知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第6回)



  1. 日時 : 平成24年3月2日(金)14:00~16:02
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、江幡委員、
    上條委員、岸委員、久夛良木委員、佐々木委員、中島委員、西山委員、福島委員
    【事務局】近藤事務局長、上田次長、芝田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)「知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項(案)について
         (知的財産による競争力強化・国際標準化関連)
      (3)閉  会


○妹尾会長
 それでは、時間になりましたので、開催いたしたいと思います。 皆さん、こんにちは。ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第6回会合を開催いたします。本日は雨の中、御多忙のところ、本当に3月年度末が始まったところでお忙しいところ恐縮ですけれども、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、まず、前回の御議論を踏まえて、関係省庁からのヒアリングを最初にしたいと思います。そのヒアリングを基に議論を行った後で、知財計画2012の骨子に向けた提言(案)について、議論を行いたいと思います。大きく2つに分かれていると御理解ください。
 本日は、大渕委員、小川委員、迫本委員、高柳委員、中村委員、山本委員、渡部委員から御欠席との御連絡をいただいております。
 では、まず最初に近藤局長にごあいさつをいただきたいと思います。

○近藤局長
 今日もお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 私どもの知財計画の骨子は3月末には取りまとめをします。最後にこの1か月の間、恐らくこの2週間ほどの間にしっかりとまとめをしたいと思います。よろしく御審議をお願いいたします。ありがとうございます。

○妹尾会長
 まずは事務局から、資料の確認をいただきたいと思います。髙原参事官からよろしくお願いします。

○髙原参事官
 それでは、資料を御確認いただきたいと思います。議事次第の下に資料を重ねてございます。
 資料1-1が特許庁から提出いただきました資料で、「最近の知的財産権を巡る諸論点について」というタイトルのものです。
 資料1-2が経済産業省知的財産政策室から提出いただきました「人材の移動による技術流出に対する企業の対応について」というタイトルの資料です。
 資料2「『知的財産計画2012』骨子に盛り込むべき事項(案)~知的財産による競争力強化・国際標準化関連部分~」、前回会合での議論を踏まえて、リバイズをしたものでございます。委員の皆様には、修正箇所を表示したものも付けてございます。
 資料3、こちらも委員限りとさせていただいております。「『知財計画2012』骨子素案(総論部分)」でございます。
 資料4「今後のスケジュールについて」という一枚紙でございます。
 参考資料が2つございまして、参考資料1が前回第5回の会合における主な意見でございます。
 参考資料2、「知的財産戦略に関する論点整理」ということで、前回と同じものを配布させていただいております。
 以上、傍聴席も含めた配布資料ですけれども、委員限りであと2点資料がございます。
 まず、右下に佐々木委員提出資料と書いてあります一枚紙でございます。
 最後、「『知的財産推進計画2012』策定に向けた意見募集の結果について」という資料でございます。
 資料について、不足等はございませんでしょうか。

○妹尾会長
 よろしいですか。これは別に佐々木委員からの資料は印刷ミスではないですね。お間違いのないように。
 それでは、上條委員から急きょ御欠席という連絡が来ましたので、上條委員は欠席ということで進めさせていただきたいと思います。
 それでは、関係省庁ヒアリングに入りたいと思います。前回の御議論を踏まえてヒアリングを実施して、その後で質疑を含めて議論をしたいと思います。
 今日は特許庁から中尾総務課長、後谷企画調査課長、澤井国際課長にお出でいただいております。経済産業省の知的財産政策室から石塚室長に御出席をいただいています。お忙しい中、ありがとうございます。
 それでは、前回の議論を受けまして、特許庁から資料1-1、知的財産政策室から資料1-2を提出いただいております。
 まず、中尾総務課長から御説明をお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。

○中尾総務課長
 特許庁の中尾でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は総務部長の熊谷が外国出張中でございまして、代わりに私、総務課長の中尾と、今、御紹介がございました企画調査課長の後谷、国際課長の澤井の3人で御説明に上がりました。非常に多岐にわたる論点でございますので、駆け足で説明させていただきます。御疑問の点、御確認いただきたい点につきましては、後ほど私、後谷及び澤井からお答えさせていただければと思っています。
 資料1ページを開けていただきまして、まず、最近の国際的な動向の御報告でございます。以前もこの場で御報告申し上げておりますけれども、各国の出願は日米欧から日米欧中韓へ、そして、内国向けの出願だけではなく海外を目指した出願へと転換しており、従来型の自国に出願して自国の特許庁がその審査をするというモデルから大きな転換を見せつつございます。
 特に中国の伸びが非常に著しく、最近の一番大きな変化としましては、これまで日本が長く世界一の特許大国ということでしたが、アメリカに抜かれて2位になり、中国が日本を抜いて、日本が3位になり、中国が2位ということになりました。そして、暫定値ベースでございますが、2011年の数字によると、中国の特許出願件数がアメリカを抜いて世界1位になった模様でございます。そういう意味では、中国の特許をどのように相手にしていくのかが、特許庁としても重要な課題にならざるを得ないわけでございます。
 また、中国は、出願件数の急速な伸びを踏まえて、現在、中国特許庁の審査官は約4,000人くらいですが、2015年までに段階的に9,000人くらいまで増やすという計画でございます。隣の国が急速な知財大国化をしているという現実に、どのように対応していくかという課題がございます。
 次のページでございます。私どもが、これまで蓄積してきた審査の経験あるいは技術の知見等の特許審査の在り方について、中国に対して知恵出しをしてきたわけですが、このたび特許審査ハイウェイを中国と初めて日本が結ぶことができ、ドイツやアメリカも日本に続きました。
 この制度は、出願人が日本国特許庁に出願して特許を取った後、中国に出願したとき、中国の審査において日本の特許庁の審査結果を十分に斟酌させる制度でございます。日本で特許になったものが、中国でも特許になるという結果を第一に期待しながら、中国に働きかけをしていくための制度で、昨年の秋に始めましたが、約3か月で既に112件、中国に審査結果が伝わっております。特許審査ハイウェイなどを通じて、中国における特許の判断に、日本特許庁の判断をどうやって、ポジティブに影響を与えていくかという点に引続き取り組んでまいりたいと思っております。
 一方で、中国の特許審査官の数が増えてまいりますと、個別の案件ごとに審査の結果等にばらつきが出てくることが予想されます。今後、様々な形で日本と中国との審査部同士交流を密に行い、日本で特許になったものが、中国でも特許になるという結果になるよう、できるだけ力を割いていきたいということでございます。
 この下のページですが、これは前回の調査会で議論があったと聞いております。特許だけではなく実用新案という形で出してくる中国の出願件数は非常に多く、かつ、この実用新案で何が登録されているのか、従来わかりにくかったという状況がございます。この表のブルーの部分が実用新案でして、ほぼ特許件数と同数の実用新案が出ており、かつ件数が増加しております。
 また、右側の記載ですが、一昨年のことですけれども、フランス企業と中国企業の間で、中国における実用新案をめぐるトラブルがあり、約20億円をフランス企業が払い、和解が成立したという例もありました。したがって、中国における実用新案がどのような取扱いをされているのかについて、日中間あるいは日中韓3国の枠組みで運用実務の明確化を図っていくと同時に、中国における実用新案データを手に入れるということになりましたので、広く日本の方々に提供していくということで、中国の実用新案における不測の損害を避けていくようにしていきたいと思っております。
 次のページでございます。中国は、特許だけではなく、商標問題も引き続き、深刻な問題でございます。特に最近多い例は、日本の地名や日本の特産品などの商標が、中国で既に第三者によって取得されているというケースがございます。これは古典的な模倣品の例よりも、更にたちが悪い例です。最近のiPadの問題等の事例についても先生方はよく御存じだと思います。
 日本の地方自治体や日本の産地の方々に中国ビジネスでは商標問題を避けて通れないということを理解していただきたいと思っております。また、地方自治体または農水省にも協力を依頼して、農協関係などにも働きかけ、地元の御当地ブランドを、中国での権利化に遅れを取らないように普及させていくことでお願いをしております。また、当然のことながら、特許庁も中国に担当者を置いており、政府間の協議等を通じて、働きかけを続けていくということをやってまいります。
 その下のページについて、中国の実用新案、特許の件数が急増しており、世界の特許文献等のうち、中国語でしか読めない文献数の割合があっという間に全体の約3割になっているということでございます。これに伴って、特許庁の審査官が先行技術調査のときに、中国の特許、実用新案の調査が必須になってまいりました。特許文献等の入手の迅速化、かつ、ある程度機械翻訳で対応できるような仕組みを作りながら、急増する中国の特許や実用新案を充分に調査することができる環境を整備することが、私どもの大きな課題となってございます。
 次のページでございます。グローバルな制度のハーモナイゼーションということで、アメリカあるいは欧州と連携しながら、中国を上手に巻き込んでいくということもやっていきたいと思っております。
 御案内のとおり五大特許庁会合、いわゆる五庁会合という日米欧中韓で、様々な調和を進めております。従来型のハーモナイゼーションは、非常にリーガルなハーモナイゼーションでございましたが、むしろ新規性や進歩性や先行技術の範囲といった、審査基準のレベルまで含めて中国の審査のプラクティスを日本・アメリカ・欧州と揃えていく、実体的な意味でのハーモナイゼーションに取り組んでまいりたいと思っております。五大特許庁長官会合での枠組みで、私どもがマトリックス・スタディーと呼ぶ、非常にきめ細かく五庁の審査基準、あるいは審査運用の統一を図っていくことを進めております。
 また、中国を除いた、いわば特許版のOECDと言った先進国の間で一枚岩である程度のポジションをつくっていくテゲルンゼイ会合を、日米欧間で進めていくということもやっております。
 中国のみならず、ASEANとの協力も進めているところ、先日、日ASEAN長官会合を日本で行いました。引続き、夏に2回目の日ASEAN長官会合をやる予定であり、人材協力、審査協力などを含めて、日本企業のASEANでの活動に支障がなきように全力を挙げてまいります。
 次のページはインドの話が出てまいります。これまで日本企業のインドにおける特許出願、特許取得等の活動は、欧米企業と比べて余り多くなかったのですが、これからのインドへの企業活動展開ということで、日インド間の協力も進めていくことを考えております。今年からインドにも新たに知財の担当者を出す準備を進めております。
 これらASEAN・インドといった新興国で何が起きているかの情報集約・集積をやっていきたいということで、データバンクの構築を行い、知財に関係する様々な情報を体系的に集約していく事業も来年度から取り組んでまいります。
 次の12ページ以降、別の話題でございますけれども、知財の複合的な保護ということで、特に情報分野が一番大きいかもしれませんが、例えば自動車でも、車両本体の技術と車両のデザイン、起動音といった、特許と意匠と商標と、物によっては著作権や不正競争防止法など、どのように複合的、効果的に知的財産権を保護していくかということが課題になっているわけでございます。
 このうち、特に意匠権に関しましては、この下に書いてございます画面デザインの保護を、従来の意匠制度の枠組みでやるかどうかという論点がございます。欧米の国々では既に、意匠法制で保護しているのですが、我が国ではまだそこまで議論が追い付いておりません。これはデザインを物品と別々に保護するということではなく、デザインを物品と一体のものとして保護するといった現行意匠法の枠組みのためでございます。しかし、意匠を巡るアップルとサムソンの知財紛争のとおり、日本のITデザインの保護を意匠法でやれないかどうかということにつきまして、現在、産構審意匠制度小委員会の場で検討を始めております。
 その次のページは各関連法令の比較でございます。他の法律との関係も踏まえながら、議論をしてまいるということでございます。
 その次のページは、ヘーグ協定の話です。1つの国際出願をすれば、それで全世界ベースで出願をカバーできるといった条約でございます。これも産構審意匠制度小委員会の場で、加盟に向けた法制度の準備の審議に入っておりまして、可能な限り、できるだけ近い機会に国会での御審議に持っていきたいということを考えて、検討を進めております。
 次のページでございます。以上が意匠でございましたが、一方でクールジャパンを知財戦略本部の御指導の下、進めていく中で、日本の感性、日本のブランドイメージを多角的に発信していくという観点から、現在の商標法では保護していない動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音といったようなものについて、欧州、アメリカと同様の商標法の保護法域として、日本でも新たに定義すべきではないかということにつきまして、検討を進めております。こちらも産業構造審議会商標制度小委員会における審議を行っているところでございます。様々な形で、日本の競争力を世界に強く発揮していくという観点から、保護に向けて検討を進めてまいりたいと思っております。
 次は話が変わりまして、中小企業向け支援の話でございます。4月1日より改正特許法が施行されますが、大きな目玉の一つは、中小企業向けの特許料の減免でございます。特に10年目までの特許料を半減するということで、現在に比べて約半額の資金で特許に登録ができる制度がこれから施行されます。
 次のページの米国の特許法では、スモールエンティティ制度と申します、料金を50%減らすという制度がございます。米国の改正特許法では、それに更に上乗せをする形で、まだ利用できる状況ではありませんが、75%の軽減を認めるマイクロエンティティという制度を入れることが決まっております。我が国の中小企業向けのサービスも更にこうした世界の動きも踏まえつつ、検討していく余地はあるのではと思っております。
 外国出願の支援の拡充につきましては、様々な事情で外国出願は難しいことが多いとかもしれませんが、中小企業においても積極的に海外に出ていくことを応援したいということで、制度の拡充に取り組んでいるところでございます。
 最後のスライド2枚が職務発明でございます。御案内のとおり、平成16年の法改正で、職務発明に関して、契約なり勤務規則で決まっております条件が不合理でなく、適切な手続を踏んで決めたときには、それに従いなさいという改正をやりました。この後、平成16年改正法に基づく裁判例は、まだございませんので、これが法律実務において、どのように扱われているかは、私どもはまだ余り知見が蓄積されておりません。
 一方で、研究開発のオープン化、グローバル化が進む中で、この職務発明制度の在り方をもう一回考えるべきではないかという御意見もいただいております。これに対する慎重な御意見もいただいております。いずれにしても議論を始めることに意味があろうかと思っておりまして、職務発明制度の現在の運用状況につきまして、諸外国の事例なども勉強をしながら、望ましい在り方についての検討を開始したいと考えております。
以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。短い中での御説明、恐縮です。
 委員の皆さんから御質問されたい点もあると思いますが、次の石塚室長の方からの御説明を伺った後で、まとめて御議論をしたいと思います。
 それでは、経済産業省知的財産政策室から石塚室長にお見えいただいているので、資料1-2に基づいて御説明をいただきたいと思います。座ったままで結構です。

