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知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(第10回)
○ 妹尾会長 それでは、時間になりましたので、ただいまから「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の第10回会合を開催させていただきます。 本日は、御多忙のところ、また雨の降る中、御参集いただき、本当にありがとうございます。 本日は、知的財産による競争力強化と国際標準化に関して、「知的財産推進計画2011」に盛り込むべき事項の取りまとめに向けて議論を行いたいと思います。取りまとめの最終の議論だとお考えいただいて結構だと思います。そういう関係もあるので、ひとつよろしくお願いいたします。 本日は、小川委員、岸委員、迫本委員、中村委員、野元委員、渡部委員から御欠席という連絡をいただいております。 大渕委員と相澤益男委員が若干遅れるという御連絡をいただいていますので、始めさせていただきたいと思います。 それでは、議事に先立ちまして、冒頭でありますが、阿久津政務官にお越しいただいていますので、御挨拶をちょうだいできればと思います。よろしくお願いいたします。 ○ 阿久津大臣政務官 皆さん、こんにちは。今日も雨の中、御出席いただきましてありがとうございます。 先ほど妹尾先生からお話がありましたとおり、今日で10回目ということでございます。先ほど、こちらに来るまでの間、秘書官とも話しながら来たんですけれども、こうした継続した御努力を皆様に続けていただくこと、また、続けていただいていることを政府がきちっと理解し続けること、それが大事なんだなという話をさせていただいておりました。これまで9回にわたり、委員の皆様におかれましては、本当にお忙しい中、御議論いただいて、改めて、この場をお借りいたしまして心から御礼を申し上げます。 本日はいよいよ「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」の取りまとめとなります。前回は東日本大震災への対応、特に技術的応急措置等を含めた対応について活発な議論をいただいたと聞いております。 私は内閣府の大臣政務官として防災を担当しておりまして、震災直後から現地にずっと張りつきまして、現地の皆様の切実な声を、生の声を中央にいち早くお届けするよう頑張ってまいりました。そうした背景もあって、なかなかこちらの方に注意が向いていなくて、皆様には申し訳なかったなという思いもあるんですけれども、一刻も早く安全かつ安心な生活を取り戻せるような状況を作りたいと思っておりますし、また、我が国が国難とも言える厳しい状況から創造的な復興に立ち上がる、そういう努力を引き続きしっかりやっていきたいと考えております。 このような厳しい状況だからこそ、知的財産を活用して、日本が再び立ち上がり、世界で輝けるような震災への対応もしっかりとした「知的財産推進計画2011」の策定に向けて、本日も御議論をしていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○ 妹尾会長 どうもありがとうございました。 政務官から、まだまだ頑張れよというお言葉をいただいたわけです。ねぎらってもいただきました。10回目を迎えるということで、この内容を1つでも反映して、1つでも具体的な行動に、政治の方から移していただければ、我々も大変やりがいがあるということだと思います。 それでは、早速、議論に入りたいと思います。今回は取りまとめの会でございますので、全体を通した議論だとお考えください。今日は、当初2時間予定していたんですが、1時間半で済ませられればと思っております。ただ、前回のように議論が早く収束した場合は、終了時間を少し調整していただいて前倒しという感じでもあります。この辺をお含みおきいただきたいと思います。 それでは、配付資料の確認と、前回の議論を踏まえた事務局が修正した資料がございますので、これについて事務局から説明を伺いたいと思います。原参事官、よろしくお願いします。 ○ 原参事官 それでは、配布資料の確認でございます。議事次第の下に資料をとじてございますけれども、資料1が「『知的財産推進計画2011』に盛り込むべき事項(案)」でございます。本日、これにつきまして御検討いただきたいと考えてございます。 それから、参考資料1と書いてございますのが、前回、第9回で出ました主な意見をまとめたものでございます。 それから、資料番号をつけてございませんが、机上では別体として資料を置かせていただいております。特許庁からの資料「東日本大震災発生に伴う特許庁の対応について」と、中企庁発行の資料2点でございます。 それでは、資料の説明に入らせていただきたいと存じます。まず、お手元の資料1を御参照いただければと思います。前回、第9回で御検討いただきました資料からの変更点を赤字で示しております。該当個所は、1〜4ページにかけて4点ないし5点ございます。 まず、資料冒頭の情勢認識でございますけれども、前回は、情勢認識の中の最後に大震災を受けて追記した部分を置いておりましたが、前回の調査会で、今回の報告書、御提言が大震災のこともしっかり踏まえたものであることがわかりやすいようにという御議論もありましたことを受けまして、今回は震災に関する記述を1ページ目の3番目、4番目のパラグラフとしております。 また、前回の専門調査会で、震災がサプライチェーン等に与えた影響に関連しまして、標準化やライセンスを含む知財マネジメントをめぐる状況が変わってくるのではないか、そうした状況を適切に把握しておくというような御指摘もございました。これを受けまして、今般、1ページの4番目のパラグラフの第2文、「また」で始まる部分でございますが、これを追記しております。 あわせて、各論でございますが、前回は4番目に記載しておりました大震災関連の施策でございますけれども、今回は1.として、2〜4ページにかけて記載しております。場所を変更しているということでございます。 同時に、施策部分が幾つかございましたが、これを2つに分けまして、大震災に即応した緊急救済措置を1ページの一番下の(1)という見出しの下に整理をしております。具体的な取組について変更はございません。 それから、大震災に即応というよりも、もう少し期間の長い取組につきましては、4ページに(2)といたしまして項目立てをしております。 4ページの国際標準の見直しに係る取組でございますけれども、赤字部分「をはじめとする大震災の教訓を踏まえた」という記載を追加してございます。 更に、前回、標準化に係る取組は「短期」と書いてございましたけれども、内容的には必ずしも短期では実施に至らないものもあり得るということで、今回は「・中期」という部分を追記しております。 