知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第4回)



  1. 日時 : 平成24年2月6日(月)14:00~16:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、江幡委員、
    大渕委員、小川委員、上條委員、岸委員、久夛良木委員、佐々木委員、高柳委員、
    中島委員、福島委員、渡部委員
    【事務局】近藤事務局長、上田次長、安藤参事官、髙原参事官、藤井政策参与
    【オブザーバー】角川本部員
  4. 議事 :
      (1)開  会
      (2)知的財産戦略に関する論点整理について
        (知的財産による競争力強化・国際標準化関連)
      (3)閉  会


○妹尾会長
 皆さん、こんにちは。ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第4回)会合」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、「知的財産推進計画2012」、これからつくっていくものに向けた議論を行いたいと思います。
 本日は、迫本委員、中村委員、西山委員、山本委員から御欠席との御連絡をいただいております。相澤英孝委員からは、途中で御退席と伺っております。それから、上條委員がちょっと遅れているようですが、開会したいと思います。
 それでは、開会に当たり、近藤局長からごあいさつをよろしくお願いいたします。

○近藤局長
 いつもありがとうございます。日ごろからの御熱心な御議論、心から感謝しております。
 おかげさまで、人材育成の方も大分まとまってまいりまして、もう少し直すところがあるものですから、次回辺りには御報告を最終的な形でさせていただきたいと思っておりますけれども、座長の御指導をいただきながら、最終整理をしているところでございます。
 また、今日から御審議いただいて、これまでいろいろ御審議いただいた上に、ある程度頭の整理をしながら、3月末には知財計画にどういうものを盛り込むべきかということをまとめていく時期になってきておりますので、割と短期間に集中的に御議論いただくようになると思います。昨年も相当きつい日程で無理をお願いいたしましたが、今年もまたきつい日程になりますが、どうかひとつ、御審議のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ちょっと補足しますと、前回、人材育成の計画について、皆様から忌憚ない厳しい御指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。それをできるだけ織り込む形でということで、事務局が今、奮闘しております。私の方からの指示は、あれだけ御指導いただいたので、単なる小手先の修文ではなくて、きちっとそれを受けとめて反映しようと申し上げています。ということで、今日、拙速で出すよりも次回ということにさせていただいている点、御理解いただければと思います。
 それでは、今日は「知財計画2012」の検討の方向性について御議論いただこうと思っております。事務局から御説明をお願いします。

○髙原参事官
 それでは、まず資料の確認から入らせていただきたいと思います。
 「議事次第」以降になります。まず資料1が「知的財産戦略に関する論点整理」、本日御議論いただくベースとなる資料です。
 資料2は「今後のスケジュール」案です。
 その下が参考資料1です。前回の第3回の会合においていただきました主な意見をまとめたものになります。
 以上、資料及び参考資料でございますが、不足等ございませんでしょうか。
 それでは、資料1に戻りまして、こちらの論点整理のペーパーに基づきまして御説明をいたます。
 表紙を1枚おめくりいただいたスライドの1が前回も同じような内容でお示ししていた、全体の構成に関する1枚紙です。究極の目的はイノベーション創成による産業の国際競争力ということですけれども、前回は4つの柱で整理しておりました。
 今般の資料で申し上げますと、1.と3.は変わっておりません。2.の知財イノベーションの環境整備に関する観点について、前回の資料では、この.の下に、3.として国際標準化に関する別の柱を立てておりましたけれども、前回の会合で、特許を中心とした技術、デザイン、ブランド関連と、国際標準に関する事項は、1つの柱の下で整理、総括すべきではないかという御指摘をいただいておりました。これを受けまして、今般、両者を「2.知の活用促進のための環境整備」という中に含めて整理をしております。
 このような柱立てでよろしいかどうかというところを、この資料を一通り御説明しました後で、まず御検討いただければと考えております。
 次のスライドの2、1つ目の柱の「グローバル展開のための知財インフラの整備」というところです。
 前回、同じ項目名で論点整理をしておりましたけれども、内容をみるとほとんどが特許に関する記載だけではないかという御指摘がございました。そこで、今回は、特許のみならず、デザイン、商標も含めたものが、知財インフラとして当然に関係してくるということで、修正をしております。
 左下の、「制度・運用の調和」という枠の部分を新たに加えております。前回の資料でも、国際特許出願に関する審査の推進とともに、国際審査官協議の拡充について盛り込んでおりましたが、今回はこれらに加えまして、特許制度調和に向けた研究の推進、共通特許分類の策定ということを追加しております。
 右上には、ヘーグ協定加入に向けた検討ということで、現在、意匠の国際登録に関するヘーグ協定への加入に向けた検討が正に進んでおります。それから、右下にございます新しいタイプの商標については、他の主要国で整備されているような新しい形の商標の扱いにどのように対応するのか。こうした観点も含めまして、一番下の取組の方向性の欄で、国際競争力に向けた知財システムの構築と整理をしているところでございます。
 次は、スライド3、「グローバル展開のための知財インフラの整備」の中の知財システムの利便性をいかに高めていくかということでございます。このスライドにつきましては、前回、お示ししていたとおりの内容になります。
 安定性に関し、米国では、特許付与後レビューという制度が昨年9月の特許制度改革によって導入されております。
 また、急増する中国語などの特許文献にどう対応していくのかといった問題も、前回、お示ししたとおりです。
 このような観点から、国内外の情勢を踏まえた特許権の安定性の向上、それから新たなイノベーションモデルや多様なニーズに対応した特許審査をどうやって提供していくのか。安定性・適時性といった観点から検討が進められないかという内容になります。
 さらに1枚おめくりいただいたスライド4が2つ目の柱、「2.知の活用促進のための環境整備」の最初の項目になります。こちらは、前回、テクノロジーとデザインというところに軸足を置いておりましたけれども、それ以外にも、ブランドも含めて、さまざまな知財について総合的に取り組んでいくべきではないかという御意見をいただいておりましたので、これを受けまして、テクノロジー、デザイン、ブランドといった関連領域をどうやって強化していくのかということで、書き振りを変更しております。
 右側のデザインを軸とした連携事例というのは、前回と同じ内容ですけれども、右下のブランドのランキングについての比較の部分は、今回、新たに追加しております。各国企業のブランドについてみると、米国企業がかなり高い評価を受けておりますけれども、これに対し、日本企業の評価は必ずしも高くないのではないか。
 それから、左上の、「デザインのビジネス価値の高まり」の部分についても、記述を加えております。
 前回は、スマートフォンをめぐり米国と韓国の大手電子メーカーが争っている中で、片や特許権、片や意匠権ということで訴訟を提起している動きについて書いておりました。今回は、米国の大手電子機器メーカーが、ユーザーインタフェースを非常に重視し、使い勝手のよいインタフェースを実現するデザインにまず注目し、そこに向けてテクノロジーと融合した製品開発を行った。その結果、製品がグローバル市場で爆発的に普及していった。こうした点にもしっかりと着目する必要があるということでございます。
 一番下のパラグラフでは、英国の半導体関連会社の例に触れております。プロセッサのアーキテクチャデザインについて、処理能力などの性能を高めるという観点もございますが、それよりも、むしろ省エネ対応という観点からの開発にこだわった。そして、特許権というよりも著作権を軸としたライセンスでデファクト化に成功した例であります。このように知財を幅広くとらえて御議論いただければということで、新たに加えた部分になります。
 我が国のデザイン、ブランドのグローバル展開をどうやって促進していくか。それから、総合的な知財価値を向上していくにはどうすればいいかというところが、論点になろうかと思います。
 次の5枚目のスライドは前回からの変更点はございません。大学やベンチャーの有する「知」から、いかにイノベーションを創出するかということです。
 上半分が産学連携における評価指標の項目でございます。下半分は、革新的技術を創出するSBIRを始めとした取組をどのように強化していくかということございます。
 6枚目のスライドは「知の活用促進のための環境整備」のうちの中小企業の知財活動の強化に関するものです。
 海外展開に関して各都道府県の知財総合支援窓口で積極的な支援が行われているというところは前回と同様ですが、今回、下半分の記載を追加しております。グローバル展開を図る上で、外国での特許を始めとする知財権をしっかり確保していくことは、非常に重要ではありますが、特に中小企業にとっては、コスト面の負担が非常に大きいということでございます。そうした中で、右側には、中小企業におけるグローバル展開の成功事例ということで、機械メーカーの例を1つ挙げております。中国、インドを中心として、海外のシェアが今や4割ということですが、事業展開を進める上で、模倣対策というのが非常に重要になる。そこで、海外での知財権取得を進める必要があるものの、左側にもありますコスト負担を抑制すべく、特許権、意匠権をしっかりと使い分けて、うまく活用しているという例になります。
 続くスライド7も中小企業の知財活動強化関連のものでありまして、特許料等の減免制度についての記述を新たに加えております。
日本では、昨年5月の特許法改正で中小企業の特許料減免制度が拡充されておりますが、米国でも、昨年9月の特許制度改革において、新たな動きがございました。つまり、マイクロエンティティー制度を導入したということでございます。
 上部の表のちょうど中央の項目に該当いたします。従来からのスモールエンティティーの要件を満たすことに加えまして、米国での過去の特許出願において発明者となっている件数ですとか、事業体の収入などがある一定の要件を満たすことを条件としまして、出願料、特許登録料、維持料を、スモールエンティティーよりも更に手厚く75%まで軽減するという制度が導入されております。法律改正自体は済んでおりますけれども、規則改正がまだ追い付いていないようでして、2月1日現在ではまだ適用されていないと承知しております。
 このような6枚目、7枚目のスライドの内容を踏まえて、中小企業のグローバル展開支援を始めとした支援策、また、中小企業における知財戦略をしっかりと活用していくような取組を、検討の方向性として記載しております。
 8枚目以降は、前回の資料では国際標準化関連ということで、第3の柱の下に位置付けていた部分ですけれども、今回は2.の中、つまり、「知の活用促進のための環境整備」の柱の下で、戦略的な国際標準化・認証の強化をしていくというような整理をしております。
 8枚目のスライドは、前回の資料を踏襲しております。ただし、産業競争力強化につなげるための取組、標準化を獲得すること自体が主眼ではなくて、知財マネジメントの基盤をしっかりと構築、整備していくということが重要だということで、論点の欄に言葉を補うとともに、取組の方向性の一番上の項目として、産業競争力の強化に資する標準化を含む知財マネジメントの推進、を追加しております。
 続いて、9ページ目のスライドは、今般新たに加えましたスライドになります。国際標準化に関する取組の中で、特に認証の強化が重要ということで追加したものです。
 「グローバル・ネットワーク時代のビジネス基盤としての認証の活用の強化」という論点です。左側のグラフは、先進技術の事業化、市場の拡大に向けて、認証を活用する意義について示したものです。太陽電池の出荷量の例になりますが、日本において、電気安全環境研究所で認証業務が開始されたのが2003年ということでありまして、この認証業務が開始された後、日本企業の太陽電池の出荷量が大きく増えております。
 この例も踏まえまして、今後、認証の更なる活用強化に取り組んでいくということですが、従来の技術起点型のイノベーションモデルのみではなく、事業起点型モデルもしっかり踏まえて、事業を展開していく時代になっております。このような状況下では、先進技術を速やかにグローバル・ビジネスにつなげることが重要であり、そのためには、先進技術を用いた製品を市場に投入するに当たり、認証スキームを確立しておく必要があります。
 これまでの取組事例として、右側の枠の中に2つほど挙げております。
 1つ目の例が、LED照明でございます。現在、品質が余り高くないLED照明が、過大な性能表示をされて流通しております。そこで、様々な認証機関における測光の試験結果に偏りが出ないように、国際的な共同試験を実施し、LED照明の本格的な認証実施につなげていく試みが行われております。
 もうひとつは生活支援ロボットの例です。産総研と日本品質保証機構、JQAなどが中心になって設立されました「生活支援ロボット安全検証センター」で、コア技術である対人安全性検証技術の開発が行われております。将来的には、この技術を用いて、JQAが認証業務を行っていくというような取組が行われております。
 「知財計画2011」にも特に先進分野において認証をいかに活用していくかという施策を盛り込んでおりますが、それを更に進めるということで、今回、このスライドを追加しております。
 最後の10枚目のスライドは、国際標準化関連の3番目、中小企業の事業戦略に資する国際標準化あるいは国際規格の推進ということになりますが、内容的には前回の資料から変更はございません
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 これの議論をしていくのですけれども、私の方で幾つかに分けたいと思います。御理解いただきたいと思います。
 まず最初に、この検討の枠組みそのものについての御議論をしていただければなと思っております。1ページ目を見ていただくと3本柱になっています。「グローバル展開のための知財インフラの整備」「知の活用促進のための環境整備」、そして「知財人材の育成・確保」となっております。この柱立て自身が適切であるかというところも非常に大きいと思います。というのは、これが「知財計画2012」に後日、反映されていくものなので、この柱立ての考え方そのものも、今のうちにしっかり議論しておきたいと思います。
 この御議論をしていただいた後で、論点整理の方で個別に話を伺いたいと思っております。まず最初の柱立てというか、構成について、何か御意見がある方、いかがでしょうか。実は、私は大変意見があるのですけれども、まず皆さんの方から。相澤委員、お願いします。

