知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第9回)



  1. 日時 : 平成23年4月25日(月)16:00〜18:00
  2. 場所 : 知的財産戦略推進事務局内会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 妹尾会長、相澤(英)委員、相澤(益)委員、荒井委員、出雲委員、
    江幡委員、大渕委員、小川委員、上條委員、岸委員、久夛良木委員、
    高柳委員、中島委員、西山委員、福島委員、山本委員、渡部委員
    【事務局】 近藤事務局長、芝田次長、安藤参事官、原参事官、山本企画官
  4. 議事 :
    (1)開  会
    (2)「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項(知的財産による競争力強化・国際標準化関連)について
    (3)閉  会



○妹尾会長
 それでは、定刻になりましたので、始めたいと思います。
 ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第9回会合を開催させていただきます。
 本日は、御多忙のところ御参集いただき、誠にありがとうございます。前回は花粉飛び交う中でしたが、今回は4月始まってお忙しい中、本当にありがとうございます。
 まず初めに、3月11日に発生しました東日本大震災におきまして亡くなられた方々、それから、御遺族の皆様に対して深くお悔やみを申し上げたいと思います。
 それから、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 今日、御出席の委員並びに傍聴されている方々でも、御家族、御親族、大変な思いをされた方、あるいはされている方、いらっしゃると思いますけれども、心からお見舞い申し上げたいと思います。
 この会として、今回の被災により尊い命をなくされた方々の御冥福をお祈りして、哀悼の意を表するために、1分間の黙祷を捧げたいと思います。恐縮ですが、御起立いただけますでしょうか。それでは、黙祷をお願いいたします。

(黙  祷)

○妹尾会長
 黙祷を終わります。ありがとうございます。ご着席ください。
 それでは、本日は、まず、東日本大震災の状況及び3月末に持ち回りで開催された知的財産戦略本部の報告を行います。それに続きまして、「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項につきまして、東日本大震災への対応策を織り込むことになりますので、それを中心として議論を行いたいと考えております。そして最後に、全体についての皆さんからのいろいろ意見をちょうだいする、そして議論を行う時間を設けたいと考えております。
 それに先立ちまして、最初に、本専門調査会の委員の皆さんに異動がありましたので、御紹介をいたします。
 まず、知的財産戦略本部員の任期満了に伴い、佐藤辰彦さんが委員を退任されております。そして、新たに本部員に就任されました太陽国際特許事務所長の中島淳さんに今回からこの専門調査会の委員としても加わっていただいております。よろしくお願いいたします。
 それでは、中島委員から一言御挨拶を。

○中島委員
 御紹介いただきました弁理士の中島淳でございます。
 途中からの参加ということで、右も左もよくわかりませんけれども、妹尾会長を始め皆様方の御指導よろしきを得まして議論に参加させていただきたいと思っております。どうかよろしくお願いをいたします。

○妹尾会長
 よろしくお願いいたします。(拍手)
 それから、本日は、迫本委員、佐々木委員、中村委員、野元委員から御欠席との連絡をいただいております。
 それから、大渕委員がちょっと遅れるという御連絡を賜っているということです。
 それでは、まず、近藤局長に御挨拶をいただきたいと思います。局長、よろしくお願いします。

