 足立直樹委員でいらっしゃいます。

○足立委員
 足立でございます。よろしくどうぞお願いします。

○山根次長
 荒井寿光委員でいらっしゃいます。

○荒井委員
 荒井です。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 大渕哲也委員でいらっしゃいます。

○大渕委員
 大渕でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 奥村洋一委員でいらっしゃいます。

○奥村委員
 奥村でございます。よろしくお願いします。

○山根次長
 岸宣仁委員でいらっしゃいます。

○岸委員
 岸でございます。よろしくお願いします。

○山根次長
 杉村純子委員でいらっしゃいます。

○杉村委員
 杉村でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 妹尾堅一郎委員でいらっしゃいます。

○妹尾委員
 妹尾でございます。どうぞよろしくお願いします。

○山根次長
 高橋常夫委員でいらっしゃいます。

○高橋委員
 高橋でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 長澤健一委員でいらっしゃいます。

○長澤委員
 長澤でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 西山浩平委員でいらっしゃいます。

○西山委員
 西山でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 本田圭子委員は、本日、所用のため御欠席ということでございます。
 それから、山口範雄委員、御欠席でいらっしゃいますが、本日、柳生一史様が参考人として御出席でございます。

○柳生参考人
 柳生でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○山根次長
 渡部俊也委員でいらっしゃいます。

○渡部委員
 渡部でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 また、本日、オブザーバーとして中島淳様が御出席でいらっしゃいます。

○中島オブザーバー
 中島です。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 続きまして、事務局からの出席者についても御紹介させていただきます。
 局長の隣、次長の作花でございます。

○作花次長
 作花でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○山根次長
 それから、総括参事官・畑野でございます。

○畑野参事官
 畑野でございます。よろしくお願いします。

○山根次長
 競争力強化・標準化分野担当の参事官・安田でございます。

○安田参事官
 安田でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 最後に、本日は各省庁より、議論をサポートしていただくために関係課室長にお越しいただいております。
 法務省から、高松参事官でいらっしゃいます。

○法務省高松参事官
 高松でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 文部科学省から、里見産業連携・地域支援課長でいらっしゃいます。

○文部科学省里見課長
 里見でございます。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 経済産業省から、佐藤大学連携推進課長でいらっしゃいます。

○経済産業省佐藤課長
 佐藤です。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 同じく、土井基準認証政策課長でいらっしゃいます。

○経済産業省土井課長
 土井でございます。よろしくお願いします。

○山根次長
 同じく、石塚知的財産政策室長です。

○経済産業省石塚室長
 石塚でございます。

○山根次長
 特許庁から、伏本特許戦略企画調整官でいらっしゃいます。

○特許庁伏本調整官
 伏本です。よろしくお願いいたします。

○山根次長
 それでは、議題の2番目の会長の選任に移りたいと思います。専門調査会の設置規定によりまして、会長は委員の皆様の互選により選出していただくこととなっております。
 この際、委員の皆様のほうから、どなたか御推薦があればお願いいたします。相澤委員、お願いします。

○相澤委員
 これまでも妹尾先生にお願いしておりましたので、妹尾先生にお願いできないかと思いますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」と声あり)

○山根次長
 それでは、妹尾委員に会長をお願いしたいと思います。
 会長より御挨拶を一言お願いしたいと思います。お越しいただいて、ここからの進行は会長にお願いします。

○妹尾会長
 皆さんおはようございます。ただいま会長にということで、私が拝命させていただきます。微力ながら全力を尽くしていきたいと思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。
 私、今、ここの会長席でまず最初にやらなければいけない仕事があります。それは、急な事情により、私が本専門調査会に出席できなかった場合を想定しまして、その会合における議事進行をお願いする方を、あらかじめリスクマネジメントとして準備するということであります。私も一生懸命やりますけれども、死なない程度に一生懸命やるということですので、万一のときにはぜひその方に副会長をお願いしたいと思います。
 その副会長については、規定により、専門調査会の運営に関する事項で特に定めのない事項については会長が定めるとされておりますので、私からお願いさせていただく方を指名させていただきます。まことに恐縮なのですけれども、渡部俊也委員に副会長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○渡部副会長
 リスクマネジメントの一環で、御異議がなければ。

○妹尾会長
 ということで、私も渡部先生もリスクマネジメントしながらということです。よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)

○妹尾会長
 それでは、渡部先生にお願いしたいと思います。
 それでは、早速議事を進行したいと思います。
 最初に、事務局のほうから検討スケジュールについて御説明をいただきたいと思います。安田参事官、お願いいたします。

○安田参事官
 事務局より説明いたします。
 まず、配付資料の確認でございますが、資料1から5、参考資料1から5を席上に配付しております。議事の途中で抜け等に気がつかれましたら、事務局の方で対応させていただきたいと思います。
 それでは、検討スケジュールでございます。資料2をご覧いただきたいと思います。
 本専門調査会でございますけれども、全部で5回の開催を予定してございます。第1回の本日は、過去10年の知的財産推進の取り組みの検証などを含めて、フリーディスカッションをいただければと思います。
 第2回は、2月7日木曜日になりますけれども、本日の議論を深めまして、推進計画2013に向けた論点整理を御議論いただきまして、第3回、第4回では、知的財産推進計画2013に盛り込むべき事項の素案、案の御議論をいただきまして、最終回の第5回で推進計画2013に盛り込むべき事項・工程表の検討、決定を行いたいと考えております。
 それから、今回、委員の約半分が新任ということでございますので、本調査会の運営規定について説明したいと思います。参考資料2をご覧ください。
 議事の公開に関することでございますけれども、1ポツ、(2)にございますけれども、本調査会の議事録でございます。原則として、会議の終了後、速やかに発言者名を付して公開することになっておりますので、会議終了後、約1週間しましたら議事録が上がってきますので、お手数でございますけれども、確認等をお願いできればと思っております。
 2ポツで、本専門調査会で配布された資料は、原則として会議終了後に速やかに公開することになってございますので、各委員が持ち込まれた資料がもしありました場合、これも公開対象となると御承知おきいただければと思います。
 それから、参考資料3の2ポツ、傍聴の規定でございます。一般の傍聴者及び報道関係傍聴者も、本日の会議を傍聴されています。
 以上が本調査会の運営規定についてでございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 ただいま御説明のありました本調査会の運営、及び今後の検討のスケジュールについて、何か御意見、その他、御指摘、ございましたらお願いします。どうでしょう。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、資料2のとおりに検討を進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次へ移りたいと思います。知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループの設置についてでございます。これについて、まず事務局から説明をお願いしたいと思います。安田参事官、お願いします。

○安田参事官
 資料3をごらんいただければと思います。
 政府として、2002年に知的財産立国実現に向けまして知的財産戦略大綱を策定いたしまして、2003年に第1回目の推進計画を策定して以降、推進計画2012で10回目、すなわち10年の節目を迎えるということでございます。一方で、御案内のとおり、我が国は目まぐるしく動いておりまして、予想をはるかに超えるスピードで進むグローバルネットワーク化、それから新興国の台頭を背景とする各国間での知財システム競争の出現、それから知財の保護から活用への視点の転換及び知財マネジメント人財の育成の高まりといった環境変化が起こっております。
 このため、本調査会及びコンテンツ強化専門調査会のもとに、資料3の別紙にございますように、知的財産に関する有識者によります知的財産政策ビジョン検討ワーキンググループを設置しまして、2ポツの検討事項にございますように、これまで10年の取り組みを検証した上で、今後の10年につきまして、我が国の産業競争力強化の視点に立った知的財産政策ビジョンの策定に向けた検討を行うことといたします。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 本調査会でワーキンググループの設置を決定するという必要がございます。このワーキンググループの設置について、何か皆さんのほうから御質問、御指摘、その他ございましたらお願いいたします。中島本部員。

○中島本部員
 オブザーバーでいきなり発言申し上げて、申しわけありません。中島でございます。オブザーバーで大変恐縮でございます。
 ワーキンググループを設置した御説明があったのですが、この専門調査会で直接やらないでワーキンググループを設ける理由・趣旨について、余りよくわからなかったのですけれども、それは後ほど御説明があるのでしょうか。

○山根次長
 知的財産政策全体についての検討ということでございますので、この競争力強化のほかに、もう一つコンテンツの話題も当然出てくるわけでございます。そういう意味で、両方のメンバーの方々に加わっていただく。さらには、本部員の方にも入っていただいたり、あるいは知財政策とIT戦略との連携ということも重要な課題と考えておりますので、そういった方々も入っていただいて、別の組織で全体的な検討をやっていただく。
 ただ、そちらでの御議論は、両専門調査会の下のワーキンググループの話でございますので、この専門調査会、コンテンツ専門調査会の方々にもいろいろな形で御意見を伺う機会は設定させていただきたいと思っております。

○中島本部員
 ありがとうございます。そうしますと、コンテンツと一緒ということでしたら、合同委員会で済むわけですけれども、IT戦略本部の方が加わるということが特別な事情ということで解釈してよろしいでしょうか。

○山根次長
 そういった事情もございますし、あと、全部合同ということになりますと、40名近い人数にもなりますので、インテンシブな議論をいただくということからも、ワーキンググループという形で組織をつくることが妥当ではないかと考えた次第でございます。

○中島本部員
 そうしますと、人数を絞るということで、人選が大変重要かと思われます。それはよろしくお願いいたします。
 それから、この専門調査会との関連はどうなるのか。先ほど、意見を出す機会はきちんととるというお話でしたけれども、その辺の様子も御説明いただけるということでよろしいですか。

