知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第2回)
○妹尾会長 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。皆さん、おはようございます。 ただいまから、「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第2回会合を開催いたします。本日は、暮れのまさに師走の時期に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、現行の「知的財産推進計画2011」の実施状況に関して、前回ヒアリング対象として選定項目を決めました。それについて担当府省からいろいろヒアリングをした上で議論をするという次第になっています。 全項目のヒアリングを終えた後、第2部として、本日はそれらの課題に関するものも含めて、「知的財産推進計画2012」、すなわち次のバージョンに向けた議論も行いたいと思います。 今日は、お忙しいところ誠に恐縮ですが、10時~12時半までという長丁場になっております。しかし、中身が盛りだくさんなので、効率的に進行をさせたいと思いますので、どうぞ御協力よろしくお願いいたします。 本日は、相澤益男委員、荒井委員、大渕委員、久夛良木委員、迫本委員、中村委員から御欠席の連絡をいただいております。 それでは、初めに開会に当たり、近藤局長からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○近藤局長 おはようございます。今日もよろしくお願いいたします。 今日は2時間半ということで長いのと、各省入れ替わりで入ってもらいますが、これまで決めたことをどう実行してきたかということが非常に重要な観点です。戦略に書いたこと、やると決めたことはやるというのが知財戦略本部のモットーでありますので、しっかりと御議論いただいて、来年以降の計画につなげていきたいと思います。どうか御審議のほどをよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。 髙原参事官、お願いします。 ○髙原参事官 それでは、資料の確認をさせていただきます。 お手元の議事次第以降の資料です。 資料1が「知的財産推進計画2011」の進捗状況についてというものでして、第1回の会合でもお示しをしましたものを11月現在までアップデートしてお配りをしております。 資料2には枝番がありますが、まず資料2-1が特許庁から提出していただいた資料です。 資料2-2が「大学知財本部・TLOの評価指標の検討について」、文科省、経産省連名で提出していただいた資料です。 資料2-3は「知財ファンドを通じて知的財産の活用を図る仕組みの構築」、文科省提出資料です。 資料2-4が「多段階選抜方式の導入推進」、内閣府からの提出資料です。 資料2-5「認証の戦略的活用の促進」、経産省提出の資料です。 資料2-6「『アジア太平洋産業技術・国際標準化協力ブログラム』の進捗状況」、こちらも経産省提出資料です。 資料3が今後のスケジュール(案)です。 あと参考資料が2つありまして、参考資料1が「『知的財産推進計画2012』に向けた検討の方向性」、前回提出させていただいた資料を付けております。 最後が参考資料2、第1回会合においていただきました主な意見をまとめたものです。もし不足等ございましたら、事務局にお申し付けいただければと思います。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。いかがでしょうか、よろしいですか。何かありましたら事務局に御指示ください。 それでは、今日の第1部です。関係府省ヒアリングを行いたいと思います。ヒアリングは資料1に記載されているとおり、順番に知財イノベーション競争戦略、国際標準化のステージアップ戦略の順序で、項目ごとに担当府省から御説明、質疑応答を行います。 ただし、知財イノベーション競争戦略の2番に当たります「我が国が生み出す『知』の活用の促進」のうち「有望シーズの苗床を涵養する多段階選抜方式のSBIRの推進」については、発表者の御都合がありますので、冒頭に繰り上げてお願いするということになっております。SBIR、前回も議論の中に出てきましたけれども、これについて最初に伺うという順番になります。 それでは、多段階選抜方式のSBIRの推進について、担当府省から、内閣府の科学技術政策・イノベーション担当の梶田官房審議官に御出席をいただいております。 それでは、梶田さん、よろしくお願いいたします。 ○梶田官房審議官 梶田でございます。おはようございます。 今、座長から御紹介いただきましたように、私どもの都合で順序を変更していただき、ありがとうございました。 資料1で言いますと、6ページ目の項目番号54番でございます。その中身は資料2-4の方で御説明させていただきますが、その6ページ目をごらんいただきますと、内閣府で関係省庁を調整しながら、経済産業省を始め、関係10府省庁ぐらいでこの制度を積極的に利用していこうということで、今、進めておりますので、私の方から代表して進捗状況の御報告をさせていただきます。 中身につきましては資料2-4の方に飛んでいただきたいと存じます。資料1に書いてあるところが資料2-4で同じように書いておりますので、そちらで御説明をさせていただきますが、初めに少しだけこのSBIR制度で何をやろうとしているのかということをまず御理解いただかないとこの工程表の意味を御説明しにくいものですから、1~2分程お時間を頂戴したいと存じます。 SBIR制度自体はもう先生方御案内だと思いますが、この制度は、もともとは1982年、80年代前半にアメリカの経済が停滞した際に、アメリカが知的財産を積極的に活用して国力を増していこうということで、1980年には、いわゆるバイ・ドール法、1982年はスティーブンソン・ワイドラー法という連邦研究機関から積極的に技術移転を進めていくことがその国の責務だというような法律、いろいろ改正した中の1つとしてSBIR法を整理しております。 アメリカのSBIR制度は、フェーズⅠ、フェーズⅡ、フェーズⅢという3段階に分かれておりまして、フェーズⅠは当時の金額で言いますと日本円で300~500万円ぐらいを半年から9か月程度で資金繰りが厳しい中小企業に研究のチャンスを与えて、まず予備的研究をし、そこで芽が出たものをフェーズⅡとして、1,000万、3,000万といったような金額で研究開発をしていただく。フェーズⅢは、国防省あるいはNIHであれば調達に、商務省、その他の省庁ですとSBICと言っておりましたが、ベンチャーローン系にあっせんをするというようなことで制度を組み立ててございました。 日本も90年代後半、非常に競争力が落ちてきたときに、産業技術力強化法、日本版バイ・ドール法、TLO法、いろいろな日本の国内制度を整備いたしましたが、その中の1つとして、日本版SBIR法制度というのを新産業創造支援法の中で設けました。平成11年以来、日本版SBIR制度ということで、今、一緒に来ていただいています中小企業庁を中心に各省が協力し、毎年、閣議決定で日本の中のいろいろな研究開発制度の中で、アメリカと同じように外向けに政府が外に研究費を補助する、あるいは委託をする際に、中小企業に利用してもらうことで、その中小企業の技術力向上につながるようなものを閣議決定で、中小企業向けの特定補助金として指定するというようなことで平成11年以来やってまいりましたが、今、申し上げたように、若干その制度が違いますのは、法的強制力を持っていないことと、フェーズⅠ、フェーズⅡ、フェーズⅢというようなフェーズ分けが日本版SBIR制度の中にはございません。 ただ、革新的ベンチャーではございませんが、いろいろな中小企業にチャレンジやビジネスチャンスの機会を与えるという意味では日本版SBIR制度も非常に広く中小企業には活用していただいておりまして、もう実績としては数万社の方にこの日本版SBIR制度を通じて、その技術研究開発のチャレンジをしていただいているところでございました。 以上が背景でございまして、今般、第4期科学技術基本計画を作成するに当たり、日本の特定補助金の中には、例えば科研費補助金、科学研究費補助金のように、ビジネスに直結するような研究をするものではない競争的資金もございますが、中小企業庁で毎年閣議決定しております特定補助金の中で、外向けに特定している、政府としてこういう技術開発をしたいと指定をしております研究費の中で、アメリカと同じように、中小企業やベンチャーの場合には資金繰りが厳しくなってまいりますので、そのフェーズⅠに取り組むチャンスを広げる、定額で短期間、フィジビリティスタディをやるようなチャンスを広げましょうと、フェーズⅠをどんどん各省にも積極的に取り入れていただいて、その上でフェーズⅡに取り組んでいただくというような、そういうフェーズ分けをできるものはそういった制度を是非日本版制度の中に取り込んでいただきたいと、更にフェーズⅢとして事業家を支援するようなことを日本の制度の中でも設けていただきたいということをうたいまして、それをこの知財本部の方で工程表としてまとめていただいたものがこの資料2-4の1ページ目でございます。 目標といたしましては、23年度に日本版制度の中で、今、申し上げたような米国SBIRと同じような多段階方式を導入できるような委託あるいは補助金、エクストラミラルの研究制度にどういうものがあるか、それを見つけるためにはまず定義をはっきりさせなければいけないということで、どういうものであれば多段階選抜が導入しやすいかという定義をはっきり決めるというのが行動目標でございます。それに基づいて24年度以降、順番に拡大、制度改正を進めていこうと目標を設定してございます。 その進捗状況でございますが、1ページ目の下、いろいろ書いておりますけれども、具体的には2ページ目以降をごらんいただきたいと存じます。冒頭の説明で申し上げましたように、左側に日本の現状を書いてございますが、毎年閣議決定でこれは中小企業に配慮して運用しましょうと言っておりますのが、23年度の場合には特定補助金として110本、1,700億ございまして、そのうち実際400億程度を中小企業に優先しようと目標を決めておりますが、この中で多段階選抜がなじみそうなものとして、2枚目の下に挙げましたような定義を指標にして、各省の中でまずこれは多段階できるかどうか検討してくださいというような議論をこの夏以来、各省庁と何度かSBIR連絡会の中で行ってまいりました。 その過程では、3ページ目に挙げましたように、いろいろ各省からメリット、デメリットとざっくり書いておりますが、各省の中で相当自分のところの制度で見た場合にはこんな問題があるということを相当突っ込んで個別に各省とやりとりをいたしました。その結果、2ページ目に挙げましたような定義で進めるということに合意しつつあります。 5ページ目をご覧いただきますと、フェーズⅠ、予備的フィジビリティスタディに取り組むというのは、各省なかなか職員の数とかいろいろな面で問題がありまして大変だということで、実は中小企業庁が横割り官庁として代表して、フェーズⅠの支援制度を24年度予算の中で設けることを検討しております。中小企業庁が設けるに当たっては、各省庁からまずどういう研究開発ニーズがあるかを中小企業庁の方が各省庁から取り組みたいテーマを募集しまして、そのテーマを基に各省を代表するような形でF/S調査を行うというような仕組みを設けようということで、今、財務省と調整をしているところでございます。 これでまずフェーズⅠの調査を行った上で、フェーズⅡ以降、各省の中でまた競争的に選抜をしていただいてフェーズⅢに進めていくという調整をするところまで現在進んだという状況でございます。 あと最後のページにつきましては、今、申し上げましたのはあくまで従来から閣議決定で行ってまいりました110の制度、1,700億ぐらいを対象に再見直し、定義を付けて再整理をしているところなんですが、それ以外に科学技術関係予算、3兆5,000億~6,000億ほどございます。この中で、外向けの研究費として出ているものがこの運営費交付金というのはほとんど大学なり独法の研究になりますが、内局等の予算の中にも人件費が非常に多いわけでございますが、この中で幾つか外向けの研究費として出ているものの中でSBIRになじむものがあるかもしれないということで、私ども内閣府の方でもう一度全体予算を整理しようということを考えております。まだいろいろほかの業務の関係で追いついておりませんが、各省庁でやっていただいている業務と併せて全体予算の見直しも進めようと考えているところでございます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、早速ですが、このSBIRについて御質問あるいはコメントはいかがでしょうか。前回、第1回でもSBIRは出てきた案件でございます。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤(英)委員 アメリカ合衆国で先行事例があるということですが、そのアメリカ合衆国でどういう効果があったのかという検証はなされているのでしょうか。 ○梶田官房審議官 私どものSBIR制度、そもそも90年代後半に導入する際にもいろいろ中小企業庁の方で調査しておりますが、その後もフォローしております。また、一番いいフォローアップというのはGAO(アメリカ会計検査院)が数年おきにレポートを出しておりまして、勿論、結果としてはなかなか成果に結び付いていないというのもいろいろありますが、逆にDODあるいはNIHの中で非常に優れた調達に結び付いた事例も数多く報告はされています。 ですから、統計的に成功率が高かったかどうかと言いますとそこは難しいのですが、今まで連邦政府機関の中で研究していたのでは気づかなかったような新しいアイデアを連邦の軍あるいはNIH、ベンチャーが発掘するのに役立ったというのが非常に個別事例としては多く報告があります。 もう一つは、中小企業側では信用力が増したというSBIRの助成を受けた、支援を受けた方の企業については信用力が増したというのは、企業側の申告ですから当然でしょうが、そういう報告が非常に数多くございます。 ○妹尾会長 よろしいですか。 ○相澤(英)委員 事実確認をしたかっただけです。 ○妹尾会長 要するにわかったような、わからないようなということだと思いますが、ほかにいかがでしょうか。 小川委員、お願いします。 ○小川委員 初歩的な質問で恐縮ですけれども、先ほどおっしゃったように、アメリカでは既存の中小企業以外にも新規のベンチャー企業がSBIRによって大躍進をしている。日本の場合は数万社が活用しているとおっしゃいましたけれども、既存の中小企業が大部分だと思うのです。ベンチャー企業は極めて少ない。質問は、それはなぜかと、これから新規のベンチャー企業を育成するには今回提案するSBIR法をどう活用しようとしているのか、この2つをお願いできないでしょうか。 ○梶田官房審議官 既存の、いわゆる技術改良型、新しい技術、ちょっと進んで技術を取り入れて中小企業としてのレベルアップを図っていこうという企業向けが恐らく今の400億の実績の中の多くを占めているのは御指摘のとおりだと私どもは理解しております。 一方で、そういうレベルではない、本当に革新的な技術を取り入れて市場に打って出たいという方にとっては、これは先生方御案内のとおりですが、日本は非常に資金調達が難しい関係にございます。