第11回 知的財産による競争力強化専門調査会 |
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○相澤会長 それでは、皆様おそろいですので、これから今年度の第6回の知的財産による競争力強化専門調査会を開催させていただきます。
大変お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。 本日は岡内委員、それから加藤委員、関田委員、長岡委員、三尾委員がご欠席との連絡をいただいております。 本日は政策レビュー及び第3期基本方針の在り方についてご議論いただくことになっております。 そこで、この議論を進めるためにこれからご提示いたします1枚紙で、第1期、第2期でどういうことが重点とされ、どういうことが進められてきたかということをまとめた資料を作成しております。 なお、ご欠席の長岡委員からはご意見を書面にていただいております。これにつきましては、後ほど紹介させていただきたいと思います。 それでは、内山事務局長から配付資料の確認と資料1の説明をお願いいたします。 ○内山事務局次長 まず、配付資料の確認からさせていただきたいと思います。 議事次第の下のほうに配付資料を記載しております。 資料1、資料2につきましては、後ほどご説明をいたしますけれども、ただいま相澤会長からご説明ございましたような基本的な戦略の推移が資料1、資料2が政策レビュー、第3期の戦略の基本方針の在り方について(案)でございます。 資料3、資料4、資料5につきましては、別冊という形で別冊1、これまで講じてきた施策の概要及び現状(案)、別冊2、これまで講じてきた施策に対する評価(案)、別冊3、第3期に講ずべき主な施策(案)でございます。 資料6が本日ご欠席の長岡委員の提出資料でございます。 それでは、まず資料1からご説明に入らせていただきます。 知財政策の基本的な戦略の推移ということでございます。 第1期につきましては、目標に知財立国の実現というものを掲げまして、取組方針としましては創造、保護、活用といういわゆる知的創造サイクルの活性化ということにつきまして、主な施策としては知財高裁の設置、また大学知財本部の設置、特許審査迅速化法の制定等々というようなものが講じられたわけでございます。 そして、2006年度からの第2期でございます。 これにつきましては、目標といたしまして、世界最先端の知財立国の実現ということを掲げまして、重点項目といたしましては、これはいわば重点的な施策分野ということでございますでしょうか。国際的な展開、あるいは地域への展開、中小・ベンチャー企業への支援、大学における知財創造、産学連携の推進、特許審査の迅速化、知財人材の確保というような重点項目を掲げまして、主な施策といたしましては、特許審査ハイウェイの実施、あるいはACTA締結に向けた交渉の加速等々というようなものが講じられてきたわけでございます。 この第1期、第2期につきましては、上に紫色の矢印で「保護」の重視と書いてございます。創造、保護、活用という3つの要素も大事なわけでございますけれども、第1期、第2期におきましては、しっかり迅速に保護するということを重視していたということではないかと思います。 そこで、第3期に向けまして、これまで第1期、第2期と比べての環境変化というのが上の水色の矢印の下に記載をしております。経済のグローバル化、オープン・イノベーションの進展、また情報のデジタル化・ネットワーク化の進展ということと、加えまして、また内在的には1期、2期を経て欧米へのキャッチアップを図って、欧米と同じような視座を獲得したことから、さらにステージアップを目指していくという、そういう観点から、権利の安定性、あるいは知財システムの高コスト構造に関する問題意識の高まりというようなことが見られたわけでございます。 そういったものを踏まえまして、第3期ということになるわけでございます。これは後ほど資料2で詳細ご説明を申し上げますけれども、まず第3期につきましては、この専門調でもいろいろご議論いただきましたが、生み出した知財につきまして権利保護オンリーではだめであって、事業化につなぐ活用のウエートの高まりということをあらわすために、「保護」と「活用」の重視と矢印で示しております。 そして、目標、いわば大目標の部分でございます。検討中となってございますけれども、コンテンツ、ブランド戦略を含めた目標となるキャッチフレーズでございますでしょうか、そういったものを是非ここに掲げたいと考えております。 第3期の基本方針(案)でございますが、前回1月14日の専門調でもご議論いただきました4つの柱をここに掲げてございます。いわば大目標を達成する中目標というような位置づけになります。 第1にイノベーション促進のための知財戦略の強化 IP For Innovation、グローバルな知財戦略の強化 Global IP、知的財産権の安定性・予見性の確保 Stable IP、利用者ニーズに対応した知財システムの構築 User−Friendly。そういった基本方針のもとに、主な施策といたしましては、ここにございますような特許制度の在り方の総合的な見直し、以下後ほどご説明するような内容を実施していくべきではないかと、こういう整理でございます。 ○相澤会長 資料2からは報告書になってまいりますので、報告書に入る前に、第1期、第2期を俯瞰して、さらに第3期に向けていくにはどういう柱立てでいくべきか、全体としてキャッチフレーズに相当するようなものをどうするか、こういうようなことをこの資料1でお考えいただきたいわけです。 しばらくの間、その議論をさせていただきます。 いかがでございましょうか、どういう観点からでも。 河内委員、どうぞ。 ○河内委員 目標というところが空白になっているんですけれども、私はやはり知的財産立国による国際競争力の実現、それがこれから一番求められる出口だと思うんですね。したがって、いかに国際競争力を実現するかということは、まさに独創的な研究開発成果によるところが非常に大きいわけで、特に私は化学産業の実情から見ますと、大学の基礎研究に物すごく期待しているわけです。したがって、今大学の研究をサポートし、その成果を権利化しそれを活用していく大学の体制といいますか、そういうところをまず第一に大きな柱として掲げてほしいなと思います。 又、制度的に言えば、研究開発でいろいろ競争的資金とか、いろいろな形での政府として支援も進んでいますけれども、その研究の成果の最後の帰結としての知財ということになかなか制度的につながってない。ぜひ制度として研究開発の競争的資金が一気通貫で知財の権利化に資金的につながるような、そういう制度をぜひつくっていただきたいと思います。 以上です。 ○相澤会長 ありがとうございました。 ほかのご意見いかがでしょうか。 どうぞ。 ○田中委員 今は全世界の不況ということで、今、河内委員がおっしゃったように、日本は新しい技術を生み出して、それに立脚して企業展開なり事業展開をして、活躍していかなければ、食べていかれないわけですから、ますますその要請が高まっているのではないかと思います。ですから、国際競争力という視点が必要であり、大学も、企業の研究部隊もあてはまるのです けれども、すべて知的財産を生み出す部隊であり、その知的財産の中から国が必要な、あるいは企業が必要な知的財産権を確保していくことが必要です。制度的につながってないというように、今、河内委員もおっしゃいましたけれども、緒についてはきており、大学の特許出願件数も増え、そのようにいろいろな認識は高まったと思います。しかし、それがまだ本物になっていないのではないか、一言で言えばクオリティーということかもしれませんけれども、それがまだきちんとした形になっていないと思います。ですから、第3期はそこを明確にターゲットにしてやっていくべきであるというように思っております。 ○相澤会長 どうぞ、前田委員。 ○前田委員 第3期の主な施策のところで、大学知財本部・TLOの統廃合・専門化と書いてありますが、大学の中には共同研究開発センターがあったり、インキュベーションラボラトリーやベンチャー・ビジネス・ラボラトリーなど産学連携に関するセンターがたくさんあります。さらに、知的財産本部、TLO等、いろいろな組織があります。共同研究を管理している場所、特許を出している場所、それを技術移転している場所と細分化されている学校が多いです。 本来、特許を出した後にそれをライセンスにするには、まだアリフェーズで、特許のライセンスには至らないけれども、共同研究だったり寄附講座にすると、企業に乗っていただいて、いい研究ができるという場合が往々にしてあります。ですから、大学の知財戦略というのは、出てきた発明なり新しい技術をどういうふうに持っていったら、一番産学連携としてハッピーになるか、一元管理できるような、きちんと知財戦略ができるような体制にしたほうがいいと思っているんですね。 ある意味、知財本部とTLOの確執だったり、統廃合とかというよりも、もっと前からある共同研究開発センターだったり、VBLだったり、いろいろなものも全部含めますので、何か書きぶりで、大学において知的財産戦略がとれるような、一元化の管理というんですか、そういうようなもののほうがいいのかなというふうに思っています。 あと、第2期のところに人材のところが書いてあるのですけれども、大学の国際連携とかになってきますと、やれる人が大変少のうございます。先日、東京医科歯科大もハーバード大やワシントン州立大のTLOの方に来ていただいたり、ドイツ・イタリア・韓国等、いろいろな国の方から大勢来ていただいて、意見交換会とかをやったんですけれども、やはりよその国と比べるとどういうやり方をしたら一番いいかというような例がまだ日本には全然ないんですね。そういう人をどんどん呼んで、勉強できる機会というのが必要だと思うので、人材について、もっと明確に謳われるといいのかなというふうにちょっと思いました。 ○相澤会長 妹尾委員。 ○妹尾委員 多分私に求められるのはかなり極端な意見を言えというお話だと思うので、ちょっとわかりやすく極端に発言をさせていただきます。 まず、「保護」の重視から「保護」と「活用」の重視というふうに1個足されたわけですが、「創出」はどうなんだと、こういう話にまたなってしまいかねない。しかし重要なことは、「保護」と「活用」がなぜ重視されるかということだと思います。 だとすると、私は「創出と活用を最大限に活かす関係性を持つために知財戦略は必要」という、この立場をもう少し明確にしても良いのではないかと思います。せっかく生まれたすばらしい技術がなぜ活用されずに事業化で負けてしまうのか、ここの問題についてもっと真剣に危機感に持って言っても良いのではないか、と。 すなわちどういうことかというと、「いくら保護してもイノベーションは生まれない」ということなんです。それから「いくら特許を取っても技術があっても事業で勝てていない」ということで、これらの事実を認識すべきだと、こういうふうに思うわけですね。 そうすると、「保護」と「活用」の重視というより、むしろ「創出と活用を最大限効果的につなげる知財戦略は何なんだ」ということが第3期のいわばポイントではないでしょうか。 その背後にあるのは何かといったら、明らかに環境が変化しているということです。要するに「プロパテントの時代」から「プロイノベーションの時代」に変わってきた。コンテキストが変われば当然施策のコンセプトと内容であるコンテンツは変わるべきなんですね。コンテキストが変われば、コンセプトとコンテンツは変わる、というわけです。 