○山根次長
 本日、10年を振り返った議論ということで、これから皆様から御意見をいただくことにしたいと思っておりますし、あるいはその中で、10年を振り返りつつ、今後の10年、一体どういう方向を目指すべきかという御意見もいただければと思っております。また、そうした機会、この第1回のみならず、第2回の会合でもさらに深めていただければと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

○中島本部員
 私がお願いしましたのは、こちらから意見を出すのではなくて、ワーキンググループから出てきた政策ビジョンに対して、ここでいつ、どういう意見を出せるかということでございます。

○山根次長
 ワーキンググループのほうは、設置されて以降、随時開催されてまいりますけれども、そこで行われた議論の模様などは、専門調査会のほうで御報告させていただきたいと思っております。

○中島本部員
 ありがとうございます。そうしますと、進行の都度、ここまで行った、こういう内容であるという御報告をいただけるということでよろしいでしょうか。

○山根次長
 できるだけそのようにさせていただきたいと思います。

○中島本部員
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 ほかに御意見、御指摘はございませんでしょうか。よろしければ、本調査会としてワーキンググループを設置するということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますね。
(「異議なし」と声あり)

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今、山根次長からの説明もありましたとおり、コンテンツ強化専門調査会、今月25日に開催される予定になっております。その会議で同じく、この議題が審議されることになっております。それが通りますと、両調査会で合同でこのワーキンググループが動く形になります。今、説明のあったとおり、10年の総括、それから今後の10年の展望ということを、このワーキンググループで議論し、そして各専門調査会に上げるというスタイルになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、知財人財育成プラン検討ワーキンググループの廃止について。まだ続いていたのねと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、手続上、ここできちんとしておきたいと思います。それでは、安田参事官、説明をお願いいたします。

○安田参事官
 資料4をご覧いただければと思います。知財人財育成プラン検討ワーキンググループでございますけれども、2011年8月に本専門調査会決定事項として設置されております。その中で、知財マネジメント人財の育成、グローバル活用人財の育成・確保について取り上げまして、2012年1月に知財人財育成プランを策定いたしました。これを受けまして、推進計画2012においても知財人財育成に関するさまざまな政策がまとめられたところでございます。したがいまして、この知財人財育成プラン検討ワーキンググループは、その目的を達成したことから、本専門調査会で廃止の決定をさせていただければと思います。
 以上でございます。

○妹尾会長
 それでは、この廃止について何か御意見、御異議、御指摘、ございますか。ここの成果は、専門調査会を通して、各施策に現在織り込まれていると思っております。いかがでしょう。よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)

○妹尾会長
 はい。それでは、知財人財育成プラン検討ワーキンググループは廃止されたということになります。
 それでは、大きな話にいよいよ入っていこうと思います。過去10年の知的財産推進の取り組みの検証についてです。過去10年間を総括し、これからの10年を展望しようということになっております。過去10年の知的財産推進の取り組みは、各界の皆さん、大変御努力くださったと思います。それについて、検証というか、確認といいますか、その議論を行いたいと思います。
 そのために、まず最初に事務局から用意していただいた資料を説明いただきたいと思います。それでは、安田参事官、よろしくお願いします。

○安田参事官
 資料5になります。本資料でございますけれども、過去10年、知的財産の取り組みにつきまして、知的財産戦略大綱、知的財産推進計画2006の中の重点戦略、それから2009年に決定いたしました第3期知的財産戦略基本方針の項目がございます。これらの項目に基づきまして、当事務局におきまして、主な実績、論点を整理したものでございます。
 論点につきましては、本専門調査会の議論のための現状をお伝えしておりまして、特に事務局としてこうするべきだ、この点は問題があるといった主観的な方向性は示していないものでございます。
 各項目につきましては、事前に御説明しているということで、詳細については割愛させていただきますけれども、過去10年の足跡ですけれども、主に知的財産の創造、保護、活用といったサイクルで展開してまいりましたので、それに沿った考え方で整理をしてございます。
 それから、創造、保護、活用のサイクルの共通事項といたしまして、中小・ベンチャーの支援、国際標準化戦略、知財人財育成といった項目で整理させていただいております。
 それから、この資料5でございますけれども、事前に説明したところから若干技術的な変更等がございますが、大きな内容について変更はございませんので、この辺の説明は省略させていただきたいと思います。
 それで、本日の議論でございますけれども、この項目に限らず、各委員の問題意識について御自由に御議論いただければと思っております。今回の議論で出されました意見、提言につきましては、事務局で整理いたしまして、例えば長期的な課題につきましては、ビジョン検討ワーキンググループの次回で、それから短期的な話につきましては、推進計画2013で議論を進めていきたいと思います。2013年度に実施するような話が出ました場合は、次回にさらに議論を詰めていきたいと思います。
 以上でございます。

○妹尾会長
 それでは、ただいまから、今の観点から皆さんに自由に御意見をいただきたいと思います。順番に区切っていってもいけないので、最初ですので、全体論、個別論、いろいろあろうかと思いますけれども、皆さんから忌憚のない意見を言っていただければと思います。
 ちょっと参考資料5を説明してくれますか。

○安田参事官
 済みません、説明を省略いたしました。参考資料5、A3横長の紙でございます。こちらにつきましては、過去の推進計画のそれぞれどういう項目立てがされていたかということと、それから、その項目の主な施策について一覧で時系列的に並べたものでございます。こちらも参考にしながら、御議論いただければと思います。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 この専門調査会では、10年にわたって、2003から2004、2005と、毎年計画をつくってまいりました。そのときの柱立てというか、立てつけはどういうふうにされていたかということを一覧にしてもらってあります。前半をごらんになればわかるとおり、創造・保護・活用という、いわゆる知的創造サイクルを前提にした立てつけにしてあって、それがずっと動いて、それから5年たったぐらいから、サイクルだけではなくて、世界は大きく動き出しましたので、そうではない構成の仕方に変わってきているということが皆さん見て取れるのではないかと思います。
 それぞれに吹き出しが入っておりまして、各アウトプットがここで構成されております。これを見ながら議論をしていただくのも手かと思います。
 それでは、ただいまから時間は90分程度あります。90分程度あると言っても、この委員の人数ですので、お一人当たりの御発言時間、まことに恐縮です。ほぼ3分程度にしていただければと思います。
 それでは、早速、大渕委員からお願いします。