○相澤(益)委員
 前回の4本立てから3本立てにしていただいたのは、これで結構だと思います。ただ、今度の柱立てのタイトルを見る限り、これが的確な表現なのかなと思われるので、そこに目を向けたいと思います。
 1つ目が、「グローバル展開のための」と書いてあって、その後に「知財インフラの整備」と続きます。この知財インフラというところに何が係るかです。このままだとグローバル展開ということですが、そこに限定した意味の知財インフラということだけなのかどうか。ある意味で総論的な要素もあるし、これはこの表現でいいのかなというのは、どうしても引っ掛かりますね。これは中身に対応して的確に付けられるべきではないか。
 2番目ですが、ここも「整備」という言葉がタイトルに出てきてしまっている。ここも「環境整備」です。これと先ほどの「知財インフラの整備」と何が違うのか。「整備」という言葉が非常にインパクトの小さい表現であり、具体的に何をどうするのかというところが明確でないために、なっているのではないか。そのことが内容にもあらわれているのではないかという印象を持ちます。
 それから、2番目の柱は、「知の活用促進のために」ということになっている。今回の2012の基本は、知の創造から、むしろ知の活用だということで、これをあらわそうとしている。このねらいは結構なのですけれども、中を見ると「創造の強化」ということになって、細かい検討の項目のところに、その活用のかなめになるところが絡んではいるのですが、タイトルと中身が全体的に調整がとれていないのではないかなという印象を持ちました。
 3番目は、これで独立したようなタイトルであり、この形ですっきりと受け取れるのではないかと思いました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。いかがでしょうか。では、佐々木委員。

○佐々木委員
 私は、この3本でいいのではないかと思います。イノベーションの創成による産業の国際競争力強化というところに、一番直接的に刺さるのは2番目だろうなと思っています。つまり、1番目の日本の特許制度あるいは知財システムの整備等々は、合目的的には、常に世界の知財システムをリードして、日本のベンチャー企業なり日本の企業が世界で不利益をこうむらないように、常に世界を監視できるような地位にいましょうというところが一番の基盤になる。
 2番目は、世界でどう稼ぎますかという項目だと思います。先ほど相澤先生がおっしゃったように、世界でどう稼ぎますかという中に、世界で使える知財をどう生みますかということと、世界で知財をどう使いますかというのが、ページにすると幾つか混在しているので、そこを整理すればいいのだろうと思います。
 具体的には、5ページと7ページが使える知財を生みますか、6、8、9、10ページがその知財をどう使いますかという構成になっているので、そこを明確にして2番目の中にまとめるということで、比較的わかりやすくなるのではないかと思います。人材育成は1番目、2番目を支えるためのものですので、これは言わずもがな、3番目に入れれば非常にわかりやすい。全体の構成としては、そう思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。相澤委員。

○相澤(英)委員
 1頁の大項目の2には、様々な事項が含まれているので、整理が必要であると思います。1は知的財産のシステムとして一つのまとまりとなっていて、3は人材育成として一つのまとまりとなっています。これに対して、2には性格の異なる事項が含まれているので、ここを整理していただくことを考えていただきたいと思います。
 その他について、若干コメントしておきます。
 3頁のインフラの整備で、世界で一番早く強い権利と記載されているのですが、その意味が戦略全体のなかで、何を意味しているのかはっきりしないと思います。知的財産システム間の競争において、どのような意味を有するのかを踏まえて、意見づけられないといけないと思います。
 4頁ですが、特許を取らない戦略から、今は特許を取る戦略に変えている世界的な企業もあります。したがって、特許の優位性があるということにも留意することが必要だと思います。
 6頁のところで、中小企業あるいはベンチャーにとってはファイナンスが重要ではないかと思います。そこで、政府系金融機関の役割を考えていく必要があるのではないかとおもいます。
 標準化については、基本的には標準化した後は余り利益が出ないシステムなので、イノベーティブな産業が標準化をどう生かしていくのかということは難しい課題だと思います。標準化が目的になってしまうとまずいのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。私の名前が連呼された部分だけお答えします。我々、国際標準化の中身については、ここでの御報告、国家戦略上というところに限られておりますが、国際標準化戦略タスクフォースで物すごく強調しているのは、国際標準化を自己目的化するなということをさんざん言っておいて、産業モデルとビジネスモデルの想定なしに国際標準化はできないということですので、標準化は進めるところもあれば、つぶしにかかるところもあるということは重々承知していることですので、今の御指摘はまさにそのとおりだろうと思います。
 この柱立ての問題について、ほかにいかがでしょか。渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 1番と2番のタイトルについてなのですけれども、これはユーザーの視点で見たときに、1番で出ている知財インフラというのは、今、日本の企業はむしろ海外の知財インフラをたくさん使って日本出願を減らしているわけですね。では、ここで知財インフラの整備というのは日本の話になるのですけれども、本当にそういうことだけでこの観点はよいのかということが1点。
 それから、2点目の知の活用促進というものの「知」というのは、中の文章を見てみると、日本の中で生まれたものだけをどうも指しているように見えるのですが、オープン・イノベーションの時代に本当にそういうことだけ限定して考えていいのか、その2点。ずっと前から、私はそういう話をしているつもりなのですけれども、多分発想の転換というのがなかなか難しい理由がきっとあるのだろうと思って、またあえて申し上げました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 申しわけないです。私、1点謝らなければいけないのは、先ほど角川本部員がオブザーバーとして出席されるという御紹介をし損ねていまして、申しわけございません。多分、角川本部員、何か御発言があるのではないかと。