資料1については以上でございます。 続きまして、別体でお配りをしております資料につきまして、簡単に御説明をいたしたいと思います。前回の専門調査会で、被災地域におけるワンストップ相談窓口、知財総合支援窓口において、中小企業から御相談があったときにはしっかりとした対応をという御意見がございました。これに関連しまして、特許庁での対応、それから、中小企業の各種支援策について、参考資料に基づいて御案内いたします。 まず、1番目、特許庁から御提供いただいた資料でございますけれども、「東日本大震災発生に伴う特許庁の対応について」という資料をごらんいただきたいと思います。 1ページ目の特例措置は、前回の専門調査会でも御説明した内容でありますので、今般は割愛をさせていただきたいと思います。 それから、2ページ目でございますけれども、積極的な広報、それから、相談体制の充実ということでございます。特許庁ウェブサイト上に特設のページを開設いたしまして、震災関連情報を一元的に発信するとともに、特許庁内に特別の相談窓口、電話窓口を設置しております。この専用窓口には、5月9日の時点で180件程度の相談が入っているということでございますけれども、被災地におけるワンストップ相談窓口でも、この専用窓口と緊密に連携して対応することになっておりますので、緊急措置の活用等も含めて、被災地域でもしっかりと御案内できるようになっているということかと存じます。 それから、一番下の出願人等への情報提供の項目でございますけれども、窓口における支援のほか、被災地域各県の中小企業、それから、個人の出願人・権利者の方に対しまして、特許庁から救済措置についての御案内を直接郵送しているということでございます。 続きまして、中小企業の事業支援策につきまして御説明いたします。政府では、平成23年度補正予算により、災害からの復旧を目指す中小企業の方に向けて資金繰りの支援などを拡充・強化しておりますが、これについて、中企庁から配布しております2つの資料に基づいて簡単にお話をいたします。 まず、厚い方の「中小企業向け支援策ver.03ガイドブック」というものでございます。政府で用意をいたしております中小企業向け支援策は、このガイドブックにまとめて記載されております。 まず、表紙をおめくりいただいた1〜2ページにかけてがその概要でございます。ここにございますように、支援の柱は、1番目として、1ページにございます低金利の融資、それから、債務保証等の資金繰りの支援。2番目は、2ページの一番上にございますけれども、雇用調整助成金、失業給付等の雇用関係の支援。3番目には、税制面での支援。4番目として、事業用施設の復旧・整備支援という4本になってございます。 個別の支援策につきましては、後ほど、このガイドブックを御参照いただければと存じますけれども、東日本大震災を受けて新設され、あるいは大きく拡充された支援策につきましては、もう一つの1枚紙のパンフレット「中小企業の皆さんへ 震災復興のための支援をご案内します。」を用いて御案内したいと思います。 このパンフレットの表の面にございますとおり、内容としては、震災対応の金融制度の大幅な拡充、それから、震災で被害を受けた事業用施設などの復旧・整備支援でございます。 具体的な支援内容については、裏面をごらんいただければと思いますけれども、金融制度の大幅な拡充の1点目は、左側の黄色の枠内でございます。「東日本大震災復興特別貸付」の創設でございます。新たに長期かつ低金利で融資が受けられる制度でございまして、震災の影響で業況が悪化している中小企業者向けに最大で7億2千万円の融資、それから、直接的または間接的に被害に遭われた方につきましては、更に別枠で3億円の追加融資が可能になってございます。そして、その際の貸付金利も大きく緩和されているということでございます。 それから、2点目でございますけれども、右側の水色の枠にあります「東日本大震災復興緊急保証」の創設でございます。一般の金融機関から借り入れる事業資金について、別枠での保証が受けられる制度でございまして、無担保8千万円、最大2億8千万円までの範囲で借入額の全額を保証するというものでございます。それから、対象者につきましては、今回の大震災で直接被害を受けられた方のみではなく、特定被災区域の事業者と取引があり、業況が悪化している方、それから、風評被害によって急激に業況が悪化している方まで範囲が拡大されているということでございます。この2つの新制度は、次週16日から相談の受付が始まるということでございます。 それから、3点目、小規模事業者の方が無担保・無保証で利用できる「マル経融資」制度につきましても、融資枠の拡大と金利引下げが実施されております。 最後になりますが、一番下の赤の点線で囲んだ部分でございます。中小企業基盤整備機構が仮設の施設を整備いたしまして、市町村が原則無料で貸し出すでありますとか、それから、中小企業がグループを組んで復旧・復興に取り組む際に、国と都道府県が連携して資金補助を行うと、こういった支援策が新設されてございます。 以上が東日本大震災を受けて新設あるいは大きく拡充されました、復旧を目指す中小企業の方への支援策の概要でございました。 以上、席上配布資料についての御説明でございます。事務局からは以上でございます。 ○ 妹尾会長 ありがとうございました。 今、中小企業向けのものを詳しく御説明いただいたんですが、これについて何か、皆さんから御質問はありますか。よろしいでしょうか。 1点、これは震災復興のためのと書いてあるんですけれども、復興というよりはむしろ復旧のためですね。元へ戻すという、いわばクライシスマネジメントで、緊急措置をやるよということが主だと思うんです。復旧の後に復興が続くはずで、復興の方向性は、今後、例えば、科学技術的なものだとか、あるいは中小企業の活動が、次の震災に備えるとか、あるいは震災を契機に災害に強い日本をどうやってつくるかとか、あるいはそこで培ったものを世界へ貢献できるかとか、そういう動きが多分強まるだろうと思うんです。 そのときに知財的な支援ができるかどうかという議論はこれから始まるんだろうと思うんですが、多分、その辺のところが今後の課題ではあるだろうなというのを、今、私は感想として述べるのと、それから、希望として述べるということがあろうと思います。多分、政策誘導であるならば、そういう震災、災害に強いような都市づくり、あるいは生活づくりみたいなものに資するものは、知財的なものも誘導した支援があり得るのではないかと思いますが、この辺は今回の2011を超えた議論になりますので、クライシスマネジメントの次はポストクライシスマネジメント、次へ対するリスクマネジメントということなんで、そこへの展開があると良いなという感じがありました。 