○大渕委員
 最初に発言してしまったほうが気が楽なものですから、恐縮ですが、若造ですけれども、時間も限られておりますので、非常に重要な2点だけお話して、あとはまた適宜フォローしたいと思います。
 まず1点目が、この資料13ページから14ページにかけての任期付審査官の関係であります。これは大変地味なテーマではあるのですけれども、恐らくこの10年に限らず、知的財産制度の根幹をなす特許制度の中核というか、最もベースになるものがこの審査でありますし、そのためにはマンパワーがなければきちんと審査ができなくて、これなくしては特許庁の手続もなければ、その後の侵害訴訟もなければ、ビジネス的な活用もないという最も根幹の部分であります。私は、昔、定員の関係で出向先で苦労したことがあるので、こういうものを見るとすごく重要だなと本能的に感じるのです。
 少し前の産構審の際にこの問題が出たときには、そういう認識が余り多くなくて、今まで採用された任期付審査官の方が民間に戻った場合には、もったいないので活用してくださいという、任期付審査官になられた各個人の方の活用というところに集中しておりましたけれども、そういう点ももちろん重要ですけれども、これは恐らくそれ以上に、座布団と言ったり、椅子と言ったりいたしますけれども、要するに定員の問題があった。
 この資料14ページの一番下のグラフを見ますと、夢のような、一昔前にはとても考えられなかった、FA期間がほぼ30月ぐらいだったのが11月という状態に達しておりますけれども、これはまさしく任期付審査官1,200人ぐらいの大きなマンパワーを外から注入して初めて可能になったものですので、こういうものは達成も難しいけれども、恐らく維持というのはそれ以上に難しくて、この任期付審査官が引き揚げられてしまいますと、これで見るとFA40という、もとの30よりももっと長くなる。要するにリバウンドの状態になってしまいます。
 こういうものは縁の下の力持ちでもないですけれども、大変地味なテーマで注目されにくいところであります。個別の施策も重要ですけれども、一番根幹の、人なくしては適正な審査も速い審査もおよそあり得ません。このテーマというのは、地味で気がつきにくいけれども、ここにいらっしゃる方全員がもろ手を挙げて賛成して、財政状態等厳しい中でも、日本のイノベーションのための最も重要な部分については、ほかのものより優先的に財政を投入すべしというあたりについては異論がないのではないかと思います。
 この席でもそういうものを盛り上げていくことが、我々の間では共有されていると思いますが、世間の人からは特許制度のためにそんなにマンパワーが必要というのは、そうストレートに誰でも出てくるような話でもないかと思いますので、こういうことはしっかりとここから発信しておく必要性が最も高いのではないかと思いまして、最初に言わせていただいた次第です。それが1点目であります。
 2点目が、職務発明規定の見直しという、御案内のとおり、平成23年改正という非常に大きな改正が少し前になりましたけれども、そこでも先送りになっているような大きなテーマが5ページ、6ページであります。
 これについて、私は研究者の立場から申し上げますと、このテーマは特許法の中では最も重要なテーマの一つだと思います。こう言うと差しさわりがあるのかもしれませんけれども、特許法のテーマの中では基礎研究というのがやや不十分なまま、実務的な必要性が高いので、基礎研究を十分組む前に実務だけがどんどん先行した。いわば土台が弱い上に物すごく巨大な建物を建てて、それがぐらぐらしているという状態です。その中で、ここにありますとおり、平成16年改正で、理論的な土台はさておき、実務的には緊急避難的なパッチを当てたような感じで、これ自体、現実的な解としてはこれしかなくて、大きなプラスだったと思います。
 今まで緊急避難的にやってきた話と、今後、本格的に考える際には、いずれの方向に進めるについても、研究者が余り言うとリバウンドしてきて、さっきのことじゃないですけれども、自分でやれということになると、みんな恐ろしくて手がつけにくいところでありますけれども、こういう基礎的な研究。特許法だけでなくて、労働法とか契約法という非常に広がりがあって、実務界でも学会でも縦割り行政の傾向がありますので、こういうクロスオーバーな特許法と労働法という多分野にまたがる研究というのは非常にやりにくいところがありますけれども、いずれかの段階で基礎的な研究をしておかないと、今後大変なことになるのではないかと思っております。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 10年レビューという、参考資料5のように非常に立派なものをつくっていただいて、ここまで進んできているということだと思いますが、同時に、冒頭、内山局長、山根次長からお話がありましたように、世界の知財の社会は物すごいスピードで変化しているのだと思います。そういう認識に立って、これからを議論したらいいと思う。問題意識は全く賛成です。
 その中で、知財の各国のシステムがサービス産業として競争しているということだと思いますので、ぜひ国際競争にしっかり勝っていくというか、貢献していくという観点で議論していくことが必要じゃないかと思います。具体的に言えば、特に日本では経済再生のために議論がなされているわけですが、知財が大変大きい役割を果たすと思いますので、経済再生のために知財の国家戦略をどうするか、国際競争の中でどう勝ち抜いていくかという観点だと思います。
 それは、今のお話とか、どうしても国内の中での法律の整合性とか利害の調整が大変苦労するわけですが、そういう観点ではなくて、国際的な視野に立って、企業の皆さんもグローバル競争をやっているわけですから、世界のモデルになる知財の法律やシステムをつくるのだという観点にして議論したほうがいいのではないかと思います。
 具体的に言えば、特許法の改正もいろいろあるわけですが、商標法とか意匠法の改正も世界で行われていることを念頭に置いて、あるいは企業の皆さんが実際にやっていることを念頭に置いてやっていく。あるいは、ちょっと表現があれかもしれませんが、知財裁判。結局、守っている国でしか知財を取ろうとしないというのが明らかになってきたわけですので、知財裁判の機能回復が非常に大事な、決定的に大事な点だと思います。
 それから、不正競争防止法を発展させた形での営業財産保護法というようなものをつくっていくとか、著作権ビジネスを進行する。
 それから、世界の特許。企業の皆さんも、研究者の皆さんもグローバルなことを念頭に置いてやっているときに、国ごとの特許を超えていかなきゃいけないということを念頭に置いて考えていく。そういうことを含めて、第2次知財立国運動を起こすということで、世界の中の模範になるようなものをつくっていくということをやったら、研究者、今回、ノーベル賞の山中先生も出て、世界で1番になっているわけですし、企業の皆さんも世界競争をやっているわけですから、知財の分野もぜひそういう観点でやったらいいのではないかと思います。
 もう一点、経済再生のために中小企業とかベンチャー企業は大変重要な役割を果たすわけですが、特許の減免措置は、アメリカに比べて残念ながらまだまだ大変見劣りがしているのだと思います。中小企業の特許費用全体の減免が、アメリカではとにかく500人以下だと全部50%割引なのですが、日本では赤字企業についてだけ、全体として15%しかまけていないのです。手続も大変ですから、結果として利用者も少なくて、減免の規模はアメリカの20分の1にしかすぎないということで、日本のベンチャー企業の方も、おやりになるときにハンディがあると思いますので、こういうものもやって経済再生に貢献していくということが必要だと思います。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 皆さん、御発言をしたい方、こういうふうにお手を上げてください。どれを選ぶかは私なのですが、それじゃ、足立委員、すみません、お願いします。

○足立委員
 一番初めに立てたものですから、指名していただきました。経団連の知財の共同委員長をやっております。
 今までの10年間というものを振り返ってみますと、プロパテントの考え方について、個別の施策や法の改正は一定の成果を上げてきたと私どもは評価しているわけでございます。他方で、これまでの10年間にICT技術の飛躍的発展などを背景にして、グローバル競争がますます本格化してきているというのは、先ほど話があるように、そういうことになっているだろうと思います。
 そういう中にあって、この知財をイノベーション創造の重要な要素と捉えて、国家戦略として推進している国が大変目立ってきているのかなと感じているわけでして、こういう状況を踏まえながら、我が国の知財政策についても、他の産業政策との関係を考慮した上でイノベーション創造あるいはグローバルな産業競争力強化といった観点から、戦略的な取り組みを求められていくだろうと考えているわけでございます。こういう観点から、幾つかのテーマについて若干コメントをさせていただければと思います。
 まず最初に、知的財産の創造ということに関しましては、先ほどお話がありましたように、特に職務発明規定に強い問題意識を持っているわけでございます。経団連では、先日の12月11日に、日本知的財産協会ほか各種団体の方々とともに職務発明フォーラムを開催するなどの活動を行ったところでございます。この職務発明規定は、2004年に改正されたものでして、なお裁判所の判断や企業実務者の実務に隔たりが私は大きくあるだろうと思っています。日本及び日本企業の産業競争力強化にとっての阻害要因にも、この要因が大きくなっているだろうと認識しておりまして、法人に帰属するなど、制度の重要な見直しが今後必要になってくると考えております。
 次に、知的財産の保護という観点でございます。グローバルの競争下、ますますグローバル化が進展しているわけでございまして、特許等の権利取得による保護はもちろんのことでございますけれども、我が国企業の有する技術情報やノウハウ等の知財の流出・漏えいを強く懸念しております。こういった、いわゆる営業秘密の保護の実効性をさらに強化していく必要性があると私は考えております。このような問題は、もちろん個別の企業でも危機感を持って取り組みを強化していく。
 例えば企業内における人財の教育等々のことをより一層強化していかなければいけないわけでございますけれども、我が国産業の競争力の維持・強化の観点から、知財保護関連の政策制度のさらなる充実というものが、私は強く望まれていくときに至ってきているのではなかろうかと思っております。
 続きまして、知的財産の活用という観点でございますけれども、差止請求権のあり方を議論すべきだろうと考えております。差止請求権自体は、権利者を保護するための重要な権利であるということは、これはまた論を待たないわけでございますが、乱用的な権利行使がなされることによって、経済社会全体に大きなマイナスを発生しかねないケースが考えられるわけでございます。業種の特性がいろいろあるだろうと思っておりますけれども、その業種の特性の関係などを一層考慮しつつ、適正な権利行使のあり方について検討していくということが、これまた非常に重要な論点だろうと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 また、国際標準化につきましても、簡単に申し上げますと、知財計画において国際標準化の重要性をうたい、なおかつ国として重点戦略7分野を定めて推進していることにつきましては、大変評価できますけれども、今後重要と考えられますのは、将来的に有望な分野の企画、例えばロボット、スマートグリッドの分野等々の認証の方針づくりでありまして、その戦略的な取り組みにつきまして継続して検討を進めていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、大変言いにくいことでございます。関係各省庁の取り組みが大変不可欠でございまして、この司令塔の役割をぜひこの本部で務めていただければ大変ありがたいと思います。その司令塔の役割が内閣官房に設置されたと私は理解しておりますので、ぜひそういう役割をしていただきながら、各省庁の調整等々につきましても権限を発揮していただければありがたいということを最後にお願いいたします。
 私からは以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。足立委員、1点、最後のところ。この委員会は、内閣官房にあるのではなくて、これは内閣でございます。事務局は内閣官房が引き受けているということなので、我々は内閣の直結の委員会なので、司令塔は我々でございますので、それでいきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、2番目に上げられた奥村委員、よろしくお願いいたします。

