知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第3回)
○妹尾会長 それでは、時間になりまして、一部雪のために委員の御到着が遅れていますけれども、開始させたいと思います。よろしいでしょうか。 それでは、皆さん、こんにちは。 ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第3回会合を開催いたします。本日は、御多忙のところ、また、雪の中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。 今日は、2つあります。1つは、先日来から話題になっています、知財人財育成についてです。これは、知財人財育成プラン検討ワーキンググループで、知財人財育成プランの(案)がとりまとめられました。これについて、御報告を受けた上で、この専門調査会として了承して差し支えないかどうか、これをお諮りしたいと思います。これが、1つ目の議題です。 2つ目、知的財産推進計画2012に向けた議論を始めたいと思います。前回までは、2011をどう検証していくか、あるいはそれの進捗に関して、どういうことを考えればいいかということを御議論いただいていましたけれども、いよいよその次、2012に向けて議論を始めるというのが、今日の2つ目であります。 本日は、相澤英孝委員、大渕委員、小川委員、迫本委員、中村委員、西山委員、山本委員から御欠席という御連絡をいただいています。 それから、荒井委員は、遅れての御出席というふうに連絡をいただいております。 それ以外に、上條委員と江幡委員が、ちょっと交通の関係で遅れているということなんですが、恐縮ですけれども、先に始めさせていただきたいと思います。 それでは、開会に当たり、近藤局長からごあいさつをお願いいたします。 ○近藤局長 お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。この会議も今年1回目でございますので、改めて新年のごあいさつを申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。 お陰様で、人財育成プランの方も、半年間、7回にわたりまして熱心な御議論をいただき取りまとめていただきましたので、今日、御審議をいただければと思う次第でございます。 また、3月末までもうわずか2か月ほどしかありませんけれども、知財計画2012に盛り込むべき方向を打ち出していただきたいと思っております。 新たな年を迎え私どもも気持ちを新たにしっかりと政策を進めたいと思いますので、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 ○妹尾会長 それで、今日は、戦略本部の方から角川委員に御来席賜っています。何かありましたら、御発言を賜りたいと思います。 それでは、早速、最初の議題に入りたいと思います。知財人財育成プランについてです。 これの検討の進捗状況については、第1回の専門調査会で御報告をさせていただいております。先日、知財人財育成プランの検討ワーキンググループにおいて知財人財育成プラン(案)がとりまとめられました。本日は、これについて検討の上、専門調査会として了承して差し支えないかどうか、これをお諮りしたいというふうに存じます。 知財人財育成プラン(案)について、事務局から説明を受けた上で、皆さんの御議論をお願いしたいと思っています。 それでは、髙原参事官、よろしくお願いいたします。 ○髙原参事官 それでは、まず、資料の確認をさせていただきたいと思います。 議事次第に続く資料1が「知財人財育成プラン(案)概要」でございます。 続きまして、資料2「知財人財育成プラン(案)」です。 資料3が「知的財産戦略に関する論点整理」でございます。 資料4が「今後のスケジュール(案)」でございます。 その下に参考資料1といたしまして、前回、第2回の専門調査会における主な意見をまとめたものです。 以上が本体資料及び参考資料です。その外、資料番号は付けておりませんけれども、「知的財産推進計画2012の策定に向けた意見募集」という資料を配布させていただいております。 現在、「知財計画2012」の策定に当たりまして、広く国民の皆様からの御意見を募集しておりまして、この点の御案内でございます。募集は、今週の初め、16日から開始をしておりまして、2月6日を締め切りとさせていただいております。 この資料は、知財本部のホームページにも掲載をいたしておりますけれども、本日、傍聴に御来場の皆様も含めまして、幅広く御意見をちょうだいできればと考えております。 以上でございます。資料の不足などはございませんでしょうか。 それでは、資料1と資料2に基づき、知財人財育成プランにつきまして、御説明をさせていただきたいと思います。 まず、資料1をごらんください。プラン(案)の概要です。一番上の枠に書いておりますように、これまでの検討の背景には、グローバル競争が激化する中で、知財マネジメント人財あるいはグローバル知財人財が求められているということがあります。 こうした背景の下で、「知財計画2011」に「知財人財育成プランの確立」が盛り込まれました。これを受けまして、昨年の8月に知財人財育成プラン検討ワーキンググループを、この専門調査会の下部組織として設置をし、検討していただきました。合計7回の会合を経て、先週金曜日に同ワーキンググループで報告書(案)を取りまとめていただいたということでございます。 左側をごらんいただきますと、我が国の優れた技術力、デザイン力、ブランド力が必ずしも競争力には結び付いていないという現状がございます。他方、右半分には求められるイノベーションシステムとあります。まず、技術起点型のサイクル、これは創造から始まりまして、保護権利化、活用と、この順で回るサイクル、技術戦略を主軸とするものです。これに対して、更に右側にありますのは事業起点型サイクル、つまり、事業戦略から出発して、そのような戦略の実行を可能とするような知財マネジメントによる競争力のデザイン、更にそうしたデザインを実現する上で必要な知財資源の調達という3つの段階から構成されるサイクルモデルです。これらの2つのサイクルモデルをしっかり意識をした上で、両サイクルの使い分け、あるいは組み合わせといった戦略的活用が不可欠になっているということでございます。 さらに、グローバル化に対応して、事業と一体化した総合的な知財マネジメントができる知財人財の育成確保が急務になっております。そこで、ワーキンググループでの検討をいただき、今後、10年先を見据えた人財育成プランの策定を目指すのが、この「知財人財育成プラン」であり、最終的には、戦略的な知財の活用による国際競争力強化につなげていくものでございます。 次のページにありますのが主要施策です。後ほどまた資料2で御説明しますけれども、①から③の3つの施策、知財マネジメント戦略研究拠点の整備、知財マネジメント人財を養成する場の形成、さらに、グローバル化に対応し企業の事業活動に資する審査官・弁理士の育成でございます。この3つの施策は大きな環でつながるように書いておりまして、真ん中に「産業」を置いておりますけれども、この3つの施策をうまく連動させることによって産業の競争力強化につなげていく、これをコアにしている点を御確認いただければと思います。 それでは、資料2「知財人財育成プラン(案)」でございます。表紙をおめくりいただきますと「はじめに」とあります。冒頭のパラグラフは、先ほどの資料1の1枚目と同じ内容です。2つ目のパラグラフ、知財人財育成に関する2006年の取組で、2006年に「知的財産人材育成総合戦略」、以降「2006年の『総合戦略』」というふうに表現します、これを取りまとめておりました。この2006年の「総合戦略」は、主として国内の知財権の取得・維持・管理に直接的に関わる知財専門人財をターゲットにしておりましたけれども、いまや、イノベーション戦略に基づいてグローバルにイノベーションを創成し、、事業戦略に巧みに知的財産を活用できるような「知財マネジメント人財」、こういう人たちが必要になってきていると書いております。 すなわち、今般の知財人財育成プランは、従来の知財専門人財の育成だけではなく、知財マネジメント人財の育成を大きく打ち出していくものであるということです。 さらに、2006年の総合戦略との関係については、両者が相互補完的に実施されるものであるということです。そして、この人財育成プランの施策は今後の知財推進計画に盛り込んで、我が国の知財人財の育成を加速し、究極的には、国際競争力の強化を目指すものであります。 続いて、目次で、本編は4章構成になっております。第1章「状況変化及び情勢認識」、2章「知財人財育成の現状と課題」、第3章「知財をめぐる将来像と知財人財育成の関わり」、第4章「知財人財の育成策」という構成になっております。 1ページからの第1章の冒頭では、資料1にもありましたように、技術力で勝りながら事業で負けるという状況を打破するには、総合的な知財マネジメントが必須になっていると書いております。 これまでの改善を超えて、画期的なビジネスモデルや知財マネジメントを駆使することによって、グローバルイノベーションを実現していく時代になっております。 このような中で、各国の知財システム間の競争というものも、また激しくなっておりまして、幾つか例示がありますけれども、昨年9月、アメリカが先願主義に移行したという出来事、それから、中国における特許を始めとする知財権の出願について量的な攻勢が目まぐるしいということ。 また、知財権のエンフォースメントという観点では、ACTAの発効に向けた動きが進められております。 このように知財をめぐり世界は大きく動いておりますけれども、知財システムを支えているのは、言うまでもなく人ということでございますので、時代の流れに沿った知財人財の育成が急務であるということになります。 2ページには、再度、2006年の「総合戦略」の話を書いております。2006年の「総合戦略」では、国際化に対応する知財人財の育成に道を開いたものですが、知財の専門人財の量を倍増し、質を高度化することを重点目標に掲げておりました。主な問題意識としましては、知財の創造に始まり、保護、権利化、活用といった知的創造サイクルをどのようにしてうまく回していくかということ。言わば、技術起点型のサイクルモデルを基本とし、権利化、保護といったところを主軸とするものでありました。 3ページ、グローバル・ネットワーク時代における知財人財です。グローバル・ネットワーク時代が到来して、どのような対応が必要か。3ページの中ほどに、資料1にありました2つのサイクルモデルの図を書いております。 図の下のパラグラフのとおり、グローバル・ネットワーク時代にあっては、2006年の「総合戦略」にあった、左側の技術起点型サイクルモデルのみではなくて、同時に、右側の事業起点型サイクルモデルに基づく戦略を併用していくことが肝要であります。 4ページの2つ目のパラグラフにもありますように、現実には、ビジネス戦略を展開する上で、技術起点型サイクル及び事業起点型サイクル、この両者が使い分けられたり、あるいは両者が組み合わさって動いたり、ということでございます。 先ほど、知財マネジメント人財と申し上げましたが、この2006年の「総合戦略」との関係で、育成の対象となる人財について整理をしたのが、4ページの後半になります。 