それでは、資料1の盛り込むべき事項(案)について、赤字のものが前回に御指摘をいただいた部分を踏まえて修正された部分ですが、全体を通して、どの部分から始めても結構なんですが、委員の先生方から御意見をちょうだいしたいと思います。挙手をお願いしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。 どうぞ。 ○ 相澤(英)委員 1ページ目の3つ目の○で、「知的財産戦略の分野でも」と書いてありますけれども、先ほど政務官からの御指摘もありましたように、大震災後における知的財産の役割を強調していただいた方がよろしいと思います。 ○ 妹尾会長 まず最初のところは、「戦略分野でも」と言うと何となく寂しいよね、もっと強調してほしいよねということですね。 ○ 相澤(英)委員 そういうことです。もう少し前向きな感じがよろしいと思います。 ○ 妹尾会長 わかりました。特に知財が重要だからみたいなニュアンスが入るといいと。 ○ 相澤(英)委員 経済発展のための技術開発の促進はこれから大事であるということで、これからもっと技術投資するためには、知的財産は重要であるという流れがあった方が良いのではないかということです。 ○ 妹尾会長 わかりました。技術もおっしゃるとおりですし、今、低下した日本のブランドみたいなものも含めて、知財戦略としては強調すべき点だと思いますので、それは是非織り込みたいと思います。工夫させていただきたいと思います。 赤字以外の部分でも結構です。 ○ 相澤(英)委員 赤字以外のところで、4ページの2の情勢認識のところで、制度間の国際競争が指摘されています。ところが、その先のどれが制度間国際競争のための措置なのか、よくわかりません。制度間国際競争があるのに、我々は何をしなければいけないかというのが、明確ではないと思います。 ○ 近藤局長 この資料に書いてある取組の全部が該当します。例えば、5ページの英語での国際的な予備審査をしっかりやっていくようなことをしっかりやっていくということ。また、国際的に審査官が協議をして、諸外国に負けないようにやっていく。さらに、特許審査ハイウェイの主要国への拡大も、いろいろな国と連携をしていく。この連休中に中国とも話が進んだようですけれども、そういったところもやっていかないと制度間競争に遅れますよということで、今、おっしゃった点は、これら全部が受けている積もりです。 ○ 相澤(英)委員 外国と協力をするとかというようなことでは、制度間の競争の対策としては十分ではないという意見だけを申し上げておきます。 あと、15ページの一番下「知財教育を実施している大学の連携強化」のところの文章です。 ここで「産業界の協力を得て」とあるんですが、「協力も得て」ではないかと思います。 それから、その次の「これにより、人財交流、知財マネジメントに関する教育内容の充実」について、知的財産法の教育の充実も知財専門職大学院ではしていただきたいと思います。 あと、営業秘密に関連して、大学における研究の自由の大切さを私の意見として強調しておきたいと思います。 以上です。 ○ 妹尾会長 ありがとうございました。 今の「も」みたいな話は、できる限り織り込みたいと思います。 ただ、法科大学院をないがしろにしているという意味ではなくて、アクセントが、従来のようにやって、もっと移行しなくてはいけないというニュアンスなんで。 ○ 相澤(英)委員 この中で、きちんと、知的財産法の教育もやってくださいということも入れていただきたいというのがお願いです。 ○ 妹尾会長 わかりました。ありがとうございます。 それでは、ほかに。佐々木委員。 ○ 佐々木委員 前回の議論に参加できなくて済みませんでした。もし前回御議論された上での結論だとしたら、併せて事前におわび申し上げておきます。情勢認識のところが主なところですが、今まで構造的にどうあるべきかという議論を進め、基本骨格はこうですよねという話をしてきて、そこで大震災が起こったわけですけれども、正直言って、大震災に対していろいろ緊急的な措置を講じることと、大震災に対して知財の構造改革は何かできるということが、余り現実的には結びついていなくて、流れとしては、構造的にはこうです、その上で大震災があったので、ここのところだけはこうしますというふうにやった方がわかりやすいのかなという感じはします。途中に入れてしまっていることで、大震災に対して構造改革で何ができるかとか、逆に希釈化されて、一体何を狙っているのかちょっとわかりにくくなるんではないかと、私見ですが思いますので、フレーズを若干変えて、ここまでが構造です、大震災があったので緊急対応して、更にどの部分を加速しますと言うんだったら、そういうつくりにした方がかえってわかりやすいのかなという感じがします。 以上です。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 今、佐々木委員がおっしゃっていたことは、実は我々も事務局と大分議論したところなんですけれども、おっしゃることは非常によくわかります。例えば、4ページの(2)などがそれの先出しの部分なんです。これは、ここの委員の方は非常によくわかると思うんですが、初めて見た方は確かにちょっとわかりにくい部分かもしれません。前回申し上げたように、サプライチェーンが大震災によって完全に動きを変えるというより、むしろ加速してしまうから、標準部品化が始まるよね、それから、生産拠点の国際分散が始まるよね、そうすると、独自技術を独自生産して独自供給するという知財権マネジメントの根幹に関わるビジネスモデルは大きく変容せざるを得ないよね、そのときに何の問題が起きるか、まだ見通しは立たないけれども、恐らく大変なことが起こるということは予想できるよね。こういったことがあるんですが、それを今、ここで書き込むという段階にはまだ来ていないということなんです。そこで、ここでとにかく調査をして、ウォッチングとモニターをしておかないといけないよな、というところでとどめてあるというのが、実はここの書きぶりなんです。 ○ 佐々木委員 大震災のトリガーとしての面をごらんになっているということですね。わかりました。 ○ 妹尾会長 ええ、そうなんですね。ですから、佐々木委員のおっしゃることは私も切実に感じるんですけれども、だからといって、これ以上書いてしまうと、次々に先を書かざるをえなくなるので、まずは2011を、ここで一旦区切りをつけるためには、こういう書き方かなと。まだまだもう少し工夫の余地はあるかもしれませんけれども、その辺、ちょっと考えさせてください。おっしゃる御趣旨は私も共有しているつもりですし、事務局も非常に認識している話なんですが、その書きぶりが何とも言えない書き方になっているんで、恐縮です。 ○ 佐々木委員 わかりました。ありがとうございます。 ○ 妹尾会長 安藤さん。 ○ 安藤参事官 補足です。