○奥村委員
 ありがとうございます。重複するところは避けまして、数点申し上げたいことがございます。
 1つは、過去10年にわたりまして、国内法の改正につきましては、非常にいろいろ御努力いただいて改正されてきたと思っております。ただし、我々、多くの日本の産業界は、実は多くの利益を外国で事業して得ようとしております。そういう意味で、他国の法律に対するアクションをぜひ強めていっていただきたい。それは例えばどういうことかといいますと、二国間のFTAとかEPAといった交渉の場面。それと、TPPはどうなるのか、まだわかりませんけれども、そういった海外との交渉の場において、知的財産を必ず尊重するといったものをきちんと議論していただきたいと思っております。
 私どもの会社は武田薬品なのですが、最近、グローバルヘルスアクティビティーという活動がございます。この活動自体の問題ではないのですが、これに関連して、知財の運用・制度面でかなり厳しい状況におかれております。例えばインド、インドネシアも強制実施権の発令をいたしました。そういった各種強制実施権の発令のほか、化合物の物質特許の特許性につきましても各国で非常に危うい状況になっております。
 最近、一番困っておりますのは、カナダの事件でございます。これは、特許庁レベルでは権利化ができるのですけれども、裁判所に行くと物質特許は無効になる。ユーティリティーのリクワイアメントが非常に厳しいというのが原因でございます。例えばアメリカのイーライリリーという会社は、非常に重要な製品に関する物質特許を数件、既に裁判所で無効にされて事業機会を失っており、彼らはNAFTAの条項を使ってカナダ政府を訴えているといった状況でございます。ほかにも多々、例えばブラジルですと、特許庁ではないANVISAといった機関が特許権の審査にかかわってくるといった状況がございます。
 また、同じように昨今では、エコにかかわるテクノロジーについても、例えば新興国ではなかなか権利を付与しないといった事態がたくさん起こっています。そういったところに対して、多国間交渉、二国間交渉でぜひ日本の政府としていろいろと尽力いただきたい。
 もう一つは、ASEANについてでございます。昨今、例えば欧州もアメリカも脱中国という言葉が新聞紙上をにぎわせております。よく見てみますと、ASEAN市場というのはばかにならない、とても大きなものでございます。今後も発展が見込めます。ただし、ASEANの場合は、中国と違って小さい国がたくさん集まっております。そういったところで特許権の保護がきちんとできるようになれば、我々はそこを大きな市場として見ていけるのではないかと考えております。
 そういう意味もありまして、産業界が集まっております日本知的財産協会は、本年はASEANをテーマにしてシンポジウムをやろうとしております。つまり、現時点ではまだ早過ぎるのかもしれませんが、知的財産権は20年間の期間がございますので、先のことを考えたら今から準備を始めないといけない。そういう意味もあって始めております。
 ASEANへの協力につきましては、先ほど大渕委員から任期付審査官の話がございましたが、私、個人的な理解はちょっと違っておりまして、審査請求期限を7年から3年にしたときの対価を何とかはかそうというのが、任期付審査官登用の最初の目的だったのではないかと理解します。間違っていたらお許しください。
 もしそうだとするならば、ある程度この任期付審査官を置いておいて審査のクオリティーを高めるというのは、私、とても賛成です。前々からアメリカとかヨーロッパの審査官に比べると、日本の特許庁は1人の審査官の負荷がとても多うございます。そういう意味で、その負荷を軽くしてクオリティーを高くするのは賛成なのですが、そのうちの一つの施策として、特許庁の人財をASEAN各国へ派遣してでも各国特許行政のサポートをしていただく。日本特許庁のプラクティスが各国ASEANのプラクティスに非常に近いものになると、我々産業界としては知財のマネージがやりやすくなるという、夢のようなことを考えております。
 済みません、もう一点だけ簡単に。コピーライトの件でございます。これは数年前ですが、本部会合で京都大学の松本学長も言っておられたと思いますが、科学雑誌の購読料や文献のコピーの許諾料が高くて、研究者もそれをなかなか入手することができないといった問題が発生しております。科学文献というのがコピーライトでそういうふうに抑えられていいものかどうかというのは、科学の進行という観点からよく考えるべきだろうと思うことが1点と。
 もう一つは、私ども製薬企業では、薬事法上、薬が適正に使用され患者が最適な治療を受けられるように、薬に関係する一定の文献を医師に提供する義務が課されております。そういったものに対しても、コピーを提供するときにコピーライトがかかってきて、それは当然でございますが、非常に高い価格を請求され、その価格は高騰を続けております。当然、コピーライトを尊重するという意味では何がしかのものが必要なのでしょうけれども、そこの行き過ぎの部分を見直す必要があるのではないかと思っております。
 以上です。済みません。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、次に挙げられた西山委員、お願いします。

○西山委員
 私のほうから1点、次の10年間でぜひ盛り込んでいただきたい点を述べさせていただきたいと思います。
 参考資料5に掲げられています知的財産戦略大綱の基本的なフレームワークは、知的財産を創造して、保護して、活用するというモデルになっております。この表を見ますと、創造分野における具体的な施策がこの数年、余り目立ったものがないように思います。ですので、今後の10年間のビジョンをつくるに際しては、イノベーションが起こりやすくなるような政策を、ぜひここにおける創造分野の中によりたくさん盛り込んでいただけるようにしていただけないかと考えております。
 政策としてイノベーションがたくさん創出するようにするためには、幾つか可能性がある分野がまだあると思っています。1つは、これまで日本で創造した知財を日本で保護して活用するという前提をやめて、海外で創造された知財を日本で保護して日本で活用する。すなわち、知財の仕入れの概念をうまく盛り込めないかなと思っております。イノベーションは、日本だけではなくて海外でも起こっておりますので、海外のエンジニア、企業が日本で知財を登録しに来るような政策というのができないものだろうか。
 それから、これも難しい政策であると思うのですが、例えば政府調達の中にイノベーティブなものをという項目を加えることができないだろうかと思っております。知的財産で日本が保護しているものを優先的に政府が調達するという政策をとることができないだろうかと考えております。こういった海外から日本に行きたくなるような政策を仕込むことをすると、豊富な知財が集まり、それを保護して活用することがより簡単になってくると思いますので、次の10年でこの創造分野にぜひ力を入れていただけるようにお願いしたいと思っておりますし、私のほうから強く要望したいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、相澤委員、お願いいたします。

○相澤委員
 この10年について振り返りますと、初代事務局長である荒井委員、あるいは、妹尾先生の高い理想にもかかわらず、現状を見てみると、必ずしもその理想が実現できていないというのが率直な感想です。特許出願は減少し、侵害訴訟の勝訴率や損害賠償額も増えないという日本の現状を見れば、目的が達せられたとは言えません。もちろん私自身も研究者の一人として、こういう状況に陥ったことには、若干の責任を感じております。
 しかしながら、これからは、過去のことを振り返るのではなく、将来のことを考えていかなければいけません。将来に向かって目標を実現していくためには、制度を大胆に変えていく必要があります。荒井委員が掲げられた検討項目の中には、斬新な項目が入っていたと記憶しております。初心に戻って制度の斬新な改革を実施する必要があります。
 特許出願が減った理由の中には、日本では特許権が実現されないという企業の方の明確なメッセージが含まれている。これを打開するためには、発明者が特許権を取得しやすいように、補正、分割出願、訂正等を緩和して、発明された技術思想を十分に保護するようにし、成立した特許権の行使がしやすいように、ディスカバリーを導入し、三倍賠償を実現し、無効の抗弁を廃止するなどの改革をする必要があります。
 知的財産制度そのものが国際競争の時代になっています。いたずらに厳しい審査をすることは、日本からの出願の逃避を招き、PPHがその空洞化を促進するようなことにもなりかねません。緩やかな審査により、PPHを通じて、海外からの出願を呼び込むことは重要であります。
 さらに、日本の国際競争にかかわるものがありまして、日本の海外投資資産としての知的財産権を守るために、投資保護協定、経済連携協定等の内容を充実させ、その協定が実現できるように仲裁も協定に含めていかなければなりません。
 最後に、各論的課題である職務発明については、中山教授により理論的研究がなされたところであり、後は、政策決定の問題ではないかと考えられます。円滑な企業活動に資するように、改正の検討がなされるべき時期にあります。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 続きまして、渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 ありがとうございます。
 先ほど参考資料5を見てと言われまして、これを拝見して今までの経緯がよくわかる表だと思います。当初10年は、基盤的な知財立国に必要な整備を行って、特に2010年からイノベーションというキーワードが出てきて、これを中心にさまざまな施策が行われていると見られるのですけれども、実はここで言うイノベーションというのは、今日も多くの方がイノベーションという言葉を使われていますけれども、活用という言葉にほぼ等しい非常に広い意味で使われていると思います。
 それは、権利者側も創造もみんなイノベーションになってしまって、結局そういう状況の中で、何を優先順位として選択すべきかということが必ずしもはっきりしなくなって、施策が細かくなってしまったという部分もあったのではないかと思います。イノベーションの定義をここで長々やるつもりはありませんけれども、私たちが知財で実現しないといけないイノベーションというのは、科学技術その他さまざまなものを資産として活用することに挑戦する行動だと思います。
 これはドラッカーからの引用ですけれども、きのうを養い、あしたを飢えさせる誘惑から国家と組織を脱却させ、イノベーションを受け入れ、変化を脅威でなく、機会とみなす国家と産業組織というものにするために、知財制度や知財戦略は存在するのだという位置づけを原点として、優先順位あるいは取捨選択をすべきではないかと思います。
 具体的にどういうプレーヤーの行為を後押しすべきかだと思いますけれども、まずはベンチャーとか中小企業の第2の創業というものがありますが、現在、非常に環境が苦しい中で、苦しくとも事業創造のために研究開発を継続・発展させるような組織の姿勢を、科学技術の成果をもとにビジネスに利用することに挑戦する行動。大企業であれば、カーブアウトによるベンチャー創業みたいなもので、ともかく持っている資源を最大限活用するような姿勢。そういう行動を知財制度を使って最大限支援するということでないといけないだろうと思います。
 逆に、そういう視点で見たときに、恐らくそういう枠組みで当てはまらないものは、いろいろなことが重要だということはわかりますけれども、優先順位は低いのではないかと。今、10年やっていて、このイノベーションというキーワードが活用とほぼ同義であると、余り大きな変化はできないのではないか。今も意見がありましたけれども、そのためには、いい権利を獲得すればその効果ははっきりあらわれるという制度でないといけない。
 国内でも海外でもそうですが、ともかく国内ではエンフォースメントが世界トップレベルでないといけない。海外では、十分なものにするために働きかけないといけない。自分の立場がまず中心でありますので、そういうことが重要だと思います。
 それから、ユーザーにとっては、別に特許が欲しいとか意匠権が欲しいということではなくて、自分の技術とかデザイン、ブランドを保護したい。そういうことがグローバルに可能になっているのかどうか。それを可能にするために、日本はどういう行動をとって、どういうことを言わないといけないのかということを考えるべきではないかと思います。
 個別の細かいことは、また個々の議論の中でお話したいと思いますけれども、1点、きょうのグローバルという観点は非常によく出てくるのですけれども、今までもグローバルとやってきたのですけれども、議論していると、結局国内制度で国内のことしか議論の中に出てこない。それぞれの項目のときに必ずグローバルという枠組みを入れて、そこに必ず埋めるという議論の仕方。横串をグローバルという格好でやったほうがよいのではないかと思います。
 特許審査の話も、グローバル視点で見たら、それこそ先ほどどなたかが言いましたけれども、英語で審査してアジアの知財の質を向上させるために、日本の特許庁が寄与できるようにするためにはどうしたらいいだろうということになるのではないか。それをグローバルというところに必ず入れる。それを行動に入れるという考え方をしたらいかがかと思います。
 以上ですけれども、今回いろいろな意味でターニングポイントになりますので、多くの挑戦的な思考の事業者の方、あるいは発明者の方の意見を聴取して議論が進むことを期待いたします。以上です。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 続いて、長澤委員、お願いいたします。