○石塚室長
 知財室長をしております石塚でございます。
技術流出の問題は古くて新しい問題でございまして、10年前、5年前との比較で、多分非常にダイナミックに情勢が変わっているのだと思いますが、私どももなかなか全体像の把握はうまくいっておりませんで、その点については引き続き、鋭意努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
 その中で一つ、人の移動に伴います技術流出の問題について、企業はどのような対応をしていたかということについて、昨年度の調査でちょうど去年の今ごろにとりまとめた調査でございます。それのポイントだけを御紹介させていただいて、課題としてこういうものが挙がってきていて、私どももそういうことについて考えていきたいということを御紹介したいと思います。
 御案内のとおり、人が日本企業から退職したり転職したりする場合に、どういうような形で営業秘密的な技術情報を守れるのかということについては、勿論、法律的に刑事罰や民事請求で守るということもございますが、一般的に企業の実務では、守秘義務契約と競業避止契約を結ぶというケースがあると伺っておりまして、その点について調べましたところ、秘密保持契約というのは比較的広く使われているようでございますが、競業避止契約、競合企業に行かないようにという契約については、なかなか実務的には使われているのが少ないということでございます。
 守秘義務契約につきましても、どういう範囲の秘密に守秘義務をかけるのかということについて、実務的な戸惑いがあるとか、あるいは競業協合避止契約につきましては、そもそもどこまで契約として有効なのかということについての疑問点、あるいはそもそも協合企業を確定するためにどうすればいいのかということに戸惑いがあって、なかなか実務では使われていないという状況があるということになってております。この点について、こういった契約の実効性をあらしめるようにするためには、どのようなことが我々から知恵出しをできるのかということについては、引き続き考えてまいりたいと思っております。 実は今年も技術流出問題については別の調査をして、まだとりまとめが終わっていません関係で今日は資料をお持ちしませんでしたが、例えば別の類型として新興国の提携先企業から情報が漏れて模倣品があふれるとか、そういう議論もあって、それも少し調べてみました。
 こちらについては、必ずしも非常に強い危機感を持っているという声はありませんでした。この理由は日本企業も海外の提携先、特に新興国の提携先にどういう情報を渡したりするとまずいかということを大分学習してきているようでございますし、特に顕著に見られるのは、情報を開示する相手先をすごく慎重に選ぶようになっていて、基本的には、特別な資本関係があるところに開示するようになっていて、それなりに情報がコントロールできているから、漏えいリスクには遭わないで済んでいるという声が多くありました。
 ただ、これについても我々の限られた範囲内のヒアリングでの調査ですので、更に一歩進めて、どれくらいのマグニチュードを持っているのかについて、引き続き調査を進めてまいりたいと思っているところでございます。
 以上、手短ではございますが、簡単に紹介させていただきました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 2つ御説明をいただきました。これに対する御質問、御意見があれば、挙手をいただきたいのですが、最初に特許庁の方からの御説明について、これに御質問あるいは御議論がありましたら、お願いいたします。
 相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 中国への対応なのですが、これは通商問題ですから、通商問題として解決していかなければいけなと思います。また、産地表示等をどう保護するかということについては、WTOの交渉がまだ続いています。これも考えていかなければならないと思います。
 それから、画面デザインですが、現行法が物品概念に囚われて不十分なものとなっていますから、是非改正しなければいけないと思います。また、ヘーグ協定に加盟することも同然だと思います。
 ただ、デザインが非常に重要となっている現代で、デザインを保護する制度である意匠登録について、その出願が激減しているというのは制度そのものに大きな問題があると考えられます。抜本的な改正を考えていかなければいけないと思います。
 商標についても、その新しいタイプの商標だけでなく、商標権の効力も含めて、改正を考えなければならないと思います。また、不正商品の輸入を効果的に抑止するための水際措置の改善を考えなければならないと思います。
 発展途上国などにおける知的財産権の侵害に対して、知的財産権を侵害する技術などが直接的あるいは間接的に使用された製品の販売等を州法で規制する制度がアメリカ合衆国で、制定されてきていると聞いています。
 知的財産権を侵害する技術などを使用した製品が日本に入ってきているのではないかと思います。これを放置すれば、知的財産権に関する費用を負担していない海外における製造等が価格的に有利になり、日本の空洞化を進行させることになります。これに対する対策も考えなくてはならないと思います。
 中小企業対策として、実用新案登録出願も検討していただく必要があるのではないかと思います。
 職務発明は、改正されたばかりですか、依然として企業の方が問題であると考えている点は謙虚に受け止めるべきだと思います。これまでも、通常実施権や手続については、頻繁に改正されてきたので、頻繁な改正そのものは、改正を避ける理由とはならないと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今の点に関して何かありますか。

