知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第7回)



  1. 日時 : 平成24年3月9日(金)14:00~15:47
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、江幡委員、大渕委員、小川委員、
    上條委員、岸委員、久夛良木委員、佐々木委員、高柳委員、中島委員、中村委員、
    西山委員、福島委員、山本委員
    【事務局】大串大臣政務官、近藤事務局長、上田次長、安藤参事官、髙原参事官
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)「知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)について
        (知的財産による競争力強化・国際標準化関連)
      (3)閉  会


○妹尾会長
 皆さん、こんにちは。ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第7回)会合」を開催させていただきます。御参集いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、知的財産による競争力強化・国際標準化に関しての話を、今までの議論を踏まえて取りまとめ、そして新たな知的財産推進計画の骨子に盛り込むべき事項(案)として整理したいと思っております。いわゆる取りまとめに向けた最後の議論になりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 本日は、荒井委員、出雲委員、迫本委員、渡部委員から御欠席との連絡をいただいております。それから、相澤英孝委員と佐々木委員が若干遅れるという御連絡をいただいております。
 もう一つ、15時ごろに大串大臣政務官がお見えになる予定であります。
 それでは、「知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項についてということで、議論をさせていただきたいと思います。
 今回は取りまとめの回なので、各論点ごとに時間を設けずに、全体を通して御議論いただければと思いますけれども、できれば順番にということで、議論があちこち余り飛ばないように、少し私が交通整理をさせていただきたいと思います。
 なお、今日は一応2時間の予定でおりますけれども、議論の進行ぐあいを見て、会合の終了時間を少し調整させていただこうと思っております。調整という意味は、早く終わったら早く終わろうということであります。
 それでは、全体の配付資料の確認と、事務局が前回までの皆さんの御指摘を踏まえて修正した資料について説明をいただきたいと思います。
 それでは、髙原参事官、お願いいたします。

○髙原参事官
 それでは、最初に配布資料の確認をさせていただきます。
 「議事次第」以降を御確認いただければと思います。
 資料1が「知財計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)で、前回の会合での御議論を踏まえてリバイズしたものです。この資料1につきましては、委員限りで修正箇所を表示したバージョンを置かせていただいております。
 それから、資料2が委員限りで「知財計画2011」項目別進捗状況の概要について、という資料を配らせていただいております。後ほどまた御説明しますが、現在、各府省と調整中ですので、会議後、一旦回収をさせていただきたいと考えております。
 それから、資料3も席上配布資料(委員限り)として配布させていただいておりますが、「知財計画2012」骨子素案(総論部分)でございます。
 資料4が「今後のスケジュールについて」でございます。
 続きまして、参考資料が3つほどございます。
 参考資料1が「知財計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)の概要です。
 それから、参考資料2が前回、第6回の会合でいただきました主な意見をまとめたものです。
 参考資料の最後が専門調査会の進め方、第1回の専門調査会で配布させていただいた資料の抜粋でございます。
 それから、メインテーブルのみになりますが、資料番号なしで「知財計画2012」策定に向けた意見募集の結果について、という資料を置かせていただいております。これは、前回の会合でもお配りしております。こちらにつきましては、昨日8日付けで知財本部のウェブサイトにも掲載させていただきました。
 資料の方、不足等、ございませんでしょうか。
 それでは、資料の説明に入りたいと思います。まず、現在の状況ということで、簡単に確認させていただきたいと思いますので、参考資料3をごらんいただけますでしょうか。今、この専門調査会での議論が、全体のプロセスの中でどの段階にあるのかという確認でございます。

○妹尾会長
 ちょっといいですか。これは、座長として皆さんに強調したいのは、今のこの取りまとめの位置付けはどうなのかということを是非御確認いただきたいと思います。すなわち、これは9回裏の議論だということでありますけれども、この後、4月、5月と、更に事項の決定に至っての次のラウンドがあるとお考えいただければと思います。ということで、取りまとめて、これで全部が終わってしまうということでもない。しかし、ある段階での取りまとめなので、その位置付けは是非御確認いただきたいと思います。
 ごめんなさい、ちょっとインターベインしましたけれども、よろしくお願いします。

○髙原参事官
 ポイントは会長から既にお話がありましたので、説明は簡潔にするようにいたします。毎年、知財計画につきましては、秋口に検討を始めまして、年明けの3月中には本部会合で骨子を決定いたします。その後、5月ないし6月に最終的な知財計画本体を再度、本部会合で決定していただくという流れになっております。
 本年につきましては、この参考資料3にありますように、10月31日の第1回会合で御議論を開始していただきました。以降、「知財計画2011」の進捗状況の確認のための府省ヒアリング、それから委員の皆様からの御意見を踏まえまして課題の抽出、更には、知財人財育成プラン検討ワーキンググループからのプラン案の報告も行いまして、検討を進めていただいたということでございます。そして、2月20日の第5回の会合で、骨子に盛り込むべき事項(案)を提示させていただきまして、第5回、第6回と御議論いただき、本日に至っているということでございます。
 本年も3月下旬に、企画委員会、それから本会合で「知財計画2012」の骨子を御決定いただく予定です。本日はそれに向けて、本専門調査会としての御提言、骨子に盛り込むべき事項(案)の取りまとめをしていただきたいと考えているところでございます。
 続きまして、資料2をごらんいただけますでしょうか。「知財計画2011」の進捗状況の現状について、御報告いたします。
 「知財計画2011」の実施状況につきましては、重点的な施策をピックアップしまして、第2回の会合で各府省からヒアリングを行いましたが、この資料2は、「知財計画2011」のうち、戦略1、国際標準化のステージアップ戦略及び戦略2、知財イノベーション競争戦略、これらに含まれるすべての施策について、現時点での進捗状況を記載した暫定版ということになります。
 2ページ以降には、各施策の項目に対応して、「進捗状況の評価」、〇、×、△という欄がございます。この評価を行う上で、各府省での今年度末、つまり2011年度末までの取組状況をしっかり把握する必要がありますが、現在、この内容につきまして各関係府省に照会し、あるいは、記載ぶりについて調整をしているところです。本日は、あくまで調整途中ということですので、委員の方の机上のみの配布とさせていただいております。
 次に、内容面の概観でございます。1ページ目に戻っていただきますと、全体の状況と、第2回の会合でヒアリングをしました重点的な施策の個別の進捗状況とをまとめております。各施策につきまして、「知財計画2011」の工程表に関する各府省からの進捗状況報告に基づいて、知財事務局としての評価を記載しております。〇が達成できた。△がおおむね達成しているが、更に進める必要がある。それから、×は未達成という3段階になります。
 1枚目の1.をごらんいただきますと、現時点で全項目のうち9割5分程度が〇。5分程度が△。×はなしという結果になっております。2.につきましては、ヒアリングの対象とした項目について、その評価結果を示しております。
 なお、2.のリストにある施策項目は、2ページ以降の表のどの項目に該当しているのかを分かりやすくするために、対応する施策の項目名の欄を黄色で色付けしております。例えば、6ページをごらんください。項目名12のところが黄色になっておりますけれども、この色付けの意味は、今申し上げましたとおりです。
 1ページに書いておりますとおり、重点的施策も含めましておおむね順調に進捗してきていると考えておりますが、達成できている、あるいは、おおむね達成されているという評価の事項につきましても、今後の課題については、「知財計画2012」に反映し、しっかり取り組んでいく必要があると考えております。
 個別の事項につきましては、先ほど申し上げましたように、事務局にお問い合わせいただければと考えております。この進捗状況の結果は、今月下旬に予定されております企画委員会、本部会合で公表し、決定することになりますが、そこに至るまでは、関係府省との関係もありますので、取扱いに注意をして進めようということでございます。今後、企画委員会に向けて、府省との調整も進みましたら、事務局からも皆様に御確認いただきたいと考えておりますので、御不明な点などございましたら、事務局までおしらせいただければ幸いでございます。
 資料2の説明は以上でございます。

○妹尾会長
 1点、私の方からですが、この資料自身はまだ中途の段階という未定稿だと伺っています。席上配付資料で委員限りで要回収となっておりますけれども、もし皆さんの方で個別に確認したいという方がいらっしゃいましたら、事務局の方まで言っていただければ対応するということを先ほど確認しましたので、もし先生方の方で何かありましたら、事務局の方にお申し出ください。では。