既に妹尾会長からお話がございましたが、実は、前回、大震災の部分だけ切り離して後ろの方に書きましたら、逆に取ってつけたような感じがあるという御指摘がありました。そこを少し前に出しましたのと、同時に、妹尾座長から、構造的な問題が同時に起こってくるので、その部分もしっかり書き込んで欲しいとの御指摘があり、実は両方のお話をいただいていました。 加えて、この専門調査会と双子の専門調査会であるコンテンツ強化専門調査会では、クールジャパンの議論を進めています。これは観光、食をはじめとして、日本を売り込んでいくという話ですが、大震災の打撃を大きく受けています。冒頭、中小企業支援策を御紹介した際に、妹尾会長から、復旧だけでなくて、復興のところに力点が移るという御指摘をいただきましたが、正にその力点の部分については、そちらの方で相当書き込みをする努力をしております。同時に、「知的財産推進計画2011」を準備してまいりますが、そうした中で、今回の御議論を踏まえながら取りまとめに向けて準備を進めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。 ○ 佐々木委員 ありがとうございました。 ○ 妹尾会長 西山委員。 ○ 西山委員 赤字の部分に関してのコメントです。震災後の観察としまして、イノベーションの担い手であった外国人のエンジニアが、この2か月間で帰国、もしくはシンガポール、香港に行ってしまいました。留学生、特に工学系の学生がかなり激減していまして、せっかく知恵を持っている人を海外から日本にと言って掲げてきたのが、この3・11を機に達成しにくくなってきている現状があるように思います。 特にITの分野においては、どこにいても仕事ができるようになってきているので、その現象は顕著です。 さらに、日本人が海外に行って、向こうのエンジニアと仮設オフィスみたいなところで仕事をするようになってきていて、これまで、重要な要件や難しいプロジェクトは日本でやって、簡単なものは中国の大連でやるといった住み分けも、変わりつつあります。あくまでも私の意見ですが、ワークフォースは外にいるから、プロマネが海外に行くようになり、知の流出の加速が起こり始めているようにも思います。この流れは不可逆になる可能性があります。 赤字のコメントになる、「大震災は我が国に未曽有の被害をもたらした」という記述は、「被災企業」のみを対象にしているわけですが、間接的に影響を受けたところも、対象とすべきだと思います。東日本にオフィスがなくても、間接的にイノベーションを生むはずだった企業、もしくはベンチャー、もしくは研究所が影響を受けていることは理解した上で、この赤字の段落のところを修正盛すべきだと思います。 以上が赤字の部分に対する私の意見です。 ○ 妹尾会長 とにかく知を取り込むことについて、非常に御関心が多かったので、今の御指摘はおっしゃるとおりだと思います。 3〜4回前に私が指摘したとおり、テクノロジーの関係者だけではなくて、デザイナーだとか、そういう関係の方々の流出も更に加速していくわけです。さらに、それを使うプロマネまでが流出してしまったら、何が残るのということになる。恐らく大震災を契機に、世界に対する災害復興対応は日本を拠点にして全部やるんだよみたいな形で、もう一回呼び戻すことができるかどうかなんですけれども、これは相当難しいでしょうね。ただ、ここへ書き込む形はどういうふうにしたらいいか、ちょっと難しいですね。安藤さん、この辺のところはどうだろう。今の問題意識は非常によくわかるんですけれどもね。 ○ 安藤参事官 実は、その辺りのことは、「知的財産推進計画2011」全体の議論にもかかわる話です。西山委員の御指摘のとおり、国外に抜け出てしまった人たちや、来なくなってしまったというのも相当深刻と聞いております。観光でも3月で比べますと、前年に比べて50%減。しかも、ドイツ、フランス、香港が6割減。インドからは余り減っていなくて、3割減ぐらいでとどまっていますが、ドイツ、フランス、香港といったところから人がなかなか来なくなっています。我々が聞いている範囲でも、研究所から外国人のポスドクが帰ってしまったとか、留学生が帰ってしまって、特に国際的な運用をしている大学では相当深刻な影響が出ていると聞いております。 一方で、御指摘のように、オープン、グローバル、フラットな経済構造になっていく中で、ボーダーレスですから、グローバル・ネットワークの中でどんどん優秀な人財が抜けてしまうという危機感は非常に強いわけです。逆に、そのためにも、日本国内の魅力を高めていく努力をきっちり行っていかなければならないと思います。 大前提としては、正確な情報発信がないといけません。日本全体に震災の影響があって、日本全体に原子力の影響があるという誤解も海外では相当ありますので、そこはきちんと解きほぐしていく努力が大事になります。今、正にクールジャパンの取組の一環としても、各府省が本当に連携しながら情報発信を行おうとしています。例えば、昨日から始まったカンヌ映画祭でも、日本の状況を発信していくという努力を関係省庁が連携しながら進めております。更に進んで、クリエイティブな拠点づくりということを含めて、もう一回、根本に立ち返って、日本の中で実行していかないと、流出だけの一方通行になってしまいます。こうした危機感を持っておりますので、知財計画全体の方でまとめさせていただくというのは1つの案なのかもしれません。こちらの専門調査会の提言の中でも、どういう形で反映することができるか、事務局が考えました上で、妹尾会長とも御相談をしたいと存じます。 ○ 西山委員 ありがとうございます。 実は、前回の回で妹尾委員長が、この震災を機に共通化の機運が高まって、流通や規格化の流れに対する業界の意識が変わりつつあるというペットボトルの事例を出されたものですから、それに呼応する形で、イノベーションの担い手が日本に戻ってこなくなる可能性をうまく重ね合わせたかったというのが私の趣旨でございまして、仮に広報を頑張って、イメージを3年後、5年後に取り戻したとしても、仮に戻ってきたとしても、その手前にできること、例えば、共通化ではなくて、そもそも知は世界の方にたくさんあるんだから、これを機に世界中にある知恵をつないでおいて、知財だけはうまく日本に登録されるとか、もしくは知財をモニターする方法だけは今回獲得しておくとか、ピンチをチャンスに変えるような施策が盛り込めるきっかけになればということで、元に戻すというのは当然、今、各省庁、官邸も含めて努力されていらっしゃると思いますし、それが非常に重要であることは間違いないんですが、そうではなくて、もしもマクロに見たときに、知の担い手が日本よりも海外に多いんだということが浮き出るならば、外にあるものを日本に登録させる機運を高めてしまって、一丸となって、知財マネジメントの一環として定着させるという契機に使えないかという趣旨で申し上げたつもりです。