第10回 知的財産による競争力強化専門調査会 |
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○相澤会長 若干、定刻前でございますが、委員の皆様はこれで全部おそろいですので、始めさせていただきたいと思います。 今年度、第5回になりますが、知的財産による競争力強化専門調査会をこれから開催させていただきます。 大変お忙しい中をご参集いただきまして、まことにありがとうございます。 本日は岡内委員、加藤委員、河内委員、長岡委員、前田委員、渡部委員はご欠席との連絡をいただいております。 それでは、議論に先立ちまして、事務局から配付資料についての説明をお願いいたします。 ○内山事務局次長 それでは、配付資料、議事次第の紙を見ていただきますと、資料1から資料8でございます。 本日の議題の(1)の関連、人材の育成と国民意識の向上についての資料が1から3でございまして、これは昨年12月19日の前回の配付資料と同じものを準備しております。 それから、議題の2でございますけれども、それに関連する資料が資料4から8でございます。資料4が本日の討議用資料でございます。資料5は先般実施をいたしましたパブリックコメントの結果についての資料でございます。 それから、資料6、資料7、資料8は岡内委員、辻村委員、渡部委員からご提出いただいている資料でございます。 以上でございます。 ○相澤会長 よろしいでしょうか。 本日まず政策レビューの第3期基本計画の在り方について、ご議論いただきますが、前回人材の育成と国民意識の向上という部分について十分にご意見をいただく時間がございませんでした。そこで、まず人材の育成と国民意識の向上についてご議論いただき、それからさらに第3期の基本方針の在り方についてという形で進めたいと思います。 昨年になるわけですが、前回の議論を思い出していただきながら、言い残されたこととか、新たにご意見がございましたならば、これからご発言をいただきたいと思います。 挙手していただきまして、ご発言をいただければと思います。 いかがでございましょうか。 それでは、妹尾委員、何か皮切りでご発言いただければと思いますが。 ○妹尾委員 前回人材育成のところで私がペーパーを出させていただきました。趣旨は何かというと、従来の知財マネジメントだけに特化した人材育成では、イノベーション、競争力強化ということには必ずしも資することができにくい状況になってきたということです。プロパテントの時代からプロイノベーションになったとたんに、知財を押さえる、標準化を押さえるだけでは実はビジネス上は全く勝てない状況になってきた。すなわちビジネスモデルという事業戦略、それから知財マネジメントという知財戦略、それから急所を押さえたテクノロジーをきちっと開発するという研究開発戦略、すなわち三位一体戦略の中身がいよいよ見えてきた、ということです。だから、それらの三者に精通した人材を育成しないといけないでしょう。少なくともある人材は両側のウイングについて知見がないといけないですよ、ということを申し上げたと思います。 ということなので、政策目標の中に知財から研究開発側に手を伸ばす人材、あるいは活用の側から知財に手を伸ばす人材を育成しましょうということが明記されている点、私は大賛成なんですが、あわせてイノベーションを三位一体として推進できる人材もかなり啓発するように特筆しても良いのではないかと思います。 その意味では、人材育成の在り方自体も個々の活用の人材だけで良いのか、研究開発の人材だけ、あるいは知財の人材だけといったことではなくて、三者が一体になったような人材活用のモデル事業みたいなものを展開してはいかがかなと思います。 そういう意味では、三者全体で競争力が行き渡るようにする。1人がスーパースター、イチローみたいなのがいればそれはできるでしょうけれども、そうはいかないので、チームで勝てるような人材育成のモデルをつくって、それを啓発、普及していけたら、政策上は良いのではないか、あるいはそれを支援したら良いのではないかと思います。これが第1点です。 第2点ですが、改めて前回の議論を踏まえてみますと、もう一つ大きいのはグローバル化ということだったと思います。やはりグローバル化の現場で聞くのは何かというと、英語ができないということなんですね。これは悲しい話で、みんな分かってはいるけど、余り触れたくない話のようです。ですが、もう知財人材に関して英語をマストにするような何か方策がとられないといけないのではないでしょうか。 大ひんしゅくを買うことを承知で言えば、例えば特許庁の職員の方々、あるいは弁理士の方々、弁護士の方々、知財に関わる人は英語のミニマムリクワイアメントができないといけない、というようなことがそろそろ動きとしてあり得るのではないかなと思います。もちろん英語だけではなくて、中国語にせよいろいろな語学が必要ですが、国内の日本語だけでやっている時代では恐らくないだろうなと。人材育成は少しそういう先行きを見たほうがいいのかなという気がします。これが第2点です。 第3点ですが、これらの知財に関わる方の知的基盤能力をどう開発するかという大きな課題です。私のように現場で知財関係の方々と接していると、どうしても知的基盤能力が弱いということを痛感いたします。具体的に言いますと、例えば、概念を操作することができないんですね。コンセプトワークと我々の専門では言いますけれども、技術コンセプトをきちっと把握するとか、あるいはイノベーションにおけるビジネスモデルのコンセプトと連動させるとかというところの能力の開発がやはり日本の教育の中では非常に遅れています。 そういうコンセプトワークをやれば、今度は発明、発見みたいなものにもつながってくるんです。ついつい我々は理系を頑張れとか言うんですけれども、理系を頑張れって、具体的にはどういうことといったら、実は概念操作がきちっとできるということなんですね。数字的なものが扱えるということではないのです。そういうベーシックなところを横断的に文部科学省も経済産業省も農林水産省も含めて政策的な支援をしていただけたら良いのではないかという気がします。 以上3点、会長ご指名なので、とっさに話をさせていただきました。ありがとうございます。 ○相澤会長 ありがとうございました。 そのほかのご意見いかがでございましょうか。 佐藤委員。 ○佐藤委員 妹尾先生のご意見、私は大賛成なんですが、これは今度は妹尾先生のほうへのご要望ですけれども、先ほどのようなイノベーションに関わる知財人材をつくっていくということになったときに、現実にいろいろ調べてみても、そういうものが体系化された形で情報としてできていない。したがって、それを学ぼうとしても、また教えるほうとしても、そういう教材がない。これが今一番不足しているところではないかなと思うんですね。 各実業界の方たちが実際現場を踏まえて、いろいろな講演をされたり、いろいろな大学で授業をやられたりしているんですが、まだまだ体系的に整理されたものになっていない。そのために、なかなか全体を見渡した形で理解し、それを実践していくというもののまだ資料が足りなさ過ぎるのではないかなというふうに思いますので、この辺を実業界、それから学会含めて協力しながら整理して、スタンダード的なものをきちんと見えるようなものをつくっていったらいいのではないかなというふうに思います。 ○相澤会長 ありがとうございました。 どうぞ。 ○妹尾委員 今おっしゃられたことは、我々への課題でもあるわけなので、叱咤激励として受けとめさせていただきます。これについては、恐らく2つあるだろうと思います。 往々にして最近の霞ヶ関の人材育成の議論はすべて教科書をつくるとなってしまいます。ところが、教科書をつくるというのは「確かめられ、体系立てられた知識を順序立てて、知識がある人からない人へ教える」という「知識伝授型」という19世紀型の教育モデルに沿ったものなのです。ところが、この知財やイノベーションの分野は新しい分野ですから、まだ体系化されてない。そもそも体系化されていないものを先端と呼ぶのですが、そういった先端領域についてどうすれば良いかというと、共通言語と共通の概念を整理したものを教科書として、それ以上にどうすれば良いかを考えるのにはワークブックだとかケースを使います。そういう意味で、安易に教科書づくりに走らずに、教科書とともにそういう事例等を考察できるものを出していくことが重要だと考えます。 ところが、その事例をなかなか企業の方は出してくださらない。特に失敗事例はほとんど出していただけない。しかし、日本全体のためなので、企業の方にも失敗をぜひ出してくださいねとお願いをここでしておきたいし、また佐藤先生にも弁理士さんとして失敗事例をぜひ出していただければと思います。 ○相澤会長 どうぞ、田中委員。 ○田中委員 今、妹尾先生がおっしゃった国際的に活躍できるような人材というのは、ある意味では非常に高度な要求だと思います。我々企業の中で例えば契約締結業務一つ行うにしても、国際税務の知識がなければ契約一つ行うことができません。そして、例えばアメリカの輸出管理法などもきちんと知っておかないと、産学連携の基本契約締結業務もできません。その成果物をどのようにハンドリングするか、知財部門の人間がそのようなことも知識として当然知っていなければ、ハンドリングできないと思います。 そのようなことを知識として本当に教えることができるのかなと私は時々考えさせられます。最終的には、そのような基礎知識がある上で、さらにOJTですとか、あるいはローテーションですとか、そのようなことをきちんとやっていかないと、使い物になる契約文書を作成できる人材が育たないと思います。もちろん教科書に書いてあるような、契約文書のあり方については、基礎知識として必要だと思います。しかし、ほとんどのケースは、契約は相手のあることですからいわば応用問題であり、そのような業務を遂行するためには、OJTなりローテーションなりをきちんとしていかなくてはいけません。 もちろん会社の中では我々も行っているのですが、組織の枠を超えてそのようなことが本当にできるのか疑問に思います。この資料の人材育成の箇所にもローテーションですとか、OJTということはたくさん書いてあるのですが、具体的にどのようにすればそれができるか。おそらく総論賛成ではあるが、実際にどうすればいいのかというところで話が煮詰まって先へ進まないのではないかと思います。 ですから、そこを具体的にどうしていくのかということを、もう少し真剣にみんなで議論していかないといけないと思います。例えば守秘義務を結んでお互いに行き来できるように、もうちょっとフレキシブルにしていくなど、おそらくそこまで議論をきちんとしていく必要があると思います。組織対組織になると、総論としてはお互い賛成するけれども、どのようにするのかというところでみんな戸惑って、それ以上話が進んでいかないという状況になると思います。もしそのことについて話すのであれば、具体的にどうするかという議論まできちんとどこかでしていかないと、いつも単なる議論で終わると思います。 ○相澤会長 いかがでございましょうか。 ○田中委員 もう一つあります。私どもの社員で1人、アメリカのロースクールに留学させました。ロースクールと言っても2種類あるようです。私どもの社員が留学したのは、知的財産専門のロースクールで、非常に実践的なケースを通した教育をずっと行うところのようです。いわゆる知識を与えるというような教育ではなさそうなのです。つまり実務がすぐにできるようにするためにいろいろなケースを勉強をさせるようです。なおかつ例えば知的財産であれば裁判所に訴訟状をどのように出すのか、その文書を全部つくらせるなど、そのようなことまでするようです。 極論を言えば、日本でいうと、端的な表現を使えば職業訓練校みたいな感じなのです。ロースクールには、もちろん法的な知識のためのロースクールもあるでしょうし、そのような職業訓練校的なところもあるようで、そのようなところであればかなり実務的な、具体的な知識、能力が高まるのではないかと思います。ところが、日本はロースクールをつくりますと大体司法試験に受かるための学校になってしまいます。法律の知識をただ詰め込むだけの勉強になってしまうような傾向があるのではないかという感じがします。 