○中尾総務課長
 中国の件があるので、国際課長から。

○澤井国際課長
 ただいま中国の御質問を頂戴いたしました。御指摘の商標問題に触れる前に、中国側の担当である国家工商行政管理総局というSAICと呼ばれているところと日本政府との付き合いは、過去2年半ほど止まっておりました。そこで昨年5月に岩井特許庁長官が中国に行き、先方の副大臣に相当いたしますSAICの付双建副局長とお会いしました。近年、冒認商標問題や先ほど総務課長から御紹介があった事案に加えて、日本の著名な企業の名前をそのまま商標登録するようなケースも中国で発生しておりますので、中国に対して、申し入れをさせていただいております。加えて、昨年12月にも先方が日本を訪ねてきておりますので、2年半近く止まっておりましたSAICとの関係を再度、整えているところでございます。
 また、GIにつきましては、各種FTAとの交渉の整合を取りながら、話を進めていかなければいけないと思っております。御指摘をいただき、ありがとうございます。

○妹尾会長
 では、相澤委員、お願いします。

○相澤(益)委員
 日本人の自国特許の出願率が比率的に減ってきているということ。このことは昨年も御報告をいただいたのではないかと思います。そのとき私はどういう原因なのかということを伺ったときに、また、この傾向自体が確固たるものなのかというところをつかみきれていないということと、その原因についてはむしろ、まだこれからだということだったのですが、かなり顕著になってきたのではないかと思われますので、シェアの問題と同時に絶対件数がこれだけ減少してきているということをどう解釈されているのかを伺いたいと思います。

○妹尾会長
 お願いします。

○中尾総務課長
 ありがとうございます。今の質問にお答えする前に、先に相澤英孝先生から頂いた御意見について回答させていただきます。まず、商標、意匠、地理的表示について、御指摘を重く受け止めます。地理的表示につきましては、農水省と一緒に知財本部の御指導を得ながら検討していくということになっておりますので、特許庁も農水省と緊密に連絡を取っております。それ以外の様々なグローバルの動きについて、商標、意匠の現在の法律が十分かは、御指摘を踏まえて対応していきたいと思っております。
 相澤益男先生からの御質問でございますけれども、日本国向けの特許の出願は減っている理由は、様々考えられますが、大きく分けて2つです。1つは、日本国内に出願するよりも、限られたバジェットの中で中国を含めた各国へ出願していくといった、企業の知財戦略の結果として、相対的に日本国内に出願する比重が落ちたということ。もう一つは、従来のように沢山、特許を出願することをなくして、厳選をして日本の特許庁に持ってこられるのが増えたと想定できます。現に私どもの審査部の実感は、特許として査定する件数の割合が昔と比較して増えてきているということでございます。そういう意味では、日本国内への出願の質が全体的に高まってきたのだろうと思います。しかし、やはり一つ目に述べた理由である、新興国への特許出願が増えてきたということが大きな背景だと認識しております。

○妹尾会長
 よろしゅうございますか。
 ほかにいかがでしょうか。福島委員、お願いします。

○福島委員
 御説明をありがとうございました。従来以上に色々と踏み込んでいただき、また総合的かつ多面的に御提言あるいは御議論いただいていると前向きに受け取っております。そのようなご検討の中で大変なところもあると思いますが、例えば先程ヘーグ協定の議論がありましたように、企業にとってはこういった施策を一日も早く実現していただくことが私たちの企業活動や事業活動にとって極めて重要と考えておりますので、特に時間的な目標設定を少しご説明いただければ、さらに有難いと思っております。これが1点目です。
 2点目は、今回の資料では、商標や意匠に関して様々な視点から踏み込んだ御提案をいただいており、企業としてはブランド価値の向上やデザイン力の強化に向けて迅速に対応していきたいと考えています。そして、企業現場の課題をお話しさせていただきますと、やはり商標や意匠の類否性判断がかなり不安定でバラついている現状に苦慮しております。これは特許庁様内部だけの議論ではなくて、司法の判断も含めてグローバルにバラつきが多い現状は、活用上の非常に難しい課題に結び付いていると考えています。例えば、類否性判断における客観性の研究を加速していただければ、企業として意匠権や商標権を積極的に取得して事業活動に活用するインセンティブに繋がるものと考えます。
 3点目は、今日の資料には記載されていませんが、1月下旬に特許庁様より業務・システム最適化計画が一旦中断されるお話が公表されましたが、このご判断は個人的に一つの英断と思います。同時に今回の中断を踏まえて、今後の新たな最適化計画をどのように考えておられるのかという点についても、早急に御検討をいただければ有難いと思います。 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。確認ですけれども、先ほどの類似性の判断のばらつきというのは、我が国の中でのばらつきもあり、国家間のばらつきもあり、両方ですか。

○福島委員
 国内のバラつきと同時に国家間のバラつきもあるという意味です。

○妹尾会長
 ということは、特許庁の中での審査基準ももう少し整備をしてほしいというお話ですね。それから、3つ目に挙げられた業務最適化計画中断は英断だとおっしゃるのですが、具体的にそれと企業さんへの影響度はどうですか。

○妹尾会長
 ということは、特許庁の中での審査基準ももう少し整備をしてほしいというお話ですね。それから、3つ目に挙げられた業務最適化計画中断は英断だとおっしゃるのですが、具体的にそれと企業さんへの影響度はどうですか。

○福島委員
 企業は、常に権利取得・維持コストを少しでも効率化し、より多くのリソースを質の良い特許の創出に結び付けたいと考えております。この観点から、IT投資を踏まえた様々な業務の効率化を加速して、より良い仕組み、できれば世界最先端を行く仕組みを開発していただきたいと思います。このような観点から、従来システムの考え方を更に発展させて、世界中に展開していけるようなシステムを目指して欲しいと考えています。

○妹尾会長
 ありがとうございました。今のことで何かありますか。

○中尾総務課長
 ありがとうございます。まず、時期的な話につきましては、私どもは平成26年4月というところで、これまでFA11と言っていました一連の特許行政の10年間の目標がありましたが、その先のNEXT 5-10 YEARSをどうするかということを議論しております。今日の議論も庁内で行っている議論を先行的にお出しして御審議いただければと思っておりまして、26年4月以降の私ども自身の課題をどう設定していくかという問題と併せて、タイムラインの問題に真剣に取り組んでまいります。
 2つ目、意匠、商標の審査にばらつきがあるということは厳しく受け止めます。特に意匠につきましては、先ほど相澤英孝先生からも、特許と意匠の融合といった議論がございましたし、商標につきましては色や動きなどが出てまいりますと、言語の枠を越えますので、アメリカや欧州がどのような審査基準のもと判断をしているのかという国際的な議論が出てまいります。したがって、ここも厳しく、取り組んでまいります。
 システム最適化のところですけれども、1月末の段階で、大規模なシステム開発をこのまま続けても完成させることは無理だろうということで一旦中断として、別の方向でやり直すことを決めました。現在、具体的な計画を関係者からの知恵をいただき、大至急調整中です。今度の予算要求を念頭に5月、6月くらいに向けて、計画を急ピッチで対応しているところでございますので、御指摘を踏まえて取り組んでまいります。ありがとうございます。

○妹尾会長
 どうぞ。

○上田次長
 今の点ですが、さっき福島さんからお話のありましたヘーグ協定の関連とか、スケジュールをしっかりするようにというお話だと思いますけれども、これは3月に少しまとめた後、5月までの段階で工程表という形で、これは10年間を視野に入れておりますが、ここでこういう御指摘の点を含めて、重要なところをしっかりとスケジュールの中に関係省庁と相談をして、落としていきたいと思っております。

○妹尾会長
 ほかにいかがでしょうか。特許庁の方の御説明に関してはよろしゅうございますか。では、私の方から委員の一人としてコメントをさせてください。
 最近、新聞などを見ると、特許庁がインドとか今日はメキシコでしたか。いろいろな活動が活発になっているので、遅ればせといいながらもグローバルの対応が加速しているのは頼もしいなと思って拝見しております。
 ただ、幾つかありまして、1つは自国内出願が他国への出願に出る。これはある意味で当たり前で、産業構造その他が垂直統合から国際水平分業になっているのだから、知財の世界だって同じように行われるわけです。これは同系だと私らは見るわけです。そのときに水平分業化された産業をどうするのかという話と同様に、水平産業化された知財システムはグローバルにどういうふうにすればいいのか。そういうもう少し俯瞰的な観点で特許庁が我が国の産業競争力上、どういう位置づけになるかというのを見ていただきたいと思います。当面の課題に対応するという話よりは、局所的な対応に見えてしまうわけです。昔はそうではなく全体だったけれども、今やグローバルな知財システムの中では、日本の特許行政は局所ですから、そこの最適化を幾らやったって、日本の産業競争力の全体最適にはつながらないので、是非危機感をもう少し持って、ネスクトファイブ・テンイヤーズをお書きいただけたらいいなと思っています。
 先ほどの特許大国、日本はそうだったかということを最初におっしゃったのですが、我々が問題にしているのは、特許大国・知財大国がなぜ特許立国・知財立国につながらないのだということです。大国であることは必ずしも立国化されていない。つまり、産業競争力につながらずに数ばかり増えている。あるいは質も高まる。特許の質は高まっても、産業事業の質が高まるわけではない。ここのからくりが変容しているというが我々の問題意識であろうと思っています。特許庁さんは特許がたくさん出ている、特許の質が高まっているということで満足せずに、それが産業競争力上、日本の企業が頑張れる下地とつながるのかという観点を是非入れていただきたいと思います。
 その観点を入れるとどうなるかというと、先ほどのハーモナイズの話になると思います。このハーモナイズという言葉は非常にファンシーの言葉だから何となくいい感じがするのですが、これを見ればハーモニーというのはどんなハーモニーをやるかがポイントですね。五大特許庁がハーモナイズをするときに、メジャーでハーモニーをつくるのか。マイナーでつくるのか。セブンスでつくるのか。ディミーシングを入れるのか。
 次の曲の展開を考えてハーモニーを考えるというのが作曲ということですね。今ここで和音が破綻しても、次に曲が展開するということを考えなければいけないので、私どもが聞きたいのはハーモニーをしているということではなくて、その先のどういう展開を考えて、今、こういうハーモニーをつくっているかということです。ハーモニーをやっていますと言われると、我々はそれはそうだろうという意思しかないわけで、どんなハーモニーを次々に展開するかということで、今はこういうふうにドミソにしていますとか、ドファラにしてしますという話を是非次回はしていだけたら私らも心強いなと思います。ここはオープンな話ですから、余りその戦略的な手口は見せられないということはあろうかと思いますけれども、そんなことを思います。
 この専門調査会で皆さんがここのところ非常に高めているのは、今までのスピード感ではとても追い付けないということと、それは同時に何を意味しているかというと、状況を見極めてから対応しますという従来の特許庁のやり方では遅いのではないかということを皆さんがおっしゃっている。すべてそうですね。さっきのいろいろな問題についても、今まですべて状況を見極めて対応しますというお答えなんです。状況を見極めて、なぜこんなに後手に回るんですかというところを皆さんは指摘されているので、是非状況を見極めることは重要かもしれませんが、見極める前に見通して手を打つという手もあるので、見極めてから後手に回るというよりは、見通して先手を打つというふうに少し方針のウェートを変えていただけると、我々もグローバルの中での競争をしているという感覚があるのではないかと思う次第です。

