知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第8回)



  1. 日時 : 平成24年5月14日(月)10:00〜11:56
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾会長、相澤(英)委員、荒井委員、出雲委員、江幡委員、大渕委員、
    小川委員、上條委員、久夛良木委員、迫本委員、佐々木委員、高柳委員、
    中島委員、中村委員、西山委員、福島委員、山本委員、渡部委員
    【関係府省】(経済産業省特許庁)熊谷総務部長、後谷企画調査課長、澤井国際課長、
    小柳調整課長
    【事務局】古川大臣、内山事務局長、近藤前事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、安田参事官
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)「知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)について
        (知的財産による競争力強化・国際標準化関連)
      (3)閉  会


○妹尾会長
 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。皆さん、おはようございます。「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第8回)会合」を開催させていただきます。本日は、御多忙のところ、御参集ありがとうございます。
 さて、本日は、知的財産による競争力強化・国際標準化に関しまして、関係府省として特許庁からヒアリングを行うことになっております。「知的財産推進計画2012」に盛り込むべき事項の取りまとめに向けての議論を行いたいと思います。その後、多分時間に少し余裕があると思いますので、今後に向けた自由討議を行いたいと思います。
 前回、第7回のときに、もう少し会合が開けそうな感じではあったのですけれども、日程的な調整のために、申し訳ございませんが、今日が取りまとめの最後の議論になろうかと思います。かわりに事務局が頑張って、委員の皆さんの御意見を聴取しているということでありますし、それを踏まえてということにしたいと思います。
 なお、本日は、相澤益男委員、岸委員から御欠席との連絡をいただいております。
 それから、関係府省として、経済産業省特許庁から熊谷総務部長、後谷企画調査課長、澤井国際課長、小柳調整課長、それぞれ御出席いただいております。ありがとうございます。
 それでは、第8回の議事を始めたいと思いますが、議事に先立ち、古川大臣からごあいさつを賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○古川大臣
 皆さん、おはようございます。知財戦略を担当いたしております。妹尾会長を始め、皆様方にはこの知財計画2012の策定に向けて、これまで御尽力いただいたことを心から感謝申し上げます。ここにいらっしゃる方は大変お忙しい方ばかりで、そういう方々がお時間をつくっていただいて、こうしてまとめていただいたことに本当に心から敬意を表したいと思います。
 我が国が世界に誇ります技術力、デザイン力、そしてブランド力を最大限に発揮して、我が国の国際競争力を強化することが大変重要であります。これまで日本は、技術で勝っても事業で負けるということがしばしばあったわけでございます。これは我が国としては反省しなければいけないことじゃないかと思います。
 まさにそうした思いで、私、この分野は副大臣のときにも担当させていただいておりました。そのときに、妹尾会長を始め、皆様方に委員をお願いして、それ以来、国際標準化を含む総合的な知財マネジメントの実現に向けて、皆様に御指導いただきながら取り組んでまいったわけでございます。この専門調査会におけます熱心な取り組みにつきましては、妹尾会長からも今まで直接お話を伺ってまいりました。
 これまで皆様の御尽力によりまして、知財保護・活用の強化につながります特許法改正、不正競争防止法改正、また中小企業支援として、知財に関して総合的に支援するワンストップ相談窓口の全国47都道府県への設置や、特許料の減免については実現することができました。皆様方の御協力に感謝申し上げたいと思います。
 今日は、「知財計画2012」本体に盛り込むべき事項をお取りまとめいただけると伺っておりますけれども、どうか皆様の思いで、いいものをまとめていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。 それでは、本日は古川大臣にお越しいただきましたので、ここから15分程度、知的財産戦略、計画2012に盛り込むべき事項に限らず、これまで御議論いただいた中での所感や、今後の知財計画の検討に向けての御意見をいただきたいと思います。今回、まずここで一たんけりをつけようねという話以外にも、広く大臣にお話を聞いていただきたいという、いい機会だと思います。委員の中で、これは大臣に是非お聞きいただきたいという事項がありましたら、挙手をお願いしたいと思います。荒井委員、お願いいたします。

○荒井委員
 古川大臣、日本でも一番御熱心な大臣にこうやって出ていただけるので、本当にありがとうございます。
 第1点は、新成長戦略に知財戦略を是非もっと生かしていただきたいということです。
 第2点は、グローバリゼーションが非常に進んでおりますので、知財サービスについても国家間の競争が非常に激化しております。そのときに特許庁とか文化庁と、裁判所と税関、一体となったエンフォースメントがある国が知財サービスのいい国ということで企業は選んでいきますので、広く裁判所とか税関も含めて、更に強化していただくということが必要だと思います。
 3点目は、ヨーロッパで海賊版を認めてもいいじゃないかという海賊党がEUの議会の議席を取って、緑の党の次は海賊党の時代がやってくると言われています。そのくらい、こういう知財の問題というのは一般の人々、いろいろな人に影響する時代がやってきています。IT革命の影響だと思います。ということで、日本でも原子力村ならぬ知財村に陥っていないか、広く点検すべきじゃないかと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今、3点いただきましたけれども、ほかにいかがでしょうか。せっかくの機会ですので。相澤委員、お願いします。
○相澤(英)委員
 荒井委員の御指摘の通り、これまで日本では、政府の仕組みを含めた国際的な制度間競争に十分な注意が払われていなかったのではないかと思います。
 システムが競争力を失ってくると、システムに関連する産業も空洞化し、日本における情報の生産にも影響を与えるのではないかと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかに。小川委員、お願いします。

○小川委員
 今後の競争政策に、組み込みシステム(マイクロプロセッサーとソフトウエアの組合せ)を重視して取り込んで頂きたい。そして同時に、知財戦略の中に、組み込みシステムのソフトウエアに関する著作権を広く議論する場を設けて頂きたい。 今まで著作権というのはコンテンツ中心に語られてきましたが、モノづくりをグローバル市場の競争力へ転換させる上で重要な役割を担う、組み込みシステムのソフトウエアについては、殆ど議論されていません。
 21世紀の産業構造をダイナミックに変えているのが、組み込みシステムのソフトウエアです。モノづくりと言う視点で言えば、18世紀末の産業革命における蒸気エンジンに匹敵する役割を、組み込みシステムが21世紀のグローバル市場で持つようになってきました。これは決して誇張ではありません。
 先進国で組み込みシステムを競争政策に取り込めていないのは日本だけでしょう。グローバル市場の背後で大きな影響力を持つに至った組み込みシステムのソフトウエアを、知的財産として守る著作権が、いずれも大事にされ、いろいろな仕組みによって強化されています。この意味で、コンテンツ以外に、モノづくりを支える組み込みシステムの著作権を、我が国の競争政策の中核に位置づけ頂きたい。
 組み込みシステムがモノつくり/製品設計で不可欠になった最初の産業がエレクトロニクス産業です。この組み込みシステムの作用がグローバル市場の市場の産業構造を変えましたが、日本企業はこれに適応できずにが市場撤退への道を歩みました。これが現在の大手家電メーカの姿です。組み込みシステムの持つグローバル競争力への影響が理解されてこなかった。我々が懸念するのは、組み込みシステムが他の多くの産業領域へ急拡大してエレクトロニクス産業と同じ経営環境が生まれ、産業構造を大きく変わっていく兆候が顕在化している事実です。しかし、実ビジネスを主導する大手企業も我々を含めたアカデミアも、これへの対応策を見いだせていない。日本の製造業の根底が崩壊する可能性する否定できないのです。これを国の競争政策の中に取り込み、衆知を集めて日本企業の方向性を議論しなければならない。これが、今回のお願いの背景です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。中島委員、お願いします。

○中島委員
 大臣が先ほど、日本の技術、デザイン、ブランドの優秀なものをどんどん活用してというお話がございました。大変ありがたいと思います。とかく技術で勝って、ビジネスで負けるというと、新しいものをつくるというよりも、それを利用・活用する方をもっと力を入れてということ、それはそれでいいことなのですけれども、技術とかデザイン、ブランドは賞味期限がありますので、メンテナンスもしていかなくてはいけないし、どんどん新しいものをつくっていかないといけない。
 日本は、それで今まで生きてきたわけですし、これからもやり方を少し変えることによって十分対応できるわけですけれども、基本的には国民全体が新しいものをどんどんつくっていく、新しいアイデアを出していく、そういうメッセージを是非、戦略会議の方でも十分に国民全体に出していただければ大変ありがたいと思っております。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。山本委員、お願いいたします。

○山本委員
 先ほど荒井委員もおっしゃったことですけれども、私が心配しているのは、今はまだ中国は模倣品という見方かもしれませんが、どんどん特許出願件数が増えてきていて、近い将来、日本の企業やほかの国の企業が、中国企業から特許侵害訴訟として訴えられると思います。それを考えると、知財紛争の世界のデファクトをどうやってつくっていくのかということでの、日本で知財高裁の在り方をしっかりと検討する必要があるのではないかというのが1点と。
 もう一点は、御案内のとおり、アメリカが先願主義に変わって、これからEPがグレースピリオドを認めれば、日米欧は出願ルールとすると同じような形になる。数年前まで、日米欧と中国と韓国で、世界の特許の約8割が出願されていましたけれども、これも将来にわたって、また変わってくるかもしれませんので、日米欧で同じような出願ルールの統一化を図るというのが、相手があることではありますけれども、非常に重要ではないかと思っておりますので、ここに御尽力いただきたいと思っております。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それじゃ、私が一、二、これはいつも大臣に申し上げていることの繰り返しになると思いますが、知財というのは知財だけで成立しているわけではないので、片側で産業政策とのリンク、それから片側で科学技術政策とのリンクが非常に重要なことだと思います。
 産業政策とのリンケージは、これはまさに古川大臣が御発案された、大変すばらしい国際標準化戦略タスクフォースが、クローズドではありますけれども、産業政策における次世代モデルを見通したものに一つひとつ進んでいると思います。その意味では、これの拡大、加速が極めて重要だなと思いますので、大臣のお力添えを是非いただきたいと思います。
 もう片方の学術的な科学技術と産業的な知財政策とをどうやってリンケージをやるか。これは、先ほどの荒井委員のお話もありますけれども、非常に重要なのです。まだ、もう一工夫も二工夫も必要なのかなと思いましたので、そこのところを大所高所から是非見ていただければありがたいなと思っております。
 そのようなことで古川大臣にお聞きいただいたのですが、ああ、そういえばもう一つという方はいらっしゃいますか。よろしゅうございますか。では、こういうことで。

○古川大臣
 よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
(古川大臣退席)