説明不足で済みません。 ○ 妹尾会長 ありがとうございました。 相澤委員。 ○ 相澤(益)委員 今の議論は非常に重要なことだと思います。実は、先ほどの御指摘のように、人財が非常に動いているわけです。ただ、一ころよりは回復している流れも出てきました。先日、総合科学技術会議が大臣、有識者ペーパーとして出した中に、今回の大震災における、日本在住の外国人が戻ってしまったり、こちらに来るはずの人が来なかったり、いろいろな状況が起こっていることを述べています。もう一つは、日本の頭脳と考えられるような人たちが流出してしまうんではないかと。そういう危惧を書きつらねると、トータルとしてどういう印象になるかというと、今まで特に若手が国内志向型に縮こまっている、もっと海外に出ていくべきだということを主張していたし、それから、海外からももっと来るようにするべきだということを展開したのに、国内かこいこみに見えてしまう。いろいろな議論の結果、そういうネガティブな表現はやめようということにいたしました。今、西山委員が言われたような、もっと世界の知を日本に引きつける、それから、日本の知をもっとグローバルに展開していく、これを具体的に、仕組み上、どういうことをやったらば、そういうことに向かうだろうかと、そこを積極的にプッシュしていくことにしようということになりまして、いろいろと検討しています。ですから、そういうようなことで、これは知財だけではなく、あらゆるところに日本が本当のグローバルな立場での展開をしていくというところで、重要な位置づけになるんではないかと思います。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 今のお話は、どちらのニュアンスもあるわけですけれども、インサイドアウトを進めるという話と、アウトサイドインを進めるという双方向あるわけです。問題はそれのバランスと、それから、産業政策的にどうやったらそこで必ず日本優位があるかということが求められるわけで、問題意識は多分、皆さん共通していると思うんです。問題は、具体的にどうするかということですが、今回ここで書き込めるわけではないので、次回以降の課題ということで我々は認識したいと思います。 どうぞ。 ○ 高柳委員 今の点に関連しまして、私もお2人の委員の意見に本当に賛同するところですけれども、4ページの「(2)大震災による状況変化を踏まえた対応を進める。」という表現がやや消極的な対応に私などは思えるんですね。これも大切だと思うんですけれども、状況変化及び復興ビジョンというんですか、当面の状況変化に対応することと、更に積極的な復興ビジョンを踏まえた施策というところを入れていただければいいのかなというのと、もう一つは、具体的なポツの大震災の教訓を踏まえた国際標準の見直し、これだけにとどまっているところが、これも重要でしょうけれども、もう一つのポツ、先ほどのイノベーションハブをもっと日本に取り込むような仕組み、あるいは知財マネジメント、その辺を復興ビジョンに合わせた積極的な取組とか、そういうものを今後検討すべきではないかという1つのメッセージをここに入れていただければ、大震災の後の消極的対応だけではないよ、もっと積極的に取り込んで、これをチャンスにするんだというようなメッセージを加えていただければいいかなと思います。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 これは先ほどの佐々木委員との議論の中にも出て、思いは皆さん共通だと思います。今のお話の中に「復興に向けた」という言い方はあるかもしれませんね。復興ビジョンと言うと、復興ビジョンがあるかのように言わなければいけないので、多分、大震災の状況変化を踏まえ、復興に向けた対応を進めるとかいうような形が1つあり得るかもしれません。それで、中身については、今、お話があったようなところを、もう一つニュアンスが出るかどうか、少し工夫をさせていただきたいと思います。 中島委員。 ○ 中島委員 今の関連でございますけれども、政府の復興会議がどの程度の進捗、内容になるのかというのがまだ不透明なところがあると思いますけれども、それによっては東日本に全く新しい青写真ができるということも聞いております。全く新しいまちづくりとか、全く新しいエネルギーシステムとか、そういったものが進んでいくと、当然その中に新しい創作が出てきて、それを日本が新しい世界モデルとして世界に普及、公開してリーダーシップを取っていくということになると、まさしく知財戦略そのものになると思うわけです。それは復興会議の青写真ができてからの話だよと言うと、来年の話になる。そうすると2011には全く触れないのか。そうすると、多分、1年過ぎてやっと乗って、動き出すのには2年目ということになって、遅いのではないか。そうすると、わからないところで、ここに何を書くのかなというジレンマはあるとは思うんですけれども、今の表現も、多少そういうことを、戦略的に新しい復興に向けたところの創作をいかに知財の戦略会議として囲い込みをして、日本の知財ポートフォリオの中に組み込んでいくのかという視点が必要かなと思います。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 この辺のところは、先ほど佐々木委員、高柳委員がおっしゃったところ、あるいは西山委員、相澤委員がおっしゃったところと共通しておりまして、思いとしては我々は同じなんですが、この段階でどういうふうに書き込めるか、少し工夫をさせていただきたいと思います。多分、ここのところは、思いは皆さん共通だと思います。 ちなみに、ちょっと話題提供なんです。先ほど安藤参事官がおっしゃられた観光が極めて危ないというのは、我々の委員会の話ではないんですけれども、私のゼミの観光チームの連中が調べています。一人が怒っていたのですが、福島がなぜか渋谷の中にあるというアメリカのサイトがたくさんあるとか、そういうのが発見されておりまして、これはどうなっているんだみたいな話があります。その一方で、今年、別の1人は震災地観光の研究を始めています。震災地観光というのは、要するに、グラウンドゼロが観光地なのか、チェルノブイリが観光地なのか、広島ドームが観光地なのかと、こういう状況なんですけれども、そういうのが現実には全部あるわけで、兵どもの夢の跡というのも実は震災地観光であります。なので、ここのところが、ピンチをチャンスに、そして地元へどういう形で貢献できるかという工夫は、まだまだ我々は始められると思っています。こんなところを、休憩時間的な話題の提供とさせていただきました。 ○ 西山委員 1つつけ加えてもいいですか。震災後にどうやって、自発的に企業や市民がイノベーションを起こしたのか、ということを私たちは、認識すべきだと思います。