○相澤(英)委員
 今の会長のお話ですが、特許出願数の意義について、私は異なる理解をしているので、一言だけ申し上げます。日本の特許出願数が減って、アメリカ合衆国の特許出願数が増えているということは、日本の特許制度の魅力が減ってきていることを示していると思います。企業さんは日本の特許出願を減らしても、アメリカ合衆国の特許出願を増やしているということは、アメリカ特許制度の方が魅力的であるということを表わし、制度間競争で負けていることを示しているということもできます。
 将来を見通すという問題も大事なのですが、意匠、特許を含めて、現に問題状況が顕在化しているので、迅速に対応をしないといけないと思います。

○妹尾会長
 私より手厳しい御意見でありますが、全く同感であります。
 それでは、もう一つ、経済産業省の石塚室長の方のお話について、委員の先生方からの御質問その他はいかかでしょうか。
 技術流出の問題ですが、今日御欠席になられた委員の先生がこの問題を大分強くおっしゃっているので、後ほどフィードバックがあるかもしれません。
 それでは、ないようですので、私の方から申し上げます。今日の調査報告書の話が出たのですが、技術流出は別に日本に限った話ではなくて、米国でも欧州でも非常に悩んでいた話ですね。そこに彼らは先手を打って、いろいろな対応をされたわけですけれども、それについてはどういうふうに見ていらっしゃいますか。

○石塚室長
 今日抜粋をお持ちした調査では、人財流動性が競争力の源泉になっているとされるアメリカのシリコンバレーの企業では、例えば退職時にどういう契約を結んで守秘義務を守らせているか、そういうことも一応調べております。
 典型的に申し上げれば、退職時に与える給付、ストックオプションなどには、守秘義務の遵守と競合企業に行かないという遵守が条件となっていて、秘密を同業他社に話してしまうとストックオプションが無になるというような仕組みですとか、中国でございまして、中国は退職される従業員の方に与える退職給付が一定の水準を超えていることを条件に、競合他社に転職することを契約で禁止することに法律上の根拠を与える法制度ができているそうです。勿論日本でそれができるかどうかについては、労働法制上のいろいろな問題がございますけれども、そのよう点についての検討を少しずつもチャレンジをしていかなければと思っております。

○妹尾会長
 相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 職業選択の自由が日本憲法にはあります。基本的人権のない中国の制度を、職業選択の自由などを考慮することなく言及することには、問題があると思います。職業選択の自由という基本的人権や海外へ移住する自由という基本的人権を考えていかないといけないと思います。そもそも、情報化社会の現代においては、営業秘密を守ることに限界があるということをきちんと示しておくということが一番必要ではないかと思います。そこでは、特許権による保護の意義もきちんと理解することも必要であると思います。

○妹尾会長
 中島委員、お願いします。

○中島委員
 技術流出ということは非常に中身が広いので、もう少し細かい分析が必要かと思います。何が技術流出なのか。結局ものづくりの技術がどんどん流れているというのは一つではない。形あるものが真似られるという単純なものではなくて、実際にはそれをどうやってうまくつくるのか。どうやってうまく販売するのか。どうやって後のケアやフォローをするのかという附帯的な技術サービスも一体となってのものづくり、日本の強さです。それぞれにどういうふうに保護するのかというのが、非常に貴重で大切なことだと思います。
 以前の技術流出というのは、とにかく形を真似する。形が真似られるということで、流出を計画している方もそういう考えだったわけですけれども、最近はそれがどんどん様変わりをしてきた。どうやってそれをつくっているのか。この設計図のこの線をどういう思想で書いているのか。そういう技術流出になってきているんです。要は形ではなくて、頭の中を探られている傾向になってきているわけです。それを間違え、一緒にしてしまうと、大分乱暴な議論になってくるという気がします。
 ですから、改正不正競争防止法で事例がないというのは、うまくいっているということではない。うまくいっていないんだという解釈もかなり出ているのではないかと思います。そういう意味で、海外に行ってはいけないとか、話をしてはいけないという右か左かの議論ではなくて、もっともっとやり方はたくさんあります。実物か、人か、電子や紙などの情報か、が媒体ですから、それがどのように流れているのかということですね。その過程では、要は最初にアプローチがあって、それをだれかが決断をして、その後でその情報が流れるという当然そういうステップを踏んでいるわけですから、アプローチの仕方にはどういったものがあるのか。なぜその人がそういうことを決断したのか。先方はどういうふうにそれを引き出しているのかという分析が大事です。それを1本の技で全部処理しようと思うと、かなり乱暴な議論になってしまう。
 要はどんな職業に就くのも自由ですけれども、税金をかけてはいけないとか、登録制度にしてはいけないというようなことはない。企業にとっても自分の会社の技術がいつ流れている、どこに流れたということがわかっていると物すごく対応はしやすい。それが全くわからなくて、あるとき突然出てくるということが大きな問題になってくるということです。単に止めるとか止めたいとかいうことではなくて、もっと登録制度を設けるとか、許可が要るようにするとか、情報収集をどこかで集めてわかるようにするとか、いろいろな対応があると思います。
 ですから、もっと我々の側、情報を守る側の方での細かい分析と対応が必要ではないですかということでございますか。

○妹尾会長
 ありがとうございます。関連していかがでしょうか。よろしいですか。
 私も近い意見でありまして、技術と言ってしまうと何となくマイナスイメージだから流出は止めなければいけないという議論ですけれども、ある意味では技術伝播と言えば、これはプラスの面もあるわけですね。そうしないと新しいものが生まれてこないし、この技術交流があるから、新しいが学術的なものとか、いろいろなものがあるわけです。そうすると、技術流出にも実はオープン・クローズが戦略的にあるわけで、あえてこういうところをオープンにして、技術流出をして自分たち以外の人たちに競争して、そこの領域を活性化し、しかし、収益は自分たちのクローズのところに戻ってくるような全部のビジネスモデルを開くというようなことがあるわけで、これはよくこの会議で話になるオープン・クローズの戦略と技術流出問題をどういうふうに見るのかという話が多分俯瞰的にはあるだろうと思います。
 もう一つは、人財流出と絡んでいるので逆があって、これは西山委員がこの前に御指摘されたのだろうと思いますが、よい意味での技術流入をどう促進するんだとか、人財流入をどう促進するんだろうということも知的財産上は極めて重要なことで、知的財産権の問題だけではなくて、知的財産をどうやって日本は産業競争上、活用するのか、増やしていくのかということだと思います。
 もう少し俯瞰的なところで調査を進めていただくといいと思うんです。単に日本と国内のある局所的な調査をしましたというよりは、俯瞰的なものが必要な時代になっているというところで調査をし、制度の改変その他、あるいは中小企業も含めての教育ですね。そういうところへ政策を伸ばしていただけたら、心強いなと思います。
 ちなみに特許だけではなくて、最近は日本の誇るデザイナー自身が中国へ招聘されるとか、そういうところが非常に増えていますから、そういうところも視野に是非入れていただきたいんです。そうするとデザインなどは、まさに先ほど中島先生が言われたみたいな、どう考えるのかみたいなところとか、デザインというのは広い意味ですよ。単にアーティスティックなデザインだけではなくて、デザインというのを設計と訳したときに、どういう商品設計、事業設計をするかみたいな設計コンセプトのつくり方まで出ていってしまうということなるわけで、そこのところはある意味でプラス、ある意味で非常にマイナスということだと思います。そこのところを見ていただければと思います。
 中島委員、何か。

○中島委員
 補足ですけれども、アプローチという点で以前、外国の企業が日本の特許公開広報を一生懸命見て、特許にならない技術をただで使うという話がよく出たわけですけれども、それと同時に公報の発明者を見るわけです。だれが発明しているのか。この技術はうちが欲しい。そうすると、この発明者にアプローチしよう。その発明者にアプローチをして引き抜くという手が最近非常にはやっているわけです。
 私は個人的には、公開広報には特定の技術について、発明者を公開しない方がいいのではないかと思っているのです。特許になったら載せればいいわけでして、そういうものが戦略ではないのかなと思うんです。いろいろなやり方があるということを私は言っているので、それが正しいということを言っているわけではないです。
 どこかの企業がやったように、技術流出が起こるのだったら、いっそ、もうそれは止めないで有料でやろうと。表玄関から来なさいというやり方だってあり得るわけですね。その代わり、その技術使用料はもらいますよということだっていいわけですし、いろいろなやり方があるわけですから、法律でこれは禁止、これは大丈夫とか言う単純なことではないような気がします。

