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知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第5回)
○近藤局長 おはようございます。 妹尾会長が遅れられるようなので、冒頭のところの資料の確認とか出席、欠席の話等々は、私のほうで会長にかわりまして最初スタートさせていただきたいと思います。 ただいまから知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会の会合を開催いたします。本日もご多忙のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。心から御礼を申し上げます。 本日は、まず「知財推進計画2011」の策定に向けた課題の一つでございます中小企業等の支援策に関連をいたしまして、先進的な取り組みをされている地方自治体の有識者にヒアリングを実施した上で議論を進めたいと考えているところでございます。その後、その他の課題も含めまして、「知的財産推進計画2011」に向けた議論を行いたいと、このように考えているところでございます。 本日は、相澤益男委員、迫本委員、西山委員、野元委員からのご欠席のご連絡をいただいております。知的財産戦略本部からは三尾本部員にご出席をいただいております。きょうは早朝からまた皆様にご出席をいただいたことを改めて御礼を申し上げます。 きょう、お話をしていただく参考人として、財団法人東京都中小企業振興公社に設置されております東京都知的財産総合センターの所長でいらっしゃいます生島様にお越しをいただいております。よろしくお願いいたします。 続けて一言ごあいさつを申し上げます。 きょう、第二次菅改造内閣が発足をしてから最初の会合でございまして、実は知財担当の大臣が玄葉さんになりまして、この民主党内閣になって4人目の大臣であります。それから、副大臣も平野さんという方でありまして、この方で3人目。それから政務官も3人目ということであります。我々は我々としてやることをやるということで、ぜひこれまでの方向どおり、事務方としてしっかりお支えをしながらやらせていただこうと思っている次第でございます。 きょうは阿久津政務官から出たいという話をいただいていたんですけれども、ご承知のように昨日から国会の論戦が始まりましてちょっと出席できませんでしたので、皆様方にぜひよろしくお伝えくださいということでございます。新たな体制のもとでもしっかりとやっていきたいと思っているところでございます。 それから、知的財産に関してちょっと一言だけ最近のトピックを申し上げますと、皆さん見ておられないとは思いますが、大学センター試験に知的財産に関する問題が出題されました。これがなかなか難しい問題でありまして、一瞬この問題を見て、間違えると首になるんじゃないかと思った次第でございます。知的財産なんていう言葉が出てきて、非常に私はうれしかったわけでございます。これも皆様のおかげだと心から感謝をしているわけでございます。 これから3月末までには取りまとめたいということでございますので、実質的には、いかがでしょうか、あと1カ月ちょっとには大体めどをつけていかないと3月末にまとまりません。相当ピッチを上げて集中的に議論をさせていただいくということになります。いつも同じことを申し上げているんですが、本当に皆さんにご負担をおかけしていることを改めておわびをしながら、またもう一頑張りお願いをすると。感謝とお願いと両方一緒にいたしますが、よろしくお願いいたしたいと思います。 それでは、今、妹尾先生が戻られましたので、バトンタッチをしますが、その前にまず事務局から本日の資料の確認をさせていただいた後、会長にマイクを戻したいと思います。よろしくお願いします。 ○原参事官 それでは、資料の確認をさせていただきます。 議事次第の下でございますけれども、まず資料1は、この次の議題でご説明いただきます「東京都知的財産総合センター中小企業に対する知財支援について」というタイトルの文書でございます。それから、資料2でございますが、「知的財産戦略に関する論点整理」というものでございまして、前回の調査会に出したものと内容的には大きく変わってございません。それから、資料3、「知的財産戦略の方向性」ということでございます。それから、資料4でございますけれども、相澤英孝委員から資料をご提出いただいております。最後、資料5でございますが、今後のスケジュールについて配付をさせていただいております。 参考資料は1つございます。参考資料1、前回の調査会において委員からいただきました主な意見をまとめたものでございます。 それから、その下でございますけれども、資料番号はございませんけれども、「知財推進計画2011年」の策定に向けた意見募集というものを配付させていただいております。こちらについて簡単にご紹介申し上げますと、現在、知財戦略本部では「知財計画2011」の策定に当たり、広く国民の皆様からご意見を募集しておりまして、この点をご案内申し上げたいということでございます。募集は今月の17日から開始しておりますが、2月7日までとさせていただいております。お手元の資料の内容は知財本部のホームページでもご紹介をしているところでございますけれども、本日傍聴にご来場の皆様も含めまして、幅広くご意見を賜ればというふうに考えてございます。ご検討の上、ご意見をお寄せいただければ幸いでございます。 最後、メーンテーブルのみで恐縮でございますけれども、生島様から本日のプレゼンの参考にということで資料を2種類いただいてございます。「東京都知財総合センター 事業案内」と、「成果事例集」というタイトルの冊子でございます。 配付資料は以上でございます。 ○妹尾会長 それでは、資料をご確認いただいて、よろしいでしょうか。始めたいと思います。ありがとうございました。 それでは、済みません、ちょっと所用がありまして遅れて来ましたけれども、バトンタッチして私が今から司会をさせていただきたいと思います。 では、最初の項目でございます。中小企業支援について有識者からのヒアリングを進め、そして皆さんとご議論したいと思います。 参考人として生島さんにお越しいただいています。お忙しい中、どうもありがとうございます。 それでは、ご説明をよろしくお願いいたします。 ○生島参考人 どうも皆さん、おはようございます。東京都知的財産総合センターの所長の生島でございます。本日はこのような会議に出席させていただきまして、ありがとうございます。参考人という立場で、私、こういう席上に立つのは初めてなものでございますから、どうぞお手やわらかによろしくお願いいたします。 ○妹尾会長 大丈夫です。安心してご説明ください。 ○生島参考人 では、ちょっとお時間も限られていると思いますので、早速資料に基づきまして説明をさせていただきます。 お手元の資料の2ページ目でございます。我々のセンターの設立の経緯を簡単に書いております。ご承知のとおり2002年に政府が知的財産立国を宣言した。それから、同年に基本法が成立、翌年に施行されたました。その6条に地方公共団体の責務ということで、地方公共団体の地区の特性を生かした自主的な施策を策定、実施する責務を有するとあります。この6条の精神に基づきまして、東京都はいち早くといいますか、施行された発明の日、4月18日にセンターを設立したました。東京都が設立し、東京都中小企業振興公社が運営をしております。我々の理念と申しますのは、中小企業の知的財産活用のための東京戦略というのをつくりまして、これは東京都産業労働局のホームページで今でも見られます。私から言うのもなんですが、充実した戦略を策定し、着々と実施をしてまいったという状況でございます。 次のページへ行きまして、我々の位置づけでございますけれども、目的は、そこに書いたとおり知財の中小企業の皆さんのための創造・保護・活用の促進を行うこと。位置づけとしましては、中小の皆さんのための知的財産部であるというスタンスで動いております。支援拠点としましては、我々は中小企業振興公社の中にありますので、私どものセンターの中心、これは秋葉原にございます。それ以外に、東京都は横長でございますので、その図にありますように多摩と城東、城南と。これはそれぞれ公社の支社の中に入りましてやっています。ちなみに、多摩の支援室には我々の知財アドバイザー、相談員3名をつけております。城東のほうは2名、それから城南のほうに2名、我々センターの本部には、後で紹介しますけれども、9名のアドバイザーがいます。それ以外に公社職員が8名おりまして、総勢25名の体制でやっております。 次のページへ行かせていただきまして、支援の内容でございますけれども、大きく5つのポイントで支援をしていると。それぞれについて簡単にご紹介いたします。 5ページ、次のページへ行きまして、ここには写真が載っかっていますが、左側が我々総合センターの秋葉原の本部のフロント部分でございます。1階のフロアーを全部使いまして、そこに先ほど言いました相談員を初め、職員が入っていると。その右側の写真が、これは相談風景でございます。こういう個室が4つございまして、この写真では左側の方が中小企業の経営者の方が相談に来られ、右側が、対峙しているのが実は相談員と弁護士の先生という、これは擬似写真でございます。相談は東京都の予算でやっておりますので無料でございます。大勢の方がいらっしゃってきてもらっていますので、予約制で、1時間単位で、何回いらっしゃってもオーケーだということで、平成15年に開設してから一番最高の方で200回以上来ていただいていると。まさに知財部という位置づけで来ていただいております。 相談員は企業の知財のOB、長年、20年、30年のご経験を踏まれた方々に来ていただいていると。総勢16名おります。それぞれ広く分野から来ていただいておりまして、電気、化学、それから電子部門、それから情報系等々いらっしゃいます。それぞれ知財を担当された方なんですけれども、部長クラスの方ですので、会社のマネジメント、それも全体的に見られていた方ですので、中小の方が来られても、知財の個別の相談、個々の相談というんじゃなくて、トータル的なアドバイス、それをさせていただくということで、来ていただく方も非常に喜んでおられるという状況でございます。 それから、特徴点は、弁護士の先生、弁理士の先生が毎日、午後からでございますけれども、駐在していただいております。適宜その中小の方々の相談に加わるということでございます。 次のページへ行かせていただきまして、相談の実績でございますが、この棒グラフにありますように年々増加しています。21年度は年間4,000件を突破したということで、実は毎月、本年度は400件ぐらいのご相談があります。だから、非常に相談員の方も常時相談につかれているということでございます。本年度はこの状況でいきますと、恐らく5,000件前後の相談件数になろうかということで、リーマン・ショックがあったとはいえ、逆にどんどん中小の方々が知財を何とか武器にしてビジネス展開したいというあらわれが如実にあらわれております。 次のページへ行かせていただきまして7ページですが、相談のアドバイスですが、そこにありますように月曜日から金曜日まで相談員は毎日います。弁理士の先生はそれぞれ得意分野がございますので、そこにありますように月曜日は機械・電気等々、それぞれトータル10名の先生に来ていただいています。だから、2週間に1回は同じ先生が来られるということで、中小の方も何回も相談、1回で済むことはありませんので、二、三回、多くは30回も来られるという。1案件についてですね。だから、その弁理士の先生を目がけて来られるということでございます。弁護士の先生は弁護士会、東弁、一弁、二弁とそれぞれ来ていただいておりまして、総勢32名の弁護士の先生が日々来ていただいております。当然、相談は弁護士の先生、弁理士の先生が入っていただいたとしても無料でやっております。 その内容ですが、円グラフにありますようにやはり製造業の方が40%と多い。