○近藤局長
 ありがとうございます。
 まず冒頭に、私からも、3月11日の東日本大震災におきまして亡くなられた方々と御遺族の皆様に対しまして深くお悔やみを申し上げたいと思います。
 被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 皆様の中にも、恐らく、親戚の方、御友人の方、たくさん被害に遭われた方がおられると思います。改めて心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 早速でございますが、この調査会は、実は3月11日直前までに大体いろいろなものを終わらせていただきました。タイミングを申し上げますと、3月7日に競争力の調査会で議論させていただきました。3月10日にはコンテンツの中間取りまとめの最終の会合をさせていただきました。まさしく3月11日の午前中に標準化のタスクフォースを開きまして、ちょうどそれが終わって、ちょっとしたところで震災でございました。
 こういう状況ではございましたが、皆様の御協力のお陰で、実は、この大震災の直前に大体の準備ができ上がっておりました。その結果、3月17日に企画委員会を持ち回りで実行いたしました。また、本部も、実は3月の末に予定をしておったんですけれども、これもなかなか状況が厳しいということで、持ち回り開催という、要は決裁をもらって回るという形での会合にさせていただきました。本部員の先生方には、もちろん、一人一人御決裁をいただき、すべての閣僚から一人一人決裁をいただいたわけでございます。
 私は、正直申し上げて、その際、総理と官房長官はもう無理だろうなと思っておったんですが、総理にも官房長官にもじっくりと説明をいたしました。3月30日にお時間をいただきまして、総理に説明をしてまいりました。総理からは、この専門調査会で取りまとめをいただいたことについて、心からありがとうと、総理がテーブルに両手をついてありがとうとおっしゃっておられました。これから日本にはこういう知的財産が大事になるんだということを総理が言っておられ、皆さんに感謝の意を伝えてくれと、こういうことであったことを御報告をする次第でございます。
 日本が再び立ち上がって知的財産を活用して世界で輝いていけるように、震災への対応もしっかりしていきたいと思います。今日、後ほど御議論いただく中には、「知的財産推進計画2011」の中に、いろいろな震災絡みの対策も盛り込んでまいります。また、それを特記した形で整理もしてみたいと、こんなふうに思っております。そういったことで、日本全体がもう一回、輝かしい日本に立ち上がれるように、そして皆さんとともに前進できるように、この1か月ちょっとの間を有効に生かしながら、取りまとめを行っていきたいと、こんなふうに考えている次第でございます。本日も御審議のほど、よろしくお願いします。ありがとうございました。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、早速、入りたいと思います。まず最初に、東日本大震災の状況及び知的財産戦略本部会合の結果についての説明を伺いたいと思います。それから、事務局からの報告もあるかと思います。高原参事官からその辺の報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高原参事官
 それでは、資料を御説明させていただきます前に、事務局内での異動につきまして御紹介申し上げます。
 3月末でございますけれども、上田事務局次長に対しまして、原子力災害対策本部への併任の辞令が出てございます。現在、上田次長は、原子力災害対策本部で担当審議官として被災者生活支援の任務に当たっております。この任務が終了次第、また知財事務局に戻る予定でございますけれども、当面の間、終日、原子力災害対策本部での勤務ということでございますので、本日の専門調査会は欠席をさせていただいているところでございます。
 それでは、配布資料を確認させていただきたいと思います。お手元の議事次第の下に資料を束ねてございますが、まず、資料1は「『知的財産推進計画2011』に盛り込むべき事項(案)」、本日御審議いただく文書でございます。
 それから、その下の資料2は「『知的財産推進計画2011』工程表(案)」でございます。机上配布、委員限りとさせていただいておりますが、左上に書いてございますように後ほど回収させていただきます。
 続きまして、参考資料1でございます。これは今後のスケジュールについてまとめたものでございます。
 その後の参考資料は、知財本部会合の概要説明で使う資料2〜6でございますが、最初の参考資料2も席上配布資料、委員限りでございます。「国際標準化戦略の策定について」というものでございます。
 その下は参考資料3「『知的財産推進計画2010』フォローアップ(案)」。こちらにつきましても委員限りでございまして、要回収とさせていただいております。
 さらに参考資料4「『知的財産推進計画2010』の骨子概要」でございます。
 その下、参考資料5「『知的財産推進計画2010』骨子」の本体でございます。こちらも委員限りにさせていただいております。
 参考資料6は、前回、本専門調査会で御議論いただいたものを踏まえて修正した「『知的財産推進計画2011』骨子に盛り込むべき事項」、本専門調査会から知財戦略本部への御提言の文書です。
 それから、参考資料の最後の資料7でございますけれども、前回、第8回会合でいただきました主な意見をまとめたものでございます。
 また、資料番号をつけてございませんけれども、別体で「東日本大震災について」という資料を皆様のお手元にお配りをしております。
 以上、御確認いただければと存じます。それでは、まず、東日本大震災の状況について、最後に申し上げましたタイトル「東日本大震災について 平成23年4月22日時点」と書いてあります資料に基づきまして、簡単に内容を御案内申し上げます。
 表紙を1枚おめくりいただきました1ページ目でございますけれども、地震の発生、その後の人的被害、避難者についての、こちらは4月17日時点のものでございますが、概要でございます。
 2ページ目でございますけれども、地震調査研究推進本部、これは文部科学大臣を本部長とするものでございますけれども、左の図は、こちらの資料から抜粋いたしました3月11日の本震の震度分布でございます。右の図は、宮城県周辺の震度分布を拡大したものでございます。
 1枚おめくりいただきまして、3ページでございますけれども、津波の状況についてのものでございます。
 左の図は、先ほどと同じ地震調査研究推進本部の資料からのものでございますが、日本国内での津波の高さの観測値でございます。それから、右の図でございますけれども、NOAAと略称されております米国海洋大気庁が公表いたしました3月11日の本震の震源地から環太平洋諸国沿岸への津波の到達時間を示したものでございます。
 4ページ目、これは国土交通省で作成をされております資料から持ってまいりましたけれども、4月21日現在の交通ネットワークの復旧状況でございます。鉄道、道路につきましては、実線部分が運行中、あるいは通行可能、点線部分については、運休、あるいは通行できない区間でございます。
 続きまして、5ページでございます。こちらは震源付近の原子力発電所の大震災時の状況についてまとめた資料でございます。
 それから、6ページでございます。こちらは原子力災害対策本部の資料からの抜粋でございます。福島県地域を中心とした地域における原発の事故に関連した活動状況についてまとめたものでございます。
 続きまして、7ページでございます。こちらは文部科学省ホームページにもございますけれども、4月22日現在の福島第一原発付近における空間放射線量率のモニタリング結果でございます。
 1枚おめくりいただきました8ページには、日常生活と放射線の関係につきまして、文部科学省において作成された資料を添付しているところでございます。
 更に、9ページでございますけれども、地震災害と原子力災害の指揮系統について全体像を示したものでございます。政府において、総理を本部長とする緊急災害対策本部及び原子力災害対策本部を設置して対応しているということでございます。
 それから、10ページ以降につきましては、今、申し上げました2つの本部から公表しております資料を添付してございます。全体は大部なものでございますので抜粋をしております。10〜12ページが緊急災害対策本部からの公表資料、4月22日現在のものでございます。それから、13〜19ページは原子力災害対策本部が4月21日時点で公表した資料でございます。
 東日本大震災については、資料は以上のとおりでございます。
 それでは、続きまして、3月末に持ち回り開催されました知的財産戦略本部会合の内容、特に本専門調査会に関係の深い事項の概要を中心に御報告をさせていただきます。参考資料2〜6までを順に御参照いただくことになります。
 まず、参考資料2でございますが、「国際標準化戦略の策定について」でございます。1ページ目では「知的財産推進計画2010」における標準化戦略策定の指示について整理をしております。左側の戦略の策定という欄にございますように、官民が連携して競争力強化を目指す標準化を実行するという視点で検討を進めました。対象は、右側にございますように、7つの特定戦略分野でございます。
 次に、おめくりいただきまして2ページ目が、国際標準化戦略策定のプロセスとなってございます。1月末に府省原案を提出していただきまして、2月から3月上旬にかけて、国際標準化戦略タスクフォースで最終集中討議を行いまして、国際標準化戦略の案をとりまとめております。
 それから、最後の3ページでございますけれども、こちらが7つの特定戦略分野の各分野に共通するフレームワークを示したものでございます。
 続きまして、参考資料3「知的財産推進計画2010」のフォローアップでございます。こちらは、委員の皆様に「知的財産推進計画2010」の各施策の実施状況をごらんいただきたいということでお配りしておりますが、まだ関係府省との調整を了しておりませんことから、委員の皆様限りの配布としておりまして、恐縮でございますが、本日、会合終了後に回収させていただきたいと考えてございます。
 第7回の専門調査会、2月25日でございましたけれども、2月下旬時点でのフォローアップの状況を配布しまして委員の皆様にごらんいただいておりましたけれども、今般のこの参考資料3は、年度が変わりましたことを受けて状況変化が生じた取組につきまして更新しているところでございます。各事項の御説明は控えさせていただきますが、内容についての御意見、それから、個別の御関心等ございましたらば、事務局までお知らせをいただければと存じます。
 それから、参考資料4でございます。「知的財産推進計画2011」の骨子の策定ということで、概要紙をごらんいただければと思います。インターネットでの高速のコミュニケーションが可能となって、ボーダーレスで世界がつながるグローバルネットワーク時代が到来しておりますけれども、こうした新しい時代の新たな挑戦を支える4つの知財戦略ということでまとめてございます。
 まず、上半分の戦略、@とAの部分は、本専門調査会で取りまとめていただいた「『知的財産推進計画2011』骨子に盛り込むべき事項」による提言に対応してございます。
 左上の@国際標準化のステージアップ戦略では、「知的財産推進計画2010」に沿いまして、昨年度取りまとめていただきました特定戦略分野7分野の標準化戦略に基づいて、具体的な標準化の活動を行うとともに、その活動を活性化するための支援策、それから、認証の戦略的活用、アジア諸国との連携などを進めてまいります。
 右上のAでございます。知財イノベーション競争戦略では、特許などの知財システム自体が激しい競争にさらされ、企業のグローバル活動も進む中で、特許審査の国際化など、グローバル知財システムの構築を進め、我が国の知財システムの競争力強化を図っていくというものでございます。また、企業、大学のグローバル展開支援や知財人財育成プランの確立も重要な課題でございます。
 下半分の2つの戦略は、コンテンツ強化専門調査会からの提言に対応したものでございます。
 左下のB最先端デジタルネットワーク戦略でございますけれども、昨年から我が国でも本格的な電子書籍の専用端末が発売されておりますけれども、このような電子書籍の流通促進でありますとか、国立国会図書館の約90万冊のデジタルアーカイブの外部利用の促進といった課題がございます。また、クラウドコンピューティングの利用者が音楽などを預けるといった際の法的なリスクを解消する、そういった方策を検討する必要がございます。
 右下のCクールジャパン戦略ですけれども、我が国の歴史、文化の中で培われました美意識でありますとか、創意工夫に基づくクールジャパンを世界に通用する知的資産であると位置づけまして、クールジャパンの魅力を高め、グローバル展開をするとともに、日本に関心を持ってもらうように観光客、それから、ビジネス客を引き寄せて、それに伴う内需拡大による経済活性化につなげていくことが重要でございます。このためには、発掘・創造したクールジャパンをグローバルに発信をし、その人気を拡大させるクールジャパンの推進サイクルの確立というものが重要でございまして、各省が一致協力して政策を展開してまいるということでございます。
 続きまして、「知的財産推進計画2011」骨子の本体、参考資料5をごらんいただきたいと思います。骨子につきましては、抜粋版、つまり、I.総論部分とII.各論のうち、本専門調査会からの提言を反映させた2つの知財戦略、戦略1、国際標準化のステージアップ戦略と、戦略2、知財イノベーションの競争戦略を抜粋したものにつきましては、前回、第8回の専門調査会で、委員の皆様限り席上配布資料としてお配りをしていたところでございます。今般、参考資料5における戦略1、2には、前回、第8回専門調査会での御指摘に基づく修正等も反映させてございます。参考資料5における該当部分は、7〜19ページとなってございます。
 更に、参考資料5のII.各論部分でございますけれども、前回までにごらんいただいたものに加えまして、コンテンツ専門調査会からの提言を反映させました戦略3、それから、戦略4も含めてございます。こちらの該当個所は、先ほどの箇所に続きまして20〜29ページとなっております。
 最後に、参考資料6をごらんいただきたいと思います。「『知的財産推進計画2011』骨子に盛り込むべき事項(知的財産による競争力強化・国際標準化関連)」というタイトルの3月7日付けの資料でございます。前回の専門調査会で委員の皆様から御意見をいただいておりましたが、骨子に盛り込むべき事項の取りまとめにつきましては、最終的に会長に御一任をいただいておりました。そこで、妹尾会長とも相談させていただきました上で、前回の御議論も踏まえまして、この参考資料6の内容にて知財戦略本部会合に提言を行ったということでございます。先ほど申し上げましたが、「知的財産推進計画2011」の骨子には、この参考資料6の内容を反映させているということでございます。
 そこで、前回、第8回の会合で配布させていただいた資料からどのような変更が加わって、最終的な盛り込むべき事項になったのか、その修正点について、簡単に御報告いたしたいと思います。今から申し上げますページ数でございますが、参考資料6のものでございます。
 まず、1ページの一番下のパラグラフでございます。ここは修正前は「中小企業の優れた技術」と書いてあった部分でございますけれども、前回の御指摘も踏まえまして「企業、とりわけ中小企業の優れた知的財産」というふうに、現在の文言に修正をしてございます。それから、後に出てまいります同様の記載についても、同じ修正を加えてございます。
 それから、1枚おめくりいただきまして、2ページ目、1つ目の「我が国主導により」で始まるパラグラフの次に、前回、成果イメージと目標指標を記載しておりましたけれども、こちらは削除しております。
 それから、同じ2ページの1.の情勢認識の3つ目のパラグラフの中に「知財システムの構築」という文言がございましたけれども、この部分を「グローバルな特許システムを含むグローバル知財システム」と修正をいたしますとともに、その下の(1)のタイトルも「グローバル知財システム」と修正をしたところでございます。
 続きまして、少しめくっていただきまして5ページでございます。2.の情勢認識の1つ目のパラグラフでございます。4行目「また」で始まる部分がございますけれども、技術流出の問題をグローバルネットワーク時代のものとして位置づけるべきという御指摘を踏まえまして、その旨の追記。それから、同じパラグラフの下から3行目からでございますけれども、大学の本旨に留意しつつ、営業秘密についての意識向上を図る旨の記載を追加しております。
 もう少し飛びまして、11ページでございます。中ほどに(ロ)という見出しがございます。「産学連携における知財マネジメントを強化する」というタイトルでございます。この下に、もともと1つにまとめておりましたけれども、リサーチ・アドミニストレーターに関する施策と、知財プロデューサーに関する施策を2つに分けて書き分けたということでございます。
 それから、12ページの3.の直前でございますけれども、「産学官の研究開発活動における知財の有効活用に向けた仕組みの整備」というタイトルの施策を追加したということでございます。
 長くなりまして恐縮でございましたが、以上が3月末の知財本部会合に関する御報告でございます。
 事務局からは以上でございます。

