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第8回 知的財産による競争力強化専門調査会 議事録

  1. 開 会 : 平成20年11月27日(木)14:00〜16:00
  2. 場 所 : 知的財産戦略推進事務局会議室
  3. 出席者 :
    【委 員】 相澤会長、岡内委員、佐藤委員、妹尾委員、田中委員、辻村委員、長岡委員、中山委員、前田委員、三尾委員
    【事務局】 素川事務局長、内山次長、関次長、小川参事官、高山参事官
  4. 議 事 :
    (1) 開  会
    (2) 政策レビュー及び第3期基本方針の在り方について
    ・ 知的財産の適切な保護(国際知財システムの構築に向けた取組の強化、知的財産の権利付与の迅速化等)について
    ・ 模倣品・海賊版対策の強化について
    (3) 閉  会

○相澤会長 それでは、多少定刻前ではございますが、妹尾委員は本日おくれられるというお知らせが入っておりますので、出席予定の方々は皆さんおそろいですので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は、かなり寒くなってまいりましたし、お足元の大変悪いときにご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 第3回目の会合になりますが、知的財産による競争力強化専門調査会をこれから開催させていただきます。
 なお、本日は、加藤委員、河内委員、関田委員、中村委員、渡部委員はご欠席でございます。先ほど申しましたように、妹尾委員におかれましては後ほど遅れて参加されるという連絡をいただいております。
 前回、政策レビュー及び第3期の基本方針のあり方についてご議論いただきました。特に、初めの部分について議論いただいたわけですが、後半の知的財産の適切な保護という部分については十分な時間がございませんでした。特に国際知財システムの構築に向けた取り組みの強化等に加えて、知的財産の権利付与の迅速化と模倣品・海賊版対策の強化について本日はご議論いただきたいと思います。時間が限られておりますので、適当なタイミングで区切らせていただきたいと思います。
 本日は知的財産の権利付与の迅速化等と、それから模倣品・海賊版対策の強化についてという資料を用意しております。
 それでは、説明は事務局、内山事務局次長にお願いいたします。
 それでは、説明のほうは事務局、内山事務局次長からよろしくお願いいたします。
○内山事務局次長 まず、配付資料について、簡単にご確認をさせていただきたいと思います。
 資料1は、これまで講じてきた施策の概要及び現状、いわゆるファクツシートでございます。
 資料2が討議用の資料でございます。先ほど相澤会長からご説明がございましたとおり、保護の前回議論がちょっと残ってしまった部分も含めてセットしてございます。
 それから、資料3が第2期重点項目の実施状況に関する評価でございます。
 資料4、5につきましては、後ほどご説明いたしますけれども、先端医療特許検討委員会の設置等についての資料でございます。
 それから、資料6が政策レビュー及び第3期基本方針の策定に関する意見募集、パブリックコメントについてでございます。
 資料7が本日ご欠席の中村委員のコメントでございます。
 それでは、資料1をご参考にしていただきながら、もっぱら資料2に基づいてご説明をさせていただきたいと存じます。
 冒頭、前回田中委員のほうからご指摘のございました国際知財システムの構築に関して、先行技術文献の世界各国における偏在、それに伴うアクセスの問題につきまして、資料2の7ページをちょっとごらんいただきますと、今後講ずべき主な施策の中に、上から3番目の○でございますが、「海外先行技術文献の検索環境の整備」という項目を追加してございますので、ご参照いただければと存じます。
 それでは、9ページからでございます。権利付与の迅速化の項目でございます。
 視点1、今後の特許審査の迅速化にいかに取り組むべきかという点でございます。
 評価の概要と課題でございますけれども、一番最初の○にございますように、特許審査の迅速化につきましては、我が国企業の国際競争力の向上を図る上で極めて重要でございます。
 2番目の○でございます。2013年に審査待ち期間を11カ月に短縮する、こういう長期目標が設定されておりますが、その達成に向け、官民挙げて総合的な取り組みを推進してまいりました結果、審査請求期間の短縮によりまして、審査請求件数が高い水準で推移する中におきましても、資料1の2ページ目でございますけれども、図表12にございますように、これまで短期的な目標を着実に実績として達成をしてきておりまして、2007年度は審査待ち期間を28.3カ月にとどめることができております。そしてまた、本年度以降におきましては、審査請求件数を一次審査件数が上回ると、こういう見込みでございます。こういった長期目標を達成するためには、引き続き審査処理の迅速化に向けたさらなる取り組みの強化が不可欠だということでございます。
 続きまして、10ページ目、視点2でございます。
 今後の植物品種登録出願審査の迅速化にいかに取り組むべきかという点でございます。
 2005年度には3.2年でありました審査期間を直近の2007年度には2.9年にまで短縮しておりまして、本年度には審査期間を2.5年にするという目標の達成が見込まれる状況でございます。今後平均審査期間を2.5年に維持していく、そのためにもさらなる審査の効率化が不可欠だということでございます。
 続きまして、12ページ目を見ていただきますと、第3期の政策目標と評価指標でございます。まず、特許審査処理の迅速化につきましては、2013年に審査待ち期間を11カ月に短縮するとの長期目標を達成をするということでございます。評価指標はここにあるとおりでございます。
 次に、植物品種登録出願の審査期間維持につきましても、2013年度まで審査期間を2.5年以内に維持するということでございます。評価指標もここにあるとおりでございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、特許審査処理の迅速化につきましては、第1に審査官の増員など特許審査体制の強化、2番目に出願審査請求構造改革の促進のための環境整備ということで、無駄のない戦略的な権利取得を促進するために、IPDLの検索機能の向上、また審査官と同じ検索端末の提供の拡大を通じました質の高い先行技術調査を可能とする環境の向上、そういったものに取り組んでいくということでございます。
 13ページ目にございますように、審査請求料返還制度の再検討というのがございます。現行の制度は、一次審査前の出願取り下げに対して審査請求料を半額返還するという制度でございますけれども、当然出願人のモラルハザード、こういう問題もございますので、そういった点にも留意しながら返還額の設定のあり方について再検討してはどうかと、こういうことでございます。
 植物品種登録出願の審査期間の維持につきましては、総合電子システムの整備を初めとした審査の効率化という点でございます。
 続きまして、14ページ目でございます。
 知財の安定性・予見性の向上の項目でございます。
 視点にございますように、知財高裁を始めとした紛争処理手続は、安定性・予見性の向上の観点から見て適切に機能しているかという点でございます。
 評価の概要と課題です。資料1の3ページをちょっとご参照いただければと思います。
 その頭のほうに図表16、図表17というのがございますけれども、この両表に見られますように、知財高裁の設置を初めとした一連の施策によりまして、平均審理期間が短縮をされてきております。そして、権利の予測可能性につきましても高まったと、こういう一定の評価がございます。技術的専門性の高い事件の的確な処理というのは、不断の努力が求められる課題でございますので、長期的な視点に立って裁判官の育成を図る一方で、裁判官を技術的側面から補佐する専門員制度等の効果的活用が必要だということでございます。
 最後の○の点でございますけれども、資料1の同じページの図表19にございますように、特許権が無効とされる事件の割合が増えておりますところ、このように無効とされた原因につきまして分析を行うとともに、特許庁におきます審査の質の確保と、こういった取り組みの強化が必要だということでございます。
 続きまして、資料の18ページをごらんいただければと思います。
 第3期の政策目標と評価指標でございます。
 裁判所における紛争処理機能の強化につきましては、司法への期待といたしまして、長期的視点に立った裁判官の育成、調査官制度・専門委員制度のさらなる効果的な活用、これらを通じまして技術的専門性の高い事件の的確な処理が図られ、審理の質が確保されることを期待するということでございます。
 それから、特許庁における審査の質の確保につきましては、政策目標といたしまして次の取り組みの強化を通じ審査の質を確保し、特許権の安定性・予見性を向上させるということで、第1に外部知見の活用、第2に先行技術文献の検索環境の整備、第3として審査、審判、そして裁判の判断の調和ということでございます。評価指標といたしましては、特別異議申立制度の検討状況、シームレスな検索環境の構築に向けた取り組み状況、産構審に設置されます審査基準専門委員会の活動状況、そして利用者の満足度アンケート調査といったようなものがございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、特許異議申立制度の検討につきましては、出願公開前に特許付与される案件が増加傾向にあることも踏まえまして、特許権の安定性確保の観点から、従前ございました異議申立制度の必要性について改めて検討を行ってはどうかという点でございます。次は特許文献、非特許文献のシームレス検索について、そして特許審査基準の点検見直しを通じました判断の調和、それから最後は侵害訴訟におきます特許権が無効とされた事案の研究というような点がございます。