○長澤委員
 キヤノンの長澤でございます。本日、電機、IT系の企業の委員が非常に少ないですので、できるだけその観点で話をさせていただきます。
 まず、「日本でどうやったら勝つのですか」、「どうやれば日本の産業力が強くなり、GDPが増えるのですか」という問題を、私もいつも考えています。他の業界さん、例えばさっき武田さんがおっしゃったような薬品業界さん、自工会さん、それぞれ事情が違うと思います。私も他の業界の事情は詳しくないので、まずそれを知りたいのですが、ちなみに電機業界で今、何を考えているかというと、1つ大きいのは、先ほど出てきたアップル、三星といった企業のスマホが支配的にコントロールしている状態をどうするかということです。
 よく言われるスマイルカーブというもので、日本が得意なデバイス技術が利益を生んでいない。一方でアップルのiPhoneの中の4割は日本の技術でございます。知財権も、かなりのものを日本のメーカーが持っているわけです。ただ、スマイルカーブという仕組みができた上で闘っているので、非常に苦しい状態である。では、そのスマイルカーブをどう是正するのですか。是正するチャンスが全くないわけではなくて、既にiPhoneの5万円に対して1万円台のandroidの製品が出てきています。
 では、10年後に本当にタブレットのスマホが今のような価値で売れるだろうか?これは絶対売れなくなるわけです。そうなったときに価値がどこに移るのだろうか。それがアプリだったりするかもしれませんが、日本としては日本の得意技に引き込みたいわけです。そのためどうするかというのが、まず1つ前提にあります。
 もう一つは、生産回帰。皆さんの会社の中でも、我々の同業でも、このまま中国に工場を置いていいのだろうか。レイバーコストがどんどん上がっている。物流コストもかさむ。ストによって生産が止まるリスクがある。自動化がどんどん進んで人の数が減っていく。そういう中で、日本で生産したほうが安いのではないかというものが増えてくるであろう、これは予想できることであります。
 一方、東南アジア、ASEANの国を使って作るものも併存する。中国に投資しているものも多いので、これを残すという話もある。そういう背景で日本に生産を戻すときに、例えば自動化生産技術というものをどのように保護するかということをいつも考えているわけです。
 この2つが、電機業界関係だと勝ちに戻せるパターンじゃないかなと私は思っていまして、その中で認識しなければならない環境変化としては、製品のIT化が進み、私が特許を始めたころとは、圧倒的に件数が違うということです。1つの製品に1万件、2万件、3万件という特許が絡むことが増えてまいりました。
 このことによって、数による特許の無力化が引き起こされています。例えば相手方が特許10件持っていて、こちらが強い特許を150件持っていても、10件ずつ訴訟になってアメリカの裁判制度にいくと、それぞれが100億円ずつ使う。そうすると、100億円の利益しか出ていない会社は苦しいのです。そういう数による無力化を、今は中国が一生懸命やろうとしている。その中で制度というのはどうあるべきか、日本としてはどう動くべきかということをここで考えたいと思います。
 例を出しますと、国際標準の強化ということはよく言われることでして、この専門調査会でもそういうことを言われているのですが、では、国際標準の特許を取ればいいのか、標準を作ればいいのかというと、そんな単純ではなくて、作らない方がいいかもしれない。標準を廃止した方がいいかもしれないというものも数多くあります。国際標準化するところはここで、日本同士でグループ化してデファクトをつくるのはここで、そこまで行けば勝てる雰囲気が出てくるのですが、、他業界さんのことも含めて考えていきたいと思います。
 そうすると、ゴールが、ちょっとオールジャパンっぽい感じが出てきまして、そこで省庁間の繋がりとか、この専門調査会で話し合うことが非常に貴重であると思っています。そういう観点で見たときに、差止請求権はどうすべきなのか。差止請求権の制限を全面的に無条件で認めるということは当然できませんが、どの部分を制限すれば日本として有利になるのか、勝てるのか、という観点で見ていくと、いろいろなことが見えてくると思っています。
 きょうは余り時間がないので、個別の意見というのは控えますが、例えば世界統一特許が必要なのか、中国で審査されたものが日本で権利行使されることでよいのか、そういうことを考えたいと思っています。ただ、新興国の審査レベルを上げたいし、知的財産に対する認識を上げてもらいたいという観点から、そういう呼び水のための旗頭として、そういう言葉を使うのは良いことだと思います。実際は世界統一特許ではなくて、特許制度の調和という言葉が出ていますが、それをどうやって進めていくかということではないかと思います。
 職務発明についてはどうかというと、同じような論点からすると、弊社も今、中国にR&Dのセンターを持っていまして、特許出願をしていますが、今回の中国の法改正を見て、「おい、ちょっと待て」と思っているところです。では、日本の職務発明制度というのが同じような悪い影響を出しているとしたら、どのようにすべきかということをこれからも意見申し上げたいと思います。
 もう一つだけ最後に。日本でなぜIT、電機系企業が苦しんでいるかというもう一つの大きな原因ですが、私は、いろいろな会社と交渉させていただいていて、日本の会社は本当に行儀がいい。知財権に対するリスペクトもあるし、使わないと言ったら使わない、払うと言ったら払う。こことここを交換しようと言ったら、口約束でも必ず交換します。ところが、そうじゃない行儀の悪い会社との交渉になると、次の交渉では全部ひっくり返される。約束しても平気で特許を使い、真似をするという差があって、今までそういう常識で交渉してきたのが、ちょっと違うなという感触を受けていまして、その辺が背景になるのではないかと思います。
 ちょっと雑多に話してしまったのですが、この専門調査会の中で、私の知っている限りの産業界の実情を他の産業界の方々と共にインプットして、日本の産業界が有利になるような制度にしたり、日本の産業界が有利になるような新しい仕組みを作ったりということをやりたいと思います。ありがとうございました。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 引き続き、高橋委員、お願いできますでしょうか。

○高橋委員
 この10年間の取り組みを拝見させていただき、基本的な推進や取り組みの課題認識としてはかなり網羅されていて、それが推進されていると言えます。今後の10年を考えると、これらは当然ながら継続が大前提と言えます。また、これからの10年を考える場合、中小・ベンチャー企業の切り口での課題認識についてがより重要になると考えられます。中小・ベンチャーゆえの存在価値を、日本の今後の産業競争力強化や再生ということで見た場合に、特許・知的財産はその存在価値をより高める為に重要な役割を果たす必要があることは重要な大前提です。
 知的財産の創造、保護、活用ということで、いろいろな推進課題に取り組まれてきているわけですけれども、これから10年を見たときに、中小企業がベンチャー性を持って産業競争力を発揮して行こうというときに有益な役割を果たし得る日本の財産という中小企業目線での議論がより必要です。知財というと、財産的な価値の存在が前提になっていますけれども、創造された特許が、どれだけ有効に日本の産業の中で価値を発揮して動き回っているのだろうという目線で見ると、ここ10年の検証が必要だろうと思われます。 産業への有効価値の検証とともに、昔のキルビー特許に代表されるようなキーテクノロジー、コアテクノロジー的なものが特許・知的財産として創造され、保護され、活用されるかという議論のプロセスあたりも再吟味が必要。現在、産業構造全体が大企業も中小企業も随分変わっていることは、皆さんもうよく御存じのことです。ある産業活動をしようとするときに、対象とする特許というものが非常に複数にまたがってくる。
 システムインテグレーション的なビジネスは、中堅・中小・ベンチャーにおいても必要です。産業とテクノロジーのあり方がどんどん変わっている中で、今、議論している知的財産の創造・保護・活用とは検討は何ぞやということの今後の中で、中小・ベンチャーをより日本の産業競争力強化にむけ誘導できる知的財産の政策という観点での議論が非常に多くなってほしい。 その方向性の課題認識というのを、今後の10年についてはもう少し掘り下げた検討。いわゆる推進課題という各論レベルから、もう一度原点レベルでの政策方針、これが行われればいいかなと、いろいろな御意見を拝聴しながら考えていた。
 これは、今後、ビジョン検討というワーキングでも議論されると思いますが、創造、保護、活用という当然の流れで10年来ていますけれども、日本の産業競争力という面で考えれば、日本国内においては、逆に知的財産の流通、シェアリング、共用と言ってもいいかと思いますが、こういった政策方針課題が、今後10年については、従来の継続は大前提で、検討のキーワードとしてミックスされていく必要があるのではないかと考えます。
 中小という立場では、そういった切り口の支援政策も、例えばの意見としてですが、望まれるのかなと思います。 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、杉村委員。