最近はIT系、サービス系が非常に増えてきております。それから、知財の区分別ではやはり特許・実用新案のご相談が多い。それから、最近は富に著作権関係が急増しております。相談の内容ですけれども、権利をとりたいと、特許、意匠、商標等、それが約半数。それから、中小の方々は契約で随分ご苦労をされる。大企業からもかなり、高圧的とは言いませんが、制約のある契約も中には結構ございます。そういう契約の内容についてのご相談、あるいは社内の管理の問題。係争も、最近警告を受けたとか、逆に警告を発したいという案件も増えてきてございます。そういう状況で相談をしていると。権利の獲得の中、例年アンケートをとっているんですけれども、大体ざっくり言いまして、相談に来られた方は、相談員が見極めてこれは特許で出すべきだとあるいは特許とあわせて意匠権もとるべきだというトータル的なアドバイスをします。大体、今70%は出願されているという状況でございます。もちろん、進歩性のないものは、これは出すべきではないということもメリハリをつけてアドバイスをしております。 次の8ページに行かせていただきまして、次の2つ目の事業が普及啓発事業、これはセミナー・シンポジウム等の啓発事業をしております。我々の特徴点といいますのは、まず@のほうに知財権別のセミナーをやっています。これは月並みなんですけれども、その3つ目にあります職務別戦略セミナー、これは一昨年から開始しました。とりわけ中小企業の方々は営業兼技術兼経営者兼という方もたくさんいらっしゃいますので、実は営業が一番大事だと。ニーズの最前線に立たれているわけですので、営業マンの教育を真っ先にやろうじゃないかということでやり始めました。もちろん、知財マン、技術者対象の教育もしていると。それと、社長向けといいますか経営者向けのセミナーを開始したということで、結構これは人気を呼んでおります。 それから、A番目ですが、本年度から、セミナーもいいんだけれども、セミナーは聞いて、はいさようならということで終わっちゃいますので、塾を徹底的にやっていくようにしようじゃないかということで、先ほどの城南、城東、多摩の3地区で、とりあえず3日コースでやり始めました。これは、人数は余り多くなると塾形式にはなりませんので、6名から10名という程度に絞りまして開設をいたしました。これを1期、2期、3期と年々増やしていきたい。ひいては、中小企業の意見を代表して言えるような、核になるような、そういう会にしていきたいなと思っております。 それから、3番目のシンポジウムは、これは年に1回ですけれどもやっております。本年度は4月16日、発明の日が日曜日だったもので、繰り上げて都庁の大会議室で行いました。これまでは六本木ヒルズとかホテルニューオータニとか非常に高額な場所でやっていたものですから、それはないだろうと。やっぱり中小企業の皆さんの目線に合わせた会場を使うべきだと。都庁に立派な大会議場があるじゃないかということで、私の代になりましてから都庁もフルに使おうじゃないかということで始めております。おかげさまで500席の席上がオーバーフローしまして、急遽50名の席をふやしたということで、大盛況のもとに終わらせていただきました。今回は、今の経済状況に合わせて中小の皆さんが海外進出するにはどうすべきかと、知財戦略はどうすべきかということでやりました。 9ページは、これはテキストです。これは我々の手づくりで、6種類の手づくりのマニュアルを発行しております。 それから、10ページ、これは中小企業の皆さんは弁理士の先生は雲の上のような存在と思われていますので、お見合いの場を設けようじゃないかということで、マッチングシステムで最適な先生と手を組んで仕事をしてもらおうということで、今弁理士の先生は240名登録していただいています。 それから、次のページへ行きまして、3番目は助成事業です。これはお金のかかるものにつきまして助成を引いていると。特許調査は、これは国内外問わずに助成金を出しております。一番今ご利用いただいているのが2ポツの外国特許出願費用の助成、これは1国当たり大体最大で100万円ぐらいかかりますので、6カ国ですと600万円かかると。それを限度として300万円までは無償で提供しようと。もちろん、厳しい審査がございます。今年度も120社強申請がございました。予算に限りがありますので、見事合格された方はその70%と。本来なら全員助成をしてあげたいんですけれども、大体毎年70%ぐらいが決定という形になっております。それから、意匠・商標、侵害等々の助成をしています。トータルで、これは東京都の委託事業の基金でやっておりまして、毎年予算が1億7,000万円でやっております。国のほうは外国特許だけで8,000万円という非常に微細な額ですので、これはちょっとなかろうと。東京都のほうはそれだけ力を入れて目いっぱい頑張っていると。発展していただいて、より東京都に税金を落としていただいて、日本全体が活性化するということがねらいでございます。 それから、次のページへ行きまして、これはニッチトップ支援といいまして、中小企業の方々は自社でなかなか知財戦略を経営戦略に生かしていくという体制ができません。そういう人材もおりません。そこで、我々が、先ほどの相談員が中に入り込んでハンズオンを支援しながら体制をつくってあげようと。経営者に向かって知財戦略が加味できるような、そういう体質にしてあげようということで、最大、最長といいますか、3年間支援、これも無料でございます。我々の相談員が各企業に出向いて指導していく。もちろん、場合によっては弁護士の先生、弁理士の先生も一緒に入ってやっていく。3年というのは非常に短いんですけれども、基礎的な部分だけは何とか支援していこうということでございます。これは数限りがありますので、10社限定といいますか、20年度から毎年10社ずつということでやっております。 次が一例ですが支援例で、成功例といいますか、知財戦略の支援をした極光電気。これは実はもともとは蛍光灯屋さんで140名ぐらいいたんですけれども、今やもう14名ということで、特化した殺菌灯を中心にやっている企業なんですけれども、近年のLEDの方向にやっぱり開発もやっていかなきゃいかんということで、非常にニッチな部分ですが、ホテルの照明とか、ある特化した部分の回路をつくって、特殊なといいますか色彩を出しているということで開発を始めた。もともとこの会社は大手の家電メーカーから侵害警告を受けまして、それが起点になり、知財というのは非常に大事だということで我々の支援を受けた。ということで、そこにありますようになかなかおしゃれなデザインのLED、これはグッドデザイン賞を去年獲得いたしまして、もちろんその前に他社の意匠権を調べ、意匠権を獲得した。特許はどうかと言いますと、初めはこんな回路に特許なんてないと言っていたんですけれども、我々の相談員とそれから当センターの専門弁理士の先生と3者で喧々諤々、回路を綿密に調べたところが、実は基本的な回路があった。ということで、特許出願しこれは早期審査で権利が獲得できました。逆にまがいものが出てきた時に警告を発して差しとめをしたという成功事例です。 最後になりますが、我々はビジネスのトータル支援をしています。知財だけではトータルな支援はできないということで、公社の支援部隊と連携を組んで総合的な支援をやっています。 最後の15ページですが、諸々の公社の支援がございます。それと我々知財が一緒になって共同で連携を組みながら支援をしています。これは東京都の言ってみれば最大の特徴である支援体系ではないかと自負しております。 ちょっと長くなりまして恐縮です。以上でございます。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。皆さん大変ご苦労されながら中小企業の支援をされているということが大変よくわかるご説明だったと思います。 では、今のご説明に対していろいろ皆さん伺いたいことがあると思うので、委員の先生方、ご質問がありましたらいかがでしょうか。あるいは、コメントでも結構であります。 荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 今のご説明、大変しっかりおやりになっているので、ぜひこういうやり方、それから2002年から約10年間の実績をほかの地域のモデルにしていったら良いのではないかと思います。ぜひ今のようなお話を、各地域で今これからセンターを充実させようということですので、そのモデルにするということでやっていただく。大変すばらしい取り組みですし、成果が上がっていると思います。 その関係でいろいろ都は助成をこういう形でされているということですが、ここの助成をした後、例えば日本の特許庁にいろいろ申請したりするときにお金がかかる。中小企業の支援策がいろいろあるわけですね。そういうことについてのコメント、ほかの国が中小企業の関係で特許庁の関係でどんな助成をしているか、そういうことを教えていただければと思います。 ○生島参考人 全体を把握しているわけじゃないんですけれども、やはり中小の方々は一番お金ですね、費用が非常に高くつくと。とりわけ日本は高いんじゃないかという声を非常に聞きます。審査請求料を初め、登録費用も。20年間維持したとして120万円強かかるわけですね。それに弁理士の先生の費用がかかると。ちなみに、今、荒井先生のほうからご質問がありました各国はどうかということを調べております。そうしますと、何と韓国あるいは中国が非常にきめ細かい中小企業の支援をしています。何と、出願から登録の3年目までですか、審査請求も含めて70%の減免支援をしていると。日本はどうかというと、微々たるものだと。何とか今の時代、新興国間の市場がどんどん急激に拡大している中で、日本がもっとドラスティックなそういう中小のための支援をすべきじゃないかというふうに、常々皆さん方の声を聞いていると思います。 こんなところでよろしいでしょうか。 ○荒井委員 先進国はどうですか。アメリカとかですね。 ○生島参考人 アメリカでもと言いますけれども、50%の減免措置をしているわけですね。それと、フランスでもそれぐらいじゃなかったでしょうか。というふうに、かなりの国で、ドイツでもそうですけれども、中小企業は国を支えているんだという認識が非常に強うございます。韓国も昨今基本法ができるということで、韓国の内閣府の方が5名ほどセンターに来られました。何とか地方自治体を強固にしていきたいということで、東京都もセンターがこういう位置づけでやっているというのをどこかから聞かれて、お見えになった。韓国もそうしたいとおっしゃるけれども、逆に我々はもっと韓国を見習いたいというお話もさせていただきました。 ○妹尾会長 ほかにいかがでしょう。 佐藤委員。 ○佐藤委員 東京都のこの活動は非常にすばらしい活動で、日本の先端を走っているモデルだと思います。そういう意味では、先ほど荒井委員がおっしゃられたように、このモデルを他の地域に広げていくというのは我が国にとって大きな課題だと思っています。 きょうご説明いただいた中で、資料の15ページに連携・支援のあり方を書いてあるんですが、今まで知財支援というと、必ず知財側からだけの支援で終わってしまっているケースが多いと思うんですね。ところが、ここの表を見ますと、この公社支援事業の中には新製品・新技術開発助成という、実際開発のほうの助成と知財の助成が連結して動いているというところがすごくすばらしいことだと思うんです。各ほかの県を見ても、事業支援は事業支援、知財支援は知財支援という形で分かれてしまっている。そのため、総合的な支援の形になっていない。それを東京都は両方マッチングさせてられるように思うのですが、この点について実際におやりになっている生島さんのほうからはどんなふうにお感じになっているか、伺いたいと思います。 ○生島参考人 ありがとうございます。実は、私も所長に就任しまして、公社がこれほどの支援をしていたのかと気づきました。トータルで予算は60億円強でやっているんですけれども、例えば開発の初めの新製品・新技術開発というのは、これは実は1,500万円の助成をしいていまして、その中に実は国内の出願費用、弁理士の先生の費用、これは入ります。