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知的財産による競争力強化専門調査会
環境分野PT会合(第1回)
議事要旨

日 時 2007年9月5日(水)13:00〜15:00
場 所 知的財産戦略推進事務局会議室
出席者 関田委員(主査)、江崎委員、岡内委員、長岡委員、原田委員
(事務局)松村次長、山本参事官、平岩参事官

環境分野プロジェクトチームにおける調査検討報告書(案)について議論。各委員の意見の概要は以下の通り。

【全般的な論点】
環境問題では、発生源は国境を考慮すべきものが多いが、影響を受ける方には国境がなく、国際的な対応が求められている。空間的な制限がなく、時間的な猶予がない環境問題に対して、特許の特性がどのように作用するのかというのも論点である。
特許制度は、発明者の権利を守り、日本の国際競争力を高めるという面では、環境問題の対応のモチベーションを向上させ、非常にプラスである。他方、優れた技術が国際的に広がりやすい環境を整備するということも必要だが、「独占的実施」という特許制度の性質との間で問題が生じる。
過度に知的財産の重要性を強調すると、国際的な環境改善に逆行するということになる一方、過度に環境を強調すると、世界貢献のためにはそもそも知的財産はない方が良いという極論になる。競争力強化の側面と国際貢献の側面を分けて議論することが必要である。
本PTにおいて議論する前提として、国際産業競争力をいかに強化するかというところがある。したがって、市場として成立する領域において環境分野をいかに国際競争力として高めていくかという議論を行うべきである。
【我が国の環境技術の一層の向上】
環境分野の特徴として異分野の技術との融合が多い。あるデータから、技術分野ごとに共同出願がどの程度あるかということを調査すると、環境分野は非常に共同出願が多い。共同出願でサポートされるような研究開発がかなり多いということも特徴である。
環境分野の技術は、環境問題にアプローチするという「目的」のために使用する技術である。材料・ナノというのは、環境技術の中で必要な基礎技術として位置付けられるものであり、画期的な材料が出てくると、大きく状況が変化するものである。
応用的な研究開発だけではなく、基礎的な部分から研究開発がなされていかなければ、なかなか実現できない部分がある。
環境技術の普及のためには、技術のブレークスルーが必要であり、このため国・大学の研究成果を利用促進できるような仕組みが重要である。
新技術を巧みに取り込めるような制度改正を積極的に実施することが技術を活用できる道であり、規格のイノベーションとして、新技術に合わせた規格や規制を国内的に整備するとともに、国際的にも普及を図ることが必要である。
【国際展開の強化】
環境がブランドになり、環境が商品につながるという意識が世界の産業界で芽生えてきた。すなわち、様々な強制的枠組みをクリアしていく必要から環境への取組みを実施してきたが、積極的にそのような取組みを行うことにより、環境でビジネスができるということが解ってきた。そのような意味において、良い研究開発・商品開発ができれば、ビジネスに今後なり得る分野であると考えられる。
国際的に通用する基準、ルールを世界に先駆けて制定することは、研究・開発の上で極めて有利である。
先端技術が日本から海外へ供与されているにもかかわらず、残念ながら活用されていない。「モノ」だけ供与して「ヒト」を教育していないためである。
環境基準が国際化され、しかもライセンスできる体制が出てくれば、当然出願も増えてくる。したがって、海外で知財権を取得したり、適切に知財権を行使したりすることが可能になるよう図っていく努力が重要である。
環境技術は普及することが重要である一方、研究開発費用も多額であることを考えると、技術供与がリーズナブルなロイヤリティで行われることが望ましい。各国法令によって強制的に特許を収用する等の、特許権の活用が妨げられる状況が出て来る恐れがある。このような事態にならないような考慮が必要である。
環境技術の模倣品も発生している。
最終的には日本の企業が国際競争力を有利にする仕組みをいかにつくるかということが課題である。例えば、産学連携の場合には日本企業が有利となるライセンスの仕組みの構築が必要である。逆に我が国にだけ特許があり、海外にはない場合、そのことが「逆障壁」と化して、日本メーカーだけに負担を背負わせ、製造業の海外流出に繋がりかねない。
日本でかなり多くの知的財産があるにもかかわらず、海外にほとんど出願されていないという問題がある。その原因が2つ挙げられる。一つには、環境規制が日本と外国とでそもそも異なることである。この場合、環境基準が国際的にハーモナイズされることが重要である。日本の環境技術が先進的であれば、その技術を早く活用できるように日本国内の規制自体を整備することも重要である。二つめには、ライセンスで技術を活用するということがあまり考えられてこなかったことである。環境関連技術を保有している人が非常に多様化・分散化しており、また共同出願も多いということになると、ライセンスをするためには、技術・知的財産権を集約化することも必要である。
日本の技術を改良することにより海外のそれぞれの地域に見合った技術を開発し、併せて当該地域において知的財産を確保することが必要になる。
知的財産の強化のため、特許費用半減をぜひ達成してもらいたい。中小企業の人たちが要するに知的財産に興味を持っていただくという方向に行っていただきたい。
情報通信、それから環境分野というのは、比較的中小企業の参入の余地がある。ぜひ中小企業を知的財産の強化の対象とすべきである。