○妹尾会長
 相澤委員、どうぞ。

○相澤(英)委員
 基本的には企業の競争に任せるべきことであると思います。企業の自由な活動に法律が首を突っ込むべきではないと思っています。

○妹尾会長
 よろしいですか。
 それでは、特許庁、本省の方の知的財産政策室の皆さんにお出でいただいて、お時間をいただきまして、ありがとうございました。今日欠席している委員からも御指摘あるいは御質問があるので、事務局の方でとりまとめをしていただいて、今日の話とともに御対応いただけたら助かりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは、そのままいていただいて結構ですし、場合によってはまた振られるかもしれないので、いていただいた方がいいと思います。
 議題としては、2つ目、知的財産計画2012の骨子に織り込むべき事項(案)に移らせていただきたいと思います。
 事務局からまず説明をいただくことになりますので、髙原参事官から資料2、資料3の説明をいただきたいと思います。

○髙原参事官
 それでは、資料2と、メインテーブルのみでございますが、資料3及び意見募集の結果について説明をさせていただきます。
 最初に、「『知的財産推進計画2012』策定に向けた意見募集の結果について」という資料につきましては、1月20日の第3回専門調査会において、知財本部のウェブサイトにも掲載をして、国民の皆様から広く意見を求めておりますと報告させていただいておりましたが、その意見募集の結果を整理したものがこの資料になります。
 個人、法人・団体を合わせまして、全部で77件の意見を頂戴しております。このうち、法人・団体からは29件でございまして、その組織名につきましては2ページに掲載しております。主な意見の概要につきましては、その内容に応じまして、総論、国際標準化の関連、競争力強化の関連、デジタルネットワーク戦略の関係、クールジャパン関連、その他の項目と項目ごとにまとめております。
 私どもも寄せられた御意見を参考にしまして検討を進めてまいりましたが、委員の皆様にも最後の御検討をいただく際に参照していただければと考えております。この内容は速やかに官邸ホームページの中の知財本部のサイトにも掲載をさせていただきますので、傍聴席の皆様にはお手数ですけれども、サイトを御確認いただければ幸いです。
 次に、資料2の説明に移らせていただきます。委員の皆様には赤字で修正箇所表示版と表示してある方を御参照いただければと思います。修正箇所を赤で示しております。
 1ページの情勢認識のところで、前回、「改善」に関する記載について、日本企業が非常に先進的なところもあるので、余りネガティブなイメージが出過ぎてもいけないのではないかという御意見がございましたので、この部分は削除をしております。
 2ページの下の部分でございます。我が国がグローバル競争の中でどのような立ち位置にあるのか。そして、今後どこを目指していくべきかというところをもっと追記すべきであるという御指摘を受けて、追記をいたしました。
 3ページ、中ほどから下の方に掛けて、産業構造についての認識、グローバルに展開されているメーカー間の争いも含め、このようなモデルで成功しているんだというところを少し詳しく書いてはどうかという御指摘を受けて、加筆させていただいた部分です。
 4ページの中ほど、前回、技術流出について御議論がございましたので、この点についても言及をしております。
 続いて、各論の施策に関する部分で5ページ以降になります。前回は、第1の柱、第2の柱のところは、調整の状況もありまして担当府省を、書いておりませんでしたけれども、今般、各担当府省を明記しております。
 まず、第1の柱の最初の施策例、特許制度の国際調和のリードの内容について、単にリードをするということではなくて、提言をしっかりしていくというところまで書き込むべしという御指摘がございましたので、修正をしております。
 6ページの2番目の項目でございますが、国際的な特許出願手続に係る利便性の向上ということで、特許法条約への加盟も視野に入れて利便性の向上を図るという施策を1つ加えております。
 7ページ、「2.我が国の知財システムの競争力の向上」ということでタイトルを修正しております。この下のところ、点線で囲んでいる部分は、ひとまず前回のとおりとしております。グローバル時代におけるイノベーション環境の整備という観点から、以下の2点、つまり、昨年の米国の特許法改正の動向及び職務発明制度を始めとした知財関連の在り方についてどのように考えればよいかということですが、こちらにつきましては、本日の前半の御議論も踏まえまして、次回の専門調査会で、具体的な施策の形でお示しをしたいと考えおります。
 8ページ、2番目の柱につきましては、「イノベーションを創成するために総合的な知財マネジメントを積極的に活用する。」というタイトルにしております。 この下に4つの項目がありまして、国際標準化関連を4番目に置いておりましたけれども、これを2番目に整理し直しております。
 また、「1.テクノロジー、デザイン、ブランドを含む総合的な知財マネジメントの強化」の中で、前回の御議論を受けまして、技術流出防止に向けた対応の強化及び営業秘密管理の課題を具体的に改善するための支援の2つの施策を加えております。
 2番目に順番を変更しました標準化関連の部分では修正箇所は1点のみ。7分野における国際標準化戦略の実行に係る施策のところで冒頭に文言を加えております。産業競争力強化のための戦略であって、将来的な産業モデルもしっかり踏まえてリバイズをしていく、というところを追記しております。
 10ページ、「2.産学連携の強化」の中に、大学や産学共同研究における知財マネジメントの推進という項目を設けておりますが、前回、産学連携にも、技術基点型のみではなく、事業基点型という視点が当てはまるのではないかというような御指摘もいただいておりました。そこで、今般、知財プロデューサーを活用しながら、産学共同研究を初期段階から知財マネジメントを強化していくという施策例を加えております。
 営業秘密に関しては、企業における管理はもちろん、大学側でもしっかり対応していく必要があるという御指摘を受けまして、この「産学連携の強化」の最後の施策として、「営業秘密に関する大学における普及啓発」を加えております。
 続いて、4番目が「中小・ベンチャー企業の知財活動の強化」ということでございます。ここでは、これに先立ちます各項目の下で、中小・ベンチャー企業関連で新たに加えました施策を再掲という形で書いております。12ページ下から13ページの最初に掛けての部分がそれに該当しております。
 以上が資料2、骨子に盛り込むべき事項(案)の主な修正点になります。
 最後に資料3、こちらは委員限りでお配りしております。「『知的財産推進計画2012』骨子素案(総論部分)」と書いてございます。この素案は、この専門調査会ともう一つのコンテンツ強化専門調査会、2つの専門調査会でのこれまでの御議論も踏まえまして、事務局で準備をした上で、今、関係府省と調整しております。このような事情もございまして、本日は委員限りの机上配布とさせていただいております。
 骨子素案の全体構成は1ページに示しておりますが、Ⅰ~Ⅲの3部構成とする予定でございまして、この資料3はその総論に相当いたします「第I部、情勢変化と知財戦略の新たな挑戦」を抜粋したものになります。
 2ページをご覧いただきますと、「1.グローバル・ネットワーク時代の世界の潮流と日本」と書いてございます。このグローバル・ネットワーク時代の到来につきましては、昨年の「知財計画2011」でも書いておりましたが、知財戦略についてもプロパテントからプロイノベーションの時代へと移行したと。また、従来からの技術基点モデルにはとどまらずに、事業基点モデルの存在感が高まっていると。同時に、知財マネジメントも高度化、複雑化をおりまして、単純な特許紛争の世界ではなく、知財訴訟が意匠や商標なども含めた複合的な競争の時代に入っております。その中では、さまざまな知財ツールが駆使される多次元的な知財マネジメントが欠かせなくなっている。このような状況に触れております。
 3ページの中ほど以降に「2.知的財産戦略本部のこれまでの取組」、これまでの10年の歩みについて、4ページ以降には知財戦略本部の活動に係る最近の主要な成果ということで、8つ掲げております。1番目の7つの分野での国際標準化戦略の策定に始まり、8番目がアメリカの特許制度の大変革、先願主義の移行まで、8大成果を記載しております。 4ページの一番下以降が「3.新時代に立ち向かう知的財産戦略の新たな挑戦」ということで、グローバル・ネットワーク時代において我が国の国際競争力を強化して、世界で我が国が勝っていくためには、知財戦略の果たす役割が大きい。この知財戦略の大きな一つの柱が、この専門調査会で御検討をいただいおります内容でございまして、国際標準化を視野に入れ、最先端の人財育成も包含するような知財システムの強化。もう一つの柱が、コンテンツ強化専門調査会で検討が進んでおりますソフトパワーの活用である。このような整理をしているところでございます。
 この資料3は、こちらの専門調査会で御決定をというものではございませんけれども、これまでの御議論を踏まえて、委員の皆様のお気持ちもできる限り書き込ませていただいたと考えております。各省との調整を経て、文言を修正する部分もありますけれども、この内容につきまして、このようにしたらどうかというような御意見がございましたら、事務局の方までお寄せいただければ幸いです。
事務局からの説明は以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、今から議論をしたいのですが、議論のやり方は、大きく柱立てが3本ありますので、大体10分程度を目安にそれぞれで御議論をして、最後に残った時間を総合的な議論とさせていただきたいと思います。
 最初に議論が始める前に、佐々木委員から資料が提出されておりますので、これの御説明をいただければと思います。この御紹介をお願いできますか。

