知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第5回)
○妹尾会長 定刻になりましたので、始めたいと思います。皆さん、こんにちは。ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第5回)会合」を開催いたします。本日は、年度末へ向かって大変お忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございます。 本日は、まず、前々回の専門調査会で取りまとめについて御一任をいただいた「知財人材育成プラン」についての御報告をさせていただきます。大変厳しい、あるいは大変参考になる御指摘をたくさんいただきましたので、取りまとめに際してはかなり手を入れさせていただきました。これについて御報告をさせていただきたいと思います。 次に、「知財計画2011」に関する平成24年度予算政府案について御報告をいたしたいと思います。2011が昨年つくられまして、現在どういうふうな形で平成24年度予算案になっているか、ここについての報告であります。 そして、3つ目ですが、「知財計画2012」、これからのものの骨子に向けた提言の案について議論をいただければと思います。 ということで、今日は3つの議題とお考えください。 本日は、大渕委員、久夛良木委員、迫本委員から御欠席との御連絡をいただいております。それから、中村委員は遅れて御出席と連絡をいただいております。 まずは、近藤局長にごあいさつをいただきたいと思います。お願いいたします。 ○近藤局長 本日もお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。 この専門調査会の先生方には、委員へのご就任をお願いしてからちょうど2年になります。今回の取りまとめまで半年間任期を延ばしていただくということで、先日、総理からの任命書をそれぞれの皆様のところにお届けしております。御多忙の中、お引き受けいただいたことに改めて感謝申し上げます。よろしくお願いいたします。 今日、それから次回と続きまして、「知財計画2012」の骨子に盛り込むべき事項について集中的な討議をお願いするところでございます。3月末には「知財計画2012」の骨子を取りまとめたいと思っておりまして、かなり厳しい日程になりますけれども、御審議のほどよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、時間もないので、早速入りたいと思います。 まず、1つ目でありますけれども、「知財人材育成プラン」、これは前々回に取りまとめをすることに関して御一任をいただきましたけれども、それに際して、かなり参考になる御指摘、御指導を皆さんの方から賜りましたので、それについて織り込む、あるいは修文することをさせていただきました。これについて、事務局から報告をしていただきたいと思います。髙原参事官、よろしくお願いします。 ○髙原参事官 それでは、説明に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。 「議事次第」の下を御確認ください。 まず資料1が「『知的計画2012』骨子に盛り込むべき事項(案)」でございます。 資料2は岸委員から御提出いただきました資料でございます。 資料3、「今後のスケジュール」案についてまとめたものでございます。 続きまして、参考資料です。参考資料1が「知財人財育成プラン概要」でございます。 次の参考資料2が「知財人財育成プラン」の本体でございます。 参考資料3は、「『知財計画2011』に関する平成24年度予算政府案等について」でございます。 参考資料4は、「知財戦略に関する論点整理」ということで、前回の会合に提出いたしました資料を付けております。 参考資料の最後が参考資料5、第4回専門調査会でいただきました主な意見になります。 以上、傍聴席を含めて配布させていただいた資料になります。 これに加えまして、メインテーブルのみになりますが、参考資料2の「知財人財育成プラン」に関して修正箇所を表示したバージョンをお配りするとともに、一番下に、「知財計画2011」の冊子を置かせていただいております。 資料の不足などはございませんでしょうか。 それでは、「知財人財育成プラン」について御説明しますが、修正箇所を表示したバージョンを御参照いただくのが分かりやすいと思います。メインテーブルの先生方のみで恐縮ですけれども、参考資料2「知財人財育成プラン」の右上に「修正箇所表示版」と書いてあるものでございます。前回のバージョンから修正した箇所を赤色で示しております。 取りまとめに関しましては、妹尾会長に御一任いただいておりましたけれども、その後、委員の皆さまからちょうだいしましたいろいろな御意見を踏まえまして、妹尾会長と御相談の上、このような形でまとめさせていただいたということでございます。 1枚おめくりいただきまして、「はじめに」の部分で、委員の皆さまからの御意見が集約できるように、情勢認識に関する記載、基本的な概念整理に関するところも含めまして、従来の記載のうち、強調すべきところは更に強調し、新たに補うべきところは補強するという考え方で整理いたしました。 「はじめに」の部分のポイントは、3つでございます。 最初のポイントが、「はじめに」のⅡページの上から3番目のパラグラフ、中ほどになりますけれども、「知財専門人財」の育成のみではなくて、「知財活用人財(知財マネジメント人財)」の育成にも注力していくという点でございます。 ポイントの2番目、その直下の4番目のパラグラフをご覧ください。国内人財の国際化によって「国際知財人財」を育成していくということに加えて、グローバルに確保され、世界を舞台に活躍できる「グローバル知財人財」の育成・確保に着手をしていく、これが「知財人財育成プラン」であるということであります。以上の2点につきましては、1枚おめくりいただいたⅢページの冒頭部分にも再掲し、強調しております。 残る1点は、Ⅲページの上から3番目のパラグラフになります。この「知財人財育成プラン」の本編第4章に人財育成の具体策を盛り込んでおりますけれども、この具体策につきましては、更に充実を図りながら、本年度以降の知財計画に盛り込まれていくものであるということ。そして、第4章に掲載しております施策例は、先行的に例示したものであるということでございます。 これらのポイントを中心に、「はじめに」の記載を修正しております。 これにあわせるような形で、次の目次以降、本編の部分も修正しております。 例えば1ページ目では、2番目のパラグラフを追記してございます。これは、先ほどの「はじめに」の情勢認識に同じ記載を追加しておりますので、それに対応するような形で修正して、「はじめに」と本編との整合を図ったものです。 簡単ではございますが、「はじめに」の部分を中心に、このような修正をさせていただいたという御報告でございます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。この人財育成プラン、私に御一任いただきましたけれども、私が事務局にお願いした観点は今の3点です。 この理由をもう一度御説明しますと、こういうものはホワイとホワットとハウの3点でできると私は考えております。 ホワイについて、先生方の御指摘は何かと言ったら、危機意識を持っているならば、その危機意識をもっと表に見えるような形で書いてはどうかとおっしゃっていただいたと思います。なので、その危機意識をできる限り書かせていただいたということが1つ目。 2つ目、ではホワットは何なのか、どんな人財なのかということについては、活用人財と言っているのだったら、もっとちゃんと書いたらどうだ。それから、単なる国際化ではなくて、グローバルな人財、すなわち日本人の国際化だけではなくて、グローバルに日本に貢献してくれる人財の育成ということを考えなければいけないのではないかという御指摘を賜りました。これがホワットでありまして、これが今、髙原さんがおっしゃった1つ目、2つ目のところです。 3つ目のハウについては、こうは言っているけれども、この施策だけでそれが達成できるのかという御指摘がありました。勿論、それはできるわけはありません。しかし、ここに書いてある施策は何かというと、まずできることから一つひとつやっていかなければいけないという話でありますから、これは一つの先行例示であるということを明記しよう。だから、その後でもっと充実させていくことにしようということを、この中でもうたうことをさせていただきました。 以上、ホワイ、ホワット、ハウについて織り込んだのが、今、髙原参事官の説明された人財育成プランの修文だとお考えいただければと思います。専門人財のみならず、人財活用もするのだ、国際人財だけでなくグローバル人財もやるのだ。そして、施策については、先行例示で今後も充実させていくのだと、これをプランとして充実させていただきました。前々回の先生方の御指摘、本当にありがとうございました。参考にさせていただいて、このように取りまとめさせていただいたことを報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。 それでは、2つ目であります。「『知財計画2011』に関する平成24年度予算政府案について」の報告ということであります。これについて、事務局から報告をお願いしたいと思います。参考資料3ですか。それでは、お願いいたします。 ○髙原参事官 参考資料3をご覧いただけますでしょうか。表紙に全体のまとめがございまして、2ページ右上に「別紙」と書いてありますけれども、各施策項目につきまして府省別、項目別に順次整理したものが、2ページ以降14ページまで続いております。概要につきましては、1枚目で簡単に御説明させていただきたいと思います。 平成24年度の政府予算案のうち、知財関係の総額は約865億円ということでございまして、平成23年度予算総額に対しまして2%増。さらに、平成23年度補正予算による前倒し額を含めますと、合計1,097億円ということになり、平成23年度予算に対し29%の増加ということになっております。 このうち、本専門調査会に特に関係が深い戦略Ⅰと戦略Ⅱにつきまして、中段以降の内訳でご覧いただければと思います。戦略Ⅰの国際標準化のステージアップ戦略につきましては、平成24年度の予算政府案額が約219億円ということで、微減、約4%程度の減額ということでありまして、平成23年度補正予算による前倒しはございません。 もう一方の戦略Ⅱ、知財イノベーション競争戦略につきましては、平成24年度予算政府案額は約357億円、対平成23年度予算額比で約8%増となっております。さらに、平成23年度補正予算による前倒し額を含めますと、総額で約451億円となりまして、平成23年度当初予算額との比では約37%増額という状況でございます。 以上が平成24年度予算政府案等についての簡単な御報告でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。これについては、今回初めて皆さんに御報告という形になりますので、御質問をいただくことは可能かと思いますけれども、何かこれについて御質問ありますでしょうか。特にないようでしたら、また後で何か御質問がありましたら、事務局に寄せていただくというスタイルをとりたいと思います。 それでは、3つ目に入りたいと思います。今日のメインでありますけれども、「知財計画2012」、今後のものですね。これの骨子に向けた提言。すなわち、2012をつくるに当たって、この専門調査会としてどういう提言をしていくかという話であります。2012自身をこの専門調査会がつくるわけではありません。ここをお間違えないようにしていただきたいと思います。そこへ向けた提言を専門調査会がつくるというスタイルになっております。この提言の骨子に盛り込むべき事項を議論したいと思います。 最後に全体について議論していく時間を設けたいと思っておりますけれども、まず順次、項目立ててやっていく形をとります。最初は、事務局から案の御説明をいただくことにしたいと思います。 では、再び髙原参事官、よろしくお願いいたします。資料1です。 ○髙原参事官 それでは、資料1に基づきまして説明させていただきます。 1ページ目の標題の下に、この資料の位置付けを説明しております。