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 トップ会議等一覧知的財産戦略本部知的財産による競争力強化専門調査会 [印刷用(PDF)]


第2回知的財産による競争力強化専門調査会 議事録


1.開 会:平成19年10月30日(火)10時00分〜12時00分
2.場 所:知的財産戦略推進事務局会議室
3.出席者:
【委 員】相澤会長 岡内委員 加藤委員 河内委員 佐藤委員 関田委員 妹尾委員 田中委員 辻村委員 長岡委員 中村委員 中山委員 前田委員 三尾委員 渡部委員
【事務局】小川事務局長 松村事務局次長
4.議事
(1)開会
(2)分野別の知財戦略について
(3)自由討議
(4)閉会


○相澤会長 皆様、おはようございます。
 それでは、これから知的財産による競争力強化専門調査会の第2回会合を開催させていただきます。
 本日はご多忙のところをご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 早速でございますが、分野別の知的財産戦略について議論を行いたいと思います。
 前回の専門調査会において、4つの分野別のプロジェクトチームを設置し、各分野における知的財産に係る課題及びその知的財産戦略の在り方について検討していただきました。今回は、各分野のプロジェクトチームの調査検討結果をご報告いただくことになっております。
 まず、4つのそれぞれの分野について、各PTの調査検討結果をご報告いただき、ご質問やご意見は4つの分野の報告をいただいた後に、まとめてさせていただきたいと思います。
 それでは、ライフサイエンス分野から始めたいと思いますので、松村次長、よろしくお願いいたします。

○松村事務局次長 おはようございます。
 それでは、ライフサイエンス分野、情報通信分野、環境分野、ナノテクノロジー・材料分野、それぞれにつきまして、簡単な1枚紙のポンチ絵と報告書本文をご用意させていただいております。
 それでは、最初にライフサイエンス分野でございますけれども、まず資料1−1、ポンチ絵をご覧いただきたいと思います。
 左上、検討の視点。ライフサイエンス分野のプロジェクトチームとして、どういう検討の視点でこの作業を行ったかということでございますけれども、この分野は国民の健康や生活の向上に直結する重要な技術でありまして、特にバイオ技術につきましては物質生産技術として、また新産業創出につながる科学技術であるということから、国際競争といいますか、国を挙げて各国で開発に力が入れられている分野です。しかしながら、我が国におきましては、全般的には競争力は欧米に後れをとっているのではないか。大きな研究開発リスクを伴う分野でございますけれども、他方、完成した技術については、模倣の容易なものも結構あるということで、知財による保護が重要であるという認識を本文では書かせていただいております。
 この分野の特性としまして、1つの製品について含まれる特許が少ない、少数の基本特許で幅広くすそ野まで技術が押さえられてしまう傾向があるのではないかという1点。もう一つは、技術革新が激しくて、遺伝子組換え生物、再生医療、ドラッグ・デリバリー・システムなど新しい分野、用途、製品が生まれている。
 他方、この分野におきましては、医療など公共性の高い要素を持った分野もございますものですから、知財の保護と公共性のバランスをどうとっていくかも特性の一つであるかなと思います。また、実験用の遺伝子改変マウスなどの改変動物等のリサーチツールが、実験として重要な役割を演ずる分野でもあるのが特色ではないかと考えております。
 現状と課題でございますけれども、欧米が特許出願でリードしているということなどが書いてございますが、資料1−2の本文3ページをご覧いただきたいと思います。
 簡単に現状を触れた後、2.課題から見ていただきますと、まず最初に基礎研究の戦略的重点化が大事ではないか。そこでは選択と集中を行って、重点的かつ効率的に基本特許を取得していくことが必要ではないかという点を言っております。
 2)基礎研究成果の円滑な事業化と国際展開の促進。ここでは、3行目からでございますけれども、「大学、研究開発、TLO、ベンチャー企業、大企業など多くのプレーヤーがそれぞれの役割を適切に果たしつつ、互いに連携することが必要であり、その際、知的財産というバトンを上手くつなぐことにより、基礎技術を事業に結びつけていくことが必要である」ということを指摘しております。
 3)急速に発展する新技術の適切な保護。新技術の適切な保護といいますと、やはり知的財産制度の在り方ということを言っております。これも、社会経済の状況、技術開発の状況、知的財産を的確に保護するということで、制度自体を「最適のものとしなければならない」ということを3行目に書いてございます。
 4)「パテントフロンティアの開拓」。以上のような3点を踏まえまして、「研究領域における技術フロンティアの開拓と当該領域への研究開発の重点化、技術シーズの事業化や国際展開の促進、さらには技術動向と社会経済情勢を踏まえての最適な知的財産制度構築に向けた改革に至るまで、ライフサイエンス分野全般に関わる領域において「パテントフロンティアの開拓」を行うことこそが我が国が取り組むべき大きな課題」ではないかということを言っております。
 また資料1−1のポンチ絵に戻っていただきまして、そういう「パテントフロンティア」のコンセプトの下に、1から3までの対応策を述べております。
 まず、基礎研究の戦略的重点化ということでございますけれども、異分野融合領域等の研究開発を推進していかなければならない。また、競争的資金等の評価におけるパテントマップ等を活用した重点化をしなければいけない。そして、分野の特性で申し上げましたリサーチツール、これはガイドラインが総合科学技術会議から示されたわけでございますけれども、速やかにこのガイドラインを普及させる一つの有力な手段として、データベースを構築する必要があるのではないか。関係省庁、どこがデータベースを構築するのか早急に明確化して、さらにデータを供出していただくべく、関係省庁の協力体制を早急に構築するべきではないかということで、喫緊の課題として取り上げております。
 2.研究成果の円滑な事業化と国際展開でございます。大学知財本部・TLOによる知財の創出・技術移転機能の強化。大学、ベンチャー企業、臨床機関等との連携強化による橋渡し研究の促進。特許制度運用の国際的調和、育成者権の国際的保護、外国への出願の支援等の対応策を挙げております。
 3.新技術に対応した知財制度の見直し、2つ挙げております。
 1つは、存続期間延長制度の見直しでございます。
 本文の10ページをお開きいただきたいと思います。
 急速に発展する新技術の適切な保護の存続期間の延長制度の在り方でございます。この存続期間の延長制度と申しますのは、3行目でございますけれども、「安全性確保等の観点から政府の法規制に基づく許認可を得るために相当の長期間を要し、その間、実際上は特許権の行使ができない場合がある。そのような場合における特許権者の不利益にかんがみ、1987年の特許法の改正により、特許権の存続期間の延長制度が導入され、その対象として」医薬品・農薬品が政令で指定されている制度でございます。2)のDDSのすぐ上のパラグラフの4行目でございますけれども、「2004年に創設された遺伝子組換え生物に関しての安全性の承認については、審査の性格上やむを得ないことではあるが、申請者による申請に必要なデータ等の取得期間も含めた承認等の処分までには相当程度長期を要するとの指摘があり、当該法律に基づく承認も存続期間の延長の対象とするか否かについて検討を行う必要がある」。これが第1点です。
 第2点、DDSでございます。DDSは、皆さんもご承知のとおり、「有効成分及び効能が従来の医薬と同一であっても、ナノカプセルという革新的な剤型を用いるなどして患部のみを狙う」という画期的な技術が開発されておりますけれども、これにつきましても、次のパラグラフの下から2行目でございますけれども、「このような発明についても存続期間の延長を認めて技術革新を促進すべきとの指摘があり、必要があれば法律改正を行うことも含めて検討することが必要である」という提言をしております。
 次の先端医療技術の保護に関する情報の収集・分析でございますけれども、15ページでございます。
 これまでの取組の経緯でございますけれども、この分野につきましては、医療行為に用いられる医薬や医療機器等の物の発明は特許保護の対象でございますけれども、「人間を手術、治療又は診断する方法の発明」については、医療現場への影響が甚大であるということなどを考慮しまして、「産業上利用することができる発明」には該当しないという運用をしてきております。しかし、再生医療技術や遺伝子治療に代表されますような医療技術の進展が著しくて、このような先端医療技術の更なる発展を促進するために、2度にわたり制度の見直しを行ってきたわけでございます。
 2)特許庁における運用状況でございますけれども、最初に制度改正を行いました培養皮膚シートなど人間由来のものを原材料とする医療材料等を製造するための方法の発明については、これまでのところ制度改正以来、14件の特許登録がございます。また、2つ目の制度改正、これは装置の作動方法の発明、投与間隔・投与量等の治療の態様で特定される医薬の発明、前者が80件、後者が1件の特許登録がございます。
 こういった状況の中で、欧州等で医療方法についての判例の動きなどもございますけれども、4)の今後の対応の一番下のパラグラフでございますが、「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会の結論に影響を与えるような重要な事実の発生や根本的な状況の変化は、現在のところ認められない。したがって、先端医療技術の方法の発明の保護の在り方の問題の重要性にかんがみ、今後とも最適な制度の在り方を追求する努力を継続的に行うべきである。特許審査基準の運用状況等を引き続き注視するとともに、先端医療分野における技術動向やその特許保護に関する国際的な議論の動向について、引き続き情報の収集・分析に努めることが必要である」という取りまとめをしていただいております。
 時間の制約もございますので、私から資料の説明については以上でございます。

○相澤会長 長岡主査から、何か補足はございますでしょうか。

○長岡委員 では、2点だけ。
 1つは、「パテントフロンティア」の考え方を出しておりますが、この分野は基礎研究が非常に重要で、国の重点的な研究分野になっておりますけれども、新産業の創出につながるということが非常に重要で、このためには単なるリサーチフロンティアということだけではなくて、基本特許が今後取れるという観点で、「パテントフロンティア」でなければならないという概念を打ち出しているところが一つの特徴だと思います。
 それから2番目は、先端医療技術につきましては、この調査会でも過去非常に入念な検討がされて、医師の行為に係る技術は、直接は特許しない。しかし、その範囲の中で、先端医療技術の特許保護ができるように審査基準等の改定をしておりまして、これがご承知のように2年前です。ただ、そういう状況で、今、まさに新しい保護が実施に移されつつある状態で、その保護の限界といいますか、どういう場合においてはどういうものが保護されないか等について、まだ十分な情報も得られていないような状況ですので、引き続き検討するというスタンスでまとめさせていただいております。
 以上、2点です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、情報通信分野に移りたいと思います。引き続き、松村次長から説明をお願いいたします。