○妹尾会長
 どうもありがとうございました。
 いろいろな報告がたくさんありましたので、整理するのに時間がかかるかもしれませんけれども、皆さんから特に何か御質問、御指摘ありませんか。
 文言に関しては、前回の皆さんの御意見を極力折り込んだという話でありますし、成果目標等は、載せることが果たしてふさわしいだろうかという議論があって、結局はこれを外したということが大きな変化だったかなと思っております。それから、一部追加されたものもあったわけですが、皆さんから御質問その他、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、先に進ませていただいてよろしいですか。次に、「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項についての案を、また事務局から御説明いただくことになります。それでは、よろしくお願いします。

○高原参事官
 続きまして、「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項(案)につきまして御説明をいたします。お手元の資料1、資料2、こちらは工程表でございますけれども、御参照いただければと思います。
 まず、資料1でございますけれども、「『知的財産推進計画2011』に盛り込むべき事項(案)」でございます。先ほどの議題で御説明を申し上げました「知的財産推進計画2011」の骨子に盛り込むべき事項、この内容からの追加事項を資料1では赤字で示しているところでございます。
 最初の修正は、1枚おめくりいただきました2ページでございますが、総論の情勢認識に関する部分でございまして、中ほどに2つ目の○を追記しております。東日本大震災からの復興に向けて、知財戦略の面でも迅速かつ総合的な取組が必要だということでございまして、権利保護の面で、大震災に対応した救済措置を国内外で講じるとともに、更に我が国の産業競争力強化のための知財戦略の実行が肝要である旨を記載してございます。
 次の変更点でございますけれども、少し飛びますが、10ページの一番下をごらんいただければと思います。「公共図書館における知財関連情報の提供」でございまして、この4月から各都道府県において始まっておりますワンストップ相談窓口の事業と協力しながら、ビジネス支援図書館をはじめとする公共図書館において、地域の中小企業の知財活用に資する関連情報を提供する取組を進めていくという施策を追加してございます。
 また少し飛びまして、15ページをお開きいただきたいと思います。15〜17ページにかけてでございますけれども、「4.大震災に即応する対策を迅速に講じる。」ということで、一連の施策群を追加してございます。具体的な施策の前の情勢認識の欄には、冒頭の総論の情勢認識の欄の記載と同じ趣旨で記載を加えてございます。
 具体的な施策につきましては、1枚おめくりいただきました(1)以降でございます。まず「(1)情報提供及び相談の体制を強化する。」と書いてございます。具体的には、大震災に影響を受けた権利取得上の手続に関する救済措置等をウェブサイトにおいて一元的に発信をするという取組でございますけれども、既に特許庁のホームページにおいて震災関連情報を掲載していただいておりまして、随時アップデート、更新も行われております。これをしっかり発信をしていくというのが1つ目のポツでございます。
 それから、2つ目のポツの取組は、専用相談窓口の開設及び被災地域のワンストップ相談窓口との連携でございます。既に特許庁内に専用の相談窓口を開設しておりますけれども、更に被災地域、各都道府県のワンストップ相談窓口においても、東京の専用窓口ともしっかり連携をしながら適切な支援を行っていくという内容でございます。
 次に「(2)産業財産権取得に関する手続上の緊急救済措置を講じる。」と掲げてございます。その1つ目の取組は、電子出願の代替手続による救済でございます。大震災の影響によりインターネット回線に障害が生じた等の事情によってインターネット出願が利用できない場合には、特許庁長官の承諾を不要として、記録媒体による出願手続を認めるという内容でございます。
 それから、2つ目の取組でございますが、手続期間延長による緊急救済措置でございます。特許法を含め、産業財産権法に規定されております法定期間、それから、審査官等が指定をします指定期間については、事情を説明する文書を添付していただきまして、その事情を考慮して、応答期間の延長を認めるということでございます。
 それから、17ページでございます。先の(1)(2)は国内対応でございますが、(3)には「海外への緊急救済措置の要請及び関連情報の周知」を挙げております。特許庁では、過去3年間、日本から出願があったすべての国・地域の知財庁、これは合計90の組織でございますけれども、こちらに対して、日本の出願人、代理人を対象とした法定期間等の延長に関する救済措置を要請しているということでございます。4月20日現在でございますけれども、全部で40の国・機関が救済措置を講ずるということで、その旨を公表してございます。特許庁のホームページにも掲載されておりますが、この40の国・機関には、米・欧、それから、韓・中といった五大特許庁を含め、日本からの出願規模の大きな国がほぼ含まれております。
 それから、最後の「(4)大震災を踏まえた国際標準の見直し」でございます。震災に耐え得るインフラの安全基準でありますとか、災害時の企業の組織対応等に係る国際標準の見直しの必要性につきまして調査を行いまして、その結果に従って必要な対応を行うという内容でございます。
 以上、資料1の内容でございます。
 資料2を簡単に説明いたします。「知的財産推進計画2011」の工程表、競争力・国際標準化に関する部分を抜粋したものでございます。こちらは、実は、記載振りにつきまして、現在、関係府省と調整をまさに進めている最中でございまして、まだ内容が固まっておりませんで、恐縮ながら本日の会合終了後に回収させていただきたいと考えておりますが、個別施策につきまして御関心等ございましたらば、御説明に伺わせていただきますので、事務局までお伝えいただければ幸いでございます。
 以上、事務局から説明を申し上げました。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、東日本大震災への対応を中心として、資料1、これは赤字で書かれた部分が大きな変化ですが、ここについて議論を行いたいと思います。皆さんからの質問ないしは意見、あるいは御提案がございましたら、是非お願いをしたいと思います。意見ある方は挙手をお願いいたしますが、いかがでしょうか。
 相澤委員、お願いします。

○相澤(英)委員
 現在、特許庁の運用問題ですが、必ずしも明確ではないと思います。この点については、一括立法するときに、明確にした方が被災者の方にとってよろしいのではないかと思います。
 それから、もう一つは、新規性喪失の例外です。新規性喪失の点については立法措置が必要ですので、この点についても配慮が必要かと思います。
 それから、もう一つは、日本の特許法、著作権法は、政府による使用についての例外規定が著作物の複製についての例外を規定する第42条以外にありません。例えば、震災復興関連で情報を提供するために他人の著作物をインターネットを通じて、政府が利用する等の場合につきまして、除外規定が規定されておりません。これは当然、解釈論として認められるべきだろうと思いますが、この点も明確にする措置が必要だと思います。特許権については、アメリカ合衆国では政府使用の場合には差止請求権がなく、補償金請求権だけがありますので、そういう措置も含めて、配慮がなされるべきものと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 復興関連について、そういう整備を、この際だからきちっとしないといけないよねと、こういうお話だと思います。他に何かございますか。安藤さん、お願いします。

○安藤参事官
 相澤先生の御指摘に関しては、しっかりと、どういう問題が起きるのかというところをよくチェックさせていただくことが重要だと思います。まず、手続面では、割と特許法の中で事前に手当てが済んでおりますので、その意味で期間面での猶予を与えていくことが基本となります。仮に、不明確な部分があれば、それはよりクリアにしていくことが必要だと思います。
 それから、震災復興の際の第三者利用のお話は、悩ましいところがありますが、民間ベースでは既に動いているところが実際にはございます。特許権ではないのですが、著作権の方では、例えば、図書館のケースがございます。被災者の方は、いろんな情報、それこそ医療や生活の情報を必要とされます。ところが、地元の図書館も震災で潰れてしまい、情報が欲しいけれども、困っている。そこで、図書館協会が、権利者団体と相談しまして、その上で、他の地方の図書館が、FAXで送ったり、メールで送ったり、こういうサービスを直接被災者の方にするという事例があります。政府は、直接ではありませんが、こういう動きにもサポートしています。
 また地方自治体ベースですが、読み聞かせのような「心のケア」の部分まで、石狩市の図書館や、あるいは、東近江もそうですが、市を挙げて被災地を応援をするという事例も出ています。他者の特許権を直ちに使って震災対応ということがにわかにあるという感じもいたしませんが、その辺りも含めて、どういう事例が起こってくるのか、見ていきたいと思います。ありがとうございます。