資料1は、これまでの御議論等を踏まえまして、事務局において討議用として整理させていただいたものでございます。「知財計画2012」の骨子に盛り込むべき事項として、「知財計画2011」に新たに追加または深掘りの必要があると考えられるものを取り上げたということでございます。 文書の構成は、冒頭に情勢認識を書きまして、その後に、前回の専門調査会でも御議論いただきましたように、全体の骨組みを3本柱で整理をしまして、それぞれの柱の下に、関連する施策を書かせていただいているという形になっております。 1ページの情勢認識につきまして。我が国の製造業は、垂直統合型のチーム力・組織力で競争力を誇ってきた、また、「改善」の競争に注力をしてきたということでございます。他方、欧米企業は、プロイノベーション政策の下で、画期的な産業・ビジネスモデル、更には知財・標準マネジメントを駆使して、世界の産業をリードしております。さらに、中国を始めとした新興国もこのような流れに加わっております。 「グローバル・ネットワーク時代」の到来について「知財計画2011」にも書いておりましたけれども、従来以上の加速感でイノベーション競争が進展している状況にあります。こうした中で、多くの産業領域・分野においては、特許の数や質を中心とした従来型の知財管理だけでは、競争力を維持するのは困難な状況になっております。 知財マネジメントの在り方が、大きく変容・多様化しております。従来は、研究開発成果を事後的に権利化していくという流れにありましたが、今後は、他社の参入を前提とした知財の権利化、あえて権利化しない秘匿化をうまく使い分け、あるいは組み合わせていく。より高度で戦略的な取組が必要な状況になっております。言い換えますと、すべての知財ツールを駆使する「多次元的」な知財マネジメントが欠かせない時代になってきているということであります。 1枚おめくりください。このようなグローバル・ネットワーク時代にあって、各国の「知財システム」間の競争も激化している中で、我が国の「知財システム」もその競争力を高めていかなければいけない。我が国が誇る技術力、デザイン力、ブランド力などを最大限に発揮してイノベーションを創成することによって、競争力の強化につなげていかなければいけないということ。さらに、「知財人財育成プラン」を強力に実行するということに言及しております。 以上が情勢認識の総論的な部分ですが、それぞれの柱について情勢認識を深掘りした部分が、3つの柱立てに対応させる形で、2ページ以降4ページの中ほどまで続いております。 1番目の柱が、「グローバル時代の知財システムを構築する。」です。 2ページの冒頭で「知財システム」間競争の激化に触れておりますが、このページの中ほどにありますのは、主要各国の状況です。アメリカでは、「先願主義」への移行という歴史的な出来事がございました。中国は、2010年に我が国の特許出願件数を追い抜いておりますが、2011年の統計、まだ暫定値ということですけれども、米国を抜いて、今や世界第1位になっております。欧州に目を転じますと、昨年、EU特許制度の導入の実現に向けた議論が本格的に始まっております。 また、隣の韓国もIPハブ構想を掲げて積極的に動いておりますが、我が国の仕組みを参考にしながら、知識財産基本法が制定され、国家知識財産委員会が設立されたのは昨年のことであります。 さらに、ACTAの発効に向けて協調の動きが進んでおります。このような中で、我が国の競争力強化に資するよう、我が国の「知財システム」の一層の整備を図りながら、各国と競争する部分と協調する部分を巧みに使い分けてグローバル知財システムの構築をリードしていくことが必要であると最後に書いております。 続いて、2番目の柱に関する情勢認識について。欧米企業は、プロイノベーション政策の下で、基幹部品・ソフトウェアなどのプラットフォーム部分を押さえた上で、周辺領域を開放して新興国などに競わせている。そのような産業モデル・ビジネスモデルを駆使して世界の産業をリードしております。 他方、我が国の企業には高い技術力がありながら、製品がグローバル市場で大量普及するステージでは、撤退の道を余儀なくされているという状況にあります。 このようなことから、3ページの中ほどになりますが、技術起点のテクノロジードリブンのみならず、事業起点の事業デザインドリブンの競争戦略を重点化することが求められているのではないかということでございます。 最後の3番目の柱は、3ページの一番下からになりますが、「知財人財を育成し確保する。」ということでございます。 冒頭の全般的な情勢認識のところにもありましたように、産業構造やイノベーションモデルが変容し、多様化しております。したがって、必要になってくる知財人財も当然に変容せざるを得ないということでございます。 ポイントは、先ほどの参考資料2、「知財人財育成プラン」の修正点に関するご説明の際にも申し上げました。1つには、「知財専門人財」の育成とあわせて、「知財活用人財(マネジメント人財)」にまでその育成の重点を広げていかなければいけないということ。 もう一つ、「国際知財人財」のみならず、国内外にかかわらず、グローバルに育成・確保されていく「グローバル知財人財」が不可欠になっているという点になります。 ここまでが情勢認識に関する記載でございます。このような認識の下に、4ページの中ほど以降に、柱ごとに施策例を書いております。以下、簡単に柱ごとの施策についてご説明します。 第1の柱が、「グローバル時代の知財システムを構築する。」ということでございます。 その下に項目を2つ設けております。1つ目が、「1.国際的な知財システムの構築に向けた議論の推進」ということで、4ページ下から施策例が続いております。特許制度の国際調和のリード、これは、五大特許庁会合の枠組みなどを活用して、国際的な議論をリードしていくということ。 次に、国際的な予備審査の推進がありまして、アジア諸国を始めとして、国際調査の管轄国の拡大、それから英語による国際的な予備審査を推進していくということでございます。 特許審査ハイウェイについても、アジアを始めとする新興国に更に拡大していく。 国際審査官協議も、従来の短期の派遣形態だけではなくて、中長期滞在して、主要国との間で審査官協議を実施していくということです。 また、意匠の国際登録に関するヘーグ協定への加入については、協定加入に向けた検討の結論を2012年度中に得るということで、「知財計画2011」にも盛り込んでおりましたけれども、さらに、国内制度の利便性向上の検討も含めて、加入に向けた取組を推進していく必要があるのではないかということでございます。 その下、商標の保護対象の拡大に向けた検討の加速については、新たな商標への保護対象の拡大について、適切な法的措置の在り方について成案を得るということ。 加えて、商品や役務の品質などを証明する商標制度の在り方についても検討していくということを書いております。 続いて、知財制度の整備・運用の改善に向けた働きかけを、バイ、マルチの交渉機会を活用して強化していくということ。 さらには、途上国・新興国の知財環境整備ということでありまして、グローバルな知財環境の整備を進めるためには、人財育成を含む適切な支援を実施していく必要があります。 第1の柱の2番目の項目は、「我が国の知財システムの利便性の向上」ということでございます。 まず、英語による特許審査を含むグローバル化対応の審査体制の整備強化ということ、 次に、企業の知財戦略に対応するタイムリーな権利保護とありまして、企業ニーズに応じたタイムリーな特許権の設定が可能となる仕組みについて検討していくという内容です。 それから、特許権の安定性の向上です。中国語、韓国語を含む非日本語特許文献の比率が急速に高まっている、また、審査順番待ち期間の短縮により、近年、公開前に審査される特許出願が増加しているといった国内外の情勢を踏まえ、特許権の安全性を向上させる方策の検討を行って結論を得るという内容になります。 それから、その下に点線で囲った部分がございます。こちらは、まだ施策に落とし込むところまでは至っておりませんけれども、委員の皆さまのお考え、御意見をちょうだいできればという趣旨で提示させていただいております。 グローバル時代における我が国のイノベーション環境整備の観点から、2つの論点についてどのように考えたらよいのかということでございます。 1つ目は、昨年9月の米国の特許法改正の動向です。こちらにつきましては、例えば、参考資料4、前回の会合でお示しした資料の3ページのところで、権利の安定性の向上という見出しの下、米国における特許法整備の動きについて言及しております。「昨年9月の米国特許法改正の動向」の内容としてはこのようなものを意図しております。 枠の中の2点目は、職務発明制度を始めとした知財管理の在り方ということでございます。2004年の特許法改正で職務発明制度についても手当てがされました。新しい法律に基づいた訴訟提起まだ行われておりませんが、企業側には、訴訟のリスクが軽減されていないという意見がございます。 また、ドイツなどを除く欧州の主要国では職務発明が法人帰属という整理になっており、研究開発拠点としての日本の魅力を減じているのではないかという議論、あるいは、グローバル競争の中での産業競争力の強化という観点で、我が国の職務発明制度が障害になっているのではないかという声も聞かれるところでございます。このような点について委員の皆さまがどのようにお考えか、御意見を賜ることができれば幸いでございます。 第2の柱は、「総合的な知財マネジメントを活用しイノベーションを創成する。」ということで、その下の1つ目の項目が7ページにあります。テクノロジー、デザイン、ブランドの関連領域の強化ということでございます。 最初にあります施策が、世界最高水準の知財戦略の研究を推進です。これは、「知財人財育成プラン」の施策例とも強く関連しておりますけれども、日本の競争力強化の観点から、事業戦略に資する知財マネジメントについて研究・分析する場を整備し、その成果を企業に広く展開していくという内容であります。 次に、技術とデザインによる製品の付加価値の向上。地域の中小企業に対して、デザイン活用を知財マネジメントという側面から支援していくというもの。 その下にデザイン産学連携とございます。美術・デザイン系大学の知財マネジメント体制を整備するために、広域大学アドバイザーの派遣を進めていく。 それから、デザイン・意匠活用の普及、これは、デザイン戦略を含めた知財活用に関する先進的な活用事例をまとめて普及を図っていくということでございます。 最後は、営業秘密に対する意識向上、関連団体と連携しながら、営業秘密に対する技術者の意識向上を図っていくという内容になっております。 それから、7ページ一番下からが、2つ目の項目の「産学連携の強化」に関する部分です。 最初に、大学知財本部・TLO機能の最適配置とあります。産学連携活動の効果や効率性に関する適切な評価指標の本格的な運用を開始するというのがまずあって、それから、大学知財本部・TLOの再編・強化について検討を推進していくという内容であります。 その次に、大学の研究成果の事業化の促進ということで、ライフサイエンス分野の先行事例を参考にしながら、大学などの特許をパッケージ化し、公的投資機関の支援を通じて知財の活用を促進していく。 さらに、リサーチ・アドミニストレーターに関しては、「知財計画2011」に基づく事業が開始されておりますが、研究開発支援の専門職として、定着に向けた支援を促進していくということでございます。 3つ目の項目が「中小・ベンチャー企業の知財活動の強化」ということで、最初が、多段階選抜方式のSBIRの推進になっております。本年度から実施予定になっているフィージビリティスタディーに関する新たな運用、これをしっかり定着させていくということでございます。 次に、中小企業の総合的支援体制の充実ということで、「知財総合支援窓口」が核になるわけですけれども、中小企業に近い存在である商工会・商工会議所、金融機関などともしっかり連携していくということでございます。 続いて、中小企業の総合的支援の強化。「知財総合支援窓口」における、弁理士・弁護士などの専門家の方又は海外知財プロデューサーの活用を進め、中小企業を対象とした総合的な知財マネジメントを支援する体制を強化していくということでございます。 また、特許出願に不慣れな中小企業に対する支援も促進する必要があります。