だから、これで合格すれば、そこだけは特化して支援してあげようという形で動いていると。末端といいますか、製品の開発が終わってから拡販がなかなかできないということで、ニューマーケット開拓支援というのがございますけれども、これは実は同じように大企業のOBのベテラン営業マン、60名おります。その60名はいろんな分野、得意分野の者がおります。その営業マンと一緒に知財マンが入って、一緒になって中小企業に出向きます。で、営業の支援と製品に対する知財の戦略の支援をやっています。 ということで、私から言うのもなんですが、この支援体系はまさに大企業の支援体系以上に良いのではないかと。大企業は各事業部ごとに動きますけれども、かゆいところに手が届くといいますか、その辺まである程度はでてきているんじゃないかと思います。ただ、何せ人的な支援も限りがございますので、まだまだもっとやるべきだなとは思っております。 ○妹尾会長 ほかに。 もう一点。佐藤委員。 ○佐藤委員 これも今できているのは、東京都の場合に中小企業振興公社という1つのワンストップの部門で開発支援から知財支援までトータルに支援できるということが、この事業がうまくいっている大きな理由だろうと思っています。そういう意味では、ことし、政府のほうは各都道府県ごとに知財総合窓口というのをつくってやろうと動いているわけですけれども、そこがこの東京のモデルをうまく受け皿になれるようにできるかどうかというのが大きな課題だと思うんですね。 そこで私が思うのには、東京都とか神奈川県、それから愛知県、大阪、ここはお金も人もあって実際にうまくできるんですね。だけれども、実は、こう言ってはなんですけれども、経済的に非常に苦しい県は人も金もないというのが現実で、例えば知財をやっているところも、大学と同じで、発明協会の支部といったって3人ぐらいしかいないと。実際に本当に支援をトータル的に東京と同じモデルをやれと言っても、やれる人も金もないというのが現実だと思うんですね。そういう意味では、本当に力がある県と力がない県とどううまく支援をやっていくかということをよく考えないと、ただ各県ごとに窓口を1県ごとに置いたからできるという話ではなかろうと思っているのが実感でございます。そういう意味で、政府としては東京都のこのすばらしいモデルを地域展開するということと同時に、受け皿になっている各都道府県の状況をぜひしっかりと受けとめられて、それに見合った形の支援策というのをやっぱり考えていただきたいなというのが私の意見でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ほかにいかがでしょうか。お願いします、佐々木委員。 ○佐々木委員 今、佐藤先生のお話にちょっと類似しますけれども、本当にこんなすばらしい事業をしているんだなというのを今聞かせていただきまして感心したんですが。これ、事業ともし位置づけた場合に、本当に仮の話ですが、これが有料サービスになったときにどういうふうにこの支援センターに駆け込まれる方々が変化するとお考えですか。ちょっと有料の度合いが違いますけれども、これを津々浦々までやろうとすると、本当に事業としてプライベートセクターでも成り立たせようとすることも考えなきゃいけないとなると、多分全部が助成でというのはなかなかできないと思いますので、その辺のお考え等をお聞かせいただければ。 ○生島参考人 その辺の考えは全くないんですけれども、恐らく有料にするとだれも来ないんじゃないかと思います。それはちょっと極論ですけれども、将来もっともっと幅広く、東京都は50万社中小企業がおりますので、それを考えると、有料にするにしましても、マイルストーンといいますか、入り口は安く、成果が上がればそれをフィードバックしてもらうというような形が考えられるかなと今思っております。 ○妹尾会長 ほかにいかがでしょうか。出雲委員。 ○出雲委員 15ページにあります中小企業振興公社でさまざまなご支援をされていると思うんですけれども、当社も新製品・新技術開発助成事業で公社から助成をいただきまして、新技術を1件ミドリムシで開発させていただきました。この商品を販売する、販路を開拓するということで、展示会の出展費用をニューマーケット開拓支援事業で出していただいたり、海外の展示会向けに渡航費ですとか、10万円の1間口のうちの5万円を海外販路開拓支援事業でその助成をいただいたり、一気通貫で東京都中小企業振興公社さんの取り組みは、ほかの委員の先生方もおっしゃっているとおり、すばらしく使いやすい制度だと本当に思っております。 その公社様の支援メニューの中で、11ページのところで、私どもこういう助成事業をされているというのは十分知っているんですけれども、例えば特許調査費用助成は4件とか、多分すごく少ないのと、外国特許出願費用の助成はこれは820件とありまして、当社も特許調査費用は20万、30万円ぐらいのものを2分の1助成していただいて、その15万円補助していただくのと、さっきおっしゃっていた外国、5カ所出すときにインパクトが違うというのももちろん1つあります。もう一つは、ぜひ、これは公社様にお願いすべき内容とは少し違うかもしれませんけれども、荒井先生が従前おっしゃっている、特許を出願する費用全体が結局幾らかかるのかわからないので、2分の1助成してもらえる、その限度300万円以内で助成してもらえるという、こういう制度があると、これに通れば弁理士の先生に相談に行っても300万円までは半分出るんだったら150万円補助してもらえるという計算ができて、特許の出願の費用負担感というのが大変下がると。 スモールエンティティ制度のように、アメリカで出願する場合にはその5割、韓国では7割、特許の出願費用ですとか維持費用を削減するというのがあるわけですけれども、日本にはそういうのがなくて、公社さんで出願費用の助成事業をされていると。これはぜひ続けていただきたいんですけれども、もう一つ、やはり結局幾らぐらいかかりますよという総額がしっかり表示をされていて、その総額に対して2分の1補助しますとか3分の1補助しますというのがあると、もっと特許として権利を確保しようと思うような経営者、知財マンというのが増えてくると思いますので、ぜひ開催されているセミナー等でこの出願費用の助成事業があるということと、平均して大体、この820件の申請があると書いてありますけれども、幾らぐらいかかって、2分の1助成では実際には100万円から200万円ほど助成する案件が多かったですよみたいな、そういう事例みたいなものがセミナーやケーススタディとして記載されていると新しく出す人にとっては非常に参考になると思いますので、ぜひセミナーを開催される際やマニュアル、ケースタディ作成の際に、この金額面について実際どれぐらいかかった案件が多いのかということで、総額のイメージができるようにしていただけるとよろしいんじゃないかなと思いました。 ○妹尾会長 ありがとうございます。それでは、相澤委員。 ○相澤(英)委員 東京都で、努力をされていることは地方公共団体がその権限に基づき行う施策としてよろしいことではないかと思います。ただ、地方がその実情に合わせて行うということが重要なことですから、先ほどご指摘がありましたけれども、東京都のモデルがどこでも通用するものではないということに留意していただく必要があると思います。 支援については、長期的しても、どのような効果が出ているかという効果測定がなされなければならないと思います。それから、支援として助成金がいいのか、融資保証であるとか金利補助であるとかがいいのかという方法についても検討していただく必要があると思います。支援できる企業を増やす可能性も含めまして、IPOを目指すベンチャーさんも支援して、全体としてイノベーションが進んでいくような方向に向かうように検討していただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 ほかに。佐藤委員。 ○佐藤委員 支援の補助金の話なんですが、東京都は非常に財政豊かですのでたくさん補助できているんですね。だけれども、ほかの県では全く補助のない県もあります。また市もあります。そういう意味で地域格差がはっきりしている。それで、これは事務局のほうでこの地域格差の実態を把握されて、それをどうすべきかということをぜひ考えていただきたい。隣の県ならば救われるのに自分の県だったら救われないという人たちが出てきているんですね。これはやはりおかしいんじゃないかと。そういうものをできるだけ、本当にいいものならばどの地域にいようとやっぱり補助されるんだというような仕組みがあるべきじゃないかと思っていますので、そういう仕組みをどうやってつくれるかということをぜひ検討されたらいかがかと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 そろそろというか、時間がちょっとオーバーしていますが、ほかにいらっしゃいますか。 済みませんが、それでは最後に私から少し質問をさせていただいてよろしいでしょうか。 相談事業の実績が非常に伸びているというのは大変工夫をされているんだろうなと思いますが、先ほど特許に結びついたのが7割近いということをおっしゃっていましたね。 ○生島参考人 はい。 ○妹尾会長 それはどれほど出願に結びついたんでしょうか。 ○生島参考人 そうですね。 ○妹尾会長 そうですか。 ○生島参考人 特許、意匠、商標、相談の結果です。 ○妹尾会長 例えば、それは目標値みたいなものを設定しているのですか。 ○生島参考人 いや、ありません。要は、中小企業の皆さんの状況に合わせてやるということですので。 ○妹尾会長 逆に、特許を取ることだけがいいことではなくて、特許を取ってはまずいこともたくさんございますよね。そういうときにアドバイザーの方はちゃんと、これは特許を取るべきじゃない、というアドバイスをされていらっしゃるんでしょうか。 ○生島参考人 もちろんします。中小企業の一番の要はやっぱりノウハウなんですね。だから、明細書の中でもこれは絶対書くなというのを極力積極的にアドバイスしております。 ○妹尾会長 なるほど。そうすると、皆さん、権利取得とノウハウを使い分けでアドバイスする方々なのですね ○生島参考人 そうですね。基本のスタンスはそこなんですね。 ○妹尾会長 なるほど。 ○生島参考人 だから、一番の重要なノウハウ、それを中心に、明確なところは取るべきだと。 ○妹尾会長 なるほど。わかりました。地方だとかいろんなところのモデルにという話が先程ありましたが、もちろん一番重要なのがそういうことをアドバイスするということなので、そのこと自体をモデルにしていただきたいという感じがありますね。何か相談が来ると、出願の手続だけをアドバイスして、とにかく何でもかんでも出願させちゃえば良いという方が余りにも多いのではないか、という声で上がってきておりますので、そういうのをちゃんと使い分けていらっしゃるという点は非常に良い。これが大事ですね。 ○生島参考人 今ご指摘のとおり、中小企業の場合は連携がなかなかできないんですね。大企業の場合は、昨今M&Aで、海外とのM&A、それも起こり始めたと。ところが、中小の場合はそういう標準化にもなかなか参画できない。そこで、彼らの一番大事なのは何かといいますと、連携するにしてもお互いのノウハウを持って連携を組むと。それがやっぱり一番大事じゃないかなと。できましたら、政府のほうもそういう大きな枠組みの中で国際化・標準化も含めまして、中小のほうにどういうふうに仕事のスキームをつくっていくかというのを真剣にご議論いただければありがたいなと思います。 ○妹尾会長 なるほど。 済みません、もう一つ。それからあわせて人材についてなんですけれども、相談員の方々は大体20年、30年のベテランの方だって伺いました。それって我々は結構リスクが高いのではないかと思うんですよ。20年、30年やってこられた方って昔の知財モデルでこびりついているから、最近の知財マネジメントだとかビジネスモデルに追いつけていないのではないかと。