○妹尾会長
 よろしいですか。

○相澤(英)委員
 立法で明確にすることで、すばやい対処ができると思います。合意を前提とすると、時間がかかることになりかねません。新規性喪失の例外など、立法を必要とする場合と含めて、立法で明確することが良いと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 著作権に関しては、これは余談ですけれども、ゼンリンさんなどから住宅地図をきちっと出していただいたお陰で、衛星写真とのクロスをして、それによって今、被災地を特定できる。それで保険金の支払いまで一気に動けた、こういうことがあるわけです。これも善意があってのことでありまして、そういうところの整備は今後検討が必要かなとは確かに思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。荒井委員、お願いします。

○荒井委員
 今回、こういう大震災対応を書いておくというのは大変的確なことだと思います。権利保護の関係も大事ですが、今、東日本、東北地帯、いろんな大学とか研究所の研究設備が大変被害に遭っておられるわけでして、これは相澤先生の方で本来的にはおやりになっておられると思いますけれども、知的財産の創造の部分、研究の中断ができるだけ短くなるように、あるいはデータの取得の中断ができるだけ短くなるようにというような、創造ということで、こちらサイドからも要望を出すというか、メッセージを送るというか、是非そういうところについて、生活者の被災問題はもちろん大事ですが、同時に研究とか学術、そういうものの中断ができるだけ短くなって、知的財産の創造が円滑に復旧するようにというようなメッセージを送ったらどうかと思います。これは相澤先生の方も本体でおやりになると思いますけれども、こちらからも送ったらいいんではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 これは大事な御指摘です。それに関して、相澤先生、何かコメントをいただけますか。

○相澤(益)委員
 被害状況を調査しているんですけれども、1つ重要な問題が出てきておりまして、個々の研究状況の被害状況というのは、高度な、あるいは機微な情報が含まれているということで、そこについては公開をはばかるということがほとんどの研究者及び研究機関の対応です。ですから、外から見て、施設がこんな状態になっているとか、その範囲はよろしいんですけれども、先ほどのような個々の研究者に対する個別の支援等々はなかなか難しい扱いになるかと思います。
 それから、もう一つは、これから進む補正予算絡みでそういう部分をどう支援するかということになってくるわけです。トータルから考えると、とにかく桁が大きい話でありまして、これを等しく元に復するように復帰させることが目的になるのか、あるいは復興全体について、元に復するというよりは、新たな未来への姿を明らかにしてということが、当然出てくるのではないかと思います。ですから、一般的に、研究状況を何とか被害状況から回復させたいということは共通の理念であるんですけれども、ただ、具体的な適用はいろいろな問題があるなということで、そこの取扱いをどうしたらいいかということで迷っておるような状況です。

○妹尾会長
 なるほど。ありがとうございました。
 復旧なのか、復興なのかという議論が背後にありますね。私も今月号の『中央公論』でそれを議論していますけれども、元へ復するだけではなくて、この機会だから、30年先へ進まなければいけないみたいな、そのときに予算配分などは極めて難しいお話だと思います。
 今のことに関連して何か御議論ございますか。あるいは御質問その他。
 渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 ここで書かれているのは大震災への直接対応ということなんですけれども、今、相澤先生、荒井委員の御指摘のとおり、基本的には、この大震災がいろんなものに影響して、リーマンショックのような経済的なクライシスになっていく可能性があります。今は大震災という物理的なものが、だんだん経済的な問題とか、それから、科学技術の問題とかに転換してきている。ところが、その状況が必ずしも正確にわからないということだと思います。相澤先生のお話を聞いていると、これはなかなか難しいと思いました。でも、そこをどうやって把握するかが次の手を打つ基盤になるので、そこをどういうふうに考えるかというのは非常に重要なんだと。
 それから、今回の事態は、大学だけではなくて、日本の今の知的資産、先ほど、クールジャパンで、日本のすべての知的資産に影響を受けていく可能性があるわけです。これがすごく重要で、リーマンショックでは需要が一遍に蒸発して物が売れなくなったわけですが、今回は需要は基本的には新興国を含めてある。ところが、物ができない。だから、結局、物を同じようにつくれるようになればまた元へ復するだろうと普通は思うんですが、それがそうでない可能性がある。
 なぜないかというと、例えば、東北大震災で、ここにそんなに重要な工場があったのかと思うぐらい、アメリカも欧州も自動車が止まってしまうとか、サプライチェーンが非常に複雑なので、なかなかわからないようですけれども、非常に貴重な知的資産があったことは間違いないわけです。特許なども調べましたけれども、余りよくわかりません。
 面白いのは、商標出願がこの地域でぐっと比率が伸びているというデータがあるんですけれども、やはり正確に把握できません。ただ、それが流出する危機にあると思われることと、それから、今の原発を含めた事態で、これは風評被害ではなくて、風評被害の外側に、日本の技術ブランドの毀損が起きつつある可能性があるなと思っていまして、そういうことを仮説というか、心配をしていて、調査をして対策を打っていくことが非常に必要になるんではないかと思います。
 産学連携でも懸念されることがおきていて、東北大学などで地域の中小企業と一緒にやっていた。これが今、被災してしまった。だけれども、産学連携を続けたいと言われたときに、大学も設備がないとか、いろんなことが同時に起きていて、今まで積み上げていた産学連携の話もある意味、危機を迎えているんだろうと思うんです。これをいろんな形で支援しないといけないんですけれども、今時点ではどうしていいかがわからない。そこを知恵を出して、できるだけ迅速にやっていかないと、繰り返しになりますけれども、今、日本の知的資産のある部分の毀損が現実に起きている可能性があるので、そこに対して迅速な施策を打っていくことが必要だと思います。項目として、これは大震災に即応する対策ではなくて、また別で、大震災という物理的な現象が及ぼしているクライシスを何とか未然に防いで、それをいい方向に持っていくという観点だと思います。
 以上です。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 大変重要な観点だと思います。ここは大震災に即応すると書いてありますが、即応すべきクライシスマネジメントだけではなくて、次の段階へのリスクマネジメントを行っておかなければいけないんではないかという御指摘だと思います。これは大変大事な問題だと思いますので、また議論をしたいのですが、私がしゃべり過ぎてしまうといけないので、また後で戻ってきたいと思います。皆さんの方から、いかがでしょうか。
 中島委員。

○中島委員
 今の渡部先生に関連するんですけれども、クールジャパンのお話も出ましたので。今、外国で、日本に対して必要以上の風評被害が出ている。日本回避ということです。アメリカなどでは、すしを食べるのも危ない、日本から来た人に近寄るなみたいな、かなり偏ったものもあります。それも、英語での情報が少ないことがかなりあると思います。CNNの断片的なニュースとか、ネットではいろんなことが出ますので、事実がわかっていない。東京の放射能も福島も同じだと思っている人が随分いるということです。我々は非常にいい日本語の資料があるわけですけれども、こういったものは外国の人はわからないということで、政府のサイトを正式に発表する、きちんと情報を伝えるというところが大事かなと。信頼できる情報ですね。16ページにも情報ということがありますけれども、これは知財に限ってということですが、もうちょっと広く、知財だけでなく、クールジャパンも含めての話ですけれども、それが必要かなと。今、どの程度まで実際実行されているのか、確実には調べてございませんけれども、多分、断片的なもので、総合的なものはないと認識しております。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 今の中島委員、先ほどの渡部委員、ともに、日本の産業のブランドそのものですから、これはコンテンツ委員会だけでの、コンテンツ上のブランドだけではなくて、我々の専門調査会でのブランドに関する問題もたくさん含んでいる、なのでこの辺は、クールジャパンという、いわゆるコンテンツ系だけではなくて、総合的に考えなければいけない状況だと思います。まさにそこの御指摘をいただいたと思います。
 大渕委員、お手を挙げていらっしゃいましたでしょうか。