 続いて、随分ページが飛びますけれども、31ページをごらんいただきたいと存じます。
 模倣品・海賊版対策の強化でございます。
 模倣品・海賊版対策の強化につきましては、外国における対策、それとともに国内対策、インターネット対策、これが3つの柱として整理をいたしております。
 まず、外国対策でございます。
 視点1は、二国間協議による取り組みは十分かという点でございます。評価の概要と課題の最初の○にございますように、中国等の侵害発生国・地域に対しましては、官民合同ミッション、ハイレベルの二国間協議などを通じた働きかけを行ってまいりました。
 また、2番目の○にございますように、基盤整備といたしましても、現地における在外公館などの支援機能を強化してまいりました。
 しかしながら、最後の○にございますように、模倣被害率というのは高どまっております。
 資料1のページ7をちょっとご参照いただければと思います。
 ページ7に図表38、それから図表39がございますけれども、この表をごらんいただきますと、まだ海外での模倣被害が増加傾向にある、あるいは中国において模倣被害を受けた、こういう我が国企業は依然として多い状況にございます。また、模倣品・海賊版の製造流通の手口は巧妙化をしておりまして、こういったことからすると引き続き中国等への強力かつ継続的な働きかけが必要だということでございます。
 それから、模倣品につきまして、被害の広がりが大変裾野が広いということがあるわけでございます。31ページ目の一番下のポツにございますけれども、日本企業が模倣被害を受けている主な製品というのは、我々がよく見聞きいたします雑貨関係、かばんとかその他の身の回り品、そういったものだけではございませんで、機械、電子・電気、あるいは運輸関係というような製造産業全般に模倣被害というのは及んでいると、こういう実態があるわけでございます。
 続きまして、ページをめくっていただきまして36ページでございますけれども、視点2でございます。
 次は、多国間協議における取り組みは十分かという点でございます。
 評価の概要と課題でございます。
 我が国はいろいろな多国間協議におきまして、国際的なルール策定等の面で積極的に関与をしてまいりました。また、いわゆるACTA、模倣品・海賊版拡散防止条約、これの実現に向けて積極的に議論を推進してまいりました。今年7月の洞爺湖サミットにおきましての首脳宣言にこのACTA早期実現、こういったものが盛り込まれておるわけでございます。
 最後の○でございますが、今後も引き続きACTAの早期実現を目指して議論をリードするとともに、WTO、APEC、その他多国間協議の場におきましても積極的に取り組むことが必要であるということでございます。
 38ページ目、政策目標と評価指標でございます。
 目標1でございます。中国等侵害発生国・地域におきます模倣品・海賊版に係る侵害実態を着実に改善をしていくということでございます。評価指標といたしましては、模倣被害率などでございます。
 目標2は、ACTAの早期実現に向けた議論をリードし、妥結後につきましては参加国の拡大を図っていく、また多国間協議でのルール策定にも積極的に参画をするということでございます。
 今後講ずべき主な施策でございますけれども、侵害発生国等へ働きかけの更なる強化、また現地における支援機能の強化という点、在外公館、JETRO、日本企業の連携の強化ということでございます。そしてまた、侵害状況調査制度がございますけれども、過去まだ1件の実績でございますので、本制度の見直しというのもあろうかと思います。被害実態調査の充実、そしてACTAの早期実現に向けた議論のリードが挙げられると思います。
 次に39ページ目でございます。
 国内における対策でございます。
 視点1、水際取り締まりは十分な効果を上げているかということでございます。
 2番目の○でございます。各種取り組みの結果といたしまして、資料1の8ページをごらんいただきますと、図表45、一番左の日本のところでございますけれども、侵害物品の輸入差し止め件数は年々増加をしておりまして、2007年には過去5年間で3倍以上の伸びでございます。その一方で、侵害品輸入の小口化傾向が年々顕著になっておりまして、また模倣品の流通手口も巧妙化、複雑化が指摘をされております。こうした状況に対応するため、税関職員の専門性の向上等によりまして、効果的な取り締まりを推進する必要があるということでございます。
 次に、視点2、42ページでございます。
 国内での取り締まりでございます。
 評価の概要、課題のところでございますけれども、刑事罰の導入等によりまして取り締まり体制の強化が図られてまいりました。特に、2007年には映画盗撮防止法が施行されまして、これによりまして映画の海賊版の流通に対する一定の抑止効果が見られたという評価がございます。
 それから、資料1、ページ8の図表49をごらんいただきますと、知的財産侵害事犯の検挙実績でございますけれども、年々増加をいたしておりまして、2006年には過去5年間で倍増でございます。
 こういった状況を踏まえまして、今後とも警察職員の捜査能力の全国的な向上等によりまして、一層強力な取り締まりを推進する必要があるということでございます。
 ページをめくっていただきまして、資料の44ページでございます。
 視点3、国民への啓発活動でございます。
 模倣品・海賊版の氾濫を防ぐためには、製造・流通の防止だけではございませんで、消費者である国民の意識の向上も図るように総合的な方策を講ずる必要がございます。このため、2003年から毎年模倣品・海賊版撲滅キャンペーン、こういったものを実施するなど、国民への啓発活動を行ってきたわけでございます。しかしながら資料1のページ9をちょっとめくっていただきますと、その図表51でございますが、内閣府の特別世論調査によりますと、2008年の直近、一番右の項目でございますけれども、いまだ国民の50%以上の者が模倣品・海賊版の購入を容認している状況でございます。この薄水色の3つの項目を足し上げると50%以上でございます。ということで、国民の十分な理解が得られていないということでございます。
 最後の○にございますように、一方、実際に対策を行う企業に関しては、模倣被害対策の実施率というのが減少傾向にあるということでございます。したがって、一部の企業におきましては模倣品・海賊版対策の重要性についての認識が不足をしているのではないかというふうに考えられます。
 ページをめくっていただきますと、ページ47でございます。
 視点4、連携体制についてでございます。
 1番目の○にございますように、関係省庁や民間団体が一体となって取り組むことが必要であって、これまでさまざまな取り組みを行ってまいりました。具体的には、一元的な相談窓口として、経済産業省製造産業局に「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」の設置、また「模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議」を内閣官房に設置をしてまいりました。さらに、官民の取り組みとして中国等に対する官民合同ミッション、こういったものも行いまして一定の成果を上げてきております。今後につきましては、さらに省庁間の連携、また地域における連携強化というのが必要であるということでございます。
 第3期の政策目標と評価指標、ページ49でございます。
 目標1でございます、差止申立制度の利用促進、あるいは税関職員の専門性の向上、そういったものに基づきます知財侵害物品の輸入差し止めの強化を通じまして、知財侵害物品の流入を確実に阻止をしていくということでございます。評価指標としては、差止申立制度の利用促進活動の実施状況、税関における侵害品輸入差し止めの件数などでございます。
 目標2につきましては、警察職員の捜査能力の全国的な向上等によりまして、知財関連事犯の検挙において着実に成果を上げるということです。評価指標として検挙件数、検挙人員となっております。
 目標3でございますけれども、模倣品・海賊版による被害実態、この問題の重要性に関する国民の認識を深めるとともに、自発的に模倣品・海賊版を購入・利用しないよう国民意識の向上を図るということでございます。評価指標といたしましては、特別世論調査など各事項がございます。
 今後講ずべき主な施策は、ここにあるような差止申立制度の利用促進、税関職員の専門性の向上等々、次のページに掲げておりますような各種取り組みがございます。
 それでは、最後の項目でございますけれども、ページ51、インターネット対策でございます。
 視点にございますように、インターネット上の模倣品・海賊版対策は十分であるかという点でございます。
 評価の概要と課題の最初の○でございます。官民連携した各種取り組みによりまして、一定の成果を上げているということではございます。特に、国内のインターネットオークションにおける対策につきましては、事業者、権利者、また警察も協力して対策を行っておりまして、模倣品・海賊版の出品率はわずか1%程度に減少するということで、大きな成果を上げていると評価をされております。
 3番目の○でございますけれども、しかしながら資料1の9ページ目でございますけれども、図表61あるいは図表62にございますように、新たに動画共有サイトやファイル共有ソフトを通じた海賊版の氾濫というのが大きな問題となっております。従来のパッケージメディアを前提とした模倣品・海賊版とは質が異なっておるわけでございますので、新たな対策が必要であるということです。
 55ページでございますが、政策目標と評価指標ということでございます。
 目標はインターネット上の模倣品・海賊版による被害を大幅に減少させるということです。今後講ずべき主な施策としては、取り締まりの強化、外国政府に対する働きかけの強化、あるいは知財本部のデジネット専門調査会でも検討され、本日取りまとめの議論が行われたところでございますけれども、プロバイダの責任のあり方の見直しなど、以下のような事項が掲げてございます。