そういった弊害が起きているというのがいろいろなところであるわけですけれども、その辺はどういうご苦労をされていますか。 ○生島参考人 それは全く問題ないですね。むしろ、そういうベテランの修羅場をくぐった人間のほうがやります。彼らはもとはといえば大企業の面々だったんですが、かつては押さえつけた面々が今や立場が逆になって、罪滅ぼしじゃないですけれども、本当に必死で勉強し、最近の状況の判例も含めて全部把握しています。だから、先生のご指摘のようなご心配は全くございません。 ○妹尾会長 少なくとも東京都のセンターの場合はないと。 ○生島参考人 ありません。 ○妹尾会長 ああそうですか。それはどういう工夫をされているんですか。人材育成上は、どういうふうに鍛えられているんですか。 ○生島参考人 お互いの情報交換といいますか、それでもって最近の新しい勉強もやっていますし、最近とりわけ、必ず総合連絡会というようなミーティングを結構設けております。最近ですと近隣諸国の例えばタイ、ベトナム、マレーシア等々、その辺の勉強もしようじゃないかということで、レベル合わせもしながらやっております。もちろん、一番大事なのは、目線は中小企業だと。そういう立場に立ってやるという基本理念のもとに切磋琢磨しております。 ○妹尾会長 もう一点、先ほど海外出願について上限が600万円とおっしゃっていましたっけ。 ○生島参考人 いいえ。600万円を想定して、その半額の300万円が上限であると。 ○妹尾会長 そうすると、1社、1出願できるか2出願できるかぐらいですかね。 ○生島参考人 だから、最近はPCT出願が多うございますので、最高の方で500万円ぐらいですかね、トータル使われるのが。もちろん、千差万別で、アメリカだけ50万という方もいらっしゃいます。その半分を助成すると。 ○妹尾会長 それをやると、逆に点特許は取れるけど面として特許群が取れないから、結局は少し取っただけで終わりみたいな、実効がないみたいなことになりかねないんじゃないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。 ○生島参考人 確かに、大企業のようにパテントポートフォリオ的に周りも全部取ってしまうということは中小企業の場合はできませんので、一番の重要なものだけは押さえると。それと、必ず大なり小なり先ほど言いましたノウハウをお持ちですので、ノウハウとその権利というのでがっちりガードすると。とりわけ中小企業の皆さんはものづくりの方は商品が多うございますので、意匠権はどの世界でも効力が早いんですね。案外、外観だけだから権利範囲が狭いと、我々はそう思っていたんですが、結構あれは使い勝手があると。即戦力になると。とりわけインドネシアなんかはパテントよりも意匠権で攻めるというのが多うございますね。というふうに、そういうグローバルに見ながら、確かに先生おっしゃるように全部は権利化できませんが、一番効率のいい点で指導していくということでございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。あと、いろいろご苦労も多いと思いますので、また引き続きいろいろお伺いするかもしれませんので、よろしくお願いしたいと思います。 ○生島参考人 ありがとうございます。 ○妹尾会長 2点ほど蛇足を申し上げると、1つ資料の中で、知財と知財権あるいは意匠と意匠権みたいなのがかなりごっちゃになっているかなという気もいたします。 ○生島参考人 申しわけございません。 ○妹尾会長 少しその辺を見ていただければというのと…… ○生島参考人 ありがとうございます。 ○妹尾会長 それから、いろんな経営者のセミナーをやって啓発をされて、一所懸命されているというのはよくわかりました。実は先日、某知事とテレビで討論をやりましたけれども、余りこの辺の事情をご存じないようなので、ぜひ知事に啓発を進めていただくことをお願いしたいなと思います。 ○生島参考人 ああ、そうでございますか。私、実は大好きでございまして、ユーグレナさんがいらっしゃっていますけれども、ベンチャー大賞、我々はそういう東京都の賞の審査もやっております。知事はかなり新しいイノベーション、技術に非常に関心をお持ちだということで、今の総理にもっとその意識を増やしてほしいなと逆に思っているような次第でございます。冗談ですが。 ○妹尾会長 ぜひ啓発をよろしくお願いいたします。 ○生島参考人 ありがとうございます。 ○妹尾会長 それでは、まだまだ聞きたいことがありますが、ちょっと時間の制約がありますので、生島参考人、どうもありがとうございました。 ○生島参考人 どうも失礼いたしました。よろしくお願いします。 ○妹尾会長 もしよろしければ、次の議題でも中小企業の政策なんかが絡みますので、横で傍聴していただければと思います。 ○生島参考人 ありがとうございます。では、聞かせていただきます。 ○妹尾会長 それでは、次の議題に移りたいと思います。知的財産戦略に関する論点整理であります。 前回の第4回専門調査会でのご意見を踏まえて修正された資料が資料2のほうに入っております。これに加えて、新たに資料3というのを事務局が作成しております。この表紙が黄色くなっているのが資料3です。これは方向性と書いてありますけれども、これは前回の主要な分野についての主な論点と取り組みの方向性について事務局からいろいろ報告があったわけですけれども、それにさらに世界的な情勢をもっともっと踏まえるべきだと、あるいは大局的な視点からいかに考えるべきかを検討せよ、というようなことを委員の先生方から強くご指摘をいただきました。それらを踏まえてこの資料3を作成しております。資料2及び資料3、そのうちの資料3、この黄色いマーカーが表についている、これを中心に事務局からご説明をしていただいて議論をしたいと思います。 まずは事務局の説明を原参事官、お願いします。 ○原参事官 それでは、資料の説明を申し上げます。 資料2でございますが、内容的には前回ご提出したものから大きく変わってございませんが、意味内容の明確化あるいはその正確性を期すという観点から、前回いただいたご指摘等を踏まえて何カ所か表現を変えた部分がございます。 7ページでございますが、イノベーションを加速するインフラの整備(2)というシートでございます。この一番下の枠、取り組みの方向性の最初の丸の部分で、前回の資料では「営業秘密の流出に対する技術者等の自制の意識の向上」と書いておりまして、技術者に直接働きかけてその行動に結びつけるというような、そういう趣旨で書いてございましたけれども、趣旨が明確ではないのではないかというご指摘もいただいており、今申し上げた技術者に直接働きかけるという趣旨は括弧の中にもございます。そういった意味で、「自制」という表現を今回は用いてございません。 それから、最後の12ページでございますが、知財人材育成の強化ということに関連いたしまして、グローバルという視点について明確にすべきではないかというようなご意見をいただきました。そこで、今般の文書では、冒頭の論点、この下の部分でございますけれども、「知財に関する授業科目数は増加傾向にあり」で始まる部分でございますけれども、その第2文にグローバルな視点というところで記載を加えてございます。 それから、同じく12ページでございますけれども、左下の標準化人材に関する部分、その枠内の記載につきまして、現状認識をしっかりと、正確にというご趣旨でご意見をいただいてございました。それで、今般の資料では「標準化担当を、経営に結びつかない専門職に見るような意識が一部で残っている」という記載とともに、「自己目的化しない、事業に資するような標準化活動の促進が重要である」と、こういう点を併記する形に修正をしてございます。 この資料2につきましては、今申し上げた部分以外にもコメントをいただいてございますけれども、次回以降、専門調査会で2011の骨子に向けた議論、その提言の素案についてご検討をお願いする予定でございます。資料2のその他の部分についても本日のご議論を踏まえつつ修正を行っていけたらと考えてございます。 それでは、資料3のほうに移りたいと思います。 資料3、「知財戦略の方向性」というペーパーでございますけれども、1枚おめくりいただければと思います。先ほど妹尾会長からもご紹介いただきましたが、前回の会合におきまして国際的な「知財システム」をめぐる競争の時代に入ったと。そのような状況もしっかりと認識をして、中長期的な視点、あるいは細かい戦術的な議論というよりもより高い目線で戦略的な議論を行うべきではないかというようなご指摘もいただいたことを踏まえまして、そのような議論のたたき台ということでこの資料を準備いたしました。 情勢認識でございますけれども、1つ目、2つ目の丸はよくこの専門調査会でもお話しいただいているところでございます。グローバル化が進む中、競争力の源泉として知財戦略の重要性は増す一方、そして、国際競争という観点では、特許、意匠、国際標準等の戦略的な獲得や活用、それからノウハウの秘匿化などを含めた総合的な知財マネジメントが不可欠になっているということでございます。 それから、3番目の丸、特に前回ご指摘をいただいた部分でございますけれども、世界を眺めますと、各国において「知財システム」間の国際競争が激しくなっております。韓国におけるIP−Hub構想、それから中国においても外国出願の積極的な誘導、それからアフリカ等を中心とした国際調査の受け入れの拡大というようなことを行ってございます。 こういった点に加え各論的な情勢認識といたしまして、その下でございますけれども、大学等のすぐれた研究成果をグローバルな成功事例に結びつけていかなければならないけれども、米国のような大きな成功事例は少ないのではないかということ、それから、中小企業につきましても、グローバル化の進展によって自立が迫られている中、みずからの技術を知財でしっかり守って海外展開していくことが必要になっていると。 それから、上で申し上げたすべての項目に当てはまるということかと存じますけれども、人材というところに目を向けますと、激しい国際競争の中で求められる知財マネジメント人材といったものを各分野で育成することが急務となっているということでございます。 最後でございますけれども、こうしたグローバル化の波をむしろ変革のチャンスととらえて、イノベーション競争に勝ち抜くための「知財システム」構築に向けて戦略の策定というものを考えていかなければならないのではないかということで書かせていただいております。 1枚おめくりいただけますでしょうか。2ページでございますけれども、この2ページでは、前回のご議論も踏まえまして、知財を活用した産業競争力強化というものを実現するために必要な観点として、1つにはグローバルな知財戦略、それから2つ目にイノベーション促進のための知財戦略、それから3番目といたしまして知財戦略を支える人材育成ということで、3つを抽出しております。この2ページは概要をまとめたものでございます。 一番上の点線の中は、先ほど1ページ目でごらんいただきました基本的な情勢認識の最初の項目を示してございます。 その下に続く色を付した部分でございますけれども、各観点につきまして、個別の現状認識に対応させつつ、目標というものを記載しているところでございます。青の枠内の観点に対応いたしましては、我が国の「知財システム」の魅力を高め、世界で一層準拠・活用されるような、そういった環境を整備して、世界知財システムの構築を我が国がリードするという目標を書いてございます。緑の枠内のイノベーション促進のための知財戦略という観点につきましては、目標を2つ掲げてございますけれども、我が国の大学等により生み出される「知」あるいはベンチャーの創意を新たなビジネスにつなげて、グローバルな成功事例を創出していくということ、それから我が国の中小企業等のすぐれた技術から世界に通用する事業を生み出していくというものでございます。