それから、専門職大学院のようなものもありますけれども、本当にすぐに卒業生が使えるような職業訓練校的な実務を教育しているのかというと、もしかすると違うのではないかと、知識だけを与えるような学校になってしまっているのではないのかという感じがします。ですから、そのあたりのこともおそらく見直していく必要があるだろうと思います。それについては妹尾先生たちが一生懸命考えておられるのではないかと思います。よろしくお願いします。 ○相澤会長 結局は次々と。 ○妹尾委員 すみません、ロースクールの養成については、中山先生にお答えいただかないと、僕はビジネススクールのほうなので。 ○相澤会長 どうぞ。 ○妹尾委員 今の解説をしますと、ビジネススクール、マネジメントスクールというものは基本的には2つあるんですね。 1つはアカデミックスクールという研究者育成の大学院、もう一つはプロフェッショナルスクールといって高度実務家養成の大学院。で、職業訓練というのはボケーショナルスクールと呼び、プロフェッショナルトレーニングとは別です。学部レベルでやるのはボケーショナルトレーニングですけれども、大学院レベルでやるのはプロフェッショナルトレーニングです。ただし、プロフェッショナルトレーニングで知識を教えることを主体にするのは日本ぐらいしか残ってないでしょう。 ほとんどがプロフェッショナルとしての高度な実務の訓練ですね。実務を遂行するときに知識が必要だったら自分で勝手に入手しなさいという前提で、知識を使う使い方を、教えるのではなくて学ばせるということが重要なのです。ただおもしろいのは、これは別に田中委員に反論するわけではないですけれども、企業の方が私に研修の依頼するときは、大抵知識を教えてくださいとまずお見えになるんですね。 だから、企業の側も人材育成のコンセプトを21世紀型に変えませんか、少なくとも20世紀に変えませんかというのが我々のお願いなのです。企業の人材育成、教育としてすぐ役立つ知識を教えてくださいと来るのですが、僕は、それは絶対やりませんとお話をしています。お互いのコンセプトをプロイノベーション時代に変えないといけないなというのが僕の実感です。一緒にやりましょうという意味で申し上げているわけです。 ○相澤会長 中山委員からロースクールについてございますでしょうか。 ○中山委員 アメリカは、大学はある意味では大学が乱立しておりまして、ナショナルなものからローカルなものからありまして、例えばハーバードの教授に聞きますと、うちでは実務教育はしていませんと、そんなすぐ即戦力になるような人材を養成しておりません。卒業後30年、40年続くような、そういう基礎的な考え方を教えています、といっておりました。 しかし、大学によっては訴状の書き方、あるいは登記の仕方、登記の調べ方等々、即戦力になるような専門学校的なところもある。両方あるわけです。恐らく日本でも両方あってもいいと思うのですけれども、ただ日本の場合は難関である司法試験がありますから、これに受からないと、どうしようもないので、どうしても受験勉強的な勉強になってしまいます。アメリカのように簡単に司法試験に受かるというようにすれば、受かった後、弁護士は競争してスキルを磨きます。しかし食えない弁護士も出るということになり、それはアメリカ的なんですけれども、現状ではこの司法試験というものがある以上は、これは司法試験に合格ゼロのロースクールはいずれつぶれますから、なかなか理想的な教育はできません。 ロースクールについては実は5、6年くらい前からこの会議で議論していまして、なかなかここだけでは決着のつかない難しい問題だろうと思います。 ○相澤会長 どうぞ。 ○妹尾委員 さっきのグローバル化に対応する英語力の問題ですけれども、英語がべらべらにしゃべれる必要はないのですが、せめてこの技術は英語で言ったら何なのといったら、すぱっと答えられるぐらいの知財人材になってほしい。現場にいると、ほとんど皆さんできないことがわかります。交渉などを自らできないまでも、どうやってウェブを調べてその技術を調べるのか、海外の技術文献を読めるんだろうかと僕は非常に不思議に思うわけです。ベーシックにその辺のところの能力を上げることは、これは知財界全体で運動をしないといけないと非常に強く思います。 ○相澤会長 辻村委員。 ○辻村委員 今、妹尾委員のおっしゃるところは、非常に私ども企業でも感じていまして、ただ英語力というのが、なかなか定義が難しいですね。例えば、ネイティブのようにしゃべれるような人を企業で海外の新しい新規事業のところへ送り込んだときに、成功するかというと、成功しない確率のほうが高い。結局、何かというと、先生が最初におっしゃられたように、いわゆるビジネスモデルを構築できるとか、技術、研究のことをある程度きちっと知っているとか、一本自分の芯を持っているとかという人間のほうが、英語をしゃべれる人よりも圧倒的に力を持っているわけでございます。 そういう人材を育成しようと思うと、企業の場合はかなり乱暴ですけれども、適性を見てぼんと放り込むということをやらないと、なかなか人は育たないというところがあります。知財の面でも実際人材育成という意味で、いろいろなところに実際に入っていって経験するということをプログラム的にやるということが求められるのではないかなという気がすごくしております。 弁理士、弁護士の先生方の中で、理科系の先生方の率は少ないようですけれども、それを増やしていただくということと、実際の教育として企業内研修とかをきちっとやってみるということを企業も受け入れて、そういう制度をつくるというのも一つの手ではないかなと。実地で修羅場をくぐるという言い方は悪いですけれども、経験することはとても大きい財産になる。何かそういう体験プログラムみたいなものができればいいなというふうに思っているわけであります。 それから、知財教育の面でも、きちんと書いていただいているわけでございまして、中学校、高校、そういうところの教育というのが大事だと。この教育は創造性の醸成という面で大事だということと、もう一つは模倣品とか海賊版への対策という面での意識の向上という点で重要と思います。前にも申し上げましたけれども、もう少し低学年といいますか、小学生以下ぐらいのところも含めて、早い時期からきちっと教育というのをやれるような仕組みをつくっていただけるとありがたいなと思います。 例えばGMO、遺伝子組み換えの問題、食育問題なども小学校で先生が教えているんですけれども、その教え方によって受け取り方が変わっていくわけでございまして、小さいときの先生の影響というのは極めて大きい。そういう時期にきちっとした日本の文化であります「恥」を知る文化とかをきちんと教える倫理教育と知財教育みたいなものを両方きちっとやるというようなことを難しいでしょうけれども、考えていただくとありがたいなという気がいたします。 模倣品問題は、買う人がいる限りは解決しないわけでございまして、その辺の倫理面での国民の意識を上げるということが重要で、地道ですけれども、きちっと小さいときから教育するというプログラム、そのための先生方の育成ということが実は物すごく大切な国としての取り組みではないかなと思っています。 ○相澤会長 どうぞ、中村委員。 ○中村委員 企業の立場においても、イノベーション創出や、ビジネスモデルも含めた高度な知財戦略に資する人材をどう育てていくかは非常に悩ましい問題でございます。知財にとどまらず非常に多岐にわたる知識、経験、それからコンセプトの構築力も含め、本当にスーパーマンではないとできないような能力が求められているわけでして、そういう人材をどうやって育てるのかということは私も解がなくて悩んでいるところであります。 ただ、そういった知財に長けた経営層を創出するということも当然大事である一方、例えば企業の中でいわゆる知財担当役員と言われるようなものに代表される幹部が1人いれば、その企業の知財力は増すのかというと、必ずしもそうではないのではないかと感じます。リーダーシップをとっていく人材の必要性は無論ではありますが、それを咀嚼できて、みずからの事業経営にちゃんと知財を取り入れられる、その他の経営幹部層も伴って初めて総合力が発揮できる訳で、知財の役員であろうがなかろうが、事業経営に携わる組織責任者は、例えばアカウンティングであるとか、メーカーであれば物づくりであるとか原価であるとか、そういう基本的なリテラシーの一つとして知財の基礎知識や最低限の見識が伴わないと、たとえ突出したスーパーマンが出ても、結局ついていけないところが出てきます。企業における幹部人材の育成において、基本的なリテラシーの一つとして知財も研修による教育や、実戦経験も含めて浸透させていかないと、総合力としては発揮できないのではないかと感じます。 ○相澤会長 どうぞ。 ○関田委員 私も企業の立場から、この知財人材の育成というのは、ずっとここでテーマで出てきているんですけれども、ずっと考えているんですけれども、いわゆるイノベーションをやる、生み出す人とこういう知的財産をハンドリングする人と、それを1人の人に求めるのは無理ではないかというふうに実感として思うわけでありまして、私どもはどうしているかといいますと、イノベーションをする人、私どもで言うと研究所のメンバーなんですけれども、自由に発想していろいろなものを生み出していきなさいと。それをいわゆる知的財産に結びつけるというサポートをするのに知的財産部という部がありまして、そこがいわゆるいろいろな法律論から、いわゆるエキスパート集団がいるわけで、そこでタイアップしてやっとやれているというふうに認識しています。 だから、大きな会社ですと、そういう仕組みが多分あると思うんですが、いわゆる中小企業であるとか、何かですと、それはちょっと難しいのかなと。そうした場合には、何かいろいろサポートする組織みたいのがあれば、きっと日本の国家としてのイノベーション及びそれを知的財産化するというプロセスが進むのではないかなというふうに思います。 それから、先ほどいろいろ委員の方も言われていますけれども、これに英語力というと、これは本当スーパーマンで、これはなかなか難しくて、私どもの場合ですといろいろな人間がいますので、それを組み合わせて一つのコンプリートするというようなことをやっているというのが実態であります。 ○相澤会長 三尾委員。 ○三尾委員 私も企業ではない側からの立場の人間としてお話ししたいと思うんですけれども、弁護士というのはある程度割と細い、小さい分野のスペシャリストという形になってしまいまして、なかなかいろいろなことをすべてできるということはできないんですけれども、その分野についてはほとんどパーフェクトのものを提供できるという自信があるという立場なので、先ほど関田委員がおっしゃいましたように、何人かの専門家が共同して、ある一定のサポートをするというような形が必要ではないかなというふうに思います。 大企業であれば、ある程度企業の中ですべてを消化していけるとは思うんですけれども、中小企業や大学の場合は発明者とその知財を活用していく立場の人間とがある程度連携を持って、スムーズにやっていくことが何よりも必要だと思うんですが、人材的にも、さらにもう一歩専門的な人材というところになりますと、なかなかつながりがないというような現状があると思います。ですので、弁護士や弁理士、あとさらに公認会計士とか、知財の評価なんかも必要になってきますので、そういう専門家を束ねたような形のサポート体制ができればいいかなと、私としては思います。 そういった点で、国のお力をかりて、ある程度枠組みができれば、我々弁護士も参画する意欲は大いにありますし、やりたい人材も多いと思いますので、実現可能かなというふうに考えております。 以上です。 ○相澤会長 中山委員。 ○中山委員 この人材の問題は6年前の知財戦略会議のときからずっと議論されていまして、少しは進化していますけれども、似たようなことを議論しているわけです。 この問題の結論は簡単でして、いかに教育論を議論しても始まらないので、要するに知財の専門家の待遇を上げるしかないんですね。要するに、待遇って何かというと、主として地位と給与、これを上げるしかない。弁護士もそうなのでして、知財が儲からない時代は殆どの弁護士は振り向きもしなかったけれど、儲かるとなったらさっと集まる。独禁も同じです。 例えば、大学のTLOに法律とビジネスと技術の分かる目利きがいないと困るというけれども、現実問題今の待遇でキヤノンやパナソニックと比べたらどっちへ行くかといったら、それはキヤノン、パナソニックに行ってしまいます。