「知財総合支援窓口」において取組が進められているところでありますが、弁理士費用の予見可能性を高める出願支援策支援を更に促進していくということでございます。 さらに、中小企業のグローバル展開支援の推進ということで、進出先である各国の知財情報について、データバンクを構築して集積し、そのような情報を効果的に活用していくということが1点。それから、中小企業にとって負担が大きい外国出願、翻訳などに関する支援を、更に充実させていくということでございます。 営業秘密につきましては再掲ですので割愛しまして、その次が中小企業の知財に対する研修機会の促進ということでございます。 新興国の産業財産権制度や模倣対策に関するセミナー、前回の御議論の中でもニーズが高いにもかかわらず、なかなか受講機会が確保できないという御指摘もございましたので、こういった機会の充実を図っていくということを書いております。 それから、1枚おめくりいただきまして10ページでございます。 4つ目の項目は国際標準化に関する部分でございます。最初の施策例として、7分野における国際標準化戦略の実行、つまり、改訂国際標準化戦略を実行するとともに、その進捗効果を継続的に確認する。それとともに、新たな分野選定についても検討していくということを書いております。 それから、前回の論点整理の資料の中にも盛り込んでおりましたけれども、我が国から迅速な国際標準化提案が行えるように、スピーディーな国内審議を可能とする制度の構築を目指していくということ。 また、国際標準化活動への参加のための財政的支援。企業による負担についてはなかなか厳しい現状があるということですので、民間の活動状況も踏まえて支援を強化していくということ。 これらに加えて、認証でございますが、先進技術に関する実効的な認証体制を構築していくということで、例えば、生活支援ロボットの分野などで、認証機関や試験機関の参画を得ながら、認証機関の技能の向上を促して、認証スキームの構築を支援していくということでございます。 標準に関する最後の施策例は、中小・ベンチャー企業の戦略的な国際標準化に関する取組の支援とありますが、中小・ベンチャー企業関係者の国際標準化活動への参画について、あるいは、国際規格へ自社製品を適合させる際の取組に対して、支援体制を強化していくという内容でございます。 以上が2本目の柱に関する施策になります。 それから、11ページ以降が3本目の柱に対応しております。「知財人財を育成し確保する。」というタイトルに続く部分は、前々回の会合でしたか、「知財人財育成プラン」の素案を御説明しました際にお示ししていた内容、第4章の各論の部分から盛り込んでおります。先般の内容と基本的には同じですので、個別の施策についての説明は割愛いたしますが、この柱の下での1番目の項目として、「1.知財マネジメント人財の育成」がございます。 次に、12ページ中ほどからは、「2.グローバル知財人財の育成」、続いて、14ページまで飛んでいただきますと、「3.知財人財の裾野の拡充」。さらに、15ページの下になりますが、「4.知財人財育成プラン推進体制の整備」となっております。 この資料1は、冒頭でも申し上げましたように、骨子に盛り込むべき事項について本専門調査会で議論していただくための基礎という位置付けでございます。委員の皆さまからの御提言、御意見をちょうだいできれば幸いでございます。御検討のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、今からこれについての御議論、御指摘、御指導を賜りたいと思います。今お話のありましたとおり、骨組みがこういうふうになっておりますので、その順番で行きたいのですが、まず最初に情勢認識のところ、またまだ不十分だという声もあろうかと思います。あるいは、こういう点を強調した方がいいのではないかという御指摘もあろうかと思います。まず、情勢認識のところはいかがでしょうか。相澤委員、お願いします。 ○相澤(益)委員 流れとしては、よく整理されてきたのではないかと思っています。ただ、2ページの一番下の行から3ページのところにかけてなのですが、ここの柱は、技術起点型サイクルモデルから事業起点モデルということを大きく打ち出しているわけですね。もう一つ、キーワードとして重要なのは、総合的な知財マネジメントということですね。この2つがここに書かれているのですが、後の方に、これはまた改めてコメントいたしますけれども、何が事業起点型になることによって、システム上、変革されなければならないかという、これが対応していないのではないかという印象を受けました。 それから、もう一つは、総合的知財マネジメントは一体何なのかという点も、後の方でコメントしなければいけないところなのですが、これも何が総合的なのか、ここが明確ではありません。 そこで、今の情勢認識の部分について言えば、事業起点型ということは書き込まれて明確なので、総合的知財マネジメントとは何なのかということがもう少しわかるような形で位置付けられるべきではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。議長が余り不規則発言してはいけないのですけれども、私、全く同感で、事務局に聞いているのは、複合的と総合的とマルチディメンショナルと、一体どういう区分けで書いているのだと聞いているのですが、まだ明確な答えはないので、考えてもらわないといけないですね。それで具体的に書いていただかないといけないということで、後で戻りたいと思いますが、そういう御指摘をいただきました。ありがとうございます。相澤委員。 ○相澤(英)委員 これは、盛り込むべきところで、表現ぶりの問題を余り言ってもあれなのですけれども、例えば1ページの情勢認識の2つ目のパラグラフで、現在の日本企業が、この文章でいくと余りイノベーティブでないような印象を受けるので、ここは外に出る文章としては、日本企業はイノベーティブでないわけでは決してない。表現ぶりの点は、注意していただいた方がよろしいのではないかと思います。 同じように表現ぶりなのですが、3つ目のパラグラフの終わりで、従来の知財管理のみでは競争力に結び付けることは困難になっていると言うのですけれども、従来の知財戦略自体も、依然として、これはAppleケースを初めとして使われているので、ここのところも表現ぶりの問題ですけれども、注意していただくとよろしいのではないかと思います。 2ページ目のグローバル時代の知財システムを構築する。これは事実が書いてあるので、情勢認識としてはいいのかもしれないですが、これに対して後ろの政策がどう対応するのか。つまり、今こういうふうに大変ですよと。大変なところでどう対応するのかというところが問題ではないかと思うので、そこの点の後ろの書きぶりとの対応というのをお願いしたいと思います。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。2つの御指摘をいただきましたけれども、いかがでしょうか。日本企業がイノベーティブであるかないかというところは、これは結構議論があるところではないかと思います。産業競争力は明らかになくなっている。 ○相澤(英)委員 いや、イノベーティブな企業もあるのではないですか。 ○妹尾会長 勿論、欧米にも負け組はたくさんあります。 ○相澤(英)委員 だから、この書き方が、より効果的・効率的かつ安定的に生産提供するという「改善」の競争に注力してきた。何か日本企業が全部そっちに向いてみたいな表現ぶりの感じがするのですね。だけれども、必ずしもそうではなくて、それこそトヨタさんのハイブリッドを初めとして、国際的な技術で、そういうものはあるわけですね。うまく行かなかったのは、マツダさんのロータリーエンジンみたいな、依然として技術的には世界最高標準のものだってあるわけですね。 だから、そういう面で言うと、ちょっと表現ぶりの問題なのですけれども、今の産業のとらえ方が余りネガティブにならない方がいいのではないか。私は危機感はありますけれども、余りネガティブにというところが気になるのですが。 ○妹尾会長 個人的に言うと、私はもっとネガティブにすべきだと思っています。それぐらいの危機感を私は持っているのですが、この辺は意見が分かれるところなので、ほかの委員の御意見を、ほかの点についても結構ですし、今のところについても結構です。西山委員。 ○西山委員 相澤委員がおっしゃった技術起点型サイクルと事業起点型サイクルの違いをというところについて、私も意見を述べさせてください。 技術起点型サイクルの特徴は技術をつくって、保護して、事業化するという流れだとすると、事業起点型サイクルはそれに逆転するような形で、事業戦略をつくって、それを展開する仲間と技術・デザイン開発をして、後からそれを守る知財資源を確保するという流れになろうかと思います。そう理解した上で、中小企業やさらに規模の小さい個人アントレプレナーの立場でこの二つのサイクルを見てみると、事業起点サイクルは大変魅力的です。まず事業にしてみて、お金になるとわかってから知的所有権に投資をすればよいからです。これまでの技術起点サイクルを回そうとするとお金になるかどうかわからないから先行して特許化しないケースはままあるとおもいます。 時間をかけずにプロトタイプをつくる過程の一環として、市場に出回っている既存製品の部品を組み合わせて、仮のプロトタイプを作る際、デザインの業界では既存商品を改善するという意味でトゥイーク(tweak)という表現を用います。ちょっと修正すると意味ですが、修正があまりにも小さいがゆえに、技術としては評価されないものがほとんどです。 しかしこのトゥイークを奨励することは、資本が少ないアントレプレナーに商品開発を行いたいと思わせるきっかけをもたらします。本委員会の中でこのような小さな事業者による些細な修正を扱うのは全体から見たら重要でないように映るかもしれません。また、既存商品の模倣を奨励しているように聞こえかねないので、非常に難しい書きぶりが要求されます。 しかし、これまではタブーとされていたような模倣から入った事業戦略でも、実行の際に、きちっと権利保有者から後からライセンスをしてもらいに行く、もしくは取得する、もしくは事業を売却して知的権利の保有者の傘下に入って実行することもイノベーションを起こす方法として、記載する価値はあるのではないかと思います。そうでないと、イノベーションを起こせる人材が、特許がとれないから、そのイノベーションを起こさないという選択肢に陥ってしまうケースが多いのだと思うのです。ですので、事業起点型サイクルもいいのだよと言うからには、それが特許を持っていなかったとしても、イノベーティブな事業につながって価値を創造できるのだったら、事業を起こしてから、後から知財を押さえに行くのでもいいですよというニュアンスを、もう少し入れてもいいのではないかと思ったというのが私のメッセージでした。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ちょっと今までにない観点の御提案をされましたけれども、ほかにいかがでしょうか。小川委員、お願いします。 ○小川委員 おはようございます。今、話題になったことにちょっと御説明といいますか、私の考えを述べます。 事業起点か市場起点かという話がありましたので、ちょっと整理したいと思いますけれども、今までの私の会社人生30年の経験、あるいは過去10年ぐらいにいろいろな調査をいたしましてわかったことは、事業起点というのは、昔の伝統的なモデルがそのまま通用するものは大体事業起点。日本で言えば、これまでの自動車産業もそうですし、素材産業とか部品とか、もっとはっきり言えば、技術伝播が非常に遅いものというのは、事業起点でほとんど整理できます。それでも勝てるということですね。 逆に、技術伝播が物すごく速いもの、例えばほとんどのICT産業がそうですし、現在のエレクトロニクス産業がそうですね。そういうものは、市場起点でやらないと、幾ら技術的なイノベーションを起こしてもほとんど負けてしまうというのが現状です。では、それを2つに分けて考えればいいかといいますと、ICT産業みたいなものにどんどん移行している。その移行スピードも物すごく速いという意味で、私は危機感があります。これは私の意見です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。産業的な特徴があるということと、産業的な特徴が変容しているということを両方加味しないといけないわけですね。