○松村事務局次長 それでは、資料2−1と資料2−2をお出しいただきたいと思います。
 資料2−1、情報通信分野プロジェクトチーム報告概要。
 左上の検討の視点をご覧ください。この分野は、経済成長、生産性への寄与が非常に大きいということで、GDP成長率に対する寄与率が42.4%ということのようでございます。それで、技術革新も非常に早い、ソフトウェアを利用した新たなビジネスモデルがいろいろマスコミなどをにぎわせておりますけれども、そういう主役が結構交代しているところについてどう考えるかという視点。そして、我が国のこの分野における産業競争力全体を見ますと、組込み系を除きまして、特にソフトウェアの産業競争力は欧米に比して立ち後れが目立っているのではないかという視点で検討をしていただきました。特に、知的財産権の活用や標準化への取組が非常に産業競争力に大きくきく分野ではないかということで、知的財産が非常に大きな役割を演じるという認識でございます。
 分野の特性でございますが、1つの製品に多数の特許が用いられる、先ほどのライフサイエンスと好対照をなす分野ではないか。技術革新も激しい。また、IT分野の特色としまして、相互運用性の確保が非常に大きなキーワードをなしている分野ではないか。プロトコルやインターフェースに関して相互に使用できる環境整備が大事となってまいります。それで、ソフトウェアの知的財産上の特殊性もございます。ここでは、先行技術文献調査が極めて大変だという点が特性として挙げられると思います。
 現状と課題でございますけれども、報告書本文の4ページをご覧いただきたいと思います。
 権利者の分散と錯綜する権利関係、2行目でございますけれども、知的財産権の権利者の分散とそれに伴う権利関係の錯綜化が、技術革新や要素技術の多様化や製造方法の複雑化によって一層進んでいるという認識でございます。「その結果、企業間のクロスライセンスだけでは対応困難な事態が増加している。すなわち、各企業では競争力の源泉となる排他的権利である知的財産権を確保する一方で、一定範囲については互いに技術を利用する必要性が増加している。こうした要請に応えていく上で、「技術や知的財産権の内容を広く知らしめ、必要なものを皆で合理的な条件で使えるようにする仕組み」を構築することが求められている」のではないかという課題の第1点でございます。
 2.本来の知的財産制度の目的を逸脱するような権利濫用事例の発生。これは、いわゆる「パテント・トロール」問題をここで取り上げております。「パテント・トロール」とは、2行目からでございますけれども、「一般的には「製品・サービスに関する研究開発や製品等の製造販売を自社で行わず、他社から購入した特許権を権利行使して利益を上げることを主な目的とする企業・団体・個人」とされ、以下のような高額のライセンス料や和解金を得る行為が特に問題視されている」ということで、1)、2)、3)と典型的な事例を挙げておりますけれども、次のパラグラフ、「このような「パテント・トロール」から訴えられた場合、「パテント・トロール」は製品の製造販売やサービス事業等を自ら行っていないため、クロスライセンスや技術提携により解決を図ることが困難となる」。また、数百から数万もの特許権が一製品にあるわけですけれども、個々の特許権の貢献度や価値を正確に把握することが困難な場合が多いために、訴えられた企業側は敗訴となるリスクを考慮しますと、和解金が高額であっても事前に決着をつけるケースが多く、いろいろな問題を生じているのではないか。
 「一方、「パテント・トロール」は、外見上特許権を有する正当な権利者であり、正当な権利者による正当な権利行使と考えられる余地もある。したがって、情報通信分野における知的財産権の正当な権利行使と知的財産権の濫用の境界を見極めつつ、「パテント・トロール」問題に関して、どのように対応するのかという議論が求められている」という課題を提示しております。
 3つ目の課題定義は、ネットの普及とソフトウェア・イノベーションの進展。いろいろな新しいビジネスモデルが出てきていて、特にこの第3パラグラフの最後の行でございますが、「新しいビジネスモデルにおいては、著作権の重要性がますます高まっている」のではないか。このような新しいビジネスモデルに、現行の特許法・著作権法等の知的財産制度が必ずしも対応していない場合もあるのではないかという点。第2点は、違法コピー等のネット上の侵害行為が大変増加しておりまして、これにどう対応していくのかという点。
 4番目でございますけれども、OSSの問題でございます。OSSは、ご承知のとおり、ソースを自由に入手できる、プログラムを自由に改変できる、そのプログラムのコピーをつくって自由に配布してよいという代表的な3つの原則を有するライセンス形態でありますけれども、次の(2)GPLをご覧いただきたいと思いますが、GPLと申しますのは、ライセンス方式の一つでございまして、一番メジャーなOSSのOSであるLinuxのライセンス方式でございます。その3つ目のパラグラフ、「そもそもOSSは著作権保護に対するアンチテーゼとして登場した側面があるが、GPLにおいてはその思想がさらに強調されている」。GPLのver.3では、当初、著作権管理システムの使用禁止条項が含まれていたけれども、組込み製品のようなデジタル情報家電の製品において、コンテンツを扱うものについては、著作権管理システムの導入はビジネスの前提となっているため、業界等が著作権管理システムの使用禁止条項の導入について反対し、最終的に当該条項は削除されたわけですけれども、こうしたライセンス方式の文言と解釈をどう定めるかが、極めてビジネスに大きな影響を与えつつあるという点を検討課題として挙げております。
 最後に、インド、中国等の情報通信産業の急速な発展を挙げております。
 対応策でございますけれども、またポンチ絵の方に戻っていただきまして、共通基盤技術に対する知財制度の在り方として、「パテントコモンズ」のコンセプトの普及、パテントプールの一層の活用、国際標準の促進、OSSの積極的活用とGPLへの対応という4点を挙げております。
 ここでまた本文の方に戻っていただきまして、対応の方向、8ページでございます。
 共通基盤に対する知的財産制度の在り方として、前半で申し上げました「権利者の分散と権利関係の錯綜化」に対応していくために、一つの考え方としまして、「共通基盤・インフラ部分については相互利用またはオープン化を進めて相互運用性を確保しつつ」、「個別技術の部分では知的財産を活用して差別化、囲い込みにより利益を確保する」というビジネスモデルが有力な解決策ではないかということで議論されております。そうした解決策というか、一つのアイデアをブレークダウンして、その対応の方向を4つ示したのが、先ほど申し上げた「パテントコモンズ」以下の議論でございます。
 時間の関係で、次の「パテント・トロール」対策に移らせていただきたいと思います。
 2.知的財産権の正当な権利行使とその濫用でございます。先ほどもご紹介しましたように、「パテント・トロール」については、「権利行使の態様が明らかに知的財産権の権利の濫用である」との非難がある一方で、「どのような態様を想定して、どのような措置を講ずるのか、これを詰めるのは困難である」という両方の議論がございます。アメリカにおいて、(1)米国における対応の中で示しておりますeBay判決のような考え方で、差止請求に対して一定の制限を課すという判例が出ております。
 日本ではどうしたらよいか。これは、(2)今後の取組の方向性で、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の中で民法の「権利濫用」を使えるのではないかという考え方も示されておりますし、次のパラグラフの独占禁止法での対応も可能だということでございますけれども、この正当な権利者の権利行使と社会全体の公益性の視点、どういうバランスをとっていったらよいかということで、ちょっと進んでいただきまして、3.ソフトウェア・イノベーションの促進のすぐ上のところで、5つほど議論の視点を挙げさせていただいております。時間の関係上、説明は省略させていただきますけれども、こういう観点を参照しつつ、今後、様々な場でさらに多角的な議論が深まることを期待するという取りまとめをさせていただいております。
 次の3.ソフトウェア・イノベーションの促進でございますけれども、2)の検索エンジンのところをご覧いただきたいと思います。検索エンジンは、著作権法の関係上、第3パラグラフでございますけれども、複製権とか同一性保持権とか送信可能化権、これらの行為が明示的に合法とされていないものですから、すべてのデータの権利者の許諾を得ない限り、国内にサーバーを置いて検索サービスを提供することについて法的リスクが存在するということになっております。
 他方、アメリカにおきましては、次のパラグラフでございますけれども、著作権法上のフェアユースの原則にのっとった運用がなされているために、基本的に日本で使われている検索エンジンのサーバーも、米国に置かれているのが実情であります。
 (A)の今後の取組でございますけれども、文化庁の文化審議会著作権分科会におきましても、法改正の必要性が指摘されているわけでございますけれども、こうした著作権法の早急な改正が必要ではないかという点と、この問題を契機に米国のフェアユース的な概念の導入の可否につき、今後、検討を進めてもよいのではないかという指摘もさせていただいております。
 (2)ネット上における知的財産権の保護については、いろいろな問題があるわけでございますけれども、最後のパラグラフの最後のセンテンスでございますが、どういう事例があるかという事例を収集しまして、検討をさらに深めていく必要があるのではないかと述べております。
 時間の関係で、駆け足で進めさせていただきますけれども、次は「創造」のための基盤整備ということで、やはりこれはソフトウェアのクリエイティビティ、人材の育成が大変大事ではないかということで、スーパークリエーター、「日本にビル・ゲイツを」というコンセプトの下にやっている制度でございますけれども、さらにそれを活性化するなどの問題。そして、米国におけるコミュニティ・パテント・レビューという動きがございますけれども、これは特許の質の向上といいますか、第3パラグラフでございますけれども、「米国においては、ソフトウェア特許等の権利化に際してコミュニティの持つ知識・情報を活用するコミュニティ・パテント・レビューという制度」が行われている。「我が国においても、情報提供制度の拡充・強化を図りつつ」、「コミュニティを活用して厳選した質の高い先行技術情報を特許庁に提供する」ような取組を推進することが必要ではないか。そして、次に中小・ベンチャー企業における知的財産制度でございますけれども、中小企業における知的マインドを高めていただくような枠組みが、様々な面から必要ではないかということを述べております。
 最後は、諸外国における権利取得の促進で、世界特許の実現に向けた取組等々を提言させていただいております。
 時間の関係で省略させていただきましたけれども、以上です。