ですから、どうやって待遇を上げるか、私はその1点にかかっているのではないかと思います。待遇を上げれば人は集まってきます。集まってきた人は、当然それは切磋琢磨して勉強します。そうすると、当然いろいろなことが決すると、基本は待遇だろう。教育論をいくら議論しても待遇が悪ければ人は集まらないと思います。 ○相澤会長 佐藤委員。 ○佐藤委員 中山先生に大変いいことを言っていただいたと。 我々弁理士は今度の弁理士法改正で、外国出願業務を標榜業務として入ることになって、また産業界からも、弁理士としてグローバルな知財戦略をサポートするような立場として頑張れというふうに期待されているところですけれども、現実問題として特許事務所なんてほとんど数人の規模の事務所が圧倒的で、多くても100人、150人の規模です。それが1万人もいるキヤノンさんやパナソニックさんと同じような人材育成して、グローバルコンペティションに戦える弁理士をつくるというのは、これはすごく大変な状況です。まして企業側からすれば、当然の要求ですけれども、コストパフォーマンスをよくするために経費節減という形で手数料をどんどん下げられると。そういう状況で、いい人材を育てろといっても育てられないということをまず申し上げておきたい。 我々としては、そう言っても世の中のニーズに応えなければ存在価値がないわけですので、会としても、何とか会の力を、全体を利用して、そういう人材を育てるような仕組みづくり、またそうやって実際に企業支援に役立つような人材づくりをやらなきゃいけないということで、一生懸命努力しているところですけれども、いかにせん今、中山先生がおっしゃったように、資源がなければ人は育てられないということをぜひご理解いただきたいと思います。 ○相澤会長 どうぞ、では最後の締めということで。 ○妹尾委員 待遇を良くして優秀な人を集めると同時に、その優秀な人たちを育成する役割である我々の待遇もぜひ良くしてください。そのお願いを最後にしておきたいと思いました。要するに、私は変わり者だなと思いました。待遇が悪いのにもかかわらず人材育成に取り組んでいるということは、そういうことなのかなと。先ほど関田委員と三尾委員が言われたように、あるいは私が最初に申し上げたとおり、スーパースターのイチローはそれほどいないのだから三位一体のときに3者が出てきたコラボレーティブに活動する。プロイノベーションを進める人材群をつくる、あるいは人材網をつくるというような何か試みをそろそろやっても良いのではないかと思います。我々もそれを仕掛けたいのですが、いかんせん待遇が悪いので、なかなかできないので、ぜひ政策支援をお願いしたいなというのが1点目です。 もう一つは、これは別に関田委員に反対するわけではないのですが、研究開発がやるのはイノベーションではないと私は思っています。それはインベンションです。だから、研究開発が生んだインベンションをどうやって知財の人たちが保護権利化して、そしてビジネスの人たちが卓抜なるビジネスモデルで普及、展開するのか、その全体がイノベーションのはずなのです。イノベーション人材も実はそれらの三位一体的なものでないといけないというのがあるんですね。 どうも「研究開発でいい発明ができればビジネスもうまくいく」というコンセプトから未だに我々は抜けてない。それが欧米に今いいようにやられちゃっている現況の原因だと思うわけです。良い発明ほど良いことに決まっているのですが、それは必要条件でしかなくて、十分条件としてどういうビジネスモデルに基づいてどういうふうに権利化、どういう標準化をやるか、が問われているのです。すなわち我々は特許としての関羽、張飛が欲しいだけなのではなく、諸葛孔明が欲しいのです。すみません、三国志の話に特化していますけれども、その諸葛孔明がなかなかいないのです。そこで、チームでやるというところへ政策誘導していただきたいわけですね。 もう一つ今日ちょっと話が出なかった海賊版、模倣品について、辻村委員がおっしゃったことと関連させてひとつ。ついついこの話題は啓発、普及ということだけの政策で終わっちゃうのですね。数年前にサイクル委員会のときにもどうしようかといったら、結局は「成田にポスターを出しましょう」で終わってしまったという経緯がある。あれは必要条件かもしれませんけれども、十分条件ではないので、政策的な十分条件は何かというのをそろそろ議論する時期に来ているのではないかなと思います。 法的な観点も一つかと思っています。私は警察庁の政策評価もやっているのですが、先日ビデオで撮影することを禁止する法律ができただけで実際に模倣ビデオが激減しましたよね。そういうような、要するに実効を上げるような十分条件たり得る政策を議論するために、そろそろみんなで知恵を絞っていきたいなと思います。具体的なことは今申し上げられませんけれども、少なくとも方向性については中山先生がおっしゃるとおりいつもの繰り返しになっちゃわないようにしたいと思います。 以上です。 ○相澤会長 人材育成については、いろいろな分野で人材育成が重要だということが次々と出てまいります。特に知財分野では、中山委員が言われたように、ずっと同じような議論か繰り返されてきたところであり、結局は、処遇の問題が非常に大きいと思われます。 また、今、理系分野の人材が重要だということで、いろいろと教育論が展開されていますが、次々と難しい条件が課されていく。どの分野でも結局はスーパーマンが必要になってきてしまう。これでは、なかなかその先に進まない。むしろ、理系のスーパースターが次々とあらわれてくることが一つの引き金になっていくような要素があるのではないか。 どんな分野の人材育成についても条件が厳しくなって、こういうことを身につけておかなければならないということだけが先行してしまいがち。その結果、その教育をパスしてきたらば、夢のある世界で活躍できるのかというところになると、そこが極めて暗いんですね。このようなことがありますので、人材育成論は全体が好循環できるような仕組みを設定することを前提にしないと、なかなか具体的に進まない。ここでご議論いただいたことを少しまとめるような形で整理させていただきたいと思います。 それでは、ただいまの人材育成についてまだあるかもしれませんが、さらにご意見ございます場合には、事務局のほうに書面でお願いいたします。 今まで、知財サイクルのユニットごとに議論を進めてまいりましたが、これからは横断的といいましょうか、全体を見渡しての議論に移りたいと思います。 この件につきましては、事務局から各委員に今回の会議設定のことにあわせて、いろいろとご意見を伺っていると思います。提起していただいたことがリストされておりますので、それらを含めて議論を展開したいと思います。 本日ご欠席の岡内委員、渡部委員からは資料をいただいております。それから、辻村委員からも資料をいただいております。 この資料について、まず事務局から説明していただきたいと思います。 ○内山事務局次長 それでは、資料4から資料8でございますが、ご説明を通してさせていただきたいと存じます。 まず、資料4の討議用資料でございますけれども、これまで先ほど相澤会長からご説明ございましたように4回、また本日もご審議いただきました。政策レビューの総論といたしまして、1.知財戦略を取り巻く状況、これを踏まえまして、2.に現状と課題を整理し、さらにこれを受けまして、第3期の基本方針の柱となるべき事項を論点として3.に整理してございます。 まず、1.の知財戦略を取り巻く状況でございます。 ご案内のとおり、世界的な金融危機に端を発しました経済の減速が進行する中で、当面の経済危機に対応するとともに、中長期的視点からの成長を図るということが必要でございます。 また、経済のグローバル化が進展しまして、国際競争力が激化している中にあって、技術、コンテンツ、ブランドといった革新的な知財を生み出して、それを確実に経済的価値の創出に結びつけていくということ、すなわちイノベーションの創出が重要であるわけでございます。 特に技術の高度化・複雑化が進展しまして、市場変化がスピードアップする中にあって、内部のリソースだけではなくて、外部のリソースを事業活動に積極的に活用する、いわゆるオープン・イノベーションに向けた取組というのが進展しております。 現在、海外市場が急速に縮小する中にあって、内需拡大の重要性の高まりを見せております。 他方、デジタル化・ネットワーク化の進展というのは、イノベーションの構造変化、また著作権を初めとする知財制度の在り方にも大きな影響を及ぼしております。 知財制度の利用に関します高コスト構造についての問題点指摘が本専門調査会でも行われておりますけれども、一方、フリーソフトウェア、パテント・コモンズといったものの活用の広がりも見られる状況でございます。 2ページは、これを踏まえた我が国の現状と課題でございます。 まず、第一にイノベーションの促進が極めて重要な課題であろうかと思います。 近年、我が国の経済成長率へのMFPの寄与度というのは、米国などに劣後しておりますし、コンテンツ産業の伸び率も低迷しております。総じて、我が国経済は知的財産を経済的価値の創出に効果的に結びつけられていないおそれがあると考えます。 それから、アジア・新興国の台頭、あるいはモジュール化の進展によりまして、収益性が低下しているような、そういう事例も見られるわけでございまして、高度な知財戦略の実践に遅れがあるのではないかとも見られます。 また、国際的に整合性のとれていない知財制度が新たなビジネスモデル構築の阻害要因となるおそれもございます。 そして、現下の厳しい経済情勢の下では、地域の中堅・中小企業におきます知財戦略、この強化が一層必要な状況にございます。 また、産学連携の面を見てみますと、大学の知財を産業界へ効果的に移転させる機能が脆弱ではないかと見られます。 そして、オープン・イノベーションの進展に伴いまして、知財権の流動性が高まっております中、米国を中心にいわゆるパテント・トロール問題の顕在化、また国際標準化に不当な権利行使が行われたりしておりまして、適切な権利行使の在り方について検討の必要性が指摘をされております。 我が国制度におきましては、諸外国に比べて営業秘密侵害に対する抑止力が弱いと見られ、海外企業との共同研究の実施にも支障を及ぼしているとの指摘もございます。 次のページを見ていただきますと、我が国の国際標準化の活動自体は活発化してきておりますけれども、欧米には未だ及ばない状況にあろうかと思います。 また、知財を活用したベンチャー企業というのは、多数出てきておるわけでございますけれども、多くは経営が低迷しているという状況でございます。他方、1930年代の大不況時代を見ましても、我が国では多数のベンチャー企業が創出しておりまして、現在の経済減速期におきましても、ベンチャー企業の活躍に大いに期待できるのではないかとも考えられます。 第2に、経済のグローバル化への対応の課題でございます。 オープン・イノベーションは、国や組織の枠を超えまして、内外の知財の有効活用を図るものでございまして、グローバル化は不可避でございます。我が国の経済成長を図るためにはアジア等の活力を取り組むことも必要でございます。 こうした中、我が国の海外出願比率を見ますと、欧米の2分の1以下でございます。また、近年、我が国の地名などが外国において商標登録されるといった事象も顕在化してきております。 世界各国におきまして、知財を低コストかつ迅速に保護・活用できるように、世界知財システムの構築に向けまして、特許審査ハイウェイが本格化しつつあるわけでございますけれども、対象国の更なる拡大が必要でございます。 また、日米欧の三極特許庁間におきましては、審査基準、審査判断の調和について、まだ議論が開始された段階でございますし、さらに実体特許法条約に関しましても、米欧間の交渉が難航しておりますが、先願主義への移行を含みます米国特許法改正案への対応につきましては、新しい米国政権下での動きにも注視が必要でございます。 また、アジア地域におきます知財制度の導入・普及につきましては、未だ制度・運用の整備は不十分でございますし、経済発展が著しいBRICs(インド、ブラジル、ロシア等)につきましての出願件数というのは米国よりも少ないということで、国際的な知財取得戦略にも遅れが見られるのではないかと思われます。 