○大渕委員
 まずは、この時期に震災関係の対応として、知的財産ないし特許関係でできるだけのことをやるというのは非常にタイムリーで、この点は大変結構だと思っております。
 拝見いたしますと、割と短期で即効性を持ってできるようなものと、短期的に実行しようとしても、法制度全体に関わる根本的な検討が必要となるものと、いろいろと混じっていますので、スピード感というか、今、実際に困っている方々がいらっしゃるわけですから、現実的なアプローチとして、できるところから少しずつやっていくということが重要ではないかと思います。どうしても、やるとなるとたくさんやりたくなってくるというのがよくあるのですが、余り大きなものにし過ぎると、なかなか進まないということになってしまうので、できるものから少しずつやっていくという、スピード感を持った現実的なアプローチが重要だと思います。
 それから、先ほど少し出ておりました著作権関係は、この専門調査会では直接対象にしておりませんけれども、約2〜3週間前に著作権関係の会議がありまして、確かそのときには、被災地での医療のために医学書のコピーをFAXで被災地の開業医にお送りするというのが著作権法上、複製権等々の問題になるのではないかということが問題になっていて、震災時には著作権も制限する特別立法を早急につくるべし、ないしは政令に委任して早くつくるべしというような、いろいろ意見が出ていました。
 こちらの専門調査会に直接は関係せず、間接的には関係するかと思いますが、そこで出ておりましたのは、我々、法律家の感覚からすると、著作権というのは著作者の許諾を得ずに勝手に使ってはならないということに尽きているわけでありまして、その会議の場でも、推定的承諾ですとか、あるいは黙示の許諾という話が出ていましたが、医学文献はほとんどお医者さんが書かれているので、緊急の際にいちいち著者たる医学者の方に許諾を取らなくても、緊急の医療上の必要性が本当にあれば使っていただくというのは、全く権利者の意思に合致している話でありますから、推定的承諾あるいは黙示の許諾ということで、別に特に法律などをつくらなくても、もともと著作権法の趣旨からして、当然に、著作権侵害が否定されるのでありまして、恐らく特許の場合にも、一定程度はこの議論が使える範囲は十分あるのではないかと思います。
 だから、その辺りは、立法でやろうとするアプローチの方が現実的なのか、それとも、特許権者の先ほどのような推定的承諾あるいは黙示の許諾でまかなえるような震災時の緊急の必要の認められる場合についてはそれでまかなう方が現実的ではないかということだと思います。このような場合であれば、おそらく発明者の真の意思に合致するものと思われます。今、現実に困っておられる方の問題が解消できるような、できれば明確化がいろいろな形で図れればいいのですけれども、それには即効性があるものと、法体系全体に関わるものとありますので、その辺をきちんと仕分けながら現実的なアプローチを取っていくのがいいのではないかと考えております。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 なるほど、推定的承諾、黙示の承諾ということだと思うのですけれども、今のことに関してですか。山本委員。

○山本委員
 相澤先生に質問があるのですが、個人的には賛成なのですけれども、すべての特許に対して、そういう風にというお考えなのですか。今は、国の資金でできてきた知的財産に関しては、省庁にもいろいろばらつきはあるかもしれませんが、基本的にはそのような話は入っています。アメリカも、たしか私の記憶だと、国の原資でできた発明にはそういうものはあるものの、全部ではないのではないかと思っていて、それをすべてのものにするということなのでしょうかということと、その際に、裁定実施権、実際は全然使われていないかもしれませんが、そういう考え方で行うというお考えなのか、そうではなくて、ここで決めてしまおうかということなのか。
 あと、著作権に関しては、フェアユースという考え方の中でというおさまり方はできないのかどうか、お考えをもう少しお聞かせいただければと思います。

○相澤(英)委員
 アメリカ合衆国は、政府による使用の場合については補償金請求権しかありません。この考え方を広げて、期間、地域等を限って特許権を使用した場合には、差止請求権はなく、補償金請求だけとすることです。裁定になると裁定の手続を取らなければいけないので、時間が必要となるので、後で補償を払うということです。
 著作権については、理科系の文献については、出版社が持っている、あるいは海外の出版社が持っているものも結構あります。これらについて、合意を得ることは容易ではないと思います。FAXに限らず、インターネットを含む様々な方法で、必要な情報を政府で伝達することを著作権法が妨げないようにするということです。いろいろ議論をしていると間に合わないので、迅速な立法が必要だと思います。
 フェアユースについては、解釈論として認めるべきであると思いますが、認める説は少数説なので、罰規定もありますから、委縮することのないようにする必要があると思います。こういう状況ですので、一定期間については、議論をする前にやるべきだと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 よろしいですか。

○山本委員
 よくわかりました。ありがとうございました。

○妹尾会長
 今のことに関しては、大渕委員と一見違いそうですけれども、震災というときにどういうふうに対応するかというアプローチはきちっと議論すべきだということだと思いますし、その議論も迅速な方が良いということでは同一であると思います。
 この辺は立法その他に関係するところなので、事務局の方でも、芝田次長、お願いします。

○芝田次長
 著作権につきましては、先ほど大渕先生からもございましたように、電子書籍の議論をしている懇談会の席上でございましたけれども、公共図書館の協議会の方から、図書館が所蔵している震災関連のいろいろな書籍について、FAXで送ったり、あるいは電子的に送ったりするというのを著作権者側に許諾してほしいという話が出まして、たまたま席上に著作権者サイドの方もおられまして、直ちに、それはもちろんですということで、それ以外の著作権関係の団体の方々にもその動きが即座に広がりまして、今は事実上、全く問題なくなっているという状況でございます。
 あと、別の話でございますが、今回の震災について、特に情報発信が十分でないのではないかという御意見がございまして、これは明日、コンテンツ専門調査会でも御議論いただきますけれども、クールジャパンと言いましても、我々、今、考え方を整理しておりますのは、日本の復興の姿そのものがクールジャパン、日本から発信していくべき価値があるものだろうというスタンスを取ってはどうかという議論をしております。これはまた明日御議論いただきますけれども、そういう観点からすると、別に知財とかコンテンツとかに限ったものではなくて、もっと幅広くクールジャパンの一環として情報発信していくことが大勢ではなかろうか。そんな観点からどんなことができるかを少し議論していただこうと思っております。
 ただ、外務省の名誉のために申し上げておきますと、海外への発信ということにつきましては、既に毎日、外務省の本省で在京の大使館の方々に集まっていただいてブリーフィングをやっておりますし、もちろん、ホームページ上でもいろいろ発信しておりますし、あるいは海外のメディアにも随分発信するといったことで、かなりの努力はされているということは一言申し上げさせていただきたいと思います。

○妹尾会長
 どうぞ。

○近藤局長
 今、芝田次長からも説明してもらいましたが、情報発信をしっかりやれというのは本当にそうだと思うものの、正直言うと、なかなか難しくて、この資料も我々で作ったんです。内閣のどこかのホームページを見ると、これが全部載っているのではなくて、ありとあらゆるホームページを見ながら作ったのがこれなんです。したがって、この資料は残念ながら内閣と書いてありません。御指摘のことは私も相当意識していまして、もうちょっと情報を分かりやすく話をしてあげないといけないなという気が、正直言って、しているところであります。関係方面にもそんな働きかけを引き続きしたいと思います。
 気持ちは全く一緒なので、これ以上言いませんが、例えば、政府が特許を自由に使えるようにして、何かいろいろやったらいいのではないかというお気持ちもよくわかるんですけれども、期限を切って、地域を限って法律でやるということに関しては、法律で書いてあるがゆえに動けなくなるということを多く経験しているものですから、私は正直言って、地域を限って、期間を限ってやるなどというのは実効的でないと思います。
 例えば、工事をしている最中に期限が来たらどうするのか、今までやりかけだったものはどうするのか、それに付加するようなものが出てきたらどうするのか、それを一個一個やっていたら切りがありません。
 今回の著作権などでもそうであるように、現実問題として、ちょっと待て、それは自分の権利の侵害だから、そこの公共事業を全部止めろなどいう人は、今の時点で余りいないと思いますし、法律、法律とおっしゃるほど立派な立法ができるとは私は思いません。こういう御希望がある、ないしはこういう御意見があることは関係方面にも伝えますし、先ほど相澤益男先生から発言のあった、いろいろな技術開発を含めた大学の研究などというところも、お気持ちはよくわかりますが、なかなか難しいところでありますので、現実問題、一律にはなかなかできません。御指摘はいちいち、気持ちはよく分かるりますが、できることとできないことが両方ありそうな気がして、我々としても少し頭の整理をして、担当のセクションに、こんな御要望もありますよということをお伝えをすることをお約束したいと、こんなふうに思います。