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、議事を始めようと思うのですが、また議事に入る前に1点あります。もう皆さん御承知だと思いますけれども、事務局に人事異動がございましたので、御報告申し上げます。4月1日付で近藤事務局長が退任されて、新たに内山局長が就任されました。近藤前局長は、後ほどごあいさつにお越しになると伺っております。
 まず、内山新局長の方からごあいさつをいただきたいと思います。

○内山局長
 内山でございます。新しくというよりか、古巣に戻ってきた感がございます。2年ぶりに知財事務局に参りました。2年前も皆様方と仕事をさせていただいて、また2年ぶりということで、大変うれしく思っております。引き続き知財本部、知財事務局、頑張ってまいりますので、御支援、そして御協力のほど、是非よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 ウエルカム・バック。内山新局長というか、これが発足するときは内山次長でいらっしゃったのですけれども、また腕を振るっていただきたいと思います。
 それでは、議事に入りたいと思います。前回の会議では、知財財産による競争力強化・国際標準化に関する知的財産推進計画2012骨子への提言を取りまとめたところです。その後、3月22日に企画委員会、これは副大臣、政務官会議ですけれども、これを行い、それから23日に知的財産戦略本部会合をそれぞれ開催して、この知財計画2012の骨子を決定いたしました。骨子(案)が骨子になりました。私も22日の企画委員会に出席して、本専門調査会における審議状況や計画骨子への提言内容について報告をさせていただきました。
 その他、知財本部会合の概要については、事務局から御説明があるということです。それでは、事務局の方で、安田参事官、お願いいたします。

○安田参事官
 知財事務局の安田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず配付資料の確認をしたいと思います。クリップを外していただきますと、資料1といたしまして、知的財産権を巡る国際情勢と今後の課題。
 資料2といたしまして、知財人材育成推進協議会。
 それから、資料3、知的財産推進2012に盛り込むべき事項(案)。
 資料4でございますが、A3横長の知的財産推進計画2012工程表でございます。これは、委員限りの席上配付資料でございます。まだ、各省庁と調整中でございますので、要回収資料となってございます。専門調査会終了時に席上に残していただければと思います。
 それから、参考資料は1から6となっております。そのうち、5につきましては、委員限りの席上配付資料となってございます。こちらは、持ち帰っていただいて大丈夫です。
 それから、委員の皆さんは、更にその下に、資料番号のない、特許庁の80ページの資料を配付してございます。
 更に、その下に資料3の修正箇所がわかるようにしてある修正版がございます。
 以上が資料と参考資料でございます。過不足等、ございませんでしょうか。もし不足等ございましたら、事務局までお申し出いただきたいと思います。

○妹尾会長
 よろしいですか。ちょっと中断して申し訳ないのですけれども、私、うっかりしました。安田参事官も、原参事官にかわって、今日、デビュー戦ですね。

○安田参事官
 そうでございます。

○妹尾会長
 ウエルカムの拍手をしたいと思います。

○安田参事官
 ありがとうございます。4月に前任の原にかわりまして、特許庁から知財事務局に参りました安田と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、知財本部会合の概要について御報告をしたいと思います。参考資料1から5になります。
 知財本部会合でございますけれども、これは先ほど妹尾会長からありましたけれども、3月23日に開催いたしまして、「知的財産推進計画2012」の骨子(案)について御審議いただき、「(案)」がとれた形で了承されております。これによりまして、「知財財産推進計画2012」骨子を取りまとめることができました。本専門調査会の妹尾会長、及び各委員の御議論・御提言に感謝いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
 3月23日の本部会合では、参考資料1から5が用いた資料となっております。
 まず、参考資料1に概要がございます。戦略1と2とありまして、戦略1は1ページめくっていただいたところにございます。これは既に本調査会にて御議論された内容ということでございますので、詳細な説明はいたしませんけれども、「知的財産推進計画2012」の骨子では、2つの知的財産総合戦略を主な柱としてございます。
 1つ目の大きな柱といたしまして、戦略1の知財イノベーション総合戦略でございます。
 その最初の項目といたしまして、グローバルネットワーク時代に対応するため、五大特許庁の枠組み等を活用した特許制度国際調和の推進や、特許審査ハイウェイの新興国への拡大、また意匠・商標制度のグローバル化対応の施策などが盛り込まれておりまして、これによりまして我が国の知財システムの国際競争力を高めることを目指してございます。
 次に、同じくグローバル化に対応するために、10年先を見据えました知財人財育成プランの強力な実行によりまして、知財専門人財にとどまらず、知財を産業競争力に結びつける視点を持った、国際標準化戦略を含む総合的な知財マネジメントができる人財を加速的に育成・確保する施策が盛り込まれてございます。
 それから、国際標準化戦略を含む、より高度、かつ総合的な知財マネジメントを駆使しまして、我が国が世界に誇る技術力、デザイン、ブランド力を最大限に生かしまして、我が国産業の国際競争力の強化につなげる施策。
 それから、中小・ベンチャーがグローバルに展開するための支援施策等が盛り込まれてございます。
 めくっていただきまして、2つ目の柱でございます。日本を元気にするコンテンツ総合戦略、戦略2でございます。こちらは、コンテンツ強化専門調査会で御議論いただいた部分になります。
 まず、日本のソフトパワーであります、すぐれたコンテンツの世界展開を支えるため、著作権制度をめぐる環境整備、電子書籍の流通促進、人財育成のための環境整備といったデジタルネットワーク社会の基盤を整え、日本の活力につなげていくための施策例が盛り込まれてございます。
 次に、コンテンツの海外展開の成功事例の創出、あるいは外国人の増大を始めといたしまして、日本が世界に誇るクールジャパンの発掘、創造、発信といった好循環のサイクルをより大きく、より早く回すことでクールジャパンの戦略強化を図る施策例が盛り込まれてございます。
 以上が本部会議と骨子の概要でございます。よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。参考資料1から5は、全部そのときの報告でございます。何か御質問、御指摘等がございましたら。計画2012には、本調査会だけではなくて、中村先生が会長をやっていらっしゃるコンテンツの方のものも戦略2として入っております。中村先生、何か補足、その他ございますか。こちらの専門調査会の方で何か言うことがあれば。

○中村委員
 コンテンツ専門調査会、明日とりまとめの予定となっておりまして、先ほど説明がありましたとおり、コンテンツの海外展開やデジタルネットワークの対応というものを柱にやっております。追加すべき補足というのはないのですけれども、そこで最近感じて、この場でも少し共有した方がいいなと思っておりますのは、これまで権利を保護してコンテンツで稼ぐという方向で戦略が立てられてきたのですけれども、そろそろそれだけではうまくいかないということで、コンテンツを切り込み役にして、他の産業と連携してどう稼ぐかという方に議論がシフトしております。
 そういう意味では、オープン化の戦略、行政から見るとマッチング機能をどう強化していくかとか、そうした場を日本としてどう持つか。つまり、プラットフォームをどうつくるかという議論に移っております。その辺りは、こちらの専門調査会とも共通の認識を立てつつ、今後議論する必要があるかなと、個人の感想として今、持っております。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。今、中村先生が御指摘されたのは、おもしろいことに、これも私の感想ですけれども、こちらの調査会で議論しているのとかなりリンクしていますね。すなわち、従来は参入障壁として権利があるということで戦略が立てられていたのが、最近は権利、その他が参入促進に逆に技として使われるようになっている。そういう意味では、両委員会が見ている産業モデルは世界で同じように動いているのだなという感じを受けました。どうもありがとうございます。
 それでは、2012の骨子取りまとめの後の重要施策に関して、検討の進捗がございましたので、関係省庁からのヒアリングを行って、その後で質疑を含めて議論を行いたいと思います。資料1、2をごらんいただきたいと思います。これを提出していただいておりますが、まず特許庁の熊谷総務部長から御説明をいただきたいと思います。資料1で、よろしくお願いいたします。