 以上でございます。
○相澤会長 大部な資料でございますけれども、前回のように前半の時間をこの前議論が残っている部分に当てて、模倣品関係のところを残りの時間で議論を進めたいと思います。
 それでは、本日ご欠席の中村委員より書面でご意見をいただいておりますので、事務局からそれを紹介していただけますか。
○内山事務局次長 資料7でございます。中村委員から大部なコメントをいただいております。
 かいつまんでご説明申し上げます。1ページ目の最初、国際知財システムの構築に向けた取り組みの強化ということにつきまして、企業ニーズとしてパテントコストの削減、審査の質の向上、国際的にタイムリーな権利付与、これは早急に解決すべき課題であると。国際的制度調和が不可欠でありまして、その推進において日本がさらにリーダーシップを発揮すべきとされております。
 2ページ目でございますけれども、知財の権利付与の迅速化につきましては、2番目のポチにございますように、事業がグローバル化する経営環境の中におきましては、日本のみならず諸外国における権利付与の迅速化も重要であるという指摘でございます。
 3ページ目に知財の安定性・予見性の向上、その一番最初のポツの最後に特許異議申立制度の復活などは権利の安定性の向上に有効であるという指摘でございます。
 Cのノウハウ等の適切な管理の中で、不正競争防止法に関する部分がございまして、ページをめくっていただきまして4ページ目の中段でございますけれども、肝心の営業秘密が刑事裁判の法廷で公開されてしまうのではないか、そういうふうな問題などにつきまして現在産構審の知的財産部会でも検討がされていると。法的措置も含めて抜本的な改善案を検討中であるということであって、その可及的速やかな実現に大いに期待しているということでございます。
 模倣品・海賊版対策の強化につきましても幾つかご指摘がございます。5ページ、6ページにかけてございますので、ご参照いただければと存じます。
 以上でございます。
○相澤会長 どなたからでも結構でございますので、ご質問、それからご意見、ご発言いただきたいと思います。
 田中委員。
○田中委員 4点ほどあります。まず2ページ目、これはそんなに大きな話ではありませんが、ページの下のほうにグレースピリオドに関して記載があります。発明の公表から特許出願まで認められる猶予期間として、アメリカは12カ月、欧州は6カ月というように記載されております。これを一見すると、欧州でも一概に6カ月認められているのだと誤解を与えてしまうような感じがします。欧州における実態としては、博覧会等々のほんの一部で認められているだけでございまして、学会発表や公刊物への記載等々については全く認められておりません。そのあたりをきちんと注意しておかないと、前回議論させて頂いた大学等における出願において、大学の先生もヨーロッパも6カ月の猶予が認められているのではないかと誤解をしてしまうのではないかと思います。ですから、ヨーロッパにおいてはむしろグレースピリオドはないと考えて、きちんと発明の発表前に特許出願するということを徹底させたほうがいいのではないかと思います。
 次は13ページになりますが、特許審査のワークシェアリング効果の最大化です。これは特許庁等が非常に強力に推し進めて、いろいろな面で改良を図っていただいており、大変ありがたいことなのですが、まだまだ特許審査ハイウェイの対象国の拡大や、本当の意味でのワークシェアリングなどがこれからの課題だと思います。以前にも申し上げましたが、全世界で出願されるオリジナルの出願件は数十万件から百万件ぐらいです。ところが、各国に重複して出願されているので、大体のべ数百万件に上り、全世界である意味では無駄な、無駄なというとちょっと語弊がありますが、重複に審査がされています。このようなことも視野に入れて、審査の効率化を図っていただくと、出願人のほうも大変助かります。それに伴い、この前お話ししたように、先行技術の偏在という問題があります。それは日本語だけで存在する場合もありますが、そのようなことも留意しながら、ワークシェアリングをうまく機能するようにやっていっていただければありがたいと思います。
 そして16ページです。この前も指摘したところですが、特許庁でもコミュニティーパテントレビュー等々いろいろと新しい試みもされているわけでございます。しかし今後、審査に要する平均日数が11カ月ほどになりますと、公開前に特許になる率が非常に高くなるということも踏まえて、ぜひ異議申立制度の必要性をもう一度議論していただきたいと思います。公開前に登録になる件が出てきますと、今ある情報提供制度も機能しなくなってしまうわけです。特許庁が非常に努力され審査期間が非常に短くなっているのはいいのですが、逆に短くなったことによってそのような問題が起こることも十分留意しながら、新しい異議申立制度等々についても検討していただければと思います。
 最後は24ページです。不正競争防止法の改正がなされて大分よくなってきた面もありますが、不正競争防止法の中の営業秘密侵害罪の構成要件につきましては、非常に限定的に規定されていると思います。つまり、営業秘密の使用・開示を対象としています。使用したということや、開示をしたということが条件になっておりますので、証拠を集めるのもすごく大変でございます。大抵営業秘密を不正に開示するのは海外企業の場合が多いわけですから、その証拠を集めるというのは大変なことになりますので、むしろ営業秘密を違法行為によって取得したということを対象にしていただければ、実証が非常に困難であるために、この法律をなかなか使えないという状況からは回避できるのではないかと思います。
 さらにもう一つ、先ほどの中村委員の提出資料にもありましたし、ほかでもいろいろ指摘されていることですが、実際の裁判になりますと、裁判の中で営業秘密の内容が公にされてしまう、だからなかなか訴訟を起こせないという問題がありますので、これにも注意しながら、不正競争防止法をもう一度きちんと機能するように見直していく必要があると思います。
 実はこれはいろいろなところで起こる問題でございまして、職務発明訴訟等々についても、契約書を開示しなければならないという裁判官からの要請等々もあり、そのたびに我々も苦慮しているわけでございます。海外にはインカメラ等ほかのいろいろな代替手段もあるようですので、それも考慮しながら、営業機密がきちんと守れるようにしていただければと思います。それから、職務発明訴訟等々において、実は企業にとりまして契約文書そのものは最高機密の文書であり、これが外に公表されてしまうということは大変由々しき事態ですから、これも含めてぜひ早急に検討していただければと思います。
 以上でございます。
○相澤会長 ありがとうございました。
 どうぞ、中山委員。
○中山委員 ただいまの田中委員の話との関連なのですけれども、私もこの営業秘密の取得については検討してほしいと思います。実は十数年前にこの不正競争防止法に営業秘密を入れるときから関与しておりますが、その最初の法律をつくるときから取得は実は問題になっておりましたけれども、そもそも営業秘密を保護するなんていうのはけしからんという意見が当時は非常に強くありまして、当時は入れることができなかったわけですし、また当時は民事手続についても入れることができなかった訳です。簡単な実体法規だけしか入れられませんでした。こんなことでは機能しないということはわかってはいたのですけれども、反対が多かったものですから、とりあえずとかっかかりをつくるという意味で立法しました。
 しかし、現在になってみますと、営業秘密に関する事件というのは多くあります。またあるいは諸外国の例を見てみますと、日本の保護の水準というのは低いわけです。私はそろそろここら辺で取得を検討してみる必要があると思います。
 それから、刑事事件の非公開、これも実は最初から問題になっておりまして、営業秘密の場合は刑事事件が多いけれども、刑事事件を起こしたら秘密がばれてしまう。結局告訴できないということになっているわけです。これは不都合なのですけれども、実は刑事事件につきましては、憲法の明文で裁判の公開が規定されておりまして、なかなか裁判全部を非公開にするというのは難しいわけです。しかし証拠調べその他もろもろの点で、細かい点で詰めていけば、かなりの程度憲法に違反しないで秘密を守るという手段があり得ると思います。これは知的財産の研究者だけではなくて、刑法あるいは憲法の方も含めて検討して、憲法の範囲内でいかにして刑事事件においても秘密を守りながら訴訟を行っていくことができるかということを検討してほしいと思います。
○相澤会長 大変重要なご指摘をいただきました。
 それでは、そのほかのご意見、ご質問いかがでしょうか。
 辻村委員。
○辻村委員 まず1点目は、前回田中委員からもありましたように、先行技術文献の偏在の問題ですけれども、今後、対策を打っていかなければならないということで、入れていただいていることに関しては非常に我々企業にとってもありがたいなと思うわけであります。ただ、実際問題、各国の言語でしか公開されていない特許文献、これが一番厄介な話でございまして、それをどのように検索可能とするかというところが一つ大きな課題かなというふうに私は受けとめております。せめて、要約、請求事項ぐらいは英語で内容確認ができる、検索できるというような仕組みの検討を是非お願いしたいなと思っております。
 それから、2点目は特許の戻し拒絶査定、図表13ですか、この比率はやはりかなり多いと思います。審査請求をして以降、出願人としては出願を取り下げるか否かの判断を行うタイミングというのが実際上ないといいますか、どのタイミングでそれをやるのかというところがわからないというところがあるので、この戻し拒絶査定を減らすという意味では、例えば実態審査に入る数カ月前等に、出願人に取り下げを促すためのトリガーとして何かの通知、30日以内に今から実態審査に入るので、取り下げ手続をした場合は半額返還しますよとか、そういうようなことを通知する。これは非常に大変な話でしょうが、そういう方策も1つあるのではないかなと思っております。