次のページでございます。 他方、アジア諸国を初め、模倣品・海賊版の流通は後を絶たないわけでございますし、インターネットにおいても海賊版が氾濫している現状にございます。 第3に、知的財産権の安定性・予見性の確保の問題でございます。 侵害訴訟におきまして特許が無効と判断される事件の割合が増加傾向にあり、これによるビジネスリスクの増大が指摘されております。 その原因につきましては、もちろん分析が必要でございますが、審査段階で発見できなかった先行技術の事後的な提出、あるいは裁判所、特許庁との特許性に関する判断の齟齬の可能性が指摘されてございます。 最後に、利用者ニーズへの対応の課題でございます。 これまでも、各種行政サービスの質の向上が図られてきておりますけれども、昨今、国内外、権利取得段階から紛争・訴訟段階に至るまでの知財制度の利用に関連する高コストの構造が問題視されてございます。 知財制度の国際調和、諸外国における知財制度の整備など、知財システム全体に関して利用者ニーズを満たす負担の見直しが必要だと考えられます。 こうした現状、課題を受けまして、3.に、第3期、これからの知財戦略の基本方針、先ほどご説明申し上げました上記課題に即して、4つの柱に一応整理しております。 第1に、イノベーション促進のための知財戦略の強化でございます。 重要な知財を多数獲得し、効果的に経済的価値の創出に結びつけるために、イノベーション促進の知財戦略を強化することが重要でございます。 先ほども、委員のほうからご指摘がございましたけれども、研究開発・知財・事業戦略の三位一体化を促進する。それとともに、技術革新、市場変化に的確に対応した知財制度を構築する。大学、中堅・中小企業の生み出す知財を事業化につなげる総合プロデュース機能、ベンチャー創出への支援、これを強化する。 特に、内外の知財の積極活用を図るオープン・イノベーションの進展に対応するため、知財の公正活用、技術情報の適切な保護を図るための環境整備を行うということです。 論点といたしましては、技術革新、市場変化に的確に対応した知財制度の構築ということで、例えば先端医療分野における特許保護の在り方の見直しがございます。 それから、総合プロデュース機能の強化に関しましては、現在、イノベーション創造機構の体制整備の問題がございます。 さらに、大学等の知財を活用した事業化を総合プロデュースする機能の強化に関しましては、まず大学知財本部やTLOの統廃合・専門化の論点がございます。現行の支援事業の実効性を評価し、大学知財本部やTLOの実情に合わせた連携・集約、また特定の技術分野・機能への専門化を促進すべく支援を行うべきではないかという点でございます。 6ページに、産学連携における外部機能の積極的活用の促進の点、また、大学や公的研究機関における特許の群管理の導入促進の点、共同研究開発プロジェクトにおける知財管理契約の円滑化の点がございます。 また、地域の中堅・中小企業に対する総合プロデュース機能の強化ということと、中小企業の資金調達の円滑化、特に地域密着型金融におきます知財への活用という論点がございます。 知財を活用したベンチャー創出への支援の強化の点でございますけれども、例えば以下のような取組について検討していくべきではないかということで、7ページにございますように、国の研究開発成果の活用を積極的にベンチャーに委ねるような方策、あるいは研究開発組合をベンチャーに転換するような仕組み、現在、経済産業省では鉱工業技術研究組合法の改正を検討していると聞いております。 それから、オープン・イノベーションの進展に対応した環境整備の点でございますけれども、適切な権利行使の在り方の検討であったり、営業秘密侵害の抑止力を高めるための法制度の整備という点がございます。 そして、知財教育の充実という点が論点としてはございます。 次に、第2の点でございます。グローバルな知財戦略の強化でございます。 世界規模でのオープン・イノベーション、そして事業展開を促進するためには、グローバルな知財戦略を強化するということが重要でございます。 第1に、世界特許システムの構築に向けまして、可能な限り早急に実質的な相互承認の実現を図るために、我が国がリーダーシップを発揮するという点。第2に、模倣品・海賊版拡散防止条約―ACTAの早期妥結、これを我が国が主導するとともに、外国政府に対する働きかけを強化するという点。最後に、我が国企業や大学の海外展開をさらに促進するという点でございます。 論点といたしましては、ここにございますように、世界特許システム構築に向けた各種取組の強化、そしてハイレベルな知的財産外交の強化、海外の知財関連情報の提供強化、次のページに、中小企業の海外への事業展開に対する支援策の拡充というような論点があろうかと思います。 第3番目の点でございます。10ページ目、知的財産権の安定性・予見性の確保の点でございます。 知財権の安定性・予見性を確保するということで、侵害訴訟で特許が無効と判断される原因についての分析を行うとともに、特許庁におきます審査の質を一層向上させるための取組を強化するということです。論点にございますように、出願公開前に権利付与される特許権の安定性確保に向けた検討、国内外の特許文献、非特許文献のシームレスな検索環境の整備といった点がございます。 最後に、第4番目といたしまして、利用者ニーズに対応した知財システムの構築の点でございます。 知財制度の利用に関連しますコスト低減、サービスの質の向上を図るため、利用者本位かつ持続可能な知財システムを構築するということで、論点としては、行政サービスの質の向上に向けた取組の強化、また審査基準の明確化・透明化ということで、保護対象や判断基準が内外の利用者にとって分かりやすく、かつ、予見可能なものとなるように、特許庁の審査基準を明確化すべきではないかという点でございます。 それから、実施許諾の意思の登録制度の導入の検討、また特許審査ハイウェイのネットワークの拡大と運用改善、出願人のニーズに応じた審査処理スキームの構築といった点がございます。 続きまして、資料5をご参照いただきます。 これは、昨年12月に行いました政策レビュー等に関するパブリックコメントの結果でございます。簡単にご紹介させていただきます。 提出された意見は、合計42件ございました。うち、本競争力強化専門調査会関連分の意見は、合計29件でございました。 主な意見の概要でございます。 全体のところを見ますと、これまでの政策の評価につきましては、おおむね評価する向きが寄せられたわけでございますけれども、一方、次のページの一番最後のポツにございますように、原告敗訴率が高い現状にあっては、プロパテント政策は空回りしていると評価せざるを得ないというご意見もございました。 第3期の基本方針の在り方につきましては、1番目のポツにございますように、企業の営利活動、大学における研究活動などと、知財の創造・保護・活用との関係のあるべき姿をそれぞれ設定し、それらを実現させるための施策を策定すべき。 あるいは、3つ目のポツに、第3期の基本方針では、“プロ・パテント”に続く“プロ・イノベーション”の時代を意識して、知財制度の改革への取組をさらに加速させるべき等々のコメントをいただいております。 各論の部分は、2ページの下から、以下の項目に関する意見が特に多かったわけでございます。創造の分野では、大学、研究機関、企業における創造力の強化という点、それから知財の保護の分野、3ページ目には、国際知財システムの構築に向けた取組の強化に対するコメント、4ページ目に、知的財産権の安定性・予見性の向上、また5ページ目には、新技術の知財の適切な保護に関するご意見、それから6ページ目には、知財の活用等の分野におきましては、知財を活用した事業活動の環境整備に関するご意見、あるいは知財の公正な活用の促進、国際標準化活動の強化といったようなご意見が多く寄せられております。 それでは、資料6は、本日ご欠席の岡内委員からのペーパーでございます。中小企業経営者に対する知財の意識改革ということで、そのためにも手続費用の半額負担とか、あるいは海外特許取得の費用負担などの資金的な援助、海外の技術情報提供、また金融機関が技術交換窓口になる情報支援について、さらには技術の権利化を川上から川下まで、金融機関が窓口になってもらえないかといったご意見でございます。 それから、資料7は、辻村委員からのご意見でございます。総論、それから各論について、詳細なご意見をいただいてございます。 資料8は、本日ご欠席の渡部委員からのご意見でございます。知財戦略に現下の経済情勢を反映させる必要があるということと、それから、国全体としては、こういう時期であればなおさら雇用を創出するためのイノベーション戦略の推進が必要であるという認識を強調したいということ。それから、今後しばらくの知財戦略の優先順位というのは、短期的には資金調達に役立つ知財融資とか知財信託などの活用の施策が最も重要ではないか。また、雇用創出につながる知財を核としたベンチャー創業振興というのが、中・長期的に最も重要な施策となるというようなご意見をいただいております。 以上でございます。 ○相澤会長 ありがとうございました。 それでは、ただいまから、ご説明がありました資料をもとに議論を展開していただければと思います。どなたからでも、ご発言をお願いしたいと思います。 三尾委員。 ○三尾委員 資料4の5ページなんですけれども、この「総合プロデュース機能の強化」というところで、イノベーション創造機構のことが書かれているんですが、このイノベーション創造機構というのは、ほかのところでは日本版インテレクチュアル・ベンチャーズと言われているというふうにも聞いているんですけれども、今の日本で欠けている人材というのは、この米国のインテレクチュアル・ベンチャーズが行っている、いろいろな特許を価値評価して、それを活用していくという目利きというか、事業に結びつけていく、そういうプロデュースができる人材ではないかと思います。一応、弁護士や弁理士や、公認会計士や大学の先生方の発明に関しては、それぞれの分野である程度の力はあるというふうに、私としては思っておりまして、そこをうまく活用して事業に結びつけていくというそのノウハウが、今、日本では一番足りない人材ではないかというふうに考えます。そのイノベーション創造機構なんですけれども、それを運営していく人材が果たしてどの程度いるのかというのは、非常に危惧される点ではありますが、特に発明(特許)と事業を結び付ける分野の人材の育成を重視していくべきではないかと考えます。 どういう形で育成していくのかということなんですけれども、弁護士に例をとりますと、知財研修などをやっているんですが、知識を詰め込んでも人材としては育たない。先ほど田中委員もおっしゃいましたように、OJTをすることによって実力がついてくるということです。 これは、一つの私の思いつきではあるんですけれども、このイノベーション創造機構の枠を利用して、人材育成もやってしまうと。この分野の人材を、この中でOJTで育成してしまうということも一考かなというふうに考えます。 その際に、ちょっと付言しますと、米国のインテレクチュアル・ベンチャーズは、弁護士が主に運営しているというふうに聞いております。この分野の弁護士が、日本にはほとんどいない現状ではあるんですけれども、このプロデュース機能を強化するという人材育成をする際には、ぜひ弁護士を活用していただきたい。弁護士を活用して、プロデューサーとしての人材育成もしていただきたいというふうに思います。 以上です。 ○相澤会長 ありがとうございました。 関田委員。 ○関田委員 3つほど、意見を述べさせていただきます。 これは、すべての分野を網羅していることになるわけなんですが、例えば日本でも、先行している分野と、それから世界的に遅れている分野と、2種類以上あるのかもしれませんが、2種類あると思います。私どもは、鉄鋼業なんですけれども、技術的には、やはり世界のトップを走っていると自負しています。資料4の中に、欧米とパテントが2分の1と書いてあるんですけれども、鉄鋼業について見れば全く逆、桁が違うんですよね。それから、私どものお客様で知っている限りでいえば、例えば自動車も世界のトップを走っていると思います。 