○妹尾会長
 よろしいですか。
 高柳委員。

○高柳委員
 今までの御議論、御指摘あったところは、本当に緊急のものとか、適切に盛り込むのはよろしいと思うんですけれども、私は、ちょっと抽象的な考えなんですけれども、知的財産推進計画は震災前を前提にしたものなんで、今度の大震災で日本のビジネスモデルというんですか、我々産業界も真剣に、今までとは違う、もっともっとグローバル展開であったり、かといって日本が空洞化しないようにとか、いろんなことを考え始めております。
 そういうときに、震災前のベースに基づいた戦略を、緊急避難的なものとか、いろんなものを盛り込みながらというのだけでいいんだろうかなと。これから震災復興のビジョンが出されると思いますけれども、そういうことも含めた、本当に今後の、5年先、10年先、30年先の日本の復興、あるいは振興、そういうものを見据えたときに、今の計画でも、もっとめり張りをつけて、例えば、イノベーションであれば、もっともっとイノベーションハブを日本に持ってくるような仕組み、あるいは我々が海外に出ていったときには、どういうふうに保護、あるいはグローバルスタンダードが適用されるのかという点を、もっとめり張りをつけてやるんだぞというようなことも触れていただければいいのかなと、更に今後の2012とか、そういうものにつながるようにですね。今、どういうふうなビジョンにするかというのは必ずしも見えておりませんので、現状はある程度抽象的になってもいいと思うんですけれども、そういう言及をしていただいた方がいいのかなと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 ちなみに、先ほどの情報発信の件ですけれども、実は私はコンピュータ利用教育学会の会長をやっていまして、今回、災害の数日後に会長メッセージを学会に出しました。私は会長として2つ、衝撃的にやられたと思いました。
 1つは何かというと、今回、大メディア、あるいはオールドメディア、それから、オールドコミュニケーションメディアがほとんど動かなかったんです。電話に頼っている方々は、3・11の後はほとんど身動きが取れなかった。ところが、ツイッターだとか、SNS関係をやっている方々は動くことができた。すなわち、メディアリテラシーとメディアのオペレーショナリティの重要性が、今回のようなリスクマネジメント、クライシスマネジメントのときに重要だったことはないということがわかった。我々、ネットワークだとか、コミュニケーションメディアの教育をやっている人間から言うと、ついつい先走ったことをやってしまいがちです。しかし、生活の安全だとかいうことについてのコンピュータ利用教育を本当にしていたんだろうか。その問を突きつけられた感じがいたしました。
 先ほどの話も、外務省は頑張ってはいらっしゃるし、各大メディアも頑張ってはいらっしゃるんですけれども、実際の世界のブランドに影響を及ぼすのは、実はもうSNSの関係だということになる。そうすると、SNSみたいなものを非常に重視して使わないといけないので、一方で、外務省が大使を集めることは重要なことですが、いわゆるミニコミだとか、SNSのネットワークをいかに活用するかというのが日本のブランディングにとって極めて重要なことだと、それが分かってきた状況ですね。その辺を配慮しなくてはいけない。
 ついでに申し上げると、もう一つの衝撃は何だったかというと、今、震災地の学校が100、200、全然動きが取れないわけです。その人たちにeラーニングで東京の学校で一緒に授業に参加してもらうということは、技術的にはやろうと思えばできるんです。けれども、それが動かないということは何なんだろうと。我々、実は、そういうところの大反省をしているわけです。参考までに、情報発信という意味では、この辺も考えなければいけないし、復興という意味では、研究、教育、学びということで言えば、そういうところに我々は手をつけるべきだったということで、反省をしている最中であります。
 ほかに、全体で何か。相澤委員、お願いします。

○相澤(益)委員
 高柳委員が指摘されたことは大変重要なことだと思います。参考まででございますけれども、科学技術基本計画の第4期は3月末までに閣議決定される予定のところまでまとめてありました。しかし、今回の大震災は、先ほど指摘されたような、新たなステージに入ったと解釈せざるを得ない。そこで、この期間、基本計画がない状態にはあるんですが、ここから3か月ぐらいの範囲で何とか新しいバージョンにして、それに対応するということをいたしました。
 現実にそこをきちっとやらないと、先ほど来出てきた、いろいろな研究状況が非常に厳しくなっているというところを補正予算で対応することもなかなか難しいんです。そういうようなこともありまして、目下検討をしております。大震災対応をどういう柱立てでやらなければいけないかということが少なくともわかるように明確にしておく。しかも、また地震が起こるという意味ではなくて、日本のいろいろな計画は、一度決めてしまうと、なかなか柔軟な対応ができない。ですから、これらのこともあり、相当柔軟に、フレームワークであろうと見直していく、これが世界の早い変化に対応できることではなかろうかという位置づけになっておりまして、検討を進めております。
 それから、先ほどのいろいろな支援のことなんですが、そこについて、妹尾会長が指摘されたように、やはり今、この時代は、官から民へ、あるいは官から公的な機関にという構造だけではなく、横方向のネットワークが大変な力を持ってきているわけです。そういう意味では、実は、研究設備、施設等に大きなダメージを受けて、大変困っている状況がある。これを、日本だけではなく、国際的に、いろいろなネットワークを通じて、お互いに連携しながら支援をしていく。こういうことが現実にどんどん進んでいます。
 例えば、スーパーコンピュータ。これから夏場にかけて、電力制限のために、今までのような稼働状況に置けない。これに対して、まず、イギリスが手を挙げて協力をしてくれて、数%ぐらいのタイムシェアで日本人研究者に供与してくれる。それから、今日、アメリカが、やはりそういう態勢でスパコンの利用についての協力を申し出てくれている。それから、国内でも、ネットワークがどんどんできております。こういうことはむしろいいことで、今までですと、政府から、破損したものをすぐ補給してくれという一直線だけなんですけれども、お互いにそういうことをやりながら、いろいろなことが進んでいるということも申し添えておきたいと思います。

○妹尾会長
 どうもありがとうございます。
 安藤さん。

○安藤参事官
 先ほどの高柳委員の御指摘は、非常に大事なところで、この大震災を踏まえて、日本全体のビジネスモデルをどう変えていくのかと、その絵姿はまだ誰にも見えていないところはございます。去年まで相澤益男先生の下で、第4期科学技術基本計画の下書きをしておりましたので、申し上げ方が難しいのですが、ビジネスモデル変革の根っこにある部分については、実は、この骨子の中で相当盛り込ませていただいております。オープン、グローバル、フラットな環境になり、クラウドその他のITの進化もある中で、大きく社会・経済やビジネスの在り方が変わってきている、これにどう知財が対応していくのかが問われています。
 先ほど渡部先生から御指摘がございましたが、日本のサプライチェーンは本当に精緻化されていて、無駄のないスリムでも迅速な形で世界ともつながっていますので、1か所が抜けると、とんでもないところに影響が出てしまいます。
 一方で、精緻化されたサプライチェーン、磨き上げられたサプライチェーンをどう次世代のものにバージョンアップしていくのかが重要となります。エネルギーの面で省エネルギー型、あるいは資源の面でも省資源型というものづくりに向かって進化していくことが必要でしょうし、レアメタルのリスクのような話もサプライチェーンの後ろに隠れているかもしれません。この辺りでは、イノベーションが間違いなく大事になってまいります。
 また、リスクに対しては、如何にロバストなサプライチェーンや、ビジネスモデルをつくっていくかということも大切です。クライシス・マネジメントに大いに活用できるクラウドをどう使っていくのかということや、それに対する法的な対応を含めて環境整備をしていくことも大事です。メリハリをしっかり書き込めという点は御指摘のとおりですので、御提言を踏まえた形で、「知財計画2011」を練ってまいります。
 この計画を何時までもまとめなくてもいいわけではありません。近藤局長からも冒頭に御紹介がありましたように、総理から、「こういう時期だからこそ知財が大事だ」というお話をいただいております。こういう時期だからこそ知財を大切にしていくための基盤となる知財計画をきっちり作って、そして、みんなが手を取り合いながら一緒に進めていくということも大事かと思います。他部局のことは言い難いですが、ITその他の部局でも、どういうふうに進めていこうかということで、みんな悩んでおりますし、各府省も震災対応に相当人手を取られていますので、そういう意味でも苦労していますが、我々知財部局では、きちっと、しっかりとした計画をつくっていくことが大事だと思っております。御指導いただければと存じます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、私、もう一回発言をさせていただこうと思います。今のサプライチェーンの話について、知財上、かなり大きな動きが出そうな予感がしています。これは企業関係の皆さんにも伺いたいんですけれども、何かというと、今回、例えば、ペットボトルのキャップの形状が違うだけで全然立ち行かなくなったということがあります。これが象徴しているように、今後、標準品の使用についての圧力がかなり進んでいくだろうというふうに見ています。調達ということから考えて、サプライチェーンはかなり違って動いてくるだろう。これは渡部委員の御指摘のとおりだと思います。1つは申し上げたように、部品の標準化の関係が非常に強まってきます。
 もう一つは、独自技術を持ってインテグラルにつくっていくようなものの差異化をしても、1社購買にならざるを得なくなるから、それを複数社購買したいよという圧力が今度はクライアント側から入ってくるわけです。そうすると、いやいや、それはできませんよとは言えなくなる。あるいは、多分、ライセンスしろよという話は出てくるだろう。そうすると、ライセンスを強要されるということについての知財マネジメントがかなり動いてくる。また、立地上、複数生産拠点を持てという話になってくる。そのときに拠点がうまく整備されなければ、またまた海外へ生産拠点が流出するという動きが出てくるかと。
 このように、具体的な話としては、標準化とライセンスを中心に知財マネジメントがかなり変容してくるんではないかという予想を今のところは私は立てている。これは間違っているかもしれません。だけれども、少なくとも3・11以降、私はいろんな企業の方々と議論をしていく中で、この動きはあるなというふうに今、見ています。
 何が言いたいかというと、16〜17ページにかけて、赤字で「即応する対策を迅速に講じる。」という、この「即応」です。迅速に講じることは何につけても必要なんですが、即応ではなくて、先ほど渡部委員が奇しくも言ってくださったように、今後に出てくることを予想しながら、それの事前対処をすることを考えなければいけない。
 その意味では、最後の17ページの「(4)大震災の教訓を踏まえた国際標準の見直し」です。これは国際標準だけではなくて、知財マネジメント全体にどんな影響を及ぼすかということを予測して準備にかかるということが必要なんではないかと思います。その意味では、(4)を少し大きく取り上げて、即応しなければいけない話と、次への予測をする話を少し大きくとらえたらいかがかなと、こういうふうに思います。
 これについて、ここですぐ何かおっしゃらなくてはいけないという話ではなくて、我々、専門調査会としては、次の準備をしておこうということを少し織り込んではいかがかと思います。これは先ほどのサプライチェーンという話だとか、産業モデルの変容だとか、そういうことに対処していく。知財政策はどうも後手後手に回るという御指摘が今まで多かったので、この震災に対応することも含めて、先手を打つというところへ少し向かっていきたいなという感じがあります。
 これが私の意見でございますけれども、ほかに何か御意見のある方はいらっしゃいますか。
 渡部委員、お願いします。