 それから3点目は、安定性・予見性の向上のところの項目ですけれども、ここの中で国内外の非特許情報という文言があるんですけれども、この非特許情報というのは具体的に何を指しているかということなんですが、いわゆる文献とか学術論文というのを指しているというふうに理解しておりますけれども、最近ではそれ以外に例えば単行本の出版物であるとか、企業のカタログであるとか、食品の分野で言えば、商品に記載されていたり、ホームページに載っていたりする中味特性データみたいなものも非常に多く存在するわけでありまして、それをどのように整備して情報提供の制度としてデータベースに織り込んでいくかというところも実は必要なことではないのかなと考えております。
 4点目は、模倣品・海賊版対策強化のところで、図表の41、40のところなんですが、確かに韓国税関が輸出の取り締まりを強化したとか、中国の税関も同様な対策で件数が減ってきているということなんですが、図表41では韓国の比率は減ってきているのですけれども、図表40を見たら件数はほとんど変わっていない。したがって、中国の比率が増えたということで、韓国ではそういう韓国税関は規制の強化をしっかりやっているけれども、件数としては2006年、2007年と変わっていないという状況に見えます。実際我々企業としても輸出国の侵害品の有無をすべて調査するには限界がありますので、このように韓国、中国等外国の税関できちっとチェックをしてくれると非常にありがたい話なんですが、それが実際どこまで有効に作用しているのかというところは、データとして1つ調査をしていただければありがたいと思っております。
 それから、これは皆さんが先ほどからおっしゃっていることですけれども、やはり営業秘密侵害に関する刑事罰の導入の中で、刑事訴訟の場合には営業秘密をオープンにしなければいけないということが、起訴例がないということの1つの原因になっているんだろうと考えております。オープンイノベーションを推進するとか、知財の創造を促進していくためには、ある意味ノウハウがそういう場でもきちっと守れる仕組みがないと、刑事訴訟に踏み切るという勇気を持った企業はなかなか出てこないのではないかと思いますので、ぜひその辺のことを施策として考えていただければありがたいと思います。
 以上であります。
○相澤会長 ありがとうございました。
 それではほかの委員からご意見ございますでしょうか。
 岡内委員。
○岡内委員 資料2の26ページ、ここにちょっと中小企業のことが載っております。先ほど説明からは飛ばされてしまいましたけれども、ここのところのちょっとフォローをさせていただければと思います。
 企業数でいいますと中小企業は99.4%、その中で特許出願率は12%程度で、非常に低い比率になっています。実際に特許をとった人たちにとってみれば大変な努力、資本もない、時間もない中でとって、それはそれなりに立派に特許出願していると思います。ただ実際には、特許をとることよりも、とった後のほうが大変でございまして、まず基本特許になればなるほど大手企業さんから攻められることがあり、特に海外でコピーをされた場合には、それを調査し裁判に持っていくということは現実問題としてなかなかできない。そうしますと、中小企業の本来の姿とすると、根本的な発明あるいは企画をするよりも、今までの技術の改良であるとか、新しい治具をつくったとか、いわゆる小さな発明が多いわけでございまして、そうなると公開をするよりもノウハウでしまっていく。
 そのノウハウでしまうということは、これはこれで大変厄介でございまして、現実問題どうしていいのかわからないというのが一般の中小企業のノウハウ管理ではないか。その中で、政策として1つうまくいったのは、図面の流出規制、これは非常に有効に働いていたようで、どこかにも書いてございましたけれども、私の知っている限りでもほとんどそれを耳にしなくなりました。ですから、何らかの指針というものが出ると、それなりの効果があるのだなと思っております。
 ノウハウでしまうということに関しますと、実は私の会社も試薬の調合でございまして、ほとんど特許をとるのが難しいし、全部ノウハウでしまっている。だけど、逆に言うと、ほかに特許をとられることによって、今まで使っていたものまで使えなくなる可能性がございますので、いわゆる先使用の実施、それを記録していく、先使用の実施を確立していくということで二、三の方法をとっております。
 1つは公証人役場、ここに持ち込みまして承認をしてもらう。ただ、これは結構金がかかります。下手をすると特許と同じくらいかかってしまう。もう一つ、うまくできてきたのが電子公証人、これは登録するとA4判で大体800円ぐらい。それから、もう一つ、タイムスタンプ、これは実は大変有効でございまして、私どもでも早速使わせてもらっております。もう一つ、これは自分で考えたものですけれども、内容証明つきの書留、自分あてに送ってしまっておく。
 こういったことを工夫はしているんですが、意外と皆さんご存じない。この間もちょっと友人から相談を受けまして、一人はデザイナーで、ロゴを頼まれた。依頼先に幾つかロゴを挙げて見せたところが、数日もしてから、社内で社員が応募してきた中にそっくりなのがあったと、だからこれは使わないよと言われてしまったという例がありまして、提示しなければビジネスにならない、提示すればコピーされる可能性がある。こういうのは自分で内容証明つきで、投函しておいたらと言ったら、それいいね、ということでした。結局そういう方法を知らない。ですから、ぜひそういう管理の方法があるんだよ、裁判になったときには、それは正直言うとどれほど有効かわかりませんけれども、1つの手段ではないかなと思っております。
 もう一つ、26ページにも書いてございますが、先ほどのいわゆる営業秘密、これは中小企業にとっても非常に大きなことでして、社員の持ち出し、それからもう一つは退職者の技術の持ち出し。中小企業というのは一人が1つのプロジェクトの概要を全部わかる可能性があるんです。大手さんと違って、一部だけを知っているということではなくて、全概要を知った者がそれをリークされると、会社の命運かかわることなので、こういう不正競争防止法、刑事罰までついてくるということは非常に抑止力にもなって、中小企業としてもぜひ実現をしていただきたいなと思っております。
 以上でございます。
○中山委員 ただいまのご意見の中の先使用に関する部分なんですけれども、実は特許庁で私も関与して、先使用に関する事例集というのをつくりまして、今おっしゃったようなことが事細かに書いてあります。
○岡内委員 伝わっていない。
○中山委員 これがどうして中小企業等に伝わっていないのかということが問題だと思いますが、せっかくそういうものがありまして、公証人から始まっていろいろ利用できることが書いてあるので、何とかそれを普及させるというか、中小企業まで知らせるような手段があればなと思いますが、それをお考えいただければと思います。
○相澤会長 三尾委員。
○三尾委員 営業秘密のことについて話が出ましたので、引き続きその点についてお話ししたいと思うんですけれども、営業秘密、刑事罰については今、産構審のほうで検討されているということですので、主に民事に関してお話ししたいと思います。
 営業秘密の場合は、訴訟になった場合に、実は営業秘密かどうかというところで争われることが多いんですね。営業秘密の要件として3つの要件がありますが、最も問題になる要件が秘密管理性の要件で、秘密としてきちんと管理していなければいけないというものです。訴訟の場合この要件で切られまして、営業秘密じゃないから保護されないという結論になるケースが非常に多いんですね。特に技術の場合はそれが最も顕著でして、判例で営業秘密として保護されたケースというのは少ないという現実があります。
 ですので、まず、中小企業の方が特に該当するとは思うんですけれども、きちんと秘密として管理するということを徹底しないと、いくら不正競争防止法を改正しても、もともとのところで保護されないという可能性が出てきます。
 したがいまして、どういった体制であれば秘密として管理されているのかということを、ガイドライン等も既にございますけれども、さらにそれを中小企業に周知徹底させて、秘密管理性のところをきちんと体制づくりをするということが重要ではないかなというふうに考えます。
 それともう1点、営業秘密に関しては、秘密保持契約という契約によって秘密を守るという方法も非常に重要ですので、その点も検討していただきたいというふうに思います。
 中小企業の場合は、特にそれほど意識せずに、契約は結んだけれども、余り中身のない契約を結ばれたりとか、実際にはほとんど開示してしまったと同様なものを知らないで、契約してこれで安心だというふうに思っていらっしゃる方もあるかと思いますので、契約自体と契約内容の重要性を認識していただいて、情報を開示する必要があるかなというふうに考えます。
 あとは、この資料1の図表19で特許の侵害訴訟が減ってきているという点なんですが、これは一般的には無効の抗弁が原因ではないかというふうに言われているかと思いますけれども、私の感触といいますか、個人的な考えとして思いますのは中小企業の場合は特に、まず、例えば警告書を出すとか、警告書が来るといった場合に、そもそも特許侵害なのかどうかという、さらには無効かどうなのかという判断をするための材料というのが非常に少ないし、判断してくれる専門家という存在が身近にいないので戦うことが出来ないことも要因ではないかということです。
 余りお金がないような中小企業の場合ですと、もう少し簡易に、安い費用である程度の判断をする方がなかなか見つからないと思います。やはり判断をするというのが非常に責任を伴うものですから、非常に慎重ですし、意見書を書くのにも時間がかかったり、費用がかかったりするような現状がございますので、ある程度訴訟をするかどうかの判断をつけるといいますか、方向性をつけるために情報提供をして、簡易にある程度の方向性をつけられるようなシステムがあればなというふうに思います。