最後は赤の枠内の人材育成という観点でございますけれども、これに対応いたしまして、知財を戦略的に活用できるような知財マネジメント人材を育成して、我が国における知財戦略策定の基盤を強化するという目標を掲げているということでございます。 それでは、各論点につきまして、次のページ、3ページ以降でごらんいただきたいというふうに思います。 1枚おめくりいただきまして、3ページに、まずグローバルな知財戦略という観点を設けてございます。現状認識、先ほども触れてございますけれども、韓国、中国などが国際的な知財ハブの役割を目指して積極的に動いております。さらに、各国における制度・運用間の競争が激しくなる中で、我が国としても制度・運用に係る国際競争力を強めていく必要があるのではないか、またアジアを含む世界で活躍をする企業のニーズに対応いたしまして、世界知財システムの構築を我が国が主導すべきではないかということでございます。 こうした認識のもとで、冒頭の二重枠内に記載しております、我が国の「知財システム」の魅力の向上、それから世界知財システムの構築をリードするという目標を達成する上で、一番下、課題と方向性のところでございますけれども、海外から我が国への出願等、この「等」の部分には国際特許出願における国際的な調査や予備審査といったものも含められようかと思いますけれども、そういったことを促進する。それから、2つ目に、我が国において安定的な権利保護を実現する。そして、海外での円滑な権利設定を促進すると。こういう3つの課題に対応すべきではないかと、このように書かせていただいております。 続きまして、4ページ、ごらんいただけますでしょうか。イノベーション促進のための知財戦略という観点でございますけれども、最初に、我が国の大学発の「知」やあるいはベンチャーの創意といったものをビジネスにつなげて、グローバルな成功事例をつくり出していくという目標を記載してございます。その背景といたしまして、日本版のバイドール法の施行から10年余りというところでございますが、大学発のベンチャーの立ち上げですとか産学連携による事業化の取り組みが行われてきてはおりますけれども、米国におけるようなグローバルな成功事例が多くはないということですとか、我が国では米国におけるようなベンチャー育成の仕組みが確立していないということがあろうかと思います。こうした状況にもかんがみまして、産業界のニーズからのイノベーションの創出、それから大学発の技術を事業化につなげるマーケティング力、これの強化ということ、それから、それと並びまして革新的技術の事業化に挑むベンチャーを育成する仕組みの構築と、こういった課題に取り組む必要があるのではないかということで整理をしてございます。 1枚おめくりいただきまして、5ページでございます。イノベーション促進のための知財戦略の2つ目の目標でございますけれども、我が国の中小企業等のすぐれた技術から、しっかりと知財マネジメントを行って、世界に通用する事業を生み出すということでございます。1ページ目でも申し上げましたが、グローバル化の進展などによって中小企業は大企業との関係から離れて、自らの優れた技術を知財で保護して海外に出て行くといった、こういう必要性にも迫られております。しかしながら、そういった中小の企業を研究開発から海外展開に至るさまざまな局面において一貫して支援できる体制ができ上がっていないのではないかということでございます。こうした背景から、1つには、中小企業等に対して知財戦略支援を行うコンサルティング機能の強化及びそうした支援を実際に担う知財マネジメント人材の配置ということの実現に向けて取り組む必要があるのではないかというふうに書いてございます。 最後、第6ページでございますけれども、知財戦略を支える人材育成ということでございます。目標のところには、知財を戦略的あるいは総合的に活用することができるような知財マネジメント人材を育成して、我が国における戦略策定の基盤強化を図るということでございます。情勢認識のところにございますように、弁理士の方あるいは企業内の知財担当者の方も含めて、知財人材は量的には増えているということではございますけれども、国際競争が激しくなる中で、企業を含めた現場で実際に求められているような、そういった人材像との間にギャップが生じているのではないかと。また、知財の戦略的な活用がますます今後重要になっていく中で、将来知財を創造すると、そういったことが期待される層に対して、創意工夫でありますとか知財の尊重の意識を高める取り組みも引き続き行っていく必要があるのではないかということでございます。 こうしたことをベースにいたしまして、1つは、国際標準や知財を競争力強化のために戦略的に活用することのできるマネジメント人材をどのようにして育成するか、そのために大学等における教育環境をどのように整備していくかという課題、これと同時に、2といたしまして、小中、高等学校の生徒に対するような知財教育もしっかりと継続して強化していくと。こういう課題を掲げているところでございます。 以上、駆け足でございますが、資料3についてご説明を申し上げました。委員の皆様からもご意見、それからご議論をいただければ幸いに存じます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、あと小一時間残っていますので、皆さんのご意見を次々に伺いたいと思うんですが。 最初にちょっと注釈をさせていただきたいのです。この2つ目の資料の方には、なかなか私が言っても事務局に直していただけないんですけれども、わずかに直していただけたところでございます。まずそれは「知財システム」という言葉です。これはかぎ括弧に入れてもらっています。これは何も特許制度、知財制度、法律的な知財法務制度のみならず、周りの知財関係のいろいろなものを全部含めてシステムと呼ぶほうが、私は国力としての知財生態系ということになるので、ちょっとその意味を含めてこれをかぎ括弧に入れていただいているというのが1つです。 それからもう一点は、活用というお話ばっかりだったんですけれども、「準拠」という言葉をあえて入れていただきました。どういうことかというと、例えば、佐藤先生がこの前ご指摘になったように、韓国が調査制度をいろいろ他国から活用させようとしているということがあります。つまり重要なことは、日本で特許庁を初めとして皆さんが頑張ってこられたこの知財の全体のシステム、これをいかにアジアの諸国の人たちに準拠していただくかという点です。このシステム自体が国際標準になるのではないかと。要するに、お手本としてベンチマークされるかということが、国力上極めて重要だと、そういう認識を私は持っておりまして、また先生方のご指摘も私はそういう意図だろうと思っております。単なるユーズ・ジャパンIPシステムだけではない。あるいはルックですね。昔はルックイーストというのがあったんですけれども、とにかくベンチマークの準拠対象として日本の「知財システム」を全体として持ち込んだほうが、我々としては産業競争力上は極めて優位な立場に立てるのではないか。これは露骨にあんまり私が言うことではないかもしれませんけれども、そういうことで「準拠」という言葉を入れていることについてご理解いただきたいと思います。 それから、3点目は、事務局が頑張ってつくってくれた資料の5ページを見ると、これは多分ご指摘があると思いますが、何だ、まだリニアモデルで考えているのか、このポンチ絵は研究からまず始まるという古典的な形だけかと・・・。最近のアップルのように、逆にイノベーションシナリオ側から描くリバースモデルなんかは考えていないのかとご指摘があるかもしれません。あるいは、エコシステム的なインタラクティブなモデルは入ってないのかと、こういうご指摘を受けるかもしれません。しかし、これは単純にポンチ絵がこういうのしかなかったということだけご理解いただきたいと思います。研究から始まるというのは、先ほどの生島参考人もそういう図は書かれていましたけれども、別にそういうことだけでは現在の世の中は動いていませんので、そうではないところでのご議論だとご理解をいただければと思います。 それじゃ、ちょっと注釈をしましたけれども、先生方のご意見を伺いたいと思います。早速いかがでしょうか。 佐々木委員。 ○佐々木委員 前回も申し上げて、ほかの先生方からもご同意いただいたと思うんですけれども、これは多分どの国が考えてもどうもこういう項目が挙がってきて、こうしましょうという話になる。そうすると、あとスピードとその展開力が勝負だという話を先回、私も申し上げましたし荒井先生もおっしゃっていただいたと思うんですが、何人かの委員の方がみんな問題意識を持っておられて。そのスピード感というのをこういう中に書きにくいというのは重々承知しているんですけれども、何らかの形でそこを明確に打ち出すようにしたほうがいいんじゃないかなと思います。よろしくお願いします。 ○荒井委員 その関連で。 ○妹尾会長 荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 ぜひ、この知財がさっきの大学入学試験に出るぐらいになったんだから、ますます立派な推進計画にしていただきたいという、そういう観点でちょっとコメントというか質問です。今まで数回やってきていろいろ意見出て、それで毎回議事録には主な意見として載っているけれども、こういう資料2みたいなのがずっと同じようなのが並んでいて、一部直しましたというお話があるんですが、僕らは論点整理をやっているんじゃなくて、資料5にありますように、このスケジュールでいうと、提言の中にあるいは骨子としてぜひ今のスピード感があって具体的にやることがはっきりした、いい計画にしていただきたいと思います。それが多分、新成長戦略からの要請になっていると思いますので。この資料2なんかも少しずつ、今回はどこが違っているんだろうというような部分も多いんですが、そういうことよりも、今回もいろいろヒアリングをやったり前回もやったりして、具体的にどうするんだと。多分、法律の手当てとか予算の手当てとかあるいはいろんなところのやり方を変えていくとか、そういうことをやらにゃいかんと思います。 この整理にあるいは資料2とか3に載っていない主な意見はみんな不採択と決めたのかと。そうではないんだと思うんですよね。ですから、ぜひ具体的な、政策の方向はどうかという部分と、加えて具体策をどうするんだということを─せっかく今までいろんな意見が出ているんですよね。それをもうちょっと入れて、早く具体策をどうするんだと。それをやっておかないと、また終わってみたら推進計画で来年に向けて検討しましょうということになりかねないんで。今回は会長以下が非常に気合が入っていて期待をしているので、ぜひそういう方向で今後の議論をやっていただきたいという要望です。非常に今までいい意見がいっぱい出ていると思いますので、それは全部主な意見に行っちゃっていまして、ここで計画に入るのか入らないのかという点をして、それで落とすなら落とす。いろんな反対意見もあると思いますよ。だけれども、それならそれで落とす、あるいは入れるなら入れる。入れるのも、検討するとか前向きに取り組むというんじゃなくて、どういうふうにやるんだということをぜひ決めていただいたらいいという、そういう要望です。立派なものにみんなで力合わせて計画をつくりませんかということでございます。 ○妹尾会長 ありがとうございます。今のご指摘、佐々木委員からのものも含めて、資料の作成についてはもっと大胆にしましょう。前回も終わった後で、もうこの資料は全面的に書き直しましょうよというご提案をしたんですが、なかなかお時間の都合が悪かったようです。今の委員の皆さんの強い要望を受けて、これは事務局、もう抜本的に考え直しましょうよ。一部資料の修正だけで進む委員会ではないということで、ここで皆さんのご賛同が得れば、事務局に強くお願いするというスタイルにしたいと思います。 そして、もう一点は、今のお話があったように、例えば具体性を入れて、皆さんの意見のリスト化も含めてそれを検討することにしたいということかと思います。 よろしいですか、事務局。 はい。ということで、事務局のほうのご同意を得ましたので、次の議題に行きたいと思います。 