そういう御指摘だったと思います。ほかの委員からいかがでしょうか。よろしいですか。 それでは、私が会長としてではなくて、委員として意見を言わせていただくと、私はこの骨子の情勢認識は、もっと直視型で行くべきではないかと事務局にお願いしています。というのは、これは公に出る文書なので、相澤委員の御指摘もあるのですけれども、ちょっと甘い認識をされても困るなと私は思います。特に政治家の方々を初めとして、まだまだ希望を持てるのだと思ってしまっては、ちょっとがけっ淵になっているところがきついなと思っております。これは私の個人的な意見です。 それから、この中の3本柱、グローバル時代の知財システムを構築する。それから、総合的な知財マネジメントを活用しイノベーションを創成する。知財人財を育成し、確保するという3本柱も、標題はまだまだわかりにくいのではないかと私は申し上げています。理由は、一番最初のものは何かと端的に言えば、他の4極構造に遅れないにしようということではないかと思っています。すなわち5極構造になったときに、4極はそれぞれすごい活動をしているじゃないか。場合によっては4極構造まで落ちたら、時はもう遅いのだぞということを言わなければいけないだろうと思っています。 ですから、ここで米国、中国、欧州、韓国の例が出ているというのは、ほかの4極はこんなに頑張っているじゃないか。日本の方は、確かにACTA等で頑張っている部分があるのですが、知財システム全体としては、もう遅れをとっているのではないかという認識をしないと、5極構造の中で日本の存在感はますます薄くなるぞということです。ですので、グローバル時代の知財システムを構築するというと、確かにマイルドな言い方ではあるのですが、その裏にある厳しい認識は、必ずしもこの標題にはあらわれていないのではないかと思っています。私はそのぐらいの危機感を持っております。 でなければ、これだけ日本の企業が日本の知財システムを使わない状況になるわけはないのです。これだけ使わなくなってきているということは、使わなくなってしまった後では挽回が遅れるということではないかと思っていますので、このところはちょっと厳しいかなと思っています。 2番目は、逆に今度は、その中でどうやって勝つのですか。守りの話に対して、今度は攻めの話をもっとやらなければいけないので、攻めに関しては、産業構造についての認識を情勢として書くべきではないかと申し上げております。特に、先ほど相澤大先生の御指摘があった部分もあるのですが、3ページの下のところのテクノロジー、デザイン、ブランドの複合的な保護・活用というところの「複合」とか、1ページの最初の「多次元的(multi-dimensional)」な知財マネジメント。言葉はわかるのですが、中身は一体何を考えているのかということを明示しないと、これは言葉だけになってしまうと思っております。 私は、複合的は、マルチを言うのか、コンプリヘンシブを言うのか、トータルを言うのか、何を言うのか、よくわからないので、これをきちっと整理して解説ができないと、実は作文に過ぎないということになってしまうので、この辺のところは事務局にもう少し整理をお願いしている最中であります。マルチディメンショナルというのは、私の考え方では、従来の産業財産権内の足し算的関係を言う。それが今度は掛け算的な関係になってくる。それをどうやって、今度は産業財産権と著作権みたいな複合的なものに持っていくか。 前回、角川本部員が御指摘になったようなことを整理すると、マルチディメンショナルというのはそういうふうにきちっと分けなければいけないし、総合的と言っているのが、それが単なる足し算なのか、相乗的な関係を形成するということが具体的に例で出てきているわけですから、それらも踏まえて、ちゃんと例示もできなければいけないのではないかと思っております。 人財育成については、これは先ほどのお話なので割愛しますけれども、情勢認識については、私は委員個人としてはそういうような意見を持っております。 ○相澤(英)委員 ちょっと補足していいですか。 ○妹尾会長 相澤委員、お願いします。 ○相澤(英)委員 多分、私とちょっと意識が違う。システムについての危機意識は、先生と私と多分同一で。つまり、ここに書かれているところは、企業がどうかということと、それからシステムの問題で、システムに関する危機意識、2ページ目に書かれているように、アメリカはこういう状況で、中国はこういう状況で、日本はこんなになっている。このシステムのままで大丈夫という点は、先生と多分意見が同一で。1ページの現在の企業活動等に対する表現ぶりの違いについての意見の違いだと理解していただければと思います。 ○妹尾会長 多分そうだと思います。ありがとうございます。 ○安藤参事官 事務局からよろしいですか。 ○妹尾会長 はい。 ○安藤参事官 相澤先生と妹尾先生から御指摘をいただきましたので、事務局が何を考えているか現時点でひとまず御報告申し上げ、具体的な文章につきましては今後、御指導いただきつつ修正してまいります。 「多次元的」という文言が1ページの下から2行目に出てまいります。2ページでは、国際標準化を含む「総合的」な知財マネジメント。3ページの下から6行目に、テクノロジー・デザイン・ブランドの「複合的」な保護。そして、下から3行目に、もう一回、「総合的」・「戦略的」な知財マネジメントと出てまいります。 文言が錯綜して一体何を考えているのだということですが、「多次元的」とは、まず、国際標準が主要な軸(ディメンジョン)に入ってきたということがございます。さらに、従来の軸を交差する問題が起きております。例えば、スマートフォンでは、意匠vs.特許の闘いになっておりますし、一方で、テクノロジーの話であるのに、省電力に優れるアーム社のアーキテクチャーは、著作権で保護され、強固なエコシステムを形成しています。したがって、一つの軸である特許だけを見ていてもだめ、もう一つの軸の著作権だけを見ていてもだめ、新たな軸の国際標準も見なければだめというように、幾つも次元があるということを、最初の1ページの下から2行目のところで記述しております。 次に、「複合的」とは、3ページ下で、テクノロジー&デザイン、それに加えてブランディングという話も出てまいります。これは、正面から付加価値をどう高めるかという話です。一方で、国際標準の中にどのように特許をもぐり込ませ、バージョンアップの改版権をどうコントロールするかという非常に大事な視点があります。その意味で、国際標準だけを見るのではなく、特許だけを見るのではなく、多次元の軸について更に「複合化」した戦略が大事となっていると考えます。 さらに、ノウハウ秘匿のように敢えて権利化・標準化しないところも含めて戦略を構築すべきですので、外延を意識して「総合的」と表現しております。虚数や複素数のようにお感じかもしれませんが、そこを含めて「総合的」ということです。2ページ4行目では、「国際標準化」を意図的に書き出し、国際標準化を忘れず、「総合的」な知財マネジメントが必要と強調しています。 最後の部分は、「総合的」、かつ賢くやろうということで「戦略的」な知財マネジメントとしています。幾つかの概念が錯綜して、恐縮ですが、思いはこんなところにございます。ご指導いただきながら、整理するように工夫いたします。 ○妹尾会長 ありがとうございます。是非整理して、ここで整理されると、我々も整理さるし、これを読む方々あるいは知財関係者に頭の整理をしていただくことにつながりますので、事務局、是非頑張っていただきたいと思います。我々もお手伝いしますので、よろしくお願いします。 では、4ページ以降に入りたいと思います。グローバル時代の知財システムの構築ということなのですが、これに関して、御意見あるいは御指摘、御指導、御質問、ありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょか。佐々木委員。 ○佐々木委員 この中の特許制度の国際調和のリードとか、5ページ下2つの施策例に関係しますが、知財が産業の発展とか科学の発展に寄与するという本来の姿から変貌しつつあって、勿論全てではありませんが、、その辺のところを日本発信型で、つまり知財システムの崩壊を阻止するような概念を、最上位概念に入れてもいいのではないかという感じがします。と言いますのは、いろいろなところで実際の産業の発展に寄与しない知財が、かなりのレベルで跋扈していると言うと言い過ぎですけれども、そういうふうになってきています。 そういう中において、日本発信型で本当に知財システムというものがどういうことなのだというぐらいのことを、世界を巻き込んでやっていくぐらいの意思があってもいいのかなと思います。先ほどのイノベーションの議論云々ですけれども、これも本当に圧倒的にいいものが開発できれば、たいそうな戦略は要らないですが、例えば技術で押さえても、その代替資本なり、それと似通ったものをビジネスモデルで幾らでも工夫することによって凌駕できる構図になっている場合、今の議論が必要だと思っています。 このステップ、この技術を踏まなければ次のものに行けないようなものを、もしどこかが握ったとしたら、それは戦略も何もなくて、単純な知財システムでもいいのですけれども、今、群雄割拠と言うか、技術のイノベーションの差、技術自体の進歩の差が非常に小さいところでしのぎ合っていることになっているからこそ、いろいろな戦略、ビジネス起点型のモデル云々というのが必要なわけです。 と書きのところで言えば、そういうバックグラウンドがあって、今の国際知財システムの構築に向けた働きかけのところについては、人類がより豊かになる知財というのはどういうことなのだというところを、日本から発信するということが是非必要ではないかなと思っています。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 6ページもよろしいですか。 ○妹尾会長 結構です。 ○荒井委員 今の佐々木委員のお考えに賛成ですが、6ページの2.知財システムの利便性向上、2つ目のところに、企業の知財戦略に対応するタイムリーな権利保護ということで、タイムリーという意味が、個別企業ニーズに応じたタイムリーなということをみんなでやり合うと、みんなで遅くし合って、社会の進歩に当たらないのではないかと思います。 しかし、どうしてもアメリカでトラック3があるからとか、あるいは自分だけ遅くなれば、ほかの手がわかっていいとか、実用化の範囲がはっきりしていいとか、とかくそういう誘惑に駆られがちですが、できるだけ特許がみんなの社会の進歩の役に立つ、すなわち技術進歩をしっかりやる。 それから、権利を設計するということは、他人あるいは社会に影響を与えるわけですから、できるだけ早く決める方がいいという原点に戻って、遅くするという意味でのタイムリーではないようにしたらいいと思います。これは、そういうことをおっしゃる人もいるわけなので。自分だけ遅ければ、勿論いいのですが、みんなが遅くし合うと、これは今までの過去のケースです。 それから、前の方にもフラットなと書いてありましたけれども、国際的にそういうことをし合ったら大変な混乱が起きますので、これは知財関係者ができるだけ早く決めることがいいことなのだ、みんなにとっての科学の進歩、技術の進歩にとっていいのだという原点に戻って、遅くしないように。ましてや、審査請求期間を延ばすとか、そんな議論が起きないようにしていただきたいというのが1点目です。 2点目は、特許権の安定性の向上というのは賛成です。日本の特許権は、安定性がないわけですから、これを直すべきだと思います。それから、先ほどのお話にありましたように、アメリカで特許付与後レビューを導入するということですが、日本の場合、特許が不安定になっている要素の一つが無効審判制度だと思います。前回変えたときに、無効審判はだれでも、いつでもいいということで、極端に言えば特許期間が終わってからも無効にする。したがって、昔払った賠償金を返せということが現実に起きているわけですから、この無効審判を廃止して、付与後異議申し立てにもう一度一本化して戻し、期限とか当事者をはっきりした方が権利の安定になると思います。 もう一点は、ダブルトラック、特許法104条の3が、当初の予定とは違ったように運用されて、これも不安定な要因になっていますので、是非この安定性の向上という観点から、その2点を改善していただくのが必要じゃないかと思います。 