それを考えると、私は先ほどから先生方がおっしゃっているように、競争力というものをもっと前面に出して良いのではないかなと思います、つまりこの委員会の題名のとおりにですね。 では、競争力ということは一体何を意味するんだろうと考えると、片方で競争力があるから相手と協調、コラボレーションできるよねということです。ただし、コラボレーションは決して平等ではないですから、コラボレーションのイニシアティブをとれるようにしないといけないということになります。 コラボレーションというと、素朴にみんなが平等に一緒にやるということをイメージされる方が多いので、私は驚くんですけれども、コラボレーションというのは絶対平等ではないんですね。だれかがリーダーシップをとるんです。コラボレーションという言葉が一番使われるのは例えばジャズの世界ですが、ジャズで例えばビリー・エバンスのトリオがあったら、ビリー・エバンスがイニシアティブをとるんです。ロン・カーターはとらない。ロン・カーター・トリオになったときにロン・カーターがリーダーシップをとるわけです。 要するに、コラボレーションをやるときにイニシアティブがとれるか、それは取りも直さずイノベーションに関与するのではなくて、イノベーションを先導するイニシアティブをとれるかという、この設問のはずなんです。 日本は残念ながら、コラボレーションに参加することはあってもイニシアティブをとれることはないわけですね。ここのところを問題視しなくてはいけないのではないでしょうか。どうやって知財戦略上イニシアティブがとれるか、あるいは事業上のイニシアティブをとるときにどう知財戦略をうまく活用するのか、その立ち位置を明確にすべきではないかと思います。その意味で、私は立場上かなり極端に「活用センタードビュー(活用を中心におく世界観)」みたいなものを背後に持ったほうが良いのではないかと感じています。 そうすると、まさに基本方針の第1番目のイノベーション促進のための知財戦略の強化に関連します。これには大賛成なのですが、その知財戦略の強化、それからその次のグローバルな知財戦略の強化、これらは知財戦略そのもののためにあるのではない。あくまで競争力のために活用できる知財戦略をやるんだという、そのスタンスをもう少し打ち出したほうが良いでしょう。そうしないと必ず全部知財制度の話に小さく入っていっちゃう感じがするんですね、小さくという言い方は語弊があるかもしれませんけれども。 この観点に立つと、その次基本方針(案)と主な施策(案)のつながりがもう一つ見えてこないのです。どういうことかというと、この基本方針とこの主な施策(案)はどう関係づけられているのか、それがよくわからないですね。 すなわち、今みたいな競争力強化のための知財戦略については、どんな施策があるのか下の欄に具体的な施策が書かれているようには見えないんですよね。 また、例の、私は説明を一回も受けていませんので全然知らないんですけれども、イノベーション創造機構というのがぼんと入ってきているのもよくわからない。何なんだろうなと思いながら見ていますけれども、いずれにせよイノベーション促進のときにイノベーションイニシアティブをとる政策誘導だとか、あるいは官がやることと民がやることの効果的な相乗関係をつくる施策だとか、そういったものがここへ打ち出されるともっと迫力があるはずだと、そんなような気がします。 ○相澤会長 ありがとうございました。 今、妹尾委員のご指摘のことが本日皆様からぜひ声を発していただきたいというところでございまして、いきなり報告書に入りますと、個別条項が列挙されております。それを一つ一つやると、もっともだなということになるわけでありますが、こういう形で全体を俯瞰して考えて、どういう位置づけになるのか、どこにウエートを置いたものかということが明快ではありません。そこで、ぜひこういう議論をした上で報告書に入りたいということでございますので、今のようなご意見をどんどん出していただければと思います。 そのほかにいかがでしょうか。 どうぞ。 ○佐藤委員 1期、2期はまさにプロパテントだったと思います。さらに先ほど妹尾先生が言ったプロパテントからプロイノベーションというのがこれからの我々の第3期の目標であろうと思います。 1期、2期は知財がしっかり守られて初めて知財戦略があると、発明の保護、知財の保護の制度、制度環境、運用、これをしっかりしましょうといってやってきたのが1期、2期だと思うんですね。 しかし、先ほどこれも妹尾先生がおっしゃった、発明が幾ら保護されても、それが必ずしもイノベーションを生み出すことにはならない。なぜなら、発明の保護は活用を通じて先行投資を回収し、それを新たな創造に結びつけるという意味で、発明の保護というのは知財戦略の制度設計上は非常に重要なことで、それを今まで6年かかってやってきた。私はこれは相当のところまで整備されてきたというふうに思っています。 しかし、実際には技術優位、特許優位でありながら、日本の企業が世界市場の中で必ずしも優位になっていない分野がたくさんあると思います。それは発明の保護、特許を生み出すというだけでは国際競争力優位、さらに市場優位ということは実現できないということを示しています。 そこにもう一つ発明を生み出し、また特許を取るというだけではなくて、それをまさに戦略的に活用して市場優位、国際競争力をつくるというところにもっと目を向けた形の活動、その実行が必要だというのが今我々日本が抱えている状況であろうと強く思います。 そういう意味では、知財により国際競争力の実現という、先ほど河内委員からお話があったスローガンというのは、一つ大きな形だろうと思います。さらに、そのプロパテントからプロイノベーションというプロパテント時代のさらに先に進んだんだというメッセージを出すということは、それも重要じゃないかと思っています。 これを俯瞰した形で言えば、1期、2期は大学の研究開発の成果を社会に還元して、日本の競争力を増すんだというモデルでやってきているわけですが、実は創造から市場に結びつけるところまでの一気通貫の仕組みが必ずしもまだ熟していない。そのために成果が出てないというのが現状だろうというふうに思います。 現実に前田委員がおっしゃっているように、ごく一部の大学ですら、最先端をいっているところですら、市場した成功モデルがあって、これが日本の成功モデルですと、皆さんこれを習って頑張りましょうというところまでは、はっきりしたものがまだできてないというのが現実だと思うんです。 ただ、最近ここ6年間の中に文部科学省がやられているようなトランスファーリサーチセンターのようなシーズの段階から市場化までの間を一気通貫でやるような仕組みづくりというのが出てきていくというのは、私は大変すばらしい試みだろうというふうに思っているんです。 そういう意味では、単にケアするTLOがあり、管理する知財本部があるというのではなくて、シーズから市場まで結びつけるようなきちんとした流れをつくるような仕組みづくり、そういうものをどうやって合理的に回していくかというところをもっとやらないと、大学でいい発明がなされ、いい研究成果が出たとしても、このままの状態では必ずしも市場につながらないというふうに思います。 そういう意味では、先ほど来妹尾先生もおっしゃったイノベーション創設機構という新しい機構をつくるのであれば、お金だけではなくて、これは前回の専門調査会でも申し上げましたけれども、開発段階から市場に結びつけるまでお金の面倒を見るけれども、そのケアもちゃんと面倒を見るというような仕組みを私はつくっていく必要があるんじゃないかというふうに思います。 以上です。 ○相澤会長 ありがとうございました。 そのほかはいかがでございましょうか。 どうぞ、辻村委員。 ○辻村委員 私も皆さんの意見と本当に同じ意見でございまして、特に妹尾先生がおっしゃった知財の創出と活用、その間をつなぐのが知財戦略であり、そこの評価をきちっとやらないといけないというのは、まさにそのとおりだと思います。 企業でも、結局競争力のない企業同士の戦いというのは本当に悲惨でございまして、最後は確実に価格競争に陥る。そういうことがどんどん今起こっているわけであります。 その原因は何かというと、まさに競争力の源泉となる技術なり知財、これがないということが諸悪の根源でございます。そうなってしまっては、本当にだめなわけです。 マーケットインの発想が重要とよく言われるんですけれども、市場だけを一生懸命見て、単視眼的にやっていくと、なかなかイノベーション、インベンションみたいなものは生まれてこなくて、いわゆるありきたりな技術、小手先の技術に偏り、非常に短期的な視野でどんどん開発をやっていくということが中心になってしまう。 プロダクトアウトというのはよくないと言われますが、実は真のプロダクトアウトが本当は重要で、企業としてもどんどんやっていかなければならないと思いますし、大学の研究というのは、まさに真のプロダクトアウトでありますので、そこに軸足を置いて、本当に何をやりたいのか、何が将来の役に立つのかということを考えて、研究を進めていって、それを事業化につなげるところを企業との連携でうまくやるという仕組みが大事なのではないかと思います。 大学発の特許というのもかなり増えてきているということは事実でございますが、これからは,質がどうだというところが問われることになる。質のところをどう評価して、質を高める方向に持っていくにはどうすればよいかという点が一つ重要なポイントだと思います。 知的財産の質を高めることと、知的財産権の質を高めるという2つの課題があると思います。それをよく見きわめた上で、施策を打っていただければと思います。 イノベーション創造機構については、私も内容はよく知りませんけれども、どのような仕組みであるかということには非常に興味があるところでございます。 ○相澤会長 中村委員。 ○中村委員 今、皆様からご指摘いただいたポイントに加えまして、1点申し上げたいと思います。 第1期から第2期の目標は、「知的財産立国の実現」から「世界最先端の知的財産立国の実現」へと推移しているわけでございますが、世界最先端ということは、あくまで各国にそれぞれレベル差があって、その中で一番先をいくというのがこの世界最先端という言葉から想起されるニュアンスであります。資料上述の環境変化に記載されておりますように、経済のグローバル化、我々のような企業の事業活動もグローバル化しており、更には知財システムの高コスト構造の中で日本企業がグローバルに戦うことを考えますと、日本がどの国よりも先にいっているかという観点ではなく、さらに一歩進んで地球規模で全体的な制度調和の実現が必要であると考えます。こうした制度調和の取り組みの中で日本がイニシアティブをとることにより、結果的に日本の産業力が世界的にも安定し、競争力を発揮できる訳であります。もちろん今までもそういう制度調和に向けての取り組みを、やっていただいておりますけれども、「グローバルレベルでの高位平準化」、更にはその中での日本のリーダーシップという視点を挙げていただけると、より日本の位置づけというのが高まるのではないかというふうに感じました。 ○相澤会長 中山委員。 ○中山委員 知財戦略会議から一貫して入っているのは私だけですので、今までの経緯を申し上げたいと思います。知財戦略会議が始まった当初は、知財制度を中心に論ずるべきであるという意見もありましたけれども、議論していくうちに、制度だけあっても仕方がないと、創造と活用、それを担う人材、この4つが四輪でなければ意味がないということで、ずっとその四輪を中心に今まで議論してきたわけで、今まで各委員の方々がおっしゃったのは全くそのとおりなんですけれども、別に今期だからということではなくて、従来からそれでやってきた。 