そうしたときに、両方に焦点を当てるのは難しいかと思うんですけれども、先行分野というのは、やはり日本のアドバンテージなので、そのアドバンテージはもっと伸ばすということを、どう盛り込むかというのは難しいと思うんですけれども、でも、それはすごく大事で、ぼおっとしていますと、これは追い越されてしまうという危機感を持ちながら、我々はやっているわけですけれども。 それが一つの意見で、それに関連するんですけれども、鉄鋼にしろ自動車にしろ、OA機器にしろ家電にしろ、全くグローバルな状況で、今、コンペティションをやっているわけでありまして、そのときに、この資料4の中に書かれていますけれども、グローバルの知財権というんですか、実際問題、専門家の方が多いと思うのでご存じだと思いますけれども、たくさんの国に特許を出すというのは、ものすごい労力とお金と、時間もかかるんですけれども、それがここに盛られているんですが、やはりもうちょっと簡単にとれるような仕組みというのは、ぜひ期待したいし、私どもも一緒にやりたいと思います。 それから、3つ目の意見なんですけれども、先ほどの中小企業のところもあるんですが、結局、なかなか知財というものに対して、中小企業の経営者が興味を示すとか、そこに行こうという気が起こらないというようなコメントも書いてあったかに思うんですが、そこはやはり1つ、「知的財産というものをちゃんと構築すれば、こんなご利益があるよ」とか、逆に「とってちゃんとそういうことをしっかりしておかないと、こんなひどい目に遭うよ」とか、そういうご利益というか、おそれというか、そういうものを提示すると、先ほどの中山委員の待遇の問題もあるんですが、もうちょっと何かエフェクティブになるのではないかというふうに思っております。 以上、3点でございます。 ○相澤会長 中村委員。 ○中村委員 ここ数年来の国を挙げての施策も含めて、知財が非常に重要視されてきた追い風に乗って、いわば「ひのき舞台」に上がった知財が、最近の極めて厳しい経済状況において、今、まさしく真価を問われる時期にあるのではないかと感じております。これまでも、皆様からも語り尽くされてきたように、知財を軽視するような言動や今や許されないということは、総論としてある程度、浸透してきたと思いますが、それが個々の経営判断になってきたときに、どれだけ知財を本当に重視し、知財を取り入れた経営判断や先行投資ができるかというと、なかなか各論まで浸透していないというのが現状ではないかと感じます。 やはり、一般的に知財が非常に重要だという追い風に乗って、知財にお金や人をかければ何かよいことが起きるのではないか、手を抜いていると何か痛い目に遭うのではないかというのは、漠然とは分かってきている方が非常に増えていると思うんですが、本当に今、浸透していない。その中で、こういう非常に経営環境が厳しい中で、経費も絞られていく。となると、当然、優先順位として、投資対効果の高いものが優先して選ばれていくという中で、建前では知財は重要だと言っていたけれども、本当に知財に対してどれだけの効果とかメリットがあるのかということを、本当に心底信じ、目論み、こだわりを持たない人たちにとっては、この経営環境の厳しさというのは、知財重視の旗を下ろす格好の―ちょっと言い方は悪いですけれども―「言い訳」になってしまうのではないかと危惧しています。 先ほど、処遇の話もございましたけれども、事業経営の中で、それなりの処遇を維持し、高めていくためには、それなりの成果が求められるわけでございますので、やはり今、知財に対する漠然とした期待感が、どれくらい応えられるかということが求められているのが今ではないかと思います。 そういう時代背景・経営環境の中で、これから何をやっていくべきか、やはり1つは、今日、前半でも語られましたように、引き続きの人材育成というところであることは、もう当然のことかと思います。先ほど、やはりスーパーマンはなかなか出てこないので、群、チームによる知財活動というお話がございました。まさしくここは、これまで日本がものづくりにおいて、モジュール化する前に、すり合わせ技術で日本の製造力の強みを発揮してきた、チームワークの中で、それぞれの強みをうまくすり合わせて一つの大きな総合力を発揮していくという意味では、日本人の強みではないかなというふうに思いますので、この強みであるチームワークをベースにした知財活動を創出できる人材育成といいますか、人材の創出、これを一つの大きな柱にすべきと考えます。 二つ目は、先ほど申し上げましたような投資対効果ということを考えましたときに、全開までの委員会でも中山先生からご指摘があったことですが、知財に対するお金のかかり方が、やはり高過ぎるというのがあるのではないかと。投資対効果の視点が事業経営上避けて通れない中、特に今の経営層が持っている時間軸、スピード感に、ある程度、齟齬のないレベルでの、ローコストで早期に、安定した権利化に〜非常にハードルは高いと思うんですが〜挑戦し続けるということが必要であって、その中での世界規模での制度調和などにおける日本のリーダーシップに力点をおくべきかと思います。 最後は、模倣対策でございます。これは、いわゆる特許を中心とした知財活用による経営貢献の目論見実現以上に消耗戦の感があって、とにかく模倣対策をするためにお金をつぎ込み、本当に地道な努力をしてもしても、なかなか被害が減らないということで、これに対しても、ここ数年の取組に対しての成果に対する焦燥感があらわれているのが今の時期ではないかなというふうに感じます。 しかし、ここでやめると、もう本当にまた「もとのもくあみ」になってしまいます。短期的に高額の投資をして、短期的な模倣対策をして効果を上げて、安心してやめたらすぐにもとに戻ってしまったというケースもあります。細く長くでも、やはり焦らず、あきらめず模倣対策をやっていくことの必要性を訴え続けることが肝要であり、これはぜひ国としての施策の中でもうたい続けることによって、企業、権利者が模倣対策活動をやめないような指導を継続していただきたいと思います。 更に、模倣対策の場合は、啓蒙による模倣品を「買わない」消費者作りという話がございました。私はもちろん模倣品を買ってしまう消費者、もしくは模倣品の生産・販売に手を染めてしまうような業者に対する教育、啓蒙が必要であることに全く異論はありませんが、最後は性弱説と申しましょうか、やはり人間は弱いものだと考えるべきではないかと思います。(模倣品を扱うと容易く)儲かってしまうとか、安くて買えてしまうというようなことがあれば、人は易きに流れてしまうということを、ある程度、前提に考えた上での施策も必要ではないでしょうか。例えば模倣業者に対しては、模倣品をやっても割に合わない、それを上回るような、処罰であるとか、経済的なダメージがあるとかというような施策、それから消費者に対しては、すべての商品では無理かもしれませんけれども、特定の技術分野や商品であれば、模倣品であれば使えないとか、そういった技術的な歯止めによる工夫、そういったものも含めて、やはり消費者の皆さんに買わせない、買ってもしようがない、得にならないと思わせるような企業側の努力も必要ではないかなというふうに思います。 以上、3点でございます。 ○相澤会長 ありがとうございました。 そのほか。 佐藤委員。 ○佐藤委員 基本的に、今回まとめていただいた基本方針の在り方についてのグローバル・コンペティション、それからオープン・イノベーションに沿った形のグローバル戦略の認識については、私は全く異存ございません。これを、すぐ強力に第3期で推進していただきたいということが1点目でございます。 2点目は、やはり今、こういう環境の中で、せっかくここ2期やってきた形で芽ができ始めたものが、この経済環境の中でつぶれてしまうということを非常に心配しております。大学の産学官連携も、うまくいっていない、いっていないといいながら、やはり現場へ行ってみると、それなりのシーズが育ち、それなりに事業化に向けて動き始めているものがございます。また、地方においても、知財を一生懸命使って、何とか地域の産業を興そうと思って動いている人たちもいます。こういうせっかく出てきたシーズを、この経済環境の中でつぶさないように、ぜひ国としては、しっかり選択と集中、本当に育てるべきものを選び、それについて国が精力的に支援していくということをやって、それがこの苦境の中でも、成功モデルを知財を使ってつくったんだというのを、ぜひこの時期に実現していただきたいというふうに思っています。 特に心配していますのは、やはり地域の中小企業です。せっかくよいシーズを持ちながら、この経済環境の中では、まず雇用を守るので精いっぱい。会社がつぶれるかどうかということになれば、当然、開発を中止して、もうちょっと時期を見てということになりかねない状況でございます。そういう意味で、岡内委員も、それから渡部俊也委員も、この点、同じような思いで提言されていると思いますので、この点を、ぜひこの際、経産省、それから中小企業庁、特許庁を含めて、中小企業向けのしっかりとした施策を、ここ一、二年、打っていただきたいというふうに思います。 以上です。 ○相澤会長 いかがでしょうか。 田中委員。 ○田中委員 1つは、2ページに書いてあることです。私も、大学の特許に対する姿勢が、昔に比べたら非常に変わってきた、また活発になってきたと思います。しかし、大学のライセンス収入がアメリカの50分の1にとどまる、と書いてありますが、三、四年でそんなに増えていくかというと、絶対難しいと思います。そもそも、特許を扱えば儲かるという幻想の下に制度をつくり過ぎたのではないかと思います。したがって、ライセンス収入が50分の1になってよかったと思うべきであって、これをさらに多くしていくためにどうするべきかを議論すべきだと思います。 特に大学からはいろいろな研究成果が出ていると思います。また、いろいろな知的財産権をだんだんと確保するようになりました。ただし、残念ながら産業界は、そのことを知らないところもあります。つまり、大学からの宣伝が、きちんとなされていない可能性もあると思います。 そのようによく感じることがあります。大学の人は企業から学会等に参加している人がいれば、企業の人と会います。ところが、学会に参加している企業の人は本社研究開発部門の人であるケースが多いのです。本社研究開発部門は大学と同じで、自分たちも何か新しいテーマを研究したいと考えていて、鵜の目鷹の目になって新しいテーマを探しているわけでございます。むしろ、本当の産学連携をしていくのであれば、製品を開発している事業部門とどのように結びついていくのかを、全力をあげて考えなければいけないと思います。ただし、事業部門の人は、大学でどんな研究をやっているかなどということをほとんど知らないわけでございます。ここに、非常に大きなギャップがあると思います。 では、大学の人は事業部門の人と議論できるかというと、ほとんどできないと思います。つまり、事業部門の人は、「すぐ実用化できるものがあったら持ってきてください」と言うわけです。ところが、大学の人は、すぐに実用化できるものが提供できるわけではないわけです。そのあたりのことが、まだきちんとした議論がされていないと思います。2ページにあります「産業界への効果的に移転させる産学の機能が脆弱」だというのは、まさにそのとおりだと思います。次のステージで、きちんと連携体系をつくっていかなければいけないと思います。 先ほども触れられていましたけれども、イノベーション創造機構ですか、イノベーション創造機構はいわば日本版インテレクチュアル・ベンチャーズだというように三尾先生がおっしゃったのですが、インテレクチュアル・ベンチャーズは、私は、パテント・トロールの一種ではないかと思っております。 このように言っておきながら、大変申しわけないのですが、断定するのはよくないと思っています。なぜかというと、インテレクチュアル・ベンチャーズの会社の定款を私は読んでいませんので、彼らは何を営業目的にしているのか、いろいろな特許を買い集めて、新しいイノベーションを創造することが本当に目的なのか、あるいは特許を買い集めて、その特許を誰かが使うようになったら、パテント・トロールになってお金を集めるのが目的なのか、よく分からないのです。しかし、インテレクチュアル・ベンチャーズはある意味ではファンドで、ファンドというのはどこかで儲けない限りは、絶対的に倒産するわけです。