○杉村委員
 杉村でございます。この10年間で知的財産権の制度面については、多様な施策が実施されまして、各方面の整備がなされたと感じております。今後の10年間に関するこれからの議論については、これらの制度の活用に重点を置いて進めていくべきではないかと思っております。
 制度とは土俵みたいなもので、この点についてはある程度整備がされたと思っておりますが、これからはこの土俵でプレーするプレーヤーを育てていかなくてはいけないと考えます。具体的には、研究開発や新たな技術シーズの創出等です。研究開発や技術シーズの創出が、この10年間で活発化したかという点を顧みますと、残念ながらそうではないように思います。知的財産、例えば特許は、技術シーズから生まれる結果物でありますので、「制度を触ること」の次には「技術開発を促進するような施策を展開すること」が重要であると思っております。
 企業だけではなく、大学等に関しましても、例えば、研究開発費の予算の増大や企業等の研究開発を促進するための税制の見直しも必要となるのではないかと思っております。また、スモールエンティティなどの知財を更に活用しやすい仕組みも今後議論していくべきではないかと考えております。
 この10年間を振り返ってみますと、紛争処理については、この知財本部が中心となりまして知財高裁が設立されました。弁理士としての実務家の立場から申し上げますと、知財高裁自体は、非常によく機能されているものと感じております。
 例えば、知財高裁や最高裁のホームページにおきまして、判決全文及び要約を迅速に、原則として全件オープンにしていただいております。このことは、知財高裁、東京地裁、大阪地裁等におけます訴訟による紛争解決だけではなく、民間におけます紛争解決能力を非常に高めることに寄与されていると思っております。裁判所が判決等を迅速にオープンすることによって紛争処理の予測性が向上し、民間において訴訟に頼らずとも迅速な解決が図れるようになったからです。
 また、知財高裁だけではなくて、東京地裁、大阪地裁に、技術的な紛争処理に関し、専属管轄を構築していただきました。それに伴いまして専門委員制度も、知財本部がこの10年間で知財高裁設立とともに推奨されて構築された制度だと思いますが、調査官制度と共に有効に利用され、特許等の技術が関係する紛争に関しては、技術面において調査官と専門委員が裁判官をサポートするという、他の国において類を見ない非常によい制度になっていると思います。こういう調査官制度、専門委員制度が活発に活用されておりますので、知財高裁等では、技術的知見を前提とした法的判断が極めて安定的に行われていると感じております。
 いただいた資料では原告の勝訴率が低いということですが、最高裁のホームページを見ますと、日本の訴訟では和解が多くございます。私の経験上、もちろん原告が負ける和解という事案もありますが、原告勝訴の和解率のほうが高かったのではないかと思っております。また、和解というのは両当事者にとって紛争を解決する、日本のいい制度の一つだと思っております。それは、早期の紛争解決ができるからです。早期紛争解決ができることに伴いまして、企業等は紛争解決に長期間人力等を注ぎこむことにかえて、次の新しい技術開発に全力投球ができると思っております。
 また、知財高裁ができまして、裁判所の心証開示が非常に積極的に行われるようになりました。迅速かつ積極的な訴訟指揮がなされていると感じております。
 昨年、日米裁判カンファレンス等がございました。また、裁判官にはマックス・プランク研究所、フォーダム大学、キャスリップ等で、他国の知的財産権を勉強する機会が提供され、今後は紛争処理という面におきましても、国際的な動きが考慮されていくのではないかと期待しております。
 先ほどファーストアクションの期間の話がございましたが、特許庁の審査が徐々に速くなりましたのは、審査官の増員だけではなく、特許法等の制度の改正も影響しているのではないかと思っております。例えばシフト補正等の新しい制度を取り入れて、補正の制限を非常に厳しくし、単一性の判断を厳格に判断したことなどが考えられます。これらは、出願人側にとって負担が増える結果となっております。例えば、これらの拒絶理由に対応するためには、新たに分割出願をする必要があり、手間もコストも掛ります。
 大切なのは、ユーザーフレンドリーな審査をすることであり、早く処理することだけが目的ではないと思います。シフト補正や単一性違反を乱発するのではなく、1件1件を丁寧に審査していただきたいと思います。その結果、1人の審査官の処理件数を下がっても仕方がないと考えます。
 そのようなユーザーフレンドリーな審査を実現するためには、任期付審査官のような優秀な人材を引き続き特許庁で確保・維持していくことは必要ではないかと考えております。  以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、岸委員、よろしいですか。

○岸委員
 どうもありがとうございます。
 今回、人財育成ワーキンググループが廃止ということなので、あえて人財育成について、過去10年と今後10年を踏まえて、私の思うところをちょっとお話したいと思うのですが、その前にこの資料を読ませていただいて、事務局に2点、もし確認できれば数字などを挙げていただければと思うものがあって、ちょっと質問したい点があります。
 資料5の32ページ、まさにここが知財人財育成なのですが、その最初のところに2005年度から10年間で知的財産人財を現在の6万人から12万人に倍増しと書いてあります。これは目標ですから、実際どうなっているか、よくわかりませんが、2005年度から14年度まで、もう七、八割来ているところで、この数字というのは11年度末でこのぐらいになりましたというのはあるのでしょうか。
 もう一点、隣の33ページです。一番下、大学・専門学校における国際標準化戦略に関する講座を開講というところがあるのですが、この数字を2007年度からずっと追っていくと、3校、5校、4校、9校までは、あっ、いいなという感じがあったのですが、11年度、12年度、いきなり2校になっていますね。国際標準化戦略は大変重要だと言われながら、こういう数字になっているのはどういう意味か、背景は何かをちょっと御説明いただきたいと思います。

○妹尾会長
 それでは。

○安田参事官
 最初の6万人から12万人ということで、今どうなっているかということでございますけれども、こちらは34ページに各セクター別の人数が載っています。倍増ということはなかなかできないところでございますけれども、企業では2010年は4万2,000人、弁理士は8,700人、それから大学等の教育機関は2,000人、特許庁の審査官は、2010年は1,700人ぐらいといった数。これを合計した数が大体の数です。おっしゃるように、倍増まで順調に増えているのは弁理士でございまして、その後の経済状況の変化で事情が変わったところもございまして、そこまで行っていないのが現状だろうと思っております。
 それから、標準化の講座がなぜ減ったかということでございます。もし関係省庁から補足があったらお願いしたいのですけれども、聞いている範囲では、講座を開くための補助金といいますか、お金が打ち切られた、減らされたといったことが実質的に起こっているということだと私は理解しております。もし補足等があれば、関係省庁にお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 これは、経済産業省に伺ったほうがよいですか。どうぞ。

○経済産業省土井課長
 今、事務局のほうから御説明がありましたように、予算が途絶えたのは事実でございます。事実ではございますが、それまでに私ども、ホームページ上で国際標準化に関する基本的な講座の教材は共有物としてオープンにしておりまして、それを活用いただいて、いろいろなMOTとかMBAの講師の先生方が、それぞれ講座を開いたり、活動をしていらっしゃいます。ここにある数を足し上げると、潰れていないという前提で25校ぐらいございまして、25校というのがどれぐらいのマグニチュードかというのは評価しないといけないと思いますけれども、一定程度までは来ているのかなという気もしております。

○妹尾会長
 岸委員。

○岸委員
 実は、私もアカデミアの端のほうで国際標準を教えておりまして、こう言ってはいけないのかもしれないけれども、なかなか食いつきがよくないのです。おまえの教え方が下手だからじゃないかと言われそうなのですけれども、国際標準というと、JISとかの発想に立つし、しょせん国に決めてもらって高品質なものづくりで日本が頑張ればいいのではないですかという、先入観みたいなものがずっとあって、それがなかなか変わっていかない感じがするのです。
 だけれども、国際標準はもう勝ち負けの世界ですし、闘う人財をいかに育てるかというのが大変重要なポイントだと私は思っていて、国際標準を闘う人間というのは、まず技術を英語で説明できて、しかもけんかができないとだめだとよく言われますね。ISOとかIECとかITUへ出ていって、日本人はいつもジャパニーズスマイルで後ろのほうにいて、これで決しますよと言うと手を挙げて、遅かった、負けてきたとよく言われるようなこともあります。英語で闘えないといけないというのは、日本人のかなりネックになる部分だと私は思っています。
 それから、さっき国際標準の7分野の話もいただきましたけれども、標準と密接に絡む認証ビジネスで、これは協会名を挙げてはいけないのですが、戦略7分野のある協会がこれから認証ビジネスで頑張ろうというので、まず立ち上げようとしたのだけれども、やはり人間がいない。何とか人間を確保しようと思ったけれども、集まらない。とりあえず英語がしゃべれる海外子女を3人集めましたという協会がありました。去年あたりの話ですが、やはり日本はこのあたりの人財の確保というのが難しいなというのを、ますます感じております。
 そこで、妹尾座長が中心になって1月にまとめられた知財人財育成プランをもう一度精読させていただきました。私は、精緻な議論ですばらしい内容がいっぱい書かれていると感じたのですが、これは妹尾座長がどう思われるかよくわからないのですが、これ全体を読んだトーンとして、何か人財の自前主義としか感じられない。つまり、日本の大学あるいはMOTで日本人を育てて頑張りましょうとしか、私には読めなかった。産業構造も垂直分業から水平分業に走っていく中で、自前主義はだめよと。特にエレクトロニクス業界は、かなりばたばた、今、厳しい状況にありますが、あれはよく自前主義の限界と叫ばれますね。
 私は、人財も今後の10年を考えたときに、日本人で日本の中で教育して頑張ろうという自前主義は、特に国際標準の人財をいかに育てるかという観点においては、もはや限界に来ているのではないかと感じます。その点で、これはややノスタルジックな話になるのですが、昔、関本さんがNECの社長のころ、彼はかつてのベル研におられて、ベル研のすばらしさを私たちによく語ってくれたのです。世界から人間を集めて、そこで頭脳をブレンドして、おもしろいイノベーションを起こしていく。人種だ、国籍だ、全く関係ない。そういう話をよく聞いておりました。
 あるいは、マックス・プランクというのもそういう傾向を持つ組織なのかなと、私は思っているのですが、要するに何が言いたいかというと、あるセンターみたいなものをつくって、世界から知財人財。それは教える側あるいは教えられる側、両方かもしれませんが、人財を集めて頭脳をブレンドして、そこで摩擦まで起こして人財を育てないと、国内だけの人財では戦い切れないのではないかなと思います。
 ただ、それを言うと、まず人が来てくれるか、あるいはいてくれるか。いてくれても、技術を持ち出さないか。多分、官僚の方たちは10ぐらいのできない理由を挙げると私は思うのですが、これからの少子・高齢化、特に少子化の問題を考えると、もはやそんなことは言っていられない。いかに人財を育てるか。それがポイントだとすれば、私は自前主義を早く拝して、今後の10年で外から人を入れて、さっき西山委員も仕入れの概念を特許で持ち出されていましたけれども、もはや外から入れるしかないと私は思っております。
 その点は、妹尾さんは違う考えをお持ちかもしれませんが、以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。御指名を受けましたので、反論させていただきます。多分精読され過ぎたのではないかと思います。あそこで大きく挙げたのは2点ございます。
 第1は、要するに従来のテクノロジードリブン、テクノロジーが生まれたら、保護、権利化し、それを活用しようよという知的創造サイクルを前提にした専門人財育成は、それとしての意味はあります。けれども、それと逆のビジネスがドリブンする。デザインドリブンもあるのです。ビジネスのシナリオからどういう競争力デザインをし、技術調達するか、全く逆の回し方ができる活用人財が必要だよねということを、人財育成の大きな第1点にさせていただきました。
 もう一つ、大きな1点で、これは大書きをさせていただいておりますけれども、国際人財からグローバル人財へと銘打って書かせていただいております。そこで国際人財とは何かというと、今、岸委員が御懸念されているような、国内の人財を英語ができるようにして海外へ出そうという輸出モデルではないということをそこで指摘しております。すなわち、グローバルに、どこの国の方だろうが日本は調達し、育成し、足として一生懸命働いていただく。これを考えているので、まさに岸委員が御指摘の方向と同様に人財育成プランを書いたつもりであったのですが、書きぶりが悪かったようなので、事務局と後で反省会を開きたいと思っております。
 コンセプトは全く同じだったと思います。グローバル人財と言ったのか、なぜ国際人財じゃないのだと言ったのか、実は2005年バージョンから5年たって、もう世界の勝ち組企業は、世界の知恵を全部集めて、世界の人たちを使っている。日本だけなぜ国際人財で輸出モデルをやっているのかということを指摘したので、そこのところ、ちょっと誤解があったのならば、誤解をさせた我々は反省します。
 岸委員、どうぞ。