○渡部委員
 先ほど相澤先生が言われたのは、総合科学技術会議としては、研究開発力の基礎みたいなものについてのきちっとした対応策をまとめた段階で出されるということですか。

○相澤(益)委員
 科学技術基本計画は基本計画として策定に入りますので、それがこの3か月ぐらいのところでまとまります。ただ、実は、来年度の概算要求のプロセスに入ってくるわけです。そのことに関しては、基本計画を見据えつつも、もっと早くからアクションを取らなければいけません。それについては、資源配分に関する基本的な方針を別途出して、来年度はこういうふうに行きますよということを出していくというところであります。

○渡部委員
 その話をされて、こちらの知財推進計画の方はこうすべきだということを言われようとしたのではない。

○相澤(益)委員
 基本計画でもそういうことをやっておりますということで、その視点は高柳委員が言われたことと全く同じであるのでというところにとどめておりまして、こうすべき、ああすべきだということまでは申しませんでした。

○渡部委員
 今は、それは別の動きとして説明をされているという文脈なんですか。

○妹尾会長
 極めて微妙な話が行き交っています。これは安藤さんに引き取ってもらうしかないですね。

○渡部委員
 一緒になるかどうかで全然違いますね。

○妹尾会長
 そうですね。

○安藤参事官
 なかなか難しい話もございますが、次の年度、来年4月からの政策を準備しようとしますと、予算要求が当然必要になります。法律その他も準備をし始めなければいけない。こうなりますと、各府省の予算要求は、夏にはまとめた上で、財務省にも提出をしていくというのが通常の流れです。もちろんこの流れが今後変わってしまうと、大前提がかわってまいります。ただ、通常の流れを前提にしますと、政府全体で、どういう方針でこの知財関係の政策を進めていくのかということについては、5月、6月ぐらいでまとめておく方がよいというのは共通の理解です。それより遅れますと、予算の流れがどうなるかといったところにもよりますし、現時点では不確定な要素がいっぱいございます。他方で、できるところはしっかりと取り組んでいく、準備を進めていく、これが我々として大事ではないかなと、事務局としては考えています。
 冒頭、近藤局長からもお話がありましたように、今回、本部会合が持ち回りだったこともあり総理、官房長官に個別にお時間をいただいてじっくり御説明させていただくこともできました。これは2つの専門調査会で、震災前の3月上旬までにきっちりと議論を済ませていただいていたので、そういう段取りが組めたわけです。このように、引き続き、事務的にはしっかりと取り組んでいきたいということです。それに向けて、是非御指導いただきたいと存じます。不確定要素は、今後、いろんなことが起きてまいりますでしょうから、必要であればそれに対応して、計画の点検も必要になってくるかもしれません。このように事務局としては考えております。

○近藤局長
 例えば、成長戦略もこれからもう一回見直しましょうと新聞に書いてあります。それから、総合科学技術会議も今から3か月ぐらい考えてということですけれども、3か月たつと概算要求には厳しいタイミングです。概算要求というのは8月末にすることになっておりますが、8月末に概算要求するためには7月末にはもう決まっていないと、物理的に数字ができ上がらないんです。それを考えると、その前に1〜2か月は要るので、現実問題、なかなか難しい。
 全部そろってからなどと言っているとなかなかできなくて、例えば、去年も同じころに成長戦略で重点成長分野をどこにするかという議論をしたときに、私たちの国際標準化の7分野を決めたときも、成長戦略でどの分野を進めるか決めて、その国際標準化をおれたちがやるんだろうと私は強く主張して、どの分野を重点分野にするのか、成長戦略グループが決めてもらいたいと、延々と言ったんですけれども、結局、妹尾先生の御指導の下で、分野を我々が決めて、我々が作っていった。
 恐らく、いろんなことを待っていると同じことが起こるような気がするので、私は、こういう状況の中ではありますが、3月末に持ち回りでこの本部を開きました。そういう中でも、私たちのところは持ち回りで、持ち回りは本当はむしろ手間が大変で、全閣僚一人一人に全部決裁もらって回るわけですから、結構大変ですけれども、それだけやってでも通したというのは、どんなことがあってもやるべきことはやると。今、おっしゃったような、知財戦略で見直すべきものはもちろん見直せばよくて、それから、もっとこういうこともやるべきだということももちろんやればよいのですが、今、やるべきことがはっきりしていることははっきりと書いてしまう、決めてしまう、こういう心積もりで私は今、やっているところであります。
 全体の流れでどんな指示が来るかというのは、正直言って、まだよく分かりません。来るかもしれないし、来ない確率の方が高いかもしれませんが、どこかの段階では一回まとめていかないと、延々と決まらないのは困るので、先ほどの高柳委員のお話は、お気持ちはよく分かるし、私も同じ気持ちはありますが、知財政策をしばらくの間止めて様子を見ようではないかという積もりはありません。
 以上であります。

○妹尾会長
 渡部委員。

○渡部委員
 逆に、知財基本法で定められたら、少なくとも毎年1回と書いてあるんで、早くてもいいわけですね。その次のステップで早くも次の対策がまとまったら、もっと早く、来年の今ではなくて、早く次を更新していくということでもいいわけです。

○近藤局長
 おっしゃるとおりです。

○渡部委員
 というような、考えを大きくあれしないと、それこそ。

○近藤局長
 先ほど来「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項を中心に御議論いただいていますが、最終的に「知的財産推進計画2011」の形になるベースは、参考資料5にある「知的財産推進計画2011」の骨子です。この骨子の中にもう少し震災のことも含めて書き込み、さらには、今、渡部先生もおっしゃったような、震災後の状況に応じて必要な見直しはさっさとやりますよというような趣旨も盛り込んで、各論も書き込んだような形でこれをまとめてみたいと私は思っています。
 最終的に「知的財産推進計画2011」の骨子をまとめるまでには、まだ1か月ちょっとあると思っているものですから、まだ原案を作っておりませんが、今、そんなことを考え始めておりまして、必要になれば、秋口にでも、例えば、震災関連を中心にした前倒しのものもまとめることはあり得べしと、そのような趣旨が読めるような文章も入れ、頭の中もそう整理をしながら、もう1周先のところもにらみながらスタートを切っていくと、こんな積もりであります。

○妹尾会長
 相澤委員、どうぞ。

○相澤(英)委員
 報告書のことですが、地震のことが後ろに来ていて、後でくっつけたような感じがするので、ここの書き方は、会長も含めてよく考えていただいた方がよろしいと思います。こういう状況で、この政策自体が大事だよということが明確になるのではないかと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 後でつけ足したのは事実ですけれども、鼎の軽重としてはこちらだよと、こういうことですね。わかりました。おっしゃるとおりだと思います。
 それでは、時間も大分来ましたけれども、資料1はよろしいですか。どうしてもという御意見はありますか。どうぞ。