それから、質問としては、これの2行目に審査順番待ち期間の短縮により、公開前に審査される特許出願が増加しているというのが、そんなに多くなっているのか。多分、これは中小企業でも早く特許が欲しいということで、早期審査請求したりしているケースがせいぜいだと思います。日本の場合、どうしても今でも実際上、出願から特許になるまでの期間、実質の期間は世界の中でもまだ遅いわけですから、日本から早く審査をして、世界じゅうに出す。それが一番冒頭に書いてあった特許システムの競争力向上になると思いますので、是非早く、よい審査をしていくという方法での議論をして提案していったらいいのではないかと思います。 それから、佐々木委員、おっしゃったように、外国を見ても海賊党みたいなものが出てきて、そもそも知的財産制度というのはおかしいのではないかという議論があるわけですから、そういう議論を、日本としても、特許とか著作権がいい、知的財産を悪用した場合の問題とか、いつも原点に戻って、社会に説明責任をしっかり果たしていく、あるいは制度構築に努めていくということを日本がリードすることに、私も賛成です。 ○妹尾会長 御質問の部分について、事務局でちょっとお答えを。 ○髙原参事官 荒井委員の御質問に関しましては、詳細な数字は特許庁に確認する必要がございますけれども、ここ数年でみますと、公開前に審査の対象になり、特許を受けた出願の件数は、ざっくり申し上げますと、年間数千件程度ということであります。その内訳については、申し訳ございません、詳細なデータが手元にございませんので、申し上げられませんけれども、おおよそその程度の規模でありまして、近年、更に増加する傾向にあると聞いてございます。 ○妹尾会長 荒井委員、今のお答えでよろしいですか。それでは、相澤委員。 ○相澤(英)委員 今の関連ですが、権利の安定化ということが1つ問題になるのですが、そこは、1つは、日本が迅速化のために補正を極めて制限し、分割出願を制限して、あるいは定性が制限される。これも非常に大きい影響が出ていると思いますので、制度としては補正の範囲あるいは分割出願、定性というのを直していく必要があるのではないかと思います。 それから、先ほど荒井委員がおっしゃった審査の時期の問題については、補正とか分割出願、アメリカの場合は継続出願があるわけですが、こういう制度とのバランスの問題というのもあるのではないかと思います。 ここで1つ大きな問題は、私、思いますのは、複合的と最初に言っているのですが、そこでデザインとか商標が大事だということが当然入ってくるのですが、今、日本の意匠制度は出願数も減ってしまって、ある意味制度自体が瀕死の状態みたいになっているわけですね。それにもかかわらず、ヘーグ条約どうこう程度の話では済まないのではないか。もうちょっと意匠法を抜本的に改善する必要、改正して、デザインの時代なのに、みんなが意匠を何でとらないのか。意匠制度に根本的な問題がある。何か表面を取り繕ったような改正では、ここの意匠制度は何とかならないのではないか。 ですから、保護の範囲が狭いとか効力が狭いとか、いろいろなされている議論を踏まえて意匠制度をきちっとやらないと、デザイン保護と一方で言っても、この意匠をとってどういう意味があるのですかということが出てこない。ここが従来の中で、知財の中でも、例えば日本の特許が全体として、私も危機があると思いますけれども、意匠制度は危機としてはそれ以上ですね。そこをちゃんともう少し踏まえたことが必要ではないか。 これは、商標はまだあれなのですけれども、商標のところでも、どうやったら総合的にビジネスの中で知財を生かせるかというときで、商標だって大事なのですね。そうすると、従来の中でこういう商標でいいのか、あるいは効力についてもこれでいいのか。それから、水際措置の関連で言うと、中国パネルで水際措置が中国の措置が違法になっているのですが、あれが日本の関税法と照らし合わせたときに大丈夫なのかという議論があるはずなのですね。この点も、実は水際措置の改善。 それから、これはちょっと議事録に残すかどうかは別として、今、私的使用目的は税関で任意放棄してもらっているのです。そういう意味で言うと、そういうところの水際について、外国に対して模倣品をやめようと言っている運動をしている日本が、そういう水際措置のところをもっときちんとしていく必要があるのではないかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。この御指摘に対して何か事務局の方から。ごめんなさい、渡部委員。 ○渡部委員 その指摘に対してじゃないです。 ○妹尾会長 では、今のことに対して、福島委員、お願いします。 ○福島委員 相澤先生のご意見に反論する訳ではありませんが、今回の資料における知財インフラの整備に関する内容として、意匠権や商標権が明確に記載されたことは、企業として極めて重視しております。弊社の実情から申し上げますと、年間1,200~1,300件の意匠を出願しておりますが、ヘーグ協定に加入していただければ、弊社だけでも極めて大きなコスト低減に繋がると思いますし、これは全ての出願人に共通するお話です。一方で、本質的な議論も大事なことは、勿論です。 ○相澤(英)委員 企業活動におけるコスト低減という視点から、ヘーグ協定の加入は適切に対応していただきたいと考えますし、出来れば中期と言わずに短期でやり切るぐらいのスピード感を持っていただければ、有難いと思っています。 また、意匠の出願数が全体的に減少傾向にある背景に色々な理由があると思いますが、企業として感じているポイントには権利の安定性ということもありますけれども、権利の活用が非常に難しいことがあります。簡単にお話しますと、類否性の判断が各国の審査官、審判官あるいは裁判官によって大きく変動することが、その大きな要因と理解しています。 このような現状から、自社製品のデザインを保護するために意匠権は獲得しますけれども、類否性の判断においてより定量性や客観性が高まると、意匠権の活用においてより戦略的に取組むことが可能になると考えます。しかしながら、現状の類否性判断は非常にブレが大きいため、意匠権の取得目的が自社製品を守るという最低限の次元を超えないところにあると思います。以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。そうすると、これも実は国内だけの話では全然ないわけですね。そこのところをどういうふうに政策的にやるかということは、大きな問題提起をしていただいていると思います。これについては何かございますか。 ○髙原参事官 御指摘の点につきましては、担当府省である特許庁でどのようにその問題をとらえているのか私どもからも確認をしながら、対応を検討させていただきたいと思います。 ○妹尾会長 この問題が出たので、もう一つ関連の話題を出しますと、各国別に知的財産権の扱う組織がいろいろ違うのです。特許庁の場合は、特許をやっているグループと、それから意匠・商標をやっているグループが分かれているのですが、アメリカの場合は特許と意匠がどうだとか、中国の場合はどうだとか、欧州の場合はどうだとかと分かれています。この組織の違いが何を意味するか。その先の、先ほどの安藤さんのお話にもありましたけれども、総合的と言っているときの戦略のつくり方が、恐らく組織の壁の問題も含めて、多分あるのだろうと。だから、政策のつくり方が違うのだろうということがあります。 これは、私は1つ、研究すべき課題だろうと思っています。すなわち、私的財産権自体を扱っている政策官庁の職掌範囲が違うと、政策の総合性に差異が生じるのではないかということがあります。これは、今日議論する話題ではないですけれども、今みたいな相澤先生とか福島さんの御指摘に結局移ってくる問題ではないかと思いますので、この辺も事務局に調査してねというお願いをしてありますけれども、こんなこともあるかと思います。 ほかに。渡部委員、先に当てていたので、ごめんなさい。 ○渡部委員 ちょっと確認。短期と中期というのが、1年から2年と3年から4年なのですけれども、中を見ていると、短期だけ付いているものと、短期と中期、両方付いているのと、中期だけというのはない。これはどういうことかというと、中期と短期が付いているものは、この文章の中で短期のものがあって、それから中期のものがあるという意味なのか、結局は4年か、それはどういう。 ○妹尾会長 これはどうですか。 ○髙原参事官 いずれの施策、「短期・中期」と併記してあるものも含めまして、短期的、すなわち1~2年以内に一定の取組の成果を出すということ期待し、またそのようなスピード感で取り組んでいくという整理をしております。そのような意味で、単独で「中期」というものはございませんが、「短期」とだけ書いてある施策につきましては、1~2年で仕上げていくことを目指すという積もりでございます。 ○上田次長 今の補足をしますが、我々としては、今、髙原参事官が言いましたように、こういう危機感のある時代ですから、できるだけ短期でやりたいものがあって、福島さんがおっしゃるように、ヘーグの話も短期だということは、今の時点でできるだけやっていけるものはやっていきたい。 一方では、制度改正とかの準備が要るということがございます。特許あるいは意匠あるいはほかのところで御議論いただきますけれども、ほかの省庁に関係するものもある。それらについては、各省庁とのすり合わせはこれからでございます。この骨子をまとめるところで一旦議論させていただき、さらに5月、6月の工程表ということで、10年の中で厳密に議論していきたいと思います。そういう中で、省庁が考えているスピードと、産業界を初め、皆さんの方からごらんになられて、実現すべきスピードというものにはっきり違いが出てくると思いますので、そこは厳しく議論をしていきたいと考えます。 ○妹尾会長 渡部委員。 ○渡部委員 そういうことですと、先ほどの御指摘のデザイン方法についても、もう少し抜本的に考えた方がいいかなというものもあります。商標もこの間、先進国並みに動く商標を保護するというようなテーマは短期だと思いますけれども、もう少し先を検討したらいいのではないか。これは、商標と意匠と著作権とデザインにかかわる問題は、例えばインターネット仮想空間上のデザインの保護に関しては、すき間が空いているのではないかというような問題が指摘されていますので、そういうことを含めると、短期しかないというのも、気になったというのが1点と。 それから、6ページの特許権の安定性の向上のところも、何種類か入っていて、中国語や韓国語を含む、これは特許文献、非特許文献を含めて、参照しないで特許審査をするというのは結構クリティカルな問題で。これは短期ですね。恐らくこういう話と、後半のところは安定性の話とか、混ざっていて、これが短期・中期が一緒に決まるのはどうかなという気がいたします。 それから、これは大学関係で、大学知財本部・TLO機能最適配置で評価指標をということで、これも短期・中期となっているのですが、一方で大学関係はみんな意識しないといけない、私としては意識した方がいいと思っていますのは、国立大学が法人化したのは2004年で、ちょうど2014年が法人化法10年なものですから、大学の方でも2004年に実効的に適用されたということもありますし、知財の機関管理も2004年からですので、TLOと知財本部の関係もすべて2004年がスタートになっています。 せっかくなので、10年目の2014年までに、評価指標を運用し知財本部とTLOの最適配置を完了するとするべきです。中期まで入れると2015年になってしまうのですけれども、2014年までにこの課題はすべて結論を得るとした方がよいのではないかという気がいたします。 あとは、9ページです。 ○妹尾会長 ちょっとその辺は後にして、第1が終わってからでよろしいですか。 ○渡部委員 はい。 ○妹尾会長 今の渡部委員の御指摘は、短期・中期と書いてあるけれども、短期の課題も中期の課題も長期の課題もあるよね。それをちゃんと整理しましょうねという御提案だと思いますので、それは事務局の方で是非お願いしたいと思います。 ○上田次長 そのようにいたします。 ○妹尾会長 それでは、第1の4ページから6ページのところまででほかに。山本委員。 ○山本委員 私は結論から言うと、第1の1.の書きぶりをもっと強く書いた方がいいと思います。五大特許庁会合の枠組みを活用して、制度・運用の比較を行って、分析をして議論をリードする。議論をリードすると言うと、頭のいい発言をしましょうみたいで、ちょっと弱い。