○相澤会長 それでは、加藤主査からよろしくお願いいたします。

○加藤委員 事務局から詳しい包括的なご説明をいただきましたので、若干、重複になりますけれども、まずこの分野では、標準化とか「パテント・トロール」という非常に新しい社会的現象が起こっているという認識があります。さらには、新しい技術とか、ソフトウェアサービスのような新しいサービスがどんどん起こってきて、それらが社会を新しく引っ張っているということがありまして、そういう中でイノベーションをどうやって促進していくかという点から対応策を検討させていただきました。
 具体的な対応策は、新しい問題ということで十分出せなかった問題もありますし、例えば権利濫用の点等、いろいろな方々のご意見、議論があると思います。そういうことを前提としましたが、一応、それぞれの分野で一定の方向が出せたのではないかと思っております。
 以上です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、環境分野に移りたいと思います。引き続き、松村次長から説明をお願いいたします。

○松村事務局次長 資料3−1と資料3−2をご覧ください。資料3−1のポンチ絵から説明させていただきます。
 検討の視点でございます。本分野は、世界的に環境問題が喫緊の課題として注目されている分野だという認識の下に、日本の優れた環境技術、これをいかに世界に普及させていくか、これが一つの大きなポイントではないかという視点で検討していただきました。
 この分野の特性としまして、政策の影響が非常に技術、市場動向に影響を与える分野ではないかということでございます。
 資料3−2の本文をめくっていただきまして、2ページの本分野の特性をご覧いただきたいと思います。
 1.国際的枠組みや環境政策の与える影響で、これまで様々な環境政策の枠組みが導入されてきていて、オゾン層保護とかCOPを中心とする地球環境問題への対応とか、また国内的にも化学物質規制法、3R関連法など、こうした国際的枠組みや政府規制により、規制の水準に合致した新技術や新製品の新たな市場が創出される場合も多いため、経済合理性の範囲内であれば、高い規制水準が技術開発力の強化にもつながることとなる。また、助成措置など政府による積極的な誘導策も及ぼす影響が大きいのではないかという指摘をさせていただいております。
 それで、この分野の特性の第2点でございますけれども、技術領域を大きく分けると2つあるのではないかということでございます。
 まず、(1)先端的環境技術、これは主としてグローバルな環境問題に対応する技術ということで、1)でございますけれども、地球温暖化問題の高まりに伴い、環境負荷の低減につながる技術に対するニーズが高まっている中、燃料電池等の先端的環境技術の開発をめぐる国際競争は激化しているということで、この分野は非常に国際競争が激しい。
 また、2)で投資リスクが非常に高いという特色があるのではないかと述べております。
 もう一つの技術領域として、(2)地域環境技術というコンセプトがあるのではないか。これは、主として地域の環境問題に対応するための技術として、例えば1)でございますけれども、水質浄化技術など、各国・地域の事情や政策に応じて環境保全を図るための技術については、途上国等において要求される技術レベルやコストが相対的に低い場合が多いため、我が国企業がこのようなニーズに対応して既存技術を改良することなどにより、当該国・地域の環境保全のために大きな役割を果たすことが期待されているのではないか。また、CDMに基づく環境技術協力に見られますように、地球温暖化問題、グローバルなイシューにおいても、総体的には非先端的な技術もこのジャンルに含まれるのではないかということでございます。
 2)でございますけれども、この分野は地域環境技術に対するニーズの高い国・地域では、環境規制が未整備のところも多いために、またその保護措置も十分になされていないという問題も指摘されているところでございます。
 そして、分野の特性の3つ目、検討の視点でも申し上げましたけれども、ともかく普及させていくことが大事ではないかということでございます。その際、知的財産権の対象となっている技術の普及方法として、権利をオープン化して幅広く他の事業者に製品化させるパターン、特定の事業者に権利の実施権を付与して製品化させるパターン、自らが独占的に当該技術を実施して製品化するという方法、いずれにせよ、事業者の主体的な判断に基づいて様々なビジネスモデルを追求することにより、環境技術の普及を図ることが重要ではないかということを述べております。
 次に、現状と課題でございますけれども、先端的環境技術分野と地域技術分野に分けて提言しております。
 先端的環境技術分野の現状と課題でございます。1)でございますけれども、萌芽的研究や科学にさかのぼった基礎研究、他の技術分野との融合を進めることが重要ですが、このような基礎研究の成果を産学官連携等により、効率的に事業化につなげることが重要であるけれども、産学の共同研究の実施件数を見ると、環境分野は他の分野に比べて少ないのではないかという指摘をさせていただいております。このため、共同研究をもっと頑張っていただきたいということで、後ほど対応策で指摘させていただいております。
 また、2)政策的措置でございますけれども、先ほど紹介させていただいたとおり、これまでも様々な政策措置や誘導措置を実施してきているわけでございますけれども、とりわけ3番目のパラグラフ、省エネ法に基づくトップランナー基準というものが顕著な技術開発のインセンティブとなっているのではないかという指摘をさせていただいております。さらに、経団連の自主行動計画でも、目標達成のために各社で盛んに技術開発を行っていただいているということでございます。
 (2)国際展開でございますけれども、国際標準化なり国際的枠組みへの参加という点につきまして、「我が国は、温暖化に係る2013年以降の枠組みについて、」というパラグラフでございますけれども、国際的議論には積極的に参加しているわけでございますが、次のパラグラフで、国際標準化につきましては、新規規格の提案を積極的に行っているものの、こういった取組はいまだに限定的なものにとどまっているのではないかという認識を述べさせていただいております。
 そして、国際展開の2)でございますけれども、知的財産権の取得。これは、「我が国の場合、自動車などの一部を除き、環境分野におけるグローバルな産業展開はこれまで十分ではなく、知的財産権についても、我が国に特許出願されていても外国には特許出願されていない事例が目立つ」。これは、日本でのみ特許を取得して外国でこれを取得しなければ、環境技術の海外への流出という問題だけではなくて、製造ラインの流出にもつながるということでございますが、出願されない理由として、最後のパラグラフでございますけれども、製品化まで長期間を要し、実用化の見直しが立たない、費用のかかる外国特許出願を見送ってしまう、審査の長期化により代理人費用が高額になることを恐れて躊躇してしまうなどを挙げさせていただいております。
 次の地域環境技術でございますけれども、まず国際展開から挙げさせていただいております。この分野におきましても、第2パラグラフでございますけれども、「我が国企業の国際展開もこれまで十分であったとは言い難い」。その理由として、2点挙げさせていただいておりますけれども、途上国では環境規制が整備されておらず、将来に対する不確実性が高いため、事業者が追加的な投資に躊躇する可能性があるためにヘジテートしているのではないか。また、外国・地域における知財保護が不十分であるために、事業展開が行いにくい。これが、国際展開が地域環境技術についても後れている理由ではないかということを指摘しております。
 他方、この分野は、中小企業の方のビジネスのチャンスとしてポテンシャリティが高いのではないかということを述べておりますけれども、中小企業におかれても、そもそも貴重な技術をライセンスビジネス化するという発想は従来あまりなく、またその出願コスト節約の観点から海外への出願を見送る傾向にあるのではないかという現状認識を述べております。
 対応策でございますけれども、これはポンチ絵の方に戻っていただいて、項目だけ説明させていただきますと、やはり基礎研究の充実と産学官連携の強化が、先端的環境技術の領域ではまず大事ではないか。そのために、一つの大きな問題として、環境分野のニーズに対応した提案をできる人材の大学等への配置。これによる産学官連携の強化が重要ではないか。さらに、先ほど申し上げました省エネ法のトップランナー基準の強化などによる政策的措置の積極的活用も重要ではないか。
 さらに、国際展開の強化のために、権利の早期取得を可能にする枠組みの諸外国への拡大や国際的枠組みづくりや国際標準策定への積極的関与が必要ではないかという点を述べさせていただいております。
 地域環境技術につきましては、同様に国際展開を積極化していただくべく、途上国などにおけるローカルなニーズに対応した技術改良の特許化、またノウハウによるビジネス展開など多様なビジネスモデルでニーズに対応していただきたいという提言を第1点としてさせていただいておりますが、その前提ともなります途上国における環境政策の整備を支援していく、これが大事ではないかという第2点。そして同様に、途上国などにおける保護体制の整備のために、キャパビルなどの支援措置、そして中小企業者のために外国特許出願支援制度を拡充する、これは予算要求もしておりますけれども、こういった点が大事だという指摘をさせていただいております。
 以上です。

○相澤会長 それでは、関田主査からご説明いただければと思います。

○関田委員 今、環境分野の方を事務局からまとめていただきました。事務局の話にありますように、いろいろ議論した中で、「環境」と一言で言っても、やはり2つに分かれるのではないかということでございます。
 1番の先端的環境技術というものは、燃料電池の例がございますけれども、ほかにも例えば燃費のよい自動車であるとか省エネ型の家電製品であるとか、日本がリードしているものであって、それ自身が非常に競争力を持っている、製品もしくは技術が競争力を持っているというもの、こういうものについては、さらに時代の要請によって進展させなければいけないという考え方で、対応策も右上に書いてあるようなことをまとめました。
 一方、地域環境技術というもう一つの方ですけれども、これは日本の場合に昭和40年代から営々とやってきました技術が既にございます。それからくくり方として、水質であるとかNOXだとかSOXであるとか粉塵であるとか、基本的に非常に影響が地域に限られているところでございますので、各国、各地域がそれに対してどういう規制なりルールを設けるか、それから相手の国のルールがあるのかないのか、それからルールがあっても平気で違反するようなケースもないわけでもない、それから偽物も出回るという観点でどうしたらよいのかということでございます。
 いずれも、対応策のところに書いてございますけれども、これらの分野、環境だけではございませんけれども、舞台は世界でありまして、世界にいかに知財権を取りやすくするか、特に大学であるとか中小企業であるとか、そういうところのポイントを強調したつもりでございます。
 以上です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 最後になりますが、ナノテクノロジー・材料分野についてお願いいたします。