 あと最後1点なんですけれども、専門委員についてです。
 専門委員制度は、司法改革のときに導入されたんですけれども、この専門委員の制度というのが今十分に機能しているかというのは改革の後の検証事項だと思うんですね。
 これから裁判所の実際の運用も含めまして検証していく必要があるかなというふうに考えます。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、前田委員。
○ 前田委員 技術情報の流出について述べさせていただきます。 大学が知的財産を持ちましょう、たくさん出願しましょうという気運が高まりまして、特許がどんどん出されるようになりました。しかし、出しただけで終わりという訳ではなく、その後、企業さんに使っていただかなければ意味がないことですし、国際化も叫ばれていますので、それを、英文に訳して未公開特許を広報しているところもありますので、そこに乗せてという形で終わってしまいますと、一生懸命大学は情報を海外に発信していることになります。実際に特許というのは、製品のところに持っていくからこそ価値があるので、情報の流出にだけなってはならないと思っています。ですから、知的財産本部の未整備の大学といいますか、これから整備しようという学校に、すべて知財の専門家を置くというのはやはり難しいでしょうから、ハブ機関等を上手に利用して、無駄に、大学で特許だけ出して活かされないようになることは避けなければなりません。昔のように、企業さんに出してもらっていたほうが、まだよかったね、みたいな状況にならないようにしていかなければならないと思っています。
 また、今回、ここでの議論に入れるものなのかどうかがわからないのですけれども、マテリアルトランスファーアグリーメント(MTA)は、医学系では特許と同じぐらいによく行われています。無形の資産が特許であるのに対して、有形の資産で、マウスや抗体の譲渡契約ですけれども、特許と同じぐらいの価値であったり、同じぐらいの効力があるものも存在します。先方に非常に有利なMTAに先生がサインをしているにもかかわらず、その後出てきた特許がたいへん有効で、ライセンスをしようとしたら、どこにも譲り渡してはならないというところにサインをしていたなんていうことが稀にあるのです。
 ですから、マテリアルの契約も、大学など、きちんと知的財産権とともに、トラブルにならないように守っていくということも、ブランドやノウハウと同様、必要なのかなという感じで発言させていただきました。
○相澤会長 今の第2点はともかくとして、第1点のところは、どこが検討課題なのか、どこにどう反映させたらよろしいでしょうか。
○前田委員 具体的には、23ページの下のほうに、他方、教職員・学生の秘密、設けている学校がこうでというふうにいろいろ調査されていると思うんですね。こういうふうに調査をしていただいていますので、これから整備をするというところの場合のフォローがやはり必要だということがあってもいいのかなというふうに思いました。
○相澤会長 それでは、佐藤委員。
○佐藤委員 今日の資料の中では、資料2の14ページの知的財産の安定性・予見性の向上ということは大変に重要であり、前回、私欠席しましたけれども、ペーパーで出させていただいて、この点ぜひしっかり進めていただきたいと申し上げたんですが、そういう意味では、このペーパーではその点しっかり書いていただいてよかったなと思っています。
 それとの関連ですが、ここで異議申立制度の検討というのが今までなかった視点だというふうに思います。そのことについて一言コメントさせていただきます。
 今まで、付与前異議から付与後異議になって、それが無効審判に吸収されて、異議申立制度がなくなった。その流れは、やはり権利化を、早期に審査して権利化するという流れにしていくためには、むしろそういう異議申立制度をなくしたほうがいいんじゃないかという流れだったと思うんですね。これはやはり権利の迅速化が知財保護のために非常に重要だという流れだった。
 ところが、それが早く行き過ぎて、かえって権利の不安定化を生じてきたということで、もう一度異議申し立てというものが見直されるという話になってきたんだろうというふうに理解しております。
 ただ、確かに知財の価値が上がれば上がるほど、力が強くなればなるほど、それが不安定であると、知財、特許に基づくビジネスそのものが不安定になってしまう、特許制度に対して信頼を失うということで、その権限の安定性というのは、特許制度のためにとっては非常に重要なポイントだと思います。
 そのためには、やはり権利化する前の段階できちんと審査される、安定した権利になるということがやはり重要なポイントだと思います。やはり権利をとって、いざ訴訟をやって、侵害は明らかなのにもかかわらず、そのときになって無効になってしまったということになると、今度は権利者そのものが何のために権利化したんだということで、特許制度そのものの信頼を失ってしまうということだと思います。
 そういう意味では、公開前に特許付与されるような最近の状況においては、やはり不安定要因というのはどうしてもついて回ると思うんですね、審査に。そういう観点から言えば、私はやはりもう一度特許異議申立制度を復活させるということは十分検討の価値があるというふうに思っています。
 ただ、従前、付与前の異議申立制度があったとき、表現が悪いですけれども、よってたかって異議申し立てをやって、権利化を遅延させるということがよく行われました。そういう意味では、運用の仕方がすごく重要だというふうに思います。異議申し立てを復活させるとしても、そういうかつての弊害のようなものをどうやって解消できるか、そこをしっかり考えた上で制度設計をすべきだというふうに思います。
 それとの関連で、その下にございます審査基準の検討を中山先生が座長で始められたと伺っております。今度の4月には進歩性について議論をやられるということで私大変期待しておりますので、中山先生、よろしくお願いいたします。
 ただ、なぜ改めてこんなことを中山先生に申し上げるかというと、やはり制度を幾ら正確につくってみても、実際の運用がきちんとされなければ、その制度そのものの効果は出ないということで、特にやはり権利を認める、認めない、今申し上げた進歩性のような問題、このような問題が今業界、我々の弁理士間も含めてですけれども、裁判所、特許庁でいろいろと議論されていいます。こういう状態はやはりできるだけ速やかに調和させて方向性を出していかないと、やはり混乱した状態が出てくるのではないかというふうに思っています。
 そういう意味で、中山先生の委員会に大変に期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、その点について加えてきますと、今の産業そのものも技術分野によって発展度合いも違うし、レベルも違う。そういうところをやはりしっかり見定めた上で審査、審判をやらないと、一律ハイレベルで、ローテクのものもハイテクと同じようなロジックで審査をしてしまったら、権利になるものがなくなってしまうということになりかねないということもありますので、そういう業界、産業界、技術の発展状況をきちんと踏まえた上で運用がなされるように、ぜひ今後とも進めていただけるようにお願いしたいと思います。
 以上です。
○相澤会長 中山委員のほうから何か、ただいまのことについてございますか。
○中山委員 よくわかりましたので、心していたします。
 なかなか難しいのは、かつては乱異議がいっぱいあって、まともな発明もなかなか権利にならないという事態があったわけですけれども、乱訴と同じでなかなかこれを防ぐというのは難しいんですけれども、何とかそういう事態にならないように努めたいと思います。
○相澤会長 それでは、長岡委員、お願いします。
○長岡委員 どうも、前回も欠席いたしまして申しわけございませんでした。
 4点申し上げたいと思います。
 1つは特許の審査の迅速化ということで、審査待ち期間を11カ月にするという目標は、現状二十数ヶ月月かかっていますので、やはり非常に野心的な目的だというふうに思います。ほかの方もおっしゃいましたように、質の確保というのが非常に重要で、質を犠牲にして早くすることとなれば権利の不安定性等弊害のほうが大きくなると思いますので、的確な質の高い審査を維持しつつ早くするというのが重要なポイントになると思います。
 それに関連しまして、今、異議申立制度のことが議論されているんですけれども、これは付与前のことを想定しているのか、付与後のことなのかを明確にしつつ議論する必要があると思います。先ほど議論がありました異議申し立て制度の弊害の問題は、付与前の異議申立制度において権利の設定が遅れるということだと思っているわけですけれども、付与後ということであれば、それは改革後の制度ですけれども、特許庁の審査とそれに伴う付与自体は早く行われて、ただし、一定の期間、事後的なチェックをするという制度ですから、早く権利を設定することと、それからクオリティ・コントロールが矛盾しないと思っております。
 技術流出の問題につきましては、契約との関係が非常に重要で、米国の通りには必ずしもできないかもしれませんけれども、契約を利用した保護のあり方も検討をしていくことが重要だと思います。米国ですと、競業忌避に関連して、プリザンプティブ・スピルオーバーという考え方があって、コアになる人がほかの競争企業で働くこと自体がスピルオーバーを自動的にもたらすので、それを禁止するような契約自体が合法だという考え方もあるようです。不正競争防止法の問題は契約によるノウハウの保護のあり方と一緒に検討していくのが非常に重要かなというのが2番目の私の申し上げたい点であります。