私どもとしては、今の110の制度、1,700億のすべてが本当に革新的な技術ベンチャーに向けて活用できる制度だとは考えておりませんので、そのために先ほど御紹介しましたように、各省庁で特にこれは技術ベンチャー向けの制度として運用可能ではないかというものを定義づけて選んでいただいて、1,700すべてではないですが、その中の幾つかについてフェーズⅠという特に革新的技術にチャレンジする方向けの窓口、最初のゲートをまず大きく広げていきたい。 その上で、フェーズⅢの日本でベンチャーキャピタル、まだまだ育っておりませんけれども、その方々をフェーズⅡを通じてベンチャーキャピタルにつなげていく、そういうツール、回路をちょっとずつ広げていきたいというのが取り組んでいるねらいでございます。お答えになったかどうか。 ○妹尾会長 小川委員、今のでよろしいですか。 ○小川委員 まだよく理解できていませんが、とにかく期待する以外ありませんので、期待しております。 ○妹尾会長 江幡委員、お願いします。 ○江幡委員 資料の3ページに、メリットとデメリットについて記載されている表があり、特に事業者側のデメリットとして提出書類の作成が負担で、時間を要するという記載がありますが、本来の目的からして、なるべく早く事業化を進められるというスピードが重要だとは思われます。審査書類の作成にばかり労力を要するようだと目的を達成できないのではないかと思われるのですが、各省庁の側で審査書類の作成を簡略化するとか、あるいはサポートするといった観点での検討は、されているのでしょうか。 ○中小企業庁 中小企業庁でございます。おっしゃるとおり、これは事業者アンケートとかを基につくっておりまして、どうしても選抜というところが肝になっていますので、ここをおろそかにすると変なものが選抜されてしまうということになりますので、ただ、実態面としてある程度の書類はどうしても必要になっていくと。したがって、1年目のF/Sの段階と2年目のR&Dの準備というものが重なってきてしまうので何とかしてほしいとか、そういう声が確かにございます。資料の簡素化については、事業執行機関の方と協議しながら、極力少なく適正な審査ができるようにやっていきたいと思います。 ○妹尾会長 よろしいですか。 安藤さん、お願いします。 ○安藤参事官 事務局から補足とコメントです。 相澤先生からのご質問で成果は何かということですが、全米製薬企業トップ10のうち、7社が資金の乏しい創業初期段階でSBIRを活用しています。これは大成功の証ではないかと思います。 梶田審議官の御尽力により、各省分のフェーズⅠについて中小企業庁で一括して請け負われるというのはすばらしいことであり、感謝申し上げます。各省分を支援できるよう予算額をしっかり確保していただくことが大事ですが、それに加え、4点だけ実行上、是非御配慮いただきたいことがございます。第一に、テーマをしっかり選んでいただくことです。アメリカのSBIRが成功している秘訣は、各省庁が出すテーマが非常にしっかりしていることです。テーマに加え、参考文献のリファレンスも充実しており、出題者に意図を照会することもできます。日本で実施する際も各省庁から必ずニーズをとっていただくというのが大事です。第二に、先ほどの江幡先生のお話にもつながりますが、500万円をフェーズⅠで出すとして、その支払いが年度末ということになると資金力に乏しい創業者や中小企業は、ブリッジファイナンスの手配ができずに使えないということになりかねませんので、事務的には大変ですが、概算払いが使えるような工夫や配慮もお願いしたいと思います。第三に、「F/S」という言葉が出ましたが、日本の中小企業向け開発補助金では、技術は開発したけれどもまったく売れないといういわば「技術開発倒れ」になる場合が多くあります。米国のSBIRでいう「F/S」というのは技術調査ではなくて、ビジネスプランづくりである点にご留意いただきたいと思います。そのポイントは、どういうチームでやるのか、どういうふうに問題解決するのか、どうマーケットを狙うのかということです。技術開発が重要なのではなく、事業化ことが肝ですので、是非そこを御配慮いただきたいと思います。第四に、「続けていただく」ことが大事です。日本でも、99年に日本版SBIR制度ができましたが、多段階方式は2~3年で中小企業事業団の事業を止めてしまった経緯があります。「続けること」が日本の中にある良い技術の芽を育てていくことにつながります。御関係の方には是非御配慮いただければと思います。 事務局からは以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今の補足を聞いた上でということで、ほかに御質問。 佐々木委員、お願いします。 ○佐々木委員 このメリット、デメリットのところですけれども、そこに審査員の選定が難しいというところがございまして、よく事情がわかるのですけれども、実は私どもの会社でも社内的に同じようなことをやって、いろいろ審査するときに審査の責任者が最後に、もうわからない。訴えてくる人間の目を見て、熱意を見るしかないのだとそう言ったことがありまして、これは本当に市場の特性とか事業家の目利きが可能な人がいればその人がやればいい話で、なかなか難しいと思うのです。 だから、ここのところをすごく難題にするよりは、広く網をかけ、ここはわからないのが前提だぐらいの形で、スピード感を持って進めていただいた方がいろいろ事業をやりたい方は助かるのではないかなと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。アドバイスをいただきました。 ほかにいかがでしょうか。 上田次長、お願いします。 ○上田次長 工程表の2012年度のところで、SBIRにおける各府省の研究開発予算の一定割合または一定額について、多段階選抜方式の導入目標の設定について検討となっています。それに向けて本年度検討を入れるとして依頼されていると思うのですが、先ほど若干その分の説明というのがはっきりしていない部分もあったので、今の状況でどうなっているか、これは2012年度の方は、今の検討を踏まえて、もう少しどういうところまで話を進められるかというところについて、今の御検討状況をお聞かせいただけませんでしょうか。 ○梶田官房審議官 まず2012年の今年の場合、閣議決定が8月にずれ込んだのですが、例年であれば6~7月ごろにその年のSBIR制度運用について目標を決めてまいりますけれども、そういう意味ではまだ先ほど申し上げたように中小企業庁の新しい制度ができるかどうかがはっきりしていませんので、そこでどういう次回の目標設定をするかというのは全く未定、各省庁と調整はできておりません。これからまた各省と調整に入る段階でございます。 ○近藤局長 今の説明は、工程表のとおりにできないということですか。中小企業庁の担当課長は。 ○小金澤補佐 済みません、課長補佐でございます。 私どものSBIRの交付の方針というもので毎年閣議決定しております。それに科学技術基本計画と同じ趣旨のものが入っております。そこでガイドラインの策定を開始するということで、関係省庁連絡会議を通じまして、ガイドラインの策定に向けた項目案を検討してございます。進捗といたしましてはそういうことでございます。 ○近藤局長 私は割とゆっくりという意味で今聞いたのだけれども、この工程表の計画どおりに物事が進んでいるのかいないのか、どちらですか。 ○小金澤補佐 進んでおります。 ○近藤局長 今の説明で、この工程表に書いてあることが進んでいると理解したらいいのですか。 ○小金澤補佐 はい。進んでおります。このつもりでやっています。 ○近藤局長 それならばいいけれども、今の説明を聞くとそうは進んでいないのではないかと。 ○小金澤補佐 工程表よりむしろ早めに進んでおります。 ○近藤局長 それならば結構。 ○妹尾会長 ほかにいかがでしょうか。 それでは、私の方から少し質問させてください。今までも閣議決定で数万社に適用したとありますね。これは実績としてどんな成功率なんでしょうか。 ○小金澤補佐 SBIR企業自体は、過去に国の研究開発補助金委託費を受けた企業は自動的にSBIR企業になりまして、大体2万社になります。実績といたしましては、名寄せして1万6,000社程度になります。 ○妹尾会長 ではなくて、その2万件はどういう成果を上げたのですか。結果は出るに決まっていますけれども、成果になっているのですか。成果にならなかったりしたらどんなことが理由で、かつ、ここは知財戦略本部ですから、それで知財絡みでまずかったのはどのくらいあるのでしょうか。 ○小金澤補佐 実はこの特定補助金というのは、各省、各庁にまたがる。 ○妹尾会長 いや、端的に答えてくだされば結構です。 ○小金澤補佐 全部を私どもは成果を把握しているわけではなくて、1つ御紹介させていただくと、直執行でやらせていただいているSBIR技術革新事業という段階選抜でやらせていただいております。これについて、人工衛星の太陽光パネル。 ○妹尾会長 私の質問に答えていただければ、いいんです。今日は時間がないので、それはちゃんと把握していないというならば把握していないと答えてくださればそれで結構です。 ○小金澤補佐 各省、各庁にまたがる事業の詳細な成果すべてについては把握しておりません。 ○妹尾会長 わかりました。そうすると、知財絡みでどうのこうのという話も把握されてないということですね。 ○小金澤補佐 そこで得られた知財の件数的なものは把握しております。 ○妹尾会長 件数的なものは結構なのですけれども、例えば知財は取ったけれども、失敗したとか、知財が取れずに権利化が失敗したとか、あるいは知財権を取ってしまったがゆえに技術がだだ漏れになってしまったとか、そういうようなことはどういうふうに把握されていらっしゃいますか。 ○小金澤補佐 そこまでの水準の把握はできてございません。 ○妹尾会長 わかりました。だとすると、私のコメントは、制度をつくっても運用をきっちりやっていただきたいという誠に当たり前の話ですが、お願いしたいと思います。特にこういうのは我々も関わっているケースは多いのですが、実用化と事業化を勘違いしている方は大変たくさんいるのです。たいていこういう補助金だとか支援をやるときに実用化研究という話になってしまいます。 実用化すれば事業化が成功するというのは、サプライチェーンとバリューチェーンが既存のものに乗せられた場合ですね。ところが、先ほどの御説明を聞くと、これはイノベーション型。おっしゃったら、もうサプライチェーンとバリューチェーンを変えることを前提にしなくてはいけないので、実用化研究をやっても事業という意味では全く意味がないです。なので、それを是非御注意して運用していただければいいなというのが1点目です。 2点目は何かといったら、多分2段階に移るときの審査で、出願件数は何件でしたみたいな質問があって、それが故に出願件数が自己目的化して、取らなくてもいい特許を取ってしまって、技術がだだ漏れになるという恒例の負けパターンに入るというのが多くの省庁で見られますよね。この辺について御指導をしっかりやっていただくというのが非常に重要かと思うのですけれども、いかがなものでしょう。 ○妹尾会長 いやいや、最初は実用化と事業化の混同をしないでねという話であって、2つ目は出願をするというのが件数目標で入ると、出願してはまずいものまでみんな出願して技術がただ漏れになるという恒例の負けパターンに入るのだけれども、それは大丈夫でしょうねという御質問です。 ○梶田官房審議官 今、座長御指摘のような点を今後、制度を各省とつくりつつあるところでございますので注意してまいります。 一方で、御理解いただきたいのは、1,100件ぐらいあります制度の中には先生御指摘の本当に事業化は商品が少し改良できればいいという制度もいっぱいございまして、それはそういう制度として残しつつ、ベンチャーという本当に新しい知財を生み出して世の中を変えていこうというような方のための制度をその中に別枠としてフェーズを分けたものを組み込んでいこうと、そこについては、御指摘のような戦略がきちっと果たせるように各省庁にも理解していただいて制度設計をダブルスタンダードと言えばダブルですけれども、そういうところを気をつけて設計してまいりたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それともう一つは、安藤さんが先ほど言われていたのが頼もしかったのですけれども、フィールドスタディというのは技術の意味でのフィールドスタディというよりは、むしろ事業起点で考えたときにこういう技術が革新的になれば事業がすごいよねというフィジビリティスタディだということ。すなわち、事業観点で技術開発を誘導するというスタイルだから、その辺は各省に徹底させるように御指導していただけると心強いなという感じがします。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤(英)委員 会長のご指摘の2点目について、私は、特許出願は基本的にすべきであると思っております。その点については会長と見解は異なることだけ申し上げます。 ○妹尾会長 それは同じです。取るべきものは取った方がいいと思っていますけれども、取らなくていいものも取ってはいけないものまで出願件数の自己目的のために取ってしまうケースが多々見受けられるということです。 ○相澤(英)委員 これ以上の議論はやめておきます。 ○妹尾会長 わかりました。それでは、よろしいですね。どうもありがとうございました。 (内閣府関係者退室) (経済産業省特許庁関係者入室) ○妹尾会長 お待たせしました。済みません、どうもありがとうございます。 それでは、次のテーマに移りたいと思います。「グローバル知財システムの構築のリード」、その中での「特許権の安定性を向上させる体制の整備」「企業、とりわけ中小企業の優れた知的財産の活用、グローバルに通用する事業の創出」、これに関してヒアリングをさせていただきたいと思います。 担当府省から、特許庁総務部の熊谷部長に御出席いただいております。よろしくお願いします。 それでは、資料2-1、熊谷部長から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○熊谷部長 特許庁総務部長の熊谷でございます。よろしくお願いいたします。 本調査会にはこの2月に特許庁の国際知財戦略を御報告させていただきまして、知財計画2011には知財システム競争力強化ということで5項目、「知」の活用促進ということで4項目取り上げていただきました。 資料の2ページの取組項目一覧の順に従い、各項目の進捗状況を御報告させていただき、最後に、現在検討中の新しい取組も併せて御紹介させていただきたいと思います。 まず3ページ目、項目26、英語での国際的な予備審査の推進でございます。これはアジア新興国に展開しております我が国企業の研究開発を後押しするため、日本国特許庁が行う英語による国際調査の対象国を、タイ、フィリピンに限られておりましたけれども、今後ASEAN各国に拡大し、中期的にはインドや中国まで対象を拡大していきたいと考えているところでございます。 これまでの実績でございますが、今年の夏から実務者レベル、長官レベルにおいても、各国に打診を始めまして、幾つかの国から前向きな回答を既に得ております。ASEAN諸国につきましては、来年2月に初めて日‐ASEANの長官会合を開催する予定でございまして、こうした場も活用しながら総意の合意を得たいと思っております。また、インドについても既に打診しておりまして、インド側で検討を行っている状況でございます。中国については、まず先般合意いたしました日中のPPHの運用を優先させた上で次のステップに進んでいきたいという状況でございます。 4ページ目、項目27、国際審査官協議の推進でございます。