○髙原参事官
 それでは、資料1につきまして御説明いたします。「知財計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)について、でございます。メインテーブルに配布させていただいております修正箇所表示版にて御確認いただければと思います。
 前回の御議論を踏まえて修正した箇所を赤で示しております。最初が4ページ、情勢認識の部分です。ちょうど中ほどですけれども、前回あるいは前々回と技術流出について御議論いただきました。特に前回、技術流出という外向きの流れだけではなくて、我が国への知の流入、内向きの流れというものも考慮する必要があるのではないかという御指摘もございました。それを受けまして、「我が国への『知』の流入を促進することが重要である。」という一文を加えております。
 続きまして、施策の各論に関する部分です。5ページの一番初めの項目です。特許制度の国際調和の推進。前回の資料では、項目名も含めまして、「リード」という言葉を使っておりましたけれども、しっかり引っ張っていくことが重要だということで、「推進する」という文言に修正しております。
 次は、6ページから7ページにかけてです。前回も、グローバルな知財システムの構築という観点ではエンフォースメントも非常に重要である。この施策が欠けているのではないかという御指摘もございました。これを受けまして、模倣品・海賊版対策の推進に関する施策、一つには、ACTAの早期締結・発効に向けた準備、アウトリーチに関するもの。それから、模倣品・海賊版の防止に向けた諸外国関係者との協議、セミナーなどの開催を国内外で積極的に行うという施策を加えております。
 ちなみに、ACTAでございますけれども、本日朝の定例閣議にて、ACTAの締結について国会承認を求める件について、ということで閣議決定されております。
 7ページに、前回、特許庁からの報告にも含まれておりました、「職務発明制度を始めとした知財管理の在り方の検討」という新たな施策を加えております。
 少し飛びまして11ページの中ほど、「効率的な研究活動への枠組みの推進」というタイトルの施策です。前回の会合で、内容がよく分からない、また、「リサーチ・アドミニストレーター」を前面に出した方がいいのではないかという指摘がございましたので、これを踏まえまして修文をいたしました。リサーチ・アドミニストレーターを研究開発支援の専門職として位置付け、定着に向けて支援していくという内容です。
 最後は、14ページの中ほどです。前回、知財マネジメント戦略研究拠点に関して記載が統一されていない部分がありました。また、書き振りが弱いという御指摘もありました。それを受けて修文をしたものです。
 資料1につきまして、変更箇所は以上のとおりですが、この内容に基づきまして概要をまとめましたのが、参考資料1でございます。
 一番上の枠内には、骨子に盛り込むべき事項(案)全体を通してのポイント。
 その下には、3つの柱毎に情勢認識及び背景、さらに、赤枠の中に主な施策の内容を記載しております。
 資料1及び参考資料1につきましては以上になります。
 最後に、資料3、「知財計画2012」骨子素案(総論部分)です。こちらは、前回の調査会でも委員の皆様限りということで配布させていただいておりました。この資料も今月下旬に予定しております企画委員会、本部会合で公表いたします。前回の会合でお配りしたものから、各府省との調整の過程で若干修正が入っておりますので、改めて配布させていただいております。委員の皆様の思いをできるだけ反映させていただいた積りではおりますが、何か御意見などございましたら、事務局までお寄せいただければと考えております。
 資料の説明は以上でございます。骨子に盛り込むべき事項(案)につきまして、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。これからこの骨子に盛り込むべき事項(案)ということについて、最終的な取りまとめの議論をしたいのですが、2つほどお願いしたいと思います。これは、あっちへ行ったりこっちへ行ったりするといけないので、少し交通整理をさせていただきながら議論したいと思っているのが1点目。
 もう一つは、今日、もしここでの御議論がそれほど時間をとらなければ、一旦取りまとめをして、その後、できれば来年度に向けて皆さんのフリーディスカッションあるいは問題提起という時間を設けたいと私の方では考えています。事務局、よろしいですね。というスタイルで進めさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、早速1つ目として、骨子に盛り込むべき事項(案)、いかがでしょうか。最初の情勢認識、前回、大分修文したわけですけれども、4ページまで。4ページに「我が国への『知』の流入を促進する」ということを取り込ませていただきました。これについては、西山委員、いかがですか。

○西山委員
 ありがとうございます。

○妹尾会長
 こういう形でよろしいですか。

○西山委員
 はい。

○妹尾会長
 ほか、ここまでの情勢認識のところで、皆さんの方から何かございますでしょうか。情勢認識は、細かく書こうと思えば幾らでも書けてしまうし、かといって余りはしょってしまうといけないし、あんばいが難しいところなのですが、前回、皆さんの方でこのぐらいはということで言っていただいたと思います。
 よろしければ、各柱立ての方です。第1番目、グローバル時代の知財システムを追求する。前回、これは赤字が重なってすごい話になっていましたけれども、見やすくすっきりしましたけれども、5ページから7ページまでの3ページ、委員の先生方の御提言を最大限盛り込んでいると思います。あるいは、逆に盛り込み過ぎだからすっきりしろという御指摘がありましたけれども、相澤先生、お願いします。

○相澤(益)委員
 内容的にはこれで整ってきたと思います。ただ1点、表現上の問題なのですけれども、5ページの1ポツのタイトルですが、何でここが「議論の推進」なのか。全体的に見ると何となく勢いが足りないのではないか。

○妹尾会長
 これは、議論すればいいみたいな話になってしまいますね。

○相澤(益)委員
 と思います。これも表現上の問題で、ちょっと工夫していただくと。

○妹尾会長
 議論のための議論になってしまってもいけないので、これはおっしゃるとおりですね。これ、工夫しましょうというか、議論に終わらない覚悟をしましょうということですね。そうしたいと思います。相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 前回、特許庁から意匠について、アイコンを意匠法で十分に保護する方向性が出てきていたのに書かれていません。意匠制度は何とかしなければいけない状況なので、今年、出された早期に実現できる改善はできるだけ今年実行することが必要だと思います。

○妹尾会長
 いかがですか。

○髙原参事官
 今、相澤先生から御指摘いただきました点につきましては、しっかりと取り組む必要があると認識しております。「知財計画2011」にも盛り込んでおりましたが、更に強く進めるということで、御指摘を踏まえ、資料1でも対応させていただきます。

○妹尾会長
 今、相澤先生がおっしゃられたみたいに、今年出てきた話題は今年のうちに手をつけないと、また手遅れになるという感じですね。

○相澤(英)委員
 検討が始まったのですから、早期に実現していただいた方が良いと思います。
 それから、職務発明に関する書きぶりがいかにもあいまいです。それから、新興国の職務発明制度を研究することにどういう意味があるのかよくわかりません。
 これは、産業界の方から国内における研究に影響を与えるという議論が出ていたので、前向きな書きぶりにしていただいた方がよろしいと思います。

○妹尾会長
 高柳委員、お願いします。

○高柳委員
 今の相澤委員に我々も本当に同感です。知財管理の在り方というと、項目を起こしていただいたのは非常にありがたいのですが、職務発明制度35条が日本の競争力にとっていいのかどうかという、議論があってもいいと思うのですけれども、根本的・抜本的な意気込みで見直していただきたいというのが産業界の意向だと思います。そうですね。

○佐々木委員
 はい。

○妹尾会長
 佐々木委員も御賛同。福島委員も御賛同ですか。

○福島委員
 はい。

○妹尾会長
 ということで。これは江幡委員も何か御発言。

○江幡委員
 いえ、特にありません。

○妹尾会長
 皆さんの御意向ですが、いかがでしょうか。

○髙原参事官
 今回いただきました意見も踏まえまして、関係府省ともよく相談をさせていただきます。

○安藤参事官
 補足ですが、しっかりとお気持ちを書き込めるようにいたしますが、議論がいろいろとございますので、その中で、キックオフするという決意の部分をしっかり入れたいと思います。よろしくお願いします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。よろしゅうございますか。委員会の大勢としては、是非酌み取っていただきたいということですね。

○上田次長
 そこのところを我々としてしっかり受けとめていきたいと思います。前回の御議論の中で、特許庁からも産業界からもそういう意見がある。一方、ほかの意見もあるという指摘があって、その辺のところもよく踏まえていく必要があると思っています。今日、先生方からいただいた御意見を、我々としてもしっかりと受けとめて対応していきたいと思います。

○妹尾会長
 よろしくお願いします。少なくとも大勢として、皆さん強い意向をお持ちになって、なおかつ反対はお一人もいないということを強く当局に認識していただければと思います。
 それでは、ほかに5、6、7ページ、いかがでしょうか。相澤委員。

○相澤(英)委員
 前回も指摘したのですが、WTOの中国の商標に関するパネルの判断への対応をどうするか、考えていただいた方がいいと思います。ACTAなどで各国に対して水際を含めた模倣品の流通の防止を呼びかけているのですから、日本の水際措置も考えていただいた方が良いと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかによろしいですか。
 では、先へ進ませていただきたいと思います。8ページ以降、第2.イノベーションを創出するために総合的な知財マネジメントを積極的に活用するというところです。中島委員、お願いします。

○中島委員
 8ページの最後から9ページの初め2行にかけての技術流出防止に向けた対応の強化です。この部分は赤字になっていませんので、前々回かもしれなくて恐縮です。
 タイトルが「対応の強化」ということになっているのですが、本文の方は調査・分析を行うということで、中身との整合性の問題なのか、姿勢の問題なのか、その辺が今のタイトルですと、本文の方はこの2行がむしろ逆になるのではないか。技術流出に関する実態について調査・分析を行って、これに関する取り組みを進めるとすると、タイトルと一致するのです。今の本文ですと、タイトルは技術流出防止に向けた調査・分析を行うということかなと思います。