アメリカが先願主義になった今のタイミングで、IP5で同じ特許出願ルールについて提言するぐらいまで書いていただきたいと思っております。議論をリードするじゃなくて、国際調和に向けた提言をすると。 その前の部分を直してくれと言うのではないのですけれども、今、非常に厳しくて負けていてグローバル化の中で劣っていて、技術は勝っているのだけれども、ビジネスで負けていると書いているわけですね。なので、総合的・戦略的に何とかしないといけないですねと。だけれども、議論をリードするだと、やはり弱い。 もっと言うと、例えば中国の技術輸出入管理条例の24条ですか、日本の企業が中国にライセンスしたりするときに、日本の企業に対して物すごく不利な条例があったりしますね。それは、日本の政府はWTO違反だと言っていますけれども、ハーモナイゼーションに対して足かせになるような各国のルールについては、日本はもっと攻めていくべきだと思うのです。 なので、そこについての書きぶりをもう少し強く書いていただいた方がいいと思います。なので、ただ提供するだけではなくて、ハーモナイゼーションに適さない他国の制度については、いろいろ言及していくとか改善を要求していくということまで書いていただいた方がよいのではないかと思っています。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。済みません、順番なので、次に、中島委員、お願いいたします。 ○中島委員 先ほどの渡部委員の意見と同じでございますけれども、私よりもかなり柔らかい口調で説明してくださいましたので、なかなか言いにくいのですけれども。 要は、前からお願いしていますように、この戦略に定量的な部分が非常に少ない。定性的になっているところが多いということで、短期・中期ということも一、二年とか三、四年なら、その数字でいいじゃないかという気がしますし、2年と4年ではこれだけスピード感のある時代に、全然違う。2年たったら世界ががらっと変わるわけです。それが2年になるのか、4年になるのか、わかるような形で記載して、今後かなり詰めるということですので、それをお願いしたいと思います。 それから、全体的に情勢認識のところも含めて、今後これで一体日本はどうなるのか、何年後に何が達成されるのかということを、目線を上げて是非書いていただきたいと思います。何となく進もうよというのではなくて、各国では5年計画とか10年計画とか、きちんと出ているわけで、日本だけが出ていないような感もいたします。そうすると、知財関係者に、少なくとも何年後はどういう形になるのだということが見えるということが大事かなと思いますので、その辺の気概を持って、是非よろしくお願いいたします。 ○妹尾会長 ありがとうございました。済みません、お待たせしました。お願いします。 ○高柳委員 6ページの論点をいかに考えるべきかという中の職務発明制度、35条の件ですけれども、これは日本に研究拠点を有する企業にとっては、少なからず負担になっていると思います。これは、各業界からいろいろな意見が出ていると思いますけれども、日本だけとは申しませんけれども、アメリカは何もない。そういう中で、競争をやっていく競争力強化の観点からは、抜本的に見直すべきじゃないかなと私は個人的には思っています。 とりわけ今回、技術拠点企業型からビジネスとか事業デザイン、そちらからということであれば、そういう意味からも、こういう従来型のことで日本に研究拠点を持つ企業が、競争力において不利。35条は、法人帰属とか、いろいろ各国あります。そういうことを含めて、抜本的に見直しをやっていただきたいと私は思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今のことに関して、ほかの方で。江幡委員、お願いします。 ○江幡委員 先ほど事務局から御案内がありましたように、職務発明に関しては2004年に法改正がされていますので、恐らく、こういう問題提起がされると、改正後の法律に関する判例を待つべきではないか、改正後も問題があるかどうか様子を見るべきではないかという意見が出るのではないかと思います。しかし、判決が出て、固まった方向性が出るのは、5年、10年又はそれ以上の期間がかかると思いますので、その間、本当にずっと様子を見ていていいのか正直疑問に感じます。 したがって、今、高柳委員がおっしゃった職務発明の問題に関しては、先ほどのような主張は当然に出るだろうけれども、改正後の方向性が見えるまで待っていてはいけないのではないかという問題意識を前提として持った上で、検討すべきではないかと思っております。 ○相澤(英)委員 では、その論点で。 ○妹尾会長 相澤委員。 ○相澤(英)委員 前の改正のとき、審議会の委員をしていたもので、私も戦犯の1人だと思います。 先ほどの御説明の中で、むしろ法人発明というのは、イギリスとフランスがそうですが、制度的に言うと多くないと思います。ただ、現行法に問題がないかと言えば、こんなことを言うのはあれですが、2004年の改正は、できた案は、後で言葉を直しますが、こう言うと中途半端な解決なので、35条を廃止してしまうという考え方、あのときも議論があったのです。 全部契約でやるというアメリカ型、それから法人発明にはするけれども、補償金が全くなくなるわけではないけれども、アウトスタンディング・ベネフィットがある場合に払うというイギリス型とか、いろいろあるのですが、現行の制度では、幾ら払ったらいいのかよくわからないというのは事実だと思います。あの法律を見ても、どうやって幾ら払ったら、企業としては安全なのかというのは、それをどうですかと聞かれれば、我々だって法解釈として非常に難しい。 だから、そういう面でビジネスとして困るという面があるのであれば、まだケースはないかもしれないけれども、前回のは不十分であったことを認めて、もう10年近く経つから変えようかという議論があっても、私はいいのではないかと、前回の改正の経緯を知っている者としては申し上げたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。という積極的な意見が多いのですが、佐々木委員、お願いします。 ○佐々木委員 今いろいろ出された意見と同じなのですけれども、職務発明のところでは、個々の企業はかなりの内部エネルギーを使って、将来的に問題にならないように全部やっていると思いますし、個々の企業が、優秀な発明者の発明をそのまま搾取するようであれば、当然優秀な発明者は離れていくわけで、そういう自然の摂理というか、それに任せてもいいレベルのことだと思いますし、いい発明者をリテインしようと思えば、より多くの補償を出すのは当たり前だし、裁判の不確定さが大きな問題だと思っています。 ○妹尾会長 ありがとうございます。時間はないのですが、今のことに関して、福島委員、何か御発言ありますか。 ○福島委員 一企業の立場として自然の摂理は勿論ですが、市場原理にしたがった発明の奨励を適切に行うことが必要であると同時に、法によって強制される職務発明制度を廃止することが可能であれば、強く期待したいと考えています。 ○妹尾会長 ありがとうございます。実は、出雲さんや西山さんにも伺いたいのですが、時間の関係があるので、次回、この問題。次長。 ○上田次長 今、職務発明のところで産業界の方々あるいは先生方から御意見をいただきました。それから、その前に特許の基本的な考え方をもっと打ち出していくべきだし、単にリードをしていくと書いてあるけれども、どの程度の覚悟で、何をしていくかわからないという御議論もありました。こういう特許のある意味で根本に関わるようなことについて、非常に正面からいろいろ御議論いただいたと思います。 特許庁の方も何もしていないというわけではなくて、まさにここに書いてある、世界に向けて調和していかなければいけないと、大分かじを切ったのは、去年、おととしぐらいから検討されて、これでも大きくかじを切ってきたというところだと思うのですね。 それから、職務発明についても、勿論、彼らも産業界あるいはほかの方々からの御意見も聞いていると思います。そういう中で、次回は都合がつきましたら、特許庁からしかるべき者が来るようにして、今日の御議論いただいた点を更に議論を深めるという形をとらせていただければと思います。 ○妹尾会長 どうもありがとうございます。 それでは、済みません、私の差配が悪くて残りが少なくなりましたので、第2の方に移らせていただきたいと思います。6ページの下以降、7ページから8ページ、9ページ、10ページ、11ページの1行目までです。ここの中で。中島委員、お願いします。 ○中島委員 7ページの下から2番目、営業秘密に対する意識向上でございます。日ごろ我が国の持つ営業秘密、それから技術秘密の流出というのは、想像を絶する状況でございますし、この時点でもどんどん日本の技術が海外に流れています。それを防止するのは、なかなか意識向上だけでは難しいのではないかと思っております。更に、その意識向上も勿論大切ですけれども、何らかの施策を考えないと、この5年、10年、知財推進計画が目標を達成する時点では、それの倍ぐらいの技術流出で足を引っ張られてしまって、何の意味もないということになりかねません。 これは技術分野に限りません。製造業だけでなくて、サービス業、食品、建築、すべての分野で技術流出が今、どんどん拡大しています。是非、新しい施策をということで、ここに盛り込んでいただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。相澤委員、お願いします。 ○相澤(益)委員 この章は、冒頭申し上げましたように、言葉の混乱が生じているところをまずただして、しかも、ここは知財戦略を展開するところです。戦略とは何かということが明確になるようにアレンジする必要があろうかと思います。 それで、まず第1点は、テクノロジー、デザイン、ブランドの関連領域の強化ということになっているわけですが、これは関連領域を強化したってだめなのであって、ここのところが先ほどの説明では複合的というところに対応するのではないかと思います。それを明確に打ち出した上での知財戦略という形にしないと、ただ単にいろいろなことが個別的に述べられているに過ぎません。 その次に、2番目が産学連携になっているのですが、これを見ると、ここで戦略がますます見えなくなってしまうということにもなるので、順序ということで考えれば、4ポツの国際標準化が1に対応して、標準化面から見たときの知財戦略ということで続き、その後、産学連携とか中小企業の話が出てくるのではなかろうかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ちょっとひとり言をつぶやきますと、実はこのテクノロジーの関連領域というタイトル自身も、私も随分事務局に申し上げているのです。「の関連領域」じゃなくて、「を関連させる領域」を強化させるのではないかと申し上げているのですけれども、おっしゃるとおりだと思います。荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 8ページですが、3.中小・ベンチャー企業の知財活動の強化ということで、きちんと柱を立てていただいていることをお礼申し上げます。 9ページで、上から2つ目の括弧に、特許出願に不慣れな中小企業に対する支援の促進ということをやっていただいたのは、大変な進歩だと思いますので、お礼申し上げます。ただ同時に、知財コンダクターが費用の予見可能性だけじゃなくて、今、TPPとか、いろいろ議論も進んでいて、中小企業も外国の中小企業と技術で競争しなければいけない状況になっています。 ですので、例えばアメリカの中小企業との競争を考えると、アメリカの特許上の減免制度ということを念頭に置いた検討を始めるとか、少なくともそういうことをやっていただいた方がいいのではないかということで、もう一項目、予見性を高めるだけじゃなくて、こういうTPPの議論が進むような状況にかんがみ、特許料の減免をもっと前向きに検討するようなところまで是非書いていただきたいというのが1点です。 それから、次の中小企業のグローバル展開支援の推進は、趣旨は賛成でございます。締めくくりに、中小企業にとって負担が大きい侵害に係る支援を充実するとなっているのですが、実は中小企業も今、国際展開をしているわけでして、これが特に大企業以上に大変な問題になっております。