この審査官協議、両国の審査官が互いに顔を合わせながら実際の案件についてのサーチ、判断の協議を行うものでございまして、審査実務の運用調和に大変有効であると思っております。現在、審査官協議を行っている国々をここに掲げさせていただきましたが、今年度は新たにスペインに審査官を派遣しまして、その他の国々については引き続き審査官協議を継続いたしております。 派遣受け入れトータルの人数を見ますと、本年度は昨年度の41名から46名に拡充しております。また、米国で開催されました五庁審査官ワークショップにおきましては、共通案件を使い、各国での審査手法、判断についての協議も実施いたしました。ただ、こうした短期の審査官協議だけですと、基準や分類の調和、また審査のワークシェアリングというところまで協議を進めることがなかなか難しいものですから、来年度は中長期の審査官協議のための新たな予算要求も行っております。 今後、新たなPPH締結国を中心に審査官協議を拡大いたしまして、また中長期の審査官協議も充実させていきたいと思っております。 5ページ目、項目28の特許審査ハイウェイの主要国への拡大でございます。PPHにつきましては順調に締約国の拡大をいたしておりまして、本年6月のスウェーデン、その後、メキシコ、北欧、デンマーク、中国、ノルウェー、アイスランドと続いております。特に中国との間では10月の日中の特許庁長官会合を受けまして、11月1日から世界に先駆けて中国とのPPHを開始いたしております。 これにより、年度当初、PPHが利用可能な地域への出願比率は70%でしたが、中国が入ることでPPH利用可能率87%まで高まっております。今後、残るASEAN諸国などとPPHを始めることで、この比率を100%まで持っていきたいと思っております。既に幾つかの国とは交渉を開始いたしております。 なお、我が国から中国へのPPH申請ですが、11月の1か月間だけで34件出てきており、今後、我が国企業、中国での迅速な権利取得を図る上で大変有効なツールになるのではないかなと思っております。 6ページ目、項目32、外国語特許文献の検索システムの整備でございますが、今や世界の特許文献の4割にも達しております中国、韓国の文献を円滑に検索できる環境を整備するということは、権利の安定性、また侵害訴訟で訴えられるというリスクを減らす意味で大変重要な課題だと考えています。ただ、中国、韓国の文献をフルテキストで機械翻訳する検索システムの開発には、まだシステムの設計開発に数年かかりますので、当面の対策として、まず中国の特許実用新案の和文抄録をできるだけ早く提供できる体制に持っていきたいと思っております。 まず無審査で特にリスクの高い中国の実用新案につきましては、既に英語の要約がありますので、これに機械翻訳をかけることで和文抄録を作成する準備を進めておりまして、来年3月にはIPDLで提供できる体制まで持っていきたいと思っております。 中国の特許の和文抄録につきましては、どういう手法で翻訳するのがいいのか、品質とスピードの面で比較検討を始めたところでありまして、24年度中には実際に提供できるところまで持っていきたいと思っております。 また、機械翻訳を利用した全文フルテキストのシステム構築には、システムに載せる辞書の開発が不可欠になりますので、この11月から辞書データの開発手法について委員会をつくり、調査研究を開始いたしました。24年度中には日中の機械翻訳の辞書を開発し、ハードができた時に上乗せていく体制で今準備を進めているところでございます。 7ページ目、項目33、世界標準の特許分類の構築でございます。まず特許分類の在り方につきましては、昨年10月、アメリカが欧州分類に移行することを表明したことを契機に、五大特許庁会合でも活発に議論が行われてまいりました。急増する中韓文献を考慮すると、これらの文献を検索できるような共通特許分類を構築していくことが大変重要な課題でございます。そこで5月にありました五大特許庁長官会合では、我が国から分類調和の加速化プランというものを提案いたしまして、6月には我が国が全技術分野について日本と欧州の分類の優位性の比較を行いました。 ここの図表にありますように、欧州が優位な分野と日本が優位な分野、検討が必要な分野、おのおの3分の1ずつというような結果になっておりまして、優位性が明確な分野についてはそれに寄せるということで、早期に調和が可能ですので、残る検討あるいは議論が必要な分野について、集中的に協議を進めることで分類調和を加速化していきたいと思っております。 10月の五庁の分類作業会合においても、その分析結果を確認して議論を開始しましたが、その後、三極の長官会合で分類調和の加速化に関する作業部会の立ち上げを合意したので、こうした部会を中心に今後検討を更に進めていきたいという進捗状況でございます。 8ページ目、項目43、新興国知財情報データバンクの構築でございます。近年、中小企業の海外進出が大きな政策課題になっておりますが、企業が新興国で直面する様々な知財のリスクに対応していくためには、まだ十分な情報が整備されていないというのが実情ではないかと認識いたしております。 そこで、知財に関する各国の法令やガイドラインといった基本的な情報だけではなく、誤訳情報や訴訟対策に関する情報、権利取得の際に必要となる様々な問題点など、企業実務に関する情報も集約して、企業が活用できる体制を整備したいと思っております。 これまでデータバンクの構築に向けまして、知財協やJETRO、現地の日本企業と意見交換、情報収集を行ってまいりましたけれども、どこにどのような情報の蓄積があるか、大分見えてまいりました。今後、こうした各団体で持っている情報の集約と、現地弁護士事務所との調査を含めまして、データバンク構築に向けた具体的な取組を進めていきたいと思っております。 この新興国知財情報データバンクにつきまして、来年度約0.5億円の新規予算を要求いたしておりますので、来年度中に、具体的な情報を提供できる体制まで持っていきたいと思っております。 9ページ目、項目43、海外知的財産プロデューサー事業でございます。本事業につきましては、今年度から駐在経験あるいは知財経験豊富な民間の専門人材をINPITで6名採用しております。海外展開を実際に検討している中小・中堅企業に対して、個別具体的な知財面でのアドバイス支援を行っております。 11月末までの支援ケースの実績は73件ございまして、また、普及啓発活動として全国5か所でセミナーなど開催いたしております。支援内容は幾つか事例として掲げておりますが、例えば出願国の審査実務に応じた特許クレームの書き方について留意点を指導したり、外国で商標出願する場合の事前のサーチ手法のアドバイスをしたりしております。また、外国展示会に出展した際の技術流出を防ぐアドバイスや特許だけではなく商標も組み合わせた知財戦略の提案といった個別具体的なアドバイスを海外知財プロデューサーが行っております。今後、ますます相談は増えていくと思いますので、知財総合支援窓口の相談員とも連携を取りながら、効果的な支援を行っていきたいと思っております。 項目43、中小企業のグローバル展開支援の強化でございます。中央のグラフのとおり、海外展開を図ろうとする中小企業にとって、多額の費用がかかる外国出願に対する資金助成のニーズは大変高いものがございます。20年度から既に支援制度がありましたが、地方自治体に4分の1の費用負担を求めた関係で、制度を導入する自治体が少なく、結果的に利用実績が少ない制度になっておりました。そこで22年の緊急経済対策の一環として、自治体の費用負担を軽減したところ、実施自治体また支援企業の数が大幅に増加いたしまして、23年度は26地域・151社が支援対象になる予定でございます。 本事業は翻訳費、出願料、海外の代理人費用もカバーされますし、特許だけではなく意匠、商標も対象になりますので、中小企業にとって、とても使い勝手のよい制度ではないかと思っております。実施地域、支援要望企業も急増しておりますので、24年度の予算要求では、本年度の8,000万円から倍近い1.5億円の大幅な予算の増額要求を行っております。本制度につきましては、案外制度を知らない中小企業が多いことから、PRをよく行っていきたいと思っております。 続きまして、項目の44、45、知財総合支援窓口でございます。本年度から中小企業の知財に関する相談にワンストップで応じる知財総合支援窓口を47都道府県に設置いたしました。窓口には知財に関する経験豊富な担当者を各地域2~3名、全国で130人配置いたしまして、これまでに延べ5,800名の弁理士や弁護士の専門家の方々と協力しながら個別具体的な相談を行っております。 各地域の中小企業支援機関や商工会・商工会議所だけでなく、金融機関、大学技術移転協議会、全国イノベーション推進ネットワーク等、様々な機関と連携しながら、相談支援を行っております。これまでのところ、順調に相談事業が進んでいると思われる実績を12ページに掲げさせていただきました。 相談件数は10月末現在で、5万6,255件であり、昨年、発明協会で行っていた相談事業との前年同期で見ますと2万5,000件程度でしたので、相談件数は倍増以上あり、沢山の中小企業の方々が窓口に相談しに来ていただいているということでございます。 新規の中小企業相談は、毎月1,000件以上あり、リピーターも7月以降増加傾向にございます。相談件数が増えている理由としまして、従来、待ち受け型の窓口相談だったのですが、企業訪問を含めて新規の相談者の開拓に努めたことによる効果が出ているのかなと思っております。また、訪問件数を集計いたしますと、10月末現在で3,805件ということで、各地域の窓口担当者が地域に積極的に出ている状況がうかがえます。 窓口における支援の具体例を、左に書かせていただきました。例えば大企業に侵害警告を受けた東京の中小企業ですが、窓口に相談した結果、対応手順のアドバイスと侵害に強い専門家を派遣いただいて適切に対応ができたというような声がございますし、その下の茨城県の企業の場合、開発成果から特許になりそうなテーマを見つけていただいて特許出願手続の説明を受けて、現在は弁理士と相談しながら特許出願をしたというような声もあります。 右に相談項目の比率を示しておりますが、全体の4分の3が出願手続関係となっておりまして、事業のねらいとしては、もう少し幅広い知財に関する相談を受けたいところですけれども、相談件数が倍増しているということもありますので、今後、徐々に範囲を広げて、単に出願だけではなく、知財コンサル的な窓口相談をしていきたいと思っております。 また、個別に話を聞くと、地域の大学や公設試験研究機関との連携がまだまだ弱いといったような声もありますので、こうした機関との連携強化や広域連携といったことにも努めていきたいと思っております。 項目46、新たな出願支援策の創設でございます。ただいま御説明しました総合支援窓口には、出願経験のない出願に不慣れな中小企業の相談が実際に来ており、10月末時点で310件の出願支援を行っております。 左に窓口支援の事例を掲げましたけれども、出願経験のない中小企業の方は、例えば、まず試作品を創ったけれども、特許取得はできないかという形で窓口に来られます。担当者が最初に発明内容をお聞きした上で、併せて特許制度の説明をして、2回目の相談でIPDLを活用して類似技術の調査を行って、先行技術の有無を調べます。3回目ぐらいに、商標とか意匠の出願をすべきかどうか、あるいは発明提案書の記載方法といった相談を行いまして、大体5~6回目になると発明内容が大分クリアーになって絞られてきます。そして、クレーム内容、明細書、ボリュームなどがある程度見えた段階で、地域の複数の弁理士に発明を紹介、概要を伝え、個々の弁理士が料金情報を提示して、幾らぐらいかかるかということを示した上で相談人と弁理士との間で相談をして、実際のマッチングというマッチングプロセスに入るということを行っております。 現時点で300件を超える出願支援を行っており、件数も今後増えていくと思いますが、年度内にこうしたマッチング案件の費用実績が積み上がってまいりますので、その結果を窓口相談による出願の一般的な費用という形で、年度を締めて公表したいと思っております。 最後になりますが、現在検討中の、知財を活用した新事業創出を支援するための取組について、簡単に御紹介させていただきます。御案内のように、我が国の特許120万件のうち60万件が未利用で、貴重な財産が眠ったままの状態ということがございます。御案内のように、円高による大企業の海外流出が懸念される中で、中小企業が国内外で活動していただくためには、知財に裏打ちされた新事業、新製品の開発を継続してできる環境整備が重要ではないかと思っております。ただ、知財と事業化の間にはかなりのギャップがございまして、これまで大企業、大学の貴重な知財が事業化されないまま未利用になっていた理由としましては、ここに幾つか掲げましたけれども、製品化は可能だけれども、市場規模が小さく、大企業にとってビジネスにならないといった意見や、あるいは中小・中堅事業は、この下のアンケートにもありますけれども、非常に関心は高いが、情報収集や、それをこなす人材がいないといった意見がある。また、製品化するまでにかなりの開発期間・費用がかかるので、経費資源の乏しい中小企業は手を出せないといった意見や、単に中小企業が持っている技術では権利範囲が狭くて事業化するには、他者と一緒にやらなければいけないが、そのパートナーが見つからないといった、様々な理由で、事業化につながっていないことが実態ではないかと思っております。 こうした知財と事業化のギャップを埋めるためのインフラとして、言わば知財を活用した新事業を創出するためのプラットフォームをつくりたいと思っておりまして、それが15ページでございます。 このプラットフォーム、産学官、また個々の企業を熟知している中小企業の支援機関、また金融機関も交え、中小・中堅企業の新事業創出をトータルとしてバックアップするという体制をつくりたいと思っております。ここの機関では大きく分けて約3つの機能を提供したいと思っております。 1つは左下にありますトランスレーションということで、大企業あるいは大学の技術の中でも特に中小企業がこなせるような現場に近い技術を選び、それを集中的に中小企業にトランスファーしていくというような取組です。大企業あるいは大学には、現場に近い技術が転がっているので、それを翻訳する、つまりトランスレーションする人がいないということが、事業化につながらない原因ではないかと思っております。例えば、私がお持ちしたこのマスクは、東大と富士通にあった特許技術で創った製品でございます。これは中小企業がライセンスを富士通から受けて、鳥インフルエンザのときに爆発的に売れた商品でございます。実はこのチタン光触媒、チタンアパタイトの技術は、先般、関西で工業用のフィルムを創っているメーカーが新しい分野に進出したいということで、植物工場の窓板に張るフィルムや医療現場で使うものとして応用したいということで、富士通とのライセンスがまとまりました。このような身近な技術で中小企業がこなせる分野は沢山あると思いますので、こういう技術を山本先生とも相談しながら集めておりまして、これを来年度以降、各地域でキャラバンをつくって集中的に中小企業に展開していくような取組をやっていきたいと思っております。これが1つの機能です。 2番目は、インキュベーション機能です。これは、総合支援窓口に様々な中小企業のニーズ、シーズが集まりますので、これに全国の技術者、企業の方々がソリューションを提供するようなインキュベーション機能をこの窓口相談につなげていきたいと思っております。