それじゃお願いします。 ○高柳委員 荒井先生の具体性というのは本当にそのとおりだと思いますね。私も、人材育成の点について、目標にも4として知財マネジメント人材を育成するということが挙がっていますが、これは恐らく知財推進計画の最初からずっと一貫して言われていることだと思うんですね。私は、それでまだまだ成果が上がっていないというのは、この知財マネジメント人材を育成する人材が問題ではないかと。先ほど妹尾会長からもご指摘がございましたように、企業で何十年、知財をやっていましたという方が本当に今求められる人材を育成する人材かどうかというのは、私の経験からも疑問なわけですね。大企業、大手の企業はいろいろな分業ですから、連携をして、ここの東京都の知財センターのようにビジネスのトータル、全体最適の中の一セクションとして、知財が知財の取得、その周りのポートフォリオとかを中心にやっているんで、知財出身の方がオールマイティーでこういう知財マネジメントを教えることが出来るのかは疑問です。─ここで言われている知財マネジメントというのは、ビジネスにいかに活用していくかと、浸透していくかと、武器として使っていくかということだと思いますので、単に知財管理じゃないんですね。 だから、その辺を人材育成の、ここでは教員育成とか書いてありますけれども、本当に必要なのは宝物人材であって、これは人材の研究のご専門の妹尾会長の言葉で言えば、ただいるだけの人材とかあるいはいるだけで足を引っ張るような人材では、人材教育の人材にはなり得ないわけですね。成果も出ないわけなので、具体的にはそういう研修、幾つか予算をつけてやりました、企業知財出身のだれだれさんを講師に─言いわけ研修と会長はおっしゃいましたけれども…… ○妹尾会長 いいえ、あれは「アリバイ研修」と呼びます。 ○高柳委員 そういうことで具体的なものが済まされてしまうということがないような、実のある具体策をご検討いただきたいと切に思いますね。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 佐藤委員。 ○佐藤委員 今お話があった人材育成の話なんですけれども、これは妹尾先生もかかわっている2006年に知財人材総合戦略というのをつくったわけですけれども、それからもう既に5年以上経っているわけです。世の中は全く変わったと言っていいと思います。そういう意味では、2006年に決めた総合戦略の抜本的見直しというのが緊急な課題だと思います。その中で、前回の総合戦略の中では知財専門人材、知財マネジメント人材、それから裾野人材という3つのカテゴリーに分けて戦略をつくったわけです。ここは、その点においてはそのカテゴリーをやっぱりしっかりもう一度見直す。このお話では、どうも知財がマネジメント人材だけに包括されてしまって、確かにそれは非常に重要だという認識は私も全く同じわけですけれども、やはり知財専門人材、これの見直しも抜本的にやるべきだと思っています。それは私も含めての、弁理士、弁護士を含めた専門人材、これが本当にグローバルコンペティションの中でちゃんと機能できる人材になっているのかということを本当に見直さないといけないんじゃないかと思います。 ちなみに、例で申し上げますと、アジア弁理士協会というのがあります。これは日本と韓国と台湾と3カ国が中心になってファンディングした団体で、アジア各国が全部加盟しています。昔は日本の弁理士がリーダーでした。各委員会とも専門委員会の委員長は全部日本人でした。今はほとんど日本人じゃないです。何が起こっているかというと、中国、韓国、それから東南アジアを含めて、昔は知財がビジネスにならなかったので、優秀な人たちはみんなヨーロッパ、アメリカへ行ったんですね。その人たちが今は全部戻ってきて、それによって一挙にアジアにおける専門人材のレベルが上がっているんです。その中で日本の知財専門人材がそこで戦えるような人材づくりをしていかないと、本当にこの戦略推進のための人材が出てこないということだと思うので、そういう意味ではマネジメント人材だけではなくて、専門人材も本当にどうやったら国際競争力に勝てるような人材をつくれるかという観点での見直しをすべきじゃないかというふうに、自戒を兼ねて申し上げます。 ○妹尾会長 今のは、知財人材育成総合戦略、2006年からもう5年以上たっているから、それの2.0に着手すべきだと、こういうご指摘だと受け取ってよろしいでしょうか。ありがとうございました。 相澤委員。 ○相澤(英)委員 資料3で、特許を含む知的財産権というものがイノベーションに役に立つというアロー以来の議論が基本となっていることが、記載されていた方がよいと思います。 それから、先ほどの佐々木委員ご指摘のスピードも重要だと思います。資料4を本日提出した理由は、先週、最高裁判所で、テレビの海外視聴に関する判決が出されました。この判決の理由づけからすると、データストレージ・サービスをすることが著作権の侵害になる可能性があります。これは、クラウド・サービスに大きな影響を与えるおそれがあります。この問題を早く解決しないと、検索エンジンの二の舞になります。著作権法の改正をゆっくりとしていたら、日本に検索エンジン会社はなくなり、関連産業もなってしまいました。早急に対策をしないと、クラウド・サービスも同じことになりまねません。 そもそも、問題が起きたから解決するという姿勢だと、現在の技術の変化には間に合いません。潜在的な問題を見つけて、これに対処するようにしないと間にあいません。企業が活動しやすいのような基盤整備を知的財産法の分野でもしないと、市場や技術開発の活性化になりません。 それから、今のような情報拡散の時代には、ノウハウを管理していくというのは非常に難しいと思います。国防情報のように、非常に高度な管理をしている情報でも拡散するということは、ノウハウの管理は限られているということを認識していただかなければならないと思います。 それから、さきほど、意匠についての指摘がありましたが、商標も、外国が保護対象が広いという状況です。日本でも検討をやっているんですけれども、検討しているうちに時期おくれになりますから、そちらもスピード感が必要であると思います。 英語による審査の導入というのは、日本の多くの技術者にとってみると国内特許文献というのは非常に大きな技術情報になっているので、これを減少させるというのは、日本における技術基盤を侵す恐れがあるので、注意すべきではないかと思います。また、日本語による行政手続という日本の国家としての存在にかかわるもという側面からは、慎重さが必要です。 さきほど、会長がおっしゃった標準ということを考えますと、審査が安定しているということは重要であります。ただ、質が高いという言葉の意味が問題で、進歩性が高く設定しているということでは良くないと思います。日本の発明は特許になるけれども、発展途上国の発明は進歩性が低いから特許にならないというのでは、国際的になりません。それでは、発展途上国の協調は得られないので、外国の事情を考えてやる必要があると思います。 大学のイノベーションで、日本とアメリカ合衆国とを比較するときに気をつけてほしいのは、日本とアメリカ合衆国では大学に対する規制が異なります。アメリカ合衆国の大学は自由に運営されていて、その中で、大学における発明というのがでてくるので、規制されている日本の大学は同様に考えられないと思います。 それからもう一つ、研究開発と製品を市場化するということは、一体化しているというのはご指摘の通りかと思います。市場を予測して、開発をするというのも、研究開発ではないかと思います。 中小企業さんにとっては、自ら海外展開をしていくという方法もあれば、大企業がベンチャーをM&Aして、海外展開していくということも考えられます。M&Aの対価の資金で、ベンチャーも、また、新しいことができます。そういうことも含めて全体としてイノベーションが進めばよいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。多岐にわたるご指摘があったんですが、全部一遍にというわけにいかないんで、資料4で相澤先生がペーパーを出されているのにまずお答えしたいと思います。これは芝田次長のほうから。 ○芝田次長 貴重な意見、たくさんありがとうございました。 今の資料4のクラウド・コンピューティングについてなんですけれども、先般、これは大渕先生にもご尽力いただきまして、文化審議会の著作権分科会のほうで権利制限の一般規定ですとかあるいはアクセスコントロールの問題について報告をまとめていただきました。その報告の中でも、次の課題はこういうクラウド・コンピューティングの話だということで、早期に検討を始めると一応してございます。多分、早期にというのはいつごろなんだとだろうと思いますが、もうこの一区切りつきましたので、次の課題として取り組むということでございます。こちらの知財事務局のほうのコンテンツのほうの専門調査会でも、中村先生と今ご相談申し上げておりまして、このクラウド・コンピューティングの問題について課題として取り上げるという方向で今相談しております。できるだけ早くこのクラウドが晴れるように、ひとつ頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。 それで、ちょっと1つご質問してもよろしゅうございますかね。 ○妹尾会長 はいどうぞ。 ○芝田次長 ちょっと今何点かご指摘いただきました中で大学の規制とおっしゃっていただいたんですけれども、具体的にはどういうのが規制になっているか、少しご説明いただければ。 ○相澤(英)委員 基本的に、アメリカ合衆国の大学というのは政府の認可がなければ設立できないというようなものでないので、大学の経営についても政府が干渉することはほとんどないということになっています。例えば、日本であると、補助金を出すことによってさまざまな規制というものが当然かかってまいります。例えば、アメリカ合衆国の大学に行きますと、教員の給与その他の条件は自由ですから、当然のことながら先生によって違います。研究開発をするには、研究開発者をいい条件で連れてくることが必要です。日本人の先生で、アメリカ合衆国の大学で研究して、ノーベル賞を受賞した方がいらっしゃいます。それは、研究環境が向こうのほうが良かったからということが推察されます。アメリカ合衆国にかなわないことには理由があるので、そこを変えるとすれば、大学の在り方をアメリカ合衆国のようにしていかなければならなくなります。それは、教育制度の根幹に関わる問題となりますので、軽々に論じることができないと思います。 それから、クラウド・サービスの問題を指摘したのは、今度の通常国会に出さなければ、時期遅れになってしまうという危機感からです。私も法律家ですから、次という気分はよくわかります。しかし、最近は次と言っていると手遅れになり、法律ができたときにはこの法律を使う人がいないということになります。 ○妹尾会長 よろしいですか。 ○芝田次長 1つだけ、今の大学の教員の給与とかっていうことをご指摘いただきまして、ありがとうございました。ちょっとこれは誤解していただかないように一言だけ言っておきますと、法制的には今は大学の教員の給与は自由に大学ごとに決められることになっているのですが、多分、先生は、もっと慣習的に横並び主義とかそういうような規制っぽい雰囲気が残っているということをおっしゃっているんだろうと思います。その辺はこれから少しずつ変わっていくだろうとは思っています。ありがとうございました。 ○妹尾会長 お二人から手が挙がりました。それじゃ渡部委員から。 ○渡部委員 今給与は自由になっているはずだとおっしゃったけれども、実際は日本の場合は退職金制度、年金制度との整合を大学教員についてもとらないといけないということが、流動性とか一部外部資金を給与に充てるとか、そういうことの非常に障害になっていますね。だから、結局、産学連携の話でもそういう大学改革の話と直接結びついているので、そういうことを本来はやっぱり総合科学技術会議なんだろうと思うんですけれども、ぜひやっていただかないといけない。