ただ、ちょっとこんなことを言っていいかどうかわかりませんけれども、その時々の事務局長の個性もありまして、今まで保護を中心だということになった嫌いもありますけれども、歴史的に見れば今までこの四輪でやってきております。ただ、どうしても創造と活用の部分が足りないということであれば、今期をそのメーンに据えるということは、それはそれで非常に意味があると思いますけれども、やってこなかったわけではないと思います。 ○相澤会長 貴重なご意見をありがとうございました。 そのほかに。 どうぞ。 ○渡部委員 もちろんやってこなかったわけではないと思うのですが、民間の感覚では、いろいろな知財、知財と言われ始めてからの経緯というのは、随分大きな変化があったと思います。最初は知的財産立国という言葉はまず基盤をつくろうというイメージが非常に強かったのではないかというふうに思います。そういう意味では、制度を中心に立ち上げてきて、そうやって見ると、この当時中国がWTOに加盟する前と後というのは大分状況が違っていたのではないかと思いますが、アメリカとの関係だけで知財のことを考えていた時代と、それからもう少し中国、多極化した中で我が国の知財の立ち位置というものを考えるようになったということがあったし、それを一通りやってきた中で、今度は世界同時不況ということもあってアメリカとの関係もますます大きく変わってくるのだろうと思います。 報道されているように、やや保護主義的なことまで施策に上がるような状況になってきて、恐らくそういうようなことが歴史的に見ると、そういうことも起きそうな状況にあるわけですけれども、日本は、グローバルな中でしか生きていけない。資源がありませんし、この知財というのも世界の中で活用していくしかないわけです。 日本だけで考えても、もちろん内需、今内需をともかく何とかしなきゃいけないというのはあると思いますけれども、それだけでは恐らくこの10年を乗り切っていくということは難しい。 そこで知的財産をいかにしてグローバルの中で活用していくかということ、それのつながりをいかにつくっていくか、そういうような意味では、知財立国というイメージ、これは恐らく知的財産基本法の中に書かれている言葉なので、そこから離れにくい、離れられないのだろうと思いますけれども、知的財産戦略国家になっていかないといけないのだろうというような思いがあります。 もう少し詳しく、企業活動や大学の知財の活用というところを見てみますと、これは当たり前といえば当たり前なんですけれども、特許の数とイノベーション、あるいはその収益というものとの関係を見ても、大きく見てもそんなにコリレーションがない、リンクはしていないわけです。特にエレクトロニクス業界に関しては、私は少しそういうデータをかなり詳しくとって見ていますけれども、特許の数と収益性というのはなかなかリンクは悪いです。 だけれども、何にも使ってないのかというとそうではなくて、知財を戦略的に他社との関係性、アライアンスに使っていたり、顧客との関係性に使っていたり、そういうような戦略的な使い方が主であって、そこの戦略が正しければ収益につながるという、そういう構造だということです。 それと、もう一つはそういう中で技術というものが実用化に結びつくのは簡単な技術をやったほうが実用化に結びつくのは当たり前なんですけれども、収益との関係で見ますと、ある程度の挑戦をして、不確実性の高い技術を知財にしていくということをしなければ収益に結びつかないということも一方では出てくるわけです。 そのような課題に国として、あるいは産業セクター、あるいは産学連携の中で、さらにグローバルな視座の中で取り組んでいくということが多分今最も求められていることではないかというふうなこととして皆さんの話も伺っておりました。 以上です。 ○相澤会長 妹尾委員。 ○妹尾委員 今、渡部先生が最後に言われたことに私は大賛成です。企業が知財による直接的な収益を得るということだけでなく、それ以外の戦略的な直接、間接的な事業へのつなげ方をして収益を得たり、あるいは事業を成功に導くという、この戦略性を持つべきだということに大賛成ですね。 そのときに一点。この表の中で一番左に書かれている第1期のところに「知的創造サイクルの活性化」と、こういう言葉があります。当時は当然のことだったと思いますし、今も生きていると思いますが、これが現在の我々の頭のメンタルモデルを形成したわけです。創出、保護・権利化、活用というサイクルがみんなの頭の中に入ってきました。このサイクルはここだけではなくて、いろいろなところでみんなが前提にする考え方となりました。何回か前に強調しましたけれども、このサイクルを前提にするだけで良いのだろうか、そろそろ我々は複眼的な思考を持つべきではないか。それを何回かご提案させていただきました。逆回し、すなわち事業構想だとか、ダイナミックなイノベーションの構想が最初にあって、それを可能にならしめる知財権に限らず知財のミックスやアレンジメントの構成がデザインされて、そしてそのデザインに基づいてリソーシング、すなわち具体的な技術の創出だとか権利の調達が行われる、こういう逆回しのサイクルもあるはずです。このサイクルはむしろ企業関係者の方にはぴたっと来ると言われておりますけれども、これを私は「事業創造サイクル」というふうに言っております。またリバースモデルと呼んでいます。今までの知的創造サイクルはフォワードモデルと呼んでいます。もちろんフォワードモデルは王道です。基礎的な研究ができたら、それがどういうふうに将来的に活用されるか。だれもクラゲの発光体をどういうふうに活用すれば良いかわからなかったように、何十年もしてみたらとんでもない意味を持つということがありますから、これは当然あってしかるべきです。しかしながら、もう競争力ということに関しては、逆回しのリバースモデルの事業創造性的な考え方もなきゃいけないんじゃないかと。こう考えますと、この取組方針の左側にあります知的創造サイクルの活性化ということは当然ありますが、それに加えて、事業創造サイクルの観点も入れて、イノベーションを前面に出すような考え方のコンセプトあるいはキャッチフレーズが置かれても良いのではないでしょうか。そうするとメリハリがきくのではないかと、これはご提案です。 ○相澤会長 ありがとうございました。 皆様から大変貴重なご意見をいただきました。ただいまのご議論は今後も続けることができますので、これから本日の中心議題であります報告書の案文についてご意見をいただきたいと思います。 それでは、まず資料2及びその後の資料を含めて内山事務局次長から説明願います。 ○内山事務局次長 それでは、資料2をご参照いただきたいと思います。 ページをめくりまして目次をごらんいただきたいと思います。 まず、「はじめに」の後に第1部、パートTとして、これまで講じてきた知財施策に対する評価の概要。これまで各論で政策レビューを行ってまいりました。その際、皆様ご案内のとおり、討議用資料の評価の最初の枠囲いの部分を中心に1から4まで整理をしております。 次に、パートUの部分、これが第3期の知財戦略基本方針の在り方の中核をなす部分でございます。1に知財を取り巻く状況、2に我が国の現状と課題、これは先般、1月14日の専門調査会で総論を議論した際に、下の3.にございます4本柱を基本的な方向性としておおむね異論はなかったのではないかと理解しております。その部分でございます。 それから、3.が第3期の知財戦略の基本方針ということで、(1)から(4)に4本柱を掲げてございます。 これ以外に資料3から5に別冊1から3がございます。この位置づけでございますけれども、別冊の位置づけはあくまで本報告書と一体となったものでございます。ただ利便性などを考えまして、編集の仕方として本編、資料2、そして別冊1から3、資料3から5というふうに分けたものでございます。この点につきましては後ほどご説明いたします。 3ページ目に「はじめに」の部分でございます。 最初のパラグラフと2番目のパラグラフに基本方針を考えるに当たっての現状認識がございます。これは先ほど来、委員の皆様方からお話がございますように、世界的な金融危機によります世界全体の経済活動の急激な失速という中で、我が国は第1期、第2期とこの6年間に知財立国の実現に向けて力を注いできたが、この経済危機によって、こうした努力レベルというものを引き下げてしまってはよろしくないと。こういう認識の中で、こうした激動期こそ、知財を生かしてグローバル市場の獲得、あるいは内需拡大に向けた方策を追求すべきではないか、との現状認識でございます。 こういった認識のもとに、検討の経緯が次のパラグラフにございます。 そして、第4のパラグラフがこの報告書の構成を示してございます。 この報告書は、政策レビューと今後の基本方針、この2部構成となっております。講じてきた知財施策と関連データというのは別冊1に体系的に整理をして、その上で別冊2において詳細な評価を行い、その概要をこの本編の第T部として整理をしております。 第U部では、これを踏まえて今後の知財戦略の基本方針として、まず第3期において目指すべき政策目標を設定して、その達成度を評価するために評価指標、さらには政策目標を達成するため今後重点的に講ずべき施策、これをピックアップしました。あわせて、第3期において講ずべき主な施策というものは別冊3として整理をしました。以上が報告書の構成でございます。 次に続くパラグラフで、しからば政策レビューの結果というのはどうだったかという総括をしております。 政策レビューの結果、これまでの知財重視に基づく多くの施策、これはおおむね成果を上げている一方、欧米と同等の視座を獲得したこともあって、知財の権利保護のみに注力してもイノベーション促進には十分でないという認識が高まるとともに、経済のグローバル化、イノベーション・プロセスオープン化、デジタル・ネットワーク化の進展というような環境変化に応じた新しい課題が生じてきている。また、制度利用者のニーズを十分満たしていないという従来からの課題の積み残しということも明らかになったということでございます。 こういった政策レビューに基づきまして、我が国の知財戦略の今後の課題、方向性について次のパラグラフで概括をしております。 我が国が現下の経済危機を克服し、国際競争に打ち勝っていくためには、グローバル市場で新たな知財の創造とその効果的な活用によってイノベーションを創出し続けていく以外に道はないということです。第3期では原点にもう一度立ち返って、国際的視点からイノベーション促進のための知財戦略を一層強化していくべきで、その際にイノベーションの創造に資する知財人材の育成・確保は引き続き重要であるし、また知財の安定性の確保、利用者ニーズの充足といった観点からの不断の改革というのも大事だということでございます。 次に、5ページから第T部として政策レビューの評価の概要を取りまとめております。 これは最初の柱書きにございますように、専門調査会で創造、保護、活用、人材、この項目に従って体系的に整理した政策項目ごとに、6年間の知財施策の概要と現状につきましてデータとともに別冊1のとおり整理し、その上で、各施策に対して評価の視点をピックアップして、その視点に基づいて別冊2に基づく施策の評価を行ったわけでございます。 その概要を以下のとおり取りまとめたものでございます。 既に昨年来の専門調査会におきまして、以下の各論におきます検討は、個別に詳細に行われておりますので、ここでの説明は省略をいたします。 それで、次の6ページから32ページまでは政策レビューによる各項目の評価の概要でございますので、めくっていただきます。 33ページ、第U部、第3期の基本方針の在り方についてでございますけれども、まず第1に知財を取り巻く状況でございます。 