○角川本部員
 このことでよろしいですか。

○妹尾会長
 はい。

○角川本部員
 4ページ、デザインのビジネス価値の高まりという囲いの中でAppleとサムスンを紹介されたのは、とてもいいことだと思います。現実には、意匠権を侵害したというのは表面的なことで、この大きな問題点というのは、実はAppleは自分の持っているビジネスのエコシステム。これは3ページに「新たなイノベーションモデル」という言葉が出てきていますけれども、これを侵害することに対する名目として意匠権を言っているだけのことだと思います。
 こういうふうに読ませていただくと、せっかくここでイノベーションモデルということを指摘されているのですけれども、ではそのイノベーションモデルは何かということはどこにも出てこないのです。ですから、その辺を討議しなければいけないのではないかということを思います。これは非常に難しい仮説になるのだと思いますけれども、そこに踏み込んでいくことに、この知財本部の意味があると思います。
 特許の話については、私は知財委員になってからずっと出てきて、今さらながらということがないわけではないのですけれども、日本は特許制度が非常にすぐれていて、特許件数も多いという話から、何で今、日本の知財戦略が低下しているのか。件数ではなくて、新たな21世紀モデルに対応した特許が少ないのだと思うのです。特許の数は多いのだけれども、新たなイノベーションモデルをつくる特許が弱い。そのことを問題にしなければいけないのではないかという感じがしております。そこに突っ込んでいくためには、この指摘だけだと、インフラ整備と言うだけでは国際競争力に結び付かないのではないかという危機感を覚えています。
 この特許の問題というのは、次のレベル、次の問題意識に是非行ってもらいたいなとお願いしたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。済みません、確認なのですけれども、我々は特許の数ではなくて、次のモデルは特許の使い方の新しいモデルだと思っていますが、そういう理解でよろしいですね。

○角川本部員
 はい。

○妹尾会長
 小川委員、いかがでしょうか。

○小川委員
 後から言おうと思ったのですが、今のお話と関連しますし、また全体構成とも若干関係がありますので申し上げます。4ページ関するAppleの話、それからARMの話がありましたが、さきほど角川さんがおっしゃったように、新しいイノベーションモデルあるいはビジネスモデルを支えているのは、私の理解では、組み込みシステムやソフトウエアの力なのです。このソフトウエアは、まず著作権に守られている。それから、著作権と特許権の両方の組み合わせで守られている。
 そういう意味で、4ページ目やARMの例で言及したデザインというカテゴリーに書かれたのは、国の知財政策として大きな進歩ではないかと思います。もし可能なら、2章のテクノロジー、デザイン、ブランドという中にソフトウエアや組み込みシステムの著作権という概念を入れると、2010年代の日本が置かれたグローバル市場の実態がより明らかになるのではないか。AppleやGoogleに代表されるように、世界で大躍進しているリーダー企業は、ビジネスモデルや知財マネージメントを背後で支えているのは組み込みシステムです。彼らが主導する情報端末やスマートフォン、テレビ、そしてネットワークに繋がる自動車さえも、製品設計の深部に組み込みシステムが介在してグローバル市場に巨大なビジネス・エコシステムを形成します。我々の目にまだ見えていませんが、ロボットや航空機産業、工作機械産業、スマートグリッド関連産業など、ほとんど全ての巨大産業がビジネス・エコシステムを前提にした市場コントロールのメカニズム形成を競い合っている、といっても良いでしょう。その象徴として我々の身近にあるのがAppleなのです。2010年代の日本は、このようなグローバル市場環境に置かれていますので、国際的な産業競争力を知財政策が支えるという意味で、新たな21世紀モデルに対応した知財立国政策の中にソフトウエアというキーワードを入れないと片手落ちだと思います。
 要するに、ソフトウエアというのは物すごい大きな力を持っているのです。我々はこの力を目で見えないし、物質を含むハードウエア中心で、あるいはものづくり中心に特許を考えてきたので、ソフトウエアが持つ本質的な力を理解し難いのでなかなか記述できないのでしょうけれども、特にハードウエア設計の深部に介在する組み込みソフトについては、ここで踏み込んだ内容にした方がいいのではないかと思います。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、別の言い方をすると、作業系ではなくて制御系を押さえる方が、イノベーション上はレイヤーとして優位性を持つという。これは、国際標準化タスクフォースで物すごい議論をやっている部分が、もっとこういうところに反映されないといけないということだと思います。
 済みません、個別ではなくて、柱立てそのものについての御意見はいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、済みません、柱立てについて私も意見を言わせていただくと、私はかなり不満で、事務局と議論しております。理由は何かというと、「追い付け」ということが「整備」ということでありますけれども、「追い越す」ための「整備」は実は強調されていないということであります。常に追い付くことしかやっていない、この整理の仕方でいいのだろうか。
 恐らく追い付いて、追い越すためには一体何か。制度で追い付くことと、制度で追い越すこともあれば、その制度が整備されたときに、その中でどういうふうに追い越す政策を織り込むのか。それがもっと全面に出ないと、また制度の整備だけかと言われる。そんな時代ではないのではないかと思いますので、私はもっとこれを強烈に強調すべきではないかと議論させていただいておりますが、今日、先生方は大分遠慮されながらおっしゃっているようなので、あえて強く申し上げますけれども、その辺を事務局と更に我々、是非議論していきたいと思っています。
 ただ、そうは言っても、中身自身が柱立てとリンクしなければいけないし、それ自身が強調されなければいけないので、今からの時間は、この中身そのものについて御議論をしていただきたいと思います。各論になるかと思います。
 最初に、「グローバル展開のための知財インフラの整備」ということで、2ページ以降の中身、知財インフラについて御意見がある方は、是非よろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。一つひとつ行きます。勿論、必要に応じて行ったり来たりもOKなのですけれども、いかがでしょうか。荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 今の妹尾会長の追い越すための政策というか、知財インフラ、まさにグローバル・ネットワーク時代という前提に立ったときには、グローバル・ネットワーク時代にはこういうものがいいのではないかとか、こういうものが世界じゅうのユーザーのためにも一番いいぞという観点で、リードするような新しいものをつくり出すという意気込みを是非出していただくのがいいと思います。
 例えば特許であれば、世界特許みたいなものをいかにつくるか、あるいは著作権だと、本当にみんなが、クリエーターにとっても幸せ、それからユーザーにとっても幸せな、新しい意味での著作権をつくるとか、そういうものを是非全面に出して、まさにグローバル・ネットワーク時代というものにふさわしい知財システムということだと思います。
 そのときに、知財の関係は2つあって、知財セクターの国際競争力、サービス産業としての、特許庁の競争、文化庁の競争、あるいは弁理士や弁護士の競争という部分と、それを使ってユーザーがどれだけビジネスとしても成功していくか。そういう意味での2つの競争があります。ここは1部と2部で分けているような気もするのですが、しっかり意識して分けないと、こんがらがってしまうと思います。何の競争を言っているのかということなので、そこのところの整理も是非してもらうことが必要だと思います。
 それから、2ページ、そういう意味では、制度・運用の調和にとどまらずに、いいものをつくり出すという観点を出してほしいということと、右側にあります新しいタイプの商標ということで、新しいと書いてあるのですが、欧米アジア主要国というので、日本は主要国に入っていないわけですから。
 実は、これは新しくも何でもなくて、15年以上、既に議論しているのですね。もうそろそろ主要国の仲間入りをしたらどうだという気がするのです。今まで、そういう議論を表に出していないのもおかしいと思いますけれども、取組の方向性にも書いていないので、15年もやっているのだから、そろそろ主要国の仲間入りをしようよというのもあるということだと思いますので、取組の方向性にも、商標法を改正するというのをはっきり打ち出していただいたらいいのではないかと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。確かにそうですね。検討するとか、商標という紹介だけであって、一体何なのという話がもっとないといけないですね。
 それでは、江幡委員、お願いします。

○江幡委員
 先ほどの荒井委員のご発言内容の続きとなりますが、新しいタイプの商標については、昨年の推進計画でも「速やかに結論を得る」というような語尾になっていたかと思います。検討が数年続いていると思いますので、今年は真の意味での「速やかに結論を得る」という点が達成されることを期待しております。
 また、新しいタイプの商標と同じように、諸外国にはあるけれども、日本にはない制度として、証明商標があります。これは、認証マークなどで、証明する者とは別の者が使用をする商標で、証明を受けたら使用できるというマークです。これも知財インフラとして整備されていない部分ですので、あわせて御検討いただければいいと思います。
 また、知財インフラというときには、資料に挙げられているような権利の取得の面でのインフラとともに、権利の行使の面でのインフラがあり、双方が整うことで日本の知財システムの魅力が高まるのではないかと思います。今回の検討項目の中には入っておりませんが、裁判所や税関においても、権利行使におけるインフラとしての魅力を高めるための取組みを御検討いただく必要があるのではないかと思っております。
 また、ちょっと御紹介申し上げたいのは、裁判所では、アメリカの知財裁判官との交流などもやっておりまして、昨年は日米知財裁判官の大きな会議もありました。これまで国際化・グローバル化というときに、特許庁の職員や弁護士・弁理士は出てきますが、裁判官も国際的であってほしいと思っております。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。大変痛いお話なのですけれども、毎年これを言いながらできない理由は一体何なのですか。なぜ毎年言いながらできないのでしょうか。髙原さん、私も困っているのですとおっしゃっていいのですよ。

○髙原参事官
 新しいタイプの商標への保護対象の拡大につきましては、速やかに結論を得るということで「知財計画2011」にも盛り込んでおります。これについては特許庁においてしっかり検討を行っていただくというだと考えております。

○妹尾会長
 ということは、特許庁が遅れていることが日本の企業にとって不利をこうむらせていると理解していいですね。ここまで座長が言っていいのかな。いずれにせよ、ヘーグ加入に向けても何にしても、追い付け政策が全部書かれているわけですから、これがインフラのある意味では一つですけれども、どうしたら追い越すということも議論していかなければいけないですけれども、この2ページに書かれているようなところで、ほかにいかがでしょうか。後で戻ってきましょう。
 それでは、3ページに参りたいと思います。3ページの知財インフラの整備、「我が国の知財システムの利便性(安定性・適時性)をいかに向上するか」というページですが、ここについて何か御意見、御指摘あるいは御提案がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。この辺は、先ほど御退席された相澤委員が、例えばここに書いてある文言の理解が、皆さんそれぞれではないか。そういうところを少し整理しないといけないという御発言がありましたけれども、それ以外に何か。中島委員。