この会社の定款が一体どのようになっているのかを確認しなければ、パテント・トロールと断定するのはよくないと思いますので、訂正させていただきます。 ただし、インテレクチュアル・ベンチャーズと、イノベーション創造機構を同一視するというのは、私はちょっとまずいのではないかと思います。ここには書かれておりませんけれども、どうも日本ではそのように呼んでいる人もいるようですが、これは全く違ったものではないかと思います。つまり、イノベーション創造機構が、先ほど言ったような産学連携なり、次のステップに行くための支援機関としてきちんと機能していくということであれば、私は、大変よいことではないかと思います。 それから、6ページになります。「大学や公的研究機関における特許の群管理の導入促進」とありますけれども、これはちょっとコンセプトがよく分からないのです。例えば製品ですとか事業の具体的なイメージがあって初めてどのような特許が使われるのかなどが見えるようになるわけです。特許を単に技術別に群管理しても意味はありませんので、この群管理とはどのような目的のために行うのか明確にしないと、よくないと思います。ここには、「一つの特許で製品になる技術分野は少ないこと等にかんがみ、・・・」と書いてありますけれども、これはむしろ企業側がきちんとするべき話であって、大学等がしても意味がないと思います。これは、先ほど言いましたように、具体的な製品のイメージ、あるいは具体的な事業のイメージ等ができて、初めてどのような知的財産権が必要かというのが分かるからという意味です。これも注意深く取り扱っていったほうがよいと思います。 それから、10ページになります。知的財産の安定性・予見性の確保について、非常に工夫して書かれていると思います。大変ありがたいのですが、侵害訴訟で特許が無効と判断された原因について、やはりきちんと分析を行っていただきたいと思います。無効になるものが7割ぐらいという話なのですが、我々企業の立場から言いますと、自分達のほうが負けそうだと考えると、判決までは行かずに、大体、和解してしまうのです。自分達が訴えられたときに、先行技術を徹底的に全世界ベースで調査して、先行技術が見つかってそれで勝てそうだと考えると、徹底的に争うことになるのだと思います。最後の判決まで行くわけです。ですから、自分達に勝ち目がない限り、最後の判決まで行くということはほとんどないのだと思います。 自分達に勝ち目があると考えるときは、先行技術等々が非常に有効だという確信があるから、判決まで持っていくわけです。ですから、そのような状況も判断した上で、今後どのような対策を打っていくべきかという議論を、きちんとしたほうがよいと思います。 もし、新規性を喪失させる先行技術が新たに見つかって、無効になったのであれば、これは特許庁の先行技術のサーチ能力のほうをきちんと上げるべきであって、裁判所の問題ではないと思います。 しかし、新規性を喪失させる先行技術等々の資料が新たに見つかったのではなくて、もし裁判所が、進歩性等々がないために無効だと判断しているのだとしたら、場合によったら、非常に問題だと思います。つまり、大体、特許は取得してから10年、15年たってから争いになることが多く、特許が出願された時代とはもう時代背景が全然違うのです。そのような状況において、進歩性等が云々されて特許が無効になっているのであれば、やはりきちんとした分析をして、どういう手を打っていくのかきちんと議論するべきだと思います。 私共も特許を成立させて、今まで特許料、年金をずっと払い続けてきたわけですから、内心では「今さらそんな簡単に無効になんかするなよ」という気持ちは非常に強いのです。まだ大企業だと、何件もあるからよい場合もあるのですが、中小企業の場合には、虎の子の1件かもしれないのです。それが、高い特許維持年金を払い続けてきて、いよいよ権利行使してみたら無効だったということでは、ちょっと大きな問題だと思います。だから、原因をきちんと調べてから議論していったほうがよいのだろうと思います。 以上でございます。 ○相澤会長 三尾委員。 ○三尾委員 先ほどのインテレクチュアル・ベンチャーズの件で、田中委員からご指摘があったので、ちょっと補足させていただきたいと思います。 私も、詳細にインテレクチュアル・ベンチャーズのことを知っているわけではないんですけれども、アメリカの友人の弁護士に聞いてみましたところ、いろいろ彼は調べてくれたんですが、インテレクチュアル・ベンチャーズ自体は、一切訴訟はしていないということなんですね。ですので、訴訟で高額の賠償金を取るというような目的でパテント・トロールをするということは、まずないということは言えるかと思います。 あと、契約交渉で、高いライセンスを取るとかということはあるかと思いますけれども、それがパテント・トロールといえるのか、権利行使の範囲内なのかについては、また別の問題があるのではないかと思います。 加えて、インテレクチュアル・ベンチャーズの中にいる人や、アメリカの評価を―確実ではないんですけれども―聞きましたところ、インテレクチュアル・ベンチャーズ自体をパテント・トロールであるというふうな認識をしているのは、ほとんどないというのが私自身の把握なんですね。 ですので、ちょっとパテント・トロールとインテレクチュアル・ベンチャーズは、必ずしもイコールではないのではないかというふうに、私としては考えております。 ○相澤会長 どうぞ。 ○田中委員 では、反論というわけではありませんが、若干意見を申し上げます。 自分のことをパテント・トロールと言う人は、ほとんどいないと思います。(笑)絶対、それはいないと思います。だから、自分達でものづくりをしないで、ロイヤルティ収入だけで金集めをする人たちのことを、我々はパテント・トロールと、たまたま言っているだけなのです。そのような人は、たくさんいるのです。このインテレクチュアル・ベンチャーズは、ファンド会社ですから、何らかの形でものづくりをしているところと折衝してロイヤルティを確保しなければ組織が絶対に回転しない、そのような仕組みだと思います。寄附行為ばかりしているような組織など、絶対あり得ないわけですから、これはパテント・トロールになる可能性が非常に高いと思います。現実に、私どもに、今月、「特許ポートフォリオをたくさん持っているので、ぜひお会いしませんか」と言ってきております。 だから、もし寄附行為だけで、この会社がやっていく、成り立っているのだとしたら、大変よいとは思いますが、そうではなく、現実的に考えた場合、私は、パテント・トロールと紙一重だと思います。 ○相澤会長 そのほか、いかがでございましょうか。 では、中山委員。 ○中山委員 ベンチャーについての記述がございまして、これは別に今日の議論に限らず、「ベンチャー頑張れ」ということはあちこちに出てくるわけですけれども、例えば3ページの一番上のマルに、「現行の経済減速期においてもベンチャー企業の活躍に期待」するというふうに書かれています。1930年代にベンチャー企業が伸びた―1930年代については、私には知識がないので分かりませんが、おそらく理研等のことを言っているのだろうと思うのですけれども、理研がなぜ伸びたかというメカニズムが全然分からないので、1930年代との比較はできないのですけれども、現在のベンチャーは、ある程度成長したら、上場して金を集めて、さらに大きくなるというメカニズムだと思うのですけれども、しかし、今の経済状態でベンチャー企業の上場は壊滅状態にあります。そういう状態で期待するというのは、一体、ではどういうふうに期待するのかということをもう少し書かないと、これは何を意味するのか分からないのではないかなという気がいたします。 それから、先ほど田中委員のおっしゃった東京高裁で―地裁も含めてですけれども、特許無効になる率が多いといえ件ですが、8割ぐらい無効になってしまうわけですね。これを何とかしろという意見は、実はあちこちから出ているわけですけれども、しかし、考えようによっては、無効になるということは無効原因があるわけです。すると、無効原因がある権利を振りかざして権利行使するのも、逆に言えば問題があります。特許庁の審査能力を高めるのは必要なんですけれども、特許庁の審査は大量処理の関係で、当然限界があります。訴訟になれば、訴えられたほうも必死になって世界中からあらゆる資料をかき集めますから、特許庁の審査に比べたら無効になるのが多いのは、もう火を見るより明らかなわけです。 しかし、そうはいっても、長い間特許料を納めて、せっかく大金を使って、しかも、その上に一定の権利状態が構築され、あるいはその権利にも続いて投資を行ってきたという状態が続いているのに、一朝にしてひっくり返されるのも困るという意見も、これまた強いわけですね。 でも、しかし、考えてみれば、この現在のダブルトラックはなぜできたかというと、経済界の極めて強い要望と、当時の荒井事務局長の強い指導力ででき上がったわけです。学者とか裁判所は反対したんですけれども、現在の規定になってしまったわけですね。なってしまえばこういう状態になるだろうということは、もう分かっているんだけれども、なぜか知らないけれども、経済界は非常に強く主張して、どうもそれが通ってしまったというわけです。 しかし、そうはいっても状況は変わっていますから、もし、現状がどうしても困るということであるならば、例えば、昔あったように無効審判の出訴期限を定めるとか、あるいは無効についての遡及効をなくすとか、これは飯村裁判官などが提唱しているのですけれども、何らかの手を打つことは可能だろうと思います。時効とは意味が違いますが、ある程度長い期間、ある事実状態が続いたら、それを尊重するというのは、それなりに意味があるところであり、場合によっては今のような手当てをするという立法論も、考えられるだろうと思います。 ○相澤会長 それでは、田中委員。 ○田中委員 地方裁判所、高等裁判所に専門家が集まって、きちんとした公正な判断をするのであれば、裁判所において特許無効とできる制度自体は、私はあってよいのではないかと思います。 先ほど中山先生がおっしゃったとおり、先行技術が特許の成立した後で見つかるというケースは、実はたくさんあると思います。我々も、訴訟を起こされたら、当然、全世界の文献を探し回りますから。 ですから、この資料にも記載されておりますけれども、異議申立制度はもうなくなってしまいましたが、そのような制度もきちんと復活させる必要があると思います。裁判等々に行かずとも、ある段階で先行技術が見つかったら、新規性がないということがわかりますから、お互いにもっと早く和解できる部分も出てくるのではないかと思います。 いざ戦ってみたら権利が無効だというのは、確かにかわいそうな話ですから、ぜひいろいろな視点で、仕組みをつくっていっていただければと思います。 ○相澤会長 それでは、妹尾委員。 ○妹尾委員 ちょっと話題を変えてよろしいですか。 ○相澤会長 どうぞ。 ○妹尾委員 この中で、2ページに書いてある「イノベーションの促進」、マル2、ここのところが非常に重要だと思います。「グローバル競争に勝ち抜くためのビジネスモデルに係る高度な知財戦略実践に遅れ」 「ビジネスモデルにかかる高度な知財戦略」、この認識は大賛成なんですね。 それから、この一番下のマル、「業種、企業ごとに差はあるものの共通基盤技術については国際標準化によりコスト削減や市場拡大を図り、」 「その一方で、」と加えると 「個別技術については差別化し囲い込むという戦略の浸透が不十分」。要するに、知財だけでは勝てないという状況になっているぞ」という認識をされているわけです。これも良い。 この委員会の名前は、「知的財産による競争力強化専門調査会」と書いてある。「競争力強化」とは何なんだろうと考えると、3つあるわけですね。知財でできる競争力強化、知財以外でのコラボレーションによってできる強化、知財以外も含めある意味では三位一体でなければできない競争力強化、この3つがあるわけです。我々は、どうしても一番最初の議論をずっと強くしていたのですが、どうもウエートは2番、3番へ移ってきたという認識をすべきだということがここでうたわれているのだと私は理解したい。 では、競争力強化を何をもってやるんですかというと、1つはインプルーブメントです。今までは日本のお家芸です。既存モデルの磨き上げ、モデルポリッシュメントをやっていました。 