これは先ほどご説明したとおりでございますけれども、世界的な金融危機に端を発した経済の減速の中で、我が国は当面の経済危機に対応するとともに、中長期視点から経済成長を図るということが求められております。 次に、経済のグローバル化が進展し、国際競争が激化する中で、革新的な知財を生み出して、それを確実に経済的価値の創出に結びつけていく。すなわちイノベーションの創出が極めて重要だということです。オープン・イノベーションに向けた取組の進展、またデジタル・ネットワーク化の進展があります一方、日本のブランド価値の発信を通じた海外市場の開拓等々の重要性が高まってきております。 特許等の知財制度の利用の側面に着目いたしますと、高コスト構造や権利の安定性に関する問題点が指摘されている一方、フリーソフトウェア等々の活用など、独占権を主張しない取り組みも広がってきております。 こういう状況の中で、次のページに現状と課題を整理しております。 最初の柱書きは、先ほどご説明しました冒頭「はじめに」の中の政策レビュー総括のパラグラフを持ってきております。その上で、4本柱がピックアップされたわけでございまして、まず第1の柱、イノベーションの促進でございます。 経済成長率へのMFPの寄与度、あるいはコンテンツ産業の伸び率、こういったことを見ますと、総じて我が国は知財を経済的価値の創出に効果的に結びつけられていないおそれがございます。 事業活動の側面を見ますと、先ほどもご議論ございましたけれども、オープン・イノベーションの進展に伴い、そのプロセスの分担化が進行する中で、収益を最大化させるためにはイニシアティブをとるということが重要だと。また、グローバル競争に勝ち抜くにはビジネスモデルの構築、高度な知財戦略の実践、それに遅れがあるのではないかという点です。 それから、次のページにまいりますと、現下の厳しい経済情勢の中で地域経済の活性化が求められている。ただ、大学や中堅・中小企業の生み出した知財を適切に管理して、事業化まで関与していく、そういう総合的なプロデュース機能というのが弱い。 一方、大学の知財を産業界へ効果的に移転させる機能というのもいまだ弱い。 また、大学発ベンチャーを見ますと、確かに多数創出はされてきたけれども、その多くは経営が低迷している。一部不活性な大学発ベンチャーの存続というのがベンチャーの特性であるダイナミズムの低下をもたらしているというような指摘もございます。 知財制度に関しましては、これまで数次の法改正、あるいは審査迅速化に向けた体制整備が行われてきておりますけれども、いまだ国際的に遜色のない水準に至っていない面がございます。 また、米国を中心に知財権の濫用的な権利行使の問題が顕在化したり、国際標準化に際しての不当な権利行使というのもございます。適切な権利行使の在り方について検討を行うことが必要とされております。 また、我が国の制度におきましては、諸外国に比して営業秘密侵害に対する抑止力が弱いと見られております。 次に、経済のグローバル化への対応でございます。 我が国の経済成長というのは、アジア等の活力を取り込むことが不可欠でございます。 また、近年我が国の地名、普通名称といったものが外国において商標登録されるという問題も顕在化してきてございます。 こうした中で、世界特許システムの構築に向けまして、特許審査ハイウェイが本格化しつつございますけれども、対象国のさらなる拡大の余地がございます。また、三極特許庁長官の間で審査基準、審査判断の調和についての議論は開始された段階でございます。 また、アジア地域におきます制度運用の整備はいまだ十分ではございませんし、その他のBRICs等への我が国の出願ケースというのは、米国よりも少ないということで、国際的な知財取得戦略におくれが見られるという点がございます。 一方、アジア諸国を初め、海外における模倣品・海賊版の流通というのは後を絶たない状況でございまして、またインターネットにおいても海賊版が氾濫しているという状況でございます。 次のページ、3番目でございます。知財権の安定性・予見性の確保でございます。 侵害訴訟におきまして、特許が無効と判断される事件の割合が増加傾向にございます。これによりますビジネスリスクの増大が指摘をされております。 この無効と判断される原因につきましては、分析が必要でございます。 また、特許の有効性が無効審判、そして特許侵害訴訟の両者によって争うことができる、いわゆるダブルトラック、これが特許権の安定性の阻害要因になっているという指摘もございます。 最後に利用者ニーズへの対応でございます。 昨今、国内外における権利取得段階から紛争訴訟段階に至るまでの知財制度の利用に関連する高コスト構造が問題視されてございます。 次に、38ページ以降が第3期の知財戦略の基本方針でございます。 まず、38ページ目に基本的な考え方を記しました。 これは先ほどご説明しました4本柱について、なぜこの4本柱を取り上げるべきかという視点につきまして、コンパクトにまとめたものが第1、第2、第3、第4とございます。 下から2つ目のパラグラフでございますが、これは冒頭ご議論いただいた大目標、どのようなキャッチフレーズにしていくのか、そういった点にかかわるところでございます。そういった意味で(P)というようになっておりますけれども、とりあえず真に世界最先端の知財立国を目指すべきと書いてございます。 最後の点でございますけれども、これは政策評価、PDCAサイクルの確立に関する点でございます。第3期におきましては、政策目標を設定して評価指標に基づいて達成状況を客観的に評価して、それを踏まえてさらに必要な施策を講ずる、そういう政策評価マネジメントを適切に実行すべきと明記してございます。 次に、4本柱についてそれぞれ政策目標、評価指標、重点施策をまとめてございますので、簡単にご紹介をいたします。 まず、イノベーション促進のための知財戦略の強化、政策目標としては、第1に技術革新、市場変化に的確に対応した知財制度を構築する。第2に大学や中堅・中小企業の生み出す知財を適切に管理し、事業化につなげる総合プロデュース機能を強化する。第3に研究開発戦略・知財戦略・事業戦略の三位一体化を促進し、これを担う人材を育成する。特にオープン・イノベーションの進展に対応するためには、知財の公正・円滑な活用、技術情報の適切な保護を図るための環境整備を行う。 この政策目標をその達成状況を客観的に評価するための指標が次の評価指標でございます。 この評価指標だけではなくて、これとともに下に記載します重点施策の進捗状況、あるいはその効果、これをあわせて評価していくということが、先ほどご説明しましたPDCAサイクルの確立ということではないかと考えております。評価指標はここに掲げたとおりでございます。 重点施策でございます。 これは上に掲げた政策目標の達成にかかわる重点施策を、別冊3にまとめました主に講ずべき施策からピックアップをしております。いわば総花的にならずに、めり張りをつけることを意識したものでございます。重点施策を見ていただきます。 第1に、政策目標の中の技術革新、市場変化に的確に対応した知財制度の構築という目標に関しては、イノベーション促進の観点から特許制度の在り方の総合的な見直しの検討を行う。 次に、現在検討中の先端医療特許検討委員会の結論を踏まえて、特許保護の在り方の見直し、さらに日本版フェアユース規定の導入、不使用商標対策の検討、最後に審査待ち期間11カ月への短縮(2013年まで)、これを目指した特許審査処理の迅速化でございます。 次に、大学、中小企業等の知財の総合プロデュース機能の強化という目標に関しましては、産業革新機構(イノベーション創造機構)の体制整備、大学知財本部(TLO)の統廃合・専門化、産学連携における外部機能の積極的活用の促進。知的財産施策と中小企業施策、農林水産施策、科学技術施策などとの連携強化によります総合プロデュース機能の強化という点。それから最後に地域金融機関における知財の活用の促進。 次にイノベーション創出に資する知財人材の育成という目標に関しましては、三位一体化を担う人材の育成とともに、独創性、あるいは他人の知財を尊重する意識をはぐくむための知財教育の充実を掲げてございます。 オープン・イノベーションの進展に対応した環境整備の目標に関しましては、適切な権利行使の在り方の検討ということで、民法上の権利濫用の法理、米国の判例等を考慮しながら、差止請求の要件等の適切な権利行使の在り方について検討を行ってまいります。 それから、未登録の通常実施権の保護制度(当然保護制度)の検討、またいわゆるライセンス・オブ・ライト制度の導入の検討、次のページにまいりまして、営業秘密侵害の抑止力を高めるための法制度の整備を早急に行うということでございます。 次の柱でございます。 グローバルな知財戦略の強化でございますが、政策目標として、世界知財システムの構築に向けまして、可能な限り早期に実質的な相互承認の実現を図るため、我が国がリーダーシップを発揮して推進をしていくという点、それから模倣品・海賊版対策につきましては、ACTAの早期妥結、そして参加国の拡大を我が国が主導していくという点、最後に我が国、特に中小企業だと思いますけれども、大学とあわせて海外展開、海外リソースの活用を促進する。国際標準化活動を強化するという点。 次に評価指標があり、そして重点施策としては、世界特許システムの構築に向けた取組の強化、44ページを見ていただきますと、首脳、あるいは大臣レベルといったハイレベルな知財外交の強化、模倣品・海賊版対策の強化。海外の知財関連情報の提供強化、特にアジア諸国、あるいはBRICs等に関する知財管理情報の提供という点。そして中小企業の海外への事業展開に対する支援策の拡充、特に情報提供から権利取得、販路開拓、権利行使、模倣品対策、これらを一貫した支援としての在り方の検討でございます。 それから、大学の国際的な産学官連携活動体制の整備、また標準技術を円滑に実施可能とする方策の検討ということについては、幅広い観点から検討を行っていくという点。 3番目に知財権の安定性・予見性の確保でございます。 政策目標として、侵害訴訟において特許が無効と判断される原因についての分析を行うとともに、審査の質の一層の向上、特許の有効性判断に係る紛争処理スキームの見直し、これによりまして知財権の安定性・予見性を確保していくということでございます。 評価指標としては、利用者の満足度(アンケート調査)を掲げております。 重点施策としては、無効判断の原因分析、それから紛争処理スキームの見直し、特許権の安定性確保に向けた方策の検討、シームレスな検索環境の整備でございます。 最後に利用者ニーズに対応した知財システムの構築でございます。 政策目標はここに掲げたとおりでございます。 評価指標は利用者の満足度(アンケート調査)でございます。 重点施策といたしまして、行政サービスの質の向上、また保護対象、判断基準、これが内外の利用者にとってわかりやすく、かつ予見可能なものとなるように審査基準の明確化、透明化を図っていく。 それから、中小企業に対しましては、特許手数料減免制度の見直し、特許審査ハイウェイのネットワーク拡大と運用改善、また出願人のニーズに応じた審査処理のスキームの構築といった点でございます。 以上が資料2でございます。 最後に、本日ご欠席の長岡委員から資料6のご提出がございましたので、簡単にご紹介をさせていただきます。 