○中島委員
 3ページだけじゃなくて2ページも入るのですが、この1番のグローバル展開のための知財インフラの整備そのものです。
 先ほどの整備ということで、世界システムに合わせようとか調和を図ろうというのは非常にいいとは思うのですけれども、一方ではこれは国家戦略なわけですので、これをやれば我が国が有利になるという戦略が見え隠れしてもいいような気はするのです。ハーモナイゼーションとかTPPと言いながら、自国の制度を押し付けるというのが世界の潮流なわけですけれども、ここでは、ただ単に世界の標準に合わせようと言っているのが本当にいいのかどうかという気がするわけです。
 それをあからさまにというのは御法度なわけですが、これが世界にもいいのだ、日本にとって、世界よりも日本が一番いいのだというところが何かしっかりと盛り込まれているのではないかなと、私は推測しているのですけれども、その辺の検討がもし何かあれば、後で是非お聞かせいただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。確かにハーモナイジングというところは、一種のイコール・フッティングの話なのですけれども、それだけの政策でいいのという御指摘ですね。それ以上、これは国家戦略的には言えない部分と言える部分があると思いますけれども、それについても我々は政策的にここで議論したいという御意見だと思います。
 続いて、2番目の4ページ以降に入りたいと思います。「知の活用促進のための環境整備」。テクノロジー、デザイン、ブランドの部分ですけれども、まず4ページ、先ほど御指摘があったイノベーションモデル云々ということもあるし、あるいはデザイン、その他の関連もありますけれども、いかがでしょうか。佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 先ほど小川先生からもコメントと言いますか、御意見があったとおりなのですけれども、4ページから後のところを見ますと、使える知財をどう取るかというところと、どういった知財を世界でどう使うかというところ、どちらかに仕分けされるのですけれども、このページだけはちょっと異なるのです。
 その異なるところがポイントだと思っていて、世界ではこういう概念が、我々よりももっとなじんでいたのかもしれませんけれども、日本の企業なり個人は余りなじんでこられなかったというか、うまく使ってこられなかったところに、かなり力点を移すのですよというページになるようにすべきだと思います。いかに強化するかということが論点なのですけれどもね。
 もうちょっと発想を転換するとか、あるいはまずこれがプライオリティー・ファーストだとか、このページの位置付けの話になるのですけれども、ここを極めてクローズアップできるようにすれば、今までのところと大分違った、この議論の中で出てきた流れになると思うので、その辺をお願いしたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございました。ほかに。小川委員、お願いします。

○小川委員
 今の佐々木委員のお話と私が最初に申し上げた話をつなげてお話します。
 今まで著作権と言いますと、映画のコンテンツとか音楽など、コンテンツを対象にするものが多かったと思います。しかし、産業競争力を支える組み込みシステムの著作権は、先ほど申し上げたようにグローバル市場で新たな産業モデル(ビジネス・エコシステムの構造)を主導する上で大変大きな力を持ってきましたので、映画や音楽、ゲーム、といった従来型の著作権以外に、パッケージソフトや組み込みシステムを念頭に置いた新たな産業競争力としての著作権を本格的に取り上げた方がいいのではないか。そうすると、今、佐々木委員がおっしゃった点をクローズアップすり一つのキーワードになるのではないかなと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。まさに御指摘のとおりだと思います。先ほどの角川本部員もおっしゃられたところだと思いますけれども、ビジネスイノベーションがここまでモデルを変容してくると、前回も申し上げたかもしれませんけれども、異種知財権格闘技の世界に入ってくるわけであります。ここに書いてある具体例を言えば、Apple対サムスンは特許と意匠権で闘っている。あるいは、インテルとARMの闘いは特許対著作権の闘いみたいなものですね。
 要するに、ビジネスモデルがアーキテクャーとして変わってきているときに、こういう知財権をテクノロジー、デザイン、ブランドと、従来の枠組みの中でいかに強化するかということを言うだけでは全く意味がないということではないかと思います。勿論、それ自身は重要だと思います。これは佐々木委員の御指摘だと思います。
 ここに書かれているのは、デザインをどうしましょう、ブランドをどうしましょうというお話にどうしてもなっているので、イノベーションの新しいモデルとして、ここのページが構成されないと、ブランドの数がどうの、商品がどうのという議論に終始してしまう。また遅れをとる話になろうかと思います。ここのところは、事務局に頭を切り替えていただかないといけないなと思います。
 荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 私自身も含めて、みんなの理解のための小川委員への質問なのですが、今のような著作権というのは、今ある著作権と、死んでから50年とか、わかりやすく言うとどういうふうに変わるのか。新法で守るようにするのか、その辺、理解しやすいように説明をお願いします。

○妹尾会長
 では、小川委員、お願いします。

○小川委員
 私は荒井委員のように知財の専門家じゃありませんので、なかなか説明できないのですが、アメリカがレーガン政権になったときに、当時出てきたデジタル型産業を保護する手段として、ソフトウエアに著作権を認めました。これは1980年だと思います。それから、ソフトウエアに特許権も連動して認めるようになった。そこからデジタルネットワーク産業でアメリカの産業競争力が相当強くなってきたという事実がございます。ここでいう著作権とは、映画や音楽、ゲームなどのコンテンツでは無く、組み込みシステムやパッケージソフトの著作権です。現にアドビにしろ、マイクロソフトにしろ、インテルやシスコシステムズなど、ありとあらゆるソフトウエア・オリエンテッドの会社は、目に見えないソフトウエアという製品の著作権で権利が守られていて、世界の隅々まで圧倒的な市場支配力と利益率を保っている。
 一方、同じソフトウエア産業で日本を見ますと、これまでも現在も利益率はほとんどプラマイゼロかマイナスの企業が非常に多い。単なるロースピードとして使っているような状況です。荒井委員の御質問に対して、どうお答えすればいいか、ちょっとわかりかねるのですが。法的な根拠という意味でおっしゃったのですか。

○荒井委員
 みんなでこの議論を進めるために、あえて質問するのですが、法律はアメリカと同じになったのです。日本でもソフトウエアを著作権で守ることになっている。しかし、ソフトウエアの著作権を生かしてうまくいっているアメリカと、生かしてうまくいかない日本と、そのビジネスの差なのか、あるいは著作権法の問題なのか、そこのところをはっきりしておくと、この場での議論が深まり、あるいは手が打てるのだと思います。
 単にアメリカのソフトウエア産業が強いと言われても、ソフトウエア産業論をやるのか、そうじゃなくて、知財の関連する法律が悪いのか、あるいは知財の使い方が悪いのか、分解するといいのではないかと思って質問しているのです。

○小川委員
 わかりました。そこまで明快にお答えできないのですが、最近、この問題を重視して調べているのですけれども、例えばソースコードが著作権違反につながるかどうか日本にも解説したものがありますけれども、デッドコピーあるいはそれに近いものを違法とする、など権利の範囲を狭くしているように思えます。ところが、アメリカの事例ですと、勿論ソースコードをそのままコピーしたら違反ですけれども、相当広く権利が認められているように思えます。この比較およびこの違いが産業競争力にどう影響して来たのかについては、まだ調査中ですので、後日ご説明したいと思います。
 しかし実態としては、アドビシステムにしろ、マイクロソフトもそうですけれども、広い解釈の著作権をベースにして、契約で改版権を独占したり、技術進化のロードマップを独占するなどの知恵でビジネスの合法的な独占体制を築いているように思えます。企業の市場を独占する力が強くなりますと独禁法で訴えられるようになりますので、最近では既に巨大なインストールド・ベースに育った実績を背景に、ネットワーク外部性の効果を活用して互換性保障のチェックをするなど、認証機能を独占することによって、実質的に大きな市場支配力を持つに至りました。これらについては約半年前から調べ始めたばかりですので、まだ明快にお答えできないのですが、現実問題では以上のようになっております。

○妹尾会長
 ちょっと私の方からも補足させていただくと、制度的な問題があるかないかという細かいところは、小川先生が一生懸命、今お調べになっていますけれども、もう一つ言うと、知財活用のノウハウが日本はかなり遅れている感じがします。1つは何かというと、例えば改版権を押さえたまま、どうやって相手方にライセンシングをしながら主導権、つまりひも付けをして操るか。
 もう一つは、例えば先ほど小川先生がおっしゃったみたいに、知財権ミックスのやり方ですね。こっち側を著作権で押さえながら、どうやって特許と組み合わせながら先行優位を築いて、その著作権をベースにするとアーキテクチャーの産業生態系を基盤的につくることができるとか、そういう戦略的な使い方をする企業は、日本ではまだほとんど出てきていません。というところが、多分、小川先生の御指摘だろうと私は解釈しています。
 もう一点は、有名なところのある方がこういうことをおっしゃっていたエピソードを御紹介しますけれども、例えばバグが見つかったらどうするかという話です。バグが見つかったらつぶすというのが日本の技術者の発想。ところが、バグが見つかったら、そのまま置いておけば、後で先方が真似したときにバグが見つかるから、そこで、ほら、デッドコピーをやったじゃないかということが言える。そういうあらゆるトリッキーな戦術まで彼らは駆使しているということなのです。
 そういう使い方をするところまで、日本の知財活用のノウハウは進展していないということも含めて、多分御指摘になったと思います。小川先生、何か。