○妹尾会長
 いかがでしょうか。

○上田次長
 今、御指摘いただいた調査・分析を行い、取り組みを進めるという方向で関係省庁と相談させていただきます。

○中島委員
 ありがとうございます。

○妹尾会長
 高柳委員。

○高柳委員
 昨年もそうでしたけれども、中小・ベンチャー企業の知財活動の強化とか、「中小・ベンチャー」という言葉がずっと出てくるのです。情勢認識のところでは、大企業、更に中小・ベンチャーとなっているのですけれども、具体的な施策の方ではみんな中小・ベンチャーという言葉になっていますね。
 私、先日、私の後輩が起こしたベンチャーに相談を求められて行ったのですけれども、七、八年で急速に雇用を増やして、今150人ぐらいの企業になっています。私はベンチャーだと思って行ったのですけれども、彼らが言うには分類上はもう大企業になってしまった。ところが、欧米とのいろいろな契約やら何やら物すごく必要で、これからもっと雇用を拡大して強化しようという会社で、こういうものを求めているのですけれども、国の推進計画に言う中小・ベンチャーという定義は、そういう企業は外れてしまうのか。
 もし、それが外れてしまうのだったら、これからしていこうとするところに、こういうものが当てられなくて本当に日本は元気になるのか、競争力強化になるのかということがちょっと心配なので、ここで言っているベンチャーはともかく、中小企業という定義がどこまで含むのか、あるいはもうそれ以上だったら外れてしまうのかというのをちょっとお聞きしたいのですが。

○安藤参事官
 中小企業の定義は、昭和38年制定の中小企業基本法の定義が一番の大もとです。他方、なぜここで「中小・ベンチャー」と表現しているかということですが、世界の中ではオープン・イノベーションが進んできています。そもそも創業前は、企業ではなく、「中小企業」に当てはまらないのですが、創業前段階のゼロステージの段階からきっちりと応援して、知財戦略も練って、その上で会社を立ち上げて大きく育てていく。しかも、急速にグローバルに資金調達をした上で、中小企業の定義を超えていくようなところまで狙っていくということが重要になってきています。実際に、中小企業庁の方でも、中小企業基本法を基本としつつ、ベンチャーに関する施策については、例えば、投資育成の特例などでは抜いている部分があって、更に上のところまで応援できるようにしています。一方、中堅企業になると、施策のバランスの問題がありますので、中小企業施策の対象外となりますが、「中小・ベンチャー」という表現で意識していますのは、中小企業の定義の手前のところと、そこから大きくなっていくところまで意識して、しっかりと知財の対策に取り込んでいこうという思いです。

○高柳委員
 そうすると、ここで言っている中小というのは、いわゆる中小と言って、大企業でも小さいところも含めて支援していくと考えてよろしいわけですね。わかりました。

○妹尾会長
 こう考えていいですか。中小前ベンチャーと中小後ベンチャー。

○安藤参事官
 いえ、中小企業段階のベンチャーもあります。

○高柳委員
 中堅、中小・ベンチャーという表現のところもあるのです。情勢認識では大企業が出てきて、中では中小・ベンチャーと一貫してきているのですけれども、中堅という言葉も1か所出てきているのです。

○妹尾会長
 確かにおっしゃるとおりで、私も委員の時代に中堅のところがぽんと抜けているのが一番怖いですねという話を何回かしたことがあるのですけれども、この辺の整理学、少し見直さないといけないかもしれないですね。

○近藤局長
 法律上、中堅企業の定義がないのです。施策の中で「中堅」という話はどこかにありましたか。

○高柳委員
 1か所ありました。

○近藤局長
 これは直します。つい役人的になって申し訳ないですけれども、中堅という法律上の定義がないので、中小・ベンチャー企業なのです。ということで、これから中小企業になろうとするもの、そして、中小企業になった後、大企業にまでなるものも含めて、「中小・ベンチャー企業」を支援しましょうという積もりで書いております。中堅企業については、その定義がないものだから、それで書いていないということです。決して除外しているわけではないです。

○高柳委員
 17ページにあります。

○近藤局長
 ありますね。工夫します。気持ちは割と広目にとろうと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。引き続き、佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 今、検討されている標準化の方は割とクローズドでやられているのですけれども、8ページの知財戦略の研究の推進について、これは、具体的に知財研が発展的にそういうふうに構成されていくのかという議論がありましたけれども、イメージ的には、これは比較的オープンな感じがするのです。あと、解釈でどうにでもなるということなのかもしれませんが、私のイメージは、これはマネジメントというより知財機能の研究・分析をして、日本の企業の競争力の観点のためだけに特化する、比較的クローズドなものとイメージしていました。
 それが正しいかどうかは別にして、そうなると、営業秘密はどうなのかということも、こういう中に入ってくるのではないかと思って、今、見ていたのですが、そちらまで包含することと認識していいのか、それとも、それはそれで全く別のものと、今後、更に検討を加えられていく中でなっていくのか。つまり、国家の競争戦略を担うような非常に機密性の高いものをというイメージで、私はお願いしてきたつもりなのですけれども、この辺は御説明いただくだけで結構ですが。

○上田次長
 御意見ありがとうございます。確かにおっしゃるように、我々の目的は、日本の産業・企業の競争力強化という観点でございます。そういう意味では、委員おっしゃるように、きちんとクローズにしていくところはクローズにしていくことが1つ必要だと思います。
 一方で、ここ、あるいはワーキンググループでも議論があったと思うのですけれども、企業の活動はグローバルでありまして、企業の海外に展開する方もこういう情報をシェアした方がいいという御議論もありました。あるいは、こういう研究所を海外に情報発信していって、海外の新たな研究の動きも取り込んでいく方が、結局クオリティーの高い研究ができるという議論もあります。
 この辺のところは、非常に兼ね合いが難しいところだと思っていまして、営業秘密をどういうふうに対象として扱っていくかということ、あるいはこの中で対応として扱っていくかというところも、今後、そういう観点をよく考えながら進めていきたいと思っています。

○妹尾会長
 よろしいですか。それでは、上條委員、お願いします。

○上條委員
 私の方からは、4.中小・ベンチャー企業の知財活動の強化の項目でお伺いしたかったのですが、11、12、13ページに関してです。
 今後、中小・ベンチャー企業の戦略的な国際標準化に関する取組の支援という項目が、12ページの下から2つ目のパラグラフにあったかと思いますが、今後、例えば新しい標準化のTCを立ち上げたり、中小・ベンチャーが国際標準化策定の現場へ出て行きたいという状況もかんがみられると思います。
 そういった中小やベンチャーに対しての国際標準化に関する知識とか取組みの仕方等のフォローというのは、この項目に含まれると思われるのですが、そのことと、この項目の最後の13ページ、中小企業の知的財産に対する研修機会の促進といった、実際に情報や知識をシェアするような場所をつくるという、知財に関しては具体的な記述があったり、技術流出防止に向けた話や模倣品対策等は、最後の中小企業の知的財産に対する研修機会の促進の中に、新興国の産業財産権制度や模倣対策セミナーの充実などが実際書かれています。
 こういった国際標準化に関する知識の啓蒙と言うと言葉がよくないかもしれませんが、セミナーを開くとか、中小・ベンチャーを対象に、業界団体もなかなか入っていけないような中小企業が標準化に何か戦略を持ちたいときに、どうしたらいいかということに対するセミナーを開くといった内容を入れ込んでいただけるというのは、今から無理かなと思いますが、必要なことではないかと考えます。
 この取組みの支援の中に含まれると言われてしまうと、それまでなのですけれども、具体的にセミナーを開くということを一言入れていただくことを、もしお願いできればと思いまして、発言させていただきました。

○妹尾会長
 これについてはいかがでしょう。

○上田次長
 取組みの支援の中には、まさにそういうことが含まれております。文言上、どうできるかは、できるだけ努力してみたいと思います。

○上條委員
 実際にJISCさんとかJSAさんで研修というのは既に開かれていらっしゃいますので、そういったところで特に中小・ベンチャーに特化したセミナーを開いていただくことは、現実にできるかなと思いますので、是非御検討いただければと思います。

○妹尾会長
 私が申し上げていいか悪いかなのですけれども、13ページの、今、上條先生が触れられた中小企業の知的財産に関する研修の中に、今や知財マネジメントは知財権の研修だけではだめで、標準化の意味もちゃんと研修の中に織り込まないと、いわばバランスがとれない時代に入ってきていますね。
 ですから、今、次長がおっしゃられたみたいに、12ページの中にそれが入っていることと同時に、13ページの中小企業の知財に関する研修機会の中が、従来型の産業財産権の制度解説だけではなくて、国際標準や何かも含めた知財マネジメント全体の世界で動いていることの研修内容になっていただければ、これが一番いいということなのかもしれないですね。