知財の創造につきましては、イノベーションの観点から制度の実証的な検証を行って、それを制度設計に生かしていくことが今後も重要だという点、2番目に知財の保護に関しましては、迅速化と的確な審査の両方の目的を実現するために、審査体制の強化に十分な投資がなされるべきという点、それから3番目に知財の利用につきましては、特許料減免とリンクした実施許諾の意志の登録制度は積極的に検討されるべきという点、以下標準技術に係る特許に関するコメントをいただいております。 以上でございます。 ○相澤会長 ありがとうございました。 それでは、内容がたくさん盛り込まれておりますが、先ほどご議論いただきましたような柱立てをしていくということを前提に、構成されております。ですから、この4本の柱立てについて、まずこれでよろしいかどうか、次いで各施策への展開について議論を進めたいと思います。いかがでございましょうか。 ○妹尾委員 コメントではなくて、まずちょっと質問をさせていただきたいのですが。ここの中で重点施策によってメリハリをつけるというお話を伺っています。こちらの資料5の中から選ばれたものが資料2に入っているよというご説明だったかと思いますが、拝見しますと、ここの資料5の文言がそのまま資料2にほぼ入っているものと、資料2には入っているけれども資料5には何か書いてないものもあったりするようです。資料5と資料2との関係はどうなっているかをまず教えていただけますか。 ○内山事務局次長 わかりました。 資料5に主な講ずべき施策ということで、これまで各論の議論をした際に、それぞれの項目ごとに政策評価、評価指標、主な講ずべき施策ということで書きましたので、それをまず別冊5の中に掲げてございます。その項目からピックアップをして、ここで4本柱に沿った形でもう一度重点施策として位置づけたときに、若干文言の修正をしたところもあるかと思います。そこは場合によっては平仄を合せた形にしたほうがわかりやすいのかもしれませんので、事務局のほうでもう一度整理の仕方についてはよく検討してみたいと思います。 ○相澤会長 田中委員。 ○田中委員 今のことに関連していることです。今回も全体的にはいろいろな議論がきちんとまとめられていると思います。しかし検討するときに、とても検討しにくいと思います。こちらの資料を見て、またあちらの資料5を見たりなど、あちらこちらの資料を引っ張り回さなければ何が書いてあるのかわからないという部分があります。多分事務局も大変苦労されてまとめられたと思います。今までの評価の概要が資料4と資料3であり、おそらく細かい部分については資料4にまとめられたのだと思います。 それから、今後の知的財産戦略の基本方針なるものを細かいレベル、細かいというより具体的なものを資料5としてまとめられたと思いますが、少なくともこの資料2と資料5は合体してまとめられたほうがはるかに読みやすいのではないかと思います。 資料3と資料4については、かなり具体的な細部にわたる解説もありますので、一緒にまとめてしまっては確かに大変なことになるかと思います。しかし、基本方針と今後とるべき施策は、場合によったら1冊にしたほうがとても見やすくなるし、何を言いたいかも明確になるだろうと感じながら私も読んでいました。 以上です。 ○相澤会長 どうぞ。 ○河内委員 資料4の後ろのほうに第2期重点項目の実施状況に関する評価のところで、今までやってきたことと今回第3期で取り上げておられる項目を書いておられる。 第2期、今までこんなことをやってきましたと、それでいろいろ評価したらこういう課題がありますと、したがって評価のところで第3期の項目としてここに掲げましたというのがこの資料4の後ろのほうの意味するところですか。 ○内山事務局次長 今ご指摘いただいたとおりだと理解をしております。 ○河内委員 それで、私も少し読んで見たんですけれども、なかなか2期と3期の継続性が判りづらい。今までの課題が完了したもの、そのままフォローし今後もこのまま進んでいけばいいというもの、新たに今回第3期として重点的に取り上げるものとして今回新たにまとめられたと見ていいんですか。 ○内山事務局次長 第2期の重点項目について、まず現時点で評価をして、その上で第3期の基本方針、その中ではどういう政策目標を取り上げて、どういう点を重点施策として展開していくのかということを考えたわけでございます。そこのところは今、委員のおっしゃられた第2期の重点項目で順調にやってきたものはこのままでということも含めて、第3期にどう取り組んでいくべきかをこの競争力専門調査会では議論して、それに基づいて基本方針、政策目標、重点施策等々を考えたということです。その際、第2期の重点項目の実施状況について、現時点での評価を行いました。この評価というのは、第3期の基本方針を検討するに当たってのベースになるものとして位置づけてみたところでございます。 ○相澤会長 どうぞ、佐藤委員。 ○佐藤委員 今、出されていたご意見との関連でございますが、2期まででやってきて、まだ十分に完了していない施策というのが多分たくさんあると思うんですね。それがこの3期のときにちゃんとつながるようにしていただきたい。 つなぐように書かれているというふうには思うんですけれども、前に細かく挙げていた項目が後ろに隠れてしまって、それが何か消えたのか、残っているのかわからないというような状態になると、多分現場のほうは混乱する可能性があるかなと思いますので、先ほどご指摘があった別冊2の資料4のところの後ろでレビューして、2期目はこういうことをやったよ。それで、2期目の課題がまだ検討すべきことがあるよと、こういうふうにくくって、それで資料5のほうにつながっているんですけれども、この辺との関係が見えないといけないんじゃないかと思います。 報告書としてどこまでどうまとめるかは別として、そういうつながりをぜひ考えていただきたい。そうしないと、せっかく2期までやってきたもので8分目までできたのに、そこで頓挫してしまうということがあってはいけないんじゃないかというふうに思いました。 ○相澤会長 田中委員。 ○田中委員 この資料について、具体的な内容についての議論はまた次回になるのでしょうけれども、資料2の34ページから35ページについてです。我が国の現状と課題というところなのですが、すごく気になるところがあります。最初のパラグラフですが、「知的財産の権利保護のみに注力してもイノベーション促進には十分でないとの認識が高まる」と記載さています。今まで、知的財産の創造、それから保護、活用という大きな輪で知的財産の政策を見てきたわけで、権利保護のところだけ強調してずっと制度構築してきたという認識だったわけではないと思うのです。ですから、「イノベーション促進には十分でないとの認識が高まる」という物事のとらえ方があるのはわかりますが、知的財産の権利保護のみに注力してきたわけではないのではないかという感じがちょっといたします。 それから、35ページの2つ目の丸のところです。「知的財産の主要な創造拠点である大学・・・」について、特段の反論をするつもりは全くありません。日本における新しい知的財産を創造する拠点が大学であることに関しては私は一向に構わないのですけれども、特許実施件数が増加していることと大学のライセンス収入がアメリカの50分の1にとどまることが結びつけなければいけないということについては全く理解できないのです。アメリカにおける大学のライセンス収入なるものの中身について分析をしたのか疑問に思います。 新しい産業が起こるとき、例えばコンピュータ産業が起こるときに、あるいはネットワーク産業が起こるとき、あるいはソフトウェア産業が起こるときに、日本はアメリカに遅れたという事実はあると私は思うのです。つまり、大学にいた学生たちがアップルを始めたとか、マイクロソフトを始めたとか、あるいはグーグルのインターネットにおける検索エンジンを始めたなど、まさにそのような新しい技術、新しい産業が起こったときに、それとうまくリンクして、知的財産権の所有者となっている大学がその起業する学生にその知的財産権をライセンスし、その事業が大きく成長した暁にそのペイバックとしてライセンス収入が増えたという事実があると思います。 ところが、今日本国内で初めて知的財産をどうするべきかといって大騒ぎし始めて、ようやく知的財産権として特許も取得していきましょうという状況の中で、一気にライセンス収入が増えると考えるほうが間違っているのではないのかと思います。新しい産業を起こすだけの新しい技術が生まれたときに、それとリンクしてどのようにやりますかという視点はわかるのです。特許出願件数、特許実施件数とも着実に増加している、しかし、実施件数が増加すれば何で単純にライセンス収入が増えることになるのかについても私は理解できないのです。もし、グーグルが大変高額なお金を支払ったとすれば、アメリカは場合によったらライセンス収入全体のうちかなりの部分をグーグルの支払ったライセンス料が占めているために収入が多いのかもしれません。 第2期までの実態調査をされたということですが、もっと立ち入って調査する必要があると思います。たしか日本においても新しいバイオテクノロジーですとか、あるいは医療ですとか、そのようなテーマについてはかなり進んだ研究がなされていると思います。特にそのようなテーマについて注力して、知的財産をきちんと確立するなど、そのように結びつけて考えていくならば、私も全くそのとおり同意するのです。しかし十把一絡げにして、特許の件数は増えたけれども、ライセンス収入は50分の1だ等と、結論づけてしまうのはどうなのかということが全体を読んでいてすごく気になります。なかなか難しいかもしれませんけれども、ぜひそのあたりのご検討をよろしくお願いしたいと思います。 ○相澤会長 ありがとうございました。 ただいまのように全体の構成についてのご質問なり、ご意見なりでも結構でございますし、各論でも結構でございます。 どうぞ、妹尾委員。 ○妹尾委員 それでは、中身についてではなくて、構成についての意見を3点ほど言わせていただいてよろしいでしょうか。 一番目は、先ほど質問させていただいたように、ほかの委員の先生方もおっしゃいましたが、資料2と資料5の関係の整合性をぜひ工夫していただけたらありがたいなと。すなわち資料5に入っていて資料2に書いてあって、両方同じだよねというのと、資料2に書いてあるけれども、資料5を探してもどこにも出てこないみたいなのがあると、これはちょっと混乱するので、その辺の工夫をしていただきたい。この整合性についてお願いするのが1点目です。 それから2点目。先ほど先生方がおっしゃった、1期、2期からの継続するものについてどうするんだというお話に関してです。つまり施策の書き方についてです。私は「構想学原論」というのを大学院で教えていますので、構想の書き方のところでこういうふう工夫がありますよというご参考までの提案です。各施策に「新規」「継続」「強化」「加速」「発展」といったコンセプトタグを入れてはいかがでしょうか。そうすると、施策のところでこれは新規なんだねとか、これは前の施策の発展系なんだねとか、これは加速をしろということだったねという具合にわかります。このように、項目についてのコンセプトタグを入れるという手法がありますので、それを工夫されたら良いのではないかという、これはご提案です。 それから3番目です。この構成のところでの評価の項目が並んでいますよね。例えば、43ページでグローバルな知財戦略の強化とあって、下に評価指標がこれこれ、これこれ、これこれとあります。 お願いしたいのは、これらは全部定量的な評価だけないんですね。以前申し上げたとおり、定量的な評価は量がひとり歩きしかねない。いわば評価という手法が目的化するという危険性をはらむので、ぜひこれは定量のみならず、定性とのカップリングをしていただきたいというのが1つ。 