○松村事務局次長 それでは、資料4−1と4−2をご覧いただきたいと思います。まず、資料4−1、ポンチ絵の方でございます。
 この分野におけるプロジェクトチームの検討の視点として挙げさせていただいておりますのは、この分野は非常に幅広い産業分野に活用される基盤的技術であって、これも各国とも、しのぎを削って国策として研究開発を推進している分野であるということ。それで、我が国につきましては、基礎研究分野は欧米に比して優位に立っているものの、用途開発では後れをとっているのではないかということでございます。そして、こうした課題に取り組んでいく上において、知的財産の問題、在り方は表裏一体の問題であるという認識の下に検討していただきました。
 それで、この分野の特性でございますけれども、また本文をご覧いただきたいと思います。資料4−2の2ページ、本分野の特性でございます。
 基礎研究段階、これは基礎研究が非常に大事だということを述べておりまして、第1パラグラフの最後のセンテンスで、基礎研究の取組は極めて重要だけれども、「研究の成果が得られた直後の段階においてはその現実的な産業利用可能性が見えることは稀である」。次のパラグラフの最後の方、「どの技術がいつ、どのような形で実施できるかを見据えることが難しい」。しかしながら、次のパラグラフでございますけれども、第2行目、「製品化への道筋が全く見えない状態で特許申請せざるを得ない」。その1行目ですけれども、将来の実用化に備えて基本特許をまず確保しておかなければいけないのではないかという認識があるからでございます。これは、海外への国際特許申請にも同様のことが言えまして、こういうことで何も見えない状態の中で特許申請せざるを得ない。ただ、非常に製品化までの間に長期を要するのがこの分野の大きな特色でございまして、そのパラグラフの真ん中あたりでございますが、「実用化段階において特許権の存続期間が満了している又は満了間近である可能性が高い。例えば、1991年に発見されたカーボンナノチューブについては近時にようやく大規模な応用が花開こうとしているが、カーボンナノチューブの基本特許については特許期間の満了が間近となっている」。
 本分野の特性の2番目、実用化開発段階の問題でございますけれども、「基礎研究の成果をいかに特定の用途や市場と結びつけ、新たな製品として事業化していくことができるかが勝負である。製品開発は企業が具体的市場ニーズを踏まえて行うが、基礎研究と製品開発の中間領域、すなわち実用化開発段階における取組が重要な役割を担っている」のではないかということで、企業と大学、それぞれの役割があるわけですけれども、第3パラグラフ、「上述のように、実用化の段階までに基本特許の存続期間が満了している可能性が高いことにかんがみれば、基本的な発明・発見に係る特許権を確保するだけでは不十分であり、共同研究によって生み出された基本的技術、応用・用途技術、さらには製造技術のそれぞれに関して、国内外における特許の取得やノウハウの管理等が重要となっている。また、特許権等の知的財産権の確保にとどまらず将来の実用化を見据えて、国際標準への布石を打つことも重要」ではないかということが、この分野の特性といいますか、一つのテーマであるということでございます。
 第3番目、基礎研究と実用化開発との仲介機能。当然のことながら、第2点の実用化開発段階の研究を充実させるためにも、「新たな用途の開発や商品化の担い手たる企業と基礎研究の担い手たる大学等研究機関とを結びつけ、実用化開発を連携して推進させる」TLO、大学知財本部、ベンチャー企業、この三者の役割が大事ではないか。そして、この仲介機能と産学の三者が有機的に連携することが、この分野の競争力を確保していく上で非常に大事な要素ではないかという認識を示させていただいております。
 現状と課題でございます。本文をそのまま続けさせていただきますと、1.大学等における知的財産に関する体制整備の進展。これまで様々な制度改正が実施されまして、大きな成果が出てきております。この1.の最後の方は、数字がいろいろ入っておりますけれども、例えば国立大学においては、法人化前の2003年度と比較しますと、共同研究の件数は1.5倍、受託件数は1.4倍、民間企業等からの寄付金も1.2倍ですが、特許の出願件数は5.2倍、実施件数は25.6倍ということになっています。また、いろいろな環境整備の結果、赤字のTLOも年々減少して、今は41機関中29機関が黒字ということになっております。
 ただ、いろいろ課題もあるということで、2.基礎研究段階における特許戦略の課題でございます。結構、厳し目の表現にはなっておりますけれども、2行目、しかしながら、出願することが目的と思われるような出願活動もあるのではないか。「特許の量は増えたものの、質が伴っていないのではないかとの指摘や特許管理、海外への申請費用等の面で厳しい状況にある大学もあるとの指摘がある」。この背景としましては、次のパラグラフでございますけれども、(I)製品化への道筋が全く見えない中で、基本特許となり得るものは権利化しておかざるを得ないというこの分野の特性、(II)研究成果を選別する人材・体制が大学又はTLOにおいて発展途上であること、(III)一部の研究資金制度の運用において研究テーマの採択に当たり特許出願をしていることが有利に作用すること、そして最後に、(IV)「知的財産イコール特許」という意識の下に特許出願件数の増加が自己目的化している面があることなどが指摘されているということでございます。したがいまして、特許戦略の在り方が問われているわけでございますけれども、質を問うことなくすべてを特許化することには限界があって、効率性の向上が課題となっているのではないかという点を、この2番目の課題として挙げさせていただいております。
 3.産業界と大学等研究機関との連携。共同研究を拡大していかなければいけないという点、また、そうした上で産学の立場の相違がある。(2)でございますけれども、企業から大学側を見た場合、例えば「ビジネスの常識からかけ離れた要求がある」とか、次のパラグラフでございますが、他方、大学から企業側に対しては、「研究内容に見合わない知的財産の確保に固執しすぎて契約に時間がかかる」とか、立場の相違というか、いろいろな見方が出ております。
 もう一つ、(3)、大学に対して企業側から見た一つの大きな問題点として、短期的成果に傾斜しているのではないかということで、「研究資金の確保や予算上の制約から外部資金獲得に注力するあまり、短期的成果を求めたり、公募されている研究テーマに合わせて研究せざるを得ない状況」にあって、「長期間を要する基礎研究への取組よりも出口指向のテーマに集中しがち」ではないかという点が指摘されております。
 他方、(4)企業への期待ということでございますけれども、大学側からは日本企業に対して、大学に対して明確にニーズを示してくれないのではないかとか、欧米企業は有望な技術の確保に向けた積極的な投資をして、事実、日本の大学に対しても、先端分野において引き合いが結構来ているという中で、もっと日本の企業も頑張ってほしいという声も聞かれます。
 4.産学の仲介機能ということでございますけれども、様々な試みが知財本部・TLOによってなされているのは、先ほど成果としてあらわれている点を申し上げましたけれども、期待される機能と役割は何か。(I)特許の売り込みやライセンス契約にとどまらず具体的なソリューションや技術のオリジナリティを提供する機能であるとか、(II)マッチング機能、(III)多様な連携関係をコーディネートする機能など、Win-Winの関係を構築することが大きな役割として期待されているわけですけれども、次のパラグラフで、いまだにTLOと知財本文の役割分担が不明確ではないか、連携が不十分ではないかという指摘がございます。海外の大学などでは、もうちょっとマニュアルがしっかりしているのではないかという点を、企業の方からはおっしゃる場面が多くなっております。
 最後に、現状と課題の5.でございますけれども、国際標準。国際標準化への関心が高まり、ISOでの議論がこの分野においても開始されたので、積極的にこれに関与していく必要があるのではないかという、以上5点を現状と課題として提言させていただいております。
 対応策でございます。8ページからでございます。
 まず、新市場創出を見据えた知的財産戦略の構築ということで、基本的な考え方として、(1)でございますけれども、基礎研究の成果をまず知財化して保護する、これは重要であって、基本的には今後とも積極的にこの考え方で取組を進めるべきではないか。海外においても、当該基礎研究の成果を確実に押さえるべきではないか。
 他方、(2)特許の質向上と多様な戦略。真のプロパテント実現に向けて、件数のみならずその質も問われる時代になっているのではないか。第2パラグラフの2行目、「知的財産権の取得のタイミングや知的財産権として確保する技術の適用可能範囲等の視点から」出願戦略を検討することも必要ではないか。例えば、「材料において数百万という新しい材料が発見又は開発される中、実用化の芽が出たタイミングを捉えて応用や用途に関する権利を丹念に取得するといった戦略が重要」ではないか。
 そして、(3)人材の育成と確保。最後のセンテンスでございますが、「今後、特許の質の見極めや特許取得・維持コスト管理を行い、知的財産に基づく利益の最大化を図る戦略を策定できる人材の育成と確保」が求められているのではないかという点。
 そして、最後の点ですけれども、(4)大学。これは、研究者が基礎研究の成果を積極的に知的財産化するという意識を持つために、インセンティブ向上が必要ではないかということで、2点ぐらい提言を示しております。
 次の対応策の産学の役割と協力関係の強化というところでございますけれども、基礎研究の充実は、先ほど申し上げたとおりでございますが、特に第2パラグラフ、「モチベーション向上のため、競争的資金の審査基準に、萌芽的研究、若手研究者への重点化と併せて分野の特色をいかした知的財産戦略に関する事項を明記することも検討すべき」ではないかということ。
 企業の役割としては、先ほどのような「有望な技術を見極めて積極的に日本の大学にアプローチすべき」という点を述べております。
 (3)、(4)は省略させていただきまして、3.大学知的財産本部・TLOの機能強化ということで、機能強化という点につきましては、ワンストップサービスによる手続の簡略化を図るなど産業界の利便性を考慮した運営体制を構築すべきではないか、また出願の質を重視した運営をすべきではないかという点を述べております。
 (2)大学、地域における位置付けの明確化ということで、本部・TLOにつきましては、第2パラグラフでございますけれども、「まず大学ごとの特色や地域全体の中での役割を明確化し、その上で中期的な事業計画の策定を行い、事業の目標、収支の見通し等を明らかにすべきである。また客観的な評価基準を設定し定期的な実績のレビューを行い、更なる改善への取組を行うべきである。そうした中で、目標達成のために必要な体制整備、統廃合を含めた組織の効率化や大学又は地域における支援の在り方も検討されるべき」である。「大学知的財産本部やTLOを大学の研究成果の社会還元のための重要な組織であるものとして位置付け」、「安定的な運営の下で良質な知的財産を創造、活用していく組織作り」をやっていくべきではないかということを提言させていただいております。
 最後に、国際標準化活動への取組ということで、ここでは用語の統一、計測・試験評価、安全性評価に関するISOへの取組をもっと積極化すべきであるということを提言させていただいております。
 また時間の関係上、省略を多くさせていただきましたけれども、以上でございます。