○上田次長
 そこは両方工夫させていただきます。

○妹尾会長
 では、事務局で工夫していただくことにしたいと思います。それでは、小川委員、お願いします。

○小川委員
 今の話とちょっと関係しますが、先ほど佐々木委員が御質問なさったこと。別に佐々木委員の会社のモデルをちゃんと分析してオープンにしろということではないと思います。要するに、世界じゅうに我々の知らないようなモデルがいっぱいあって、彼らは常識なのだけれども、我々にとって常識になっていない。常識となった定石を知らずしてグローバル市場へ出て行けないので、これをちゃんと分析・調査して皆さんに公開するのが目的である、と考えてよろしいのですね。

○上田次長
 勿論、そうです。

○小川委員
 わかりました。
 知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)については、10ページに記載された認証スキームについてご質問したい。これも何かの事情があってこのような表現にしたのかもしれませんが、これでは結局何をやるのかがよくわからないのではないでしょうか。ここには認証機関の技能の向上と支援をする、とだけ書かれていますが、これでは認証というのを何のためにやるのか、またこれが産業競争力とどのようなメカニズムで繋がるのか、などをまず書かないと、関連府省は現状から前へ進めないのではないでしょうか。
 例えばこれまで何度か話題になりましたが、太陽光発電システムの場合に、日本企業の製品の寿命は10年と表示され、途上国企業のそれが25年と記載されて売られています。しかも値段が非常に安い。したがって日本の国内市場ですら、日本製が市場シェアを落としはじめました。寿命の測定法は一応標準化されていますが、どんな基準で寿命を決めるかの公的基準が無く、したがって公的な認証機関もありません。日本の誠実なモノづくりが顧客の価値へ伝える仕組みがないのです。
 もうひとつの事例をご紹介したい。確か2002、2003年ごろだったでしょうか、アメリカの携帯電話に使うリチウムイオン電池が、それまでの日本製から途上国製に切り替わりました。ここから日本企業のシェアがどんどん落ちるわけです。ところが、途上国製のリチウムイオン電池に障害が多発して危険な事故になりかねない事態となりました。そこでアメリカのオペレータがIEEEの場で安全性の評価法の規格を決め、安全基準を決めて認証制度をつくったところ、日本企業のシェアが100%近いレベルへ回復したのです。最近では、リチウムイオン電池を使う電気自動車でも安全性に対する類似の懸念があり、低コストの途上国企業の電池を使おうとしているアメリカ自動車メーカがかなり慎重な対応をしている、と言われています。もちろん日本製は安全との認識が広く理解されています。
 しかしながら、日本の誠実なモノづくりや日本企業が持つ技術優位性は、市場文化として定着させなければ、これをグローバル市場の競争力へ、そして経済的な価値へ転換させることはできません。単に品質が良いと自己満足で終わるのではなく、競争力へ結び付けるには、試験法の標準化に基づく高度な基準の設定、そしてこの基準を満たしているか否かの認証機関が必要になるので。こんな仕組みが日本主導で実現すべきである、という視点から認証を位置付けて下さるよう、お願い申し上げます。この積み重ねで日本が必ず元気になるはずですので。

○妹尾会長
 いかがでしょう。

○上田次長
 ありがとうございます。今おっしゃった趣旨を我々もまさに共有しているところでありまして、その辺は少し反映できるように努力してみます。

○小川委員
 お願いいたします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。背後の理由がわからないと、表面的に読んで理解できるかどうか、いろいろありますので、工夫していただくことにしましょう。久夛良木委員、お願いします。

○久夛良木委員
 11ページの上のところですが、ライフサイエンス分野での先行事例を参考にとありますね。そこで投資機関の支援を通じてというくだりがあるのですが、ここの御説明をちょっとお願いしたいのです。
 これは、あるテーマに対して、資金とか資本をロングレンジで投下するということをイメージしてお考えになっているのか、それともより活性化するために、ある意味でファンドやデリバティブも含めたような短期資金も呼び込んで活性化しようとされておられるのか、どのあたりをスコープされておられて、こういう記述になったのかをお聞かせ願えますか。

○妹尾会長
 髙原さん。

○髙原参事官
 第2回の専門調査会で、文部科学省からおいでいただいたときに話が若干ございました。先ほど、久夛良木委員に御指摘いただきました後者の方になります。

○妹尾会長
 よろしいですか。

○久夛良木委員
 これは、ある意味でいろいろなものを動かすためには非常にいい仕組みであると思うのですが、少し議論が足らなかったような気がします。この部分については、例えばいろいろな投資ファンドとかパテントトロールとかも含めて、もっと大きな枠組みが世界規模で動いているわけで、そこの部分に余り触れずに、さらっとこういうふうに出てくるのもいかがなものかと思うのです。
 これには戦略とか、あるときには大胆な戦術も必要になってくると思います。この中で短期と書いてあるので、すぐに何らかの行動を起こす可能性があるとするならば、どういったことをおやりになられるのか、もしくは我々がそこに向かってどういう認識をしているのか、もうちょっと議論した方がよかったかなと思いました。

○妹尾会長
 これは、久夛良木さん、この後、一旦取りまとめをした後で、今後の話としてもう一度問題提起をしていただけると助かります。ありがとうございます。ほか、よろしいですか。相澤委員。

○相澤(英)委員
 議論を纏める時期であるとくぎを刺されたのですが、一言意見を申し上げます。中小企業にとって営業秘密の管理というのは非常に大変なことだと思います。ですから、パテントポリシーとの選択についてきちっと教えてあげないといけないと思います。

○妹尾会長
 大企業はいいですがと言うけれども、大企業でもそれがちゃんとできているところは少ないという感じは、実際はお持ちじゃないかと思います。ほか、いかがでしょうか。
 よろしければ13ページ以降に入りたいと思いますが、次世代の知財人材を育成し確保する。それから、17ページの途中から、先ほど高柳委員が御指摘くださった中堅の話があるので、これは工夫していただくことになっております。18ページに至るまで、ここのところで何かございますでしょうか。久夛良木委員、お願いします。

○久夛良木委員
 16ページ、事業起点型の知財戦略に資する特許審査官の育成。ここに書かれていることというのは、皆さん議論されてきたところですが、より強い特許、もしくはパテントポートフォリオをどう組むかという点では、勿論企業側も考えていますし、専任の弁理士さんも含めて、様々な特許戦略を駆使して特許庁に申請していると思うのです。
 そこで、ここに書いてある後段の部分ですが、強い特許を考えることができる、ビジネスの素養を持った特許審査官の育成を図る。これはどういうふうに読み解くかということなのです。本来、公平かつトランスペアレントであるべき各国の特許庁が、各国のクライアントの意見を聞きながら申請された特許明細書を強化する。一見、非常にありがたいことに見えますが、果たしてこういう書き方というのはいかがなものか。この前段と後段とは、実は分かれているのではないかと思います。まずは、企業側であるとか大学であるとかが、専任の弁理士の方も含めて、戦略や戦術も含めて特許を提出する。
 各国の特許庁は、その裏とか世界で今何が起こっているのかを、それ以上にいつも知悉していて、こう来たか、ここの部分はこうだな、と違う立場、公平な立場で審査することが必要なのではないかと思います。場合によってはより深く読み解く。いろいろ関連するような周辺特許、もしくは一見関連がなさそうなものが出てきたときにも、その裏を深く読み解く。そのためには特許庁の審査担当者の方もどんどん新しい動きを勉強される。世の中は急激に変わっていますから、そういったことが必要なのではないかと私は思っているのです。
 いろいろ言いましたが、この文章だけですと、ちょっとミスリーディングじゃないかと思います。

○相澤(英)委員
 私も同じ意見です。日本の審査官が日本企業の国際競争力を考えるという話になると、ミスリーディングです。
 もう一つ、ここで弁理士さんの役割が明確にされていないと思います。代理人というのは審査や審判の質を上げる上でも非常に重要です。その点を強調することも必要であると思います。

○妹尾会長
 これはおっしゃるとおりで、ミスリードの嫌いがありますね。これはちょっと工夫しませんか。

○上田次長
 わかりました。勿論、特許の審査を日本企業のためというのではなくて、公明公正にやるものだと思っています。さっき久夛良木委員がおっしゃられたように、審査はそうなのですが、知見としてそういうものをしっかり持っておくということは、人材育成の観点としては大事だと思いますので、そこのところをもう少しきちんと分けて整理したいと思います。

○妹尾会長
 ミスリードは避けたいですね。そうしましょう。はい。

○髙原参事官
 今、複数の委員から御指摘いただいたとおり、公平性という観点は、特許審査をする上で基本でございます。他方で、余りにも杓子定規過ぎてもいけないのではないか。この施策の中には、パテントポートフォリオという言葉もあります。類似案件の審査をする際に、必要以上に画一的になり過ぎないという意識も必要ではないかということもあって書いたところではございますが、誤解を招かないように、表現については整理をさせていただきます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。久夛良木委員。