確かに2004年の知財推進計画のときは、にせもの、模倣品、海賊版対策を、我が国外交上の重要政策に位置付ける。在外公館においては、大使自ら先頭に立って、取り締まり当局への要望・要請などの支援活動を積極的に行うということも書きました。 是非、それ以上に事態が深刻になっていますから、もう少し外務省在外公館が中小企業の侵害問題について、しっかり応援するということを打ち出していただきたい。1項目ぐらい立ててやっていただくことが必要かと思います。 それから、その次の営業秘密に対する意識向上は、先ほど中島委員から御指摘があった御趣旨は賛成ですが、特に中小企業にとっては、技術者の意識向上という問題じゃなくて、そもそも中小企業の経営戦略上、経営者がどうとらえたらいいのか。それから、彼らも海外展開する際に、勿論技術を提供しなければ、いい品質でできない。海外生産をしなければいけないわけです。そういうときに、営業秘密の保護あるいは技術の保護と海外展開との関係を、中小企業の経営戦略上、どうとらえたらいいかというのがある。 それを今、日本で言うと、不正競争防止法とか、そういうマニュアルをもうちょっと載せてもらうとか、相手政府への保護のための手段はどういうものがあるか、何かもう少し総合的な技術流出の防止策、それから技術流出が起きたときの手当ての方策について、中小企業の場合には、総合的に書いて支援していただいた方が国策になるのではないかと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。出雲委員。 ○出雲委員 同じく9ページの中小企業に対する支援で、私、前回、費用の予見可能性を高めることはお願い申し上げたのですけれども、料金減免のお話をせずに終わってしまって、ここからに見事に抜け落ちております。3つ、抜け落ちてしまっているものがあるのではないかという指摘させていただきたいと思います。 1つ目は、中小企業並びに大学発ベンチャー企業が特許を出願する際に、アメリカ並みの料金減免についても記載をしていただきたい。 2点目は、8ページ目の一番下、中小企業の総合的支援体制の充実とあるのですけれども、中小企業にとって一番必要であると思われますのは、まず、中核である知財総合支援窓口に相談すれば、その後、商工会・商工会議所、金融機関、大学技術移転協議会等と連携して、総合的に支援してくれるということを、中小企業にしっかり啓発していくということもあわせて、ワンストップで相談すればいいのだ。そうすれば、海外進出についても、海外知財プロデューサーとの橋渡しもしてくれるということで、受け皿をはっきりさせるということを、この8ページ目の一番下に記載があるべきではなかろうかと思います。 3点目は、産学連携の強化で、ポツが3つありますけれども、3つ目の最後に、リサーチ・アドミニストレーターを積極的に活用していこうということがあります。ここで私、声を大にして申し上げたいのは、今、中島先生と荒井先生がおっしゃられたのですけれども、大学の産学連携で大学発ベンチャー企業がさまざまな新しい技術発明等を行ったときに、大学の先生とか、その先生の研究室にいるポスドク、博士課程、修士課程の学生がまだまだたくさんいるわけです。そういった学生や大学の先生方が営業秘密に対する意識をもっと向上していただかないことには、大学の先端の知を産業に、そして知的財産として使っていくことができないと思います。 この営業秘密に対する意識向上を、中小・ベンチャー企業で行うだけではなくて、特に例えば文部科学省から大学の研究機関の側にも、営業秘密や知的財産の重要性をしっかり周知徹底を図らないと、危なくて産学連携、大事なことを言えないということになると、その研究が十分なスピードではできなくなってしまいますので、この2の産学連携の中にも、営業秘密に対する意識向上。 特に、大学の研究室、先生方、生徒さんも含めて、この必要性について周知徹底を中小企業庁からベンチャーに対して行うだけではなくて、文科省などを通じて先生方にもしていただくというところが、全くここに記載がございませんので、以上3点。 料金減免のことと、ワンストップであること。そして、大学における産学連携のベンチャー企業が、企業の側も勿論意識を向上する必要があるのですけれども、大学の側でも秘密情報についての意識向上を十分図っていただきたいという3点、申し上げさせていただきました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。江幡委員、お願いします。 ○江幡委員 8ページの3つ目に、大学の研究成果の事業化につなげる取組みということで、大学や研究機関の特許をパッケージ化して活用するということが記載されています。よくわからなくて教えていただきたかったのは、前文のところで、技術起点型のサイクルモデルから事業起点型のサイクルモデルに重点を置くと言っている一方で、この記載の文言を見ると、どうも技術起点型のサイクルモデルになりそうな感じがします。このスキームは、事業起点型のサイクルモデルだということであれば、その点が表現されるように記載したほうがいいように思いました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。確かにそのとおりですね。佐々木委員。 ○佐々木委員 7ページの一番上なのですけれども、質問が1点と、こういう位置付けで考えていましたということを申し述べさせていただきます。 世界最高水準の知的財産戦略の研究推進、ここは今、知財研等のすべてはよく承知していないのですけれども、現存の知財研を同じように書くとしたら、それとどこがどう違いますかというのが1つ。 それと、私はこれまでずっとしてきたような議論を、今後ここがしていくのだろうなというぐらいの位置付けのつもりで、個人的には解釈していたので、ここだけは別格と思うのですけれども、そこまで考えていたのは私の考え過ぎでしょうか。非常にここに思い入れがあるものですから、それをお伺いしたいと思います。 ○髙原参事官 佐々木委員からの御質問、7ページの一番上の施策につきましては、「デザイン」などの個々の単独の領域だけではなくて、知財権あるいは知財を広くとらえて効果的に活用していくために、研究・分析をしっかりと行い、その成果を展開できるような場をつくっていくということであります。そのような意味において、2番目以降のほかの施策とは位置付けが異なると考えております。具体的にどのように動かしていくかにつきましては、引き続き、関係省庁と議論していく必要がございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。小川委員。 ○小川委員 今、皆さんが営業秘密の話をおっしゃったので、この重要性を私からも申し上げたい。、中島委員のご指摘を待つまでもなく、我々がビジネスの前線で目にするものは、悲しくなるほど日さんな技術流出です。小規模企業のケースはそれほど顕在化していませんが実態は酷い。大規模企業のケースでは特に酷い状況になっていることが至るところで指摘されているので、皆さんもお聞き及びでしょう。我が国は1996年の第一期科学技術基本政策から現在までの15年間に200兆円の研究開発費を投じて幾多の技術イノベ-ションを起こしました。しかしその成果の多くが流出していたとすれば、巨額投資が国の雇用や経済成長に結びつかなかったのです。 それで、ご提案したいのは、営業秘密の漏洩実態を広範囲で調査し、産学官がこれを共有する必要があるのではないでしょうか。これを基点に営業秘密の漏洩が、あるいは技術漏洩が日本の競争力だけでなく、グローバル経済成長にもどんな影響を与えるのかというのを、議論しなければなりません。この議論を経ないと解決策も生まれないので。是非これをおやりになるように御提案したいと思います。 ○妹尾会長 今のお話にちょっと加えると、技術流出だけでなくて、技術者流出もありますし、最近はデザイナー流出まで起こっています。要するに、知財そのもの、知財権の流出、それから知財者の流出、これらの実態は確かに把握されていないので、これまた3年もかかって調査していては話にならないので、早急にやらなければいけない問題だということだと思います。相澤委員。 ○相澤(英)委員 1つ、今、技術者という問題が出たのですが、憲法上、職業選択の自由が保障されているということでございますので、この点については十分に留意されなくはいけない。どこで働くこともできるのだということ。 もう一つ、営業秘密でございますけれども、現在の情報化社会において、秘密を維持するということは物すごく難しい。これは、ウィキリークスが、真偽はともかくとして、仮に厳格に管理している国家秘密が流れているとすれば、それが流れるような状況下で、企業が秘密を守ることは極めて難しいというのが現代社会ではないかと思います。その中で営業秘密を制度的に保護しようと思っても、これには限界があるので、むしろ制度的な限界があるということを皆さんに理解してもらう必要があると思います。 中小企業については、先ほど御指摘がありましたように、そもそも管理する人が秘密として管理しなければ、営業秘密として保護されないので、そこの点については、管理するか特許をとるか、そういう選択で、そこを図る。いわば制度の理解を技術者に図ってもらうよりは、やる管理者、経営者に理解してもらわないと、むしろそちらの方が大きい問題。 それから、先ほどおっしゃったアカデミアなのですけれども、アカデミアというのは、勿論その副次的産物として知的財産というものがあるとは思いますが、もともとはアカデミアですので、私がアカデミアのことを言うと、ほかのアカデミアの先生、相澤大先生に笑われるかもしれませんが、本来の在り方ということと折り合いを付けたということが、知財戦略とは、企業における研究開発とは違う科学の探求というものがそこにあるということを忘れないでいただきたいと思います。 ○妹尾会長 小川委員、お願いします。 ○小川委員 一般論としては相澤先生の意見に反対はいたしません。ただし、現実は一般論ではどうにもならない悲惨な状況におかれているのが実態であり、国富が留めもなく失われているのです。ここで我々が留意しなければならないのは、1980年前後のアメリカも、現在の日本と同じ状況におかれていたという事実であり、ここからアメリカ政府が競争政策や知財政策を一変させ、同時に民間企業も技術漏洩をプロテクトするためのビジネスモデルや知財マネージメントを生み出した、という事実です。創出していたのです。まず政府が制度設計を工夫し、企業人のマインドを変え、企業人も自ら産業モデルを変えて行きました。背後に、技術情報の漏洩がアメリカの国力を著しく弱体化させている、という共通認識があったのえす。しかし日本だけがいまだになぜ変えられないのか、変えられない背景に何があるのかを、我々は理解しなければなりません。しかし実態を共有しなければ前に進めないので、せめて実態調査ぐらいしてほしいということです。 ○相澤(英)委員 実態調査に反対するものではございません。 ○妹尾会長 渡部委員。 ○渡部委員 営業秘密のことに関して、幾つか分けて考えないといけないのが、不競法上の問題、これは前回平成21年法で、図利加害目的であって営業秘密を領得する行為まで刑事罰の対象とすると改正して立件しやすい形にしたのですが、その直前には実態調査なりアンケート調査をやっています。これはさんたんたる結果だった。非常に重要な先端技術の流出ということが、かなりのパーセンテージあったという結果が出ている。今回、改正して、まだ間もないですけれども、その状況が変化しているのかどうかということについては、少し短い間隔でも、注意しておいた方がいいだろうということが1点。 それから、そのときの調査でもそういう結果だったのですけれども、日本の中で漏れていくのではなくて、現地法人から漏洩するわけですね。その話は、これはもう日本の不正競争防止法の話ではなくなってしまうので、そこは別に考えなければいけない。ここの中で言えば、二国間の政府の働きかけとか、そっちになっていくと。 もう一つ、制度で守れる部分は限界があるのは間違いないです。そこについては、賢いやり方というものがあるわけで、どうしても不競法のケーススタディーで、こういうところから漏れたとか、いろいろあるわけですけれども、実態としてこういうやり方がうまくいくということを学ぶことが必要です。中小企業の方は人数が少ないので、やりやすい面もあるが、特に大企業ではそれは難しい。