○熊谷総務部長
 お手元資料1、知的財産権を巡る国際情勢と今後の課題を配らせていただきました。この資料は、3月に開催されました産業構造審議会の知的財産政策部会にて報告した資料の抜粋版でございます。全体版は、別途、配付させていただいておりますが、80ページを超えるため、本日は抜粋版で御説明させていただきます。持ち時間15分ということですので、大変駆け足になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
 まず、1ページをご覧いただきたいと思います。改めて申し上げる必要もございませんけれども、左のグラフのようにグローバル市場拡大に伴いまして、我が国製造業の海外生産比率は着実に上昇しております。また、昨今の急速な円高も相まって、その動きが加速しております。
 右のグラフは、中小・中堅企業に対するアンケートです。今後3年程度における中期的な海外事業計画で、海外事業を強化すると回答する企業が、この数年で急速に増えているという状況がございます。
 2ページ目に参ります。こうしたグローバル経済の進展を背景に、日本への特許出願件数は、左のグラフにありますように、減少傾向で推移しておりましたが、直近では横ばいで推移しております。右のPCT出願件数の推移を見ていただきますと、近年、件数は着実に伸びております。特に2011年は前年度比20%も拡大しているということで、知財分野においてもグローバル経済への対応が確実に図られていることが、この資料を見てもわかるのではないかと思います。
 3ページ目をご覧ください。我が国出願人の海外への意匠出願件数の推移を見てみますと、我が国出願人は海外への意匠出願を積極的に行っております。意匠の出願件数は、リーマン・ショックの影響を大きく受けましたが、最近では回復傾向にありまして、全体として増加傾向が続いている状況でございます。
 4ページ目をご覧ください。次は、商標の日本から海外への国際登録出願件数の推移でございます。日本から外国への国際登録出願は、着実に増加しておりまして、商標についてもグローバル経済への対応が図られつつある状況がわかります。
 5ページをご覧ください。先程までの資料で、特許、意匠、商標、それぞれの権利について海外出願が拡大している動きを見てまいりましたけれども、企業のグローバル展開が進む中で、現地ニーズに沿った形での知的財産の複合的な保護による製品開発がますます重要になっていると思っております。
 例えば右のプリンタの事例ですけれども、国内ですとカートリッジインクの消耗品部分が利益の大きな源になっているわけですが、新興国ではこの部分が改造されてしまいます。改造されるということはそこに現地ニーズがあるわけなので、初めから容量の大きなタンクにした製品を開発し、模倣されないように特許、意匠、商標で複合的に保護して製品の付加価値の維持を図るというモデルをやっているということです。
 次のページをお願いいたします。タブレット型情報端末の例も同様に、グローバル市場で競争力のある製品というのは、グローバルな競合他社との市場獲得競争のために単に優れた技術だけではなくて、付加価値や差別化の厳選となる魅力あるデザインやブランドイメージも合わせ持ったものが大変多いです。特許、意匠、商標を複合的に組み合わせて製品の付加価値を高めているということかと思います。
 右に掲げた電気自動車の例でも、車両本体は特許、車両デザインは意匠で保護することが可能で、海外では、起動音を商標で保護することが可能でございます。実際、日産の電気自動車の起動音は、欧州で商標権として登録されております。グローバル市場は、知財を複合的に活用して製品の競争力の強化を図っているということですので、特許だけではなくて、意匠、商標についてもできるだけグローバルスタンダードに合わせていくことが、これまで以上に重要ではないかという問題意識を持ってございます。
 7ページをご覧ください。特許審査につきまして、私どもは、IT化の推進や、民間活力の活用、そして490名の任期付審査官の増員という対応を取ることで、欧米の何倍もの審査効率を実現しております。ユーザー側からは、より早く、より安く、より強い権利設定が求められていると認識しております。より早くというニーズにつきましては、膨大にたまっておりました審査順番待ち件数を確実に減らしてきておりまして、2013年には審査順番待ち期間、FAを11か月にするという目標を、ほぼ達成する見込みになってまいりました。
 より安くというニーズにつきましては、昨年8月から審査請求料を25%引き下げ、また、今年の4月からは、法改正により、中小企業に対する特許料の減免措置の拡充をいたしました。この、より安くという点でも一定の実績を積み重ねているのではないかと思っております。
 より強くというニーズにつきましては、はかり方が大変難しい面もあるのですが、海外にいっても権利が潰れない、国際的に安定した権利ということで考えますと、外国文献を詳細に調べるなど、海外の特許庁に負けない審査の品質管理を行っていくことが重要ではなかろうかと思っております。
 次のページをお願いいたします。企業活動のグローバル化に伴いまして、1つの発明、デザイン、ブランドを複数の国に出願するようになってきましたので、これまでパリ条約をベースに各国別々に制度設計されてきた知財制度を、制度面でも運用面でもできる限りハーモナイズドする取組みを進めていくことが重要になっているかと思います。
 左の紫部分にありますように、国際的な制度調和として、日米欧の三極特許庁会合や中韓を加えた五大特許庁会合、あるいはWIPOの場を使って、制度面も調和の議論を進めております。また、右側橙部分にありますように、国際知財ネットワークの構築として、特許協力条約(PCT)、マドリッド協定議定書(マドプロ)、ヘーグ協定、特許審査ハイウェイ(PPH)といった枠組みを使いまして、実質的な国際的な知財ネットワークを創っていきます。こうした制度面、運用面での取組みを進めることで、グローバルな知財システムを創っていくことが何よりも重要ではないかと考えております。
 米国特許庁も欧州特許庁も、ユーザーニーズに応えるべく様々な努力を行っておりますので、JPOとしても我が国企業の競争力強化につながるような政策対応をとり続けていきたいと思っております。
 9ページ目をご覧ください。昨年から、様々な分野における民間企業のトップの方にお集まりいただきまして、知財制度と運用についての要望をお伺いしてまいりました。大きくは、ここにあるような5つのポイントがあったかと思います。
 第1は、グローバル出願への対応ということで、JPOの審査能力は高いとの評価をいただいておりますので、これをグローバルスタンダードとして、アジアを始めとした各国特許庁に発信してほしい。あるいは、英語による出願への対応を強化すべきではないかという御意見がございました。
 第2の、世界で通用する安定した権利の設定ということでは、英語や中国語等の外国語文献の調査能力の強化、審査官毎・国毎の審査結果のバラツキを無くす一定レベルの判断水準への統一や特許付与後の簡易な見直し制度の導入を検討してほしいといった御意見もございました。
 第3の、タイムリーな権利取得ということで、事業戦略に合わせて権利取得を遅らせる選択肢も欲しいといった要望も具体的に寄せられております。
 そのほか、特許情報を活用したイノベーションの促進や中小企業の外国出願助成の充実などの御意見もございました。
 10ページ目をご覧ください。9頁の御指摘があった5点につきまして、特許庁が現在検討中の主な取組みについて、順次、簡単に御紹介させていただきます。
 11ページをご覧ください。まず、グローバル出願への対応ということでは、本調査会で何度か御報告させていただいていますが、日本の審査結果を世界に発信するために、PCTの英語出願の国際調査の対象国の拡大を考えております。具体的には、これまで英語による国際出願の調査は、タイとフィリピンといった限られた国からの出願に限っておりましたが、今後は、アジア諸国から国際調査を引き受けていきたいと思います。アジアの国々には多くの日本企業が展開しておりますので、その企業が現地での研究開発の成果を英語で国際出願を行って、JPOがその国際調査を行う。英語のまま世界各国に出願ができれば、翻訳の手間もなく、JPOの審査が世界でのデファクトスタンダードになろうかと思います。さらに、デファクトスタンダード化されることによって、世界中で同じ権利が取得可能となろうかと思います。このISAの各国への拡大につきまして、既にベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシア、各国と交渉を開始しております。将来的には中国やインド等も対象国にしていきたいと思っております。
 12ページをご覧ください。次は、急増する外国特許文献への対応でございます。
 左のグラフにありますように、15年前は、世界の特許文献のうち、中国語、韓国語の文献は約9%程度でございましたが、今やこれが約48%にまで拡大しておりまして、2015年には約66%にまで達すると見込まれております。こうした中国語、韓国語のように審査官が対応できない海外文献のサーチは、権利の安定性の向上や権利侵害訴訟で訴えられるリスクを減らすという意味で、極めて重要な課題と思っております。そのため、機械翻訳を最大限活用した外国文献サーチシステムの整備に早急に取り組んでいきたいと思っております。
 特にリスクの高い中国の実用新案につきましては、今年の3月から和文抄録を、IPDLを使って提供を始めております。中国の特許の和文抄録につきましても、本年度中には提供していきたいと思っております。
 また、世界共通の特許分類の整備も重要だと思っております。これは言語に依存しないで網羅的に世界の特許文献をサーチできるようにするため、世界共通の特許分類を整備することが重要だと思っております。現在、どのような共通分類を整備していくか、五大特許庁で議論を開始したところでございます。
 さらに、先行技術調査外注の拡充も重要だと思っております。これまで、日本語を中心とした先行技術調査のアウトソーシングしてまいりましたけれども、今後は、外国語の増加に伴い、国際的に漏れのない調査のため、外国語文献も含めた外注の拡充が必要になってくるのではないかと思っておりまして、現在、そのための準備を進めているところでございます。
 13ページをご覧ください。次は、品質管理の問題でございます。審査の品質管理体制について、欧米特許庁は、かなりのリソースを割いて管理体制の強化を図っております。資料を見ていただければ、その差は歴然としております。
 最終処分のレビューやインプロセスレビューのサンプルチェック数を見てみますと、欧州特許庁はインプロセスレビューで6%近く、米国特許庁では最終処分レビューで2〜3%であるのに対しまして、日本国特許庁の場合は1けた低い0.2%ぐらいしか最終処分のレビューのサンプルチェックを行っていない。また、品質管理担当者の数も、欧州特許庁は、370名強、米国特許庁も110名強いるのに対しまして、日本国特許庁の場合は約20名といった状況になっております。世界一の審査品質を提供していくということからは、少なくとも欧米特許庁並みの体制を日本国特許庁でも整備する必要があるのではないかと思っております。
 14ページをご覧ください。今後、審査期間がFA11の目標とおりに短縮化されてまいりますと、公開前に特許になる案件が一般的になってまいります。これまでは、特許査定に問題のある出願につきましては、公開情報を基に一般から特許庁に情報が寄せられて、これに基づいて査定をすることも多々ありました。公開前特許が一般的になってまいりますと、こうした公衆審査の機能が失われてしまいますので、問題のある特許を特許後に排除する新しいスキームが必要になってくるのではないかと考えております。
 我が国におきましては、平成15年の制度改正で特許付与後の異議申立制度を廃止して、無効審判に一本化いたしました。その後、当時3,000件以上あった異議申し立てがなくなったのにも関わらず、無効審判件数がほとんど増加していないという現状でございます。そう考えますと、実は瑕疵ある特許が放置されたまま、世の中にばらまかれている現状ではないかという懸念を持っております。
 御案内のように、米国特許庁では、昨年の特許法改正で特許の付与後レビュー制度を導入しております。我が国特許庁においても、審査期間が短くなってきたという、うれしいことですが、安定した権利設定という観点からは、特許付与後の権利の見直し制度について、これまでの制度改正の経緯や諸外国の制度、ユーザーニーズ等を踏まえつつ検討することが必要ではないかと考えております。