○山本委員
 参考資料4のクールジャパンの話に関係するのですけれども、今までのこの会議の議論は、クールジャパンというのはどちらかというとコンテンツ寄りの話で、アニメーターとか、ファッションだとかを海外に広めるという話ですけれども、震災の影響ということを考えるのであれば、日本の技術力に対する海外の見方も多少なりとも、さっきの風評被害も含めてではありますが、影響はあると思います。それで言えば、経済産業省の中にクールジャパン室というのができているという話だと思いますが、クールジャパンでPRすべきものに、日本の技術力だとか、そういったものを検討に入れるということがあってもよいのではないかと思います。

○近藤局長
 その積もりです。実は、震災の前からその積もりであります。

○妹尾会長
 技術力そのものも重要なんですけれども、今回問われているのは、サプライチェーンや何かが、技術はあるけれども、供給できないという問題だとか。

○山本委員
 そこはまた別の話だと思うんです。

○妹尾会長
 それも実はブランド力として構成するわけですね。良いものをつくるんだけれども、全然供給してくれないよねというネガティブブランディングになってはいけない。そういうところも恐らく芝田次長の方で考えてくださっていると思いますので、是非よろしくお願いいたします。
 クールジャパンというのは、絶えず日本人はすごいねという称賛で、なるほど、日本人はクールなやつらだと、こういうふうに思われているわけです。一方で、福島委員を前に申し上げるのはいかがかとは思いますが、福島という名前が大変な影響を被っています。この辺もブランドとして重要なことなので、考えていかないといけないと思います。
 出雲委員、お願いします。

○出雲委員
 済みません、せっかくの機会ですので、2つだけ、私から、極めて素朴なお願いがございまして、1つ目は、16ページ目の(1)の2ポツで、被災地域のワンストップ相談窓口にさまざまな中小企業の方から、事業の継続であったり、もしかしたら廃業の相談等があろうかと思いますけれども、その際に、適切に、例えば、東北大学の周辺は金属の微細加工ですとか、材料化学のベンチャー企業がたくさんございますし、今回被害の大きかった釜石の海洋バイオ研究所の周りには大変貴重な微生物をたくさん預かっている中小企業等もありまして、そういう方が被災地域の相談に来られた際に、(2)の部分にある救済措置について、こういうメニューがあるから、あきらめないで事業継続する方法があるし、実際にそういう道を選んだ中小企業者もいるよという話を、知的財産の震災に関わる専用相談窓口ではなくて、被災地域のワンストップ相談窓口に中小企業者から連絡、相談があったときに、そういった成功事例なり、緊急措置の活用事例について、ちゃんと御紹介いただけるように御配慮いただきたいというのが1点でございます。
 それと、もう一点が、その際に、これは可能であれば御検討いただきたいという趣旨でございますけれども、10ページ目の3ポツと4ポツで、それぞれ新たな出願支援策の創設と、特許関係料金の減免制度の拡充と記載がございます。特に4つ目のポツの2行目で、対象となる中小企業の範囲の大幅な見直しや申請手続の見直しに向けて必要な法改正を行いと書かれておりますけれども、この分野で相談があった中小企業がこの大幅な見直しの範囲の中にしっかり含まれていて、減免制度の利用ができるんだということを明示的に記載があれば、実際に減免制度を拡充した際の利用率であったり、利用者の増加にもつながるんではないかと思っております。
 1点目は、震災に関する専用相談窓口において、中小企業者からの相談があったときに、手続上の緊急救済措置について本当にしっかり御案内いただきたいという点と、御案内いただく際に、減免制度の大幅な拡充の範囲の中に入っているということをお示しいただけると、被災地で事業継続について悩んでいるベンチャーや中小企業の経営者の方が、せっかくいい特許の卵があるんだから頑張ってみようと思う際、応援のメッセージにもなろうかと思いますので、御検討いただければ幸いでございます。
 以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 安藤さん。

○安藤参事官
 非常に大事な御指摘をありがとうございます。
 中小企業の関係では、震災直後に激甚災害法の対象化という対策が直ぐに取られております。低利融資や債務保証の別枠、更にはきめ細かな相談をやっていくということで、中小企業庁が中心になりながら、全府省と連携しながら対策を進めています。そういう部分も、実は、我々事務局としては、クールジャパンに関わるだろうという心積もりがありましたので、明日の専門調査会で御議論いただくような腹積もりでおりました。こうした部分もしっかり、この知財計画との連動を含めて考えていきたいと思います。
 それから、2点目の御提案も大事な御指摘だと思います。直ちにどこまでできるということをお答えできる状況にありませんが、場合によりましたら、中小企業庁や特許庁を含めて、この専門調査会に御報告差し上げることを事務局の中でも相談してみたいと思います。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 それでは、時間も押していますが、よろしゅうございますか。
 それでは、最後に全体を通してということなんですが、今日議論があった関連ないしは前回からの問題、課題で、皆さんの方から御議論があればと思います。1つ、私の方から、福島委員からの俗に言う爆弾発言の後、どういうふうになったかというのを、皆さんに共通の理解ということで経過報告をしていただいた方が良いかなと思っています。国際特許出願の国際調査に関してご指摘をいただいていたのですけれども、これについては事務局から何か対応状況がありますか。

○高原参事官
 ありがとうございます。
 前回の専門調査会におきまして、特許庁でもしっかりとした分析をということを申し上げておりました。残念ながら、本日、結果について御報告できるという状況ではございませんが、福島委員からの国際調査の利用性を高めてほしいという御趣旨については、例えば、各国における分類の問題でありますとか、あるいはサーチインフラの相違の問題でありますとか、そういうところも含めてしっかり検討しろと、こういうことではないかと考えております。そういう意味で、こうした課題の解決という観点も含めて、特許庁としっかり連携をしながら対応をしてまいりたいと考えているところでございます。

○妹尾会長
 ということですが、福島委員、何かありますか。

○福島委員
 よろしくお願いします。

○妹尾会長
 それだけでよろしいですか。

○福島委員
 はい、十分です。

○妹尾会長
 引き続き特許庁の方で追いかけてはくださっているわけですね。これは結論が出る話ではないんですけれども、ある段階で、こういう状況ですという御報告はいただけると思って良いですか。

○近藤局長
 この間の報告書について、特許庁を含めてデータを、サンプル数をもっと増やして取ってみると、必ずしもあの数字は正しくなさそうだという感じも分かっております。ただ、我々の取っているデータも必ずしも十分ではないので、もう少し突っ込んで分析をして、改めて御報告をしようと。でも、言われているほど、日本の特許庁の調査がお粗末なものではないのではないかと思っております。これはいずれにしても、もう少し、数字を含めて、御説明できる準備をしようと思っています。まだサンプリングをしながら取っているデータなものですから、参事官は若干慎重に説明をしましたけれども、恐らくそういう数字をお示しできるのではないかと思いますので、もう少しお待ちをいただいて御報告をさせていただくと、こんな積もりでございます。

○妹尾会長
 ありがとうございます。
 あの話は、n数が少ないことは問題ではあるのですけれども、そもそもnを取ること自体が極めて難しい分野の話ですから、この検証を慎重にされるのは当然だと思います。ただ、どんな具合かということの議論はまたしたいと思います。
 ほかに、全体を通して、皆さんの方から何かございますか。よろしいですか。今日、御発言のなかった委員の先生方もよろしいですか。
 それでは、貴重な意見ありがとうございました。いろいろ御指摘ありました。東日本大震災、大変なことでありますけれども、これを契機に、逆にこれを機会としてとらえて、一歩、我々の知財政策、あるいは標準政策が産業競争力に資するという形を進めていきたいと思いますので、また皆さんの御協力をいただきたいと思います。もし御意見がおありなら、あるいは、後で、そういえばあれを言っておくべきだったということがありましたら、私ないしは事務局にお寄せいただければと思います。
 それでは、予定の時間よりも珍しく早めになっておりますけれども、本日の会合をここで閉会したいと思います。
 事務局から何か連絡事項はありますか。

○高原参事官
 本日も御審議ありがとうございました。
 次回、第10回でございますが、5月12日木曜日午後2時から開催させていただく予定でございます。次回会合では、今回の御議論も踏まえて、「知的財産推進計画2011」に向けた提言の取りまとめを予定してございます。どうぞよろしくお願いをいたします。事務局からは以上でございます。

○妹尾会長
 ありがとうございました。
 それでは、ちょっと早いですけれども、今日はこれで終えたいと思います。どうもありがとうございました。