2006年の「総合戦略」では、知財人財を3つに分類しておりました。この中で、特に知財の保護、権利化に関係する知財専門人財の育成に重点が置かれておりまして、この4ページの図で申し上げますと、右上の四角の中、ここに含まれるような人財が主なターゲットであったということになります。翻って、現在では、時代の変化を受け、2つのサイクルモデルをしっかり使い分けたり、組み合わせたりといった総合的な知財マネジメントが巧みにできるような人財、「知財マネジメント人財」の育成が急務になっております。今般の知財人財育成プランで焦点を当てるのは、この4ページの図でいいますと、色を付けております、活用に関わる「知財マネジメント人財」ではないかという整理をしたものであります。 5ページ、6ページと図が幾つか並んでおりますけれども、人財育成の方向性について概念整理をした部分です。 2006年の「総合戦略」の策定以前から、知財人財の「専門性」を高めるということは行われておりましたが、2006年の「総合戦略」では、この点線で囲ってある部分、「領域性」を広げる方向での知財人財育成の取組に重点化を図ったということであります。これに対して、いまやこの知財人財育成プランにおいては、「専門性」と「領域性」という二次元の座標軸に加え、グローバル・ネットワーク時代においてはより高度で総合的、戦略的なイノベーションが求められることから、巧みな知財マネジメントができるような「イノベーション戦略性」を新たな第3の座標軸とした概念で整理して、三次元的な人財育成に取り組んでいくべきではないかとまとめております。 7ページは、多様な知財人財の育成の必要性ということで、先ほどから出てきております2つのモデルの使い分け、あるいは相互に関連させながら進めることができるような知財人財の育成が必要であり、2006年の「総合戦略」及びこの知財人財育成プランを相互補完的に実施していくという点を再度強調しているところです。 7ページの最終パラグラフには、この知財人財育成プランでは事業起点型サイクルモデルを支える知財人財の育成確保を主眼として、今後5年、さらに10年先を見越して中長期的に取り組んでいく方向性を示すとともに、第4章ではその方向に向けて今後1、2年で短期的、集中的に取り組んでいく施策を示していることに触れております。 続いて、8ページからの第2章は「知財人財育成・確保の現状と課題」ですが、セクター別に整理をしております。そのベースにありますのは、冒頭のパラグラフの最後にありますように、特許庁で実施していただいている調査研究でありまして、これを踏まえて要点を記載したものです。 企業セクターを見ますと、量的な側面ではほぼ同水準を維持しておりますが、今後は、事業戦略、研究開発戦略、それから知財戦略、これを一体として立案遂行していく能力を持った人材が求められているということであります。 弁理士につきましては、最新のデータでは9,100人にまで増加しているということですけれども、今後は、グローバル化への対応強化、そして、企業に対する知財コンサルタントとしての一層の活躍が期待されているというふうに書いてございます。 特許庁においても特許審査官は任期付の方も含めまして、1,700人程度と増加しておりますが、英語による審査も将来的には念頭に置きながら、グローバル化への対応を急ぐ必要があると書いております。 最後は、海外における人財育成の現状、特に米国について記載したものですが、例えば、アメリカのハーバード大学において、事業戦略と知財戦略の一体的な推進に向けて、ロースクールとビジネススクールが連携して、エグゼクティブ向けのプログラムが設けられるといった取組について記載しております。 以上が第2章の総論部分です。8ページの最後からはセクターごとの各論になります。詳細は割愛させていただきますが、1.が企業における知財人財、2.が知財専門人財、弁理士の方、弁護士の方、3.が行政・司法機関における知財人財、4.が研究機関・産学連携機関における人財育成、5.が教育機関における人財育成、最後の6.が海外における知財教育の現状という順序になっております。 続いて、18から19ページが第3章、「知財をめぐる将来の姿と知財人財育成の関わり」です。 資料1あるいはこの資料の第1章にも、今後10年を見据えてしっかりとプランをつくっていくと書いておりますが、将来の状況を見据えて、中長期的な人財育成に取り組んでいく必要がある、そして、そのスタートを切ることが喫緊の課題であるということであります。 それでは、10年後の状況はどうなっているのか。普通にこのようなことが起こっていると想起される事象として、18から19ページにかけて、以下の6つの項目を起こしております。 企業におけるグローバル展開が加速している。事業部門と知財部門の融合が促進している。産業界と教育研修機関との間での人財流動が活発になっている。中小企業を含めた、あらゆる企業が知財戦略を策定、実行している。英語によるグローバル特許出願が行われている状況。グローバル事業戦略の観点で弁理士、弁護士の方が企業コンサルタントとして一層活躍している。 このようなことを10年後の状況として想起をした上で人財育成を進めていくということであります。 知財をめぐって世界が大きく動いている中で、10年後をしっかりと見据えて、さらには、5年程度の先の状況にも目配せをした、中長期的視点での戦略策定、そしてそれに基づいた施策の着実な実施が重要であるということです。 最後の「例えば」で始まるパラグラフには、5年後の状況について2点ほど言及しております。一つには、10年後に想定される状況として、あらゆる企業が知財戦略を策定・実行と申しましたけれども、これに関連して、5年程度先を目途として、知財マネジメント戦略の研究拠点を世界最高水準のものにしていくことを例示しております。 また、10年後の状況として、英語によるグローバル特許出願に触れておりました。各関係セクターにおいて英語実務に対応できる人財育成・確保に取り組んでいく必要がありますけれども、5年を目途に所要の環境整備に取り組んでいくということであります。 こうした将来像を見据えながら、最後の第4章になりますが、「知財人財育成策」につなげております。 最初に総論が2ページほどあります。また、22ページには「知財人財育成プラン実行のイメージ」図を記載しております。総論の概要としてまずこのイメージ図をごらんいただきますと、知財人財の裾野、底辺の一層の拡大を図りながら、黄色で彩色をした2つの柱を進めていくことが柱になっております。一つには、グローバル知財人財の育成を、各関連セクターの連携を確保しながら進めていくということ。もう一つが、知財マネジメント人財の育成を強力に推進するということであります。これらの取組を一体的に進めていくことによって、国際競争力の強化につなげることを目指していきます。 ここまで御説明したところで、恐縮ですが、資料1の2ページ目にお戻りいただければと思います。主要施策と書いたページです。核として進めていく施策をまとめております。 ①として、知財マネジメント戦略拠点を整備して、国内外の最新の事業戦略でありますとか知財戦略に関する情報を蓄積、分析して、我が国の関係者、企業にいち早く提供していく。「知財マネジメント戦略研究所」、仮称でありますけれども、このような機能を担うところを設けるというところが1点目であります。 ②は、事業戦略的な知財マネジメント人財を養成していく場の形成ということであります。これは、①の知財マネジメント戦略拠点とうまく連携を取りながら、人財育成の場を整備して、企業の事業戦略を支える知財人財を育成していく。②のところに、「ビジネス戦略知財アカデミー(仮称)」とありますが、このような場で取組を進めるということであります。以上が、核となる施策の1点目、2点目です。 さらに、ページ中央の「産業」を挟む形で一番下に書いております、グローバル化に対応し、企業の事業活動に資する審査官・弁理士の育成を実践すること、これが核となる施策の3点目になります。これらの3つの施策をしっかりと連携させることによって、競争力強化のために「産業」をしっかりサポートをしていくというのが、ポイントになります。 いま御説明しました主要施策も含めまして、人財育成策を各論で記載しておりますのが、資料2の23ページ以降になります。 ここでまた資料2にお戻りください。23ページの1.は1つ目の柱である「知財マネジメント人財」の育成に関する部分です。この1.の「(1)事業戦略的な知財マネジメント人財を養成する場の形成」が、先ほどごらんいただいた資料1の2ページ右側の施策②に対応しております。 23ページ中段の「(2)知財マネジメント戦略に関する研究の推進」が、同じく資料1の2ページの左側の施策①に対応しています。 以上の核となる2つの施策に加えて、23ページの下段には「(3)中小・ベンチャー企業における知財人財の育成・確保」を盛り込んでおります。具体的な施策は24ページになりますが、知財総合支援窓口あるいはビジネス支援図書館を活用した育成の取組、さらには、知財管理技能検定の活用に関連した取組を記載しております。 2つ目の柱、2.「グローバル知財人財の育成」の冒頭が「(1)グローバル・ネットワーク時代に対応するための審査体制の構築」ということで、資料1の2ページ下の部分、施策③の特許庁関連の取組に対応しております。 詳しくは、資料2の24ページに「ア.グローバル・ネットワーク時代に対応する体制の構築」ということで、施策を列記しております。多言語対応、海外の知財制度に造詣の深い、国際的な議論をリードできるような、人財育成といったところが具体例になります。 続いて、イ.は、グローバル展開を支えるような取組として、「審査・審判の品質を向上する体制の整備」ということでまとめております。品質管理、法律の専門性の向上、さらには事業起点型の知財戦略に対応した権利取得を支援するような審査官の育成、技術的な対応幅の拡大、任期付審査官の活用といった内容を盛り込んでおります。 また、26ページ、2.(2)の「グローバル競争時代の企業の事業活動に資する専門家の育成・確保」のところは、資料1の2ページ目下の部分、施策③の弁理士の方に関係する取組に対応したものです。グローバル競争時代において企業の事業活動を支援する専門家である弁理士の方の育成ということになります。 さらに、22ページのイメージ図で一番下に示しております「知財人財の裾野の一層の拡大」という柱については、26ページの下段以降に一番下の部分から書いております。 より詳しくは、各分野の産業に関係する政府職員に対する知財教育、教員に対する知財研修の充実、さらに、学校・地域における知財教育の推進というようなところを盛り込んでおります。 加えて、今般策定する知財人財育成プランをどのようにして実効的に推進していくかという観点で体制整備をしていかなければならないというのが、27ページにあります最後の柱「4.知財人財育成プラン推進体制の整備」になります。2006年の「総合戦略」で知財人財育成に関する協議会が立ち上がっておりますけれども、この協議会に対して、研修機能の強化、政策提言機能の拡充を促していく、ということであります。 ここまでが第4章の各論の概要になります。 以上、本編でございました。関連資料としまして、このワーキンググループの設置に関する資料、委員のリスト、検討スケジュールなどを参考1、2として加え、その次に参考3として、2006年の「総合戦略」における施策をセクター別に整理したものを添付しております。 