 15ページをご覧ください。次は、ユーザーの知財戦略に則した審査のタイミングについての問題でございます。現在、早期審査のニーズに対しましては、早期審査制度あるいはスーパー早期の審査制度の対応が図られていますが、企業の方々の話を聞きますと、製品化まで時間のかかる発明とか市場動向を見きわめる必要がある発明の場合は、審査判断をできるだけ遅らせたいというケースもあるようでございます。こうした場合には、最終判断まで30か月程度の余裕があるPCT出願に回すという実務で対応しているというお話も聞きます。
 御案内のように、アメリカは先般の特許法改正で審査のタイミングを選択できるスリートラック制を導入いたしました。今後、国際標準化や市場、国際動向を見据えた上での知財戦略がますます重要になってくると思います。我が国においても、出願人の事業戦略や知財戦略に答えるような審査タイミングを選択できる制度について、出願人のニーズや第三者の監視負担のバランスにも留意しつつ、諸外国の制度等を踏まえて検討していく必要があるのではないかと思っております。
 16ページをご覧ください。次は、特許情報を活用したイノベーションの促進です。特許庁に集まるさまざまな最先端の技術情報を、国の産業政策や企業の知財戦略策定にもっと活用していき、我が国のイノベーション促進に具体的につなげることが重要ではないかという問題意識を持っております。もちろん、特許庁は制度官庁でありまして、適正な権利設定というのが本務でありますけれども、産業政策を担う経済産業省の外局であるということを考えますと、産業技術政策局とか独立行政法人産業技術総合研究所あるいは独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構といった組織との連携を、更にこれまで以上に強化していくことが重要ではないかと思っております。
 17ページをご覧ください。次は、中小企業支援でございます。審査請求料は全体から25%引き下げましたし、中小企業に対しては昨年の特許法改正で特許料の減免期間を1年目から10年目まで拡充いたしました。また、減免を受けられる企業の対象範囲を拡大いたしまして、設立後10年を経過していない中小企業も減免の対象に追加するといった制度改正を行ったところでございます。
 それから、中小企業の海外進出支援ということでは、下段のとおり、外国出願支援事業の拡充を行いまして、より多くの地域でこの制度を使うことができるように、実施自治体の費用負担を軽減して、予算額も昨年度の8,000万円から1.5億円と倍額の拡充をいたしました。
 また、企業の海外展開を支援するということで、右上にありますように、新興国の知財情報データバンクの構築にも着手しております。単なる法令のガイドライン情報だけではなくて、誤訳情報や訴訟対策情報など、権利取得過程における問題点を企業の実務情報とともに集積し、提供していきたいと考えております。
 18ページをご覧ください。昨年、知財に関する相談をワンストップで解決する知財総合支援窓口を47都道府県に開設しました。これまでのところ、中小企業の多くの方々に御活用いただいております。都道府県の各窓口には、知財・経営・技術の知識、専門家を使いこなす高い能力を有する経験豊富な担当者を二、三名配置し、全国130人で、弁理士、弁護士等、1年間に延べ1万1,000人の専門家の方々の御協力を得て、さまざまな相談に応じているところでございます。
 左上に実績を掲げておきましたけれども、相談件数は10万件以上、新規の中小企業相談は、月平均約1,000件あり、リピーターも増加傾向にあるといった状況です。本窓口については、一部の地域では順番待ちの状況も出ているようで、本年度は更に体制を充実させていきたいと思っています。
 今後の取組みとしては、海外展開を積極的に支援していくために、海外知財プロデューサーと連携を強化して、中小企業の海外展開における戦略の策定や契約の際に必要な支援を積極的に行っていきたいと思っております。また中小企業の求めている技術内容を窓口担当者がしっかり把握いたしまして、これを全国の大学あるいは研究所とつなぐといった外部技術とのマッチング機能を、ここに持たせていきたいと思っております。
 また、デザイン活用やその適確な知財保護について中小企業に支援するために、中小企業に対して、デザイン、意匠活用に精通した専門家を現場に派遣するような取組みが重要と考えております。
 19ページをご覧ください。次は、意匠制度に関する今後の課題でございます。意匠については、ヘーグ協定への加盟を始めとする国際的な枠組み整備と、画面デザインを始めとする保護対象の拡充に取り組むことが必要と考えております。
 20ページをご覧ください。この資料は、本専門調査会の第6回目でも御報告しましたので、説明は省略いたしますが、一番下にありますように、先般開催しました意匠制度小委員会でも、今後数年内にヘーグ協定に加盟する方向で検討を進めることに御了承いただいていますため、現在、具体的な制度設計、事務手続、実施体制について検討を進めているという状況でございます。
 21ページ目をご覧ください。今後、我が国企業が新興国へ事業展開していくことを考慮しますと、我が国だけではなく、新興国ができるだけヘーグ協定に加盟するということをアウトリーチしていくということは、大変大きなメリットになります。特にASEAN諸国は、ASEAN知財行動計画の中で、2015年までにヘーグ協定ジュネーブアクトへの未加盟国については、加盟を目標に掲げておりますので、我が国としても積極的に支援を行っていき、我が国のヘーグ協定加盟の効果を高めるようにしていきます。具体的には、審査官派遣や研修生の受け入れなどを行いまして、人材育成面での協力を強化することで、できるだけ早い時期にASEAN諸国のヘーグ加盟を促していきたいと思っております。
 22ページをご覧ください。次は画面デザインの保護の拡充でございます。画面デザインにつきましては、我が国では平成19年4月から、機器の操作画面を保護対象にしましたけれども、その範囲を専用機に限ることや、機器を操作する部分に限るといった、極めて限定的な保護対象にしたため、現状ではパソコン、ゲーム、Webページなどの画面デザインは保護対象になっておりません。そのため、欧米や韓国に比べて保護範囲が狭いという状況にございます。
 もちろん、当時の電機業界あるいはソフトウエア業界の要望を踏まえて、こうした結果になったわけですけれども、その後の技術進歩により、画面デザインの重要性が高まっております関係で、今後更なる発展が見込まれるデジタルデザイン分野において、保護範囲が現状のままでいいのか、改めて議論したいと思っております。まだ議論が始まったばかりですが、基本的には保護・拡充の方向で検討を進めていく予定でおります。
 23ページをご覧ください。次は、商標制度に関する今後の課題でございます。これは、新興国のマドプロ加盟を始めとする国際的枠組みと、新しいタイプの商標を保護対象にするということでございます。
 24ページ目をご覧ください。商標に係る国際登録に関するマドリッド協定議定書は、日、米、欧、韓国を含む84の国・地域が加盟しておりますけれども、右のグラフにありますように、我が国の主要な輸出上位国の半数がまだ加盟していないという現状がございます。特に、我が国の輸出国として大きな割合を占めますASEAN諸国はまだ未加盟でございますので、意匠と同様に、地域における運用能力向上に向けた人材協力を実施し、マドプロ加盟を促進していきたいと思っております。
 25ページをご覧ください。海外における我が国ブランドの保護に向けた取組として、冒認出願の問題が、引き続き大きな問題としてございまして、先般の予算委員会でもかなり大きく取り上げられて、中国はプライドがないのかということで新聞記事をにぎわせました。この事例にありますように、我が国の地名あるいは著名な商標が中国で登録されて、事業展開の大きな問題になっていることは御案内のとおりでございます。もちろん、政府ベースでも問題解決を働きかけておりますし、JETROの北京事務所にも専門の相談窓口を設置して、対策をとっております。引き続き我が国のブランドが保護されるよう、取組みを強化していきたいと思っております。
 26ページをご覧ください。新しいタイプの商標の保護強化について検討中であることを先般御報告いたしました。各国・地域の新しいタイプの商標の保護状況について、比較表を掲げておりますとおり、我が国は、諸外国に比べて非常に対応が遅れている状況がよくわかるかと思います。
 本件につきましては、一昨年から産構審の商標小委員会での議論を続けておりまして、一番上から5段目までの動き、ホログラム、色彩、位置、音ぐらいまでは保護対象とすべきというコンセンサスが取れており、それより下の、においや食感、味、トレードドレスといったものは、権利関与を特定することは難しいという御議論があり、保護対象にすべきではないという意見が出されておりました。
 一方、米韓のFTAにおける新しいタイプの商標に係る規定では、においを保護対象とするということが規定されております関係で、今後こうした特定が難しいものをどうするか、また改めて検討する段階になっております。いずれにしましても、保護対象の拡大は国内企業にとってメリットになる部分がありますので、国際動向を見ながら適正な範囲に設定していきたいと思っております。
 最後に、我が国特許庁の審査体制の在り方について御報告させていただきます。ここが、今日、私どもが一番申し上げたかった本丸でございます。経済のグローバル化に伴い知財システムもグローバル化している現状において、新興国の台頭が著しい中で、各国特許庁は、グローバル出願の増加や変化する出願人のニーズに対応するために、審査体制の抜本的強化という課題に向けて、競うように取り組んでいる状況にあります。まさに各国における知財制度間競争が始まっている状況でございます。
 27ページをご覧ください。そのような中、五大特許庁における審査官数の推移をみると、米国、中国が審査官の増大に大変強く取り組んでおります。一方、我が国の場合は、右のグラフにありますように、2004年から10年間の期限付きで任期付審査官490名を採用いたしましたけれども、2013年以降、順次その任期が切れ始め、何らの手当てをしない限り、審査官が大幅に減少するという、世界の審査体制の強化の流れとは全く逆の方向に向かうということになります。
 28ページをご覧ください。左下に改めて一部掲げさせていただきましたけれども、グローバル経済の流れの中で、今、我々が対応しなければいけない課題は山のようにございます。ペーパーレスシステムの導入やアウトソーシング、任期付の審査官の採用によって、長年の懸案であった滞貨の解消が実現しつつある、まさに今このときに、グローバル対応という新しい波が来ており、グローバル出願への対応や権利の安定化などの施策を実施する場合には、再び審査期間が長期化する懸念も強まっております。
 右のグラフのとおり、2020年までのFA期間の見通しでございます。すべての施策を実施する場合にはFA期間は、長期化していきます。また、この外枠で、先ほど申し上げました特許付与後のレビューへの対応がございます。これは、年間数千件オーダーの異議が再び出て発生してくるということですので、巨大な業務量及びインパクトがございます。こうしたことも踏まえますと、総合的な審査体制の強化は、グローバル出願の増加や変化する出願人のニーズに対応するためには待ったなしの状況ではないかと思っております。
 最後に、来年度以降の主な制度改正事項をまとめさせていただきました。特許、意匠、商標、それぞれにおいて、重たい法改正が重なります。ここで掲げた項目以外にも、TPPへの対応や26年には弁理士法の改正も控えております。来年、再来年と、2年続けて大きな制度改正が続くことについて、知財立国を掲げて10年目の節目のときでもありますのでしっかりと行っていきたいと思っております。
 以上でございます。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。皆さんの方から御質問もあろうかと思いますけれども、ちょっと時間の関係がありまして、引き続きヒアリングをさせていただきたいと思います。これは、知財人財育成プランに関してです。知的財産人材育成推進協議会の幹事でもある後谷企画調査課長から御説明いただく。この説明は、特許庁企画調査課長としてのお立場と知的財産人材育成推進協議会幹事というお立場で、発言内容の受け止め方が異なりますが、とどちらのお立場でのご説明でしょうか。