○久夛良木委員
 せっかくの機会なので。クライアント側の弁理士に比べても、特許庁の審査官の方々はすごく柔軟だなと思います。企業を出られた方が予備審査をやっておられるケースもあるので、物すごく知識レベルが高い。ただ、カテゴリーごとに担当が細かく分かれ過ぎているのではと危惧しています。パテントポートフォリオを考えて、ちょっと未来の進化を見据えながら特許を出すとしても、その意図をうまく読み解けない、関連するシステム全体を読み解けないことも起こりがちなのです。このためには、横断的にいろいろな技術を広く見ることができるような審査官の育成を図っていただきたいと思います。どこかに書いてあったから、いいと思うのですが、それを是非お願いいたしたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。中島委員、何か一言ございますか。一部にスタボアな方がいらっしゃるということのようです。特にないですか。
 それでは、一通り皆さんに吟味いただきました。18ページまでの修文の箇所、御指摘の部分は、事務局に更に一層磨きをかけていただくということで対応したいと思います。今日、御欠席の委員の方からも御指摘があれば受けたいと思います。これらのものについて、早速ですが、取りまとめということにさせていただきたいのですが、最終的な今の御指摘についての修文、その他は私の方で調整しつつ、最終的に持ち込みたいと思うので、よろしければ御一任いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、必要な修正を行った上で、本専門調査会としての報告書を取りまとめて、次回の知的財産戦略本部に提出したいと思います。ちょうど1時間で、御協力いただいたおかげで、いい議論ができたと思います。
 後半、私の方でお願いしたいのは、今のは相澤委員御指摘のように、9回裏といっても、次の試合に向けての反省と課題を、せっかくの機会なので少し御発言いただければなと思っています。今回ではないけれども、次回とか今後に向かっての議論、ずっと7回やったことを、あるいは7回の最中にも次々にいろいろな変化が起こっています。それらについて御指摘を賜ればと思います。相澤先生、もうそろそろ御退席と伺っているので、先生、最初に口火を切っていただけませんか。無茶振りで申し訳ないですけれども、もしよろしければ。

○相澤(益)委員
 今日まとめたものを最終的に体裁を含めて、どう整理するかという観点から1つだけ申し上げたい。
 それは、これだけ絞ってきても、細かい施策が並んでいるという印象をぬぐえないのではないかと思うのです。例えば最後の方で議論になったような人材関係のところでも、ねらっているところが同じなのに、施策としては分かれている。ですから、今後のまとめでいくときには、もう少し太目に、そして明確に、この期間、何をするのかということがわかるような束ねをした方がよろしいのではないかという印象を持ちました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。できる施策しか並べないと、できることしか取り上げないという矮小化された議論になってしまう。そのリスクは避けようということですね。俗に言う骨太なのかもしれませんけれども、その強調をしたいということだと思います。ありがとうございます。
 ちょうどタイミングよく政務官がいらっしゃったので。今、2012の骨子に盛り込むべき事項というものが取りまとめ、皆さんの御承認を得て、私が一任をいただきました。この後、今日の取りまとめに織り込むという意味ではなくて、今後に向けての皆さんが考えられている問題とか課題を御発言いただこうと思っています。ちょうどその境のところ、相澤先生が御発言されたばかりなので、一旦置いて、政務官から何かごあいさつを賜ることはできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○大串大臣政務官
 遅れて到着しまして大変恐縮でございます。担当政務官の大串でございます。
 国際標準化専門調査会の皆様には、これまでも6回にわたって回を重ねていただきまして、標準化に向けた我が国の位置取りに関して大変御熱心な議論をいただきまして、ありがとうございます。今日は、これまでやりとりしていただいた盛り込むべき事項をベースに、2012の中に取り込むべく、そして更に全体の2012を高めていくように頑張ってまいりたいと思う次第でございます。
 私、国家戦略会議の方も担当をさせていただいておりますけれども、日本のものづくりにおける力と、それと加えて知の力といいますか、ソフトの面での力が相まっていかないと、31年ぶりに貿易赤字が見られた中においては、日本の先行きを見通すことは難しいと思います。ですので、この国際標準化専門調査会の皆様に議論いただいている内容は、国家戦略という意味においても大変貴重なものだと私は思っておりまして、是非これに限らず、今後におきましても大きな力を賜れればと思っている次第でございます。
 2012を取りまとめていく過程において、まだ少し時間がございますので、またいろいろな御助言等々をいただけますように心からお願い申し上げまして、遅れて参りまして大変恐縮でございますが、私からのごあいさつにかえさせていただきます。よろしくお願いします。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。励ましのお言葉をいただきました。知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会としては、なお一層の努力を続けていきたいと思います。
 ということで、骨子に盛り込むべき事項を超えて、せっかく政務官もいらしているので、今から皆さんの方から問題意識等をお出しいただければと思います。それじゃ、お一人ずつということにしますか、あるいは相澤先生から行きますか。

○相澤(英)委員
 相澤先生から御指摘があったのですが、達成度資料を見ると、目標は95%達成していることになっています。おおむね達成しているのに、何がよくなったのかよくわからない気がします。
 そこで、問題は、基準を決めていないので、どういう効果があったかということが、明確でなくなっていると思います。
 政策全体の評価基準の議論をおいて、個別についても、旧来の法制度にこだわることを脱却していかないと、前に進まないと思います。今、政務官から御指摘ありましたように、30年ぶりに貿易赤字になったということは、産業構造についても大きな変化の問題の可能性があるということだと思います。
 そういう状況で、法制度的対応が、小修正で十分なのかということは考えていただいた方が良いと思います。変化に対応した思い切った大修正も必要であると思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。相澤委員、よろしいですか。大修正をするに当たっても、修正のやり方自体については何か御発言があるのではないでしょうか。

○相澤(英)委員
 経済のダイナミックな変化に対応した法改正をしていかなければならないと思います。
 例えば、日本の出願は減っているのだけれども、アメリカへの出願は増えているわけです。どういうことが起きているかというと、日本よりもアメリカの制度がより魅力的になっていることを表しています。GDP比がそう大きく動いているわけでもないのに、大きく変化をしているということは、日本の知財制度はシステムとしての魅力も落ちているので、どうしたら魅力がある制度になるのかを考えていくべきです。
 知的財産のシステムについても、西山委員から御指摘がありましたけれども、市場があります。その市場が、喪失していっているのではないかと思います。それに対応して、制度を考えていく必要があると思います。
 今の時代は、司法制度を含めた国の制度自体が国際競争の時代にあるのではないかと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。引き続き、江幡委員、お願いします。

○江幡委員
 フリーディスカッションということですので、まとまった意見ではありませんが、2つほど、感じていることを申し上げます。

 一つは、制度改正に関して求められているスピード感が大分変わってきているのではないかと思います。これまでの10年間は、知財事務局の主導で施策の方針が約1年をかけてまとめられ、そして更に最低1、2年をかけて具体的に検討がされ、検討の方向性がまとまってからまた1年をかけて法律案を策定し、そして施行されるまでにまた1年かかるといったスパンでしたが、果たしてそのようなスパンでこれからの時代に対応できるのかという懸念を感じております。各省庁が主導して、もっと早く法律を出すことがあってもいいのではないかと思います。日本の制度改正の良い面として、様々な関係者の意見を聞いて、なるべく多くの関係者が納得する案を出し、その方向性で進めるということがあります。それ自体は大変良い面ではあるのですが、もしかすると、そのようなやり方が日本が世界においていつも後手に回っている理由にもなっているのではないかという気がしています。
 もう一つ、相澤先生からも御指摘がありましたが、エンフォースメント、権利行使の場面においては、せっかく日本にはすばらしい裁判所があって、上手いし、費用も安いし、そして早いと三拍子そろっているのに、世界的な紛争を解決する場としてそれほど人気が高くないのはどうしてだろうということを感じています。
 例えばアメリカのITCのように、日本には、結構魅力的な水際手続があるなということになれば、状況は変わるかもしれませんし、変わらないのかもしれません。そもそも制度の問題ではないのかもしれませんけれども、魅力的であるはずの日本のエンフォースメントの制度があまり利用されない理由を考えてみる必要があるのではないかと思います。特に水際手続に関しては、もう一工夫できるのではないかと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、大渕委員。