こちらからもそういうことを指摘していく必要があると思います。 ちょっと戻りますけれども、こちらの先ほどの資料3と資料2が本当にどういう関係なのか私はよくわからないんだけれども、とりあえず資料3のグローバルな知的財産戦略のところで、海外から出願が集まるようにということで、特許の質という議論がここに出るわけです。これ、法律あるいは通常知財の方は特許の質の議論というのは進歩性の議論だと思われると思いますが、これはそういう定性的というか法律的な進歩性をどの水準に合わせるかという議論も必要ですし、それからもう一つは、こういうものが一体どういう要因で特許の質が上がったり下がったりするのかという、そういうことをまずしっかり認識をしていくということも必要だと思います。 私たちは事象実証分析的に特許の質を決めるモデルを立てて、どういう要因がこの質に影響しているのかということを検証するような作業をやっていますけれども、出願人側のさまざまな行為、それから審査側のさまざまな行為、双方によって質が影響するわけですね。そういう一つ一つの要因に対してどういう施策を打つのかという考え方をやっていく必要があるだろうと思います。具体的には長くなるので割愛します。 また、それからもう一つは、特許の質を客観的、定量的に評価をしていくということが必要になってくるんだろうと思います。これは国際的にじゃあどっちのほうが質が高いとか何とかいう議論をするときにも必要になりますし、定量的・客観的な指標というものを考えていくということも必要になってきます。そういうような具体的なアクションがここにはぶら下がるべきです。 それから、3番目に、そうやって質を高めたら、やっぱりひっくり返らないようにするための制度設計ということで、これは特許庁がこういう質の高い特許権を与えたら、それは裁判で無効にならないようにするということをどういうような制度設計でやるのかという、具体的な話をここに出されないといけないと思います。それがここの部分です。 それから、2番目に、人材育成の話は、さきほどから何度も出ていますが、この人材育成のところを見ますと、国際競争力に勝つとか書いてあるんだけれども、何となくやっぱり国際的な人材育成をしようというイメージにはあんまりなっていないような感じがするんですね。先ほど高柳委員からも出ましたけれども、本当に変化が激しい、それからアジアの知財の人材、そういうようなことも考えたときに、やっぱりここで重点をとるべきなのは、本当を言えば英語の教育じゃないかと。英語で知財をやって、日本の制度、海外の制度も分かって知財マネジメントをやれるような人たちをつくるというようなイメージの教育が必要なんじゃないかと思います。 そういうことも含めて、これ、先ほども出ましたけれども、知財人材育成アクションプランの検討等というのが、何か国際標準とここだけにかかっているように見えますが、やっぱり少し全体的に俯瞰して今までの情勢の変化を考えた上で知財の人材育成をどうしていくかということを多少は、知財人材育成総合戦略、一からやるのはまた大変なんでしょうけれども、やっぱり少し見直しをするというモードにはあるんじゃないかと思います。人材育成の量的計画についても日本は6万人を12万人に10年にするということだったと思います。その後、中国は5年後に13万人にするという。定量的にはもう負けちゃっているわけですね。やっぱり質だと。質というときに、韓国は英語のeラーニング教材を中小企業向けにつくっているという話をここでもご紹介しましたけれども、この間聞いたら、韓国の今、知財で一生懸命やっているのは、IP基盤の英才起業家教育というのを特許特会でやっているらしいですね。こういうのをやっぱり我々も見ていて、審議会をやって1年、2年後に人材育成のメニューって、もうちょっと遅いというのが非常に感じます。なので、ちょっとそこはやっぱり1回見直しをしないといけないんじゃないかなと思います。 それから、海外との協力、この分野ではやっぱり必要だと思いますが、これも気をつけないといけないのは、海外の知財人材育成の協力をやろうとするときに、特許庁同士でやっても、特許庁自身のマンデートが違うわけですね、今。韓国は起業家教育まで特許庁がやっているわけですけれども、それは日本の特許庁は、今はそこまでやれるマンデートがないわけですね。そこで一緒にやりましょうといわれたって、日本は対応できない。だから、政府間の協力をやるときにその枠組みをどういうふうにしてどこまで取り組むかということをやっぱり考えてからやらないと、なかなかうまくいかないだろうと。この分野の協力は、今できる環境にあるんですね。しかし向こうからいろいろ提案されるんだけれども、そういうところがひっかかってうまくいかない。政府だけでやる必要もないですね。だから、人材育成協議会とか民間の団体が入って、それでようやっと同じような状態になったりするかもしれませんが、ちょっとこういう協力のやり方も考えないといけないだろうと思います。そこを具体的にしていきたいと思います。 以上です。 ○妹尾会長 どうもありがとうございました。これもまたたくさんのご指摘をいただきました。 山本委員。 ○山本委員 細かい話と大きな話をさせていただきます。 細かい話は、さっきの大学のご質問がありましたけれども、日米の大学の違いで、規制という話ではないですが、ご案内のとおりここで取り上げられているグーグルは、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが作った学生の発明です。スタンフォードやMITの中では学生の発明も全部契約で、大学帰属です。日本の職務発明だと、学生の発明は、学生は雇用されていませんので職務発明ではありません。企業と大学が共同研究をやって特許が生まれたらどうしようかというような契約をしていますが、ほとんどの場合、学生は発明に関与しているけれども、学生の発明の取り扱いは本人の同意必要になります。もしかするとセルゲイ・ブリンが日本の大学に行って、職務発明じゃないんだったら自分で勝手にやろうと考えるようなことになっていたら日本の大学からグーグルは生まれたと言えるかどうかというような微妙な問題は残ると思っています。これが細かい話、産学連携はだんだん細かい話になってきていると、ご指摘がどこかにありましたので、細かい話かもしれませんが、実は日本中の大学で共通している問題ですので、どこかで議論をしていただいたほうがよいのではないかと思っています。 大きい話で言えば、やっぱり違和感を皆さんが感じているのは、資料2と資料3の関係がよく分からないことだと思います。タイトルを見ると、資料2は「論点整理」で、資料3は「知的財産戦略の方向性」と書いてあります。この方向性の中でいうと、資料3はグローバルとイノベーションと人材育成というのが重要だというキーワードのこの方向性に私は賛成をしています。そういう理解で正しいのであれば、それは賛成なんですが、例えば「グローバルな知的財産戦略」というタイトルを見て、下に課題と方向性って絵がありますが、この絵を見ると、外国からの出願を促進して、日本で安定的な権利保護をして、海外での円滑な権利設定の促進をしましょうという、何かこれだけになっているのが、タイトルにあるグローバルな知的財産戦略なのかというと、物すごく通じてないし、資料2にある国際標準で競争力を高めましょうというようなものは全く入っていないので、そこが違和感を感じているんだと思うんですね。 そうだとすると、方向性として、議論する方向性はグローバルとイノベーションと人材育成ということにして、これと資料2との関係をどう整理していくかにしていかないと、何か別の会議から出てきた資料に見えてしまう。何となく皆さんの中で気持ち悪さが残っていて、それは別のページでも多分同じようなことが起こっているんではないかなと思っております。 ○妹尾会長 ありがとうございました。連日、私が事務局と議論したのと同じことを皆さんがご指摘くださったので、私としては……。 事務局から何か。上田次長。 ○上田次長 済みません、先生方にいろいろなご意見をちょうだいしまして。今日、おっしゃられたように、例えばスピード感を持ってと。それから、いろいろ今まで具体的に議論してきたけれども、それがどっかへ行っちゃって、具体的にどうやっていくつもりなのか、どうなのかと。それから、この資料2と3の関係ってそもそもわからんという、いろいろご指摘、ごもっともなところはあると思います。 これから、私どもは次回から骨子策定に向けた議論ということで、具体的にこの計画をどうやっていこうというところをご議論いただきたいと思っておりますけれども、特に先ほどご指摘のありましたように、具体的なものにしていくと。いつまでに何をどうするというところは、ここにございますけれども、2010年のときはこれを工程表という形でつくりましたけれども、同じように我々はそのところはきちんと何を具体的にやっていくかというところを計画の中で収れんさせていきたいと思っております。それから、先ほどの非常にもっとスピードを持ってというところが問題意識に足りないんじゃないかというところも、そういう中できちんと認識をはっきりさせていきたいと思っております。 若干、言い訳気味になるかもしれませんが、ちょっとご説明申し上げますと、今まで4回のご議論の中で、今までの2010年にやった計画についての進捗も見ていただき、それから、そこにさらに深堀りするもの、それから新しく施策として加えていくものについて、いろいろ具体的なご意見を頂戴しました。それを踏まえて事務局のほうでも、これをどういうふうに計画の中で入れていくかということを今真剣に検討している最中でございます。 何故、今回こういう資料3のようなものを新しく出してきたのかというのは、今まで非常に具体的な計画のほうが出てきましたので、そういう具体的な計画の取りまとめに入る前に、今一度、こういう計画というのはこれから10年とかそういう先を展望していかなければいけないと思いましたので、そこを鳥瞰するためにもう一度少し視野を広くしたところあるいは高いところから見ていただいて、こういう問題意識でいいだろうかというところをあえて今回議論していただいたというものでございます。 それで、資料2と3がまた無造作にそれぞれでこの関係がわからない。山本先生を初め、皆さんのおっしゃるとおりだと思いますけれども、これは資料3のほうで現在の問題意識を確認して、それで資料2の論点整理というのはその中に入っていくものだと思いますし、それからそれよりも今日のご議論の中でさらに大事な点は、具体的な計画をこういう問題意識に沿って整理して、今申し上げましたように、いつまでに何をやるというところを事務局としてはこれからの2月17日からの専門調査会のところでご議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございました。先ほどから先生方のご指摘、相澤先生なんかもおっしゃられたように、日本の全体がどうも問題が出てから解決するというクライシスマネジメントタイプになってしまい、問題が出る前にそいつを予防するというリスクマネジメントタイプになっていないから、スピード感を持とうよと、こういうお話だったと思います。この資料作成についてもクライシスマネジメントじゃなくてリスクマネジメントをしていただければ、大変委員の皆さんも喜んでいただけるのではないかと思います。 それでは……小川委員、お願いいたします。 ○小川委員 先ほど、山本委員が私の質問しようとしたことをみんなおっしゃっていただいた。それに対して上田さんがお答えになったので、それを信じる以外ないんですが。皆さんご指摘いただかなかった4ページのベンチャー企業、これは10年、ひょっとすると20年ぐらい言われ続けたことですよね。これはじゃあ新しく何をやるのかと。SBIR制度を書いていますけれども、ご存じのようにこれは1970年代のアメリカでやって、80年代、また何回も法令改正してやっていますよね。ただ、同時に、ここで起きたことは、アメリカと1980年前後に強烈な産業構造改革をしていますよね。