長くなりまして恐縮ですが、知財人財育成プラン(案)の概要について御説明いたしました。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ちょっと長いものをざっと見ていただく形になって恐縮ですけれども、御意見あるいは御質問等がありましたら、お受けしたいと思います。 それでは、どうぞ。 ○相澤(益)委員 どういう人財を育成しなければならないかということが非常に大局的に、そして各論に至るまでよく述べられているかと思います。 そこで、1つ質問と、それからここはどうなっているのかという意味でのコメントを含めた質問を申し上げたいと思います。 本文の8ページの第2章の初めに、現在における知財人財の状況が書かれているわけです。ここに書かれているのは、立場が明確な弁理士、特許審査官といった人材についての数字であります。 この数字が、2006年からの人財総合戦略の成果となってこういうところに反映してきているのかどうか。何か具体的な、できれば数字があればよろしいんですが、概括的にでも、成果ともいうようなことがあるのかどうか、その辺がありましたら、お伺いしたいということが1つであります。 23ページからの具体的な施策の展開のところであります。 1.の知財マネジメント人財の育成というところは、確かにどういう人財を育成していかなければいけないかということであります。しかし、2.のところは、グローバル知財人財の育成ということがタイトルとして挙がっているけれども、これは審査体制を構築していくということに主体が移ってきていて、果たして育成なのかどうか、ちょっと軸が違うのではないかというふうに受け取れるということであります。これは、どういう位置づけなのかということをお伺いしたい。 それで、一番重要な1.の方の知財マネジメント人財の育成のところでありますが、このような目標を持って人財育成を行っていくというコンセプトは明確なんですが、それがどういう機関で行われるのかというところが、明確ではないように思うんです。 資料1の絵だと、何か独立の人財育成機関が設置されるようなイメージで書かれています。これが、今までの専門職大学院であるのか、あるいはもっと実際の現場に密着したようなところでの特別な教育の仕組みをつくるのか、そういうようなイメージがこの本文からは読み取れないのではないかなと思います。ここについても、何か御説明いただければと思います。 ○妹尾会長 それでは、上田次長。 ○上田次長 今、相澤委員から御質問がありました件で、私の方から最後の点について、まず、お答えしたいと思います。 こちらの2枚紙の方に載っている、「知財マネジメント戦略研究所」は仮称であり、これから関係のところと相談をしていくところではございますけれども、これは、単にこういうのがバーチャルにあるとか、そういうことではなくて、具体的にこういうような場をつくっていきたいと考えております。 例えばでございますけれども、特許庁の下にも、これに関係する機関がございます。研究所関係についても関連機関というのはございます。 また、もう一つは、2つ目に2006年にできました「知財人材育成推進協議会」、これはそういうものもコアにしながら人財育成に関係する、それぞれのコアとなる、それぞれのグループのところの連携を図るための協議会でございますけれども、これも具体的に連携を強化していきたいと思っております。 そういう意味では、特許庁の方の研究あるいは人財育成機関のところをコアにしながら、では、どういうスピードでやっていくかというところがあると思うんですが、これは、19ページのところで、5年程度先に向けた戦略を策定して、それに向けて着実に実行することであると、これは、10年後の姿というのを書かせていただいております。今、髙原参事官から説明しましたように、10年後には、こういうことがある意味でいえば、当たり前になるような世界というのになっていきたいと、そのためには、5年くらいかけて、それについての具体的な整備を取り組まなければいけないと思っております。 こういう中で、研究拠点につきましても、ここに若干触れさせていただいておりますが、5年を目途に最高水準のものにもっていくということを目指していきたいと思っております。 このためには、知財計画の中にきちんと位置づけていくということを一層議論いただく必要がございますけれども、そういう中で、そういう位置づけがかないましたら、来年度からこれをきちんと予算措置も取りながら実現していくということを関係機関と一緒に連携して形をつくっていきたいと思いますし、その際には、具体的にこの研究所であり、あるいは人財養成の場をつくるためには、学会あるいは産業界の方々から更に御意見を聞きながら具体化をしていくということを旨としてやっていきたいと思っております。 済みません、ちょっと長くなりました。 ○妹尾会長 今のが主として、2つ目の御質問でしたね。1つ目のことについては、髙原参事官、お願いします。 ○髙原参事官 1点目の御指摘につきましては、先ほど、2006年の「総合戦略」で、特に専門人財、その量を倍増し、質を高度化していくところが目標だったと申し上げました。2006年の「総合戦略」では、専門人財の中でも、例えば4ページの図にもありますように、特許庁の審査官、弁理士などの専門家が、権利化という観点からは中心的な役割を担っていくであろうということでございました。 この特許庁審査官や弁理士の人財育成の状況につきましては、第2章でも書いておりますけれども、必要な役割を担ってもらう上で人数、量的には伸びております。したがいまして、量的な側面では成果が得られているのではないかと。 その他のセクターにつきましては、詳細な数字までは書いておりません。第2章の取りまとめの前提となる調査研究は、まだ特許庁で継続しております。その基礎となったデータなどを、この人財育成プランの関連資料としても掲載することも考えております。今後充実させていきたいと考えております。 ○上田次長 今、髙原参事官の方から最後に言いました特許庁の調査でございますけれども、これは、ちょっと途中なので、まだ出せるところまでいっておりませんけれども、これは形になりましたら、御紹介させていただきたいと思っております。 ○妹尾会長 実は、相澤委員の御指摘の意図は、もっと総合戦略2006の成果をきちんと評価してはどうかと、そういう御発言ですね、ちゃんとやったじゃないかと、かなりの成果が上がったじゃないかというのをもっと書いていいんじゃないのという受けとめ方をしたんです、そういうことですね。 ○相澤(益)委員 2006年を更に補完的にしながらとか、いろいろな表現が出てくるんですけれども、2006年、数年間経っているわけですので、その成果がここまでは来ていると、それを更に発展させるためにという、そこのつなぎのところが、もう少し具体的であるとよろしいんではないかなという意味です。 もう一つは、2006年の人財育成というところでは、専門職大学院等のことがいろいろとあるわけです。どこかに、MOTとか、知財人財の専門職大学院のことが書かれているわけですね。その部分の現在における状況というのが、なかなか数字がつかめていないのではないかと思いますので、そういうところにもデータがあれば、この後、どう展開していくかということで、先ほど特許庁を中心としてやられるという人財育成は、それはそれで1つの独立なものですけれども、もう一つ重要だったのは、専門職大学院を中心として知財人財育成を展開するというところであったと思います。 もう一つ、それに付け加えて、日本では知財分野を特化して、専門大学院も立ち上げたわけですが、それがよかったのかどうかという問題があるわけですね。今回も人財育成がいろいろな側面から出されています。実際に必要なのは、断片的にそれらの特性を強化した人財が必要なのか、そういう側面を総合的に蓄えた人財が必要なのか、これは非常に微妙だと思うんですね。そんなようなところもあるので、今までの専門職大学院を中心としたところの展開を少し整理する意味も含めて、ここのところに記されると、今後の展開につながるのではないかと思ったわけです。 ○妹尾会長 ありがとうございます。先ほど上田次長が申し上げたように、特許庁で、今、この調査がまだ進んでいるんですね。それが明らかになったときに、今、先生がおっしゃられた部分の具体的なところが出るし、そうすると、それを踏まえた、今、おっしゃられた評価ということもあり得るかなと思います。 今回のプランの(案)が、その後、2012等に組み込まれるときに、それらを織り込むというスタイルでさせていただきたいと思います。 いずれにせよ、この知財人財育成のプランの大きな目玉は、2006では知財専門人財にとにかく主軸を置こうというところから、今回は知財活用人財にとにかくシフトしようと、重点を置こうと、ただし、勿論専門人財は引き続き頑張ろうねと、あるいは専門人財の育成は今まで悪かったわけではなく、ちゃんと進んでいるから更に展開しようねというところが主なので、先生がおっしゃられた専門人財について、ちゃんと成果も挙げているという評価ももう少しクリアーにするようにというのは、少しそこのところを配慮していただければと思います。勿論、反省すべき点も少なからずあるわけで、それを入れるようにしたいということだと思います。 渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 今、言われた活用というところで、マネジメントの研究拠点を設けて、それを人財育成に使うと、そういうことでやっていこうと、これは結構なことだと思いますし、それを具体的に詰めていただく必要があると思うんですが、一方で、最初について、グローバル競争とかあるいは世界を舞台に活躍できる知財人財の育成ということが、今のこの施策で本当にできるのかという点は、非常に欠けている部分があるのではないか。 というのは、この本文の方の22ページにプランの実行のイメージというのがありますけれども、これを見ても、この文章を見ても、基本的に日本の中のリソーシスを使って、日本の中でコンテンツをつくって、日本の人たちに教えると、ときどき外国人の講師が来るかもしれないというような形なんですが、今は知財の教育、人財育成で世界的に起きていることというのは、ともかく英語で知財の教育をいろんなところが連携して、アメリカの大学がヨーロッパと連携してインドに行ったりとか、それから韓国も今度、ソウル大学がワイポと組んで英語のスクールをやりますけれども、そういうことが周りにいっぱいあるわけですね。 日本で一生懸命、日本の中でいいものをつくったとしても、これは競争なので、日本の企業もすぐ隣にいいところがあって、英語でやっていれば、そっちに行くけですね。結局、イノベーションシステム自身も競争だというのは、前からこの議論の中でも出てきていると思うんですが、人財育成に関してもそういう状況なので、そこは、それこそグローバル・ネットワークが競争を意識して施策を考えていかないといけないと。 そういう意味で、やはり日本で考えても英語で海外の人たちと一緒に、エグゼクティブの人たちと一緒に勉強をするというような場をつくって、そのネットワークが直接次の仕事に生かされるというようなものをつくっていかないといけないと思うんですね。 そういう観点の議論が、ここにはまだ出てきてないなと思います。