○小川委員
 私がさっき言えなかったことをちょっとおっしゃっていただいて、ありがとうございます。確かにヨーロッパの携帯電話も、テクノロジーというよりはむしろ知財の改版権を独占して市場支配力を強化していました。オープンにして自由に使わせはするがソフトウエアの改版権は自分で持つ、鐙戦略です。自動車のベーシックソフトウエアの国際標準化もヨーロッパのAutosarという標準化機関で行われていますけれども、これもメンバー企業には使わせるのだけれども、改版はヨーロッパ主体の標準化機関が持つ。W3Cもそうですね。ありとあらゆるもので、改版権がキーワードになっています。1980年にアメリカでソフトウエアに著作権が認められてから、インテルがNECとChipの組み込みソフトについて、またIBMがメインフレームのOSについて富士通・日立・三菱電機を訴え、長い法廷闘争がありました。ここで論点になったのは、ライセンス料を支払っているのだからデッドコピーはOK、しかしソフトウエアの改版権は認めない、というものでした。
 インターネットは全てオープンな環境と思っていますが、そのオープン環境で、例えばシスコシステムズは実質的に寡占状態を作りました。これもソフトウエアは使わせる、あるいはインタフェースは公開するが、その改版権は全てシスコシステムズが握っています。それからAppleの例が先ほどありましたけれども、彼らが製品体系の全てに知財を持っているのではなく、まずAppleという企業とオープンな市場(調達する市場や一般ユーザ市場)の境界を事前に設計し、その境界領域に特許権と著作権、意匠権を含めた複合的な知財マネジメントの網が掛けられています。したがって、非常に少ない特許の数でオープン環境を完全に支配する構造をつくることができる。
 抽象化してお話しましたのでご理解いただけない部分もあると思いますが、必要なら後で御説明します。ソフトウエアは以上のような機能・作用を持ってグローバル市場に君臨するようになりました。

○妹尾会長
 自社主導の産業生態系をどうやって構築してやるか、これは知財活用の大きなものですから、産業生態系のアーキテクチャーが一旦つくられたら、どんなに優秀な要素技術をつくっても、全部その産業生態系の中に食べられてしまうという状況ですから、イノベーションを知財でリードするというときに、今、小川先生がおっしゃられたような知見はみんなで共有しておかないと、これはあくまで制度的な追い付き政策にとどまってしまうだろうということかと思います。
 ほかのこのページで何か。角川本部員。

○角川本部員
 たしか1990年代後半にWIPOでアメリカがソフトウエアとデータベースを著作権法に組み込むように強力な運動をして、それが実現したときに、日本は、これは世界的にそうかもしれませんけれども、そういうコンピュータのソフトウエアとかデータベースを著作権法に組み込むこと自身に、非常に不純なものを感じた。アメリカの余りにもあからさまに国益を追求するやり方に物すごい反発をしたということが、今、いろいろな著作権の本には出てきます。
 そのときにアメリカは、特許法は先願主義ですね。ところが、著作権法は発生主義ですから、ソフトウエアなどを著作権ごと押さえれば、創作されたときに即時著作権は効力を発揮するわけですね。出願する必要がない。だから、公開する必要がないわけです。そういう中で著作権法の中にソフトウエアとかデータベースを組み込んだために、著作権法の関係の人たちもそこを活用することについては、心理的に壁があったと思うのです。
 ですから、今、小川先生からあったように、知財本部がアメリカの著作権法の活用の仕方というものを調べてもらう、いい機会だと思います。そのためにどういうふうにされるかということを、是非役所の、経産省でも結構ですし、そういうところ動いてもらって事例を集めると、今のお話がもっと進化するのではないかと思います。
 もう一つ、今、スマートフォン革命と言われていて、スマートフォンの覇権をだれが握るかによって世界の産業界も変わろうとしている。これは皆さん、思っているのだけれども、なかなか口にしないので申し上げるのですけれども、Appleの巨大な利益というのは、iPhone、iPadがあれだけ売れたからだとわかっているのです。知財本部もそのことをあからさまに書くべきではないか。
 つまり、はっきり言えば、世界はAndroidなのかiOSなのか、2つのOSに牛耳られようとしているわけです。それに対抗しようとするのはWindowsだけなのです。この間もNTTの幹部の人と話したのですけれども、日本が束でかかっても3番目のOSというのは日本から出せないのではないかという気持ちになっているのです。私は、それがすごく残念なのです。日本からAndroid、iOSに対抗するようなOSをつくるような気概がないと、ここに立ち入れないのではないか。
 せっかく特許を幾ら取っても、今、中核になるスマートフォン革命みたいなところに関与できる特許を持たなければ、この知財というのは収益を生まないと思います。そこに知財本部が立ち入っていくような気概を示すことだと思うのです。これを是非、日本の通信キャリアも、日本の家電メーカーも、日本の情報産業も総力を挙げて3番目のOSをつくり出していくことを標榜するような、久夛良木さん、いかがですか。今日は静かなのだけれども、御意見はどうですか。もうあきらめなければいけないのですか。

○妹尾会長
 久夛良木委員。

○久夛良木委員
 振られたので質問があるのですが、この間の会議でもお話したのですが、ここで何を議論し、何を決めるかの「何」、つまり「what」のところが抜けているのでは?ということに関しては、近藤局長の以前のご説明では、それは実は別のところで秘密会議として話されているということでした。これは近藤局長にお聞きしているというか、私の確認なのですが、基本的には我が国の戦略として重点領域というものが既に策定されていて、それは公開の場では話はできないけれども、しっかり話されているということでした。という事で、ここでは議論として出すべきことではないのかなと、私、それ以降、思ったのです。
 仮にそうだとすると、そういった枠組みの下で、我が国が更に知財に関して進めた方がいいこと、知財権とか知財そのものの法整備、もしくはその運用に関してさらに進めた方がいいという具体的なことをここで議論するとした方が、より実利的なのかなと思うのです。その「what」のところに触れない、あるいは良く知れ得ない状態で何を話していいのか?ということは、毎回フラストレーションとしてある。
 また、先ほど角川本部員からOSの話が出ましたが、今までのOSというのは、Androidにしても、iOSにしても、マイクロソフトにしても、クライアント機器というか、PCとかスマートフォンをどういうふうに動かすかという観点でのOSだったと思うのですが、これからはクラウドをどう動かすかというOSに変わっていくであろうと思うわけです。そういう意味からすると、既存の競争のルールをいかに変えるかというのがイノベーションだと思っているのですが、ここでの議論というのは、どちらかというと既存の競争領域の話が多くて、知的財産を基に法的なエクスクルシビティをどう既存事業に与えるか否かということが主に議論をされているように思うのです。
 本当のことを言うと、もっと元気に暴れまくるような新しいベンチャーとか、もしくはベンチャーに限らず大企業であってもいいのですが、どうしたら一気にブレークスルーできるか? そのためには、何が欠けていて、どんなことが政府として、ある意味取捨選択して行くのか?ということを議論した方が、次につながると思います。勿論、ここでの議論はすごく重要で、非常に勉強になるのですが、ずっと勉強だけをしているよりも、もっと何か先に進めたいものだと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 今のお話がありましたが、4ページでほかに。中島委員。

○中島委員
 皆さんの意見にも多少というか、かなり関係するのですけれども、関連領域という用語としては、テクノロジー、デザイン、ブランド。これは、適用分野によって使用するツールがかなり違うと思います。
 したがって、先ほどのお話にありましたような国家技術戦略、ほかのIT戦略とか重点政策、宇宙開発とか海洋開発、それから太陽光といった具体的なものについて、知財との連携をどのようにしてやっていくかということは、あまり進むと先ほどの、久夛良木委員の話で、それは秘密だよということですけれども、ここに何かきっかけを書いておかないと、知財戦略事務局としても動きづらいのかなという感じがするのです。その先、どうやってやるかは、それは国家機密ですみたいなことはあってもいいのかもしれません。
 そういう意味で、多少接続するための手をここに出しておいていただければ、大変助かるという感じがいたします。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。角川本部員。

○角川本部員
 済みません、ちょっと気になるから、ここで聞きたいと思うのです。
 このブランドの各国比較というのは、非常にヒントになることなのですけれども、これについて、この中身を、例えば10位以内にどこの企業が入っているのかということ、あるいは30位以内、100位以内にどこが入っているかということを出していただくと、明確なのです。要するに、IT関連の企業が上位に入っていて、IT関連じゃないブランドはどんどん下に落ちていっていると思うのです。ですから、そこを見ると、当然ながらITは知財そのものであり、ITを強化すればブランドも高まってくるのです。そこがきちんと伸びれば、日本が何をすべきかもわかるのです。
 ですから、基本的にはIT戦略本部があるから、知財ではそれを取り上げないとか、そういう縄張りみたいなことがあるかもしれませんけれども、そのことに触れないと、知財本部の中身は深まらないと思います。
 それから、失礼ですけれども、皆さん、知財本部こそ日本の内閣に位置付けられた中核にいるのですから、秘密会議とか国家秘密だとか、近藤さん、その辺も事務局長として、ちょっと明らかにしていただいた方がよろしいかと思いました。

○妹尾会長
 それでは、局長、お願いします。

○近藤局長
 難しい御指摘がいろいろ出ていますけれども、何を本当にやらなければいけないのかというのは、ほかの本部との関係も含めて、議論したらいいと思います。その上で、知財の戦略にどこまで書くかをもう一度考えるという前提であれば、議論はかなりできると思います。
 どこまで公開するかとか、どこまで最後の知財計画に書くかについては別途議論することにして、全体像を皆が共有しながら検討を行っていただく。、そして、全体におけるこの部分を書きましょうということであれば、大いに議論が進むと思います。

○角川本部員
 よろしくお願いします。

○近藤局長
 議論は是非していただいて、最後どこまで書くかは、またちょっと別の問題という頭の整理をしていただいたらと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 私の方からは、4ページの中で、先ほど角川本部員がおっしゃられたことは、別の言い方をすると、産業財産権を主にすると産業振興、著作権を主にすると文化振興という伝統的な思考の壁がありまして、これはどちらもあるわけです。産業財産権でも当然分科会振興はあるわけですし、それから著作権の方でも当然産業振興はあるわけです。この辺のイノベーティブなことを我々自身が組み替えないといけないという御指摘かと思います。
 もう一つ、これは繰り返しになるのですが、このデザインということは、デザイン、イコール意匠と訳すのは日本ですね。でも、中国人に意匠と言っても、意味がわからない。デザインを中国人は何と訳すかと言ったら、これは設計と訳すわけです。何の設計ですか。商品設計、事業設計ということがデザインということなので、アピアランス・デザインに非常に踏みとどまってよいのかという話があります。
 というのは何かと言うと、テクノロジー・ドリブンのイノベーションと、デザイン・ドリブンのイノベーションの両側が動いているという状況を見ると、ここで書いてあるテクノロジー、デザイン、ブランドというのは、個々の関連領域をいかに許可するかという問題設定ではないはずなのです。そのときに、これをどういうふうに考えていくかというところを、4ページを本当に組み替えをしていただかないといけないのではないかと思います。
 それでは、ちょっと先へ進ませてください。5ページです。「大学やベンチャーの有する『知』から、いかにイノベーションを創出するか」というところについての御意見はいかがでしょうか。渡部委員。