強制的にね。そこと初めて連動してベンチャー企業が今現在のようになっているわけでして、SBIR制度を変えただけではできないんですよ、これは。だからこそ日本がこれだけ苦労しているわけですね、ベンチャーで。だから、そういうことを踏まえたものを入れないと、これはやっぱり20年前と同じになっちゃうなという。大変僭越ですけれども。ですから、そういうことを踏まえた議論が論点整理の中に入るとありがたいなと思って、ここだけ今標柱してご意見を申し上げました。 あとは…… ○妹尾会長 小川先生ね、今のは、要するに局所的な問題解決をやっても仕方ないというお話であるかと…… ○小川委員 だめです。 ○妹尾会長 全体最適から見ればだめじゃないかと。そうだとすると、こういう施策を出すんなら、俯瞰図の中で関係をちゃんと示せよと、こういうご指摘ですね。 ○小川委員 そういうことですね。示さなければ、アメリカが1970年代、80年代に起きたこと、産業構造改革とこういうものとの関連づけて議論しないと、本当に実のついた改革にはならないということで、このSBIRだけやったってだめだということです。やっぱり何をやるかはまだわかっていないんで、ちょっと大変申しわけないんですけれども。 そういう話は至るところにあるんですけれども、妹尾先生が先ほどご指摘があった5ページの、これはリニアモデルじゃないかとおっしゃいましたね。ですから、こういうモデルは古典的な今までのモデル、これが成立する産業も全くあるわけですが、成立しない産業が物すごく増えていますよね。成立しない産業ってどういうモデルになるのか。先ほど来、ビジネスモデルから知財を考える方、そういうのをいろんなモデル図を複数書いておいて、その中で知財を位置づけるようなことをやっていかないと、これを見た人は、あっ、ここは昔のままでこうやればいいんだと思っちゃって知財マネジメントをやると、こういうことですので、整理なさったほうがいいんじゃないかなと思います。 あと、韓国がIP−Hubと3ページ目に書いていますけれども、そうすると、その下にある1、2、3で、さて、我々はこれで大丈夫なのか心配になるんですけれども、そういうことはいろいろ皆さんここにおられる委員の方はみんな同じ思いだと思いますので、ぜひ具体的にどういうことをやるのかということを期待しておりますので、よろしくお願いします。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、時間も限られてきたので、あと何件かなんですが、それでは荒井委員、お願いします。 ○荒井委員 資料3の3ページ、今の点との関係ですが、この課題と方向性、矢印がこうついているんですが、特に@、海外から我が国への出願促進というのが、これは目標にすべきことなのかどうか。これは確かにアメリカには海外から22万件、中国で10万件、日本は6万件で、少ないのは事実なんですが、ただ、出願件数の問題は、じゃあ日本市場の魅力とかいろんな問題があるわけです。ですから、そもそも日本でいい発明して、それが世界中に広がっていくとかあるいは世界に役に立つとか、そういう観点で見たときに、この前、多分、福島委員がおっしゃったのは、じゃあ英語でそういうときに出願して、そのまま海外に行けるようにする。もちろん、相澤先生がおっしゃったように、日本のためには同時にきちんと翻訳本も後からつけさせるとか、手当てがあるんだと思うので、日本の出願が減ってきたから、そのために出願、海外から呼び込むというような印象を与えるので、ちょっとこれは全体としては適切じゃないんじゃないかという気がいたしますので、ちょっとこの点だけ、どうも私は違和感を持って見ていたんです。 ○妹尾会長 これは先ほど申し上げたとおり、ここの下のポンチ絵の課題、方向性はみんなちょっと中途半端なんですよね。例えばグローバルな知財戦略というのは、我々は知財制度間のバトルになっているんだという大局の中で何を打つかという話です。それが非常に小さいところの課題が1個だけクローズアップされてポンチ絵に全部なっていますので、これはやっぱり資料は抜本的に見直していただきたいという皆さんのご意見だと思います。そこで見直しを進めていただきたいと…… ○相澤(英)委員 今の点に、短く反論します。 ○妹尾会長 あっ、10秒。じゃ10秒。相澤委員。 ○相澤(英)委員 技術はグローバルになっているんですから、海外から日本に技術が入ってくるということも必要だと思います。 ○荒井委員 そうです。そのとおりです。 ○相澤(英)委員 ですから、海外から日本への出願を促進するということも良いことだと思います。 ○荒井委員 全くそのとおりです。それが第1目標になっているのがおかしいと。 ○相澤(英)委員 これは議論の流れではないですか。 ○荒井委員 いや、だって、1、2、3と数字がついている。 ○相澤(英)委員 議論の流れでしょう。 ○妹尾会長 佐藤委員。 ○佐藤委員 先ほど小川委員からあったベンチャーの件なんですが、今までの議論の中で急にこれが出てきたということで、非常に私は関心を持っていまして、日本の産業競争力を強化するためにはベンチャー育成というのは絶対必要だということは私は全く同感なんですが、今までこれについて議論がなされてきてなかった。それが今回取り上げられたという点では、私は大変評価したいと思うんですけれども、先ほど小川委員が言ったように、じゃあこの今の状況で、今、リーマン・ショック以降、昨年、日本ベンチャー学会でも議論されているんですけれども、上場したIPOをやっているのが10数社しかない。今どこに逃げているというか行っているかというと、韓国のKOSDAQで上場すると。それは今の日本の上場条件が非常に厳し過ぎて、とてもではないけれども上場する魅力がない。そういう関係のところからもう一度見直さないと、この問題というのは解けないし、またベンチャーを育成していくという仕組みにならない。エンジェル税制も含めて、全部いろんな問題を含めた形でこの問題にトライしないと成果は出ないと思っています。そういう意味で、このベンチャー育成ということを正面から取り上げたということを私は大変評価しますので、これをぜひ掘り下げて、本当にベンチャーが育つ環境を日本につくるということをご検討いただきたいと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。 時間が迫っております。福島委員。 ○福島委員 英語審査を前回言い出した立場から少し補足して趣旨を確認させていただきます。先程から相澤委員と荒井委員が述べられたポイントはともに私の頭の中にありますけれども、どちらかといえば、やはり日本企業の技術がどれだけグローバルに権利化でき、その権利が如何に安定して活用できるかということが先にあると思っています。企業の事業リスクを考えたとき、社員が生み出した発明に基づいて日本で権利化される内容と諸外国で権利化される内容が、基本的には等価でかつ同時期に権利化されることでが事業リスクの低減にとって一番重要な課題と認識しています。このことを制度的に考えた場合、やはり出願書類の日本語が曖昧なことがもう一つの課題にあるという自らの反省もありますが、同時に英語で審査・権利化されるということになれば、その審査内容は諸外国の審査でも引用されて権利範囲の確定に極めて重要な影響を及ぼすものと思います。その結果、英語審査は事業のグローバルな展開に直接的に結び付いてくると思います。英語審査の実施では、出願人の負担も確かに沢山あると思いますが、先程のスピード感もありますように、ここは割り切った判断で踏み込んだ施策として、また時間軸や内容の目標設定も含めてどう考えるかという点について、是非とも事務局を含めた議論を加速していただきたいと思います。 その中で、具体的なアプローチとして一つの提案をお話しさせていただきたいと思います。例えば、審査ハイウェイの拡充や前回の会合で、荒井委員から共同審査に関する議論があったと思いますが、このような着目されている具体施策の中から英語審査を積極的に導入するような試行も含めたご検討いただければと思います。 ○妹尾会長 ありがとうございます。出願の世界的等価、同期、これがポイントだというご指摘だったと思います。 最後にもうお一方いらっしゃいますか。よろしいですか。 それじゃ、私、一委員として発言をさせてください。今回のこの中はどうしても技術、特許が中心になっていると思いますが、もちろんそれは根本で基本ではありますが、私はデザインの問題がこれは急務だろうとここのところ危機感を高めております。どういうことかというと、まず、デザインがいわゆる従来のアピアランスのデザイン的な意匠の話だけではなくて、テクノロジーと一体化したところが極めて多くなってきています。これはマシーン・ツー・マシーン・インターフェースも全部そうなんですけれども、ユーザーインターフェースもご存じのとおり最近の状況から見ればそうですね。つまり、知財のミックスと知財権のミックスが同時に行われていることがあるというのが第1点なので、デザインの問題も少し取り上げないと危ないなと。 それからもう一つは、技術のほうで技術の流出問題と技術者の流出問題があったと思うんです。これも大変大きな国力としては極めて重要な問題なんですが、それと同時に、ここ1年、デザイナーの海外流出がものすごく加速化しています。ご存じのとおり、日本の代表するデザイナーを胡錦濤が事務所までつくって彼みずから迎え入れたという大事件が起きております。これも皆さんの耳に入っていると思いますけれども。これで杭州や上海と北京に大事務所ができちゃいましたよね。現在、私は、前、ここに参考人で来ていただいている「日経デザイン」の編集長の下川さんなんかとも意見交換をさせていただいているんですけれども、ここの加速はとまりそうもないですね。技術のほうは皆さんいろいろ手だてを打っているんですが、デザイナーのほうは手の打ちようがない。この問題をどうするかということも知財上極めて重要なことだと思っています。単にデザインだけの問題ではなくて、テクノロジーと組み合わさった問題がたくさん出てきていますので。 こういうようなものも早急に手を打たなきゃいけないということで、いつものように問題が起きてから何かをするということではなくて、予防的な施策に向かえればと思います。我々はどうしても水戸黄門シンドロームに入っておりまして、何かが起こっても「助さん、格さん、ちょっと様子を見ましょう」と言っている間にまた村人が何人も殺されるというこの事態、(笑)最後はどうなるかというと、「さあ参りましょう」と言って、葵の御紋という権威と助さん、格さんという暴力で問題を解決するという(笑)ことになってしまうので、これではまずいなということで、我々の施策もリスクマネジメントからやりたいと思っております。 今日の中は、委員の皆様からの大変貴重なご指摘をいただきました。今後、委員の先生方にさらに加速的にご苦労をいただくんですが、実は今日、一番ご苦労をいただくことになったのは事務局ではないかと思っていますので、事務局の皆さん、ご苦労になると思いますがひとつよろしくお願いをいたします。 それでは、予定の時間が参りましたので、事務局のほうから連絡があれば、原参事官、お願いいたします。 ○原参事官 次回の会合でございますけれども、2月17日、木曜日になります。午後2時から4時までの予定でございます。次回は特許庁からこれまでのこの調査会での議論の流れも踏まえましてご意見を伺うこと、それから昨年、「知財計画2010」の進捗状況に関連してヒアリングを行わせていただきましたが、その後の進捗も含めてご説明をいただくという予定にしております。その後の時間で、本日いろいろ頂戴いたしましたご意見も踏まえまして、「知財計画2011」に向けて骨子をご議論いただくための資料を準備いたしまして検討をいただくというふうに考えてございます。 以上でございます。 ○妹尾会長 ありがとうございました。 それでは、時間になりましたので閉会したいと思います。 本日はご多忙のところ、本当にありがとうございました。終了いたします。どうも失礼しました。ありがとうございます。 |