英語というのは、審査というのもあるんですが、もっといえば、本当にそうなっていったときの10年後というのは、結構変わります。この10年後のイメージよりもっと進んでいると思うべきだと思うので、そこら辺はもう少し議論が必要ではないかと。 我々は、私自身は自然科学出身なので、そういう意味では、研究成果の発表も全部英語の論文しか普通は書きませんし、英語の国際会議で、英語で基本的には研究をして、その中で研鑽して、教育に展開すると。ただ、知財の場合は、法律というのがあるから、どうしても日本語が外れない部分もあるかもしれないけれども、ビジネスのマネジメントになると、ほとんど理工系の世界と同じようになってくるわけですね。 そういう中で、我々も若干、今まで欠けていた部分というのは、大学教育というのは、なかなか英語に全部できなかった。だけれども、東大の工学系では、英語だけで大学院を卒業できるようにしましたので、知財の工学系の授業も、私も英語で全部やっています。そこで、英語でやり始めると、いろんなことが足りないわけですね。ケースも、今、ハーバードのケースを買ったりしているんですけれども、本当は日本のコンテンツをちゃんと英語化したい。あるいはe-learningはしようがないからWIPOのものを使っているとか、そういうようなものが本当はこの周りの中の競争の中でやっていくためには必要なんですね。 そういうことが、例えば課題として出てきて、そういうものを協力の中でどうやって、やっていくかみたいなことを、東大は入っていませんけれども、今度、知財の大学院の協議会は8大学院が集まって、そういうことをやっていこうと、みんなで英語だけで知財で教育ができるようにしようということはやっていますので、そういうことを踏まえて、こういう施策を考えて、国際ですね、グローバル人財育成の戦略的な教育、人財育成とそのシステム自身を国際化するということを検討していただく必要があるんじゃないかということを申し上げたいと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ○上田次長 今、渡部委員から御指摘いただいた点は、大変重要な点だと思います。我々も、確かにこの文章だけだと、やや内向きで、日本人の、日本人による、日本人のためのという感じに映るのですが、それでは、全く意味をなさないし、逆に日本の方にとってもアトラクティブなものにならないんじゃないかと思います。 そういう意味では、今の御指摘をよく踏まえて、具体的にやっていきたいと思いますし、先ほどお話がありました8大学でもそのような協議会の動きがあるということであれば、今の人財育成の場でもよくそういうところと連携を取りながらやっていきたいと思います。 ○妹尾会長 ちょっと補足をさせていただきますと、渡部先生の御意見、大賛成なんですが、議論がないのではなくて、議論が薄いという御指摘に理解させてほしいのは、実は議論はそれなりにしています。 例えば18ページのところの10年後の状況のグローバル展開の加速と、文章的にそれが強調されているかどうかは別なんですけれども、これはお隣の福島委員が盛んにおっしゃっている、例えばパナソニックさんは、調達機能を全部シンガポールに持ってくる、知財機能は全部多極分散に展開する、すなわち、知財人財、ごめんなさい、福島さん、パナソニック1,080人の知財部員がいるけれども、それを国際化するということではないとおっしゃっている。どういうことかというと、もうグローバルに人財が調達され、グローバルに育成されるという状況が入っている、だから、もう英語を使って国際化という概念はもう古臭いじゃないかという議論は、実はされております。ただ、それがこの文章として強調が薄いじゃないかと、あるいは実際の施策がないじゃないかというのは、確かに渡部先生のおっしゃるとおりなので、この辺の強調の度合いは、更に深めないといけないなと思います。 先生、是非、2012のときにも、これを織り込むときに、そういうのを強調していただければと思います。ありがとうございます。 高柳委員、お願いします。 ○高柳委員 問題認識としては、非常にいいんではないかと思いますけれども、やはり具体的に、どういうふうにしたら人財が育つかという具体案については、ここに出ているようなことで本当に簡単に人財が育たないんではないかというのが感想ですね。 企業においては、知財部門は、これまで総じてタコツボと言われてきました。専門家の村社会とか、受身で手を広げようとしない、コミュニケーション能力が足りない、あるいはそういうものは嫌いだと、他部門との接触、交わりが薄い、ビジネスセンスが弱いとか、あるいはビジネスは嫌いだとか、コンサバで、フレキシビリティーがない、ビジネスの足を引っ張る、こういうふうに言われてきました。勿論、これに該当しないような立派な会社さんの知財部門もあると思いますけれども、このタコツボをいかに脱出するかというのが、我々も日々努力としているわけですけれども、やはり経営に資する、あるいは利益に供するということを行動で示し、トップを始めとするステークホルダーの信頼を得て、社内のポジションを上げていくと、そこに妙案とか奇策はないんだと、したがって研修を受けたくらいでは、人財が育成されるとはとても思えないというのが、私の経験を踏まえた上での率直な感想であります。 具体策につきまして、ビジネスは非常にプラクティカルなので、アカデミア的な研究とか、そういう研究の推進だけでは実効が上がらないんではないかと思います。実際のビジネスの、特に失敗に学び、成功例を範としてケーススタディーをやっていくというのが一番有効なんですけれども、これらは多くの場合、企業機密であったり、企業の特に失敗例は恥部、恥の部分に該当する。 それから、国内でも競争相手はいっぱいいますので、国外はもとより、敵に塩を送りたくないということもありますので、余り本当に勉強になるような生々しいものは出てこないんです。出さないんです。 そういう意味では、差し障りのないものが提供されて、それが実例だということで、それでやっていっても、余り実効が上がらないということを危惧します。それが課題ではないかと思います。 もう一つは、ここの中にも触れているんですけれども、専門職大学院もそうですけれども、講師ですね。これまでプロセキューション型でやってきた方が講師になって、やれ活用人財だ、マネジメントだと言っても、タコツボの卒業生はやはりタコツボを育ててしまうんですね。だから、そういうことを本当によく目利きしてやらないと、はい、やりました、研究推進しました、やりましたで推進計画に○が付いてしまっても実効は上がってこない。これは、国として無駄な努力をするので、そこは本当に実行するときによく考えていただきたいと思います。やり方によっては、企業もある程度恥の部分とか、そういうのも出す可能性があります。 これは、昨年、経産省の知財室で、私も参加したんですけれども、企業のOBなんかを集めて、失敗に学ぶということで、いろいろ数回にわたって出して、ある程度まとめたんですが、結局、これがいろんなところにわたるのかというと、やはりやめてほしいということで、最終的には、パブリックリオープンにはなりませんでしたね。だけれども、それは、そういう失敗の方が勉強になるんですね。そこを是非検討していただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。高柳委員、是非、失敗例を出してください。よろしくお願いします。 ほかにいかがでしょうか。 どうぞ、角川委員。 ○角川本部員 私は、今までの議論を知らないでこんなことを言うのは恐縮なんですけれども、2006年ごろの知財本部での特許問題というのは、どちらかというと、特許紛争についてどうやって対応するかというふうなことに対応していく、あるいは特許は非常に申請が多いんだけれども、どうやって積み残しになっている特許の山を崩すかということで話し合いがされたように記憶しているんです。 それで、私は、2006年から2012年のこの6年間の知財問題というのが、どれだけ変わったかということの俯瞰がここにないような気がして、例えば今、特許紛争よりも、もう知財戦争になっていますね。それで、知財本部というのは、やはり具体的な現実というものを見据えて、それに対応していくべきであって、何か抽象的な問題にすり替わっていくのはよくないと思うんですね。 そういう点では、今、例えば、先ほど企業の側から恥部だと、そういう非常に具体的な話も出てきましたけれども、今、知財戦争で起こっている現実というのは、アップルとグーグルとの紛争だとか、それにサムソンが巻き込まれて、結局、失礼ですけれども、そのサムソンが巻き込まれることによって、日本の家電メーカーも巻き込まれて、今、具体的にいるんだという話も聞いているんですね。そういうところに育成している人財が、果たして活用できるのかなという危惧がありますね。知財戦争で一緒に戦うときに、この人たちは戦ってくれるのかなというところでいうと、イメージがわいてこないんですね。 こういうことでいうと、何か知財問題というのは、下の水準を持ち上げるので必死になっているんだけれども、実は、優秀な人財を育てることは大事だと思うんですね、引っ張っていくような、そっちの方にむしろ戦略を置き換えた方が、今、お話を聞いていると、国が一生懸命牛のお尻をただいて、一歩進め、一歩進めと、半歩しか進まないみたいな、ところが、実際の世界の知財問題というのは、もうそんな牝馬が先に進んでいくような状況にあります。ですから、生きるか死ぬかなんですよ、アップルもグーグルも知財問題というのは、そこら辺が伝わってこないんですね。つまり、世界最高の水準とは何だろうといったら、世界の知財戦争に巻き込まれても戦える人財だということだと思うんですけれども、そこら辺がイノベーションという言葉も非常にむなしいんですけれども、応えてくれていないんではないかという気がするんですね。そこら辺の表現が、というか、そこにもう立ち行かなければいけないんではないかと。 ですから、繰り返しになりますけれども、2006年から2012年における知財の問題の推移という、現実の推移ですね、ここをまずとらえて、それに対抗していくための人財というのを書いていただきたいという気がします。 それから、2006年のときには、知財といえば特許だったんですけれども、2012年なったら、今、知財は著作権も物すごく入っているんですね。ですから、実際にコンテンツの著作権を持っている企業も多くなってきているわけですけれども、そういうところを踏まえていくと、特許の問題だけに触れていること自身が、やはり非常に現実的ではなくなっているんではないかと、やはり知財といったら、そういう特許権だけではなくて、著作権も含めた、そういう戦略を描かなければ、もう生きていけないんだと思います。今度のスマートフォンの戦略、戦争、スマートフォン、スマートパッド、それから、これから必ずスマートテレビを迎えますから、10年、5年というのは、むしろ、そういう想定される、スマートテレビ、スマートフォン、スマートパッドに何が紛争で起こるかということを想定して、人財育成を考えるということではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○妹尾会長 基本的には、同じで、議論の中で、我々はイシュー、知財権、格闘技の時代だという認識をしているんですけれども、その意味では、角川本部員と同じ認識なんですが、そういうのが表に出ているかというと、確かにそういう激しいジャーナリスティックな書き方にはなっていないので。 ○角川本部員 知財戦争もジャーナリスティックのことではなくて、本当に、恐らくスマート端末を出す会社は、生きるか死ぬかだと思いますけれども。 ○上田次長 今、角川委員がおっしゃられたことは、我々も必要認識として強く持っております。 2006年から今の2012年にどう変わっていったかということは、去年からの知財本部の中での検討で、例えば私ども総論というところで、その時代の大きな変化というのを強い認識として世に問うていっているところだと思います。グローバル・ネットワークの時代になり、今までのように、知財、その特許を取るというような、特許の権利を保護するというようなところに重心を置いているだけでは、もはや国際的な競争には勝てないというところが、いわゆるオプションイノベーションの中で相まって、そこのところが非常に強くなっている。これは、単に知財の問題、特許の問題だけではなくて、著作権の方にまたがった問題であるというふうに強く認識して、その中で出てきたのが、2011年に知財人財育成プランをそういう認識でつくりなさいということで、この検討会が始まったものでございます。 そういう意味では、逆にその認識というのが、ここに全面的に表れていないんではないかという御指摘はそうかもしれないんですが、そういう全体の中の位置づけということがありまして、ただ、おっしゃるところは非常に大事だと思いますし、著作権の話というのは、まさにおっしゃるとおりだと思います。 ○妹尾会長 ほかにいかがでしょうか。出雲委員、お願いします。 ○出雲委員 24ページの中小ベンチャー企業における知財人財の育成確保で、各論で2点指摘を、ここでさせていただければと思うんですけれども、1点目は、一番上の○の知財総合支援窓口・ビジネス支援図書館を活用した知財人財育成ということで、この4行の各論を端的に私なりにまとめると、各地の公共図書館が中小企業における知財人財の育成に貢献することを奨励すると、そういう文章だと思うんですけれども、当社は、社内で大学発の技術ドリブンのベンチャー企業として、弁理士をインハウスで育成して、1人ようやく弁理士を取るように一生懸命教育をして取らせたり、この下にあります知的財産管理技能検定とかを受けさせて、そういう育成を社として奨励しているわけですけれども、この主語の部分を公共図書館に特に注力する必然性は、ちょっと私は不勉強なのでよく理解しておりませんけれども、もっと総合的に、中小企業、ベンチャー企業が接点を持つあらゆる場所で中小企業、ベンチャー企業が知財を活用してうまくいった事例と、先ほど来、高柳先生がおっしゃっていたような、うまくいかなかったケースみたいなものをセミナー等で聞いて、初めて社内で知財人財の育成を奨励していかなければいけないという強い問題意識が生まれると思いますので、この貢献することを奨励する対象をもっと広げて、中小、ベンチャー企業に広く伝わる、啓発できるような取組みにしていただけたらいいんじゃないかというのが1点目でございます。 2点目は、そのすぐ次の○でございますけれども、知財人財育成のための検定制度の活用のところで、これは、ちょっと私は、半分質問みたいになってしまうんですが、知的財産管理技能検定において、人財の育成に留意したものとなるよう試験実施機関における検討を促していくというのは、実際に一体何をするのかが明瞭ではないなと、中小、ベンチャー企業1社に1人ずつ知財人財を確保することを目指すということが、2006には、中小企業支援のところで記載があったと思うんですけれども、その趣旨に沿えば、中小、ベンチャー企業の1人目の知的財産管理技能検定合格者を出すような際には、検定試験料を免除なのか、減免なのかわかりませんけれども、とにかくこの検定合格者を中小企業において増やすために、どういう施策を具体的にしていく用意なり、検討なりがあるのかが留意したものとなるようという文言だけでは、なかなか伝わってこないなと、ですから、実施機関において、中小、ベンチャー企業の知財人財育成のために、具体的に何か検討していただいたことがあるのでしたら記載をしていただいたり、最後、これは、本当に2点目のおまけのお願いですけれども、2枚紙の主要施策のところで、すごくいい記載が①、②、③とありますけれども、特に②の事業戦略的な知財マネジメント人財を養成するための場の形成として、ビジネス戦略知財アカデミー仮称というものを検討されているのであれば、例えばこういうビジネス戦略知財アカデミーは、積極的に中小企業、ベンチャー企業からの知財人財育成のために受入れを目指して、その設立と同時に大規模に大学のTLOや産学連携推進室等を含めて、こういうビジネス戦略知財アカデミーができたと、中小、ベンチャー企業からの受入れに積極的であるという旨も啓発セミナー等でしていただければ、中小企業も知財人財育成のための検定制度を活用しようとか、確保しようと、そういう動きにつながっていくと思いますので、もう少し踏み込んだといいますか、具体的で集中的な啓発、どうやって中小企業者に伝えていくのかという部分も考慮していただければよろしいんではないかと思いました。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 ○髙原参事官 何点か御指摘をいただきました。まず、知財総合支援窓口、ビジネス支援図書館を活用した人財育成の取組に関連して、人財育成の対象として、中小企業、ベンチャー企業が広く含まれ、啓発できるようにという御指摘であったかと思います。正に我々もそのような思いでこの施策を盛り込んでいるところでございます。地域に近い、それから中小・ベンチャー企業の方にとっても近い存在として、ビジネス支援図書館を位置づけております。また、知財総合支援窓口でも、出願支援のみでなく、知財のマネジメントという観点からも非常に密なサービスが提供されるようになってございます。 御指摘の趣旨は我々としても意識を共有しておりますので、どのように書けるか考えてまいりたいと思います。 それから、知財管理技能検定制度の活用について御質問でございます。現在、知財管理技能検定につきましては、中小企業あるいはベンチャー企業方向けということでは特段意識されていないわけですけれども、例えば、中小企業向けの新たな区分、態様を設けることができるかというところも含めて、その検討を促していくという趣旨で書いてございます。 さらに、知財管理技能検定の受検を奨励するために、どのような支援策があり得るか、というようなところも併せて、こうした施策を展開していく必要があるのではないかと考えております。 ○上田次長 最後におっしゃられましたアカデミーというのは、重要な顧客の1つが、やはりベンチャーであり、中小企業であると、それは本当にそう思っています。これが具体的になっていくときに、そういう方にとっても意味あるようなカリキュラムにする必要があると思いますし、当然、そのカリキュラムができて、動かすときには、そういう方に、アカデミーというものがありますよということが効果的に伝わるようなやり方を考えていきたいと思います。 ○妹尾会長 よろしいでしょうか。佐々木委員、お願いします。 ○佐々木委員 やはりこういうのは、議論もさることながら、やはり実効性と早い見直しだと思うんです。 先ほど2006の話も出ましたけれども、これは、今までの知財推進計画の2011、2010しかり、それぞれの御担当の省庁の方で、更に具体化されて、そこでばらけてしまうんですけれども、そこのところは、また、この知財戦略本部が常にグリップをして、総合的にローリングをして、いわゆるドゥー・チェック・アクションというところを回していっていただけるというふうに我々は理解していますけれども、それでよろしいでしょうか。 ○上田次長 はい。 ○妹尾会長 これは、文中にも途中で出てくると思うんですけれども、どうしてもプラン・ドゥ・シーをやらなければいけないということなんですけれども、プランそのものをチェックして修正をやるローリングをきちんとしないといけない、往々にしてプランは固定したままドゥがちゃんとしているかというチェックに入ってしまうんですけれども、この場合は、先ほどから皆さんの御指摘にあるとおり、世界がすさまじいスピードで動いていますから、その意味では、これはプランを立てたけれども、ある意味で朝令暮改もあり得ると思って我々は望まないといけないなと思っています。そういう意味では、今、佐々木委員の御指摘のとおりに動かせればと思っております。これは、また、事務局に頑張ってもらおうと思います。ありがとうございます。 ほかに、福島委員、お願いします。 ○福島委員 未だ十分この資料が読み切れていない状況で私の勉強不足かもしれませんが、素朴な疑問について教えて頂きたいと思います。第1章の5頁で、これから求める人財像を専門性と領域性とイノベーション戦略性という3つの軸で表現されていますが、ここで表されている領域性が広いとか、イノベーション戦略性が優れているということは、具体的にどういう内容を意味しているのか、もう少し分かり易いイメージで表現するとどう捉えるのか、正直なところ掴みかねています。 次に、第2章以降の様々な施策についても未だ斜め読みで全部読み切れていませんが、この領域性が広いあるいはイノベーション戦略性が優れているという記述とどのように結び付いているのか、よく理解できません。もう少し具体性のある内容を教えていただけると、検討が進むと思いました。 ○妹尾会長 これは、事務局とすごい議論をやっていたんですよ、実際には何だみたいな議論があった、それから実際の委員会の中でも、これを特に強調される委員がいらっしゃいまして、その辺の経緯も踏まえているので、答えにくいかもしれませんけれども、髙原さん、どうぞ。 ○髙原参事官 どの程度お答えになっているか分かりませんが、2006年の「総合戦略」で目指した人財育成の概念図が5ページにございます。この「領域性」の軸は、知財以外の分野、例えば、法務、経理、財務といったところを含めて、活動の領域を広げていくことを目指したものでした。この「領域性」に画期的なビジネスモデルや事業戦略性・イノベーション戦略性に関するスキルまでが意識されていたのかどうかといいますと、2006年の「総合戦略」では、そこまでは意識されていなかったのではないかと。先ほど、資料の説明の中で2つのサイクルモデルの話をいたしました。技術起点型のみではなく、事業起点型のサイクルも重要だ。事業戦略から出発するモデルに重点化していく必要があるということであります。そこで、「イノベーション戦略性」という2006年の「総合戦略」の際には明確に意識されていなかった新たな軸を立てて、この軸を強く意識した人財育成が必要になってくるのではないかということで、5~6ページにありますような概念整理をしたものであります。 ○妹尾会長 少し補足をさせていただきます。2006年の1月に策定されたときに、この領域性と専門性というのは、どうしても専門家というのは、深堀りで細かい方に専門特化する、つまり高度化をしたがるという性向がありますね。 それに対して、ここで広域性と当時言っていたのは、経営についても、あるいは研究開発についても、つまり、当時、知財の創出、保護権利化、活用といったときに、保護権利化を中心に高度専門性を高めるだけではなくて、川上である知財創出の研究開発の方、それから事業における活用両方に広域化した人たちが必要だと、だから、基本的にはやはり専門人財の広域化ということに重点を置いていたわけです。