○相澤会長 それでは、渡部主査からご説明いただけますか。

○渡部委員 ナノテク・材料分野に関しては、今ご説明のあったとおり、基礎研究領域では進んでいるのではないか、競争優位ではないか。ただし、用途開発あるいは戦略的な知財の取得・活用等において課題があるという認識で、全般的に創造、保護、活用に関して議論すべきイシューはたくさんあったわけですけれども、時間の関係で産学連携に絞って議論した結果をご報告しております。
 具体的には、長期の研究期間が必要、そして不確実性の高いこの分野の研究成果をいかにして戦略的に知財にしていくか、その取組ができる体制、人材、そういうものの整備が必要であるということ、そして併せて国際標準を獲得して、優れた基礎研究の質を産業競争力に結びつけようということでございます。
 したがって、ちょっと中で誤解を招かないようにしていただきたいのは、量から質へということは、必ずしも量を出すということが悪いということを言っているわけではなくて、さらに高い水準で質を確保する。その質も、今出しているものが質が低いということではなくて、さらにこの分野の特性を踏まえて質の高いものを目指していくということを言っておりますので、その点はつけ加えさせていただきます。
 以上でございます。

○相澤会長 ありがとうございました。
 4分野についてご説明を伺ったわけでありますが、大変短い期間に集中的に議論していただき、それぞれの分野の特徴が浮き上がってきたのではないかなと思います。大変ご熱心な議論を進めていただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは、これから、自由討議に移りたいと思います。時間が限られており、なるべく多くの方からご発言いただきたいと思いますので、お一人ずつのご発言は、手短におまとめいただきたいと思います。
 まず、資料が佐藤委員から出されておりますので、佐藤委員からご発言をいただけますでしょうか。

○佐藤委員 今回の4テーマについては、弁理士はこの権利化業務に関して、常時、現場と一緒にやっている立場でございますので、現場の声として今回の4分野について、我々として提言できるものはないかという検討をさせていただきました。今日ご報告いただいたPTの検討内容を見ますと、我々として今まで検討した結果としては、分野別の特性なり課題の捉え方、また問題点の抽出については、非常にすばらしい分析をされたのではないかと感じております。特に、我々としては新しい重点分野におけるパイオニア的な発明、これをどうやって保護していくのかということに対して非常に強い関心を持っておりまして、その点については、今回のPTの報告においても、保護対象について常に見直しして、戦略的に保護しようではないかというご提言がたくさんなされているという意味で、大変、私としては検討が進んでいるという実感を受けております。
 今日は、ペーパーについて詳しくご説明いたしませんけれども、今回のPTの中で触れられていない点について1点だけつけ加えますと、それは最近、我々権利化する立場としては、非常に日本で特許になりにくいという環境が1つある。これは、欧米と比較して、やはり大きな問題ではないかと認識しております。その点において、まず保護対象については具体にPTの報告で議論されておりますので、もう1点は、いわゆる実施可能要件について、ほかの国よりも厳しいのではないか。特に、パイオニアとかフロンティアの発明の場合には、ナノテクにしろバイオにしろ、実験してそのデータで裏付けていくという作業が非常に難しい。それを待っていると、先願主義の立場上、どうしても出願が遅れてしまう。そうしますと、ある程度のところで見切って出さざるを得ない。そのときに、実施可能要件が十分厳しいと、実際には権利化ができないという不都合が生じるということが指摘されております。
 そういう意味で、確かに「開示なきところに保護はない」ということが基本的原則であろうと思うんですが、やはり業界、技術分野の特質、そこをよく踏まえた上で、ナノはナノ、バイオはバイオの技術レベルを踏まえた上での開示要件を十分検討されて、権利化しやすい環境をぜひご検討いただいたらということを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

○相澤会長 それでは、どなたからでも結構でございます。ご発言の方はお願いいたしたいと思います。

○河内委員 初めて参加させていただきました河内でございます。住友化学で技術研究開発を、担当しており材料・ナノのワーキンググループに入って、いわゆる材料・部材メーカーから見た意見を述べさせていただきました。皆さん、今日聞いていて、いろいろな指摘があったと思うのですが、1つだけ、社会環境とかいろいろな時代の変化の中で、新しい課題としての提案ということが、今日、いろいろあったと思うのですが、一方、従来からずっと引きずってきた課題は一体今までどう取組がなされてきて、現状どうなっているのか、少しそういう視点で解析していただくと、この会の継続性というものが、少し明確になるのではないかという感じがいたします。
 以上です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、そのほかの方はいかがでしょうか。

○中山委員 この文章は、このまま外部に出ると思いますので、用語の問題でもよろしいでしょうか。

○相澤会長 どうぞ。

○中山委員 ライフサイエンスの10ページです。下から3行目で「実際上は特許権の行使ができない」と書いてありますけれども、これは法的に言えば行使できます。「行使」とは、普通は差止と損害賠償を考えていると思いますが、認可の前でも行使できます。ここは「実際上」ではなくて、「法律上実施できない」の方が正しいと思います。
 それから、11ページの注の最後の12のところですけれども、「剤型」という言葉が出てきます。剤型というと、普通は色とか形とか、そういうものを連想しがちですけれども、ここで言っているナノカプセルあるいはマイクロカプセルの場合は、むしろ「製剤」という言葉を使った方がよいと思いますけれども、私は医薬の専門ではないものですから、そこは医薬の専門家の方に聞いて、もし直すべきものなら直していただければと思います。
 以上です。

○相澤会長 長岡主査、よろしいでしょうか。

○長岡委員 ええ、直すように考えます。

○相澤会長 ありがとうございました。
 それでは、そのほかいかがでございましょうか。

○三尾委員 いろいろワーキンググループの先生方、ありがとうございました。今日は、情報通信に関しまして、少し意見を述べさせていただきたいと思います。
 情報通信の分野でいろいろ検討していただきまして、私も従前、この分野では標準化が非常に重要であるというお話をしたかと思うんですけれども、その話をしておりまして、実は標準を前提としまして、パテントプールをもう既にきちんとつくっているDVDの分野があるんですけれども、このDVDの分野は、比較的、日本のメーカーが世界でも強い技術を持っている分野ですね。かなり普及しているのが、DVD−RやDVD−RWというものですけれども、実はこれをつくっている、多大なシェアを持っているのが台湾です。台湾のメーカーは、ほぼ大きなシェアを世界的にも持っていまして、このメーカーが日本に輸出しているという状況がございます。
 そうした場合ですが、日本でつくっているパテントプールと、この台湾のメーカーがライセンス契約を全くしない。ライセンス契約をしないまま、当然、ライセンス料も払わないまま、例えばDVDをつくって日本に輸入してくるということがあります。こうした場合は、パテントプールをきちんとつくっているにもかかわらず、それを利用できないという実情がございまして、非常に問題であると日本のメーカーの方々はおっしゃっているわけです。
 これをどう対処していったらよいかということですけれども、メーカーが台湾の製造業者を訴えて、特許権侵害の訴訟を台湾や―これは台湾だけではなく、もちろん中国のメーカーもあり得ることですけれども、中国や台湾で訴えるということがあるかと思うんですが、これは皆さんご存じのように、訴訟を継続していくこと自体が非常に難しいという実情があります。
 また一方、日本で提起するということもあるんですけれども、これはご存じかと思いますが、3年ほど前に、シャープが台湾のメーカーを訴えまして、これはDVDではなく液晶テレビだったんですけれども、水際の方から差し止めをして、さらに仮処分を申し立てたという事案があったと思うんです。このときに、大手スーパーのイオンというところがありますけれども、そこからイオンのブランド自身を傷つけたという文句が出まして、そこはトラブルになって、シャープとイオンが取引中止になってしまったということもありまして、大多数のシェアを占めている製品をスーパー等で一挙に輸入しているという実態があるものですから、これを大々的に日本で訴えようとすると、大手スーパー等の量販店を相手にする必要も出てきて、非常にシャープ等のメーカーとしては、二の足を踏んでしまうという実態があると聞いています。
 ですので、何をするべきかということですけれども、まずこういう自体をとめるべく、水際できちんと処理するということが非常に重要ではないかと思いますし、さらには台湾や中国と国と国同士の話し合いをして、少なくともパテントプールをきちんと組んでいる分野に関しましては、パテントプールに入ってもらって正式にやっていただくということを、国レベルでの話し合いで申し入れてもらえればと思います。
 以上です。