○佐々木委員
 1番目に関係するだろうと思いますし、特許庁の皆さんに残っていただいて、非常にありがたいなと思っています。
 冒頭に会長の方からもありましたが、これは落書きではなくて、実情を皆さんに把握していただくためにお持ちしました。これはその図面の中にある小さな細長い四角があると思いますが、細かいのが積み重なっているものもありますし、一列のものもありますけれども、これが一件の特許とお考えください。これはアメリカの某技術の特許で、最初は10件強の特許であります。これをアメリカの制度を活用して、継続出願、部分継続出願、複合優先等々で最終的には400強の特許になって、それぞれにクレームが複数個ありますので、これはその特許の親子関係を結んだだけでほとんど画面上が黒くなってしまうという複雑なものであります。
 その10件の最初の出願が極めて革新的かというと、これはインベンティブステップ云々かんぬんでは、各国のいろいろな事情があるので一概には言えませんけれども、それを見て、あるいはそれがあるから次にこうしようかというレベルのものではないと個人的には思います。
 これがこういう形で、あえてこれをポートフォリオと言えばポートフォリオを組まれて、世の中にこれが流通すると、先回、岸委員から御紹介をいただいた特許金融市場も黎明期を過ぎて勃興しつつあるというお話がありましたけれども、そういうところでこんなものだけが流通して値が付くとは思いませんが、これをいわゆるトロールと言われるNPEが先物予約をして、世界中から金を集めることで、世界の資金の流動性には寄与するかもしれませんけれども、特許制度の持つ、本来はその技術の革新あるいは進歩というものには、私は極めて後ろ向きなものなんだろうなと個人的には思います。
 したがって、特許庁さんの先ほどの世界ハーモに我が国が寄与するというのは全くそのとおりでありますけれども、その前に実質的な研究開発から特許を生むことで、人類の科学技術の発展に寄与するという本来の特許制度をもう一度ワールドワイドといいますか、世界で考え直してもらえるような働きかけをしてもらえればありがたいということであります。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。これは極めて特徴的な例をお示しいただいたので、佐々木委員、皆さんから質問があったら受けていただいてよろしいですか。もし何かあれば、この機会に。
 では、局長。

○近藤局長
 私が質問をするのは申し訳ないんですけれども、これは本当はもっと大きな絵があって、この四角い一個一個の特許はもっと右の方にもずっとあると思えばいいんですか。

○佐々木委員
 おっしゃるとおりです。

○近藤局長
 入りきらないから部分だけ出してあるということですか。

○佐々木委員
 はい。

○近藤局長
 ありがとうございました。

○妹尾会長
 福島委員、どうぞ。

○福島委員
 ご説明にありました米国における分割出願や継続出願の活用は、どの業界でもあると思いますが、日本でも一件の出願を二百数十件に分割して権利化した日本企業もあります。したがって、アメリカの制度がどうのこうのという以前に、特許制度の本質的な課題をきちんと見定めながら、より良い制度のあり方について議論を進めていただくことが適当と思います。
 また、弊社はアメリカでトロール企業を相手に数十件の訴訟で係争中にありますが、トロール活動を短絡的に抑制するような議論よりも、知財流通の視点からもう少し深堀りの議論をしていただくことが知財計画を議論する上では適切と考えています。

○妹尾会長
 福島委員、例えばどういうふうに話を展開されたらよろしいですか。

○福島委員
 例えば、皆さんトロールと呼ばれているトロール企業の定義は何か、というようなことから議論すべきと思います。

○妹尾会長
 これは分割するとか特許ではなくて、特許網をつくる、特許群をつくるというのは、知財マネジメントの古典的な手法ですから、それ自体がどうのということはないんですが、それがある種の資本と結び付く、資金と結び付くといかがなものかという佐々木委員の御指摘だったと思います。
 これに関してはほかに御意見のある方はいらっしゃいますか。相澤委員、どうぞ。

○相澤(英)委員
 日本企業さんも、アメリカ合衆国で、きちんと対応されていると思います。アメリカ合衆国の特許法について、日本人を不利益に取り扱っていない限り、日米交渉で取り上げることは難しいと思います。

○妹尾会長
 福島委員がおっしゃったのは、別にアメリカに限った話ではないですね。

○相澤(英)委員
 日本では、特許出願の補正や分割出願などが制限されすぎていることが問題ではないかと思います。

○妹尾会長
 それでは、議論に入りたいと思います。最初はグローバル時代の知財システムの構築という最初の柱立ての部分ですが、ここについて情勢認識を含めて、御意見があれば承りたいと思います。資料2のところです。全体としては事務局が頑張って、前回の議論を大分取り入れてくれていると思いますが、いかがでしょうか。趣味の問題ですけれども、個人的には追求構築するという日本語がいかがなものかなと。
 5~7ページに関してです。1、2、3の情勢認識のところは、まだまだ細かいところではブラッシュアップができそうな気がするんですが、情勢認識は皆さんの意見を取り込めたかなと見ています。5、6、7はいかがでしょうか。
 相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 多次元、複合、総合という言葉がかなり整理されてきたのではないかと思いますが、こう見ると今回の特徴として、多次元的な知財マネジメントを強調しているのではないかと思います。情勢分析のところで書いてありますが、後では出てきません。後で、総合的と付けたところが多次元的な知財マネジメントシステムを総合的に利用するという意図なのでしょうか。そうであるとすれば、多次元的なということが複雑化した、グローバル化した社会で、総合的に利用するということであるならば、そういうようなトーンにタイトルを工夫されるとよろしいのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。これは実は私と安藤さんの論争がまだ終わっていないんです。でも、先生がおっしゃるとおり、これはもう少し整理をして、場合によっては実際の計画のときにはターミノロジーとして、こういうふうに使っていますというのが整理された方が皆さんにわかりやすいと思いますので、少し進めましょう。

○相澤(英)委員
 特許制度の国際調和のリードといいますが、議論をリードし、世界に向けて提言するというのは、前回の言いっぱなしという御指摘と一緒なので、国際交渉でどうするとかいうところにいかないといけないと思います。

○妹尾会長
 どうぞ。

○安藤参事官
 畏れ入りますが、赤字の委員用資料では5で「追求構築」と見えてしまいますが、「構築」は削除で「追求」が新案です。「構築」は横棒の漢字で消去線が見えない形になっております。

○妹尾会長
 わかりました。確かに相澤先生がおっしゃるとおりで、世界に向けて提言するというのだったら、提言だけで終わってしまうので、もう一歩踏み込んではどうかという御意見かと思います。

○相澤(英)委員
 書き方の問題で、座長に一任します。

○妹尾会長
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 5~6ページで、知財システムというのは非常にいいと思うのですが、その中の最初の1が国際的な知財システム。その次に書いてあるのは特許制度の国際調和のルールで、6ページの中ほどに意匠と商標があって、こちらの方は条約に合わすとかほかに合わすとなっているのですが、是非さっきのような議論のように、特許も調和も大事だけれども、意匠と商標もそもそも国によって大変なばらつきがあるし、そういうことでいいんだろうかということで、世界中で今、問題が起きていますので、是非、意匠と商標についても国際的な知財商標システム、意匠システムはどういう意義があって、消費者のために、あるいはクリエータのためにいいかという形での議論もリードしていただきたいと思います。ヘーグに合うのもいいことでしょうけれども、それだけではなくて、更に今、起きている問題は是非、意匠とか商標についてももう一度グローバルなシステムはどういうのがいいのか。こちらの方の関心の方が更に強くなっていると思いますので、お願いをしておきます。
 7ページで知財システム、競争力の向上というのは非常に大事な点だと思いますが、この施策はこの3つで競争力向上になるのだろうか。これは3つとも賛成ですが、制度、それを動かす人とか運用とか、そういうものを併せて、日本の知財システムが言わばサービスの中身の問題。それから、費用の時間で見たときに欠けているのではないかという議論があると思います。特にまたエンフォースメントです。日本で特許を取ることに意味があるのかということで、外国から魅力のあるような形で出願が来るのかとか、あるいは日本の審査が尊重されるかというときに、エンフォースメントまで含めて、知財システム全体の競争力向上ということにもうちょっと広げてもらった方がタイトルと中身が合うのではないかと思います。
 7ページの特許権の安定性の向上で、書いてあるのが明細書と一緒で読みにくくて、どちらに向かって何を検討するのか、もうちょっとわかりやすい文章の方がいいのではないかと思います。そうすると競争力が増すのではないかと思いますので、是非お願いいたします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。これは事務局の工夫をお願いしたいと思います。
 江幡委員、お願いします。

○江幡委員
 先ほどの特許庁からの御報告の中で、画面デザインについての具体的な検討を今後進めていくというような御説明がありましたけれども、骨子の中には特に画面デザインについて触れた部分がないようです。今後改訂されるのか、どのような取扱いにするのかをお聞きしたいと思います。

○妹尾会長
 髙原参事官、どうぞ。

○髙原参事官
 3Dデジタルデザインを含む意匠の保護につきましては、「知財計画2011」にも施策として盛り込んでおりまして、もしその深堀りをするということであれば、この骨子に盛り込むべき事項でも施策を立てることになります。他方、昨年の知財計画で既に取り上げておりますので、後ほど工程表を整理する段階では継続施策として入ってくることになります。

○妹尾会長
 特許庁の方からは、今の話は。

○中尾総務課長
 今、髙原参事官から御報告があったとおり、画面デザインの論点自体は昨年からあるものだと思っております。それを御指導に従って検討しているという状況でございます。

○妹尾会長
 状況を見極めているんですね。

○中尾総務課長
 実は意匠制度小委員会で議論を進めておりまして、各社様々な御判断があると思います。一般論として、画面デザインの保護を進めていく必要性の御認識はあるのでございますけれども、具体的な制度のつくり方について、様々な御意見をいただいております。先ほど福島先生からいただいたタイムラインの御指摘は、若干言葉を濁した部分でありますけれども、必要性についてはおおよそのコンセンサスはあると思っております。したがって、引続き、知財本部において、もし仮に画面デザインということで特出しで書いていただくということであれば、それを踏まえてやっていくということだと思っております。