○渡部委員
 産学連携の評価手法については、前回もお話しましたように、これについては今まで特許をたくさん出せばいいとか、そんなものじゃなくて、これじゃ、国民のため、社会のために一体何をやっているのかわからない。それがどういうためにやっているのかということを、本当にアカウンタビリティーがある成果指標というものを産学が納得して運用しないといけないですね。
 そういうふうにするためには、まだ産学でのちゃんとした議論で、本当にこれでいいのだ、これを10年やれば成果が出るのだというところまで詰めないといけませんので、そこは計画の中にそういうことをきちんとやっていけるような内容を書いていただく必要があります。いろいろな議論をしないといけないのですけれども、例えばどこかで読みましたけれども、今日欠席されています山本委員が、技術移転を海外の企業にやると、これは技術流出と考えるべきではないというような議論もあったかと思います。
 昨日も、NHKで紹介された東北大の足こぎ車いすの例、これは非常にいい例だと思います。台湾企業に製造を出しているということで、これも技術流出の懸念があるのではないかという指摘が番組中でもありました。これは、今のオープン・イノベーション的な戦略の中で、新興国との連携というのは不可欠であって、一概に海外に技術を出したらだめみたいな議論というのは、留意するべきところが全く違っていると思います。そういう戦略的な観点で産学連携を見ないといけないと思います。
 そういう議論していく必要があると思うのですが、これは大学発ベンチャーも同じです。日本だけで育成する時代は終わっていて、それでは大きく成長しないです。外国機関との連携とか外国における市場導入のためのいろいろな施策、実証試験を後押ししていくことなども必要、というような観点に変えていかないといけない。これも最初に言った知財インフラというのが、結局、日本のことをやればいいという発想だと出てこないと思うのです。日本が今、持っている資源で、世界の知財インフラに影響するような考え方、それを活用していくような施策ということを考えていかないといけないので、そこの発想の転換が必要だと思います。
 ベンチャーに関しては、産業革新機構が期待されているのですけれども、確かに大学発とか、この間は産総研発の案件などもやっていただいていますけれども、これも第3次補正で8,000億円から1兆8,000億円まで積み増しされていますので、非常に重要だと思います。基礎的シーズ、大学発とか、そういうところにある一定のポートフォリオをおいてやっていただくような仕組みも考えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。前回、人材のときにも出ましたけれども、国際化ではなくて、グローバルを前提にした話ですね。ということでの御指摘を再度強調していただきました。
 高柳委員、お願いします。

○高柳委員
 5ページの辺りは、従来からの知的創造サイクルの域を出ないような感じがします。これは逆回転のビジネス・ドリブンのイノベーション創造という形に行かないと、現在の大学ベンチャーの、特にアカデミアのシーズを活用してイノベーションというよりも、活用できるビジネスモデルが先にありき。どういうシーズを発掘し、そこから使えるイノベーションを創造していくというビジネスモデルがあって、使える知財の創造サイクル。それには、逆回転的な発想を加えないと、従来と同じでなかなか成果が出ないことになるのではないか。
 そういう意味では、取組の方向性としても、総合的な評価の活用と書いてありますけれども、評価をしてどうするのだ。そういうものが抜けていると思いますね。評価して、余り役に立たないものはどうするのかとか、もっと競争力があるようにするためにどうするのかというのが、手段だけですから、目的は何なのかというところをはっきり書いてほしいと思います。
 それから、先ほどの繰り返しになりますけれども、現在あるシーズからイノベーション創出。そのイノベーションも、どういうイノベーションなのか。そういうところが、具体論になると、今までの繰り返しみたいなことになりますので、ここに風穴というか、大きなインパクトを与えるような、それは人材教育とも関連するのですけれども、そこの発想の展開とかをしないと、ブレークスルーはなかなかできないのではないでしょか。そういうふうに感じます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。お話は5ページにもかなり強くあらわれているのですけれども、それでは6ページに参りましょう。6ページ、中小企業。今までのところは大学、ベンチャーだったのですが、次は、勿論ベンチャーも含めてですが、中小企業の知財活動をいかに強化するかということです。これについてはいかがでしょうか。出雲委員、お願いします。

○出雲委員
 左下のグローバル展開支援策のところで、資力に乏しい中小企業に大きな負担がかかっていることの事例として、出願費用の助成を一番多く望んでいるというデータだと思うのです。この出願費用の助成は勿論重要だとは思うのですが、これは昨年も全く同じことを、私も荒井先生も申し上げたと思うのですが、一体幾らかかるのかという予見性がないことに対する不安。
 特に、海外でも権利を取得する際に、一体どれぐらい費用負担が発生するのかという目安、パック料金みたいなものを、知財総合支援窓口に相談したときに、ある程度事例を収集して明示することを、昨年、事務局の方でおっしゃっていただいていたと思います。その取組みをしっかりしていただければ、この漠然とした、とにかく出願費用の助成をしてほしいということに対する期待値みたいなものは、これから少し下がるのではないかと思っております。
 2つ目に、4割強の方が、説明会やセミナーの開催と、海外の先行技術の調査支援のニーズが高いデータがあるのですけれども、これは私見ですが、外国で権利取得を過去したことがある、そしてライセンス収入が1件以上あるような中小企業にインタビューすると、出願費用の助成に対してはそれほどの期待はなくて、この説明会やセミナーを開催してほしいとか、海外の先行技術の調査支援をしてほしいというものが、もっと延びるのではないかなと思っています。
 実際にJSTとかJETROとか、いろいろなところのセミナーに中小企業の方が来ていますし、私どもも出させてもらっているのですけれども、海外での、特に中国での権利侵害訴訟に巻き込まれた事例みたいなものを聞かせてもらえるセミナーは、すぐ満席になって埋まってしまう。そういうセミナーをもっと2回、3回と開催してほしいと思うのですけれども、中小企業にとってそれほど関心がないような、ほかのセミナーと同じ回数を実施していて、出席ぐあいにも差の開きが大分出ていると思います。
 ですので、外国での権利取得の好事例と訴訟になってしまうケースは、説明会やセミナーをもっと多く開催して、もう既に今の時点で満席なので、もっと多くの中小企業が参加できるようにしていただきたい。
 それと同じことなのですけれども、海外の先行技術の調査支援につきましては、中小企業のニーズが非常に高いと思っております。以前、この会議にも東京都の中小企業振興公社の方にお越しいただいてお話を私どもで承った際に、海外の先行技術の調査支援、2分の1補助事業を東京都中小企業振興公社の方でやられていて、これはとても人気が高いメニューだと、その公社の方がおっしゃっていたと思います。実際、この半額補助の仕組みの説明会はすごく混んでいますし、すぐ満額になってしまって、予算措置も十分とられていないという現状があります。
 この一番上の出願費用の助成に対しても、中小企業の知財活動を評価するために非常に重要だということはわかるのですけれども、パック料金のような料金の予見性を高める。中小企業が幾らかかるのかという予見性を高める取組みを本当にやっていただきたいのと、説明会やセミナーの開催、海外の先行技術の調査支援については、このデータからも読み取れますし、実際、満席で十分受講できない方もたくさんいらっしゃいますので、より積極的に改善の取組みをしていただきたいと思っております。

○妹尾会長
 具体的な御提案をいただきました。誠にありがとうございました。
 あわせて、この6ページのところでどなたかほかに。小川委員、お願いします。

○小川委員
 ここに書いてある補足のようなものですけれども、ここ3年ぐらい、アジア、特にインド、中国、ASEANに行って非常に深く感じることは、日本の大手企業あるいは中堅企業がアジア市場に進出する時、関連の協力企業を一緒に連れていけないと言うのです。
 なぜかと言いますと、日本よりもはるかに所得水準の低いところでビジネスをしなければいけないので、協力企業としての日本の中小企業を一緒に連れていってもコスト的に全く見合わない、というのえす。したがって、進出した日本企業が、中国なら中国の現地のサプライヤーを育成してコスト低減を現地企業と一体になって行うのです。1980年代までなら工場を建設した場所が、日本より所得水準の高い欧米でしたので、協力企業としての日本の中小企業と一緒に行きました。今は全く様変わりしてしまい、中小企業を日本に残してアジアに工場を建てているのです。その延長で、日本の大手企業はアジアの協力企業と一緒に、欧米市場へ製品輸出する構造が出来上がるでしょう。
 何を言っているかと言う増すと、日本の雇用とGDPのかなりの部分を占める中小企業が、自分の力だけでアジアに行かなければならなくなっているのです。ですから、相当厳しい状況に置かれているという意味で、6ページに書いたことは早く充実しておやりになった方がいいのではないか。
 またこの間、ここ1年ぐらい中国に行ったときにみんなから言われることは、過去、日本が中国で出願した特許の8割以上は、もう使い物にならない、のだそうです。それは、中国語は分かるが特許については全く素人だった人が翻訳して中国へ特許出願したからです。特許の書き方や権利の取り方が全くでたらめなのだそうです。中国にいる日本の特許庁の人やJETROなど、いろいろな人に同じことを言われました。
 ですから制度として箱をつくるのは勿論重要なのですが、箱の中で支援する人は、現地の特許制度に精通した人と現地のビジネスにも精通しているような方をペアにして対応するなど、かなり充実したサポートをしないと日本の中小企業が、特に途上国市場においては、知財保護と活用という意味で非常に危ない状況に置かれるのではないかと思いますので、是非お願いしたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。今のような生々しい話も幾つも出ているかと思います。
 この6ページについて、よろしゅうございますか。
 それでは、7ページに移りたいと思います。これは、中小企業の知財活動強化の続きになります。例のスモールエンティティー、マイクロエンティティーのお話ですが、これについて荒井委員はいかがでしょうか。