それが、5ページの上の図が当時書かれたわけなんです。 今回、事業起点型のイノベーションだとか、あるいは事業起点型と技術起点型を組み合わせるビジネスモデルをどうやって組めるのかという話になると、それに更に、イノベーティブな戦略性を持たなければいけないということが非常に強くワーキングで言われましたので、それを何と名づけるかというのは、これはなかなか悩ましいところだったんですけれども、もう一軸設けるということで上に来たと、すなわち、この場合は、一般的な知財人財であって、戦略性を高めたいし、高度な、ハイグレードな保護権利化人財だって戦略性を持ってほしいし、事業戦略性に寄与してほしいし、あるいは右の方でも寄与してほしいということで、これが書かれたというのが経緯であります。 ただ、もし、御批判があるとしたら、多分これが三角錐で、上に行くほど先細りなのかという御批判はあるかと思いますので、これは円筒形がいいかというんですけれども、そうすると、見た目さまにならないので、このままにさせていただいたというのが、事務局の苦労だったというふうに御理解いただければと思います。 ○福島委員 ご説明いただいた概念的な内容は、現場の実務経験も含めて理解できますが、この言葉だけに留まると、人によって様々な理解や解釈になってしまい、第2章以降の具体的な施策や取組みと結び付けるときに、ある意味では混乱を起こす種にもなることを懸念しています。そういう視点から見ますと、今ご説明いただいた内容をもう少し具体性のある記述に書き下していただいて、これを起点に議論を深めながら施策や方向性までもう少し書き切っていただくことが適切と思います。3軸の概念は個人的に非常に良く理解しましたが、是非とも具体性のある内容との紐付けをお願いします。 ○妹尾会長 これが、先ほど角川本部員からもいろいろ御指摘があったこととも共通なのは何かというと、今、すごいことが起こっていますというのを全部記述できれば、我々もしたいわけですね。それから、今、福島委員がおっしゃられたことも記述したい。でも、記述すると、これが大論文になってしまうんですよ。そうすると、これをワーキングのレポートとして出すかどうかというところが、また難しくて、そうすると、簡略にしろというふうに言われるわけで、その間で、事務局はかなり悩みながらやったということはあるんですが、おっしゃるとおりなので、これを読むだけでミスリードがあってはいけないわけですから、これの解説版をつくるのか、あるいはどうするのかというのは、かなり悩ましいので、ちょっと事務局の工夫をお願いしたいところなんですけれども、どうでしょうか。 ○上田次長 どういうところで説明していくかというところで、この資料のつくり方というのを考える必要があると思います。 例えば知財マネジメントということ自体については、去年の知財計画の中で、総論のところでも、この国際標準化、それからデザイン、ブランドの価値を高める、商標の確保、あえて権利化しないノウハウ秘匿を含むより高度で総合的、戦略的な知財マネジメントが求められるようになっていると、これは皆さんの御意見を結集しておまとめいただいたものの1つだと思います。しかし、解説がなく、初めて読まれた方は、知財マネジメントとは何だろうということがあると思うんですね。例えば、そういうところの補足を何らかの形でして、分かりやすく、世の中にこれを伝えていけるようなところに少し工夫を考えていきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。久夛良木委員、どうぞ。 ○久夛良木委員 11ページの3.の現状の最初のところで、最先端の技術に関する特許審査以降は、非常にすばらしい対応策が書いてあると思うんですね。 例えば、任期付審査官490名を確保して、どんどん審査待ちの時間を短くする、これは現実行われていると思うんですが、一部ヒアリングしたところによると、そういった審査官の方というのは、今まで企業に勤めていた方も多いせいか、そもそもの目的がどんどん早く審査に持っていきましょうということから、例えば1人当たり、1日数件の特許明細書を読み込まなくてはならないこともあるらしくて、現実何が起こっているかというと、膨大な申請書を全部読む暇がないということで、例えば「発明の効果」であるとか、「請求の範囲」、つまり「特許請求項」ですね、そういったところだけを表面的にさっと読み解いて、気がついたところだけをコメントして、例えばAとかBとかYとか独創性の有無をざくっと分類評価して送り返すということになっているようなんです。 つまり、何がいいたいかというと、特許申請書を書いた方というのは、最初は必ずしも完璧に最初は書けていないかもしれない。場合によっては、もっともっと広い範囲で権利化した方が、今後戦略的に有効に使えるかもしれないというふうに思えるときでも機械的にそういった処理をされていくと、受けた側、例えば担当特許弁理士の方は、そういったコメントが付くと、得てして、より具体例を示して取りやすくなる方向に、つまり権利範囲が狭まる方向に修正をかけたがる傾向もあるらしい。場合によっては、我が国が製造業で成り立ってきたということから、得てして具体的数値が入らなければいけないとか、具体的な図面が必要であるとかということで、さっき角川委員が言われたように、世界ではIT分野でもっと大きなことを考えているような人が一方でいる中で、割と旧来的な製造業的方法論、ある意味で実用新案的なアプローチにどうもなりがちというような危惧もあろうかという気がしているんです。 その中で、25ページに、そうではないということで、ビジネスの素養を持つ、すばらしい審査官も含めて、これから育成していくという記述があるのでよいのですが、私のお願いというか、期待としては、例えば民間から来る人は技術だけはわかるということではなくて、ビジネスもわかる、もしくはパテントポートフォリオそのものも、きちんと発明者と相対して、お互いに議論やサジェスチョンできるような方、そういった方をもっと入れていただいた方が、我が国から出願される特許の内容自体が一段と強まり、そしてそのカバー範囲もより広まると思いますので、既にやられているとは思いますが、そういった方向で、更にこの中で記載をちょっと書き足していただくと、わかりやすくなると思います。 ○上田次長 ありがとうございます。今、御指摘いただいた点、大変重要だと思います。我々もそういうつもりで25ページの、まさに指摘をいただいたんですが、書き足りないところがあろうかと思いますので、その点、更に工夫させていただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。ほかには、いかがでしょうか。よろしいですか。 1つ目の議題で、当初、事務局が想定していたより、はるかに多いということは、これだけ人財育成に皆さんが御関心をお持ちだということで、大変うれしいことだと思います。 非常に厳しい御意見がたくさんありましたけれども、これをできるだけ事務局の方で頑張って取り入れていただきたいと思います。ほとんどの先生方の話は、ワーキングの中で相当議論があったことでありますので、ワーキングの委員と、ここの専門調査会の委員、重複している方もいらっしゃいますけれども、かなり皆さん問題意識は同じだなということで力強いです。ただし、こういうワーキングのレポートになるときには、半歩進めたと評価されるか、半歩しか進んでいなと評価されるか、なかなか事務局もつらいところが多分あるんだろうと思いますけれども、方向性は、委員の皆さんと非常に同じであると思いますので、あとは、文章として、どこまでそれが出せるかということかと思います。 それで、貴重な意見をいただいてありがとうございます。それでは、知財人財育成プランについて、ただいまの御指摘を踏まえて、事務局に修正作業をしていただこうと思います。ただ、最終的に、どういう修文が、どこまで行けるかというのは、関連府省との調整その他もございますので、最終的なとりまとめについては、恐縮ですけれども、会長である私に御一任をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか、私は先生方の御意見、ほとんどワーキングでわあわあやったことでありますので、思いは同じですが、実務的なところで調整をさせていただかないといけないので、御一任いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○妹尾会長 よろしゅうございますか、それでは、恐縮です。ありがとうございます。それでは、そうさせていただきます。 それでは、2つ目の議題に移らせていただきたいと思います。知財計画2012、これに向けた検討の方向性について御議論いただきたいと思います。 まず、最初に、資料3に基づいて、事務局の方から説明をお願いしたいと思います。 それでは、髙原参事官、お願いします。 ○髙原参事官 それでは、資料3をお手元に御準備ください。 表紙に続く1ページ目、柱を4つ並べまして一番右側に「イノベーション創成による産業の国際競争力強化」と書いております。この柱の構成自体は、第1回の専門調査会に提出させていただいておりました。今般は、各々の柱、1ページにあります1.から3.について内容を掘り下げ、より具体的に論点を示したものが2ページ以降になっております。 柱の4.につきましては、資料3には盛り込んでおりませんけれども、知財人財育成プランで具体化しており、資料1、2で御議論いただいた部分で対応しております。 それでは、時間もございますので、簡潔に2ページ以降の説明をさせていただきます。 まず、1.のグローバル展開インフラの整備を進めるという柱について。(1)は、国際的な知財システムの競争・調和をいかに推進していくかという点です。左上に日本の特許審査のグローバルスタンダード化と書いておりますけれども、制度調和・運用調和の気運の高まりに関連して、アメリカの先願主義への移行という動きを書いております。加えて、昨年11月に中国とも特許審査ハイウェイを開始したことにも触れております。 右側には、国際特許出願における国際調査の管轄国の拡大ということで、我が国については、現状、自国を含めて、4か国ですけれども、これをASEAN、更にアジア大に拡張をしていくという方向性を書いております。 それから、国際審査官協議も実際に行われておりますけれども、まだまだ短期間のものが多いと。人数の拡大もさることながら、短期間の協議が多いということですので、議論する内容も踏まえて、より長期的なものに拡大をしていくことが必要ではないかということでございます。 取組みの方向性は、一番下に書いておりますけれども、競争力強化に向けた知財システムの構築ということで、我が国のリードによる国際的な制度運用の調和、それから国際調査受入れを含めた出願の利便性の向上、国際審査官協議の推進といったところがあろうかと思います。 3ページは、グローバル展開インフラ環境整備の(2)、我が国の知財システムの利便性の向上ということでございます。グローバル展開をする上で欠くことのできない内容といたしまして、権利の安定性の向上を挙げております。 米国では、昨年の特許法の改正によって、特許付与後のレビューというものが導入されております。それから、右側に急増する中国の特許文献への対応として、訴訟が急増している現状に触れております。