○岸委員
 皆さん、お手元にないのであれなのですが、あるページにビジネス戦略知財アカデミー(仮称)あるいは知財マネジメント戦略研究所(仮称)が具体例として出てきますね。これらを妹尾座長はどういうものとして機能させる。例えば産総研の中につくるみたいな発想なのか、全く違うのか、どういう受け皿としてつくり上げようとされているのか。多分、ここでグローバル人財を育成しようというお考えなのかもしれないのですが、この2つ、具体例、仮称は出ているのですが、イメージがよくわからないですね。
 MOTのどこかに持っていくのか、何かわからなくて、それもあって、本当にグローバル人財を育てられるのか。少なくとも、これを読む限り自前主義にしか読めないと感じたのです。済みません。

○妹尾会長
 ここのところは、私も大変なる懸念をしておりまして、これは安田さんに言ったほうがいいのか、特許庁に振ったほうがいいのか。先日、特許庁と怒鳴り合いまで我々はやっています。その辺はこの平場では勘弁していただきたいのですが、我々も大変懸念しています。

○安田参事官
 今、岸委員から御指摘のありましたビジネス戦略研究所というのはどういう体制でやっているかということでございますけれども、補足があれば特許庁からお願いしたいところでございます。今、知財研の方で5つほどテーマを挙げて、海外のいい事例を、願わくば知財マネジメントがちゃんとできるようなカリキュラムの基礎として調査研究をしているということでございます。この中にはいろいろなテーマがございまして、例えば、知財の調達戦略とか人財の話もございます。他には、国際標準化と融合した知財戦略といったものを検討してございまして、今年度初めての研究ということでございます。
 先ほど妹尾先生が大変懸念されているということもございまして、これからレポートが出ますけれども、出来のほうは精査する必要があると思いますが、来年度以降、どんどんいいものをつくっていって、それから教育機関等々に教材の基としてフィードバックしていきたいと思っております。
 では、出てきた教材をどうするのかという話でございますけれども、これはまさに妹尾先生が幹事となっていらっしゃいます知的財産人材育成推進協議会というものがございます。そこに会員の、例えば知財学会とか弁理士会、発明推進協会といったところで各講座を持って知財教育をしておりますので、そういったところに使っていただければと思っております。これはまだ始まったばかりでございますので、来年度以降、徐々に展開して中身のいいものにしていきたいと思っております。
 もし特許庁から補足があればお願いいたします。

○特許庁伏本調整官
 ありがとうございます。
 先ほど御説明あったとおり、まだ今年度スタートしたというところで、いろいろ御議論いただいている最中でございます。第2回の委員会が終わりまして、今後、どういうふうにまとめていくかというところで、産業界、いろいろな方のお知恵をかりながら、今やっておるところでありますので、そういったところでまとまりましたら、また御報告させていただきたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。本当にやっていらっしゃるのかどうか、ウオッチしたいと岸委員はおっしゃっているので、ぜひ特許庁、頑張ってください。
 それでは、一通りですが、山口委員がきょうお休みで、柳生参考人、お見えになっていますが、何か御発言があればどうぞ。

○柳生参考人
 発言の機会をいただき、ありがとうございます。バイオ、食品系の企業グループということで、大きな意味での課題を申し上げて、次回以降の検討につなげさせていただければと思っています。
 10年間の中で、ほかの業界でもございましたけれども、収益の構造は明らかに単体ベースからグローバル連結ベースに変わってきております。すなわち、味の素グループの場合、もともとASEAN、それからラテンアメリカの進出はもう50年以上前ですが、現地での事業の比率は大きく増しています。あと、特徴的なのは、B to BからB to Cに変わろうとしています。これは、B to Bの競争は、御他聞に漏れず、新興国との競争が激しいので、当然、付加価値を上げようということでB to Cにシフトしています。
 したがいまして、知的財産という観点からすれば、やはり日本としていかにこういった国々の環境整備、特にキーワードの活用ということからすると、特許審査段階での支援もそうですし、その後の訴訟で使える権利あるいは裁判の整備ということまで、日本として何らかの影響力を発揮できないだろうかということは、常に考えております。これはほかの委員からも御発言があったとおりです。
 一方で、では、日本で何をしていくのだろうか。私たちの場合は、創造の拠点として引き続き競争力を維持したいということが大きくございます。研究開発が主になります。したがいまして、そういう点から、今までの課題にありました職務発明制度もぜひ見直す必要があるということは、私どもも考えているところです。特許の強さということで申し上げますと、例えば食品の特許と医薬の特許では、権利の性質が当然違ってしかるべきと思いますので、長澤委員からございましたが、分野によって違う見方があるのかなと思います。
 最後、3つ目ですけれども、技術の移転の仕組みは別な意味で課題がございます。日本で研究開発をして、基本的な特許を持って、これをグローバルな拠点にライセンスして技術移転の仕組みを回していく。それでお金を日本に戻してくるということでございますが、これには、例えば税制とか、知的財産を超えたような課題がございます。こういうことも含めて考えていかないと、一方でグローバルな拠点により研究開発をシフトしようという発想もございますので、技術移転の仕組みが極めて重要と思っています。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、本部員から中島委員、お見えになっていますが、オブザーバーとして御発言があれば。