○相澤会長 ありがとうございました。
 加藤委員、何かコメントはございますか。

○加藤委員 ご指摘いただいたとおりだと思います。標準化とかパテントプールが非常に重要だということは、我々プロジェクトチームでも全員一致した意見だったと思いますが、ご指摘いただいたようなケースでパテントプールの仕組みが完全に上手く働くかは、今、いろいろな課題があると思います。
 最初の事例でいいますと、いわゆる標準化とかプールに入らないアウトサイダーの方に対してどういうことができるか。通常は、権利行使して個別に対応せざるを得ないのが現実であって、無理やり標準化の中に入れるとかパテントプールの中に入れるのは、非常に国際的な制度上も難しい問題があると思います。
 ただ、報告書の中に書かせていただいた例として、プールに関与しながら途中から脱落するような、いわゆるホールドアップ問題については違法性が高いということで指摘させていただいておりますし、またプールだけではなくてクロスライセンスとか、いろいろな形で別の解決の方法があるのではないかということも指摘させていただいております。

○前田委員 ライフサイエンス分野のPTについて追加のお話しをさせていただきたいと思います。ライフサイエンス分野でも、国際標準・標準化はとても大切だと思っております。以前、堀場製作所の最高顧問である堀場雅夫さんが、バイオセンサーであそこまで大きな会社にされたのは、スタンダード(デファクトスタンダードなども)にすることが何よりも大変だったが、それがやはり成功の決め手だったということをお話ししていました。バイオセンサーのような評価機器などは本当に標準化が何よりも決め手になりますので、ここの分野においても、特に評価機器は、国際標準を取ることが大事なのではないかと思っています。
 あと、環境の分野についてお話しさせていただきたいと思います。私は東京農工大学の方も関わらせていただいておりまして、農工大は、環境分野などのニッチマーケットの特許が強いです。環境は、規制が入らないとなかなか儲けになる製品になりませんので、こういう分野こそ大学の先生がやってくださるのがいいのかなと思っています。環境の分野は、割と中小企業は多いのですけれども、儲かるまで、規制がかかるまで、なかなか売れるかどうかわからない商品に投資するのはすごく難しいと思いますので、そういう分野こそ大学の先生がやってくださっていて、規制がかかるとともに、この分野の企業と連携するのがよい流れなのかなと思っています。
 また、農工大の強みは、農と工の融合がありまして、農学部は環境のところの情報を持っています。農工融合は、環境を知って、そこに例えばITの先生を上手に融合させるのなどが強みになっておりまして、そのような組み方は環境分野において、たいへん有効であると思います。医工連携も大事で、先ほどのバイオセンサーなども医工連携の典型なのですけれども、農工連携も、環境のところではすごく使えるのではないかなと思っています。
 また、最後のナノテク分野の大学知的財産本部やTLOのところに書かれております、「安定的な運営の下」部分ですが、人材養成とか、人がいないといけないので育てなければいけないという話がかなりあります。育てた後、その方たちが安定的に雇用され、やはり経営が安定的に続かないと、基礎的な特許を持っている大学が、あるときは手薄になり、あるときは過剰になりということになるのはあまりよくないと思いますので、ぜひこれは、私は大学の側として、切なる願いという感じでおります。

○岡内委員 今、堀場さんのお話もありましたように、標準化ということで、ここにもたくさんの資料の中で、標準化の一つのスタンダードとしてISO、これは非常によく出てくるのですが、今現在、JISは国のレベルとしてどういうポジションを得ているのか。
 実は、私は水質の分析器をつくっているわけですけれども、それに当たりましてはやはり測定方法は日本の標準化に合わせなければならない。これを海外に、どこから引用したかということで「with JIS」という言葉を書きますと、100%、「what is JIS?」という問い合わせが来ます。それが水質の方では1998年に改定されたまま、今、やっているようでございますけれども、もう10年も改定がない。こういう標準化というか、日本がリーダーシップをとっていかなければならないと言いながらも、その国のスタンダードがしっかりしていないのは、非常に私どもとしてはやりにくいと思っております。
 それから、もう一つついでに。私どもでは、小さな会社でございますので、どうしても技術開発というと大学、それからTLOを利用したいと思っております。このTLOに関しましては非常に数多く、このレポートにも出ておりますけれども、一緒にやっていかなければいけないということは言いながら、現在41機関、黒字になっているのは29機関もあるということですけれども、下の方を見れば、助成金を取ればたった7つだけだということです。助成金は時限だったと思うので、もう少しこのTLO自体の援助をお願いしたい。経費を削減するあまりに発明者の大学の先生が自分自身で特許を書かなければならないということが現実に起こっているわけで、そういったものはやはりプロに書いていただかないと、やはり論文発表になり、公知の事実になってしまう。ぜひ、これはどこかの箇所に、TLOの補助金のもうちょっとの延長ということはお願いしたいと思っております。

○相澤会長 JISのことについてご発言いただく方はおられますでしょうか。

○小川事務局長 JISのごく最近の状況は、もっと調べましてご報告させていただかなければいけませんが、数年前に法律改正いたしまして、いわゆる指定商品―昔、鉛筆などは「JIS」とついておりましたが、もうこういうものはなくなっていまして、国が特定の製品分野を指定しまして、それについては特定の規格でもって、それに合致しているものにそのマークを張るといった制度がなくなってきておりまして、それぞれ関係する団体が自ら規格をつくって、その規格を審査する機関はいろいろなところがありますが、それを使って、「この分野でこの機関がこういう規格を認定して、こういうマークを張ります」という自分たちでつくっていく世界、いわゆる選択肢を広げていくような形に、今、制度は変わっております。
 したがいまして、今、岡内委員がおっしゃいました分野について、業界団体を含めてどういう作業が関係者の間で行われているか、そこから先、どういう手順でその規格を実際の製品分野で当てはめていこうとされているか、そこは関係者の間でどういう取組が行われているかをまず調べてみなければならないと思います。

○相澤会長 あと、大学知財事業の展開について、ご発言を。

○松村事務局次長 時限的な補助金が今年度いっぱいということで、知財本部の在り方がいろいろなところで議論されておるわけでございますけれども、私ども、このナノのプロジェクトチームにおいては、直接的に来年度から補助金をどうするかということには触れずに、本来どうあるべきかという観点から検討を行っていただきました。それが、さっきご紹介した大学や地域における位置付けの明確化ということで、心は、中期的に、例えばある地域全体で大学の知財本部やTLOがどういう機能を果たすべきか、また必要であるかないかというところまでさかのぼって議論していただいて、必要であれば中期の事業計画を出していただいて、どういう事業目的、事業目標をやっていくのか、また評価基準は何か、そして当然、収支のバランスも、事業計画ですから出てくるわけですから、特許収入だけで自立できるところは少ないわけで、地域が必要と認める範囲で、それは地域が支援すべきではないか。これは、大学でも同じだと思います。その中で、例えば本部やTLOが数多くあったりするところは、組織の効率化を進めなければいけないだろうというコンセプトを提示して、そういった視点も含めて来年度以降の知財本部への支援の在り方を考えていただけないかと文部科学省なり財務省に提言するという位置付けを考えております。

○岡内委員 結局、財政が厳しくなると、結果として契約金なりロイヤリティなり、全部が費用に関わってまいりまして、私どもが実際に利用するときに非常にやりにくくなるということでございます。ぜひ健全なTLOの機構になるように、ひとつお願いしたいと思っております。

○相澤会長 それでは、別の観点からのご発言はございませんでしょうか。

○中山委員 ちょっと厳しいことを申し上げるようですけれども、TLO・大学の知財本部の関係です。大学というところは、私も大学におりますのでよくわかっているのですけれども、経済的観点からすると合理性のないところです。それが学問の自立とか自由等に関係してくるので、あまり経済合理性でばさばさ切ってもらっても困ります。
 ところが、TLOは、やはり経済合理性で動いていかないと上手くいかない分野だと思うんです。それを大学にどうやって根づかせるかという問題ですけれども、漫然と補助金を出すと、私は、それはかえってマイナスの面も大きいのではないかと思います。今、次長から話がございました、やはり統廃合であるとか、もし本当に必要ならば地域の援助を得て、自立していくという方向に向けていく必要があると思います。補助金自体が悪いとはいいませんけれども、往々にして補助金は自立を妨げる要素もあります。
 これは、大昔の話ですけれども、今の御手洗さんではないですが、キャノンの昔の社長とある規制産業の社長との対談を読んだことがあるんですけれども、キャノンの社長に対して「どうしておたくは業績がいいんですか」と。「それは簡単です。うちは政府から金をもらっていませんから」、そういう答えだったんですね。これがすべてとは言いません。特に、TLOなどはスタートアップにお金がかかりますから、これがすべてとは言いませんけれども、やはりもう数年たっているわけですから、そろそろやはり、自立できるような方向性というものも、私は必要なのではないかという感じがしております。

○前田委員 知財本部整備事業も5年目になっていますので、中山委員のおっしゃられるような意見が多いのも事実だと思います。私は、もともと電気化学の専門で、ライフサイエンスの方は素人で東京医科歯科大へ参りました。平成15年に東京医科歯科大は、医学系の専門大学ではただ1校だけ、知的財産本部整備事業のお金をいただきました。医科歯科の教員のポスト、お医者様の集団の中で、私はとても異色な人種なのですね。当初は「何しに来たの?」という顔をされたのも事実です。私は工学的な観点で物をいつも見てしまいます。製薬会社との連携は、私たちが入らなくても自然にできますが、医工連携、例えば印刷会社とか、日本の強い精密機器とお医者様をつなぐということは、私たちみたいな大学の自前ではあてがわないであろう人材が入ってきているから、いろいろなものが進んだのかなと思っております。
 ただ、中山委員がおっしゃるように、TLOは稼がなければいけない、ライセンスを幾ら取ったのかという状況のときは、学校が本当に中にTLOを抱えてやるべきなのかどうかは、やはりいろいろご意見があろうかと思います。私は、やはり本当に大学の中に必要なのは、特許を取ることでライセンス料が増えるというよりも、特許を取って広報することで、共同研究とか受託研究、また寄附講座等が増えることだと思います。基礎特許、基本特許とか基礎研究を支援しましょうということは、そういうところの特許をつぶさないようにしなければいけないと思いますので、すぐに儲かる儲からないではないところを、共同研究なり寄附講座なりでコーディネートする人が学校の中に絶対に必要だと思います。医学系にこそ、立ち上げのときの支援としては、私はとても大事な資金だったのではないのかなと考えています。