○大渕委員
 順番なので。この会議、スケジュールが合わずに欠席が続いて恐縮でしたが、フリーディスカッションということですので、今、ちょうどいい例が江幡委員から出された。エンフォースメント、日本の特許訴訟システムというのは、いろいろな面で、例えば陪審制でやっているような国は専門性を発揮するのは非常に困難なわけですけれども、日本は知財高裁を初めとして、専門化した裁判官と調査官。法律家と技術屋さんがうまくタイアップしながら、非常に質のよい特許訴訟、特許裁判を提供しているのではないかと思います。
 客が来るか来ないかという話をされますと、私は自分が日本人だから気になりませんけれども、例えば欧米人だったら日本の裁判所を使うかというと、まず言葉だけでも、日本の裁判であれば日本語でやるわけで、事務書面なり、すべて日本語に書き直すことを欧米系の企業同士がやるかと言われると、恐らく余りにハードルが高くてという。
 要するに、お客さんが来るか来ないかというのは、別に法制度の質が高いかだけでなくて、言語面、文化面、地理面も含めて、いろいろな意味で日本はかなりハンディキャップがありますので、そこで客が来ないから来るようにしようと言っても、そもそも限界がある。その辺は、余り客のことばかり単純には、その大きなハンディも加えた上で比較するのであればいいですけれども、それを考慮せずに単純に比較するのは、そもそも無理があるのかなという気がしているのが1点。
 この会議でも特に感じるのですが、先ほど法制度云々と言われましたけれども、何か今までうまくいかないと制度を変えなければいけない。あえて言いましたら、非常に複雑なソフトウエアのシステムみたいなもので、制度の方は1か所変えると全体にすぐバグが起きたりして大変なことになりますので、今まで積み上げた枠組みの中で、また新たに付け加えることになりますので、そう大幅に変えられません。
 お聞きしていると、今までは非常に既成文体をいじらなければいけないという感じだったのですけれども、この手の問題を考えるには、恐らく法律と技術と、さっき出ていました経済、ビジネスと、3つぐらい柱があって、法制度自体だけでなくて、使われ方も、先ほど言いましたように、それ以外に文化とかいろいろありますけれども、そういうものが総合的に問題になってくる。
 今までは、うまくいかないと、すぐ法制度が悪者になって、変えろということだったのが、次第に実は法制度自体の問題よりは、人材が育っていないからとか、あるいは使いこなすだけのビジネス的なノウハウがないからだというところが深まってきたのは、大変いいことではないかと思っております。
 もう一点、先ほどの方に戻りますと、法制度自体を検討するのであれば、先ほども職務発明の話が出ておりましたけれども、これも知的財産法だけで整理のつくような問題ではなくて、知的財産法学者がみんな嫌がって、余り手を出さないのですが、労働法政とか契約法というところが大きく関わった、法制度全体に関わっている問題なのです。
 検討するのであれば、そういうところも全体的にトータルに視野に入れて大きな議論をしないと、特許法だけで済むような議論でもないので、そこのところは検討しろと言うのはいいのですけれども、そういう極めて大変な問題であるということを御認識いただいた上で、これをやっていくためには基礎的な研究が不可欠になってくるのではないかと思っております。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。小川委員、お願いします。

○小川委員
 今、3人の方がおっしゃったことに賛成いたします。ただ、もうひとつ付け加えて、その背景で産業構造が大きく変わってきた、という事実を強調したい。類似の産業構造転換を、欧米諸国がすでに1980年代に経験しています。これが日本で顕在化したのは90年代後半ですが、多くの人がこれを実感したのは2004年以降ではないでしょうか。それに対応する我が国の施策が、今回の報告書で骨子の思想的な背景として取り込まれている点を高く評価したいと思います。
 産業構造を変えていった大きな要因は、国際標準化とデジタル化えす。デジタル化を象徴するのが組み込みシステム(マイクロプロセッサーと組み込みソフトウエア)であり、これが人工物(製品)設計の深部に介在することによって、モノづくりの概念を一変させ、グローバル市場にオープンなビジネス・エコシステム型の産業構造を生み出し、競争ルールが代り、知財の役割も国際標準化の役割も、全く変わってしまいました。
 これが日本企業の国際競争力に大きな影響を与えているのです。例えば福島委員の会社のデジタルエレクトロニクス製品では、恐らく製品の設計工数の60%から70%が組み込みシステムの開発に使われていますね。自動車でも40%を越え、もうすぐ50%になると言われています。日本のモノづくりで組み込みシステムを使わなくて済むのは、非常に限られた領域になってきました。2009年の時点で日本が海外へ輸出する製品の58%は、組み込みシステムが関与しています。
 しかしながら我々の委員会は、これまで組み込みシステムの知財を大きく取り上げて議論することは無かった。組み込みシステムのソフトウエアの多くは著作権の議論になるでしょうか。もしそうなら、我々は著作権を、コンテンツのそれと区別し、来年度からはモノづくりという視点の競争政策を起点に、著作権を取り上げるべきだと思います。
 この委員会でも、これまでAppleやIntel、Google、あるいはスマートフォンやデジタル出れば、次世代ブラウザなど、いろいろ議論がありましたけれども、これらの産業領域で新たな勝ちパターン作りに成功したのは、例外なく組み込みシステムが持つ本質的な作用を活用しています。しかし我々の議論にはこの視点が欠けている、という意味で、来年度は。是非これを取り上げていただきたい。

○妹尾会長
 ありがとうございます。上條委員、お願いします。

○上條委員
 後ろの方がたくさんいらっしゃるので、簡潔にお伝えいたしたい。来年に向けての議論ということで、確実に、正確に、丁寧に制度をつくってと、先生方のお話もありましたが、そういった日本のよいところも勿論残しつつ、全体的にスピード感を持って施策を進めていくということが、まず1つお願いしたいことでございます。
 それから、政務官からも貿易赤字のお話もありましたが、実際に日本が貿易赤字の対外国は、フランスとかイタリアといったブランド力のある国。非常に高品質、高付加価値でいいものをつくられて、ブランド力の高いものを日本に売っていらっしゃるような国の輸入が多くなっていることを見ますと、ブランディングとかソフトパワーというのは非常に重要であるということを改めて申し上げたい。
 特に、コンテンツの方の委員会で議論されていらっしゃるような、いわゆる映画とか音楽といったコンテンツというものも、ブランド力とかソフトパワーが非常に重要だと思うのですが、一方で競争力の専門調査会の方で議論しているような特許とかテクノロジーという面も、技術をきちんとブランド化していって、コミュニケーションして、技術のよさというものを伝えていくようなコミュニケーション力をもっと高めることが非常に重要だと思います。そういったテクノロジーのブランディングというものも積極的に検討していただければと思います。
 あとは、こういった明日どうなるかわからないといった、非常に変化とトランジションの大きい時代におきましては、クリエーティビティー、創造性というものが非常に重要になってくると思います。そういった中で、人材育成の面でも、知財の保護・活用ということも重要でございますが、創造性を高める教育とかクリエーティビティーを高めるところに力を入れた人材育成というのも、例えば先ほど小川先生がおっしゃられたような、産業構造が変わって製品アーキテクチャ自身をもう一度リデザインしなければいけないような時代に、柔らかい頭でクリエーティビティーが高い発想を持って取り組まないといけませんので、そういったことに関する強化というのを是非取り上げていただきたいなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。途中で水を差すような物言いで恐縮ですけれども、このまま行くと4時半を超えてしまいそうなので、済みません、恐縮ですけれども、手短によろしくお願いいたします。岸委員、お願いいたします。

○岸委員
 前々回に申し上げたので、繰り返さないのですが、知的財産国際取引所が2012年にシカゴのオプション取引所内にできる。これはもう事実でありますので、私は知の攻防戦よりも争奪戦に入っていくだろう。ここで日本の知財人材というのは、金融、後ろにオプションとか、そういうものを絡ませた両方がわかる人材が少なくて、結局、シカゴでどんどん売り買いされる中で日本は指をくわえて見ているみたいな危険がかなりあると思っていまして、知的財産国際取引所に対する日本の対応は、かなりしっかり固めていただきたいなと思います。
 もう一点、今までの議論でちょっと出てこなかったのですが、今、極めてナーバスな議論になっているので、来年に向けてどういうふうにこの知財計画の中で考えるべきかと思っているのは、例のTPPの問題ですね。TPPについては、農産物とか保険とか自動車。それに加えて、必ず知的財産が出てくる。私の取材では、なかなかよくわからない。今、アメリカは大統領選を前にして、ちょっと音なしの構えなので、何を彼らが言ってくるか、よく見えない部分があるのですが、多分、私の後ろの方で聞いてみると、知財がかなりもめるのではないかと言われています。
 9か国の事前協議が今、続いているわけですけれども、TPPの中で知財がどう動くかというのは、是非2012年あるいはその先かもしれないけれども、知財計画の中ではひとつ議論していく必要がある。今まで一度もなかったので、あえてここで申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。久夛良木委員、お願いします。