御案内のように、アメリカでは技術仲介機関ということでイノセンティブやナインシグマ等、様々な課題を持った人が世界中の研究者、企業に課題を提供し解決するといったビジネスをしている会社もありますので、日本ではまだ難しいと思いますが、こういった窓口相談で地域でとどまっていたインキュベーションの取組を全国ネットワークに乗せて解決して、中小企業の新事業創出につなげていく、そのようなことをやっていきたいと思っております。 3番目の海外展開支援は先ほど御説明しましたので紹介を省略いたしますけれども、いずれにしても、中小企業支援ということで、貴重な拠点が全国にできましたので、今後はこの拠点を活用しながら、良い情報コンテンツを載せて新事業創出につなげていくかということに力を入れていきたいと思っております。 長くなりましたけれども、以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、ただいまの説明について、御質問その他、いかがでしょうか。 西山委員、どうぞ。 ○西山委員 西山と申します。 今の熊谷総務部長の説明なされた14~15ページの知財を活用した新事業創出支援、その具体的なアジアのプラットフォームの構築の案は非常にすばらしい案だと思っていまして、是非積極的に進めていただければと思っています。 私どもが持っているアイデアで言いますと、13ページにあるように、通常、大学で出てきた技術やアイデアがあったとして、TLOに相談に行くと何とか特許出願にならないだろうかというアプローチに持っていかれるのです。実際、先行事例があると、その先行事例とは違う方向性で商品のニーズをちょっとそらせてでも取りにいこうという流れが働くことの方が多いように思います。 そこを、そうではなくて、先行している特許が未活用だった場合は取得する、もしくは安くライセンスしてもらうという方に逆に働きかけてしまっていくことで、そういうアドバイスを与えることで、早く実用化が進むようなことになるのではないかと思っています。 マスクの事例があるように、たとえそれが大企業であったとしても、ライセンスが可能なんだ、もしくは廉価にできるのだということを支援チームなのか、インキュベーターなのかわからないのですが、取得の方ではなくて活用の方に重きを置くようになると、早く未活用技術の実用化に向けた動きが促進されるようになると思うのです。 特許庁としては難しい判断だと思うのですが、むしろ、あるものを使われないでいることを活用させるところにフォーカスを当てた方が早く問題の解決になるのではないかと思ったので、是非具体的な施策をそちらの方面でいただけたらと思っています。 ○熊谷部長 ありがとうございます。 権利活用の促進支援にフォーカスをおいた施策は、技術シーズ集とか、技術データベースというのは山ほどあるのですが、それだけだと中小企業には、どのように活用していいかわからない。あるいは大学の先生に自分のビジネスについて相談することもなかなかハードルが高くて、自分のビジネスとの距離感があるというのがこれまでの現状だったのではないかなと思います。そういう意味では、中小企業の目線に立って大企業あるいは大学の技術を選んで、その後のフォローアップも含めて行うというのは大変重要なことだと思っておりまして、そういう意味で利用活用あるいは事業化を見据えた知財を選び、中小・中堅企業に分かりやすい形で提供するということを組織的にやりたいと思っております。 ○西山委員 ごめんなさい。これは言いそびれてしまったのですが、そのときに、ではお金がありませんと、取得する金額よりもライセンスの方が安ければライセンスすべきだと思うのですけれども、取得する方に助成金が使えて取得する方に行ってしまうと、本来、ライセンスを受けるチャンスがあったものを国が取得の方に促してしまうおそれがあると思うのです。同じ財源があるとするならば、国がサポートする前にライセンスする方のコストが安かった場合、財源をライセンスの方の費用のサポートに使うことができれば、本来、廉価な方に知財の活用が促されることになるので、今はどちらかというと、例えば中小企業もしくはそれよりも小さい会社が、技術者が技術を持ったとき、アイデアを持ったときに、助成金を使って出願しましょうと働いていると思うのですが、そうではなくて他社からライセンスをする、もしくは特許そのものを買ってしまうというところがあるならば、そこにでも財源を使えるようにした方が早く動かせるようになると思うのです。ですから、ライセンスの方にもうまくインセンティブが働くような仕組みをここでつくっていただけたらと思っていますというのが具体的な意見です。 ○熊谷部長 基本的にはこれは民・民ベースでライセンスが成立するような事業化のものをイメージしておりまして、ビジネスにならないものだったら中小企業も食べられませんし、そういう意味ではビジネスとなるものを選んでやるという取組にしていきたいと思っております。 ○妹尾会長 話が若干ずれた感じはありますけれども、いいのかな。 では、相澤委員、どうぞ。 ○相澤(英)委員 総論の話ですが、知的財産システムを精緻化させるということで、システム間競争に勝てるということにはならないと思います。システム間競争にあっては、どうやって日本のシステムが使われるかということを考えなければいけないので、我が国だけ精緻化すればいいというものではないと思います。 例えば、PPH等をやった場合、どういう効果があったかという検証をしていかないと、PPHは上手くいって、日本のシステムが空洞化したのでは政策目的を達しないと思います。 海外の情報ですが、例えば、中国のリスク問題を考えると、中国文献を日本に取り入れる方がいいのか、日本のものを中国語に訳した方がいいのかということも考えなければいけないと思います。会長のご指摘のように、日本語の公開文献を中国語の情報として流す方がより情報が向こうに行き渡りやすくなるという面もあるのですが、中国の文献をいくら日本に取り込んだところで、中国で日本企業が受けるリスクは下がらないと思います。中国特許文献の翻訳が日本企業のリスクの提言にどのように役に立つという理解でしょうか。 今、中国では、特許や実用新案を使ったシステム活用は盛んです。そういうときに、日本はどういう方法で対抗していくのかというときに、中国の文献を日本で読み込んで日本の制度を精緻化させたところで、それが役に立つのかどうかということは考えていただいた方がいいのではないかと思います。 中国がいいというわけではありませんが、中国では実用新案の活用が進んでいます。そういうことも含めて、中小企業の事業規模に合った知財戦略というものを考えていかなければならないのではないかと思います。 中小企業さんが特許を活用するのは結構難しいと思います。日本では、勝訴率が低いので、特許権一つの意味が小さくなっています。事業化ということを考えて、権利を行使できるか、そこから利益を上げるかといったことを考えるときに、もう少し総合的なことを考えることが必要であると思います。それについて、現在の制度がビジネスにとって好ましいかどうか、つまり、意匠法とか商標法が旧態依然していて、現在のビジネスに合っているかというところも含めて御検討いただければと思います。 ○熊谷部長 ありがとうございます。まず、PPHを何のためにするのか、効果を検証しなければならない点はおっしゃるとおりだと思います。私の認識ですが、日本の企業が海外で円滑に迅速に権利を取得するということに、PPHは役立つツールだろうと思っております。そのためのインフラ整備として、我々は100%の締結国の目標を目指してやっているので、制度間競争は特許庁が選ばれるかということもさることながら、日本の企業が海外で、いかに質の高い権利を得ることができるのかについて、我々がお手伝いできるかという視点で支援していかなければいけないと思っております。 2番目の実用新案等の中国での権利化はどうするかという話がありましたが、進出しようとする企業にどこにどういう地雷があるかをわかった上で進出していただくことは大変重要だと思うのです。実際、フランスが中国において、実用新案の訴訟で数十億の賠償を取られたのも、やはりそこに眠っている地雷がわからないで踏んでしまったということですから、地雷原を把握し避けることは大変意味がある。そういう意味で、とりあえず要約ベースですが、アブストラクトだけでも提供して、目の前の危機を回避するための対応を行っていきたいということが2番目の話でございます。 3番目の中小企業の対応は海外進出について、やらなければいけない点が多いというのはおっしゃるとおりです。そこで、まさに先ほど御紹介した海外知財プロデューサーは中小・中堅企業の特性や体力を踏まえたアドバイスを個別具体的に行っております。むやみに海外に出ていくよりは国内でそれを秘匿して、特許を見せない形でのノウハウ管理で事業を進めた方がいいといったアドバイスや、サンプル提供のやり方の工夫、設計図は不用意に渡してはいけないといったアドバイス、特許以外に商標を組み合わせたアドバイスをしておりまして、こういうきめ細かな対応を行い、その積み重ねが重要ではないかと一般的なお話をさせていただきます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ほかにありますか。 渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 中国の実用新案等について、これは前からここ数年、非常にニーズのあったところで、今、こういう取組をしていただいていることは大変結構なことだと思います。 新興国知財情報データバンクというのがどういうデータベースになるのかがわからないのですけれども、法令や何かが並んでいても、知財だけに限ってというと、新興国のビジネスをやっていらっしゃる方は、そこでいろんな契約をやって、国によっては登録しないといけないとか、それが一体何の効果があるのかと、対抗要件だけなのか、それとも契約が無効になるのかとか、それが実態として本当にどうかとか、最後は送金まで影響するわけです。結局、そういうのを1か所でわかるようにしてほしいというニーズが非常に強い。そういう意味では、これがどこまでカバーして、あるいはこれを生かすためには別の施策が必要なのかどうかというのも検討していただきたいと思います。 14ページの先ほどの未利用特許についての話は随分長く議論されているわけですけれども、余り紹介されていないですが発明協会でアンケート調査だったか実態調査だったかを実施したときに、基本的には技術の完成度の高いものはよく流通できるという結果が出ていました。不確実性の高い技術と、技術の不確実性が削減されて比較的完成度の高い技術を対象にする場合とは、施策が違うと思います。ここで説明されている施策は、後者の完成度の高いものをどうやってうまく流通に乗せるのかというところとしてはかたいかなと。先ほどの富士通の例は、私が発明者ですのでよく知っていますので、その点も詳しく検討していただけたらと思います。 ○熊谷部長 ありがとうございます。 最初のデータバンクに載せる情報についてですが、海外知財情報を収集している団体から話を聞いて、例えば、誤訳情報ですと、こういう事例での誤訳により権利行使ができなかったということの事例を別の企業が繰り返し行っていることがあるものですから、例えば「a」を「1つの」と訳してしまった結果、権利範囲が狭まってしまった等、様々な例があるので、そのような体系化できる失敗例の留意点を体験的に載せていきたいなと思っております。単なる基準とか法令はある意味で余り役に立たないというのは当然でして、実際に現地でトラブルになった事例集ということを積み上げていくことで、意味のある実践的なデータバンクにしていきたいと思っております。 未利用特許の話については、御指摘のとおり、大学の技術で企業が活用できないような権利ではなく、中小、中堅企業が活用しやすい権利を念頭において、今後、支援チームを構成して、よりよい実用的な技術を選んで中小企業に展開することを踏まえてやっていきたいと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 データバンクのシステム設計そのものも重要ですけれども、今の話のように活用のデザインも是非併せてというお願いですね。 ほかにいかがでしょうか。 福島委員、お願いします。 ○福島委員 たくさんの取組に関するご説明をいただき、ありがとうございました。時間の関係もありますので、2つのポイントに絞ってご意見やご見解を教えていただきたいと思います。 二つのポイントを通じて共通することは、スピード感の視点と思います。まず一点目は、先ほど相澤先生からもお話がありましたように、項目32の外国語特許文献の検索システム、特に中国文献の和訳抄録をどうするべきかと言う点です。企業にとってはこれからの中国における事業活動は極めて重要だと思いますが、スピード感の視点から見ますと和訳にこだわられてサービスの提供に時間がかかり過ぎることを懸念しています。色々な課題はあると思いますが、割り切って英語対応で進めることになればもっと早くサービスを開始できたり、抄録に限らず全文も含めた対応の可能性もあると思います。このような割切りをどうすべきかという議論はあると思いますが。 二点目は、項目33の特許分類の構築です。従来から日本分類の在り方やその良さも承知していますが、結果として何時までを目処に分類の調和を図っていただけるのかという目標設定をある程度はっきり示していただくことは、極めて有意義なことと思います。 ○小柳調整課長 それでは、私の方からお答えさせていただきます。 まず中国の実用新案や特許の抄録関係について、和文抄録にこだわっているので遅れているのではないかという御指摘でございますが、そもそも中国関係の実用新案、特許については、審査官が使う検索システムであれば勿論、英語で作成して行えばいいのですが、この多言語特許文献の検索システムの施策は、IPDLであらゆる方に提供したいデータベースですので、基本は中小企業や様々な方がいらっしゃるので、福島先生のような大企業の方であれば問題ないのですが、日本後で提供すべきではないかということで、取組をしているところでございます。 スピード感が遅いのではないかというお話がございますが、6ページの資料にございますように、まず中国実用和文抄録については今年度中に一部の提供を開始できる予定です。中国特許和文抄録についても24年度中には提供を開始する方向で現在、進めてございますので、そういったところで御理解いただければというところでございます。 世界標準の特許分類の構築でございますが、これは福島先生御存じのとおり、ヨーロッパとアメリカがまず手を組んで、ヨーロッパの分類を採用するということで話が進められておりまして、これは2013年1月にはそれが大体まとまるということでございます。7ページの資料にも書いてございますが、先月、日米欧の三極の特許庁長官会合で、三極で欧州の分類と日本のFIと言う日本独自の分類についてマージする作業部会を立ち上げて、2013年1月まではその作業部会で、分類調和を優先的に行うべき分野の検討を行い、2013年以降順次分類調和の議論を加速化して行っていくことで、欧州・米国と合意してございます。 ただ、何年でできるのだというお話でございますが、分類調和を行う必要があるテーマでいいましても2,600テーマぐらいございまして、全部やるのは相応の年数がかかるのですが、まずは本当に必要な分類、これは優先順位を付けて、本当に必要なところはまず早めにやっていくということで、これは三極の作業部会でそういう分類を決めて2013年度以降加速していくということで進めていくようなことを取り組んでいきたいと思っているところでございます。 ○妹尾会長 どうぞ。 ○福島委員 ご説明ありがとうございました。まず最初の点に関して、和文抄録自体を否定しているわけではありませんが、英文による提供の可能性についてもスピードを上げる観点から是非ともご検討いただくことを再度お願いしたいと思います。 二点目の分類調和について、たくさんの分類項目がある中で優先順位を決めて調和を図りたいという方向付けは具体施策として適切だと思いますが、それにしても検討すべき内容とある程度の時間軸も含めた工程表をご提示いただければありがたいと思います。以上です。 ○妹尾会長 安藤参事官、どうぞ。 ○安藤参事官 今の福島委員の1点目ですが、特許庁中枢の小柳課長に大変恐縮ですが、和文抄訳を何のためにつくるのかというところなのです。官邸の総理秘書官と議論していても、韓国のIPハブ構想に対抗すると言っても、だから何だと言われます。特許庁の国際化はいいことなので、進めればよいということなのですが、官邸サイドの視点からすると、日本企業の競争力に役立つようなシステムをつくるべきということを非常に強く言われています。和訳をつくるのも大事ですが、中小企業向けだから和訳が必要とおっしゃらずに、日本企業が活用できるようにすることが大事です。それが大前提ですが、一歩進んで日本がIPハブになるという大構想をお進めになるときには、途上国を巻き込む際に、途上国が日本のデータベースを見れば、中国、韓国のものも覗ける「ウインドウ」になるということも大切だと思います。是非大構想の中で仕組みを御検討いただければ、和文&英文なのかもしれませんし、あるいは英文中心にして、それに和文かもしれないと思うのです。しつこくで申し訳ないですが、是非そういった大きな観点からとらえていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○妹尾会長 相澤委員、どうぞ。 ○相澤(英)委員 各国特許庁にだけ提供するクローズドの情報であれば英語であっても、発展途上国を含んだ特許システムについて、日本が競争上優位に立つ意味で意味があるかもしれません。これをオープンにしますと、日本語でやれば受益者は日本企業に限られます。これは非常に重要な点で、日本の特許庁への出願人の費用で、日本が利益を受けることになります。英語ですと受益者が日本企業だけではなくなってしまい、日本企業の支援策になっているかわからなくなります。 日本語であれば、外国企業が使えないわけではないけれども、日本企業が有利なことは明らかで、翻訳の意義は明らかです。ただ、参事官が指摘された国際的な特許庁間の連携に限定して考えるのであれば、それは共通言語である英語の意味はあると思います。 ○安藤参事官 相澤先生のお話はおっしゃるとおりですが、要はスピード感が大事で、日本企業に役に立つ仕組みをつくってほしいというのがポイントです。加えて、途上国を巻き込むための公共財を提供するかどうかというのは次のレベルの話です。福島委員の御意見は、大企業の皆さんとしてはスピード重視で英語でもらった方がありがたいという真摯な御意見ですので、そういった点を是非御配慮いただきたいということでございます。 ○妹尾会長 今ので折り合ってしまったようなのですが、それではあんまりなので、局長、どうぞ。 ○近藤局長 これはいろんな議論があると思いますが、やはり英語の審査とか英語でのいろいろな動きというのはもう当然なのです。好きだの嫌いだのでもないし、日本の中小企業のためだとおっしゃるのはそうではないと思います。世界じゅうの国が日本に出願するといいことがあるとか、日本に情報を持っていく、まず日本に行こうではないかという形をつくらないと、やはり人、情報、金が流れてこないのです。したがって、日本の中小企業向けがありますから和文ですというのは全く誤りだと思う。 中小企業であっても、そのようなことではこれからは世界に出て戦えないのです。世界に出て戦うための特許制度なのだから、もちろん、国内だけの特許なら日本語でいいのです。しかし、世界に出ていって戦うためならば英語でやるしかしようがないし、私は審査官は英語で審査をし、特許も英語で出す時代にいずれはなると思います。冷静に今この瞬間どうするかといえば、問題山積でなかなか難しいのだけれども、例えば、2050年を考えたときにどうやって審査をしているか。絶対英語で審査している。そうだとしたら、何年前までに何をやるかという覚悟を決めて準備しないといけない時代だと思います。 特許分類の話も、いろいろな議論があり、難しい点がたくさんあるのも分かります。昔日本特許分類から国際特許分類に変えたときに大騒ぎしたのもよく覚えていますが、特許分類も世界共通でなければ、同じ土俵で戦えないのです。ルールが違ってボールが違ったら、ワールド・ベースボール・クラシックが開催できないのです。ルールについて、例えば、日本の野球では三塁に向かって走るのに対して、アメリカでは一塁に向かって走るということでは試合になりません。先ほど議論が必要なテーマが2,600ほどあるとおっしゃったけれども、そんなことを言っていないで、早急に結論を出す、それこそアメリカと欧州が握るならば相乗りすることも含めて検討すべきだと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。今の議論は妙にわかった話に落ち着かせられずに継続してやりたいと思います。 1点だけ、私は人材育成の専門家が言うと、中小企業の人が英語を読めないという前提でお話しするのは中小企業の方に大変失礼だと思います。出雲さんと西山さんが怒り狂いそうなのを今わかっております。もう中小企業をばかにした話はやめませんか。 どうぞ。 ○相澤(英)委員 一点明確にしておきたいと思います。私は、中小企業と言ったのではなく、日本人は日本語に強いということを指摘しただけです。 ○妹尾会長 お時間も大分過ぎてしまったのですが、ほかに佐々木委員が先ほどからお手を挙げておられる。 ○佐々木委員 時間の関係で極めて短く3点申し上げます。 1点、審査官の交換を各国もっと拡大できませんか。 2点目、これはもう翻訳のところでたくさん出ましたけれども、今、専門家に翻訳させても中国語への誤訳というのは私どもでも5%はなかなか切らない。この中でどこをねらってこれをやりますかというのが非常に重要なので、例えば一次スクリーニングで問題特許、問題実用新案をピックアップするレベルで、危なそうなのはもう一回やり直すというのだったら、かなり粗くてもスピードがあった方がいいと思います。 3点目は、先ほどの知財総合支援窓口のところで、特許の出願の相談が極めて多いとありましたけれども、相談に来られたときにどういうふうに出願しましょうかから入るとこれになると思うのですが、その新技術をどうするおつもりですかというところから入ると多分出願だけの相談にならないと思うのです。それで思ったのが、先ほど内閣府の方から、いわゆるSBIRの多段階方式云々とありましたけれども、これとこの窓口というか拾い上げるところで結び付けられないかなと思いましたので、御検討いただければと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 手短にお答えなさりますか。手短にお願いします。 ○小柳調整課長 国際審査官協議をもっと広げられないかにつきましては、本年度も予算要求を増額要求しております。もっと活発にできるようにということで、具体的には、現在、基本的には審査官協議は1~2週間なのですが、これを数か月間あるいは年単位で協議できるようにということで予算要求の拡充を図っているところでございます。 ○妹尾会長 いいですか。 それでは、山本委員、どうぞ。 ○山本委員 済みません。時間がないのでお答えいただかなくても結構なのですが、項目43の海外プロデューサーは非常に有能な方で、弊社でも1月にこの方を招いて勉強会をやるのですが、6人のすばらしい人がいるのであれば、是非全国の大学の大学技術協議会とかありますので、そういったところでこの6人の知恵を全国の大学に広めていただくようなことを協議させていただきたいということ。 最後の15ページ目のキャラバンなのですが、東大阪に行ったのですけれども、余り会社が来ないというのが問題で、次は豊田市がやりますと。豊田市の方は是非来てくださいと、会社が来るのだったら行きますよという話をしたら、集める自信がないとかと言われるとつらいものがあって、非常に面白いしいい制度だと私は思っておりますので、支援する人がいっぱいくるのです。尼崎で支援していますとか、そういう人ばかりなので、会社の方が来ていただくように是非更に拡充していただければと思っています。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。時間がそろそろ次に移らないと間に合わないのですが、どうしてもという方はいらっしゃいますか。 中島委員、どうぞ。 ○中島委員 今日の資料の13ページまでは比較的ゴールが見えているが、14~15ページが全然見えてないというところだと思うのです。そういう意味では、7合目、8合目から頂上へいかに行くかというのが13ページまでで、1合目、2合目から頂上へどうやっていくのかというのが14~15ページかなと思います。 大変先が見えて、やることが成果だとすれば、7合目、8合目がスタート地点になると思うのですけれども、多分そうではないと思います。そういう意味では、かなり成功率が低いと思いますし、余り期待を持たせるようなやり方だとまた叩かれますので、そこら辺、言葉は悪いのですけれども、どうせというか、成功率はそんなに高くないのですから、是非特許庁さんもここの専門家ではないと思いますので、いろんな外部の人をたくさん入れてはちゃめちゃなやり方で今までにない新しいやり方をやっていただいて、確率は低いけれども、とんがるものが出てくるという考えでやっていただければ大変ありがたいと思います。 ○妹尾会長 微妙な御発言、どうもありがとうございました。 出雲委員、お願いします。 ○出雲委員 最後、本当に時間を押していますので2点だけ。 1点目は、妹尾会長におっしゃっていただきました。中小企業もグローバル展開を考えている中小企業は当然英語人材ですとか中国語に堪能な人材、私どもにも西山委員のところにもいらっしゃると思いますので、そこで和文にこだわるという理由は全く考える必要はないということはあえてもう一度だけ申し上げさせていただきたいと思います。 6ページ目の項目32の多言語対応の外国語特許文献の検索システムの整理のところで、今日は中国語に主にどう対応するのかというところが議論になっておりましたけれども、1つ目のポツの①で不十分な先行技術調査による権利の安定性の低下。非常に簡単に書かれているのですけれども、こここそまさにグローバル進出を考えている中小企業にとって、不十分な先行技術調査によって権利の安定性が確保できない、低下しているという事実を1日も長く放置されている状況こそが、英語や中国語について十分準備をして、グローバル進出しようとしている中小企業にとっての最大のリスクでありますので、これはもう即時どう対応するのかと今日いろんな委員の先生がおっしゃっていましたけれども、そのスピードこそが最も大事なのであって、今、中国に進出できないといつビジネスするのか、いつ事業をするのかということがスタートできない。 ですから、簡単に書いてありますけれども、ここが最大のリスクで、1日でも早く解決するために無理して日本語にこだわるよりも、英語でもいいので権利の安定性をするためにすぐ実現できる施策にこの32の部分は注力していただくのが重要で、ロードマップどおりにやっていますよりも、1日でも早く権利の安定性を確保するためにどのようなシステムの整備が考えられるのかについて御検討いただければ幸いでございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 まさにグローバル志向の中小企業を助けるということをまず優先しようというところが大勢の御意見かと思います。どうもありがとうございました。 それでは、引き続いてまいりたいと思います。 (経済産業省特許庁関係者退室) (経済産業省産業技術環境局、文部科学省科学技術・学術政策局関係者入室) ○妹尾会長 ちょっと時間が押してしまったので、各委員の皆さんも御協力をいただければと思います。済みません、お待たせをしました。申し訳ない。 では、次のテーマに移らせていただきます。次のテーマは、「大学知財本部・TLOの在るべき姿とその評価指標の検討」「知財ファンドを通じて知的財産の活用を図る仕組みの構築」、これについてヒアリングをいたします。 担当府省から、経済産業省産業技術環境局大学連携推進課の進藤課長。 ○進藤課長 進藤です。よろしくお願いします。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課の池田課長。 ○池田課長 池田でございます。よろしくお願いします。 ○妹尾会長 同じく技術移転推進室の橋爪室長。 ○橋爪室長 よろしくお願いします。 ○妹尾会長 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。 それでは、早速、資料2-2をごらんください。これは進藤課長から御説明をよろしくお願いします。 ○進藤課長 このセッションで関連施策番号は49と56ということで、こちらは49というものに関連しております。「大学知財本部・TLOの評価指標の検討について」ということですけれども、お手元の資料をめくっていただきまして4ページのところに、工程表に盛り込まれた施策のイメージが書いてあります。オレンジのところですけれども、2011年度中に大学知財本部・TLOの在るべき姿を検討しつつ、大学連携活動の効果、効率性我々適切に評価する指標を策定し、試行的に評価する。 その次は2012年度のイメージですけれども、大学知財本部・TLOの在るべき姿について検討を深め、評価の結果も踏まえてその再編強化について結論を得るということでございます。2011年度はしたがいまして試行評価に向けての指標の策定、実際の評価の実施ということを進めているということがこの下の緑のところに書いてございます。 具体的には、経済産業省の調査予算ですけれども、文部科学省と一緒に調査をするということで進めておりまして、5ページ目にその調査項目、6ページ目にポンチ絵がございます。書いてございますとおり、まずは産学連携評価指標というものを考える。民間企業、大学、承認TLOへのアンケート及びヒアリングということで、これは民間企業180者ぐらい、大学は55大学、自治体は15といったところにアンケートしまして、またこの中から選んで30社ぐらいヒアリングに行きまして、どんな指標がいいかということを考えているところでございます。また、有識者による検討委員会というのを開いていろいろ御示唆をいただいておりまして、渡部先生に実は委員長になっていただいて、山本先生にも御参加いただいて、いろいろ御指摘、御示唆をいただいているところでございます。 ポンチ絵にアンケート、ヒアリングと試行評価とございますけれども、初めのアンケートというのは、どういう指標が実際に重要で、あるいは実際にどんなデータだったらそれを表せて、それは本当にとれるのだろうかということについてのアンケートとヒアリングというのを7~11月までやっておりました。それを踏まえて、大体こういう評価手法のプロトタイプでいこうということをほぼ定めておりまして、今、11月末ですけれども、これからオレンジ色の大学15者ぐらい、承認TLO15者ぐらいの試行評価というのを始めまして、またいろいろ御審議をいただいて、本格評価に向けての検討をしようというような感じで進めております。 