しかし、世界の趨勢はどうなったかというと、イノベーションのほうへ移りました。すなわち、新規モデルへの移行、モデルチェンジです。すなわち、既存モデルのモデルポリッシュメントから、モデルチェンジを加速させることによって競争力強化をするわけです。これが「パルミサーノ・レポート」以降の世界の潮流になったということですよね。 さあ、そうするとどうなるか、イノベーションタイプが変化してきたということです。イノベーションタイプは、1社自前の垂直統合でイノベーションを起こしていた時代がありました。「どこかの会社がすごい発明をやって、それで全部を変えましたよね」という時代です。それから、日本が1970年代、1980年代、私も実業界にいましたけれども、日本の数社が競い合って、とにかく切磋琢磨して、国内競争でガンガンやっていれば海外競争力も強くなったという時代です。 ところが、最近はどうなったかというと、「水平分業のオープン・イノベーションを仕掛けるなど、ビジネスモデルを変えた者が勝つぞ」という世界に変わってきた。すなわち、イノベーションの勝ち方が変わってきたということです。この認識を、もう少し僕は強くしたいと思っています。 ということは何かというと、ちょっとこの案のトーンを見ると、ところどころでオープン・イノベーションを頑張ろうと言っているのか、イノベーション全般を頑張ろうと言っているのか、若干、曖昧なところがあるんですね。我々は、イノベーションを頑張ろうと言っているのだけれども、必ずしもオープン・イノベーションが得意でない日本がオープン・イノベーションを促進することが得策かどうかという議論が一方で必要なはずですね。 さらに、オープン・イノベーションそのものの理解が、まだぶれている感じがしています。1つは、特許の公開をオープン・イノベーションと受けとめている方々がいる。2番目は、リソースの多様化をオープン・イノベーションと受け止めている方々がいる。つまり、インソース、アウトソース、クロスソース、オープンソース、コモンソース、こういうふうにリソーシングが多様化してきているわけです。 でも、3番目に、ここでもっとも重要なことですが、イノベーション・プロセスを分担化するということがあります。すなわち、うち1社ではなくて、ほかのやつらをうまく使いながらやるということなんです。だから、オープン・イノベーションをやるということで重要なことは、イノベーション・イニシアチブがとれるかどうか、こういう話なのです。 だけれども、ここのトーンの中では、「イノベーションのイニシアチブをとろうよ」というところまでは、まだ踏み込んでいない。イノベーションのイニシアチブをとらなければ、幾らオープン・イノベーションに参加したって、結局、利益を持つのはどこかなんです。前回も申し上げたとおり、例えば半導体でいえば、某社は320個の特許だけで、日本の1万個の特許に勝てる。なぜならば、ビジネスモデルをそういうふうにした上でオープン・イノベーションを仕掛けているからできる、こういう話です。 だとすると、そのときにビジネス的にはいろいろな戦略がありえるわけです。どうすればよいかというと、インテグラル型が日本は得意だと先ほどの中村先生の話にもありましたが、どうすればインテグラル型を延命できますかという話が一つです。一方、インテグラル型でやられている企業は、どうすればモジュラー化が進展できますかという話となります。さらに、どうすればいったんモジュラー化されたのを、またリインテグラリゼーションさせていくのか。こういうことをいろいろ考えるわけです。すなわち、オープン・イノベーションをどうやれば防げるかという話と、オープン・イノベーションをどうやって進めるかという話は企業ごとの立場によって全部違うんですよね。 だから、そこのところが、先ほどから言っているように、プロデュースをきちっとできる人たちが育たないといけない。そうでないと、「またまた科学技術に巨額な予算をつぎ込んで、いろいろな発明は出たけれども、結局勝つのは海外だよね」というスタイルになってしまう。そこのところで、どうやって僕らがイニシアチブをとるのか、そのときに知財や標準化でどこを押さえて、どうやってビジネスモデルに組み込むか。ここのところを強くすることが、政策誘導上、ものすごく必要なんだよというのを、もう少し強調していただきたいというのが私の強いお願いです。 たまたまですけれども、昨日、私、経済産業省でEV、電気自動車の勉強をしていました。インテグラル型のものづくりで日本が最も強いと言われている自動車、しかし、これはもうもちませんね。これはEVになった途端にモジュラー型になってしまいます。自動車が今だめだといろいろな経済誌が書いていますが、その理由はほとんどは2つですね。1つは、リーマンショック以降のサブプライム問題による経済不況。もう一つは、若者の自動車離れ。 とんでもない。電気自動車でモジュラー化された途端に、日本のインテグラル技術である自動車産業はひっくり返されてしまいかねないのです。こういう認識をしないとだめだと思うんですよ。 私は、ホラを吹いています。何を吹いているかというと、パソコン並みになるねと。ご存じのとおり、組み立てパソコンができたのは、1976年の秋葉原です。NECさんのBit-INNができた。それから30年後、2006年に何が起きたか。秋葉原で近藤科学のROBOSPOTができて、組み立てロボットがいよいよ始まった。つまり、この30年で世界は大きく変わったわけです。僕は、今、あながち自分の言っていることはホラではない、確信に変わってきたのです。今、秋葉原で私が何を言っているかというと、「2016年、10年たったら、秋葉原で組み立て自動車、EVが売られるだろう」。こう言っています。要するに、コモディティ化するということなんです。もちろん、人によっては、すごい高級車が欲しいとかという人はいるでしょうが、全世界で、いわゆる電気自動車が必要になる人たちは山ほどいるんだから、その人たちを市場としてコモディティの世界に入っていく。 さあ、そういうようなものが進展しているときに、イノベーションのイニシアチブをとる、あるいは日本の産業にとらせる、その政策誘導は何なんですかというのが、今、多分問われているわけです。そして、そこへ向かった人材育成をしなくてはいけないというのが、私は自分の課題として認識しています。しかし、「オープン・イノベーションが何か良いもので、僕らも参加できれば良いよね」みたいなニュアンスだと、まずいなという感じがします。そうではなくて、もっと日本の産業がイノベーション・イニシアチブをとるんだ、それはオープンだろうがクローズドであろうが、プロプライアトリー(独自技術)であろうがスタンダード(標準)だろうが、あるいはプレミアムだろうがコモディティだろうが、いろいろな側面があるけれども、イニシアチブをとらせるための政策誘導ということを、もう少し強調していただきたい。具体的にどこがどうだということではなく、考え方として、そこを認識したいなというのが私の意見です。 最近、私、ちょっと過激になってきているので、申しわけないですけれども、ちょっと極端に言わせていただきました。そのほうが分かりやすいと思いましたので、お許しいただければと思います。 ○相澤会長 ありがとうございました。 三尾委員。 ○三尾委員 ちょっと話題が戻ってしまうんですけれども、先ほど中山委員が、3ページの大学発ベンチャーのことに関してお話しされていたと思うんですが、これは、今まではIPOで資金のほうを調達していたんですけれども、今、不況になっていますよね。ですので、お金を持っている人は投資先がないというか、お金を持っているのにうまく投資できないというような状況にあると思うんですね。ですので、よい発明を持っているベンチャーに対しては、今までの金融でお金を回していた人たちが、ベンチャーに投資して儲けましょうという投資家が増えてくるのではないかと。そういった意味から、こういう経済減速期において、ベンチャーに対する投資が増えるという位置づけになるのかなと思うんですね。ですので、IPOではなくて、融資でお金を調達して、ベンチャーが資金調達するということになろうかなというふうに思います。 その前提として、ちょっと危惧されるのが、知財の評価だと思うんですね。投資家は、やはりある程度の確実な評価がないと、投資ができないということがありますので、幅広く投資家を募るためには、明確、かつ、ある程度安心できる知財評価のシステムを早急につくる必要があるのではないかなというふうに思います。今の状態では、なかなか一般の投資家も含めて、専門家も含めてなんですけれども、投資して大丈夫かどうか、幾ら投資すれば見合うのかということの判断ができないと思います。ですので、その点が、今後、必要な点ではないかなというふうに考えます。 ○相澤会長 中山委員、どうぞ。 ○中山委員 そのとおりだと思って、アメリカではエンジェルというのがいて、そういったベンチャーにお金を出しているわけですけれども、日本にどの程度、金持ちがいるかどうか分かりませんけれども、そういうものがうまく回るシステムというものをやはり考えて、ここで提示しておかなければ、単に期待するというだけでは、期待倒れに終わってしまうのではないかという気がいたします。 それからもう一つ、何でしたっけ。 ○三尾委員 評価? ○中山委員 評価、評価。 評価ですけれども、これは、アメリカのエンジェルなどに関係している弁護士に聞いたことがあるのですけれども、確かに知財を評価して担保にとるが、しかしそれは副次的な担保らしいのですね。本当の担保は社長、アントレプレナーだと。その人を見て、どういう人物で何を考えているかということを担保にとる、しかし社長を法的に担保にとることはできないので、ちなみに知財もとるということらしいですね。 知財を評価するということは極めて大事なことで、いろいろな場合に必要になってくる。例えば、知財研のメンバーを聞いても、知財の評価についての研究をしてほしいという意見は多いのですね。だから、重要ではあるのですが、やはり知財の評価というのは限界があるので、恐らく投資家は、知財プラス人を見て投資するのだろうと思います。 ○佐藤委員 関連でよろしいでしょうか。 ○相澤会長 どうぞ。 ○佐藤委員 今、ベンチャーのお話についてですが、2年前にベンチャーのエンジェル税制というのが入ったわけですけれども、あれは非常に限られた税制で、ほとんど投資家としては使い道がないというふうに言われています。一時、できたときは、大変新しい話で脚光を浴びたわけですけれども、現実に実効が上がっていないというのが現状だろうというふうに思っています。 そういう意味では、やはりベンチャーを育成して、特に知財系のベンチャーを育成していくためには、やはり税制から見直して、投資家もリスクがとれる仕組みをしない限り、やはり知財、特許の世界などというのは、本当に千三つと言われるぐらいで、成功する確立は極めて低い。それでも投資しようという環境づくりをしない限り、なかなか投資する環境にならないと思うんですね。この辺を、ぜひ抜本的に、もう一回、見直す必要があるのではないかというふうに強く思います。 ○相澤会長 どうぞ、辻村委員。 ○辻村委員 提出資料を出しておりますので、またそれを参考にしていただければと思いますけれども、先ほど田中委員のほうから大学と企業の産学連携強化についての話がありましたが、まさしくそうだなというふうに、私もずっと思っている点があります。 1つは、企業で事業をやっている人間が、研究開発の特に研究の部分を充分に理解しておらず、コミュニケーションがうまくできていないという状況が企業の中でも見られます。本来ならば大学の研究の成果は、やはり企業で事業をやっている人間が、そことダイレクトにコミュニケーションして、本当に事業化できるのか、出口はどうだということを考えるべきなのに、大体、大学とコミュニケーションをとるのは企業の中の研究者という現状がございます。いわゆるインベンションのところは、ある程度活性化するかもしれませんけれども、このやり方で本当にイノベーションにつながるようなことができるのだろうかと疑問に思うところがあります。事業をやっている人間と、大学で先端の研究をやっている人間とが、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションができるような場をもっともっとつくるべきなのではないかと改めて思ったわけです。 