日本特許庁の審査の質の向上、維持、それから企業の訴訟リスクを回避が必要ではないかというところでございます。 こうした背景から、一番下には、国内外の情勢を含めた権利の安定性の向上、さらには新たなイノベーションモデルに対応した特許審査の提供を、取組の方向性として書いております。 4ページから、2つ目の柱になります。知財イノベーションの環境整備を進めるということで、テクノロジーとデザインの融合領域、これをいかに強化していくかというところでございます。最初のところに、デザインのビジネスに占める価値の高まりとありますけれども、アメリカではアップル社を始めとして、デザイン戦略も活用してグローバル展開をしております。 これに関連しまして、左側の一番下に外国への意匠特許出願件数の推移を示しています。特許に比べますと、我が国からの国際的な意匠出願は、まだまだ規模がかなり小さいということです。ヘーグ協定への加入の検討が正に進んでおりますけれども、そういった取組も梃子にして、グローバル展開を促進していくということでございます。 右側は、デザインを軸とした連携事例ということで、産学連携、これまでは技術的なところがメインでしたけれども、ライオンと千葉大学の連携事例のような取組が現実に進んできておりますし、中小企業に対して外部デザイナーがアドバイス、サポートをすることで事業展開の上で効果があらわれたというような事例もございます。 こうした点も踏まえまして、一番下の方向性について、デザインと技術をうまく融合させて、デザインを軸として知財の価値を向上していけないかと書いております。 5ページ目、知財イノベーション環境整備の(2)、大学やベンチャーの有する「知」からいかにイノベーションを創出するかということでございます。 産学連携における評価指標については、2011年から検討が進んでおりますけれども、従来の主たる評価指標から一歩進めまして、基本的な評価指標としては、産学連携の基本的な機能、技術の創出から企業による実用化、市場化に至るまでのところを踏まえながらも、各大学の特色が出るような指標も、その評価の対象に加えてはどうかということで、今、文科省、経産省で検討を行っているところですけれども、こうした取組を基礎として、大学知財本部、TLOの再編強化を早急に進める必要があるのではないかということでございます。 また、革新的な技術を創出する仕組みということで、SBIRについて下で触れておりますけれども、いかに実効的な制度にしていくかという点を含めまして、大学ベンチャーのシーズをイノベーションの創出につなげる取組を推進していけないかと書いてございます。 6ページ、知財イノベーション環境整備の(3)、中小企業の知財活動をいかに強化するかということで、先般の専門調査会でも特許庁から御説明がありました知財総合支援窓口を通じた海外展開支援について言及しております。このような取組を更に強化していくような方向性が出せないかということでございます。 右下に「中小企業における知財人財の確保の成功事例」を載せております。前回あるいは前々回でしたか、専門調査会で、中小企業での活用事例としてどういうものがあるのかしっかりと把握をして、周知をしていく必要があるという御指摘をいただいておりましたが、ここに、化学メーカーの事例、パテントマップの活用により研究開発、新規投資という側面で大きなメリットになったという成功事例を挙げさせていただきました。 7ページ以降は国際標準化関連です。国際標準化活動におけるスピードが変化しているのに対して、国内では、なかなかタイムリーに標準化提案につなげられないという状況があります。一つには、日本発という観点で、迅速な提案が可能になるような提案制度を早期に確立していけないかということ。それから、もう既に決定され実際に動いている国際標準、規格であって、例えば、産業をまたぐような横断的なものについても、国内ではなかなか対応できないという状況がありますので、その辺りの検討体制も整備できないかということでございます。 最後、8ページは、戦略的な国際標準化活動の実行環境、特に中小企業の活動支援ということでございます。 左側は、標準化を進める際に、どのようにして中小企業を効果的に支援していくかという観点です。事例として2つ挙げておりますけれども、このように、ニーズのあるところにはしっかりと支援できるような体制が必要ではないか。 また、海外展開に当たって、進出国先での国際規格にも対応する必要があるわけですけれども、中小企業には、情報の把握も含めて十分に対応できない部分がありますので、このような観点でも支援を強化できないかということを右側に書かせていただいております。 説明が長くなりましたが、これ以外にも、委員の方からの御指摘をちょうだいしたいと考えておりますので、御議論のほどよろしくお願い申し上げます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。恐縮ですが、時間にも制約がございますが、意見をどうぞ。 では、荒井委員、お願いいたします。 ○荒井委員 全体の進め方というか、総論的なものが2点と、ちょっと各論で4点申し上げたいと思います。 第1点は、知財の推進計画ができて、ちょうど10年目になると思います。ですから、この10年間をどういうふうに総括するのかというと、先ほど角川本部員からも御指摘がございましたように、環境も10年前に比べて変わっているので、そういうのをどう認識して、どう取り組んでいくかというのをしっかりメッセージを送っていくことが大事じゃないかと思います。 デジタル革命とか、国際化とか、ビジネスモデルが変ったり、特許と著作権がハイブリット化したり、権利と独占のいろんなバランスが変わっている。世界は、大きく知財で動いているので、そこのところをしっかりメッセージを送るというのが大事だと思います。 2点目は、資料4にスケジュールが書いてありまして、あと3回でこれをまとめるというときに、総論もいいけれども、各論で施策がしっかりしていないと、見ている人が、それで何が変わるんだと、政府が何をしようとし、民間に何を期待しているのか、大学関係者に何を期待しているんだというような部分は、総論というよりも、各論で見ると思います。総論からずっと入っていって、何となく終わるんではなくて、立派な各論をつくっていただくというのが政府の政策ですから、大事だと思います。この3回は、各論中心にやるくらいの気持ちで、いい政策をつくっていただくということが大事だと思います。 各論としては、知財の競争力強化ですが、知財部門の国際競争力強化という観点ももう一遍見直していただきたい。これは、特許庁あるいは文化庁とか、そういう行政セクター、それから裁判所、税関、警察とか、一連の流れ、国のシステムが国際競争力あるのか。もう一つは、そこで貢献する弁理士、弁護士あるいは行政官とか企業の皆さんとかが人財として国際競争力があるのかということです。審査や裁判も国際競争、サービスセクターとしての国際競争が激しくなっています。知財がサービス産業として国際競争力を、残念ながら、相対的にはやや下がっているんではないかと思います。だから、外国へ行って特許を出そうとか、そういう動きになっています。外国の弁護士を使おうということになっているわけです。この国際競争力をもう一遍回復するぞという目で見たときに、制度として、それからそこで貢献する人々の機能をどうするのかというのが第1点目です。 2点目は、模倣品海賊版対策が、もう少し骨太に書いて頂きたい。グローバル化して、企業の方が海外へ行って、国のレベルによって相当違うわけですので、本当の戦争をやっている部分と真似をされて困っている部分とか、模倣品が困っているとか、あると思います。国際化とともに、模倣品海賊版の問題、あるいはインターネット的なものの普及で増えてきている、そこをどうするんだというのをもう少し骨太にやって頂きたい。 3点目は、そういうものの関係でも、4ページにあります、テクノロジーとデザインは賛成なんですが、更に商標とかブランドですね。発展途上国でも最初に真似をされるのは商標のわけですし、そこの国の対策が必要な部分もあるわけです。日本の企業の商品とかでも、強みの中には、技術とテクノロジーとデザインとブランド等の組み合わせで初めて全体として強くなるというのがあると思いますので、商標とかブランド、こういう観点も一緒に考えてやっていただく。 4点目は、中小、ベンチャー企業対策です。アメリカとか、ほかの国でも中小やベンチャーに対して、出願費用を半分にするとか、今回、アメリカはマイクロエンティティーという概念を入れて7割カットするとか、いろいろ中小やベンチャーを支援するための経済的な助成策を入れて、イノベーションの競争をやっています。中小やベンチャーの助成策をもっと外国並みにするという観点を入れていただきたいと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。中島委員、お願いします。 ○中島委員 1点だけです。確認というか、教えていただきたいんですが、先ほどの人財育成プランの方で、イノベーションシステムとして、事業起点型サイクル、これを併用することが大事だということですが、それと論点整理の関連なんです。これは、2.とか3.の前提となっているのか、それともこの中の一部に入っているのか、または、この4つの項目の別にこれがあるのかここら辺をちょっと教えていただきたいと思います。 ○髙原参事官 今、中島先生から御指摘いただきました点につきましては、まず、事業サイクルモデルを強く意識をした人財育成施策ということで、「知財人財育成プラン」の中に各論の施策を盛り込んでおります。それらの施策が「知財計画2012」全体の中で、4つ目の柱の下に組み込まれることになります。 事業起点型サイクルの関係は、人財育成関連以外の柱でも関連してくる取組があれば、人財育成施策とのリンクづけも含めまして整理をさせていただきたいと思います。 ○中島委員 ありがとうございます。ちょっと何か私は勘違いを。 ○妹尾会長 ちょっと私の方で補足させていただきますと、例えば事業起点型というのは、テクノロジードリブンではなくて、ある種の事業ドリブンですから、具体的にはデザインですね、そのデザインといっている意味は、ここの4ページに書かれているような意匠という狭い意味ではなくて、御存じのとおり、意匠というのは、中国人はわからないですね、この言葉、デザインというのは、彼らは設計と訳しますから、要するに商品設計だとか、事業設計を最初にしておいて、それのドリブンでイノベーションを起こすという意味なので、本来の4ページなんかは、今、中島先生の御指摘にあったようなものにそぐった形にならなければいけないという議論が多分あるはずなんですなんですね。 それから、それ以外でも国際標準化についても、これが後追いの標準ではなくて、事業戦略的な観点から標準を先取りするみたいな形で、標準を自己目的にしないと、そういうところで、その意味では、この中にそれぞれ織り込んでいかなければいけないことだと、私は、会長としては認識しております。 ○中島委員 ありがとうございます。人財育成プランの中では、事業起点型モデルというのが何か出発点になっているような気がするんですね。そうすると、それに基づいて人財を育成したんだけれども、いわば優秀な船乗りを育成したんだけれども、乗る船はどこにあるのと、船の装備はどうやってよくするのというのは、人財ができてからでは、やはりまずいわけでしょうし、同時進行だと思うんです。