それから、もう一つはこれを実践していれば当然施策の中で気づいたり、学んだり、考えたりすることが出てくるわけです。こういう評価もあり得たんだなと、途中で後づけでわかってくることがたくさんあるわけです。そうすると、一たんここで評価指標を決め込むと、その評価指標以外は入らないとか、あるいはこの評価指標はかえって逆効果になってしまうだとか、が起こりえます。つまり実践からの学習効果が入らなくなってしまう。ですので、ぜひこれをつくるときに、途中でまさにフィードバックがかかって評価指標自身も学習成果としてリニューアルされる、そういうような仕組みを書き込んでいただくと良いのではないかと思います。そうしないと、同じ指標で困ったねと言いながら、何年間もそれを使わざるを得ないということになってしまう。ぜひ評価指標自体が学習効果のフィードバックがかかるようにする。先ほど政策評価マネジメントと次長がおっしゃっていましたが、それが具体的にこういうところへ織り込まれると良いなという気がします。 余談を1点申しますと、何か文句を言っているようなばかりで恐縮ですが、逆にこれは大変すごいなと思ったのが1点ありましたので、それをご紹介します。僕が是非大学院の教科書でサンプルで使いたいなと思ったのが、先ほど3ページのところで内山次長が説明された構成です。これは見事ですね。すなわち、パラグラフごとに「背景と問題意識」「経緯」「構成」「レビュー総括と問題点の指摘」「課題の設定」「政策・施策への展開」となっています。このパラグラフごとの構成のされ方は、構想学的に見て教科書に書いたような素晴らしいものです。ぜひ大学院の授業で使わせてもらおうと思います。これは余談ですけれども、これはきれいだなと思って拝見していました。 内容のコメントはまた後ほどさせてください。 ○相澤会長 河内委員。 ○河内委員 少し本題と外れてしまうかもしれないんですが、私は今の日本の国際競争力を生みだす強い産業というのは、異なった産業の総合力というか連携によるところが大きいと思います。それは何を意味しているかといいますと、全く違った技術の融合による新しい独創的な製品が、例えば自動車や他の競争力のある製品が、今迄日本を引っ張ってきたのだと思います。そのことが、将来の日本の競争力として大きく強みを発揮する点だろうと。その点をこれからますます強化していく必要がある。知財ということを、異なった産業や異なった学問の融合・連携という切り口で見て情報であったり、権利化の戦略とか、そういうところが私は非常にポイントになってくるんじゃないかなというふうに思っています。少しそういったところをスタディーする必要があるんじゃないかなというふうに思います。 ○相澤会長 いかがでございましょうか。 どうぞ。 ○妹尾委員 それじゃ中身に関するコメントです。資料2の34ページ、これは田中委員に刃向かうつもりは全くないんですけれども、先ほどイノベーション促進が十分でないとの認識が高まるという文言についてです。その認識が高まっている人間なんで、高まっているのではありませんか、という感じがします。なので、イノベーション促進に権利化・保護はもちろん重要だということについては全然揺るいではいないのですが、権利化・保護だけで良いのですかという話があり、私は高まっているという認識です。これは意見の調整だと思うんです。 さて、重要なことは、34ページの1のイノベーション促進の2つ目の丸の中で書かれている「プロセスのイニシアティブをとることがより重要になっている」ということです。これには大賛成でありまして、日本の競争力ということを考えると、プロセスに参加していることに意義があるんではなくて、プロセスでイニシアティブがとれるかどうかが重要なので、ここの認識に私は大賛成です。 ただ、その次の丸のところ、一番下の行で「国際標準化の活動自体は活発化してきているが、欧米にはまだ及ばない状況である」という文言が気になります。ここの認識が、活発ということが欧米に及ばないのか、すなわち活発度が及ばないのか、あるいはそうではなくて、標準化を活用するという戦略がまだ及ばない状況にあるというのか。どちらの認識なのかを少しはっきりさせておいたほうが良いと思います。私自身の認識は、標準というものを競争力に活用する戦略的な組み込みがまだできていない。だから、標準で勝っても、標準とっても事業で負けちゃうという事態が多いのだ、というものです。だから、標準をとれば、イコールそれでオーケーという話ではなくて、標準をとって、とったやつをどう使うかが重要、あるいは使うように標準化をとることが重要。その意味では欧米というか、特に欧州が官民挙げて標準化を進め、 標準化を前提にして技術や特許の知財をうまく使うという戦略的施策が展開されているけれど、日本はまだそこまでになっていないよという、その認識だと思うんですね。いずれにせよ、ここをぱっと見ると活発度の話になっちゃって、戦略活用度の話として読みにくい。ですので、そこは書き込んでいただいたほうが良いではないかなという気がしました。 それから、今度は40ページです。例えばの例です。これは細かい話ということではなくて、例えばという話です。これの上の2つ目の丸で「不使用商標対策の検討」とあります。これは例えば企業倒産したときに商標をどうしようか、といったような話なんですが、これだけ見ると、そういう方策の話でとどまってしまっています。実はもっと重要なことは、商標だとか意匠、すなわち従来の産業財産権の中でも特許に比してちょっと重点が置かれていなかったものの重要性を再認識すべきではないかと、こういう話だと思うんです。すなわち、どういうことかというと、例えば意匠、デザインがどれだけイノベーションだとか、あるいはブランド強化につながるのか、そこのところが少し手薄になりかかっているのではないか。例えばデザインというものは片方で技術と結びついて特許と組み合わせたときに物すごく強いイノベーション力に通じるよね。あるいは技術保護につながるよね、といった話です。また、もう一方のほうで意匠、デザインが商標と結びつくとどれだけマーケティング用のブランド力強化につながるのか、そこの再検討をやるべきだよね、という話なんです。確かに欧米に比べて、マーケティング的な捉え方がまだ未開拓なんです、日本の場合は。それはなぜかというと、やはりマーケティングだとかブランド論といった経営関係の人間をここに引き込めていないからなんですね。残念ながら、経営学者、マーケティングでブランド論の先生方、商標だとか意匠ほとんど知らないですよ。それが大問題なんです。もうそこに手をつけても良いのではないですかという側にこの話が展開したらおもしろいなと思うわけですね。単に商標が使われていないねという話だけではなくて、やはり今後の展開の話にしていかないと。だから、制度的な問題としてここで書かれていることは確かに重要なのですが、そこをきっかけにブランド論だ何だかんだをどうにかしましょうよと言うことです。 さあ、そうすると、やはり経営系の人たちに知財戦略にもっと積極的に関与してもらおうよということが強く入るはずです。人材育成の立場からいいますと、例えば資料5のページ25の人材育成のところの@の2つ目の丸「知財マネジメント人材の充実」の中に、経営系・社会系の人材に知財教育をもっともっと広めようよ、ということがもっと重点的に入ってきても良いのではないかと思うわけです。それと先ほどの41ページの右側にあります、イノベーション創出に資する知財人材の三位一体化人材、すなわちプロフェッショナルな三位一体人材の育成の教育がガッと進んで、その一方で、裾野における経営系の人材への知財の普及がガッとある。その両輪ではないかと思うんですね。というのは、我々は、先ほどからの先生方の議論にあるとおり、プロイノベーションをもう主軸に置こうよと言っているわけですから。これは経営関係者との連携抜きに絶対語れない話なんです。あるいは事業戦略だとか、マーケティングの先生方と連携せざるを得ない話なんです。そうだとしたら、ここのところはもっとハイライトされても良いのではないかと、こういうふうに思うわけであります。 内容的には人材育成との絡みで、そこのところを強調させていただければと思いました。 ○相澤会長 ありがとうございました。 ○妹尾委員 では反論を。 ○相澤会長 田中委員。 ○田中委員 先ほど私が言いたかったことは、イノベーションとは何ぞやということもあるのですが、知的財産の権利保護のみに注力してもイノベーション促進には十分でないなどということは、当たり前のことでしょうということです。当たり前のことをいって、それで認識が高まってきたというと、何かおかしいのではないですかという意味合いで言っただけなのです。それから、イノベーションという言葉は新しい産業の種を探すことをさしているのか、それともその種が出てきて、それを育てるところまで含めたプロセスのことをさしているのか、そこのところをきちんと定義しておかないと、イノベーションという言葉を使った議論がどんどん発散していってしまうという感じがすごくするのです。 極めて卑近な例でいいますと、今までキヤノンは銀塩フィルムのカメラをつくっていたわけですけれども、デジタル化の時代になって、あるいはインクジェットという新しい技術が登場してきて、まさに技術のパラダイムシフトが起こったのです。銀塩フィルムの世界はほとんどなくなって、産業構造自体も変わって、今まで銀塩フィルムのカメラの開発をしていた人たちがどんどん電機メーカーの人たちに変わってきたと思います。これから何が起こるかわからないような事態になってきています。自動車産業も最初はアメリカから発生して流れてきて、日本は生産基地として機能してきたわけです。しかし今度、電気自動車になったときには、今まで自動車に採用されてきた内燃機関は何の意味もなくなってしまいます。内燃機関は大変なノウハウと知的財産の塊であったわけですけれども、それが電気自動車の時代になると全く意味をなさなくなってしまいます。そうすると、今度は、全く新しい産業構造等が起こるのだろうと思います。つまり、今までの自動車に採用されてきた技術のうち電気自動車でも活用できるのは、足回り等だけで、あとは電気の技術が必要になってきます。 ですから、そのようなパラダイムシフトが起こるようなところをイノベーションと定義するのか、そのあたりをきちんと決めておかないといけないと思います。知的財産というものは、研究者であればだれでも関係しているのです。だから、知的財産権の話をしているのか、それとも、知的財産そのもの、つまりパラダイムシフトを起こすのも人間の知恵ですから、そのようなことまで議論しているのか、明確にしておいていただかないと、適切なコメントもできなくなると思います。ぜひそのところをよろしくご検討お願いします。 ○相澤会長 では、中村委員。 ○中村委員 先ほど妹尾委員からご指摘いただきました商標の部分、全くそのとおりと意を強くしております。知的財産権の話をしていても、特許がどうしても中心になることが多いわけでありますが、やはり今日も議論されていた創出を活用にいかにつなぐか、そこに出てくる事業戦略の中で、顧客の皆様に端的に訴求をしていく上での重要なファクターとして、実際に顧客の目に触れるものが商標であったり、製品デザインとしての意匠権という形になります。マーケティングであったり、顧客への訴求という意味において、知的財産権に守られた製品の仕上げの部分を担っているのが商標であり、意匠であるというふうに私は考えております。さらに、意匠の場合は、部分意匠も含めて、特許と補完的に使うという非常に多面的な使い方が重要視されている中で、お客様に見える商標の部分と中の技術を守る特許、ちょうど中間的な位置で両方の要素を含んでいるという意味で、さらにもっと意匠の重要性が見直しされてもいいのではないかなというふうに思います。