○妹尾会長
 相澤委員、どうぞ。

○相澤(英)委員
 画面デザインの点は、前から申し上げているのですけれども、皆さんの意見をよく聞いてと言ってきて、意匠は今の状況になったわけですね。皆さんの意見をよく聞いてこういう状況になったということを踏まえて、皆さんの意見ばかりを聞いているとどうにもならないというのが現状ではないかと理解をした方がいいと思っています。
 日本の意匠制度は今、大きな問題に直面しているわけです。そこを踏まえて考える必要があるのではないかと思います。
 これは商標権ですが、商標権侵害品に関する措置についてのWTOのパネルの判断に対して、どうやって対応するのかということがここに入っていないと思います。関税法で対応するのか。それとも、それは商標法の方で対応するのか。これはきちんとしないといけない問題です。日本は発展途上国に対して、商標権を保護してくださいという主張をしているのですから、当事者でない事案ですけれども、中国の制度が不十分であると言われたことには、対応していかないといけないと思います。
 やはり意匠と商標については、制度の抜本的な改善というのが入っている方が、将来に向けての計画としては、よろしいのではないかと思います。
 荒井委員が指摘されたエンフォースメントですが、なぜ日本企業の皆さんの日本特許出願が減って、アメリカ合衆国特許出願を増やしているかというと、日本におけるエンフォースメントがうまく機能していないということが一因としてあると思います。だから、日本で特許出願することの意義が不明確になり、それに対してアメリカ合衆国で特許出願をすることには意義があると考えているのだと思います。日本企業にとっても、アメリカの特許制度は魅力がある制度になっていると考えられます。エンフォースメントの点については、日本はよく考えていかなければいけないと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。いずれにせよ、私はブラックジョークだと申し上げましたけれども、状況を見極めて後手に回るのと、状況を見通して先手を打つのとどちらが日本の各事業体にとって、産業競争力にとって得なのか。そこのところをそろそろ抜本的に考え直す時期だねというのが我々の情勢認識なので、それを是非答えていただきたいと思います。
 それでは、時間の関係もありますので、恐縮ですけれども、8ページに移らせていただいて、8~13ページの上3分の2くらいまでの部分です。イノベーションを創成するために総合的な知財マネジメントを積極的に活用する。ここのところでいかがでしょうか。
 相澤委員、お願いします。

○相澤(益)委員
 11ページですが、産学連携の強化の中にいろいろな項目が立ってきております。その中の効率的な研究活動への枠組みの推進のところです。ここの文章が非常にわかりにくいんです。要するに人財としては何かというと、リサーチ・アドミストレーターを育成しという内容に見えるんですが、前に余りにもいろいろなものが付いていて、しかも研究開発を総合的に支援する人財というのですが、研究開発を支援する人財を必要とするのではなくて、せっかくここに専門職としてという言葉があるわけで、研究開発のマネジメントの専門職とか、何か研究開発全体のことを言わんとしているんだと思うんです。それは研究開発全体をマネジメントする専門家であるのだと思います。
 ですから、前に付いている知財マネジメントという言葉が必要なのかどうかを考えて、ここはリサーチ・アドミスストレーターをぴしっと表に出すことが重要ではないかと思います。今、文科省で進めている人財育成のところもリサーチ・アドミニストレーターの育成ということに絞っておりますので、そこを整合性のあるようにしていただいた方がよろしいのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。これはすっきりさせた方がいいと思います。リサーチプロジェクト自身をちゃんと運営管理できる人たちですから、そういう意味ですね。おっしゃるとおりだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。西山委員、お願いします。

○西山委員
 13ページについてのコメントです。同様の内容が19ページにも再掲されております。
 「営業秘密に対する経営者、技術者の意識向上と営業秘密管理の課題を具体的に改善するための支援」と書かれている部分です。営業秘密の管理に関して周知させるというとこばから類推される具体施策は、罰則を伴うものになりがちだと思います。
 ですので、是非、別の方法、すなわち、「営業秘密にあえてせず、世界中から技術者を呼び込んで、更に競争力を強化させる」ことも施策に含まれるようなニュアンスを持たせた方がよいと思います。
 なぜならば、実際にイノベーションの源泉は人にありますから、労働市場が流動化している現代にあって、転職したら、前にいた会社での営業秘密に触れてはだめですよということを言っているだけだと、恐らくはイノベーションが起こらないのではないかと思います。
 米国やインドで行われているオープンプラットフォームをつくって、技術を開かれた場で管理をして、技術を公開した人にも利益が入る、使ってビジネスにした人にも利益が入るような形でイノベーションを起こすというのも有だと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。

○安藤参事官
 今の御指摘は非常に大事です。シリコンバレーがなぜ世界のイノベーションの中心になれたかというのも、19世紀の判例でトレードシックレットに対して比較的寛容な運用があり、こうした法制度の環境がイノベーション創造に大変重要な基盤となります。一方で、守るものはきっちり守る必要があり、他方で、オープンにしてイノベーションを盛んにしていくというバランスが非常に大事だと思っております。書き振りは工夫をしてみたいと思います。ありがとうございます。

○妹尾会長
 荒井委員、どうぞ。

○荒井委員
 今の西山委員の御意見に賛成ですが、同じ問題が実は著作権の分野で深刻に起きているのではないかと思います。非常に今までの著作権の下の権利をいかに保護する主張をするか。しかし、多分アナログ的になっていて、オープン化あるいはネットワークが進む。このギャップが大きいのも、ちょうど今のお話とリンクをしているので、是非何かこれは日本の風土にも関係していると思うので、一件、権利者が権利を主張しているのはいいことみたいに見えるけれども、小さな権利に対して、いつになってもパイが大きくならないという問題だと思いますので、総論の方にもうまくこの辺を日本人のいろいろな意味での創作するパワーが世界中に広まるように、何かこの小さな権利の主張ではなくて、大きく育てる、大きく使ってもらうというか、そういう発想をみんなで変えようではないかと。 結果としてパイが大きくなれば、権利者にもリターンがあるわけですので、今の話はこの分野だけではなくて、著作権の関係の方も非常にあると思いますので、是非総論の方もうまく入れてもらうといいのではないかというお願いです。

○妹尾会長
 ありがとうございます。よく言う自前主義、抱え込み主義で特許をどう使うか、知財権をどう使うかというと、参入障壁だけで考えていた時代はもう終わったと私も何度もここで申し上げて、参入促進の知財マネジメントもたくさんあるよと。それが私などは個人的には、逆ハンバーガーモデルだとかいうことで、いろいろなところで申し上げているのですが、営業秘密も著作権もすべて知財であるならば、知財の使い方のオープン・クローズの両方を使い分ける、使いこなすという話になってきているわけで、御指摘のとおりで、その辺は全体としてのニュアンスを少し踏み込んで書いていただくといいのかなという感じがいたします。
 ほかにいかがでしょうか。出雲委員、お願いします。

○出雲委員
 2つございまして、1つ目は11ページの真ん中に赤で新しく追加をしていただきました「営業秘密に関する大学における普及啓発」。これはそのまま丸々追加していただいて、大変ありがたく思っております。是非この普及啓発を促進する活動を文科省、経産省の両方で、実効性のあるものとして必ず取り組んでいただきたいと思っております。
 もう一つは、12ページの中ポツ4つ目の「中小企業のグローバル展開支援の推進」の最後に「中小企業にとって負担が大きい外国出願、翻訳、海外調査、侵害に係る支援を充実する」。ここで申し上げたいのは、外国出願費用の2分の1を補助すると。特許に150万円意匠と商標で60万円補助をするという施策は大変ありがたい施策だと思いますけれども、これは2011の議論のときに、東京都の産業振興公社の方にヒアリングでお越しいただいた際にも同じことをおっしゃっていたと思いますけれども、この部分については非常に中小企業のニーズが多くて予算を使い切ってしまって、全部の申請企業がこの2分の1の補助をしていただいているわけではない。つまり、この支援を充実する施策はニーズはたくさんあるにもかかわらず、売り切れてしまって、この推進活動を十分享受できていない中小企業が現在たくさんあるということを踏まえて、やっているではないかというふうに言われてしまうと困るので、使いたくても締め切られて使えなかった企業がたくさんある施策ですので、本当にしっかり充実をしていただきたい。どういうふうに書いていただくかは別として、実際に売り切れているメニューなので、非常にニーズが強くあるということをこの場で機会をいただいて、強調させていただきたいと思いました。
 同じことですけれども、13ページの最後の「中小企業の知的財産に対する研修機会の促進」の部分です。これは前回も同じことを申し上げましたが、特許庁は産業振興公社並びに、主にJETROなどで開催をしていただいている方法対策セミナーなどは、本当にすぐに定員になってしまって、うちからも何人も派遣して勉強会に出させているんですけれども、すぐに埋まってしまう。今、実際にこういうセミナーは実施されているんですが、参加したいと思っている中小企業者が十分参加できるほどの規模で開催が行われておりませんので、取組みを強化するとここに記載されていますけれども、これは本当に人気があって売り切れで入手できないサービスにこの2つはなっていますので、特にその充実について、強化と書いてありますけれども、しっかり強化していただきたいと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。公的な機関がやって売り切れメニューが出るというのは珍しいですね。大抵はしようがなくて、職員が総動員して出席者を埋めるみたいのが結構多い中で、これは非常にいいですね。企業は普通はどうするかというと、売り切れメニューがあったら、幻の商品としてプロモーションをするのですが、そうはいかない話です。特許庁のコメントをよろしくお願いします。