最近では、海外進出を機に、今までノウハウにしていたものを特許出願しましたみたいな管理もあるわけです。だから、そういうことはマネジメントの課題としてとらえて、そこのよりよいマネージをするためにはどうしたら良いかも課題であると考えます。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。西山委員。 ○西山委員 妹尾会長がおっしゃったデザイナー、技術者の問題であるという指摘に、追加でコメントさせてください。 労働人口の流動性が非常に高いIT業界に限った話かもしれませんが、技術者の流出を避ける方法を議論するのと平行して流入させる議論も是非、行っていただきたいと思います。 技術者の流出入に伴って多くの機密情報が双方向に漏洩することが起こるのは、大変遺憾なことではありますが、それ以上に優秀な技術者を他国に持っていかれて事業機会を逸することも大変な損失であると認識しています。 私のところにはたくさんのcurriculum vitae、(CV、職務履歴書)が送られてきます。人によっては前にいた会社、もしくは今いる会社で、どのプロジェクトで何をやっているかということが書いてくるケースもあります。採用する側は採用のプロセスでその技術者が何をやったかを見て採用することができているのが、中途採用の実態です。 ここでは、CVに過去のプロジェクトの詳細を記載することの是非を議論すべき場ではないと思いますので、話を先に進めます。職務履歴書は例えばLinkedinというSNSに行けば、会員になれば、かなりの情報が閲覧可能です。情報を出す側の営業秘密に対する意識向上は大事で、そのための告知や対策は、必ずとらなければいけないのですけれども、情報のシェアはすでに行われており、これを取り締まるのは実際的ではないと思われます。しかもCVは英語で書かれることもが多いので、仮に取り締まるとしたらコストは大変高くなってしまうのではないでしょうか? そこで、戦略としてどうするか。ここがすごく大事だと思います。 この会議では流出をどう避けようかという話をしているわけですが、私は、情報の交換が防げないなら、流出を防ぐ以上にどうやって流入を促進させる方法を議論しても良いのではないかとおもっています。 インド、ウクライナ、ハンガリー、ロシアの技術者に最近仕事をネット経由で発注するという話を私の周りでは聞くようになりました。いずれの国も彼らは英語が話せて高い技術力を持っている親日派のエンジニアが多い国です。これらの国から日本にこられたエンジニアもいることも良く知られています。 もし、日本、日本の企業の知的財産を用いた事業を促進させるのが戦略であるなら、インターネットを通じて海外にいる技術者と仕事をさせるような支援をすることで、技術の流入を促進させることができるのではないかと思っています。 機密情報の取締りを強化しつつ、技術者はしっかり呼び寄せる。前者だけになってしまわないことが、我々の知財立国としての在り方を促進することにつながると思っています。 私が申し上げたかったのは、まずテクノロジー、デザイン、ブランドを生み出す人たちがどんどん情報を開示するような時代になっているので、彼らが住んでいるところが海外であろうとも、彼らが持っている競争力の源泉になりそうなものを日本の企業が引き込むようなことが重要であるというポイントを、本文のどこかに書くべきではないかと思った次第であります。 ○妹尾会長 ありがとうございます。いずれにせよ、この問題は、リスクの防止ではなくて、リスクへの対象方法というのは、通常6つあると、少なくとも私は大学院で教えています。あの手この手、防止、需要、分散から何からあるわけで、それらをそれこそ総合的に考えていかなければいけない問題だと思います。 ちょっと時間が来たので恐縮ですが、今日の御議論はまだまだ続ける部分があろうかと思います。先ほど職務発明制度とともに、今の技術流出の問題についても、どうしましょう、専門の方、時間があればの話ですけれどもね。 ○上田次長 都合が付けば、先ほど渡部先生からお話がありましたように、また小川先生から非常に危機意識をちょうだいいたしましたが、これは関係省庁でもこの問題は非常に深刻な問題だととらえてきて、その結果、不正競争防止法の改正ということにもつなげて対応してきたわけです。ただ、その後も、現状どうなっているのだというお話が強く、今日あったかと思います。 そういう意味で、関係省庁の方からも、時間の調整ができれば、次回にこの場に呼びまして、こういう問題についてどういうふうに実態がなっているか。更に検討として、どういう方向があるかということについて、もう少し議論を深めさせていただければと思います。 ○妹尾会長 誠に申しわけありません。時間が来たのですが、数分の延長だけ認めていただけますでしょうか。済みません。 7ページのテクノロジー、デザイン、ブランドの関連領域の話、言われた相澤先生がいなくなってしまったのであれなのですけれども、この下にある施策が足し算的関連の話だけで、掛け算的な活用とか、あるいはここに書かれている排他権を多重化するというだけの話で、競争価値の相乗的な形成とか、そういうところの施策がないので、この辺も同時に私は、委員個人としては考えていただきたいと考えております。 今日は、この話にプラスして、岸委員から資料2の提出が実はございます。誠に恐縮ですけれども、ちょっとお時間をちょうだいして、岸委員、御説明を簡単で結構ですので、していただけませんでしょうか。 ○岸委員 よろしいのでしょうか。手短にやります。前、インテレクチュアルベンチャーズという会社の説明をしたときに、いずれインベンション・キャピタル・マーケットができるだろうと私は申し上げたのですが、そのとき数年後にと言った記憶があって、その数年も四、五年と思っていたのですが、どうやらかなり早くできそうです。ただ、いわゆるインベンション・キャピタル・マーケットじゃなくて、ちょっと形態は違っているのですが、去年12月13日に一報が流れて、まだA4の紙で1枚しか出ていないので、具体的にはよくわからないのですが、一応柱だけ御説明します。 ここに書いてありますように、Intellectual Property Exchange International、IPXIと訳しています。日本語に訳すと、知的財産国際取引所、こういうものが2012年中にできるということが、去年12月13日に決まりました。12年のいつかというのはわからないのですが、一応12月13日に1,000万ドルの、80円レートで8億円ぐらいですが、これが振り込まれてスタートできる体制が整ったということです。 そのA4・1枚紙の中に書いてある一つのポイントを申し上げますと、次のかぎ括弧の中で、これはちょっと読みます。「IPXIは知的財産を対象とする世界初の金融取引所であり、IP資産取引と技術移転のための中央市場を提供し、IP所有者、投資家、トレーダーなどの市場参加者に対し、透明性の高い価格設定と標準化された取引を目指す」とうたっています。 創立会員がシカゴオプション取引所、フィリップス、オーシャン・トモ。オーシャン・トモは、もともとパテントのオーシクョンをやっている会社なので、多分中核はここが主導している感じがします。そのほかに、ラトガースとかノースウェスタン大学、ユタ大学、これらが加わっています。取引所は、シカゴオプション取引所内に置くということまでも発表されています。 次が役員ですが、共同会長がジェラルド・パンネクークという前のシカゴ気候取引所の社長。この気候取引所というのがポイントでありまして、もう御承知のように、オプション取引の典型なのです。これの第一人者をトップに持ってきて、これを動かそうという発想のようです。取締役にはマーシャル・フェルプス、これは有名で、マイクロソフトのIP戦略副社長でマイクロソフトのIPを立て直したと言われると同時に、その前はIBMの知財担当の副社長をやっていて、2年前か3年前、知財殿堂入りをした、これもアメリカで有名な知財専門家です。 それと、名前だけ申し上げますと、ルート・ペータースフィリップス副社長、リチャード・デュフォーCBOE執行副社長。 取引対象のところがインテレクチュアル・ベンチャーズが考えていたインベンション・キャピタル・マーケットとはちょっと違って、ここに書いてあるように、彼らはUnit License Rights Contractというのを売りにしています。ULRコントラクトと訳していますが、それも書いてあるのを読みますと、この権利の購入者は、製品またはサービスの製造・販売において、所定の件数だけ対象となる知的財産を使用することができる。これは、まさに特許をポートフォリオ化したり、パッケージ化して、それを取引所でばんばん売り買いするという感じではありません。 これを一番わかりやすく説明すると、例えば今、LED照明というのは、日本、韓国、ヨーロッパのメーカーがほとんどつくっていますけれども、創立会員になったフィリップスを例に挙げますと、フィリップスが車のヘッドライトのLED照明の技術を持っていたとします。それを3年後ぐらいに大量生産に入ると考えたときに、フィリップスは車載照明用のLED照明の技術、そこには勿論制御技術も絡んでくるのですが、それを一つのパッケージにして市場に出す。 そのときに、フィリップスは、まさにこのULRコントラクトは、3年後に車載照明用LED照明を100万個つくれる権利であるという言い方をするのです。それを市場に出して、買いたいところが買う。例えば中国で、デジタルエンジニアの最高峰と言われるフォックスコンがそれを買ってつくればいいという出し方をするのです。 次にも書いてありますが、これらの権利は、オプションなどのデリバティブによってリスクヘッジされると彼らは言っています。私は、多分ここがポイントだと思っています。オプションを理解していないとなかなかわからないということです。 一番最後に、ULRコントラクト発行者からの初期設定は、総額で2億5,000万ドルを超える市場価値、これは80円レートで大体200億円です。そのうちフィリップスが5,000万ドル、これが40億円ぐらい。相当の権利1件以上を発行するということは、もう約束している。 私は、最後に一言だけ。この問題というのは、インフラ側から見るか、知財マネジメントで見るか、知財人材の育成から見るかですが、日本は教育がなかなか難しくて、知財と金融がわかる。金融の中でもデリバティブ、なかんずくオプションがわからないと、多分シカゴで行われる空中戦を横目で見て、指をくわえてしまうのかなと思いまして、組織の中でもいいのだけれども、ある程度知財と金融、それもオプションがわかるような人材を育てないと、これからのいわゆるイノベーションに遅れをとってしまうのかなと思います。 これは12月13日に出た一報ですが、もう一報出ていまして、1月19日にアドミニストレーティブ・アシスタントの募集がかかっています。御興味のある方は、是非見ていただいたらと思います。 以上です。 ○妹尾会長 最後のところは、是非御応募してくださいという話ではないですね。岸委員のこれは、今月号の「中央公論」で書かれていらっしゃるので、是非ごらんいただければと思います。 それでは、済みません。時間を延長して誠に申しわけございませんでした。今日の御発言のほかにも、今日、時間がなかったので言い切れなかったということは、私ないしは事務局の方にお申し出いただければと思います。 事務局からの連絡事項、重要なのでお聞きいただきたいのですが、髙原参事官、お願いします。 ○髙原参事官 次回、第6回の専門調査会は3月2日午後2時からこちらの会議室で開催させていただく予定です。 また、これまでの議論の進捗、妹尾会長への御相談の結果も踏まえまして、当初、予備日としておりました3月9日に第7回の会合を開催させていただき、「知財計画2012」骨子に盛り込むべき事項の取りまとめの会とさせていただければと考えております。 また、3月16日の午前を新たな予備日とさせていただければと考えてございます。 お忙しいところ恐縮でございますけれども、引き続き御予定の確保をお願いできればと存じます。 以上でございます。 ○妹尾会長 委員の先生の御議論が活発なので、是非予備日を取り崩してでも議論を充実させたいと考えていますので、お忙しい中、誠に恐縮ですけれども、御協力、御支援をいただければと思います。 それでは、今日、延長したお詫びを申し上げて、終えたいと思います。どうもありがとうございました。 |