7ページ目と8ページ目に頭の整理のポイントがございまして、私ども、もともと産学連携機能には幅広い内容があるとは認識していましたけれども、どうしても共同研究の数とかライセンスの数、収入といった、割と産学連携機能の範囲というのを狭く取っていたのですけれども、実際にTLOや知財本部のいろいろやっている活動、産学連携活動全般ということを考え、そういうものを一緒に評価するということを考えると、もっと広くいろんな産学連携の機能的機能というのをとらえる必要があるだろうと。本線としての企業による実用化・市場化へ向けての流れとともに、研究活動への寄与、人材育成、地域への貢献、国際的な展開といったところについても、やはりそれは効果があるわけですから、そういったことについても、それは大学等がここはまさに重要でアピールしたいというのに併せて、オプショナルにそういったことについても評価、公表できるようにしたい。 それから、8ページ目にもちょっと出ていますけれども、どうしても今までの指標というのはアウトプット型あるいはインプット型ということなのですけれども、本当はアウトカムというものをきちんと評価しなければいけないということを考えておりまして、したがって、本線である、まさに研究から実用化というのを標準的指標、それ以外のものはオプショナルな特徴的な指標というふうにして大学等が選べばいいとしているのですけれども、それぞれインプット、アウトプット、アウトカム、インパクトといったようなものをできるだけ拾っていきたいということでいろいろ御審議をいただいているところであります。 9ページ、10ページが一応そこで出てきた指標のプロトタイプの抜粋なのですけれども、9ページ目の左側の欄の項目と書いてあるところがいろんな指標のイメージでありまして、例えば大学のシーズの創出ということで、これは具体的なデータとしては発明届出件数とか、研究に従事する人員、大学研究者数で取ろうとか、こういったことをいろいろやっています。 アウトプットのところは黒い文字がデータで多いと思うのですけれども、これは今までも取ったことがあるデータなのですが、赤い文字で書かれているところは新しく取るデータということで、そのアウトカムの辺り、特に研究成果の実用化件数売上額とか、こういうものは今まで余り本格的に取っていなかったわけですけれども、そういうものをしっかり取っていこうと。 斜字になっているのは、アメリカの同じ大学技術移転関係者の団体のAUTMというところで取っている指標でございまして、先々国際的にも整合的にパフォーマンスを評価できるように、そういったものもできるだけ把握していこうということで考えてございます。 インパクトについては、1つの大学から大きなインパクトを測るというわけにはなかなかいかないということで、これはまとめて国全体で例えばどのぐらい実用化の効果があるか、雇用効果があるかといったようなことを検討していこうということを考えております。 10ページ目が研究とか、人材育成とか、地域、国際展開といったものについての同じく指標の、これは具体的なデータは書いていませんけれども、イメージというのをつくっております。 かなり細かくいっぱい出てきてしまいますので、これで全体イメージをぱっと把握するのは難しいだろうということで、ここから先はまだこれからの検討事項ですけれども、11ページにありますとおり、代表的と考えられる指標というのを少し選択して、それを例えばレーダーチャートでぱっと表すみたいな形にして、個々の大学あるいはTLOといったものについてのパフォーマンスが見えるようにしたいなということを、今、両省では少し話し合っているところであります。 この右側に例えば例がありますけれども、今、本線で考えている標準的指標としては、例えばランニングロイヤリティの収入とか、開発ベンチャーの売上額とかあるわけですけれども、共同研究のリピート件数とか学生の満足度とか、この辺は例えば研究への寄与とか人材育成あるいは地域企業からのランニングロイヤリティ収入というのは、地域への貢献とか、少し癖があるわけで、このパターンによってやはり幾つかの類型みたいなものができてくるのではないかということをとりあえず考えておりまして、そういう類型を踏まえて支援策とかいろいろ考えていくというようなことにできればいいのではないかなということを考えております。ただ、代表的指標がどうかとか、こういったことはこれからの検討ということであります。 2012年度を先取りするようですけれども、今後の検討の方向性ということについても少し両省で話し合っておりまして、これは13~14ページに余りかちっとしたものではないですけれども、少しずつ整理を始めています。 そこでは政策目標として、産学連携活動を通じてイノベーションの創出などの本丸的な研究成果の社会還元というのもありますけれども、後は研究への寄与、人材育成等々の政策目標というのがいろいろあるだろうと。それに併せて機能評価というのをしっかりやっていく。このときは、1つのやり方としては原則大学単位で考えていくとしないと、知財本部は何だ、TLOは何だというまた細かい議論になるなということなので、まずそこはしっかりやろうと。その上で例えば外部型TLOというのは、外部型TLOとその対応する大学をまとめて評価する場合もあるでしょうし、外部型TLO自体の評価もできるようにしようということを考えております。 14ページにありますとおり、それを踏まえてどんなふうに進めていくかというと、やはり産学連携機能の整理、強化、グッドプラクティスの分析、公表といったようなことが政府としての役割であると考えられるとともに、大学・TLOにおいてはこういった指標の評価を参考にして、自身の強み、弱みを考えて方向性をきちんと決めて機能強化を図ってもらいたいというようなことを考えているところでございます。 15ページはそれに対応したポンチ絵的な整理でありまして、上の方が試行評価から本格評価ということで、評価自体の簡単なまとめでありまして、下の方がそれを踏まえた産学連携機能の整理・強化の検討ということですけれども、今、口頭でざっとお示ししたものを視覚的にまとめております。 実際にやってみてわかったのですけれども、この試行評価、評価指標というのは非常にある意味でテクニカルに重い部分がありまして、今、こういうふうにやってみて試行評価、1回で本当に済むのかというような議論も実は出ています。したがって、その評価指標自体の検討というのはまだしばらくしっかりやっていかなければいけないなという気もしているのですけれども、他方で、それを踏まえた在り方の検討というのは余りずるずるそれを待っているわけにはいかないので、試行評価の結果からどんどん流し込めるようなことを踏まえて、いろいろ両省で考えて2012年度中にある程度の方向性は出したいととりあえず考えているところでございます。 以下、参考資料がございますけれども、ざっとお眺めいただければと思います。 それでは、次の56の方は文部科学省さんの方から御説明がありますが、続けてよろしいでしょうか。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 これに関する質問は後でまとめていきたいので、引き続きにしてしまいたいと思います。資料2-3を池田課長の方から御説明いただくということでお願いします。 ○池田課長 それでは、項目56の「知財ファンドを通じて知的財産の活用を図る仕組みの構築」について御説明をさせていただきます。 2ページ、1枚目の下の部分でございますけれども、計画の2011の工程表では、次のように明記されておりまして、大学と公的研究機関の特許のパッケージ化による価値の向上を図るということと、もう一つは、公的投資機関との連携により、知財ファンドの機能を活用する仕組みを構築し、大学等の未利用特許の事業活用を加速ということでございます。 これに対しまして、文部科学省といたしましては、大学等が有するライセンス可能な特許を収集し、企業のニーズも踏まえつつ、公的投資機関と連携することによって、テーマ別に分類いたしました特許マップや特許群情報を本年度数十件作成しております。また、必要に応じて追加データ取得や関連発明創出のための費用の支援も実施しておりまして、これらの取組によりまして、未利用特許の事業活用を促進してございます。 3ページ、上の図は知財活用支援の全体像でございます。簡単に御説明をさせていただきますと、まず特許の一番左端にございますけれども、御承知のように大学等の特許の状況というのは、グローバル出願率が欧米に比べると極めて低いという状況がございます。また、その下でございますが、大学等の特許は全業種の平均が約50%に比べまして、大学等に関しては26.8%と約半分にとどまってございます。これは大学等の特許が基礎研究でを中心としており、ピンポイントであるという特性上やむを得ない部分もございますが、こういうところを特許群を形成することによって実用化に結び付けていくという取組をしております。 全体のパーツは大きく3つに分かれておりまして、まず研究成果の特許化の支援ということがございます。これは海外特許出願の経費の支援であるとか、大学等における知的財産活動の人的支援で特許の相談等々を行ってございます。 その次に、大学等の特許の事業化促進ということで、ブルーの部分でございますが、1つは研究成果のデータベースを運用しているということで、これは2つございまして、J-STOREというものは、大学等の未公開特許も含めてインターネットで広く無料で情報提供をしております。科学技術コモンズというのがございまして、これは同じようなデータを収集いたしまして、研究に限って無償開放することによって未利用特許の事業の活用につなげていくということでございます。それを基に、知財活用促進ハイウェイというのを実施しておりまして、これは次のページで詳しく御説明したいと思います。 下のグリーンの部分でございますけれども、こうした特許化支援や特許の事業化促進の基盤となる環境整備も併せてしておりまして、これは大学等の機関の連携促進あるいはマッチングの場の提供というようなこと、目利き人材の育成という性格も併せて実施しておりまして、これによって大学等の特許の製品化、事業化に結び付けるという取組でございます。 その中で、知財活用促進ハイウェイにつきましては、下半分のページでございますけれども、JSTと産業革新機構が協定を結びまして連携をすることによって、未利用特許の事業活用を加速するという事業で、平成23年度からスタートをしております。左下の方にございますが、具体的にはJSTが自分で持っている特許が約7,000件ございまして、大学等・TLOから年9,000件以上の特許が出願されるなかから提供していただいて、これに対してJSTにより特許の収集やパッケージ化等をします。知財ファンドと連携をしながら、活用を目指すということで、具体的な取組としては最後の5ページのところにございますが、4本の柱から成っております。 ①は特許の価値向上支援ということで、これはライセンス可能な特許に関する追加データの取得等々のため、試験研究費と市場調査などのための技術移転調査費を提供しているということで23年度の実績は、誤字がございますが、「応募数」で応募数が339に対して、採択が106件ということでございます。 ②は投資機関などとの連携ということで、本年度は28件を知財ファンドに提供しているということでございます。 ③として特許マップ・特許群の提供ということで、本年度は約80件を作成してございます。これらは23年度からの取組でございますので、来年度以降も徐々に充実してまいりたいと思っております。 ④として特許に阻害されない研究環境の醸成ということで、先ほど申し上げた科学技術コモンズによりまして、研究段階で自由に活用していただいて、そういった研究環境を育てるということをしております。 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、質問をお受けしたいのですが、30分ほど時間が押してしまったので、皆さん昼飯を抜きという話にもならないので、質問その他は手短にお願いをしたいと思います。 渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 手短にということなのですけれども、両省で産学連携指標の取組をしていただいたのですが、こういう取り組みは非常に重要で、例えば今まで10年間、大学発ベンチャーの定義も文部省と経産省は違っていたとか、そういうことをこの場で認識して整理ができたと思います。こういうプログラムをもっとつくっていただければ連携が進むのではないかと思うのです。そこで評価指標の方の話ですが、資料は細かいですが、本質的にどういうところが重要かということについて説明しますと、例えば特許出願数というのは今まで目的化していたのではないかというような議論がありました。これはそういうことは政府としては当然言っていないわけですね。知財本部整備事業は、特許を含めた知財を扱えるようなマネジメントをできるような仕組みをつくる、体制をつくるということが目的で、別に特許を目的化していたわけではないのですが、そういうふうに思われているような部分も確かにあった。 今回の指標というのも実はインプット側に特許が入っています。特許出願数が入る。これは分母であってアウトプットはイノベーションであると。こういう考え方が非常に重要だというところをまず産業界も含めて共有して、これでやるのだったら、確かに大学が産学連携をやることで国のためになるなと、これをしっかり認識するということにつながるという意味で、非常に重要な指標の議論になっていると思います。 ですから、これは試行して終わるというのでは当然なくて運用が行われていく必要がある。この資料1の6ページのところに、これに関する工程表があるのですけれども、2011年度で指標をつくって、それを試行的に評価と書いてあって、次の2012年度はこれを基にしてTLOと知財本部の強化について結論を得ると書いてあるのですが、ここでは、この評価手法は「試行的に評価」で終わってしまっています。これを定着させて、本当にこれを目的として10年やったら日本はよくなるねということを産学で協力してやっていくという指標にしたいので、2012年度にこの指標を本当に運用して定着させるために、どういう運用をするのか、どうしていくのか、更に目標を決めていくとか、そういうことが書かれるべきだと思いますので、そこのところを考慮していただければと思います。 以上です。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 相澤委員、どうぞ。 ○相澤(英)委員 先ほど整備とおっしゃったのですが、この評価を使って、うまくいかないところは整理をしてもらう。廃止・統合を含めて、検討基準の1つになるという理解でよろしいでしょうか。それから、知財ファンドについて、政府系投資銀行に対して、投資をするということについて働きかけをしているののでしょうか。 ○妹尾会長 お願いします。 ○進藤課長 まずお答えの前に、渡部先生の御指摘はそのとおりだと思うので是非やっていきたいと思っています。 相澤先生の御指摘ですけれども、14ページに書いてあるとおり、我々としては産学連携機能の整理・強化をこの指標を使いながら進めてもらいたいし、施策としても支援していきたいと思っています。 やり方としては、多分広域化とか、重複がある場合の重点化とか、そういうものをやってもらえればということなのですけれども、大学単位でいろんな産学連携の指標の改善に取り組むものを評価して支援するというようなやり方で実際にはやっていこうと思っています。 