 それから、模倣品ですが、非常にややこしいのは、中国から輸出される模倣品というのは何かということで、日本に来ると、日本では特許権があるから侵害になるが、中国市場では特許権がないから侵害でない可能性もあります。中国から日本に輸出する限りは侵害ですけれど、中国でつくること自体は侵害ではないということで、中国の税関にそれを取り締まれといってもなかなか難しい面もあるのではないかと思います。模倣品が侵害かどうかというのは、特許権があるかどうかということに非常に依存していますので、特許権等の権利侵害ときちんとリンクした議論をする必要があるのではないかというところが3番目のポイントであります。
 それから、すみません、私勉強不足で恐縮ですが、先ほど、侵害状況調査制度というのはほとんど使われていないというご説明があったと思うんですが、これは一体どういう仕組みで、どうしてほとんど使われていないかというのをもしご説明いただければ非常にありがたいと思います。
 以上です。
○相澤会長 長岡委員がおっしゃっている付与前、付与後について。
○内山事務局次長 異議申立制度につきましては、付与前、付与後も含めて幅広く検討していきたいということではないかと考えております。
 それから、一番最後のご質問ですね……
○長岡委員 38ページですね。
○内山事務局次長 38ページの侵害状況調査制度の点でございますね。これにつきましては、資料の34ページに詳しく書いてございますので、ちょっとそれをご参照いただけますでしょうか。
 侵害状況調査制度というのが一番上に項目がございまして、ここにございますように、外国政府の制度、運営上の問題によって我が国企業の知財が保護されない、こういう場合に必要に応じて政府間協議、国際的な枠組みによる解決を図る。こういうことを目的にして侵害状況調査制度というのが2005年につくられまして、これに沿って申し立てがなされた案件というのは、香港において我が国の企業の商標が非常に無断で第三者の商標の一部として不正に登記されて、いろいろな被害が出てきていると。こういうことが多数の企業から申し立てをされまして、これにつきまして、日本と香港の間で政府間協議でいろいろと解決策が議論されて、ある程度方策が固まってきているということで、この1件があるわけでございます。
 ただ、ここにございますように、利用頻度は非常に低調なものでございますから、その要因とか制度のあり方について、どうしてなかなか使われないのかというような点についてもう少し探ってみて、必要に応じて制度の見直しを積極的にやったらどうかと、こういうことでございます。
 あと、中村委員の資料の5ページの中にも似たような点が書いてございます。
○相澤会長 それでは、田中委員、今の関連でしょうか。
○田中委員 模倣品関係です。
○相澤会長 今そのことについて申し上げようと思いましたが、模倣品関係に移っておりますので、資料2のページで申しますと31ページから後半にかけて、これから議論をしていただければと思います。
 それでは、田中委員。
○田中委員 模倣品につきましては2つございます。
 1つは、41ページに記載されていることでございます。2003年度から2007年度にかけて模倣品・海賊版の個人輸入・個人所持の禁止を含む抑止策についていろいろなところで議論がされたと思いますが、これはなかなか難しい問題だと思います。
 一方、国民へのアンケート調査によりますと、50%以上の人が模倣品・海賊版の購入を容認しているというデータもございます。やはり買う人がいるから模倣品業者もはびこるという状況もあると思います。
 法律の専門家から見ますと、この個人輸入・個人所持等の禁止を法律で定めるのは非常に難しいという話もありますが、買う人がいるからこそ模倣品もはびこるという状況がやはりあるわけですから、何らかの法律改正なり、対策なりが必要ではないかと思います。
 個人所持につきましては、フランス等では禁止されておりますので、日本においては禁止することがなぜ難しいのか、フランスではなぜそれが可能なのかという点も含めて検討していただければ非常にありがたいと思います。
 それから、もう1点でございます。55ページですが、プロバイダの責任のあり方の見直しに絡む問題でございます。今では、インターネットを使用したオークションサイトでの模倣品の販売が、プロバイダ業者の努力により大分減ってきた、つまり1%以下にはなってきたということが記載されております。しかし今、私どもが一番気になりますのが、携帯電話を使ったオークションサイトのようなものがあり、非常にこぢんまりした形で運営されているのでなかなか見つけにくいということでございます。それからインターネットに関してはもう1つあり、オークションサイトとは異なる、トレードボードとかビジネスマッチングサイト等と呼ばれているものがありまして、そこで業者間で偽物を取り引きするということが多々行われております。そのような業者のホームページを見ますと、例えば、「キヤノンの中国工場にコネがあり、純製品を安く供給できます。品質も保証します。」などと、とんでもないことがたくさん書いてあります。ですから、今度はそのようなトレードボード等々の新しい動きに対して、どのように対処していくのかを議論していかなければならないと思います。
 それから、先ほど長岡先生が仰いました中国における摘発についてです。模倣品というのは、我々の定義ではデッドコピー商品のことを指すことが多いです。消耗品等にキヤノンのロゴをつけ、意匠もほとんど同じパッケージで売られているので、特許権を使うまでもなく、商標権等で摘発できますし、中国の税関も輸出するときに非常に熱心にきちんと対処してくれております。
 しかしだんだんと技術が進みますと、自分のブランド名で互換品を販売するような状況になってきています。そうすると、商標権や意匠権では摘発できませんから、初めて特許権の行使ということになるわけでございます。そのあたりはきちんと区分けをして対処しておりますし、多分いろいろなところで記載されておりますので、大きな混乱は起こしていないのではないかと思っております。
 以上でございますが、インターネットのトレードボード等の取引に関しましては、資料はつくりましたけれども、ここで細かい話をしても仕方ありませんので、これは事務局にお渡ししたいと思います。
 以上です。
○相澤会長 ありがとうございました。
 佐藤委員。
○佐藤委員 模倣品問題は、今日の資料1の図の39、それから41を見てもわかるんですけれども、41からもわかるように、中国、韓国、台湾、この辺は相当模倣品対策ができるエンフォースメント可能な状況になってきたというふうに思っています。その結果が、ここにあるように41のように出ているんですね。
 ただし、最近やはり問題になってきているのは、東南アジアです。この図表の39に出てくるインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム、この辺が結構中国から流れた部品を、その地域で組み立てるというものが非常に増えてきて、中国発の完成品の模倣品の流れではない流れが出てきています。
 なぜこのことをちょっと申し上げるかというと、今、マレーシアの知財訴訟をやっているんですけれども、2000年以前の訴訟が未だ片づいていないんです。我々、それを促進しようと思って裁判所と交渉しているのですが、とにかく2000年以降のものは当面手をつけない。2000年以前のものを全部片づけるのが先だと、こんな状況になっているんですね。そうすると、もう8年、10年の戦いになってしまって、結果的には権利者のほうは疲弊してしまう状況が起こっています。それはマレーシアだけじゃなくて、フィリピンとか、そこら辺もそういう状況が起こっています。中国、台湾、韓国については今までは非常に大きなテーマとして関心を持たれてきているんですけれども、東南アジアについてもしっかり調査をし、その中で政府として何ができるのか、何をすべきなのか、その辺をお考えいただければありがたいと思っております。
○相澤会長 そのほかいかがでございましょうか。
 三尾委員。
○三尾委員 私もよく存じ上げないので、確認なんですけれども、侵害状況調査制度というもの、34ページの件なんですが、ちょっと前に日弁連で知財研修というのがあったんですけれども、そこにJETROの方がお見えになりまして、JETROが日本企業の依頼を受けて、例えば中国の調査会社に調査を依頼して侵害の実態を調査させると。その調査の結果、報告書をもって中国の行政当局に申し出をして、取り締まりをしてもらうという制度があるんですよというご説明だったんですね。
 何かそれが非常に有効に機能しているというお話で、例えば裁判で侵害を訴えていても、先ほど佐藤委員がおっしゃったように非常に時間がかかったりとか、中国の特許法等の制度が日本と違っていたりとか、中国の代理人を使わなきゃいけなかったりとか、いろいろハードルが高いんですけれども、中国の行政当局に取り締まりを依頼すればすぐに押さえられるんですよというお話をされていたんですけれども、その制度とこの侵害状況調査制度というのは別個のものなんでしょうか。
○内山事務局次長 JETROのやっておりますのは対象は中小企業だと思います。それと、ここの「侵害状況調査制度」でやっておるのは、こういう違反の実態があるから取り締まってくださいということを中国政府なりに要請するということとは違って、そもそも香港の中の法制度上、非常に不利に諸外国の知財が扱われる、これを直してほしいというのは個々の企業の対応ではなかなかできませんから、その実態を集めて政府間交渉の中で直してほしいという働きかけをすると、そういうものでございます。JETROの申している制度とは違います。
○三尾委員 そうですか。私としては、行政当局に直に取り締まってもらうというのは、中国に対しては非常に有効なんじゃないかなと思います。
○相澤会長 どうぞ、佐藤委員。
○佐藤委員 特に中国なんですけれども、中国は2001年にWTOに加盟して、知財制度を完備してきたわけですが、その次の第2弾の改正がとまっている。今、特許法の二次改正を来年春にやるであろうというところまで来ているんですけれども、商標法改正もとまっています。実はもう既に法案もできているし、行くところまで行っているんだけれども、なかなか先に進まないという現状があるんですね。