○荒井委員
 これは非常にわかりやすく整理していただいたと思います。対象は、アメリカのスモールエンティティーが500人未満、全部。日本の場合にはこういう要件が付いている。しかも税金を払っていない中小企業は、赤字の会社で、10年たったらもうだめということで、利用の要件がそもそも厳しいのです。だから、これはほかの国並みに、アメリカもそうですし、ほかの国でも中小企業は、雇用の意味でも技術開発、イノベーション、今は小さくても将来大きくなるものが随分あるわけですから、是非ここは思い切ってやっていただく。
 出雲さんは、そんなにお金のことを心配していないみたいにとられかねない発言だったのですが、そうじゃなくて、日本の中でもきちんと取れて、それをまたベースに、中国でもアジアでも活躍できるというのが一番基本だと思います。
 減免内容の方もアメリカの方が広くて、日本は非常に狭い。対象も狭い、それから減免も狭いということですので、さっき小川先生がおっしゃったとおり、いよいよ中小企業が独自でやっていかなければいかぬということですから、もう一遍ここは本腰を入れてやっていただきたいということを重ねてお願いしたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ここの部分について、ほかに御意見いかがでしょうか。出雲委員、これは反対するわけではないですね。

○出雲委員
 はい。

○荒井委員
 これもやった上で。

○出雲委員
 これもやった上で、前提として。

○妹尾会長
 はい。
 8ページに参りたいと思います。「グローバル・ネットワーク時代に対応し産業競争力強化につなげるための国際標準化を含む知財マネジメントの基盤をいかに構築するか」ということであります。これについてはいかがでしょうか。岸委員、お願いします。

○岸委員
 重箱の隅をつつくようになってはいけないと思うのですが、多分これは本質的な議論だと思うので、まず事務局にお伺いしたいのですが、8ページの右側の国際標準化活動における審議内容の変化というところの文章で、「国際標準化の審議内容が変化しており、包括化・システム化により、既存の枠組みを超えるテーマが多数発生」とあるのです。この包括化というのは、どうも霞が関用語のような気がしてしようがないのですが、何を言っているのか。
 システム化の方は、今まさにIT革命の中でシステム・インテグレーションが勝負になっているというのは、ほとんどの方の認識だと思うのですが、この包括化ということで何を言わんとしているのか、この御説明を最初にしていただけますでしょうか。

○妹尾会長
 藤井さん。

○藤井政策参与
 ちょっと補足説明させていただきます。
 ここの事例でアセット・マネジメントの国際標準化。これは、実際に水道事業とかに使われているものでございまして、②の機能安全は、機能安全という上位標準がございまして、それから派生して、実際の自動車とか鉄道、医療といった個別の分野での機能安全の標準化が進んでいるというお話でございます。
 それで、システム化はよくおわかりで、包括化というのがここで何を指しているのかと言いますと、いろいろな分野を束ねたような機能安全というものがありますが、これはいろいろな分野について横串を刺すような共通的な概念を提示している部分でございます。こういう横串的な部分を包括化という言葉で、ここでは表現させていただいていると御理解いただければと思います。

○岸委員
 聞いてわかるのですが、今の産業構造の転換あるいは競争力の源泉は、さっきから小川委員とか角川本部員がおっしゃっているように、私はソフト化じゃないかと思っているのです。組み込みソフトを軸にした、例えばプリウスだったら100個のマイコンが積まれている。その制御系が究極を決めてしまう。そういうソフト化、あるいは括弧してモジュール化と言っていいのかもしれないのですが、その辺りがまさに今、変わってきている。「ソフト化・システム化」こそが、私は産業競争力の源泉であり、この国際標準は特にそれがポイントになると思います。
 今、エレクトロニクス業界の惨状を見ていると、あれは明らかに「ソフト化・システム化」の遅れが出ている。今はエレクトロニクス業界だけですが、やがて車、ロボット。車の先にスマート・グリッドがあるとすると、私は、そこはまさに「ソフト化(モジュール化)」あるいは「システム化」の闘いだと思っておりまして、この包括化というわけのわからない言葉で逃げないで、もう少し本質を突いた表現にした方がいいなという感じがします。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。藤井さん、包括化というのは、英語で言ったらコンプリヘンシブということですか。概念的には。

○藤井政策参与
 いや、ちょっと。

○妹尾会長
 領域的なものは6つありまして、アドバンスとインター、ニッチ、フュージョン、トランス、メタというのが、少なくとも私の学会の分類で、今まで反対されたことはないので、それにコンプリヘンシブが入るのかというと、どうも違って、分野横断的というのはトランスの話ですね。あるいは、それをインテグレートしたらシステム化、システムダイレーションということなので、概念的な整理がきちっとできていないと混乱を招くので、ここのところは多分、岸委員のお話のように少し整理しないと、逆にわかったようでわかったつもりになってしまうということかもしれません。
 ほかに8ページ、佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員
 左上の水色の中なのですけれども、まさにこのとおりだと思うのですが、国際標準化の戦略自体、デジュール・スタンダード的なことを考えると、ヨーロッパは先行していることには間違いないわけで、その構造は変えられないと言いますか、その事実を踏まえた上でどうするか。それとも、それに対抗し得るような国際連携をしていくのかというところが重要なファクターになるのではないかと、1つは思います。
 もう一つは、くしくもここに書かれているのですけれども、日本の特徴だけじゃなくて、産業構造にもあります。例えば私どもの産業ですと、ヨーロッパの標準がなぜそんなに早く進むかを調べたことがあるのです。これは、技術をすぐにディスクローズできる。というのは、新しい技術は某メガ・サプライヤーからほとんど生まれていて、それぞれの自動車会社同士は余り競合関係にならないので、それだったら、それを標準化して、ほかからの侵入を防ごうとかスタンダードを取りに行こうというのが、非常にまとまりやすい構造を持っている。
 日本の企業で言いますと、私どものところに限らず、個々の企業がまずデファクト・スタンダードを目指すので、こんな新しい技術ができたので、まず標準化して、これで世界に打って出ようという動きにはならないという産業構造的な話もあるので、総括としてはこれでいいのですけれども、そこのところをもうちょっと詳細にして、今後どうしていくかとやらないと、一般論になり過ぎるかなという気がします。

○妹尾会長
 なるほど。これについてはいかがですか。

○藤井政策参与
 今、御指摘の点、よく考えて対応させていただきたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 多数の国内企業と長期間の国内調整の部分を早期確立しようとしたら、多分、複数の矛盾する提案があった時点でどっちかを決めるというプロセスをつくるしか、恐らくないと思うのですね。それを結局、だれがやるのか、どういう仕組みでやるのか。民間でそういうことをいつまでに決めさせるような仕組みをつくる。こう書いた以上は、そんなに選択肢はないような気がするので、そういう議論をするのかどうかだと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 どうですか。

○藤井政策参与
 どうやって早くさせるために審議するのかという、審議団体としましては、JISC、日本工業標準調査会が担当するということになっておりまして、具体的にそこの中身をどうやるかというのは、今、審議中と聞いております。

○妹尾会長
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、その次の9ページへ行きたいと思います。「グローバル・ネットワーク時代のビジネス基盤としての認証」、これも認証の話が入ってきましたけれども、これはいかがでしょうか。認証の話というと、岸委員に振りたくなるのですが、よろしいですか。

○岸委員
 お答えできるかどうかわかりませんが。

○妹尾会長
 いや、御意見はございますかということです。よろしいですか。

○岸委員
 では、1つだけ。前々回も申し上げたので、あれなのですが、結局、国際認証ビジネスの背景に何があるかと考えたときに、必ず出てくるのが保険なのですね。プロダクト・ライアビリティーに基づく保険の力をもって認証してしまう。それがアメリカのUL、アンダー・ライティング・ラボラトリの強みであるし、多分TUVとか、ドイツ系もスイス系も、みんな裏に保険を持っている。この保険のPLの部分をカバーしながら認証のビジネスの力の源泉を持っている。
 そこのところは、私は保険そのものの勉強をしていないので、よくわからないのですけれども、もう少しこの中にPLと保険とのミックス、そこのところは今後の検討課題じゃないか。まして、たまたま生活支援ロボットも出ておりますが、生活支援ロボットは最終的に家庭の中に入るときに、だれかの頭をたたいて血を流してしまうことが起き得るわけで、そのときに認証と保険の関係をどう見ていくのか。その辺は、かなり近々の課題になってくるのではないかと私は思っておりまして、しつこくなりますが、保険をどうこの中で検討していくかというのは、1つ書いてもいいのかなと思っております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。ほかには、これについてはよろしいでしょか。佐々木委員。