○後谷企画調査課長
 知的財産人材育成推進協議会幹事としての立場で報告させていただきます。

○妹尾会長
 資料2ということで、よろしくお願いいたします。

○後谷企画調査課長
 よろしくお願いいたします。
 まず、1ページでございますけれども、これが知財人財育成プランの概要でございます。本日、御紹介させていただきますのは、概要の右の10年先を見据えた知財人財育成プランの策定内の中央に点線で囲んでおります知財マネジメント戦略研究拠点と、事業戦略的な知財マネジメント人財を養成するための場につきまして、協議会としての立場で御紹介させていただきたいと思っております。
 めくっていただきまして2ページでございます。主要施策は、大きく2つの柱からなっておりまして、仮称として記載されてございますけれども、右側の知財マネジメント戦略研究所と左のビジネス戦略知財アカデミーでございます。知財マネジメント戦略研究拠点の所では、事業戦略や知財情報を蓄積・分析し、そのさまざまな知識・教材を、ビジネス戦略知財アカデミーに提供し知的財産を事業戦略に活用できる知財マネジメント人財を育成し輩出するといった内容でございます。
 ビジネス戦略知財アカデミーについての詳細は、3ページ目になります。現在、知的財産に関する人材の育成を推進するために民間の自主的組織として設置された知的財産人材育成推進協議会がございまして、私はその協議会の下に設けている作業部会の幹事を務めております。プランの実施に向けて、協議会の主な取組みといたしましては、主に知財人材育成推進協議会の参画機関の拡充や知財人財育成に関するオープンセミナーの拡充、各参画機関における研修の拡充がございます。参画機関の拡充に関して、現在の参画機関は資料に書いてございます7つ目の矢印の発明推進協会まででございます。これを本年度、オブザーバーとして参加しておりました知的財産研究所が正式なメンバーになる形も含めまして、今後は、参画機関を順次拡大していき、オープンセミナーの開催の拡充とあわせて行っていきたいと考えてございます。
 次が柱でございまして、知財マネジメント戦略研究所における研究成果を踏まえた、各参画機関における研修の拡充という形で実施していきたいと考えてございます。具体的に民間調査研究機関はどこなのか、そこからどのような研究成果が提供されるのかという話です。ここからは特許庁の立場になるのですけれども、現状では、この民間調査研究機関のような形が存在していません。複数の民間調査研究機関があるのですが、人財育成プランで想定している研究機関がない状況で、推進協議会の皆さんで議論していただいて、ちゃんと国内外の最新の事業戦略や知財情報を蓄積・分析した情報を提供しなくてはいけないと考えております。
 そのため、この民間調査研究機関に対して特許庁側から、今年度、知的財産国際権利化戦略推進事業という新規の予算を活用して、民間の調査研究機関に対して調査事業をお願いしたいと考えております。具体的民間調査研究機関がどこかにつきましては、今後、入札になるので、そこに手を挙げていただいた方になります。特許庁側でも民間調査機関と研究・連携をさせていただいて、よりよい成果を協議会の方に提供させていただきます。このような協議会と研究所との連携によって、今後、5年、10年先を見据えた知財人財を育成し、推進していく上での情報提供及び研修実施を努めていきたいと考えております。
 私からの報告は以上でございます。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 以上、2つの御説明をいただきましたけれども、両方、どちらでも結構ですが、御質問あるいは御意見がありましたら、挙手を願います。相澤委員。

○相澤(英)委員
 先ほどいろいろな施策が出ていましたけれども、海外に対する施策の結果、日本が空洞化しては困るので、この点について御配慮いただきたいと思います。
 特許権に対する異議申し立を復活させるのであれば、これは権利を制限する方向に強く動きますので、これをバランスをとるように、特許権者にも、手続的な手当をする必要があると思います。特許権の成立後に権利を拡張する訂正を認めるとか、特許権の分割を特許権が消滅するまで認めるとか、の権利を強化する方向の改正を組み合わせて、バランスのとれた政策を考慮していただく必要があると思います。
 もう一つ、人財育成についてですが、既存の知財専門職大学院を始めとする大学院と上手く協力していただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 資料1の17ページで、第1点は、中小企業の支援策を強化していただいているのは、大変評価しますし、感謝しておりますが、お話にもありましたように、外国への活動がどんどん増えていますので、ここで手当てをされている以上に、出願しているだけじゃなくて、その後の実際の向こうでの権利行使というか、大変深刻な問題が急増していますから、これはどんどん強化していただきたいというお願いです。
 2点目は、その点とも関係しますが、25ページのブランドの関係。これは、大企業だけではなくて各地域、それから中小企業も非常に大きな問題になっていますが、商標は先願主義というのは限界があるのではないか。使っている人の権利だと、使用主義を入れて、早い者勝ちということではなくて、実際にそれで事業をして消費者を保護するのだとすべきじゃないかと思いますので、商標について、そういう先願、プラス使用主義に変える。
 そのために日本も率先して変えて、世界じゅうにそういうことを広めていかないと、これはいろいろな国に次々に進んでいきますので、グローバリゼーションの時代ですから、率先してそういう制度を変えて、消費者にとって役に立つ、生産者が保護されるという形に全体を変える国際的な動きを日本がリードしてやっていただきたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかによろしゅうございますか。山本委員、お願いします。

○山本委員
 産構審でも申し上げたことですが、資料1の27、28辺りでしょうけれども、お聞きしたいのは、任期付審査官をそのまま継続して雇用することはできないのでしょうか。それができないとすると、何が障害なのでしょうかというのをちょっとお聞きしたいなと思っております。

○妹尾会長
 これは質問ですので、お答えいただけますか。

○熊谷総務部長
 10年間で審査のコブを無くすための要因として、任期付という形で審査官を総務省から定員をもらっているものですから、ルールとしては10年間でお返しするということでございます。ただ、改めて国の定員をどうするかというニューマターとして議論するということで、総合的に判断しなければならないと考えております。ルールとしては10年間限りで認められた制度だということでございます。

○妹尾会長
 どうぞ。

○山本委員
 審査体制を強化するので、一からまた雇用するよりは、こういう10年間やった人が、もし本人が希望するのであれば継続審査ができるような施策が打てないのかなというのが、個人的な意見です。

○妹尾会長
 今のは、制度の問題と、その制度が認められたときに、個別の人が再雇用が可能なのかどうかという。

○山本委員
 はい。

○妹尾会長
 ほかにいかがでしょうか。福島委員。

○福島委員
 質問を含めて、幾つかお伺いしたいと思います。
 1点目は、資料の7ページに記載されていますように「より早く」という観点から審査状況が従来に比べて大幅に改善されていることは、出願人として非常に有益なことであると思います。ただ、「より早く」という点の本質から見ますと、企業にとって着手時期が問題ではなく、あくまで権利化される時期がどれだけ短縮されるかということを基本に考えていただきたいと思います。勿論、単純に審査期間が長いと申し上げているわけではなく、権利活用の観点から、審査着手までの期間より権利化までの期間が重要であることを申し上げたいと思います。
 2点目は、「より強く」という観点から、審査の品質管理について制度的に様々なご検討いただいていることは高く評価したいと思いますが、このような品質管理の議論の殆どが特許中心の議論になっていると感じています。別の場でも申し上げたことがありますが、新興国における事業活動では特許とともに意匠・商標が極めて重要であると認識していますが、意匠権・商標権の権利範囲に関するバラつきや権利自体の不安定性が大きな課題になりつつあります。日本では審査制度を運用されていますが、審査の品質は必ずしも十分とは言い切れないと感じていますので、意匠権・商標権に対しても様々な施策をご検討いただきたいと思います。
 3点目は、資料の12ページに記載された内容のご説明として、急増する中国・韓国文献に関して和文抄録をご提供いただくお話を伺いました。確かに和文抄録が調査できること自体は有用ですが、最終的には本文全体を見ないと十分な調査には至らないと思います。抄録だけの和文にこだわることが重要か否かという点を考えますと、企業目線からすれば、英語でも十分ですから本文全体がいち早く見られるように対応していただくことが、より効果的であると思います。
 以上です。

○妹尾会長
 これは何かありますか。特に3点目は、前回、ここの委員会で相当議論になりましたね。出雲さんと西山さんが怒った経緯もありますけれども、ああいう意見があったにもかかわらず、議論が継続されているということは一体どういうことなのかという御質問でもあろうかと思います。いかがでしょうか。

○小柳調整課長
 調整課長の小柳でございます。前回も私の方からの発言に対して、いろいろ御意見いただいたという経緯がございますので、私の方から検討状況を御報告させていただきます。
 福島委員の御指摘は、英語でもいいから早く出してほしいというお話だったと思います。まず和文抄録の関係についてですが、中国実用新案文献の和文抄録を、今年3月から、IPDLで提供を開始しております。中国特許文献の和文抄録に関しては今年度中に提供し始める予定でおります。このように和文に拘っているから、提供するスピードが遅くなっているということはないと考えております。 また、中国特許文献の全文を、英文でもいいから早く提供してほしいということでございますが、中国特許文献の和文抄録は今年度から提供する予定でおります。それが何に繋がるかというと、将来的に実施する中国文献の全文日中機械翻訳の辞書にうまく反映できるような経験を積めるということです。中国語の特許文を中国語から日本語へダイレクトに機械翻訳する際に精度の高いものをつくっていきたいという意向がございまして、そこには、少しだけ時間をいただきたいと考えております。
 それまでは、中国特許文献については、中国語の抄録からの和文抄録は非常に出来がいいものができますので、それを提供していく対応を、今年度からやっていきたいということで進めているところでございます。

○妹尾会長
 福島委員。

○福島委員
 私自身は、和文抄録が提供されることを決して否定するものではありませんが、権利を的確に調査するには抄録だけでは不十分であり、全文の日本語翻訳を提供するために時間が要するのであれば、英語でも早く全文が見えるような環境を提供していただきたいという点が趣旨です。

○相澤(英)委員
 福島委員の意見に反対です。

○妹尾会長
 相澤委員、どうぞ。

○相澤(英)委員
 日本の特許庁の予算は日本の出願人において支払われた手数料を歳入とする特別会計でありますから、特許庁の支出はあくまでも日本の特許庁の出願人の利益に均てんされるべきものの範囲で行われるべきものであると思います。経済産業省の一般会計の予算で行われているものとは、性格を異にするものではないかと思います。したがいまして、特許庁が海外の出願あるいは海外の情報についてできることには、おのずから制約があるものだと理解しております。

○妹尾会長
 これは大論争になりそうだな。高柳委員、お願いします。

○高柳委員
 知財人財育成プランについて、ちょっとコメントさせていただきます。これは、特許庁がやられるとしては、こういうところしかできないのかもしれませんけれども、本当にこれが即戦力になって、今、必要な中小企業、知財人財のバックアップになるのかというのが非常に問題ですね。国としては、もう少し何かやりようがあるのではないかと思います。
 私の友人からメールをいただきまして、それをちょっと紹介させていただきます。これは、八王子で定年退職を迎えられた方々六十数名がビジネスお助け隊というのをつくっているのです。これは、サイバーシルクロード八王子というものをつくりまして、商工会議所や八王子市、地元の金融機関を巻き込んで、いろいろな意味で基本的にはボランティアに近い形で、中小企業等を支援しているのです。この中に知財とかライセンスの定年退職者が入って、これは私の友人なのです。
 こういうことを八王子市のみならず、いろいろな日本の各市町村とか行政に広げていってほしい。そういうところに知財戦略本部とか特許庁が目を向けて、これで日本を元気にしたいのだというメッセージが伝わってくるのです。
 これが日本人だからできるのです。中国は絶対やりません。人が倒れていても素通りしてしまう。日本は、特に我々定年退職者は今までの経験を生かしたいのです。そういうところにお金とか力を使っていただきたい。そして、今の中小企業や日本を元気にしてもらう、そういう即戦力のところにもう少し目を向けていただけないかと希望しております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。佐々木委員、さっき手を挙げていらっしゃった。