それはどちらかというと整理集約というところまでは、はっきりどこまで必要かわからないのでそこまでは書いていません。考え方としてはあり得ると思っていますけれども、まずそれが伸びるところを支援して、だめなところは落ちこぼれていくというようなやり方で、個々の大学自身が自らもそういうことを考えて、得意技に収れんしてもらうというようなことをやっていこうかと考えております。 ○妹尾会長 どうぞ。 ○池田課長 2点目の御質問でございますが、昨年度、産業革新機構と協定を結びまして、先ほど説明しませんでしたが、本年度DBJキャピタルとも協定を結びまして、早い段階から、市場化の観点からこれらの機関に情報提供いただいたり、アドバイスをいただいたり、JSTと相互連携しながら進めてございます。 ○妹尾会長 ほかにありますか。 江幡委員、どうぞ。 ○江幡委員 知財ファンドを使った知財活用促進ハイウェイについて2つほど質問させていただきたいのですが、まず、資料3ページ、2枚目の裏側、上のスライドでは、ライセンスを行う主体が投資機関と書かれていて、一方、下の資料では知財ファンドが有望な特許を買い取りして産業界へのライセンスを行うとあります。実際にはどちらがライセンスを行うというスキームになるのかが、まず1点目の質問です。 2点目の質問としては、ライセンスを行うに当たっては、産業界からの要請、例えばこのポートフォリオが欲しいという要請に基づいてライセンスをするのか、それともファンドあるいは投資機関の方からここにニーズがあるに違いないと思ってライセンスを働きかけていくのか、そこはどういうことを考えておられるのでしょうか。 ○池田課長 ライセンスは知財ファンドに売却する場合と、そうではなくてその情報を基に個々の大学等と直接企業とマッチングする場合と2種類のケースがあろうかと思います。 2つ目につきましても、企業のニーズも踏まえて群を形成する場合もありますし、政府系の金融機関の目利きによって行う場とありますが、基本的に企業のニーズ、市場化がいかにつながるかという観点に立って群化するということでございます。 ○江幡委員 事業活用が促進される方向での利用のされ方であればいいのですが、ファンドである以上は利益を確保しなければならないということが、事業活用を制約する方向に働くことが懸念されます。 ○妹尾会長 佐々木委員、お願いします。 ○佐々木委員 今の御意見は全く同感なのですけれども、ファンドというのは非常に我々耳触りが悪くて、ファンドが買い取って特許を適当に集めてこれは要りませんかと来るのは、まさに、徒労という言葉は今は使ってはいけないかもしれませんけれども、全く同じ構図なのです。だから、ここの流動性をどの程度制限するかというのは非常に重要だということと、もう一つは、未利用特許が休眠している。これは価値があるものが眠っているのだと余り思わない方がいいと思うのです。多分価値があると使われているので、未利用特許を集めて束にすれば力になるだろうというのは非常に危ない発想だと思いますので、そこは御注意いただきたいと思います。 ○妹尾会長 高柳委員、どうぞ。 ○高柳委員 私も全く佐々木委員の指摘のとおりで、未利用特許には理由があるわけです。必要ないから利用されないというものが大部分だと思いますので、なぜこういうふうに弱い特許で、あるいは特に外国出願も含めて利用されないかという根本を正さないと、いくら束で集めても費用の無駄遣いとリソースの無駄遣いになるのではないかと思います。 それで1つ、研究成果の特許化支援というのが従来から行われているわけですけれども、大学さんにもよると思いますけれども、基本的には外国出願についてはJSTの支援丸投げです。特許戦略も何もない。それを全部JSTの申請を出して、通ったものだけが出ていく。ところが、JSTの審査の実態はだれがどういうふうにやっているのだと、そういうものは公開されていないし、実際いろいろ聞くところによると、本当に事業化などを考えているのか?。一定の額を件数がそこまで行くようにこなしているのではないかと。そこら辺が不透明で、我々企業の立場から考えると本当に必要なものに重点的に行っていないのではないかと、その辺をもっと効率的にやらないと、本当の弱いものを束にしてファンドで云々というのは、日本の産学連携の本当の実質的な強化にならないのではないかなと思いますので、特に外国出願の根のところも問題解決も併せてやっていただきたいと思います。 ○妹尾会長 大変厳しい御指摘が続きましたけれども、ほかに何かございますか。 今のものに関していかがでしょうか。 ○池田課長 この事業は今年度からスタートしたばかりでございますので、今、いただきました御意見にも十分注意しながらやってまいりたいと思います。あと全体としてはやはり大学等の方も特許の量ではなくて質を厳選するという流れにはなってきつつあると思いますが、どうしても企業と違って大学等は事業を行っているわけではなく、知財にかけるリソースというのは限られてしまいますので、並行して私どもは大学の産連活動や知財活動に対する強化支援というのも行っており、いただいた御意見も踏まえながら進めてまいりたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、まだ御意見があると思いますが、時間もあれなのでここで一旦切りたいと思います。いずれにせよ、産学連携のバージョンアップをする段階に来たという認識は皆さん持ってらっしゃるので、今までの経験を是非学習の観点にして次へ行きたいということだと思います。委員の厳しい御意見も全部それを踏まえた上での応援歌だと受け取っていただければと思います。どうもありがとうございました。 (経済産業省産業技術環境局、文部科学省科学技術・学術政策局関係者退室) (経済産業省、総務省、厚生労働省、環境省関係者入室) ○妹尾会長 では、次の方をお願いします。大変お待たせしました。申し訳ございません。 それでは、続いて「認証の戦略的活用に必要な基盤整備」についてヒアリングをしたいと思います。 担当府省からは、経済産業省の産業技術環境局認証課の頓宮課長。 基準認証政策課工業標準調査室・基準認証国際室の山本室長。 総務省の方から、総合通信国際戦略局電波環境課課長の丹代課長。 厚生労働省大臣官房厚生科学課の尾崎研究企画官。 環境省総合環境政策局総務課環境研究技術室の長坂室長。 お待たせして済みませんでした。 それでは、早速御説明いただきたいと思います。経済産業省の頓宮課長からよろしくお願いします。資料2-5でお願いいたします。 ○頓宮課長 頓宮でございます。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。早速御説明させていただきたいと思います。 1ページ目の下のところに目次を書かせていただいております。皆様御存じだと思うのですけれども、認証の概念についてまず御説明をさせていただいて、その後、知財戦略の方でおまとめいただいた「認証の戦略的活用の促進」と施策8、9、10、11、12との関係を私なりに御説明させていただいて、その後、経済産業省としての具体的施策の概略を説明させていただきたいと思っております。 2ページ「認証とは」について御説明させていただきたいと思います。認証とは、ここに書いてあるとおり、何らかの基準というものがございまして、その基準に製品とかサービスとか、あとISO9001などに代表されるマネジメントシステムという組織の管理体制のことでございますけれども、こういったものに適合していることを第三者の機関が確認することを指しております。 仕組みといたしましては、その下の左の図に一般的な仕組みがございますけれども、まず上に認定機関というものがございまして、その下に認証機関があって、一番下に製品・サービス・マネジメントシステムと書いていますが、これがいわゆる企業に相当すると御理解ください。 歴史をたどりますと、製品などをつくっている企業がいらっしゃって、それを試験、検査する機関が一種自然発生的に出てきた。それが今の認証機関のルーツでございます。 次に、では認証機関がしっかり認証ができていることをだれかが確認する必要があるのではないかという話が1990年代に入って出てきまして、図の一番上にある認定機関というものが現れてまいりました。ちなみに、当時、認定機関を確認するところは必要ないのかという議論があったそうで、それをし始めると無限構造になってしまうので、結局、認定機関は一層だけつくって、それらが相互監視することになったと聞いております。 英語で申し上げますと、認定機関の「認定」というのはaccreditation、「認証」はcertificationです。本日議題になっておりますのが認証機関の「認証」の話でございます。 右の方に実際の事例がございますけれども、製品認証の例で言いますと、我々が担当しているJISマーク制度がございますが、これは認定機関に相当するものが大臣になっております。その下に認証機関が25機関あって、そこが認証した製造事業者はJISマークを付けた製品を販売することができる。マネジメントシステムも同様で、これは政府は関与していませんけれども、公益財団法人とか一般財団法人が認定をやって、その下に認証機関が50機関ぐらいあって、認証を受けたところがISO9001とか14001とか、そういったマークを張ることができます。 次に、資料の中に書いておりませんけれども、この認証というものと戦略でおまとめいただいたものの関係について、私なりに補足説明させていただきます。まず認証というものはお金がかかるものでございますので、基本的には会社はなるべく避けたいものであると理解しております。認証のニーズがあるところには必ず背景がございまして、我々の承知している範囲では、1番目はアメリカなどでよく言われる話なのですが、訴訟のリスクの回避。訴えられたときに、第三者のチェックを受けていると説明がしやすいというケース。 2番目は、例えば発展途上国からの製品と自分のつくっている製品を差別化したいというケース。 3番目に、強制法規で求められている、やらざるを得ないケース。このように何らかの理由が必ず存在している例が多いと思います。 次に、認証といいますものは、当然最初に出てくるものではなく、最終的に製品を作って市場に投入する段階で出てくるものです。勿論、世の中には認証というものが要らないケースというのも結構多い。例えばヨーロッパで言いますと、いろんな法律がございますけれども、基本的に自己適合宣言といいまして、自分でチェックをして、その結果として規格に合致していれば、第三者認証を受けなくても市場に投入できる。CEマークというものなのですが、自分で貼ることができる。つまり、第三者に認証してもらう必要はないというのがほとんどでございます。 ただし、認証が必要になるケースがまれにあることも事実であり、そういったケースについて我々政府も、また民間の企業の皆様も研究開発もしくは製品開発の段階できちんと考慮しているのだろうかというところについて言えば、少し疑問の残るところがございます。 3つ目は、世界の主要認証機関というのをざっと見てみますと、ほぼすべてが株式会社で営利を追求する形になっています。中には上場企業もございます。彼らがある分野で認証業務を開始するときには、利益率と潜在的な市場規模を見ます。 例えばフランスのビューローベリタス、イギリスのインターテック、アメリカのUL、スイスのSGS、SGSは世界最大の認証機関ですけれども、こういったところの利益率を見ると、大体15~20%です。これら機関はULを除いて全部上場企業です。 こういったような状況を踏まえまして、認証機関の機能を産業インフラとして活用していくためには、大きく分けて3つあるのだろうと私なりに考えております。 1つは、先ほど申し上げましたように、開発過程でよく考えていないのではないかという話がございますので、開発の過程において、いわゆる市場投入の段階についても考えておく必要があることを国が自ら率先垂範する必要があるのではないか。これが率先ということで、私なりの理解ですと、施策8の国際標準化を視野に入れた研究開発の促進というところにつながっているのではないかと解釈させていただいております。 もう一つは、国が率先垂範すると同時に、世の中に認証の必要性を普及啓発していく必要があるだろうということで、認知度を向上させていくための情報提供、啓発、あとは活用事例の提供とか、そういったものが施策9、12につながっているのではないかと考えております。 3番目に、具体的事例を創出していくのが施策10、11の認証機関の能力向上とか、公的機関の支援とかであって、具体的プロジェクトの話につながっていくのだろうと考えています。繰り返しになりますけれども、国が率先し、世の中一般に普及啓発し、そして事例も同時に出していくということかなと受け止めております。 その次に、ページ番号を振っていなくて申し訳ございませんけれども、3ページ目の部分でございますが、先ほど申し上げた率先の部分、我々の方では施策8につきまして、産構審の分科会では、新技術の市場化には迅速な国際標準化及び認証の活用が鍵である旨をとりまとめています。 また、今やっている最中ですが、NEDOの研究開発プロジェクトの応募書類の中に、知財マネジメント戦略だけではなくて、国際標準、認証に係る事項を盛り込む方向で、文章改訂の作業をしているところでございます。 次に申し上げますのは、2番目の普及啓発の部分でございますけれども、いろんな活動をやっていますが、例えば今年度で申し上げますと、ここに挙げていますような活動をしておりまして、例で申し上げますと、標準化と品質管理全国大会2011というのが一番上に書いておりますが、これで大体参加者の数で言うと3,500人ぐらいに上ります。東京を含めて全国9か所でやらせていただいています。 一番下のところに書いてありますように、企業における標準化も含めての活用事例の収集でございますけれども、年度内に報告書をとりまとめようと考えております。このような活動を、普及啓発のためにやらせていただいております。 3番目の事例創出でございますけれども、我々のやらせていただいているプロジェクトとして3つ書かせていただいております。 1つ目が生活支援ロボット。このプロジェクトの中では、左の方に生活支援ロボットというのを書いていますけれども、主たるプロジェクトの中身はロボットの開発です。しかしながら、それを市場に投入するときに、生活に密接に関わるものでございますので、いろんなリスクがあるのではないかということで、リスクを恐れて市場投入が進まない面もございますので、安全性の評価手法について、産総研、一般財団法人の日本品質保証機構、これは認証機関でございますけれども、あとメーカーの方々に入っていただいて、安全性の評価手法とか、そういったものを、今、検討しているところでございます。 次の例で言いますと、自動車用の充電器というものがございますけれども、これも新技術にどう対応していくのかというのがこの検討の主たる中身なのでございますけれども、その中で例えば新しい製品が出てきたときに互換性をどうするのかという話が当然ございます。その互換性をだれかに認証してもらえないかということで認証制度の枠組みを検討しています。 最後の例は風力発電でございますが、これは日本の中で風力の発電システムがございますけれども、故障が割とある。それはなぜかというと、台風とか雷とかという日本の固有の気象状況に影響を受けているのではないかというのがわかってまいりました。それを踏まえて、我が国の状況を踏まえた評価制度、認証制度を考えられないかということで、今検討しているところでございます。 