○河内委員 関連して、第1回のときに私は出なかったので、書類で重点課題について意見を出しているのですが、その中で、知財本部とTLOとの一体運営ということを述べております。いわゆる知財本部とTLOが併存する形ではなく、一本化、一体運営を行う組織にして、産学連携のコーディネートを行う機能、これをベースにして、その上で産学連携推進本部という位置付けを明確にして、その中で公的資金獲得とか共同研究、受託共同研究の獲得とか、知財マネジメントとかベンチャー支援とか、こういうものを総括的に、企業から見た一つの入り口という形で、要は研究開発の成果が知財であって、それが産業界へと、これは全部つながっている話で、縦で割っていく話ではなくて、知財本部とTLOがこんな形でできてきたのは、私は省庁の縦割り行政の弊害だと思います。
 だから、やはり一本化して、今、基礎研究と産業の橋渡し的なところが非常に重要なので、それをしっかりと受けとめるような組織論がまず必要だろうと。それを経営的にどのように支えるかは重要な検討課題と思います。いろいろな形で産学官が協力して支援することが重要ではないかなと思います。

○相澤会長 この議論は、なかなか難しい面があるわけでありますが、現在のところ、来年度概算に、大学知財事業の第2期に向けての構想が要求されております。その基本は、この「知的財産戦略2007」に盛り込まれていることがベースでありまして、単純な第1期の延長とはならないということであって、先ほど来の議論が出ております諸々の問題点を乗り越えて、せっかくここまで育ってきた大学知財事業というものをさらに展開していくにはどういうところを強化しなければいけないか、どういう視点をさらに進めなければいけないかということであります。
 そこで、基本的にはここで中断ということにはならないと思いますけれども、先ほど来のいろいろなご意見があるように、厳しい目もきちっと捉えて、さらにそれを乗り越える形で構想されていかなければならないと思います。そのときに、キーワードは国際化、それから地域振興ということではないでしょうか。
 先ほど河内委員がおっしゃった大学知財本部とTLOという組織は、これをそのまま組織的に延長するということは、もう乗り越えなければいけないときであって、新たな組織に進化させなければいけないだろうと思います。
 それでは、そのほかのことについて、いかがでございましょうか。

○中村委員 私は、今回の各分野別のPTの方には参画させていただいておりませんけれども、本日、それぞれの調査結果、検討結果をお聞かせいただきまして、非常に短期間でいろいろな課題を深掘りいただいて、特に今回、私が「なるほどな」と思いましたのは、いろいろな課題の中で、2つの局面をどうバランスをとりながら知財戦略を書いていくかというところで、例えば情報通信分野であれば、標準化と個別の技術の差別化でありますとか、それから「パテント・トロール」につきましても、正当な権利者としての権利をどれだけ守るかという側面と、濫用をどれだけ抑止するか、バランスという観点でご検討いただいているということに、非常にありがたく感じております。
 あえてもう1点、一つの視点といたしまして、特にセット商品を扱っているような企業という意味で、直面している課題という観点で挙げさせていただきたいと思います。
 特に、情報通信分野の場合は、本日の特性にもございましたように、非常に多岐にわたる技術、数多くの特許から成立しておりますものですから、当然、1社が独占するようなこともできませんし、1つの技術分野からも成り立たない、本当に複合的なものの集合体として1つの商品が完成して、お客様にお届けできるという状況でございます。
 したがいまして、その中で、例えばセット製品の技術に関わるものだけではなく、その前提であるデバイスでありますとか、今日、話題にも出ましたようなソフトウェア、こういったものも全部使っているということがございます。もちろん、それぞれに役割があるわけですけれども、お客様、もしくは社会的事業の責任という観点から参りますと、やはり1つの商品を仕上げて、それなりのブランドをつけて市場に提供するという、最終的にはセット製品としての企業の責任は、昨今の状況からいきましても、ますます重たいものになっておりまして、例えば「これはデバイスの部分なのでデバイス側の責任である」とか、「ソフトウェアは単にダウンロードしただけだ」というわけにはいかない、何かの問題が起きれば、やはりそのセットメーカーとしての責任を問われるわけでございます。
 今回も、GPLの課題について少し触れていただきましたけれども、例えば著作権保護に対するアンチテーゼということを基本にしたところでございますので、場合によっては、ちょっと言葉は不適切かもしれませんけれども、過度なオープン化によって、メーカー側が意図しないような改造であったり、お客様側でもこういった商品に手を加えるということで、メーカーが意図できない製品的な保証であったり品質的な保証というものを損なってしまうというところに対して、そこも「お客様が勝手に改造したんだから」というだけでは、やはりもう今やメーカーとしての責任が全うできないという状況を見ますと、そういった意味でのバランスというものも、視点として入れられるべきなのかなと思います。
 あくまで知的財産というものを通じて、事業と技術がいかに融合して、産業力、競争力が維持・向上できるかが一番大きな命題ではないかと認識しておりますので、もちろん知的財産自体の戦略も大事ですけれども、そういったものにまつわる諸々の部分も少し視野に入れていただければ、より現実的な課題の解決という部分もあろうかと思いますので、あえて挙げさせていただきました。

○相澤会長 ありがとうございました。
 ほかは、いかがでございましょうか。

○辻村委員 私も、ライフサイエンスの分野でPTに参加させていただいたんですけれども、今日、ずっとお聞きしていまして、環境もナノも含めまして、やはり産学官の連携というところが、かなり重要な視点になってきているのだなと。では、どうすればよいかという論議は、具体的には難しいのですけれども、1つは、やはりここに書いていらっしゃいますように場の創出といいますか、企業としては「あるニーズを明確にして、戦略を明確にしてください」と大学側からは言われますけれども、それは企業の一番の根幹のところであり、簡単にどこでもオープンにできるわけではないので、秘密保持できちっと守られる中でオープンに論議できる場というものが、実は必要なのかなということはずっと思っているところです。これをもうちょっと促進されると、1つ、大きなきっかけになるのかなと。そういう意味でのTLOとか知財本部の役割も、そこにもあるのだろうなということがあります。
 それから、いつも出てくるのが目ききの人材ということで、これもライフサイエンスのところ、それからナノのところもそうですが、環境も実はそうでありまして、この技術がどういう応用技術に発展するのだろうかということが見抜ける人間、人材、これは実は企業にも―あまりいないと言うと怒られるんですけれども、なかなか難しくて、いわゆるテクニカル・アントレプレナー的な存在の人間といいますか、これは別に技術がわかっているだけではなくて、要するに将来のいろいろな分野が俯瞰できて、どういうことに活用できるのかということができる目きき人材というもの、これが非常に求められているところでありまして、これをどうやって育成するかは大きな課題であります。彼らをどういうところにきちっと配置して、産学連携をやっていけるか、これは大きな共通の課題の1つかなと私は感じた次第であります。
 それから、最後にもう一つ、環境のところですけれども、今後、やはり環境対策は国際的な問題になってくるということですけれども、環境に優しくない企業はもう生き残れない、多分、今後二、三十年先、将来そうなってくるだろうと考えています。CSRとか、コーポレートブランド価値の向上という意味でも、環境への配慮とか環境技術の開発は非常に重要性を増してくるだろうと思っています。提案にございますように、規制の強化というところで、厳しい規制をつくっていくということは非常に大事で、それに向かって努力していくということも大事なんですけれども、環境に配慮した企業がもっと高い評価を受けられるような仕組み、それを世間、社会が認めるような仕組みがあると、いわゆるCSRの観点から、企業は投資をかけるはずではないかと。いわゆるコーポレートのブランド価値向上のためには、企業は投資するはずでありまして、いわゆる積極的な前向きな投資といいますか、ビジネスに直につながらないんだけれども、企業価値を上げるようなものへの投資、大学との共同研究等で、いわゆる基盤的なファンダメンタルな研究のところへ投資が行くと、もっと画期的な技術が出てくるような気がいたします。
 CSRは、企業の社会的責任と定義されていますけれども、今、CSRは企業の社会的信頼性―corporate social reliabilityといいますか、要するに、これからは責任ではなくて、信頼性確保のための一つの大きな軸として、環境というものは極めて大事なポイントだろうということで、その辺のところを上手くわかり合えると、企業と大学がもっと連携できる。ビジネスのためのリターンだけを求めた研究開発ではなくて、企業価値を高めるような技術への投資の概念で行けるのではないかなと考えておりまして、そういうところが上手く回ればよいかなと思っています。ちょっと意見まで、申し上げます。

○相澤会長 ただいまの産学の共通のプラットホーム、そういうものが必要だということですが、これは第1期の大学知財事業の中心的な課題でもあったわけですが、やはり辻村委員からご覧になって、まだまだそこが不十分であるというご判断でしょうか。

○辻村委員 私自身も全部を網羅しているわけではないんですけれども、確かに地域、大学ごとに、いろいろなフォーラム等も含めて場はできていると思いますが、企業から言わせていただくと、大学側の先生はもっと企業のニーズというか、企業の戦略―ニーズというよりは戦略ですね、それをもう少し突っ込んでとってこないと、なかなかわからないのではないかなと。企業もなかなかそこまで言えませんし、そういう意味でもっとオープンな関係ができるような場というものが、あまり大きな場ではなくてもよいと思うんですけれども、個別の場であったらよいかなと思っています。決して、今、全く進んでいないと言っているわけではございませんので。

○相澤会長 辻村委員から、環境分野における知財戦略と同時に、経営戦略の重要なご指摘がございましたけれども、このことに関して何かコメントはございませんでしょうか。

○河内委員 私も企業にいる者として、今言われたCSRは、これからまさに時代の流れといいますか、流れだけではなく、積極的に自主的に取り組むべき重要な経営課題と考えています。環境対応は企業の競争力をつける大きな武器だと思います。これは皆さん、容易に理解できると思うのですが、省エネ、省資源、あるいは廃棄物をなくすとか、そういうものは全部、競争力ベクトルを同じくしているのです。したがって、要はその技術が、投資に対してリターンが生めるだけの技術レベルがあればどんどん進むはずなんですよね。まさに非常に画期的なブレークスルーの技術を、どんどん産業界は採用していくという技術分野だと感じています。

