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知的財産による競争力強化専門調査会
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知的財産による競争力強化専門調査会
情報通信分野プロジェクトチーム会合(第1回)
議事要旨
日 時
:
2007年9月13日(木)15:55〜18:00
場 所
:
知的財産戦略推進事務局会議室
出席者
:
加藤委員(主査)、倉永委員、小泉委員、田中委員、平松委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官
情報通信分野における知的財産に係る課題及び知的財産戦略の在り方について議論。各委員の意見の概要は以下のとおり。
【全般的な論点】
○
企業の活動がグローバル化してパラダイムシフトが起こっている。今まで欧米を見て制度を作ってきたが、今後はアジア諸国を見ながら追われる立場として制度を作っていかないといけない。
○
21世紀になってプレーヤーが変化している。オープンソースソフトウェアや標準など様々な人が一緒になってものづくりを行い、共通化していく世界が進んでいる。そういうことを見据えて大きな方向性を出したい。
○
課題を単に抽出するだけはなく、「こういう解決方法があるのではないか」というような具体的な提案まで出すことが望ましい。
【パテントトロール】
○
パテントトロール対策としては、彼らが権利行使してもしようがないという環境を作る、そもそも違法であるという論理を構築する、などの対策が必要ではないか。正当な権利者のことを考慮する必要があり、簡単に結論がでないかもしれないが、パテントトロールのような権利行使は本来の特許法の目的に反すると考えられるはず。
○
一番分かりやすい事例ということで、半導体チップに関する特許権があるときに車や家電等の最終製品を訴えるというケースを挙げている。それぞれの最終製品の価格からライセンス料を設定すると高額にできるため、パテントロールが狙ってくるケースが非常に増えてきている。
○
パテントトロールの権利行使の違法性については、下記の3つが考えられるのではないか。@権利消尽(半導体チップが市場に出回っているので見逃しているとも言えるので無償のライセンスを認めても良いのではないか)、A権利の濫用(本来、特許法は産業の発展を目的としているが、明らかにそれを妨害していると考えられる場合)、B独禁法上の問題(標準化における虚偽声明に基づくホールドアップと似たような考えで、不公正取引に当たると考えられるのではないか)。
○
権利の消尽に関しては通常は販売する権利について認められるので製造に関しては微妙であるが、黙示に許しているのではないか、という黙示のライセンスみたいな別の法律的な理論はありうる。
○
差止に関して、取り返しのつかないような状況において差止を認めるなどの考え方を突っ込んで議論する必要がある。
○
日本と米国は差止に対する発想がかなり違うのでeBayの考え方を日本にそのまま持ってくるのは難しいが、やはり裁判所が何らかの形で権利者を抑制しようという発想は日米共通であるので、日本の法制度において同じような価値判断を実現するやり方があるはず。
○
そもそも部品の技術がブラックボックス化しているため、最終製品のメーカーが部品の特許権の侵害にかかる過失推定の規定の適用を受けるのはおかしいのではないか。
○
トロールの定義は難しいので、個々の事案に照らして判断することが本来的だと思う。法律とかガイドラインと言っても難しいので、具体例で細かく定義していくのが良い。ただ個々の事案だけでは限界があるのでやはり共通的な項目を作っていく必要がある。
【標準化】
○
ITU/ISO/IEC共通パテントポリシーができ、特許の取り扱いガイドラインも共通化されたが、RAND条件といってもどのような形で決まっていくのか、紛争が実際に生じた場合にどのように取り扱っていくのかという仕組みや国際間の合意がなされていない。今後もパテントポリシーに関する検討が必要である。
○
第1ステップとして、市場獲得競争のために民間のフォーラム等における事実上の標準化を目指して活動し、第2ステップとして、それを国際標準化機関(ITU/ISO/IEC)に持ってきて国際標準化する、という2ステップの標準化が最近の傾向である。
○