そういうのが言葉の問題かもしれませんが、論点整理の中とのリンクが、どこかに事業起点型モデルとか、サイクルという言葉が出てくるとはっきりすると思うんですけれども、ちょっと関連がわからなかったものですから、お聞きしたものです。 それと、事業起点型モデルを大々的に取り上げて、これをやるべきですねという論点の中の1項目になるのかどうか、そこら辺は、ちょっと座長にもう少し御検討いただきたいとは思っております。 ○妹尾会長 相澤委員、どうぞ。 ○相澤(益)委員 スライドの番号の1枚目の全体の構成なんですが、これは、論点ではあるけれども、恐らく全体の構成になるんではないかと思うんです。そういう観点で考えると、2番と3番というのは、こういう切り分けでなく、これ全体を知財イノベーション環境整備という形で総括した方がいいのではないかという考え方です。 と申しますのは、特許、意匠等の関係が第2番目に入っていて、3番目が国際標準化ですね。ちょっと思い出しているんですが、2011でやるときには、2011のときは、国際標準化をとにかく重点的に前へ出そうと、あのときにも議論があったと思うんですが、知財イノベーションあるいは知財戦略といっているのは、特許関係から国際標準化も全部総括して総合的に戦略的に進めるということだったと思うんです。 そういう観点からすると、2011でもそれはやったので、いよいよ総合戦略という立場からすると、ここの2番と3番を総括的に展開するというとらえ方の方がすっきりするんではないかと思うんですが、いかがでしょうか。 ○妹尾会長 これは、先生おっしゃるとおり、先ほどの荒井委員の御指摘とも同じで、10年間でこういうふうに毎年進んできたというのを踏まえて、だから、2011でここまで来たから2012でこうだと、それで、今、相澤先生がおっしゃられているようなところへ持っていくんだと、そういうストーリーがもう一ついかないといけないということですね。これは、是非検討させていただきたいと思います。 総論としても毎回何か柱立てをやっているんではなくて、今までの経緯と、今後の展望で総論の構成ができているんだということをきちんとした、その中で先ほどの各論を充実させるということにしたいので、ちょっと柱立て自身は、先ほどからの議論も踏まえて検討したいと思います。それでよろしいですね。ありがとうございます。 ほかにございますか、福島委員、お願いします。 ○福島委員 4つの論点の中で1番目の「グローバル展開インフラの整備を進める」と題された項目において知財と書いていながら、この項目に書かれている内容は殆ど全てが特許にしか触れられていません。先程、荒井委員から模倣品対策という視点が必要とのご意見にも関連すると思いますが、特にこれから市場が伸びる新興国において、適正な企業活動を進めていこうとしたとき、模倣品対策は1つのポイントになると思います。この模倣品対策を考えたときに、意匠権や商標権の制度的なインフラがしっかり構築されないと、企業活動を支える知財システムは基本的には機能しないと思います。このような観点から、グローバル展開インフラに関する記述が特許に偏重していることは、課題だと思います。もう少し知財権を総合的にバランス良く活用するようなグローバルインフラという視点から幅広くご検討いただきたいというお願いです。 ○妹尾会長 ありがとうございます。これも、御指摘のとおりだと思いますので、是非、入れたいと思います。ありがとうございます。 ほかに、角川本部員。 ○角川本部員 是非、ここで10年間を一回総括するということをちょっと決めていただきたいんですね。やはり、私は知財10年間続けてやってきて、私ももういいんじゃないかといいながらも、やったらどうかといわれて、努めてはまいりましたけれども、それで申し上げれば、やはり10年知財本部をスタートさせて、何だったのかということが、やはり総括されないと、これから、つまり2012年をつくっても、やはりまたどこかでデジャブのように、言葉が繰り替えされているということになると思いますよ。やはり残念ですけれども、さっき荒井委員がおっしゃったとおり、10年経って基本的には、我々は、むしろ知財競争力は低下していると思います。ここの中で、国際知財競争がアップしたと思っている方はいらっしゃいますか、いやいや、本当に聞きたいんです。そうすると、私たち10年間一生懸命やってきたんだけれども何だったのかというのもあっていいと思うんですね。だからこそ、12年を頑張らなければいけないという話になるんですね。そこを是非一回、つまりこれは申し訳ないんですけれども、毎年毎年事務局は、キャッチアップ方式でやってきたわけですよ、去年はこうだったけれども、今年はこうだねとやってきたんですね。でも、このキャッチアップ方式では、ちょっと一回それを清算して、10年を振り返った、俯瞰した見方を一回していただけたら、恐らくこれからまた3年間ですか、新しい知財戦略本部の方向に色づけできると思うんです。それを正式に今日、せっかくこういう意見が出たのに、また出てきたらキャッチアップ方式の言葉しか並んでいないのか、10年を俯瞰して見たらこうだったのか、逆にいうと、ここでもって今の事務局の中で、それをやるということでもよろしいし、ある専門委員を立てて、10年間を振り返ったらどうだったかという、言ってみると白書的な書きぶりでもあってもいいと思うんですね。 ○妹尾会長 個人的には、すごく賛同しますが、本部員発言なので、これは局長に答えていただくというふうに振らせていただいていかがでしょうか。 ○近藤局長 今、おっしゃっておられることは、私もうなずけるところもたくさんあるし、日本自身がどうなったかというと、私は、前進はしていると思うんです。相対的地位が上がったかと言われると、上がっていないような気もします。 ただ、私は、この知財本部をつくって前進をしたことは間違いないと思っていまして、例えば世界の中で、こういう知財本部を世界に先駆けてつくって、確かにプロパテントの時代というアメリカの動きにはやや遅れましたけれども、ちょうどこちらにいらっしゃる荒井委員のリーダーシップもあって、知財本部をつくって、10年経ちました。他方、韓国は昨年になって知財本部をつくったんですね、我々と同じものを。こうしてみると、私はそんなに日本が劣っているとは思いません。ただ、10年の節目の機会だからもう一回しっかりと振り返って、もう一回頭を整理してやろうじゃないかというのは、確かにそうだなと思います。 今年の知財計画に間に合うか分かりません。専門調査会が2つありまして、それぞれから政策提言をいただいた上で、知財計画をまとめるときの総論を書き始めております。その総論に、この10年間で何が達成できたのかを書こうと思っておりましたが、何が成果として上がったのかという前に、どういう思いでスタートしてどの辺まで来た、しかしまだ道半ばだということについて、もう一回頭の整理をしないといけないという気もいたします。 正直申し上げて、今から3月末までに間に合うかどうかは分かりませんが、事務局の中でも議論します。3月末に間に合わなくても、もう少し先に向けてでもいいかもしれないので、頭の整理をして、もう一回力を入れるところを示さなければいけません。 私は、例えば特許庁の滞貨の問題、知財本部を始めたときは、特許庁の滞貨が山のようにあって、世界に遅れているという状況でした。この点は任期付審査官の採用のお陰で本当に随分進んだと思います。 それから、知財高裁についても、今でもいろんな議論はあります。それなりの成果も上がっていて、創設したときの思いの一部は達成できたと思いますが、逆に悪くなったという説もあります。これも、やはり10年くらいは続ける必要がありまして、もう少し状況をみてから見直しをしなければいけないと思っております。 10年とおっしゃいましたけれども、議論を始めてからは10年になりますが、知財基本法をつくって、知財本部で取組を始めてからは、まだ10年経っておりません。しかしながら、10年の節目に向けて、頭の整理を一回して、謙虚に来し方を振り替えりながら行き先を考えるというのをそろそろしなければいけないというのは、非常に今日、強く感じました。また、頭を整理して御相談をしたいと思います。 ○角川本部員 私は、率直に申し上げますと、今の意見に賛成は賛成なんです。私たちは、本当に汗をかいて知財高裁をつくりました。当時は最高裁が大反対したのを突破してつくったのも覚えています。 そういう具体的に、小泉内閣でつくったときには、あのころというか、前半の5年間くらいは、金はないけれども、制度をつくろうという感じだったんですよ。お金は出せない、予算は付かない、何しろひたすら法律をつくって改革していこうと、そういう時期だったんですね。ここ2、3年は、予算は付くんだけれども、法整備はどうなったのかなとか、制度改善はできたのかなということに関しては、実は、私は個人的にはじくじたるものがありますね。著作権も進行したのかな、フェアユースはどうなったんだろう、そのフェアユースの後の著作権はどうなるんだろう、そういうところも感じているんですね。 ですから、どうか、一回そういう10年に向けてでも結構ですから、3月というと、どうしても予算対策みたいになりますので、もう少し時間をかけてよろしいんではないでしょうか、それで、一回事務局に課題を投げかけさせていただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。本当に前進は確実にした、もし、これがなければ、空恐ろしい感じがしますね、この知財本部の動きがなければ、本当に空恐ろしい気がします。そういう意味でも、しかし、課題はまだまだ山積みですから、でも、本部員として、角川さん、言うだけではなくて、後で総括のときに、委員に選ばれたら、ちゃんと一生懸命やっていただけると、そういうことですね。 ○角川本部員 はい。 ○妹尾会長 ここにいらっしゃる方も、皆さん御協力くださると思いますけれども、時間が大幅に超えつつありますが、どうしても御発言を今、このタイミングでしておきたいという委員の先生がいらっしゃいましたら、いかがでしょうか。よろしいですか。 これは、議論が始まりました。いよいよ2012の議論が始まりましたので、この後、何回か後で、事務局から連絡があると思いますけれども、これを適宜やっていきたいと思います。 この調子でいきますと、多分、予備日も使うんではないかと、前に私は申し上げましたけれども、その気配が濃厚になったので、是非、それに御準備をいただきたいと思います。 次回までの間に、検討しろという御意見がございましたら、是非、事務局ないし私の方にお寄せいただければと思います。 事務局の方から何か事務的なことはございますか。 ○髙原参事官 荒井委員からも御指摘がございましたが、資料4に今後のスケジュールをまとめております。次回は、2月6日の午後でございますけれども、それ以降、2月20日、3月2日ということで、第6回までの会合を予定し、それから、予備日として3月9日を考えております。次回以降、より具体的な御議論をいただけるような形で進めたいと思います。先ほど申し上げた日程で御検討いただきたいと考えておりますので、日程の確保をよろしくお願いいたします。 以上でございます。 ○妹尾会長 それでは、時間を過ぎてしまいまして、申し訳ございません。今日は、これで終えたいと思います。また、次回以降、よろしくお願いします。 どうもありがとうございました。 |