○関田委員 環境というものに対する評価ということがございましたけれども、日本の産業界の場合は自主行動計画、CO2削減、これも規制ではなくて自主行動計画であると、これは一つの日本産業界の姿勢だと思います。
 ただ、技術と企業としてのリターンは、ちょっと私ども鉄鋼業の方は、もうほぼ限界に来ていまして、チャレンジすれば企業が経済的に潤うかというと、そうではないレベルにもう突入しています。ただ、これは今、足元の話でありまして、2050年に向けて半減という、ここにまた新たな技術開発をしていくわけでありまして、それがどういう局面になってくるか、経済的にどうなのかということはあります。
 ただ、辻村さんがおっしゃいましたように、「そういう努力をしているよね」ということが、我々は素材産業ですので、お客様、消費者に直接売ることはないのでちょっと違うのかもしれないですけれども、必ずしもあまり評価を受けているとは思えないので、「一生懸命やっているんだけどな」というものが正直なところでございます。

○相澤会長 別の局面として、環境はグローバルな問題でありますので、国としても、科学技術外交という線を強く押し出しておりまして、その中心的な課題としております。特に来年、日本でG8サミットがありますので、特に環境に関する科学技術外交を展開するということで、今、どんどん進めております。そのときに、環境に関する科学技術が日本においては非常に先端的に優れているので、そこを強みとして、外交的にもその側面を活用していくという姿勢であります。
 そういうことから考えても、環境分野のところは単純な市場原理でいくということではなく、先ほど来の企業のCSRにも関わるような側面、こういうことを総合的に進めていく必要があるのではないかとの印象を受けました。

○関田委員 もう一つ。今の会長のお話に関連ですが、今日、どこかの新聞に出ていたと思うんですけれども、APP―Asia Pacific Partnershipで、これは京都議定書に入っていない中国、インド、韓国、それから批准していないアメリカ、オーストラリア、今度、カナダが加わったわけですけれども、この中で鉄鋼とセメントは日本が議長でありまして、具体的に、とにかくCO2は世界中の話なのですね。中国で出ようが、インドで出ようが、日本で出ようが、地球を回ってしまいますので、世界で減らすのがマストだということで、そういうものも一つの一環としてやっております。

○妹尾委員 恐らく最後の発言になるかと思います。私は4分野に加わらなかったので、全体としてのコメントをさせていただきたいと思います。
 この短い期間に随分きちっと議論が整理されたなと思って、私には大変勉強になりました。特に、前回申し上げたとおり、今回の重点4分野は非常に対比的になっている。1つは、「一製品少数」であるライフサイエンス系と「一製品多数」である情報系。もう一つは「seeds driven」である材料系と「issue driven」である環境だと。この4分野について、その知財の問題・課題が整理されたということは、大変画期的だろうと思います。
 それに伴って、3点ほど申し上げます。第1は、恐らく我々研究者、特に社会系の研究者がやりたがる概念的な整理がそろそろ必要になるだろうということです。すなわち、4分野について、相似と相違は何か。すなわち、それぞれ分野横断的な共通点と、分野ごとの特性は何か、これを整理することができるようになるでしょう。また、我々は継続と変化ということを考えますから、固有かトレンドか。すなわち、この分野固有でこの知財問題が出てきているのか、今、この分野においてトレンドとして知財がそちらへ動いているのかということですね。すなわち、共通と特性、それから固有とトレンドということでこれを整理すると、全体像が見えておもしろいのではないかということが1点目です。これを申し上げるには、実は別の理由もあります。例えば、今、すごくご議論がありました産学連携は、必ずしも4分野で同じように書かれているわけではないですね。濃淡が随分あります。それから、人材の問題についても濃淡が随分ついています。標準についてもそうです。制度設計についてもそうです。それらの濃淡は、その分野固有なのか、それとも主査の関心事がそちらに強いのか、よくわからないのですが、多分、そこら辺の整理が要るだろうと思います。これが第1点目です。
 第2点目は、分野ごとにいろいろなコンセプトが出てきていますよね。パテントフロンティアだとかパテントコモンズだとか、あるいは、もう知れ渡っていますけれども、オープンイノベーションだとか。これらがやはり分野ごとに固有なものなのか、あるいは、ある概念は一つの分野で生まれたけれども、ほかへ波及するものではないのだろうか、ここをやはり見ていかなければいけないのではないかと思います。すなわち、他分野との相互関連性を検討する段階に来ているのだろうなと思います。これが2つ目です。
 それから3つ目は、これは重点4分野ですが、4分野以外は一体どうなのだろうということです。この4分野で得られた知見は、この分野以外にどこまで使えるかということが、恐らく入ってくるだろうと思います。
 ということなので、ここで得られたものを、結果・アウトプットではなくて、恐らく資源・リソースと私は見たいと思っています。すなわち、知財戦略を共通に考えていくためのリソースが出てきたのだということで、大変おもしろく拝見いたしました。
 これが、私がコメントさせていただきたい点ですが、この会で私の役目としてあるのは人材育成のところだろうと認識しておりますので、人材育成に関しても3点ほど申し上げたいと思います。
 第1は、イノベーションということを考えたときに、先ほど事務局次長から話があったときに、「いよいよビル・ゲイツが」というお言葉がちょっと出ました。もちろん反対しませんが、イノベーションを考えるときに、例えばそのメタファーを使うのだったら、我々はやはりアラン・ケイをまず知ってほしいという感じがあって、アラン・ケイが出て、次にスティーブ・ジョブズが出て、そしてビル・ゲイツが出て動かした後、それらを今度はLinuxのリーナス・トーバルズが変え始めたという、そういうイノベーションの形成と変換の系譜があるわけです。そうすると我々はイノベーションについて、どういう人材メタファーで語った方がよいのだろうか、となります。幸い我々が知っている名前がたくさんあるから、そこでのイノベーションの役割、技術からビジネスへのつながりを考えていくようにしたいと。これが第1点です。
 第2点は何かというと、先ほどから皆さんがおっしゃっている「技術の目きき」という言葉ですが、これは去年、一昨年あたりも申し上げたのですが、もう技術の目ききの議論の次も必要ではないかと思います。それは何かというと、「事業の見巧者」です。これは、古典芸能の世界で言われる言葉で、いわゆる歌舞伎を見る「通」のことを言うんですね。見るのが上手い人。だから、役者も育つ。「目きき」は技術内論理で技術を評価する人であるのに対して、「見巧者」は事業論理で技術を評価する人です。この「見巧者」がそろそろ出てきてよいのですが、えてして技術者に期待してしまいがちです。私はそうではなくて、これは我々のような社会系、マーケット系から出てきてよいのではないかなと思っています。そこへ人材の目を向けないと、いつまでも技術者が技術の延長線上で目ききをやっているという話になってしまうと思うので、ここはちょっと違うのではないかなと最近は思っています。
 それから3番目が、先ほど産学連携の話がずっと続いていたのですが、私は人の側面から見てみると、産と学との人の連携の話だけなのだろうかと、最近、疑っています。すなわち、産の中でも、マーケットに接している方々と研究所の技術者は、やはりコミュニケーションがとれていないですよね、はっきり申し上げて。大学の中も、恐らくそうですね。TLOとか知財本部の方と研究者とのコミュニケーションがとれているのかという話があって、そうすると産と学とのコミュニケーションの話だけではなくて、今後は産産内とか、あるいは学学内のところまで目配りした産学連携人材だとか、あるいは制度の運用の在り方だとか、その辺があるのではないかなと思います。これが3点目です。
 調子に乗って、もう一つ余談をさせていただくと、今、会長が「科学技術外交」とおっしゃったので、これは次回提案させていただきたいなと思ったことを先走ってちょっと申し上げさせていただくと、「科学技術内交」もあるだろうと思います。すなわち、国の外とだけではなくて、国の中の交流。この委員会は科学技術を主とした知財の委員会ですけれども、もう一つ、コンテンツの委員会がありますよね。コンテンツの委員会に対して、科学技術はどういうリソースの提供ができるだろうかということを私は考えてみたいと思って、既に幾つかの話を始めています。
 それは何かといいますと、コンテンツ産業が、今、非常に苦しいのは、コンテンツのリソースがないということです。それは何かといいますと、例えばハリウッドの物すごい映画のネタになるような話が、日本では実は漫画家の想像力だけでしかないということです。そうではなくて、科学技術のフロンティアを、例えば映画の脚本家だとか、あるいは漫画家だとか、そういった人たちにフィードしたときに何が起こるかということをやってみたいと思っています。彼らもそれを求めているということは、最近、ヒアリングを幾つかした結果、わかりました。
 この話は、今日の本筋ではないし、次回に提案させていただこうと思っていたのですが、会長の「科学技術外交」という言葉に刺激されて、「内交もあるぞ」ということで、余談を少しさせていただきました。ありがとうございます。

○相澤会長 ありがとうございました。
 大変よいまとめをしていただけたのではないかと思います。このことは、次回に予定しております全体のまとめとも深く関係いたします。今日、それぞれの分野についてのご報告をいただきましたので、それを総括するような形で取りまとめの段階に入りたいと思っております。
 そこで、次回でございますが、次回は11月21日火曜日、14時から16時、場所は本日と同じところということでございます。先ほど申しましたような取りまとめに入りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それから、事務局から何かございますか。

○小川事務局長 貴重なご意見を、今日はありがとうございました。
 これから事務局は、各リーダーの方々ともご相談しながら、次の会の資料を用意したいと思います。今日のご意見も踏まえながら、メッセージ性があって、かつ、めり張りを効かせる努力をしたいと思いますので、引き続き、先生方にはいろいろご相談に上がりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○相澤会長 それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。