○佐々木委員
 今の保険の話との関連は、ちょっと私はわからないのですけれども、こういうものを調べてみたときに、特にアメリカ辺りと比べると、戦略自体がそう間違っているわけではなくて、作ったらすぐにやるかやらないかという、そのスピード感が大分違うように思います。
 ロボットというのは、多分ものすごく遅れているのではないか。これは日本人かたぎによるのかもしれないし、日本人の慎重さによるのかもしれないけれども、ここで議論してどうなるかわかりませんけれども、ちょっとはリスクをとる。誤解を恐れずに言うと、多少のリスクは許容するようにしていかないと、なかなか世界に先駆けていかないのではないかという気もしております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。スピード感の話は、毎回御指摘いただいていると思います。ほかによろしいですか。
 それでは、その次の10ページ、最終ページになりますけれども、「知の活用促進のための環境整備」の「中小企業の事業戦略に資する国際標準化をいかに推進するか」であります。これについてはいかがでしょうか。荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 ここに書いてある中小企業の関係は、今、中小企業にとりまして大変重要性が増してきておりますので、取り上げていただいていることは大変適切だと思います。それで、日本の中小企業の技術を国際標準化する部分と、同時に国際的にできてしまったものに合わせなければいけないものに分けて書いていただいているわけで、これもいいと思います。
 ただ、表現の問題で、まず10ページの左側の国際標準化の事例で、社名が出て、自分しかできないようにつくったというのは、ちょっと表現がよくないと思う。みんなにとって必要なことをやったら、結果として自社しか達成できなかったとやっておかないと、まずいのではないかという気がいたします。上も下も同じように、特に社名も出ていて、有名な会社です。皆さん、もう少し志高くやっているわけですから、こういう面も結果としてはあったということだと思います。
 それで、右側にあります規格適合の必要性はそのとおりで、取組の方向性の2つ目の丸で、支援として情報提供、これは非常に少なくて困っています。それから、相談窓口の設置も余りない。それから、いざやろうとしたときに、手続が物すごく大変なのです。どういうデータをそろえて、どういうふうにアーシングするか。それから、それにいろいろな試験費用が係っていますので、手続の支援、費用負担の助成というのも是非検討していただきたいと思います。これは中小企業の方からも大変要望が強いので、お願いしたいと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。具体的な御提案をいただきました。
 小川委員、お願いします。

○小川委員
 今の荒井委員の意見に対しての補足なのですが、左側の事例は、とにかく標準化すれば日本企業が勝てる、と誤解されるように思えてなりません。この背後に知財の役割があるはずですので、標準化と同時に知財がどうなっているのかということも示さないと大変な誤解を生むのではないかないでしょうか。国際標準化とはオープンにして広く使わせることですので、知財を背後で持ってOpenとCloseの戦略を事前設計しないと、全てを失うことになります。
 中小企業は、一般に素材など技術体系の小さなものを扱うことが多いので、特許などの知財が非常に有効に機能します。これが国際標準がどうリンクするのかということを、ひょっとしたら今回は事務局案で意図的に書かなかったのかもしれませんが、国際標準化の中の知財の役割について、みんな共通の認識を持った方がいいのではないかと思って、このような意見を述べさせて頂きました。
○妹尾会長
 ありがとうございます。そうですね。ここのところ、読める方は読めるけれども、読めない方はミスリードする可能性があるという御指摘ですね。ここは工夫をしていただくことにしましょう。オープン、クローズでいくと、標準化でオープンにして、市場形成できたから自動的に入ってきたみたいに読まれてしまったら、ビジネスモデル的な話を全く無視した、旧来型の発想になってしまいますので、そこのところではないぞということです。
 ほかに、この10ページにありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、勿論、これだけの話ではなくて、今日、これになかった話を加えたいとか、あるいはそれ以外について振り返ってという御指摘があろうかと思いますが、時間の関係がありますので、どうしても今日ここでという方と、それから後ほど事務局、ないしは私の方にお申し出いただければと思うのです。今日、御発言されていない委員の先生方、いかがでしょうか。よろしいですか。大渕先生よろしいですか。

○大渕委員
 はい。

○妹尾会長
 では、福島委員、爆発していただいて結構です。

○福島委員
 全体として、1つだけ意見を述べさせていただきます。先程、妹尾先生より「追い付く」から「追い越す」知財システムへの転換というお話がありましたが、今回の論点整理における3つの柱の中で私ども企業が一番の関心を持っているのは、知財インフラの制度調和です。制度調和という言葉が書かれていますけれども、日本としてどのような制度を目指すべきかという点について、もう少し具体性も踏まえた議論を進めていただければ「追い越す」知財システムに結び付くと思います。勿論、制度を世界に広めるための仕掛けについても同時に議論が必要と考えます。日本だけの制度としてより良いものというのではなくて、グローバルな事業を促進するための世界制度的な発想から、何を特徴として、どう広めるのか、そういった視点で少しご議論いただければと思いました。
 また、先程から小川委員を始めとしてソフトウエアが競争力の源泉となるような議論がありましたが、個人的には本当にソフトウエアが産業競争力のコアになり得るのかという視点に少し首を傾げています。
 現代の産業は、従来型のハードウエア産業において例えばLSIやモジュールを設計するようなハードウエア・オリエンテッドな開発から、プロセッサに組み込まれたソフトウエアを開発し、そのソフトウェアプログラムの中に技術的な要素がたくさん組み込まれるようになってきました。したがって、技術的な要素がソフトウエアとして実現されているということは確かですが、それをもって組込みソフトウエア自体が産業競争力の強化に直接結び付くような方向性を明確に示せるかどうかについて、私自身は整理し切れていません。ソフトウェアにそのような可能性があるのであれば、具体例も含めてきちんとご議論いただきたいと思います。
 私自身は、iPS細胞の例が適切かどうか良く分かりませんが、日本の強みとして材料やデバイスを起点に競争力の強化を考えるべきところもあると思いますし、少しバランスのとれた議論を進めていただければと考えた次第です

○妹尾会長
 最近の状況から、福島さんは御遠慮されるお立場かと慮ったのですが、今のことに対して、ちょっと時間がありますから、小川委員、お答えいただけますか。

○小川委員
 先ほどの福島委員の話ですが、確かに組み込みシステムが、単にLSIに入っていろいろな機能を実現するだけでは、LSIチップだけがが付加価値ですね。しかしLSIチップで日本企業は国際競争力を失いました。残っているのは日本市場のごく一部だけです。しかし我々が注目しなければならないのは、そのLSIチップからオープン市場に向けて伸びる市場コントロールの仕掛け作りです。この仕掛けがLSI内部の組み込みシステムによって機能しています。その事例は枚挙にいとまがない。我々はこの仕掛け作りをせず、単にLSI単体の機能やコストだけに着目し過ぎたのではないでしょうか。それは我々が無知だったからでは無く、垂直統合型の企業制度でビジネスをしてきたので、分業型、あるいはオープンなビジネス・エコシステム型の市場に向かって影響力を行使する、という発想が生まれなかったからではないでしょうか。 それから、ご指摘のように部品材料で日本が強いのは事実です。、しかしながら、例えばリチウムイオン電池システムで、材料、セル、モジュール、そしてバッテリー・マネジメントシステム(BMS)のどこに付加価値がたまるようになるかはは、ご存じのはずです。大きな付加価値がたまるのが材料や部品ではなく、上位のBMSになってしまいました。組み込みシステムを駆使する欧米企業は、材料・部品と対極にある上位レーヤーのBMS側から、オープンなビジネス・エコシステムを強制的に形成し、材料・部品のコストを競わせて日本から付加価値を奪う仕掛けを構築します。この仕掛けが、BMS側の中のLSIの中の組み込みシステムと知財マネージメントとの連携によって構築されているのです。

○妹尾会長
 この辺は、是非白熱した第2部の議論をしたいと思います。私も、これについては、産業生態系を形成するときに一体どうなのかという話ですね。それを見ないと、アーキテクチャーで支配されたらという議論も必要だと思います。そうしないと、アーキテクチャーは基本的にソフトウエアの方で動きますから、素材だけでは実は勝てないという部分もあるということです。

○小川委員
 1つ朗報がございます。皆さん、Rubyというプログラム言語を御存じですか。これは、先ほど来、角川本部員をはじめ、いろいろな方が日本のソフトウエアの話を言いましたけれども、Rubyは久々のヒットではないか。ですから、これを今日のような場あるいは別の場でもいいのですけれども、議題に乗せまして、これを日本の産業競争力にどう使うかに関する共通の方向性を持つべきではないでしょうか。参考までに。

○妹尾会長
 私は心配症なので、あのRubyがどういう産業生態系までつながるかというのが、その次に大きくなっていく感じがあります。
 iPS細胞については、前後左右の産業領域がどう動くかというのが重要で、iPS細胞のような公共財的なものと、それが周辺の産業競争力にどうつながるか、これはまた知財と国際標準の話で、日本がアメリカに遅れているところをどういうふうにやるかという御議論が多分あろうかと思います。
 最後のところで、今日、いろいろな質問が、あるいは御意見が出たところについて、局長、いかがでしょうか。

○近藤局長
 とにかく私たちがこれまでやってきたことを振り返りながら、少しでも前進させるという積もりで、今年はやろうということであります。この数年間の中でも、思い切ったことを書けないかもしれませんが、とにかく少しでも前進して、後につながるようにという思いでやっているところであります。

○妹尾会長
 それでは、時間も参りましたので、今の局長のお話のとおりであります。あとは、半歩進めていくときに、その半歩をどういう方向に進めていくかということも、一方で重要かと思います。我々はイノベーションを語っているので、できるだけイノベーティブな方向に半歩ないしは一歩を進めていきたいと思います。
 今日は、貴重な御意見ありがとうございました。まだ御意見あろうかと思いますけれども、あるいはここではしゃべれないということがあろうかと思いますけれども、それは事務局ないし私の方にお寄せいただければと思います。
 それでは、予定の時間が参りましたので、本日の会合はここでお開きにしたいのですが、髙原参事官の方から事務連絡、ございますか。

○髙原参事官
 次回会合は、2月20日、月曜日、午後2時から、こちらの会議室で開催させていただきます。委員の皆様には、お忙しいところ恐縮ですが、日程を確保いただきますようによろしくお願いいたします。
 以上です。

○妹尾会長
 それでは、よろしければ、これで閉会したいと思います。長時間どうもありがとうございました。