 特許法とか商標法について改正案が既に見えているんですが、国際知的財産保護フォーラムが問題にしている不正競争防止法の改正、これが意外とまだ表に出てきていない。模模倣品対策に関して、特許法、商標法、意匠法等で押さえる対策ばかりではなくて、やはり不競法を使うというのが非常に大きなメリットがあるんですね。
 それに対して、中国の不競法は、日本の不競法よりもおくれていて非常に問題があるということは日本政府も今まで指摘をしてきました。しかし、それがまだ実現していないし、表にも出てきていない。こういうところは、やはり政府レベル、または民間レベルでもっと積極的に働きかけていく必要があるんじゃないかということを強く思っております。模倣品対策であるときに、特に権利がなくても不競法がしっかりしていれば対応できる部分があるんで、そういう意味ではこの問題は非常に大きな問題だというふうに思っていますので、一応申し上げたいと思います。
○相澤会長 田中委員。
○田中委員 中国等でも、行政の中でかなり摘発活動を行っております。公安でもやりますし、いわゆる日本でいう特許庁でもやります。それから質量技術監督局でもやりますし、税関でもやります。調査会社を使って、それは偽物であるということをキヤノンがきちんと認定すれば、すぐに摘発してくれます。私どもでは年間でワールドワイドベースで400回ぐらい摘発活動をやっておりますが、事案は後から後から出てくるので、焼け石に水のようなところもあるわけです。私も官民合同ハイレベルミッション等で中国政府等を訪れて、いろいろな要請もしておりますが、中国政府は非常に意識が高くなってきて、きちんとやるという姿勢は十分にあると伺えます。
 ところが、一番大きい問題は、中国の地方までいきますと、全く野放しになっていることです。中央政府がいくら通達を出しても、地方政府においてなかなか機能しないということが実はあるわけです。むしろこれからはそのような地方政府等々についてもきちんと対処してほしいという要望も含めて働きかけをしていかないと実効性がないと思います。
 それから、ある業者を摘発したとしても、次はまた同じことをだれかがどこかで始めるという状況があります。このようにイタチごっこのようなところもありますので、その状況も意識しながら、民間企業も官庁の皆さんも含めて一緒に長い目で見ながら活動していかないとまずいと思っております。
○相澤会長 どうぞ、前田委員。
○前田委員 偽物購入容認割合、年齢別という図表52を見ていて思ったんですけれども、高校生ぐらいにもっと偽物を買うことがいけないとか、みんなで同じものを持ちたいと今の高校生はとにかく思うんですけれども、そういうことではなくて、オリジナリティがあることだったり、いわゆる特許マインドの教育というんですか、特許を生み出すことの大事さだったり、偽物をやたらに買っていいということじゃないよという教育というんですか、私、子供のときに道徳という時間があったんですけれども、今、道徳の時間というのは学校にないんですよね。私の娘は今大学1年ですけれども、たしかなかったなと思っているんですね。何か本当は、高校生、中学生ぐらいのときにもっとそういう意識がないと、何か半分以上の人が買って何でいけないのと思っていること自体が中国にたくさんつくらせているわけで、それはもうちょっとキャンペーンだけでいいのかな、子供の教育のところにもうちょっと踏み込めないのかなというのをすごく強く感じていました。
 偽物がいけないよというだけじゃなくて、知財マインドというような、広い意味での、何か高校の中ぐらいに入っていけるような教育のところにそういうものが取り込めないのかななんていうことを考えながらこの表を見ていました。
○内山事務局次長 今の前田委員のご指摘でございますけれども、50ページに今後講ずべき主な施策の中で、今の若者あるいはもっと小中、高校生というご指摘ございましたけれども、その点について触れているところがございます。国民の意識調査の実施、特に若年層の意識を調査するとともに、下の丸にございますように、若年層に対する模倣品・海賊版問題に関する啓発活動の強化ということで、ここは小中校生というふうになっておりますけれども、教育活動はやはり重要だと思いますので、そういった点についての実施を考えていくということではないかと思います。
○田中委員 「偽物が悪い。」と、官民合同ハイレベルミッションの中で中国側に主張しても、日本国内において50%以上の人が偽物を購入することを容認するという状況では、どうも迫力がでないのです(笑)。よって、先ほど申し上げた個人所持や個人輸入は禁止というような法制度を整備する等といったことをきちんとしていかなければならないと思います。中山先生、いかがでしょうか。なかなか法律化するのは難しいということなのですけれども。
○中山委員 そこら辺で偽物バッグを持っている女の子を全部とっつかまえて、刑罰を科すということが果たしてできるかどうか。あるいはフランスはそういう法律があるのはたしかですけれども、私は実態は知らないんですけれども、フランスでザル法になっているのか、あるいは偽物を持っている人がとっつかまっているのか、それの実態を全く私は知りませんけれども、なかなか現状において所持まで難しい。
 これは、知的財産だけではなくて、例えばわいせつ物なんかもそうですし、あるいは最近問題になっている大麻の種とかいろいろ問題がありまして、知的財産だけ刑罰をかけて個人所持まで現段階でやるというのはちょっと抵抗が大きいのではないかなという気がしています。
○田中委員 それでは、個人輸入についてはいかがでしょうか。
○中山委員 これが、国内で合法的なものを輸入で止めることができるかという問題で、そういう例が全くないわけではありません。ポルノは、国内での個人所持はいいけれども、輸入では止められています。しかし基本的には税関でとめるというのは、国内で禁止されているものを水際で防ぐということになっています。法律家的と言われそうで申しわけないのですけれども。
○相澤会長 どうぞ。
○岡内委員 本当に買う人がいるからつくるんだと。ここにもありますように、模倣品・海賊版撲滅キャンペーンを実施していますと言いながら、それが余り有効に働いていない。それはやはり攻め方がまずいんで、いけないよといっても、格好がよければやはり買ってくるし、向こうに行って、皆さんご存じだろうと思いますけれども、中国でも韓国でも、完璧な偽物よというキャッチフレーズで人を誘っている。ああいうキャッチフレーズに逆に言うと日本のキャンペーンは負けているんじゃないかと。
 ヨーロッパへ行きますと、偽物を持っていると恥ずかしいんだよ、自分の品位をも下げるんだというようなことで、いわゆる宝石なんかでもあんまり中古は売れないんだそうですね。要するに、新品が買えないというか、そんなことは第三者はわからないんですけれども、そういうマインドが既にある。
 ですから、やはり買わないようにするためには、実質的なメリットがあるような形、そういういいキャンペーンというかキャッチフレーズがあるとより効果的になるような気がいたします。やっているよ、やっているよだけで実際的に伝わっていないと、先ほどの中山先生、あるよといっても、みんな中小企業は知らないものですから、そこまで浸透する方法をひとつ考えられたら有効かなとは思っております。
○相澤会長 どうぞ。
○中山委員 今、ここでは模倣品・海賊版の話で、主として物の偽物だということだと思うのですけれども、実は、物だけではなく、情報それ自体、コンテンツも問題となります。今の若者にはコンテンツは無料であるという意識があるわけです。これなどは、海賊版以上に恐らく罪の意識はないというか、何でインターネットで無料でとれるものを一枚何千円も出して買わなきゃいけないのという、むしろそのように考えている者のほうが多いですね。
 この次の国会になるかどうか、多分なると思うんですけれども、違法なサイトからのダウンロードは違法であるということにしようということにはなりつつあるのですけれども、刑罰をかけるというのは難しいと思われます。それではどうしたらいいか、と言われると困るのですけれども、この海賊版・模倣品と同時にコンテンツのほうも併せて考えていく必要がある、特に教育等において考えていく必要があるだろうと思います。
○相澤会長 どうぞ、辻村委員。
○辻村委員 皆さんの意見と同じなんですけれども、この模倣品というものの防止ということで言えば、買う人をいなくするということが一番原則かなと思います。
 私も刑事罰等、買った者に対して、持っている者に対して罰するということで一度ご質問したことがありますが、フランスでは刑事罰があるそうですけれども、一度も適用がないということを聞いております。実際にそれを適用する人がいないのか、しないのかわかりませんが、そういう法律があることで抑止効果になっているということなのかもしれません。
 だから、そういう意味では、刑事罰までつくるかどうかですが、何らかの手法でそういう抑止力のあるようなものを考えるということは一つの手かなとは思います。
 ただ、あとはやはり教育というところが非常に大事でございまして、先ほど前田委員は中高生とおっしゃいましたけれども、やはり幼稚園、小学校ぐらいから地道に努力をしないとこれだけはどうにもならないだろうと思います。
 現在、食品の分野でも食育ということがずっと言われております。これもやはり幼稚園、小学校から地道にやっていくということでございまして、これはボディブローのように効いてくるだろうと思います。ただ栄養素がどうのこうのだけでなくて、食の安心・安全とか、環境問題、フードマイレージとか、そういうようなものをひっくるめて、小さいときから教えるということをやっているわけでございます。同様に模倣品対策に関する教育というのは徹底して小学校低学年ぐらいから教え込むということもやらざるを得ないんじゃないかなと。
 20代とか30代で70%の人が模倣品を容認するというのはちょっと驚きでした。これは意識を変える以外には手がないかなと思います。
 コメントまででございます。