○佐々木委員
 同じく人財育成の資料3ページ目がいいかもしれません。これですと、知財マネジメント戦略研究所は、専ら知財人財育成のための戦略を練って、その情報を提供するというサイクルに見えるのです。私は、あくまでもこれとは逆で、戦略研究所が日本国家のシンクタンクとなり、そこで働きたい、そこで活躍したい、そこに向かって人が育つというサイクルが是非できないかということを再三申し上げてきたつもりです。
 これですと、工業所有権情報・研修館がこういう人を育てたいのだけれどもどうかと言う公募に、割と簡単に民間企業が手を挙げて、こんなものでどうでしょうか。では、それで人財育成の機関を提供しましょうかというサイクルだけしか回らないような感じに見えるので、その辺は逆の流れができるぐらい、2ページ目の知財マネジメント戦略研究拠点を是非検討いただきたいなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。人財の方もありますし、それからこちらの特許庁全体としての国際情勢の中での取組みということもありますが、ほかに幾つかございますか。小川委員、お願いいたします。

○小川委員
 今の佐々木委員の話、私も賛成でございまして、むしろそのようにしないと本当の意味での戦略が出てこない。我々はモノづくりなど目に見える競争では無く、国や企業の制度能力や組織能力だけでも無く、高度な知的営みのレベルの競争も、産業構想力を考える上で極めて重要になりました。局所最適を担う多数の小軍師を育成が重要なのは論をまたないが、同時に全体最適を担う大軍師の育成が必要なのです。
 例えば、マスコミはアップルやグーグルで表に出て来る人ばかりを話題にします。S.Jobeがいない、と。しかし、このビジネスモデルを背後で支える構造およびこの構造をオープン環境で長期に安定化させる仕組みとしての知財マネージメントを考えているのはS.Jobsではなく、後にいる高度人材です。我が国での仕掛けを理解し、対抗策を考えられる人材やシンクタンクがあるでしょうか。誰も処方箋を書けなければ家電産業は崩壊します。小軍師をいくら育成しても、グローバル市場に跨る仕組みを作れる人は育たない。従来の人材育成はそのまま充実させ、これとは別に今回の新たな戦略研究所は、大軍師としての日本国家のシンクタンクを目指すべきです。
 過渡期としてまずはここにご提案の体制にしてスタートさせる、というのが特許庁の御判断だと思いますが、佐々木委員がおっしゃるような流れを確保しないと、これまでと同じように矮小化された箱モノづくりで終わる可能性があります。この意味で、戦略研究所は日本国家のシンクタンクになるべき、という佐々木委員に賛同したい。
 それから、熊谷総務部長が御説明なさった今回の資料は、非常に評価したい。誤解を恐れずに言えば、これまえは、特許庁の制度設計のための制度の議論が中心だった。しかし今回は、日本がどういう状況に置かれているのかを、特にアジア経済圏の中に位置付ける視点から、制度の在り方と改革の方向性を議論しようとしています。この意味で非常に評価したい。
 それから、先ほど相澤委員が、特許庁は海外のアクティビティーは、法制上、あるいはこれまでの成り立ち上、制約があるとおっしゃっていました。しかし日本が置かれたグローバル市場の現実に制度が合わなくなっているのであれば、特許庁のミッションを変えても、特許庁はダイナミックに変貌すべきです。そうしないと、制度が自己目的化してしまう。
 3番目、熊谷総務部長が審査体制の危機を強く訴えておられましたが、これは、お金がないので危機に対応できない、ということなのでしょうか。こうやるから予算獲得を支援して欲しい、と我々に言っているのでしょうか。。解決策を皆で考えたいのでア尋ねしています。

○妹尾会長
 これは質問としてお答えいただくことにしましょう。
○熊谷総務部長
 お金の話だけでなく、いろいろな対応があると思います。たとえばアウトソーシングの仕方や、定員確保。山本委員からご指摘がありましたように再雇用をどうするかなどです。そういった対策として、外国対応の波をどうこなしていくかということを総合的に検討していく必要がございます。
 また、相澤先生からご指摘のございました制度の空洞化の問題について、これも非常に深刻に受けとめております。海外企業からヒアリングをすると、日本で特許を取っても、制度自体の問題から権利行使がしづらく、権利を活用する機会が少ないため、もう日本で特許を取らないという企業が最近増えている。制度比較をされた上で、日本の制度が選ばれないようになるのが我が国にとって一番不幸なことだと思っております。そういう面で、制度全体の在り方もいま一度立ちどまって考えて、魅力ある制度設計をするということが必要だと思います。
 そういう意味では、権利者にとってきちんと権利が確保されて行使ができるような、普通の制度にしていくということにも十分配慮しながら、検討していかなければいけないなと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。山本委員。

○山本委員
 知財人財の方の話をさせていただきますと、1つは、先ほど佐々木委員のおっしゃられた方向もあるのかなと思います。仮にこのままで行くと、知財人財は結局何ができる人を採るのですか、何ができる人をどう育成するのですかという議論が欠落して、ここの中で具体的なのは、ビジネス戦略知財アカデミーをつくりましょうとか、知財マネジメント戦略研究所をつくりましょうという箱をつくるだけの話のような気がしていて、何ができる人を育成するのかをちゃんと議論しないと、厳しいと思っています。
 というのは、私も全国の知財本部でTLOの人にライセンスについての人財育成を何年間もやっていますが、企業の特許部に何年もいた人でも、ライセンスができない人は全然できない。これは、育成というよりも採用の問題だったりするなということを感じます。でも、その人は特許管理ができるということ。何ができる人をどう育成するのか、採用の部分からちゃんと考えてやらないと。ここではスーパーマンを育てましょうとしか、漠然とした形にしか見えないなという印象です。

○妹尾会長
 それは、1ページにどんな人財か。それで、人財育成プラン、昨年1年間をかけて取りまとめたのですが、それが不十分だという御意見でしょうか。

○山本委員
 と思います。

○妹尾会長
 わかりました。それに対しては。

○山本委員
 もっと具体的にブレークダウンした方がいいのではないかということです。方向が間違っているわけじゃない。

○妹尾会長
 はい。

○後谷企画調査課長
 山本委員、ありがとうございます。これは枠組みを御紹介させていただいている話でございまして、月1回ぐらい、協議会のメンバーが集まりながら、それぞれ山本委員がおっしゃるような形の専門人財をどのように育成して育いくのか、技術で勝ってビジネスで負けている状況をどうしていくのか。ビジネスでも勝てるようにするための人財はどのように育成していくべきかという観点で、議論しております。
 資料2の知財人財育成プランへの対応の3ページを見ていただくと、左側にいるメンバーは、それぞれ研修を実施されている方々で、各々違う観点から人財育成を行っております。例えば教育協会、知財学会、弁護士会、弁理士会の会員の方々が参加される中で、どういう研修を実施していくのかという具体的な研修のあり方を議論していくのだと考えておりますし、これまでもそういった各々の立場による人財育成のあり方の議論をしてきましたので、それを拡大していきたいと思ってございます。
 相澤先生から、今ある枠組みに追加して専門職大学院やMOT、法科大学院との関係の強化という話がございましたが、そこにつきましても新規参画機関にオブザーバーとして入っていただきまして、これまでの枠組みの連携を強めながら、お互いがより高度な専門人財を育成できるような形のプランをつくり上げていきたいと考えております。
 当然、高柳委員から御指摘を受けました企業のOBの活用や、佐々木委員、小川委員から御指摘を受けました事業戦略的な知財マネジメント人財を養成するための場から知財マネジメント戦略研究所へ行って研究してもらう人財育成といった逆回りの話も、この発展形として進めたいと思っております。具体的には、2ページについて、説明は、右の知財マネジメント戦略研究所から左のビジネス戦略知財アカデミーへの矢印しか御紹介できませんでしたが、その下に三角形がございまして、アカデミーと研究所は日々連携をとりながら、実際していくという形を考えてございます。当然、そのアカデミーのメンバーは、協議会のメンバーでございます。メンバーの方々の知見が集まるような形にしていき、研究拠点の整備とともにうまく構築していきたいと考えております。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。基本的に、これはこの会合の第6回で育成プランを出してきて、大変御意見をいただいたので、第7回もそれが修正されたものが御承認いただいたことに基づいたことだと理解しています。渡部委員、お願いします。
○渡部委員
 もしかすると誤解しているかもしれないので確認させていただきます。山本委員がビジネスアカデミーとか戦略研究所、箱物をつくるように見えると言われましたが、これは箱物をつくらないのですよねという、そもそもの話と。
 もう一つは、先ほど任期付審査官の話がありましたが、これは期限がある話だと理解して、来年で任期付審査官の期限が来るわけです。ということは、どうするという議論をそんなにゆっくりできない。その辺、どこまでに何を決めるというスケジュールがあるのかどうか、その2点を伺いたいと思います。

○妹尾会長
 最初は、これは箱物ではないですねという。

○後谷企画調査課長
 これは箱物ではございません。パーチャルに知財人財に携わっていらっしゃる方を集めるような機関を考えております。

○渡部委員
 予算的には、右側の戦略研究所に委託か何かで競争入札で出すだけになるのですか。

○後谷企画調査課長
 特許庁の立場で言わせていただきます。特許庁側で新規に要求したのは1.5億円です。また、左側の協議会の方は実質的な運営機関で、各参加機関の方々が、予算や人も含めて持ち寄る形で活動していただいております。特許庁は、必要があれば、更に何らかの形で支援を拡大していく形で考えてございます。

○妹尾会長
 任期付の方については。

○熊谷総務部長
 任期付は26年度から除々に任期が切れていきます。今後、任期付の方々をどれだけ確保するのかは、どういう政策課題を重点課題として、実現していくかということに密接に絡んでおります。その意味では、来年度の法改正に向けて何をやるのか、何を具体化していくのか。それを踏まえて、どれだけの人員ないし予算が要るのかに絡んでおりますので、来年度あるいは再来年度にかける制度改正とのタイミングにおいて、任期付審査官をどうするのかを決めていくことになろうと思います。
 定員という形であれば、再来年の定員要求にも絡んできますので、来年度あるいは再来年度の法改正に対する対応としての任期付審査官のあり方を議論するということで、今年度から議論開始だと考えております。

○渡部委員
 ということは、今から夏の間に大体どういうことになるのかを考えなければいけないということですね。

○妹尾会長
 大変な問題ですね。少なくともこの1年で取り組まなければいけないことだと思います。
 まだおありかと思いますけれども、ヒアリングの時間がかなり長引いているので、出雲委員を最後にさせていただきたいと思います。