そういう意味で、今後、これから生まれてくる発明がいかに事業を含めた活用に有機的につながるかという中での商標、意匠を含めた活用というのを一つの柱といいますか、視点として入れていただければありがたいと思います。 ○相澤会長 今のご指摘は、4本柱にも明示的にということをおっしゃったのか、あるいはどこかのセクションに明確な位置づけをと。 ○中村委員 そうですね。4本の柱を5本にということよりむしろ、戦略の部分の中に商標、意匠も含めたと視点、ここではちょうどイノベーション促進のところに不使用商標対策だけが言及されていますが、そこを先ほど妹尾委員がおっしゃっていただいたように、もう少し切り口として広い形で挙げていただければ妥当と考えます。 ○相澤会長 ありがとうございました。 それでは、妹尾委員。 ○妹尾委員 中村委員のおっしゃったのは本当ですね。有機的にぜひ入れて、柱とはいえなくとも、ぜひ小柱にしていただければと思います。 先ほどの田中委員がおっしゃったことに僕も大賛成です。要するに銀塩のフィルムからインクジェット構造へとか、内燃機関から電気自動車へと、パラダイムシフトが起こっている。2016年に秋葉原で全部組み立ての電気自動車が売られるようになるというホラを吹いている人間としては、大賛成です。ただし、そのパラダイムシフトのどこまでをイノベーションと呼ぶのか、ということがある。競争力強化という観点から立てば、やはり「インベンション(発明あるいは知の創出)」の部分だけではなくて、「ディフュージョン(普及と定着、あるいは知の活用)」、すなわち普及のところまで入れるべきだろうというふうに思います。なぜならば、現在のプロイノベーションの時代では、イノベーションプロセスを例えばインテルにしてもどこにしても、全部ディフュージョンを前提、すなわち普及を前提にしておいて戦略を事前に組むという形をとっているわけです。つまり、だれがイニシアティブをとって、だれが普及担当なのかを事前にデザインしている。普及担当は大抵の場合、現在はNIESやBRICsです。すなわち、欧米がイニシアティブをとりながらBRICsやNIESを通じて世界へ普及をしている。それで市場を拡大しておいて、一方、収益は自分たちのところに流れる戦略を組み立てているということなのです。つまりこれらのプロセス全体を競争力というふうにとるべきだと考えれば、今田中委員がご指摘のところは、インベンションのみならず、最後の普及のところですね、ロジャースのいうディフュージョンのところまで全部含めて考えたほうが良いだろうと思います。 ただし、全般に知財関係者の理解はみんなインベンション段階です。特にオープンイノベーションというと何となくインベンションのリソーシングの側面だけに特化して話がされています。ぜひ全体を見渡したところにポジションを置いていただいたほうが良いと思います。 ○相澤会長 中山委員。 ○中山委員 意匠が大事であるという点は、恐らく知的財産の専門家は皆さんそういうことを言っているわけです。成熟した産業社会においては。一部のブレークスルーの技術は別として、製品の性能はそんな違わないので、デザインこそ大事であるということが言われておりまして、私も講義ではそう言っているんですけれども、現実の意匠出願を見ますと、どんどん減っています。このままいくと意匠制度は死に体になるのではないかというぐらいの状況なんです。したがって、まず最初になぜ今の意匠がこんなに減ってきてしまったのかという分析が必要でして、その分析をした上で、審査に問題があるのか、裁判に問題があるのか、あるいは他に問題があるのか、とうい検討をへて、制度としては審査主義を維持するのか、無審査主義にするのか、あるいはその双方をミックスさせたダブルトラックにするのか等々の制度論が出てくると思います。まず、なぜ減ったのかという、そこの分析を十分していただきたいと思います。そうしないと、いかに立派なことを言っても、よい結論にはならないと思います。 ○相澤会長 田中委員。 ○田中委員 意匠権については、私も全くそのように思います。実際、意匠権を権利として獲得しても、相手の製品がほとんどデッドコピーでなければ権利行使できないという状況なのです。だったら何のために意匠権なんか出願するのかと、社内で私はそのような立場で部下に言うのですけれども、実際、ほとんど意匠権は活用できません。では、意匠権そのものって何なのだろうと。極論を言えば、デザイン部門の人間へのイニシアティブなのかとも思います。部分意匠というものも考え出されたのですが、本当に機能しているかというと、それもやはり機能していないのではないでしょうか。だから、もう一度、意匠権とは何ぞやということをきちんと見直す必要があるのではないかと思います。大事であるということを特に否定しているわけではなくて、きちんと見直したほうがいいのではないかということです。 もう一つ、商標についてです。日本は、非常に律儀なのかどうかよくわかりませんけれども、何でもかんでも商標権として出願するという傾向があると思います。実は非常に記述的な商標権はたくさんあります。キヤノン所有の商標権でも、何でわざわざ出願して権利を取得するのかと社内で文句を言っているようなものもありますし、他社所有の商標権でも記述的なものがあります。最近でも、これは商標権なのか、と思うようなものが出願されているのです。ですから、今企業でどういうことが起こっているかといいますと、「そのようなものまで登録になるのだから、自分たちも出願しておかないと、後で困るかも知れない」と思って、みんなが疑心暗鬼になっていろいろなものまで出願しているのです。したがって、商標調査活動も大変な負荷がかかるようになってきているのです。ですから、そのようなことをきちんと見直していただいて、商標というものをきちんとした権利として皆さんがうまく使えるような形で考えていくほうがいいと、私も思います。 ○相澤会長 中村委員、何か今までのことに対して、ご意見が。 ○中村委員 ご指摘のとおりでありまして、結局、これは出願人側も、ある意匠権をとってみたときに、どこまでの範囲で保護できるのかということに対して不透明であるということから、結局、実施品の意匠を出そうということで、みずから権利範囲を狭めてしまっているというデススパイラルに陥っているようなところがあるのではないかというふうに思います。 実際、部分意匠も、じゃあ、実際にそれがどれだけ活用行使されたかという事例もなかなか少ないという中で、鶏と卵のところがちょっとあるのかなというふうに思います。そういう意味では、既にご指摘ございましたように、やはり意匠権に対する権利範囲の考え方とか、そういうことに応じて出願人側もみずから首を絞め合うような出願ラッシュをしないというようなところも含めて、やはりあり方をもう少し整理をする必要があると思います。 それから、只今田中委員のほうからご指摘のありました商標についてですが、これも本当に識別性があるのかどうかというものがどんどん出てきていて、これが権利になるんだったら、これも出しておこうという傾向は否めないと思います。同じようなラッシュになっているのかなというところは否めない。もっと本当に保護されるべきものがきちんと保護されると。結果的にそれが不使用商標が減っていくことになるのではないかというふうに感じます。 ○相澤会長 田中委員。 ○田中委員 もう一つだけ補足的に言っておきます。アメリカの商標制度が必ずしもいいというように私は思っていないのですけれども、例としてお話しすれば、アメリカでは商標は使用していなければ登録になりません。そのようなアメリカの制度もよく検討した上で、皆さんが使い勝手のいい制度をきちんとつくっていくべきだと思っております。 ○相澤会長 佐藤委員。 ○佐藤委員 今のご議論のほうについて、代理人の立場から見てちょっと申し上げます。 まず、意匠に関しては、権利が狭い。それは非常に似たデザインしかしないから狭いんですよ。この間、コンテンツブランドの専門調査会で出たんですね。家電の方もいるので、ちょっと言いにくいんですけれども、そこで日本の白物ってデザイン何もなっていないねという、売れるデザインになっていないということを芸大の先生がおっしゃっていました。 そういう意味で、権利が狭いかどうかではなくて、やはり斬新なデザインにチャレンジするというものがやはり足りないのではないかというふうに思います。確かに、新しいデザインで商品を市場に出すというのは、非常に勇気がいることで、なかなか難しいというのは、重々わかった上ですけれども、そういう意味で、権利が狭い、広いよりも、やはりデザインをどうビジネスにつなぐかというところのアプローチが、やっぱり知財という面では大きな問題であろうというふうに思います。 それから、ブランディングに関してでもそうなんですが、これもやはりブランド戦略というのがあるようでないというのが日本じゃないかというふうに見えます。確かに、一部の企業は、もう3年、5年先の商品企画があって、それに見合うようなブランディング戦略を立てている企業も当然あります。だけど、圧倒的には、商品規格ができて、製品が出る直前になって、名前どうするのといって名前を考えるというような形で、ブランド戦略の中の商標というような位置づけをされている企業は、やはりごく一部にとどまっているんじゃないかというのが、代理人サイドからは感じます。 そういう意味では、やはり知財の中で意匠、デザイン、それからブランドというのは、非常に大きな資産であり、また市場化のためには大きな力を持つものだと思うので、そういうものについて、もっと企業側が検討され、さらにそれを戦略化できるということがこれから、これは言うまでもないことなんですが、現実にはなかなか進んでいないという意味で、もう一度考える必要があるんじゃないかというふうに思います。 ○相澤会長 辻村委員。 ○辻村委員 今の意匠、商標の話の中で、家電とかでは、機能というものがある程度明確といいますか、そこで差がつくものが多いので、デザインであるとか、ネーミングであるとかというところに関しての差別性という点ではそれほど大きくはないのでしょうけれども、飲料などの分野では、デザイン、ネーミングのところの差別性というのが極めて重要でありまして、中味、ネーミング、デザインすべてひっくるめてのブランド力が大きく効いてきます。 そういう意味では、意匠権ということに関しては、非常に重要視をしています。先ほども田中委員のほうからありましたが、訴訟をしてもデッドコピーに近いものしか排除できないということが現実であります。訴訟をやるとなると、多大なる労力がかかって、判決にも時間がかかる。商品のライフサイクルが比較的短いために判決が出る頃には、ほぼ勝負は終わってしまっているということが多い。かなり利益を侵害されている。また損害賠償といってもなかなかとれないというところがあって、もうやめようかという話にもなりかねない。いわゆるローテクといいますか、あまり機能ということで売っていない嗜好品のようなジャンルにおいては、意匠とか商標というのは、極めて重要なポイントではあると思います。 あと、不使用商標というのも非常に多いわけでございまして、商品の名前を考えたら、ほとんどどこかが持っている商標であることが多い。商標というのは物凄い数が登録されている。しかも、不使用の商標が多いということは事実だと思います。我々も今棚卸しをしておりますが、非常に多くの商標を保有しています。使っていないものが結構な数あるということも事実でございます。したがって、その辺をアメリカの制度が本当に全部いいかどうかというのはわかりませんが、少し見直しをかけることも必要ではないかなと思います。 ○相澤会長 どうぞ。 ○佐藤委員 中小企業さんのお話ですが、これも日本ブランドコンテンツのほうの専門調査会で申し上げたんですが、この金融不況の中で、今までせっかく知財に目覚めて、中小企業が頑張ってきたのが、この状況では、とても特許出願なんて出せる余裕は全くなくなってしまうんじゃないかと心配しています。それこそ人員整理もしなきゃならないというところで、特許出願か、という話になってしまうということだというふうに思います。そういう意味で、せっかく今までやってきたものが、この金融不況の中で頓挫するようなことがあると、やはり日本の産業を支えている中小企業が非常に弱くなってしまうというふうにつくづく思うんですね。 そういう意味では、中小企業さんの今までやってきた開発が続けられるような支援、さらにそれが権利化するための支援、これをやはりことしは本気になって政府に考えていただきたいというふうに思います。 それとの関連で、今回、資料2の46ページに中小企業の特許手数料減免の見直しというお話があって、これはぜひやっていただきたい。資料5のほうの22ページにいきますと、ここで新しい減免申請手続の簡便化の検討というお話が出ていて、ここで新しい話が出てきているのは、今までの手続は非常に手数がかかって、なかなか利用されない。それなら、事前ではなく、事後的に違反が明らかになったときにペナルティーを課すような形で、使い勝手がよくなるような制度も考えようじゃないかというご提案がされているのは、大変私は結構だというふうに思います。 日本でアメリカ流の事後規制の形の手続というのは、日本ではなかなかなじまないために今まで使われてきてなかったんだと思うんですが、かえって、手続が複雑なために、我々に頼んで、弁理士に頼んでこようと。そうすると、弁理士が手数料をもらわないでやらないわけにいかないと、手数料いただくと、減免になったのがなくなってしまうというような、そういう制度では、制度として動いていないということに近いんじゃないかと思います。確かに、我々を使わなくても、指導して使えるようにいろいろ工夫はされているようですけれども、それでも実際にはなかなか使われていないというのが現状なので、こういう事後的な対応を考えたような仕組みもぜひ考えていただいたらありがたいなというふうに思います。 それから、もっと簡単に言えば、アメリカのようなスモールエンティティのように、一定の基準を満たしたら、すべて同じく減額するという形にするというのは、私は弁理士の側から政府のほうにお願いしているので、この機会にぜひ一度ご検討いただきたいと思います。 ○相澤会長 前田委員。 ○前田委員 人材育成という言葉がいろいろなところに入ってはきているのですけれども、何か柱に謳えないのかなというのを感じています。大学の発明が大事だというのは、みんなの認識するところなのに、私ぐらいの年代で大学の知財戦略とかにかかわっている人はいないんですよね。全然増えないんです。私、ここ10年ぐらい大学のところかかわっているんですけれども、ほとんどいないのが現状なんです。やっぱり60歳を超えて、企業で知財部にいらした方が大学のところをお手伝いするというのがずっと続いているんですけれども、本当に大学の新しい発明をどういうふうにして戦略的に大きくしようかと思ったら、もっと、新進気鋭のというか、やっぱり企業で一番油乗っているのは40代とかなんですけれども、その辺の年代が入ってきていただかないと困ると思います。やはり、雇用が安定していなくて、年度更新で、お給料安くて、優秀な人が企業から来てくれるわけがないという状況なんですけれども、何かやっぱり人材というものをもうちょっと前面に出してもらわないとまずい状況だと感じます。大学の知財戦略とかをきちんと持ち、戦略的にどこと組めば良いか、どういうふうなスタイルで産学連携を組んだらいいかと考えるときだと思います。 ○相澤会長 前回、人材のことに関して、中山委員から明快なお答えがございました。人材のことは、どこでも取り上げてはいるんですが、結局何を施策として展開するべきなのかという、本質をつかんだ展開がどうもできていない。もし今おっしゃったことをここの中に明快な形で位置づけるならば、どういうふうにしたらよろしいかということも、今即でなくて結構でございますから、お考えいただければ。 ○前田委員 一つの案は、大学は教員と事務職しかいないんですけれども、やっぱりそういうプロデュースするとか、知財戦略を学者と一緒に考えるようなポジションを置くみたいなことができればいいのかなというふうに思っています。雇用の安定化がいい人を呼んでくるのにつながりますので、その辺を思いっ切りうたえちゃったらいいのかなって、その辺は文部科学省さんもいらっしゃるので、どういう事情でどういうふうにしているのか、私、なかなか発言難しいんですけれども、雇用の安定化とセットなのかなというふうに思っていますけれども。 ○相澤会長 それは施策という意味では、ちょっと位置づけが難しいかと思いますので、ぜひもう少しお考えいただいて。 どうぞ。 ○妹尾委員 施策についてではありませんが、参考までに申し上げますと、大学において教員と職員の二分化がはっきりしているのが日本でありまして、欧米の場合は、その間にアドミニストレーターという専門職が必ず制度的にあります。大学行政管理学会というのが日本にもありまして、私は教員としてその学会メンバーになった最初の第1号なんですが、今、職員側がアドミニストレーターとして育成されなきゃいけないと危機意識をもっておられるというのが一方であります。その問題は、多分制度的に文部科学省にとっても今後すごく重要な観点だろうなと思います。ただ、今回の政策に入るかどうかは別問題ですけれども。 今の人材育成のお話の関連として、例えばの例が、資料5の23ページなんかにありますこれは、佐藤先生がおっしゃったのと関連してくる中小企業についてです。23ページの@、A、B番目なんかそうですね。「法律、技術、金融、販売等の専門家を中小企業に派遣することにより、中小企業の知財戦略を取り入れた経営の定着を支援する」。ええっ、法律、技術、金融、販売の専門家を派遣したら、知財戦略の経営支援ができるの、と素朴な疑問が出てきます。こういう施策がここ数年多いんですよね。何かチーム組んで行って知財戦略というんだけれども、それが生兵法でとんでもないことにならないと良いのですが。 知財の専門家ではなくて、知財戦略の専門家を派遣することが筋なんですが、なぜ法律、技術、金融、販売の人たちが個々に、あるいは組み合わせで行ったら知財戦略を取り入れた経営ができるんでしょうか。私の今までの知財人材育成の経験から言うとあり得ない。だけど、こういうふうになってしまうんですね、施策を何かやらなければいけないと。 だとすると、そうではなくて、経営の定着を支援する前にかかる支援人材の育成を徹底的に図らなきゃいけない。すなわち、法律、技術、金融、販売の専門家の方々、例えば中小企業診断士だとか、弁理士さんだとか、そういう人たちに、経営における知財戦略はどういうことかと徹底的な訓練をして、それで実際の経験を踏んでもらうということが、僕は施策の正しい筋道ではないかなと思います。 だから、ちょっと読み過ごして、何となくわかったつもりになりかねないのですが、人材育成の観点からよく読むと、とんでもない話が人材育成には必ずつきまとうのです。これはこの施策を責めるために言っているのではなくて、先ほどのご議論から言うと、そういうふうになりかねないという、相澤先生のおっしゃっている問題意識と私は同じかなという気がします。そこで例として挙げさせていただきました。 ○相澤会長 渡部委員。 ○渡部委員 別に妹尾先生に反対するわけではないのですけれども、人材育成とか人個人の問題だけで解決しようというのは、バランスを欠いていると思います。人材育成が必要なのは、私も大学にいるので分かりますが、それは短期に効果が出る施策ではないので、いろいろな問題があるときに、組織的に解決するべきことは組織的に解決しないといけない。その組織の中に人材がなければ、組織の外の知識を活用するということも考えないといけない。その辺のバランスはぜひ考えていただきたい。全部人材育成になってしまうと、それは実現に時間がかかります。 35 それから、資料2のほうですが、この資料は英訳されるんですかね、まずは。英訳されなくてよいのであれば、そんなに気にしなくてもいいのかもしれないのですが、英訳されないですかね。 ○相澤会長 その点は今後の問題なんですが、今お気づきの点が。 ○渡部委員 わかりました。何を気にしたかというと、グローバルな知財戦略の強化みたいなところというのは、これはすごく大事なところだと思うのですが、いわゆる外交領域の話、少なくともそこのシステムというのは互恵的なものでなくてはならないのですが、そのようなシステムをいかにして実現させていくかという話と、海外の知財情報を国内に提供するという、かなりレベルが違うことが書いてあって、これはもう一つのこちらの資料5のほうで見ますと、比較的外交というか、アジア地域に対する支援とか、そういうような項目もあって、こういうものも加えてまとめて見ると格好がつくと思うんですけれども、資料2だと随分違うものが入って、このまま海外なんかにメッセージとしては、何かちょっと中途半端だなということをちょっとに気にしました。その辺をちょっとご検討いただければと思います。それだけです。 ○相澤会長 佐藤委員。 ○佐藤委員 今のと関連なんですが、2期までには、国際知財戦略という意味には、グローバルな地域、アジアなりですね、アジアに対する知財戦略というような柱があったと思うんですね。今回のこれを見ますと、そういう戦略的なものが隠れてしまっている。ここのところでは、アジア人材の支援とかいう形で出ているんですけれども、日本がこれからアジア、世界の中でどういう立ち位置で各国とかかわっていくのかということを、もっとやはり整理していくべきだというふうに思います。これから、アジアにおいては、中国抜きに知財戦略は語れないと言っていいと思います。彼らは、2045年にはアメリカを抜くぞというぐらいの覚悟でやっているわけですので、そういうところの中で、いわゆるマルチのSPLTレベルの議論と、それからバイのEPA、FTA等のところでいろいろな形の知財地域に対する取り組み方というのは、今進められているわけですが、その中で日本はどういう方向を向いてやっているのかというのが、はっきり言って見えていないというふうに思います。 そういう意味では、この辺きちんと整理されて、日本としてはどういうことを目指して、そういう形の施策を実行していくかということも、今度の世界戦略、またアジア戦略の中で大きな役割を示すんじゃないかと思いますので、ぜひその点のご検討をいただきたいというふうに思います。 ○相澤会長 大変有益なご意見を賜りまして、まことにありがとうございました。これらのすべてについて事務局が次の会までに対応できるかどうかは、ひとえに事務局の努力にかかっております。しかしながら大変本質的なところを指摘していただいたので、事務局としても整理しやすいのではないかというふうにも思われます。できる得る限り修正版をつくりまして、次回、改めてご検討いただければと思います。 それでは、次回の予定について事務局次長からどうぞ。 ○内山事務局次長 次回の会合でございますけれども、3月3日火曜日でございます。午前10時から、場所は当事務局当会議室ということで、議題といたしましては、報告書(案)の最終的な取りまとめということでございます。よろしくお願いいたします。 ○相澤会長 これをもちまして、本日の会合を終了させていただきます。 どうもありがとうございました。 |