○中島本部員
 ありがとうございます。
 10年、知財政策が進みまして、知的財産立国にかなり近づいているのではないかと思います。でも、これからの10年がすごく大事ということでございまして、政策ビジョンワーキンググループには、ぜひこれからの10年を考えて、今までは準備運動みたいな程度だったというくらいの飛躍的な発展が期待できるような内容に、ぜひしていただきたいと思います。知的財産立国は、我々日本が進むべき数少ない選択肢の中の一つではないかなと思っております。
 それも、知的財産で豊かな社会、豊かな知的財産というのが必要だと思います。それも集合としての、全体のGDPではなくて、これからは1人当たりのGDPが大事だというのと同じように、日本国民1人当たりの知的財産が世界一だという方向が大変重要だと思います。そういう意味で、知的財産の創造、保護、活用の中でも、まずは高度な知の創作ということが基本だと思います。これは官庁だけじゃなくて、大学、それから民間もそういう視野を高いところに持って進めるという目標を示すのが、この調査会の役目ではないかと思います。
 現実を見ると、残念ながら日本の企業は大変元気がない。官庁の研究も元気がない。10年先の目標というのは、なかなか与えてくれない。場合によっては、5年先どころか、二、三年先の研究成果が出るものでないと予算をくれないという状況に陥っております。大変残念なことですけれども、こういうところをぜひ新しい方向に向けて、ノーベル賞を受賞したiPS細胞のような、日本が世界の先端を行っている部分はたくさんほかにもあるわけです。こういったところの創造力を飛躍的に上げることによって、保護、活用もそれにつれてついてくるということだと思います。
 実際のビジネスでも、具体例を言いますと、腕時計とかチョコレートとかブランド品などは、海外のメーカーが日本の製品の1けたゼロが多い値段で売ってもうけているわけです。その辺の参考例は幾つでもあると思いますので、解は1つではないと思いますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。
 2番目は、先ほど来お話がありました知財立国を進める上での中心的な存在は特許庁でございますし、特許庁の審査官は大変頑張って仕事をしていただいていると思います。おかげさまで審査も促進されましたし、ファーストアクションの期間も短くなりました。先ほど奥村委員やほかの方からの意見もありましたけれども、出願が減って審査数が減っているのだから、どうして審査官を維持するのというところは、大変貴重なキーポイントだと思います。
 私も特許庁の審査総力、審査力を維持するというのは重要なことだと思いますけれども、それだけの理由ではちょっともったいない。先ほどのように審査官を派遣する。私も前々から、派遣の前段階としてASEANの肩がわり審査ということを主張して、英語審査ということをお願いしてまいりましたけれども、一部、特許庁さんも検討はしてくださっているようでございます。ぜひこれは進めていただきたいと思います。
 最後は、海外への技術流出でございます。足立委員から先ほど力強いお話がありましたけれども、昨年度も技術流出、大変な問題ですよということを申し上げて、経産省さんに実態調査を進めていただきました。
 本年度は、それに基づいて、ぜひ具体的な対策を。これは、法律が整備されればなくなるというものではない、現実の問題ですし、私が今まで誤解していたところがありました。
 各企業さんが御自分たちの人財、過去の人財の頭脳の中に入っているものが流出するので、大変躊躇していると誤解していたところがかなりあります。けれども、先ほど足立委員の御発言がありましたように、これは大変重要な問題で、産業界全体で注視しなければいけないことでございます。今、開きっ放しになっている技術流出の蛇口をきちんと締めるということ。これは不正な技術流出です。適正な技術流出はもちろん必要でございます。
 以上3点でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。これで一通り、委員及び正式オブザーバーの方の御発言をいただいたと思いますが、各省庁の方から御参列の方、何かございますか。また改めてゆっくりしゃべりたいということですね。分かりました。
 おかげさまで、皆さんの御協力を得まして、時間をはらはらして見ていたのですが、ちゃんと終えていただけました。大変ありがたいと思います。ただ、私が残っております。私の方から、委員として幾つか発言させていただければと思います。
 10年の総括と展望ということは、これは政策ビジョンのほうでやることになろうかと思います。総括とは何かというと、学習をすることだと私は思っています。したがって、過去のものだから、もう放っておいてよいという話ではなく、この10年間の知財立国の歩みで、我々は何に気づき、学び、考えたのか。それをしっかり整理すべきだろうと思っています。
 同時に、展望ということに関しては、これはどうなるのかなという他人事ではなく、どうすればよいのかという我がこととして考えてみたいということで、私はここで会長として仕事をさせていただこうと思っております。
 では、この10年には何があるか。我々は、10年の中で何が継続し、何が変化したのかということをよく考えます。これは時間軸ですが、これを空間軸に持っていくと、何が同じで何が違うか。日本と世界、他の国は何が同じで何が違うか。相似と相違という言い方をしますけれども、相似と相違、継続と変化を見ていくということで、我々は考えていきたいと思っています。
 その中には、国内とグローバルな視野の複合性も必要ですし、それから1製品少数特許のような創薬的なものと、1製品多数特許というか、最近のスマホは5万件以上の知財が入っていると言われるぐらいですから、超多数特許の製品を扱っているエレクトロニクス的なものがある。それらの分野について横断的にどういうふうに複眼的に見ていくかということがあろうかと思います。
 さらには、我々テクノロジーを中心にしていると思っていましたけれども、火曜日に開かれるコンテンツ専門調査会の方で議論されましたが、これはテクノロジー抜きには語れません。また、コンテンツで使われていた著作権が、実は今やソフトウエアではアルゴリズムとほとんど一体化している状況を考えると、我々は知的財産権自身においての共通項を複眼的に見ていかなきゃいけない。あるいは、相違項を複眼的に見ていかなきゃいけないという段階に来ていると思っております。
 さらに、知財に引き寄せて言えば、10年前、我々が議論したときには、知財権というものは参入障壁である、排他権であるということを基本に考えてきました。ところが、最近の動向を見れば、知財権を明らかに参入促進に使うという使い方が勝ち組の中では非常に増えています。同時に、国際標準というのは協調領域であったのが、国際標準自身を使った競争領域の創出みたいなものがたくさん出てきています。すなわち、参入障壁と参入促進が入り乱れている状況が、もはや勝ち組では当たり前になってきている。こういうときに知財権の問題をどう考えるか。私どもは、もう10年たったので、前のコンセプトから離れなければいけないのではないかと考えています。
 特に国際標準に関しては、よく私は3周目の議論というのを最近しております。不勉強な経済記者を捕まえて説教をしております。あなたは1周目の議論か、2周目の議論か、3周目の議論かということを言っています。1周目の議論、JIS規格の話です。すなわち、こういうものがつながったら便利だよねという話。2周目の議論、国際標準を主導すれば勝てる。これは明らかにアナログの技術で、G7の人口を相手にした80年代のVHSとべータマックスの世界の話であります。
 今や世界は3周目に入って、国際標準の上で日本と新興国をいかに闘わせ、自分たちはその外にいて、自分たちのクローズ領域に引き寄せながら全体で勝つという国際標準の使い方の話です。すなわち、標準は協調領域じゃなくて、他者をうまく競争させる領域というビジネスデザインが始まっている。これに日本は徹底的にやられているというのが、私の認識であります。すなわち、ビジネスモデルが10年前と様変わりしているということですね。
 そうすると、ビジネスモデルが変わり、インテレクチュアル・プロパティー・マネジメントに変わる、あるいはインテレクチュアル・プロパティー・ライトの使い方自体が変わるということになりますと、我々はどうするのだろうか。フルセット、垂直統合の中のレイヤー内の争いである知財の問題を、もうそれだけで片づけることはできない。レイヤー間の知財の問題をいろいろ見ていかなければいけない。
 御案内のとおり、例えば産業生態系、今、スマホの世界で言えば、グーグル、アマゾン、アップル、インテル、マイクロソフトでできています。残念ながら日本のパナソニックさんもシャープさんもソニーさんも、韓国のサムスンでさえ、この産業生態系からはじき出されているという認識がない限り、我々は次の産業生態系に手を打てないのではないか。これが私の個人的な認識であります。そうだとすると、創造して、保護・権利化して、さあ、用途活用しようぜという日本の80年代のモデルから、我々はそろそろ決別しなきゃいけないのではないかと思っています。
 つまり(知的創造サイクルの)逆です。事業のデザインをして、どういうふうにそれが競争力として成り立ち、そいつを維持・継続できるかということに持ち込み、最後に知財を調達する。すなわち、技術、その他、ブランド全部を含めて調達という形に入ってくる。その中では、もちろんインソースの研究開発はあるでしょうけれどもね。そういうようにモデルが全く逆側に動いているときに、我々はまだ創造、保護、活用というコンセプトから抜け出られないのではないかと思います。ここを早く脱しなくちゃいけないのではないかと、私自身は認識しております。
 もう一つ、会長として私、申し上げたいのは、この10年間の学習を踏まえたときに何が言えるか。各省庁で御議論できるところは、各省庁にお任せするのがよいのではないかと思っています。ここの委員会は大所高所の議論をするところであって、各省庁の議論の追認をやるところではないと強く思っております。したがって、各省庁が議論されていることを二重にここで議論するというのは、余り効果的・効率的ではないのではないかと思います。したがって、司令塔という御指摘が先ほどありましたが、産業横断的に、あるいは司令塔として必要なことをここで御議論いただくのがよろしいのではないかと思います。  そのときには、従来、どうしても経産省と文科省が中心になった話ですが、今や産業・学術は経産省と文科省が関わっているだけではございません。当然、総務省も農水省も国交省もありますし、それから規制官庁の皆さんも当然この中に入ってこなくちゃいけないということですから、大所高所、内閣の委員会としての立場で皆さんと御議論していけたら一番よいのではないかと思っています。ぜひそういう御議論をこの後、一生懸命させていただきたいと私は思っております。ということを言い出して、これ以上やると、またマイクをつかんで授業のように90分しゃべり出すことになりそうなので、この辺でやめさせていただきます。
 今日は初回ですので、皆さんと一緒にこういういろいろな角度からのイシュー出しということをさせていただきました。この後、時間がなかったのでとか、触発されて、こんなことを言いたかったのだということがありましたら、私ないしは事務局のほうにお伝えいただければ幸いでございます。次回の議論までに、まだ皆さん、いろいろなことをお考えいただけると思っておりますので、事務局ないしは私のほうにぜひ御連絡いただければと思います。
 それでは、ちょうど予定の時間が参りましたので、本日の会合をここで閉会させていただきたいと思います。
 次回の会合について、事務局からお願いします。

○安田参事官
 本日は、長時間どうもありがとうございました。
 次回の専門調査会でございますけれども、2月7日木曜日午前10時から、この場所で開催する予定でございます。次回は、本日の議論を踏まえまして、知財推進計画、知財政策ビジョンに盛り込むべき事項について、さらに議論を深めていただければと思っております。
 以上でございます。

○妹尾会長
 最後に、局長、何かございますか。特によろしいですか。皆さんのほうからも、特によろしいですか。
 それでは、すごいですね。初回で画期的に時間どおり終わる。本調査会としては極めて異例なスタートで。こう申し上げると、新しい委員の方々がびっくりされると思いますが、大変よいと思います。年末のお忙しいところをお集まりいただきまして、本当にありがとうございました。また新年明けて、新しい議論をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 本日は、どうもありがとうございました。