○出雲委員
 1点意見と1点質問をさせていただければと思います。
 まず、資料1の17ページで、平成24年4月からの改正特許法の施行で減免対象者の拡充をしていただいたこと。それと、下側にあります外国出願支援事業の拡充を着実に実施していただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 その上で、この外国出願支援事業についてですけれども、東京都の例で申し上げますと、東京都中小企業振興公社における第1回の外国出願費用の2分の1補助の受付期間は、今まさに行われているところでございまして、5月7日から18日までという非常に短い期間で第1回目の募集が締め切られて、すぐ満員になって、東京都の予算の上限になって、その後募集がなかなかないと聞いております。0.8億円から1.5億円に大幅に増額していただいているとありますけれども、それでもなお、あっという間に埋まってしまって、意欲はあるけれども、資力に乏しい中小企業の外国出願費用のニーズにこたえ切れていない。
 同様に、新興国知財情報データバンクの構築と、ワンストップ窓口。今、人気があってリピーターも増加していて、待ち時間も増えているという話がありましたけれども、特にJETROにおいて開催されているような、中国に進出した中小企業の知財リスクに関するセミナーは、相変わらず満席続きで、そのセミナーに申し込んでも参加できないという、中小企業のニーズにこたえるボリュームで提供されていないという現状については、意見として強くここで申し上げさせていただきたいと思います。
 もう一点は質問でございまして、12ページの急増する外国特許文献の対応の3つ目で、先行技術調査外注の拡充とあります。今まで、日本語文献の先行技術調査を24万件程度、民間へ外注されたとありますけれども、これはなぜ外国文献調査も含めた外注を、韓国においては既に韓国語、日本語、英語、ヨーロッパの文献調査をすることが標準となっていると記載があるにもかかわらず、今、日本で外国語、外国文献の増加に対応するための外注の拡充が行われていない、何か課題とか問題、理由があれば御教示いただきたいと思います。

○妹尾会長
 はい。

○小柳調整課長
 御質問について、外注で先行技術文献調査をしてもらうためには、まず、どういうスペックのデータベースが揃っているかということが重要になります。特許庁が先行技術文献調査の外注をはじめた当時は、我が国特許庁の所有している日本語文献のFタームでの検索・文献サーチシステムが一番有効に使えるサーチシステムでございまして、日本語文献についてはきちんとサーチできておりました。
 ただし、外国文献の先行技術文献をサーチするデータベースについては、商用データベースなどがあったものの、これではなかなか効果的にサーチができていなかったという事情がございます。そのため、特許庁の先行技術文献調査の外注につきましては、従来、日本語文献のみでやってきたということでございます。

○出雲委員
 今後はどのように対応をお考えでいらっしゃるのでしょうか。

○小柳調整課長
 まさに外国文献も含めて、先行技術調査ができるようなシステムを作っているところでございますそれを踏まえて、今回、ここに御提示していますように、外国文献も含めて、外注先がきちんと先行技術文献を調査できるようなシステムを構築していきたいと考えております。

○妹尾会長
 よろしいですか。
 それでは、ヒアリングに関しては、時間の関係もあるので、これで一たん切らせていただきたいと思います。皆さん、ヒアリング、どうも御苦労さまです。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。「知的財産推進計画2012」に盛り込むべき事項(案)の中で、どういうふうに進めるかという工程表をつくることになっております。この工程表について議論を行いたいと思います。それでは、事務局から御説明をお願いしたいと思います。安田参事官、お願いします。

○安田参事官
 「知的財産推進計画2012」に盛り込むべき事項(案)についてでございます。資料3でございますけれども、各委員には、一番下になりますけれども、見え消し版が配付されておりますので、そちらをご覧いただければと思います。
 盛り込むべき事項(案)につきましては、骨子、それから委員の提言、特許庁のただいまの動向を踏まえまして、事務局で骨子の施策に2点追加、1点修正を加えております。
 まず、5ページ目になります。赤字でございますけれども、「国際的な知財システムの構築の推進」の中の、「特許制度の国際調和の推進」のところでございます。1ポツはそのままでございますが、日本の特許庁は五大特許庁の枠組みでさまざまな議論しているところでございます。その項目の中から重要なものを記載してございます。
 2つ目の赤いポツでございます。これが1点目の追加でございます。特許審査業務に係る統一システムの構築に向けた提言を行い、情報技術分野における協力を推進することを追加してございます。これは、他の特許庁の審査結果をお互い容易に利用可能とするシステム構築を日本が主導で行うということでございます。
 3つ目のポツです。これが2点目の追加でございますけれども、五大特許庁における議論であります、世界標準の特許分類の取組みに関するものでございます。これによりまして、特許庁だけでなく、ユーザーが世界の特許庁により効率のよいアクセスを可能とする、重要なプラットフォームづくりを推進するものとなります。
 以上2点が追加点になります。
 それから、8ページでございます。特許権の安定性の向上でございます。ここにつきましては、何を検討するのか、もう少しわかりやすい表現がよいという意味からの御指摘、を踏まえ2つに分けて記載させていただきました。データベースの整理の切り口、それから制度設計の切り口ということでございます。
 最初のポツで若干変更がございますが、先ほど特許庁の方から紹介がありました中・韓の比率が高まっているということでございまして、中国語、韓国語を始めといたしました外国語特許文献を日本語で検索可能な環境の整備を促進するということでございます。  次のポツでございますけれども、特許付与後の権利の見直しでございます。これは、先ほど特許庁の説明にもありましたように、審査期間の短縮によりまして、出願公開前に特許査定する案件が増加することを踏まえまして、どのようにするかということを検討するということでございます。
 以上が「知的財産推進計画2012」に盛り込むべき事項の施策例の修正点、追加点の説明でございます。
 時間も押しておりますので、工程表について簡単に説明させていただきたいと思います。A3の横長の大きな資料になります。
 見方でございます。一番上に青い欄がありますけれども、項目名に続きまして、2012に盛り込まれる施策があります。それから、どこが担当するかという担当府省。それから、2012年度、2013年度を短期、2014年度、2015年度を中期として期間が設定されております。あと、後ろの方ですけれども、推進計画2011からの継続施策もございますので、22ページからは継続施策確認を御提供してございます。
 重要な項目という観点から、事務局の方で黄色く着色したものがございます。これについて幾つかあるのですけれども、1点だけ紹介させていただきたいと思います。1ページ、項目番号1でございますけれども、特許制度の調和の項目でございます。これは交渉事でございますので、2012年度、2013年度で制度運用の比較を行いまして、分析結果に基づきまして継続的に議論する。それから、中期的な取組みとして、議論を日本がリードするという記載になってございます。
 あと2つにつきましても、似たようなことでございます。
 あと、2ページ目以降、時間がございませんので説明は省略させていただきますけれども、意匠、商標の制度の見直し。
 それから、7ページの職務発明、それから特許権の安定性の向上。
 それから、8ページ、技術流出防止に向けた対応強化。
 それから、12ページでございますけれども、大学知財本部・TLOの最適化、配置といった点。
 最後の黄色でございます。先ほど出ました知財マネジメント戦略研究拠点の整備ということでございます。
 簡単に説明させていただきましたけれども、ほかの各項目について、いつまでに、だれが、何をするといった短期、中期の具体的な取組みが記載されてございます。
 事務局の説明は以上になります。よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 事務局からの御説明、2つありました。1つは、盛り込むべき事項の我々に関係するところでの修正箇所についての御説明でした。もう一つは、今の工程表ですが、これらについて議論を行いたいと思います。資料3から4について、御意見がある方はお願いいたします。相澤委員。

○相澤(英)委員
 8頁の特許付与後の権利の見直し制度は特許権を弱くするので、訂正や分割等で特許権者に配慮をしたバランスのとれた政策をお願いしたいと思います。
 人財活用のところで、先ほど弁理士制度の改正が紹介されましたが、弁理士が知的財産に関わる活動を十全に果たせるように、制度を改正するための検討も加える必要があるのではないかと思います。
 もう一つ、アメリカでは、最近、知的財産を通商問題として取り扱うという議論が若干出てきています。知的財産を保護していない国は、製造コストを安くしていることになり、それは輸出に対する補助的機能を持つということになります。これを、国内における製造産業に影響を与えるのだという通商的なとらえ方で、ワシントン州では、州法もできているそうです。
 将来に向けては、知財を通商問題として国際的に解決するという方向性がTPPとかFTAなどの枠組みのなかで必要ではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。中島委員。

○中島委員
 先ほど大臣に申し上げたのですけれども、新しいものをどんどんつくっていく、魅力のあるものを創作していくことが大事であるわけです。ここで既にここまで来ておりまして、これはこれで事項の整理というのはまとまっておりますので、希望だけでございます。
 特に、特許・発明もさることながら、意匠の分野でこれからの整理が大変重要なわけです。例えば意匠出願の件数を見ても、日本はお隣2か国に対してかなり遅れをとっているという状況がございます。先ほど特許庁の御説明もありました、システム的、制度的な支援も大変大事でございますし、これはどこでやるのかわかりませんけれども、先ほど特許庁から政策官庁というお話がございました。
 いいものをつくるには、どうすればいいのかという新しい創作。これは運用でできると思いますので、先ほどのシンクタンク構想もございましたし、そういう中で創作が生まれてから運用する制度をどうするとか、利用・活用をどうするというよりも、一番大事なのはいいものをつくるという創作活動です。是非そこが生かされるように、提案されたいろいろな政策。これは、特許庁を始めとして、ほかも同じだと思いますけれども、是非進めていただければと思う、希望だけでございます。
○妹尾会長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。佐々木委員。

○佐々木委員
 それぞれの工程表の中で、大分類、中分類、小分類と分かれるのだと思いますけれども、一つの政策の担当府省が多数にわたるものがあったり、2つぐらいにまたがるものがあったり、いろいろあります。少なくとも企業の中では2つぐらいに責任を分散させると、うまくいくものが余りなくて、難しいかもしれませんけれども、一義的にどこが責任を持つ、進めるという体制でお進めいただくよう、また進め方にも工夫をして取り組んでいただければいいなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 今のことについては、まさに上田次長の方から。

○上田次長
 今の佐々木委員からの御指摘でございますけれども、まさに政府、いろいろなところが担当省庁になってくるわけですけれども、一義的に責任を持つのが内閣官房の仕事だと思っておりますので、そういう気持ちで引き続きやっていきたいと思っております。

○妹尾会長
 ということです。ほかにいかがでしょうか。福島委員。

○福島委員
 既に少し議論されていることにも関連しますが、資料3の17ページで一番上、の項目において、タイトルには「知財戦略に資する云々」と記載されているにも関わらず、中身は特許に関する用語ばかりです。例えば、パテントポートフォリオ、特許網、特許審査官などが記載されています。2番目の項目にも同様な表記が見られます。このような表現は、先程からの議論にありますように意匠・商標の位置付けが軽視されることに繋がることを少し懸念しています。是非とも知財権のベストミックスを戦略的に活用するという視点を加えた表現をご検討いただきたいと思います。