企業でも政府でもなく、ユーザーがとって、危機へのレスポンスとして特筆すべきと思ったのは、風評被害で野菜を出荷できなくなった地域において、無料で使えるルーターとガイガーカウンターをくっつけたセンサーネットワークがあります。これは、ユーザーが自発的に作り上げて、風評を軽減するために必要とされる事実をWi−Fiで飛ばしはじめました。このようなネットワークはユーザーイノベーションの事例で、大変注目に値すると思います。実際、似たようなものは結構あります。 まさに「クライシスが起こるとイノベーションが起こる」というセオリー通りのことが今起こっているわけです。そこに何か新しい産業につながる萌芽があるならば、そういったものをピックアップして、何らかの保護をすることができれば、これは知財マネジメントの一環として私たちが扱えることになると思います。 クライシスを契機に生まれたイノベーションを上手に育てていく視点があってもいいのではないかなと思い、意見を述べさせていただきました。 ○ 妹尾会長 まさにおっしゃるとおりですね。今、いろんな試みが起こって、特に情報系ですごいですよね。今のガイガーカウンターの話は、もう本が出ています。もう雑誌が出ています。手づくりでやっておいて、どうやってネットワークで飛ばすかみたいな話は、昨日、一昨日、私は本屋の店頭で見つけています。 ○ 西山委員 産地をつないでいくのも生まれ出しますね。 ○ 妹尾会長 こういうところがまさにイノベーションが現実に起こっているということだと思います。おっしゃるとおりだと思います。 それでは、ほかの分野について。荒井委員、お願いします。 ○ 荒井委員 15ページの人財の関係ですが、4の(1)でグローバルネットワーク時代、特にこういう切り口での人財育成プランというのは非常に必要なことだと思います。従来、やや国内志向で、独立した人財が多かったと思いますので、是非、グローバル、ネットワークという観点からの育成プランを、できるだけ早めに立派なものをつくっていただきたいという希望の表明です。非常にこれが求められているんではないかと思いますので、是非お願いしたいと思います。 以上です。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 これは本当はプランを確立し、更にそれを実施に移すというのを前倒しで行われないといけない、そういうことですね。ありがとうございます。 ほかに皆さんから何かありますか。これはやり出すと、次々に書き換えて、いつまでたっても取りまとめができないという状況になるので、一旦ここで切りますけれども、今後の課題だとか、あるいは、ここは強調したいよねとかいう御意見でも結構ですので、何かございましたら、いかがでしょうか。 それでは、安藤さん。 ○ 安藤参事官 先ほど中島委員からの御発言で、復興会議との関係や、1年遅れになるのではないかという御懸念がございました。実は、復興会議の事務局ともよく情報交換をしようという動きもしております。一方で、この専門調査会とは別途の形で、明日予定のコンテンツ強化専門調査会の方では、クールジャパンの対応策を震災を踏まえて相当に書き込んでいます。それは、単に書込みのみならず、当然、施策の裏付けを行い、関係省庁と協働しながら進めております。例えば、西山委員の御指摘である風評被害でも、各国から、原産地証明を出さないと日本から輸入させないということが相当出てきております。そういった部分でも外交努力も行う一方で、更に生産者の方が証明書を取りやすくするような仕掛けづくりについても議論しています。県庁だけで受け付けるような制度ということになりますと、県内でも県庁所在地まで、出かけなければならないようになってしまいます。こうなると、迅速でもなければ、ユーザーの方には全く不便極まりないということになってしまいます。こういう部分で、何とかならないのかなどという話を農水省の皆さんとも一緒に議論して、そういう部分も文章の中に活かしていこうという努力をしています。 また、風評被害の関連では、先ほどFUKUSHIMAは渋谷の中にあるといったようなお話も含め、いろいろな報道が出ています。外務省の方で、相当努力してくれています。変な話が出たときには、在外公館を通じて、1,000件以上クレームをつけています。その辺りのところについては、相当に充実した形で、まずは明日、コンテンツ強化専門調査会でも御議論いただき、そして、「知財計画2011」については、6月ぐらいを1つの目途にしていますが、その中にきっちり盛り込んで、今年度から実行に移していくという努力をしています。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 局長。 ○ 近藤局長 まだ事務局の中で打ち合わせたわけではありませんが、今の話を伺っていて、復興構想会議でどんな報告書が出てくるのか、私もよく分かりませんし、あと1か月ぐらい待ったら立派なのが出てくるのかも分かりません。したがって、待っていられないというのが現実です。 さはさりながら、知財計画に関連するような提言がたくさん出てきたり、その報告書を踏まえて何かやろうとするとき、こういう施策が必要だなということになったら、「知財計画2011」の追補を作ればよいのであって、次の「知財計画2012」まで待つこともありません。別に本部会合は年に何回開催と決まっているわけでもないので、必要に応じて追補版をつくるということを腹に持てば、いかようにも対応できると、こんなふうに思っています。その辺りはこれからの動きをよく見ながら、柔軟に対応したいと、そういう方向でやりたいと思います。 ○ 妹尾会長 事務局のみならず、委員の先生方もウっと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、中島先生、本部委員としても是非その辺のところを御配慮いただければと思います。我々、何も1回と決まっているわけではなくて、臨時国会があるように、臨時でどんどんやって、そういう機動性を持たせた専門調査会にしていっても良いと思います。そういう契機になればと思います。これは私の私的発言でございます。 局長から力強い御発言があったので、事務局の負担はともかくとして、そういう観点で一旦は取りまとめるというスタイルで行きたいと思います。 佐々木委員、お願いします。 ○ 佐々木委員 今の中国との関係等々で、全体を通して、我々の頭の中に、先進的な技術は我々は持ってやっていきますよ、イノベーションはやっていきますよというパーセプションでずっと動いてきていて、実態としてはそうだろうと思うんですが、最近思っていますのは、いろいろな会社単位でも、コア業務を中に残して、非コアのところは外でというのを一生懸命進めてきているんです。今でもやっています。ただ、それをやると、結果的には非コアのところ、どんな仕事でもやりまっせと言ってやってくれているところが力がついて、マネジメントとしているようで、結果的にはマネジメントできない状況になる。