○久夛良木委員
 今、岸委員がおっしゃられたように、知の争奪戦というものがすごい勢いで今、始まっていると思います。例えば日本の企業が保有しているいろいろな知的財産というのは、どういうわけかモビリティーが少ないといいますか、その企業の中だけで閉じてしまう。もしくはクロスパテントのためのストックで終わらせてしまうという嫌いがあるのですが、例えば欧米ですと、可能性がありながらも活性化されていない特許群というものがどんどん金融市場に出ていって、それが一つの新しい市場を構成しようとしている。
 そういった中では、最近気になることは、そういった日本の特許ポートフォリオ群というものにアクセスできないのだったら、つまり流動性に乏しいのであれば、例えば日本の企業群にいらっしゃったエンジニアや研究者が、より他の国に移動して行く過程で、そういった国々が逆にそこでいろいろなノウハウをさらに積み上げることによって、より強固な知的財産を構築し、それをファンドという形に組んで流動させようという具体的なアイデアもあるやと聞いております。
 そうなると、完全に日本がパッシングされてしまう。日本が中抜きにされてしまうわけです。つまり、技術を抜き取られて、言い方は非常に微妙ですが、有望な技術が他国に移転されて、拡散して、それが新しい流動的な市場に入っていくことが起こりつつある。これは人類全体で見れば別に悪いことではないと思うのですが、そういった動きの中で、我が国の知的財産の競争力強化というものをもう一回、真剣に見つめ直した方がいいと思うのが1点。
 もう一つは、ここ近年のIT化の中で「知の新しいルネサンス」が起こっているのだと思います。こういった中で、我が国発のベンチャーというのは、シリコンバレーに比べると相対的なスピード感が遅いという感は否めない。ただ、我が国の才能は、じっと指をくわえて見ているかというと、そうじゃなくて、どんどんシリコンバレーやアジアの国々と組んで、場合によっては向こう側に行って活動しているわけで、これはこのまま、そうだねと放っておきますと、重力の中心がどんどん日本から離れていってしまうのではないかと危惧している。
 来年以降のことで是非お願いしたいのは、この間、別の調査会でもお話したのですが、例えば札幌といった地理的な特区だけではなくて、ITの中での特区というものを是非考えていただきたい。つまり、このスピードを加速するような特別の場所というものを、どこでもいいですが、考えていただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 先般、トロールの紹介をしましたけれども、今日、政務官もいらっしゃっているので、せっかくですからもう一度お話させて頂きます。知財の話を突き詰めていくと、日本の国家がどこによって立つかということになってくるのだろうと思うのです。勿論、知財金融や何かについての備え等々はしていかなければいけないと思うのですけれども、軍需産業のない日本で、常に人類の発展に寄与するものを生み出し続けられる。つまり、科学技術立国というところに軸足を置いて、余りぶれないようにした方がいいと思うのです。
 そのためには、特許で言うと、特許は金融商品でも何でもなくて、ものづくりと結び付いているからこそ、人類の発展に寄与する。それから大きくはみ出すところは、日本を中心に是正していくような冠たるシステムを日本の中につくって、それを世界に発信していく。あるいは五大特許庁会合等でも働きかけていくことが必要ではないかなと思っています。
 それには、当然、ベンチャーが自分の知財に頼ってビジネスを始めたときの保護を厚くするとか、とにかくものづくりに伴って新しいものを生み出そうという者には、今まで以上の保護を与える。それ以外のものは、きちんと牽制していくなり、あるいは対応策を立てていくなり、そういうところにもう一度立脚をして、みんな整理し直してみるところにきているのではないかなと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。高柳委員、お願いします。

○高柳委員
 私は、情勢認識が今回のものは非常にいいと思うのですけれども、それに対して実際の具体的な策が、単年度予算ということになっていることにも起因するかと思いますけれども、それが情勢認識につり合うような施策になっていないのではないか。もっと日本を元気にするには、具体的に産学連携一つとっても、中小云々、この施策が本当にそれで大丈夫なのという感じがしますので、もっと強力なものをやっていかないといけないのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。中島委員、お願いします。

○中島委員
 先ほど相澤先生が言われた、この推進計画がどうしても小粒になってしまうということですね。これは、日本の行政組織の中では、戦略事務局が物すごく御苦労されているのですけれども、各省庁合意型ということでだんだん小さくなる。できるものだけが並んでしまう。委員もだんだんフラストレーションがたまってくるということになって、これはやむを得ないかなという感じがいたします。これはこれで、やり方ですから、一つだと思います。
 私としては、それと全く別に、やるかやらないかは別にして、目標設定型の戦略を立てる。できるかできないかわからないけれども、これをやろうよという。何年後に人類は月に行くのだという目標を立てて、そのためには何をすればいいのか。そうすれば、各担当組織として、これをやるということでどんどん計画を立てる。世界一の創造立国になる。世界一の実質的な特許立国になる。戦略立国である。利用・活用立国である。それに基づいた産業構造という目標設定型という議論ができると、非常に楽しいなと思っています。

○妹尾会長
 ありがとうございます。中村委員、お願いします。

○中村委員
 先ほど細かい施策の積み上げになっているのではないかという御指摘がありましたけれども、私が担当していますもう一つのコンテンツ調査会の方でも、全く同じ指摘が繰り返されております。今回、コンテンツの方では、デジタルネットワーク基盤の整備と、海外展開をクールジャパンの2つに絞り込んで計画を立てようという動きになっているのですが、今回のこちらの議論とそれらをどうドッキングして一つのメッセージにしていくかというのが大事かなと思っております。そこで2点。
 1つ目は、国際競争力の面も、コンテンツのメディアの面も、この一、二年で相当大きく局面が変わってきた。ですから、来年、これまでの延長線上で考えていたのでは対応を誤るのではないかという危機感を持って、きちんと伝えられるような、両調査会の声を合わせていくことが大事。
 もう一つは、これで知財計画はまとまりますが、問題は、それを国家政策の中でのプライオリティーをどう高めるのか、優先順位をどう上げるのか。これは政治的な位置付けをどうするのかということかと思います。それを、例えば総理が演説するときにイの一番に、まず知財の話をしてもらうためにはどうすればいいのか。これがTPPにも大きく関わってくることだろうと思いますが、政府の問題だけではなくて、我々委員としてもどのように対外的にこのメッセージを出していくかということかと思いますので、自分の宿題としたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、西山委員、お願いします。

○西山委員
 3点ございます。
 1点は、価値ある知の定義を、いわゆる特許や商標や、それ以外のものまで広げて、もう一回議論すべきだと思っています。すなわち、雇用を生み出したり税収を生み出したりする知というのは特許以外にあるので、他国、もしくは国内でも既にそういう事例があるならば、それはここの委員会の俎上にもう一回乗せて、その実態を把握して考えてみる。これは、意味のある作業だと思っています。我々は、それをだれよりも知っていなければいけないと思います。
 2番目は、これは数字がうろ覚えなので確認しますが、国民一人当たりのイノベーションの創出量、米、英、日本で比較すると、これは定義も確認しますが、日本はアメリカの6分の1、英国の2分の1というスタディーがあります。これは何なのか。70億人いる世界人口の中における日本の人口は、相対的にどんどんこの先減っていくわけです。
 1人当たりのイノベーション創出能力の比率を他国よりも高めていかなければ、相対的に我が国のイノベーションを生み出せる力が減ってしまうわけですね。平均的な1人当たりイノベーション創出能力を高めるために、一部の天才に任せるのか、全体的な教育水準を上げて底上げをするのか、ここは政策が入り込む余地もあろうかと思います。
 3番目に、米国のシリコンバレーでもインドでも中国でもどこでもいいんですが、今、最も知を生み出している人に日本に来てもらう、もしくは日本で知財を登録してもらうと言うことを実現するために何が出来るか?ということにも議論がなされるべきだと思います。
 短期的に日本を知のセンターにする効果があります。日本が変化できるようになるような、イノベーションを起こせる人を、呼び寄せる、これは戦略的に大事です。お金を使えば、もしくは政策を決めれば、すぐにアクションを起こせるものも、魅力的です。来年度では具体的に何人来ましたとか、何件事業化できましたという数値目標がつくれます。 これは是非これだけ成果がありましたというのが2年後、3年後に議論できるようになったらいいなと思います。
 1点目が特許以外の価値ある知の数を増やすか?2点目が1人当たりのイノベーションを起こす力をどう増やすか?3点目がどうやってイノベーションを起こしている人材を日本に呼び込むか?
 以上、3点申し上げました。

○妹尾会長
 ありがとうございました。では、福島委員、お願いします。

○福島委員
 最後に近くなると徐々に言い辛くなりますが、先程も他の委員の方からありましたように、この2~3年の推進計画の記述は、状況認識だけでなく内容的にも企業目線から見てかなり踏み込んだ内容になってきたと感じています。
 具体的に申し上げますと、今年の議論で例えば意匠・商標に関する内容をかなり大胆に取り扱っていただいたことは、ブランド価値の向上やデザイン力の強化という視点から特許以上に意匠・商標の価値が今後はどんどん高まることに結び付いていると思います。また、色々な面で言語の扱いをきちんと議論していただいたことは、グローバルな競争力の強化に結び付くと思います。勿論、日本語を蔑ろにする意図はありませんが、グローバル企業から見て、様々な知財制度において英語がある意味で標準的に扱える仕組みは、もう避けて通れないものと考えます。このような観点では、具体性のある踏み込んだ議論になったと思っています。
 今後の方向性という視点から見れば、国にとっては産業競争力であり、企業にとっては事業競争力の向上を考えるとき、まずその「強み」を明確にすることが重要です。そして、その「強み」をより表に出すための仕組みや仕掛けを考える中で、色々な制度や人材育成を重要な要素として議論すべきと思います。こういう視点から、今後の議論では「強み」について様々な観点から共通認識を醸成しながら、これを制度施策や人材育成の仕組み等に上手く組み合わせてシナジー効果を発揮するようなことを考えたいと思います。
 このような観点から敢えて幾つかお話するとすれば、企業が将来の成長を目論む地域は、欧米よりもアジアに軸足があると思います。この調査会の議論は、まだ日米欧中韓の五極が中心のお話でしたが、企業は今後の成長の源泉となるアセアン諸国のような新興国にあると認識しております。日本は、その「強み」を活かしてこのような新興国に対して何ができるのかということをもう一度考えるべき時期だと思います。
 もう一つ、人財も大事な資源ですが、日本の遅れているITシステムの課題は根本的に考え直すべき時期にあると考えています。先進的なITシステムが、先程申し上げましたように、様々な制度論や仕組みと上手く噛み合えば、よりスピード感のある知財計画の実行に結び付くものと考えています。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、山本委員、お願いします。