○後谷企画調査課長
 今後も売り切れメニューを出せるように、施策の実施を頑張っていきたいと思います。いただきました御意見を踏まえまして、セミナー開催の充実等を図りながら、広く日本中の多くの場所で、開催できるように改善してまいります。

○妹尾会長
 本当に現場の声として、そういうのを反映していただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。西山委員、どうぞ。

○西山委員
 出雲委員のコメントに対してですが、たとえばですが、入学時に全学生が知財に関する項目に自動的にサインをするようことで、大学で営業秘密が起こりにくくすることができる、こういうようなコストがかからないクリエイティブな方法は無いものでしょうか?と申しますのは、前人のものを自分で追体験することによって学習するというのは、学び舎としての大学が持っている機能の中にあるはずです。
 ですから、真似してはだめですよということを追求すると、本来の機能を損ねてしまう可能性もあります。ですから、学校にいる間は、学問のために条件つきで、真似をしてもよいけれど、権利については扱いを気をつけてください、とやるのが良いのだと思うのです。
 やり方を工夫してやっていただくような方法を取っていただかないと、大学が窮屈になり、ますます学生が日本に来なくなるということになりかねないと思うので、その辺りも、注意をするところかなと思いました。

○妹尾会長
 逆転の発想ですね。真似っこ特区みたいな、そういう感じですね。

○西山委員
 その方がいろいろな面白い学生が来るのだと思います。

○妹尾会長
 それでは、時間が押してきたので、次へ移りますが、13ページ以降は人財の話でありまして、これは前々回に御議論をいただいたので、これも含め、全体として言い残したこと、あるいは追加で指摘をしたいというところがありましたら、全体としていかがでしょうか。
 相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 14頁に知財マネジメント戦略に関する研究の推進があります。ここの施策例の最初のところに、知財マネジメント戦略研究拠点という言葉が出てきておりますが、何がこの拠点なのかが書かれていません。分かり易いように修正をしていただければと思います。
 もう一つ、2つ目の施策の例ですが、この研究分析された情報を広く共有し、各種研修内容に反映させるように促すということで、これは上に書いてある目的と随分トーンダウンしたところではないかと思います。

○妹尾会長
 これは次長、お願いします。

○上田次長
 今、お話がありましたように、研究拠点の整理ということを進めていきたいと思っています。具体的には今日来ていただいている特許庁ともよく相談をしておりますし、しっかりした具体的なものをつくっていきたいということで、先ほどのように直させていただきたいと思いますし、2つ目の点は確かに若干矮小化しておりますで、この点はもう少し大きな志を持った形にしたいと思います。

○妹尾会長
 全体を通してで勿論結構ですけれども、ほかにいかがでしょうか。
 西山委員、お願いします。

○西山委員
 15ページについてです。人財の育成と確保が今のトーンとなっていますが、是非中黒ポツを加えて「・調達」というようなニュアンスもつけられませんでしょうか?
 英語を中心とした多言語に対応できる能力を備えた人財の育成を図ると時間がかかってしまいます。
 ですので、そういう人間を海外から引っ張ってくることで、すでに即戦力を入れることも含んでおいた方が即効性があるような気がします。積極的に調達ということを奨励するとした方が、早く成果が出るのではないかと思いました。

○妹尾会長
 局長、どうぞ。

○近藤局長
 先ほどの相澤先生の御指摘ですけれども、ハコモノと誤解されてスタートが切れなくなるのも困りますので、あえて控えめに書いておりますことを御理解をいただけたらと思います。

○妹尾会長
 久夛良木委員、お願いします。

○久夛良木委員
 せっかく特許庁の方が来られているので、問題提起と御質問をさせていただきたいんですが、今、スマートフォンやPADで、アップル対サムソンが相互に係争中のケースでは、例えばUXのところ、画面デザインや画面操作方法のところとか、我々の目に見えるデザインというところを中心に闘っていますよね。でも、これから起こる可能性として、ほとんどの情報処理部分が端末側からクラウドサーバー側に移行して行くだろうと予測されている。そのサーバー側のプラットフォームは今以上にブラックボックス化し、一切その実現の為の手段やノウハウが秘匿されるだけではなく、特許としても出ていかない。外部からは、それらがどういうふうに実現されているかもわからない。むしろだれも気にしなくてもいい、という時代になってくるかと思います。
 そうなったときに私の質問は、例えば斬新なクラウドアプリケーションであるとか、もしくは画期的なUXを考えたときに、それをどうやって特許という形に落とし込めるのか。つまり、目で見えているところはそれなりにわかりやすいのですが、実際にそれを処理しているサーバー側の実態は目に見えない。相当部分が巨大な情報処理システムの中にある。そこに関する資料も特許もほとんど公開されず、インターネット上のプラットフォームの中で行われているということが起こる。これは見方によっては、人類の共通の資産を使って、さまざまなところに活用するというところでいいのですが、これをある少数の企業が垂直統合するといったときには、公正な競争が阻害されかねないのでは?という問題点。
 それから、やはり特許を書くときに、今の特許制度では具体的な実現事例を余すところなく明示的に書けと言うことになっているので、これでは特許を構成する要素全体を書きようがなくなる可能性がある。つまり、主要な構成要素の一部がネットワーク上のクラウドに入ってくる状況を踏まえて、この辺がこれから出てくるような新しい知財戦略の中で、どういうふうに問題意識としてとらえられているのかが二つ目。それから、先程、佐々木委員がおっしゃったように、ひょっとした米国においては、特定の領域が活性化してきたなとなったら、その元となりそうな特許を様々な方向に分割出願をする事で、そこにファンドのような資本市場が結び付く可能性ということは十分に今後あると思うので、この辺については、まだ大きな問題として起こっていることではないのですが、近い将来に起こるかもしれない可能性として、是非御意見をお聞きしたい。
 もう時間が足らない中、私としてはこの点を今危惧しているといいますか、日本として今後どちらの方向に舵を切るのだろうかというのが非常に気になるところであります。

○妹尾会長
 久夛良木委員の言うことは私などは非常によくわかるし、恐らくそうだろうと思うんですけれども、特許庁の中ではざっくばらんな話、そういう議論はどうですか。

○後谷企画調査課長
 御指摘をありがとうございます。これまで技術の革新に伴いまして、特許制度で保護できない部分が生じた場合につきましては、その技術の変遷を見ながら、その時々の情勢に応じた形で、保護対象の見直しを図って参りました。今いただいたような御指摘を踏まえ、今後どのように保護していくのかの検討を進めまして、対応を図って参りたいと考えております。

○妹尾会長
 要するに状況を見極めてという話ですね。

○相澤(英)委員
 アメリカ合衆国の特許制度の方が日本の特許制度よりも柔軟なシステムなので、アメリカ合衆国特許権がそういうシステムを保護の対象に含める範囲が広いと思います。また、アメリカ合衆国ではディスカバリーがあるので、クラウドの中に入っているものについて、ディスカバリーを利用して、権利行使をすることも可能になると思います。日本の特許のシステムはアメリカ合衆国の後を付いていっているようで、付き切れないという状況ではないかと思います。私は、もう少し前向きにシステムの現代化をしなければならないと思います。

○妹尾会長
 久夛良木委員、どうぞ。

○久夛良木委員
 小さいベンチャーがその辺の出願をしようと思うと、米国の方がかなりやりやすいんですよ。まずは論文を書いて優先権を主張し、その論文をそのまま特許出願文書としても提出可能となっている。また米国では、発明が何を目的にしているかということが重要視され、実現のための手段が特許請求の範囲から多少外れていても、凡そ当該発明の範囲内という認識がある一方で、日本の場合、狭義の意味でどうやって実現するかにより重きを置いているい様で、その実現方法全体を詳細に説明しなくてはいけない。この辺に非常に大きな意識の差があるのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。特にエレクトロニクスの世界は機械も含めてですね。ほとんどがデバイス系とコンテンツ系、間を結ぶサービス系というところに全部統合的に産業政策上は変わってきますから、今、久夛良木委員が言われたようなところは、もうこれは起きるのが当たり前だと我々は見ているわけで、それを状況を見極めていて、対応するのが本当に日本の産業政策上にふさわしいかどうかは、大変重要な問題提起をされていると思うので、これは特許庁のみならず、知財専門調査会としても真摯に考えていかなければいけない。考えていって状況を見極めている間にまたやられてしまうというのは避けたいと思っていますので、一緒に少し進めたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、時間が来ましたが、ほかに何かございますか。今日は時間がアップになってしまったので、もし追加の御指摘があれば、あるいはそういえばということを思い出された場合は、事務局ないしは私の方に御連絡をいただければと思います。
 次回が大変重要な会議になりますが、この点について、事務局から御連絡をお願いいたします。

○髙原参事官
 次回第7回の会合は、3月9日金曜日の午後2時から、こちらの会議室で開催をする予定でございます。次回の会合で、「『知的財産推進計画2012』骨子に盛り込むべき事項(案)」の取りまとめを予定しております。委員の皆様には、お忙しい中で恐縮ですが、御予定の確保をお願いいたします。
 「知的財産推進計画2011」の進捗状況につきましては、現在、関係府省と調整をしている途中でございます。この進捗状況自体は知財戦略本部で決定をいたしますが、次回の専門調査会までに暫定版として委員の皆様にも御案内をしたいと考えております。御意見、御質問等がございましたら、次回の会合で頂戴できればと考えております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○妹尾会長
 それでは、すれすれで終わったというふうにお許しいただきたいのですが、特許庁の皆さん、知財政策室の皆さん、どうもありがとうございました。これから十分に意見交換、状況の認識もしていただきたいと思います。
 今日は長い時間、ありがとうございました。