○妹尾会長
 これはいかがでしょうか。はい。

○安田参事官
 御指摘を踏まえまして、会長とも御相談して、表現については検討したいと思います。

○妹尾会長
 おっしゃるとおりで、前も荒井委員からも御指摘がありました。ついつい特許偏重になってしまうのですが、世界は知財権ミックスの時代に入ってきているわけですから、そういう表現を重視するようにしたいということで、後ほど工夫させていただきたいと思います。ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。この3のとりまとめの修正文言について、それから工程表についてですが。よろしいでしょうか。
 これは、御意見、コメントも含めていただいたのですが、もちろんその先へ進まなければいけないので、これで十全だということではありませんけれども、年度計画としては一つひとつ進めなければいけないので、ある段階で整理して取りまとめ、そして各府省が頑張ってやっていただく。このスタイルをとらざるを得ません。いろいろな課題は後ほど討議していただくにしても、本調査会としての報告書のとりまとめを行いたいと思います。意見の集約が図られて、その後、事務局での若干の工夫をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 もしよろしければ、最終的な取りまとめについては、会長である私と事務局とで進めることで御一任いただければと思いますので、よろしゅうございますか。 (「異議なし」と声あり)

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、できる限り織り込むようにしたいと思います。それから、ここで終わるということではなくて、一任としては取りまとめをするけれども、その先の宿題、課題をいろいろいただいていますので、それは今度、皆さんで御議論したいと思います。本専門調査会としては報告書を取りまとめる。
 この上で、企画委員会、これは副大臣、政務官の会議ですけれども、そこへ御提案し、その上で知的財産戦略本部に提出して決めていただくことになります。今回、この専門調査会にも本部委員の方が何名も御出席されていますけれども、その本部の方で見ていただく形になります。
 それでは、時間が若干残っていますが、とりまとめ以外も含めて、あと5分ぐらい時間がとれると思います。自由討論を含めて、この場で何か御意見があれば賜りたいのですが。どうでしょう、今日、御発言されていない委員の先生方、何かございませんか。迫本委員、お久しぶりです。

○迫本委員
 済みません、今まで余り出席していなかったので、あれなのですけれども、御検討の内容を聞いてすばらしいと思うので、後はどうやって実行するか。特に、知財とか人財育成というのは、急いでやっても効果が出てくるまでタイムラグがあるので、粛々とスピーディーにやっていくことが必要かなと思います。そういう意味で、工程表をつくって優先順位を決めて、チェックしながらやっていくことは非常に重要なことではないか。フォローを続けられればいいのではないかということが1点と。
 もう一つは、お金のかかることが多いので、受益者が負担するというだけではなくて、国のお金を使う必要も出てくると思うので、知財をきちっとやること自体がいかに国益に資するかを、行政全体なり政治の力を使うなりして訴えていくことが必要なのではないか。私は、知財が発展すること自体が、私の業界だけじゃなくて、日本の国益に資すると思っているので、そういう広報的な動きも御検討されたらいいのではないかなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。是非、そういうふうに進めたいと思います。久夛良木委員、お願いいたします。

○久夛良木委員
 すばらしい推進計画が出て、私は委員の1人として、知財事務局の皆様のこれまでの多大な努力に感謝を申し上げたいと思います。
 1つ意見というか、現時点での私の新たな懸念なのですが、資料4の20番というのは、企業から外部に人が流出する場合に、企業側の知的財産をいかに保護出来るかを問題視されていて、これについて企業側でどういった対応ができるかを今まで議論して来たと思うのです。この人を企業に置きかえて、対応の主体を企業から国に置きかえる、というのが今の状況ではないか? つまり、我が国が何十年もの間、一生懸命積み上げた技術、ノウハウ、そのすべてが、企業買収、もしくは岸委員が以前言及されたように、パテントトロールとかも引っくるめて、そっくりそのまま、どこかの外国に攫っていかれてしまう、という可能性が、もう懸念でなくて現実の問題として起こりつつあるのではと思います。  一方で、グローバル化が一段と進む過程の中では、知的財産の有効活用、活性化が進むという点でプラスの面もあるので、ここには一切規制をかけないという見方と、いや我が国としてはそうじゃないのだ、もっともっと我が国としてすべきことがあるのではないか、という両面があると思います。是非、その辺も含めて、来年以降、なるべく早く、この辺に関することも議論された方がいいかなと思います。
 以上です。
○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかに。西山委員、お願いします。

○西山委員
 1点だけ。人財の育成に絡めてです。
 本委員会で話し合って蓄積された知財を戦略的に展開するノウハウが、各委員が所属している業界に持ち帰って現場に反映される効果というのは大きいと思います。そして、当然その事を通じて関係分野毎に戦略的人財も育っていくのだと思います。
 人財育成のプログラムも実行に移されることは必ずプラスの効果を生むと思います。しかし、それだけでは時間がかかります。
 この意見は計画には反映されませんでしたが、海外で既に知財の上手に活用できる人財を連れてくるということも平行して考えても良いと思うのです。海外から人財を連れてくることで、ジャンプスタートすることもできます。時間を稼ぐ方法があるなら、それを実行にうつすべきだと思います。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。上條委員。

○上條委員
 私の方からは、先ほどの知財人財育成プランの話がございましたが、学の立場からも知財専門職大学院等とも連携を是非お願いしたいということを一言つけ加えさせていただきたいと思います。
 それから、私は知財のコンサルティング等を中小企業にさせていただいているのですが、例えば大きい企業が、昨今、物づくりの工場を閉鎖される。そういったところを先ほどの久夛良木委員のお話ではありませんが、海外の企業が買収しようとしているので、中小企業としてもそういった工場を跡継ぎたいという相談をよくされます。
 ですので、そういった日本の物づくりの枠やノウハウ、暗黙知が込められている工場とか物づくりの現場が、空洞化しないような施策というのは、中小企業と大企業の連携といいますか、つなぎ目を橋渡しするような施策、そういった広い意味での知財財産を守っていくということは、やっていかなければいけないと感じておりますので、一言つけ加えさせていただきたいと思います。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。大渕委員、よろしいですか。無理にということではないですけれどもね。

○大渕委員
 時間も限られていますので、さっき出ていて重要と思う点は、知的財産と言っても、特許あり、意匠あり、商標ありということで、今までどうしてもばらばらに考えてきたのですけれども、総合的に考えていくという視点。前は、うまくいかないと、日本の特許法が悪いのではないか、法律自体が悪いのではないかということに集中していたのですけれども、活用の仕方とか契約の仕方、ビジネスの戦略とか、そういうものがトータルとして当然のように共有されつつあるので、それは大変結構なことじゃないかというのが1点。
 それから、どうしても法律の方に目が行ってしまうのですけれども、気になる問題があって1か所動かすと、それは法体系全体が非常に複雑な形で組まれていますので、思いもかけないようなところに波及効果があったりする。1か所いじる際には、トータルな形で法体系を全体で見直す視点を持ちつつ、形態とかもしっかりと検討していくということではないかと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。江幡委員。

○江幡委員
 何度も申し上げていることではございますが、いろいろないい政策が出てきている中で、これをタイムリーにスピード感を持って行うということを、もっと強く意識してやっていく必要があるだろうと思っています。
 著作権の関係では、コンテンツ型サービスに対応した制度の在り方を検討するという施策もございました。これは、著作権に限る話ではなく、特許の世界でも同じような問題はあろうかと思いますので、今のこういった実態に対応しているかどうかというのは、特許の方でも検討する必要があろうかと思っております。
 以上です。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。これで皆さん、発言していただけましたか。言い足りない点はございますか。よろしいですか。ということで、皆さんの御意見、それから今後への課題ということが整理されると思います。ここで2012ということで、一たん取りまとめをしますけれども、今日、全体として御意見をいただいたことは、更にその先への課題として認識したいと思います。
 それでは、今日の会合の議題、一とおり終了いたしましたけれども、近藤前局長、ここにお越しいただいていますので、ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○近藤前局長
 前局長の近藤でございます。先生方にはこれまで御指導いただきまして、本当にありがとうございました。3月末をもちまして私も役人をやめまして、34年という霞が関では割と長い方でありますけれども、働いてきたところであります。とりわけ最後の3年間は、この知財政策に関与させていただいて、こういう形で今日も御議論いただき、まとめていただくことができたのも、本当に先生方のおかげだと心から感謝しております。
 私の後任には、皆様もよく御承知の内山局長が、私が局長のときの次長でもあったわけでございます。したがって、私が引き継ぎをするより彼の方が詳しいぐらいでございますけれども、引き続き御指導をよろしくお願いしたいと思います。私も数年後には、こっちの委員の方に座るつもりで。先生、そんなに嫌そうな顔をしないでください。ぜひ引き続きよろしくお願いします。本当にありがとうございました。

○妹尾会長
 これは余談ということなのですけれども、近藤さんが見えて、本当に大変な時代を一つひとつ前進させてくださったと思います。何と表現すればいいのか、辣腕というか、豪腕というか、強引というか、いろいろなところがありましたけれども、事務局がこれだけすごい部隊ですね。まさに戦力としてなったのは、近藤前局長が物すごいチームをつくってくださったという感じがあるし、それに支えられて我々も自由闊達な議論が進められたのだと思います。
 お礼を述べて、言葉にできない部分がたくさんありますけれども、ここで感謝を表してもう一度拍手を送りたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
 それでは、閉会に当たりまして、内山局長の方からごあいさつをお願いいたします。

○内山局長
 妹尾会長を始め、委員の皆様、本当にありがとうございます。心より感謝申し上げたいと思います。
 今後の取り扱いにつきましては、先ほど妹尾会長からお話がございましたとおり、2012計画について、知財本部で皆様方の御提言を踏まえて決定してまいりたいと思います。そして、先ほど来、委員の皆様からお話がございますように、これをいかにスピーディーに実行するかということとともに、また新しい課題にチャレンジングに取り組むことが大事でございますので、その両方をしっかり取り組んでいきたいと思います。引き続き、御指導、御支援のほどよろしくお願いしたいと思います。
 本当にありがとうございました。

○妹尾会長
 それでは、これをもちまして本日の会合を終えたいと思います。今年度の専門調査会はこれで一たん区切りということです。
 それでは、皆さん、お忙しい中、本当にありがとうございました。全員の拍手でもって終えたいと思います。どうもありがとうございました。