あとは参考でございますけれども、再生可能エネルギーが中心でございますけれども、認証手法の研究のための予算要求をしておりますし、6ページでございますけれども、産総研の方でも計画の中期目標の中でいろんなことを掲げさせていただいております。 以上で終わります。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。この後、質問をお受けしようかと思ったのですが、時間の関係があって予定を変更させていただいて、このまま認証がらみということで、次の「アジア諸国との国際標準化に係る協力関係の強化」、これについても一緒に御説明いただいて、併せて質疑ということにさせていただきたいと思います。 こちらにつきましては、山本室長の方からよろしくお願いします。 ○山本室長 それでは、御説明させていただきます。御紹介いただきました山本と申します。7月までは知財事務局の方で企画官として国際標準を担当させていただきました。委員の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。 本日、本来は基準認証政策課長の野田が参るところでございますけれども、震災の関係でエネ庁に併任でかかっておりまして、今日どうしても来られないということでございますので、私の方から御説明をさせていただきます。 資料2-6のスライド番号2のところ、1ページめくっていただきまして左上でございます。アジア太平洋産業技術国際標準化プログラムでございますけれども、日本にとりましてアジア太平洋とともに成長するというのが成長戦略の基本ということでございますが、これは国際標準の世界でも同様でございます。 左の方のグラフを見ていただきますと、アジアの中間層が伸びてきているということは、アジアの市場としての価値が急速に高まってきている。右の方のグラフでございますけれども、一番下の青のところでございますが、日本企業の利益の約4分の1は既にアジアからなっているということで、市場としての国際標準の必要性がアジアでは高まってきているということと、産業面でも国際標準について我が国と共通の利益を有する場面が増えてきていると認識してございます。 したがいまして、2つポイントがございまして、1つ目は、国際標準にアジアのニーズを反映していくということと、2つ目が共通の利益というものをベースに、我が国とアジアの国々が国際標準化の場で協力していくということがポイントであろうかと考えております。 次が左下のスライド番号3番をごらんください。本論に入ります前に、国際標準化をめぐります国際関係について見ておきたいと思いますが、国際標準化機関でありますISO・IECでは一国一票制でございますので、歴史的に非常に欧州が強い力を持っているという状況にございます。したがいまして、これにどういうふうにして対抗していくのかということは基本的な課題になっていまして、大きくは右側に寄った形で黄色い枠がございます。これはPASCと呼んでいますけれども、このアジア太平洋の枠組みを活用して対抗勢力としてまとまっていくというのが基本戦略になっています。 そのほかに我々日本のナショナルコミッティーをJISCと呼んでいるのですけれども、JISCとしては、ここに旗で書いていますけれども、アメリカとか中国、韓国とバイの定期協議の関係を持っていまして、更には真ん中辺りの下、ASEANとか、書いていませんがマレーシアとも関係を持っていまして、こういう関係を通じてアジアプログラムを推進しているということでございます。 スライド番号の4にいっていただきまして、そこでアジアプログラムでございますけれども、どういうコンセプトでやっているかということでございます。基本的にはアジアの実情に適した国際標準を共同して作成するということを前面に出しつつ、日本がアジアを仲間にしていくということと、日本製品がアジアで適切に評価されるようにしていくということがポイントとして進めております。 時間もありませんので、5ページのところは飛ばしまして、スライド番号6番でございますが、左側にありますアジアプログラム1~4の要素を入れておりまして、右側の下の方に国際スキームを書いていますけれども、先ほど説明しました国際スキームを活用してこのプログラムを進めております。 下にいきましてスライド番号7番でございますけれども、このアジアプログラム、昨年度末から進めておりますが、テーマを公募いたしまして、現在、右下にありますように9つのテーマで推進しています。上の5つが昨年度から始めたもので、下の4つが今年度から開始をしております。 スライド番号8番でございますけれども、具体的にはここにありますように、北米、東アジア、ASEAN、南アジア、10か国と協力をいたしております。この中で幾つか具体的にプロジェクトフォーメーションから仕込んだプロジェクトについて簡単に御説明をさせていただきます。 スライド番号の10番でございます。これは冷蔵庫でございます。アジアの経済力の伸びとともに主力製品になっているのですけれども、この中で今、国際基準で冷蔵庫の基準がありますけれども、ヨーロッパ基準が基準になっていまして、間接冷却方針の冷蔵庫が適正に評価されないという状況になっています。 実際、アジアは日本と気候が似ていまして、何とか現地の気候に適した国際標準をつくるということと、現地の認証機関の育成というのを併せてやっています。国際標準化の面では先進国の横連携と途上国の縦連携というものを組み合わせて、既にオーストラリア、アメリカ等と協力して国際提案にこぎつけています。 更に強調したいのは、これは国際機関のERIAを活用して、昨年からこのプロジェクトは先行実施をしているのですけれども、既に仲間づくりとして、インド、マレーシアをPメンバー、IECの正式なメンバーの取組に成功しています。タイもPメンバーにしようと思って取り組んでいるところであります。 既に太陽光発電についても、今、IEC基準がございますけれども、これは長期信頼性を保障したものではなくて、一方で、海外、主に中国製が今のIEC基準に合格していることを根拠に20年保証しており、根拠もないキャッチフレーズで国際的なシェアを伸ばしているという現状にあります。 特に震災後の再生可能エネルギーの普及加速ということで、我々がアジアプロジェクトを考え出した当初よりも太陽光発電の新規格というのはニーズが更に高まっていると認識していまして、我々としては前倒しで作業を進めているという状況にございます。先週もちょうど太陽電池モジュール品質保証フォーラムというのを日本で開催しまして、各国を集めてこの標準化に向けて作業を進めているという状況です。 最後、3つ目のエアコンですけれども、12ページを見ていただくと、こちらも基準はISOの規格がございます。 アジア諸国の省エネ性能の優れたインバータエアコンを普及させたいというニーズを入れて国際標準化を進めていきたいと考えてございます。現状では横連携で、アメリカと韓国とオーストラリアを協力して国際提案して、既に欧州の取り込みにも成功して作業を進めております。認証努力の向上も併せて進めていきたいと考えております。 13ページ、今ありましたアジアプログラム以外でも、実は個別のTC、個別の技術分野でもアジア連携というのを進めていまして、例えばこのスライドで言いますと、半導体分野であるとか、水晶デバイス、エレクトロニクス、更には書いていませんけれども、ベアリングとかバネといった機械分野でも個別にアジア連携を進めているということを進めております。 いずれにしましても、アジア太平洋は日本にとって非常に重要な協力パートナーですので、あの手この手を使ってこれからも連携を強めていきたいと考えてございます。 以上でございます。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。御説明、急かして申し訳ございません。 それでは、時間はわずかしか残っておりませんけれども、委員の先生方からの御質問あるいはコメント、いかがでしょうか。 佐々木委員、どうぞ。 ○佐々木委員 紙面には表れないところなのですけれども、私もかつて国交省さんといろいろ仕事をしているときにいつも問題になったのが、標準化は過去の利害が絡み合うものですから非常に難しくて長い議論になることが多い中で、日本の官僚の皆さんのローテーションが早すぎて、大体ヨーロッパはもう何年も前からこの標準化だったらこの人だという方が出てくるのに、日本はころころ変わると。そこはかなりこの紙面に表れない弱いところだと思うので、その辺は是非これは官僚の皆さんにお願いしたいと思います。 ○妹尾会長 これはお答えがつらいと思うのでお答えしなくて結構だと思います。でも、佐々木委員のおっしゃることは確かだと思います。 小川委員、どうぞ。 ○小川委員 山本さんと皆さんから御意見・ご提案を頂き、どうもありがとうございました。 今、官僚が2年ごとに交代するからかだめなのかどうか私はわかりませんけれども、例えばここに記載されているエアコンなどは、例えば日本の最大手企業が中国の有識者、学識経験者へ働きかけ、この人たちと一体となって省エネのための基準、いわゆる標準化の基準をつくっています。日本企業がこのような動きが出来るのは、中国が直面する環境問題に対して日本のインバータ技術から環境問題が解決できるという思いがあるためです。当然のことながらその背後にビジネス上のアドバンテージがあります。結果的に中国の有識者が日本企業の提案に賛同し、中国政府がこの環境基準および基準を満たす技術として日本企業が提案したインバータ方式のエアコンの普及を決めました。中国最大のエアコンメーカもインバータ方式を採用しており、いわゆる日本技術のインサイドモデルができあがっています。インバータ方式を提案した日本企業が、結果的にこの恩恵を最も受けているのは言うまでもありません。今後の中国エアコン・メーカは、インバーター技術がなければ事業が成立しなくなるでしょう。すでにインバータ・エアコンが大量普及しはじめましたので。日本の優れた技術をテコにした基準の設定が、中国にとっても日本にとっても良い結果を生んでいるのです。この事実ぜひご理解いただきたいと思います。 類似の事例がいろんなケースで顕在化しています。ご説明の資料には単にアジアで、と記載されていますが、環境問題が切実な中国に目を向け、ここで基準の設定とこれを認証測定法が極めて重要な役割を果たしている事実を理解し、これを他の途上国へ展開なさることを強くお勧めします。 例えば自動車の分野も、これまで中国の民族系企業が大躍進してきたのですが、今年の初めに先進国では当たり前の基準、すなわち車の初期故障(品質)とか安全性、販売後のサービスなど、トータルな基準を中国の自動車市場で公開しはじめたところ、これらの基準で中国の民族系メーカが最下位になってしまい、日本を含む欧米企業(合弁会社も含む)が大躍進しているのです。 ですから、これまで先進国が長い時間を掛けて蓄積した安心・安全の基準を途上国の実態に応じて設定し、その試験法を定めることが、市場の競争力に大きな影響を与えていますので、さきほどご説明頂いた頓宮課長と山本室長にはぜひ頑張っていただきたい。任期が4年でも結構でございます。 ○妹尾会長 岸委員、お願いします。 ○岸委員 時間もないので手短にお伺いしますが、今回、各省庁がかなり出られて、縦割りを廃して各省庁が御協力してやっているようで結構なのですが、この資料を見ていて1点だけ欠けているなと思っているのは、金融の中の保険です。例えばロボットの関係者とかと話していると、認証機関で最後、強制力を持つ部分は、例えばプロダクトライアビリティに絡む保険とか、そういうことをかなり言うのです。先ほどULとかTUVとかいろいろ出てきましたけれども、日本はかなり遅れているので、その辺を追いかけるのは大変だと思いますが、特にULなどがなぜ強制力を持って強いかというと、後ろにPLを背景とした保険、強力なものを持っているからだと言われるのです。それゆえに、全くこの中で一言も出てきていないので、認証の専門家の方が保険というものをどうとらえているか。あるいはこの中に金融庁がいてもいいのではないかと私は思っているのですが、その辺の考えはどうなのでしょうか。 ○妹尾会長 お願いします。 ○頓宮課長 重要なポイントを御指摘いただきましてありがとうございます。 認証と保険の関係はあると理解しております。保険の市場の中で認証の結果を使って割引をやってくれるとか、有利に扱ってくれるような制度ができれば非常にいいのですが、ここは我々としてもなかなか直接できることが少ない部分ですので、御指摘を踏まえながら引き続き検討していきたいと思います。 ○岸委員 生活支援ロボットは、究極は安全規格が取れるかどうかだということを踏まえて、そこは保険を考えなければいけない。早稲田のこの二足歩行で最高峰と言われる高西教授に、これからの生活支援ロボットのポイントは何ですかというと、ソフトウェア、ハードウェア、保険だと言うのです。それも踏まえて、私は生活支援ロボットは日本がこれから稼ぎ頭になると思っているので、保険というのは割と早く認証の中でも取り入れて検討していかなければいけないと思っています。 ○頓宮課長 ありがとうございます。1つだけ追加させていただきますと、保険が適度な料率で市場に提供されるかどうかというのは、1つの要素として規制の有無が関係する可能性があります。例えば、生活支援ロボットは私の理解ではPL保険の対象になっていません。それはなぜかというと、余りにもリスクが大きい一方、保険に入ってくる人が非常に少なくて商売として成り立たないということではないかと思います。 したがって、保険が商売として成立するためには、保険に入らないといけない人を増やす。その1つの鍵が強制法規なのかもしれないということです。ただし、このような理由のために強制法規で規制すべきというのは非常に難しい議論だと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。まだまだ御意見もあろうかとは思いますが、時間を超えてしまいました。申し訳ございません。どうしてもということで何かありますか。どうしてもと言うと何となく手を挙げづらいというプレッシャーで申し訳ございませんが、いずれにせよ国際戦略化戦略タスクフォース、この専門調査会とは別にダイレクトに動いていますけれども、そこでも認証の重要性、極めて強く議論されています。 今日は経済産業省のお二人しかお話できなかったのですが、ほかの省庁の方々にも期待が大変かかっていますので、また別に御発言の機会も設けたいと思います。どうもありがとうございました。 それでは、全体としては、2つ目に「知財計画2012」に向けた全般的な議論を行う予定だったのですが、予定の12時半を超えてしまいましたので、これは先送りをさせていただくということで御了解をいただきたいと思います。 今日の進捗状況についてまだまだ御意見あろうかと思いますけれども、ありましたら、事務局ないし私の方に御連絡をいただければと思います。 この先の予定を事務局の方からお願いいたします。 ○髙原参事官 次回、第3回の会合は、年明けの1月20日、金曜日の午後1時からこちらの会議室で開催させていただく予定です。お忙しいところ恐縮ですが、日程の確保のほどをよろしくお願いいたします。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 次回は年明けということです。予備日を1日、3月に取っていただいていると思いますが、予備日は必ず使うことになると思います。御予定をいただければと思います。勿論、それは戦略本部の会合の日程いかんによると思います。その辺は心づもりをお願いしたいと思います。 それでは、今日はこれで終えたいと思います。皆さん、恒例ではありますけれども、よいお年をお迎えください。どうもありがとうございました。 |