○山本委員
 ぐるっと回ってしまったので、ちょっと記憶の彼方かもしれませんが、相澤先生の意見に賛成ですという話をしてもあれですけれども、ベンチマークとおっしゃいました。要するに、ゴールを定めて、どういう姿になるのかということを描かないと小粒になると思います。
 それと、確かに言語の問題とか地域の問題がありますけれども、日本企業同士がアメリカで訴訟するなら、知財高裁はどうするのかというのを考えるべきだと思っております。
 さっきのゴールの話で言えば、1か月ぐらい前の日経新聞ですか、日本の国債残高と人口を1万分の1にすると、破綻前の夕張市と全く一緒という状況で、今は平時ではないという危機感がないと非常にまずいと思います。例えば大学や公的機関の知を集めて、インテレクチュアル・ベンチャーズとかに対抗しようというのは、この中でも検討して推進しましょう、短期と出ていますが、韓国は500億円を投じて大学の技術を集めて、名前は忘れましたけれども、会社をつくりました。もうやっています。中国は、この4月につくります。多分500億円よりも大きい。日本はずっと前から検討しているのですけれども、検討をずっと続けている間に、もう中国や韓国はスピードではるかに勝っている。
 あるいは、大学の研究シーズ、バイオで言うとアーリーステージなので、アメリカだったらバイオベンチャーが事業化しますが、それがなかなかないイギリスは、MRCがMRCTというものをつくって、いわゆる知の谷を埋める機関をつくっています。日本も今、創薬支援機構の検討をずっとてしていますけれども、カナダはもうCDRDをつくって、私たちはそこと提携しました。東大の技術は、もしかするとカナダでブラッシュアップされて、アメリカのFDAで日本の厚生労働省よりも先に上梓されるかもしれない。その方が技術は広がるわけです。
 要するに何が言いたいかというと、これもスピードで本当に何を決めていくのかという決断をしていかなければ、検討することを決断しても多分何も変わらない。夕張のようになってしまうのではないかという危機感があります。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。最後になりましたけれども、一委員として私の方から少し問題意識を述べさせていただきますと、一番大きいのは、先ほどから何人もの先生方がおっしゃられたように、産業生態系が全く変わってきたということですね。すなわち、従来の縦割りで製造業の何とか業という話ではなくて、今や中央省庁の横断的でない産業はあるのだろうか。一個もないですね。あるいは省内の部局横断的でない産業はあるのか。一個もないですね。
 そのときに、産業生態系がこれだけ変わってきた。例えば機械が機械だけではない。機械はロボット化し、ロボット化したら組み込みソフトが必要で、組み込みソフトが入ってきたら、すべての機械の動作はログに入り、ログが積み重なったら、それはレシピとサービス業に全部展開するみたいな時代に入っているときに、縦割りの政策自身が意味をどこまで持てるのだろうか。これは大きい話だと思います。
 それに従って、産業モデルもビジネスモデルも変容と多様化をしているわけで、この中では、先ほど中村先生がおっしゃったみたいに、こちらのテクノロジーの部会とコンテンツの部会が違うみたいな話自体が、もう実は次の話にならなければいけないわけで、コンテンツと、それを表示するデバイスと、間をつなぐサービスの3つになったら、もうテレビも何も全部同じじゃないかという話になっているときに、相変わらず我々は、どうしてもこの業種、この分野みたいな話をしている。これは乗り越えないといけない話だろうと思います。これが第1点です。
 第2点は何かというと、そうすると先ほど小川先生が、実は著作権というものがテクノロジーの大きなものなのだ。従来、テクノロジーは特許だと言われていたのだけれども、そんな話では全然なくなっていく。これを私は異種知財権格闘技と呼ばせていただいていますけれども、Appleとサムスンが何で闘っているのか。特許対意匠権で闘っている。こんなものじゃないですね。例えばIntelのパソコン側の半導体は特許で闘うけれども、携帯側の半導体はイギリスのARMがアーキテクチャで著作権で闘うという時代に入ってきているわけですから、我々は頭を全部切り換えないといけない時代に入ってきているということだと思います。
 そうすると、3番目にこれは是非我々が自覚しなければいけないのは、従来、特許というのは産業障壁だという古典的なイメージを持っていたのですが、とんでもない。産業促進に使われる特許も山ほどある。でなければパテントプールはできないはずだ。あるいは、国際標準は参入促進に使われていたばずだ。とんでもない、国際標準が参入障壁になるという時代に入ってきた。これらを考えると、知財マネジメントは、本当にビジネス、産業の想像力を持たない人材にはできないということになろうかと思います。
 私、そのぐらいの危機感を持っているのですが、なかなか全体を動かすことはできないということなので、政務官、我々が日本の産業を救う、あるいは日本の活力と雇用を確保するということをやりたいと思っているので、是非応援をいただきたい。
 もう一つ、最後に申し上げると、先ほど西山委員が言われたみたいに、実は我々だけがやっているという話ではなくて、日本の国際化をやるという話はもうとっくに終わっていて、グローバルな中で日本に知をいかに集めるか、グローバルに日本の知をどうやってデフューズしていくかという時代になっているので、この二、三年、特に加速している状況を我々はもう少し根底から考え直す時代に入ってきたのではないかなと思います。
 その意味では、2002年に知財立国を宣言して10年経つのです。10年経って、もしこの知財戦略本部ができていなかったら、そら恐ろしいことになっていたと思うわけです。ただし、10年経つと様変わりになっているので、それを先取りできるようなことにしたいと思います。先ほどから先生方がお話されているように、どうしても日本人のお得意は、状況を見きわめて後手に回る。状況を見通して先手を打つというスピード感を持って、我々は対処したいと思っているので、それが私の会長としてではなくて、一委員としての最近の全体の動向の認識であります。
 ということで、一とおり皆さんの御発言を賜りましたけれども、ほかにもう一つ、そういえば、これ、どうしてもという方がいらっしゃいましたら、いかがでしょうか。
 それでは、少し時間が早いのですけれども、この会合を今日は終えたいと思います。
 政務官、皆さんの今の御意見を伺われて、いかがですか。

○大串大臣政務官
 ありがとうございます。先般、コンテンツの会議に出させていただいたときも、スピード感と危機感と、もう一つ2012を打ち出すときにも、その重要性をどういうふうに打ち出していくのかといった点に関する、同じような指摘をいただきました。私、そのとおりだろうと思います。会長から先ほどあった、根本的に座標軸が変わっているのだという話も、以前からいただいているところでありますので、しっかり頑張っていきたいと思います。
 TPPの話もございました。まさに9か国とやっていますけれども、今、岸先生から話がありましたように、正直言って、まだよくわからないところが多くあります。むしろ、それに向けて自分たちとしてどういう座標軸を持っていくのかというのを、こちら側から持っていかなければいけないということだと思いますので、またその点に関しましても、私たちの視座を早く定めていきたいと思いますので、いろいろな御意見を賜れればと思います。
 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。私ども、しっかり頑張ってまいります。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。この取りまとめは終わりましたけれども、ペナントレースは終わりましたけれども、日本シリーズが待っていますので、我々も頑張っていきたいと思います。
 それでは、予定の時間が来ましたので、本日の会合をここで閉会したいのですが、局長の方から何かございますか。

○近藤局長
 いえ。

○妹尾会長
 特によろしいですか。それでは、事務局全体としての連絡事項があればお願いいたします。

○髙原参事官
 「知財計画2011」の進捗状況に関する資料2でございますけれども、冒頭申し上げましたように、机の上にお残しいただければと思いますが、もしどうしてもという御希望がございましたら、事務局の者にお声掛けいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。それでは、もし何かありましたら事務局ないしは私の方に御連絡を賜ればと思いますが、先ほど申し上げたとおり、一任いただきましたことについては事務局と調整の上、骨子に盛り込むことで我々の案を提示したいと思います。
 それでは、今日、お忙しい中、長時間ありがとうございました。お帰りがけ、雨と花粉が降る中で、是非お気をつけてということであります。それでは、どうもありがとうございました。