それと、もう一つは、中山先生がおっしゃったように、知財関係者の処遇改善の必要性は、まさにそのとおりだと思います。企業の中においても、人気のない部署があります。しかし、そこのステータスがすごく高まるか、お金がふんだんに使える部署になると、いきなり志望者が増えるということがあります。これは本当に大事なポイントではないかなというふうに思っております。 前田委員は、今日、出席なさってらっしゃらないんですが、ここにいらっしゃると必ず言われると思いますが、大学のTLO、知財本部の若手の方々の安定雇用であるとか処遇の改善を何とかしてほしいというお声が、多分、出てくると思います。 これも、本当に大切なポイントだと思います。さらに言えば、企業のOBを、積極的にそういうところで雇用して、大学と企業との間の橋渡しを徹底的にやるべきではないかなと。そういうお金もないという状態では困ります。企業のOBが入って、大学の研究成果を実業の成果に結びつけるということも大切なんですけれども、もう一つ、企業の人とのつながりをそこでつくってあげるということも、極めて重要なポイントではないかと聞いていて思いました。 最後に、こういう不況の中で、おそらく、知財に関して、企業の姿勢が問われる時代に来ていると思います。どこの企業でも、知財に対する費用に関して、改めて見たときに「これだけ多いのか」ということが、経営の議題に上る可能性があると思います。これまで、イノベーションを興して知財を創出していくことが重要だということを、ずっと言ってきたわけですけれども、ここに来て折れるわけにはいかないので、何とか頑張ってはいきたいと思いますが、先ほど中村委員からありましたように、トータルとしての知財に関する費用、つまり、申請・出願から登録、維持、それから海外出願の費用も含めてですけれども、少しでも軽減していただけると、非常に企業としてもありがたいと思っております。 以上でございます。 ○相澤会長 どうぞ、田中委員。 ○田中委員 この大学発ベンチャーというのは、なかなか難しい問題だと思います。結局、「国のお金で、ちょっと会社をやってみるか」的な、そんなニュアンスで起業しても成功するわけがありません。本当にその技術に惚れ込む、あるいは自分の生み出したものに対して自信があるのであれば、友達でも親戚でも、お金を借りてでもやってみればよいわけです。ですから、自分の研究室で研究していることを、ベンチャー企業として、ちょっと「企業」という名前をつけてやったからといって、では中身が加速するかというと、決してそんなことはないと思うのです。名前を変えただけで、大学を通して入ってきたお金で研究開発しているか、あるいはベンチャー企業という、やはり国の金で研究開発しているかの、ただそれだけの違いではないかというように、悪く見るとそのように見えるわけです。1,000幾つベンチャー企業があっても、なかなか全てがうまくいかないのは当り前ですし、そもそもベンチャー企業というものは、そんなに成功確率が高いわけではありません。 しかし、今まで、そのようなことをどんどん奨励してここまで来たということは、非常によいことだと思います。そろそろ整理をして、本当に育成するべきものは、きちんと育成していき、そうでないものは、そろそろご退場願うなど、そのようなメリハリがすごく大事なのではないのかと思います。千七、八百社程度あるということですけれども、10分の1ぐらい残ったら170社も残るわけですから、これは大成功ではないかなと私は思います。 それから、産学連携に関して辻村委員がおっしゃった話は、すごく大事な話だと思います。大学は、実は企業とすごく連携しやすい環境だと思います。私は、産総研の理事もやっていますけれども、研究所は企業との連携がなかなかやりにくいと感じています。どういうことかというと、大学は卒業生を定期的に出しており、各企業におくりだしているのです。ある人は、その研究を継続してやっているかもしれませんし、ある人は事業としてやっているわけです。だから、そういう意味で実は、大学のほうが圧倒的に人脈を持っているのです。 だから、そういうこともうまく使いながら、産学連携というものを本物にしていくことも、一つの手だろうと思います。つまり、卒業生等々も通して、大学のやっている成果なり、あるいは生み出したものなりをきちんと企業に伝えていくということも、そのような仕組みもそれぞれきちんとつくることができれば、可能性は出てくるだろうと思います。 それから、先ほどのベンチャーの話にちょっと戻ります。知的財産を担保にすることに関しては、中山先生のおっしゃったとおりだと思います。知的財産など、担保にするのはとても困難です。大学で生み出した特許に期待するのは原理特許ですけれども、それがどのように使われるかということはほとんど分からないし、本当に強固な特許になっているかなどということは、これもまた残念ながら分からないわけです。にもかかわらず、投資判断のために知的財産を使うということは、実際に企業で知的財産をハンドリングしている者からしてみると、ほとんど不可能に近いと言わざるを得ません。結果としてその特許が事業に役に立ったという結果は見ることができると思いますけれども、出願された特許をベースにして事業を起こすという、まさに途上にあるときに、その出願された特許が本当に投資判断の材料になるかというと、非常に難しいと思います。だから、中山先生がおっしゃったように、むしろその人のやっている覇気ですとか情熱ですとか、おそらくはそういうものが、現実的には一番お金を集める要素になっているのだろうと思います。 以上です。 ○相澤会長 妹尾委員。 ○妹尾委員 ちょっと話題が戻りますけれども、先ほど話題になっていたイノベーション創造機構の話です。それがトロールであるかとか、いろいろ議論がありました。それとは全然別です。先ほど私が議論させていただいたイノベーション・イニシアチブをとるということが重要だとしましょう。このイノベーション創造機構はリスクマネーを供給するということだけで書いてあるので、僕はそれ以上の理解をしていません。だから、「体制を整備すべき」と書いてあることの中に、着実に中身をきちっとするということがないと、単なるアナザー・ファンディング・エージェンシーになってしまうだけの話になりかねない。そのリスクがあると指摘したいわけです。 これはどういうことなのか、僕は説明していただいたことが1回もないので分からないんですが、恐らく体制の話ではなくて、どういう方針でどういう運用をするか、どういうビジネスモデルだったらお金をちゃんと出すのか。「単なる計算上の何とかがうまくいかないからリスクマネーだよ」では、恐らく今の世の中では通用しないのだろうと思います。 分からずに申し上げているので、関係者の方に失礼に当たるかもしれませんけれども、例えば、こういうことを「総合プロデュース機能の強化」ということの下に置いてありますから、総合プロデュースがきちっとされるということは一体どういうことなのかということが、具体的にこの中の運営方針と運営の内規に入っていないといけない。そうでない限りは、こういうものをやるとアナザー・ファンディング・エージェンシーとして機能するだけになってしまうおそれがある。そこのところは十分精査していただきたいなということを、希望として申し上げたいと思います。 ○相澤会長 佐藤委員。 ○佐藤委員 前回の専門調査会でも言ったことなので、繰り返しになってしまうんですが、やはりこの大学のシーズを市場化する場合にも、結局、大学の今の知財本部、それからTLOの人材資源だけでは、やはりとてもできないというのが現実だと思いますね。そういう意味で、各大学にそういうファンクションをつくるというのは、もう到底無理。この前も、田中委員もおっしゃったように、そういう人材はごろごろしていないんですよ、世の中。 そういう意味では、やはり1カ所にそういう人たちを集中させて、各大学なりがそれをアウトソーシングして使っていくような仕組み、その一つとして、このイノベーション創造機構が動いて、金もちゃんと面倒を見てあげられるという構造になったら、非常によいのではないかというふうに私は期待しております。 現実に、今、大学と関わっていて、たくさん大学の中にシーズがあります。それを選びながら、今度はそれを産業界につないでいくというところは、とてもじゃないですけれども、単独の大学でやっていくのは、とても難しい現実です。そういう意味では、アウトソーシングして必要な範囲で必要なだけサポートしてもらえるという構造になったらよいなというふうに思います。その辺を含めて、ご検討いただきたいと思います。 ○相澤会長 妹尾委員。 ○妹尾委員 話題は違うのですけれども、今、佐藤先生が言われたのと同じ形態だという意味で一点。ちょっと話が戻りますけれど、人材育成のときに、人材育成人材をどう育成するかという話があります。各大学が知財と知財マネジメントとイノベーションの教員を持つことはできないですね。だから、今おっしゃられたことと同じで、プール化してトレーニングしてから各大学に派遣するとか各社に派遣するとかしてはいかがでしょうか。そういうスキームを数年前から何回か申し上げているんですけれども、ぜひこの機会によろしくお願いします。 別に、それが創造機構と関係するわけではないのですが、ただ、今、佐藤先生がおっしゃったのと同じようなスタイルは、人材育成でも実はできるぞということなのです。そこをリマインドさせていただきました。 ○相澤会長 ありがとうございました。いろいろとご意見をいただきました。 それで、資料4で、幾つかの柱立てで構成されておりますが、この枠組みは、大枠としてはよろしいのではないかというのが皆さんのご意見であったかと思います。 ただ、幾つかの重要なご指摘の中で、例えば妹尾委員が言われました、イノベーションについての状況変化とその位置づけをきちっとしておかないと、いろいろなところにオープン・イノベーションとかいろいろなものが出てくるけれども、やはりそれは何のためなのかということが抜け落ちているということですので、ここはきちっと整理する必要があるのではないかと思います。 それから、最後のところで、ちょうど人材育成と、それから佐藤委員の知財の大学におけるシステム、これを―統廃合と申してよいのかどうか分かりませんが、要するに、これをもう少し集中化させるなり、何らかの組織的な改革をしないと、これ以上ではやはりいろいろな問題をただ重ねていくだけではないかというご指摘、こういうようなところを、幾つかキーになるところに、明確に分かるような形で挿入する必要があるのではないかというふうに感じました。 そこで、そのほかもいろいろとご意見をいただきましたので、それに基づきまして、この討議用の資料を、少しモディファイさせていただきたいというふうに思います。それで、さらにご意見等があるかと思います。そういうことも、お寄せいただければと思います。次の会で、この軸で、つまり、全体的に俯瞰しながら議論を展開する時間が幾分とれるかと思います。―そういう予定でよろしいですね。 ○内山事務局次長 はい。 ○相澤会長 そういうようなこともありますので、今日のことをもう一度整理し、そして、それに基づいて、さらにリファインしていくという形をとりたいというふうに思っております。 では、そのことも含めて、事務局から今後のスケジュールをお願いいたします。 ○内山事務局次長 ありがとうございます。 本日の議論も踏まえまして、次回は2月4日水曜日、午後1時から、本事務局会議室におきまして開催したいと思います。 議題につきましては、政策レビュー、それから知財戦略の第3期基本方針につきまして、この専門調査会の報告書の取りまとめの素案という形で、今回の議論も踏まえまして、そういったものをお示ししながら、議論をさらに深めていただければというふうに思っておりますので、また事前にご相談させていただきたいと存じます。 以上です。 ○相澤会長 それでは、ただいまの事務局からの説明がありましたように、2月4日の会合では、この全体を俯瞰した議論を少し継続することと、それから報告書の全体の構成案を事務局から提示していただくという、この2つのところを取り扱いたいというふうに思っております。 それでは、本日の会合は以上とさせていただきます。 どうもありがとうございました。 |