標準化の議論だけではなく、例えばクロスライセンスをやり易くするためにどうすべきか、パテント・コモンズの考えをどう組み合わせるか等の議論も必要である。
○
最終的には裁判所で判例を積み上げれば解決するだろうが、標準化団体・グループで解決する試みも重要。そのための仕組みがIPRポリシーであって、これを更に改善していくことが重要。ITU/ISO/IECの共通ポリシー・ガイドラインが策定されたが、ITUでは更に共通ポリシー・ガイドラインを充実化・強化していくことを考えている。
○
みんなが使うような技術に関しては、ロイヤリティフリーにするという働きかけを標準化団体がすることは考えられるはず。ただ競争的な分野で知財権の尊重は研究開発インセンティブの観点からも大事なので、競争分野は競争し、協調分野(特にネットワーク分野など)はロイヤリティフリーを働きかけていくことが必要である。
○
ITU/ISO/IEC共通ポリシーの中で、条件付ロイヤリティフリーというものがある。他の人もフリーなら私もフリーで、誰かがRANDを主張したらその人に対しては対抗上RANDにする、というレシプロカルなロイヤリティフリーがある。そういう動きが重要ではないか。
【パテント(特許)プール】
○
パテントプールのように製品価格、技術の価値を評価してその価値の中で個々の価値を分配するのがライセンス金額を決定する際の適切な方法である。
○
技術の根幹となる基本特許という概念があるが、製品から見た場合にはそこに含まれる特許の価値はすべて均等ではないのか。他の製品でも多く実施される特許が結果的に基本特許になって価値が上がっていくのではないか。
【OSS、組込みソフトソフトウェア全般】
○
著作権に関してはある程度明らかになっているが、特許権の扱いについて明確化されていない点が課題である。
○
OSSについては様々なルールが作られつつあるが、日本サイドの新しい考え方、制度構築に対する貢献はあまりない。新しい制度を作っていく、という動きにはなっていない。
○
各社各様のビジネスモデルを反映したためライセンスが乱立した結果、異なるライセンスで配布されたソフトウェアを組み合わせることは通常は不可能となってしまっており、ソフトウェア開発に支障が出ているケースもある。
○
組込みソフトの分野で使い勝手が良くなるようなOSSライセンスを作成すべき。
○
GPLv3の解釈があいまいである部分について早期に解決する必要がある。
○
ソフトウェア特許については、本質的な発明とは言い難いものが多く、そのような特許権がソフトウェア開発の障害になっている。特許のクオリティコントロールや権利の濫用の防止といった緩和措置も検討する必要がある。
○
組込みソフトに限定せずにソフトウェア全般に関して検討する必要がある。
○
組込みソフトウェアに関しては契約の在り方等の検討になっているが、問題の捉え方が本当にこれだけで良いのか。CSTPでの議論になるとは思うが、例えばIT技術者をもっと増やしていくのかどうか等の検討が必要である。
○
ソフトウェア開発において外部リソースを使用することがあるが、相手に知財の調査能力がほとんどないので、契約の在り方というよりも実態を掴んだ上でどのように対処していくかという視点が必要である。そもそも調査能力など特許そのものについて対処できるところが少ない。
【インターネット上の商標問題】
○
ネット環境においては海外の国の人がホームページを見てその国で商標登録をしてしまうことがある。ロシアや韓国などで商標の売り込みの事例が発生している。
○
セカンドライフ等の新しいビジネスモデルがどんどん発生しており、そういうところの著作権や商標権がどのように展開していくか分からないので、ガイドラインや法規制などの検討も必要ではないか。
【SaaS】
○
SaaSサービスの情報処理過程で発生するデータについてどの部分が顧客側に属するのか定義する手法と契約の手法が必要。運用者が倒産した場合等、重要な経理情報などのデータの扱いについても検討が必要である。
○
データのポータビリティを容易にすることがSaaS事業者の公正な競争環境の維持につながるので、データフォーマット等に対する特許権等の主張が行き過ぎて障害にならないように顧客の意思によって他のSaaS事業者へ容易に移転できる必要がある。
【検索エンジン】
○
今の著作権の解釈から言うと検索エンジンのような行為は日本では違法となるので、何らかの対策が必要である。