○相澤会長 31ページの一番下に、どんな被害があるのかという例が出てきているんですが、今のお話の関係は、ほとんどが雑貨という部分ではないかと思うんですが、ここにはほかのものが随分出ているんですね。このことについては、現状と、それからそのとらえ方、どんな状況なんでしょうか。
 どうぞ。
○佐藤委員 実際、私が今かかわっているものとしては、オートバイ、それから汎用エンジン、それから発電機、こういうものですね。当然、外観も全く模倣していて、ただブランドは自社ブランド。ですから商標権侵害にはならない。意匠権をとっていないと外観は押さえられないという状況になっています。それで、今、苦労して意匠登録制度がちゃんとしている国はまだいいんですけれども、そうでない国もたくさんある。
 それで何をするかというと、著作権でスリーディメンジョンを押さえようというところをやっているんですね。これは、イギリスの旧著作権法が著作権の侵害に図面から立体物まで及ぶという規定があって、それをまだ旧法的に適用できる国もあるので、何とかそれを使うというようなことをやっているわけですけれども、だんだん巧妙になってきまして、全くのデッドコピーではなくて、よく話題になりますけれども、オードバイですとフロントビューはホンダでリアビューはヤマハというようないろいろなテクニックを使ってきているという意味で、いわゆる日用品雑貨のたぐいじゃないものも非常に出回っているということでございます。
 特に問題なのは、中国でつくったもので発展途上国、中進国に流れる。形は同じなんだけれども、品質も悪いんだけれども、値段が安い、だけど売れるという、そういう構造なんですね。これが中進国、発展途上国で流れているんですけれども、最近はヨーロッパ、アメリカに流れるようになってきた。それはなぜかというと、彼らはアメリカ、ヨーロッパのディーラーのOEMで流れをつくるようになってきている。それは品質が上がってきたんですね。ヨーロッパ、アメリカでも売れるものをつくれるようになってきた。
 そういう意味では、今、機械類とか産業機械関係のものは発展途上国、中進国から先進国に流れが変わってきたということで、安かろう悪かろうの世界から、安かろうまあまあの製品というか、その辺ができているという状況です。そういう意味では、各企業とも非常に発展途上国対策から先進国対策まで幅広くやらなきゃいけないという意味では、非常に負担が大きくなっているというのが現状だというふうに私の経験ではそう思っております。
○相澤会長 それでは、そのほかの点につきましていかがでございましょうか。
 どうぞ、妹尾委員。ご到着早々ですが。
○妹尾委員 すみません、遅刻をしてまいりましたので、どういうご議論がなされていたのかわかりませんが、今の海賊版・模倣品に関して1つ申し上げてよいでしょうか。
 以前、これの前身であるサイクル調査会のときにも、データが出てきてびっくりしたのが、海賊版・模倣品の国際流通金額がいわゆる麻薬関係の流通金額を上回ったというインターポールのデータですね。それが今回の資料にちょっと見当たらなかったんですけれども、今後もあれをフォローするとよいかなと。
 といいますのは、学生教育をやっているときに、先ほどの総理府の統計に基づいて質問をすると、やはり学生は買っても構わないと思うほうに正直にほとんどが手を挙げます。だけれども、こういう事実を知っているかといって、インターポールの調査を出しますと、やはりそれなりに顔色が変わるんです、知らなかったと。
 だから、麻薬を密売すれば死刑にはなるけれども、海賊版・模倣品を幾ら扱っても死刑にはならない。つまり、非常にリスクの少ないビジネスへあっちの世界の方々が今や動き出しているという事実について、もう少し周知してもよいのではないかなと思います。そこで、キャンペーンは、倫理に訴えるだけではなく、もう少しそういう事実関係を言うのがよいのではないかなと思います。それが1つ目です。
 それから、もう1つは−これは全体の話ですか。
○相澤会長 どちらでも結構でございます。もうほぼいろいろなご意見が出尽くしてきておりますので、もちろんまとめていただいても。
○妹尾委員 そうですか。汗が出てきました。今回は保護の話で、次回の話は活用と人材育成だと伺っております。けれども、この保護の話は、今は、保護は保護というふうになっているんですが、ここのところの動向を見ると、やはり活用と保護の関係を考えなければいけないと思うんです。
 といいますのが、我々がこういう知財立国の中で仕事を始めたときに最初に言われたことは、技術はあるけれども、特許化で負けたよという話がたくさんあった。だから事業をきちんとしようというと「知財保護を保護すべき」という考え方になるわけですね、あるいは権利化の話。どれを権利化し、どれを秘匿化するかと、こういう話でした。
 それから、知財を保護・権利化を進めたのですが、しかし、やはりちょっと勝てない。どういうことかというと、技術はあるけれども標準化で負けているんだ、こういう話になったのです。
 でも、よくよく見てみると、「標準はとったけれども、負けているよね」というのがたくさん出てきた。要するに、今、特許をとったにもかかわらず負ける、標準をとったにもかかわらず負けるということが歴然としてきたということです。それがここ数年のことだと思います。特にエレクトロニク商品を中心に、特許はたくさんとっています。例えば、具体的に名前は出せないですけれども、半導体で今最も収益を上げているのはどこかと考えてみましょう。半導体について1万に近い特許は日本の企業さんが持っている。でも、実際勝っているのは320個のあの(米国の)メーカーです。これは一体何を意味するんだろう。それから、それ以外にも、そういう例がたくさんある。特許をたくさんとった、それから標準化をほとんど押さえて、でも結局は世界的になれなかったメーカーというか通信サービスもありますよね。そういう事例がここのところばたばた明らかになってきたわけです。
 ということは何を意味するかというと、保護を保護の観点だけでやっていてよいのだろうかという、この問題提起だと思うんです。すなわち、活用とのリンケージで保護というものをもう一回見直さなきゃいけないし、保護をする制度だけではなくて、保護を活用するという競争力を持たなきゃいけないという話なのです。ここは競争力調査委員会ですから、保護をすることが競争力というだけではなくて、保護するもの、あるいはオープンにするもの、それをどう使い分けながら競争力として構成していくのかという、このところへもうそろそろ一歩踏み出すときではないかなというふうに思います。
 詳しい話はまた次回の活用のときに申し上げたいのですが、保護に対するスタンスを少し見直したほうがよいのかなというのが私の感じるところです。
○相澤会長 ありがとうございました。
 ただいまの点は、今回のフォローアップで非常に重要な点でございまして、今サイクルのユニットごとの議論を進めているわけですが、それだけでは今のようなところが十分ではありませんので、後半はそこのところに議論が移るという形に設定されております。
 それでは、そのほかの点、いかがでしょうか。
○佐藤委員 今の妹尾先生のお話はすごく大きな課題だと思っています、我が国にとって。そういう意味では、ぜひこの調査会の中で具体的な事例も含めて検討して、その上で何が本当に、これから何をしなきゃいけないのかということをやはり明確にすべきじゃないかというふうに思います。
 既にこの事例は、妹尾先生、余りはっきりはおっしゃらなかったが、3つも4つもたくさん事例があると思います。そういう意味では、ぜひ事務方の方も十分調査されて、十分議論されたほうがいいんじゃないかというふうに思います。
○相澤会長 ありがとうございました。
 今日はいろいろな角度から保護について、特に模倣品関係についてお話しが進展いたしました。
 それでは、この部分についての議論は以上とさせていただきたいと思います。
 そこで、報告に移らせて頂きます。先端医療特許検討委員会が設置されまして、第1回が行われたところでございます。
 それから、パブリックコメントを実施するということがございますので、これらについて事務局から報告いただきたいと思います。
○内山事務局次長 資料4、5、6についてご説明させていただきます。
 先ほど、会長のほうからご説明ございましたように、先端医療特許検討委員会が資料4にございますように今月17日付をもちまして設置をされました。この趣旨等につきましては、既に本専門調査会でご説明をしたとおりでございます。
 それで、資料5はメンバーリストでございまして、金澤日本学術会議会長が委員長でございます。第1回の会合が今週火曜日、25日に開かれております。
 先端医療特許検討委員会については、以上、ご報告をさせていただきます。
 それから、資料6に意見募集、パブリックコメントについてでございます。
 募集期間が12月1日月曜日から一月弱ということで、25日木曜日までということでございまして、募集の中身でございますけれども、現在専門調査会で検討してございますこれまで6年間にわたる知財政策の実施状況とその成果に関するご意見をちょうだいするという点。それから、第3期、一応平成21年度以降5年間を想定しておりますけれども、その知財戦略の基本方針のあり方に関するご意見もちょうだいするということでございます。
 参考資料として、ここにございますような本専門調査会の資料も含めてお示しをする予定でございます。
 以上でございます。
○相澤会長 引き続き次回の会合等についてもお願いいたします。
○内山事務局次長 次回の会合でございますけれども、第4回ということで、先ほど妹尾委員のほうからもお話ございましたけれども、知財の活用あるいは人材の育成という点が議題でございます。12月19日金曜日でございます。午前中10時から12時の予定で本事務局会議室で開催の予定でございます。よろしくお願いをいたします。
○相澤会長 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の会合、これで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。