コアのところは、なかなかコアコンピタンスが残せないということが起こっていて、これが会社と子会社という感じだったらいいんですけれども、国と国でもそういうことがないのかなと。 例えば、世界で経済活動して、国が生きていくためだったら何でもやりますよとやっているところが結果的にはいろんな力をつけていくということになって、日本はこういうところをやればいいですねというのを余り思い過ぎない方がいいのかなという感じはします。特にイノベーションの担い手である中小企業に対し、先進的なイノベーションを起こす中小企業だけにフォーカスを当てたような形になるとまずいなと思っていまして、それまで一生懸命やって、結果的に力をつけるようなところがあるんで、その辺が本来のシステムに基づいて、どういう仕掛けをしていったらいいかというのは、勿論、答えがあってしゃべっているわけではありませんが、問題意識として、最近ふとそういうことを考えることがありましたので、もし今後の検討課題に挙げられれば挙げていただければ、また私も考えたいと思います。 以上です。 ○ 妹尾会長 ありがとうございました。 今、佐々木委員がおっしゃられたのは、実は食品業界で一番典型的に出ている問題ですね。ナショナルプラントが生産外注を季節的にやると、生産のノウハウが全部外注先に移転してしまって、それがプライベートブランドの潜在力になるという、ビジネスモデル上の、我々が非常に注視している問題と全く同型。それが多分、自動車業界だとか、いろんなところでも出始めているというのが1点目です。 もう一点は何かというと、今のようなカンパニー問題がカントリー問題になるという懸念があるということだと思います。確かにこれは知財流出の1つの形、特に特許ではなくて、生産ノウハウの話が全部絡んできますので、おっしゃるとおり、技術流出の国家的な話がつきまとうんではないかと思います。ありがとうございます。 ほかに。山本委員。 ○ 山本委員 私は、この会議はやはり知的財産の政策を議論する場なので、何でもかんでも盛り込むのはどうかなと思っています。1つ、震災対応とは違うかもしれませんが、電力需要とか、いろんな問題があるわけで、国際標準という観点で考えると、産業革新機構はバイオの世界では日本中の大学の技術を4分野に分けて、バンドル化していくという施策はもう始めているのですが、例えば、電気、要するに、燃料電池であるとか、太陽光発電であるとか、バイオマスであるとか、そういったものに関してはまだ実行していないと認識しています。そういった意味では、いろいろな大学に個々の部品のような技術がいろいろあって、そういったものをバンドル化していくというのは、政策の1つとしてはあるのかなと思っております。勿論、検討はされていると思ってはいるのですが、まだ実行はしていないという認識ですので、早めていただければと思います。 ○ 妹尾会長 なるほど。 これは安藤さん。 ○ 安藤参事官 産業革新機構についての御指摘がありましたが、実は、もう既に、例えば、小型風力のゼファーには既に10億円の投資が実行されておりますし、蓄電池、次世代電池ではエナックスに35億円プラスアルファの投資が実行されている。 さらに、これはまだオープンにはできませんし、私も情報を全部つかんでおりませんが、公的支援を受けてクリーンテック系でのファンド組成の検討が別途進んでおりますので、それなりに物事は動いていると思います。 一方、科学技術政策全体の中で、グリーンイノベーションは非常に大事な点です。第4期科学技術基本計画を含め、科学技術政策全体の中でも取組が進められていますし、知財戦略の中でも当然その部分は大事になると認識しています。 ○ 妹尾会長 山本委員。 ○ 山本委員 個々の会社に投資するというのは、産業革新機構がやっておられる1つのファンドとしての機能なので、それはどんどんやっていただければいいのですが、私が申し上げたのは、日本中の大学とか、旧国立研究所にいろいろな知財があります。それをバンドル化することで、もしかすると、そこから新しい会社が生まれるかもしれませんし、バンドル化することによって、どこかの会社でライセンスがなされて事業化されるかもしれない。そういったものの取組をもう少し早くしていただいた方が、電力問題というのは非常に深刻な問題ですので、社会に貢献ができるのではないかと考えているということです。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 このバンドルの問題は、アメリカから日本に出てきているベンチャーキャピタルなどが、いわゆる知財権を全部かき集めてバンドルして再販売するみたいなことが懸念されているわけですけれども、それと関係してくる場合、知財的な問題にもなり得る話ですね。その辺をちゃんと考えておいた方が良いよねという御指摘だし、必要ならば国として対策を進めるべきだという御意見でよろしいわけですね。わかりました。ありがとうございます。 原参事官。 ○ 原参事官 今、山本委員から御指摘がございましたバンドル化の件に関連しまして、お手元にあります資料1の14ページの下から2番目の施策でございますけれども、「知財ファンドを通じて知的財産の活用を図る仕組みの構築」という取組を掲げさせていただいております。震災の影響がどのように出るかは分からない部分もございますが、担当府省とも協調して取り組んでいくことも考えてまいりたいと思います。 ○ 妹尾会長 ここでパッケージ化と呼んでいるのが、今、山本委員がおっしゃっているバンドル化と同じと考えてよろしいですね。 ○ 山本委員 同じです。 ○ 妹尾会長 基本的にはね。クラスタリングしておいて、セットで相乗的な価値を設けて提供する、そういう意味ですね。 ○ 山本委員 おっしゃるとおりです。 ○ 妹尾会長 西山委員。 ○ 西山委員 関連してなんですが、赤文字のところで、「大震災によって被害を受けた企業」となっていると、「東日本に位置している企業」となりがちですが、電力供給の低下により、玉突き的に起こった関連する問題に対しても、知財の側面からサポートはできないものでしょうか?どのように入れるかはわからないんですが、一言二言入れることによって済む話だとしたら、それは十分価値のある作業だと思います。特にエネルギーは、これから日本が輸出していくさまざまな戦略パッケージのコンポーネントの1つだと思いますので、必ず議論すべきトピックスのような気もいたします。そこは今年も詳細に議論することになると思いますので、読んだ人が、あっ、電力も扱うんだというふうになっているといいのではないかと思いました。 ○ 妹尾会長 おっしゃることはごもっともですが、知財計画の範囲なので、特定分野的な書きようがどこまで可能なのかというのは逆にあろうかと思います。そこのところが言いたいところなんですが、どうでしょうね。 ○ 安藤参事官 ありがとうございます。非常に大事な御指摘です。 この提言は、御指摘のように被災企業そのものだけではなくて、直接・間接に日本全体が影響を受けておりますので、その中での知財マネジメントをどうするのかという問題意識が全部を貫いています。 他方、「知財計画2011」の方では、個々の施策に先立って、総論の部分に、情勢認識を記述するよう準備を進めています。日本のみならず、世界の経済・社会の構造変化に加え、大震災の影響も視野に入れながら、サプライチェーンや、いろんなことが大きな影響を受けております。 一方、先ほど来、御議論をいただいていますが、ピンチをチャンスにどのように転換していくのかという観点からは、先ほどクールジャパンについてはご紹介しましたが、クラウドなどを上手に使うことで、危機に対してよりロバストな対応もできてまいります。 他方で、資源制約、環境制約、エネルギー制約といった諸制約が非常に大きくなっていくわけですが、そうした中で、どのようにサプライチェーンを更に磨いてバージョンアップしていくのか、という問題意識も少し書き込む努力をしようと思っています。御指摘を踏まえながら、準備を進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。 ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 ほかに何かございますか。よろしいようでしたら、全体を通して、本日伺った御意見、勿論、反映し得るところは、字句の修正等、少し検討させていただきたいと思います。 もう一回確認をしたいのは、これは知財戦略本部の専門調査会だということです。知財というものは言い出すと全部が入ってくるんで、あれもこれも書かなければいけないという話になってしまいがちですが、そこのところはどこで切り分けるかということがある。 それから、もう一つは、これは盛り込むべき事項の案でありまして、知財計画そのものの文案ではございません。それから、もう一つのコンテンツ委員会、その他もろもろを入れて、本部の方で成案になるということです。そこの状況だけは是非御確認をいただきたいと思います。なのに、ここに全部書いていないからけしからんとかいうことではなく、御理解をいただきたいと思います。 勿論、趣旨として、字句修正ないしはニュアンスをもっと強調した方がいいという点は、私は事務局と一緒になって最終的な取りまとめ、ここの段階での取りまとめについては進めていきたいと思いますが、特になければ、あとは会長である私に御一任をいただきたいと思うのですが、よろしゅうございますか。 (「異議なし」と声あり) ○ 妹尾会長 ありがとうございます。 それでは、本日の議論を踏まえつつ、必要な修正を行いたいと思います。その上で、本専門調査会としては、企画委員会、それから、知財戦略本部、それぞれに提出して、これを御報告することにしたいと思います。これを1つの大きな柱として「知的財産推進計画2011」が書かれるようにということになります。そのために我々は最大のフィードができるようにということになると思います。 我々はこれを10回やってきたんですが、これは大変難しさがあることは皆さんよく御承知おきいただけると思うんです。一方で、より全体、より俯瞰的な議論をしたいねということがあるわけです。しかしそれをやると、知的財産という性格上、どこまででも行ってしまうんです。ですので、どこまででも行かなければいけないのは一方であるんですが、どこで落ち着かせるかという難しさがもう一方であります。 それから、各省の政策の集合体のホチキスであってはいけないので、我々としての、内閣としての俯瞰的な立場を貫かなければいけない。しかし、そうすると、どこまででも上に行ってしまう。この難しさが一方にあります。また他方で何があるかというと、各省で具体的に、もうすぐにも進めなければいけないことについてはすぐにでも進めてくれという後押しをしなくてはいけないという、極めて個別具体的に、あるいは臨機応変的な政策対応をしなくてはいけないということがあるわけです。そのバランスを取りつつやるということです。その難しさの1つの解としては、先ほど局長がおっしゃいましたような、必要に応じては増補も出しても良いではないかという手法もあるということです。我々はまずここで一段落つけたいと、こういうふうに思います。 それでは、あとは私と事務局で戦略本部に提出して意見具申をするというスタイルにしたいと思います。 事務局から何かありますか。 ○ 原参事官 ございません。 ○ 妹尾会長 局長、最後に御挨拶をいただけますか。 ○ 近藤局長 本当にありがとうございました。 この専門調査会、昨年の11月12日が第1回でありまして、今日がちょうど6か月目でございます。この6か月の間に10回、相当タイトなスケジュールを重ねてきたわけでございます。本当に熱心に御議論いただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。3月に骨子を取りまとめて以降も、震災がこういう形で出て、また、それに対して、皆様方からの様々な意見もいただいて、本当に現場の声を、生の声を聞きながら取りまとめることができたと、感謝をしている次第でございます。 今、妹尾会長からお話がございましたように、これを次回の知財本部で報告をして、「知的財産推進計画2011」という形で取りまとめたいと考えているところでございます。あと1か月弱ぐらいの間に知財の方向性を出したいと、こんなふうに考えているところでございます。 先日も一度お話をしましたが、3月末に骨子を取りまとめた段階でも、総理に説明差し上げたところ、総理からは、これからの日本にはこうした知的財産の問題が非常に重要だ、こういうことを生かしてやっていくんだという御発言があったことを改めて皆様に御報告をしたいと思います。 妹尾会長を始め諸先生の御提言、御努力のお陰でこういう形で取りまとめられたことに、本当に心から感謝を申し上げて、お礼の御挨拶としたいと思います。本当にありがとうございました。 ○ 妹尾会長 今、局長に言われて思って、半年で10回ですか。 ○ 近藤局長 そうです。 ○ 妹尾会長 国際標準タスクフォースを兼務されている方は半年に22回やられたんで、合計32回やったということですね。タスクフォースの方はもっと、つかみ合いになるような激論が山ほどありましたので、両方兼務されていた先生方、本当に御苦労さまでした。こちらの10回も、皆さん、前後の時間もいただいて恐縮です。問題提起をどんどん、まだまだしていただきたいと思いますので、その辺は御遠慮なく事務局や私の方に言っていただければと思います。 それでは、ちょっと時間早いですけれども、今日はこれで終えたいと思います。どうも皆さん、長いことありがとうございました。(拍手) |